サイト内検索|page:120

検索結果 合計:2882件 表示位置:2381 - 2400

2381.

今年3剤が承認、去勢抵抗性前立腺がんの今後の治療選択は?

 近年、患者数が急増している前立腺がんにおいて、標準的な治療であるホルモン療法が無効となる患者も増えている。このような去勢抵抗性前立腺がんにはドセタキセルが標準治療となっているが、ドセタキセル無効症例に対する治療薬の開発が進み、今年これまでに3剤が承認された。そのうち、唯一の化学療法剤であるカバジタキセル(商品名:ジェブタナ)は、どのような患者さんに投与すべきなのか―。7月10日(木)に開催されたメディアセミナー(主催:サノフィ株式会社)にて、横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学 准教授 上村 博司氏が、治療の選択や切り替えのタイミングについて解説した。 新たな前立腺がん治療薬として、今年5月にアンドロゲン受容体を阻害するエンザルタミド(商品名:イクスタンジ)が発売され、今月4日には、アンドロゲン合成を阻害するアビラテロン(商品名:ザイティガ)とカバジタキセルが承認され、発売が待たれている。3剤のうち、カバジタキセルは唯一、化学療法剤であり注射剤である。 本講演で上村氏は、前立腺がんは不均一な疾患であることから、「画一的な治療方法ではなく、さまざまな治療法を活かすことが重要である」と述べた。そのうえで、去勢抵抗性前立腺がんの標準治療であるドセタキセル無効後の治療選択として、実臨床ではまず経口薬であるアンドロゲン受容体標的薬2剤のどちらかを選択することが多いと思われるが、化学療法を優先すべき患者を見極めることの重要性を強調した。 上村氏は、化学療法剤を優先すべき患者として、1)転移部位が多く初期ホルモン療法の効果が短期間、2)転移部位の症状が強くPSA上昇が速い、3)肝臓・肺などに転移がある、といった経口ホルモン療法が効きにくい症例、4)介助なく自分自身の行動が管理できる、5)貧血が軽度である、といった全身状態のよい症例を挙げた。 また、先にアンドロゲン受容体標的薬による治療を行っている場合は、病勢の進行を見逃さず、適切なタイミングで治療を切り替えることが重要と上村氏は述べた。アンドロゲン受容体標的薬治療においては、最初から抵抗性の症例(プライマリーレジスタンス)、1年以内に無効となる部分的抵抗性症例、1年半以上効果が継続する感受性症例が存在することから、頻回のモニタリングが海外のガイドラインでも推奨されている。さらに、European Expert Consensus Panelにおいて、アンドロゲン受容体標的薬へのプライマリーレジスタンスを確認する方法として「治療開始から3ヵ月以内に画像上の進行」のコンセンサスが得られていることから、上村氏はCTや骨シンチグラフィーといった画像診断の必要性を強調した。

2382.

抗菌薬静脈内投与後のアナフィラキシーショックによる死亡

消化器最終判決平成16年9月7日 最高裁判所 判決概要S状結腸がんの開腹術後に縫合不全を来たした57歳男性。抗菌薬投与を中心とした保存的治療を行っていた。術後17日、ドレーン内溶液の培養結果から、抗菌薬を一部変更してミノサイクリン(商品名:ミノマイシン)を静脈内投与したが、その直後にアナフィラキシーショックを発症して心肺停止状態となる。著しい喉頭浮腫のため気道確保は難航し、何とか気管内挿管に成功して救急蘇生を行ったが、発症から3時間半後に死亡した。詳細な経過患者情報平成2年7月19日 注腸造影検査などによりS状結腸がんと診断された57歳男性。初診時の問診票には、「異常体質過敏症、ショックなどの有無」欄の「抗菌薬剤(ペニシリン、ストマイなど)」の箇所に丸印を付けて提出した経過平成2(1990)年8月2日開腹手術目的で総合病院に入院。看護師に対し、風邪薬で蕁麻疹が出た経験があり、青魚、生魚で蕁麻疹が出ると申告。担当医師の問診でも、薬物アレルギーがあり、風邪薬で蕁麻疹が出たことがあると申告したが、担当医師は抗菌薬ではない市販の消炎鎮痛薬であろうと解釈し、具体的な薬品名など、薬物アレルギーの具体的内容、その詳細は把握しなかった。8月8日右半結腸切除術施行。手術後の感染予防目的として、セフォチアム(同:パンスポリン)およびセフチゾキシム(同:エポセリン)を投与(いずれも皮内反応は陰性)。8月16日(術後8日)腹部のドレーンから便汁様の排液が認められ、縫合不全と診断。保存的治療を行う。8月21日(術後13日)ドレーンからの分泌物を細菌培養検査に提出。8月23日(術後15日)38℃前後の発熱。8月25日(術後17日)解熱傾向がみられないため、抗菌薬をピペラシリン(同:ペントシリン)とセフメノキシム(同:ベストコール)に変更(いずれも皮内反応は陰性)。10:00ペントシリン® 2g、ベストコール® 1gを点滴静注。とくに異常は認められなかった。13:00細菌培養検査の結果が判明し、4種類の菌が確認された。ベストコール®は2種の菌に、ペントシリン®は3種の菌に感受性が認められたが、4種の菌すべてに感受性があるのはミノマイシン®であったため、ベストコール®をミノマイシン®に変更し、同日夜の投与分からペントシリン®とミノマイシン®の2剤併用で様子をみることにした。22:00看護師によりペントシリン® 2g、ミノマイシン® 100mgの点滴静注が開始された(主治医から看護師に対し、投与方法、投与後の経過観察などについて特別な指示なし)。ところが、点滴静注を開始して数分後に苦しくなってうめき声を上げ、付き添い中の妻がナースコール。22:10看護師が訪室。抗菌薬の点滴開始直後から気分が悪く体がピリピリした感じがするという言葉を聞き、各薬剤の投与を中止してドクターコール。22:15「オエッ」というような声を何回か発した後、心肺停止状態となる。数分後に医師が到着し、ただちにアンビューバッグによる人工呼吸、心臓マッサージを開始。22:30気管内挿管を試みたが、喉頭浮腫が強く挿管不能のため、喉頭穿刺を行う。22:40気管内挿管に成功するが心肺停止状態。アドレナリン(同:ボスミン)投与をはじめとした救急蘇生を続けるが、心肺は再開せず。8月26日(術後18日)01:28死亡確認。死因はいずれかの薬剤によるアナフィラキシーショックと考えられた。当事者の主張患者側(原告)の主張今回使用した抗菌薬には、アナフィラキシーショックなど重篤な副作用を生じる可能性があるのだから、もともと薬剤アレルギーの既往がある本件に抗菌薬を静脈内投与する場合、異常事態に備えて速やかに対応できるよう十分な監視体制を講じる注意義務があった。ところが、医師は看護師に特別な監視指示を与えることなく、漫然と抗菌薬投与を命じたため、アナフィラキシーショックの発見が遅れた。しかも、重篤な副作用に備えて救命措置を準備しておく注意義務があったにもかかわらず、気道確保や強心剤投与が遅れたため救命できなかった。病院側(被告)の主張本件で使用した抗菌薬は、従前から投与していた薬剤を一部変更しただけに過ぎず、薬物アレルギーの既往症があることは承知していたが、それまでに使用した抗菌薬では副作用はなかった。そのため、新たに投与した(皮内反応は不要とされている)ミノマイシン®投与後にアナフィラキシーショックを生じることは予見不可能であるし、そのような重篤な副作用を想定して医師または看護師が付き添ってまで経過観察をする義務はない。そして、容態急変後は速やかに当直医師が対応しており、救急蘇生に過誤があったということはできない。裁判所の判断高等裁判所の判断医師、看護師に過失なし(1億2,000万円の請求を棄却)。最高裁判所の判断(平成16年9月7日)原審(高等裁判所)の判断は以下の理由で是認できない。薬剤が静注により投与された場合に起きるアナフィラキシーショックは、ほとんどの場合、静脈内投与後5分以内に発症するものとされており、その病変の進行が急速であることから、アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある薬剤を投与する場合には、投与後の経過観察を十分に行い、その初期症状をいち早く察知することが肝要であり、発症した場合には、薬剤の投与をただちに中止するとともに、できるだけ早期に救急治療を行うことが重要である。とくに、アレルギー性疾患を有する患者の場合には、薬剤の投与によるアナフィラキシーショックの発症率が高いことから、格別の注意を払うことが必要とされている。本件では入院時の問診で薬物アレルギーの申告を受けていたのだから、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性のある抗菌薬を投与するに際しては、重篤な副作用の発症する可能性を予見し、その発症に備えてあらかじめ看護師に対し、投与後の経過観察を指示・連絡をする注意義務があった。担当看護師は抗菌薬を開始後すぐに病室から退出してしまい、その結果、心臓マッサージが開始されたのが発症から10分以上経過したあとで、気管内挿管が試みられたのが発症から20分以上、ボスミン®投与は発症後40分が経過したあとであり、救急措置が大幅に遅れた。これでは投与後5分以内に発症するというアナフィラキシーショックへの対応は明らかに不適切である。以上のように、担当医師や看護師が注意義務を怠った過失があるから、判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるため、死亡との因果関係をさらに審理をつくさせるため、本件を高等裁判所に差し戻すこととする。考察またまた医師にとっては驚くべき裁判官の考え方が示されました。しかも、最高裁判所の担当判事4名が全員一致した判断というのですから、医師と法律専門家との考え方には、どうしようもなく深い溝があると思います。本症例は、S状結腸がんの開腹手術後8日目に縫合不全を来たし(これはやむを得ない合併症と考えられます)、術後17日でそれまで投与していた抗菌薬を変更、その後に報告された細菌培養の結果から、より効果の期待できるミノマイシン®を点滴投与したところ、その直後にアナフィラキシーショックを発症しました。ショック発現までの時間経過を振り返ると、22:00ミノマイシン®開始。数分後に苦しくなりうめき声を上げたので家族がナースコール。22:10看護師が訪室、各薬剤の投与を中止してドクターコール。22:15心肺停止状態。数分後に医師が到着し、救急蘇生開始。22:30喉頭浮腫が強く挿管不能のため、喉頭穿刺を行う。22:40気管内挿管に成功するが心肺停止状態。となっています。今回の病院は約350床程度の規模で、上記の対応をみる限り、病院内の急変に対する体制としてはけっして不十分ではないと思います。最高裁判所の判事は、アナフィラキシーショックは5分以内の発見が大事である、という文献をもとに、もし看護師がミノマイシン®開始後ずっと付き添っていれば、もっと早く救急措置ができたであろう、という根拠で医師の過失と断じました。ところが当時の状況は、大腸がんの開腹手術後17日が経過し、すでに集中治療室から一般病室へ転室していると思われ、何とか縫合不全を保存的治療で治そうとしている状況でした。しかも、薬剤アレルギーの既往症が申告されていたとはいえ、それまでに使用したパンスポリン®、セフチゾキシム®、ベストコール®、ペントシリン®では何ら副作用の問題はなかったのですから、抗菌薬の一部変さらに際して看護師に特別な指示を出すべき積極的な理由はなかったと思います。ましてや、ミノマイシン®は皮内反応が不要とされている抗菌薬なので、裁判官のいうようにアナフィラキシーショックを予見して、22:00からのミノマイシン®開始に際して看護師をつきっきりで貼り付けておくことなど、けっして現実的ではないように思います。もし、看護師がベッドサイドでずっと付き添っていたとして、救命措置をどれくらい早く開始することができたでしょうか。側に付き添っていた家族が異変に気づいたのは、ミノマイシン®静脈注射開始後数分でしたから、おそらく22:05頃にドクターコールを行い、22:10くらいには院内の当直医が病室へ到着することができたと思われます(おそらく5~10分程度の短縮でしょう)。その時点から救急蘇生が開始されることになりますが、果たして22:15の心肺停止を5分間の措置で防ぎ得たでしょうか。しかもアナフィラキシーショックに関連した喉頭浮腫が急激に進行し、気道を確保することすらできず、やむなく喉頭穿刺まで行っていますので、けっして茫然自失として事態をやり過ごしたとか、注意義務を果たさなかったというような診療行為ではないと思います。つまり、本件のような激烈なアナフィラキシーショックの場合、医師が神業のような処置を行っても救命できないケースが存在するのは厳然とした事実です。にもかかわらず、医師や看護師がつきっきりでみていなかったのが悪い、救急措置をもう少し早くすれば助かったかもしれないなどという考え方は、病気のリスクを紙面でしか知り得ない裁判官の偏った考え方といえるのではないでしょうか。このように、医師にとっては防ぎようのないと思われる病態をも、医療ミスとして結果責任を問う声が非常に大きくなっていると思います。極論すると、個々の医療行為に対してすべてのリスクを説明し、それでもなお治療を受けると患者が同意しない限り、医師は結果責任を免れることはできません。すなわち本件でも、患者およびその家族へ、術後の縫合不全や感染症にはミノマイシン®が必要であることを十分に説明し、アレルギーがある患者ではミノマイシン®によってショックを起こして死亡することもありうるけれども、それでも注射してよいか、という同意を求めなければならない、ということですが、そのような説明をすることはきわめて不自然でしょう。本件は「医師や看護師の過失はない」と考えた高等裁判所へ差し戻されていますが、ぜひとも良識のある判断を期待したいと思います。一方、抗菌薬の取り扱いに関して、2004年10月に日本化学療法学会から「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」が発表されました。それによると、これまで慣習化していた抗菌薬投与前の皮内反応は、アナフィラキシー発現の予知として有用性に乏しいと結論付けています。具体的には、アレルギー歴のない不特定多数の症例には皮内反応の有用性はないとする一方で、病歴からアレルギーが疑われる患者に抗菌薬を投与せざるを得ない場合には、あらかじめ皮内反応を行った方がよいということになります。そして、抗菌薬静脈内投与に際して重要な基本的事項として、以下の3点が強調されました。事前に既往症について十分な問診を行い、抗菌薬などによるアレルギー歴は必ず確認すること投与に際しては必ずショックなどに対する救急処置のとれる準備をしておくこと投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。とくに、投与開始直後は注意深く観察することこのうち、本件のようなケースには第三項が重要となります。これまでは、抗菌薬静脈内注射後にはまれに重篤な副作用が現れることがあるので経過観察は大事ですよ、という一般的な認識はあっても、具体的にどのようにするのか、といった対策まで講じている施設は少ないのではないでしょうか。しかも、抗菌薬投与の患者全員に対し、「投与開始から投与終了後まで十分な観察を行う」ことは、実際の医療現場では事実上不可能ではないかと思われます。ところが、このようなガイドラインが発表されると、不幸にも抗菌薬によるアナフィラキシーショックを発症して死亡し紛争へ至った場合、この基本三原則に基づいて医師の過失を判断する可能性がきわめて高くなります。当時は急患で忙しかった、看護要員が足りずいかんともし難い、などというような個別の事情は、一切通用しなくなると思います。またガイドラインの記述は、「抗菌薬投与開始直後は注意深く観察すること」という漠然とした内容であり、ではどのようにしたらよいのか、バイタルサインをモニターするべきなのか、開始直後とは何分までなのか、といった対策までは提示されていません。ところが、このガイドラインのもとになった「日本化学療法学会臨床試験委員会・皮内反応検討特別部会の報告書(日本化学療法学会雑誌 Vol.51:497-506, 2003)」によると、「きわめて低頻度であるがアナフィラキシーショックが発現するので、事前に抗菌薬によるショックを含むアレルギー歴の問診を必ず行い、静脈内投与開始後20~30分における患者の観察とショック発現に対する対処の備えをしておくことが必要である」とされました。すなわち、ここではっきりと「20~30分」という具体的な基準が示されてしまいましたので、今後はこれがスタンダードとされる可能性が高いと思います。したがって、抗菌薬の初回静脈内投与では、全例において、点滴開始後少なくとも20分程度は誰かが付き添う、モニターをつけておく、などといった注意を払う必要があることになります。これを杓子定規に医療現場に当てはめると、かなりな混乱を招くことは十分に予測されますが、世の中の流れがこのようになっている以上、けっして見過ごすわけにはいかないと思います。今回の症例を参考にして、ぜひとも先生方の施設における方針を再確認して頂ければと思います。日本化学療法学会「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版)」日本化学療法学会「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策について(2004年版概要)」日本化学療法学会臨床試験委員会・皮内反応検討特別部会報告書(日本化学療法学会雑誌 Vol.51:497-506, 2003)」消化器

2383.

大腿骨頚部骨折手術、局所麻酔vs. 全身麻酔/JAMA

 大腿骨頚部骨折手術時の局所麻酔は全身麻酔と比較して、30日死亡を低下せず、入院期間の短縮はわずかであることが、米国・ペンシルベニア大学のMark D. Neuman氏らによる後ろ向き適合コホート研究の結果、示された。最近の診療ガイドラインでは、局所麻酔の使用が提唱されている。著者は「今回の分析では、局所麻酔について死亡に対する有益性があることは裏付けられなかった」と結論している。JAMA誌2014年6月25日号掲載の報告より。30日死亡率と入院期間について評価 研究グループは、大腿骨頚部骨折後の30日死亡率と入院期間を、手術時の局所麻酔(脊髄くも膜下または硬膜外麻酔など)vs. 全身麻酔で評価した。2004年7月1日~2011年12月31日に、ニューヨークの急性期治療を担う総合病院で同手術を受けた50歳以上の患者を対象とした。 主要分析は、遠近(near-far)操作変数マッチング法を用いて、局所麻酔が盛んに行われていると特定された病院近くに居住する患者と、同じく局所麻酔が回避され全身麻酔が行われていると特定された病院近くに居住する患者について評価した。 副次分析は、同一病院内および全病院の中で局所麻酔または全身麻酔を受けた患者をマッチさせて検討した。局所麻酔群、30日死亡率の有意な低下みられず、入院期間は有意だが0.6日の短縮 被験者は5万6,729例であり、1万5,904例(28%)が局所麻酔を、4万825例(72%)が全身麻酔を受けていた。全体で死亡は3,032例(5.3%)、入院期間のM推定値(M estimate)は6.2日(95%信頼区間[CI]:6.2~6.2)であった。 主要分析(対象患者計2万1,514例)では、麻酔法の違いによる30日死亡率の有意差はみられなかった。局所麻酔病院群に分類された患者1万757例における死亡は583例(5.4%)、全身麻酔病院群に分類された患者1万757例における死亡は629例(5.8%)で、操作変数推定リスク差は-1.1%(95%信頼区間[CI]:-2.8~0.5、p=0.20)だった。 30日死亡率について、副次分析でも同様の所見がみられた(病院内分析:5.2%vs. 5.3%、全病院分析:5.3%vs. 5.8%)。 入院期間は、主要分析では全身麻酔病院群よりも局所麻酔病院群で、0.6日(95%CI:-0.8~-0.4、p<0.001)の短縮がみられた。副次分析でも局所麻酔群の入院期間短縮がみられたが、その関連性は主要分析よりもわずかであった。

2384.

論文投稿のためのガイドラインを評価するエビデンスは不十分/BMJ

 ヘルス研究報告の改善のために開発された報告ガイドラインについて、カナダ・オタワ病院研究所のAdrienne Stevens氏らは、システマティックレビューによる評価を行った。報告ガイドラインのうち著名なCONSORT声明については、これまでにシステマティックレビューが行われている。その結果、一部のチェックリスト項目で報告を改善することが示されており、論文投稿時のガイドラインとしてCONSORTを推奨する学術誌で発表された研究報告は、完全性が高いとされている。しかし、その他の報告ガイドラインの包括的なシステマティックレビューは行われていなかった。BMJ誌オンライン版2014年6月25日号掲載の報告より。ヘルス研究報告と学術誌推奨の報告ガイドラインの関連をシステマティックレビューで評価 本検討では、ヘルス研究報告の完全性と学術誌が推奨する報告ガイドラインの関連をシステマティックレビューで評価した。検証対象の報告ガイドラインは、先行システマティックレビューとEQUATOR Network(2011年10月)から検索・特定し、それらの報告ガイドラインを組み込み研究報告の完全性を評価している試験を、Medline、Embaseなどから報告ガイドラインの呼称(CONSORT、PRISMA、STARDなど)で検索・特定した(1990~2011年10月、2012年1月に追加検索)。 検討では、すでに遵守の評価が行われていたCONSORT声明は除外。英語で記述され、明確な報告ガイドラインを提示し、ガイダンスの開発プロセスを記載しており、コンセンサス開発プロセスの活用法を示している報告ガイドラインを適格とした。 報告ガイドラインを組み込んだ評価試験は、英語または仏語で記述され、主要目的が研究報告の完全性の評価であったもの、または興味深い比較が可能な検討(学術誌推奨前vs. 推奨後、学術誌の推奨vs. 非推奨など)を含んだものを適格とした。 包含適格と思われる場合は、初めにタイトルとアブストラクトを、次に全文をスクリーニングする順番でデータの抽出を行った。適格性が不明な評価については著者に問い合わせ、また必要に応じて学術誌のウェブサイトで推奨について調べた。 主要アウトカムは報告の完全性で、報告ガイドラインのチェックリスト項目の全要素で特定した。その報告の完全性と学術誌の推奨との関連を、項目、著者の分析との整合性、平均総合点で分析した。学術誌の推奨ガイドラインと研究報告の完全性との関連が評価できたのは1割以下  検索により、CONSORT以外に101本の報告ガイドラインが特定された。 検索から、報告ガイドラインを組み込んだ評価試験の記録は1万5,249件が特定されたが、学術誌の推奨との関連について評価が可能であったのは、9本のガイドライン26件のみであった。 定量分析が可能であったのは、そのうち7本の報告ガイドライン(BMJ economic checklist、有害性に関するCONSORT、PRISMA、QUOROM、STARD、STRICTA、STROBE)で評価された13件で、エディターが推奨に関して役立つデータをほとんど入手できないことが判明した。 著者は、「報告ガイドラインの学術誌の推奨と刊行済みのヘルス研究報告の完全性の関連を確定するためのエビデンスは不十分なものしか存在しない」と述べ、「学術誌のエディターおよび研究者は、共同して前向きのデザインの対照試験を行い、より強いエビデンスの提供を考えるべきである」とまとめている。

2385.

原因不明の脳卒中後の心房細動検出に、着用型長期間心臓モニターが有用/NEJM

 原因不明の脳卒中後の心房細動(AF)の検出に関して、植込み型心臓モニター(ICM)を用いた長期の心電図モニタリングが従来法よりも有用であることが、無作為化対照試験の結果、明らかにされた。イタリアのサクロ・クオーレ・カトリック大学のTommaso Sanna氏らCRYSTAL AF研究グループが報告した。現行のガイドラインでは、脳梗塞発症後の心房細動のルールアウトには、少なくとも24時間のECGモニタリングを行うことが推奨されている。しかし、最も有効なモニタリングの期間および様式は確立されていなかった。NEJM誌2014年6月26日号掲載の報告より。441例の患者を対象に、6ヵ月以内の初発AF検出までの期間を検討 脳卒中症例のうち20~40%は、完璧な診断評価を行っても原因がわからない(原因不明の脳卒中)という現状がある。そうしたことも含めて研究グループは、原因不明の脳卒中後のAF検出は、治療上の意義があるとして本検討を行った。 441例の患者を対象に、ICMを用いた長期モニタリングが、従来フォローアップ(対照)よりも有効であるかどうかを評価した。 被験者は40歳以上、24時間のECG心電図モニタリングではAF所見が認められなかった患者で、指標イベントの発生後90日以内に無作為化を受けた。 主要エンドポイントは、6ヵ月以内の最初のAF(30秒超持続)検出までの期間であった。副次エンドポイントには、12ヵ月以内の最初のAF検出までの期間などが含まれた。ICMモニタリングのAF検出、6ヵ月以内では従来法の6.4倍 ICM群には221例が、対照群には220例が無作為化された。指標イベントから無作為化までの期間中央値は38.1±27.6日であった。ベースライン時の患者特性は、平均年齢61.5±11.3歳、女性が36.5%、指標イベントの90.9%は非ラクナ梗塞であった。 結果、6ヵ月以内のAF検出率は、ICM群8.9%(19例)に対して対照群1.4%(3例)であった(ハザード比[HR]:6.4、95%信頼区間[CI]:1.9~21.7、p<0.001)。 12ヵ月以内のAF検出率は、ICM群12.4%(29例)に対して対照群2.0%(4例)であった(ハザード比[HR]:7.3、95%信頼区間[CI]:2.6~20.8、p<0.001)。 結果を踏まえて著者は、「原因不明の脳卒中後のAF検出について、ICMによる心電図モニタリングは、従来の追跡方法よりも優れていた」と結論している。

2386.

HIV感染患者に対するイソニアジドの予防投与は有効か?(解説:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(220)より-

結核は依然としてHIV感染患者における重要な日和見疾患である。今までにsystematic reviewや後ろ向き観察研究などで、イソニアジド単独、あるいはイソニアジド+抗HIV療法によって結核発病のリスクを低減できることが示されてきた。WHOが途上国に向けて発信したガイドラインでは、HIV感染患者全例にイソニアジドの予防投与を行うことを推奨している。 しかしながら、抗HIV療法を施行している患者に対するイソニアジドの予防投与の有用性について、強いエビデンスは存在しなかった。 本研究は、抗HIV療法施行中のHIV感染患者に対するイソニアジドの結核予防効果を検討したランダム化二重盲検プラセボ対照試験である。エイズ、結核罹患率の高い南アフリカケープタウン近郊のカエリチャで実施された。 被験者を(1)イソニアジドを12ヵ月間予防投与する群(662例)と、(2)プラセボを投与する群(667例)に無作為に割り付けし、3,227人年が解析対象となった。スクリーニングの喀痰抗酸菌培養検査で判明した結核例は除外した。プライマリエンドポイントは、結核の発症(疑い例や不確定例も含む)とした。 その結果、イソニアジド群はプラセボ群と比較して37%結核発症率を低下させた(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.41~0.94)。Grade 3または4のALT値上昇のため試験薬投与を中断した患者数は、2群間で有意差を認めなかった(リスク比:1.9、95%信頼区間:0.90~4.09)。また、イソニアジド予防投与の効果が、ツベルクリン反応検査あるいはインターフェロンγ遊離試験が陽性の患者に限定されるというエビデンスは観察されなかった。 これらの結果を踏まえて、著者らは「結核発生リスクの高い地域では、ツベルクリン反応テストやインターフェロンγ遊離試験の結果にかかわらず、抗HIV療法を受けている患者全員に対してイソニアジドの予防投与を推奨すべきである」と提言している。 日本は先進国の中では結核罹患率の高い国ではあるが、アフリカ諸国などと比較すると低く、本試験の結果をそのまま日本での診療に当てはめることはできない。 しかしながら、米国のガイドラインでも潜在性結核感染を認めるHIV感染患者に対してはイソニアジドの投与を推奨しており、本邦でも潜在性結核感染と診断された場合には、イソニアジドの投与を検討してもよいかもしれない。ただし、イソニアジドの投与期間はガイドライン等によって異なり、議論の余地があると思われる。 HIV感染患者に対するイソニアジドの予防投与の有用性を検討したBOTUSA study1)では、主にツベルクリン反応陽性者において結核発症率の低下を示したが、本研究では、結核予防効果がツベルクリン反応検査やインターフェロンγ遊離試験の結果に左右されず、対照的な結果となった。 結核が蔓延している国では、おそらく多くの結核例が新たな感染や再感染によるので、イソニアジドは潜在性結核感染の治療だけでなく、新規感染や再感染の予防や治療の役割を果たしていたのかもしれない。また、ツベルクリン反応検査やインターフェロンγ遊離試験は、免疫不全が進行すると偽陰性となりやすいため、本試験の患者に偽陰性が多かった可能性は考えられる。【参考文献はこちら】1) Samandari T, et al. Lancet. 2011;377:1588-1598.

2387.

高血圧は全ての心血管疾患発症リスク:英国プライマリケア医登録研究(解説:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(219)より-

日本の「高血圧治療ガイドライン2014」では中年層の降圧目標が根拠が乏しいまま緩和されたが、それを再び見直す必要を思わせる英国プライマリ・ケア医登録追跡研究データである。 本研究の大きな特徴は英国でのプライマリ・ケア医に登録された患者の長期追跡であり、一般住民での検診をベースとした追跡研究と大きく異なる。したがっていわゆる虚弱体質や慢性炎症性疾患を有する例は含まれておらず、またすでに心筋梗塞、脳梗塞などの既往例も除外されており、あくまでも心血管疾患を初発するまでの追跡である。 結果は血圧が高いことが30歳から90歳までのどの年齢層にとっても、心血管疾患の発症のリスクであり、血圧が心血管系の大きな負荷であることをあらためて示した。心血管イベントにとって最も負担が少ない血圧レベルは収縮期血圧90~114 / 拡張期血圧60~74mmHgであり、J曲線はみられないことを示したが、至適血圧が120mmHgであることを確認した成績といえよう。 とくに収縮期血圧上昇と関連が深いのは脳出血、くも膜下出血、安定狭心症、心筋梗塞であり、拡張期血圧上昇と関連が深いのは腹部大動脈瘤であったという。とくに大動脈瘤は拡張期高血圧、脈圧が小さいことと関連していたのは意外である。 30歳代での高血圧患者における生涯心血管発症リスクは63.3%、正常血圧では46.1%であり、この世代で高血圧を有することは心血管発症を5年早める、という結果である。生活習慣病に関心をもたない健康過信世代の高血圧リスクに対する注意喚起を促す貴重なエビデンスである。 英国の医療制度は、国民の99%以上がプライマリ・ケア医に登録されて、プライマリ・ケア医から基幹病院へ紹介された場合も電子カルテで厳格に追跡されている。 患者はどの医療機関も選ぶことができるというわが国の医療システムとは根本的な違いがあるものの本研究の結果は、高血圧を降圧不十分なまま放置した場合の長期的予後を示す有用なエビデンスといえる。 最近、単年度の検診、人間ドック受診者150万人のデータから血圧基準を147mmHgと誤解を招くような発表を行った、日本人間ドック学会データとは根本的に異なるものである。

2388.

がんの痛みは我慢しない! 疼痛管理の現状と問題点を第一人者がレクチャー

 6月24日、金原出版は、患者向けの解説書である『患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド(第1版)』(特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会編)の出版を記念し、編者の1人である佐藤 哲観氏(弘前大学医学部附属病院 麻酔科 緩和ケア診療室)を講師に迎え、「がんの痛みはとれるんです!」と題するプレスセミナーを開催した。同書は、患者にがん性疼痛管理の内容を知ってもらうために制作されたものである。 セミナーで佐藤氏は、男女ともに毎年増加を続けるがん患者の動向などを前置き後、患者が抱える4つの痛み(がん疼痛、治療の際の痛み、身体衰弱による痛み、他の疾患の痛み)、そしてこれらの痛みはWHO方式のがん疼痛治療の手引きに従えば、80%以上は除痛可能であることを解説した。 しかしながら、除痛可能にもかかわらず、わが国では、医療者側の痛みへの認識不足や知識・治療のスキル不足、医療システム上の医療用麻薬管理の煩雑さや保険上の査定の問題、患者側のさまざまな誤解や迷信などの障壁があり、まだまだ臨床現場で疼痛管理の薬物使用が低調であると問題点を指摘した。また、医療用麻薬の消費量でみると欧米先進国と比較し、わが国は1/10~1/40とかなり低いレベルにあると一例を挙げた。 現状のこうしたさまざまなバリアを克服するために佐藤氏は、医療者には卒前教育の充実やがん診断時からの疼痛管理介入の教育活動を行っており、とくに医師に対しては、日本緩和医療学会における2日間のワークショップで、緩和ケアの知識の普及を目指す「PEACE project」(http://www.jspm-peace.jp/)を推進していることなどを紹介した。また、患者に対しては、「医療用麻薬を使うと中毒になる」や「がんの痛みは治療できない」などの誤解を払しょくするために、本書のような書籍を用いて広く啓発活動を行っていきたいと今後の展開を示した。 現在、WHOの手引では、3段階の鎮痛薬による「除痛ラダー」が示されている。その中でわが国で使用できるオピオイド鎮痛薬は、コデイン、トラマドール、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、メサドン、タペンタドール(2014年3月製造販売承認)の7種類があり、錠剤だけでなく、注射薬、貼付薬などのほかに舌下錠や頬粘膜吸収錠と剤形も豊富にそろい、使いやすくなっていると紹介した。また、頬粘膜に塗布するスティック型や頬粘膜吸収型フィルムなどわが国未発売の製品の存在、鼻噴射型の薬剤も海外で開発途上にあることなど最新のオピオイドの現状を披露した。 今後の課題としては、医療者には、早い段階からのがん性疼痛への介入と患者の痛みの汲み取り、積極的な医療用麻薬の使用などを教育するとともに、患者には、痛みを我慢せずに医療者に伝えること(そのためのメモや「痛み日記」の励行など)、鎮痛薬使用を恐れないことを啓発していきたいとまとめ、セミナーを終了した。 なお医療者向けには『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版 (第2版)』も同時出版されている。詳しくは金原出版まで

2389.

高齢肺炎入院患者へのアジスロマイシン、心イベントへの影響は?/JAMA

 高齢の肺炎入院患者へのアジスロマイシン(商品名:ジスロマックほか)使用は他の抗菌薬使用と比較して、90日死亡を有意に低下することが明らかにされた。心筋梗塞リスクの増大はわずかであった。肺炎入院患者に対して診療ガイドラインでは、アジスロマイシンなどのマクロライド系との併用療法を第一選択療法として推奨している。しかし最近の研究において、アジスロマイシンが心血管イベントの増大と関連していることが示唆されていた。米国・VA North Texas Health Care SystemのEric M. Mortensen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で、JAMA誌2014年6月4日号掲載の報告より。65歳以上入院患者への使用vs. 非使用を後ろ向きに分析 研究グループは、肺炎入院患者におけるアジスロマイシン使用と、全死因死亡および心血管イベントの関連を明らかにするため、2002~2012年度にアジスロマイシンを処方されていた高齢肺炎入院患者と、その他のガイドラインに則した抗菌薬治療を受けていた患者とを比較した。 分析には、全米退役軍人(VA)省の全VA急性期治療病院に入院していた患者データが用いられた。65歳以上、肺炎で入院し、全米臨床診療ガイドラインに則した抗菌薬治療を受けていた患者を対象とした。 主要評価項目は、30日および90日時点の全死因死亡と、90日時点の不整脈、心不全、心筋梗塞、全心イベントの発生とした。傾向スコアマッチングを用い、条件付きロジスティック回帰分析で既知の交絡因子の影響を制御した。使用患者の90日死亡オッズ比は0.73 対象患者には118病院から7万3,690例が登録され、アジスロマイシン曝露患者3万1,863例と非曝露の適合患者3万1,863例が組み込まれた。適合群間の交絡因子について有意差はなかった。 分析の結果、90日死亡について、アジスロマイシン使用患者について有意な低下が認められた(曝露群17.4%vs. 非曝露群22.3%、オッズ比[OR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.70~0.76)。 一方で曝露群では、有意なオッズ比の増大が、心筋梗塞について認められた(5.1%vs. 4.4%、OR:1.17、95%CI:1.08~1.25)。しかし、全心イベント(43.0%vs. 42.7%、1.01、0.98~1.05)、不整脈(25.8%vs. 26.0%、0.99、0.95~1.02)、心不全(26.3%vs. 26.2%、1.01、0.97~1.04)についてはみられなかった。 結果について著者は、「肺炎入院患者に対するアジスロマイシン使用は、リスクよりも有益性が上回る」とまとめている。

2390.

動脈硬化予防の食事

生活習慣を改善して動脈硬化を予防しましょう推奨される推奨されない喫煙有酸素運動(毎日30分以上)過食食塩標準体重の維持魚類アルコールの過剰摂取乳製品未精製穀類果物海藻肉の脂身卵黄大豆製品野菜日本動脈硬化学会編.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

2391.

心不全入院患者への予防的ICD、LVEF 30%未満でも生存改善/JAMA

 心不全入院患者に対する予防的植込み型除細動器(ICD)の移植は、左室駆出分画(LVEF)が30~35%および30%未満の患者についても、3年生存率を有意に改善することが、米国・デューク大学医療センターのSana M. Al-Khatib氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。著者は、「LVEF 35%以下でも適格基準を満たす患者には予防的ICD移植を推奨するガイドラインを支持する所見が得られた」とまとめている。同手技の臨床試験では、少数だがLVEF 30~35%の患者が含まれていた。また米国では同レベルの患者でICD移植を受ける人が多数に上ることが報告されており、生存との関連を調べる重要性から本検討が行われた。JAMA誌2014年6月4日号掲載の報告より。LVEF 30~50%、30%未満患者でICD移植vs. 非移植の全死因死亡を評価 研究グループは、LVEF 30~35%でICD移植を受けた患者の特性を明らかにし、非移植患者との生存率を比較した。被験者は、2006年1月1日~2007年12月31日に全米心血管データ登録ICDレジストリ(NCDR)に登録された、メディケア受給者でLVEF 30~35%、心不全で入院の間にICD移植を受けた患者と、Get With The Guidelines-Heart Failure(GWTG-HF)データベースに登録されていたICDを受けなかった類似の患者を特定し分析に組み込んだ。同様にLVEF 30%未満の患者についても分析を行った。 被験者数は、LVEF 30~35%の患者が3,120例(適合コホート群816例)、同30%未満患者は4,578例(同2,176例)で、傾向スコアとCoxモデルを用いて分析した。 主要アウトカムは、全死因死亡で、2011年12月31日までのメディケア支払請求データを入手して評価した。30~35%、30%未満の患者とも同程度にICD移植の恩恵を享受 LVEF 30~35%の適合コホート群816例(ICD移植群[NCDR]:408例、ICD非移植群[GWTG-HF]:408例)のベースライン時特性に有意な差はなかった。 分析の結果、ICD移植群は追跡期間中央値4.4年(範囲:2.7~4.9年)において248例が死亡、ICD非移植群は同2.9年(同:2.1~4.4年)において249例の死亡が報告された。3年死亡率は、ICD移植群51.4%vs. ICD非移植群55.0%で、ICD移植群の有意な低下が認められた(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.69~0.99、p=0.04)。 また、LVEF 30%未満の患者においても、ICD移植群(NCDR 1,088例)とICD非移植群(GWTG-HF 1,088例)の死亡数は634例vs. 660例で、3年死亡率は45.0%vs. 57.6%、HRは0.72(95%CI:0.65~0.81、p<0.001)とICD移植群における死亡率の有意な低下が認められた。 ICD移植を受けた両LVEF(30~35%と30%未満)患者群に有意な差はみられず(p=0.20)、いずれのLVEF患者にもICD移植を受けたことによる同程度の良好な生存が確認された。

2392.

PCSK9阻害薬は新たなコレステロール治療薬となりうるのか?(解説:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(216)より-

LDLコレステロール(LDL-C)が心血管イベントの重要なリスクファクターであること、そしてスタチンによるLDL-C値の低下に伴いイベントの発生率が減少したことで、ASCVD(Atherosclerotic Cardiovascular Disease)においてLDL-C値をより低くコントロールすることが目標とされた。 しかし、スタチンを使用しても管理目標値に到達できない患者群があり、これまでは治療薬としてエゼチミブが併用されていたが、それでも不十分であった。 エボロクマブはLDL-C受容体の分解を促進する蛋白であるPCSK9を阻害することで、スタチンの効果を増強しLDL-Cをさらに著明に低下させることを実現した抗体薬である。本薬の使用で、通常の治療に加えて平均57%、LDL-Cを低下させることがDESCARTES試験として発表された。この試験は、スタチンでは明らかにできなかった新たな世界を広げるエボロクマブの可能性を示している。 LDL-Cの低下のエビデンスはすべてスタチンを用いた試験に基づいていることから、AHA/ACCの今回改訂されたガイドラインでは、LDL-Cの管理目標値を設定せず、高用量のスタチンを使用するだけでよいとされた。エボロクマブは、スタチン以外にLDL-Cを低下させることを可能にした薬剤である。スタチンを用いないLDL-Cの低下によりイベントが減少するかを検証できるようになった。 また、スタチン単独ではLDL-C値を70mg/dL以下にすることが困難であったために、さらなる低下がイベントを減少させるのかが明らかでなかった。エボロクマブは、このようなLDL-Cと心血管イベントとの関連についての科学的な疑問を解決できる可能性のある薬剤である。 今後、イベントを検証するFOURIER試験が計画されている。LDL-Cに関する残された謎が解明され、多くのASCVD患者にとってこの薬剤が福音をもたらすのかどうか、2019年の結果に注目したい。

2393.

機能性ディスペプシアの診療ガイドライン~プライマリケアでの対応も掲載

 今年4月の日本消化器病学会総会において、「機能性消化管疾患診療ガイドライン-機能性ディスペプシア(FD)」(日本消化器病学会編)が発表された。6月6日に開催されたメディアセミナー(ゼリア新薬工業・アステラス製薬共催)では、本ガイドラインのポイントや、国内で唯一FDに適応を持つアコファイド(一般名:アコチアミド)の有用性について、兵庫医科大学内科学消化管科 主任教授 三輪 洋人氏が講演した。FDの定義は日本の実臨床に合わせて FDは、胃や十二指腸などの臓器の機能異常により、むかつき、胃痛、胃もたれ、早期満腹感など、心窩部を中心とする上腹部の症状が慢性的に続く疾患で、QOLを著しく下げる。珍しい疾患ではなく、日本人の4人に1人が経験しているとのデータもあるという。しかし、病因が明らかではなく、症状により定義される疾患であること、上部消化管内視鏡検査では明らかな異常所見が認められないことから、診断が難しい。 FDの定義は、世界的に使用されているRomeIIIの診断基準では、明らかな器質的疾患がなく、食後膨満感・早期満腹感・心窩部痛・心窩部灼熱感のうち1つ以上あり、その症状が6ヵ月以上前からあり最近3ヵ月間は症状を認めるものとされている。しかし、わが国では医療機関へのアクセスがよく、6ヵ月以上症状が続いている患者が医療機関で受診しないことはまれである。そのため、今回作成されたガイドラインでは、心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状が「慢性的に続く」という言葉に留めることにより、より現実的で日本の実臨床に合った定義を提唱している。診断・治療フローチャートはプライマリケア、消化器専門医に分けて作成 FDの診断には、症状の原因となる器質的疾患の除外が重要である。本ガイドラインの診断と治療のフローチャートは、診療の実情、すなわち内視鏡検査実施の可否を考慮して、プライマリケアでの対応と消化器専門医での対応に分けて作成されている。プライマリケアでの対応では、慢性的なディスペプシア症状がある患者に対して、警告徴候(原因が特定できない体重減少、再発性の嘔吐、出血徴候、嚥下困難、高齢者)を認めない場合、数ヵ月以内に内視鏡検査などで器質的疾患が除外されている例は内視鏡検査をスキップしFDと診断する。一方、数ヵ月以内に検査を実施していない場合は、FD疑いとして初期治療開始という選択肢を示している。なお、「FD疑い」での薬剤処方は保険適用とならない。FDに対するわが国で唯一の保険適用薬 FD治療薬剤について、本ガイドラインでは初期治療として、酸分泌抑制薬、消化管運動機能改善薬が推奨されている。そのうち運動機能改善薬については、昨年6月に発売されたアコファイドが開発されるまで、厳密なプラセボとの比較試験で明らかに効果が証明された消化管運動機能改善薬はなかった。三輪氏は、アコファイドの有用性について、日本人を対象とした臨床試験でのデータを紹介し、その結果から本ガイドラインでは「わが国で唯一、FDに対して保険適用薬となっている」と記載されていると述べ、「日本が誇れる薬剤の1つ」と高く評価した。

2394.

ACC/AHAの推奨クラスIのガイドライン項目、改訂後も維持は約8割/JAMA

 米国・ペンシルベニア大学のMark D. Neuman氏らは、米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)の臨床診療ガイドラインの推奨クラスIの項目について、改訂後も推奨度が変わらなかった項目は約8割であったことが明らかにされた。1998~2007年に発表され、2006~2013年に改訂された11本のガイドラインを調べた結果で、残り2割は、推奨クラスを下げたか項目が削除されていたものが約半々であったという。また、複数の無作為化試験による裏づけがなかった項目において、クラスを下げたり削除された項目が多かったことが明らかになった。これまで臨床診療ガイドラインの推奨項目の維持状況については、ほとんどわかっていなかった。JAMA誌2014年5月28日号掲載の報告より。11ガイドラインの推奨クラスIの項目の耐久性を調査 研究グループは、ACC/AHAガイドラインの推奨クラスIの項目(処置手技/治療がなされるべきである)の耐久性(durability)を特徴づける検討を行った。 4名の独立レビュワーが、1998~2007年に発表され、2006~2013年に改訂された11本のガイドラインを分析。各ガイドライン初版の推奨クラス1の項目と2版以降の最新バージョンの同項目を抽出し、推奨が下がっていたり逆転していた項目、削除されて見当たらなくなっていた項目を特定した。 推奨項目の耐久性を、双変量仮説試験と条件付きロジスティック回帰分析にて、ガイドラインのトピックおよびエビデンスレベルに従い分析した。データのエビデンスが薄いものほどランクの低下、逆転、除外 11試験の初版の推奨クラスIの項目は合計619項目あった。そのうち以降のバージョンのガイドラインでも変わらなかったのは495項目(80.0%、95%信頼区間[CI]:76.6~83.1%)だった。57項目(9.2%、同:7.0~11.8%)はランクを下げ、67項目(10.8%、同:8.4~13.3%)が削除されていた。 ガイドライントピック別に維持率をみると、最低は「周術期の心血管系評価」」の15.4%(同:1.9~45.4%、2002年13項目から2007年2項目)、最高は「ペースメーカーおよび植込み型除細動器」の94.1%(同:80.3~99.3%、2002年34項目から2008年32項目)と有意な差がみられた(p<0.001)。 入手できたエビデンスレベルの情報に基づく分析の結果、複数の無作為化試験の裏づけがある推奨項目の維持率は90.5%(95%CI:83.2~95.3%)であったが、無作為化試験が1試験あるいは観察試験のデータに基づくものは81.0%(同:74.8~86.3%)、オピニオンに基づくものは73.7%(同:65.8~80.5%)であった(p=0.001)。 さらに、ガイドラインのレベル因子を考慮後、推奨ランクがダウン、逆転または削除される確率は、より増大することも判明した。複数無作為化試験の推奨項目と比べて、オピニオンに基づく項目はオッズ比が3.14(95%CI:1.69~5.85、p<0.001)、無作為化試験1試験または観察試験データに基づく項目は同3.49(同:1.45~8.41、p=0.005)であった。

2395.

心血管疾患高リスク患者への合剤治療、リスク因子の改善はわずか/BMJ

 プライマリ・ケアにおける心血管疾患リスクの高い患者の治療について、推奨されている抗血小板薬、スタチン、降圧薬すべてを組み合わせた固定用量配合剤の利用は、アドヒアランスを改善したが、血圧やコレステロールなどリスク因子の改善はわずかで統計的有意差はみられなかったことが報告された。ニュージーランド・オークランド大学のVanessa Selak氏らによる非盲検無作為化試験IMPACTの結果で、配合剤に対する受容性は一般医(GP)、患者ともに高かったが、一方で投与の中断率が高かったことも報告されている。BMJ誌オンライン版2014年5月27日号掲載の報告より。一般医54人を介して患者513例を対象に、12ヵ月間の配合剤治療vs.通常ケア IMPACT(IMProving Adherence using Combination Therapy)試験は2010年7月~2013年8月に、ニュージーランドのオークランドおよびワイカト地方の一般医54人と、その患者で抗血小板薬、スタチンおよび2種以上の降圧薬治療が推奨されていた心血管疾患リスクの高い(5年リスク15%以上)513例の成人(うち257例は先住民のマオリ)を対象に行われた。 患者は、通常ケアを継続する群と固定用量配合剤治療を受ける群に無作為に割り付けられ12ヵ月間追跡を受けた。配合剤は、アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mgに、アテノロール50mgまたはヒドロクロロチアジド12.5mgのいずれかを組み合わせた2バージョンがあった。一般医が4種の推奨薬について処方を行い、市中の薬局で調剤が行われ患者に投与された。 主要アウトカムは、12ヵ月時点の患者自身の報告による配合剤治療のアドヒアランス、および血圧、LDL-C値のベースライン時からの平均変化値とした。配合剤群のアドヒアランスは有意に改善したが 12ヵ月の追跡期間を完了したのは、497例(97%)だった。 4種の推奨薬はすべて、通常ケア群よりも配合剤群でアドヒアランスが有意に高かった。アドヒアランス率は81%vs. 46%、相対リスクは1.75(95%信頼区間[CI]:1.52~2.03、p<0.001)で、治療必要数(NNT)は2.9(同:2.3~3.7)だった。 12ヵ月時点の各推奨薬タイプ別アドヒアランスは両群ともに高率だったが、相対的には配合剤群が有意に高率であった。すなわち抗血小板薬は93%vs. 83%(p<0.001)、スタチン94%vs. 89%(p=0.06)、合剤降圧薬89%vs. 59%(p<0.001)、あらゆる降圧薬96%vs. 91%(p=0.02)であった。 これら自己報告のアドヒアランスに関する傾向は、調剤データと一致しており、4種の推奨薬すべての調剤率は、配合剤群79%、通常ケア群47%で、相対リスクは1.67(95%CI:1.44~1.93、p<0.001)だった。 一方で12ヵ月間のリスク因子のコントロール改善については、両群間で統計的な有意差はみられなかった。配合剤群と通常ケア群を比較した変化の差は、収縮期血圧は-2.2mmHg(-4.5 vs.-2.3、95%CI:-5.6~1.2、p=0.21)、拡張期血圧は-1.2mmHg(-2.1 vs.-0.9、同:-3.2~0.8、p=0.22)、LDL-C値は-0.05mmol/L(-0.20 vs.-0.15、-0.17~0.08、p=0.46)だった。 また、心血管イベントの発生数は、配合剤群16例vs. 通常ケア群18例(p=0.73)、また重症有害事象の発生数は99例vs. 93例(p=0.56)でいずれも発現頻度は同程度であった。 配合剤群患者の一般医の89%(227/256例)が試験後サーベイを受けた。固定用量配合剤治療戦略について聞いた結果、同治療開始については91%(206/227例)、血圧コントロールについては82%(180/220例)、コレステロールコントロールは78%(170/218例)、忍容性81%(181/223例)、ローカルガイドラインに従う処方については84%(185/219例)が、「満足」または「とても満足」と回答した。 一方、12ヵ月時点で患者に対して行った服用の簡便性に関する質問の結果(簡便、とても簡便との回答)は、固定用量配合剤群91%(224/246例)、通常ケア群86%(212/246例)で有意差がみられた(p=0.09)。しかし、配合剤群では94例(37%)が投与を中断しており、その理由として最も多かったのは副作用(54/75例、72%)だった。 両群間では、12ヵ月時点でその他脂質の変化、EuroQol-5Dの差、アドヒアランスに対する障害の差についても有意な差はみられていない。

2396.

がん患者のうつ病を簡単にスクリーニングするには

 がん患者ではうつ病を併発することも少なくない。診療ガイドラインでは、がん患者のうつ病に対する認識の改善や迅速かつ適切な管理のために、体系的なスクリーニングを推奨している。台湾・E-Da HospitalのChun-Hsien Tu氏らは、構造化されたツールを使用して、がん入院患者のうつ病をスクリーニングし、その適用性を探索した。Psycho-oncology誌オンライン版2014年5月6日号の報告。 対象はがん入院患者。まず、Taiwanese Depression Questionnaire(TDQ)を使用し看護師によるスクリーニングを行った。その後、陽性患者に対し、精神科医による臨床評価と診断を任意で行った。この2段階の手順を完了した患者を分析サンプルとした。 主な結果は以下のとおり。・27ヵ月間で8,800例の患者をスクリーニングしたところ、1,087例が該当し、そのうち298例(27.4%)が精神科医の診断を完了した。・診断結果は、抑うつ障害群が62.1%(185例)であった。主な疾患は、適応障害23.8%、うつ病21.5%であった。・TDQスコアの結果と、うつ病の臨床診断結果から得られる曲線下面積は0.72であった。・うつ病の最適な診断精度のためのTDQカットオフ値は26以上であった。・この2段階うつ病診断スクリーニングおよび診断ストラテジーは、とくにがん患者のうつ病やその他の抑うつ障害の認識を改善し、包括的ながんケアシステムにおいて日常的に活用可能な方法であると考えられる。関連医療ニュース うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上 せん妄の早期発見が可能に がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は…  担当者へのご意見箱はこちら

2397.

アセチルシステインは特発性肺線維症に“効く”のか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(209)より-

特発性肺線維症に対する治療薬としてピルフェニドンが登場するまで、ステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステイン(N-アセチルシステイン:NAC)は世界的に広く用いられていた(現在も汎用されているが)。ただ、これらの薬剤もその効果は限定的であり、現時点で特発性肺線維症に対する使用を強く推奨しているガイドラインは存在しない。ただ、それでもなお「これらの薬剤が少なくとも悪影響は与えることはないだろう」という思いが臨床医の胸の内にあった。ステロイドや免疫抑制剤による日和見感染などの合併症があったとしても、炎症・線維化を抑制する効果はそれを上回るベネフィットがあると考える研究者も少なくなかった。 2011年の秋のことだった。PANTHER-IPF試験の中止が報道された。プレドニゾロン、アザチオプリン、アセチルシステインの3治療併用試験がプラセボと比較して死亡率が多かったため中止されたというのだ1)。アセチルシステイン単独は死亡率超過に寄与したわけではなかったため、PANTHER-IPF試験の後、アセチルシステインとプラセボの2治療群の比較は続けられた。その比較結果を報告したのが今回の論文である。 その結果、残念ながら60週時点におけるアセチルシステインの努力性肺活量、死亡率、急性増悪の頻度に対する効果はプラセボと同等であった。悪影響はなかったものの、プラセボと大きく差がないことが示された。 これらの結果に鑑みると、現時点でステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステインの併用だけでなく各々の単独使用にも臨床的な利益がない可能性が高い。世界的に広く用いられているステロイドや免疫抑制剤の使用についてはまだ議論の余地があるだろうが、いずれにしても劇的な効果があるとは考えにくい。 ピルフェニドンやニンテダニブといった新しい薬剤が登場して治療選択肢は広がったが、現場の医師はまだ歯がゆさを感じていることだろう。特発性肺線維症の治療のさらなる発展を願いたい。

2398.

変形性股関節症への理学療法、害あって利なし/JAMA

 痛みを伴う変形性股関節症成人患者への理学療法は、痛みや機能性の改善には結びつかないことがオーストラリア・メルボルン大学のKim L. Bennell氏らが行った無作為化試験の結果、示された。また軽度ではあったが有害事象の頻度が高く、著者は、「同患者に対する理学療法プログラムの有益性について疑問を呈する結果となった」とまとめている。症候性変形性股関節症に対してガイドラインでは、薬物治療ではなく理学療法を用いる保存治療が推奨されている。しかし理学療法は、コストがかかることに加えて有効性のエビデンスがそれほど確立されておらず限定的だった。JAMA誌2014年5月21日号掲載の報告より。102例を無作為化し、12週の理学療法介入とシャム介入を行い追跡 変形性股関節症患者への痛みと身体機能に関する理学療法の有効性を評価する無作為化プラセボ対照試験(参加者、評価者ともに盲検化)は、股関節に痛み(100mm視覚アナログスケールで40mm超)を有し、またX線画像診断で股関節の変形が確認された102例の地域住民ボランティアが参加して行われた。 2010年5月~2013年2月に、49例が12週間の介入を受けその後24週間の追跡を受けた。53例は同様にシャム(プラセボ)介入を受けた。被験者は、12週間にわたって10の治療セッションに参加した。介入群には、教育、アドバイス、徒手的理学療法、自宅療法、該当者には歩行補助杖利用などが行われ、シャム群には非活動的な超音波療法とゲル薬の塗布が行われた。 治療後24週時点で、介入群は非管理下での自宅療法が続けられていた。一方シャム群は、週3回のゲル薬の自己塗布が行われていた。 主要アウトカムは、13週時点の平均疼痛度(0mmは痛みなし、100mmは最大級の痛みの可能性と定義し測定)、身体的機能(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index[WOMAC]で0[制限なし]~68[最大級の制限]と定義し測定)だった。副次アウトカムは、同36週時点の測定値、また13週および36週時点の身体的状態、全体的な変化、心理的状態、QOLについても評価した。痛み、身体的機能改善に有意差みられず、軽度だが有害事象報告は介入群が有意 13週時点の測定評価を完了したのは96例(94%)、36週時点については83例(81%)だった。 結果、両群間に痛みの改善について有意な差はみられなかった。介入群の視覚アナログスケールスコアの平均値(SD)は、ベースライン時58.8mm(13.3)、13週時点は40.1mm(24.6)だった。シャム群はそれぞれ58.0mm(11.6)、35.2mm(21.4)であり、平均差をみると、シャム群のほうが良好であった(6.9mm、95%信頼区間[CI]:-3.9~17.7)。 身体的機能のスコアも、両群間で有意な差はみられなかった。介入群のWOMACスコア(SD)は、ベースライン時32.3(9.2)、13週時点27.5(12.9)であり、シャム群はそれぞれ32.4(8.4)、26.4(11.3)であり、平均差はシャム群のほうが良好であった(1.4、95%CI:-3.8から6.5)。 副次アウトカムについても、バランスステップについて13週時点の改善が介入群で大きかったことを除き、両群間で差はみられなかった。 介入群46例のうち19例(41%)が、26件の軽度の有害事象を報告した。一方、シャム群は49例のうち7例(14%)が9件の同事象を報告した(p=0.003)。

2399.

徴候と症状と心不全の入院歴でHFpEFは定義できない―ナトリウム利尿ペプチド上昇で定義したHFpEFにはスピロノラクトンが有効である可能性(コメンテーター:原田 和昌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(207)より-

左室駆出率が保持された症候性心不全(HFpEF)の有効な治療薬はまだない。抗アルドステロン薬のスピロノラクトンは、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の予後を改善することからガイドラインで推奨されている。 同薬はAldo-DHF試験にてHFpEF患者の左室拡張能やNT-ProBNP値を改善したことから、臨床的転帰も改善できるのではないかとTOPCAT試験に大きな期待が持たれていた。しかし、本試験は明らかな失敗試験となった。 本試験は、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)が資金提供をして行われた、米国・ロシア・グルジア共和国・カナダ・ブラジル・アルゼンチンの6ヵ国で3,445例という規模の国際多施設共同の臨床試験である。 同薬は平均3.3年で総死亡、全入院のいずれも有意に減少させず、心不全入院のみ有意に減少させた。また、約30%が治療薬を中断していた。しかしながら、HFpEFの定義の難しさについての興味深い問題を新たに提起した。 著名な心不全の大規模試験を行ってきたPittやPfeffer、Solomonらが用いたHFpEFの選択基準は、50歳以上で、事前に定義された心不全の徴候と症状をそれぞれ1つ以上有するEF≧45%の患者であった。 さらに、12ヵ月以内の心不全(各施設の診断)の入院歴(第1層)、またはこれを満たさない場合、60日以内のナトリウム利尿ペプチド上昇(BNP≧100pg/mLあるいはNT-proBNP≧360pg/mL)(第2層)をエントリー条件とした(補足付図S2)。これらはHFpEFの定義として妥当であると考えられてきた。 著者らは失敗の理由はわからないと述べながら、こう分析している。ロシア、グルジア共和国と、米国を含むそれ以外の国とでアウトカムに差が出た。 米国などの地域では実薬群で1次エンドポイントが31.3%から27.3%(HR 0.82、p=0.026)に有意に減少したが、ロシアなどでは8.4%から9.3%と変わらなかった。また、第1層と第2層でもアウトカムに有意差が出た。第2層の登録患者では、スピロノラクトンが1次エンドポイントを有意に抑制し、第1層の登録患者では抑制しなかった。第1層の患者は一般に若く、合併症も少なく、リスクプロフィールが低かった。実はロシア、グルジア共和国の患者のほとんどが第1層で登録されていた。それ以外の地域では、第1層と第2層の患者がそれぞれ約半数であった。 地域による結果の差は多くは患者層の差、標準的患者ケアの差、臨床試験の実施方針の差に起因するとMcMurrayらはコメントしている。患者の登録条件である心不全(各施設の診断)の入院歴が、もし心不全以外を多く含むなら、HFpEFの診断自体が成立しないことになる。言い換えると、HFrEF(EF<45%)は徴候と症状と心不全の入院歴を用いて定義可能であるが、徴候と症状と心不全の入院歴でHFpEF(EF≧45%)は定義できないかもしれない、ということである。 2次エンドポイントである心不全(委員会で判定)入院を17%有意に抑制したという結果を過大評価することはできない。その意味でガイドラインを変えるものではないが、ナトリウム利尿ペプチド上昇を用いてHFpEFを定義していれば、スピロノラクトンの有効性を示せた可能性はある。これは本邦での実臨床に近いものである。 HFpEFの予後があまり良くないこと、今後この規模での試験が行われるかどうかは疑問であることを勘案して、問題提起にすぎないという限定付きではあるが、本試験の結果からは得るものが多いと考える。【S2】 第1層第2層12ヵ月以内の心不全の入院歴第1層の条件を満たさない場合、60日以内のナトリウム利尿ペプチド上昇層ごとに1対1にランダム化、地域ごとにもバランスをとる

2400.

甲状腺がん〔thyroid cancer〕

1 疾患概要■ 概念・定義甲状腺がんは甲状腺腫に発生する悪性腫瘍である。そのほとんどは甲状腺濾胞上皮に由来する分化がん(乳頭がん、濾胞がん)である。まれに甲状腺内に存在する傍濾胞細胞(C細胞)から髄様がんが生じる。■ 疫学わが国における甲状腺がん罹患率は、緩やかながら上昇傾向にある。2003年における推定罹患数は8,069人とされ、年齢調整罹患率は男性 2.56、女性 7.17(人口10万対)であった。一方、2007年における甲状腺がん死亡者数は1,558人で徐々に増加傾向ではあるが、年齢調整死亡率は男性 0.84、女性 1.61(人口10万対)と上昇傾向にはない。■ 病因甲状腺がんの発生には多くの要因が関与していると思われるが、その大半は明らかになっていない。ただし、わが国の原爆被爆や海外での原子炉事故などの経過から、とくに若年者において、放射線による外部被曝や内部被曝が甲状腺がん発生を増加させることが観察されている。また、甲状腺髄様がんの一部は遺伝子変異によって家族性に発症する。■ 症状自覚症状を呈さないことが多い。最近では頸動脈エコー検査で偶発的に発見される機会も増えている。腫瘍が大きくなれば頸部腫瘤やそれによる違和感を訴えることがある。甲状腺がんの進行に伴って大きな転移リンパ節を形成する、あるいは局所浸潤によって嗄声(反回神経麻痺)や血痰(気管浸潤)などの症状を呈することもある。■ 分類甲状腺に発生する悪性腫瘍のおおよその内訳は90%が乳頭がん、5%が濾胞がん、残りの5%が髄様がん・未分化がん・悪性リンパ腫である。甲状腺がんは、これらの病理組織学的診断によって臨床像が異なることが特徴である。■ 予後乳頭がん、濾胞がん、髄様がんでは長期の生命予後を期待できる。ただし、一部には再発を繰り返してがん死に至る症例もあり、初回治療の段階でそうした危険を見極めることが大切である。一方、未分化がんはきわめて予後不良の甲状腺がんである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 身体診察触診は甲状腺がん診断の基本である。正常甲状腺は触れない。したがって触診で甲状腺を触れたら、何らかの理由があると考えるべきである。とくに乳頭がんの触診所見は特徴的である。腫瘤は硬く、辺縁が不整で表面は不平滑、可動性に乏しいことが多い。気管などの周囲臓器や組織へ浸潤すれば腫瘍は固定し、嗄声を呈することがある。転移リンパ節が腫大して触知できる場合もある。髄様がんも似た所見を呈する。一方、濾胞がんでは良性腫瘍との鑑別が難しい。未分化がんは日一日と増大する。大きな腫瘤を形成し、嚥下障害や嗄声などの症状を呈する。腫瘤の圧迫によって、あるいは気管内への浸潤によって、時に気道狭窄(呼吸困難)を来す。しばしば疼痛を伴い、発熱をみることもある。■ 血液検査橋本病あるいはバセドウ病を合併しない限り、甲状腺機能には異常がない。髄様がんではカルシトニンとCEAが高値を示す。■ 画像検査頸部超音波検査が最もよく使われる。簡便で検査費用も高額ではなく、熟練した検者が施行すれば短時間で済み、診断能も高い。CT検査は甲状腺がんと診断がついたあとで、その進行度合いを診断するのに適している。MRI検査の有用性は限定的であり、PET検査は有用ではない。■ 細胞診断穿刺吸引細胞診を行って病理組織診断を推定する。細胞診断は甲状腺悪性腫瘍全体の90%、良性腫瘍の95%で的確に診断できるが10%の偽陰性(悪性の見逃し)、5%の偽陽性(過大診断)がある。ただし細胞診で濾胞がんの診断を推定することは困難である。現状では濾胞腺腫の可能性を含めて「濾胞性腫瘍」と診断されることが多い。針生検は甲状腺腫瘍においても、より正確な診断を可能とする診断法ではあるが、解剖学的理由から検査に伴う危険性を考慮し、一般的には推奨されない。大きな腫瘍で未分化がんや悪性リンパ腫を疑うときには適応がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 乳頭がん外科治療は進行度に応じて甲状腺切除とリンパ節郭清の範囲を決定する。わが国の『甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版』では、再発の危険が低いと考えられる症例(腫瘍径2cm以下、リンパ節転移なし、遠隔転移なし)には、腫瘍側の甲状腺葉のみを切除して甲状腺機能の温存を図る術式を推奨している。一方、進行がんでは甲状腺を全摘し、術後に放射性ヨウ素内用療法と甲状腺刺激ホルモン(TSH)抑制療法を実施する方針を勧めている。リンパ節の切除(郭清)範囲は転移の状況によって異なる。明らかな転移を認めない症例に対する予防的郭清は、気管周囲リンパ節領域のみにとどめるか、あるいは患側の内深頸リンパ節領域までとする。■ 濾胞がん手術時にすでに血行転移などを認めて濾胞がんの診断が明らかであれば、甲状腺全摘を行う。そうでなければ患側葉切除を行い、病理組織診断で広汎浸潤型と判明すれば、追加で対側葉を切除する(補完甲状腺全摘)。広汎浸潤型では血行転移の懸念があるので、術後に放射性ヨウ素内用療法とTSH抑制療法を行う。■ 髄様がん発生様式には家族性と散発性とがある。前者は多発性内分泌腺腫瘍症2型(multiple endocrine neoplasia type 2: MEN2)であり、がん原遺伝子であるRETに点突然変異が生じて発症する。他の構成病変として褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症を合併することがある。甲状腺の手術前にまず褐色細胞腫発症の有無を確認し、あれば髄様がんの手術に先んじてその治療を行う。MEN2の髄様がんは、両側葉に発症するので甲状腺全摘と進行度に応じたリンパ節郭清を行う。副甲状腺機能亢進症を合併していれば、4腺すべてを摘出して一部を前腕の筋肉内に移植する(全摘+自家移植)か、または腫大の最も少ない1腺の一部を温存して他をすべて摘出する(亜全摘)。散発性では乳頭がんに準じた手術を行う。放射性ヨウ素内用療法やTSH抑制療法の適応はない。■ 未分化がん診断と治療に準緊急の対応を必要とする。腫瘍の急速な増大を特徴とし、気道狭窄もまれではない。甲状腺分化がん、とくに乳頭がんを発生母地とすることが多い。年余にわたって分化がんが診断されず、高齢者になって悪性度のきわめて高い未分化がんに転化するものと考えられている。外科治療は困難であることが多い。腫瘍を摘出できても遠隔転移が高率で起き、予後はきわめて不良である。化学療法や放射線外照射治療を併用することが治療効果を高めると期待されるが、効果は限定的である。一方で症状緩和の対応は、診断の早期から行う必要がある。4 今後の展望■ 放射性ヨウ素内用療法分化がん血行転移症例に対する放射性ヨウ素(I-131)100mCi治療が可能な入院施設は非常に限られており、治療までの待ち時間が今後の課題となっている。一方、補助療法としての30mCi外来内用療法(アブレーション)が2011年から実施可能となった。高危険群に対するアブレーションの評価は今後待たれる。■ 分子標的薬分化がんおよび髄様がんの再発進行例に対する分子標的薬の有効性が、海外から報告されている。わが国での使用はいまだ承認されていないが、有効な手立ての少ない甲状腺がんの治療に役立つことが期待される。5 主たる診療科内分泌外科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本癌治療学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報: 甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2010年版の閲覧ができる)1)日本内分泌外科学会、日本甲状腺外科学会編. 甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版. 金原出版; 2010.

検索結果 合計:2882件 表示位置:2381 - 2400