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飛行機内でインスリンポンプに軽微な影響が生じる可能性

 インスリンポンプを装着して飛行機に乗ると、上昇中と降下中に、血糖値にわずかな変化が生じる可能性のあることが報告された。ただし、その影響は医学的な問題を引き起こすほどのものとは考えにくいという。英サリー大学のKa Siu Fan氏らによる研究の結果であり、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。 インスリンポンプは、インスリンを連続的に自動投与する機器で、主に1型糖尿病の治療に用いられている。急激な気圧の変動が生じた場合、機器の内部に気泡が発生し、インスリン注入速度に微妙な影響を及ぼす可能性がある。Fan氏らはその影響を、飛行中の機内の気圧変化を模したチャンバー(密閉された部屋)を用いて検討した。 3種類、計26台のインスリンポンプをチャンバー内に入れ、まず20分かけて高度8,000フィート(約2,440m)に相当する550mmHgまで減圧。その後、30分間は巡航状態としてそのまま維持し、続いて20分かけて海面高度の気圧に近い750mmHgまで加圧した。この間、インスリン注入速度は1時間当たり0.6単位に設定した。データを解析した結果、20分間の減圧(飛行機では上昇に相当)中に、インスリンは設定した用量より平均0.60単位過剰に注入されていた。一方、加圧(降下)中には、設定した用量より平均0.51単位不足していた。 Fan氏は、「飛行機が上昇中は気圧の低下により、ポンプ内部に気泡が発生してカートリッジから設定よりも多いインスリンが注入されるため、インスリン注入量がわずかに増加することがあり得る。反対に飛行機が降下中は気圧の上昇により気泡が消失して、インスリンがポンプ内部に吸い戻されるため、インスリン注入量がわずかではあるが減少することがあり得る。インスリンポンプを使用している人は、飛行機内の気圧の変化がインスリン注入量に影響を及ぼす潜在的な可能性のあることを知っておいた方が良いだろう」と述べている。 同氏らは、今回の研究で示された影響の程度は、健康上の問題を引き起こすほどではなかったとしている。しかし、より高い高度へ短時間で上昇するようなことが起きた場合、機内の急激な減圧によって深刻な問題が発生する可能性はゼロではないという。具体的には、インスリンが過剰に注入されて血糖値が大きく低下し、低血糖が生じるリスクが想定されるとしている。ただしそのような事態に対しては、消化吸収の速い糖質を摂取するという一般的な方法で対処可能だ。 Fan氏によると、「飛行中の気圧変化によるインスリン注入量の変化が血糖値に及ぼす影響は、個々の患者のインスリン感受性、血糖管理状態、搭乗前に食べた食事によってそれぞれ異なる」とのことだ。また、「血糖値への意図しない影響を防ぐために、インスリンポンプを使用している患者は、離陸前にポンプを一時的に外しておき、巡航高度に達したら、気泡の有無の確認および除去をした上で再装着すると良い」としている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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新規2型DM、短期強化インスリン後リナグリプチン+メトホルミンが有用/BMJ

 新たに2型糖尿病と診断されたHbA1c値8.5%以上の患者において、短期強化インスリン療法(SIIT)後に経口療法(とくにリナグリプチンとメトホルミンの併用)を用いるという強力かつ簡便な戦略は、持続的な血糖コントロールをもたらし、β細胞機能を改善することが示された。中国・中山大学第一付属病院のLiehua Liu氏らが、中国の15施設で実施した無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「この治療戦略は、2型糖尿病の臨床管理における意思決定に有望な方向性を示すものである」とまとめている。BMJ誌2024年10月15日号掲載の報告。SIIT後、リナグリプチン、メトホルミン、両者併用を生活習慣改善指導のみと比較 研究グループは、新たに2型糖尿病と診断され、年齢20~70歳、血糖降下薬の投与歴なし、糖尿病に関する医師の助言や介入を受けたことがない、BMI値22.0~35.0、空腹時血糖値7.0~16.7mmol/L、スクリーニング時のHbA1c値8.5%以上の患者を、リナグリプチン(5mg/日)+メトホルミン(1,000mg/日)併用群、リナグリプチン(5mg/日)群、メトホルミン(1,000mg/日)群、対照群(生活習慣の改善指導のみ)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化された全例が、2~3週間の持続皮下インスリン注入法によるSIITの後、割り付けに従って48週間の治療を受けた。 主要アウトカムは、SIIT後48週時のHbA1c値<7.0%を達成した患者の割合。副次アウトカムは、HbA1c値<6.5%を達成した患者の割合、ベースラインからのHbA1c値、空腹時および食後2時間血糖値、β細胞機能指数、インスリン感受性指数の変化などであった。48週時のHbA1c値<7.0%達成、SIIT+リナグリプチン+メトホルミン併用群80% 2017年12月~2020年12月に464例がスクリーニングを受け、412例が無作為化された。患者背景(平均値±SD)は、年齢46.8±11.2歳、BMI値25.8±2.9、HbA1c値11.0±1.9%であった。SIIT後に来院しなかった39例を除く373例が有効性解析対象集団に組み入れられた。 48週時にHbA1c値<7.0%を達成した患者の割合は、対照群60%(56/93)に対し、リナグリプチン+メトホルミン併用群80%(78/97例)(p=0.003)、リナグリプチン群72%(63/88例)(p=0.12)、メトホルミン群73%(69/95例)(p=0.09)であった(実薬3群全体のp=0.02、いずれもχ2検定による)。 また、48週時にHbA1c値<6.5%を達成した患者の割合は、対照群48%(45/93例)に対して、リナグリプチン+メトホルミン併用群70%(68/97)(p=0.005)、リナグリプチン群68%(60/88)(p=0.01)、メトホルミン群68%(65/95)(p=0.008)であった(実薬3群全体のp=0.005、いずれもχ2検定による)。 ロジスティック解析の結果、対照群との比較において、リナグリプチン+メトホルミン併用群が48週時にHbA1c値<7.0%を達成する可能性が高いことが示された(オッズ比:2.78、95%信頼区間:1.37~5.65、p=0.005)。また、リナグリプチン+メトホルミン併用群では、空腹時血糖値およびβ細胞機能指数が最も顕著に改善した。 忍容性はすべての治療群で良好であった。

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週1回注射のインスリンは低血糖の出現に注意を (解説:小川大輔氏)

 1型糖尿病患者を対象とした週1回の基礎インスリン(insulin efsitora alfa)の第III相試験の結果が発表された1)。1日1回の基礎インスリンインスリン デグルデク)と比較し、有効性と安全性を比較した結果、有効性については非劣性が確認されたが、安全性については重篤な低血糖が多いと報告された。 成人1型糖尿病患者692例を、基礎インスリンとしてinsulin efsitora alfaを投与する群(efsitora群)とインスリン デグルデクを投与する群(デグルデク群)に無作為に割り付け、追加インスリンとしてインスリン リスプロを両群とも併用投与した。その結果、ベースラインから26週目までのHbA1cの変化量は両群に差がなく非劣性が確認された。別の言い方をすればefsitora群に優越性は認められなかったということになる。 一方、有害事象である低血糖のエピソードについてはefsitora群がデグルデク群に比べて有意に多いという結果であった。とくにレベル2(血糖値<54mg/dL)の低血糖と、レベル3(他者の支援を必要とする状態)の重症低血糖を合わせた発生頻度は、efsitora群のほうが有意に高かった。また夜間の低血糖には差がなく、非夜間の低血糖がefsitora群でとくに多く認められた。 別の週1回投与の基礎インスリンであるインスリン イコデクの試験でも、インスリン デグルデクと比較し非劣性が示され、重症低血糖の発生頻度はイコデクのほうが有意に多く認められた2)。試験の対象やプロトコールは異なるが、週1回投与のイコデク、efsitoraの両者とも1日1回投与の基礎インスリンより重症低血糖が多く認められたという事実は重く受け止めなければならない。 週1回注射のインスリンは、インスリン治療を行っている糖尿病患者の注射回数を減らすことができ、さらに負担を軽減することができると期待されている。今回の試験で、efsitoraはデグルデクと比較し有効性については劣らないことが示された。その一方で低血糖、とくに重症低血糖が多く認められた点については留意する必要があるだろう。6ヵ国82の専門施設で行われているので、インスリンの調節が不適切であったとは考えにくい。今後efsitoraの投与方法や用量調節についてはさらに検討する必要がある。また低血糖は主に昼間に多く出現しており、持続血糖モニターをより活用する必要があるだろう。 1日1回から週1回投与のインスリンに切り替えることで、1型糖尿病の血糖コントロールが改善するわけではなく、重症低血糖の頻度はむしろ増えることが示された。私自身は週1回の基礎インスリンが登場することを楽しみにしているが、「注射回数が減り楽になる、便利になる」というだけで、安易に週1回投与のインスリンに切り替えることは慎みたいと考えている。

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座位時間を毎日1時間減らすと腰痛の悪化は防げるか

 ソファや椅子に座って過ごす時間を短くすることは、腰痛の悪化を防ぐ効果的な方法であるかもしれない。腰痛リスクのある人が6カ月間、毎日わずかでも座位時間を減らすことで、腰痛の悪化を抑えられる可能性を示唆した研究結果が報告された。論文の筆頭著者であるトゥルク大学(フィンランド)のJooa Norha氏は、「腰痛や座位時間が長過ぎる傾向があり、腰の健康が心配な人は、仕事中や余暇中の座位時間を減らす方法を考えてみるとよいだろう」と助言している。研究結果の詳細は、「BMJ Open」に9月28日掲載された。 Norha氏らによると、座位時間の長さが背中の健康と腰痛に与える影響については、あまり研究されていないという。この点を明らかにするために、今回の研究で同氏らは、過体重または肥満でメタボリックシンドロームを有する40〜65歳の成人64人を対象に、6カ月にわたる座位時間を減少させる介入が腰痛と腰痛関連の障害、傍脊柱筋(脊柱起立筋と横突棘筋)のインスリン感受性(グルコース取り込み)および脂肪含有率に及ぼす影響を調べた。対象者のうち、33人は座位時間を毎日1時間減らすことを目指す群(介入群)、残る31人は通常通りに過ごす群(対照群)にランダムに割り付けられた。 その結果、対照群では介入群に比べて腰痛の強度は有意に増加していたが、介入群では変化が認められなかった。また、試験期間中に、痛みに関連する障害は両群で増加していた。しかし、痛みに関連する障害、オスヴェストリー能力指数(Oswestry Disability Index;ODI、腰痛・下肢痛による日常生活動作への影響を測定する尺度)、脊柱起立筋のグルコース取り込みおよび脂肪含有率の変化に関しては、有意な群間差は認められなかった。 Norha氏はこれらの結果について、「驚きはなかった」と話す。同氏は、「本研究の対象者は、座位時間が長く、運動をほとんど行わない、やや体重の増えたごく普通の中年成人だった。これらの要因は、心血管疾患のリスクだけでなく腰痛リスクも高める」と話す。 ただし、活動量を増やすことで腰痛が抑制されるメカニズムは明らかにされていない。本研究では、対象者の背筋のMRI検査が実施されたが、「腰痛の変化と、背筋の脂肪量や糖代謝の変化との間に関連は認められなかった」とNorha氏は説明している。 Norha氏は、腰痛持ちの人に対して運動を行うことを勧めている。同氏は、「ただ立っているだけよりも、歩行やより活発な運動などの身体活動の方が効果的であることに留意することが重要だ」とトゥルク大学のニュースリリースで述べている。

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第237回 血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発

血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発血中のブドウ糖濃度(血糖値)に応じて自ずと働くか休む賢いインスリンをNovo Nordiskの研究チームが開発し、低血糖を引き起こすことなく血糖値をほどよく下げうることがブタへの投与実験で確認されました1)。低血糖は糖尿病のイスリン治療の難題の1つです。ひとたび投与したインスリンはたとえ血糖値が正常化しても働き続け、血糖値を危険水準まで下げてしまう恐れがあります。それゆえインスリン投与量は血糖値を正常域にする範囲を超えないように調節する必要があります。しかし絶えず変化する血糖値にインスリン用量を合わせるのは難儀で、必要量よりちょっとばかり多めに投与しただけで低血糖が生じる恐れがあります。低血糖は軽~中等度でも不安、脱力、混乱などを招き、ひどければ意識消失や発作などの重症症状を引き起こし、最悪の場合死に至りさえします。低血糖を避けるために多くの糖尿病患者はインスリン用量を控えめにします。そうすると今度は血糖値が十分に下がらず、高血糖が続くことに起因する合併症が生じ易くなります。“素”のインスリンを使うのではなく、血糖値の変化に応じる仕組みを備えたインスリン治療なら低血糖の心配なく血糖値をよい頃合いに保てそうです。そのような付加価値付きのインスリンを作る試みは結構長い歴史があり、1970年代から続いています1)。血糖値上昇に応じてインスリンを放出する皮下投与ポリマーの開発がそういう取り組みのこれまでの主流でした。しかし糖が皮下に行き着くまでや皮下から血中へのインスリンの到達はより時間を要し、時宜にかなわないという欠点があります。それに、インスリンは皮下から一方的に放出されるのみで、ひとたび放出されたインスリンはもはや糖に応じることはなく働き続けるのみです。そこでNovo Nordiskはインスリンの放出をどうにかするのではなく、ブドウ糖に反応する仕組みを備えた賢いインスリンの開発に取り組み、その有望な成果を先週16日のNature誌の報告で披露しました。Novo Nordiskが開発した賢いインスリンはNNC2215と呼ばれ、血糖値に応じて働くか休むかが切り替わります。その切り替え機能はインスリン本体の両端についた2つの分子が担います。その1つはブドウ糖から生じる分子・グルコシドです。もう1つは大環状分子(macrocycle)で、その名のとおりいわばドーナツに似た環状構造をしています。血糖値が低いとグルコシドが大環状分子に収まってインスリンを不活性な状態に保ちます。一方、血糖値が高いとグルコシドではなくブドウ糖が大環状分子に収まり、インスリンは開放状態となって働けるようになります。ブタやラットで調べたところNNC2215の血糖値を下げる効果が認められました。特筆すべきことにブタへの投与実験では目下のインスリン治療で生じるような低血糖をどうやら生じずに済むらしいことが示されました。ただし、検討されたのは糖尿病患者の典型的な血糖値より広いブドウ糖濃度範囲でのNNC2215の活性です2)。今後の課題としてより狭い濃度範囲でのNNC2215の働きを調べる必要があります。また、安全性の検討も必要ですし、実用化されたとしてどれくらいの値段になるかも気になるところです。NNC2215の想定どおりの働きが示されて一安心とはいえまだ先は長く、Novo NordiskはNNC2215の最適化に取り組んでいます2)。参考1)Hoeg-Jensen T, et al. Nature. 2024 October 16. [Epub ahead of print]2)Smart insulin switches itself off in response to low blood sugar / Nature

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ヘム鉄摂取が2型糖尿病のリスクを高める

 ヘム鉄の摂取が2型糖尿病のリスク増大と関連しているとする研究結果が、「Nature Metabolism」に8月13日掲載された。米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のFenglei Wang氏らの研究によるもの。未加工の赤肉を好む食事パターンが2型糖尿病のリスクを高めるとされているが、その関連性の多くは、ヘム鉄の過剰摂取で説明可能と考えられるという。 これまでにも、食事からのヘム鉄の摂取が2型糖尿病のリスク増大と関連していることが示唆されてきているが、血液バイオマーカーなどを絡めた検討は十分に行われていない。Wang氏らはこの点について、米国内で実施されている観察期間が最長36年間におよぶ3件の大規模コホート研究のデータを用いた検討を行った。 解析対象者数は計20万4,615人で女性が79%であり、この対象全員のデータから、鉄(ヘム鉄と非ヘム鉄)の摂取量と2型糖尿病リスクとの関連が調査された。また、この対象のうち3万7,544人(女性82%)のサブセットでは血漿代謝バイオマーカー、9,024人(同84%)のサブセットではメタボロームプロファイルの評価も施行した。 解析の結果、ヘム鉄の摂取量が多いことと2型糖尿病リスクとの間に有意な正の関連が認められた(摂取量の最高五分位群と最低五分位群を比較した多変量調整ハザード比が1.26〔95%信頼区間1.20~1.33〕、傾向性P<0.001)。その一方、非ヘム鉄の摂取量については、2型糖尿病リスクとの有意な関連が見られなかった。 この研究では、未加工の赤肉を多く摂取するといった特定の食事パターンに関連する2型糖尿病リスク増大のかなりの部分を、ヘム鉄の摂取量の多さで説明できる可能性も示された。また血漿代謝バイオマーカーなどとの関連の解析から、ヘム鉄摂取量が多いことと、高インスリン血症や炎症、脂質代謝異常などの2型糖尿病リスクに関連する好ましくない血漿プロファイルとの相関が認められた。ヘム鉄と2型糖尿病との関連を媒介する可能性がある代謝物としては、L-バリンや尿酸などが特定され、これらが2型糖尿病の病因に大きな影響を及ぼしている可能性が考えられた。 著者らは、「われわれの研究結果は、2型糖尿病予防のためのガイドライン策定に際して、ヘム鉄を多く含む食品、特に赤肉を毎日摂取するような食事パターンの制限を推奨すべきであることを意味しており、公衆衛生上の重要な意味を持っている」と述べている。また、「植物性食品由来の代替肉に、風味の調整などのためにヘム鉄を添加することに関しても懸念がある」と付け加えている。 なお、1人の著者が、Vinasoy社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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第236回 GLP-1薬セマグルチドは運動意欲を減らすらしい

GLP-1薬セマグルチドは運動意欲を減らすらしいマウスはよく走ります。回転車を与えると活動期である夜に10~12kmも毎日走ります1)。しかし糖尿病や肥満症の治療薬・オゼンピックやウゴービの成分であるセマグルチドをマウスに与えるとどうやら走る意欲が減るようで、プラセボ群の半分ほどしか走らなくなりました2)。セマグルチドのようなGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)は今や信仰にも似たよすがとなっており、医療情報を提供するKFFが今年5月に結果を発表した調査では、米国の成人の実におよそ8人に1人(12%)がGLP-1薬を使ったことがあると回答しました3)。また、およそ17人に1人(6%)は使用中でした。セマグルチドはインスリン生成を促し、胃が空になるのを遅らせ、満腹感がより長続きするようにするGLP-1に似た働きを担います。過去20年ものあいだ調べられてきたGLP-1の代謝調節の仕組みはかなり詳しく判明しています。一方、最近になってGLP-1の代謝調節領域を超えたより広範な働きや脳への作用が明らかになりつつあります。そのような秘めたGLP-1の働きのいくつかが今月初めの米国・シカゴでの神経科学会(Society for Neuroscience)年次総会(Neuroscience 2024)で発表されました。セマグルチドがマウスの走る意欲をどうやら減退させることを示したイエール大学の上述の研究成果はその1つです。GLP-1の作用は食べ物、アルコール、コカイン、ニコチンと関連する快楽のほどを変えます。ネズミにGLP-1やその模倣薬を与えるとそれらの摂取意欲が下がることが示されています。セマグルチドを使う人の食べる楽しみが使い始める前ほどではなくなるのは、同剤が快楽や渇望に携わる脳領域の活性を抑えることに起因するようです。また、その働きのおかげでセマグルチドが薬物依存の治療の助けになりうることも示唆されています。イエール大学のRalph DiLeone氏らは運動などの気持ちよくなる行動にもセマグルチドの影響が及ぶかもしれないと考えました4)。そこで、根っからの運動好きで、それがどうやら楽しいらしいマウスを使ってセマグルチドの運動意欲への影響が調べられました。DiLeone氏らは14匹のマウスの半数7匹にセマグルチド、もう半数の7匹にはプラセボを1週間投与しました。それらマウスが回転車で毎日どれだけ走るかを調べたところ、セマグルチド投与群の走る距離は同剤投与前に比べて4割ほど(37.9%)減っていました2)。一方、プラセボ投与群ではそのようなことはなく、どうやらセマグルチドはマウスの走る意欲を減衰させたようです。続いて実際に走る意欲が低下しているのかが別のマウスを使って調べられました。その検討ではマウスが走っている最中に回転車がときどき強制停止(ロック)されます。マウスは鼻でレバーを押すこと(押下)でそのロックを解除することができます。ロックはその回数が多くなるほどレバーをより多く押下しないと解除できないようになっており、最終的にマウスはロックの解除を諦めます。諦めた時点でのレバー押下回数は回転車を走る意欲がどれだけ高いかを反映する指標となります。5日間のセマグルチド投与期間中のマウスのレバー最大押下回数はプラセボ投与群に比べて平均25%少なく、肥満マウスを使った検討でも同様の結果となりました4)。すなわちセマグルチドは食べ物や薬物への渇望を減らすのと同様に運動意欲も減らすようです。ヒトでの同様の作用は示されていません。オゼンピックやウゴービのヒトのデータのほとんどが運動を含む他の手当てを伴ったものであることがその理由かもしれません。とはいえ、セマグルチドのようなGLP-1薬が負の行動のみならず有益な振る舞いも妨げてしまう恐れがあることを今回の結果は示唆しています。Neuroscience 2024では他にもセマグルチドやGLP-1の類いの興味深い中枢神経系(CNS)作用の報告がありました。韓国のGachon Universityの研究者らはGLP-1受容体に結合するアンタゴニストexendin 9-39の断片の1つexendin 20-29の痛み緩和作用を示したマウス実験結果を報告しています5)。その研究ではexendin 20-29が痛み信号の伝達に携わる受容体TRPV1に結合し、GLP-1受容体機能には手出しすることなく痛みを緩和することが示されました。また、フランスの研究受託会社Neurofitのチームはセマグルチドのアルツハイマー病治療効果を示すマウスやラットの実験結果を報告しています6)。その効果の検討は臨床試験でも大詰め段階に入っており、Novo Nordisk社は初期アルツハイマー病患者へのセマグルチドの第III相試験2つ・EVOKE7)とEVOKE Plus8)を2021年に開始しています。結果は来年判明する見込みです9)。参考1)The Unexplored Effects of Weight-Loss Drugs on the Brain / TheScientist2)Semaglutide administration reduces free running as well as motivation for wheel access as measured by progressive ratio in mice / Neuroscience 20243)KFF Health Tracking Poll May 2024: The Public’s Use and Views of GLP-1 Drugs / KFF4)Weight-loss drugs lower impulse to eat - and perhaps to exercise too / NewScientist5)Glp-1 and its derived peptides mediate pain relief through direct trpv1 inhibition without affecting thermoregulation / Neuroscience 2024 6)Semaglutide's cognitive rescue: insights from rat and mouse models of alzheimer's disease / Neuroscience 20247)A Research Study Investigating Semaglutide in People With Early Alzheimer's Disease (EVOKE)8)A Research Study Investigating Semaglutide in People With Early Alzheimer's Disease (EVOKE Plus) 9)Atri A, et al. Alzheimers Dement. 2022;18:e06415.

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1型糖尿病への週1回efsitora、HbA1cの改善でデグルデクに非劣性/Lancet

 成人1型糖尿病患者における糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の改善に関して、insulin efsitora alfa(efsitora)の週1回投与はインスリン デグルデク(デグルデク)の1日1回投与に対し非劣性を示すものの、レベル2と3を合わせた低血糖とレベル3の重症低血糖の発生率が高いことが、米国・HealthPartners InstituteのRichard M. Bergenstal氏らが実施した「QWINT-5試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年9月21日号に掲載された。国際的な第III相無作為化非劣性試験 QWINT-5試験は、6ヵ国(アルゼンチン、日本、ポーランド、スロバキア、台湾、米国)の82施設で実施した52週間の第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2022年8月~2024年5月に参加者を登録した(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 HbA1c値が7.0~10.0%(53.0~85.8mmol/mol)の成人(年齢18歳以上)1型糖尿病で、スクリーニング前の少なくとも90日間、基礎および追加インスリンの1日複数回注射療法による治療歴を有する患者を対象とした。被験者を、基礎インスリンとしてefsitora(500単位/mL)またはデグルデク(100単位/mL)を皮下投与する群に無作為に割り付けた。両群とも追加インスリンとしてインスリン リスプロを併用投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから26週目までのHbA1c値の変化量とし、非劣性マージンは0.4%に設定した。重症低血糖の64%は最初の12週間に発生 692例を無作為化し、efsitora群に343例(平均年齢44.4歳、女性44%)、デグルデク群に349例(43.6歳、45%)を割り付けた。全例が少なくとも1回の試験薬の投与を受け、efsitora群の314例(92%)とデグルデク群の314例(90%)が予定の試験薬投与を完遂した。 平均HbA1c値は、efsitora群ではベースラインの7.88%から26週目には7.41%へ、デグルデク群では7.94%から7.36%へとそれぞれ低下した。この間の平均変化量は、efsitora群が-0.51%、デグルデク群は-0.56%(推定群間差:0.052%、95%信頼区間[CI]:-0.077~0.181、優越性のp=0.43)であり、非劣性マージン(0.4%)を満たしたことからデグルデク群に対するefsitora群の非劣性を確認した(非劣性のp<0.0001)。 0~52週目におけるレベル2(患者報告による自己測定の血糖値<54mg/dL)の低血糖と、レベル3(低血糖の治療のために他者の支援を必要とする精神的または身体的状態)の重症低血糖を合わせた曝露人年当たりの発生頻度は、デグルデク群が11.59件であったのに対し、efsitora群は14.03件と有意に高かった(推定率比:1.21、95%CI:1.04~1.41、p=0.016)。 また、0~52週目におけるレベル3の重症低血糖の発生率は、デグルデク群に比べefsitora群で高かった(10%[343例中35例で44件のイベント]vs.3%[349例中11例で13件のイベント])。efsitora群では、44件の重症低血糖のうち28件(64%)は試験期間の最初の12週間に発生した。重篤な有害事象が多い、注射部位反応はほとんどが軽度 試験治療下での有害事象は、efsitora群で247例(72%)、デグルデク群で234例(67%)に発生した。重篤な有害事象は、デグルデク群の24例(7%)に比べefsitora群は45例(13%)と発現頻度が高く、これはレベル3の重症低血糖が多かったためと考えられた。デグルデク群で1例が死亡したが、試験治療との関連はなかった。 糖尿病性ケトアシドーシスはデグルデク群で2例(1%)に発現した。注射部位反応は、efsitora群で9例(3%)に12件、デグルデク群で1例(<1%)に1件認め、efsitora群の11件は軽度、1件は中等度だった。注射部位反応による試験治療の中止はなかった。 著者は、「1型糖尿病患者において、efsitoraの週1回投与により低血糖のリスクを軽減しつつ有効性を維持するには、efsitoraの投与開始の評価と、基礎・追加インスリンの投与量の最適化についてさらに検討を進める必要がある」としている。

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インスリン未治療の2型糖尿病、efsitora vs.デグルデク/NEJM

 インスリン治療歴のない2型糖尿病成人患者において、週1回投与のinsulin efsitoraα(efsitora)による治療は1日1回投与のインスリン デグルデク(デグルデク)治療に対して、糖化ヘモグロビン値(HbA1c)の低下に関して非劣性であることが示された。米国・the MultiCare Rockwood Center for Diabetes and EndocrinologyのCarol Wysham氏らQWINT-2 Investigatorsが、10ヵ国121施設で実施した52週間の無作為化非盲検実薬対照並行群間treat-to-target第III相試験「once-weekly [QW] insulin therapy:QWINT-2試験」の結果を報告した。efsitoraは、週1回投与を目的として設計された新しい基礎インスリンで、小規模な第I相ならびに第II相試験において、安全性および有効性はデグルデクと同等であることが示されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月10日号掲載の報告。efsitoraの有効性についてデグルデクに対する非劣性を評価 研究グループは、18歳以上で、インスリン投与歴がなく、スクリーニングの3ヵ月以上前から1~3種類の非インスリン血糖降下薬による治療を受けるもHbA1cが7.0~10.5%で、BMIが45.0以下の2型糖尿病患者を、efsitora群またはデグルデク群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 efsitora群では週1回100単位(初回のみ300単位)を、デグルデク群では1日1回10単位から投与を開始し、空腹時血糖値80~120mg/dLを目標値として用量調整を行った。 主要エンドポイントは、ベースラインから52週までのHbA1cの変化量の非劣性で、efsitoraのデグルデクに対する非劣性マージンは0.4%ポイントとした。 副次エンドポイントは、GLP-1受容体作動薬使用の有無別のサブグループにおけるHbA1cの変化量の非劣性、ベースラインから52週までのHbA1cの変化量の優越性、48~52週の期間における持続血糖モニタリングによる血糖値が目標値70~180mg/dLの範囲内であった時間の割合などであった。 安全性の評価項目には低血糖エピソードなどが含まれた。52週のHbA1c変化量に関してefsitoraはデグルデクに対して非劣性 2022年6月3日~2024年4月10日の間に1,267例がスクリーニングを受け、合計928例(efsitora群466例、デグルデク群462例)が無作為化され、割付治療薬を少なくとも1回投与された。有効性解析集団には、efsitora群463例、デグルデク群458例が含まれた。 平均HbA1cは、efsitora群ではベースライン時8.21%から52週時には6.97%に低下した(最小二乗平均変化量:-1.26%ポイント)。一方、デグルデク群では8.24%から7.05%に低下した(同:-1.17%ポイント)。推定投与群間差は-0.09%ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.22~0.04)であり、efsitoraのデグルデクに対する非劣性は確認されたが、優越性は示されなかった(p=0.19)。 GLP-1受容体作動薬の使用の有無別では、ベースラインから52週までのHbA1cの変化量(最小二乗平均変化量)は、使用患者集団ではefsitora群-1.26%ポイント、デグルデク群-1.19%ポイント、非使用患者集団ではそれぞれ-1.26%ポイント、-1.15%ポイントであり、群間差は-0.06%ポイントと-0.11%ポイントで、非劣性が示された。 血糖値が目標範囲内であった時間の割合は、efsitora群で64.3%、デグルデクで61.2%であった(推定群間差:3.1%ポイント、95%CI:0.1~6.1)。 臨床的に有意または重度の低血糖(レベル2または3)の発現頻度は、efsitora群では0.58件/曝露患者年(participant-year of exposure:PYE)、デグルデク群では0.45件/PYEであった(推定率比:1.30、95%CI:0.94~1.78)。efsitora群では重度の低血糖は報告されなかったが、デグルデク群では6件報告された。有害事象の発現率は、両群間で類似していた。 なお、中国で使用された持続血糖測定器は他国と異なるため、本報告には中国におけるデータは含まれていない。

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日本の野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化リスクを低減

 日本の日常的な食習慣が代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)および肝線維症に及ぼす影響を調査した横断研究の結果、野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化リスクの低減と関連していたことが、弘前大学の笹田 貴史氏らによって明らかになった。Nutrients誌2024年8月28日号掲載の報告。 MASLDの発症・進行には、食習慣が大きく関与している。これまで、日本食、地中海食、西洋食などの国民的食習慣とMASLDの関連について多くの研究がなされているが、国内の同一地域における食習慣の違いがMASLDの発症・進行にどの程度影響するかを疫学的に検討した研究は乏しい。そこで研究グループは、日本の日常的な食習慣がMASLDと肝線維症の予防に有効であるという仮説を立て、日本の農村地域の一般住民におけるMASLDの発症と肝線維症への進行に対する食習慣の影響を調査した。 対象は、青森県弘前市岩木地区の「岩木健康増進プロジェクト」に参加した20歳以上の成人であった。データは2018年5月26日~6月4日に収集された。合計1,056人(20~88歳)が本研究に参加した。脂肪性肝疾患の診断に影響を与える因子を有する参加者は除外された結果、解析には727人が含まれた。参加者は、毎日の食物摂取量に基づいて、米の摂取量が多いグループ(米摂取群)、野菜やキノコ類の摂取量が多いグループ(野菜摂取群)、魚介類の摂取量が多いグループ(魚介類摂取群)、洋菓子やアイスクリームの摂取量が多いグループ(甘味摂取群)に分類された。 主な結果は以下のとおり。・220例がMASLDの診断基準を満たした。4つの食習慣群におけるMASLD患者の割合に有意差はなく、食習慣はMASLDの有意なリスク因子とは特定されなかった。・MASLDと診断された参加者の94例(42.7%)に肝線維化が認められた。・MASLD集団における単変量解析では、野菜摂取群は米摂取群よりも肝線維化が有意に少なかった(野菜摂取群vs.米摂取群のオッズ比[OR]:0.42、95%信頼区間[CI]:0.19~0.92、p=0.030)。米摂取群と魚介類摂取群および甘味摂取群の間に有意差は認められなかった。・多変量解析では、肝線維症のリスク因子として、BMI≧(OR:1.83、95%CI:1.01〜3.32、p=0.047)およびインスリン抵抗性(HOMA-IR)≧(OR:3.18、95%CI:1.74〜5.80、p<0.001)が特定された一方で、野菜摂取群であることは有意な低リスク因子であった(OR:0.38、95%CI:0.16〜0.88、p=0.023)。・肝線維化の抑制に関連する食品および栄養素を調査する多変量解析により、ニンジン、カボチャ、ダイコン、カブが重要な食品であることが判明した。これらの食品をさらに分析したところ、抗酸化作用を有するα-トコフェロールの高摂取が肝線維症の有意な低リスク因子であることが明らかになった(OR:0.74、95%CI:0.56〜0.99、p=0.039)。 研究グループは「これらの知見は、日本の野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化を抑制し、予後を改善する可能性を示唆するものである」とまとめた。

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第205回 ポストコロナ時代、地域医療の存続に向けた病院の新たなアプローチとは?

毎週月曜日に先週にあった行政や学会、地域の医療に関する動きを伝える「まとめる月曜日」。今回は特別編として「すこし未来の地域医療の姿」について井上 雅博氏にご寄稿いただきました。新型コロナが医療・介護にもたらした影響とは今春、6年に1度のタイミングで医療報酬、介護報酬、障害福祉サービスの報酬が同時に改定されました。今回の改定では、医療と介護の連携の必要性を強く求めると同時に、マイナンバーカードの普及により医療情報の利活用を促進し、高血圧、脂質異常症、糖尿病を中心に診療を行っていた医療機関では「療養計画書」の作成などの対応に追われました。改定後、全国の病院関係者からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大時に救急患者の受け入れや転院、退院支援で苦労したのが、第11波の現在では、患者不足で病床が埋まらず、病床稼働率の低下が囁かれるようになったという声が聞かれます。もちろん、COVID-19のワクチン接種による軽症化や治療薬の開発による早期治療開始による早期退院が可能となったことが大きいとは思います。しかし、それ以外の原因として、感染拡大によって定期的な健康診断やがん検診によって発見された手術適応患者の紹介の減少が目立っていることが挙げられます。さらに、後期高齢者の場合、入院しても手術適応とならない方が増えている可能性があります。私が以前勤務していた広島県福山市の脳神経センター大田記念病院では、最新の統計によれば中央値では過去5年間大きな変動はないものの、高齢者層の増加(とくに90歳以上)が報告されています。じわじわと来る診療報酬改定の影響現在、病院が直面している経営課題は、昨年秋以降、コロナ対策の医療機関への病床確保基金などの制度が廃止され、以前の診療報酬体制に戻ったにも関わらず、患者の受診行動が変化してしまい、COVID-19拡大が落ち着いても元通りにならなかったという点です。このため、病床稼働率低下に加え、今春の改定で厳しくなった重症度、医療・看護必要度の対応で、10月からの病床再編や加算の対応に頭を悩ませている病院が多いと思います。さらに、原油高やエネルギー価格高騰に加え、デフレからインフレへの転換による経営環境の変化、人件費の増加といった影響も大きく、経営環境が激変しています。診療報酬改定では医療・介護職員の処遇改善のために賃上げの財源としてベースアップ評価料の算定が可能になりましたが、目新しい加算項目は少なく、サイバーセキュリティの強化など追加支出が求められているため、医療機関にとっては厳しい状況です。また、医療機関で問題となっているのは人手不足です。介護系サービス事業者は、高齢者の増加に備え設備投資を行い、施設を増やしてきましたが、現場に投入する医療・介護人材が必要となるため、医療機関よりも賃上げを先行して実施しており、同じ職種でも介護サービス事業者の賃金が高い状態になっています。さらに都市部では、コロナ禍にサービスを縮小していたホテル、飲食業などのサービス業界での人材不足が深刻化し、異業種との人材獲得競争も厳しくなっています。医療機関に求められる新たな「医療の形」病床稼働率の低下という現状を乗り切るための唯一の解決方法は、患者のニーズに応えることです。しかし、急性期の医療機関は専門医が多く、スペシャリストとして専門診療は得意である一方、後期高齢者のように2つ以上の慢性疾患が併存し、診療の中心となる疾患の設定が難しい「Multimorbidity(多疾患併存)」の場合、診療科ごとに縦割り構造のため、患者をチームで診ていると言いながら、病院内で診療科間の連携が取れていない、かかりつけ医や介護サービス事業者との連携協力が不十分なため、退院後にも内服薬の治療中断や退院前の指導不足による病状の悪化など、同じ患者が何回も入退院を繰り返す例が少なくありません。今後は、高度な急性期の医療機関は変わる必要がありそうです。とくに、在宅医やかかりつけ医との退院前のカンファレンスの開催や紹介状の内容の充実、情報共有の進化が必要ですが、多忙な急性期病院の医師がこれらを行うのは難しいと感じています。現状の解決手段としては、医師事務補助作業者の活用による書類作成の充実、退院サマリーや紹介状の作成業務のクオリティの向上が考えられます。また、今後は電子カルテにAIを導入し、カルテ内容の要約自動化を進めることや連携医療機関とカルテの開示を進めることが求められます。さらに、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟のある医療機関から退院する場合に、退院後のケアを担当する医療、福祉職へのわかりやすい指導(たとえば体重が〇kg以上増えたら早期に専門医に受診、食事や体重が減ったらインスリンは〇単位減量など)が求められると考えます。政府が模索する「新たな地域医療構想」の時代へ厚生労働省は、社会保障制度改革国民会議報告書に基づき、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けて、地域医療構想を策定するよう各都道府県に働きかけてきました。厚労省は地域医療構想を「中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とするもの」と定義しています。現状、2025年を目指していた「地域医療構想」はほぼ完成形に近付いているように思います。高度急性期、急性期、回復期、慢性期の病床区分は、各医療機関の立ち位置を明確にし、担うべき役割と連携協力機関をはっきりさせることで、独立した医療機関が有機的に医療・介護連携を行い、全国の2次医療圏内で完結できるよう基盤整備を進めてきました。厚労省は、今後の日本が迎える「高齢者が増えない中、むしろ労働人口が減少していく」2040年を見据え、今年3月から「新たな地域医療構想等に関する検討会」を立ち上げました。地域によっては高齢化の進行によって外来患者のピークを過ぎた2次医療圏も増えています。これは国際医療福祉大学の高橋 泰教授らが作成した2次医療圏データベースシステムからも明らかになっています。これまで、医師や看護師といった人材リソースを増やすことで充実させてきた医療のあり方が変わる中、その地域でいかに残っていくのかを考える必要があります。そのために、最近読んでいる本を紹介します。今後の病院、クリニック運営を考える際の一助になりましたら幸いです。『病院が地域をデザインする』発行日2024年6月14日発行クロスメディア・パブリッシング発売インプレス定価1,738円(1,580円+税10%)https://book.cm-marketing.jp/books/9784295409861/著者紹介梶原 崇弘氏(医学博士/医療法人弘仁会 理事長/医療法人弘仁会 板倉病院 院長/日本大学医学部消化器外科 臨床准教授/日本在宅療養支援病院連絡協議会 副会長)千葉県の船橋市にある民間病院である板倉病院(一般病床 91床)の取り組みとして、救急医療、予防医療、在宅医療の提供、施設や在宅との連携を通して「地域包括ケア」の展開や患者に求められる医療機関の在り方など先進的な取り組みが、とても参考になります。ぜひ一度、手に取ってみられることをお勧めします。参考1)新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)社会保障制度改革国民会議報告書(同)3)外来医療計画関連資料(同)4)診療報酬改定2024 「トリプル改定」を6つのポイントでわかりやすく解説!(Edenred)5)2次医療圏データベースシステム(Wellness)5)医療の価格どう変化? 生活習慣病、医師と患者の「計画」で改善促す(朝日新聞)

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第204回 医師免許証の手続き、マイナポータルでオンライン化へ/デジタル庁

<先週の動き>1.医師免許証の手続き、マイナポータルでオンライン化へ/デジタル庁2.正常分娩の保険適用に反対意見相次ぐ、産婦人科医会が懸念/厚労省3.外国人患者受け入れ病院で未収金増加、平均50万円に/厚労省4.労基署の勧告受けた市立病院、10億円の未払い残業代支払い困難/宮城県5.神戸徳洲会病院、医療過誤で3件目の認定/兵庫県6.資金不正問題、第三者委員会は理事長の責任を指摘/東京女子医大1.医師免許証の手続き、マイナポータルでオンライン化へ/デジタル庁デジタル庁は、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師の4つの国家資格の事務手続きを2024年8月6日からオンライン化すると発表した。これにより、名前変更手続きやデジタル資格証の取得がオンラインで完結できるようになる。紙の書類や対面での手続きが不要となり、住民票や戸籍謄本の写しの添付も省略でき、登録免許税や手数料のオンライン決済も可能となる。さらに、11月には医師や看護師など27の資格についても事務手続きをオンライン化する予定。2025年3月までには准看護師や栄養士など11の資格も加わり、最終的には計84資格のオンライン化を目指す。国家資格のオンライン化に伴い、デジタル庁は資格管理者が共同利用できる「国家資格等情報連携・活用システム」を開発した。このシステムは住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)や戸籍情報と連携し、マイナポータルのデータとも紐付けられる。これにより、資格保有者はマイナポータルから各種の申請が可能となり、迅速かつ正確に事務手続きを進められるだけでなく、事務処理に伴う負担やコストの削減も見込まれる。資格管理者側にも大きなメリットがあるとされている。河野 太郎デジタル担当相は記者会見で「オンライン化により、資格保有者と資格管理者の双方にメリットを出していきたい」と述べ、積極的なオンライン利用を促した。また、デジタル資格者証も発行される。これはPDF形式でダウンロードができ、電子署名も付与されるため、改ざん検知が可能となる。固有の二次元コードも付与され、スマートフォンなどを使って資格者証の検証も行えるほか、資格者証は、印刷して利用したり、スマートフォンの画面に提示して利用したりすることが想定される。国家資格のオンライン化のスケジュールとしては、まず、8月6日から介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師の4資格が対応開始となり、11月頃には医師、歯科医師、看護師など27の資格がオンライン化される予定。そして、2025年3月頃には准看護師、栄養士など11の資格が追加され、2025年度以降にはさらに多くの資格が順次対応される。参考1)2024年8月6日から4つの国家資格についてオンライン・デジタル化を開始します(デジタル庁)2)国家資格のオンライン申請が8月6日から順次スタート 介護福祉士など4資格から 全84資格で対応予定(ITmedia)3)国家資格の手続きオンライン化へ、介護福祉士など 6日から、マイナポータルで申請可能に(CB news)2.正常分娩の保険適用に反対意見相次ぐ、産婦人科医会が懸念/厚労省厚生労働省とこども家庭庁は、「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を8月1日に開催し、関係学会や団体へのヒアリングを実施した。今回のヒアリングでは、正常分娩(出産)に公的医療保険を適用する案について、日本産婦人科医会や日本産科婦人科学会などから慎重な意見が相次いだ。日本産婦人科医会の前田 津紀夫副会長は、正常分娩に公的保険が適用されると出産育児一時金の支給額50万円(2024年8月現在)を維持するのが難しく、結果的に出産に伴う経済的負担が大きく変わらないと指摘。また、診療報酬のみでは出産費用をカバーできず、医療機関が減収となるため、産科医療機関の減少やアクセスの悪化、サービスや医療安全に必要なコストの削減が進む恐れがあるとした。前田氏は、分娩のプロセスが多様であり、保険適用に向かないと述べ、「少子化対策」の名の下に拙速な制度変更を行うことに反対の立場を示した。これに対し、健康保険組合連合会の佐野 雅宏会長代理は、「課題が多いことは理解しているが、賛成や反対を前提とせずに議論を進めるべき」との意見を述べた。日本産科婦人科学会の亀井 良政常務理事は、正常分娩に保険が適用されることで医療機関が産科から撤退すれば、周産期医療センターに低リスクの出産まで集中し、病床確保や医師増員が困難になることで、周産期医療の安全が崩壊しかねないと懸念を表明。亀井氏は、「緩やかな集約化は受け入れられるが、急速な減少や医療崩壊を招くような保険適用には反対」と述べた。さらに、亀井氏は「出産費用の保険適用は出産数のV字回復につながる特効薬ではなく、むしろ産科医療施設を廃業に追いやる毒薬になる可能性がある」と強い危機感を示した。日本看護協会の井本 寛子常任理事も、出産前後の女性や新生児に迅速に対応できるケア提供体制の強化が必要だと訴えた。このように、正常分娩への保険適用については慎重な意見が多く、拙速な制度変更には反対の声が強まっている。参考1)第2回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」資料(こども庁・厚労省)2)正常分娩への保険適用、拙速な制度変更に反対表明 検討会のヒアリングで日本産婦人科医会(CB news)3)出産費用の保険適用、2026年度導入視野 産科医療に大きな影響も(朝日新聞)4)「政府案 出産費用(正常分娩)の保険適用の導入」に関するアンケート 報告(スペシャリスト・ドクターズ)3.外国人患者受け入れ病院で未収金増加、平均50万円に/厚労省厚生労働省は、2023年9月に外国人患者を受け入れた病院のうち、未収金が発生した病院は516病院で、1病院当たりの未収金総額が平均49.6万円と前年度の2倍以上に増加したことを明らかにした。同省の担当者は「1件当たりの未収金額が高いケースが増えている。突発的な増加の可能性もある」と話している。調査では、外国人患者を受け入れた2,813病院のうち、18.3%が未収金を経験していた。1病院当たりの未収金発生件数は平均3.9件で、1件当たりの未収金額は12万8,497円、中央値は1万1,150円だった。未収金額が最も多かったのは「1万円以下」で954件、「1万~5万円」が522件と続いた。外国人患者の受け入れ実績がある病院のうち、最も多いのは「10人以下」の1,273病院で、「11~50人」が879病院、「51~100人」が247病院だった。さらに、都道府県が選出した「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」608病院中524病院(86.2%)でも受け入れ実績が確認された。外国人患者の診療費については、ほとんどの病院が通常の1点10円で費用請求を行っているが、一部の病院では通訳費用を含む追加コストを考慮し、1点を15円、20円としている場合もある。しかし、多くの病院では請求可能な通訳費用を請求していないのが現状。調査結果を受け、厚労省は外国人患者受け入れのための医療機関向けマニュアルを策定し、未収金発生防止策として、外国人患者が海外旅行保険に加入しているかどうかを事前に確認し、医療費の概算説明を丁寧に行うようアドバイスしている。また、外国人患者受け入れ体制の整備に向けた取り組みを進めている。この未収金問題は、病院経営に大きな影響を与えており、厚労省は引き続き対策を講じ、外国人患者が安心して医療を受けられる体制を目指す。参考1)令和5年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果(厚労省)2)外国人患者の受け入れ、未収金総額は平均50万円 前年度の2倍超に増加 厚労省(CB news)3)依然「外国人患者を受け入れる医療機関の2割弱」で未収金発生、ごく一部だが「月間500万円超」の高額未収となるケースも-厚労省(Gem Med)4.労基署の勧告受けた市立病院、10億円の未払い残業代支払い困難/宮城県宮城県大崎市の大崎市民病院が、医師や看護師ら約1,100人に対し、時間外勤務手当を適正に支給していなかった問題で、古川労働基準監督署から是正勧告を受けた。未払い額は約10.5億円に上るが、病院は約2.3億円しか支払わず、残りの約8億円は経営状況から支払えないとしている。昨年2月に是正勧告を受けた際、病院は基礎賃金に必要な手当を足さずに計算していたため、未払いが発生したことが判明。さらに、時間外労働時間の過少申告も発覚した。労基署は2020年3月にさかのぼって不足額を追加支給するよう求めたが、病院は赤字が続く見込みであり、勧告通りの対応は困難だと判断した。結果として、実際に支給されたのは約10.5億円のうち約2.3億円に止まり、病院は「労基署に相談しながらできる範囲で対応した。10億円は額が大きすぎる。すべて支払うことはできない」と説明した。参考1)市立病院が残業代10億円未払い 労基署が勧告も2億円しか支払わず(朝日新聞)2)令和6年度大崎市病院事業会計予算書(大崎市民病院)5.神戸徳洲会病院、医療過誤で3件目の認定/兵庫県神戸市垂水区の神戸徳洲会病院で発生した患者死亡事故について、同病院が今年1月に心肺停止状態で搬送された90代男性の死亡を医療過誤と認定した。これは同病院で3件目の医療過誤認定となる。今年1月、心肺停止状態で救急搬送された90代男性患者に対して、血圧を上昇させる薬剤の追加投与が遅れたため、患者が死亡した。この事例について病院は「死期を早めた可能性がある」として医療過誤を認定し、遺族に謝罪するとともに、この事例をホームページで公表し、神戸市も報道からの取材に対し認定を認めた。また、遺族への賠償も検討しているという。神戸徳洲会病院では、2023年1~7月にかけて、複数の患者がカテーテル治療後に死亡するなど15件の医療事故が発覚しており、そのうち4件は国の医療事故調査制度に基づく調査対象となっている。これまでに認定された医療過誤は、糖尿病患者へのインスリン投与ミスによる70代男性の死亡、カテーテル治療中に血管を破った90代女性の死亡の2件だった。今回の事例は、国の制度の対象外として病院が個別に検証を行った11件のうちの1件に含まれる。残りの10件については、病院側は過誤の有無に言及せず、遺族への説明を進めている。尾野 亘院長は「患者安全を十分に重視して病院運営を行ってこなかった結果で、深く反省している」とコメントを発表し、改善を誓った。神戸市は、神戸徳洲会病院が適切な治療を提供できなかった問題を受けて、今年2月に医療法に基づく改善命令を出している。また、福田 貢副理事長が6月に行われた有識者会議後に「根本的な原因はない」と発言したが、これは4月に提出された改善計画と矛盾するとして市が抗議。病院側は発言を撤回し、謝罪した。病院側は改善計画書の内容を修正し、根本的な原因として、医師数の不足や組織ガバナンスの機能不全など7項目を追加し、神戸市に再提出した。市は修正版を受理し、今後の対応を見守るとしている。参考1)神戸徳洲会病院が医療ミス3件目認定、90代男性死亡巡り(産経新聞)2)神戸徳洲会、医療過誤3件目を新たに認定…血圧薬補充遅れ直後に死亡(読売新聞)3)血圧上昇させる薬剤投与遅れ死亡 神戸徳洲会病院が新たに医療過誤1件謝罪、賠償を検討(神戸新聞)4)不適切治療で患者死亡の神戸徳洲会病院 法人幹部が報道陣に「根本原因ない」発言、神戸市が抗議(同)6.資金不正問題、第三者委員会は理事長の責任を指摘/東京女子医大東京女子医科大学(東京都新宿区)やその同窓会組織「至誠会」を巡る不透明な資金の流れについて、同大学が設置した第三者委員会(委員長=山上 秀明弁護士)が調査報告書をまとめた。この報告書は、推薦入試での寄付金の考慮や理事長の岩本 絹子氏(77)の「一強体制」による経営の問題を指摘する内容となっている。報告書によると、同大学の推薦入試では、至誠会が持つ推薦枠で生徒を選ぶ際に寄付額が加点要素となっていた。受験生側から至誠会と大学法人への寄付は、面接の直前2ヵ月の期間に集中しており、2019~2022年度の間に受験生側から寄付された総額は3,520万円に達していた。また、寄付金の実績がない受験生が、寄付金を行った受験生に順位で抜かれて推薦を受けられなかった事例や面接の前に寄付を行った事例もあった。さらに、同大学の至誠会から大学に出向していた職員への給与についても、二重払いの疑いが指摘された。この業務委託は、法人の利益を犠牲にし、岩本氏に近い2人の利益を図る行為とされている。また、理事会運営会議の承認を得ずに行われた手続き違反も認定された。第三者委員会は、岩本理事長が異なる意見を持つ職員を排除し、ガバナンス機能を封殺したとし、岩本氏の重大な経営判断の誤りについても言及した。具体的には、小児集中治療室(PICU)の運用停止や小児集中治療医の大量退職を招いたことが挙げられている。また、岩本氏の知人が代表を務める会社とのコンサルティング契約で、不透明な支出があったことも判明している。これらの問題に対して、東京女子医科大学は「組織の改善・改革に全身全霊で取り組む」とのコメントを発表した。また、新たに第三者委員会答申検討委員会を立ち上げ、再発防止策と管理運営体制の再構築を図る計画を示した。文部科学省も、この問題を受けて早急に大学側に説明を求める予定。さらに、国の私立大学への補助金の配分についても見直しが検討される可能性がある。参考1)東京女子医大 同窓会組織めぐる問題 第三者委“抜本的改革を”(NHK)2)東京女子医大、理事長に資金還流か…第三者委員会報告書「金銭に強い執着」(読売新聞 )3)東京女子医大の第三者委、理事長の責任を指摘 報告書を公表(朝日新聞)4)第三者委員会による調査報告書の公表について(東京女子医大)5)第三者委員会の調査報告書を受けての本学の決意と「(仮称)第三者委員会答申検討委員会」の設置について(同)

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統合失調症患者の代謝パラメータに対する非定型抗精神病薬の影響

 3種類の非定型抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾール)のいずれかを服用している患者と健康対照者の空腹時血清アスプロシン濃度と代謝パラメータを比較するため、イラン・Hamadan University of Medical SciencesのKiumarth Amini氏らは、横断的研究を実施した。Human Psychopharmacology誌オンライン版2024年6月28日号の報告。 対象は、統合失調症成人外来患者62例および年齢、性別が一致した健康対照者22例。患者は、寛解状態にあり、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールのいずれかの非定型抗精神病薬による単剤治療を6ヵ月以上実施していた。BMI、空腹時血清アスプロシン、グルコース、HbA1c、インスリン、脂質プロファイルを両群間で比較した。さらに、インスリン抵抗性の基準を満たした人(HOMA-IR:2.5超)およびBMIレベルが高い人(男性:27kg/m2超、女性:25kg/m2超)について両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン群またはリスペリドン群は、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、BMI、空腹時血清グルコース、HbA1c、インスリン、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール、アスプロシンに統計学的に有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、健康対照者と同等の値を示したが、リスペリドン群またはオランザピン群は有意に高い値を示し、オランザピン群では、最も高値であった。・インスリン抵抗性および高BMIの有病率は、オランザピン群またはリスペリドン群において、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、高かった。・血清アスプロシン値は、BMI、HbA1c、空腹時インスリン、HOMA-IR、TGなどいくつかの代謝パラメータと有意な正の相関が認められた。・総コレステロールおよびLDLコレステロールに関しては、有意な差が認められなかった。 著者らは「オランザピンおよびリスペリドンで治療された患者では、アスプロシン値の上昇、体重増加、代謝障害との関連が認められた。血清アスプロシンレベルは、これらの代謝障害と双方向性の関連が示唆されており、潜在的な原因経路を解明するためにもさらなる研究が求められる」としている。

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キエジ・ファーマ・ジャパン、希少疾患に注力 脂肪萎縮症治療薬メトレレプチンを承継

 2024年7月19日、キエジ・ファーマ・ジャパン株式会社は塩野義製薬株式会社からメトレレプチン(遺伝子組み換え)皮下注用製剤の製造販売承認承継の詳細と日本における今後の事業戦略などについて記者会見を開催した。 今回のセミナーでは、キエジグループ取締役 希少疾患事業部門長 ジャコモ・キエジ氏、キエジグループ希少疾患事業部 欧州および成長市場責任者 エンリコ・ピッチニーニ氏、キエジ・ファーマ・ジャパン 代表取締役社長 中村 良和氏らがそれぞれグループの歴史や事業戦略、日本法人のビジョンや事業戦略について説明を行った。キエジグループの歴史、研究開発について 初めにジャコモ・キエジ氏がグループの概要について発表した。 キエジグループは1935年にイタリアのパルマで設立された家族経営の企業であり、現在は80ヵ国以上で医薬品を製造・販売している。2023年には収益が30億ユーロを超え、7,000人の従業員、7つの研究開発センターを持つ企業へと成長した。 キエジグループでは研究開発に力を入れており、売り上げの約25%を研究開発に投資しているが、その目的は革新的な医薬品を開発することでよりグローバルな企業に成長することで、より多くの患者さんに新しい治療を届けることができると考えている。 注力している領域はいくつかあるが、とくに希少疾患に関しては4年前に新たに希少疾患部門を立ち上げ、買収、ライセンス契約などで10製品のラインナップがあり、パイプラインも豊富である。日本では今後キエジグループのパイプラインにあるすべての製品の上市が検討されている。 「私たちは患者さん中心の事業展開をしており、日本でもその姿勢を貫きたい」とキエジ氏は述べ、発表を終えた。希少疾患部門の戦略 続いて、エンリコ・ピッチニーニ氏から希少疾患部門の事業戦略についての発表があった。 希少疾患部門は2020年の立ち上げ以降、製品数を増やす、部門の人数は現在700人を超えている。 キエジグループの希少疾患部門が重点的に取り組んでいるのは先天代謝異常、内分泌代謝疾患、希少血液などの領域であり、ファブリー病や全身性脂肪萎縮症など10以上のパイプラインがある。 キエジグループのミッションは「患者さんに貢献すること」であり、世界中のさまざまな患者団体と連携し、協力関係を結ぶことで、患者さんのニーズを迅速に聞くことに注力している。日本でもこのアプローチを踏襲する予定だ。 今後の事業戦略としては、まず中核となる事業を構築し、戦略的に周辺領域へ着実に最大化すること、可能性を最大化することでサイクルを回し、成長していきたいと考えている。具体的には新たな顧客層を拡大するだけでなく、適応症の拡大や新たな地域への参入、診断支援による早期診断支援、新たなモダリティへの支援などさまざまな角度からの施策を考えている。 「私たちの製品を本当に必要としている人がいる場所に参入していきたい」と今後の展望についてピッチニーニ氏は締めくくった。キエジ・ファーマ・ジャパンの開発戦略について 最後にキエジ・ファーマ・ジャパンの代表取締役社長である中村 良和氏が日本でのビジョンなどについて発表した。 キエジ・ファーマ・ジャパンの特徴は“量より質、少数精鋭”である。少なくともメンバー全員が10年以上の希少疾患領域での経験を持っている。規模が小さい分、迅速に動けるため希少疾患に向いている。 また、今回承継するメトレレプチンの適応は脂肪萎縮症であり、発症は100万人に1人程度、国内患者数は約100人、平均寿命は30~40歳程度と極めて稀で重篤な疾患である。非常に発見が難しく、未診断の患者さんが多く存在する可能性があるため、痩せているインスリン抵抗性の糖尿病患者さんを見かけた場合は疑ってほしい、と中村氏は語った。 今後の日本における開発戦略と現状については、市場性などを考慮して戦略を考えている。今後開発を考えている疾患は、鎌状赤血球症(異常ヘモグロビン症)、サラセミア(地中海貧血)、α-マンノシドーシス、レーベル遺伝性視神経症、ファブリー病、表皮水疱症である。このうち、いくつかの疾患は患者数が10人程度の疾患もあるが、患者さんがいるのであれば発売したい、と中村氏は熱弁した。 とくに、表皮水疱症の治療薬については、塗り薬であることと、すでに米国、欧州で承認をされているため、ベースの治療薬になるのではないかと考えて戦略を策定中である、とのことであった。 「開発中の製品についてはすべて自社販売の方針であるが、少数精鋭のため学会などを含めて活動を行っていきたい」、と述べて中村氏は発表を終えた。 なお、メトレレプチンは2024年7月24日にキエジ・ファーマ・ジャパンが製造販売承認を承継し、メトレレプチン皮下注用11.25mg「キエジ」としてキエジ・ファーマ・ジャパンが販売および情報提供活動を行う。薬価収載は8月の予定。

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低血糖時に慌てないための方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 先日、低血糖になって…医師 どんな感じだったんですか?(低血糖エピソードの経過について尋ねる)患者 変な汗が出てきて、スキャンしたら血糖が58でこれはヤバいと思って、近くにある菓子パンやジュースを飲んだんですけど…その後、高血糖になって、インスリンで修正したら、下がり過ぎて…。医師 なるほど。血糖値がジェットコースターみたいだったんですね。患者 そうなんです。また、低血糖になったら、どうしようかと心配で…。医師 それなら、「15-15ルール」を活用してみてください。低血糖になったら15g程度の炭水化物、ロールパン1個ぐらいですね。それをとってから、15分後に血糖を確認してみてください。もし、まだ低いようなら15gの炭水化物を追加してみてください。患者 なるほど。今まで、慌てて、とり過ぎていました。画 いわみせいじポイント低血糖後の高血糖を予防するために、「15-15ルール」について具体例をあげてわかりやすく説明します。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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診療科別2024年上半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Post-trial monitoring of a randomised controlled trial of intensive glycaemic control in type 2 diabetes extended from 10 years to 24 years (UKPDS 91)Adler AI, et al. Lancet. 2024;404:145-155.<UKPDS 91>:早期からの血糖強化管理による糖尿病合併症低減効果は24年間持続する血糖の早期強化管理により合併症リスクが有意に低減し、その効果が長期にわたり持続する(メタボリックメモリー)ことを実証したUKPDSのさらなる延長報告です。まさに「鉄は熱いうちに打て」です。その効果はメトホルミンでもインスリン・SU薬でも認められました。Dapagliflozin in Myocardial Infarction without Diabetes or Heart FailureJames S, et al. NEJM Evid. 2024;3:EVIDoa2300286.<DAPA-MI>:急性心筋梗塞で入院した心不全・糖尿病のない患者において、ダパグリフロジンはプラセボと比較して総死亡・心不全入院のリスク低減効果に有意差なしSGLT2阻害薬は冠動脈疾患2次予防や心不全入院リスク低減の効果を有することが実証されていますが、それぞれのハイリスク者に限定した効果であることが示唆されました。同時期に、エンパグリフロジンでも同様の結果が報告されています(Butler J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1455-1466)。Semaglutide in Patients with Obesity-Related Heart Failure and Type 2 Diabetes.Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2024;390:1394-1407.<STEP-HFpEF DM>:2型糖尿病を有する肥満関連心不全(HFpEF)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して有意に症状スコア(KCCQ-CSS)を改善体重減少が心不全症状改善の主因だと思われますが、 GLP-1受容体作動薬による血行動態改善作用も関与したことが想定されています。本研究では心不全入院や心不全急性増悪といった臨床的アウトカムを評価できるほどの検出力はありませんでした。非糖尿病患者においても同様の結果が報告されています(Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2023;389:1069-1084)。Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes Perkovic V, et al. N Engl J Med. 2024;391:109-121.<FLOW>:2型糖尿病を有するCKD患者において、セマグルチドはプラセボと比較して有意にCKD進展を抑制GLP-1受容体作動薬には腎保護作用があることが期待されており、その機序として体重減少の他に、抗炎症・抗酸化ストレス・抗線維化作用が想定されています。本研究はCKD進展抑制を実証した点で臨床的意義が大きいでしょう。ただし、低リスク者での効果やSGLT2阻害薬等との併用効果を実証した質の高いエビデンスはまだありません。Effect of Fenofibrate on Progression of Diabetic RetinopathyPreiss D, et al. NEJM Evid. 2024:EVIDoa2400179.<LENS>:フェノフィブラートはプラセボと比較して早期糖尿病網膜症の進展を有意に抑制フェノフィブラートが中性脂肪低下作用とは独立して網膜保護効果を有することが示されました(本研究での中性脂肪中央値は138mg/dL)。本剤は腎機能低下者では投与禁忌である点や日本では網膜症への保険適用がない点に気をつけましょう。

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週1回投与の基礎インスリン製剤「アウィクリ注フレックスタッチ総量300単位/同700単位」【最新!DI情報】第19回

週1回投与の基礎インスリン製剤「アウィクリ注フレックスタッチ総量300単位/同700単位」今回は、週1回持効型溶解インスリンアナログ注射液「インスリン イコデク(遺伝子組換え)(商品名:アウィクリ注フレックスタッチ総量300単位/同700単位、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、世界初の週1回投与の基礎インスリン製剤であり、QOLやアドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>インスリン療法が適応となる糖尿病の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人では1週間に1回皮下注射します。初期は通常1回30~140単位とし、患者の状態に応じて適宜増減します。他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1週間あたり30~560単位ですが、必要により上記用量を超えて使用することもあります。<安全性>重大な副作用として、低血糖やアナフィラキシーショック(頻度不明)があります。低血糖は臨床的に回復した場合にも再発することがあるので、継続的な観察が必要です。とくに、本剤は週1回投与の持続性がある薬ですので、回復が遅延する恐れがあります。その他の主な副作用として、糖尿病性網膜症、体重増加(1~5%未満)、注射部位反応、空腹、浮動性めまい、悪心・嘔吐、多汗症、筋痙縮(0.2~1%未満)などがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、生理的なインスリンの基礎分泌を補充する目的で使用される自己注射薬です。週1回投与する注射薬ですので、同一曜日に投与してください。2.自己判断で使用を中止したり、量を加減したりせず、医師の指示に従ってください。3.高所での作業や自動車の運転など、危険を伴う作業に従事しているときに低血糖を起こすと事故につながる恐れがありますので、とくに注意してください。4.他のインスリン製剤と併用することがあります。この薬と他のインスリン製剤を取り違えないように、毎回注射する前にラベルなどを確認してください。<ここがポイント!>本剤は、世界で初めてとなる週1回投与の基礎インスリン製剤です。従来のインスリン製剤では、1日1回もしくは2回の皮下注射が必要だったので、投与回数が大幅に減少し、患者さんの負担軽減により、生活の質やアドヒアランスの向上が期待できます。インスリン イコデクは、投与後に強力かつ可逆的にアルブミンと結合し、その後、緩徐にアルブミンから解離することで、血糖降下作用が1週間にわたって持続します。インスリン治療歴のない2型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 1試験)において、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与後52週までの変化量を、本剤とインスリン グラルギンで比較しています。本剤とインスリン グラルギンの変化量はそれぞれ-1.55%および-1.35%(群間差:-0.19[95%信頼区間:-0.36~-0.03]、p<0.001)であり、本剤のインスリン グラルギンに対する非劣性が確認されました(非劣性マージン:0.3%)。同様に、HbA1cのベースラインから投与後26週までの変化量について、基礎インスリン療法で治療中の2型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 2試験:インスリン デグルデクとの比較)、基礎・追加インスリン療法で治療中の2型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 4試験:インスリン グラルギンとの比較)、1型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 6試験:インスリン デグルデクとの比較)において、いずれも既存の持効型インスリン製剤に対する非劣性が証明されています(非劣性マージン:0.3%)。

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チルゼパチド、閉塞性睡眠時無呼吸の肥満者の睡眠アウトカムを改善/NEJM

 中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸と肥満のある患者の治療において、プラセボと比較してチルゼパチド(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド[GIP]とグルカゴン様ペプチド1[GLP-1]の受容体作動薬)は、無呼吸低呼吸指数(AHI)の改善とともに体重減少をもたらし、良好な睡眠関連の患者報告アウトカムを示すことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のAtul Malhotra氏らSURMOUNT-OSA Investigatorsが実施した「SURMOUNT-OSA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月21日号で報告された。PAP療法の有無別の2つの試験からなる無作為化試験 SURMOUNT-OSA試験は2022年6月~2024年3月に、9ヵ国60施設で実施した52週間の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Eli Lillyの助成を受けた)。 中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸(AHI[睡眠中の1時間当たりの無呼吸および低呼吸の回数]≧15回/時)および肥満(BMI≧30[日本は≧27])と診断された患者469例を登録した。これらの患者を、ベースラインで気道陽圧(PAP)療法を受けていない集団(234例、試験1)と受けている集団(235例、試験2)に分け、それぞれ最大耐用量のチルゼパチド(10または15mg)を週1回皮下投与する群(試験1:114例、試験2:120例)またはプラセボ群(同120例、115例)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、AHIのベースラインから52週までの変化量とした。PAP療法の有無を問わず、AHIが有意に低下 ベースラインにおいて試験1は平均年齢が47.9歳、男性が67.1%、白人が65.8%、平均BMIが39.1、平均AHIが51.5回/時であり、試験2はそれぞれ51.7歳、72.3%、73.1%、38.7、49.5回/時であった。 試験1では、52週時のAHIの平均変化量は、プラセボ群が-5.3回/時(95%信頼区間[CI]:-9.4~-1.1)であったのに対し、チルゼパチド群は-25.3回/時(-29.3~-21.2)であり、推定治療群間差は-20.0回/時(95%CI:-25.8~-14.2)とチルゼパチド群で有意に優れた(p<0.001)。 また、試験2のAHIの平均変化量は、プラセボ群の-5.5回/時(95%CI:-9.9~-1.2)に対し、チルゼパチド群は-29.3回/時(-33.2~-25.4)であり、推定治療群間差は-23.8回/時(95%CI:-29.6~-17.9)とチルゼパチド群で有意に良好だった(p<0.001)。体重減少、hsCRP濃度、低酸素負荷、収縮期血圧なども改善 副次エンドポイントはすべて、PAP療法の有無にかかわらずチルゼパチド群で有意に優れた。このうち主なものとして、52週時の体重の変化率(推定治療群間差は試験1:-16.1%[95%CI:-18.0~-14.2]、試験2:-17.3%[-19.3~-15.3])、高感度C反応性蛋白(hsCRP)濃度の変化量(同試験1:-0.7mg/L[-1.2~-0.2]、試験2:-17.3mg/L[-19.3~-15.3])、低酸素負荷の変化量(同試験1:-70.1%分/時[-90.9~-49.3]、試験2:-61.3%分/時[-84.7~-37.9])、48週時の収縮期血圧の変化量(同試験1:-7.6mmHg[-10.5~-4.8]、試験2:-3.7mmHg[-6.8~-0.7])が挙げられた。 また、患者報告アウトカムであるPatient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)の短縮版Sleep-related Impairment(PROMIS-SRI)および同短縮版Sleep Disturbance(PROMIS-SD)の52週時までの試験1、2を合わせた変化量は、チルゼパチド群で良好だった(いずれもp<0.001)。 一方、チルゼパチド群では消化器系の有害事象の頻度が高く、試験1では下痢が26.3%、悪心が25.4%、嘔吐が17.5%、便秘が15.8%で発現し、試験2ではそれぞれ21.8%、21.8%、9.2%、15.1%に認めた。これらの大部分は軽度~中等度だった。また、試験2のチルゼパチド群で急性膵炎を2例確認した。甲状腺髄様がんの報告はなかった。 著者は、「2つの試験において、チルゼパチドの投与を受けた参加者では、閉塞性睡眠時無呼吸に関連する一般的な心血管リスク因子の改善とともに、睡眠呼吸障害や、主観的睡眠障害および睡眠関連障害の緩和において臨床的に意義のある変化を認めた」とまとめている。

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高齢者の重症低血糖には治療の脱厳格化も重要/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17~19日の日程で、東京国際フォーラムをメイン会場として開催された。 糖尿病患者への薬物治療では、時に重症低血糖を来し、その結果、さまざまな合併症や死亡リスクを増加させる可能性がある。また、低血糖でも無自覚性のものは夜間に起こると死亡の原因となるなど注意が必要となる。 そこで本稿では、「シンポジウム29 糖尿病治療に伴う低血糖・ライフステージごとの特徴」で発表された「高齢者の糖尿病治療における低血糖」(演者:杉本 研氏[川崎医科大学総合老年医学 教授])の概要をお届けする。高齢糖尿病患者の低血糖は認知症のリスクとなる 2023年に『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が日本老年医学会と日本糖尿病学会の共同編集で発行され、杉本氏はこのガイドラインに沿って講演を行った。 同ガイドラインでは、QI-8「高齢者糖尿病の低血糖にはどのような特徴があるか?」で今回のテーマに関する事項が触れられている。低血糖の代表的な症状であるめまいや倦怠感については、高齢者では症状を自覚しにくいこと(無自覚性低血糖)、重症低血糖を起こしやすいこと、低血糖が認知症、転倒などのリスクとなり、大小血管障害の危険因子となることが記されている。とくに認知症と低血糖の関係については、認知症があると低血糖になるという側面と、低血糖があると認知症が進むという側面がある1)。そのため高齢者では血糖値は低すぎても、高すぎても問題となる。 低血糖とフレイルの関係については、低血糖が1回以上ある患者では、転倒は1.7倍、骨折は1.8倍にリスクが上がる2)こと、また低血糖はフレイル発症と関わるため、フレイル予防においても低血糖の防止が必要である。フレイルのある糖尿病患者に厳格な血糖マネジメントは必要かという点では、厳格な血糖マネジメントをしても合併症や死亡が抑制できず、重症低血糖がさらに増えることから、フレイルのある高齢者では厳格なマネジメントは必要ないとされている。そのため、高齢者糖尿病の血糖のマネジメント目標は、認知機能やADL、さらには多疾患併存状態がないかを評価したうえで設定することが推奨されている。 そのほか、重症低血糖を防ぐためには連続血糖測定(CGM)を用いた血糖マネジメントを提案すること、また血糖降下薬の選択では、SU薬、グリニド薬、超速効・速効型インスリンは重症低血糖を起こすリスクがあるため、これらの薬剤を選択する場合には低血糖に留意しながら慎重に使用する必要があることを指摘した。高齢者の重症低血糖の因子は「70歳以上」「認知症」「CKD」など 多疾患併存疾患(multimorbidity)の患者の実態について、低血糖をターゲットに調べてみると、75歳以上で4つ以上の併存疾患がある患者で発生割合が非常に多かった一方で、重症低血糖は0.6%と多くはなかったという。 重症低血糖を起こす因子としては、「70歳以上」「認知症」「慢性腎不全(CKD)」「心不全」「悪性腫瘍」「骨折」などが挙げられている。薬剤としては「SU薬」「インスリン」「グリニド薬」「BOT療法」のほか、3剤以上の経口血糖降下薬の併用も危険因子とされている。さらに10剤以上処方されていると重症低血糖が起こるリスクも上がることからに、ポリファーマシーへの介入が低血糖の発生予防に寄与すると考えられる。 さらにアメリカ糖尿病協会(ADA)の指針についても触れ、血糖マネジメントが難しい患者、たとえば認知機能やADLの低下している患者や介護施設に入所している患者などに対しては、そもそもHbA1cの目標値を設定せず、低血糖や症候性高血糖を避けるよう求められていると説明するとともに、「治療の単純化、脱厳格化を考慮することが必要」と触れた。高齢者の重症低血糖後は治療の脱厳格化を考える 治療の単純化について、たとえばインスリンであれば持効型インスリンへの切り替えや注射のタイミングを睡眠前ではなく、朝に注射するように変更するなどの工夫が参考となる。 重症低血糖後の治療の脱厳格化についての研究では、5割近くのSU薬処方者が脱厳格化しているという報告があり、その実施数も増加してきている。脱厳格化する患者モデルとしては、ADLが低下している患者、CKD、うつ病、転倒の既往がある患者では実施率が高いとされ、以後の重症低血糖を減少させることにつながると考えられる。 さらに台湾の研究では、在宅サービスがあること、服薬アドヒアランスが良いと低血糖は起こりにくく、処方薬剤が5剤以上ある高齢者では在宅サービスにより介入することが低血糖発生回避につながるメリットとなることが報告されている。 最後に杉本氏は、「単に血糖値を下げるのではなく、低血糖を起こさない治療が高齢の糖尿病患者には重要であり、重症低血糖は認知症やフレイルと相互に関係している危険因子であるので、個々の患者評価が重要となる。高齢者ではHbA1cの目標値を設定する際には認知機能やADLの評価が不可欠であり、また低血糖の既往者などでは、CGMを使用してモニタリングし、TBR(Time below range:血糖が70mg/dL未満で推移する時間の割合)を減らすことが推奨される。重症低血糖の既往がある高齢患者では脱厳格化を行うことが重要な治療介入となり、ポリファーマシーに留意し、低血糖を生じやすい薬剤を中心に減薬を考慮することが必要」と述べ、講演を終えた。

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メトホルミンに追加すべき薬剤はSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬それともSU薬?(解説:住谷哲氏)

 GRADE(Glycemia Reduction Approaches in Diabetes: A Comparative Effectiveness Study)研究1)は、メトホルミン単剤で血糖管理目標を達成できない患者に追加する血糖降下薬としてインスリン(グラルギン)、SU薬(グリメピリド)、GLP-1受容体作動薬(リラグルチド)またはDPP-4阻害薬(シタグリプチン)の有用性を比較検討したランダム化比較試験である。その結果は、HbA1c低下作用はグラルギンとリラグルチドが他の2剤に比べて優れており、体重減少効果はリラグルチドが最も優れていた。 米国が国家予算を投入したGRADE研究であるが、メトホルミンに追加する2剤目として経口血糖降下薬ではなく注射薬(グラルギンまたはリラグルチド)を選択することは実臨床においてそれほど多くない。さらに2剤目の追加薬剤の選択肢にSGLT2阻害薬が含まれていないのが、この研究の結果を実臨床に反映しにくい理由の1つである。 本研究は新しい解析手法であるtarget trial emulation(標的試験模倣と訳すべきか。概要については過去の本連載を参考されたい2])を用いて、メトホルミンに追加する薬剤としてSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬およびSU薬のいずれが優れているかを英国CPRD(Clinical Practice Research Datalink)のデータを対象にして検討したものである。結果は、HbA1c低下作用、BMI減少作用、収縮期血圧低下作用においてSGLT2阻害薬が他の2剤に比較して優れていた。さらにSGLT2阻害薬は、心不全による入院抑制はDPP-4阻害薬に比較して優れており、腎疾患の進行抑制はSU薬に比較して優れていた。 臓器保護薬としてのSGLT2阻害薬の有用性は、高リスク患者を対象としたランダム化比較試験で明らかにされてきた。したがって多くのガイドラインでは、心不全または慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者への積極的投与が推奨されている。しかし、われわれが通常外来で診察している低リスク患者に対する有用性はこれまで不明であった。本研究の結果は、低リスク患者においても血糖降下作用、BMI減少作用、収縮期血圧低下作用においてSGLT2阻害薬がDPP-4阻害薬、SU薬と比較して優れていることを示した点でインパクトが大きい。ただし本研究はメトホルミン投与患者への追加薬剤としての検討であり、この点には留意する必要がある。

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