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ドキュメンタリー「WHOLE」(前編)【なんで自分の足を切り落としたいの!?(身体完全性違和)】Part 1

今回のキーワード幻肢身体認識ネットワークラバーハンド錯覚気付き亢進身体失認自己認識みなさんは、健康な自分の足を切り落としたいという人がいたら、どう思いますか? 「きっと重い精神障害に違いない」と思いませんか? ところが、実際に足を切断したあとは何の精神的な問題もなく満足して暮らしているとしたらどうでしょうか? そんな彼らは、身体完全性違和と診断されます。簡単に言うと、体が健全(完全)であることに違和感があるという状態です。今回は、ドキュメンタリー「WHOLE」を取り上げ、この謎に迫ります。なお、このドキュメンタリーは、海外のサイトでレンタルまたは購入して、オンラインでみることができます。どんな特徴があるの?このドキュメンタリーには、切断を希望する人や実際に切断した人が紹介されています。彼らの発言から、身体完全性違和の特徴を主に3つ挙げてみましょう。(1)体の一部分に違和感がある彼らは口を揃えて、「片足が自分の体につながっていない」「自分のものではない」「異物だ」と言っています。しかも、「その境目が膝から何cm上まで」とはっきり言います。切断したある男性は、子供の頃から片足に違和感を持っており、当時から彼の日記にはその悩みが書かれ、描いた自画像も片足がありませんでした。別の男性は、切断してはいませんが、片足を膝で折り曲げて固定し、松葉杖を使って生活しています。そして、「この方が自然だよ」と言っていました。1つ目の特徴は、体の一部分(ほとんど左足)に違和感があることです。(2)命の危険を冒してでもその体の一部分をなくしたいと思う病院に行っても健康な足を切断してくれる外科医がいないため、彼らは切断してもらうためにあらゆる方法を考えます。ある男性は、大量のドライアイスで違和感のある足を半日凍らせて、凍傷になったことでやっと外科医に切断してもらえました。しかも、なんとかして温存を試みようとする救急医に「切断手術をしてくれなければ同じことを繰り返す」と宣言して、温存を断念するよう説得したのでした。【当時の新聞記事】また、別の男性は、自分の足をショットガンで打ち抜いたあと、暴発事故を装い、切断手術をしてもらったのでした。2つ目の特徴は、命の危険を冒してでもその体の一部分をなくしたいと思っていることです。(3)その体の一部分がなくなったら満足する彼らは全員、その片足を切断してもらったあとは「本来の自分になった」と言い、義肢や松葉杖の生活を穏やかに送ります。「異物」と思う自分の足を切断して、実際に異物である義肢を取り付けるのは奇妙にも思えます。しかし、その片足が「異物」であったというだけで、そのほかに精神的な問題はありません。たとえば、「片足が異物である」という訴えが妄想や強迫観念である場合、たとえ切断したとしても別の妄想や強迫観念が出てきて、訴えは続くでしょう。また、同情を病的に求めるミュンヒハウゼン症候群の場合、切断したら片足であることで同情を得ようとアピールし続けるでしょう。なお、この詳細については、関連記事1をご覧ください。3つ目の特徴は、その体の一部分がなくなったら満足していることです。なお、身体完全性違和は、もともと身体完全同一性障害と呼ばれていましたが、これまでICD(WHOによる国際疾病分類)やDSM(米国精神医学会による精神疾患の分類と診断の手引)には掲載されていませんでした。しかし、ICD-11(第11版)への改訂に伴い、この診断名として新しく新設されたため、今後さらに注目されていくことが予測されます。その診断ガイドライン1)を以下に示します。次のページへ >>

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軽症から中等症のCOVID-19外来患者において、フルボキサミンはプラセボと比較して症状改善までの期間を短縮せず(解説:寺田教彦氏)

 本研究では、軽症から中等症のCOVID-19外来患者で、フルボキサミンが症状改善までの期間を短縮するか評価が行われたが、プラセボと比較して症状改善までの期間を短縮しなかったことが示された1)。 フルボキサミンは、うつ病や強迫性障害などの精神疾患に使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、比較的安価な薬剤である。COVID-19流行初期において、このフルボキサミンは、サイトカインの産生を制御するσ-1受容体のアゴニストとして機能することから、臨床転帰の改善効果を期待して臨床試験が行われた。初期の臨床試験では有効性を示した報告2)もあり、ブラジルで行われたプラセボ対照無作為化適応プラットフォーム試験(TOGETHER試験)でも有効性が示されていた3)。そして、これらの研究に基づいたsystematic review4)やCochrane COVID-19 Study Register5)では、フルボキサミンは28日の全死因死亡率をわずかに低下させる可能性や、軽症COVID-19の外来および入院患者の死亡リスクを低下させる可能性があると評されていた。 しかし、フルボキサミンの有効性を否定する報告6)や、新型コロナウイルスワクチンの開発に伴いワクチン接種の有無で治療薬の有効性が変化する可能性も考えられ、現時点でフルボキサミンの有効性がない可能性も考えられた。そのため、新型コロナウイルスワクチンの接種率が7割程度あり、流行株がデルタ株からオミクロン株の時期の米国において、フルボキサミンの有効性が再度検証され、結果は前述の通りであった1)。 これまでの経緯や今回の研究結果を踏まえ、私は、日本ではフルボキサミンを臨床的に使用する必要性はないと考える。 過去の研究と今回の研究を比較すると、初期に有効性を示した臨床研究2)では、試験の参加者が少なかったことや、経過観察期間が短かったために正確な結論が得られなかった可能性が懸念される。また、ブラジルで実施されたTOGETHER試験は重症の定義に「6時間以上の救急医療を要する患者」を含めており、フルボキサミンが真に重症化予防効果があったかの疑問が残る。 今回、検証された理由の1つである、新型コロナの流行株や国民の新型コロナウイルスワクチン接種率の観点からも、本邦では今回の研究参加者の背景が近いと考えられる。フルボキサミンの有用性を示せなかった理由に、薬剤の投与量が指摘されることもあるが7)、現在はCOVID-19の病態の解明も進み、ワクチンの効果や新型コロナウイルスの変異により、かつてよりも死亡率や重症化率はかなり低下している状況である。そのうえ、重症化リスクのある患者に対する有効な抗ウイルス薬も開発され、使用方法も確立している。これだけCOVID-19治療法が確立した現在の日本においては、いくら安価であるとはいえ、COVID-19に対する効果が不確定なフルボキサミンを使用するメリットはないだろう。 さて、欧米や本邦では、COVID-19の治療ガイドライン8)や薬剤使用方法の手引き9)が整備されており、われわれ医療従事者はこれらのエビデンスに容易にアクセスできるようになった。しかし、インターネットのホームページをみると、本原稿執筆時でも、フルボキサミンが有効だったことを報告した当初の論文のみを載せてフルボキサミンの販売をしている通販サイトが散見される。COVID-19診療を振り返ってみると、イベルメクチンなどのようにCOVID-19への治療が期待されたがために、本来投与が必要な患者さんの手に薬剤が回らないことが懸念された薬剤もあった。新興感染症の病態や有効な治療薬が不明確なときには、有効と考えられる薬剤の投与を通して、エビデンスを生み出す必要があるが、病態や治療方法が確立すれば、適切な治療を行うように努めるべきであろう。 また、治療の有効性が否定された薬剤はその結果を受け止め、本来医学的に必要とされる患者さんに同薬剤が行き渡るようにするべきであろう。医薬品が一般人でも入手しやすくなった現代では、非医療従事者にも適切な情報が届くように、インターネットを含めてFact-Checkを行ってゆく必要があると考える。【引用文献】1)フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA2)Lenze EJ, et al. JAMA. 2020;324:2292-2300.3)Reis G, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e42-e51.4)Lee TC, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e226269.5)Nyirenda JL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2022;9:CD015391.6)Bramante CT, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.7)Boulware DR, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e329.8)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)Treatment Guidelines9)COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 15.1 版(2023年2月14日)

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尿路感染症疑い高齢者への抗菌薬、医師への適正使用支援で6割減/BMJ

 尿路感染症が疑われる70歳以上のフレイル高齢者について、医療者に対して適切な抗菌薬使用決定ツールの提供や教育セッションなどの多面的抗菌薬管理介入を行うことで、合併症や入院の発生率などを上げずに、安全に抗菌薬投与を低減できることが示された。オランダ・アムステルダム自由大学のEsther A. R. Hartman氏らが、ポーランドやオランダなど4ヵ国の診療所などで行ったプラグマティックなクラスター無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインでは限定的な抗菌薬使用が推奨されているが、高齢患者においては、処方決定の複雑さや異質性のため推奨使用の実施には困難を伴うとされていた。BMJ誌2023年2月22日号掲載の報告。38クラスターを対象に7ヵ月追跡 研究グループは2019年9月~2021年6月にかけて、ポーランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの一般診療所(43ヵ所)と高齢者ケア組織(43ヵ所)のうち、1ヵ所以上を含む38クラスターを対象に、ベースライン期間5ヵ月、追跡期間7ヵ月のプラグマティックなクラスター無作為化試験を行った。 被験者は70歳以上のフレイル高齢者1,041例(ポーランド325例、オランダ233例、ノルウェー276例、スウェーデン207例)で、追跡期間は411人年だった。 介入群の医療者には、多面的抗菌薬管理介入として、適切な抗菌薬使用の決定ツールや教材の入ったツールボックスを提供。参加型アクションリサーチ・アプローチのほか、教育・評価セッションや、介入の地域に即した変更を行った。対照群では、医療者が通常の治療を行った。 主要アウトカムは、尿路感染症疑いのある患者への抗菌薬処方数/人年だった。副次アウトカムは、合併症率、全原因による紹介入院、全原因による入院、尿路感染症疑い後21日以内の全死因死亡、全死因死亡などだった。尿路感染症疑いへの抗菌薬投与、介入で0.42倍に 尿路感染症が疑われた患者への抗菌薬処方数は、介入群54件/202人年(0.27/人年)、対照群121件/209人年(0.58/人年)だった。介入群の被験者は、対照群の被験者と比べて尿路感染症疑いで抗菌薬の処方を受ける割合が低く、率比は0.42(95%信頼区間[CI]:0.26~0.68)だった。 合併症率(介入群0.01未満/人年vs.対照群0.05/人年)、紹介入院率(0.01未満/人年vs.0.05/人年)、入院率(0.01/人年vs.0.05/人年)、尿路感染症疑い後21日以内の死亡(0/人年vs.0.01/人年)、全死因死亡(両群とも0.26/人年)は、両群で差はみられなかった。

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生活習慣の改善(8)食事療法5【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q56

生活習慣の改善(8)食事療法5Q56本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で推奨されている日本食パターン「The Japan Diet」のほかにも、動脈硬化性疾患予防に期待されている食形態がある。一般でも有名なその食形態、2つの名称は?

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生活習慣の改善(7)食事療法4【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q55

生活習慣の改善(7)食事療法4Q55本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版では言及されていないが、食事療法の際の肉の種類についても、注目され始めている。赤身肉・白身肉それぞれの具体例と、心血管リスク削減のための摂取の考え方は?

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事例018 心筋バイオマーカーの査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では心筋梗塞疑いにて実施した検査の「D007_17 CKアイソザイム」と「D007_29心筋トロポニンI」が医学的に保険診療上適当でないものを表すC事由で査定となりました。本件は複数件のレセプトに査定がありました。両検査の査定理由には、「急性心筋梗塞に対して、12誘導心電図を行っていない場合、CK-MB、心筋トロポニンIおよび心筋トロポニンT(TnT)定性・定量検査の請求は認められません。止むを得ず心電図検査を行わずにレセプト請求する場合には、妥当性を示すコメントを必ず記載してください」と付記がありました。診療報酬点数表と関連通知には、心電図検査を必須とする明確な記述は見当たりません。レセプトにはコメントも記載されています。再審査請求を考えて査定理由を調べました。調べた資料のうち、心筋梗塞の診断に関連する複数のガイドラインには、「12誘導心電図(以下「心電図」)により初期診断、その後に心筋バイオマーカー(CKアイソザイム、CK-MBなど)で確定・最終診断」、「心筋バイオマーカーは、特に心電図だけでは判断しかねる場合に有用」とありました。優先して心電図を行うことが奨励されており、ここを根拠に査定となったものと推測ができます。医師のコメントはありましたが、複数件が同一の記述であり、心電図を行わなかった医学的、合理的な理由が薄いと判定されたようです。再審査請求を行いましたが原審通りでした。レセプトチェックシステムでは、コメントの内容チェックまではできません。ガイドラインに沿えなかった場合には、支払い側に状況が伝わるよう、詳しい身体所見などを簡潔明瞭に記載いただくことを医師にお願いしました。

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心アミロイドーシス患者に、医療者と社会ができることは?

 ファイザーは、2023年2月28日の世界希少・難治性疾患の日に先立ち、「希少・難治性疾患の患者さんのEquity(公平)実現のために社会ができることとは?~心アミロイドーシス患者さんとご家族の歩み、専門医のお話からともに考える~」をテーマに2023年2月16日、メディアセミナーを開催した。 希少疾患は約7,000種類、世界中で約4億人の患者さんが存在し、そのうち80%は遺伝性とされている。現状の課題として、希少疾患に対する専門家や情報、治療の選択肢や患者さん向けのサポート等が不足しており、患者さんとその家族の生活の質に重大な影響が生じている。心アミロイドーシスも国の指定難病の1つであり、患者さんのEquity(公平)の実現が求められている。 セミナーの前半では、心アミロイドーシス当事者である酒井 勝利氏とご家族の酒井 秀子氏が心アミロイドーシスのこれまでの歩みについて、診断から治療、日常生活の心境を語った。後半では、遠藤 仁氏(慶應義塾大学医学部 循環器内科 専任講師)から「心アミロイドーシスの診断・治療」をテーマに希少疾患の治療や課題、今後の展望について語られた。心アミロイドーシスとは 心アミロイドーシスは心臓の筋肉細胞の隙間にアミロイド線維が溜まり、心臓が肥大し硬くなることで心不全や不整脈を起こす疾患である。心アミロイドーシスはアミロイド線維の原因物質によってALアミロイドーシスとATTRアミロイドーシスの2種類に分類される。さらにATTRアミロイドーシスは遺伝子変異のない野生型(老人性)と変異のある変異型(遺伝性)の2種類が存在し、変異型では熊本県や長野県に地域的な集積地があり、アミロイド線維が溜まりやすい臓器が複数あることで知られている。アミロイドーシスの診断は遅れやすい アミロイドーシスは診断がされにくい疾患であり、初発症状から確定診断までの期間が6ヵ月以内で37.3%、3年以上で10.5%といった報告も存在する1)。この要因について遠藤氏は、「疾患の認知度が低いことや診断のために組織生検が必要であること、診断しても有効な治療手段が存在しなかった背景があることが考えられる」と述べた。心アミロイドーシスにおけるepoch making 近年、心アミロイドーシスの診断で画像診断が有用であること、新たな治療方法が創出されたことでepoch makingな変化があった。診断において、従来は侵襲性の高い心筋生検が必要だったが、99mTcピロリン酸シンチグラフィが登場しATTR心アミロイドーシスの診断が可能となった2)。また、臨床検査として使用することで、拡張不全で左室肥大のある60歳以上の患者さんのうち13%がATTRアミロイドーシスだった報告もあり3)、さまざまな心疾患に紛れている可能性もわかってきた。一方、治療では心不全治療だけでなく、アミロイド線維に対する疾患修飾療法として治療薬が開発・使用されるようになった。心アミロイドーシスの患者さん発掘のための取り組み ATTR心アミロイドーシスの認知度は循環器領域を中心に高まっているが、いまだ潜在的な患者さんは多く存在しているかもしれない。こういった患者さん発掘のために、疾患啓発や地域・他科との連携が重要である。その取り組みとして、疾患啓発では診療ガイドライン・診断アルゴリズム2),4)の作成や早期診断のための日本版Red-flagの提唱5)、地域間の格差に対しては診断や検査を受けやすくするための環境整備が進んでいる。心アミロイドーシスになって食事管理が大変だった 心アミロイドーシスの診断を受けて酒井 勝利氏は、「当時は疾患そのものの情報が不足していた。とくに治療に関する情報は少なく、海外の文献も診断に関する内容が大半であった。また、患者さん向けの小冊子も海外版しかなく情報収集には苦労した」と語った。ご家族の酒井 秀子氏からは「生活を送るうえで塩分制限などの食事管理が大変であった。減塩生活が続くことで気が緩むこともあり、二人三脚で病気と向き合うことが大切である」と述べた。心アミロイドーシスほか希少疾患が認知される環境整備 心アミロイドーシスは情報が日々アップデートされており、これからも新しい情報発信を続けることが患者さんとご家族の不安解消のためにきわめて重要なことである。また、一般の方々にも関心を持っていただけるよう、心アミロイドーシスをはじめとした希少疾患が認知される環境整備を医療従事者だけでなく、メディアも一緒になって取り組むことが潜在患者さんの新たな発掘につながると期待されている。

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「ChatGPT」による心血管予防アドバイス、どんな結果に?/JAMA

 情報を検索する場合、インターネットを活用したり医療者から聞いたりするが、それらの役割がAIに置き換わったら一体どんなアドバイスをくれるのだろうか。そんな想像が人工知能 (AI) 言語モデルを用いたチャットサービス『ChatGPT』によって現実味を帯びてきた。本サービスは2022年11月にリリースされるやいなや、世界1億人以上が登録・利用している。複雑な質問に応答できることから、さまざまな専門分野で旋風を巻き起こし、医学界でも“このサービスが論文作成に悪用されるのではないか”と懸念が広がっている。 このような世相を受け、米国・クリーブランドクリニックのAshish Sarraju氏らは単純かつ基本的な冠動脈疾患(CVD)予防の質問を『ChatGPT』に行い、本システムによる応答の適切性を定性的に評価するための研究を2022年12月に実施。JAMA誌オンライン版2023年2月3日号のリサーチレターに報告した。 本研究ではガイドラインに基づく予防トピック、tertiary care preventive cardiology clinicsでの臨床経験に基づき、危険因子のカウンセリング、検査結果、薬歴など、基本的な予防概念に対処するための質問25項目を作成した。各質問はオンラインAIインターフェイスに3回の応答が記録された。各応答セットを「適切」「不適切」と評価し、3つの応答に一貫性がない場合は「信頼できない」と評価された。3つの応答の各セットは、心臓病の予防医学において経験豊富な臨床医が等級付けをした。回答の各セットに1人のレビュー担当者が割り当てられ、合計3人のレビュアーがこの研究に参加した。 主な結果は以下のとおり。・AIモデルは25項目のうち21項目(84%)で適切に回答したと評価された。・不適切と評価された4項目のうち、3項目の回答すべてに不適切な情報が含まれていた。・たとえば、ChatGPTは運動に関する質問に対し、有酸素運動とウエイトリフティングの両方を強く推奨したが、これは正しくはなく、特定の患者には有害の可能性があった。・LDL-C 200mg/dLの解釈に関する質問には、家族性高コレステロール血症や遺伝的考察などに関連する詳細内容が不足していた。・日本未承認だが米国・EUを含む世界60ヵ国以上で承認されているinclisiranに関しては、市販されていないと示唆した。・「信頼できない」と評価された回答はなかった。 研究者らは「この探索的研究では、一般的なオンラインAIモデルが単純なCVD予防の質問に対してほぼ適切な回答を提供することが明らかになった。調査結果は、一般的な CVD予防の質問に関する患者教育や患者と臨床医のコミュニケーションを強化することで、臨床ワークフローを支援するインタラクティブなAIになる可能性を示唆」とする一方で、今回評価したAIモデルは医療用ではないチャットボットの研究版である点に注意が必要であることも述べている。

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急性脳梗塞、rt-PAへのアルガトロバン併用は有用?/JAMA

 急性虚血性脳卒中の患者へのアルガトロバン+アルテプラーゼ併用投与は、アルテプラーゼ単独投与と比べて、90日後の優れた(excellent)機能的アウトカム達成に関して有意差をもたらす可能性はないことが示された。中国・General Hospital of Northern Theatre CommandのHui-Sheng Chen氏らが、808例を対象に行った多施設共同非盲検エンドポイント盲検化無作為化試験の結果を、JAMA誌オンライン版2023年2月9日号で発表した。先行研究では併用療法のベネフィットが示唆されたが、サンプルサイズが大きな試験では確たるエビデンスは得られていなかった。90日後の修正Rankinスケールスコア0~1の達成率を比較 研究グループは2019年1月18日~2021年10月30日に、中国の50病院を通じて、急性虚血性脳卒中の患者を対象に試験を行った。最終フォローアップは2022年1月24日。 試験適格被験者を発症から4.5時間以内に、アルガトロバンとアルテプラーゼを併用投与する群(併用群402例)またはアルテプラーゼのみを投与する群(単独群415例)に無作為に2群に割り付けた。併用群には、アルガトロバンを投与(100μg/kgを3~5分でボーラス投与の後、毎分1.0μg/kgで48時間静注)し、その後1時間以内にアルテプラーゼを投与(0.9mg/kgで最大投与量は90mg、10%を1分でボーラス投与、残りを1時間静注)。単独群にはアルテプラーゼのみを同用量、同様の方法で静脈内投与した。 両群ともに、ガイドラインに沿った治療を併せて行った。 主要エンドポイントは優れた機能的アウトカムで、90日後の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])が0~1と定義した。修正RSS 0~1のアウトカム達成、両群ともに64~65% 被験者817例は、年齢中央値65歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、女性238例(29.1%)、NIH脳卒中スケール中央値9(IQR:7~12)。760例(93.0%)が試験を完了した。 90日時点で優れた機能的アウトカムを達成したのは、併用群329例中210例(63.8%)、単独群367例中238例(64.9%)だった(群間リスク差:-1.0%、95%信頼区間[CI]:-8.1~6.1、リスク比:0.98、95%CI:0.88~1.10、p=0.78)。 症候性頭蓋内出血を呈した患者は併用群2.1%(8/383例)、単独群1.8%(7/397例)、2型脳内血腫はそれぞれ2.3%(9/383例)、2.5%(10/397例)、全身性の大出血はそれぞれ0.3%(1/383例)、0.5%(2/397例)だった。

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行政・学校・病院が連携して行う疾患啓発~糸魚川ジオパーク頭痛啓発キャンペーン

 頭痛は、一般的な公衆衛生上の問題である。その負荷を軽減するためには、頭痛に関する意識を高め、急性症状の管理や予防可能な薬剤を適切に使用することが求められる。しかし、一般の人々における頭痛に関する意識向上の研究は、これまでほとんど行われていなかった。新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、2021年8月~2022年6月に、2つの介入による「糸魚川ジオパーク頭痛啓発キャンペーン」をプロスペクティブに実施し、有効性の評価を行った。著者らは、本キャンペーンの実施により一般の人々の頭痛に関する認知率が向上したとし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でほぼすべての住民が集まるワクチン集団接種会場や、学校を基盤とした対面のないオンデマンドe-ラーニングでの疾患啓発活動は、きわめて効果的な方法であると報告している。Headache誌オンライン版2023年1月27日号の報告。 15~64歳の一般の人々を対象に、次の2つの介入を実施した。介入1では、COVID-19ワクチン接種会場で頭痛に関するリーフレットの配布および紙面アンケートを実施。介入2では、学校を通じたオンデマンドe-ラーニングおよびオンライン調査を実施した。これらの介入は、『頭痛の診療ガイドライン2021』に記載されている、一般の人々にとって重要な6つのトピックで構成した。2つの介入のそれぞれの回答は実施の前と後に収集し、キャンペーン前後の6つのトピックの認知度を評価した。 主な結果は以下のとおり。・糸魚川市の生産年齢人口2万458人中6,593人(32.3%)が、2つの介入のいずれかに参加した(介入1:ワクチン接種を受けた6,382人のうち有効回答が得られた4,016人、介入2:高校生1,085人のうち594人と保護者3,699人のうち1,983人を含む2,577人)。・6つのトピックは以下のとおりであった。 Topic1:頭痛による経済損失は大きい Topic2:アブセンティズム(頭痛による欠勤・欠席)よりプレゼンティズム(頭痛によるパフォーマンス低下)のほうが損失は大きい Topic3:頭痛の治療は可能かつ必要 Topic4:月に2回以上の片頭痛があれば受診する Topic5:頭痛の治療は急性期治療薬と予防治療の2本立てである Topic6:薬剤の使用過多による頭痛がある・6つのトピックの認知率は、介入前は6.6(39/594)~40.0%(1,606/4,016)の範囲であったのに対し、介入後は64.1(381/594)~92.6%(1,836/1,983)の範囲へ有意な増加が認められた(すべて、p<0.001)。【介入1(対象:ワクチン接種会場4,016人)】 Topic1:介入前:27%→介入後:70% Topic2:介入前:25%→介入後:72% Topic3:介入前:40%→介入後:84% Topic4:介入前:33%→介入後:80% Topic5:介入前:27%→介入後:75% Topic6:介入前:27%→介入後:72%【介入2(対象:高校生594人)】 Topic1:介入前: 7%→介入後:64% Topic2:介入前:11%→介入後:69% Topic3:介入前:28%→介入後:79% Topic4:介入前:23%→介入後:76% Topic5:介入前:24%→介入後:76% Topic6:介入前:19%→介入後:75%【介入2(対象:保護者1,983人)】 Topic1:介入前: 7%→介入後:80% Topic2:介入前: 8%→介入後:84% Topic3:介入前:35%→介入後:90% Topic4:介入前:32%→介入後:92% Topic5:介入前:24%→介入後:93% Topic6:介入前:34%→介入後:92%

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アルドステロン合成酵素に対する選択性を100倍にしたbaxdrostatによる第II相試験の結果は、治療抵抗性高血圧症に有効である可能性が示された―(解説:石上友章氏)

 高血圧症は、本邦で4,000万人が罹患するといわれている、脳心血管病の最大の危険因子である。降圧薬は、市場規模の大きさから多くの製薬企業にとって、開発・販売に企業の持っているリソースの多くを必要とするカテゴリーの製品であった。医療サイドにとっては、その患者数の多さと健康寿命に与える影響の重要さから、確実で安全な医療の提供の実現が求められている。公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の調査によると、あらゆる薬剤の中で、降圧薬の貢献度・満足度がきわめて高いことが示されている。降圧治療は、疾病の克服において、これまでに人類が手にした治療薬として、きわめて高い水準の完成度に達したといえる。 利尿薬を含む、3種類以上の降圧薬の内服にもかかわらず、降圧目標に到達していない場合に、治療抵抗性高血圧症と定義される。高血圧症の多くを占める本態性高血圧症は、多因子性の疾患であると考えられており、これまではアルドステロン受容体拮抗薬が推奨されていた。本邦では、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)が降圧薬としての適応を取得したことから、数年以内に改訂される高血圧診療ガイドラインでは、その推奨が変わる可能性がある。 こうした高血圧診療の成熟が、製薬企業による新薬開発の低下や、若手医師や研究者の高血圧領域への関心の低下といった事態を招いている可能性がある。米国では、約10%が治療抵抗性高血圧といわれている。本邦に当てはめるならば、約400万人が該当する。既存の降圧薬で十分な降圧が得られない高血圧症は、実感としても少なからず存在している。第II相試験ではあるが、baxdrostatの成果は、降圧薬の新たな選択肢として期待できるだけでなく、高血圧症の制圧の実現に大きく寄与すると考えられる。

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第20回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2023

 2023年2月16日、日本臨床腫瘍学会はプレスセミナーを開催し、会長の馬場 英司氏(九州大学)らが、第20回学術集会(2023年3月16~18日)の注目演題などを発表した。 今回のテーマは「Cancer, Science and Life」で、科学に基づいた知⾒ががん医療の進歩を支え、患者さんが満⾜できる⽣活、実りある⼈⽣を送る助けになることを目的とする。演題数は1,084であり、うち海外演題数は289と過去2番⽬の多さになる。プレジデンシャルセッション プレジデンシャルセッションでは発表者の他に、国内外の専門家がディスカッサントとして研究成果の意義を解説する。演題は学術企画委員会が厳正に審査を行い、全分野より合計19演題が選定された。<呼吸器>2023年3月16日(木)15:10〜17:101.既治療の進行・再発非小細胞肺癌に対するニボルマブ(NIV)対NIV+ドセタキセルのランダム化比較第II/III相試験:TORG1630 古屋 直樹氏(聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科)2.First Report of Cohort3 and Mature Survival Data From the U31402-A-U102 Study of HER3-DXd in EGFR-Mutated NSCLC  林 秀敏氏(近畿大学医学部腫瘍内科)3.完全切除されたII-IIIA期の非扁平上皮非小細胞肺癌に対するPEM/CDDPとVNR/CDDPを比較する第III相試験:JIPANG最終解析 山崎 宏司氏(国立病院機構九州医療センター呼吸器外科)4.Adjuvant osimertinib in resected EGFR-mutated stageII-IIIA NSCLC:ADAURA Japan subgroup analysis 釼持 広知氏(静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科)5.Sotorasib versus Docetaxel for Previously Treated Non-Small Cell Lung Cancer with KRAS G12C Mutation:CodeBreaK 200 Phase3 Study 岡本 勇氏(九州大学大学院医学研究院呼吸器内科学)<その他がん>2023年3月17日(金)8:20〜10:201.MOMENTUM:Phase3 Study of Momelotinib vs Danazol in Symptomatic and Anemic Myelofibrosis Patients post-JAK Inhibition Jun Kawashima氏(Sierra Oncology, a GSK company, San Mateo, CA, USA)2.Brexucabtagene Autoleucel in Relapsed/Refractory Mantle Cell Lymphoma(R/R MCL) in ZUMA-2:Durable Responder Analysis  Javier Munoz氏(Banner MD Anderson Cancer Center, Gilbert, AZ, USA)3.Pembrolizumab+chemoradiation therapy for locally advanced head and neck squamous cell carcinoma(HNSCC):KEYNOTE-412 田原 信氏(国立がん研究センター東病院頭頸部内科)4.APOBEC signature and the immunotherapy response in pan-cancer Ya-Hsuan Chang氏(Institute of Statistical Science, Academia Sinica, Taipei, Taiwan)5.FGFR2融合/再構成遺伝子を有する肝内胆管がん患者に対するFutibatinibの第2相試験:FOENIX-CCA2試験の日本人サブグループ解析結果 森実 千種氏(国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科)<乳腺>2023年3月17日(金)16:25〜18:051.Overall survival results from the phase3 TROPiCS-02 study of sacituzumab govitecan vs chemotherapy in HR+/HER2-mBC Hope Rugo氏(Department of Medicine, University of California-San Francisco, Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center, San Francisco, CA, USA)2.HER2低発現の手術不能又は再発乳癌患者を対象にT-DXdと医師選択治療を比較したDESTINY-Breast04試験のアジアサブグループ解析 鶴谷 純司氏(昭和大学先端がん治療研究所)3.T-DM1による治療歴のあるHER2陽性切除不能及び/又は転移性乳癌患者を対象にT-DXdと医師選択治療を比較する第III相試験(DESTINY-Breast02) 高野 利実氏(がん研究会有明病院乳腺内科)4.Phase1/2 Study of HER3-DXd in HER3-Expressing Metastatic Breast Cancer:Subgroup Analysis by HER2 Expression 岩田 広治氏(愛知県がんセンター乳腺科部)<消化器>2023年3月18日(土)9:45〜11:451.切除不能局所進行食道扁平上皮癌に対する化学放射線療法後のアテゾリズマブの有効性・安全性をみる第II相試験:EPOC1802 陳 勁松氏(がん研究会有明病院消化器化学療法科)2.PD-1 blockade as curative intent therapy in mismatch repair deficient locally advanced rectal cancer Andrea Cercek氏(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, USA)3.RAS野生型切除不能進行再発大腸癌に対するm-FOLFOXIRI+cetuximab vs. bevacizumabの生存解析:DEEPER試験(JACCRO CC-13) 辻 晃仁氏(⾹川⼤学医学部臨床腫瘍学講座)4.PARADIGM試験における早期腫瘍縮小割合および最大腫瘍縮小割合に関する検討 室 圭氏(愛知県がんセンター薬物療法部)5.Efficacy and safety of fruquintinib in Japanese patients with refractory metastatic colorectal cancer from FRESCO-2  小谷 大輔氏(国立がん研究センター東病院消化管内科) また、プレスセミナーでは、他の注目演題として下記が紹介された。がん免疫療法ガイドライン 下井 ⾠徳氏(国⽴がん研究センター中央病院)によるがん免疫に関するレクチャーの後、3月発刊予定の「がん免疫療法ガイドライン第3版」のアウトラインが紹介された。昨今注目されているがん免疫療法において、医療者へ適切な情報を提供するためのがん種横断的な治療ガイドラインの改訂版である。学術大会では委員会企画として、第3版改訂のポイント、新しいがん免疫療法、がんワクチン療法と免疫細胞療法のエビデンスが解説される。委員会企画4(ガイドライン委員会2)第1部:がん免疫療法ガイドライン改訂第3版の概要3⽉16⽇(⽊)15:50〜17:20(第1部 15:50〜16:35)がんゲノム医療 田村 研治氏(島根大学医学部附属病院)によって、がん治療におけるゲノム医療の流れや課題などが紹介された。学術大会では、マルチコンパニオン検査とCGP検査の使い分けについて解説した上で、近未来の「がんゲノム医療」はどうあるべきかを専門医が討論する。解決すべき問題の例として「コンパニオン診断薬として承認されている遺伝子異常と、ゲノムプロファイリング検査としての遺伝子異常を同じ遺伝子パネルで検査すべきか?区別すべきか?」などが挙げられた。シンポジウム8遺伝子異常特異的かつ臓器横断的な薬剤の適正使用、遺伝子パネルの在り方とは?3月16日(木)8:30〜10:00患者支援の最前線 佐々木 治一郎氏(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター)によって、わが国におけるがん患者支援の現状が紹介された。より総合的ながん患者支援が求められる中、支援活動の質の担保や最低限のルールの確立などのための教育研修が必要となっている。学術大会では、国、学会、NPOの演者ががん患者支援者への教育研修について発表・議論される。会長企画シンポジウム4患者支援者の教育研修:我が国における現状と課題3月16日(木)14:00〜15:30デジタル化が進めるがん医療 佐竹 晃太氏(日本赤十字医療センター)によって、治療用アプリとヘルスケアアプリとの違い、実臨床における活用方法、国内における開発状況などが紹介された。治療用アプリの活用により、重篤な有害事象の減少、QOLの改善、生存期間の改善などが期待されている。学術大会では、新しい治療アプローチの昨今の動向や、臨床導入する上での潜在的課題について議論される。シンポジウム4将来展望:予防・治療を目的としたモバイルアプリの開発3月16日(木)15:50~17:20

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自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」【下平博士のDIノート】第115回

自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」今回は、抗リウマチ薬「メトトレキサート(MTX)皮下注(商品名:メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL/同10mgシリンジ0.20mL/同12.5mgシリンジ0.25mL/同15mgシリンジ0.30mL)、製造販売元:日本メダック」を紹介します。本剤は、国内初の自己注射可能なMTX皮下注製剤であり、関節リウマチ患者の服薬アドヒアランスの向上に加え、誤投与・過剰投与リスクの軽減が期待されています。<効能・効果>本剤は、関節リウマチの適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはMTXとして7.5mgを週に1回皮下注射します。患者の状態や忍容性などに応じて適宜増量できますが、15mgを超えることはできません。4週を目安に患者の状態を十分に確認し、増量は2.5mgずつ行います。<安全性>国内第III相臨床試験(MC-MTX.17/RA試験)において、83.8%(93/111例)に臨床検査値異常を含む有害事象が認められました。5%以上に認められたものは、悪心16.2%、口内炎14.4%、関節リウマチ11.7%、上咽頭炎10.8%、ALT増加9.9%、肝機能異常9.9%、白血球数減少8.1%、上腹部痛5.4%、高血圧5.4%などでした。なお、重大な副作用として、ショック/アナフィラキシー(頻度不明)、骨髄抑制(5%以上)、感染症(0.1~5%未満)、結核、劇症肝炎/肝不全、急性腎障害/尿細管壊死/重症ネフロパチー、間質性肺炎/肺線維症/胸水、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)/皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、出血性腸炎/壊死性腸炎、膵炎、骨粗鬆症、脳症(白質脳症を含む)、進行性多巣性白質脳症(PML)(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、異常な状態となっている免疫反応や炎症反応を抑えることで、関節リウマチによる関節の腫れや痛みを改善します。2.通常、週に1回、特定の曜日に皮下注射してください。3.注射部位は大腿部・腹部・上腕部の毎回異なる部位を選び、短期間に同一部位へ繰り返して投与しないでください。4.この薬を投与している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は医師に相談してください。5.発熱、倦怠感が現れた場合や、口内炎、激しい腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れた場合は直ちに医師に連絡してください。6.(妊娠可能年齢の女性やパートナーが妊娠する可能性のある男性に対して)この薬を投与中および投与終了後一定の期間は、適切な方法で避妊を行ってください。7.(授乳中の女性に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤の投与中は授乳しないでください。<Shimo's eyes> 関節リウマチ(RA)治療の基本は、疾患活動性を低く抑え、早期の臨床的寛解を達成・維持することです。MTXはRAの病態形成に関与する種々の細胞に対して、複数の分子作用機序を介して免疫および炎症性反応を抑制し、抗RA作用を発揮すると考えられています。日本リウマチ学会、米国リウマチ学会(ACR)、欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインではMTXが第1選択薬として推奨されています。わが国においては、RAに対するMTXはこれまで経口薬のみが発売されていましたが、本剤は週1回の皮下投与のプレフィルドシリンジです。医師の管理・指導のもと、自己注射も可能です。2022年9月時点で、本剤は欧州を中心に世界49の国または地域で承認されており、2019年には欧州医薬品庁はMTXの誤投与の危険性を回避するため、RAなどの治療に対して週1回投与のMTX皮下注製剤を推奨しています。MTX経口薬から切り替えの際の投与初期量は、1週間当たりの投与量を対比させた添付文書の表などを参考に決定されます。安全性プロファイルは、注射部位反応を除いてMTX経口薬と同様と考えられています。主な副作用は白血球数減少、肝機能障害、悪心、口内炎などであり、重大な副作用である骨髄抑制、感染症、結核、劇症肝炎、肝不全、急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、出血性腸炎などに注意する必要があります。2020年10月の「医療安全情報No.167」では、MTXの過剰投与による骨髄抑制の事故が後を絶たないことを注意喚起しています。本剤の普及によって医療現場での投与過誤、あるいは患者さんの服用過誤が減少することを期待します。

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糖尿病対策で外来指導強化など中間とりまとめ公表/厚労省

 「厚生労働省の腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」は、2月13日に「糖尿病対策に係る中間とりまとめ」を発表した。 中間とりまとめによると、診療提供について「外来療養指導や外来栄養食事指導の強化」が謳われ、高齢者の糖尿病患者の低血糖予防や在宅看護など地域ケアの取り組みが追記された。また、糖尿病対策に係る指標の見直しでは、「糖尿病の予防」「糖尿病の治療・重症化予防」「糖尿病合併症の発症予防・治療・重症化予防」の3項目を軸とすることが記述された。 主な中間とりまとめの概要は下記の通り。【1 糖尿病対策に係る他計画との連携等を含めた診療提供体制について】1)見直しの方向性(1)健康日本21や医療費適正化計画の見直しにかかる検討状況、重症化予防や治療と仕事の両立支援に係る取組状況などを踏まえる。(2)厚生労働科学研究の内容などを踏まえる。2)具体的な内容(1)引き続いての推進事項として・地域の保健師・管理栄養士などと連携した糖尿病発症予防の取組や、保健師・管理栄養士などと医療機関の連携、健診後の受診勧奨・医療機関受診状況などに係るフォローアップなど予防と医療の連携。・研究班や関係学会で整理された、かかりつけ医から糖尿病専門医への紹介基準、その他関係する専門領域への紹介基準なども踏まえ、合併症の発症予防・重症化予防に係る医療機関間連携や関連機関などとの連携。・糖尿病対策推進会議や糖尿病性腎症重症化予防プログラムなど、保険者と医療機関などの連携。・「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に基づく治療と仕事の両立支援を含め、産業医などと連携した職域における糖尿病対策。・周術期や感染症入院中の血糖コントロールなど、糖尿病を併存している他疾患を主たる病名として治療中の患者の血糖管理体制。・患者およびその家族などに対する教育や、国民に対する正しい知識の普及啓発。・糖尿病の動向や治療実態を把握するための取組や、取組評価の適切な指標の検討。(2)追記事項として・治療などに係る記載について、更新された糖尿病に係るガイドラインにおける記載内容や調査・研究の結果などを踏まえ、内容を更新する。また、外来療養指導、外来栄養食事指導の強化、運動指導の重要性について。・高齢者糖尿病に関しては、高齢者糖尿病におけるコントロール目標などが設定されたことにも留意し、低血糖予防、フレイル対策、併存症としての心不全に関する実態把握、在宅医療・在宅訪問看護や介護・地域包括ケアとの連携などの要素も含め、糖尿病の治療や合併症の発症予防・重症化予防につながる取組について。【2 新型コロナウイルス感染症拡大時の経験を踏まえた今後の糖尿病医療体制について】1)見直しの方向性(1)今回の新型コロナウイルス感染症拡大時の経験も踏まえ、地域の実情に応じ、多施設・多職種による重症化予防を含む予防的介入、治療中断対策などを含む、より継続的な疾病管理に向けた診療提供体制の整備などを進める観点から必要な見直しを行う。2)具体的な内容(1)感染症流行下などの非常時においても、切れ目なく糖尿病患者が適切な医療を受けられるような体制整備を進める。(2)ICTの活用やPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の利活用、在宅医療との連携を含めた継続的・効果的な疾病管理に係る検討を進めるとともに、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」にそって、オンライン診療による対応が可能な糖尿病患者の病態像についても整理を進める。【3 糖尿病対策に係る指標の見直しについて】1)見直しの方向性(1)第8次医療計画における糖尿病対策に係る指標については見直しを行う。(2)具体的な方向性は、以下の通りとする。・「糖尿病の予防」「糖尿病の治療・重症化予防」「糖尿病合併症の発症予防・治療・重症化予防」の3項目を軸として整理。・「専門家数」または「専門医療機関数」のいずれも用いうる指標については、医療提供体制の整備という観点から「専門医療機関数」を採用。【4 今後検討が必要な事項について】(1)高齢者の糖尿病の実態把握や、ICTなどを活用した糖尿病対策のあり方。(2)糖尿病対策の取組の評価に係る適切な指標。

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第135回 ポスト2025年の医療・介護提供体制の確立に向けた総合確保方針を改定/厚労省

<先週の動き>1.ポスト2025年の医療・介護提供体制の確立に向けた総合確保方針を改定/厚労省2.医療情報システムをサイバー犯罪から守れ、ガイドライン改定へ/厚労省3.マイナ保険証を持たない人に1年有効の「資格確認書」を発行へ/デジタル庁4.新型コロナウイルス接触確認アプリの開発、不備を認める/デジタル庁5.入院患者への暴行で、精神病院に立ち入り検査/東京都6.「サル痘」の名称を「エムポックス」に変更へ/厚労省1.ポスト2025年の医療・介護提供体制の確立に向けた総合確保方針を改定/厚労省厚生労働省は2月16日に「医療介護総合確保促進会議」を開催し、「団塊の世代」がすべて75歳以上となる2025年、さらにその後の医療・介護提供体制を見据えて、患者・利用者・国民の視点に立った医療・介護の提供体制を構築する必要があるとして「総合確保方針」の見直し案を討議し、承認された。この中で、入院医療については、令和7年に向けて地域医療構想を推進して、さらに医療機能の分化・連携を進めることで「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築を目指す。また、外来医療・在宅医療については、外来機能報告制度を用いて紹介受診重点医療機関の明確化を図り、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行っていくことが重要としている。厚生労働省は新たな「総合確保方針」を、今年度内に告示する見通し。(参考)第19回医療介護総合確保促進会議(厚労省)医療と介護の総合確保方針、改定案を大筋了承 3月中に告示、厚労省(CB news)医療・介護計画の上位指針となる総合確保方針を見直し!2025年から先を見据え「柔軟なサービス提供」目指す!-医療介護総合確保促進会議(Gem Med)厚労省、介護事業者の協働化・大規模化を推進 事業計画の指針に明記(JOINT)2.医療情報システムをサイバー犯罪から守れ、ガイドライン改定へ/厚労省厚生労働省は第14回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループを持ち回りで開催し、昨年4月に改定した医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6版の骨子案を示した。昨年、発生した大阪急性期・総合医療センターや徳島県つるぎ町立半田病院へのサイバー攻撃事件をきっかけに厚生労働省は医療機関に対して、医療機関へのサイバー攻撃に対してセキュリティー対策を呼びかけている。また、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」に対するパブリックコメントの募集を開始しており(締切は2023年3月7日)、募集を経て4月には公表したいとしている。なお、厚生労働省は、医療法を改正しており、令和5年4月より医療法第25条第1項の規定にされている立入調査の実施の際は、病院、診療所の管理者がサイバーセキュリティの確保を講じているかを確認するとしている。(参考)「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」の骨子(案)について〔概要〕(厚労省)「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」の骨子(案)に関する御意見の募集について(同)セキュリティー対策、役割ごとに整理 安全管理指針(CB news)3.マイナ保険証を持たない人に1年有効の「資格確認書」を発行へ/デジタル庁デジタル庁は2月17日に「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」を開き、中間とりまとめを発表した。来年の秋に、従来の健康保険証が原則廃止となるため「マイナ保険証」を持たない人に対して、無料で有効期間1年の「資格確認書」を発行するとともに「更新も可能」となる見込み。また、マイナンバーカードの取得についても、交付申請者が庁舎などに出向くことが困難な人については診断書、障害者手帳などを用いて、柔軟に代理交付の仕組みを活用することで交付をスムーズに行えるように自治体向けに指導するとした。このほか、マイナカードの紛失など緊急時には最短で5日で発行できる体制を作ることとした。(参考)マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会 中間とりまとめ(デジタル庁)マイナンバーカード、再発行最短5日で 24年秋までに(日経新聞)マイナカード最短5日で発行へ、保険証廃止で政府が中間取りまとめ(朝日新聞)4.新型コロナウイルス接触確認アプリの開発、不備を認める/デジタル庁厚生労働省とデジタル庁は、昨年11月に機能を停止した新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」の取組に関する総括報告書をまとめて、公表した。同アプリは、陽性者と接触した可能性を利用者に伝え、検査や保健所のサポートを早く受けることで、感染拡大の防止が期待されていたが、Android端末で接触通知が到達していないなどの不具合が発覚した。原因には、アプリの開発や運用などで体制の整備が十分でなかったことなどが指摘されており、さらにアプリの効果を検証できないなどの課題があった。デジタル庁は、将来のパンデミックに備えて、今後のアプリ開発などに活用していく方針であるとした。(参考)新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の取組に関する総括報告書(デジタル庁)河野デジタル相、「COCOA」開発不備認める…「政治のリーダーシップが欠如していた」(読売新聞)接触確認アプリ「COCOA」“課題あった” デジタル庁など報告書(NHK)5.入院患者への暴行で、精神病院に立ち入り検査/東京都2月14日に入院患者への暴行が行われたとして、東京都八王子市にある精神病院の滝山病院(288床)の看護師の男性職員が逮捕された。これまでも入院患者に対して、違法な身体拘束が行われているとして関係者から告発があり、翌日、警察は病院を家宅捜索した。また、厚生労働省は東京都に対して立ち入り調査を行うよう指導した。事件に対して、加藤厚生労働大臣は記者会見で「精神科病院での患者に対する虐待など人権侵害はあってはならない」とし、来年の4月に改正される精神保健福祉法では、精神科病院で虐待を発見した場合に都道府県などへの通報を義務付けられており、今後、指導していくことを明らかにしている。(参考)精神科病院 看護師逮捕“虐待疑われる場合 行政指導”厚労相(NHK)東京 八王子の精神科病院“少なくとも10人以上が虐待”弁護士(同)小池都知事「今後も立ち入り検査」 八王子の精神科病院患者暴行事件(産経新聞)精神科の入院患者に暴行か 看護師の男逮捕-警視庁(時事通信)6.「サル痘」の名称を「エムポックス」に変更へ/厚労省厚生労働省は、2月17日に天然痘に似た感染症「サル痘」の名称を、世界保健機関(WHO)が2022年11月28日に“mpox”の使用を推奨することを公表したため、これに従って「エムポックス」に変更する方針を決めた。サル痘は2022年5月以降、国際的に市中感染が拡大しており(110ヵ国・8万人以上)、2023年2月16日時点で国内でも20例の症例が確認されているが死者はなく、海外でも感染者の多くは軽症で回復している。(参考)サル痘の名称変更について(厚労省)「サル痘」を「エムポックス」に変更へ 厚生労働省(NHK)サル痘の名称、「エムポックス」に WHO推奨で変更へ(日経新聞)サル痘の名称を「エムポックス」に…厚労省が変更方針(読売新聞)

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生活習慣の改善(6)食事療法3【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q54

生活習慣の改善(6)食事療法3Q54従来、減塩した「日本食パターン」が動脈硬化性疾患予防に推奨されている。動物性食品を控え、魚や野菜、果物、未精製穀物を中心とした食事を指すが、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で控えるべき動物性食品に追加された食材は?

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2月20日 アレルギーの日【今日は何の日?】

【2月20日 アレルギーの日】〔由来〕1966(昭和41)年の今日、石坂 公成氏、石坂 照子氏がIgE(免疫グロブリン)を発見したことにちなみ、日本アレルギー協会により制定。同協会では今日を中心とした1週間を「アレルギー週間」と定め、この期間を中心にアレルギーに関する各種啓発活動を行っている。関連コンテンツアトピー性皮膚炎診療の最新知見【診療よろず相談TV】その症状もアナフィラキシーですよ!【Dr.山中の攻める!問診3step】じんましん【患者説明用スライド】IgEってなあに?【患者説明用スライド】アナフィラキシーなどの治療を非専門医向けに/アレルギー総合ガイドライン改訂

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患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版

患者さんの知りたい65の疑問について、Q&A形式でわかりやすく解説納得のいく医療を受けるためには、患者さんが標準治療(=最善の治療)や診療方法について正しく理解したうえで、医師と相談し、自身に合った治療を選択すること(Shared Decision Making)が重要です。本書では、現在の乳がんの標準治療や、乳がん患者さんやそのご家族がいま知りたいことについて、正しい情報をわかりやすく得られるよう、最新の情報をもとに、患者さんからの計65の質問(Q)に対する回答(A)と解説を掲載しています。巻末には、初期治療、転移・再発治療でそれぞれ使用される頻度の高い薬物療法の組み合わせや投与方法をまとめた表や、実際に患者さんから寄せられた質問をもとに作成した質問集も掲載しています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版定価2,640円(税込)判型B5判頁数272頁(カラー図数:46枚)発行2023年2月編集日本乳癌学会電子版でご購入の場合はこちら

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血管外漏出ガイドライン発刊、抗がん剤治療時の最新知見

 がん薬物療法を行ううえで、点滴の血管外漏出の予防、早期発見、対処・管理は重要な課題である。2022年12月、日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会(3学会合同)が『がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版(改訂3版)』を発刊した。血管外漏出の対策を日常的に実施するも、実は推奨されていなかった…ということも無きにしもあらず。ぜひこの機会に抗がん剤をオーダーする医師にも薬剤の血管漏出時対応の最新知見を確認いただきたい。血管外漏出ガイドライン2023年版は新たな医療機器や薬剤が色濃く反映 血管外漏出ガイドライン改訂では、血管外漏出(EV:extravasation)が問題となる抗がん剤のリストに大きな変更はないが、それらをマネジメントするための新たな医療機器(PICCカテーテル)や薬剤(デクスラゾキサン)の登場が色濃く反映されている。また、がん薬物療法時の制吐薬に用いられるホスアプレピタントは注射部位反応の増加が報告されているが、それとEVとの関連についても触れられている。 『がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版』で押さえておきたい変更点は以下のとおり。CQ3「がん患者に対して中心静脈デバイスを留置する際、CVとPICCどちらが推奨されるか」-CQ2で「中心静脈デバイスを留置するかしないか」を検討し、ここではデバイスの選択について検討されている。各論文ではデバイス3種の比較がなされていたことから、CQ3a(CV vs. PICC、推奨の強さ:弱い・方向:行うこと)、CQ3b(CV vs.ポート、同:弱い・同:行うこと)、CQ3c(PICC vs.ポート、同:強い・同:行うこと)とそれぞれのCQが設けられている。なお、検討に対して最も重要なアウトカムとしてデバイスfailure(閉塞、感染、血栓、抜去など)を設定して可能な場合にメタアナリシスを行っている。CQ7「EVリスクを考慮した場合、ホスアプレピタント投与を行うことは推奨されるか」(同:弱い・同:行うこと) ホスアプレピタントの投与はアプレピタントの内服困難症例などに限定し、注射部位反応に注意しながら使用することを弱く推奨する。ホスアプレピタントによりEVリスクが高まるエビデンスはないが、併用したがん薬物療法の種類によってはそのリスクが増加するという報告があるため、併用時には注意が必要となる可能性がある。CQ9「皮膚障害の悪化予防としてEVが起こったときに残留薬液または血液の吸引は推奨されるか」(推奨なし) 実際に吸引を行っても残留薬液または血液を吸引できることはまれであり、この有用性を検討する必要があると判断された。CQ10「EVによる皮膚障害・炎症の悪化・進行を防ぐために局所療法として冷罨法(冷却)は推奨されるか」(同:弱い・同:行うこと) 冷罨法を用いることで痛みの軽減、安心感や満足感が得られる面から優先される対応であるが、施行時期や期間、温度については定まっておらず、悪化の抑制などに有効であるかは不確かである。CQ11「アントラサイクリン系がん薬物療法薬のEVにデクスラゾキサンの使用は推奨されるか」(同:弱い・同:行うこと) デクスラゾキサン(商品名:サビーン)は2014年に“アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤のEV”を効能効果として承認された薬剤であり、医療ニーズの高い医薬品である。しかし、費用対効果(薬価:4万6,437円/瓶)※や投与日数(3日間連続投与)などから患者の不利益になる可能性もあるため、本CQで明らかにすることとした。※2023年2月時点

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第32回 マスク緩和論を巡り再び世論分断

世論分断の波が再来3月13日からマスク着用は個人判断に委ねることを基本とする方針が示されました。コロナ禍も後半戦、あるいはもう9回表くらいでしょうか。そのあたりは誰にもわかりませんが、とにもかくにも緩和される方針になりました。ただし、医療機関、高齢者施設、通勤ラッシュ・混雑した場所ではマスク着用が推奨されています。厚生労働省は、上記の考え方を事務連絡「マスク着用の考え方の見直し等について(令和5年3月13日以降の取扱い)」として示しています1)。医学的な弱者に感染させてしまうリスクがあるため、きわめて妥当な推奨なのですが、これで世論がまた分断されているようです。コロナ禍で何度か見た風景がまた始まってしまった。卒業式のマスク問題なぜ再びマスク問題が過熱しているかというと、「卒業式でマスク着用どうする問題」が急浮上したからです。文部科学省は2023年2月10日、卒業式におけるマスクの取扱いについて、各都道府県の教育委員会等に通知を出しています2,3)。これによると、「児童生徒と教職員は式典全体を通じてマスクなし、来賓や保護者等はマスク着用を基本」として示しています。簡単に言えば、感染対策はゼロにしたくないけど、子供の思い出のためのマスク緩和はやむなしということですよね。さらに通知では、児童生徒と教職員は、入退場、式辞・祝辞等、卒業証書授与、送辞・答辞の場面を含めて、式典全体を通じてマスクなしを基本とする、としています。しかし、来賓や保護者等はマスクを着用し、座席間の距離を確保するとされています。またさらに、壇上で式辞や祝辞等を述べる場合に関しては、来賓はマスクなしを許可しています。そして、国歌・校歌等の斉唱や「6年間で楽しかったことー!」などの「呼びかけイベント」についてはマスク着用を求めています。こ、細かい…細かすぎる……!「5類」化なのに厳格化そもそも、マスクを巡ってここまで重箱の隅をつつくような議論が必要なのでしょうか。日本ってこれほどルールが必要でしたっけ。あるいは、コロナ禍がそうさせてしまったのか…。全国知事会は、加藤 勝信厚生労働大臣に対して「全部が個人の判断と言われても困る」と伝えています。この意見もわからなくもないのですが、もう大人ですから、当初提示されたように「個人の判断に委ねる」でいいんじゃないか、と私自身は思っています。各業界団体は、業種別にガイドラインの見直しを行う方針になっています。飲食店で中間管理職をやっている私の友人も、「仕事が増えた」と激オコでした。5月8日から「5類感染症」にするというのに、逆に細かい規定でがんじがらめになってしまう現象って、本末転倒な気もします。具体的な場面を挙げるとなると、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長もおっしゃっていたように、100万の場面があるのでキリがありません。もちろん、具体的な場面例を通達してもよいですが、分断を生む火種になることは目に見えているので、国民に対しては「感染が流行しているので常識的なマスク着用を」程度の啓発で、押し通せばよかったのでは、とも感じます。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:マスク着用の考え方の見直し等について(令和5年3月13日以降の取扱い)2)文部科学省:永岡文部科学大臣臨時会見(令和5年2月10日)【動画】3)文部科学省:卒業式におけるマスクの取扱いに関する基本的な考え方について(通知)(令和5年2月10日)

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