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胃がん切除予定例のピロリ除菌はいつすべき?

 マーストリヒト・アジア太平洋コンセンサスガイドラインでは、胃がんの既往のある患者へのHelicobacter pyloriの除菌を強く推奨している。がん研有明病院の本多 通孝氏らは、胃切除術を受ける患者への適切な除菌のタイミングを検討するため、オープンラベル単一施設無作為化比較試験を実施した。その結果、術前群と術後群で除菌成功率が同等であり、著者らは、「胃切除を予定している胃がん患者は、予定されている再建術式に関係なく、術前の除菌は必要ない」と結論している。Journal of the American College of Surgeons誌オンライン版2015年4月8日号に掲載。 著者らは、胃切除術を受ける予定の150例について、術前除菌群もしくは術後除菌群のいずれかに割り付けた。除菌治療のレジメンは、一般的な3剤併用療法(ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシン)で実施した。術前群では、除菌治療後に手術を実施、術後群ではDay8に実施した。 主要評価項目は、残胃で除菌成功を達成した患者の割合であった。除菌成功の定義は、術後6ヵ月時点でC13尿素呼気試験および便中抗原とも陰性の場合とした。 主な結果は以下のとおり。・8例を除き、術前群70例と術後群72例の計142例をITT解析に含めた。・胃切除術はそれぞれ、ビルロートI法が18例、ルーワイ法が70例、幽門保存胃切除術が57例であった。・除菌成功例の割合は、術前群と術後群でそれぞれ68.6%対69.4%(p=1.000)で、2群間でほぼ同等であった。・再建術式におけるサブグループ分析でも有意差は認められなかった。

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ステント型血栓回収デバイス、急性虚血性脳卒中の1次治療に 米脳卒中治療ガイドライン

 2015年7月10日、日本メドトロニック発表。アメリカ心臓協会/アメリカ脳卒中協会(American Heart Association, AHA/American Stroke Association, ASA)から新しい脳卒中治療ガイドラインが発表された。本ガイドラインでは、適応患者に対し現行の標準治療であるIV-tPAに、Medtronic plc(本社:アイルランド ダブリン、会長兼最高経営責任者:オマーイシュラック)のステント型血栓回収デバイス(商品名:Solitaire)をはじめとするステント型血栓除去術の併用が治療の第1選択として推奨されている。 本ガイドラインは、NEJM誌にて発表された5つのグローバル臨床試験を専門委員会で分析した結果に基づくもの。この臨床試験では、脳から血栓を物理的に取り除く手技であるステント型血栓除去術を、IV-tPAなどの現行の薬剤治療へ追加することにより、薬剤治療のみを行った場合以上の治療効果をもたらすことが確認された。さらに、ステント型血栓除去術を追加することにより、脳卒中患者における身体障害の低減、神経学的結果および機能的自立回復率の向上が得られることが示唆された。 米国の急性虚血性脳卒中患者69万5,000人のうち、約24万人がステント型血栓回収デバイスによる治療に適応となるが、年間約1万3,000件の手技しか行われていないのが現状。日本メドトロニックプレスリリースはこちら。(PDF)

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抗精神病薬の変更は何週目が適切か

 統合失調症において抗精神病薬が無効な場合、どの程度の期間を待ったうえで治療変更すべきかという臨床上の課題は未解決である。この点に関して、各ガイドラインの見解はさまざまであった。オランダ・アムステルダム大学のMyrto T. Samara氏らは、統合失調症において抗精神病薬の変更を考える場合の効果判定時期の目安を明らかにすべく、メタ解析を行った。その結果、治療開始2週時点で効果が認められない場合は、その後も効果が得られる可能性が低いことを報告した。American Journal of Psychiatry誌2015年7月1日号の掲載報告。 研究グループは、主に個人の患者データを用いて2週時点での非改善がその後の無反応を予測するかどうかを評価する診断検査のメタ解析を行った。EMBASE、MEDLINE、BIOSIS、PsycINFO、Cochrane Library、CINAHL、関連文献の引用文献リスト、全関連文献の補足資料を検索対象とした。主要アウトカムは、ベースラインからエンドポイント(4~12週)までの無反応に対する予測とした。無反応は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)または簡易精神症状評価尺度(BPRS)における総スコアの50%以下の減少(最小の改善幅を示す)と定義した。また、2週時点の非改善はPANSSあるいはBPRSの20%以下の改善(最小限の改善より小さいことを示す)とした。副次的アウトカムは、横断的な症状の非寛解、そしてエンドポイント時点でのPANSSあるいはBPRSの20%以下の減少とした。可能性のある調整変数をメタ回帰分析により検証した。主な結果は以下のとおり。・34件の試験(9,460例)において、2週時点でのPANSSあるいはBPRSスコアの20%以下の減少は、特異度86%、陽性適中率(PPV)90%をもってエンドポイント時点での無反応を予測した。・実際の観察症例(特異度86%、PPV 85%)または非寛解症例(特異度77%、PPV 88%)のデータを用いても、同様の結果が得られた。・一方、エンドポイント時点での20%以下の減少という定義を用いた場合、予測適中率の結果は不良であった(特異度70%、PPV 55%)。・検査の特異度は、試験期間6週間以下、ベースライン時の高い重症度、短い罹患期間により、有意に低下した。関連医療ニュース 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 抗うつ薬切替のベストタイミングは? 抗精神病薬の切り替えエビデンス、どう評価すべきか  担当者へのご意見箱はこちら

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ヘパリンブリッジに意味はあるのか?(解説:後藤 信哉 氏)-381

 抗血栓療法は、リスクを飲み込んでメリットを期待する「両刃の剣」の治療である。 脳卒中リスクを有する心房細動症例ではとくに喧伝されているが、血栓イベントの多くが不可逆的なので、血栓リスク・出血リスクのどちらを重視するかは、個別の臨床医と患者さんの選択である。 多くの抗血栓薬は、2~3年間の観察期間内の血栓イベント、出血イベントにより、有効性、安全性を検証されて一般臨床における使用推奨がなされる。 日本人の死因の第1位は出血疾患としての悪性腫瘍なので、過去のランダム化比較試験に基づいて抗凝固療法が開始された症例であっても、将来発がんし、出血を伴う検査、手術などが発生するリスクが高い。日本でも多くの症例が抗凝固治療を受けており、消化器内視鏡治療を受けるために一時的にヘパリンブリッジを受けている症例も多い。各種診療ガイドラインではヘパリンブリッジについて触れているが、一様に「明確なエビデンスはないが…」と記載されている。 本試験は、日本の標準治療である未分画ヘパリンではなく低分子ヘパリンではあるが、明確なエビデンスである。Medical legal issueとしても、手術時に「ヘパリンブリッジ」をしなかったと苦情を受けることが多い。今後は「ヘパリンブリッジについてのevidenceはある」、「evidenceはヘパリンブリッジをしても、非ヘパリンブリッジと比較して血栓イベント・出血イベントについて劣らないことを示した」と明確に答える根拠ができてとてもよかった。

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心房細動患者の手術、ブリッジング抗凝固療法は必要か/NEJM

 待機的手術などの侵襲性の処置のためにワルファリン治療を中断する必要のある、心房細動(AF)患者に対するブリッジング抗凝固療法の必要性は不明とされる。今回、カナダ・マクマスター大学のJames D Douketis氏らは、BRIDGE試験を行い、低分子量ヘパリンによる周術期のブリッジング抗凝固療法は、動脈血栓塞栓症の予防や大出血リスクの抑制には効果がないことを確認したことを報告した。ブリッジング抗凝固療法の必要性そのものに対する根本的な疑問があり、エビデンスもないため、現行の診療ガイドラインの勧告には説得力がなく、一貫性に欠ける状況だという。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。動脈血栓塞栓症予防の非劣性、大出血リスク抑制の優越性を検証 BRIDGE試験は、AF患者の周術期の動脈血栓塞栓症予防における非ブリッジング抗凝固療法の、低分子量ヘパリンによるブリッジング抗凝固療法に対する非劣性、および大出血リスク抑制における優越性を検証する二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、心電図またはペースメーカーに関連する診察時に慢性のAFまたは心房粗動が確認されて3ヵ月以上のワルファリン治療(INR:2.0~3.0)を受けており、待機的手術などの侵襲性の処置のためワルファリン治療の中断を要する患者であった。 被験者は、低分子量ヘパリン(ダルテパリン100IU/kg、1日2回、皮下投与)によるブリッジング抗凝固療法を受ける群またはプラセボ群(非ブリッジング群)に無作為に割り付けられた。ワルファリン治療は手術の5日前に中止された。試験薬の投与は手術の3日前に開始し、24時間前まで続けられた。 ワルファリンは手術日の夕方または翌日に再投与が開始された。試験薬は、出血リスクの低い手技の場合は術後12~24時間に、出血リスクの高い手技の場合は術後48~72時間に再投与が開始された。フォローアップは術後30日まで続けられた。 主要評価項目は、動脈血栓塞栓症(脳卒中、全身性塞栓症、一過性脳虚血発作)および大出血であった。大出血、小出血ともブリッジング群で高頻度 2009年7月~2014年12月までに北米の108施設に1,884例が登録され、非ブリッジング群に950例(平均年齢71.8±8.74歳、男性73.3%、平均CHADS2スコア2.3±1.03)、ブリッジング群には934例(71.6±8.88歳、73.4%、2.4±1.07)が割り付けられた。 術後30日時の動脈血栓塞栓症の発生率は、非ブリッジング群が0.4%(4/918例)、ブリッジング群は0.3%(3/895例)であり、非ブリッジング群のブリッジング群に対する非劣性が確証された(平均群間差:0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.8、非劣性検定:p=0.01、優越性検定:p=0.73)。 また、大出血の発生率は、非ブリッジング群が1.3%(12/918例)、ブリッジング群は3.2%(29/895例)であり、非ブリッジング群の優越性が示された(相対リスク:0.41、95%CI:0.20~0.78、優越性検定のp=0.005)。 副次評価項目である死亡(0.5 vs.0.4%、優越性検定のp=0.88)、心筋梗塞(0.8 vs.1.6%、p=0.10)、深部静脈血栓症(0 vs.0.1%、p=0.25)、肺塞栓症(0 vs.0.1%、p=0.25)には優越性に関する差はみられなかったが、小出血の頻度はブリッジング群で有意に高かった(12.0 vs.20.9%、p<0.001)。 著者は、「全体的な臨床ベネフィットは、非ブリッジングのほうが良好であることが示された」と結論し、「ワルファリン中断中の周術期の動脈血栓塞栓症リスクは過大に評価され、ブリッジング抗凝固療法では抑制されない可能性がある。周術期の動脈血栓塞栓症の発症メカニズムには、手術の種類や術中の血圧変動が、より密接に関連している可能性がある」と指摘している。

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高齢の心筋梗塞例でのICDの有用性/JAMA

 急性心筋梗塞(AMI)発症後に左室駆出率(EF)の低下がみられる高齢患者では、植込み型除細動器(ICD)の装着例は非装着例に比べ2年死亡率が良好であることが、米国・デューク大学医療センターのSean D Pokorney氏らの調査で示された。ACCF/AHAガイドラインでは、心筋梗塞(MI)患者における心停止による突然死の1次予防として、MI発症後40日以上、至適な薬物療法を行っても、EF<35%の場合にICDの装着を推奨している。一方、とくにMIの日常診療ではICDが十分に活用されていないことを示唆するエビデンスがあり、またMIやその結果としての虚血性心筋症は加齢に伴って増加するが、高齢患者におけるICDの有用性については議論があるという。JAMA誌2015年6月23・30日号掲載の報告。約1万例でICD装着と死亡の関連を後ろ向きに評価 研究グループは、EFの低下がみられる高齢MI患者におけるICD装着と背景因子、死亡との関連を後ろ向きに評価する観察研究を行った。 2007~2010年に、米国の441施設で治療を受けた、MI発症後にEFが<35%に低下した65歳以上のメディケア受給者1万318例のデータを後ろ向きに解析した。ICD装着歴のある患者は除外した。 ICD装着の適格例におけるMI発症後1年以内のICD装着の有無とその関連因子を評価し、ICD装着の有無別に2年死亡率を比較した。フォローアップ期間中央値は718日(四分位範囲:372~730日)だった。 全体の年齢中央値は78歳(四分位範囲:72~84)で、65%が非ST上昇型MI(NSTEMI)であり、75%が入院中に血行再建術を受けた。1年以内のICD装着率は8.1%(95%信頼区間[CI]:7.6~8.7)で、入院からICD装着までの期間中央値は137日、血行再建術施行例では115日だった。2年死亡リスクが36%低下、ICD装着率改善の研究を MI発症後1年以内のICD装着例(785例)はICD非装着例(9,533例)に比べ、年齢が若く(74 vs.78歳、p<0.001)、女性が少なく(30 vs.47%、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.52~0.73、p<0.001)、末期腎臓病例が少なかった(9 vs.20%、0.57、0.43~0.75、p<0.001)。 一方、MI発症後1年以内のICD装着例は、冠動脈バイパス術(CABG)施行歴のある患者が多く(31 vs.20%、HR:1.49、95%CI:1.26~1.78、p<0.001)、心筋トロポニンのピーク値の中央値が高かった(正常上限の85倍 vs.51倍、1.02、1.01~1.03、p<0.001)。 また、院内心原性ショック発症率(13 vs.9%、HR:1.57、95%CI:1.25~1.97、p<0.001)や、退院後2週間以内の心臓関連の追加処置(30 vs.20%、1.64、1.37~1.95、p<0.001)の頻度が高かった。 1年以内のICD装着例は非ICD装着例に比し、2年死亡率が有意に低下した。すなわち、ICD装着例の死亡率は100人年当たり15.3件(128件/838人年)で、非ICD装着例は26.4件(3,033件/1万1,479人年)であり、補正後HRは0.64(95%CI:0.53~0.78)と、ICD装着例で有意に良好であった。 著者は、「MI発症後のEFが低くICDの装着が適切と考えられた高齢患者のうち、1年以内に実際にICDを装着したのは10例中1例にも満たなかったが、これらICD装着例ではリスク補正2年死亡率が有意に改善されていた」とまとめ、「適格例のICD装着率を向上させるエビデンスに基づくアプローチを確立するために、さらなる研究を進める必要がある」と指摘している。

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問診と自己申告で全死亡が予測できる?(解説:桑島 巌 氏)-378

 英国のBiobankの約50万人の登録追跡研究から、身体所見や採血データを用いなくとも、問診や健康状態の自己申告によって全死因死亡を予測できるという発表である。 とくに重篤な疾患を合併していない症例では、男女とも最大の死亡リスクは喫煙であったという。また、全体として、男性の最も強力な死亡予測因子は自己申告による健康状態、女性ではがんの診断歴であったという。採血、身体検査、生体試料など655項目と全死亡との関連について、統計学的に解析しているが、そのうち自己申告による予測スコアは疾患歴、喫煙歴、飲酒歴、薬剤服用状況、自立機能、歩行障害、生活様式など、男性が13項目、女性は11項目である。 これだけ膨大なデータを用いた研究としては、喫煙とがんの既往歴が死亡を予測するという、当たり前のような結果を示したにすぎないが、健診業務や日常診療において、問診や自己申告が予後予測に非常に重要であることを示した点では意義のある研究である。 高齢者社会という多様性の時代の健診や診療においては、数値にこだわるよりも個々との問診や自己申告、すなわち、対話に基づいた診療が重要であることを示している。とくに診療ガイドラインによるコレステロール値、血糖値、血圧値などの数値に拘泥する傾向があるわが国の健診あるいは診療にとって、考えさせられる論文である。

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専門外のアドバイス(前半)【Dr. 中島の 新・徒然草】(074)

七十四の段 専門外のアドバイス(前半)最近、親戚の男性が若くしてがんになってしまいました。当然のことながら奥さんもお母さんも周章狼狽。その結果、私にアドバイスを求めてきました。とはいえ消化器がんのことなんぞはまったくわからず、私もしどろもどろです。そうこうしているうちに手術が終わり、いよいよ化学療法。こちらも何とかしてあげたいのは山々です。「その病気だったら専門の先生に聞いて下さい」ということなら誰でも言えること。いくら専門外とはいえ、「私」にアドバイスを求めてきたのだから、「私」に話を聴いてもらいたいわけです。ということで、ある日、腹をくくって彼が入院している病院にお見舞いにいくことにしました。ロビーで彼と話をするうちに、医師ならではの助言が数多くできることに気づきました。というわけで、いくつかここに紹介しましょう。助言その1:標準治療こそ最強 中島 「病気になったら周囲の人が色々とアドバイスをしてくれると思うけど」 男性 「そうなんですよ」 中島 「たとえば『イワシの頭を食べたらがんに効く』とか、そのテのことだ」 男性 「もう既にあれこれ言われています」 中島 「親戚だからホントのことを言うけどね、そんなモンはクソだな!」 男性 「クソ……ですか?」 中島 「イワシの頭の錠剤とか、1本何万円の〇〇のエキスとか、全部その場で叩き返しなさい」 男性 「でも、せっかく親切で言ってくれているんだし」 中島 「現代医学を信じようよ。標準治療こそ最強だから」 男性 「標準治療といいますと?」 中島 「科学的な理論と膨大な試行錯誤で築き上げられた『定石』だ」 男性 「将棋や囲碁の定石のようなものですか」 中島 「そう。このステージならこう、この場合はこう、とベストのやり方が確立されているわけ」 男性 「なるほど」 中島 「もちろん定石として固まっていない部分もある。その場合は『治療法Aと治療法Bがあって、それぞれのメリット・デメリットはこうです』という説明があり、患者自身が選択しなくてはならない」 男性 「そうなんですね」 中島 「せっかく治るチャンスがあるんだから、民間療法に走ったりしないように」 男性 「確かに走りそうになっていました」 この男性は普通のサラリーマンですが、ロジカルな考え方のできる人のようでした。助言その2:健康な周囲の人を妬まないこと 中島 「若くして難しい病気にかかったら、『なんで俺が?』って思うでしょ」 男性 「正直なところ、そう思っています」 中島 「健康な人を妬ましく思うのは病人の自然な気持ちだから否定はしないけど」 男性 「ええ」 中島 「あんまり取り憑かれないほうがいいよ。自分が不幸になるだけだし」 男性 「わかりました」 私自身が病気になったときのことを思い出しながらのアドバイスです。助言その3:患者向けガイドラインを読むこと 男性 「何か読んでおいたほうがいい本とかありますか?」 中島 「患者向けガイドラインかな」 男性 「そんなものがあるんですか?」 中島 「各学会が出しているガイドラインは医師向けと患者向けがあるわけ。それの患者向けのものを読んでおくと凄く役に立つよ」 男性 「早速読んでみます」 中島 「ネットで公開されているし、なんせわかりやすいのは間違いない」 実はお見舞いの前に私がこっそり読んで来たのです。最近の患者向けガイドラインはよくできているので感心しました。助言その4:病気のことは周囲に打ち明けたほうが楽になる 中島 「病気のことは高度な個人情報だから周囲に隠しておく、というのも1つの考え方だ」 男性 「そうですね」 中島 「でもね、周囲の人たちにも言ったほうが楽になると僕は思う」 男性 「そうなんですか!」 中島 「自分だけで抱えていると苦しいのは間違いない。僕の場合は人と話をしたほうが気持ちが軽くなったな」 男性 「今日、こうやって話をしているだけでもかなり楽になってきました」 これは人によって立場や考え方は色々だと思います。あくまでも自分自身の経験に基づいての話です。助言その5:経済的補助に関する公的制度を活用すること 中島 「病気になったら治療費のことが気になると思うけど」 男性 「実際のところ気になって仕方ないんですよ。まだ子供も小さいし」 中島 「幸いなことに日本は色々な医療費助成制度があるし、病院にも窓口はあるから相談すべきだ」 男性 「そうですね」 中島 「各市町村にも助成制度があるから、ホームページなんかで調べるといいよ」 男性 「なるほど」 中島 「テレビドラマなんかで『手術してもらうために大金を準備しなくては!』とかやったりしているけど、『どこの外国の話ですか?』と、僕なんかそう思うね」 男性 「わかりました」 なんだかんだいっても諸外国に比べて日本の医療制度は良くできています。長くなりそうなので、話は後半に続きます。途中で1句医師ならば 専門外でも アドバイス

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第21回

第21回:全般性不安障害とパニック障害のアプローチ監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの場において、原因がはっきりしないさまざまな不安により日常生活に支障を生じている患者を診療する経験があるのではないかと思います。またとくに若い患者たちの中でみることの多いパニック障害もcommonな疾患の1つと思われ、その数は年々増加しているともいわれています。厚労省の調査1)では、何らかの不安障害を有するのは生涯有病率が9.2%であるとされ、全般性不安障害1.8%、パニック障害0.8%という内訳となっています。医療機関を受診する患者ではさらにこの割合が高くなっていると考えられ、臨床では避けて通れない問題となっています。全般性不安障害とパニック障害の正しい評価・アプローチを知ることで患者の不要な受診を減らすことができ、QOLを上げることにつながっていくと考えられます。 タイトル:成人における全般性不安障害とパニック発作の診断、マネジメントDiagnosis and management of generalized anxiety disorder and panic disorder in adults.以下、American Family Physician 2015年5月1日号2)より1. 典型的な病歴と診断基準全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)典型的には日常や日々の状況について過度な不安を示し、しばしば睡眠障害や落ち着かなさ、筋緊張、消化器症状、慢性頭痛のような身体症状と関係している。女性であること、未婚、低学歴、不健康であること、生活の中のストレスの存在がリスクと考えられる。発症の年齢の中央値は30歳である。「GAD-7 スコア」は診断ツールと重症度評価としては有用であり、スコアが10点以上の場合では診断における感度・特異度は高い。GAD-7スコアが高いほど、より機能障害と関連してくる。パニック障害(panic disorder:PD)明らかな誘因なく出現する、一時的な予期せぬパニック発作が特徴的である。急激で(典型的には約10分以内でピークに達する)猛烈な恐怖が起こり、少なくともDSM-5の診断基準における4つの身体的・精神的症状を伴うものと定義され、発作を避けるために不適合な方法で行動を変えていくことも診断基準となっている。パニック発作に随伴する最もよくみられる身体症状としては動悸がある。予期せぬ発作が診断の要項であるが、多くのPD患者は既知の誘因への反応が表れることで、パニック発作を予期する。鑑別診断と合併症内科的鑑別:甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、不整脈や閉塞性肺疾患などの心肺疾患、側頭葉てんかんやTIA発作などの神経疾患その他の精神疾患:その他の不安障害、大うつ病性障害、双極性障害物質・薬剤:カフェイン、β2刺激薬、甲状腺ホルモン、鼻粘膜充血除去薬、薬物の離脱作用GADとPDは総じて気分障害、不安障害、または薬物使用などの少なくとも1つの他の精神的疾患を合併している。2. 治療患者教育・指導配慮のある深い傾聴が重要であり、患者教育自体がとくにPDにおいて不安症状を軽減する。また生活の中で症状増悪の誘因となりうるもの(カフェイン、アルコール、ニコチン、食事での誘因、ストレス)を除去し、睡眠の量・質を改善させ、身体的活動を促す。身体的活動は最大心拍数の60%~90%の運動を20分間、週に3回行うことやヨガが推奨される。薬物療法第1選択薬:GADとPDに対してSSRIは一般的に初期治療として考慮される。三環系抗うつ薬(TCA)もGADとPDの両者に対して有効である。PDの治療において、TCAはSSRIと同等の効果を発揮するが、TCAについては副作用(とくに心筋梗塞後や不整脈の既往の患者には致死性不整脈のリスクとなる)に注意を要する。デュロキセチン(商品名:サインバルタ)はGADに対してのみ効果が認められている。buspironeのようなazapirone系の薬剤はGADに対してはプラセボよりも効果があるが、PDには効果がない。bupropionはある患者には不安を惹起するかもしれないとするエビデンスがあり、うつ病の合併や季節性情動障害、禁煙の治療に用いるならば、注意深くモニターしなければならない。使用する薬剤の容量は漸増していかなければならない。通常、薬剤が作用するには時間がかかるため、最大用量に達するまでは少なくとも4週間は投与を続ける。症状改善がみられれば、12ヵ月間は使用すべきである。ベンゾジアゼピン系薬剤は不安の軽減には効果的だが、用量依存性に耐性や鎮静、混乱や死亡率と相関する。抗うつ薬と抗不安薬の併用は迅速に症状から回復してくれる可能性はあるが、長期的な予後は改善しない。高い依存性のリスクと副作用によってベンゾジアゼピンの使用が困難となっている。NICEガイドライン3)では危機的な症状がある間のみ短期間に限り使用を推奨している。中間型から長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤はより乱用の可能性やリバウンドのリスクは少ない。第2選択薬:GADに対しての第2選択薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)とクエチアピン(同:セロクエル)が挙げられるが、PDに対してはその効果が評価されていない。GADに対してプレガバリンはプラセボよりは効果が認められるが、ロラゼパム(同:ワイパックス)と同等の効果は示さない。クエチアピンはGADに対しては効果があるが、体重増加や糖尿病、脂質異常症を含む副作用に注意を要する。ヒドロキシジン(同:アタラックス)はGADの第2選択薬として考慮されるが、PDに対しては効果が低い。作用発現が早いため、速やかな症状改善が得られ、ベンゾジアゼピンが禁忌(薬物乱用の既往のある患者)のときに使用される。精神療法とリラクゼーション療法精神療法は認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)や応用リラクゼーションのような多くの異なったアプローチがある。精神療法はGADとPDへの薬物療法と同等の効果があり、確立されたCBTの介入はプライマリケアの場では一貫した効果が立証されている。精神療法は効果を判定するには毎週少なくとも8週間は続けるべきである。一連の治療後に、リバウンド症状を認めるのは、精神療法のほうが薬物療法よりも頻度は低い。各人に合わせた治療が必要であり、薬物療法と精神療法を組み合わせることで2年間の再発率が減少する。3. 精神科医への紹介と予防GADとPD患者に対して治療に反応が乏しいとき、非典型的な病歴のもの、重大な精神科的疾患の併発が考慮される場合に、精神科医への紹介が適用となる。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 川上憲人ほか. こころの健康についての疫学調査に関する研究(平成16~18年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業). こころの健康についての疫学調査に関する研究,総合研究報告書). 2007. 2) Locke AB, et al. Am Fam Physician. 2015;91:617-624. 3) NICEガイドライン. イギリス国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence:NICE).

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救急隊到着前の心肺蘇生で予後改善/NEJM

 スウェーデンでは、人口約970万人のうち300万人以上が心肺蘇生(CPR)の訓練を受けているが、その効果を疑問視する声があるという。今回、同国カロリンスカ研究所のIngela Hasselqvist-Ax氏らが調査したところ、救急隊(EMS)到着前のCPRにより院外心停止患者の30日生存率が2倍以上に向上していることがわかった。心肺停止患者のアウトカムの改善には発症から治療開始までの期間の短縮が重要であり、欧米のガイドラインでは、院外で可能な最も重要な措置は、心停止の発生を早期に認識して緊急電話を入れ、CPRおよび除細動を行うこととされる。研究の成果は、NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。20年以上、約3万例をEMS到着前CPRの有無別に比較 研究グループは、1990年1月1日~2011年12月31日にSwedish Cardiac Arrest Registryに登録された院外心停止患者のデータを解析した。目撃者のいない例や目撃者がEMSのみの例は除外した。1998年に、緊急連絡者がCPR訓練を受けていない場合は電話でCPRを支援する方法が導入され、2008年には、30日生存例で退院時の脳機能評価が開始された。  この間に登録された院外心停止患者6万1,781例のうち3万381例が解析の対象となった。EMS到着前に、その場に居合わせた者によりCPRが施行されたのは1万5,512例(51.1%)で、到着前には施行されなかった患者は1万4,869例(48.9%)であった。EMS到着前CPR施行群は非施行群よりも若く(年齢中央値:69 vs. 74歳、p<0.001)、自宅での発症率が低く(55.5 vs. 73.2%、p<0.001)、女性が少なかった(26.8 vs. 30.2%、p<0.001)。 到着前施行群は、心停止の原因が心臓と推定される患者が多くないにもかかわらず、心室細動の頻度が高かった。また、到着前施行群は、卒倒(collapse)からEMSを電話で呼ぶまでの期間や、卒倒からCPR開始までの期間は短かったが、EMSを呼んでから到着までの期間や、卒倒から除細動開始までの期間(心室細動がみられる場合)は長かった。調査期間を通じて、CPR訓練を受けた者の数やEMS到着前のCPR施行例の割合は経時的に増加していた。30日生存率が4.0%から10.5%に、早く開始するほど予後良好 30日生存率は、到着前施行群が10.5%であり、非施行群の4.0%に比べ有意に高かった(p<0.001)。すべてのサブグループで、到着前施行群の30日生存率が非施行群よりも有意に良好だった(各サブグループのオッズ比[OR]の範囲:1.97~3.02)。 全症例における卒倒からCPR開始までの期間別(0~3分、4~8分、9~14分、14分以上)の30日生存率は、それぞれ15.6%、8.7%、4.0%、0.9%であり、早期にCPRを開始するほど優れた(p<0.001)。この関連はすべてのサブグループで認められた(いずれも、p<0.001)。また、このような早期CPRと生存率の正の相関は、調査期間を通じて安定的に認められた。 事後解析として傾向スコア(年齢、性別、心停止の発生場所、心停止の原因、心電図上の初期調律、卒倒からEMSを呼ぶまでの期間、EMSを呼んでから到着までの期間、イベント発生年)を算出し、これらのスコアで補正しても、顕著な有意差をもって到着前施行群の30日生存率が優れていた(OR:2.15、95%信頼区間[CI]:1.88~2.45、p<0.001)。傾向スコアに、心室細動がみられた患者の発症から除細動開始までの期間を含めても、この有意差は保持されていた(OR:2.27、99%CI:1.84~2.81、p<0.001)。 一方、2009年1月1日~2011年12年31日にデータが収集されたサブグループのうち、到着前施行群の35%が、電話で支援を受けた者(その場に居合わせたがCPR訓練を受けていない者)によりCPRが施行された。これらの患者の30日生存率は10.9%であり、電話での支援を受けない者によって早期にCPRが開始された患者の15.4%に比べ有意に不良であった(p<0.001)。また、30日生存例の退院時の脳機能評価は474例で行われ、95%が良好と判定された。 著者は、「その場に居合わせた者が、EMSの到着前にCPRを開始した場合、緊急電話より迅速に行われていたことから、CPR訓練を受けた者は受けていない者に比べ、心停止発症の認識や行動の開始が良好であることが示唆される」と指摘している。

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IMPROVE-IT試験:LDL-コレステロールは低ければ低いほど良い!(解説:平山 篤志 氏)-371

 2014年の米国心臓協会(AHA)学術集会で発表され話題となったIMPROVE-IT試験がようやく論文化された。 スタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブで、LDLコレステロールを低下させることが心血管イベントを減少させるかという臨床的疑問に、YESと答えた研究である。つまり、本試験がこれまでの臨床試験でのLDLコレステロール値の低下と心血管イベント低下効果の直線上に乗ったことで、LDLコレステロールの“The Lower, the better”が証明されたのである。 2013年のAHA/ACCガイドラインで、脂質管理はLDLコレステロール値に関係なく、動脈硬化性心血管患者では、ストロングスタチンを投与するだけの“Fire and forget”であったが、この試験によりLDLコレステロールを低下させることの有用性が示され、今後のハイリスク患者についてのガイドラインが変更される可能性もある。しかし、LDLコレステロールがエゼチミブ併用群で54mg/dL、スタチン単独群で70mg/dLの差があったものの、イベントでは平均7年間の追跡でわずか6.4%の低減効果に留まった。また、非致死的心筋梗塞と虚血性脳卒中でのイベント低下が認められたものの、心血管死には差がなかった。 実臨床で死亡に差がないということが意義を持つのか? NNT50という数字が高いのか低いのか? この試験では、スタチンがもたらした効果ほどのインパクトはエゼチミブにはなかった。臨床的な有用性の限界かもしれない。ただ、サブ解析で65歳以上、すでに脂質低下薬を服用中の患者、LDLコレステロール値が95mg/dL以下の患者で併用群に効果が認められ、さらに糖尿病患者で有意に併用効果が認められたことから、スタチンで治療されていてもハイリスクな患者には、エゼチミブの追加投与によるLDLコレステロール低下が重要であることが示された。 今後、ハイリスク患者にはストロングスタチンの投与だけでなくLDLコレステロール値を考慮した治療が必要となるであろう。

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TRIGGER試験:急性上部消化管出血に対する限定的輸血対自由な輸血;実用的・非盲検かつ集団をランダム化した実現可能性試験(解説:上村 直実 氏)-368

 臨床現場で上部消化管出血(UGIB)患者に対する診療においては、迅速に出血源を発見して止血することと同時に、輸血を行うか否かを判断することが重要となる。「非盲検集団無作為化試験」が、この輸血施行の判断基準に関するエビデンスを得るための研究デザインとして、適切であるか否かを検証するために施行されたTRIGGER試験の結果が公表された。 TRIGGER試験では、大量出血症例を除くUGIB全症例を登録し、病院単位でヘモグロビン(Hb)濃度が8g/dL未満で輸血を行う制限群と、10g/dL未満でも輸血できる非制限群の2群に割り付けて検討した結果、「集団無作為化デザインは、両群共に被験者の迅速なエントリーが可能で、高いプロトコル順守率および貧血の解消に結び付き、有意ではないが制限群で赤血球輸血の減少に寄与する可能性が示唆された」。すなわち「臨床診療ガイドラインでUGIB患者に対する輸血の基準を明確にするためには、『非盲検集団無作為化試験』が適切な研究デザインであり、その実施が必須である」と結論されている。 UGIB患者に対する輸血に関して明確な基準はなく、大規模研究によるエビデンスの構築が期待されるところである。しかし、緊急症例に対するエントリー率や診療現場での無作為割り付けの困難性、さらに症例バイアスが大きいなどの理由から、実現可能で精度の高い介入試験デザインが探索されてきた。TRIGGER試験の結果から、施設を無作為に分ける方法が信頼性の高いエビデンス構築に有用であると示されたことから、今後、同デザインを用いた大規模なRCTが実践されるであろう。しかし、わが国におけるUGIBに対する診療の中心は、内視鏡検査での出血源の確認に引き続く内視鏡的止血の成否により輸血の必要性を決定することが多く、日本で本デザインを使用した多施設共同試験を実施する際には、各施設間において異なる内視鏡診療精度が課題となろう。

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Dr.山田のゆるい糖質制限 -医学的根拠と実践方法-

第1回 いま、糖質制限食が必要です 第2回 すでに効果と安全性は認められています第3回 日本糖尿病学会は昔から認めています 第4回 三大栄養素比率にこだわる必要はありません第5回 糖質制限は批判されるべきものではありません第6回 糖質制限はこうして実践できます 糖尿病食事療法の新たな選択肢として脚光を浴びる糖質制限。まだ一部には、腎機能への悪影響などを危惧する懐疑的な意見があるのも事実です。この番組では北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生が最新のエビデンスを科学的に分析し、糖質制限に対するさまざまな危惧を払拭。さらに、実際の治療に取り入れる際のポイント、成功に導くテクニックも公開します。自信を持って糖質制限を勧められる知識とノウハウを詰め込みました!第1回 いま、糖質制限食が必要です糖尿病治療の新たな選択肢として注目を集める糖質制限。アメリカではすでに食事療法の一つとして認められているのです!第1回は、 山田悟先生が提唱する「ゆるい」糖質制限の定義、そしてなぜ糖質制限が糖尿病大国アメリカで認められているのかを学会提言の変遷とともに解説します。糖質を減らした分、脂質が増えていいの?といった疑問にも脂質を摂取することが動脈硬化や心血管疾患のリスクを低下させる…そんな研究結果を数多く引用し不安を払拭していきます。第2回 すでに効果と安全性は認められています今回は3つの大きな臨床研究を例に、糖質制限の効果と安全性に迫ります。4種類の食事療法での減量効果を調べたATOZ試験。糖質制限食・脂質制限食・高脂質食それぞれの減量効果や血糖値、脂質、血圧などに与える影響を調べたDIRECT試験とそのサブ解析。そして日本人の糖尿病患者での効果を検討した北里研究所病院試験。高脂質食や糖質制限食による脂質プロファイルの改善、また腎症3期でのeGFRの変化などを見ると、腎機能への影響や動脈硬化のリスクも杞憂だったと感じるはず。第3回 日本糖尿病学会は昔から認めています日本糖尿病学会は糖質制限を否定している?それは誤解だと山田先生は言い切ります。昔も今も、否定されているのは「極端な」糖質制限のみであり、「ゆるい」糖質制限は許容されているのです。そのことを理解するには、食品交換表、また日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインについて注意深く読み解くことが必要。そこで今回は、食品交換表の変遷を解説し、糖尿病診療ガイドラインの参考文献を丁寧に検証していきます。情報を自分で精査するための知識として、観察研究と無作為比較試験の違いにも言及。実践可能な食事療法として、「ゆるい」糖質制限が存在することをぜひ番組で体感してください。第4回 三大栄養素比率にこだわる必要はありません「炭水化物は総カロリーの50~60%摂取すべき」という定説、その根拠をひも解いてみると、実は明確なエビデンスがあるとは言い切れないということが今回のレクチャーでわかります。糖質摂取量を減らすことで懸念される血管内皮機能の低下や筋肉量の減少など、様々ある言説が誤解であるということもエビデンスに基づいて解説します!第5回 糖質制限は批判されるべきものではありません糖質制限で動脈硬化になる?心血管疾患のリスクが高まる?いずれも過去の言説になりつつあります。一概に蛋白といっても、その質によって動脈へ与える影響が異なることや、欧米人と東アジア人では糖質摂取量による心血管リスクが異なることを最新のエビデンスを用いて解説します。第6回 糖質制限はこうして実践できます糖質制限レクチャー最終回は、導入方法をお教えします。糖質制限を実際に導入するときに気を付けることは?糖質制限をしてはいけない症例は?薬との併用はどう考えればいい?食事以外に変更すべきことはある?など糖質制限の導入にあたっての疑問に山田先生がお答えします。糖質制限の特徴と注意点を押さえて、日常診療に役立ててください!

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てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか

 米国・ホフストラ・ノースショアLIJ医科大学のPuja Appasaheb Naik氏らは、米国神経学会のガイドラインに準じてシステマティックレビューを行った。その結果、てんかんを有するドライバーと一般集団における交通事故率の違いに関するエビデンスは矛盾しており、結論は得られないことを報告した。Epilepsy&Behavior誌オンライン版2015年5月7日号の掲載報告。 研究グループは、PubMedを用いて1996年以降に発表された英語論文を検索し、てんかん患者と非罹患者における自動車運転による交通事故のリスクを比較検討した。 結果は以下のとおり。・本レビューの対象となったエビデンスは、クラスⅡの研究が6件、クラスIIIの研究が1件であった。・2件(クラスIIIおよびクラスII、各1件)は、一般集団と比較し、てんかん患者群で全交通事故率が減少する傾向がみられた。各研究の相対リスク(RR)は0.86(95%信頼区間[CI]:0.65~1.14)と1.00(同:0.95~1.06)であった。なお、どちらの研究も交通事故率は自己報告に基づいた。・3件(すべてクラスⅡ)は、一般集団と比較して、てんかん患者群で全交通事故率の増大または増大傾向がみられた。RRは、保険会社・救急診療部・医師が報告しているデータベースに用いた研究で1.62(95%CI:0.95~2.76)、警察の報告を用いた研究で1.73(同:1.58~1.90)、救急来院に基づいた研究で7.01(同:2.18~26.13)であった。・1件(クラスⅡ)は、死亡事故の発生率について、てんかん患者との比較において、他疾患に起因する事故は26倍、アルコール中毒に起因する事故は156倍と報告していた。・1件(クラスⅡ)は、てんかん患者の発作による交通事故は、交通事故2,800件につき1件と報告していた。 一般集団と比較したてんかん患者の交通事故率について、矛盾した結果が得られたことについて、著者らは方法論的な差異を挙げたうえで、「今後の研究では、交通事故率の算出はてんかん患者の自己申告によらない客観的な指標を用い、分母には走行距離を用いるべきである」とまとめている。【訂正のお知らせ】本文に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年8月24日)。関連医療ニュース 精神疾患ドライバー、疾患による特徴の違い 認知症ドライバーの運転能力、どう判断すべきか てんかん患者への精神療法、その効果は  担当者へのご意見箱はこちら

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第20回

第20回:大腸がんのスクリーニングとその後のフォロー監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 近年、わが国の大腸がん死亡率および罹患率は著しく増加しています。2013 年の人口動態統計によれば、女性の大腸がん死亡は全悪性新生物による死亡の中で最多であり、男性では肺がん、胃がんに次いで多く、過去 50 年間でおよそ 10倍となっています1)。 大腸がんは、早期であればほぼ100%近く治すことができますが、一般的には早期の段階では自覚症状はありません。したがって、無症状の時期に発見することが重要となります。今回の記事で大腸がんのスクリーニングとその後のフォローについて確認してみましょう。また日本では、これを参考にした大腸がんの検診ガイドライン2)も出されていますので、一度目を通してみるとよいかもしれません。 なお、日本の『大腸ESD・EMRガイドライン』では、径6mm以上の腺腫(一定の担がん率・SMがんも存在することから表面陥凹型腫瘍は径5mm以下でも)切除が勧められています。遠位大腸に存在する径5mm以下の典型的な過形成性ポリープは放置可能(エビデンスⅣb・推奨度B)3)など対応に違いがあります。 タイトル:大腸がんのスクリーニングおよびサーベイランスColorectal Cancer Screening and Surveillance以下、American Family Physician 2015年1月15日号4)より◆疫学~スクリーニング(USPSTF;米国予防サービスタスクフォースの推奨)大腸がんは男女ともに3番目に頻度の多いがんである。早期発見/治療により過去20年間で発生率と死亡率は減少している。平均的な大腸がんリスクのある人には、50歳でスクリーニングを開始すべきである。75歳以上へのルーチンスクリーニングは個別の判断を推奨している。(リスクとがん死亡を比較してスクリーニングの有用性が上回る場合、患者と医師で相談して決定する)【無症状、平均リスクの成人に対するスクリーニングの推奨】下記はどれも同等の推奨度。年に1回の高感度便潜血検査5年ごとの軟性S状結腸鏡検査と3年ごとの高感度便潜血検査10年ごとの大腸内視鏡検査【リスクを持つ成人の大腸内視鏡スクリーニング】60歳以上で大腸がんもしくは高度異型腺腫※と診断を受けた1親等の親族が1人いる場合→50歳で全大腸内視鏡検査スクリーニング開始、10年ごとに施行60歳未満で大腸がんもしくは高度異型腺腫と診断を受けた1親等の親族が1人いる場合→40歳もしくは親族が診断を受けた年齢より10年若いときに全大腸内視鏡検査スクリーニング開始、5年ごとに施行どの年齢でも大腸がんもしくは高度異型腺腫と診断を受けた1親等の親族が2人いる場合→40歳もしくは親族のうちより若年で診断を受けたその年齢より10年若いときに全大腸内視鏡検査スクリーニング開始、5年ごとに施行※高度異型腺腫=10mm以上の腺腫で絨毛要素を持ち、高度異型性であるものをいう。【大腸内視鏡検査フォローアップ期間】2012年に出されたU.S.Multi-Society Task Force on Colorectal Cancerからのサーベイランスガイドライン異常なし(ポリープなし、もしくは生検で異常なし ) →10年ごと過形成性ポリープ直腸もしくはS状結腸に10mm未満の過形成性ポリープ →10年ごと低リスクポリープ10mm未満の管状腺腫が1、2個 →5~10年ごと異型性のない10mm未満の小無茎性鋸歯状ポリープ →5年ごと高リスクポリープ →3年ごと3~10個の管状腺腫10mm以上の管状腺腫もしくは鋸歯状ポリープ絨毛もしくは高度異形成を持つ腺腫細胞学的異形成との固着性鋸歯状ポリープ古典的鋸歯状腺腫他の事情10個以上の腺腫 → 3年ごと鋸歯状ポリープ症候群 →1年ごと※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 国立がん研究センターがん対策情報センター. 人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2013年). http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html (参照 2015.5.25) 2) 平成16年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班. 有効性評価に基づくがん検診ガイドライン. 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター. http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/daicyougan.html (参照 2015.5.25) 3) 田中信治ほか. 日本消化器内視鏡学会誌. 2014;56:1598-1617. 4) Short MW, et al. Am Fam Physician. 2015;91:93-100.

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上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬に耐性の非小細胞肺がんに対するAZD9291の効果について(解説:小林 英夫 氏)-361

 すでにご承知の読者も多いであろうが、非小細胞肺がんの臨床において2002年から登場した上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は現在不可欠な薬剤となっている。2014年版日本肺癌学会編『EBMの手法による肺癌診療ガイドライン』1)においても、手術不能非扁平上皮がんでEGFR遺伝子変異陽性例に治療推奨グレードAと位置付けられた。 第1世代EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ)導入後には、高度な薬剤性肺障害の合併、無効症例の存在、人種差、薬剤耐性獲得などの問題点が指摘された。これらの課題は、合併肺疾患の有無や、組織型選択、性別、組織検体でのEGFR遺伝子変異といった評価プロセスを経ることにより、ある程度の改善が得られている。そして最大の未解決点は1~2年程度で生じてしまう薬剤耐性問題である。治療当初は良好な腫瘍縮小効果が得られた症例も恒久的効果は困難であり、この解決を目指して新規EGFR-TKI薬の開発が進められている。 今回、新規2薬剤の臨床試験が同時にNEJM誌に掲載されたが、本稿ではアジア人主体で日本人を含む検討がなされた第3世代EGFR-TKI(AZD9291)についての、Janne氏らの論文を概説する。 薬剤耐性獲得の約60%はEGFR T790M変異と考えられているが、AZD9291は非小細胞肺がんのEGFR-TKI活性化変異とEGFR T790M耐性変異を選択的かつ不可逆的に阻害する第3世代経口EGFR-TKIであり、前臨床モデルではこれら変異に有効である一方、野生型EGFRに対する効果は少ない。 AZD9291の安全性と有効性評価のための第I相試験は2013年3月から2014年8月まで行われた。対象は、既治療で、EGFR-TKI活性化変異が確認された、または他のEGFR-TKI治療によっても病勢が進行している、進行非小細胞肺がんである。 253例が登録され、用量漸増コホートに31例、拡大コホートには222例が割り付けられた。内訳は女性が62%、アジア人が62%、腺がんが96%で、80%に細胞傷害性化学療法歴があった。拡大コホート登録症例の62%で EGFR T790Mが検出された。用量漸増コホート31例で、28日間の1日1回20~240mg経口まででは用量制限毒性が発現しなかったため、最大耐用量は確定されなかった。 有害事象として、下痢(47%)、皮疹(40%)、悪心(22%)などが認められ、グレード3以上の有害事象は32%に、重篤な有害事象は22%にみられた。アジア人と非アジア人で重症度や頻度に差はなかった。肺臓炎様イベントは6例(2例はアジア人、4例は非アジア人)にみられ治療中止となったが、データ解析時には回復したか、回復しつつあった。7例が有害事象で死亡したが、薬剤関連の可能性は1例(肺炎)であった。 登録症例中239例で治療効果が判定でき、123例が部分奏効、1例が完全奏効、奏効率51%(95%信頼区間[CI]:45~58%)、病勢安定33%(78例)であった。また、EGFR T790M陽性例のうち評価可能であった127例は奏効率61%(95%CI:52~70%)、陰性例61例では奏効率21%(95%CI:12~34%)だった。奏効例のうち奏効期間が6ヵ月以上の患者の割合は85%で、 EGFR T790M陽性例では88%、陰性例では69%であった。全体の無増悪生存期間中央値は8.2ヵ月、T790M変異陽性例で9.6ヵ月(95%CI:8.3~未到達)、陰性例では2.8ヵ月(95%CI:2.1~4.3)であった。 本邦では第2世代薬のアファチニブが2014年に導入されたが、薬剤耐性について十分な問題解決には到達していない。Janne氏らは、第3世代のAZD9291はEGFR-TKIによる前治療下で病勢が進行してしまった EGFR T790M変異陽性の進行非小細胞肺がん患者に腫瘍縮小効果を示し、EGFR T790Mが本薬有効性の予測マーカーでもあることが示唆された、と結論している。 彼らの成績はencouragingではあるものの、観察期間が短いことや比較試験ではないことなど、さらなる検討を待たなければならない。ただ、非小細胞肺がん治療では治療前だけでなく増悪期においても、組織検体からEGFR遺伝子変異を評価することがますます重要となることは間違いない。なお、肺がんとEGFR-TKIについての手引きが日本肺癌学会より発行されている2)。

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多発性骨髄腫~より正確に診断するために

 磁気共鳴画像(MRI)は、多発性骨髄腫(MM)における限局性骨髄病変(FSD)検出において最も感度の高い検査である。しかし、脊柱全体のMRI(WS-MRI)をMM診断におけるスクリーニングテストとして使用すべきかどうかは、明らかになっていない。オーストラリア・ジェームズクック大学のJoel Wight氏らは、MM診断におけるMS-MRIの有用性を明らかにするために調査を行った。その結果、くすぶり型骨髄腫を持つ患者には有用である可能性が示唆された。Internal Medicine Journal誌オンライン版2015年4月14日号の掲載報告。 2008年1月~2013年1月にThe Townsville Hospitalで収集したデータをレトロスペクティブに解析した。同施設において、WS-MRIは新規MMの診断目的で日常的に使用されている。FSDの臨床的予測因子を定め、ガイドラインによるWS-MRIの適応に該当する患者とそうでない患者の調査結果を比較した。 主な調査結果は以下のとおり。・71症例が本分析の対象となった。・WS-MRIの適応に該当する患者は44例(62%)であった。・FSDの最も強力な予測因子は、背部痛(p<0.001)と脊椎圧迫骨折(p=0.003)であった。[ガイドラインによるWS-MRI検査の適応患者群]・該当患者44例のうち、33例(75%)がFSDを有していた。・このうち17例は早急な処置が必要であり、13例に形質細胞腫があった。[ガイドラインによるWS-MRI検査の適応でない患者群]・該当患者27例のうち4例(15%)にFSDが見つかったが、いずれも早急な治療介入は必要なく、形質細胞腫も見られなかった。・8例のくすぶり型骨髄腫の患者のうち、3例がWS-MRI検査により症候性骨髄腫に再分類された。 ガイドラインでWS-MRI検査の適応とされていない患者では、WS-MRIにより治療が早急に必要な脊髄疾患を発見できなかった。しかし、WS-MRIは、くすぶり型骨髄腫の患者において、単純撮影で病巣がみられない場合には有益であり、治療につながる可能性が示唆された。

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持続性心房細動にアブレーションは有効か/NEJM

 持続性心房細動患者にアブレーションを行う場合に、肺静脈隔離術に加えて、コンプレックス細分化電位図を示すアブレーションやリニアアブレーションを行っても、アウトカムの改善にはつながらないことが報告された。カナダ・モントリオール心臓研究所のAtul Verma氏らが、同患者589例について行った無作為化試験で明らかにした。持続性心房細動へのカテーテルアブレーションは、発作性心房細動に比べ成功率が低く、ガイドラインでは補助的な基質の焼灼を示唆している。NEJM誌2015年5月7日号掲載の報告より。18ヵ月追跡し、30秒超の持続性心房細動再発率を比較 研究グループは、持続性心房細動の患者589例を無作為に1対4対4の割合で3群に分け、(1)肺静脈隔離術のみでアブレーション(67例)、(2)肺静脈隔離術と併せてコンプレックス細分化電位図を示すアブレーション(263例)、(3)肺静脈隔離術と併せて左房天蓋部から僧帽弁峡部へのリニアアブレーション(259例)をそれぞれ行った。 追跡期間は18ヵ月で、主要評価項目は1回のアブレーション後、30秒超の持続性心房細動の再発だった。心房細動の無再発割合、5~6割と3群で有意差なし 18ヵ月後、心房細動の再発が認められなかった人の割合は、肺静脈隔離術のみ群で59%、コンプレックス細分化電位図群が49%、リニアアブレーション群が46%と、有意差は認められなかった(p=0.15)。 処置所要時間については、肺静脈隔離術のみ群が他の2群に比べ有意に短かった(p<0.001)。 また副次的評価項目の、2回アブレーション後の心房細動の無再発の割合、心房性不整脈が認められない人の割合、についても3群で同等だった。

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上部消化管出血への輸血戦略、大規模RCTは可能か/Lancet

 論争の的となっている急性上部消化管出血への輸血戦略について、大規模な非盲検集団無作為化試験の実行可能性を探るTRIGGER試験が英国・オックスフォード大学のVipul Jairath氏らにより行われた。その結果、試験は実行可能であることが示され、著者は、「臨床診療ガイドラインで、すべての上部消化管出血患者に対する制限輸血戦略を推奨するよう記述を変える前に、その効果を評価する大規模な集団無作為化試験は実行可能であり、実施が必須である」と指摘した。これまで、同戦略に関する検討は小規模試験3件と単施設試験1件のみである。単施設試験の所見では、制限輸血(限定的な赤血球[RBC]輸血)群で死亡の低下が報告されており、研究グループは、同所見が多施設の集団無作為化試験によって立証されるか否かを検討することを目的とした。Lancet誌オンライン版2015年5月5日号掲載の報告より。英国6つの病院で試験の実行可能性を探る 検討は英国の6つの大学病院で、18歳以上の新規に急性上部消化管出血を発症した全患者を登録して行った。被験者について、併存疾患の有無は問わなかったが、大量出血例は除外した。  研究グループは病院単位で被験者を2群に割り付け、一方の群には制限輸血(ヘモグロビン濃度が80g/L未満で輸血)を、もう一方の群には非制限輸血(同100g/L未満で輸血)を行った。  実行可能性アウトカムは、被験者補充率、輸血戦略に対するアドヒアランス、ヘモグロビン濃度、RBC曝露、選択バイアス、および第III相試験のデザインおよび経済性評価に導くための情報とした。さらに28日時点の出血と死亡を主要な探索的臨床アウトカムとした。集団無作為化デザインでも制限輸血群でRBC輸血低下 2012年9月3日~2013年3月1日に、936例(制限輸血群の3病院で403例、非制限輸血群の3病院で533例)が登録された。  被験者補充率は制限輸血群よりも非制限輸血群で有意に高かった(62% vs. 55%、p=0.04)。  ベースラインでアンバランスな特性項目があったが、Rockallリスクスコア(両群とも2)およびBlatchfordリスクスコア(両群とも6)は両群で同一であった。  輸血戦略へのアドヒアランスは、制限輸血群96%(SD 10)、非制限輸血群83%(25)であった(差:14%、95%信頼区間[CI]:7~21、p=0.005)。  最後に記録された平均ヘモグロビン濃度は、制限輸血群116(SD 24)g/L、非制限輸血群118(20)g/Lであった(差:-2.0、95%CI:-12.0~7.0、p=0.50)。また、RBC輸血を受けたのは非制限輸血群(247例[46%])よりも制限輸血群(133例[33%])が少なかった(差:-12%、95%CI:-35~11、p=0.23)。RBCの平均輸血単位は、制限輸血群1.2(SD 2.1)、非制限輸血群1.9(2.8)であり(差:-0.7、-1.6~0.3、p=0.12)、いずれも有意差はみられなかった。  臨床的アウトカムについても有意な差はみられなかった。  これらを踏まえて著者は、「集団無作為化デザインは、両群で迅速な被験者補充、高いプロトコルアドヒアランス、貧血の解消に結び付き、制限輸血群で有意ではないがRBC輸血の減少に結び付いた」とまとめている。

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事例53 アモキシシリン(商品名: サワシリン)カプセルの査定【斬らレセプト】

解説事例では、発熱・咽頭痛を主訴に夜間時間帯に受診され、紅斑を認めたため典型症状の溶連菌感染症と診断、検査を行わずにアモキシシリン(サワシリン®)カプセル250mgを10日分処方したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて「過剰」と判断され、7日分に査定となった。「ガイドラインに沿った投与にもかかわらず査定となった理由を教えてほしい」と問い合わせがあった。確かにA群溶連菌感染症診断が確定した場合には、「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011」に沿って、基本的に第1選択のペニシリン系薬が10日間投与される。しかし、確認のためのD012[22]A群β溶連菌迅速試験定性の実施がなかった。溶連菌の型式などの確定が行われない段階での10日分投与は、同剤の添付文書にある「耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間(7日間以内:筆者経験則)の投与にとどめる」から考えて、予防的もしくは炎症疾患への投与とみなされ、3日分が査定となったものであろう。典型的症状であっても、検査が必要とされる疾病に対しては、検査の実施もしくは確定診断に至った医学的理由の注記がレセプトに必要なのである。

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