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腫瘍循環器診療 実践トレーニング

症例問題で診療のコツやガイドラインの活かし方をわかりやすく学べる実践書!注目が高まる腫瘍循環器学の新しいガイドラインや知見を臨床現場でどう活かすか、がん種や治療法ごとに具体的なシチュエーションを示しながらエキスパートが解説しています。さらに症例問題を解くトレーニング形式により、注意すべきことやガイドラインに載っていない場合の対応など実臨床に即した知識を習得できる構成となっています。豊富な図解でビジュアルに理解できる紙面に、最新の話題やTips、コラムと内容充実。『腫瘍循環器診療ハンドブック』と併せてご活用いただける1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する腫瘍循環器診療 実践トレーニング定価5,280円(税込)判型B5判2色(一部カラー)、イラスト50点、写真70点頁数240頁発行2024年3月監修小室 一成編集日本腫瘍循環器学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら

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CKD-MBD治療の新たな方向性が議論/日本透析医学会

 日本透析医学会による『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン』の改訂に向けたポイントについて、2024年6月9日、同学会学術集会・総会のシンポジウム「CKD-MBDガイドライン 新時代」にて発表があった。 講演冒頭に濱野 高行氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科・人工透析部)が改訂方針について、「CKD-MBDの個別化医療を目指して、さまざまなデータを解析して検討を積み重ねてきた。新しいガイドラインでは、患者の背景に合わせた診療の実現へつなげるためのユーザーフレンドリーな内容になるよう努めていきたい」とコメント。続いて、6人の医師が今後の改訂のポイントに関して解説した。保存期CKD-MBDにおけるプラクティスポイントとは 保存期CKD-MBDについて、藤崎 毅一郎氏(飯塚病院 腎臓内科)から低カルシウム血症・高リン血症のプラクティスポイントに関する提案があった。低カルシウム血症では、「まずは補正カルシウム値を確認。その後、低カルシウム血症を誘発する薬剤の確認やintact PTH(iPTH)、リン、マグネシウムを測定し、二次性副甲状腺機能亢進症の確認を行ったうえで、カルシウム製剤または活性型ビタミンD製剤の投与を検討すること」とし、高リン血症に関しても補正カルシウム値の確認を行ったうえで、「低い場合にはカルシウム含有リン吸着薬、正常であれば鉄欠乏の有無を考慮したうえで鉄含有、非含有リン吸着薬の投与を検討すること」とコメントした。最後にガイドラインの改訂に向けて、「実臨床に則したプラクティスポイントの作成を目指して検討を続けていく」と述べた。血清カルシウム、リンの管理目標値の上限は、より厳格な管理へ 血液透析患者における血清カルシウム、リンの管理目標値について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。理事会へ提出された素案によると、血清カルシウムの下限は8.4mg/dL以上のまま、上限に関しては9.5mg/dL未満、血清リンに関しても下限は3.5mg/dL以上のまま、上限は5.5mg/dL未満が管理目標値として検討されている。同氏は、血清カルシウム、リンの管理について、「カルシミメティクスや骨粗鬆症治療薬によってカルシウムが下がりやすい環境にもあるため、低カルシウム血症には注意すること。血清リンに関しては年齢や栄養状態をよく考慮して検討すること。原疾患が糖尿病、動脈硬化性疾患の既往がある場合には目標値の上限を下げて管理することも検討する必要がある」とコメント。また、「CKD-MBDにそれほど関心がない先生方にとっても、フローチャートなどを使って診療の手助けになるものを示していくことが大切である」と述べた。患者の背景に応じたリン低下薬の選択を 前回のガイドライン以降、多くのリン低下薬が登場し、患者に合わせた薬剤選択の重要性が注目されている。山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)からは、患者特性に基づくリン低下薬の選択について提案があった。リン低下薬を選択する際の切り口として、「リン低下だけでなく薬剤による多面的な効果、便秘などの消化器症状、PPIやH2ブロッカーなど胃酸分泌抑制薬による影響、服薬錠数や医療経済など、リン低下薬の特性だけでなく患者背景に合わせて使い分けることが大切である」と改訂に向けたポイントを述べた。プラクティスポイントとして、リン低下薬選択に関するアプローチの仕方を示した「一覧表」の紹介もあった。同氏は一覧表に関して、「基本的には患者と相談してリン低下薬を選択していくことになるが、どうやって患者に合わせて使い分けていくべきか、視覚的にわかりやすいツールがあれば判断しやすいのではないか」とコメントした。PTHの管理・治療の個別化へ向けて 血液透析患者における副甲状腺機能の評価と管理について、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科学)からPTHの管理を中心に提案があった。同氏は、「PTH管理においても治療の個別化が必要である」とし、管理目標値としてiPTH 240pg/mL以下の範囲で症例ごとに個別化すること、とコメントした。具体的には、骨折リスクの高い症例(高齢・女性・低BMI・骨代謝マーカー上昇)では管理目標値を低く設定する、カルシミメティクスを使用する場合にはiPTHの下限値を設けない、活性型ビタミンD製剤を単独で使用する場合は高カルシウム血症を避けるため下限値を60pg/mLとすることなどであった。内科的治療に関しては、PTHが管理目標値より高い場合には、血清カルシウム値や患者背景に基づいて活性型ビタミンD製剤、カルシミメティクスによって管理を検討すること、血清カルシウム値が管理目標値内にあって腫大腺や65歳以上、心血管石灰化、心不全リスク、骨折リスク、高リン血症を有するなど、1つでも該当する場合にはカルシミメティクスの使用や併用をより積極的に考慮することなどを挙げた。また、内科的治療に抵抗する重度の二次性副甲状腺機能亢進症の場合には副甲状腺摘出術の適応となるが、こちらも症例ごとに検討していく必要があると述べた。透析患者における骨折リスクの評価・管理のポイントとは CKD-MBDにおける骨折リスクへの介入について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)からプラクティスポイントに関する解説があった。評価・管理のポイントとして、「脆弱性骨折の有無や骨密度検査および血清ALP値による骨代謝の評価を行い、骨折リスクが高い場合には、運動、転倒防止、栄養状態の改善、禁煙指導を実施したうえで、カルシミメティクスの投与を優先してPTHを低く管理することが重要である」とコメント。同氏は、それでも骨密度の改善が得られない、または骨代謝マーカーの亢進が認められる場合には、骨粗鬆症治療薬の投与を検討するよう提案した。また、透析・保存期CKD患者に対する骨粗鬆症治療薬の選択に関しては、使用制限や投与における注意点が薬剤別にまとめられた表を作成し、CKD患者においてリスクの高い骨粗鬆症治療薬もあるため、ヒートマップを活用する形で警鐘を鳴らしていくことなども必要であると述べた。腹膜透析におけるCKD-MBDの管理目標値とは 腹膜透析患者におけるMBDについて、長谷川 毅氏(昭和大学 統括研究推進センター研究推進部門/医学部内科学講座腎臓内科学部門)からガイドライン改訂に向けたポイントに関する解説があった。同氏は「リン低下薬に関しては十分なシステマティック・レビュー、メタ解析による報告がないため、血液透析患者での推奨に準拠すること。CKD-MBDの管理目標値に関しては、生命予後の観点から、リン、カルシウムを目標値内でも低めの値、残腎機能保護、血液透析への移行防止のために、リン、PTHを目標値内でも低めの値を目標とすること」と提案。また、プラクティスポイントとして、残腎機能のある症例でカルシミメティクスを使用することでリンの管理が難しくなる可能性があること、腹膜透析液のカルシウム濃度は血清カルシウム値、PTH値をみて選択することを挙げた。

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島根大学医学部 内科学講座呼吸器・臨床腫瘍学(附属病院 呼吸器・化学療法内科)【大学医局紹介~がん診療編】

礒部 威 氏(教授/診療科長)津端 由佳里 氏(診療教授/副診療科長)奥野 峰苗 氏(医科医員)津田 洸旬 氏(医科医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴われわれの教室は、増加する呼吸器疾患と、がん医療の均てん化を推進するため、全国的に不足している呼吸器専門医・がん薬物療法専門医の育成を行ってきました。その特徴は呼吸器病学・腫瘍内科学・感染症学をベースとした、総合内科医の育成に取り組み、患者さんを疾患横断的、全人的に診療する力の養成にあります。肺がんは高齢化が進み、診断時に50%以上が75歳以上の高齢者です。高齢者は複数の慢性疾患を抱え、薬物の代謝や排泄が低下しているため、高齢者機能評価による適切な評価と介入ががん薬物療法を行う際には重要となります。教室の主要な臨床・教育・研究テーマが高齢者機能評価の普及と実践です。すでに高齢者機能評価の有用性を検討する多施設共同研究(ENSURE-GA)が終了し、現在は肺がん薬物療法時における高齢者機能評価の有用性を検討する多施設共同研究が始まったところです。また、呼吸器診療において持続可能な開発目標(SDGs)を掲げ、島根県の呼吸器診療、がん診療の基盤を整え、健康増進に寄与することを目的としたクラウドファンディングを開始しました。今後の教室の発展にご注目ください。我が医局のエースを紹介!津端はじめに自己紹介と医局の雰囲気の実際を教えてください。奥野医師10年目の奥野 峰苗です。もともと薬剤師でしたが、がんのエビデンスを作る臨床研究に興味があり、医学部に入りました。入局時は個別のキャリアプランを具体的に提案してくれ、ここなら自分の夢がかなえられる! と思い決めました。院外研修など自身のキャリアプランについてもトップダウンでなく、希望を聞いてもらえる医局だと思います。津田医師4年目の津田 洸旬です。大阪大学の人間科学部で学んでいましたが、医学こそ人間を科学する学問だ! と気が付き医学部へ入りました。研修医のころから薬物療法に興味があり、肺がん症例では診断から薬物療法、人生の最終段階まで寄り添えることにやりがいを感じました。趣味は美味しいごはんとお酒です(笑)。医局の雰囲気は一言で言うと「明るい」。若手から専門医まで在籍していて、カンファレンスは若手も発言しやすいです。津端では、当科でのがん診療/研究のやりがいはどんなところに感じていますか?奥野私はチームリーダーなのですが、一緒に考える、お互い刺激を受け合うチームを目指しています。研究は自身で立案したCQを、実際に臨床研究に結び付けることを医局がサポートしてくれます。先日、初めて国際学会(ATS)で発表してきました。語学の壁は感じましたが、今後もどんどんチャレンジしていきたいです。津端国立がん研究センターでの国内留学も終えられ、臨床試験の立案から実施、そして学会発表まで行えるよう成長できているという証拠ですね。津田肺がん診療が日進月歩であることを最前線で感じられ、とてもやりがいを感じますし、高齢者が多く併存疾患への対応にも携わることができています。診断・治療だけではなく、大学に緩和ケア病棟があって看取りまで担当できるのも当科の特色です。先輩方からサポートいただきつつ入局1年目から多施設共同試験のPIも経験でき、勉強になっています。津端それでは最後に、今後の目標と医学生/研修医の皆さんへメッセージをどうぞ!奥野さらにたくさんの臨床研究を立案することが目標です。肺がん患者さんの予後は延長し、新しい治療もたくさん出てきていますがまだまだ奥深い世界です。当科は少し迷っている方でも、サポートして一緒にやりたいことを見つけてもらえます。津田まずは専門医を取得する。そのうえで、肺がんを中心として専門性を高め、国内外の留学も目標です。がん診療、とくに肺がんは難しいという印象があるかもしれませんが、個々の症例と向き合うことで理解は深まりますし、患者さんに最期まで寄り添える、とてもやりがいのある領域です。津端今日はありがとうございました、これからも一緒に当科を盛り上げていきましょう!島根大学医学部 内科学講座呼吸器・臨床腫瘍学(附属病院 呼吸器・化学療法内科)住所〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1問い合わせ先koka-nai@med.shimane-u.ac.jp医局ホームページ島根大学医学部 内科学講座呼吸器・臨床腫瘍学専門医取得実績のある学会日本内科学会日本呼吸器学会日本臨床腫瘍学会日本呼吸器内視鏡学会日本結核・非結核性抗酸菌症学会日本老年医学会日本アレルギー学会日本喘息学会日本がん治療認定医機構 ほか研修プログラムの特徴(1)ガイドラインに準拠した診療スタイルを身につけることができる(2)チームによる教育・研修体制を組み、常に上級医からの指導を受けることができる(3)完全当直、待機医師制度のため、オン・オフが明確化される詳細はこちら

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発熱性好中球減少症に対するグラム陽性菌をカバーする抗菌薬の追加の適応【1分間で学べる感染症】第5回

画像を拡大するTake home message発熱性好中球減少症に対するグラム陽性菌をカバーする抗菌薬の追加の適応を7つ覚えよう。発熱性好中球減少症は対応が遅れると致死率が高いため、迅速な対応が求められます。入院中の患者の場合、基本的には緑膿菌のカバーを含めた広域抗菌薬の投与が初期治療として推奨されていますが、それに加えてグラム陽性菌に対するカバーを追加するかどうかは悩みどころです。そこで、今回はガイドラインで推奨されている以下の7つの適応を理解するようにしましょう。1)血行力学的不安定または重症敗血症の場合2)血液培養からグラム陽性菌が陽性の場合3)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)の保菌がある場合4)重症粘膜障害(フルオロキノロン系抗菌薬予防内服)の場合5)皮膚軟部組織感染症を有する場合6)カテーテル関連感染症を臨床的に疑う場合7)画像上、肺炎が存在する場合上記のうち、1)2)に関してはとくに疑問なく理解できると思います。3)に関しては、患者のこれまでの記録をカルテで確認することで、そのリスクを判断します。4)5)6)に関しては、身体診察でこれらを疑う場合には、すぐに追加を検討します。6)はカテーテル局所の発赤や腫脹、疼痛などがあれば容易に判断できますが、血液培養が陽性となるまでわからないこともあるため注意が必要です。7)に関してはMRSAによる肺炎を懸念しての推奨です。グラム陽性菌をカバーする抗菌薬の追加の適応に関しては、上記7つをまずは理解したうえで、その後のde-escalationを行うタイミングや継続の有無に関しては、その後の臨床経過や検査結果から総合的に判断しましょう。1)Freifeld AG, et al. Clin Infect Dis. 2011;52:e56-e93.

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ASCO2024 レポート 消化器がん

レポーター紹介本レポートでは、2024年5月31日~6月4日に行われた2024 ASCO Annual Meetingにおける消化管領域におけるトピックスを解説する。1.【食道がん】ESOPEC trial(#LBA1)最初に解説するのは、今年消化管領域でPlenary Sessionに選ばれたESOPEC trialである。欧米ではわが国をはじめとする東アジアと異なり、食道がんにおいては下部食道から接合部にできる腺がんが中心である。cT2-4a、cN+/-の切除可能進行食道腺がんにおける現在の標準治療は、CROSS trialで用いられたパクリタキセル+カルボプラチン+41.4Gyの術前化学放射線療法(CRT)とFLOT4 trialで用いられた術前・術後のFLOT(5-FU、LV、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法の両者が併存しており、それぞれ開発が行われたオランダではCROSSレジメンが、ドイツではFLOTレジメンが主流である。ESOPEC trialでは両者の直接比較が第III相試験として行われた。2016年2月~2020年4月に438例のcT1N+ or cT2-4a、cN0/+、cM0の食道および接合部腺がんが登録された。年齢中央値は63歳、男性が89.3%、cT3/4の症例が80.5%、リンパ節転移陽性症例が79.7%であった。主要評価項目である全生存期間(OS)でハザード比(HR)が0.70、p=0.012、OS中央値がFLOT群66ヵ月、CROSS群39ヵ月、3年OS率がFLOT群54.7%、CROSS群50.7%と有意にFLOT群が優れていた。また、計画された術前治療を完遂できたのはFLOT群で87.3%、CROSS群で67.7%と差を認めた。無増悪生存期間(PFS)では、HR:0.66、p=0.001、3年PFS率がFLOT群51.6%、CROSS群35.0%と有意にFLOT群が優れていた。病理学的完全奏効(pCR)もFLOT群で16.8%、CROSS群で10.0%とFLOT群のほうが良好であった。術後合併症は両群で差を認めない結果であった。本試験結果をもって、切除可能局所進行食道・接合部腺がんにおいてFLOTレジメンの有意性が示された。本邦でも切除可能局所進行食道・接合部腺がんに対してFLOTやDCS(ドセタキセル、シスプラチン、S-1)をはじめとする術前化学療法が主流であり、本結果は受け入れられると考える。一方、術前CRT後pCRとならなかった症例にはCheckMate 577のエビデンスから術後ニボルマブ1年が無病生存期間(DFS)を有意に改善することが検証されているが、KEYNOTE-585やATTRACTION-5の結果より、術前・術後の化学療法に対して免疫チェックポイント阻害薬の有効性は検証されていない。今後FLOTとCROSSの直接比較のみならず、CRT後のニボルマブの有効性も含めた結果の解釈が必要になる。2.【大腸がん】切除不能大腸がん肝転移に対する肝移植の有効性(#3500)切除可能性のない大腸がん肝転移症例に対する標準治療は化学療法であるが、根治は困難である。今回、フランスの研究者から化学療法(C)に対する肝移植+化学療法(LT+C)の優越性を検証するTransMet試験が報告された。適格基準は65歳以下、PS 0-1、化学療法で3ヵ月以上部分奏効もしくは安定が得られている、CEAが80mg/mLもしくはベースラインより50%以上の減少、血小板8万超、白血球2,500超と厳格な基準で行われた。157例がスクリーニングされ、そのうち94例がランダム化された。LT+C群の47例のうち11例がPer protocolから外され(9例が病勢進行のためLTせず)、C群の47例のうち9例がPer protocolから外された(7例が肝切除実施のため)。主要評価項目の5年OS(ITT)はLT+C群が57%、C群が13%(HR:0.37、p=0.0003)であり、LT+Cが実施された36例のうち、26例に再発を認めた(一番多い部位は肺転移の14例)が、その後手術および焼灼療法が12例(46%)に実施され15例で最終的にがんがない状態を維持できていた。副次評価項目である3年・5年PFSは、LT+C群とC群で3年PFSがそれぞれ33%と4%、5年PFSがそれぞれ20%と0%(HR:0.34、p<0.0001)とLT+C群が有意に優れている結果であった。適切な症例選択をすることで、切除不能大腸がん肝転移症例に対してLT+Cは有意にOSとPFSのそれぞれを改善することが示された。長期予後が期待できない切除不能肝転移症例に対して根治の可能性を届けられることが示された。3.【大腸がん】CheckMate 8HW(#3503)CheckMate 8HW試験は1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ(NIVO+IPI)と標準治療(mFOLFOX6/FOLFIRI+/-ベバシズマブ/セツキシマブ)のPFSのデータがすでに2024 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposiumで報告されているが、前回と同様のdMMR/MSI-H切除不能大腸がんにおいて1次治療でNIVO+IPIを行った202例と標準治療を行った101例の追加情報が報告された。観察期間中央値は31.6ヵ月と延長したが、PFS中央値でNIVO+IPI群は到達せず、標準治療群は5.9ヵ月(HR:0.21、p<0.0001)とNIVO+IPI群が圧倒的に優れている結果であった。サブ解析でもNIVO+IPI群が肝転移症例、BRAF V600E変異症例、RAS変異症例など、免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しいとされる症例でも良好なHRを認めていた。また、本試験では標準治療群は増悪後NIVO+IPIを試験治療で行うことが可能になっており、今回2次治療までのPFS(PFS2)が報告された。標準治療群では試験治療とそれ以外を合わせて67%の症例がcross overされたが、PFS2中央値でNIVO+IPI群が未到達である一方、標準治療群は29.9ヵ月(HR:0.27)と後治療の実施も含め1次治療でNIVO+IPIを実施する有効性が示された。免疫関連有害事象については一定数認められたが、Grade3以上はいずれも5%以下であり、臨床的には許容できると解釈された。dMMR/MSI-H切除不能大腸がんの1次治療としてNIVO+IPIが重要な選択肢であることが検証されたが、NIVO単剤との比較データは今回報告されておらず、どちらを第1選択にするかの最終判断は、今後の報告を見てからになると考える。4.【大腸がん】PARADIGM試験のバイオマーカー解析(#3507)本邦からもRAS野生型切除不能大腸がんに対してパニツムマブ(Pmab)+mFOLFOX6とベバシズマブ(Bmab)+mFOLFOX6を1対1で比較したランダム化比較試験であるPARADIGM試験のバイオマーカー解析が報告された。治療前と治療後に血漿検体を採取してNGS解析を行った556例のうち、病勢進行(PD)で中止となった276例で治療開始時とPD時のゲノムの変化を解析した。PD症例のOSや増悪後の生存期間(PPS)は両群で差を認めず、PD時のacquired alterationsに注目すると、Pmab群で2つ以上のalterationsが52.4%の症例に認められた一方、Bmab群では43.3%に認められた。Pmab群で2つ以上のalterationsを認めた症例はalterationsを認めなかった症例よりも有意にPPSが短く、Pmab症例において獲得alterationsがPD後の生存に影響している可能性が示された。さらに獲得alterationsをpathwayごとに分けて解析すると、RTK/RAS経路のalterationsを認める症例はPmab群でPPSが不良である一方、CIMPやPI3K経路のalterationsを認める症例はBmab群でPPSが不良な結果であった。RTK/RAS経路とCIMP経路はOSでも同様の結果が認められ、獲得耐性のパターンがレジメンにより異なり、またそれが増悪後の生存に影響する可能性が示唆された。現在の臨床では、治療前後の血漿を用いたNGS解析は実施できないが、科学的には重要な示唆を持つ結果であった。5.【大腸がん】CodeBreaK 300のOSの報告(#LBA3510)CodeBreaK 300試験は前治療のあるKRAS G12C変異結腸直腸がんに対して、ソトラシブ960mg/日+Pmab群、ソトラシブ240mg/日+Pmab群、主治医選択(トリフルリジン・チピラシルまたはレゴラフェニブ)群を1対1対1で比較した第III相試験である。主要評価項目である盲検独立中央判定によるPFSは2つのソトラシブ+Pmab群が主治医選択群よりも有意に優れていることが検証されているが、副次評価項目であるOSの報告が、OSのイベントが50%を超えた今回のタイミングで行われた。症例数からOSの検証はできないが、観察期間中央値13.6ヵ月の段階で2つのソトラシブ+Pmab群が主治医選択群よりも良好な傾向が認められ、有意差はないもののソトラシブ960mg/日+Pmab群はHR:0.70と良好な結果であった。後治療として主治医選択群はその後31%がKRAS G12C阻害薬の治療を受けていた。その他の結果もupdateが報告され、ソトラシブ960mg/日+Pmab群は奏効割合が30%、Duration of Response中央値が10.1ヵ月、PFS中央値の再解析では5.8ヵ月(HR:0.46)の結果であった。これらの結果は、ソトラシブ960mg/日+PmabがKRAS G12C変異大腸がんの新たな選択肢であることを示すものであり、本邦でも今後早期の承認が期待される。6.【直腸がん】切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対するPD-1抗体の医師主導治験の長期治療効果(#LBA3512)スローン・ケタリング記念がんセンターから報告された切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対するdostarlimab(PD-1抗体)の医師主導治験は、14例という少数例の結果であったものの全例に臨床的完全奏効(cCR)が認められるという優れた結果であった。今回さらなる症例集積と治療効果の継続について報告がなされた。今回の報告では48例までの登録がなされており、Lynch症候群の確定検査がなされた41例のうち21例(51%)がLynch症候群の診断であった。またTumor Mutation Burdenの中央値が53.6、BRAF V600E変異が1例に認められた。PD-1抗体薬であるdostarlimabの投与が終わった42例で主要評価項目であるcCRが100%に認められ、観察期間中央値17.9ヵ月の時点で1例も再増悪を認めていなかった。もう1つの主要評価項目である12ヵ月cCRについても26.3ヵ月の観察期間中央値で100%の結果であった。Grade3以上の有害事象は認めず、安全性についても大きな懸念事項は認めなかった。すでにNCCNガイドラインでは、切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対する第1選択は免疫チェックポイント阻害薬6ヵ月となっており、企業主導の検証治験として行われているAZUR-1が進行中である。また本邦でも医師主導治験としてStageI~III直腸がんまでを対象にNIVOの有効性・安全性をみるVOLTAGE-2試験が進行中である。7.【大腸がん】c-Metをターゲットとした新規Antibody-Drug Conjugate(ADC)製剤であるABBV-400の安全性・有効性(#3515)ABBV-400はc-Metをターゲットとした抗体薬であるtelisotuzumabとtopoisomerase-1阻害薬のADC製剤である。BRAF野生型かつMSSの切除不能大腸がんの3次治療以降の症例を対象にdose escalation/expansionが行われた。1.6mg/kg、2.4mg/kg、3.0mg/kgと増量が行われ、Grade3以上の主な有害事象は貧血(35%)、好中球減少(25%)、血小板減少(13%)であった。すべてのGradeで嘔気(57%)、疲労(44%)、嘔吐(39%)が認められた。治療継続期間中央値は4.1ヵ月であり、1.6mg/kgではRelative Dose Intensity(RDI)が100%であったが、3.0mg/kgでは86.5%であった。奏効割合は16%であり、Duration of Response中央値は5.5ヵ月であった。用量が増えるに従って奏効率は上昇し、3.0mg/kgでは24%であった。C-Metタンパクの発現を≧10% 3+をcut offとして検討すると、2.4mg/kg以上で投与された症例のうちcut off以上の症例は奏効割合37.5%、PFS中央値5.4ヵ月と有望な結果であった。2.4mg/kgと3.0mg/kgを比較すると、2.4mg/kgのほうが、RDIが保たれ毒性は許容される結果であった。ABBV-400は大腸がん領域のADC製剤としては有望と考えられており、現在本試験の中でABBV-400とベバシズマブの併用が検討されている。

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精神病性うつ病の維持療法に対する抗うつ薬や抗精神病薬治療の実際の有効性

 精神病性うつ病は、機能障害や自殺リスクの高さを特徴とする重度の精神疾患であるが、その維持療法に使用される薬物療法の有効性を比較した研究は、あまり多くない。フィンランド・東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、日常診療下における精神病性うつ病患者の精神科入院リスクに対する特定の抗精神病薬と抗うつ薬、およびそれらの併用療法の有効性を比較するため、本研究を実施した。World Psychiatry誌2024年6月号の報告。 新たに精神病性うつ病と診断された16〜65歳の患者を、フィンランド(2000〜18年)およびスウェーデン(2006〜21年)の入院、専門外来、病気休暇、障害年金のレジストリより特定した。主要アウトカムは、重度の再発を表す精神科入院とした。特定の抗精神病薬および抗うつ薬による薬物療法の影響を比較した。薬剤の使用期間および非使用期間に関連する入院リスク(調整ハザード比[aHR])は、各個人を自身の対照とする個人内デザインにより評価し、層別Coxモデルで分析した。フィンランドとスウェーデンの2つのコホート研究をそれぞれ事前に分析し、次に固定効果メタ解析を用いて統合した。 主な結果は以下のとおり。・フィンランドのコホートには1万9,330人(平均年齢:39.8±14.7歳、女性の割合:57.9%)、スウェーデンのコホートには1万3,684人(平均年齢:41.3±14.0歳、女性の割合:53.5%)が含まれていた。・抗うつ薬未使用と比較し、再発リスク低下と関連する抗うつ薬は、bupropion(aHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.63〜0.85)、ボルチオキセチン(aHR:0.78、95%CI:0.63〜0.96)、ベンラファキシン(aHR:0.92、95%CI:0.86〜0.98)であった。・長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(aHR:0.60、95%CI:0.45〜0.80)およびクロザピン(aHR:0.72、95%CI:0.57〜0.91)は、抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスク低下と関連していた。・単剤療法のうち、ボルチオキセチン(aHR:0.67、95%CI:0.47〜0.95)とbupropion(aHR:0.71、95%CI:0.56〜0.89)のみが、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下と関連していた。・探索的解析では、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法において、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下が認められた組み合わせは、アミトリプチリン+オランザピン(aHR:0.45、95%CI:0.28〜0.71)、セルトラリン+クエチアピン(aHR:0.79、95%CI:0.67〜0.93)、ベンラファキシン+クエチアピン(aHR:0.82、95%CI:0.73〜0.91)であった。・ベンゾジアゼピンおよび関連薬(aHR:1.29、95%CI:1.24〜1.34)、ミルタザピン(aHR:1.17、95%CI:1.07〜1.29)は、再発リスク増加と関連が認められた。 著者らは、「精神病性うつ病の維持療法において再発リスク低下と関連している薬剤は、bupropion、ボルチオキセチン、ベンラファキシン、LAI抗精神病薬、クロザピンおよびごく少数の特定の抗うつ薬と抗精神病薬との併用療法であった。このことから、精神病性うつ病の標準治療として、抗精神病薬と抗うつ薬との併用療法を推奨している現在の治療ガイドライン(詳細は明記されていない)に対し異議を唱えるものである」としている。

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治療の選択肢の提示【医療訴訟の争点】第1回

症例肝細胞がん患者に対する治療法(肝切除 or シスプラチンの肝動注化学療法[ Transhepatic Arterial Infusion:TAI])の選択について、“どこまで説明をすべきか”という「説明義務違反」が争われた東京地裁平成26年11月27日判決(診療時は平成18年)を紹介する。争点は多岐にわたるが、治療法の選択肢の説明の点に絞ることとする。<登場人物>患者77歳・女性平成7年以降、肥満症、高血圧症で継続的に被告病院を受診し、血液検査を実施していた。原告患者の子被告大学附属病院、担当医(消化器内科医)事案の概要は以下の通りである。平成18年6月被告病院での血液検査で、γ-GTP高値を指摘された。受診時、左季肋部痛と心窩部圧痛の訴えあり。7月被告病院にて腹部エコー検査と腹部造影CT検査を受け、肝左葉S3に径約14×7cmの巨大腫瘍を認め、肝細胞がんの疑いとなった。8月8日被告病院におけるカンファレンスにて、シスプラチンのTAIが最適と判断され、治療法につき患者と家族に説明がなされた。8月9日消化器内科にてシスプラチンのTAI施行。治療時の腫瘍径は17cmであった。8月15日腹部造影CT検査にて、腫瘍径の増大(20×11cm)がみられた。8月18日消化器内科から消化器外科へ院内紹介され、肝切除術を行う方針となった。9月4日肝切除術施行。11月22日腹部造影CT検査にて、残肝に門脈腫瘍栓を伴う多発再発巣がみられた。以降、他院にて放射線療法や肝動脈化学塞栓術(TACE)を受けるも、平成19年4月27日に死亡した。実際の裁判結果裁判所は、治療の選択肢の説明義務違反につき、シスプラチンのTAIは確立した治療法ではなく、臨床的にも本件のような巨大な肝細胞がんに対する奏効率は低いこと、直ちに肝切除を実施する治療方針も十分に採り得たことなどを指摘した。そして裁判所は、医師らは「治療方針を説明した際、直ちに肝切除するという治療方針も採り得ることを説明すべき義務を負っていた…(中略)シスプラチンのTAIを施行するとその作用によって肝切除を行うまでに4~6週間の間隔を空けなければならないことについても説明すべき義務を負っていた」として、この点を説明していなかったことに対して、説明義務違反(慰謝料200万円)を認めた。なお、“直ちに肝切除をしなかったことが注意義務違反に当たるか”については、裁判所は、「腫瘍径の大きさなどからすれば、平成18年7月31日の時点で肝内転移や門脈侵襲を起こしていた可能性が相当高く…(中略)同日の時点で直ちに肝切除を行うという方針を採っても、その後早期に再発することが予想され、肝切除による予後の改善はほとんど期待し難いものと判断される状況にあった」と指摘し、「早期に肝切除をすること自体にどれほどの意義があったかについては疑問を持たざるを得ない」として注意義務違反はないと判断した。注意ポイント解説本件は、肝切除やシスプラチンのTAIといった複数の治療選択肢があった。当時、一般的に肝切除が行われていた一方で、シスプラチンのTAIは有効性を示すエビデンスが乏しく、診療ガイドラインや学会編集の診療マニュアルでも積極的に推奨されているものではなかった。このような中、直ちに肝切除するという治療法の選択肢が説明されておらず、また、シスプラチンのTAIを施行すると肝切除を行うまでに4~6週間の間隔を空ける必要がある、という医師の提示した治療法に付随する制約の説明もされていなかった。このため、これらの説明がなされていた場合には、患者が肝切除を選択することも合理的と考えられたことから、治療法の選択に関する患者の自己決定権を奪ったと判断された。治療法の有効性や安全性は時代と共に評価が変化しうるが、選択可能な治療法が複数存在する場合(とくに、一般的に行われている治療法と異なる治療法を勧める場合や、ガイドラインなどにおける治療法判断のアルゴリズムの当てはめに疑義が生じうる場合)においては、患者が、医師が最適と判断した治療法とは別の治療法を希望する可能性があることから、別の治療法についても患者に提示し、それぞれの治療法のメリットとデメリットなどを説明することが必要である。医療者の視点医師は最新の治療法に関する知識を常時アップデートする必要があります。また、限られた勤務時間の中で十分な説明を行うことは難儀です。しかし、複数の治療選択肢がある以上、医師は各治療法の特徴を熟知した上で、推奨する治療法以外についても患者に説明をしなければならないことを再認識しましょう。昨今では、医療者でなくても各種ガイドラインに容易にアクセス可能となりました。医師が推奨した治療方針とガイドラインとの間で齟齬がある場合、トラブルに繋がる可能性がある点にも留意しましょう。Take home message複数の治療選択肢が存在する症例では、各治療法のメリットやデメリットを患者に提示する必要がある。キーワード説明義務違反とは…患者の自己決定権の尊重の見地から、医師は、患者に対し、“治療方法などについて患者が自己決定するための情報(患者の状態、考え得る治療の選択肢とそのメリット・デメリット等)を説明する義務”を負う。医師がこの説明義務を怠った場合には、患者の自己決定権を侵害したものとして、これにより生じた損害を賠償する責任を負うこととなる。なお、医師の説明義務違反が問われる多くは上記のような“治療法の選択に関する説明”であるが、このほかにも“療養方法の指導としての説明”や“治療等が終了した場合の説明”の適否が争われることもあるので、この点も注意を要する。

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切除可能な局所進行非小細胞肺がんに対するニボルマブの周術期治療の効果/NEJM (解説:中島淳氏)

 外科手術は遠隔転移のない非小細胞肺がんを根治するために、最も有効な手段である。しかし、病期が進むほど術後再発率は高く、現在の国内外の肺がん診療ガイドラインでは臨床病期IIIA期に手術適応の境界線が引かれている。 手術後の成績を改善させるために補助療法が考案されてきたが、今世紀に入り術後platinum-doubletを用いた補助化学療法、そして術前補助化学療法の有効性がそれぞれメタアナリシスによって確かめられたが、いずれも比較的軽微な予後改善にとどまっていた。近年になり分子標的阻害薬や抗PD-1、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が、手術不適応進行非小細胞肺がんに対する従来の化学療法を上回る有効性が示されてから、これを手術補助療法に用いる臨床研究が盛んに行われるようになった。ICIによる術後補助療法、術前補助療法の有効性はすでに多くの臨床研究で明らかにされてきたが、この論文に示された研究では、術前と術後にニボルマブを用いた「周術期」補助療法が検討された。手術を挟んだ前後に行う治療は歴史的には「サンドイッチ療法」とも称され、他部位の固形がん治療で試みられてきた。 本研究(CheckMate-77T試験)は欧米・中国・日本などの多施設共同試験である。臨床病期II-IIIB期(UICC-AJCC第8版病期分類)、切除可能な非小細胞肺がん患者461例を対象とした前向き無作為化二重盲検試験であり、プライマリエンドポイントはevent-free survival(EFS)である。試験群にはニボルマブとplatinum doublet化学療法を術前に4サイクル(3週ごと)投与、術後はニボルマブを4週ごとに、最長1年間投与した。対照群にはplatinum doublet化学療法を術前に4サイクル(3週ごと)投与、術後はプラセボを4週ごとに最長1年間投与した。 中央値25.4ヵ月の追跡調査では、EFSは試験群70.2%、対照群50.0%であり、42%のリスク低減が観察された。4サイクルの術前治療が完遂できた割合はニボルマブ群85%、対照群89%、手術施行は78%、77%、術後補助療法は62%、65%に行われ、ニボルマブ投与の忍容性が確かめられた。 術前補助療法の意義は、腫瘍量を減らして完全切除率向上が期待されること、術後療法よりも忍容性が高いこと、および切除検体による補助療法の効果判定が行えることである。ICIの高い抗腫瘍効果が期待されるが、本研究では切除症例においてニボルマブ群のpathological complete response(pCR)率は25.3%であり、対照群の4.7%と比べて有意に高値であった。本研究では、2群ともにpCRが得られた症例では得られなかった症例と比べてEFSのハザード比(HR)が0.40、0.21であった。ICIは腫瘍のPD-L1発現量が高いほど効果が高いが、サブ解析ではがん組織におけるPD-L1発現が50%以上の症例ではEFSのHRが0.26と非常に低かったが、50%未満ではHRにおいて対照群と有意差はみられなかった。 術前補助療法の負の側面としては、補助療法に伴う合併症あるいは侵襲のために一般状態が低下して耐術不能となる、あるいは術前治療が無効で手術の機会を逸する危険性がある。本研究では、術前治療後の治療継続率に関しては2群間の有意差は認められず、その点では許容される治療であると判断された。 ニボルマブの術前・術後補助療法が、進行非小細胞肺がんの外科治療成績を向上させることは、本研究で明らかにされた。同様の研究はペムブロリズマブ(抗PD-1抗体:KEYNOTE-671試験)、デュルバルマブ(抗PD-L1抗体:AEGEAN試験)などでも行われており、いずれもICIの上乗せ効果が報告されている。 本研究では従来の報告と同様に、がん組織のPD-L1発現度が高い場合には有用性が高いが、逆も真であり、実臨床に応用するためには治療開始前にPD-L1発現度を検査する必要がある。術後ニボルマブ投与の必要性についてはどうだろうか。先行研究のCheckMate-816は、ニボルマブの術前投与の有効性に関する臨床研究であり、対照群は術前にplatinum-doubletと投与、試験群にはこれにニボルマブを加えて投与するという類似した研究である。対象にはcIB期が含まれ多少異なるが、ニボルマブ群のpCRは24.0%とほぼ同等であり、EFSは31.6ヵ月(対照群20.8ヵ月)であった。あくまで参考ではあるが、大きな違いはないように思われる。とくにpCRを達成した症例の術後ニボルマブ継続投与の意義については、医療経済の観点からも重要である。今後、術後投与群・非投与群を比較した試験が必要になるかもしれない。

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HFrEF患者へのRAS阻害薬、人種間の効果差は?/JAMA

 レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の管理において重要であるが、黒人患者に対する効果が低いとの懸念がある。中国・杭州師範大学のLi Shen氏らは、RAS阻害薬の死亡抑制効果は黒人と非黒人で同程度であり、心不全による入院の、RAS阻害薬による相対リスクの減少効果は黒人患者で小さいものの、黒人患者は心不全による入院の発生率が高いため、絶対的な有益性は非黒人患者と変わらないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年5月29日号で報告された。RAS阻害薬の効果を黒人と非黒人で比較した無作為化試験のメタ解析 研究グループは、HFrEF患者におけるRAS阻害薬の心血管アウトカムに及ぼす効果を黒人患者と非黒人患者で比較する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(英国心臓財団[BHF]などの助成を受けた)。 2023年12月31日の時点で、MEDLINEおよびEmbaseのデータベースに登録された文献を検索した。対象は、HFrEFの成人患者における心血管アウトカムに及ぼすRAS阻害薬の効果を、黒人と非黒人の患者で比較した無作為化試験であった。 「系統的レビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目の独立の個人データ(PRISMA-IPD)」のガイドラインに準拠して個々の参加者のデータを抽出した。有効性の推定には1段階アプローチによる混合効果モデルを用いた。 主要アウトカムは、心不全による初回入院または心血管死の複合とした。心血管死、全死因死亡のHRに有意差はない 主解析は、プラセボを対照としたRAS阻害薬単剤の3件の無作為化試験について行った。参加者は8,825例で、このうち黒人は873例(9.9%)(平均年齢57.0[SD 11.0]歳、男性72.3%)、非黒人は7,952例(90.1%)(61.4[10.7]歳、82.6%)であった。非黒人の85.2%が白人、1.7%がアジア系であった。追跡期間中央値は34ヵ月だった。死亡および心不全による入院の割合は、いずれも非黒人患者に比べ黒人患者で大幅に高かった。 主要複合アウトカムの発生のプラセボ群に対するRAS阻害薬単剤群のハザード比(HR)は、黒人患者で0.84(95%信頼区間[CI]:0.69~1.03)、非黒人患者で0.73(0.67~0.79)であり、有意差を認めなかった(交互作用のp=0.14)。 心不全による初回入院の、プラセボ群に対するRAS阻害薬単剤群のHRは、非黒人患者が0.62(95%CI:0.56~0.69)であったのに対し、黒人患者では0.89(0.70~1.13)と相対リスクの減少効果が低かった(交互作用のp=0.006)。 一方、心血管死のHRは、黒人患者で0.83(95%CI:0.65~1.07)、非黒人患者で0.84(0.77~0.93)と、有意差はなかった(交互作用のp=0.99)。また、全死因死亡のHRは、それぞれ0.85(0.67~1.07)および0.87(0.80~0.96)だった(交互作用のp=0.89)。 心不全による入院と心血管死の全体の率比は、黒人患者で0.82(95%CI:0.66~1.02)、非黒人患者で0.72(0.66~0.80)であった(交互作用のp=0.27)。2剤のRAS阻害薬の試験を加えても同様の結果 基礎治療薬としてACE阻害薬を用い、これにARBを併用した2剤のRAS阻害薬の無作為化試験2件を加えた5つの試験(1万6,383例、黒人患者1,344例[8.2%]、非黒人患者1万5,039例[91.8%])の解析でも、同様の結果が得られた。 著者は、「これらの知見は、黒人患者に対する心不全治療の最適化に寄与する可能性がある」「本研究の限界として、黒人患者の症例数が少ない点が挙げられる」としている。

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SMART療法を処方される喘息患者は少ない

 吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の合剤を、喘息の長期管理薬としても発作発現時の治療薬としても用いる治療法をSMART(スマート)療法という。この治療法は、全米喘息教育予防プログラムと喘息グローバルイニシアチブのそれぞれのガイドラインで使用が推奨されている。しかし、新たな研究で、中等度から重度の成人喘息患者のうち、SMART療法が処方されているのはわずか15%程度に過ぎず、呼吸器およびアレルギー専門医の40%以上がこの治療法を採用していないことが明らかになった。米イエール大学医学部の呼吸器・集中治療医であるSandra Zaeh氏らによるこの研究結果は、米国胸部学会(ATS 2024、5月17〜22日、米サンディエゴ)で発表された。 米国でのSMART療法には、ICSのブデソニドと、即効性の気管支拡張作用を併せ持つLABAであるホルモテロール配合のシムビコートや、モメタゾン(ICS)とホルモテロール配合のDuleraなどがある。SMART療法が登場する以前の喘息のガイドラインでは、長期管理薬として1日2回のICSの使用に加え、発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)のアルブテロールのようなレスキュー薬の使用が推奨されていた。その後、2021年までに米国のガイドラインが更新され、維持療法とレスキュー療法の両方の目的でSMART療法を用いることが推奨されるようになった。研究グループは、2種類の吸入薬を使い分ける従来の治療法と比べて、両薬剤を一つに配合したSMART療法は喘息の症状や発作を有意に軽減することが示されていると説明する。 この研究では、米国北東部のヘルスケアシステムの電子カルテを用いて、中等度から重度の喘息患者におけるSMART療法の処方動向が調査された。対象は、2021年1月から2023年8月の間に1回以上呼吸器・アレルギークリニックで診察を受け、長期管理薬としてICSとLABA、またはICSのみを処方されていた喘息患者1,502人(平均年齢48.6歳、女性75.2%)であった。 その結果、44%(656/1,502人)の患者にICSとホルモテロールが長期管理薬として処方されており、SMART療法として処方されていたのはわずか15%(219/1,502人)に過ぎないことが明らかになった。また、SMART療法が処方されていた患者の89%(195/219人)は、SABAも同時処方されていた。さらに、SMART療法は、高齢患者とメディケア受益者に処方されにくい傾向のあることも示された。 Zaeh氏は、「これらの結果は、現行の喘息管理ガイドラインが臨床医によって日常的に実施または採用されていないことを示唆している」と述べている。イエール大学医学部のZoe Zimmerman氏は、「医療提供者は、高齢患者に対して新しい吸入レジメンを試すことに消極的だ。特に、患者が何年も同じ吸入薬を使用している場合、その治療レジメンを変更することに抵抗を感じやすい」との見方を示す。 研究グループによると、過去の研究では、ガイドラインが医師に広く採用されるようになるまでには15年以上かかることが指摘されているという。Zaeh氏は、「今回の研究結果は、臨床医によるガイドラインの採用には時間がかかるという考えを補強するものだ」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2024[第2版]

9年ぶりの改訂!本邦の実情に即した鼠径部ヘルニア診療の決定版9年ぶりの本改訂ではMinds方式を採用し、さまざまな手術法が存在する鼠径部ヘルニア診療を、効果の差の臨床的意味(益と害のバランス)まで考慮し検証した。システマティック・レビューが困難な臨床疑問、今後の重要課題に対してもコラム形式等で解説。鼠径ヘルニアのほか大腿ヘルニア、小児ヘルニアも取り上げ、本邦の実情に即したガイドラインとなった。日本ヘルニア学会2021年版鼠径部ヘルニア分類に関するCQも掲載。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2024[第2版]定価3,630円(税込)判型B5判頁数144頁(図数:61枚、カラー図数:1枚)発行2024年5月編集日本ヘルニア学会ガイドライン作成検討委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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口腔内細菌の検査で胃がんが検出可能に?

 がんによる死亡者数としては世界で4番目に多い胃がんが、いつの日か、診察室での口腔洗浄液を用いた簡単な検査で発見されるようになるかもしれない。米ラトガーズ・ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学のShruthi Reddy Perati氏らによる研究で、胃がん患者やその予備軍の口腔から採取した細菌サンプルは、健康な患者から採取した細菌サンプルとは明らかに異なることが明らかになった。この研究結果は、米国消化器病週間(DDW 2024、5月18〜21日、米ワシントン)で発表された。 Perati氏は、「口腔マイクロバイオームと胃のマイクロバイオームはつながっており、口腔内にどのような細菌がいるかを知ることで、胃の環境についても知ることができる。このことは、診療で用いられている検査や診療ガイドラインの変更につながるほど大きな意味を持つ」と述べている。 この研究でPerati氏らは、胃がん患者30人(胃がん群)と、胃がんの前段階にある患者30人(前がん群)、および健康な人38人(対照群)から口腔内細菌サンプルを採取して比較した。その結果、対照群と比べて、胃がん群と前がん群の口腔内細菌には明白な違いのある一方で、胃がん群と前がん群の口腔内細菌にはほとんど違いのないことが判明した。具体的には、胃がん群では、ヘリコバクター属、セレノモナス属、ラクトバチルス属など32種類の細菌属が、前がん群でも胃がん群と類似した23種類の細菌属が、対照群と比べて際立っていた。 研究グループは、「この結果は、胃の環境が変化して細胞が最終的にがん化し始めると同時に、口腔内のマイクロバイオームにも変化が生じる可能性を示唆している」と述べている。もし、これが事実であるなら、医師は、口腔洗浄液検査により患者の胃がんを未然に防ぐことができるかもしれない。 Perati氏は、「米国では胃がんの正式なスクリーニングガイドラインはなく、胃がん患者の半数以上が、がんがすでに進行した段階で診断を受ける」と話す。その上で同氏は、「がんの治療では、がんになってから患者を見つけるのでは遅過ぎる。がんを予防する上で理想的なタイミングは、がんになりかけているときだ。われわれが試した検査法では、前がん状態にある人を特定することができた。この検査法は、がんのスクリーニングや予防のツールとして非常に大きな可能性を秘めている」と話している。 この結果に基づき、研究グループは、健康な人と胃がんへ進行しつつある人の間で最も大きな違いを示す13種類の細菌種を取り上げたモデルを開発した。今後は、本研究で得た知見を検証するため、複数の病院でより大規模な研究を行う予定であるという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版

大幅アップデートの最新版登場!6年ぶりの改訂となる2024年版では、以下多くのアップデートがなされています。肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)のエビデンスの強化や、従来からの抗菌薬適正使用に基づいた一部抗菌薬の用量・選択候補薬の見直し、軽症・中等症・重症のアルゴリズムを合体した「アルゴリズムのまとめ」の追加、重症度判定などの参考用の鼓膜画像の更新など、本ガイドラインの「中耳炎診療の基本を伝える」使命に則った大改訂版となりました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版定価2,860円(税込)判型B5判頁数116頁(図数:4枚、カラー図数:2枚)発行2024年5月編集日本耳科学会日本小児耳鼻咽喉科学会日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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重症大動脈弁狭窄症へのTAVI、Myvalは既存THVに非劣性/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)において、バルーン拡張型の経カテーテル心臓弁(THV)であるMyval(Meril Life Sciences・インド)は、術後30日時の複合エンドポイントに関して既存のTHV(Sapienシリーズ[Edwards Lifesciences・米国]、またはEvolutシリーズ[Medtronic・米国])に対し非劣性であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のAndreas Baumbach氏らLANDMARK trial investigatorsが実施した「LANDMARK試験」で示された。バルーン拡張型弁(BEV)であるMyval THVシリーズは直径が1.5mm刻みであることから、通常の3mm刻みの生体弁と比較し、大動脈弁輪との正確なサイズ合わせが容易となる。Myval THVの安全性と有効性は、これまで症候性重症大動脈弁狭窄症患者および二尖弁患者を対象とした単群試験または傾向スコアマッチング試験において示されていた。Lancet誌2024年オンライン版5月22日号掲載の報告。欧州・南米など16ヵ国31施設で無作為化非盲検非劣性試験を実施 LANDMARK試験は、16ヵ国(ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダ、イタリア、スペイン、ニュージーランド、ポルトガル、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スロベニア、クロアチア、エストニア、ブラジル)の31施設で実施された、前向き無作為化非盲検非劣性試験である。 研究グループは、TAVIの適応を有する18歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症患者を、Myval群または既存群に1対1の割合に無作為に割り付けた。患者の適格性は、2021年欧州心臓病学会のガイドラインに従い地域のハートチームが評価した。 有効性および安全性の主要エンドポイントは、VARC-3の定義に基づく術後30日時の全死亡、脳卒中、出血(VARCタイプ3および4)、急性腎障害(ステージ2、3および4)、主要血管合併症、中等度以上の人工弁逆流および新たに恒久的なペースメーカー植込みを必要とする伝導系障害の複合エンドポイントであった。Myval THVの既存THVに対する非劣性は、ITT集団において、非劣性マージン10.44%、両群のイベント発生率26.10%と仮定して検証した。既存の生体弁に対する非劣性を検証 2021年1月6日~2023年12月5日に、症候性重症大動脈弁狭窄症患者768例がMyval THV群(384例)および既存THV群(384例)に割り付けられた。患者背景は、平均年齢がそれぞれ80.0歳(SD 5.7)と80.4歳(5.4)、女性が193例(50%)と176例(46%)で、米国胸部外科医学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコアの中央値は両群とも2.6%(四分位範囲[IQR]:1.7~4.0)であった。 複合エンドポイントのイベントは、Myval THV群で25%(94/381例)、既存THV群で27%(103/381例)に発生した。群間リスク差は-2.3%(95%信頼区間[CI]:NA~3.8)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを超えなかったことから、Myval THVの既存THVに対する非劣性が示された(非劣性のp値<0.0001)。 複合エンドポイントの各要素の発生率に、両群で有意差はみられなかった。

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歯の外傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第15回

今回は歯の外傷の対処法についてです。「内科医が歯を診るの?」と思われるかもしれませんが、施設でも救急外来でも転倒して歯がぐらついている、歯が抜けてしまった、という症例はたまに経験します。しかし、医師が歯について勉強することは、恐らく学生以降あまりありません。かくいう私も、外傷で搬送されてきた前歯が抜けかけている患者さんを歯科にコンサルトする際に、「右の上の前歯がぐらぐらしていて…」という専門用語の出てこない説明しかできませんでした。医師であればやはり専門用語をある程度理解し、緊急性がどの程度あるかを判断してコンサルトする必要があると実感しました。とはいえ、歯科領域は医師が学ぶ機会は乏しいので、今回は主に歯についての基本的な知識と、プライマリケア医が困る機会が多いであろう歯肉からの出血に対する簡易な対処法を示します。なお、今回の用語と治療は日本外傷歯科学会のガイドラインに沿って行います1)。<症例>78歳、男性施設入所中、転倒し、顔面を打撲した。本人はけろっとしているが口腔内から出血しており往診依頼。歯は入れ歯などではなく、全部自分のものである。歯の名称頭部は大丈夫と判断したという前提で口腔内を診察していきます。まず、歯の名称からおさらいしましょう。図1 歯の名称画像を拡大する必ずしも覚える必要はありませんので、診察する際にインターネットなどで調べてください。この患者さんは上の右の前歯とその横の歯の歯肉から出血がありました。これは「上顎右側中切歯と側切歯」に該当します。歯の解剖私は広島大学卒業で、学生時代に細胞の絵を描いて説明する授業がありました。卒業生はわかると思いますが、絵心のない人は非常に苦労します。重要なのは絵の上手さではありませんでしたが、歯の絵を描いた際に、歯も複雑なのだなと思った記憶があります。さて下記がその歯の解剖です。図2 歯の解剖画像を拡大する「破折」と「露髄」歯が欠損したときの重要なワードは破折と露髄です。「歯が折れたときの正式名称は?」と聞かれて答えられる医師はあまり多くはないかもしれませんが、歯が割れたり、折れたりすることを破折と表現します。この患者を診察すると、上顎右側中切歯が欠損していましたので、「上顎右側中切歯の破折」と表現します。では露髄とは何でしょうか。これは歯髄という神経が破折によって見えることです。歯が欠損した場合、この歯髄が見えるかどうかが非常に重要になります。というのも、この部位は感染に弱く、可能な限り早くセメントなどで保護する必要があるからです。よって、露髄の情報も加えて「上顎右側中切歯の露髄を伴う破折」となります。歯が抜ける?ぐらぐらする?この患者さんの上顎右側側切歯はぐらぐらして少し飛び出していまました。ではこれはどのような表現でしょうか? 図3を参照してください。図3 歯の脱臼画像を拡大する歯を打撲したことを「振とう」、ぐらぐらしていることを「亜脱臼」、飛び出していることを「挺出性脱臼」、めり込んでいることを「陥入(埋入)」、完全に抜けていることを「完全脱臼」と表現します。本症例では、上顎右側中切歯は振とう、上顎右側側切歯は挺出性脱臼になります。この患者について歯科に電話で相談したところ、そのまま歯科受診となりました。その後、中切歯はセメントで処置を受け、側切歯は抜歯されました。歯肉からの出血次に、歯肉からの出血について紹介します。歯が抜けると出血することが多いです。その際に抗凝固薬を飲んでいるとなかなか止血しないことがあります。基本は圧迫止血になりますが、それでも止血しない場合はボスミンガーゼや局所止血剤を用いて圧迫止血を行います。これでほぼ止まりますが、それでも止まらない場合は縫合が必要になります。自力で縫合できればよいのですが、難しい場合は歯科に相談しましょう。ただ、ボスミンガーゼや局所止血剤を用いても止まらない場合は、高度の凝固異常がある可能性があるため、歯科に相談するとともに血液検査で凝固障害の有無を調べましょう。すでに抜けていた場合歯が完全脱臼してしまっている場合は、歯を生理食塩水か牛乳につけましょう。また、歯が汚れていたとしても磨いたりしてはいけません。歯の周囲には生着するために必要な歯根膜があり、磨くことで歯根膜を障害してしまうからです。水で洗う程度にしてください。以上が歯科に関する基礎知識のおさらいでした。歯はどうしても学ぶ機会が乏しいので、コンサルトするときの参考にしてください。1)日本外傷歯科学会. 歯の外傷治療のガイドライン. 2023.

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第215回 乱立する一般社団法人の美容クリニック、院長の名義貸しも常態化、見て見ぬふりの厚労省も規制にやっと本腰か?

NHKが先頭に立って報道してきた美容医療のトラブル問題こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。最近気になっていることに電動キックボードがあります。東京の中心部の道路では、企業が貸し出すタイプ(シェアリングサービス)や個人所有の電動キックボードが増えており、素足むき出しの若者(とくに女子)などがヘルメットも被らずに疾走しています。学生時代からヘルメットにブーツでオートバイに乗ってきた私(最近では胸部ガードもしています)としては、危なっかしくて見ていられません。2023年7月の法改正では、個人所有、貸し出しにかかわらず、時速20km以下の電動キックボード(特定小型原付)は免許不要で、ヘルメットも努力義務となりました。いわゆる規制緩和ということでしょうが、交差点での直進・左折優先の常識も知らない輩が車道、歩道の区別なく走り回るというのはどうなんでしょう。おそらく、事故が多発して、再び何らかの規制がかかるのではないでしょうか。そもそもあの小さなタイヤ径だと、多少大きな石や障害物、段差にぶつかると簡単に転倒してしまいます。素足だと即、血だらけです。なお、個人的には子供を乗せて猛スピードで走る母親運転の電動ママチャリ(電動アシスト自転車)や、若者がしたり顔で無免許運転するペダル付き原動機付自転車が電動キックボード以上に恐いのですが、それについてはまた日を改めて。さて今回は、NHKが先頭に立って報道している美容医療のトラブル問題について書いてみたいと思います。こちらは公益法人制度改革という規制緩和によって、少々やっかいなことになっているようです。専門の医師などによる検討会を立ち上げ、適切な美容医療のあり方や対策を協議へ5月30日朝、NHKは「美容医療でトラブル増加 厚労省 検討会立ち上げ対策など協議へ」と題するニュースを放送、「脱毛や薄毛治療など自由診療で行われる美容医療をめぐって健康被害などの相談や契約上のトラブルが増加していることを受け、厚生労働省は専門家などによる検討会を立ち上げ、対策などを協議していくことになりました」と報じました。NHKニュースによれば、「保険診療の場合は、地方厚生局や診療報酬の審査支払機関による確認が行われているが、自由診療の場合、第三者が確認する制度がない」とのことです。自由診療であり、保険財政には直接影響が及ばない美容医療は、長年厚労省が放置してきた問題でもあります。NHKの報道が事実ならば、何らかの“規制”や“ガイドライン”導入などが行われるかもしれません。近年開設の多くの美容医療のクリニックが医療法人ではなく一般社団法人実は、NHKのこの報道には前段がありました。前日、5月29日の午後7時のニュースで、「一般社団法人のクリニック 都市部で増 医師『名義貸し』証言も」のニュースを放送、それに続く「クローズアップ現代」でも「追跡“自由診療ビジネス”の闇 相次ぐ美容・健康トラブルの深層」のタイトルで、その実態を詳細に報道しました。「厚労省 検討会立ち上げ」のニュースは、そうした一連の報道の最後に発信されたスクープだったわけです。5月29日のニュースと「クローズアップ現代」を観て驚いたのは、「国民生活センターによると美容医療をめぐるトラブルの相談件数は昨年度が5,833件で、5年前のおよそ2.9倍に増加」したという実態に加え、多くの美容医療のクリニックが医療法人ではなく、一般社団法人で開設されており、理事長は医師以外であるケースが少なくない、という事実です。「クローズアップ現代」では、取材班が東京23区や大阪市内の一般社団法人のクリニックを独自に調査した結果も報道していました。それによれば、「一般社団法人が運営するクリニックは298件、ほとんどがコロナ禍前後に設立され、6割以上が美容医療を行っている」とのことでした。管理者となる医師の「名義貸し」が疑われるケースもさらに、管理者となる医師(いわゆる院長)の「名義貸し」が疑われるケースもあるとのこと。大阪市内の美容クリニックの管理医師となっていた医師の「保健所の職員が来た時に1度だけクリニックに行ったが、それ以降は1度も出勤しておらず、“名義貸し”状態だった。管理医師をやっていたときは給料をもらっていた」というショッキングなコメントを紹介していました。つまり、医師以外、異業種のオーナーが医師にお金を払って院長の名義を貸してもらい、一般社団法人で美容外科のクリニックを開設、実際の美容外科の施術は形成外科が専門でもない医師をアルバイトで雇って対応――、というのが基本的なビジネススキームのようです。院長の名義貸しは、ほかの医療機関の院長や病院の常勤医などではできないため、「医師免許がある大学院生」や「病院の研修医」などを専門業者が仲介して紹介してもらうケースが多い、とのことでした。また、「クローズアップ現代」では、実際に施術を行う医師について、飲食店オーナーが経営するクリニックの元職員の「小児科や放射線科などが専門で美容医療の経験のない30人ほどの医師がアルバイトで集められシフトを回していた。トラブルが起きた際のマニュアルなどは整備されていなかった」という証言も紹介していました。監督官庁がなく野放しの一般社団法人クリニック一般社団法人は2008年の公益法人制度改革にともなって創設された新しい法人類型です。原則、医師が理事長となる医療法人とは違い、管理者となる医師(いわゆる雇われ院長)が用意できれば誰でも経営に参入することができるほか、都道府県の認可も不要で登記のみで設立できます。診療所という業態の開設は管轄する保健所の認可が必要となりますが、保健所の管轄地域にすでに一般社団法人の診療所があれば、ほぼ認可されるようです。つまり、すでに一般社団法人の美容外科が乱立している大都市部ならば、その開設は極めて容易と言えます。医療法人であったり、保険診療を行ったりしているのであれば、そのクリニックは厚生労働省の管轄となります。しかし、一般社団法人は監督官庁がなく、事業の報告義務もありません。文字通り“野放し”なのです。自由診療で行われる“アコギな医療”に鋭いメスを問題は、美容医療だけではありません。「クローズアップ現代」では、一般社団法人の自由診療クリニックが、がん免疫療法や再生医療の世界にも積極的に進出し始めているとも報じていました。法律の力が及ばず監督外、管轄外になることについて、役所は往々にして無関心かつ放置しがちです。臨床効果が確立していないにもかかわらず、自由診療で法外な治療費をふっかけてきた一部のがん免疫療法についても、これまでとくに明確な規制を設けることはしませんでした。今回、厚労省は、美容医療について専門家などによる検討会を立ち上げ、対策などを協議する、とのことです。電動キックボードやペダル付き原動機付自転車などは、被害が交通事故という「目に見えるかたち」で現れるので対策も比較的講じやすいですが、広く自由診療で行われる“アコギな医療”の多くは、根拠となる法律や規制も曖昧なため、実際の被害がなかなか表沙汰になりません。せっかくの機会ですから、そうした“アコギな医療”にもぜひ鋭いメスを入れてほしいですし、さらに言えば、「第184回 線虫がん検査『N-NOSE』、検査精度の疑惑が再燃、日本核医学会の中にあるPET核医学分科会・PETがん検診ワーキンググループが本格調査へ」で書いたような、臨床的な評価が定まっていないにもかかわらず、一般向け検査で荒稼ぎする一部の検査法も、そろそろ“放置”するのはやめていただきたいと思います。

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症例発見法によるCOPD・喘息の早期診断、医療利用の低減に/NEJM

 未診断の慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の成人を特定するための症例発見法(case-finding method)によって呼吸器専門医の指示による治療を受けた患者は、通常治療の患者と比較して、その後の呼吸器疾患による医療利用が少なくなることが、カナダ・オタワ大学のShawn D. Aaron氏らUCAP Investigatorsが実施した「UCAP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月19日号に掲載された。カナダ17施設の無作為化対照比較試験 研究グループは、未診断のCOPDまたは喘息を有する患者では、症例発見法を用いた早期の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療利用が低減し、健康アウトカムが改善するかを検証する目的で無作為化対照比較試験を実施し、2017年6月~2023年1月にカナダの17施設で参加者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 症例発見法により、肺疾患の診断を受けていないが呼吸器症状を呈する成人を特定した。被験者を、ガイドラインに基づく治療を開始するよう指示された呼吸器専門医と喘息/COPD指導員による評価を受ける群(介入群)、またはプライマリケア医による通常治療を受ける群(通常治療群)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、呼吸器疾患に対する参加者の自主的な医療利用の年間発生率とした。SGRQ、CAT、FEV1も良好 受診した3万8,353例中595例で未診断のCOPDまたは喘息を発見し、このうち508例を無作為化の対象とした。253例が介入群(平均年齢63.4[SD 13.4]歳、男性64%)、255例が通常治療群(62.8[13.6]歳、58%)に割り付けられた。 主要アウトカムのイベントの年間発生率は、通常治療群に比べ介入群で有意に低かった(0.53件vs.1.12件/人年、発生率比:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.63、p<0.001)。 St. George Respiratory Questionnaire(SGRQ、0~100点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した疾患特異的QOLは、通常治療群ではベースラインから6.8点低下したのに対し、介入群では10.2点の低下と良好であった(群間差:-3.5点、95%CI:-6.0~-0.9)。 COPD評価テスト(CAT、0~40点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した症状負担は、通常治療群ではベースラインから2.6点低下したのに比べ、介入群では3.8点低下し良好であった(群間差:-1.3点、95%CI:-2.4~-0.1)。 また、1秒量(FEV1)は、通常治療群ではベースラインから22mL増加したのに対し、介入群では119mLの増加であった(群間差:94mL、95%CI:50~138)。有害事象は両群で同程度 有害事象の発生は両群で同程度であり、介入群では21例に24件、通常治療群では14例に16件発生した。めまいや失神(スパイロメトリー検査による)、筋肉のけいれん(処方された呼吸器疾患治療薬による可能性がある)に関連するものが多かった。入院に至る重篤な有害事象は、介入群で5件、通常治療群で7件報告された。12ヵ月の追跡期間中に、介入群で2例(心停止、肺がん)、通常治療群で2例(心停止、肝不全)の死亡が発生した。 著者は、「この症例発見法は、多くの医療システムに導入可能であり、未診断のCOPDまたは喘息患者における診断と治療の改善に寄与する可能性がある」としている。

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6月4日 水虫治療の日【今日は何の日?】

【6月4日 水虫治療の日】〔由来〕「水虫」の「む(6)し(4)」の語呂合わせと、水虫を患う人が急増する入梅の時期であることから、水虫の早期治療の大切さや治療啓発を目的に大源製薬株式会社(兵庫・尼崎市)が制定。関連コンテンツ知っておきたい皮膚真菌症の診療とガイドライン【診療よろず相談TV】相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】水虫の直接鏡検で菌体を見つけるコツ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】爪白癬【患者説明用スライド】「爪白癬は外用薬で治す」は誤解?

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学校健診でのLDL-C測定、親の疾患発見にも寄与/日本動脈硬化学会

 家族性高コレステロール血症(FH)は、約300人に1人の頻度で存在する常染色体顕性(優性)遺伝性疾患である1)。出生時よりLDL-C高値を示し、心筋梗塞などの冠動脈疾患発症率は一般人より10倍以上高い。診断基準が明確化1,2)されているものの、診断率が低い疾患の一つある。香川県では、FHの小児を早期診断することで親のFHの診断につなげる取り組みに力を入れており、今回、南野 哲男氏(香川大学医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科学 教授)が「小児生活習慣病予防健診により家族性高コレステロール血症(FH)のこどもと大人を守る」と題し、香川県で行われている小児生活習慣病予防健診事業3)や小児FHスクリーニングの全国展開への期待について話をした(主催:日本動脈硬化学会)。学校健診が大人の疾患発掘にも有用 小児生活習慣病予防健診とは、小学4年生(9~10歳)を対象に、将来の生活習慣病の発症を予防する目的で2012年より始まった香川県独自の健診事業である。県内17市町すべてで同じプロトコル(1:身長・体重、2:血液検査[LDL-C、HDL、TG、AST/ALT、血糖]、3:生活習慣に関するアンケート)に基づいて実施されている。健診自体は任意であるものの、毎年8,000人(対象者の92%以上)が受診し、実質的には、脂質ユニバーサルスクリーニングとみなすことができる。健診の結果がLDL-C>140mg/dLであれば、かかりつけ医へ受診・相談が推奨され、FHが疑われた場合、大学・基幹病院に紹介され、必要時、次世代シーケンサーを用いたFH遺伝子の検査を行う体制が構築されている。 FHは常染色体顕性(優性)遺伝性疾患であるため1)、同氏は「子供がFHだとわかれば、両親のいずれかもFHである。子供を動脈硬化から守るユニバーサルスクリーニングはもちろんのこと、リバースカスケードスクリーニングを実施することにより、親は冠動脈疾患発症前に治療を開始することができるようになった。現在までに400人以上の子供と親・兄弟のFHを診断した」と話した。香川のエビデンスが診断基準に採用 このほかにも、本事業で得られたデータ解析を担うことで、エビデンスの観点からもこの取り組みの重要性が認められている。「小児生活習慣病予防健診で得られたデータから、2017年のガイドラインではFH発見の感度が低いことが示され、見落とし症例が存在することが明らかになった。また、LDL-Cが250mg/dL以上の子供はすべて病原性遺伝子変異陽性であることも判明した。これらの結果を受け、22年に改訂された小児FHガイドライン1)では、香川発の科学的エビデンスが診断基準に採用され、見落としを減らすため”FH疑い“の概念が導入された。さらに、改訂版では“LDL-C≧250g/dLは“FH疑いと診断”することになった」と述べた。実際に2022年のガイドラインの診断基準をもって検証を行ったところ、FHの確定診断の感度は「特異度を維持したまま上昇」という結果が得られ、診断基準を作成して検証することの重要性も証明されたという。ただし、「親と子を別々に診察すると治療継続の低下やドロップアウトを招きかねない。それらを防ぐためにもFHの親子を一緒に診察することが鍵となる」と説明した。自治体事業から医学的結果を生み出す 世界最大規模の小児FHスクリーニング体制を誇る香川県。今後の課題として、親・子の疾患啓発、健診結果の活用・有用性の証明が求められるが、「現在、学校側より“子供から親にFHを教える課題を出す”案が検討されている。また、医療側の取り組みとして、心筋梗塞の既往者を対象としたFHスクリーニングを実施する取り組みを始めている。学校採血による小児生活習慣病予防健診を起点とした小児FHスクリーニングは、静岡県の一部(中東遠地域)ではすでに開始され、そのほかにも行政(市町)や医師会、アカデミアメンバーと協議を進めている」と、事業が広がりつつあることを示した。 最後に同氏は「オール香川(地方公共団体、県医師会、大学・病院、学会、FH家族/一般市民)で小児FHを見つけていこうと奮闘している。小児FHスクリーニング体制を構築することで、小児・成人ともにFHの診断率は飛躍的に向上することが期待される。この公衆衛生学的な取り組みにより、科学的エビデンスを集積し、政策提言を実現させ、全国展開を図りたい」と締めくくった。

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身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?

 米国における身体活動のガイドラインでは、健康のために中~高強度の身体活動を週150分以上行うことを推奨しているが、歩数に基づく推奨はエビデンスが十分ではないため発表されていない。今回、米国・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの浜谷 陸太氏らによる米国の62歳以上の女性を対象としたコホート研究において、中~高強度身体活動時間および歩数と全死亡率および心血管疾患(CVD)の関連が質的に同様であることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年5月20日号に掲載。 このコホート研究は、1992~2004年に米国で実施した無作為化試験であるWomen's Health Studyの参加者の追跡データを解析したもの。参加者はCVDやがんを罹患していない62歳以上の女性で、年1回アンケートに回答し、中~高強度身体活動に費やした時間と歩数を加速度計で連続7日間測定した。交絡因子調整後の中~高強度身体活動の時間および歩数と全死亡およびCVD(心筋梗塞・脳卒中・CVD死亡の複合)との関連を、Cox比例ハザード回帰モデル、制限付き平均生存時間の差、受信者動作特性曲線下面積(AUC)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1万4,399人の女性(平均年齢:71.8歳)が対象となった。・中~高強度身体活動時間の中央値は週62分(四分位範囲:20~149分)、歩数の中央値は1日5,183歩(同:3,691~7,001歩)であった。・追跡期間中央値9.0年で、全死亡の1標準偏差当たりのハザード比は、中~高強度身体活動時間が0.82(95%信頼区間[CI]:0.75~0.90)、歩数が0.74(同:0.69~0.80)であった。・中~高強度身体活動時間および歩数が多い(上位3四分位群vs.最低四分位群)ほど生存期間(period free from death)が長かった。・中~高強度身体活動時間および歩数での全死亡率のAUCは同様で、どちらの指標も0.55(95%CI:0.52~0.57)であった。CVDとの関連についても同様だった。 著者らは「今後のガイドラインにおいては、個々人の好みに対応できるよう、時間に基づく目標と共に歩数に基づく目標が検討されるべき」としている。

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