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医療事故調査報告書は医療安全のためにある 第5回 医療法学シンポジウム開催(後編)

 2月15日、東京都内にて第5回医療法学シンポジウムが「医療事故調査報告書、及び、聞き取り調査書等内部資料と文書提出命令等証拠開示手続との関係」をテーマに開催された。今回はパネルディスカッションを中心に後編をお届けする。証拠の開示手続きは患者側が有利 米山 隆一氏(おおたか総合法律事務所/医師・弁護士)は、「患者側弁護士からの視点」をテーマに実務的な視点からレクチャーを行った。 原告(患者)側からみた医療訴訟の特徴として、原告側は独自の証拠がほぼない状態で立証責任が課せられているが、これを補うためにカルテ開示などが用いられることから、証拠収集では原告側にやや有利に運用されていること、また、「カルテ開示」は、実質上権利化されていること、そのため証拠保全手続きでは、原告側請求を認めるハードルが低くなっていることなどが説明された。 証拠調べに関連して、被告(医療)側が、文書などの提出を著しく拒むことは原告側の主張を強くし、被告側に不利であること、証拠提出などでつまずくとマスコミにネガティブに報道され、さらに対応が必要となるなどデメリットも指摘した。 これらの現状を踏まえ「事故調査報告書」については、医療機関のリスク管理も考慮し、開示部分と非開示部分に分けて作成する必要があり、訴訟の際、速やかに開示したほうが裁判所の判断に寄与するなどの提言がなされた。医療事故調査報告書の目的外使用は医療を萎縮させる 大磯 義一郎氏(浜松医科大学医学部医療法学 教授、帝京大学医療情報システム研究センター 客員教授/医師・弁護士)は、「各手続に対する対応方法」をテーマにレクチャーを行った。 今回始まる医療事故調査制度の目的は、責任追及ではなく「医療安全」である(責任追及は別の場で行うべきこと)。しかし、司法サイド、とくに弁護士は医療訴訟でも利用しようと考えているようだと現在の様子を説明した。こうした資料が目的外で利用され、医療が再び萎縮することがないように、たとえば報告書の冒頭には「本報告書は開示をしないこと」「報告書の目的は医療安全であること」をうたう一文を記載することで、医療訴訟などで証拠として利用されないよう工夫することが重要だと語った。また、こうした報告書が目的外に利用された場合、厚生労働省や医療関係団体が協力して、抗議を行うべきであり、そうしなくては、憲法で保障された医師のさまざまな人権(たとえば黙秘権など)は空文化し、医療の安全もさらに後退することになると問題を指摘した。医療事故調査を医療安全に役立てるために パネルディスカッションでは、前半のレクチャーを踏まえ、大磯氏をコーディネーターに、他の演者がパネリストとして登壇し、活発な意見交換が行われた。 より具体的な内容に踏み込み、「医療事故調査実施の意思決定」については、医療安全を担うセクションが行うべきであること、「医療事故調査・支援センター」への相談では、当事者個人を匿名化すること、事実のみ記載して主観的な内容などは記載しないこと、「記者会見について」は、あらかじめ医療機関で発表内容の範囲と会見方針を決め、会見を行うことが重要であり、マスコミに予断を抱かせないために逐次ホームページなどで情報公開をする必要性や公表内容の文書配布など、細かい点まで話し合いが行われた。 また、「医療紛争対応、医療安全対策」としては、事実の確定が重要であり、不確実な内容は患者・患者家族に伝えないことが求められる。今後は、患者などから寄せられた共通するクレーム事項を分析し、将来に役立てる研究も必要となると提案されたほか、「院内事故調査」では、現場の保全(たとえば関係当事者の聴取録の作成)、関わった医師、医療従事者のケアや人権保護を行うことが重要であり、これらは普段からガイドライン化しておく必要があること。内部文書についても、事故報告書と聞き取り調書やカンファレンスレポートは別物であり、とくに後者は公開を前提にしていない文書であるため、公開の可否を定めた院内規定を医療機関が策定する必要があることなど、実務に直結する話し合いが行われた。参考 厚生労働省 医療事故調査制度について関連コンテンツ MediLegal 医療従事者のためのワンポイント・リーガルレッスン

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うつ病にダンスセラピー、その効果は

 英国・リーズ大学のBonnie Meekums氏らは、うつ病に対するダンス・ムーブメントセラピー(DMT)の効果を明らかにするため、3件の無作為化対照試験(RCT)の解析を行った。その結果、DMTのうつ病に対する確実な効果は認められなかったことを報告した。DMTは広範囲の文化的、知的バックグランドを持つ人が活用しているが、その効果は十分にわかっていなかった。Cochrane Database Systematic Reviews2015年2月19日号の掲載報告。 研究グループは、うつ病に対するDMTの効果を調べるため、未治療、標準治療単独、精神療法、薬物治療、その他の身体的介入と比較した。また、異なるDMTアプローチについてもその効果を比較検討した。Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Review Group's Specialised Register (CCDANCTR-Studies and CCDANCTR-References)およびCINAHLを、WHO International Clinical Trials Registry Platform(WHO ICTRP)および ClinicalTrials.govと合わせて検索した(2014年10月2日時点)。さらに、Allied and Complementary Medicine Database(AMED)、Education Resources Information Center(ERIC)、Dissertation Abstractsを検索し(2013年8月まで)、手動による検索で、関連する研究者、教育プログラム、世界的ダンスセラピーの専門家を調査した。 試験適格基準は、少なくとも1群をDMT群として設定し、年齢にかかわらずうつ病患者に対するアウトカムを検討しているRCTとした。DMTの定義としては、精神療法を目的としていることが明確な一般参加型のダンスで、試験実施国において承認されるレベルの訓練を経た個人により進められているものとした。国において承認される訓練を経た個人とは、たとえば米国では、American Dance Therapy Association (ADTA)のトレーナーあるいは資格認定者、英国では、Association for Dance Movement Psychotherapy(ADMP)のトレーナーあるいは認定を受けた者とした。同様の専門機関がヨーロッパには存在するが、このような専門分野がまだ発展途上であるいくつかの国(たとえば中国)では、その質の低さが米国や英国における数十年前の状況だとして、レビュワーは、関連する専門的資格(たとえば看護や精神力動療法)や、Levy 1992、ADMP UK 2015、Meekums 2002、Karkou 2006といった、公表されているガイドラインに準ずる療法であることが明記されていれば組み入れることとした。試験の方法論的な質を評価し、3人のレビュアーのうち2人がデータ抽出フォームを用いてデータを抽出した。残りの1人は判定者としての役割を担った。 主な結果は以下のとおり。・3件の試験の被験者合計147例(成人107例、未成年40例)が包含基準を満たした。DMT療法群74例、対照群は73例であった。・2件の試験は、成人男性と成人女性のうつ病患者を対象としていた。そのうち1試験は外来患者も対象としていたが、もう一方の試験は都市部の病院の入院患者のみを対象としていた。・3件目の試験は、中学校に通う未成年女子を対象とした調査結果を報告していた。・これらの試験はすべて、2種類のうつ病評価基準、すなわち医師によるハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)およびSymptom Checklist-90-R(SCL-90-R)(自己評価スケール)を用いて、継続的なデータ収集が行われていた。・3件の試験の間に統計学的な不均一性が確認された。・DMTのうつ病に対する確実な効果は認められなかった(SMD:-0.67、95%CI:-1.40~0.05、エビデンスの質は非常に低い)。・予定されたサブグループ解析において、2件の試験の成人107例において好ましい効果が示されたが、臨床的有意差を認めるに至らなかった(SMD:-7.33、95%CI:-9.92~-4.73)。・成人を対象とした1件の試験は脱落率を報告しており、そのオッズ比は1.82(95%CI:0.35~9.45)で有意差なしと判断された(エビデンスの質は低い)。・社会的機能を評価した1件の試験において、非常に有効な結果が認められたが(MD:-6.80、95%CI:-11.44~-2.16、エビデンスの質は非常に低い)、結果の正確性に問題があった。・1件の試験において、QOL(同:0.30、-0.60~1.20、エビデンスの質は低い)あるいは自尊感情(1.70、-2.36~5.76、エビデンスの質は低い)に関して好ましい影響、悪影響のいずれもみられなかった。・3件の小規模試験の147例で得られたエビデンスは質が低かったため、うつ病に対するDMTの効果に関して確固たる結論を導くことはできなかった。・うつ病に対するDMTの効果を評価するには、より大規模で方法論的に質の高い試験が必要である。その際には、経済的分析および受容性についても評価し、あらゆる年齢群を対象とすることも必要である。関連医療ニュース ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 高齢者うつ病患者への運動療法は有効  担当者へのご意見箱はこちら

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Vol. 3 No. 2 AF患者の脳卒中にどう対応するか? NOAC服用患者への対応を中心に

矢坂 正弘 氏国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科はじめに非弁膜症性心房細動において新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)の「脳卒中と全身塞栓症予防」効果はワルファリンと同等かそれ以上である1-3)。大出血や頭蓋内出血が少なく、管理が容易であることを合わせて考慮し、ガイドラインではNOACでもワルファリンでも選択できる状況下では、まずNOACを考慮するように勧めている4)。しかし、NOACはワルファリンより脳梗塞や頭蓋内出血の発症頻度が低いとはいえ、その発症をゼロに封じ込める薬剤ではないため、治療中の脳梗塞や頭蓋内出血への対応を考慮しておく必要がある。本稿では、NOACの療法中の脳梗塞や頭蓋内出血時の現実的な対応を検討する。NOAC療法中の急性脳梗塞NOAC療法中の症例が脳梗塞を発症した場合、一般的な脳梗塞の治療に加えてNOAC療法中であるがゆえにさらに2つの点、rt-PA血栓溶解療法施行の可否と急性期抗凝固療法の実際を考慮しなくてはならない。(1) rt-PA血栓溶解療法の可否ワルファリン療法中は適正使用指針にしたがってPTINRが1.7以下であればrt-PA血栓溶解療法を考慮できる5)。しかし、ダビガトラン、リバーロキサバンおよびアピキサバン療法中の効果と安全性は確立しておらず、明確な指針はない。表1にこれまで発表されたダビガトラン療法中のrt-PA血栓溶解療法例を示す6-8)。ダビガトラン療法中の9例のうち中大脳動脈広範囲虚血で190分後にrt-PAが投与された1例を除き、8例で良い結果が得られている。それらに共通するのは、ダビガトラン内服から7時間以後でrt-PAが投与され、投与前APTTが40秒未満であった。ダビガトランの食後内服時のTmaxが4時間であることを考慮すると、rt-PA投与が内服後4時間以降であり、APTTが40秒以下(もしくは前値の1.5倍以下)であることがひとつの目安かもしれない。内服時間が不明な症例では来院時のAPTTと時間を空けてのAPTTを比較し、上昇傾向にあるか、低下傾向にあるかを見極めてTmaxを過ぎているかどうかを判断することも一法であろう。NOAC療法症例でrt-PA血栓溶解療法を考慮する場合は、少なくとも各薬剤のTmax 30分から4時間程度、ダビガトランではAPTTが40秒以下、抗Xa薬ではプロトロンビン時間が1.7以下であることを確認し、論文を含む最新情報に十分に精通した上で施設ごとに判断をせざるを得ないであろう5)。アピキサバンはAPTTやPT-INRと十分に相関しないことに注意する。抗Xa薬では、血中濃度と相関する抗Xa活性を図る方法も今後検討されるかもしれない。表1 ダビガトラン療法中のtPA血栓溶解療法に関する症例報告画像を拡大する(2) 急性期抗凝固療法心原性脳塞栓症急性期は脳塞栓症の再発率が高いため、この時期に抗凝固療法を行えば、再発率を低下させることが期待されるが、一方で栓子溶解による閉塞血管の再開通現象と関連した出血性梗塞もこの時期に高頻度にみられる。したがって、抗凝固療法がかえって病態を悪化させるのではないかという懸念もある。この問題はまだ解決されていないため、現時点では、脳塞栓症急性期の再発助長因子(発症後早期、脱水、利尿薬視床、人工弁、心内血栓、アンチトロンビン活性低下、D-dimer値上昇など)や、抗凝固療法による出血性合併症に関連する因子(高齢者、高血圧、大梗塞、過度の抗凝固療法など)を考慮して、個々の症例ごとに脳塞栓症急性期における抗凝固療法の適応を判断せざるを得ない。われわれの施設では症例ごとに再発の起こりやすさと出血性合併症の可能性を検討して、抗凝固療法の適応を決定している。具体的には感染性心内膜炎、著しい高血圧および出血性素因がないことを確認し、画像上の梗塞巣の大きさや部位で抗凝固療法開始時期を調整している(表2)9)。表2 脳塞栓症急性期の抗凝固療法マニュアル(九州医療センター2013年4月1日版)画像を拡大する(別タブが開きます)出血性梗塞の発現は神経所見とCTでモニタリングする。軽度の出血性梗塞では抗凝固療法を継続し、血腫型や広範囲な出血性梗塞では抗凝固薬投与量を減じたり、数日中止し、増悪がなければ再開する10)。新規経口抗凝固薬、ヘパリン、およびワルファリン(ワーファリン®)の投与量および切り替え方法の詳細も表2に示す。ワルファリンで開始する場合は即効性のヘパリンを必ず併用し、PT-INRが治療域に入ったらヘパリンを中止する。再発と出血のリスクがともに高い場合、心内血栓成長因子である脱水を避けること,低容量ヘパリンや出血性副作用がなく抗凝血作用のあるantithrombin III製剤の使用が考えられる11)。NOAC療法中に脳梗塞を発症した症例で、NOAC投与を考慮する場合、リバーロキサバンとアピキサバンは第III相試験が低用量選択基準を採用した一用量で実施されているので、脳梗塞を発症したからといって用量を増量したり、調節することは適切ではない2,3)。他剤に変更するか、脳梗塞が軽症であれば、あるいは不十分なアドヒアランスで発症したのであれば、継続を考慮することが現実的な対応であろう。一方ダビガトランは第III相試験が2用量で行われ、各々の用量がエビデンスを有しているので、低用量で脳梗塞を発症した場合、通常用量の可否を考慮することは可能である1)。NOAC療法中の頭蓋内出血ここではNOAC療法中の頭蓋内出血の発症頻度や特徴をグローバルやアジアでの解析結果を参照にワルファリン療法中のそれらと対比しながら概説する。(1) グローバルでの比較結果非弁膜症性心房細動を対象に脳梗塞の予防効果をワルファリンと対比したNOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の4つの研究(RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLE、ENGAGE-AF)においてワルファリン群と比較してNOAC群の頭蓋内出血は大幅に減少した(本誌p.24図1を参照)1-3,12)。(2) アジアでの比較結果各第III相試験サブ解析から読み取れるアジアや東アジアの人々の特徴は、小柄であり、それに伴いクレアチニンクリアランス値が低く、脳卒中の既往や脳卒中発症率が高いことである13-16)。またワルファリンコントロールにおけるtime in therapeutic range(TTR)が低く、PT-INRが低めで管理されている症例が多いにもかかわらず、ワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率は極めて高い特徴がある(本誌p.24図2を参照)13-16)。しかし、NOACの頭蓋内出血発症率はワルファリン群より大幅に低く抑えられており、NOACはアジアや東アジアの人々には一層使いやすい抗凝固薬といえよう。(3) NOAC療法中に少ない理由NOACで頭蓋内出血が少ない一番の理由は、脳に組織因子が多いことと関連する16-18)。組織が損傷されると組織因子が血中に含まれる第VII因子と結びつき凝固カスケードが発動する。NOAC療法中の場合は第VII因子が血液中に十分にあるので、この反応は起こりやすい。しかし、ワルファリン療法中は第VII因子濃度が大幅に下がるのでこの反応は起こりにくくなり止血し難い。次にワルファリンと比較して凝固カスケードにおける凝固阻止ポイントが少ないことが挙げられる。ワルファリンは凝固第II、VII、IX、X因子の4つの凝固因子へ作用するが、抗トロンビン薬や抗Xa薬はひとつの凝固因子活性にのみ阻害作用を発揮するため、ワルファリンよりも出血が少ない可能性がある。さらに安全域の差異を考慮できる。ある薬剤が抗凝固作用を示す薬物血中濃度(A)と出血を示す薬剤の血中濃度(B)の比B/Aが大きければ安全域は広く、小さければ安全域は狭い。ワルファリンはこの比が小さく、NOACは大きいことが示されている19)。最後に薬物血中濃度の推移も影響するだろう。ワルファリンはその効果に大きな日内変動はみられないが、ダビガトランは半減期が12時間で血中濃度にピークとトラフがある。ピークではNOAC自身の薬理作用が、トラフでは生理的凝固阻止因子が主となり、2系統で抗凝固作用を発揮し、見事に病的血栓形成を抑制しているものと理解される(Hybrid Anticoagulation)(図)16,17)。トラフ時には生理的止血への抑制作用は強くないため、それが出血を減らすことと関連するものと推測される。図 ハイブリッド抗凝固療法画像を拡大する(4) 特徴NOAC療法中は頭蓋内出血の頻度が低いのみならず、一度出血した際に血腫が大きくなり難い傾向も有するようだ。われわれはダビガトラン療法中の頭蓋内出血8例9回を経験しケースシリーズ解析を行い報告した20)。対象者は高齢で9回中7回は外傷と関連する慢性硬膜下出血や外傷性くも膜下出血などで、脳内出血は2例のみであった。緊急開頭が必要な大出血はなく、入院後血腫が増大した例もなく、多くの転帰は良好であった。もちろん、大血腫の否定はできず、血圧、血糖、多量の飲酒、喫煙といった脳内出血関連因子の徹底的な管理は重要であるが、ダビガトラン療法中の頭蓋内出血が大きくなりにくい機序としては、前述の頻度が低い機序が同様に関連しているものと推定される。(5) 出血への対応1.必ず行うべき4項目基本的な対応として、まず(1)休薬を行うこと、そして外科的な手技を含めて(2)止血操作を行うことである。(3)点滴によるバイタルの安定は基本であるが、NOACでは点滴しバイタルを安定させることで、半日程度で相当量の薬物を代謝できるので極めて重要である。(4)脳内出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血時には十分な降圧を行う。2.場合によって考慮すること急速是正が必要な場合、ワルファリンではビタミンK投与や新鮮凍結血漿投与が行われてきたが、第IX因子複合体500~1,000IU投与(保険適応外)が最も早くPT-INRを是正できる。NOACの場合は、食後のTmaxが最長で4時間程度なので、4時間以内の場合は胃洗浄や活性炭を投与し吸収を抑制する。ダビガトランは透析で除去されるが、リバーロキサバンやアピキサバンは蛋白結合率が高いため困難と予測される。NOAC療法中に第IX因子複合体を投与することで抗凝固作用が是正させる可能性が示されている21)。今後の症例の蓄積とデータ解析に基づく緊急是正方法の開発が急務である。抗体製剤や低分子化合物も緊急リバース方法の1つとして開発が進められている。おわりにNOACは非常に有用な抗凝固薬であるが、実臨床における諸問題も少なくない。登録研究や観察研究を積極的に行い、安全なNOAC療法を確立する必要があろう。文献1)Connolly SJ et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151 and Erratum in. N Engl J Med 2010; 363: 1877.2)Patel MR et al. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011;365: 883-891.3)Granger CB et al. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.4)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf5)日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針改訂部会: rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 http://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf6)矢坂正弘ほか. 新規経口抗凝固薬に関する諸問題.脳卒中2013; 35: 121-127.7)Tabata E et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (rt-PA) therapy in an acute stroke patient taking dabigatran etexilate: A case report and literature review, in press.8)稲石 淳ほか. ダビガトラン内服中に出血合併症なく血栓溶解療法を施行しえた心原性脳塞栓症の1例―症例報告と文献的考察. 臨床神経, 2014; 54:238-240.9)中西泰之ほか. 心房細動と脳梗塞. 臨牀と研究 2013;90: 1215-1220.10)Pessin MS et al. Safety of anticoagulation after hemorrhagic infarction. Neurology 1993; 43:1298-1303.11)Yasaka M et al. Antithrombin III and Low Dose Heparin in Acute Cardioembolic Stroke. Cerebrovasc Dis 1995; 5: 35-42.12)Giugliano RP et al. Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2013;369: 2093-2104.13)Hori M et al. Dabigatran versus warfarin: effects on ischemic and hemorrhagic strokes and bleeding in Asians and non-Asians with atrial fibrillation. Stroke 2013; 44: 1891-1896.14)Goto S et al. Efficacy and safety of apixaban compared with warfarin for stroke prevention in atrial fibrillation in East Asia with atrial fibrillation. Eur Heart J 2013; 34 (abstract supplement):1039.15)Wong KS et al. Rivaroxaban for stroke prevention in East Asian patients from the ROCKET AF trial. Stroke 2014, in press.16)Yasaka M et al. Stroke Prevention in Asian Patients with Atrial Fibrillation. Stroke 2014, in press.17)Yasaka M et al. J-ROCKET AF trial increased expectation of lower-dose rivaroxaban made for Japan. Circ J 2012; 76: 2086-2087.18)Drake TA et al. Selective cellular expression of tissue factor in human tissues. Implications for disorders of hemostasis and thrombosis. Am J Pathol 1989; 134: 1087-1097.19)大村剛史ほか. 抗凝固薬ダビガトランエテキシラートのA-Vシャントモデルにおける抗血栓および出血に対する作用ならびに抗血栓作用に対するビタミンKの影響. Pharma Medica 2011; 29: 137-142.20)Komori M et al. Intracranial hemorrhage during dabigatran treatment: Case series of eight patients. Circ J, in press.21)Kaatz S et al. Guidance on the emergent reversal of oral thrombin and factor Xa inhibitors. Am J Hematol 2012; 87 Suppl 1: S141-S145.

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今すぐやめられない喫煙者にもバレニクリン有効/JAMA

 1ヵ月以内にすぐにとはいかないが、3ヵ月以内に減煙・禁煙をしたいという意思のある喫煙者に対し、バレニクリン(商品名:チャンピックス)を24週間投与することで、長期の禁煙効果があることが示された。禁煙率は治療終了時、および1年後も介入群で有意に高率であった。米国・メイヨークリニックのJon O. Ebbert氏らが、1,510例の喫煙者を対象に行った多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。JAMA誌2015年2月17日号で発表した。8週までに75%以上の減煙、12週までに禁煙を目標 研究グループは2011年7月~2013年7月にかけて、10ヵ国、61ヵ所の医療センターを通じ、1ヵ月以内の禁煙の意思はないが、3ヵ月以内の減煙・禁煙の意思のある1,510例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはバレニクリン(1mg、1日2回投与)を24週間、もう一方の群にはプラセボを投与した。目標は、4週までに50%以上、8週までに75%以上の減煙、12週までに禁煙とした。21~52週の禁煙率、バレニクリン群で17.1%高率 結果、15~24週の禁煙率はプラセボ群が6.9%に対しバレニクリン群が32.1%(リスク差[RD]:25.2%[95%信頼区間:21.4~29.0]、相対リスク[RR]:4.6 [3.5~6.1])と、有意に高率だった。 また、21~24週にかけても、プラセボ群とバレニクリン群の禁煙率は、それぞれ12.5%と37.8%(RD:25.2%[21.1~29.4]、RR:3.0 [2.4~3.7])、21~52週ではそれぞれ9.9%と27.0%(同17.1%[13.3~20.9]、2.7 [2.1~3.5])だった。 なお、重篤な有害事象の発生率は、プラセボ群が2.2%、バレニクリン群3.7%であり、有意差はみられなかった(p=0.07)。 今回の結果を踏まえて著者は、「バレニクリンは、臨床ガイドライン非対象のすぐにやめる意思がない禁煙希望者にとって治療オプションとなる」とまとめている。

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アナフィラキシーの治療の実際

アナフィラキシーの診断 詳細は別項に譲る。皮膚症状がない、あるいは軽い場合が最大20%ある。 治療(表1)発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難である。数分で死に至ることもあるので、過小評価は禁物。 ※筆者の私見適応からは、呼吸症状に吸入を先に行う場合があると読めるが、筆者は呼吸症状が軽症でもアナフィラキシーであればアドレナリン筋注が第1選択と考える。また、適応に「心停止」が含まれているが、心停止にはアドレナリン筋注は効果がないとの報告9)から、心停止の場合は静注と考える。表1を拡大する【姿勢】ベッド上安静とし、嘔吐を催さない範囲で頭位を下げ、下肢を挙上して血液還流を促進し、患者の保温に努める。アナフィラキシーショックは、distributive shockなので、下肢の挙上は効果あるはず1)。しかし、下肢拳上を有効とするエビデンスは今のところない。有害ではないので、薬剤投与の前に行ってもよい。【アドレナリン筋肉注射】気管支拡張、粘膜浮腫改善、昇圧作用などの効果があるが、cAMPを増やして肥満細胞から化学物質が出てくるのを抑える作用(脱顆粒抑制作用)が最も大事である。α1、β1、β2作用をもつアドレナリンが速効性かつ理論的第1選択薬である2)。緊急度・重症度に応じて筋注、静注を行う。血流の大きい臀部か大腿外側が薦められる3)。最高血中濃度は、皮下注で34±14分、筋注で8±2分と報告されており、皮下注では遅い4)。16~35%で2回目の投与が必要となる。1mLツベルクリンシリンジを使うと針が短く皮下注になる。1)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~30分間隔 [厚生労働省平成20年(2008)5)]2)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~15分間隔 [UpToDate6)]3)アドレナリン1回0.01mg/kg筋注 [日本アレルギー学会20141)]4)アドレナリン1回0.2~0.5mgを皮下注あるいは筋注 [日本化学療法学会20047)]5)アドレナリン(1mg)を生理食塩水で10倍希釈(0.1mg/mL)、1回0.25mg、5~15分間隔で静注 [日本化学療法学会20047)]6)アドレナリン持続静脈投与5~15µg/分 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)]わが国では、まだガイドラインによってはアドレナリン投与が第1選択薬になっていないものもあり(図1、図2)、今後の改訂が望まれる。 ※必ずしもアドレナリンが第1選択になっていない。 図1を拡大する ※皮膚症状+腹部症状のみでは、アドレナリンが第1選択になっていない。図2を拡大する【酸素】気道開通を評価する。酸素投与を行い、必要な場合は気管挿管を施行し人工呼吸を行う。酸素はリザーバー付マスクで10L/分で開始する。アナフィラキシーショックでは原因物質の使用中止を忘れない。【輸液】hypovolemic shockに対して、生理食塩水か、リンゲル液を開始する。1~2Lの急速輸液が必要である。維持輸液(ソリタ-T3®)は血管に残らないので適さない。【抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー】経静脈、筋注で投与するが即効性は望めない。H1受容体に対しヒスタミンと競合的に拮抗する。皮膚の蕁麻疹には効果が大きいが、気管支喘息や消化器症状には効果は少ない。第1世代H1ブロッカーのジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®)5mgを静注し、必要に応じて6時間おきに繰り返す。1)マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン®)2.5~5mg静注 [日本化学療法学会20047)]2)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg緩徐静注 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)] 保険適用外3)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg静注 [UpToDate6)]4)経口では第2世代のセチリジン(ジルテック®)10mgが第1世代より鎮静作用が小さく推奨されている [UpToDate6)] 経口の場合、効果発現まで40~60分【H2ブロッカー】心収縮力増強や抗不整脈作用がある。蕁麻疹に対するH1ブロッカーに相乗効果が期待できるがエビデンスはなし。本邦のガイドラインには記載がない。保険適用外に注意。1)シメチジン(タガメット®)300mg経口、静注、筋注 [AHA心肺蘇生ガイドライン9)] シメチジンの急速静注は低血圧を引き起こす [UpToDate6)]2)ラニチジン(ザンタック®)50mgを5%と糖液20mLに溶解して5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【βアドレナリン作動薬吸入】気管支攣縮が主症状なら、喘息に用いる吸入薬を使ってもよい。改善が乏しい時は繰り返しての吸入ではなくアドレナリン筋注を優先する。気管支拡張薬は声門浮腫や血圧低下には効果なし。1)サルブタモール吸入0.3mL [日本アレルギー学会20141)、UpToDate6)]【ステロイド】速効性はないとされてきたが、ステロイドのnon-genomic effectには即時作用がある可能性がある。重症例ではアドレナリン投与後に、速やかに投与することが勧められる。ステロイドにはケミカルメディエーター合成・遊離抑制などの作用により症状遷延化と遅発性反応を抑制することができると考えられてきた。残念ながら最近の研究では、遅発性反応抑制効果は認められていない10)。しかしながら、遅発性反応抑制効果が完全に否定されているわけではない。投与量の漸減は不要で1~2日で止めていい。ただし、ステロイド自体が、アナフィラキシーの誘因になることもある(表2)。とくに急速静注はアスピリン喘息の激烈な発作を生じやすい。アスピリン喘息のリスクファクターは、成人発症の気管支喘息、女性(男性:女性=2:3~4)、副鼻腔炎や鼻茸の合併、入院や受診を繰り返す重症喘息、臭覚低下。1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1~2mg/kg/日 [UpToDate6)]2)ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ®)100~200mg、1日4回、点滴静注 [日本化学療法学会20047)]3)ベタメタゾン(リンデロン®)2~4mg、1日1~4回、点滴静注11) 表2を拡大する【グルカゴン】βブロッカーの過量投与や、低血糖緊急時に使われてきた。グルカゴンは交感神経を介さずにcAMPを増やしてアナフィラキシーに対抗する力を持つ。βブロッカーを内服している患者では、アドレナリンの効果が期待できないことがある。まずアドレナリンを使用して、無効の時にグルカゴン1~2mgを併用で静注する12)。β受容体を介さない作用を期待する。グルカゴン単独投与では、低血圧が進行することがあるので注意。アドレナリンと輸液投与を併用する。急速静注で嘔吐するので体位を側臥位にして気道を保つ。保険適用なし。1)グルカゴン1~5mg、5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【強力ミノファーゲンC】蕁麻疹単独には保険適用があるがアナフィラキシーには効果なし。観察 いったん症状が改善した後で、1~8時間後に、再燃する遅発性反応患者が4.5~23%存在する。24時間経過するまで観察することが望ましい。治療は急いでも退室は急ぐべきではない13)。 気管挿管 上記の治療の間に、嗄声、舌浮腫、後咽頭腫脹が出現してくる患者では、よく準備して待機的に挿管する。呼吸機能が悪化した場合は、覚醒下あるいは軽い鎮静下で挿管する。気道異物窒息とは違い準備する時間は取れる。 筋弛緩剤の使用は危険である。気管挿管が失敗したときに患者は無呼吸となり、喉頭浮腫と顔面浮腫のためバッグバルブマスク換気さえ不能になる。 気管挿管のタイミングが遅れると、患者は低酸素血症の結果、興奮状態となり酸素マスク投与に非協力的となる。 無声、強度の喉頭浮腫、著明な口唇浮腫、顔面と頸部の腫脹が生じると気管挿管の難易度は高い。喉頭展開し、喉頭を突っつくと出血と浮腫が増強する。輪状甲状靭帯穿刺と輪状甲状靭帯切開を含む、高度な気道確保戦略が必要となる9)。さらに、頸部腫脹で輪状軟骨の解剖学的位置がわからなくなり、喉頭も皮膚から深くなり、充血で出血しやすくなるので輪状甲状靭帯切開も簡単ではない。 絶望的な状況では、筆者は次の気道テクニックのいずれかで切り抜ける。米国麻酔学会の困難気道管理ガイドライン2013でも、ほぼ同様に書かれている(図3)14)。 1)ラリンゲアルマスク2)まず14G針による輪状甲状靭帯穿刺、それから輪状甲状靭帯切開3)ビデオ喉頭鏡による気管挿管 図3を拡大する心肺蘇生アナフィラキシーの心停止に対する合理的な処置についてのデータはない。推奨策は非致死的な症例の経験に基づいたものである。気管挿管、輪状甲状靭帯切開あるいは上記気道テクニックで気道閉塞を改善する。アナフィラキシーによる心停止の一番の原因は窒息だからだ。急速輸液を開始する。一般的には2~4Lのリンゲル液を投与すべきである。大量アドレナリン静注をためらうことなく、すべての心停止に用いる。たとえば1~3mg投与の3分後に3~5mg、その後4~10mg/分。ただしエビデンスはない。バソプレシン投与で蘇生成功例がある。心肺バイパス術で救命成功例が報告されている9)。妊婦対応妊婦へのデキサメタゾン(デカドロン®)投与は胎盤移行性が高いので控える。口蓋裂の報告がある15)。結語アナフィラキシーを早期に認識する。治療はアドレナリンを筋注することが第一歩。急速輸液と酸素投与を開始する。嗄声があれば、呼吸不全になる前に準備して気管挿管を考える。 1) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014. 2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000; 30: 1144-1150. 3) Hughes G ,et al. BMJ.1999; 319: 1-2. 4) Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006; 117: 391-397. 5) 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー.平成20年3月.厚生労働省(参照2015.2.9) 6) F Estelle R Simons, MD, FRCPC, et al. Anaphylaxis: Rapid recognition and treatment. In:Uptodate. Bruce S Bochner, MD(Ed). UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 9, 2015) 7) 日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会.抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版).日本化学療法学会(参照2015.2.9) 8) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.第9章治療.In:食物アレルギー診療ガイドライン2012.日本小児アレルギー学会(参照2015.2.9) 9) アメリカ心臓協会.第12章 第2節 アナフィラキシーに関連した心停止.In:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010(American Heart Association Guidelines for CPR & ECC). AHA; 2010. S849-S851. 10) Choo KJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 4: CD007596. 11) 陶山恭博ほか. レジデントノート. 2011; 13: 1536-1542. 12) Thomas M, et al. Emerg Med J. 2005; 22: 272-273. 13) Rohacek M, et al. Allergy 2014; 69: 791-797. 14) 駒沢伸康ほか.日臨麻会誌.2013; 33: 846-871. 15) Park-Wyllie L, et al. Teratology. 2000; 62: 385-392.

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抗精神病薬の切り替えエビデンス、どう評価すべきか

 統合失調症や双極性障害に対する抗精神病薬治療では、効果不十分や持続的な副作用が問題となることが少なくない。そのため、忍容性を改善し安全な長期治療を行う目的で、副作用プロファイルが異なる他の薬剤への切り替えが推奨されている。非定型抗精神病薬のアリピプラゾールは、統合失調症および双極性障害に対する有効性が証明されており、他の非定型抗精神病薬とは異なる薬理学的ならびに副作用プロファイルを持つ。そこで、イタリア・シエナ大学のAndrea Fagiolini氏らイタリア精神科医委員会は、アリピプラゾールへの切り替えに関する現在の戦略について討議し、専門家の意見をまとめた。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌オンライン版2015年2月12日号の掲載報告。 委員会では、統合失調症または双極性障害の治療におけるアリピプラゾールへの切り替えについて詳細なガイダンスを提示する目的で、PubMedを用い「aripiprazole」および「switching」に関する文献を検索、それらの参考文献などについても検討し、討議した。 概要は以下のとおり。・抗精神病薬の切り替えに関する指針や、臨床的に望ましい治療目標を達成するための最良な戦略に関する研究はほとんどない。・抗精神病薬の切り替えに関する研究は、なぜ、いつ、どのように切り替えを実施すべきかを明らかにしなければならない。・研究結果は、抗精神病薬の切り替えの根拠を標準化し、切り替えの最適な時期ならびに最適な方法を評価しなければならない。・抗精神病薬の切り替えは、臨床的および薬理学的要因の両方が考慮されるべきであり、すべての要因に対応した特別なガイドラインが必要である。関連医療ニュース アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 統合失調症の治療目標、急性期と維持期で変更を:京都大学  担当者へのご意見箱はこちら

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抗うつ薬、どれを使う? 選択によって転帰は変わる?(解説:岡村 毅 氏)-317

 自殺関連行動と抗うつ薬の関連を、プライマリケアのデータベースを用いて研究した、プライマリケアの教室からの論文である。 うつ病と診断され投薬を受けた約24万人の患者さんを10年以上追跡し、既遂、あるいは企図(自傷)をアウトカムにして解析をしている。いわゆるSSRI(現代における第1選択薬)に比べて、三環系抗うつ薬では差はなかったが、MirtazapineやVenlafaxine(その他の抗うつ薬とカテゴライズされている)ではリスクが高いことが示された。 3点指摘したい。 まずは、治療薬選択の際のバイアスに関して。ケアネットの読者の皆さまならそういった心配は必要ないのかもしれないが、このような論文をもって「MirtazapineやVenlafaxineは危険というエビデンスが出た」と早とちりする向きがあるやもしれぬので一応述べておくと、MirtazapineやVenlafaxineは英国のガイドラインでは重症のケースに処方されるので、転帰不良であることは当然といえよう。つまり、単純化していえば、軽症にSSRI、重症にMirtazapineやVenlafaxineというわけである。本研究でも当然初診時の重症度などが調整された解析が行われているが十分とはいえず、したがって予想どおりの結果である。なお、これは本論文の考察でも当然のように記載されており、いちいちここで書くようなことではないかもしれないが、誤解するような早とちりが蔓延しているので……。 次に、Combined Antidepressantsが実はハイリスクである。既遂ではn=2なので統計解析に堪え得ないが、企図ではSSRIの2倍となっている。併用しているということは治療が困難に直面している可能性が高く、したがって重症であるので、転帰も不良なのだと考えることができる。一方で、とても意地の悪い見方をすれば、ガイドライン上は奨励されていない併用を行っているプライマリケア医は能力が低いので転帰も不良、という見方もできなくもない。いうまでもなく、評者はプライマリケア医が使命感を持ちきちんと勉強して臨床をしていると信じているので、前者の見方である。 最後に、非精神科医の読者の皆さまに。抗うつ薬の選択も重要だが、実際のうつ病治療の臨床では、(1)きちんと患者さんに信頼されて情報を聞き出すこと(あるいは他人を信頼できない人からも一定の情報を取り出すテクニック)、(2)大体がこんがらがっている患者さんの課題を解きほぐし単純な問題の和に整理すること、(3)何が治療対象で何がそうでないのかを仕分けて共有すること、(4)まれに現れる訳のわからないステークホルダー(たとえば患者さんが調子の悪いほうが心地よい親族など)の調整、といったことのほうが精神科では重要であったりする。手術に際して術者の力量が最も重要であり、どんな器具を使うのかは本質的ではないのと同じように……、と書くと、書き過ぎであろうか。本研究の公衆衛生的価値をおとしめるつもりは毛頭ないし、これらは尺度化しにくいものであるから声高に主張するつもりもないが、薬剤選択に「正解」があるという誤解を避けたいのであえて書きました。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第17回

第17回:慢性腰痛に対してのオピオイド~短期間は有効だが、長期間投与の効果と安全性ははっきりしない監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 慢性腰痛は、外来で多い訴えの1つです。慢性腰痛を持つ患者さんが疼痛コントロールに苦しんで受診されることが多く、総合診療外来医師、整形外科医師が治療に難渋していることも多いです。 2011年4月にトラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン合剤)が承認されてから、NSAIDsで対応困難なケースなどに対して、わが国でもオピオイドの使用が以前よりも身近なものになってきています。また、他のオピオイド内服もしくは、パッチ剤(フェンタニル剤)を貼付されているケースも散見します。 オピオイドは疼痛コントロールに有効といわれますが、便秘や嘔気といった副作用などに悩み、長期に投与してよいものかと考えることがたびたびあります。長期使用の安全性は明らかになっておらず1), 2)、個人的には慎重に使用したいと考えます。日本では、慢性腰痛に対して、日本ペインクリニック学会が作成した神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン3)もあり、参考になると思います。 以下、American Family Physician 2014年8月15日号1)、The Cochrane database of systematic reviewsオンライン版 2013年8月27日版2)よりオピオイドは、慢性腰痛の治療に有効か?randomized controlled trialsのMeta-analysis 慢性腰痛には、オピオイドが短期間の疼痛の緩和と機能改善に多少有効であると一般的に考えられている。しかしながら、長期間のオピオイド使用でのデータは、ほとんど存在していない。長期間のオピオイド使用については、議論の分かれるところである。医師は、患者に疼痛の緩和を求められるが、長期間のオピオイドを使う際には投薬調節と安全性への配慮も求められる。トラマドールとプラセボを比較した5つの研究には、方法論的なバイアスがあったが、概して患者はプラセボより多くの痛みが減り、機能的なアウトカムもより改善することを示した。痛みの改善はSMD(標準化平均差)、-0.55( 95% CI -0.66~-0.44、low quality evidence)、機能の改善は SMD、-0.18( 95% CI -0.29~-0.07、moderate quality evidence)であった。2つの研究では、経皮ブプレノルフィンとプラセボを比較した。ブプレノルフィンの2つの研究では、エビデンスレベルは低く、プラセボより痛みが減るが、機能は改善しないことが判明した。痛みの改善はSMD、-2.47( 95% CI -2.69~-2.25、very low quality evidence)、機能の改善はSMD、-0.14( 95% CI -0.53~0.25、very low quality evidence) であった。5つの強オピオイドの研究では、痛みが減り、機能改善することが判明した。痛みの改善はSMD、-0.43( 95% CI -0.52~-0.33、moderate quality evidence)機能の改善はSMD、-0.26(95% CI -0.37~-0.15、moderate quality evidence)であった。いずれのトライアルも研究の質は低~中等度で、中断率が高く、観察期間が短く、機能改善の定義が限定されている。オピオイドの長期使用に関するトライアルは、さまざまなリスクを総合的に評価するなど慎重に行うべきである。慢性腰痛に対するオピオイドの長期間の効果と安全性を示しうるRCTはない。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) HENRY C. BARRY. Am Fam Physician. 2014; 90: 259B-C. 2) Chaparro LE, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 8: CD004959. 3) 日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン作成ワーキンググループ 編. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン. 真興交易医書出版部. 2011. 

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2型糖尿病に降圧治療は有効か/JAMA

 2型糖尿病患者に対する降圧治療は、全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿などのリスクを改善することが、英国・オックスフォード大学のConnor A. Emdin氏らの検討で示された。糖尿病患者は平均血圧が高く、血圧の上昇は糖尿病患者における大血管障害および細小血管障害のリスク因子として確立されている。一方、糖尿病患者への降圧治療の是非や目標血圧値については、現在もさまざまな議論が続いている。JAMA誌2015年2月10日号掲載の報告。降圧治療と血管疾患の関連をメタ解析で評価 研究グループは、2型糖尿病患者における降圧治療と血管疾患の関連を評価するために系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。対象は、1966~2014年に発表された糖尿病患者を含む降圧治療の大規模無作為化対照比較試験に関する論文とした。 本研究では、介入試験のメタ解析の指針であるPRISMAガイドラインで推奨されているアプローチが用いられた。2人のレビューワーが別個に患者背景や血管アウトカムのデータを抽出した。ベースラインおよび達成された血圧値別のアウトカムを評価し、固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。 主要評価項目は、全死因死亡、心血管イベント、冠動脈心疾患イベント、脳卒中、心不全、網膜症、アルブミン尿の新規発症または増悪、腎不全の8項目とした。収縮期血圧の10mmHg低下における相対リスク(RR)、1,000人年当たりのイベントの絶対リスク減少率(ARR)および10年間の治療必要数(NNT)を算出した。6項目でリスク改善、薬剤クラス別の差はほとんどない バイアスのリスクが低いと判定された40試験に参加した10万354例が解析の対象となった。収縮期血圧の10mmHgの低下により、主要評価項目のうち以下の6項目のリスクが有意に改善した。 全死因死亡(RR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.78~0.96/1,000人年当たりのイベントのARR:3.16、95%CI:0.90~5.22/10年NNT:32、95%CI:19~111)、心血管イベント(0.89、0.83~0.95/3.90、1.57~6.06/26、17~64)、冠動脈心疾患イベント(0.88、0.80~0.98/1.81、0.35~3.11/55、32~284)。 脳卒中(0.73、0.64~0.83/4.06、2.53~5.40/25、19~40)、網膜症(0.87、0.76~0.99/2.23、0.15~4.04/45、25~654)、アルブミン尿(0.83、0.79~0.87/9.33、7.13~11.37/11、9~14)。 ベースラインの平均収縮期血圧が≧140mmHgと<140mmHgの試験に分けて解析したところ、降圧治療により≧140mmHgの試験でRRが有意に減少し、<140mmHgの試験では有意な変化のない項目として、全死因死亡、心血管疾患イベント、冠動脈心疾患イベント、心不全が挙げられた(交互作用のp値がいずれもp<0.1)。 降圧薬のクラス別の解析では、全体としてアウトカムとの関連はほとんどなかった。例外として、利尿薬により心不全のRRが有意に減少した(RR:0.83、95%CI:0.72~0.95)が、これにはALLHAT試験の影響が大きかった。また、ARB薬も心不全のRRを有意に低減させた(0.61、0.48~0.78)が、データは2つの試験に限られ、信頼区間の間隔が広かった。これに対し、カルシウム拮抗薬(CCB)は他のクラスの薬剤に比べ心不全のRRが有意に高かった(1.32、1.18~1.47)。 一方、CCBは脳卒中のリスクを有意に低下させた(RR:0.86、95%CI:0.77~0.97)が、β遮断薬はこれを増大させた(1.25、1.05~1.50)。また、ARBは他の薬剤に比べ全死因死亡のリスクが相対的に低かった(0.81、0.66~0.99)が、これにはLIFE試験の影響が大きかった。なお、バイアスのリスクが高いと判定された1試験と不明と判定された3試験を加えると、薬剤のクラスによるアウトカムの差はほぼなくなった。 著者は、「2型糖尿病患者では、降圧治療により全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクも改善した。これらの知見は、2型糖尿病患者への降圧薬の使用を支持するものである」とまとめ、「脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクが高い糖尿病患者では、収縮期血圧をさらに130mmHgへと低下させると、これらのリスクが減少することが示唆された」としている。

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アナフィラキシーにおける皮膚症状と診断

はじめに アナフィラキシーは、狭義にはIgEを介する、複数の臓器における即時型アレルギー反応で、広義には、造影剤や非ステロイド系抗炎症剤(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs; NSAIDs)などによる、さらには明らかな誘因なく症状が出現する特発性のものを含む1-3)。皮膚症状に関する限り、誘因による表現型の違いは知られていない。 その症状は、マスト細胞が多く分布する皮膚、粘膜、気道、消化管に多く現れ、末梢血の血漿成分の漏出による循環動態の悪化と神経症状を伴うことが多い。なかでも皮膚症状はアナフィラキシーの80~90%で出現2,4)し(表1)、呼吸困難感、血圧低下など、他の生命に関わる症状に伴って出現した場合の診断的価値は高い。 表1を拡大する アナフィラキシーにおける皮膚症状アナフィラキシーによる皮膚症状は、臨床的にI型アレルギーにより生じる皮膚症状と同様である。すなわち、皮膚、粘膜に分布するマスト細胞の急速な脱顆粒により、ヒスタミンをはじめとするメディエーターが組織内に放出され、血管に作用して微小血管の拡張(紅斑)、血漿成分の漏出(膨疹)、知覚神経の刺激による瘙痒を生じる。この反応は、蕁麻疹と大きく重複するが、蕁麻疹のスペクトラムは広く、アナフィラキシーですべての蕁麻疹の臨床像が起こるわけではない。一方、もともと慢性に反復する患者がアナフィラキシーを生じた場合は、両者の皮疹を区別することは困難であり、臨床像により両者を区別することはできない。しかし、傾向として両者の違いはあり、その特性を認識しておくことは有用である。1)皮疹の範囲皮膚症状をアナフィラキシーの診断の根拠とするには、体表の広い範囲に皮疹が出現していることが大切である。果物や野菜を摂取して起こる口腔アレルギー症候群では、軽症例では口腔ならびに顔面皮膚、粘膜の発赤、腫脹などにとどまり、接触蕁麻疹でも軽度であれば皮疹は接触部位に限局した発赤ないし膨疹となる。WAO(World Allergy Organization) 3)および日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドライン2)では、アナフィラキシーの3項目を挙げ、そのうちのいずれかに該当する場合をアナフィラキシーと診断する。皮膚症状は、その3項目のうちの2項目に含まれ、具体的には「全身の発疹、瘙痒または紅潮」と定義されている。なお、アナフィラキシーでも皮疹がない、あるいは限局性の蕁麻疹が出現する可能性はあるが、日本アレルギー学会のガイドライン2)では、部分的な紅斑、蕁麻疹、膨疹はグレード1(軽症)に位置付けられている。2)膨疹と紅斑蕁麻疹では、初期は膨疹の周囲に広範囲の紅斑を伴うことが多く、浮腫の強い膨疹は白色になることもある。しかし、症状を繰り返すうちに紅斑の範囲は狭まり、慢性蕁麻疹の紅斑は膨疹の範囲に限局することが多い(図1)。私見ではあるが、アナフィラキシーにおける皮膚症状は紅斑が主体で、膨疹はないか、あっても散在する程度のことが多い(図2)。バンコマイシンを急速に点滴または静注することで生じるバンコマイシン症候群(またはレッドマン症候群)は、血中バンコマイシン濃度が上昇するために好塩基球からヒスタミンが遊離され、顔面、頸部に紅斑を生じる現象であるが、この場合も顔面、頸部のびまん性紅斑が主体で膨疹はその主役ではない。 図1を拡大する 図2を拡大する 図2(続き)を拡大する 一方、特発性の蕁麻疹でも体表の広い範囲に膨疹が出現することはあるが、その場合は比較的境界が明瞭で、多くの無疹部を確認できることが多い(図3)。浮腫が眼瞼、口唇に生じると、病変が深部に及び、血管性浮腫となることもある。 図3を拡大する 3)除外すべき皮膚症状アナフィラキシーに伴う皮膚症状の特徴は、個々の皮疹の形よりもむしろその経過にある。また、病態の中心は血管の拡張と浮腫にあって器質的変化を伴わないため、圧迫により消退しないことも診断の根拠にできる(図4)。なお、表在性の膨疹、紅斑を伴わない血管性浮腫は、遺伝性血管性浮腫またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬内服中に生じる発作の可能性を考える必要がある。その場合は抗ヒスタミン薬、アドレナリンは無効で、前者には速やかなC1インヒビター(C1-INH)製剤の静注が必要である5)。 図4を拡大する おわりにアナフィラキシー様症状には、パニック発作、迷走神経発作など、アナフィラキシーとは取るべき対応がまったく異なる疾患を鑑別する必要がある。そのために、皮膚症状は重要な診断の助けになり、正確な観察を心がけたい。 1) The Centre for Clinical Practice at NICE. Anaphylaxis. NICE clinical guideline 134. NICE.(Accessed on February 9, 2015.) 2) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン.日本アレルギー学会;2014. 3) アナフィラキシーの評価および管理に関する世界アレルギー機構ガイドライン. Estelle F, et al. 海老澤元宏ほか翻訳. アレルギー.2013; 62: 1464-1500. 4) Joint Task Force on Practice Parameters; American Academy of Allergy, Asthma and Immunology; American College of Allergy, Asthma and Immunology; Joint Council of Allergy, Asthma and Immunology. J Allergy Clin Immunol 115: S483-S523, 2005. 5) 秀 道広ほか.日皮会誌.2011; 121: 1339-1388.

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Vol. 3 No. 1 食後高血糖は悪か? 悪者だとすればそれはなぜか?

熊代 尚記 氏東邦大学医療センター大森病院 糖尿病・代謝・内分泌センターはじめに前項にて血糖コントロールが心血管イベント抑制につながる可能性について解説されたが、どのような高血糖が危険なのか、そしてどのように血糖コントロールを行えば心血管イベントを抑制できるのか、未だ多くの謎が残されている。本稿では、食後の高血糖が心血管疾患のリスクファクターである可能性、および食後高血糖の是正が心血管イベントを抑制する可能性について、これまでの報告をもとに解説する。病的な食後高血糖とはそもそも食後血糖値が食前血糖値より高いことは生理学的にごく自然なことである。いったいどの程度の血糖値が食後高血糖として問題になるのであろうか。最新の国際糖尿病連合(International Diabetes Federation : IDF)の食後血糖値の管理に関するガイドライン1)によると、正常耐糖能者の食後の血糖値は、一般的に食後2〜3時間で基礎値に戻るとされ、食後高血糖は摂食1〜2時間後の血糖値が140mg/dLを上回る場合と定義されている。そして、食後血糖値を160mg/dL以下に維持することを管理目標に掲げている。2013年5月に発表された日本糖尿病学会の熊本宣言2013では、糖尿病合併症予防のためのHbA1c目標値は7.0%とされ、対応する血糖値の目安は空腹時血糖値130mg/dL、食後2時間血糖値180mg/dL程度となっている。食前より食後の高血糖が心血管イベントにとって悪である食前と食後の血糖値は連動して上下するはずであるが、これまでの報告をまとめると、興味深いことに、食前の血糖値よりも食後ないし糖負荷後の血糖値のほうがより感度高く心血管イベントの発症を予測することがわかってきた。また、やみくもに血糖値を下げることは食前の低血糖を引き起こす恐れがあり、低血糖が心血管イベントのリスクファクターであることが近年明らかとなってきたことも合わせて2-6)、食後の高血糖をターゲットとした治療ないし血糖変動を抑えるような治療が心血管イベント抑制に大切ではないかと注目されてきている。以下、食後の高血糖が悪であることを支持する報告、食後の高血糖是正が心血管イベント抑制につながる可能性を示唆する報告を具体的に挙げながら解説する。食後高血糖が心血管イベント発症を強く予測する新規発症2型糖尿病患者1,139名を11年間観察したDiabetes Intervention Study(DIS)7)では、空腹時血糖値が110mg/dL以下にコントロールされていても、朝食後1時間値が180mg/dLを超える場合は、140mg/dL以下の者と比べて心筋梗塞の発症率が3倍に増加した。心血管疾患死亡の相対リスクは、最も高い高血圧に次いで食後高血糖が高かったが、空腹時血糖値は死亡の予測因子やリスク因子にはならなかった。イタリアの2型糖尿病患者505名を14年間観察したSan Luigi Gonzaga Diabetes Study8)では、朝食前、朝食2時間後、昼食2時間後、夕食前の各血糖値を評価したところ、心血管イベントと最も関与していたのは昼食後の血糖値であった。ヨーロッパ系住民を対象とした前向きコホート試験20件のメタ解析であるThe Diabetes Epidemiology Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Europe(DECODE)試験は、一般住民29,108名のグルコース負荷試験データをもとに、空腹時血糖値のみによる糖尿病診断では感度が不十分であることを示し9)、負荷後2時間血糖値が心血管イベントや全死亡と強く関連することを示した10)。また、アジア系住民(n=6,817)のデータをもとにメタ解析されたThe Diabetes Epidemiology Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Asia(DECODA)試験11)でも、負荷後2時間血糖値が空腹時血糖値よりも心血管イベントと強く関連することが示された。山形県舟形町の住民2,651名のブドウ糖負荷試験を含む健診データを解析した前向きコホート試験(Funagata study)では、耐糖能正常者に比べて、境界型、糖尿病型となるほど心血管イベントが発症しやすく、同じ境界型であっても、IFG(空腹時血糖異常)ではなくIGT(負荷後血糖異常)で有意な心血管イベントの増加が見られることが示された12)。食後高血糖が血管内皮機能を悪化させる血管内皮は、血管最内層に位置する一層の細胞層(血管内皮細胞)より成る。血管内皮は血管内腔と血管壁を隔てるバリアーとなるばかりでなく、血管の拡張と収縮の調節、血管平滑筋の増殖調節、凝固調節、炎症の調節、酸化の調節に関与しており、これらは血管内皮機能と総称される。これらの血管内皮機能がバランスよく発揮されることで血管トーヌスが調節され、血管構造が維持される。血管内皮機能が保たれないと血管トーヌスの異常をきたし、血管構造が変化する(血管リモデリング)。この変化に内皮へのマクロファージの接着とアテローム病変の増大が合わさり、血栓・塞栓が誘発されて、心血管イベントが発症すると考えられる。Cerielloらはグルコースクランプを用いて、5mMと15mMの6時間ごとに血糖を変動させると、持続高血糖よりも血中のニトロチロシン(ニトロ化の修飾を受けたチロシン残基)が上昇し、それがflow-mediated dilatation(FMD)で測定される血管拡張能の低下と相関することを報告している13)。また、アセチルコリンに対する前腕血流増加反応で見た血管内皮機能が、2型糖尿病患者では食後に低下しており、αGIやグリニド系薬剤、超速効型インスリンの投与により改善することが報告されている14-16)。われわれは現在、もう1つの食後高血糖治療薬であるDPP-4阻害薬(リナグリプチン)が血管内皮機能を改善するかどうか、FMDを用いて検討中である。マウスの食後高血糖モデルでは、内皮へのマクロファージの接着とアテローム病変の増大が惹起され、この現象がαGIやグリニド系薬剤、インスリンによって予防できることが報告されている17-19)。今後、このような食後高血糖是正による血管内皮の保護が心血管イベントの抑制につながるかどうか、十分な検討が必要である。食後高血糖是正が心血管イベント発症を抑制するかもしれない以上の報告を踏まえて、食後高血糖が心血管イベントのリスクファクターであり、食後高血糖の是正が心血管イベントの発症を抑制するのではないかと期待されるようになった。しかし、結論的には、現状ではその効果は十分に証明されていない。以下、検証している報告について解説する。急性心筋梗塞後21日以内の2型糖尿病患者1,115名を、(1)超速効型インスリンアナログ(インスリンリスプロ)3回を注射して食後2時間血糖値135mg/dL未満を目指す食後介入群と(2)持効型インスリンアナログ(インスリングラルギン)1回またはNPHインスリン2回を注射して空腹時血糖値121mg/dL未満を目指す食前介入群とに無作為に割り付けて比較検討したHyperglycaemia and Its Effect After Acute Myocardial Infarction on Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus(HEART2D)試験では、平均963日の観察後、HbA1cに群間差がなく、食後血糖値はリスプロ群が、食前血糖値はグラルギン群が有意に低かったが、主要血管イベントのリスクは両群で同程度であった(食後介入群31.2%、食前介入群32.4%、ハザード比0.98)20)。心血管ハイリスクのIGT患者9,306名を対象に、ナテグリニドとバルサルタンを用いた2×2 factorialデザインで実施された無作為化比較試験であるThe Nateglinide and Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcomes Research(NAVIGATOR)試験では、中央値5年間のナテグリニド毎食前60mgの介入は、プラセボと比較して、糖尿病の発症(36% vs. 34%、ハザード比1.07)でも心血管疾患の発症(7.9% vs. 8.3%、ハザード比0.94)でも、予防効果を示すことはできなかった。なお、ナテグリニドは低血糖を増加させていた21)。したがって、前述のとおり低血糖が心血管イベントのリスクファクターであることから、低血糖を起こさずに血糖コントロールを行っていれば、心血管イベントの予防効果を示すことができたかもしれない。この点に関して、Mitaらは、早期2型糖尿病患者を対象にナテグリニドを投与し、低血糖の出現や有意な体重増加を認めなかったうえで、心血管イベントのサロゲートマーカーである頸動脈の内膜中膜複合体厚(intima media thickness : IMT)を抑制することができたことを報告している(本誌p.16図1を参照)22)。IGT患者1,429名を対象にアカルボースを用いて糖尿病発症予防を試みたStudy to Prevent Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus(STOP-NIDDM)試験では、アカルボース毎食前100mgによる介入が糖尿病の発症を予防した(32% vs. 42%、ハザード比0.75、p=0.0015)23)。さらに、post-hoc解析によって高血圧(ハザード比0.66、p=0.006)や心血管イベントの発症(ハザード比0.51、p=0.03)も予防できたことが報告されている24)。このことは、1年以上継続したアカルボースの介入試験7件のメタ解析(Meta-analysis of Risk Improvement with Acarbose 7: MeRIA7、n=2,180)において、心筋梗塞(ハザード比0.36、p=0.0120)や全心血管イベント(ハザード比0.65、p=0.0061)が抑制されたこととも一致している25)。しかしながら、これらの報告には解釈において注意すべき点がいくつか存在する。まずSTOP-NIDDMにおいては、大血管障害の評価が2次エンドポイントであった。統計解析において、2次エンドポイントや後付解析は仮説を実証するものではなく、示唆するデータに過ぎないことを理解しておかなければならない26, 27)。さらに、心血管イベントの抑制効果(絶対的なリスクの低下)は数%程度であり、ごくわずかであった。服薬中断率も24%であり、これらを大きく差し引いて解釈する必要がある。MeRIA7については、対象となった7件の無作為化比較試験のうち、3件は未発表(2件は製薬企業がデータを提供)であることから、その妥当性は低い28, 29)。実際、日本糖尿病学会の『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013』では、エビデンスレベル「なし」と位置づけられており、玉石混交のメタ解析の評価には注意が必要である。以上から、αGIを用いた食後高血糖治療が心血管イベントを抑制するかどうかの判断には、更なる検討が必要である。最後に、食後高血糖改善効果があり、体重増加と低血糖をきたしにくいDPP-4阻害薬の大血管障害予防効果に関して、最近2件のエビデンスが発表された。Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus(SAVOR-TIMI)53研究30)では、約16,000人の大血管障害の既往または高リスクの2型糖尿病患者(アジア人を含む)が無作為にサキサグリプチン投与群とプラセボ投与群に割り付けられたが、心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクに有意差を認めなかった(本誌p.17図2、表を参照)。同時に発表されたExamination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin(EXAMINE)研究31)では、急性冠動脈症候群を発症した2型糖尿病患者(日本人を含む)約5,000人が無作為にアログリプチン投与群とプラセボ投与群に割り付けられ、アログリプチンのプラセボに対する非劣性を証明することを1次エンドポイントとして実施されたが、この研究でも心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクに有意差を認めなかった。両者ともRCTではあるが、服薬中断率が高いこと、追跡期間が2~3年と比較的短いこと、筆者・解析者に試験薬の製薬会社員が含まれていることなどの限界・バイアスがあるため、これらを差し引いて解釈する必要がある。現時点ではDPP-4阻害薬の大血管障害予防効果については明確な答えを出せず、進行中の残りのDPP-4阻害薬の試験結果を待っている状態である。以上、食後高血糖是正が心血管イベントを抑制する期待は高いのであるが、実際のところは十分に証明されておらず、低血糖を回避した血糖コントロールなど、工夫をしながらデータを蓄積して検討を続けることが必要である。私見としては、UKPDS80やEDIC studyで早期からの血糖コントロールが心血管イベントの抑制につながると報告されているにもかかわらず、食後高血糖をターゲットにした上述の試験では心血管イベントを抑制できなかった理由として、食後のみの高血糖のような軽症の状態での血糖値が心血管イベントに与える悪影響が、脂質や血圧などの他のリスクファクターに比べて影響が小さく、食後血糖値のみを穏やかに数年間改善させても十分な心血管イベントの抑制ができなかっただけなのではないかと推測している。そういった点では、早期から低血糖を予防しながら食後血糖値を抑制しつつ、全体的に血糖値がよくなるように厳格な血糖コントロールを行うことが大切なのではないかと考える。おわりに以上、本稿では食後高血糖が心血管イベント発症のリスクファクターであること、食後高血糖をターゲットとした血糖コントロールが心血管イベントの発症抑制につながるかもしれないことについて解説した。本稿が、本誌の主な読者である循環器専門医、脳血管、末梢血管疾患を担当される専門医の方々の糖尿病診療に役立ち、メタボリックシンドロームや糖尿病患者の心血管イベントの抑制に少しでも貢献すれば幸甚である。文献1)International Diabetes Federation Guideline Development G: Guideline for management of postmeal glucose in diabetes. Diabetes Res Clin Pract 2013. pii: S0168-8227(12)00282-3.2)Bonds DE et al. The association between symptomatic, severe hypoglycaemia and mortality in type 2 diabetes: retrospective epidemiological analysis of the ACCORD study. BMJ 2010; 340: b4909.3)Hemmingsen B et al. Intensive glycaemic control for patients with type 2 diabetes: systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis of randomised clinical trials. BMJ 2011; 343: d6898.4)Boussageon R et al. Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2011; 343: d4169.5)Zoungas S et al. Severe hypoglycemia and risks of vascular events and death. N Engl J Med 2010; 363: 1410-1418.6)Johnston SS et al. Evidence linking hypoglycemic events to an increased risk of acute cardiovascular events in patients with type 2 diabetes. Diabetes Care 2011; 34: 1164-1170.7)Hanefeld M et al. Risk factors for myocardial infarction and death in newly detected NIDDM: the Diabetes Intervention Study, 11-year followup. Diabetologia 1996; 39: 1577-1583.8)Cavalot F et al. Postprandial blood glucose is a stronger predictor of cardiovascular events than fasting blood glucose in type 2 diabetes mellitus, particularly in women: lessons from the San Luigi Gonzaga Diabetes Study. J Clin Endocrinol Metab 2006; 91: 813-819.9)Is fasting glucose sufficient to define diabetes? Epidemiological data from 20 European studies. The DECODE-study group. European Diabetes Epidemiology Group. Diabetes Epidemiology: Collaborative analysis of Diagnostic Criteria in Europe. Diabetologia 1999; 42: 647-654.10)Qiao Q et al. Post-challenge hyperglycaemia is associated with premature death and macrovascular complications. Diabetologia 2003; 46: M17-21.11)Nakagami T, Group DS. Hyperglycaemia and mortality from all causes and from cardiovascular disease in five populations of Asian origin. Diabetologia 2004; 47: 385-394.12)Tominaga M et al. Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose. The Funagata Diabetes Study. Diabetes Care 1999; 22: 920-924.13)Ceriello A et al. Oscillating glucose is more deleterious to endothelial function and oxidative stress than mean glucose in normal and type 2 diabetic patients. Diabetes 2008; 57: 1349-1354.14)Evans M et al. Effects of insulin lispro and chronic vitamin C therapy on postprandial lipaemia, oxidative stress and endothelial function in patients with type 2 diabetes mellitus. Eur J Clin Invest 2003; 33: 231-238.15)Shimabukuro M et al. A single dose of nateglinide improves post-challenge glucose metabolism and endothelial dysfunction in Type 2 diabetic patients. Diabet Med 2004; 21: 983-986.16)Shimabukuro M et al. Effects of a single administration of acarbose on postprandial glucose excursion and endothelial dysfunction in type 2 diabetic patients: a randomized crossover study. J Clin Endocrinol Metab 2006; 91: 837-842.17)Van Bruaene N et al. Inflammation and remodelling patterns in early stage chronic rhinosinusitis. Clin Exp Allergy 2012; 42: 883-890.18)Azuma K et al. Acarbose, an alpha-glucosidase inhibitor, improves endothelial dysfunction in Goto-Kakizaki rats exhibiting repetitive blood glucose fluctuation. Biochem Biophys Res Commun 2006; 345: 688-693.19)Mita T et al. Swings in blood glucose levels accelerate atherogenesis in apolipoprotein E-deficient mice. Biochem Biophys Res Commun 2007; 358: 679-685.20)Raz I et al. Effects of prandial versus fasting glycemia on cardiovascular outcomes in type 2 diabetes: the HEART2D trial. Diabetes Care 2009; 32: 381-386.21)Group NS et al. Effect of nateglinide on the incidence of diabetes and cardiovascular events. N Engl J Med 2010; 362: 1463-1476.22)Mita T et al. Nateglinide reduces carotid intimamedia thickening in type 2 diabetic patients under good glycemic control. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2007; 27: 2456-2462.23)Chiasson JL et al. Acarbose for prevention of type 2 diabetes mellitus: the STOP-NIDDM randomised trial. Lancet 2002; 359: 2072-2077.24)Chiasson JL et al. Acarbose treatment and the risk of cardiovascular disease and hypertension in patients with impaired glucose tolerance: the STOP-NIDDM trial. JAMA 2003; 290: 486-494.25)Hanefeld M et al. Acarbose reduces the risk for myocardial infarction in type 2 diabetic patients: meta-analysis of seven long-term studies. Eur Heart J 2004; 25: 10-16.26)Freemantle N. Interpreting the results of secondary end points and subgroup analyses in clinical trials: should we lock the crazy aunt in the attic? BMJ 2001; 322: 989-991.27)Freemantle N. How well does the evidence on pioglitazone back up researchers' claims for a reduction in macrovascular events? BMJ 2005; 331: 836-838.28)Lexchin J et al. Pharmaceutical industry sponsorship and research outcome and quality: systematic review. BMJ 2003; 326: 1167-1170.29)Pocock SJ, Ware JH. Translating statistical findings into plain English. Lancet 2009; 373: 1926-1928.30)Scirica BM et al. Saxagliptin and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med 2013; 369: 1317-1326.31)White WB et al. Alogliptin after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med 2013; 369: 1327-1335.

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もう我慢しない 俺の“おしっこ”トラブル

 2月5日、東京都内にて「男性の“おしっこ”トラブル最前線 見過ごせない!前立腺肥大症」と題して、日本大学医学部 泌尿器科学系泌尿器科学分野 主任教授 高橋 悟氏による講演が行われた。 「排尿障害」「残尿感」「尿漏れ」「蓄尿障害」といった“おしっこ”トラブルは加齢に伴い増加傾向にあるが、生命に関わる疾患ではなく、また周囲には言いにくい症状ということもあり、治療せずに諦めているケースが少なくない。 その結果、外出を控えるなど行動が制限されたり、QOLが低下するなど日常生活に大きな影響を及ぼしている。 “おしっこ”トラブルが生じる背景には、多くの場合原因となる疾患が存在するが、中高年男性で最も多い原因は前立腺肥大症である。 前立腺肥大症は55歳以上の男性の5人に1人、すなわち約400万人が罹患していると推測されており、高齢化社会の進展に伴い、その患者数は増加傾向にある。しかし実際に通院しているのは約10分の1にすぎず、多くの患者が治療を受けていない、または治療を中断してしまった現状がある。 前立腺肥大症の自覚症状を評価する代表的な方法として前立腺肥大症ガイドラインで推奨されている「国際前立腺症状スコア(IPSS)」と「QOLスコア」が挙げられる。 「前立腺肥大症は治療により症状の改善が期待できる疾患であり、重症化前に受診することが重要である。図のようなチェックシートを用いて前立腺肥大症の徴候を見逃さず、泌尿器科の受診を促していただきたい」と高橋氏は強調した。図画像を拡大する

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ブルーリボンキャラバン2015 in東京 ―もっと知ってほしい「大腸がん」のこと【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科、同院腫瘍センターとNPO法人キャンサーネットジャパンは、3月14日(土)に東京医科歯科大学M&Dタワー2階 鈴木章夫記念講堂にて、大腸がん啓発のための無料市民公開講座を開催する。一般市民だけではなく、専門以外の医師やメディカルスタッフにとって、大腸がんの診断・治療についての知識の整理・アップデートのよい機会になると思われる。ブースでは「内視鏡操作体験」「中心静脈ポートに針を刺す」などの体験もできる。総合司会は、フリーアナウンサーの中井 美穂 氏。また、今回はブルーを身に着けてきた来場者にプレゼントも用意されている。開催概要は以下のとおり。イベントの詳細はこちら【日時】2015年3月14日(土)    《セミナー》 10:00~16:15(※開場9:30~)    《展示ブース》 9:30~16:45【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー2階 鈴木章夫記念講堂    〒113-8510 文京区湯島1-5-45 (JR・東京メトロ 御茶ノ水駅近く)【参加費】無料(当日参加者には冊子のプレゼントあり)【定員】500名(定員になり次第締め切ります)【予定内容】10:00-10:05 開会挨拶 NPO法人キャンサーネットジャパン10:05-10:15 特別挨拶 増え続ける大腸癌を克服するために       (渡邉 聡明 先生 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科 教授/大腸癌研究会 ガイドライン委員長)10:15-10:30 体験談 口腔癌治療医が進行大腸癌に罹って       (山本 悦秀 先生 金沢大学 名誉教授/城南歯科医院 理事長)10:30-11:00 講演(1) 大腸がん/大腸ポリープの診断・検査の実際       (石黒 めぐみ 先生 東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座)11:00-11:30 講演(2) 大腸がんの外科的治療とその後の生活       (板橋 道朗 先生 東京女子医科大学 第二外科)11:30-12:00 講演(3) 大腸がんの薬物療法(抗がん剤・分子標的薬)       (篠崎 英司 先生 がん研有明病院 消化器センター消化器内科)12:00-12:10 案内 出展ブース紹介12:10-13:15 (昼休憩)13:15-13:20 挨拶 NPO法人キャンサーネットジャパン13:20-15:20 映画上映 『ぼくたちの家族』15:20-15:30 休憩15:30-16:00 パネルディスカッション       『がんになったらどうする? お金と情報のこと』16:00-16:10 情報提供 がん相談支援センター 活用のすすめ16:10-16:15 閉会挨拶 NPO法人キャンサーネットジャパン9:30~16:45 ホワイエ(ブース展示) ・大腸がんの検査・治療に使用する機器など、さまざまなブース展示を行います。 ・展示スペースはどなたでもご自由に観覧いただけますのでお気軽にお越しください。【申込み方法】①インターネットでの申し込みはこちら②メールでの申し込み 0314brc@cancernet.jp③FAXでの申し込み 03-5840-6073 「3月14日セミナー申込み」係宛④往復はがきでの申し込み(3月8日必着) 〒113-0034 東京都文京区湯島1-10-2 御茶の水K&Kビル2F キャンサーネットジャパン「3月14日セミナー申込み」係宛※②③④のいずれでかでお申し込みの際は、下記1~3をご記載ください。 1.名前(フリガナ) ※複数名でご参加の場合は、参加される方全員のお名前もご記載ください。 2.立場(患者・家族・医療従事者・学生・行政関係・ヘルスケア関連企業・メディアなど) 3.連絡先(①メール、②FAX、③電話、のいずれか)※お申し込みの前にイベントポリシーを必ずお読みください【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科/東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター/NPO法人キャンサーネットジャパン【協賛】メルクセローノ株式会社【後援】東京都/公益社団法人東京都医師会/一般社団法人日本癌治療学会大腸癌研究会/公益社団法人日本オストミー協会/NPO法人ブレイブサークル運営委員会

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重症患者の連日クロルヘキシジン清拭は無効?/JAMA

 連日のクロルヘキシジン(商品名:ヒビテンほか)清拭は、重症患者の医療関連感染(health care-associated infection)を予防しないことが、米国・ヴァンダービルト大学のMichael J Noto氏らの検討で確認された。入院中の院内感染(医療関連感染)は、入院期間の延長や死亡率の上昇、医療費の増大をもたらす。入院患者の皮膚は病原菌の貯蔵庫であり、医療関連感染の機序には皮膚微生物叢の浸潤が関連すると考えられている。クロルヘキシジンは広域スペクトルの局所抗菌薬であり、清拭に使用すると皮膚の細菌量が減少し、感染が抑制される可能性が示唆されている。AMA誌2015年1月27日号掲載の報告。予防効果をクラスター無作為化クロスオーバー試験で評価 研究グループは、連日クロルヘキシジン清拭による、重症患者における医療関連感染の予防効果を検証するために、実臨床に即したクラスター無作為化クロスオーバー試験を行った。対象は、2012年7月~2013年7月までに、テネシー州ナッシュビル市にある3次医療機関の5つの専門機能別ICU(心血管ICU、メディカルICUなど)に入室した9,340例の患者であった。 5つのICUは、毎日1回、使い捨ての2%クロルヘキシジン含浸タオルを用いて清拭する群(2施設)または抗菌薬を含まないタオルで清拭する群(対照、3施設)に無作為に割り付けられた。これを10週行ったのち、2週の休止期間(この間は抗菌薬非含浸使い捨てタオルで清拭)を置き、含浸タオルと非含浸タオルをクロスオーバーしてさらに10週の清拭治療を実施した。 主要評価項目は、中心静脈ライン関連血流感染(CLABSI)、カテーテル関連尿路感染(CAUTI)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、クロストリジウム・ディフィシル(C.ディフィシル)感染の複合エンドポイントとした。副次評価項目には、多剤耐性菌、血液培養、医療関連血流感染の陽性率などが含まれた。医療費の損失や耐性菌の増加を招く可能性も クロルヘキシジン群に4,488例(年齢中央値:56.0歳、男性:57.6%)、対照群には4,852例(57.0歳、57.8%)が割り付けられた。医療関連感染は、クロルヘキシジン清拭期に55例(CLABSI:4例、CAUTI:21例、VAP:17例、C.ディフィシル感染:13例)、抗菌薬非含浸清拭期には60例(4例、32例、8例、16例、)に認められた。 主要評価項目の発生率は、クロルヘキシジン清拭期が1,000人日当たり2.86、抗菌薬非含浸清拭期は同2.90であり、両群間に有意な差は認められなかった(発生率の差:-0.04、95%信頼区間[CI]:-1.10~1.01、p=0.95)。ベースラインの変量で補正後も、主要評価項目に関して両群間に有意差はみられなかった。 また、院内血流感染、血液培養、多剤耐性菌などの副次評価項目の発生率にも、クロルヘキシジン清拭による変化は認めなかった。さらに、事前に規定されたサブグループ解析では、各ICU別の主要評価項目の発生率にも有意な差はなかった。 著者は、「連日クロルヘキシジン清拭は、CLABSI、CAUTI、VAP、C.ディフィシルによる医療関連感染を予防せず、重症患者に対する連日クロルヘキシジン清拭は支持されない」とまとめ、「クロルヘキシジン清拭はいくつかの専門ガイドラインに組み込まれているが、医療費の損失やクロルヘキシジン耐性菌の増加を招いている可能性がある」と指摘している。

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抗精神病薬の有害事象との関連因子は

 抗精神病薬は統合失調症およびその他の精神障害に広く処方されているが、一方で有害事象およびアドヒアランスへのネガティブな影響が共通して認められる。しかしこれまで、有害事象の発現率やマネジメントに注目した検討はほとんど行われていなかった。英国・エディンバラ大学のSu Ling Young氏らは、抗精神病薬の有害事象の発現率およびマネジメントについて系統的レビューを行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 研究グループは本検討で、抗精神病薬の9種の臨床的に重要な有害事象の発現率とマネジメントについてレビューした。9種は、錐体外路症状、鎮静作用、体重増加、2型糖尿病、高プロラクチン血症、メタボリックシンドローム、脂質異常症、性機能障害、心血管への影響であった。事前に検索基準を特定し、3つのデータベースの検索と引用・参考文献の手動検索でシステマティックレビューを行った。2人の研究者が要約または全文をレビュー後、包含基準について合意を得た。包含した論文の質的評価は、事前に同意確認した基準を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・合計53試験が、包含基準を満たした。・有害事象の発現頻度の増大は、抗精神病薬の多剤投与と関連していた。・投与期間の長さは、有害事象の重症化(例:BMI値が高値)と関連していた。・クロザピンは、3試験におけるその他抗精神病薬との比較において、代謝障害との関連がより強かった。・オランザピンは、3試験で体重増加と最も関連していた。・高プロラクチン血症は、男性よりも女性で一般的であった。・性機能障害は男性が50%に対し女性は25~50%であった。・臨床ガイドラインの推奨にもかかわらず、脂質および血糖値のベースラインでの検査率は低率であった。・7試験で有害事象のマネジメント戦略が述べられていたが、その有効性について調べていたのは2試験のみであった。そのうち1試験は、非投薬の集団療法により体重の有意な減少を、もう1試験はスタチン療法により脂質異常の有意な減少を認めた。・総括すると、抗精神病薬の有害事象は多様でしばしばみられる。しかし、系統的評価は多くない。・有害事象マネジメントに関する科学的研究を、さらに行う必要性がある。関連医療ニュース 最新、抗精神病薬の体重増加リスクランキング 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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グリベンクラミド、妊娠糖尿病には注意/BMJ

 妊娠糖尿病の短期的治療について、グリベンクラミド(商品名:オイグルコン、ダオニールほか)はインスリンおよびメトホルミン両剤よりも明らかに劣性であり、一方、メトホルミン(+必要に応じてインスリン)がインスリンよりもわずかだが良好であることが示された。スペイン・Mutua de Terrassa大学病院のMontserrat Balsells氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「グリベンクラミドは、メトホルミンやインスリンが使用できるのなら妊娠糖尿病治療には用いるべきでない」と提言している。BMJ誌オンライン版2015年1月21日号掲載の報告より。メタ解析でグリベンクラミドとインスリン、メトホルミンを比較 妊娠糖尿病治療で使用される経口薬が増えており、ガイドラインでも使用を認めているが、安全性に関する情報は限定的である。先行研究では、経口薬に焦点を当てた無作為化試験のメタ解析が複数発表されているが、グリベンクラミドvs. インスリン、メトホルミンvs. インスリン、メトホルミンvs. グリベンクラミドなど総合的な検討は行われていなかった。 研究グループは、それらの比較が行われていた無作為化試験での短期的アウトカムを要約することを目的に、システマティックレビューとメタ解析を行った。 試験適格としたのは、全文を公表しており、薬物療法を必要とした妊娠糖尿病の女性を対象としている、グリベンクラミドvs. インスリン、メトホルミンvs. インスリン、メトホルミンvs. グリベンクラミドを比較検討しているすべての無作為化試験とした。 検索は、2014年5月20日時点でMEDLINE、CENTRAL、Embaseを介して行った。 主要評価項目は、主要アウトカム14(母体6[妊娠末期のHbA1c値、重症低血糖、子癇前症、体重増加など]、胎児8[出産児の在胎月齢、未熟児出産、出生時体重など])、副次アウトカム16(母体5、胎児11)とした。グリベンクラミドはインスリン、メトホルミンより劣性 検索により、15論文、被験者2,509例を解析に組み込んだ。 グリベンクラミドvs. インスリンの主要アウトカムについて、出生時体重(平均差109g、95%信頼区間[CI]:35.9~181g、p=0.003)、巨大児(リスク比:2.62、95%CI:1.35~5.08、p=0.004)、新生児低血糖(同:2.04、1.30~3.20、p=0.002)について有意な差がみられた。 メトホルミンvs. インスリンでは、母体の体重増加(平均差:-1.14kg、95%CI:-2.22~-0.06、p=0.04)、出産児の在胎月齢(同:-0.16週、-0.30~-0.02、p=0.03)、未熟児出産(リスク比:1.50、95%CI:1.04~2.16、p=0.03)で有意差が認められ、新生児低血糖についても差がある傾向が認められた(同:0.78、0.60~1.01、p=0.06)。 メトホルミンvs. グリベンクラミドでは、母体の体重増加(平均差:-2.06kg、95%CI:-3.98~-0.14、p=0.04)、出生時体重(同:-209g、-314~-104、p<0.001)、巨大児(リスク比:0.33、95%CI:0.13~0.81、p=0.02)、在胎不当過大児(同:0.44、0.21~0.92、p=0.03)で有意差が認められた。 副次アウトカムについては、メトホルミンvs. インスリンでは4つがメトホルミンで良好であり、メトホルミンvs. グリベンクラミドではメトホルミンで不良であったのは1つであった。治療不成功は、グリベンクラミドと比べてメトホルミンで高率だった。

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Vol. 3 No. 1 血糖をコントロールすることは、本当に心血管イベント抑制につながるのか? ~ DPP-4阻害薬の大規模臨床試験の結果を踏まえて~

坂口 一彦 氏神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科はじめに国際糖尿病連合のDiabetes Atlas第6版(2013年)1)によれば、世界の糖尿病患者数は3億8,200万人と推定され、そのうちの1億3,800万人が日本を含む西太平洋地区に存在するとされている。世界で糖尿病が理由で亡くなっている人が6秒に1人存在することになり、経済的損失は5,480億ドルにも達するとされている。患者数の増加は2035年には5億9,200万人に達すると予測され、人類にとっての脅威という表現も決して誇張ではない。糖尿病患者は心血管イベントを発生しやすい高リスク集団であることは以前より報告が多く、本邦においても1996年から国内の専門施設に通院する糖尿病患者2,033名を登録して開始されたJapan Diabetes Complications Study(JDCS)の9年次報告2)では、虚血性心疾患の発症率が9.6人/年(男性11.2人/年、女性7.9人/年)と著明に上昇し、脳血管疾患の7.6人/年(男性8.5人/年、女性6.6人/年)を上回っている。それでは、糖尿病患者の血糖をコントロールすることで心血管イベントの抑制につながるのだろうか?糖尿病は何のために治療するのか?という根源的な問題ともいえるこの点について、本稿ではこれまでのエビデンスに基づいて述べる。厳格な血糖コントロールとは何を意味するか?糖尿病の合併症のうち、網膜症・腎症・神経障害など細小血管合併症の発症は、平均血糖の上昇を意味するHbA1cとの間に強い関係があり、さらに1990年代〜2000年に行われたDCCT3)やUKPDS4)などの介入試験において、HbA1cを低下させることで発症・進展阻止が得られることが明らかとなった(図1)。一方で、虚血性心疾患に代表される大血管合併症の発症は、糖尿病患者の血圧や脂質への介入により抑制されることが確認できたが、HbA1cの低下と心血管イベント発症抑制との関連については、それら初期の介入試験では有意な関係を認めることができなかった。2000年代に入りACCORD5)、ADVANCE6)、VADT7)という3つの大規模臨床試験が相次いで発表された。いずれもHbA1cを十分に下げても主要心血管イベントの抑制効果を認めることができず、ACCORD試験に至ってはむしろ強化療法群で死亡率が上昇したという結果で多くの議論を呼ぶこととなった。図1 大規模臨床試験が明らかにした厳格な血糖コントロールがもたらすもの画像を拡大するこれらの試験が私たちに教えたことは、(1)HbA1cの低下は血糖の正常化と同義語ではない、すなわち低血糖を伴わず、血糖変動の小さい日々の血糖状態の結果としての質のよいHbA1cの改善が求められること、(2)年齢、罹病期間、合併症など背景要因を考慮せず一律な治療目標を設定することには問題があること、(3)罹病期間が長い患者に対する治療には限界があり、特に短期間での急速なHbA1cの低下は好ましくないこと、また治療開始の時期がその後の合併症や生命予後に大きく関わることから、糖尿病の発症早期からの治療介入が好ましいこと、などである。その結果、糖尿病の診療は下記のように変化が起きつつある。(1)低血糖の際に交感神経の活性化や凝固系亢進、炎症マーカーの亢進などを介して不整脈や虚血を誘発することが考えられ、低血糖に関する注意が従来以上に強調されることとなった。最近、経口糖尿病治療薬としてDPP-4阻害薬が登場し、現在本邦でも広く使用されているが、これは単独使用では低血糖を起こすことが基本的にはないためと思われる。(2)ADA/ EASDのガイドラインに患者中心アプローチの必要性があらためて記載され、患者ごとの治療目標を設定することが推奨されるようになった8)。(3)その後、厳格な血糖管理の影響は、特に大血管合併症や生命予後に関しては年余を経てからmetabolic memory効果9)やlegacy effect10)が現れることが初期の介入試験の延長試験の結果から明らかとなり、やはり早期からの治療介入の重要性が強調されることとなった。食後高血糖への介入の意義HbA1cがまだ上昇していない境界型のレベルから動脈硬化が進行し、心血管イベントを起こしやすいことはよく知られている。DECODE試験やDECODA試験、本邦におけるFunagata試験が示したことは、経口ブドウ糖負荷試験の空腹時血糖よりも負荷後2時間の血糖値のほうが総死亡や心血管イベントの発症とよく相関するという結果であった。食後高血糖が動脈硬化を促進するメカニズムとして、臍帯血管内皮細胞を正常糖濃度、持続的高濃度、24時間ごとに正常濃度・高濃度を繰り返すという3条件で培養した際、血糖変動を繰り返した細胞で最も多くのアポトーシスを認めたというin vitroの報告や、2型糖尿病患者における血糖変動指標であるMAGEと尿中の酸化ストレスマーカーが相関することなどから、食後高血糖は酸化ストレスや血管内皮障害を介し、大血管合併症につながりうると推測されている。国際糖尿病連合が発行している『食後血糖値の管理に関するガイドライン』では「食後高血糖は有害で、対策を講じる必要がある」とされている。それでは、食後高血糖に介入した臨床試験は期待どおりの結果であったであろうか?STOP-NIDDM試験(Study to prevent Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus)11)IGT患者1,429名に対して、α-グルコシダーゼ阻害薬であるアカルボースで介入することで2型糖尿病の発症を予防することができるかどうかを1次エンドポイントにしたRCTである。試験期間は3.3年であった。その結果、糖尿病発症は有意に予防でき(ハザード比0.75、p=0.0015)、さらに2次エンドポイントの1つとして検証された心血管イベントの発症も有意に抑制されることが報告された(ハザード比0.51、p=0.03)。しかしアカルボース群は脱落者が比較的多く、得られた結果も1次エンドポイントではないことに注意したい。NAVIGATOR試験(The Nateglinide and Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcome Research)12)IGT患者9,306名を対象として、血糖介入にはグリニド薬であるナテグリニドを、血圧介入にはARBであるバルサルタンを用いて、2×2のfactorialデザインで実施されたRCTである。1次エンドポイントは糖尿病の発症と心血管イベントの発症で、観察期間の中央値は5年間であった。結果としてナテグリニド群はプラセボ群に比し、糖尿病の発症(プラセボに対するハザード比1.07、p=0.05)、心血管イベントの発症(プラセボに対するハザード比0.94、p=0.43)といずれも予防効果を証明できなかった。本試験ではナテグリニド群において低血糖を増加させていたことや、投薬量が不足していた可能性などの問題が指摘されている。HEART2D試験(Hyperglycemia and Its Effect After Acute Myocardial Infarction on Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus)13)急性心筋梗塞後21日以内の2型糖尿病患者1,115名を対象に、超速効型インスリンを1日3回毎食前に使用して食後血糖を低下させた治療群と、基礎インスリンを使用して空腹時血糖を低下させた治療群を比較したRCTである。平均963日のフォローアップで、同様にHbA1cが低下し、日内の血糖パターンにも変化がついたにもかかわらず、主要心血管イベントの発症には両群で有意差がつかなかった。このように、食後の高血糖が有害であるということを示唆するデータやそれを裏づける基礎的データはあるものの、血糖変動を厳格に管理することで本当に糖尿病患者の心血管イベントが減るのかということに関しては、未だ明らかではないことがわかる。DPP-4阻害薬を使用した大規模臨床試験インクレチン関連薬の登場は、糖尿病治療にパラダイムシフトを起こしたとまでいわれ、低血糖や体重増加が少ないというメリットがあるうえに、日内の血糖変動も小さく、真の意味で厳格な血糖コントロールを目指せる薬剤と期待され広く臨床使用されるようになった。加えてインクレチン関連薬には、血糖コントロール改善効果以外に、臓器保護効果やβ細胞の保護効果を示唆するデータが培養細胞や動物実験において出されつつある。最近、DPP-4阻害薬を用い、心血管イベントを1次エンドポイントとした2つのRCTが発表されたので、次にこれらの試験について述べる。試験が行われた背景ロシグリタゾンは本邦では未発売のPPAR-γ活性化薬の1つである。血糖降下作用に加え、抗炎症作用・臓器保護作用などの報告が多く、大血管イベント抑制効果も期待されていたが、2007年にそれまでの臨床試験の結果を解析すると、逆に急性心筋梗塞が対照群に比べて1.43倍、心血管死亡が1.64倍増加しているという衝撃的な報告がなされた14)。2008年、アメリカ食品医薬品局(FDA)はこれらの報告を受け、新規の糖尿病治療薬については心血管イベントリスクの安全性を証明することを義務づけた。ここで述べる2つのRCTは、このFDAの要請に応えるべく行われた。したがって、プラセボ薬に比し、心血管イベントの発生が非劣性であることを1次エンドポイントとしてデザインされたRCTであり、実薬による介入が対照群に比し優れているかどうかを検証するこれまで述べてきた他の試験とは性質が異なる。EXAMINE試験(Examination of Cardiovascular Outcome with Alogliptin)15)(表1)急性冠動脈症候群を発症した2型糖尿病患者5,380名を、アログリプチン群とプラセボ群に無作為に割り付け、観察期間中央値18か月として、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発症リスクを比較したものである。結果として、プラセボに対する非劣性は証明されたが(プラセボに対するハザード比0.96、p<0.001 for noninferiority)、優越性は証明されなかった。表1 EXAMINE試験とSAVOR-TIMI 53試験の概略画像を拡大するSAVOR-TIMI53試験(Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus)16)(表1)心血管イベントの既往またはリスクを有する2型糖尿病患者16,492名を無作為にサキサグリプチン群とプラセボ群に割り付け、観察期間を中央値2.1年、主要評価項目を心血管死、心筋梗塞、脳卒中発症の複合エンドポイントとして比較したものである。結果として、プラセボに対する非劣性は証明されたが(プラセボに対するハザード比0.89、p<0.001 for noninferiority)、優越性は証明されなかった(p=0.99 for superiority)。本試験の対象は高リスクで罹病期間の長い中高年者であり、ACCORD試験の対象者に似ていることと介入期間の短さを考えると、介入終了時点でイベント発生の抑制効果が認められないことにそれほどの違和感はない。加えてACCORD試験ほど急速にHbA1cは下がっていない(むしろ介入終了時のプラセボとのHbA1cの差は全区間を通じて有意であったとはいえ、介入終了時点で7.7% vs. 7.9%と極めて小さな差であった)、主要評価項目のイベントを増やすことがなかったという意味では所定の結果は得られたといえる。しかし、解析の中で次の点が明らかになった。単剤で使用される限り低血糖のリスクは少ないDPP-4阻害薬であるが、併用薬を含む本試験においてはサキサグリプチン群のほうが有意に低血糖が多かった。また2次複合エンドポイント(1次複合エンドポイントの項目に加えて狭心症・心不全・血行再建術による入院を含めたもの)も両群で有意差はつかなかったが、その中の1項目である心不全による入院は、サキサグリプチン群がプラセボ群に比してハザード比1.19(p=0.007)と有意に増える結果となった。おわりにこのように、現時点では既述のように発症から比較的早い段階から介入することで、後年の心血管イベントや死亡を減らせることは証明されているものの、発症から年余を経た糖尿病患者に対する介入試験で、1次エンドポイントとしての心血管イベントを抑制することを証明した臨床試験は存在しない。DPP-4阻害薬を用いた2つの臨床試験は、優越性の証明が主目的ではなかったものの、心不全による入院の増加の可能性を示唆するものであった(IDF2013では、EXAMINE試験において心不全は増加傾向で、SAVOR-TIMI53試験とEXAMINE試験の2つの試験のメタ解析の結果でも有意に心不全が増えると報告された)。今後、DPP-4阻害薬を用いた大規模臨床試験の結果が明らかにされる予定であり(表2)、この点も興味が持たれる。表2 DPP-4阻害薬は糖尿病患者の予後を変えることができるか?現在進行中の心血管イベントを1次エンドポイントとした大規模臨床試験画像を拡大する文献1)http://www.idf.org/diabetesatlas2)曽根博仁. JDCS 平成21年度総括研究報告書.3)The DCCT Research Group. The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 1993; 329: 977-986.4)Stratton IM et al. Association of glycaemia with macrovascular and microvascular complications of type 2 diabetes (UKPDS 35): prospective observational study. BMJ 2000; 321: 405-412.5)ACCORD Study Group. Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.6)ADVANCE Collaborative Group. Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2560-2572.7)VADT Investigators. Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes. N Engl J Med 2009; 360: 129-139.8)Inzucchi SE et al. Management of hyperglycemia in type 2 diabetes: A patient-centered approach. Diabetes Care 2012; 35: 1364-1379.9)DCCT/EDIC Study Research Group. Intensive diabetes treatment and cardiovascular disease in patients with type 1 diabetes. N Engl J Med 2005; 353: 2643-2653.10)Holman RR et al. 10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 359: 1577-1589.11)STOP-NIDDM Trail Research Group. Acarbose for prevention of type2 diabetes mellitus: the STOPNIDDM randomized trial. Lancet 2002; 359: 2072-2077.12)The NAVIGATOR Study Group. Effect of nateglinide on the incidence of diabetes and cardiovascular events. N Engl J Med 2010; 362: 1463-1476.13)Raz I et al. Effects of prandial versus fasting glycemia on cardiovascular outcomes in type 2 diabetes: the HEART2D trial. Diabetes Care 2009; 32: 381-386.14)Nissen SE and Wolski K. Effect of rosiglitazone on the risk of myocardial infarction and death from cardiovascular causes. N Engl J Med 2007; 356: 2457-2471.15)White WB et al. Alogliptin after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med 2013; 369: 1327-1335.16)Scirica BM et al. Saxagliptin and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med 2013; 369: 1317-1326.

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いま一度、ハロペリドールを評価する

 ハロペリドールは世界中で最も高頻度に使用されている抗精神病薬の1つである。過去の解説的(narrative)非システマティックレビューにより、さまざまな第一世代(従来型、定型)抗精神病薬との間に有効性の差がないと報告され、それに基づき「各種第一世代抗精神病薬の有効性は同等である」という根拠のない精神薬理学的な仮説が確立され、テキストや治療ガイドラインに組み込まれている。しかし一方で、仮説は臨床で受ける印象と相反する面があり、質の高いシステマティックレビューの実施が強く求められていた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMarkus Dold氏らは、ハロペリドールの有効性、受容性、忍容性を他の第一世代抗精神病薬と比較するため、メタ解析を実施した。その結果、ハロペリドールにおいてアカシジアの発現が少なかったことを除き、統計学的な有意差は確認されなかった。ただし、「解析対象となった臨床試験はサンプルサイズが小さく、方法論的に質が低いものであった。明確な結論を得るには質の高い臨床試験が必要である」と指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2015年1月16日号の掲載報告。 本検討では、2011年10月、2012年7月に、CINAHL、BIOSIS、AMED、EMBASE、PubMed、MEDLINE、PsycINFOなどの標準的なデータベースに基づいてCochrane Schizophrenia Group's Trials Registerおよび臨床試験登録を検索。より関連の深い出版物を特定するため、該当する全試験の参考文献を選別し、ハロペリドールを販売している製薬会社に問い合わせ、より関連の深い試験や特定された研究における欠測データに関する情報を取得した。さらに、欠測データを調べるため全対象試験の筆頭著者に連絡を取った。検索対象は、統合失調症および統合失調症様精神病に対し、経口ハロペリドールと他の経口第一世代抗精神病薬(低力価の抗精神病薬、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペラジン、プロクロルプロマジン、チオリダジンを除く)を比較したすべての無作為化対照試験(RCT)とした。主要アウトカムは、治療に対する臨床的に重要な反応とした。副次的アウトカムは全身状態、精神状態、行動、全体的受容性(理由を問わず、早期に試験を脱落した被験者の人数により判定)、全体的有効性(治療無効による症例減少で判定)、全体的忍容性(有害事象による症例減少で判定)、特異的な有害事象とした。 主な結果は以下の通り。・63件のRCT、被験者3,675例がシステマティックレビューに組み込まれた。・ハロペリドールの比較薬として多かったのは、ブロムペリドール(9例)、ロキサピン(7例)、トリフロペラジン(6例)であった。・対象となった試験は1962~1993年に公表されたもので、サンプルサイズが小さく(平均被験者数58例、範囲:18~206例)、事前に規定されたアウトカムの報告が不完全なものが多数あった。・主要アウトカムの結果はすべて、質が非常に低い、あるいは質の低いデータに基づくものであった。・多くの試験において、ランダム化、割り付け、盲検化の手順が報告されていなかった。・短期試験(12週以内)において、ハロペリドールと他の第一世代抗精神病薬群との間に、主要アウトカム(治療に対する臨床的に重要な反応)に関する差は認められなかった(40件、2,132例、RR:0.93、CI:0.87~1.00)。・中期試験において、ハロペリドールの有効性は他の第一世代抗精神病薬群に比べ小さいものであったが、このエビデンスは1件の試験に基づくものであった(1件、80例、RR:0.51、CI:0.37~0.69)。・エビデンスは限られていたが、ハロペリドールは他の抗精神病薬に比べ陽性症状を軽減した。・全身状態、他の精神状態アウトカム、行動、理由を問わない試験からの早期脱落、無効による早期脱落、有害事象による早期脱落において群間差は認められなかった。・唯一認められた統計学的有意差は特異的な副作用で、ハロペリドールは中期試験においてアカシジアの発現が少なかった。・メタ解析による結果は、第一世代抗精神病薬と同等の有効性を示唆してきた過去の解説的な非システマティックレビューの見解を支持するものであった。・有効性関連のアウトカムにおいて、ハロペリドールと他の効果の高い第一世代抗精神病薬との間の差異を示す明らかなエビデンスはなかった。・ハロペリドールのリスクプロファイルは他の第一世代抗精神病薬と同様であった。関連医療ニュース 鎮静目的のハロペリドール単独使用のエビデンスは蓄積されたのか 急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は ブロナンセリンの薬理学的メカニズムを再考する  担当者へのご意見箱はこちら

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膝OAに陸上運動療法は有効

 オーストラリア・シドニー大学のMarlene Fransen氏らによるシステマティックレビューの結果、陸上での運動療法は変形性膝関節症(膝OA)の疼痛軽減および身体機能改善に有用であり、その効果は治療終了時だけではなく、終了後2~6ヵ月まで持続することが示唆された。膝OAの治療において、運動療法は主要な非薬理学的介入の1つであり国際的なガイドラインで推奨されている。レビューの結果を踏まえて著者は、「陸上での運動療法の治療効果は中等度で比較的短期であるが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に関して報告されている結果と同程度と思われる」と結論付けた。なお「本レビューの知見が今後の研究で変わることはないと確信しているため、盲検試験は多くないがエビデンスの質は低いとはしなかった」と補足している。Cochrane Database of Systematic Reviews誌オンライン版2015年1月9日号の掲載報告。 研究グループは、5つのデータベースを用いて2013年5月までの論文などを検索し、膝OA患者において、水中ではなく陸上で行われる運動療法と非運動療法または非治療を比較したすべての無作為化試験(RCT)を選択した。 評価項目は膝痛、身体機能およびQOLで、2人のレビュアーからなる3つのチームが独立してデータの抽出、バイアスリスクの評価、エビデンスの質(GRADE)の評価を行った。 主な結果は以下の通り。・レビューには54試験が組み込まれた。・全体としてバイアスリスクは低いと思われたが、患者も盲検化されたRCTは4件のみで、多くのRCTは評価者盲検であったにもかかわらず、疼痛、身体機能およびQOLは患者の自己申告であった。・陸上運動療法は、治療終了時に疼痛を軽減することが認められた(標準化平均差[SMD]:-0.49、95%信頼区間[CI]:-0.39~-0.59)(RCT:44件、3,537例、エビデンスの質:高)。疼痛スコア(0[疼痛なし]~100ポイント)の推定値は対照群が44ポイントで、陸上運動療法群は12ポイント(95%CI:10~15)低かった。・陸上運動療法は、治療終了時に身体機能を改善することが認められた(SMD:-0.52、95%CI:-0.39~-0.64)(RCT:44件、3,913例、エビデンスの質:中)。身体機能スコア(0[機能消失なし]~100ポイント)の推定値は対照群が38ポイントで、陸上運動療法群は10ポイント(95%CI:8~13)低く改善が認められた。・陸上運動療法は、治療終了時にQOLを改善することも認められた(SMD:0.28、95%CI 0.15~0.40)(RCT:13件、1,073例、エビデンスの質:高)。QOLスコア(0~100[最良])の推定値は対照群が43ポイントで、陸上運動療法群は4ポイント(95%CI:2~5)の改善が認められた。・治療の脱落は、両群とも同程度であった(RCT:45件、4,607例、エビデンスの質:高)。脱落率は対照群15%、陸上運動療法群14%で有意差はなかった(オッズ比:0.93、95%CI:0.75~1.15)。・治療終了2~6ヵ月後のデータが、膝痛に関して12件(1,468例)、身体機能に関して10件(1,279例)あり、持続的な治療効果が示された。・疼痛は6ポイント低減(SMD:-0.24、95%CI:-0.35~-0.14)、身体機能は3ポイント改善(同:-0.15、-0.26~-0.04)であった。・個別の運動プログラム提供のほうが、グループ運動や在宅運動より、疼痛軽減および身体機能改善が大きい傾向がみられた。

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