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ガイドラインの導入で肺移植待機患者の死亡率が大きく改善

 米国では、2023年に肺移植の新たな臓器配分ガイドラインが導入されて以降、移植待機中に死亡する移植希望者の数が大幅に減少したことが最新の研究で明らかになった。米コロンビア大学アーヴィング医療センターのMary Raddawi氏らによるこの研究結果は、米国胸部学会国際会議(ATS 2025、5月16〜21日、米サンフランシスコ)で発表された。 米国ではかつて、ドナー肺の配分が地理的な近さに基づいて決定されており、ドナーの近くに住む人が優先的にドナー肺へのアクセス権を与えられていた。しかし2017年に、肺移植を必要としていた女性が、臓器配分のポリシーが医療的な緊急度よりも居住地を優先しているのは不公平だとして訴訟を起こした。 この訴訟を受けて臓器配分の地理的範囲が広域化されるとともに、UNOS(全米臓器配分ネットワーク)と臓器調達・移植ネットワーク(OPTN)は新たなガイドラインの策定に着手した。2023年3月に導入された新たなガイドラインでは、従来の地理的優先順位に基づく配分方法に代わり、患者の医療的な緊急度や予測される生存期間、ドナーとの適合性などの他の要素を総合的に評価する「複合配分スコア(Composite Allocation Score;CAS)」が導入された。 Raddawi氏らは今回の研究で、肺移植待機リスト登録患者の転帰が、2017年以前と地理的範囲が拡大された2017年以降(2017年11月〜2023年3月)、およびCASが導入された2023年以降(2023年3月〜2024年3月)でどのように変化したかを調査した。 その結果、待機リスト登録患者のうち待機中に死亡またはリストから除外された割合(以下、待機中の死亡/除外率)は、2017年以前で11.2%であったのが、2017年以降では8.4%、2023年以降では4.1%にまで低下したことが明らかになった。このような死亡/除外率の改善は、特に医療的な緊急度が最も高い上位5%の患者で顕著であり、待機中の死亡/除外率は2017年以前で34.5%であったのが、2017年以降では22.2%、2023年以降では6.5%にまで低下していた。 Raddawi氏は、「われわれが臓器配分システムに変更を加える際には常に、特に重症患者の転帰が確実に改善されるようにしたいと考える。今回の研究結果は、肺移植が正しい方向に進んでいることを裏付けるものだ」と述べている。同氏はまた、「現行のシステムが、医療的な緊急度などさまざまな要素に重点を置いていることを考えると、待機リストに登録されている重症患者の死亡率が低下するのは当然のことだが、それでも実際に低下した数字を見るのは喜ばしいことだ」と語っている。 研究グループは、臓器提供のスコアリングで考慮される特定の要素が他の要素よりも良い転帰につながるのかどうかを確認するために、今回の結果をより詳細に調べる予定だとしている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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ビタミンD3は生物学的な老化を抑制する?

 ビタミンD3サプリメント(以下、サプリ)は、本当に「若返りの泉」となって人間の生物学的な老化を遅らせることができる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。ビタミンD3を毎日摂取している人は、染色体の末端にありDNAを保護する役割を果たしているテロメアの摩耗が抑えられていたことが確認されたという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院予防医学部門長のJoAnn Manson氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Clinical Nutrition」に5月21日掲載された。 靴ひもの先端をカバーするプラスチック製の覆いに例えられるテロメアは、加齢とともに劣化する。そのため研究者は、出生から経過した年数に基づく暦年齢ではなく、実際に体がどれだけ老化したかを表す生物学的年齢の指標としてテロメアを用いている。 この臨床試験では、ビタミンD3サプリおよびオメガ3脂肪酸サプリの効果の検証を目的とした大規模臨床試験であるVITAL試験(試験参加者2万5,871人)のデータが用いられた。VITAL試験では、試験参加者がビタミンD3(1日2,000IU)またはオメガ3脂肪酸(1日1g)のサプリを毎日摂取する群にランダムに割り付けられていた。今回は、VITAL試験参加者のうち、試験開始時とサプリの摂取開始から2年後および4年後にテロメアの長さが評価された1,054人を解析対象とした。研究グループによると、テロメアが短くなると遺伝子の安定性が低下し、がんや心疾患、死亡、慢性疾患のリスクが高まると考えられている。 臨床試験からは、ビタミンD3サプリの摂取群で、プラセボ摂取群と比べて4年間のテロメア短縮が有意に抑制されていたことが明らかになった。一方、オメガ3脂肪酸摂取群では、テロメアの長さに対する明確な効果は見られなかった。 研究論文の筆頭著者である米オーガスタ大学ジョージア医科大学のHaidong Zhu氏は、「今後さらなる研究が必要ではあるが、この結果は、特定の対象に絞ったビタミンDの補給が生物学的な老化のプロセスに対抗する有望な戦略となり得ることを示唆している」とマス・ジェネラル・ヘルスのニュースリリースの中で述べている。 ただし、まだビタミンD3の錠剤を買いだめするのは時期尚早だとManson氏らは警告するとともに、今回の試験で示されたポジティブな効果を、他の研究で検証する必要があるとの見解を示している。Manson氏は、「われわれは、今回の結果は有望であり、さらなる研究の実施に値するものだと考えている。ただし、ビタミンD摂取に関するガイドラインを変更する前に、再現性を確認することが重要だ」とWashington Post紙に語っている。また同氏は、ビタミンD3のサプリ摂取がテロメアに有益な影響をもたらす可能性はあるものの、健康的な食事や日常的な運動の代わりとして位置付けられるべきではないと強調している。 Manson氏は、「繰り返し指摘してきたが、重点を置くべきはサプリではなく、食事と生活習慣である」とWashington Post紙に語っている。その上で、「炎症レベルが高い人や、明らかに炎症に関連した慢性疾患のリスクが高い人などのハイリスク層では、特定のビタミンD3の補給が有益である可能性がある」と付け加えている。

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GLP-1受容体作動薬使用時にすべき生活習慣介入の優先事項とは

 肥満症の治療にGLP-1受容体作動薬が使用される際に、その効果を維持などするために患者の食事や運動など生活習慣に引き続き介入する必要がある。米国・タフツ大学フリードマン栄養科学政策学部のDariush Mozaffarian氏らの研究グループは、GLP-1受容体作動薬を使用する際に、食事内容や生活習慣介入での優先事項をアメリカ生活習慣病医学会、アメリカ栄養学会、肥満医学協会、および肥満学会の団体とともに共同指針として策定した。この指針はThe American Journal of Clinical Nutrition誌2025年5月29日号オンライン版に掲載された。GLP-1受容体作動薬の使用でも引き続き生活習慣介入は必要 研究グループは、GLP-1受容体作動薬を使用する際、食事による栄養摂取とほかの生活習慣介入に関する事項について文献を評価し、関連するトピック、優先事項、および新しい方向性を特定した。  主な結果は以下のとおり。・GLP-1受容体作動薬は臨床試験で体重を5~18%減少させているが、リアルワールドの分析ではやや低い効果を示し、複数の臨床的な課題が示されている。・安全性などの課題では、とくに消化器系の副作用、カロリー制限による栄養不足、筋肉や骨の減少、長期的なアドヒアランスの低さとその後の体重増加、高コストによる効果の低さがある。・多くの実践ガイドラインでは、肥満成人に対しさまざまな根拠に基づく食事療法と行動療法を推奨しているが、GLP-1受容体作動薬との併用は広く普及していない。・先述の課題に対応するための優先事項には以下の項目がある。(a)体重減少と健康に関する目標を含む患者中心のGLP-1受容体作動薬の導入(b)通常の食習慣、感情要因、摂食障害、関連する医療状態を含んだベースラインスクリーニング(c)筋力、運動機能、体組成評価を含む総合的な検査(d)社会的健康決定要因のスクリーニング(e)有酸素運動、筋力トレーニング、睡眠、精神的ストレス、薬物使用、社会的つながりを含む生活習慣の評価・GLP-1受容体作動薬使用中は、消化器系副作用への栄養的・医療的管理が重要であり、変化した食事の好みや摂取量への対応、栄養不足の予防、有酸素運動と適切な食事による筋骨格量の維持、補完的な生活習慣介入も不可欠である。・サポート戦略として、グループベースでの患者訪問、管理栄養士によるカウンセリング、遠隔医療およびデジタルプラットフォーム、「食事は薬」への啓発などの介入が挙げられる。・肥満の程度にかかわらず薬剤へのアクセス、食事と栄養への不安、栄養と調理に関する知識は、GLP-1受容体作動薬を用いた者に影響を及ぼす。・今後の研究の重点領域には、内因性GLP-1の食事による調節、アドヒアランス向上の戦略、使用中止後の体重維持のための栄養上の優先事項、組み合わせまたは段階的による集中的な生活習慣管理、臨床的肥満の診断基準が挙げられる。 以上から研究グループは、「エビデンスに基づく栄養と生活習慣の介入戦略は、GLP-1受容体作動薬による肥満治療における主要課題に対処する上で重要な役割を果たし、臨床医が患者の健康向上を促進する上でより効果的になることを可能にする」と結んでいる。

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わが国における単剤療法を考えるにはもう一段の考察も必要か?(解説:野間重孝氏)

 本論文は、PCI後の抗血小板療法において、DAPT終了後の維持戦略としてP2Y12阻害薬単剤療法がアスピリン単剤と比較して虚血イベント抑制において優れ、出血リスクも同等に保たれる可能性を、個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析によって明らかにしたものである。対象データはいずれも信頼できるRCTに基づいており、解析の設計と手法も洗練されている。近年積み重ねられてきたP2Y12阻害薬単剤療法の有効性に関する知見を、統合的かつ精緻に再検討した意義は十分に評価できると考える。 ただ、評者のような臨床の現場に長く関わってきた者の立場から見ると、今回示された結果は、すでに多くの医師たちが経験的に感じ取っていた傾向とおおむね一致しており、新たな方向性を提示するというよりは、既存の流れを整理・追認した印象を受けた。もちろん、エビデンスを体系的に裏付ける作業は臨床指針の基盤として欠かせないが、現場感覚としては「やはりそうだったか」と静かにうなずくような感覚に近いのではないだろうか。 一点、気になったのは、本研究においてP2Y12阻害薬が薬剤クラスとして一括りに扱われており、クロピドグレルとチカグレロルの違いが十分に掘り下げられていない点である。とりわけわが国においては、チカグレロルを巡ってPHILO試験などで有効性や忍容性に関する慎重な議論がなされてきた経緯があり、現在もその使用には一定の留意が払われている。P2Y12阻害薬の使用傾向にも、欧米と日本では明確な差があり、欧米ではACSを中心にチカグレロルの使用が広く浸透しているのに対し、わが国ではクロピドグレルとプラスグレルが主流であり、チカグレロルは限定的に用いられるにとどまっている。このような背景を踏まえると、クロピドグレルを中心とした国内のエビデンスを、そのままチカグレロルに拡張してよいかについては、やや議論の余地があるように感じた。 また、本研究が今後の治療方針やガイドラインの改訂に影響を与える可能性があることは容易に想像される。大規模なメタ解析が、科学的意義のみならず制度的な検討材料としても参照されるのは自然なことであり、それ自体は否定されるべきではない。しかし、抗血小板療法の選択は、患者の病態、出血リスク、服薬アドヒアランス、社会的背景など多くの要素を踏まえたうえでの個別最適化が求められる分野であり、1つの方向性のみが過度に強調されることで、現場の柔軟性が損なわれるようなことがあってはならないと思う。 本論文は、DAPT終了後の戦略としてP2Y12阻害薬単剤療法を考慮する妥当性をあらためて丁寧に確認した点で、診療上の安心感を与える結果であると同時に、制度設計を視野に入れたエビデンス整理の1つとしても受け止められるべきものだろう。大切なのは、このような研究成果を、現場の実感と折り合いをつけながら活用していく姿勢であり、形式的な統一に回収されることのない実践的知性こそが、今後の抗血小板療法の在り方を形作っていくことを評者は願うものである。

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治療法が大きく変化、アミロイドーシス診療ガイドライン8年ぶりに改訂

 『アミロイドーシス診療ガイドライン2025』が2024年12月に発刊された。2017年版から8年ぶりの改訂となるが、この間にアミロイドーシスの各病型の病態解明が進み、診断基準をはじめ、トランスサイレチン型(ATTR)アミロイドーシスに対する核酸医薬、ALアミロイドーシスに対する抗CD38抗体薬、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害および軽度の認知症に対する抗アミロイドβ抗体薬の発売など、治療法も大きな変化を遂げている。そこで今回、本ガイドライン作成委員長であり、アミロイドーシスに関する調査研究班1)を率いる関島 良樹氏(信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授)にアミロイドーシスの現状や診断方法、本書の改訂点などについて話を聞いた。次々と上市された薬剤、最新の診断フローチャートが疾患に光を灯す アミロイドーシスとは、アミロイドの沈着により臓器障害を引き起こす疾患群であり、その原因となる前駆蛋白質についてはヒトでは42種類が同定されている。また、前駆蛋白質の産生部位とアミロイドの沈着部位との関係により、全身性と限局性に分類される。このほかにも病型によって有病率や診断方法、患者・家族へのアドバイスなどが異なることから、本書を「第I章 アミロイドーシスの診断の基礎知識」「第II章 病型別アミロイドーシス最新診療ガイドラインとCQ」の2本柱で章立て、各々が必要なページにたどり着けるような構成になっている。第I章では各冒頭に要約を示しながらアミロイドーシスの基礎知識を解説。第II章では代表的なアミロイドーシスをピックアップし、各病型(診療科別)のClinical Question、それぞれの患者数・有病率、どんな症例で疑うべきか、診断や治療について言及している。 本書の大きな改訂点の1つとして、関島氏は「2017年版は学会承認を得たものではなかったが、今回は5学会(日本アミロイドーシス学会、日本神経学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本血液学会)の承認を得て作成した」と説明。これまでは各学会で個別のガイドラインを作成していたが、アミロイドーシスはアミロイドがさまざまな臓器に沈着し、特異的な所見に乏しい症例も少なくない。「全診療科の先生方に、本症を疑って鑑別診断にあたることが求められるため、全臓器横断的なガイドラインを目指した」ともコメントした。本書のp.17~18には、研究班で作成した最新版の診断基準を反映したアミロイドーシス診断のためのフローチャートが示されているので、患者のどこか(心臓、腎臓、消化管、手根管、関節・靭帯、眼、皮膚、各臓器の腫瘤性病変など)にアミロイドーシスの疑いを持ったら、このフローチャートをぜひ思い出してほしい。 また、診断や治療におけるこの8年の発展は目まぐるしく、各疾患の治療項目も充実した。治療において最も大きな変貌を遂げたのはATTRアミロイドーシスである。ATTRアミロイドーシスは遺伝性(ATTRv)と野生型(ATTRwt)に分類され、主な障害は末梢神経障害(ATTR-PN)と心筋症(ATTR-CM)である。たとえば、タファミジス(商品名:ビンダケル/ビンマック)は、ATTRvアミロイドーシスによる末梢神経障害(ATTRv-PN)の進行抑制に加え、2019年にATTR型心アミロイドーシス(ATTR-CM、野生型および変異型)に適応が拡大。核酸医薬(siRNA)であるパチシラン(同:オンパットロ)やブトリシラン(同:アムヴトラ)はATTRv-PN(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)治療薬として承認されている。さらに、ADによる軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制に対する抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ[同:レケンビ]、ドナネマブ[同:ケサンラ])も2023年以降に相次いで承認された。患者を“見て診る”、全医師が特徴をつかみ潜在患者発掘へ しかし、これらの治療薬をうまく使いこなしていくには、診断に至るまでの問診や身体診察が鍵となる。アミロイドーシス自体はさまざまな臓器や血管に沈着することから、すべての診療科に関わる病気であり、とくにADや近年注目を浴びているATTRwtアミロイドーシスは日本国内に数百万人が潜在患者として存在することから、「アミロイドーシスはコモンディジーズである」と話す。「10年前の全国調査1)では、ATTRwtアミロイドーシスの患者数は50人程度だったのが、今は約3,000人に上る。疾患別にみると、心不全患者の中には5万人以上の潜在患者がいると言われ、手根管症候群300万人のうち100万人以上がATTRwtが原因ではないかとわれわれは推測している。ATTRwtは50歳以上の男性、60歳以上の女性で多いため、整形外科領域では該当患者の手根管症候群の手術の際にアミロイド沈着の有無を検査することが浸透し始めている」と説明した。 このような状況を踏まえ、同氏は専門性に応じた理解が必要であるとし、「一般内科医の皆さまには、心不全、脊柱管狭窄症、手根管症候群といったよくある疾患にアミロイドーシスが潜んでいること、息切れや動悸などの心不全症状を生じる前から手足のしびれや痛み、物がつまみにくいなどの運動障害が先行していることがある点に注意してほしい。そして、認知症の約7割がAD2)であることを踏まえ、抗アミロイドβ抗体薬の適応となる軽度認知機能障害(MCI)から軽度の認知症の時期に脳神経内科などの専門科への紹介をしていただくことが重要」とコメントした。 一方、専門医に向けては診療科ごとに以下のような特徴を示した。――――――――――――――――――〇循環器:心アミロイドーシス(ATTRv、ATTRwt、AL)のうち、ATTRwtはとくに頻度が高く男性に多い。〇血液内科:ALアミロイドーシスでは、眼の周囲の出血によるラクーンアイサインがみられる。〇腎臓内科:蛋白尿の原因疾患としてALアミロイドーシスを鑑別に挙げる。長期透析患者で、手根管症候群,ばね指、破壊性脊椎関節症などの骨関節症状を呈する場合、Aβ2Mアミロイドーシスを考慮する。〇神経内科:成人発症の多発ニューロパチーの鑑別にアミロイドーシス(ATTRvおよびAL)を挙げる。高齢者の手根管症候群の主要な原因疾患としてアミロイドーシス(とくにATTRw)を考慮する。〇膠原病:関節リウマチなどで慢性炎症が持続する患者において、下痢や蛋白尿が認められた場合、血清アミロイドA(SAA)を前駆蛋白とするAAアミロイドーシスを鑑別に挙げる。―――――――――――――――――― このほかの特徴的な臨床所見として、「巨舌、上腕二頭筋の断裂(ポパイサイン)などがある。ポパイサインは、腱・靭帯アミロイドーシスによって上腕二頭筋の腱断裂が起こり、これにより上腕二頭筋が短縮して力こぶのように見える。ATTRwtアミロイドーシスで高頻度に見られるので注意してもらいたい」と説明した。 最後に同氏は「現在、アミロイドーシスは治療薬開発も世界的に盛んで、国内では今夏にSiRNA製剤ブトリシランにATTR-CMの適応追加が予定されているなど、目が話せない領域だ。ゲノム編集薬を用いた治療においてもアミロイドーシスが先駆けとなっていることから、3年後に予定している次回改訂ではこれらの知見を盛り込みたい」と締めくくった。

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重症患者の経腸栄養、タンパク質を増量しても予後は改善せず/JAMA

 集中治療室(ICU)入室中の重症患者にタンパク質含有量の高い経腸栄養剤(100g/L)を用いても、通常(63g/L)と比較して90日時点の生存期間などは改善されなかった。オーストラリア・アデレード大学のMatthew J. Summers氏らが、同国およびニュージーランドの8施設のICUにて実施したクラスター無作為化非盲検クロスオーバー試験の結果を報告した。ガイドラインでは、重症患者におけるタンパク質含有量の高い経腸栄養が推奨されているが、患者のアウトカムに及ぼす影響は不明であった。JAMA誌オンライン版2025年6月11日号掲載の報告。タンパク質含有量100g/L vs.63g/Lを比較 研究グループは、経腸栄養におけるタンパク質強化が、生存日数と入院回避期間の延長に結び付くかを検証する目的で、4施設が2022年5月23日より、4施設が2023年8月23日よりそれぞれ12ヵ月間患者を募集し、2023年11月21日に最終追跡調査を行った。 対象患者は16歳以上で、ICUに入室し経腸栄養剤を処方された患者、または入院中にICUに入室し初めて経腸栄養剤を処方された患者とした。 各ICUは、12ヵ月間にわたり3ヵ月ごとに、タンパク質含有量の高い経腸栄養剤(タンパク質100g/L)(タンパク質強化群)→通常の経腸栄養剤(タンパク質63g/L)(通常群)を交互に、またはその逆の順で交互に治療を提供するよう、無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、90日時点の対象病院への非入院生存期間、副次アウトカムは90日時点の生存者における対象病院への非入院日数、90日時点での生存率、侵襲的人工呼吸を受けた患者における侵襲的人工呼吸期間、ICU入室期間および入院期間(生存退院までの期間)、気管切開・挿管および新規腎代替療法の実施率、ならびに退院先であった。主要評価項目に差はなし 計3,397例が登録された。年齢中央値は61歳(四分位範囲[IQR]:48~71)、男性が2,157例(64%)であった。 90日時点の対象病院への非入院生存期間中央値(IQR)は、タンパク質強化群で62日(0~77)、通常群で64日(0~77)であり、補正後の群間差の中央値は-1.97日(95%信頼区間[CI]:-7.24~3.30)であった(p=0.46)。 90日時点で、タンパク質強化群では1,681例中1,221例(72.6%)が生存し、通常群では1,716例中1,269例(74.0%)が生存していた(リスク比:0.99、95%CI:0.95~1.03)。 副次アウトカムに関する群間差は、生存者における非入院日数中央値の差が0.01日(95%CI:-1.94~1.96)、平均侵襲的人工呼吸期間の差が6.8時間(95%CI:-3.0~16.5)であった。また、ICU生存退室までの期間のハザード比は0.93(95%CI:0.88~1.00)、生存退院までの期間については0.96(0.90~1.02)、気管切開術のリスク比は1.15(0.66~2.01)、新規腎代替療法のリスク比は0.97(95%CI:0.81~1.16)であり、退院先は両群で類似していた。

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静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」【最新!DI情報】第41回

静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」今回は、経口避妊薬「ドロスピレノン(商品名:スリンダ錠28、製造販売元:あすか製薬)」を紹介します。本剤は単剤型プロゲスチン製剤であり、従来の混合型経口避妊薬よりも静脈血栓塞栓症のリスクが少なく、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬です。<効能・効果>避妊の適応で、2025年5月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1錠を毎日一定の時刻に白色錠から開始し、指定された順番に従い28日間連続経口投与します。以上28日間を投与1周期とし、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。なお、服用開始日は、経口避妊剤を初めて服用する場合、月経第1日目から開始します。<安全性>副作用として、不正性器出血(月経中間期出血、異常子宮出血)(89.9%)、下腹部痛(13.4%)、月経異常(過少月経、過長過多不規則月経、重度月経出血)(14.9%)、頭痛(16.3%)、腹痛(12.3%)、乳房不快感、悪心、下痢、ざ瘡(いずれも5%以上)、無月経、卵巣嚢胞、子宮頸部上皮異形成、子宮筋腫、カンジダ症、外陰部炎、性器分泌物、乳頭痛、乳腺良性腫瘍、乳腺嚢胞症、傾眠、いらいら感、不安感、めまい、片頭痛、上腹部痛、嘔吐、胃腸障害、発疹、そう痒症、背部痛、倦怠感、浮腫、発熱、体重増加(いずれも1~5%未満)、陰部そう痒症、子宮ポリープ、外陰腟痛、卵巣腫大、乳房痛、抑うつ、便秘、消化不良、腹部膨満、口内炎、紅斑、皮膚乾燥、関節痛、肋軟骨炎、貧血、肝機能検査値異常(いずれも1%未満)、リビドー減退、高カリウム血症、ほてり(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1. この薬は、妊娠を防ぐための経口避妊薬です。2. 毎日1錠、決まった時間に服用することで、排卵を抑えたり、子宮内膜や子宮頸管の状態を変化させたりして、妊娠を防ぎます。3. この薬は、喫煙者や高血圧の人など、従来の避妊薬が使えなかった人にも適しています。4. 毎日一定の時刻に白色錠から服用を開始し、指定された順番に従い28日間服用してください。5. 1日(24時間以内)の飲み忘れがあった場合、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。6. 2日連続して飲み忘れた場合は、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を1錠服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。7. 2日以上連続して飲み忘れた場合は妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用し、必要に応じて医師に相談してください。<ここがポイント!>現在、日本で使用されている経口避妊薬の主流は、低用量エストロゲンとプロゲスチンを配合した混合型経口避妊薬(Combined Oral Contraceptives:COC)です。しかし、COCに含まれるエストロゲンには、静脈血栓塞栓症をはじめとする血栓症のリスクがあることが知られています。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、プロゲスチン単剤の経口避妊薬(Progestin-Only Pill:POP)は、COCと比較して静脈血栓塞栓症のリスクが低く、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬とされています。本剤は、ドロスピレノン(DRSP)4mgを含有する国内初のPOPであり、排卵の抑制、子宮内膜の菲薄化、子宮頸管粘液の高粘稠による精子の侵入障害などにより避妊効果を発揮します。避妊を希望する日本人女性を対象とした国内第III相臨床試験(LF111/3-A試験)において、13周期投与期終了時の暴露周期(3,319周期)の間に1例が妊娠し、主要評価項目とされた全般パール指数※は0.3917(95%信頼区間[CI]:0.0099~2.1823)でした。95%CIの上限が閾値である4下回ったことから、本剤の有効性が検証されました。なお、妊娠例に関して、受胎推定日は未服薬期間内と判断されています。※パール指数(Pearl index):100人の女性がその避妊法を1年間(13周期)用いたときの妊娠数(対100女性年)日本で発売されているCOCは、血栓症に関連する既往歴や現病歴を有する患者は禁忌でしたが、本剤では禁忌に該当しません。本剤では禁忌に該当しない血栓症関連の疾患などは以下のとおりです。血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患またはその既往歴のある患者35歳以上で1日15本以上の喫煙者血栓症素因のある女性抗リン脂質抗体症候群の患者大手術の術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内および長期間安静状態の患者脂質代謝異常のある患者高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)

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第247回 骨太の方針2025が閣議決定、賃上げ促進と病床削減が焦点に/内閣

<先週の動き> 1.骨太の方針2025が閣議決定、賃上げ促進と病床削減が焦点に/内閣 2.マダニ媒介SFTSで獣医師が死亡、医療者の感染リスクも顕在化/三重県 3.「がん以外」にも広がる終末期医療、腎不全にも緩和ケアを検討/厚労省 4.医療機関倒産が急増、報酬改善なければ「来年さらに加速」の懸念/帝国データ 5.急性期から地域包括医療病棟へ移行加速、診療報酬改定の影響が顕在化/中医協 6.「デジタル行革2025」決定、電子処方箋導入に新目標/政府 1.骨太の方針2025が閣議決定、賃上げ促進と病床削減が焦点に/内閣政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針2025)を閣議決定し、来年度以降の予算編成や制度改革の方向性を示した。今回の方針では、医療・介護・福祉分野における構造改革と現場の処遇改善が柱となり、「成長と分配の好循環」に向けた具体策が明示された。政府は初めて、2029年度までに実質賃金を年1%引き上げる数値目標を掲げ、医療・介護・保育・福祉分野の処遇改善を「成長戦略の要」と位置付けた。これに伴い、公的価格である診療報酬や介護報酬の引き上げを示唆し、2026年度の報酬改定に大きな影響を与える可能性がある。また、これまで「高齢化による自然増」に限定していた社会保障費の算定に、今後は物価・賃金動向を加味する方針を打ち出した。これにより、物価高や人材確保に悩む医療・介護機関にとっては、経営基盤の安定化につながるとみられる。その一方で、保険料負担とのバランスが課題となる。地域医療体制の再編も加速され、地域実情を踏まえつつ、2027年度施行の新地域医療構想に合わせて、一般・療養・精神病床の削減が明記された。とくに中小病院や療養型施設に対し、再編や役割分担が求められる。負担の公平性を重視し、医療・介護の応能負担の強化も盛り込まれた。金融所得を含めた新たな負担制度の検討が進められており、今後の制度設計に注目が集まっている。また、2026年度以降、市販薬と類似する医師処方薬(OTC類似薬)を保険給付から除外する見直しが進められ、診療所経営にも影響が及ぶ可能性がある。さらに、医療の効率化を図るため、医療DXやデータ活用が推進され、電子カルテの標準化やPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)との連携が進展される見込みとなった。地域単位で薬剤選定を標準化する「地域フォーミュラリ」の全国展開も盛り込まれた。今回の方針は、賃上げによる持続可能な成長と、医療・福祉分野の構造改革を同時に進めるものであり、制度改革の実行力が問われる局面となる。 参考 1)経済財政運営と改革の基本方針 2025~「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ~[全文](内閣府) 2)ことしの「骨太の方針」決定 経済リスク対応やコメ政策見直し(NHK) 3)不要な病床の削減を明記、骨太方針決定 社会保障費「経済・物価動向等」反映へ(CB news) 4)骨太の方針、社保に物価・賃上げ反映 家計負担増す可能性(日経新聞) 5)実質賃金年1%上昇、初の数値目標 骨太の方針を閣議決定(毎日新聞) 2.マダニ媒介SFTSで獣医師が死亡、人獣共通感染症への警戒強まる/三重県マダニ媒介感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染拡大が続いており、医療従事者にも重大な影響を及ぼしている。6月、三重県内でSFTS感染の猫を治療していた高齢の獣医師が感染・死亡する事例が確認された。ダニ刺咬痕は確認されておらず、唾液や血液を介したペット由来の感染が疑われている。これは、2024年の医師への感染に続く人獣間感染の深刻な事例であり、日本獣医師会は防護対策の徹底を求めている。SFTSは6~14日程度の潜伏期を経て発熱、嘔吐、下痢、意識障害、皮下出血など多彩な症状を呈し、致死率は最大30%に達する。とくに高齢者では重症化リスクが高い。現在、有効な抗ウイルス薬としてファビピラビル(商品名:アビガン)が使用できるが、ワクチンは存在しない。マダニ感染症はSFTSのほかにも日本紅斑熱やツツガ虫病があり、いずれも西日本を中心に発生が集中している。2025年も岡山・鳥取・香川・静岡・愛媛など複数県で感染例が報告されており、死亡例も出ている。春から秋にかけてマダニの活動が活発化し、農作業やアウトドア活動での感染リスクが高まる。また、SFTSは犬・猫などのペットがウイルス保有宿主になり得ることが明らかになっており、医療者・獣医師・飼い主ともに十分な感染予防対策が求められる。ペットの室内飼育、防虫剤使用、皮膚・粘膜の保護に加え、咬傷・体液接触時の手指衛生とPPE(個人防護具)の着用が推奨される。今後、診療現場でもマダニ媒介疾患への警戒を強化し、野外活動歴や動物との接触歴を含めた問診と初期対応の徹底が重要である。 参考 1)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について(厚労省) 2)ネコ治療した獣医師死亡 マダニが媒介する感染症の疑い 三重(NHK) 3)マダニ感染症で死亡の獣医師「胸が苦しい、息苦しい」訴え緊急搬送 発症前に感染ネコ治療(産経新聞) 4)マダニにかまれ「日本紅斑熱」60代男性感染 2025年8人目 屋外でのマダニ対策呼びかけ(静岡放送) 5)マダニにかまれ、感染症悪化で死亡事例も 今が活動期 アウトドアレジャーでの警戒を(産経新聞) 6)ダニ媒介による感染症「日本紅斑熱」「SFTS」の患者が多発 県が注意喚起(山陽放送) 7)西日本中心に“マダニ”に注意 住宅街の茂みでパンパンに膨らんだマダニも…マダニが媒介する致死率10%超えの感染症SFTSとは?50歳以上は特に重症化しやすいか(あいテレビ) 3.「がん以外」にも広がる終末期医療、腎不全にも緩和ケアを検討/厚労省厚生労働省は、緩和ケアの対象を腎不全患者にまで拡大する方針で検討を開始した。これまで緩和ケアは、がん・エイズ・末期心不全の患者を対象としてきたが、透析継続が困難になった腎不全患者においても激しい身体的・精神的苦痛が生じるケースが多く、医療現場から対応拡充を求める声が高まっていた。背景には、慢性透析患者が年々増加し、2023年には全国で約34.4万人に達し、年間3.8万人が死亡している現状がある。透析中止に際しては「人生で最も激しい痛み」と表現されるほどの苦痛を伴うこともありながら、現在の診療報酬制度では緩和ケアの加算対象から除外されており、患者は十分な医療的支援を受けられていない。こうした事態を受け、自民党の有志議員らは5月に提言を厚労省に提出。患者の尊厳を守る終末期医療の実現に向け、在宅医療体制の整備、医療用麻薬の使用拡大、関連学会によるガイドラインの整備、モデル地域の創設などを提案した。これを受け厚労省は、2025年の「骨太の方針」に腎臓病対策として盛り込み、次期診療報酬改定を視野に対応を進める見通しだ。日本透析医学会も2020年以降、緩和ケアの必要性を強調しており、透析の見合わせ段階だけでなく、意思決定前の段階でも継続的なケアの必要性を提唱。今後は腎不全患者への緩和ケア提供を制度的に後押しする議論が本格化する。 参考 1)腎不全患者に緩和ケア拡大 透析困難時の苦痛軽減(東京新聞) 2)腎不全患者に緩和ケア拡大 透析困難時の苦痛軽減 厚労省検討、骨太反映へ(産経新聞) 3)がん以外にも緩和ケアを 透析医療へ拡大訴え 学会や国で議論始まる(共同通信) 4)わが国の慢性透析療法の現況(日本透析医学会) 4.医療機関倒産が急増、報酬改善なければ「来年さらに加速」の懸念/帝国データ2025年に入って、わが国の医療機関が前例のないペースで倒産または廃業している。帝国データバンクの調査によれば、1~5月だけですでに倒産が30件、廃業・解散などが373件に達し、年間では合計1,000件に迫る勢いだ。これは2024年の過去最多記録(723件)を大幅に上回る見通しであり、医療提供体制の根幹が揺らぎ始めている。背景には、医療機器や光熱費などの物価上昇に対して、2024年度の診療報酬改定(+0.88%)が極めて抑制的だったことがある。また、医師の働き方改革により、大規模病院を中心に残業代負担が急増し、経営を圧迫している。さらに、病院の老朽化も深刻で、法定耐用年数(39年)を迎える施設が全国の約8割に及ぶ中、建設費の高騰により建て替えを断念せざるを得ない事例が増えている。中小診療所や歯科医院では、経営者の高齢化や後継者不在が廃業の主因となっている。とくに同族経営が多い歯科では、承継が進まず「法人の限界」が露呈している。M&Aのニーズは高まっているが、財務状態の良い法人に買い手が集中し、赤字法人は買い手がつかず「廃業すらできない」という二極化が進行中だ。このような事業者の「自然消滅」は、厚生労働省が推進する地域医療構想の想定を超える速さで進行しており、病床再編の制度設計と現場の実態が乖離している。現状では、老朽施設への再生支援策も不十分で、制度疲労が顕在化している。今後の政策には、(1)診療報酬や補助金の実態に即した見直し、(2)施設再建支援、(3)M&Aによる出口戦略の明確化、(4)中山間地や離島での公的医療体制の再構築が求められる。医療機関の消滅は、単なる経営問題に止まらず、地域住民の医療アクセス権や医療安全保障そのものに関わる緊急課題である。 参考 1)病院と診療所の倒産件数、5カ月で前年上半期に並ぶ 計18件 東京商工リサーチ(CB news) 2)入金基本料「大幅引き上げを」公私病連が決議 病院経営の厳しさ訴える(同) 3)医療機関で倒産急増の深刻事態!今年は約1,000事業者が“消滅”か(ダイヤモンドオンライン) 5.急性期から地域包括医療病棟へ移行加速、診療報酬改定の影響が顕在化/中医協厚生労働省は、6月13日に中央社会保険医療協議会(中医協)・調査評価分科会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開き、地域包括医療病棟および回復期リハビリ病棟に関する実態調査結果の報告をもとに討議を行なった。2024年度診療報酬改定で新設された地域包括医療病棟入院料について、届け出病院の約4割が急性期一般入院料1からの転換で、制度設計通りの導入が進んだとされた。一方、届け出検討病院は全体の5%程度に止まり、とくに「毎日リハビリ提供体制の整備」が障壁との回答が多数を占めた。また、入院患者の診療実態にはばらつきがあり、輸血や手術を多数算定する病院と、誤嚥性肺炎など内科系疾患中心の病院とで医療内容に差がみられた。急性期病棟を手放した病院も多く、地域医療構造の再編に影響が及ぶ可能性もある。一方、回復期リハビリ病棟では、FIM(機能的自立度評価)利得がゼロまたはマイナスの患者が突出して多い施設が散見され、委員からは「異常」「詳細な分析を行うべき」との指摘が相次いだ。新設されたリハ・栄養・口腔連携体制加算の基準(ADL低下3%未満)に満たない施設が多いことも判明した。今後、診療報酬制度の実効性や適正な施設基準運用のあり方が問われる。 参考 1)令和7年度第3回入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚労省) 2)地域包括医療病棟、急性期一般1から移行が最多 全体の4割占める(CB news) 3)回復期リハ、FIM利得マイナスの患者が多くの病院に 「詳細な分析を」中医協・分科会(同) 6.「デジタル行革2025」決定、電子処方箋導入に新目標/政府政府は6月13日、「デジタル行財政改革取りまとめ2025」を決定し、医療・介護分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を中核に据えた改革方針を示した。背景には、急速な少子高齢化による医療資源の逼迫と、地域医療の持続可能性確保という喫緊の課題がある。今回の取りまとめでは、電子処方箋の導入促進とあわせて、医療データの二次利用(研究、医療資源の最適化など)に向けた制度整備が明記された。電子処方箋は2025年夏に新たな導入目標を設定し、病院・診療所での導入拡大を急ぐ。8月にはダミーコード問題への対応としてシステム改修が完了する予定であり、今後は診療報酬・補助金による導入促進も強化される。また、救急搬送時の医療情報共有を可能とする広島県発の連携PF(プラットフォーム)を全国展開する構想も示された。これにより、搬送の調整が迅速となり、災害時のEMIS連携やマイナンバーカードの活用による「マイナ救急」との統合も視野に入る。さらに、医療データの二次利用の円滑化に向けた法整備を進めるほか、AI活用のための透明性ある学習データの収集・連携環境の整備も進行中である。電子処方箋やリフィル処方の活用拡大も引き続き重要課題とされ、KPIの早期設定と次期診療報酬改定での反映が示唆された。これら一連の取り組みは、医療現場の業務効率化と質の高い医療の提供、さらには地域医療構想との接続にも大きな影響を及ぼす。医師にとっては、現場実装の速度と制度設計の動向に注視することが求められる。 参考 1)デジタル行財政改革 取りまとめ2025(デジタル行財政改革会議) 2)AIの学習データ、収集や連携促進 デジタル改革取りまとめ(日経新聞) 3)社会課題解決に医療データ活用 方針決定 法整備検討へ 政府(NHK) 4)電子処方箋、今夏に新たな目標設定 デジタル行革 取りまとめ、8月にシステム改修終了へ(PNB) 5)デジタル行財政改革会議(首相官邸)

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コンサルテーション―その1【脂肪肝のミカタ】第4回

コンサルテーション―その1Q. プライマリ・ケアから消化器科へのコンサルテーション基準は?代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は本邦で2,000万人以上と対象が多い疾患のため、医療経済面からも全症例に詳細な検査を行うことは困難である。消化器専門家の立場からは、肝がんの高危険群である肝臓の線維化進行が疑われる症例の拾い上げをすることが重要である1-3)。プライマリ・ケアにおいては、肝臓の線維化進展の簡便な指標としてFibrosis-4(FIB-4) indexや血小板数による消化器科へのコンサルテーションが勧められている1-3)。FIB-4 index1.3未満はかかりつけ医、1.3以上で消化器科へのコンサルテーションとしているが、高齢者では線維化進行度に寄らず全体的にFIB-4 index高値を示す傾向がある。欧州、米国共にガイドラインで65歳以上は2.0以上をコンサルテーションとしており1,2)。高齢者の多い本邦においても、消化器科コンサルテーション基準を変えていく必要がある(図)。(図)プライマリ・ケアから消化器科へのコンサルテーション画像を拡大する1)Rinella ME, et al. Hepatology 2023;77:1797-1835.2)European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-542.3)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020. 南江堂.

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軽症の免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎へのステロイド、3週vs.6週(PROTECT)/ASCO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が広く使用されるようになり、免疫関連有害事象(irAE)マネジメントの重要性が高まっている。irAEのなかで比較的多いものの1つに、薬剤性肺障害(免疫関連肺臓炎)がある。免疫関連肺臓炎の治療としては、一般的にステロイドが用いられるが、適切な治療期間は明らかになっていない。そこで、免疫関連肺臓炎に対するステロイド治療の期間を検討する無作為化比較試験「PROTECT試験」が本邦で実施された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、藤本 大智氏(兵庫医科大学)が本試験の結果を報告した。本試験において、ステロイド治療期間を3週間とする治療レジメンは、6週間の治療レジメンに対する非劣性が示されなかった。 軽症の免疫関連肺臓炎に対する治療について、各種ガイドラインに記載されているステロイド治療期間は無作為化比較試験によって評価されたものではなく、専門家の意見により4~6週間と設定されている。また、軽症の免疫関連肺臓炎は死亡率が低く、長期のステロイド治療はICIの効果を損なう可能性が考えられ、有害事象を増加させる懸念がある。そこで、PROTECT試験では、ステロイド治療期間を3週間に短縮することが可能であるか検討した。・試験デザイン:国内無作為化比較試験・対象:ICIを投与中または投与後に、Grade1/2の免疫関連肺臓炎(CTCAE第5版)が認められた患者・試験群(3週群):プレドニゾロンを3週間かけて漸減・中止 51例・対照群(6週群):プレドニゾロンを6週間かけて漸減・中止 55例(1例は解析から除外)・評価項目:[主要評価項目]治療成功割合(ステロイド治療開始から8週後までSpO2≧90%[room air]、かつステロイドの増量・延長が必要な免疫関連肺臓炎の悪化・再燃なし)[副次評価項目]ステロイド中止までの期間、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・全体として男性の割合が高く、3週群76%、6週群85%であった。喫煙歴のある患者も多く、過去喫煙または現喫煙の割合は、それぞれ88%、83%であった。PS0/1/2の割合は、それぞれ27%/65%/8%、20%/72%/7%であった。肺がんの割合は、それぞれ59%、56%であった。・主要評価項目の治療成功割合は、3週群66.7%、6週群85.2%であり、3週群の6週群に対する非劣性は検証されなかった(群間差:-18.5%、80%信頼区間[CI]:-29.0~-7.9、非劣性のp=0.629[非劣性マージン:-16%])。・試験全体期間中における肺臓炎の再燃または悪化割合は、3週群41.1%、6週群24.1%であり、3週群が多かった(p=0.046)。・ステロイド治療中止までの期間中央値は、3週群25日(95%CI:21~30)、6週群41日(同:41~42)であり、有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%CI:0.63~1.52)。3週群では肺臓炎の再燃や悪化により、ステロイドの再開や増量に至った患者が多く、両群の生存曲線は交差した。・OS中央値は両群共に未到達で、有意差はみられなかった(HR:1.03、95%CI:0.46~2.29)。・Grade3以上の有害事象の発現割合は、3週群12%、6週群24%であり、3週群のほうが少ない傾向にあった。ステロイドの中止や減量に至った有害事象、死亡に至った有害事象はいずれの群にも認められなかった。高血糖(35%vs.50%)、皮膚障害(2%vs.13%)は6週群に多い傾向にあった。・間質性肺疾患に関する簡易健康状態質問票「K-BILD(King’s Brief Intestinal Lung Disease)質問票」に基づくQOLは、3週群と比べて6週群のほうが良好な傾向にあった。 本結果について、藤本氏は「ガイドラインに採用されている6週間のステロイド治療レジメンは、エビデンスに基づく免疫関連肺臓炎に対する標準治療であることを支持するものである」とまとめた。

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副作用編:悪心(抗がん剤治療中の食欲不振対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第1回

抗がん剤治療中に悪心を生じた患者さんが、食欲不振などを主訴に紹介元であるかかりつけ医を受診する、というのはときに経験されるかと思います。今回は、診察の際に有用な抗がん剤治療中の悪心の鑑別のポイントや患者さんへの対応について紹介します。症例78歳、女性主訴食欲不振病歴1ヵ月前より進行胃がん(StageIV)に対して大学病院で緩和的化学療法が開始された。数日前から悪心が強く、1日の食事摂取量が半分程度となり、食欲不振を主訴にかかりつけ医(クリニック)を受診。ステップ1 悪心・嘔吐の原因は?がん患者の悪心の原因は多岐にわたります。抗がん剤治療中であれば、「抗がん剤のせいかも?」とすぐに考えてしまいがちですが、他の要因も含めて押さえておきたいポイントを挙げます。(1)CINV:Chemotherapy Induced Nausea and Vomiting薬物療法に起因する悪心は患者が最も苦痛と感じる代表的な副作用の1つです。軽度の悪心でも食欲不振につながり、QOLは著しく低下します。悪心・嘔吐の発現時期や状態により以下の定義があり、機序や背景を考慮した制吐療法が行われます。最近はガイドライン1)に沿ってリスクに応じた予防薬や頓服の制吐薬を処方されていることが多くなっています。画像を拡大する(2)腫瘍に起因する悪心腫瘍の局所進展による消化管閉塞(腹膜播種など)、幽門狭窄、胆汁逆流なども悪心・嘔吐の原因となります。これらは機械的刺激により胃内容物の排出障害を来し、食後悪心や胆汁性嘔吐を呈することがあります。とくに胃がんでは胃壁内伸展などによる胃の拡張不良を引き起こすことで、悪心・嘔吐を呈することがあります。鑑別にあたり、嘔吐の有無や吐物の性状、排便排ガスの有無が重要な所見となります。(3)電解質異常による悪心がん患者では、腫瘍随伴症候群、化学療法、脱水、腎機能障害などにより電解質異常を来しやすく、中枢性あるいは消化器機能の異常を介して悪心・嘔吐を引き起こすこともあります。とくに高Ca血症はがん患者の最大15~20%に認められる重要な腫瘍随伴症候群であり、しばしば「原因不明の悪心」の背景に潜んでいます2-4)。血清Ca値が11.0mg/dLを超えると症状が出やすくなり、13~14mg/dL以上では悪心、意識障害、脱水などの症候が顕著となります。画像を拡大する(4)中枢性要因(脳転移・頭蓋内圧亢進)による悪心がん患者における悪心の中で、中枢神経系の病変によるものは見逃されやすいものの、迅速な対応が必要な病態です。とくに、脳転移や髄膜播種は頭蓋内圧亢進や嘔吐中枢の直接刺激を介して、持続性の悪心や突発的な嘔吐を引き起こします。悪心以外にも頭痛やめまい、痺れや麻痺などの神経症状が伴うことがあり問診や身体診察が重要となります。ステップ2 評価ポイントは?前述のように、さまざまな要因が悪心・嘔吐の原因となります。クリニックなどの限られた検査環境では精緻な診断を行うことは難しいと思います。「これ!」といった正解はありませんが、私は以下のポイントで診察しています。画像を拡大するステップ3 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。内服抗がん剤を中止してよいか?診察時に患者さんより「つらいけど内服の抗がん剤を継続したほうがよいか?」と相談がある場合、基本的に内服を中止しても問題ありません。当院でも「食事が半分以上食べられない場合は、その日はお休みして大丈夫です」と説明しています。抗がん剤の再開については受診翌日に治療機関(大学病院や高次医療機関)へ問い合わせるよう、患者さんへ説明いただければ助かります。悪心に伴う食欲不振に対して輸液や制吐薬を投与してもよいか?軽度の悪心・食欲不振であれば輸液やメトクロプラミドの投与での支持的な治療を行っていただいて問題ありません。軽度の悪心のみでも十分な食事を数日間摂取できていない場合は電解質異常を来している可能性もあるため治療機関へご紹介ください。また、輸液を実施する場合、翌日も症状が改善しない場合は治療機関への受診を勧めてください。最後に患者さんの心理として、軽い症状で治療機関を受診することはハードルが高いと感じる方が多くいらっしゃいます。要因としては自宅から治療施設への移動距離や長い待ち時間があると思います(主治医に相談しにくいなどもあるかもしれませんが…)。今後、高齢化が進むことで交通手段が限られる患者さんが増え、抗がん剤治療も地域との連携が不可欠になってきます。当院においても地域のクリニックと医療連携を実施して軽症の副作用対応を実施いただくことで、うまく治療を継続できた症例やスムーズな緩和ケア移行に繋がるケースも少しずつ増えてきました。そのため、がん治療医である私達も詳細な診療情報の提供や綿密な医療連携を心がけています。かかりつけ医の先生にサポートしていただける「安心感」は闘病中のがん患者さんにとって大きな支えになります。抗がん剤の副作用症状を訴える患者さんの受診時にこのコラムが少しでも参考になれば幸いです。1)日本癌治療学会編. 制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版. 金原出版. 2023.2)Lafferty FW. J Bone Miner Res. 1991;6:S51-59.3)Ratcliffe WA, et al. Lancet. 1992;339:164-167.4)Stewart AF. N Engl J Med. 2005;352:373-379.講師紹介

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「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」新薬5剤を含む治療アルゴリズムの考え方は

 近年新規薬剤の発売が相次ぐアトピー性皮膚炎について、2024年10月に3年ぶりの改訂版となる「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」が発表された。外用薬のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬ジファミラスト、注射薬の抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブおよび抗IL-13受容体抗体トラロキヌマブ、経口JAK阻害薬ウパダシチニブおよびアブロシチニブの5剤が、今版で新たに掲載されている。ガイドライン策定委員会メンバーである常深 祐一郎氏(埼玉医科大学皮膚科)に、新薬5剤を含めた治療アルゴリズムの考え方について話を聞いた。いかに寛解導入に持っていくか、アトピー治療のPDCAサイクルの回し方 前版である2021年版のガイドラインで、治療アルゴリズムの骨格が大きく変更された。全身療法(注射薬と経口薬)の位置付けについて、寛解維持療法の選択肢に一部が加えられたほか、使用対象がその前の2018年版アルゴリズムの「重症・最重症・難治性状態」から「中等症以上の難治状態」に変更されている。そして各段階で「寛解導入できたか」という問いが加えられ、そのyes/noに応じて治療のPDCAサイクルを回していく構成となっている。この背景には、使用できる薬剤が増えたことが何よりも大きいと常深氏は話し、PDCAサイクルを回してこれらの薬剤を活用し、必ず寛解導入すること(Treat to Target)が重要とした。 アルゴリズムでは診断と重症度評価に続いて、「疾患と治療の目標(ゴール)の説明・共有」を行うことが推奨されており、末尾の“共有”という言葉が2024年版で追記された。常深氏は「説明は医療者から患者さんへの一方的なものだが共有は違う。この言葉が入ったことにはとても大きな意味があり、“とりあえず治療を始めてみましょう”ではなく“どんな状態をゴールとして目指すか”を共有したうえで治療をスタートしてほしい」とこの言葉の意図を説明した。寛解導入のメインはまず“ステロイドの適切な使用”で変わりない ジファミラストを含む非ステロイド系外用薬の選択肢が増えている。寛解導入での位置付けについて常深氏は「軽い皮疹の場合に非ステロイド系で寛解導入もありうるが、メインはやはりステロイド系外用薬」と話し、ランクの選択を含めてステロイドをどう適切に使えるかが非常に重要とした。「顔だから、年齢が低いからという理由で皮疹の重症度に見合わない弱いランクを選んでしまうケースがみられるが、重症度評価に応じたランクのステロイドを自信をもって選択してほしい」とし、落ち着いたらランクを下げるもしくは非ステロイド系に切り替えるといった使い方が望ましいと話した。  一方、ステロイド系外用薬は局所的な副作用が出るなど長期使用には向かないため、寛解維持の外用療法のメインとしては非ステロイド系外用薬が適しているが、常深氏は「非ステロイド系外用薬のなかでどの薬剤をどのタイミングで行うとよいかは明確になっていない」とし、「患者さんごとに使ってみて使いやすいものを選ぶといった考え方もよいのではないか」と柔軟な対応を提案した。全身療法の使いどころ、使い分けは? 全身療法は中等症以上の多くのアトピー性皮膚炎患者に対して推奨されており、「決してしきいの高いもの・最後の切り札ではない」と常深氏。「必ずしもとことん外用療法をやりきってから全身療法という考え方ではなく、患者さんが外用療法に疲れてしまったり時間をかけてQOLが下がってしまったりという状況になる前に、使用ガイダンスで示された条件を満たしたうえで1,2)早めに全身療法に切り替えるのも1つの選択肢」と私見を交えて解説した。 注射薬である抗体製剤(デュピルマブ、トラロキヌマブ、ガイドライン改訂後に登場したレブリキズマブ)の特徴として、常深氏は、投与前後の検査不要で安全性が高いこと、幅広い患者に有効性があることを挙げた。それに対して経口JAK阻害薬(バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブ)は、使用ガイダンス2)に示されるように投与後も画像を含めた検査が必要であり、効き始めは早いがレスポンダーとノンレスポンダーが分かれる傾向があるという。「経口がやはり楽という患者さんもいるし、数週間おきの注射のほうがむしろ楽という患者さんもいる」とし、上記の特徴も踏まえた選択が重要と話した。 抗体製剤やJAK阻害薬には治療費の問題がある。同氏は治療費がハードルになるケースでは、従来からの全身療法薬であるシクロスポリンをしっかりと使っていくことも大事と指摘。「悪くなりかけた際にシクロスポリンを使うという使い方で、短期の使用であれば副作用の可能性も低い」とした。アトピーはいまや“すごくよくなる”疾患、患者も医療者もイメージを変えていく必要 アトピー性皮膚炎には以前から“なかなか治らない疾患”というイメージが根強くあり、そもそも医療機関にかかっていない患者も多い。しかし有効な薬剤が複数登場し、適切な治療により、アルゴリズムで治療のゴールとして示された「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」状況を実現することができるようになっている。  常深氏は、医師を含む医療者が“アトピーは外用薬しかない”、あるいは“改善の難しい疾患だからあまりよくならなくても仕方がない”と思っていたらそこで治療は止まってしまうとし、「抗体製剤使用のハードルは決して高くなく、要件を満たせば1)クリニックでも使用できる。また自院で使用しなくても、必要性を感じた場合は専門医に積極的につないでほしい」と話した。

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統合失調症に対するコリン作動薬の有用性~RCTメタ解析

 統合失調症患者の3人に1人は、副作用や限られた有効性のため、従来の抗精神病薬による治療反応が不十分である。ムスカリン受容体とニコチン受容体を標的とし、統合失調症の病態生理に関連するコリン作動薬の機能不全を活用した、新たな治療法が注目されている。インド・All India Institute of Medical SciencesのAmiya Shaju氏らは、統合失調症に対するコリン作動薬の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2025年5月2日号の報告。 MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneのデータベースおよびレジストリから得られた臨床試験データをレビュー担当者が抽出した。研究の質は、バイアスリスクツールとランダム効果モデルによるエフェクトサイズの推定により評価した。PRISMAガイドラインに従い、必要に応じてサブグループ解析、メタ回帰分析、感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・30件のRCT(3,128例)において、コリン作動薬の単剤療法または併用療法の検討が行われていた。・コリン作動薬は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の総スコアに有意な改善は認められなかったが(標準化平均差[SMD]:-0.38、95%信頼区間[CI]:-0.93~0.18、エビデンスの確実性:中)、陰性症状スコアの改善が認められた(SMD:-0.42、95%CI:-0.59~-0.25、エビデンスの確実性:中)。・ムスカリン作動薬は、PANSSの総スコア(SMD:-0.57、95%CI:-0.72~-0.42)、陽性症状スコア(SMD:-0.58、95%CI:-0.73~-0.43)、陰性症状スコア(SMD:-0.40、95%CI:-0.59~-0.21)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア(SMD:-0.48、95%CI:-0.65~-0.31)の改善を示した。・ニコチン作動薬は、PANSSの陰性症状スコア(SMD:-0.28、95%CI:-0.47~-0.09)およびCGI-Sスコア(SMD:-1.31、95%CI:-2.38~-0.24)の改善に寄与した。・有害事象の発生は、実薬群でより高かった(オッズ比:1.21、95%CI:0.94~1.56)。・多くの研究はバイアスリスクが低く、エビデンスの質は非常に低~中の範囲であった。 著者らは「コリン作動薬は陰性症状を改善し、ムスカリン作動薬は症状全体および重症度の改善に有効であり、安全性においてもプラセボと比較し、有害事象の大きな差は認められなかった」と結論付けている。

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食道がんへの術後ニボルマブ、長期追跡でもベネフィット示す(CheckMate 577)/ASCO2025

 日本も参加するCheckMate 577試験は、術前化学放射線療法(CRT)+手術後に残存病理学的病変を有する食道がん/胃食道接合部がん(EC/GEJC)患者における、術後ニボルマブ投与の有用性をみた試験である。すでにプラセボと比較して無病生存期間(DFS)を有意に延長したことが報告されている(22.4ヵ月対11.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.69)1)。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、ベイラー大学医療センター(米国・ダラス)のRonan J. Kelly氏が、本試験の副次評価項目である全生存期間(OS)の最終解析結果およびDFSの長期追跡結果を報告した。・試験:多施設共同無作為化二重盲検第III相試験・対象:CRT後にR0切除、病理学的完全奏効とならなかったStageII/IIIのEC/GEJC患者・試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ240mg(2週ごと16週間)→ニボルマブ480mg(4週ごと最長1年)532例・対照群(プラセボ群):プラセボ(2週ごと16週間、その後4週ごと最長1年)262例・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]OS、無遠隔転移生存期間(DMFS)、安全性など・データカットオフ:2024年11月7日 主な結果は以下のとおり。・794例がランダム化され、ニボルマブ群とプラセボ群に2対1で割り付けられた。・追跡期間中央値78.3ヵ月におけるDFS中央値は、ニボルマブ群21.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~29.7)に対しプラセボ群10.8ヵ月(95%CI:8.3~14.3)であり、有意差のある改善を長期にわたって維持していた(HR:0.76)。・OS中央値はニボルマブ群51.7ヵ月(95%CI:41.0~61.6)に対しプラセボ群35.3ヵ月(95%CI:30.7~48.8)であり、ニボルマブ群で良好な傾向だったものの、統計学的有意差はなかった(HR:0.85、p=0.1064)。サブグループ解析ではPD-L1 CPSが1以上の群のHRは0.79だった一方、1未満の群ではニボルマブの優越性は示されなかった。・ニボルマブ群とプラセボ群の3年OS率は57%対50%、5年OS率は46%対41%だった。・DMFS中央値はニボルマブ群27.3ヵ月、プラセボ群14.6ヵ月だった(HR:0.75)。・有害事象は既報どおりであり、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 Kelly氏は「術後ニボルマブは、プラセボと比較して持続的な長期DFSのベネフィットとOSの改善を示した。安全性も長期にわたって耐容されるものだった。これらの結果は、この患者集団における術後ニボルマブの使用をさらに支持するものだ」とした。 現地で聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「すでにDFSの結果が発表されており、日本食道学会ガイドライン委員会からコメントも出されている2)。今回の発表でも、有意差はないものの著明なOSの延長がみられた。一方、本邦ではJCOG1109試験の結果から術前化学療法が標準治療とされており、術前CRT後のエビデンスである本試験をどのように外挿するかは議論のあるところだ。JCOG2206試験(術前化学療法後に根治手術が行われ、病理学的完全奏効とならなかった食道扁平上皮がんにおける術後無治療/ニボルマブ療法/S-1療法を比較する第III相試験)の結果に注目したい」とコメントした。

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外国人がやってきた【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第7回

外国人がやってきたPoint自らの偏見を自覚しよう。医師である前に、人間であれ。家族の支援を上手に活かそう。外国人を迎える環境を整えよう。症例「先生、患者さんのトリアージをしてきたのですが…」と、看護師さんが険しい表情で報告に来た。何でも患者さんはブラジル出身の労働者らしく、まったく日本語が話せないという。職場の友人が付き添いに来ているが、その人の日本語も覚束ない。身振り手振りを交え、辛うじて頭痛が主訴であることを突き止めたとのことだった。それを聞いた研修医は、俄然燃えてきた。「ブラジルの人ならサッカーの話とか盛り上がるだろうな。ちょうどブラジル代表のユニフォームが手元にあるから着ていこう。そして、ブラジルといえばサンバ! 故郷の音楽で迎えればきっと喜ぶぞ。問題はポルトガル語だけど、翻訳アプリもあるし、まぁ何とかなるだろう」。準備万端で患者さんを診察室へ案内すると、面食らった様子を見せたのも束の間、すぐに悲壮な表情で何かを叫び出した。ど、どうしたんだ? 早速翻訳アプリを起動! えーっと、何々? 「片頭痛の私にどぎつい色を見せたり、騒音を聞かせたり。一体何の嫌がらせだ!」なるほどねぇ…。おさえておきたい基本のアプローチ法務省出入国在留管理庁の統計によると、2020年6月現在でわが国に居住する外国人は289万人。日本の人口の2.3%を占める。100人とすれ違えば2人は外国人という割合だから、今やどの医療機関でも外国人の診療は避けては通れぬ課題だろう。そして、必ずといっていいほど立ちはだかるのがコミュニケーションの障壁だ。しかし、そもそもなぜわれわれはコミュニケーションがとれないとストレスを感じるのだろうか? それはとりもなおさず、良質な医療を提供できないからだ。すでに多くの研究で、理解度や満足度のような短期的効果から、意思決定や自己管理のような長期的効果、さらには費用対効果に至るまで、コミュニケーションは医療の質と密接に関連することが示されている。つまり、日々外国人の診療にストレスを感じているあなたは偉い! なぜなら、それは常に良質な医療を提供しようと努めている証拠だからだ。そして、そんな課題を克服すべく、外国語や異文化を積極的に学ぼうとしているあなたは、もっと偉い!とはいえ、独りよがりな学習に陥っていないかどうか注意が必要だ。Curtisらによると、安易な異文化学習はかえって偏見を助長するという。本来、患者一人ひとりには個別の対応が必要であるにもかかわらず、付け焼刃の知識をつけてしまうと、過度に単純化した見方をしてしまうためだ。外国人診療でも、患者中心の医療を忘れてはならないとの戒めと受け止めたい。何よりもまず大事なことは、1人の人間として患者を扱うことだ。患者の立場に立って考えてみよう。すると、患者も試行錯誤を重ねていることに思い至る。まず、異国の病院という未知の空間に勇気を振り絞って足を踏み入れる。そこで症状を伝えようとするが、今ひとつニュアンスが伝わらない。身振り手振りでようやく伝わったかと安堵する間もなく、母国の慣習とは相容れない対処法を提案されて仰天する。しかし、そこをこらえて甘んじて受け入れることもあるだろう。まして入院が必要となれば、煩雑な手続きに目を回しながら、職場にどう報告したものかと悩むことになり、そのストレスたるや想像するに余りある。このような患者の煩悶に注意を払い、理解に努め、解決に向かって適切に導こうと勤しむ姿勢こそが最も重要だ。患者の努力に無頓着では、信頼関係の構築など望むべくもない。診療とは、価値観が異なる患者と医療者の歩み寄りの過程である。そこに正解もゴールもない。相互理解へのたゆまぬ努力こそが意味ある治療体験へつながる鍵なのだ。外国人のケアは骨が折れるが、素晴らしくも喜びに満ちた得難い経験にもなりうる。ぜひとも前向きに取り組んでみよう。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「あの外国人、何を説明してもいちいち異論を挟むんだよ。まったく、清濁併せ呑む寛容さがあってほしいよね」はたして、寛容さが足りないのはどちらだろう。異文化に臨む態度や考え方の総体を、異文化適応力(cultural competency)という。その異文化適応力に最も必要なのは、異文化に関する知識でもなければ技術でもない。自らに内在する先入観や思い込みに気付き対処する力だ。考えてみれば、われわれは沢山の「当たり前」のなかで生きている。ただでさえ察しと思いやりの文化といわれ、数々の「当たり前」を求めることの多い日本社会。まして医療現場では、医療界独特のさまざまな「常識」を患者に強要していることは、外国人相手でなくても日々痛感していることだろう。せっかく身につけたコミュニケーション能力も、手前勝手な「当たり前」を患者に押しつけるための手段になっているようでは残念だ。患者は耐え難きを耐えながら、異国の医療と何とか折り合おうと必死なのだ。そこへ医療者が片務的な努力を押しつけているようでは相互尊重など夢のまた夢。素人の患者と専門家の医療者では、どうしても患者側の立場が弱くなりがちなのだから、医療者側がより多く譲歩すべきなのはいうまでもない。異文化よりもまず、自分の文化が及ぼす影響力を自覚すべきだ。そのためには、徹底的に自身を客観視する必要がある。自分自身が偏見を抱いていないか常に問いかけ、無自覚な「当たり前」の構造に敏感になろう。この現在進行形の内省過程が異文化適応力を醸成するのだ。Pointまず、自らの偏見に批判的であるべし「え、娘さんが近々ご結婚なさる? そんなことより、治療について説明させてください」異文化コミュニケーションで次に大事なのは、人間性だ。親切さや真摯さといった、人間として基本的な態度が欠かせない。患者を人として見ず、病のみに注目しているようでは逆効果。患者をかけがえのない1人の人間として敬い接するならば、あいさつはもちろん、笑顔を絶やさず、何気ない雑談にも共感し、文化の違いに触れた際には驚きと関心をもって傾聴したり質問したりすることになるだろう。些細な経験も共有し、患者のために時間を使い、積極的に患者から学ぼうとする。そんな医療者の心意気に触れたとき、患者は真剣に治療してもらえていると感じるものだ。Point医師である前に、人間であれワンポイントレッスン言語能力当然ながら、言語能力はコミュニケーションの重要な位置を占める。その言語能力でとくに注目すべき要素は、正確さ、明瞭さ、巧みさの3つだ。流暢に思えても内容が支離滅裂な場合もあるため、TOEFLなどの実力判定試験で客観的に正確さを評価しておくことが望ましい。明瞭さでは、ゆっくりと簡潔に話すことを心がけよう。巧みさとは、専門用語を使わずに話す、問題点を整理して説明する、さまざまな角度から表現するといった技術だ。スマホアプリの翻訳ツールを活用しようやっぱりきちんと会話したいよね。情報技術の長足の進歩により、今や手軽に翻訳ツールを利用できるようになった。スマホアプリの「Google翻訳」は100種類以上の言語を瞬時に翻訳できる代物だが、これが無料でインストールできるからありがたい。早口だったり複雑な文章だったりすると誤訳も起こりやすいが、前項で述べた明瞭さを心がければ、さほど問題なく使用できるだろう。Google翻訳話しかけてもよいし、カメラで言語に照らし合わせるだけで翻訳してくれるVoiceTra話しかけるだけで翻訳してくれる視聴ツール視聴覚に訴えるのも有効な手段だ。その場でイラストを描いて説明するのもよいし、今やインターネットを開けば、患者教育目的に有志が作成したパンフレットや動画が簡単に手に入る。これらを利用しない手はないだろう。非言語コミュニケーション表情や身振り手振りも情報伝達に欠かせない要素だ。ただ、同じ動作でも文化によって意味合いが異なることがあるので注意。たとえば適切な言葉が思い浮かばないときに宙を見上げたり手をグルグル回したりするのはわれわれ日本人にありがちな仕草だが、会話の内容と全く関係ないこれらの挙動は、外国人の目にはとても奇怪に映るという。場数を重ねて何度でも失敗しながら、少しずつ学んでは修正していきたい。teach-back患者の理解度を確かめる方法として、よく推奨されるのがteach-backだ。患者に、理解できたことを自分の言葉で説明してもらう。もし誤解があれば、その都度修正して説明し直してもらう。時間はかかるものの、効果は絶大だ。IAT(Implicit Association Test:潜在連合テスト)無意識の先入観を自覚するためのツールとして、異文化適応力の分野でしばしば取り上げられるのがIATだ。日本語版の無料サイトもあり、1テーマ当たり10分程度で判定できる。時間のあるときにでも挑戦してみてはいかが?チェックリスト残念ながら現段階では、異文化適応力のガイドラインもなければ、標準的な評価法も存在しない。しかしながら、独自のチェックリストを発案した論文があったので表に示した。ただし、これらすべてを完璧に実行するのは難しく、あくまでも努力目標だ。状況に応じて参照し、1つでも多く実践できるように頑張ろう。表 異文化適応力向上のためのチェックリスト1.まず、手を洗おう2.患者を1人の人間として扱おう3.自分自身が抱く無意識の先入観に気付こう4.患者に、自分の言葉で理解したことを説明してもらおう5.患者が自分自身の病状をより深く理解できるように支援しよう6.患者の家族・友人を歓迎しよう7.当該言語のキーフレーズを学ぼう8.可能な限り良質の翻訳をしよう9.流暢さよりも正確さを重視しよう10.翻訳者とともに働き学んでいこう11.患者の理解力に配慮しよう12.患者の権利と責任を知ろう13.質問を励行しよう14.患者の不満には真摯に向き合おう15.セカンドオピニオンを提案しよう16.異文化適応力に長けた施設環境を維持しよう17.患者満足度や転帰のデータを解析し、具体的な行動につなげよう18.患者満足度アンケートを漏れなく記入するよう励行しようWhite AA 3rd, Stubblefield-Tave B. J Racial Ethn Health Disparities. 2017;4:472-479. より作成知らなかったは落とし穴! こんな仕草はNGだところ変われば、ジェスチャー1つとっても大きく意味が変わる。誤解を生まないように、外国人との会話では、ジェスチャーは控えたほうがいいかもね。ブラジルでは親指を人差し指と中指の間にはさむ握りこぶしは「幸運を」という意味だけど、日本では性的な意味になってしまい、どっちもどっちなんだけどね。ピースサイン・逆ピースサイン「高校生か!」とツッコミを入れたくなるような写真の嬉しそうなポーズのピースサイン。日本や米国では平和のサインだけど、ギリシャでは「くたばれ!」という意味。掌を自分に向けた逆ピースサインは、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドでは「侮辱」の意味なんだ。いいねサイン親指をあげるサインはFacebookなどでも使われる「いいね」サイン。でも中南米、ギリシャ、イタリア、中東、西アフリカなどの一部では、中指を立てるのと同じ「侮辱」の意味になっちゃうのでやらないほうがいい。中東では「おまえの肛門に突っ込んでやる」という非常に下品な意味になっちゃう。親指を下向きにするのは、ブーイングのときにする侮辱の意味がある。元々は競技場で敗者を殺せの意味だったというから恐ろしい。OKサイン米国でのOKサインは、日本ではOKのみならず、お金を意味することがあるよね。ところが、ブラジル、スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、ロシアなどでは、性的な侮辱になる。フランスでは「役立たず、価値がない」という意味になる。そんなぁ、知らないよねぇ。小指を立てるサイン日本では「彼女」や「恋人」の意味になるが、中国では「出来の悪い奴」という意味になってしまう。それと対比して親指は「立派な人」という意味になる。手をあげる「おーい」、「はーい」など手をまっすぐあげる動作は日本ではよくするものの、ドイツではナチスドイツを想起させるため、子供のころから絶対やってはいけないポーズなんだ。勉強するための推奨文献自治体国際化協会. 多言語指さしボード.多言語指差しボードを置いておけば、外国人がどの言語を話すのか確認できる。英語、中国語(簡体字)、韓国語、ベトナム語、ネパール語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、タガログ語、インドネシア語、中国語(繁体字)、タイ語、ミャンマー語に対応。ピクトグラムもありわかりやすい。A4用紙にプリントアウトしておくと便利。厚生労働省. 「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」について.厚生労働省. 外国人向け多言語説明資料 一覧.厚生労働省, メディフォン. 外国人患者受け入れ情報サイト.Filler T, BMC Public Health. 2020;20:1013.Elana Curtis, et al. Int J Equity Health. 2019;18:174.Degrie L, et al. BMC Medical Ethics. 2017;18:2.White AA, Stubblefield-Tave B. J Racial Ethn Health Disparities. 2017;4:472-479.執筆

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H. pylori検査と除菌後胃がん、知っておくべき7つのQ&A

 胃がんの罹患者・死亡者数は減少傾向にあるものの、依然として日本人の主要ながんであり、2022年の罹患数は約12万例、死亡数は約4万例と報告されている1)。胃がんはその大部分がHelicobacter pylori(H. pylori)感染に起因するとされ、H. pyloriの診断と除菌治療は胃がんの1次予防として極めて重要である。日本では2013年より陽性判定者の除菌治療が保険適用となり、広く行われるようになっている。そして、H. pylori感染診断・除菌治療が一般的になった今、H. pylori検査や胃がんを巡る新たな問題が生じているという。H. pylori研究の第一人者である大分大学・兒玉 雅明氏に、今医療者が知っておくべきポイントを聞いた。Q1. 日本においてH. pylori感染率は低下しているか? 若年層においてH. pylori感染率は著しく低下している。30代でも20%を下回り、さらに10歳未満では10%を下回るなど欧米並みの水準だ。これは親世代も未感染または除菌済みであること、衛生状態の改善などによるものと考えられる。一方、60代以上では除菌例を含めた陽性率は7~8割と非常に高率で、2極化が進んでいる2)。Q2. H. pylori検査はどの方法を選ぶべきか? H. pylori感染検査には多くの方法があるが、目的に応じて使い分ける。 感染診断: 尿素呼気試験(UBT)、便中抗原測定法、迅速ウレアーゼ検査(RUT)、抗H. pylori抗体検査、血清ペプシノゲン検査(PG:補助的)など 除菌判定:UBT、便中抗原測定法、PG(補助的)など このうち、UBT、RUT、PGはPPI服用による偽陰性の可能性があるので検査の2週間前から休薬する必要がある。逆に言えばほかの検査ではPPI休薬の必要はない。この点は近年エビデンスが更新されており、昨年刊行した「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版」(日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会 編)にも明記された。Q3. H. pylori除菌治療は全員に必要か? 基本的に、陽性判定者全員に除菌治療が推奨される。日本では2013年以降、陽性者全員に保険適用で除菌治療ができるようになった。高齢であっても併存疾患により薬剤が服用できないなどの事情がない限り、除菌治療が推奨される。若年者の場合、何歳から除菌治療をすべきかについてはエビデンスが少なく、現時点で確定した推奨はできない。すでに複数の自治体が独自に中学生を対象に感染検査、除菌治療を行っている例もあり、こうした研究のエビデンスが蓄積されてゆけば、若年者の推奨年齢も定まってくるだろう。Q4. 除菌治療はどのレジメンを使うべきか? 現在の標準治療は、PPIもしくはPCAB(例:ボノプラザン)+アモキシシリン+クラリスロマイシン、2次除菌はPPIもしくはPCAB+アモキシシリン+メトロニダゾールの3剤併用療法となっている。PPIは現在4種類が存在しているが、直接比較で除菌率に差がないことが報告されている。一方で、PCABはPPIと比較して酸分泌抑制効果が有意に高いことが報告されており3)、こちらを優先して使っている医師が多いと考えられる。Q5. 除菌すれば胃がんリスクはなくなるか? 除菌が胃の活動性胃炎を抑え、胃粘膜萎縮と腸上皮化生を改善し、胃がん抑制効果を示すことは明らかになっている。しかし、リスクは低下するものの、ゼロにはならない。すでに萎縮や腸上皮化生が進行している場合、除菌後も発がんリスクが残存する。除菌後に胃がんが抑えられる割合は3分の1から4分の1という研究報告がある4)。よって、除菌後も定期的に内視鏡検査を受けることが必要だ。医師側も、除菌後の患者には除菌後も胃がんリスクがあることを説明し、定期的な受診を促してほしい。Q6. 除菌後胃がんのリスク因子は? ここ5年ほどで、胃がんにおけるH. pylori陽性胃がんと除菌後胃がんの割合が逆転し、すでに除菌後胃がんが大半を占めるようになっている。とくに除菌時に萎縮が認められた例、萎縮が強かった例において、除菌後胃がんのリスクが高いことがわかっている5)。除菌後10年が経過しても軽度から中等度の萎縮の症例において、悪性度の高いびまん型(diffuse-type)症例のリスク増も報告されている。しかし、萎縮の認められない症例であっても胃がんリスクを排除することはできないため、「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」では除菌後の全症例に対し、長期的なサーベイランスを行うことを推奨している。私の行った研究でも、フォローアップをしていなかった症例は、悪性度の高い胃がんの罹患リスクが高いことがわかっている6)。Q7. 除菌後胃がんの特徴は? H. pylori菌感染で胃粘膜にメチル化異常が生じる。除菌によりある程度低下するものの、完全にはなくならず、残ったメチル化異常の程度が発がんリスクと相関すると考えられる。時間が経ってからがん化した症例には、悪性度の高いものも含まれる。また、除菌後の胃がんは病変が小さく表層の胃炎様所見、腫瘍の境界が不明瞭など、内視鏡診断が難しいという特徴もあり、経験のある内視鏡医による診断が必要になる。まとめ・メッセージ H. pyloriの感染診断、除菌治療が一般化し、胃がんを取り巻く状況は大きく変わっている。年齢調整後の胃がんの罹患数・死亡数は減少傾向にあるものの、患者の多数を占める高齢者が増える状況においては、まだまだ油断のできない疾患だ。「除菌後」の時代を見据え、メチル化などのバイオマーカーを使ったリスク層別化、耐性菌対策、AIによる画像診断補助などの関連研究も進んでいる。ぜひ、ガイドラインや学会で、最新の情報をキャッチアップいただきたい。■参考文献 1)がんの統計2024/公益財団法人がん研究振興財団 2)Inoue M, Gastric Cancer. 2017;20:3-7. 3)Murakami K, et al. Gut. 2016;65:1439-1446. 4)Fukase K, et al. Lancet. 2008;372:392-397. 5)Take S, et al. J Gastroenterol. 2020;55:281-288. 6)Kodama M, et al. PLoS One. 2023;18:e0282341.

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生後3ヵ月未満児の発熱【すぐに使える小児診療のヒント】第3回

生後3ヵ月未満児の発熱今回は、生後3ヵ月未満児の発熱についてお話しします。小児において「発熱」は最もよく経験する主訴の1つですが、「生後3ヵ月未満の」という条件が付くとその意味合いは大きく変わります。では、何が、なぜ違うのでしょうか。症例生後2ヵ月、女児受診2時間前に、寝付きが悪いため自宅で体温を測定したところ38.2℃の発熱があり、近医を受診した。診察時の所見では、活気良好で哺乳もできている。この乳児を前にして、皆さんはどう対応しますか? 「元気で哺乳もできているし、熱も出たばかり。いったん経過観察でもよいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この場合は経過観察のみでは不十分であり、全例で血液検査・尿検査を行うことが推奨されています。また、必要があれば髄液検査や入院も考慮すべきです。そのため、適切な検査の実施が難しい施設であれば、専門施設への紹介が望ましいです。小児科では自然に行われている対応ですが、非小児科の先生にとっては馴染みが薄いかもしれません。これは、かつて医師国家試験で関連問題の正答率が低く採点対象外となり、その後出題が避けられた結果、臨床知識として広まりにくかったという経緯が背景にあります。なぜ、生後3ヵ月未満児では対応が異なるのか?乳児期早期は免疫機能が未熟であり、とくに新生児では母体からの移行抗体に依存しているため、自身の感染防御機能が十分ではなく、全身性の感染症に進展しやすいという特徴があります。さらに、この時期の感染症は症状が非特異的で、診察時に哺乳力や活気が保たれていても、重症細菌感染症が隠れていることがあります。生後3ヵ月未満の発熱児では1〜3%に髄膜炎や菌血症、9〜17%に尿路感染症が認められると報告されています。なお「発熱」とは、米国小児科学会(AAP)が2021年に発表したガイドラインでは、直腸温で38.0℃以上が基準とされています。腋窩での測定ではやや低くなる傾向があり、腋窩温では37.5℃以上を発熱とみなすことが多いですが、施設や文献によって差があります。また、診察時に平熱であっても、自宅での発熱エピソードがあれば評価の対象になることを念頭に置く必要があります。発熱を認めたらまず血液検査+尿検査日本小児科学会やAAPでは、生後3ヵ月未満の発熱児については全例で評価を行うことを推奨しています。日齢に応じて、血液培養、尿検査、髄液検査を行い、入院加療を考慮する方針です。とくに生後28日未満の新生児では、入院による経過観察が標準対応とされています。一例として、私が所属する東京都立小児総合医療センターにおける現時点でのフローを以下に示します。0〜28日の新生児は髄液検査を含めたwork upを行って全例入院し、各種培養が48時間陰性であることを確認できるまで広域な静注抗菌薬投与、29〜90日の乳児はバイタルサインや検査で低リスクであると評価されれば帰宅可能(36時間以内に再診)、それ以外は入院としています。東京都立小児総合医療センターのフロー※ANC(好中球絶対数)は白血球分画を参考にして算出施設ごとに細かな対応は異なるとは思いますが、以下のポイントは共通しているのではないでしょうか。生後3ヵ月未満では「元気そう」は安心材料にならない発熱を認めたらルーチンで血液検査・尿検査を行う生後28日未満では髄液検査、入院を推奨まずは細菌感染症を前提に対応するどこまでのリスクに備えるか成人や高齢者の診療と同様に、場合によってはそれ以上に小児の診療でも「重い疾患を見逃さないために、どこまで検査や治療を行うべきか」という判断がシビアに求められます。目の前の小児が元気そうに見えても、ごくまれに重篤な疾患が潜んでいることがある一方で、すべての小児に負担の大きい検査を行うことが常に最善とは限りません。こうした場面で重要になるのが、「どの程度のリスクを容認できるか」という価値観です。答えは1つではなく、医学的なリスク評価に加えて、家族ごとの状況や思いを丁寧にくみ取る必要があります。AAPのガイドラインでは、医療者の一方的な判断ではなく、保護者とともに意思決定を行う「shared decision-making(共有意思決定)」の重要性が強調されています。とくに腰椎穿刺の実施や、入院ではなく自宅での経過観察を選択する場合など、複数の選択肢が存在する場面では、保護者の価値観や理解度、家庭の状況に応じた柔軟な対応が求められます。医療者は、最新の医学的知見に基づきつつ、家族との信頼関係の中で最適な方針をともに選び取る姿勢を持つことが求められます。保護者への説明と啓発の重要性現在の日本の医療では、生後3ヵ月未満の発熱児では全例に対して検査が必要となり、入院が推奨されるケースも少なくありません。しかし、保護者の多くは「少し熱が出ただけ」と気軽に受診することも多く、検査や入院という結果に戸惑い、不安を強めることもあります。このようなギャップを埋めるには、まず医療者側が「生後3ヵ月未満の発熱は特別である」という共通認識を持つことが大前提です。また、日頃から保護者に対して情報提供を行っておくことも重要だと考えます。保護者が「発熱したら、入院や精査が必要になるかもしれない」とあらかじめ理解していれば、診察時の説明もよりスムーズに進み、医療者と保護者が同じ方向を向いて対応できるはずです。実際の説明例入院!? うちの子、重い病気なんですか?生後3ヵ月未満の赤ちゃんはまだ免疫が弱く、見た目に異常がなくても重い感染症が隠れていることがあります。とくにこの時期は万が一を見逃さないように“特別扱い”をしていて、血液や尿、ときに髄液の検査を行います。検査の結果によっては入院まではせず通院で様子をみることができる可能性もありますが、入院して経過を見ることが一般的です。生後3ヵ月未満児の発熱は、「見た目が元気=安心」とは限らないという視点をもち、適切な検査の実施あるいは小児専門施設への紹介をご検討いただければ幸いです。そして、どんな場面でも、判断に迷うときこそ保護者との対話が助けとなることが多いと感じています。そうした視点を大切にしていただけたらと思います。次回は、見逃せない「小児の気道異物」について、事故予防の視点も交えてお話します。ひとことメモ:原因病原体は?■ウイルス発熱児において最も一般的な原因がウイルスです。ウイルス感染のある3ヵ月未満児は重症細菌感染症を合併していなくても、とくに新生児では以下のウイルスにより重篤な症状を来すことがあります。単純ヘルペスウイルスエンテロウイルス(エコーウイルス11型など)パレコウイルスRSウイルス など■細菌細菌感染症のうち、最も頻度が高いのは尿路感染症です。このほか、菌血症、細菌性髄膜炎、蜂窩織炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎なども重要な感染源ですが、頻度は比較的低くなります。主な病原体は以下のとおりですが、ワクチン定期接種導入により肺炎球菌やインフルエンザ菌による重症感染症は激減しています。大腸菌黄色ブドウ球菌インフルエンザ菌B群連鎖球菌肺炎球菌リステリア など参考資料 1) Up to date:The febrile neonate (28 days of age or younger): Outpatient evaluation 2) Up to date:The febrile infant (29 to 90 days of age): Outpatient evaluation 3) Pantell RH, et al. Pediatrics. 2021;148:e2021052228. 4) Leazer RC. Pediatr Rev. 2023;44:127-138. 5) Perlman P. Pediatr Ann. 2024;53:e314-e319. 6) Aronson PL, et al. Pediatrics. 2019;144:e20183604.

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2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(後編)【心不全診療Up to Date 2】第2回

2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(後編)Key Point予防と早期介入の重視:心不全リスク段階(ステージA)に慢性腎臓病(CKD)を追加し、発症前の予防的アプローチを強化薬物療法の進展:SGLT2阻害薬が左室駆出率を問わず基盤治療薬となり、HFpEF/HFmrEFや肥満合併例への新薬(フィネレノン、インクレチン関連薬など)推奨を追加包括的・患者中心ケアへの転換:地域連携・多職種連携、急性期からのリハビリテーション、患者報告アウトカム評価、併存症管理を強化し、より統合的なケアモデルを推進前回は、改訂の背景、心不全の定義の変更、薬物治療について解説した。今回は、新規疾患概念とその治療や評価法にフォーカスして改訂ポイントを紹介する。4. 原疾患(心筋症)に対する新たな治療心不全の原因となる特定の心筋症に対して、近年の治療の進歩を反映した新たな推奨が追加された。とくに、肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy:HCM)、心アミロイドーシス、心臓サルコイドーシスに関する記載が更新されている1)。肥大型心筋症(HCM)症候性(NYHAクラスII/III)の閉塞性HCM(HOCM)に対して、心筋ミオシン阻害薬であるマバカムテンが新たな治療選択肢として推奨された。日本循環器学会(JCS)からはマバカムテンの適正使用に関するステートメントも発表されており、投与対象(LVEF≥55~60%、有意な左室流出路圧較差)、注意事項(二次性心筋症除外など)、投与中のモニタリング(LVEF低下時の休薬基準など)、併用薬(β遮断薬またはCa拮抗薬との併用が原則)、処方医・施設の要件が詳細に規定されている。マバカムテンはHCMの病態生理に直接作用する薬剤であり、その導入には厳格な管理体制が求められる。トランスサイレチン型心アミロイドーシス (ATTR-CM)ATTR-CMに対する新たな治療薬として、ブトリシラン(RNA干渉薬)およびアコラミジス(TTR安定化薬)の推奨が追加された。これらの推奨は、HELIOS-B試験(ブトリシラン)2)やATTRibute-CM試験(アコラミジス)3)などの臨床試験結果に基づいたものである。これらの新しい治療法の登場は、特定の心筋症に対して、その根底にある分子病理に直接介入する標的療法の時代の到来を告げるものである。マバカムテンはHCMにおけるサルコメアの過収縮を、ブトリシランはTTR蛋白の産生を抑制し、アコラミジスはTTR蛋白を安定化させる。これらは、従来の対症療法的な心不全管理を超え、疾患修飾効果が期待される治療法であり、精密医療(Precision Medicine)の進展を象徴している。この進展は、心不全の原因精査(特定の心筋症の鑑別診断)の重要性を高めるとともに、これらの新規治療薬の適正使用とモニタリングに関する専門知識を有する医師や施設の役割を増大させる。遺伝学的検査の役割も今後増す可能性がある。表2:特定の心筋症に対する新規標的治療薬(2025年版ガイドライン追記)画像を拡大する5. 特殊病態・新規疾患概念心不全の多様な側面に対応するため、特定の病態や新しい疾患概念に関する記述が新たに追加、または拡充された1)。心房心筋症心房自体の構造的、機能的、電気的リモデリングが心不全(とくにHFpEF)や脳卒中のリスクとなる病態概念であるため追加中性脂肪蓄積心筋血管症細胞内の中性脂肪分解異常により心筋や血管に中性脂肪が蓄積する稀な疾患概念であり、診断基準を含めて新たに記載高齢者/フレイル高齢心不全患者、とくにフレイルを合併する患者の評価や管理に関する配慮が追加腫瘍循環器学がん治療(化学療法、放射線療法など)に伴う心血管合併症や、がんサバイバーにおける心不全管理に関する記述が追加これらの項目の追加は、心不全が単一の疾患ではなく、多様な原因や背景因子、そして特定の患者集団における固有の課題を持つことを反映している。6. 診断・評価法の強化心不全の診断精度向上と、より包括的な患者評価を目指し、新たな診断・評価法に関する推奨が追加された。遺伝学的検査特定の遺伝性心筋症や不整脈が疑われる場合など、適切な状況下での遺伝学的検査の実施に関する推奨とフローチャートが追加ADL/QOL/PRO評価日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)、生活の質(QOL)、患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcomes:PROs)の評価が、単なる生活支援の指標としてだけでなく、予後予測因子としても重要であることが位置付けられた。Barthel Index、Katz Index(ADL評価)、Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)、Minnesota Living with Heart Failure Questionnaire(MLHFQ[PRO評価の1つ])などの具体的な評価ツールの活用を推奨リスクスコア予後予測のためのリスクスコアの活用に関する項目が追加BNP/NT-proBNPスクリーニングステージAからステージBへの進展リスク評価のためのBNP/NT-proBNP測定を推奨これらの診断・評価法の強化は、従来の心機能評価(LVEF、バイオマーカーなど)に加え、遺伝的背景、実際の生活機能、そして患者自身の主観的な評価を取り入れた、より多面的で患者中心の評価へと向かう流れを示している。とくにADL、QOL、PROの重視は、心不全治療の目標が単なる生命予後の改善だけでなく、患者がより良い生活を送れるように支援することにある、という考え方を反映している。臨床医は、これらの評価法を日常診療に組み込み、より個別化された治療計画の立案や予後予測に役立てることが求められる。7. 社会的側面への対応:地域連携・包括ケアの新設心不全患者の療養生活を社会全体で支える視点の重要性が増していることを受け、「地域連携・地域包括ケア」に関する章が新たに設けられた。これは今回の改訂における大きな特徴の1つである。この章では、病院完結型医療から地域完結型医療への移行を促すため、以下のような多岐にわたる内容が盛り込まれている。多職種連携医師、看護師(とくに心不全療養指導士1))、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、ソーシャルワーカーなど、多様な専門職が連携し、患者中心のケアを提供する体制の重要性を強調4)。地域連携病院、診療所(かかりつけ医)、訪問看護ステーション、薬局、介護施設、行政などが緊密に連携し、情報共有や役割分担を通じて、切れ目のないケアを提供するネットワーク構築の必要性を明示4)。デジタルヘルス・遠隔モニタリングスマートフォンアプリ、ウェアラブルデバイス、植込み型デバイスなどを活用した遠隔モニタリングやオンライン診療が、患者の状態のリアルタイム把握、早期介入、再入院予防、治療の最適化、医療アクセス向上に貢献する可能性のあるツールとして正式に位置付け1)社会復帰・就労支援患者の社会生活への復帰や就労継続を支援するための情報提供や体制整備の必要性についても言及この新設された章は、心不全管理が単なる医学的治療に留まらず、患者の生活全体を地域社会の中で包括的に支えるシステムを構築する必要があるという、パラダイムシフトを明確に示している。これは、心不全を慢性疾患として捉え、急性期治療後の長期的な安定維持とQOL向上には、医療、介護、福祉、そしてテクノロジーが一体となった支援体制が不可欠であるとの認識に基づいている。8. 急性非代償性心不全の管理急性非代償性心不全(Acute Decompensated Heart Failure:ADHF)の病態評価と治療に関して、より精緻な管理を目指すための改訂が行われた。WHFとDHFの定義追加心不全の悪化に関する用語として、心不全増悪(Worsening Heart Failure:WHF)と非代償状態(Decompensation:DHF)の定義が明確化。WHF既知の心不全患者において、症状や徴候が悪化する状態。LVEF低下やBNP上昇などの客観的所見を伴う場合もある。慢性心不全の進行や治療反応性の低下を示唆する。DHF慢性的に代償が保たれていた心不全が、何らかの誘因により急激に代償不全に陥り、体液貯留や低心拍出症状が顕在化する状態。緊急治療を要することが多い。ADHFは、このDHFの中でもとくに緊急性の高い重症病態(呼吸不全、ショックなど)を指す。移行期管理の推奨追加ADHFによる入院治療後、安定した代償状態へと移行する期間(移行期)の管理に関する知見と推奨が新たに追加。とくに、退院後90日間は再入院リスクが非常に高い「脆弱期(vulnerable phase)」と定義され、この期間における多職種による集中的な介入(心臓リハビリテーション、服薬指導、栄養指導、訪問看護、ICT活用など)の重要性を強調する。これらの改訂は、急性増悪時の病態をより正確に把握し(WHF/DHF/ADHFの区別)、とくに退院後の不安定な時期(脆弱期)における管理を強化することで、再入院を防ぎ、長期的な予後改善を目指す戦略を明確にしている。これは、急性期治療の成功を入院中だけでなく、退院後のシームレスなケアへと繋げることの重要性を示唆しており、後述する急性期リハビリテーションや前述の地域連携・多職種連携の強化と密接に関連している。臨床現場では、標準化された定義に基づいた病態評価と、脆弱期に焦点を当てた構造化された退院後支援プログラムの導入が求められる。9. 急性期リハビリテーションの推奨強化心不全診療におけるリハビリテーションの重要性が再認識され、とくに急性期からの早期介入に関する包括的な記述と推奨が大幅に強化された。早期介入の意義入院早期からの運動療法を含む心臓リハビリテーションが、「切れ目のないケア」の中核として位置付けられた。ACTIVE-ADHF試験などの国内エビデンスも引用され4)、早期介入が運動耐容能、ADL、認知機能、QOLの改善に寄与し、予後を改善する可能性が示されている。この改訂は、リハビリテーションを、従来の外来での安定期患者向けサービスという位置付けから、急性期入院時から開始されるべき心不全治療の不可欠な構成要素へと転換させるものである。心不全による身体機能低下やフレイルの進行を早期から抑制し、円滑な在宅復帰と地域での活動性維持を支援する上で、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の役割が極めて重要であることを示している。今後は、急性期医療チームへのリハビリテーション専門職の積極的な参画、早期離床・運動療法プロトコルの標準化、そして退院後の継続的なリハビリテーション提供体制(遠隔リハビリ含む)の整備が課題となる。10. 併存症管理の重点化心不全患者においては多くの併存疾患が存在し、それらが予後やQOLに大きな影響を与えることから、主要な併存症の管理に関する記載と推奨が強化された。とくに重要視される併存症として、以下のものが挙げられ、それぞれの管理戦略に関する最新の知見が盛り込まれている。慢性腎臓病(CKD)・心腎症候群心不全とCKDは密接に関連し、相互に悪影響を及ぼす。腎機能に応じた薬物療法(用量調節)の必要性とともに、SGLT2阻害薬やフィネレノンなど心腎保護効果を有する薬剤の積極的な活用を推奨。肥満とくにHFpEFにおいて、肥満は重要な治療ターゲットであり、GLP-1受容体作動薬などの抗肥満薬が症状改善に寄与する可能性が示唆。糖尿病SGLT2阻害薬は心不全と糖尿病の両方に有効な治療選択肢である。GLP-1受容体作動薬も考慮される。血糖管理だけでなく、心血管リスク低減を考慮した薬剤選択が重要となる。高カリウム血症RAS阻害薬やMRA使用時に問題となりうるため、モニタリングと管理(食事指導、カリウム吸着薬など)に関する注意喚起がなされている。貧血・鉄欠乏鉄欠乏は心不全症状や運動耐容能低下に関与し、診断と治療(経静脈的鉄補充療法など)が推奨される。抑うつ・認知機能障害・精神心理的問題これらの精神神経系の併存症はQOL低下やアドヒアランス不良につながるため、スクリーニングと適切な介入(精神科医との連携含む)の重要性が指摘されている。おわりに2025年版心不全診療ガイドラインは、近年のエビデンスに基づき、多岐にわたる重要な改訂が行われた。とくに、心不全発症前のリスク段階(ステージA/B)からの予防的介入、CKDの重要性の強調、LVEFによらずSGLT2阻害薬が基盤治療薬となったこと、特定の心筋症に対する分子標的治療の導入、急性期から慢性期、在宅までを見据えたシームレスなケア体制(急性期リハビリテーション、移行期管理、地域連携、多職種連携、デジタルヘルス活用)の重視、そして併存症や患者報告アウトカム(PRO)を含めた包括的・患者中心の管理へのシフトは、本ガイドラインの根幹をなす変化点と言える。全体として、本ガイドラインは、心不全診療を、より早期からの予防に重点を置き、エビデンスに基づいた薬物療法を最適化しつつ、リハビリテーション、併存症管理、患者のQOLや社会的側面にも配慮した、包括的かつ統合的なモデルへと導くものである。本邦の高齢化社会という背景を踏まえ、実臨床に即した指針を提供することを目指している。心不全管理は日進月歩であり、今後も新たなエビデンスの創出が期待される。臨床現場の医療従事者各位におかれては、本ガイドラインの詳細を熟読・理解し、日々の診療にこれらの新たな知見を効果的に取り入れることで、本邦における心不全患者の予後とQOLのさらなる向上に貢献されることを期待したい。 1) Kitai T, et al. Circ J. 2025 Mar 28. [Epub ahead of print] 2) Fontana M, et al. N Engl J Med. 2025;392:33-44. 3) Gillmore JD, et al. N Engl J Med. 2024;390:132-142. 4) Kamiya K, et al. JACC Heart Fail. 2025;13:912-922.

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抗精神病薬の減量、D2受容体親和性と再発との関連

 抗精神病薬維持療法は、初回エピソード精神疾患の再発予防に有効であるが、抗精神病薬使用患者の多くは、寛解後に副作用、長期的な健康上の懸念、スティグマ、自立への希望から、抗精神病薬の減量または中止を望むことは少なくない。現在のガイドラインでは、抗精神病薬の漸減が推奨されているが、とくに初発エピソードから寛解した患者における最適な漸減スピードは依然として不明である。また、抗精神病薬のD2受容体親和性によっても再発リスクに影響を及ぼす可能性がある。オランダ・University of GroningenのShiral S. Gangadin氏らは、初回エピソード精神疾患患者における寛解後の抗精神病薬減量と再発リスクとの関係およびD2受容体親和性の影響を評価した。World Psychiatry誌2025年6月号の報告。 対象は、抗精神病薬を漸減した精神疾患患者227例。初回エピソードから寛解後18ヵ月以内の再発リスクおよび再発までの期間を調査した。再発は、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、精神疾患による入院、または担当精神科医の明確な臨床判断に基づくコンセンサス基準を用いて二分的に定義した。減量スピードは、減量開始時と終了時の抗精神病薬投与量(1日当たりのオランザピン換算量)を日数で割って算出した。抗精神病薬のD2親和性に基づく分類は、パーシャルアゴニスト薬、低親和性薬、高親和性薬とした。年齢、性別、大麻使用、初回エピソードの症状持続期間、D2受容体親和性による薬剤分類の臨床的および社会人口統計学的特性の差について治療確率逆重み付けで調整した後、ロジスティック回帰分析およびCox比例ハザード回帰分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・パーシャルアゴニスト薬使用患者54例、低親和性薬使用患者116例、高親和性薬使用患者57例。・フォローアップ期間中、減量後に再発した患者は104例(45.8%)。・平均減量スピードは75日間でオランザピン換算10mgであり、平均減量期間は124日(範囲:6〜334日)であった。・ロジスティック回帰分析では、減量スピードは再発リスクを予測しないことが示された(z=0.989、p=0.323)。・高親和性薬使用患者と比較し、低親和性薬使用患者(z=−2.104、オッズ比[OR]=0.48、p=0.035)およびパーシャルアゴニスト使用患者(z=−2.278、OR=0.44、p=0.023)は再発リスクが低かった。・減量終了から再発までの期間は、高親和性薬使用患者(平均280日)が、低親和性薬使用患者(平均351日、p=0.027)およびパーシャルアゴニスト使用患者(平均357日、p=0.040)よりも短かった。 著者らは「寛解した初回エピソード精神疾患患者における再発予測において、抗精神病薬のD2受容体親和性は、減少スピードよりも重要であった。D2受容体への親和性の高い薬剤の使用は、他の抗精神病薬と比較し、再発リスクが約2倍高かった。減量後の再発リスクの高さは、抗精神病薬を初めて選択する際、考慮すべき因子であると考えられる。初回エピソード精神疾患から寛解後、強力なD2受容体親和性を有する薬剤を使用している患者では、減量期間中に追加のモニタリングが必要であろう」としている。

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脳梗塞患者に対する血栓溶解療法の低強度モニター(解説:内山真一郎氏)

 OPTIMISTmain試験は、急性期脳梗塞患者に対する血栓溶解療法後の低強度モニターを検討する初めての無作為化比較試験である。血栓溶解療法開始の2時間以内に臨床的に症状が安定しており、NIHSSが10点未満の軽症~中等症の虚血性脳卒中患者において、低強度モニターと標準的モニターの転帰を比較した。低強度モニターのプロトコールは、神経所見とバイタルサインを血栓溶解療法後2時間は15分ごと、8時間は2時間ごと、24時間までは4時間ごとに評価し、標準的なモニター(6時間は30分ごと、その後1時間ごと)と比較した結果、90日後の転帰不良例(mRSが2以上)も症候性頭蓋内出血も両群間で差がなく、低強度モニターは標準的なモニターに対して非劣性であることが弱いエビデンスながら示された。 血栓溶解療法も長い年月が経過し、看護師はモニターに慣れ親しみ、血管内治療との併用も多くなり、ICU外の病棟でも広く施行されるようになった。また、頻回のモニターは、多くの業務を抱える看護師に過剰な負担を掛け、人手不足も深刻化しており、患者の睡眠を妨げることにもなるので、低リスクの患者には従来のガイドラインによる厳しいモニターは不必要ではないかと結論している。

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