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診療科別2024年下半期注目論文5選(消化器内科編)

Histological improvements following energy restriction and exercise: The role of insulin resistance in resolution of MASHMucinski JM, et al. J Hepatol. 2024;81:781-793.<MASHにおけるカロリー制限・運動療法の有用性>:肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)患者に対しカロリー制限、運動療法を同時に行うことにより肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善することを証明しました。同治療によるMASH肝組織改善が、肝臓ではなく筋肉のインスリン感受性と関連していたことがとても興味深いです。Long-term liver-related outcomes and liver stiffness progression of statin usage in steatotic liver diseaseZhou XD, et al. Gut. 2024;73:1883-1892.<MASLDにおけるスタチンの有用性>:全死因死亡・肝関連有害事象発生を有意に低下国際共同研究で7,988例の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者を平均4.6年観察。スタチンの使用は全死因死亡を76.7%、肝関連有害事象発生を62%低下させました。またスタチン使用は、フィブロスキャンで測定した肝硬度の進行も軽減させました。Alternating gemcitabine plus nab-paclitaxel and gemcitabine alone versus continuous gemcitabine plus nab-paclitaxel after induction treatment of metastatic pancreatic cancer (ALPACA): a multicentre, randomised, open-label, phase 2 trialDorman K, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024;9:935-943.<ALPACA試験>:転移膵がんにおけるGEM+NabPTX減量療法の有用性と忍容性進行膵がんにおいてGEM+NabPTX療法は有害事象のため忍容性が問題となっていました。今回、 GEM+NabPTX を3サイクル実施後、 GEM+NabPTXとGEM単独投与を交互に行う減量レジメンが、従来の治療と同等の全生存期間と、より良好な忍容性を示すことが報告されました。[177Lu]Lu-DOTA-TATE plus long-acting octreotide versus high-dose long-acting octreotide for the treatment of newly diagnosed, advanced grade 2-3, well-differentiated, gastroenteropancreatic neuroendocrine tumours (NETTER-2): an open-label, randomised, phase 3 studySingh S, et al. Lancet. 2024;403:2807-2817.<NETTER-2試験>:進行NENに対する1次治療としてPRRTが有用これまで神経内分泌腫瘍(NEN)に対するPRRTは2次治療以降のレイトラインでの導入が推奨されてきましたが、本研究によりGrade2、3の高分化型NENにおいて1次治療でのPRRT早期導入の有用性が報告されました。Risk of colorectal neoplasia after removal of conventional adenomas and serrated polyps: a comprehensive evaluation of risk factors and surveillance use Polychronidis G, et al. Gut. 2024;73:1675-1683.<大腸がん・ポリープの再発予防>:高リスクの大腸ポリープは3年以内のサーベイランス大腸内視鏡が有益advanced adenomaのサーベイランスの最適な間隔は明らかではありませんでしたが、今回の報告では高リスクポリープが見つかった患者は、その後の大腸がんおよび高リスクポリープのリスクが高いため、3年以内の早期監視が有用である可能性が示されました。

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健康な高齢者では高用量ビタミンDで糖尿病リスクは低下しない

 たとえ高用量のビタミンDサプリメントを摂取したとしても、糖代謝異常がない高齢者の場合、2型糖尿病の発症リスク低下にはつながらないとする研究結果が発表された。東フィンランド大学のJyrki K. Virtanen氏らが行ったプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験によるもので、詳細は「Diabetologia」に12月2日掲載された。 過去の観察研究からは、血中ビタミンD濃度が低い場合に2型糖尿病の発症リスクが高いという関連が示されている。しかし、観察研究の結果のみでは、ビタミンDサプリの摂取が糖尿病リスク抑制につながるかどうかは不明。他方、既に血糖値がやや高い前糖尿病の人を対象に行われた研究では、ビタミンDサプリ摂取が糖尿病への移行リスクをわずかに抑制する可能性も示唆されているが、健康な集団での有用性のエビデンスはない。これを背景としてVirtanen氏らは、フィンランドの一般住民を対象にビタミンDサプリ摂取の影響を検討した大規模研究(FIND)のデータを用いた解析を行った。 FINDの参加者は60歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患やがん、腎障害などの既往がなく、摂取している全てのサプリに含まれているビタミンDが合計20μg/日以下などの条件を満たす2,495人。一次評価項目として心血管疾患、二次評価項目としてがん、三次評価項目として2型糖尿病の発症が設定されていた。ビタミンDの中用量(40μg/日)群、高用量(80μg/日)群、およびプラセボ群の3群に、1対1対1でランダムに割り付け、平均4.2年間介入した。 全参加者のうちベースライン時点で血糖降下薬が処方されていた224人を除外した2,271人が、三次評価項目の解析対象とされた。この対象者の平均年齢は68.2±4.5歳、女性が43.9%、BMIは26.8±4.0であり、食事からのビタミンD摂取量は10.7±7.9μg/日で、66.0%はビタミンDサプリを摂取していなかった。解析対象者のうち504人は血中ビタミンD濃度(25〔OH〕D3)が測定されていて、その平均は29.8±7.2ng/mLだった。 追跡期間中に105人が2型糖尿病を発症。各群の発症者数は、ビタミンD中用量群が31人、高用量群36人、プラセボ群38人であり、100人年当たりの罹患率は同順に0.97、1.11、1.19だった。年齢と性別を調整後、プラセボ群を基準とする発症ハザード比は、中用量群が0.81(95%信頼区間0.50~1.30)、高用量群が0.92(同0.58~1.45)であり、ビタミンDの用量にかかわらず有意なリスク低下は観察されなかった。 追跡開始2年目までに2型糖尿病を発症した人を除外した解析や、性別、年齢層別、BMI別に層別化したサブグループ解析でも、ビタミンDサプリ摂取が2型糖尿病リスク低下につながる集団は特定されなかった。また、血糖値、血中インスリン値、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、BMI、ウエスト周囲長の変化も検討されたが、いずれもビタミンD摂取による有意な影響は観察されなかった。 これらの結果から著者らは、「健康な高齢者を対象としたわれわれの研究では、中用量または高用量のビタミンDサプリの長期摂取による2型糖尿病の発症抑止効果は示されなかった」と結論付けている。

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糖尿病性腎症、コーヒーによるリスク減は摂取時間が重要

 糖尿病患者の食事内容、摂取タイミングに関する研究は多数あるが、コーヒー摂取量と摂取タイミングが糖尿病患者の慢性腎疾患(CKD)リスクと関連するかを検討した研究結果が報告された。中国・ハルビン医科大学のYiwei Tang氏らによる本研究は、Food Functon誌オンライン版2024年10月14日号に掲載された。 研究者らは、2003~18年のNHANES(全米国民健康栄養調査)から糖尿病患者8,564例を解析対象とした。24時間の食事調査を用いてコーヒーの摂取状況を評価し、摂取時間、または摂取の多い時間を4つの時間帯(1. 早朝から午前中[5:00~8:00]、2. 午前中から正午[8:00~12:00]、3. 正午から夕方[12:00~18:00]、4. 夕方から早朝[18:00~5:00])の4群に分類した。さらにコーヒー摂取量の多寡で3つに層別化した。CKDの定義は、eGFRが60mL/min/1.73m2未満、または尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が30mg/g以上とした。年齢、性別、BMI、生活習慣などの交絡因子を調整したロジスティック回帰モデルを用いて、コーヒー摂取量、摂取時間とCKDリスクの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・8,564例の糖尿病患者の平均年齢は61.9歳、男性4,480例(52.9%)だった。1人当たりのコーヒー摂取量の平均は2.83g/kgであり、CKD有病率は41.6%であった。・参加者のうちコーヒーを摂取しない人が3,331例(38.9%)、摂取者のうち1. 早朝から午前中に摂取する人が17.6%、2. 午前中から正午が27.6%、3. 正午から夕方が8.3%、4. 夕方から早朝が7.5%だった。・コーヒー摂取群は、非摂取群と比較してCKDの有病率が11%低かった(オッズ比[OR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.80~0.99)。・摂取のタイミングについては、1. 早朝から午前中に摂取する群は摂取しない群と比較してCKDのリスクが有意に低下した(OR:0.87、95%CI:0.77~0.98)。また、その中でもコーヒー摂取量が最も多い層のリスク低下が最も大きかった(OR:0.83、95%CI:0.70~0.98)。・一方で、3. 正午から夕方の摂取群では、コーヒー摂取量が最も多い層は最も少ない層と比較してCKDのリスクが上昇した(OR:1.35、95%CI:1.07~1.71)。4. 夕方から早朝の摂取群でも同様だった(OR:1.28、95%CI:1.01~1.64)。この結果はさまざまなサブタイプにおいても共通していた。 著者らは「研究結果から、コーヒー摂取のタイミングがCKDの予防に重要な役割を果たす可能性が示唆された。とくに、早朝から午前中に摂取することでリスクが低下する一方で、午後以降の大量摂取はリスクを増加させるという結果が得られた。この時間依存性の効果は、コーヒーに含まれるカフェインやその他の生理活性物質が代謝リズムやインスリン感受性に与える影響に関連している可能性がある。糖尿病患者の栄養指導においてコーヒー摂取のタイミングに関する知見を組み込むことで、CKD発症リスクを軽減する新たなアプローチが提案できる可能性がある」とした。

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糖尿病予備群が大動脈弁狭窄症を引き起こす

 糖尿病予備群の主要な原因であるインスリン抵抗性が、大動脈弁狭窄症のリスクを高めることを示唆するデータが発表された。クオピオ大学病院(フィンランド)のJohanna Kuusisto氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Medicine」に11月26日掲載された。 大動脈弁狭窄症(AS)は高齢者に多い心臓弁の病気の一つであり、心不全や死亡のリスクを高める。Kuusisto氏は、ジャーナル発のリリースの中で、「この新たな発見は、インスリン抵抗性がASの重大かつ修正可能なリスク因子である可能性を浮き彫りにしている。インスリンに対する感受性を高めることを意図した健康管理は、ASのリスクを減らし、高齢者の心血管アウトカムを改善するための新たなアプローチとなり得る」と語っている。 ASの発症後には、時間がたつにつれて大動脈弁が厚く硬くなっていき、心臓が血液を送り出す際の負担が大きくなる。しかし、胸痛や息切れ、動悸、疲労などが現れるまでに何年ものタイムラグがあり、それらの自覚症状が現れた時には既に重症化していることが少なくない。米国心臓協会(AHA)は、75歳以上の米国人の13%以上がASに罹患しているとしている。 一方、インスリン抵抗性は、血糖を細胞に取り込む時に必要なホルモンであるインスリンの作用が低下している状態のことで、2型糖尿病が発症する何年も前に起こり始めていることが多い。インスリン抵抗性がより進行すると、徐々に血糖値が高くなり、やがて糖尿病の診断基準を超える高血糖となる。 この研究では、ASのない45~73歳(平均年齢62歳)のフィンランド人男性1万144人を対象とする、メタボリックシンドロームの疫学調査のデータが解析に用いられた。平均10.8±1.4年の追跡期間中に、1.1%に当たる116人が新たにASと診断された。Cox回帰分析の結果、インスリン抵抗性を表す複数の指標が、ASの発症と関連していることが明らかになった。 例えば、血清Cペプチドが高い場合は、ASの発症ハザード比(HR)が1.47(95%信頼区間1.22~1.77)であった。血清Cペプチドが高いことはインスリン分泌が増加していることを示しており、インスリン抵抗性による血糖上昇の負荷が高まっていることを表している。また、Matsudaインデックスという指標が高い場合はHR0.68(0.56~0.82)だった。Matsudaインデックスは値が低いほどインスリン抵抗性がより強いことを意味する。これらの関連性は、ASの既知のリスク因子を調整した解析、および、糖尿病患者を除外した解析でも有意だった。 Kuusisto氏は、「体重管理や運動の励行などによってインスリン感受性を高めることが、ASの発症抑止につながるのかを確認するため、今後のさらなる研究が求められる」と述べている。

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食品中の果糖はがんの進行を促進する?

 糖の一種である果糖(フルクトース)は、がん細胞の増殖を促す燃料になる可能性があり、果糖の摂取を控えることが、がんと闘う手段の一つになり得ることが、新たな研究で示唆された。米セントルイス・ワシントン大学遺伝学・医学部教授のGary Patti氏らが、米国立衛生研究所(NIH)から一部助成を受けて実施したこの研究の詳細は、「Nature」に12月4日掲載された。 米国人が毎日口にしている食品には高果糖コーンシロップが多用されており、果糖はすでに米国人の食生活に広く浸透している。Patti氏は、「高果糖コーンシロップは、キャンディーやケーキから、パスタソースやサラダ用ドレッシング、ケチャップまで、極めて多くの食品に含まれている。意図的に摂取を回避しようとしない限り、高果糖コーンシロップを食事から除くことは困難である」と話す。 何世代か前までは、米国人の果糖の摂取量は比較的少なかった。しかし、数十年前から食品業界は多くの製品に高果糖コーンシロップを添加するようになった。そのタイミングと一致して、50歳以下の人の間で特定のがんが徐々に増加しているとPatti氏らは指摘している。 Patti氏らは今回の研究で、果糖が腫瘍の成長にどのような影響を与えるのかを調査した。まず、メラノーマ、乳がん、子宮頸がんの動物モデルに果糖を多く含む餌を与え、腫瘍の成長速度を測定した。その結果、果糖は、体重や空腹時血糖値、空腹時インスリン値に影響を与えることなく腫瘍の成長を促進することが確認された。Patti氏は、「果糖の影響の大きさには驚かされた。腫瘍の成長速度が2倍以上に加速したケースもあった。果糖の大量摂取が腫瘍の進行に極めて大きな悪影響を及ぼすことは明らかだ」と述べている。 しかし、次の実験室での分子レベルの分析から、がん細胞には、果糖を栄養源として直接利用するための生化学的機構が備わっていないことが判明した。Patti氏らが、高果糖食で飼育した動物の血液中の小分子について再調査したところ、リゾホスファチジルコリン(LPC)などのさまざまな脂質のレベルが上昇していることが確認された。また、肝細胞が果糖を代謝する過程でLPCを放出することも明らかになった。Patti氏は、「興味深いことに、がん細胞自体は適切な生化学的機構を発現していないため、果糖を栄養素として利用できなかった。しかし、肝細胞はそれが可能であり、果糖をLPCに変換して、それをがん細胞に栄養として供給することができる」と話している。 Patti氏は、「食事に含まれる果糖ががんの発症にどのような影響を及ぼすのかについて、今後、もっと多くのことが分かれば素晴らしいことだ」と言う。その一方で、「今回の研究で明らかになったメッセージの一つは、不幸にもがんに罹患した場合には、果糖の摂取を回避すべきだということだ。しかし、果糖はあまりにも多くの食品に含まれているため、残念ながら、『言うは易し行うは難し』というのが現実だ」と付け加えている。

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歯周病と糖尿病の強固な関連

 歯周病と糖尿病は、健康にダメージを与えるという点で恐ろしい関係性を持っていると、研究者らが警告している。その1人であるベルン大学(スイス)のAnton Sculean氏は、「最近の研究から、糖尿病は歯周病の主要なリスク因子であるだけでなく、この二つの病気の関係は双方向であって、互いに悪影響を強め合うことが分かっている」と解説する。なお、同氏は欧州歯周病連盟(EFP)の年次総会(EuroPerio11)の会長も務めている。 Sculean氏によると、この二つの病気の関係は、時間が経つにつれて致命的な結果を招く可能性さえあるという。中等度から重度の歯周病は、長期的には心臓病や全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスク上昇と関連してくるとのことだ。 糖尿病は現在、世界中で8億人以上が罹患していると推定されている。この病気は、体内で十分なインスリン(血糖値を調節するホルモン)が産生されないか、インスリンに対する細胞の反応が弱くなることで発症する。EFPは、11月14日の世界糖尿病デーに発行したニュースリリースで、糖尿病は重度の歯周病のリスクを3倍に高めると述べている。実際に、糖尿病患者の血糖コントロールが不十分になると、歯周病の重症度が上昇することも報告されている。それはなぜだろうか? Sculean氏らはその理由を、血糖値が適切にコントロールされていないと、免疫システムの働きが低下し、歯周病を引き起こす細菌感染と戦うことが困難になるからだと解説する。また糖尿病は、体の炎症反応を高め、歯周組織へのダメージをより悪化させる可能性もある。加えて、歯周病が悪化すると全身の炎症反応が引き起こされ、それによって細胞のインスリンに対する反応がさらに低下するというメカニズムも、EFPのリリースには解説されている。このように、歯周病と糖尿病は互いに作用して状態を深刻にするという「悪循環」を作り出す。 しかし、逆に言えば、歯周病を治療することで、糖尿病をコントロールしやすくなるということだ。EFPは、「歯周病と糖尿病が悪循環を起こすという事実は、歯科の専門家がほかの医療提供者と緊密に連携を取り、口腔の健康と糖尿病管理の双方に対応した包括的なケアを、患者が確実に受けられるようにする必要性のあることを再確認させるものだ」と表現している。 EFPの推計によると、現在、世界中で10億人以上が重度の歯周病を患っているとされる。マドリード大学(スペイン)のEduardo Montero氏は、「EFPは糖尿病と歯周病の関連という課題に取り組むことを大変重視している。なぜなら、糖尿病と歯周病は口腔の健康だけでなく、世界中の何百万人もの人々の全身の健康状態に影響を与えるからだ」と述べている。同氏はまた、「一般の人々、医療専門家、政策立案者の意識を高めることが不可欠である。糖尿病と歯周病の双方向の関係を認識し、口腔の健康を世界の保健戦略に組み込み、より総合的な医療システムへと移行していかなければならない」と強調している。

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第246回 カロリー制限と抗老化作用の関連を担う胆汁酸を発見

カロリー制限と抗老化作用の関連を担う胆汁酸を発見現代は定期的な食事に重きが置かれていますが、古く古代より断食(カロリー制限)の効用が説かれています1)。また、古代(紀元前16世紀)のエジプトのパピルス古文書には浣腸やその他の治療として胆汁(bile)が使用されたとの記載があり、胆汁の重要な役割は古代の医師にとって自明の理だったようです2)。中国からの最新の研究成果により、古代より知られていたその2つの効能を関連付ける仕組みが判明しました。先週水曜日にNatureに掲載されたその研究の結果、カロリー制限が抗老化作用をもたらすことに胆汁酸の一種であるリトコール酸(LCA)が寄与すると判明しました3)。餌を減らした研究用の動物の寿命が伸びることが知られています。ヒトも同様の絶食で健康が改善するようです。しかし、カロリーを抑えた食事を長く続けられる人はおよそ皆無でしょう4)。そこで、ほぼ継続不可能なカロリー制限をせずとも、その効果を引き出すカロリー制限模倣化合物(CRM)を探す取り組みが始まっています。AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)はCRMの有望な標的の1つです。AMPKはヒトを含め真核生物ならおよそ持ち合わせており、カロリー制限で活性化し、カロリー制限の効能になくてはならない分子です。たとえばカロリー制限のマウスの筋肉はAMPKが活発で、萎縮し難くなることが知られています5)。糖尿病薬メトホルミンやワインに含まれる植物成分レスベラトロールはAMPKを活性化するCRMであり、種々の生物の寿命や健康生存を伸ばしうることがわかっています。そういうCRM探しが進展する一方で、カロリー制限への代謝順応がどのような仕組みでAMPKを活性化して健康を維持し、寿命を伸ばすのかは不明瞭であり、多くの疑問が残っています。そこで中国のチームはカロリー制限で変化する特定の代謝産物がAMPKの調節に携わるかもしれないと当たりをつけて研究を始めました。まず初めにカロリー制限したマウスの血清のAMPK活性化作用を調べ、加熱しても損なわれずにAMPKを活性化しうる低分子量の代謝産物が確かに存在することが示されました。続いて、カロリーを制限したマウスとそうでないマウスの血中の1,200を超える代謝分子が解析され、カロリー制限で増える212の代謝産物が見つかりました。それらを培養細胞に与えて調べた結果、LCAがAMPKを活性化することが突き止められました。LCAは肝臓で作られる胆汁酸の2次代謝産物です。その前駆体であるコール酸(CA)やケノデオキシコール酸(CDCA)が肝臓から腸に移行し、そこで乳酸菌、クロストリジウム、真正細菌などの腸内細菌の手によってLCAが作られます。特筆すべきことに、LCAは絶食で増える血清の代謝産物の1つであることが健康なヒトの試験で示されています6)。カロリー制限していないマウスにLCA入りの水を与えたところ、どうやら代謝がより健康的になり、インスリン感受性が向上してミトコンドリアの性能や数が上向きました。また、体力も向上するようで、いつもの水を飲んだマウスに比べてより長く速く走れ、より強く握れるようになりました。LCAが老化と関連する衰えを解消しうることをそれらの結果は示唆しています6)。研究はさらに進み、LCAがAMPKを活性化する仕組みも判明しました。LCAはTULP3というタンパク質を受容体とし、LCAと結合したTULP3で活性化したサーチュイン遺伝子がAMPK活性化を導くことが解明されました7)。LCAに延命作用があるかどうかは微妙です。ショウジョウバエや線虫の寿命を延ばしたものの、マウスの検討では有意な延命効果は認められませんでした3,6)。ヒトと同じ哺乳類のマウスがLCAで延命しなかったことは興ざめ4)ですが、その効果がないと結論付けるのはまだ早いようです。ヒトで言えば中年のマウスで試しただけであり、より若いうちからLCAを与えてみるなどの種々の切り口での研究が必要です。中国の研究チームは先を急いでおり、サルでのLCAの効果を調べる研究をすでに開始しています4)。参考1)A bile acid could explain how calorie restriction slows ageing / Nature2)Erlinger S. Clin Liver Dis (Hoboken). 2022;20:33-44.3)Qu Q, et al. Nature. 2024 Dec 18. [Epub ahead of print]4)Restricting calories may extend life. Can this molecule do it without the hunger pangs? / Science 5)A bile acid may mimic caloric restriction / C&EN6)Fiamoncini F, et al. Front Nutr. 2022;9:932937.7)Qu Q, et al. Nature. 2024 Dec 18. [Epub ahead of print]

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ダイナペニック肥満は心血管疾患のリスク因子―久山町24年間の縦断解析

 肥満でありながら筋力が低下した状態を指す「ダイナペニック肥満」が、心血管疾患(CVD)発症の独立したリスク因子であることが、久山町研究から明らかになった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の瀬戸山優氏、本田貴紀氏、二宮利治氏らの研究によるもので、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に論文が10月8日掲載された。 筋肉量の多寡にかかわらず筋力が低下した状態を「ダイナペニア」といい、筋肉量と筋力がともに低下した状態である「サルコペニア」と並び、死亡リスク上昇を含む予後不良のハイリスク状態とされている。さらに、その状態に肥満が加わったサルコペニア肥満やダイナペニック肥満では、CVDのリスクも高まる可能性が示されている。しかしダイナペニック肥満に関してはCVDとの関連の知見がまだ少なく、海外からの報告がわずかにあるのみであり、かつ結果に一貫性がない。これを背景として本研究グループは、1961年に国内疫学研究の嚆矢として福岡県糟屋郡久山町でスタートし、現在も住民の約7割が参加している「久山町研究」のデータを用いた検討を行った。 解析対象は、1988~2012年に毎年健康診断を受けていて、ベースライン時にCVD既往のなかった40~79歳の日本人2,490人(平均年齢57.7±10.6歳、男性42.5%)。握力が年齢・性別の第1三分位群(握力が弱い方から3分の1)に該当し、かつ肥満(BMI25以上)に該当する場合を「ダイナペニック肥満」と定義すると、全体の5.4%がこれに該当した。 中央値24年(四分位範囲15~24)の追跡で482人にCVDイベント(脳卒中324件、冠動脈性心疾患〔CHD〕209件)が発生した。交絡因子(年齢、性別、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心電図異常など)を調整後に、握力の最高三分位群かつ普通体重(BMI18.5~24.9)の群(全体の23.9%)を基準として、ほかの群のCVDリスクを比較した。 その結果、ダイナペニック肥満群でのみ、CVD(ハザード比〔HR〕1.49〔95%信頼区間1.03~2.17〕)および脳卒中(HR1.65〔同1.06~2.57〕)の有意なリスク上昇が認められた。肥満でも握力低下のない群(第2~3三分位群)のCVDリスクは基準群と有意差がなく、また、やせ(BMI18.5未満)や普通体重の場合は握力にかかわらずCVDリスクに有意差がなかった。なお、CHDについてはダイナペニック肥満群のリスクも、基準群と有意差がなかった(HR1.19〔0.65~2.20〕)。 65歳未満/以上で層別化した解析では、65歳未満でダイナペニック肥満によるCVDリスクがより高いことが示された(HR1.66〔1.04~2.65〕)。一方、65歳以上では有意な関連を認めなかった(HR1.18〔0.61~2.27〕)。 続いて行った媒介分析からは、ダイナペニック肥満とCVDリスク上昇との関連の14.6%を炎症(高感度C反応性蛋白〔hs-CRP〕)、9.7%をインスリン抵抗性(HOMA-IR)で説明可能であり、特に65歳未満ではhs-CRPが13.8%、HOMA-IRが12.2%を説明していて、インスリン抵抗性の関与が強いことが示唆された。 著者らは、「握力とBMIで定義したダイナペニック肥満は、日本の地域住民におけるCVD発症のリスク因子であることが明らかになった。この関連性は、65歳未満でより顕著であり、炎症とインスリン抵抗性の上昇がこの関連性を部分的に媒介している」と総括。また、「われわれの研究結果は、CVD予防における中年期の筋力の低下抑止と、適切な体重管理の重要性を示唆するものと言える」と付け加えている。

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自覚症状に乏しい糖尿病性腎症に早く気付いて/バイエル

 バイエルは、11月14日の「糖尿病の日」に合わせ、糖尿病と合併症に関する啓発イベントを開催した。イベントでは、糖尿病専門医による糖尿病に関するプレスセミナーとお笑いコンビ「ガンバレルーヤ」をゲストに迎えての市民向けの疾患啓発が行われた。糖尿病の合併症の腎臓病では透析導入になりやすい 「糖尿病と合併症ってどんな病気? 患者さん中心の医療について考える」をテーマに坊内 良太郎氏(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター/糖尿病内分泌代謝科)が、糖尿病の病態、診療、合併症を抑えるポイントを解説した。 わが国の糖尿病と疑われる人の数は約2,000万人にのぼり、国民の5~6人に1人は糖尿病の危険があるとされる国民病となっている。 糖尿病は「インスリンの作用不足により起こる血糖値が高い状態が続く疾患」であり、診断では空腹時血糖値が126mg/dL以上、食後血糖値、ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上あれば糖尿病が強く疑われ、再度の検査で確定診断となる。また、健康診断などでよく話題になるHbA1cも6.5%以上は糖尿病が強く疑われる指標となる。 糖尿病にはI型、II型、妊娠、そのほか(薬剤性、肝臓疾患など)の4種類があり、その症状として「のどの渇き、水分の多飲」「日中・夜間の頻尿」「疲れやすい」「体重減少」などがある。そして、これらの症状は自覚症状に乏しく放置しがちであり、医療機関を受診しないことで合併症のリスクが高まる。 糖尿病合併症では、脳卒中、心筋梗塞、壊疽(神経障害)などの大血管障害と網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害がある。また、併存症として肺炎などの感染症、肝臓・膵臓などの悪性腫瘍、歯周病なども糖尿病患者では起こりやすく、重症化しやすい。 とくに糖尿病性腎症は、慢性腎臓病(CKD)の代表的な疾患であり、病期がかなり進行するまで自覚症状に乏しいために、診断がされたときには腎不全で透析導入になるケースが多い。実際、日本透析医学会の調査では、糖尿病性腎症は透析導入の約4割を占めていると報告されている。糖尿病合併症の抑制には血糖、血圧、脂質の厳格な管理が求められる 現在、日本糖尿病学会では、診療ガイドラインなどで糖尿病治療の目標として、「健康な人と変わらない寿命と生活の質(QOL)の達成」を示している。糖尿病の根治が難しい以上、合併症を抑えることが重要となる。 糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法だが、これでも効果が不十分な場合に薬物療法が追加される。いずれも患者の自主的な取り組みなしには成功しない治療である。また、HbA1cを7%未満に抑えれば網膜症や腎症の悪化リスクを抑えことができるという研究報告1)のほか、血圧を130/80mmHg未満に抑えたり、LDLコレステロールを適切に管理したりすれば合併症のリスク低減が期待できるため、ガイドラインなどで推奨されている。そのほか、わが国のJ-DOIT3の研究結果から血糖、血圧、脂質の厳格な管理が糖尿病の合併症予防につながり、とくに脳血管合併症や腎症に効果があるとされている2)。 最後に坊内氏は、糖尿病やCKDの治療において大切なこととして、「医師やメディカルスタッフとのコミュニケーションが重要である。共同意思決定(SDM)として治療のゴールを決めるために、患者さんが価値観や好みをきちんと医師などに伝えることで、患者さん個々に合った治療法の提案をすることができる」と語り、講演を終えた。 この後開催された疾患啓発イベント「体験型ボードゲームで学ぶ糖尿病と合併症 ~腎臓の声に耳を傾けよう~ in 丸の内」のオープニングイベントでは、先の講演者の坊内氏が糖尿病の3大合併症として、網膜症、腎症、神経障害を挙げたうえで、糖尿病性腎症はかなり進行するまで自覚症状に乏しいことに言及。「定期的な検査、とくに尿検査を行い、このイベントのタイトルにもなっている『腎臓の声』にしっかり耳を傾けよう」と呼びかけ、ゲストのガンバレルーヤの2人は「自覚症状が出にくいからときちんと病院に行って定期的に検査を受けることが大事なんですね」と早期発見の大切さに納得していた。また、会場では、特大サイズのボードゲームが人気で、多くの参加者が糖尿病とその合併症について学んでいた。

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低温持続灌流はドナー心臓の虚血時間を安全に延長できる(解説:小野稔氏)

 低温浸漬保存(SCS)は脳死ドナーから提供された心臓を保存するゴールドスタンダードであるが、保存時間が4時間を超えると虚血、嫌気性代謝に続く臓器障害を来たし、移植後の合併症や死亡に至る場合がある。肝臓移植においてはXVIVO(XVIVO AB, Sweden)による低温灌流保存(HOPE: hypothermic oxygenated machine perfusion)についての12のメタアナリシスやシステマティックレビューがあり、その安全性と有効性が証明されている。 心臓移植におけるXVIVO装置を用いたHOPEの安全性と有効性を証明するために、欧州8ヵ国の15の心臓移植センターにおいて、多国多施設無作為化オープンラベル試験が実施された。対象は18歳以上の成人心臓移植患者で、いずれかの臓器移植の既往、先天性心疾患、腎不全、脱感作中、LVAD以外の循環補助中の場合には除外された。ドナーについては18~70歳が対象で、心停止後ドナーや再開胸が必要な場合には除外とした。心保存について従来のSCSとHOPEに1:1で割り付けられた。SCS群では各施設のプロトコルで心停止を誘導してアイススラッシュ保存を行った。HOPE群では、300~500mLの血液、抗生剤とインスリンが添加されたXVIVO Heart Solutionで満たされたXVIVO灌流装置を使用した。心臓摘出後に上行大動脈にカニューレを挿入して装置に接続し、大動脈圧20mmHgで8度を維持して灌流(毎分100~200mLに相当)した。 2020年11月から2023年5月までに1,050例がスクリーニングされ、HOPE群には101例、SCS群には103例が割り付けられた。レシピエント(56歳vs.58歳)、ドナー(48歳vs.50歳)共に両群間で背景因子、原疾患、循環補助の状態に差はなかった。ドナー心保存時間はHOPE群のほうが長かった(240分vs.215分)。主要評価項目(心臓関連死、中~高度の左室のグラフト不全、右室のグラフト不全、Grade 2R以上の細胞性拒絶反応を含む複合エンドポイント)はHOPE群19例(19%)、SCS群31例(30%)に見られ、HOPE群のリスク軽減率は44%となったがp値は0.059であった。副次評価項目である移植後グラフト不全単独では、SCS群28%に対してHOPE群11%と有意に少なかった。心臓関連主要有害事象についてはHOPE群18%で、SCS群32%に対して有意に少なかった。心臓関連死については両群間で差は見られなかった。 主要評価項目では有意差はなかったが、HOPE群に見られた44%のリスク軽減は臨床的には意義がある。とくに移植後グラフト不全がHOPE群に有意に少ないことは、遠方からのドナー心の搬送や複雑な手技が必要な心臓移植において、虚血時間等の問題解決につながる可能性がある。

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減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性

 インクレチン製剤であるGLP-1受容体作動薬などの減量薬を、より広い対象に適用して多くの人がアクセスできるようにすることで、米国では年間4万人以上の命が救われる可能性があるとする論文が発表された。米イェール大学公衆衛生大学院のAlison Galvani氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に10月15日掲載された。 肥満が死因として記録されることはめったにない。しかし、肥満は心血管代謝疾患をはじめとする多くの疾患のリスクを押し上げ、結果としてそれらの疾患による死亡リスクを高めている。米国では人口の74%が過体重や肥満(うち43%が肥満)に該当し、公衆衛生上の極めて大きな問題となっている。 消化管ホルモンであるインクレチンの作用を模倣した血糖降下薬であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬(GLP-1RA)や、GLP-1とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)の両受容体作動薬(GIP/GLP-1RA)が近年、減量目的で使用されるようになり、顕著な効果が報告されている。しかし、これらの薬剤は高額で、かつ肥満治療における保険の適用範囲も限られている。具体的には、肥満に伴う何らかの疾患を抱えている場合にのみ保険が適用され、単に減量目的で処方を受けるには月額1,000ドル以上の負担が発生する。そのため現状では、多くの肥満者がこれらの薬剤にアクセスできていない。Galvani氏らは、仮に減量目的でのGLP-1RAやGIP/GLP-1RAが、必要な全ての人にいきわたったとした場合のインパクトを推計した。 この研究では、まず、現時点での減量薬(GLP-1RA、GIP/GLP-1RA)の米国人の死亡抑制効果を推計したところ、1年間で8,592人(95%不確定区間8,580~8,604)の命が救われていると計算された。そのうち、糖尿病患者が2,670人(同2,657~2,684)を占めていた。 次に、BMIが30以上の人の全て、およびBMI25以上の糖尿病患者の全てがアクセス可能な状況を仮定した推計を行った。この場合、米国成人の45%以上が減量薬を使用することになる。解析の結果、1年間でさらに4万2,027人(4万1,990~4万2,064)の命が救われると計算された。そのうち、糖尿病患者は1万1,769人(1万1,707~1万1,832)だった。 この研究に関連してGalvani氏は、「医薬品へのアクセス拡大には、疾患罹患者の治療選択肢を増やすということだけでなく、重要な公衆衛生対策という側面もある」と解説。ただし同氏らは、GLP-1RAやGIP/GLP-1RAが高価であるため、全てを保険適用とするのは困難であり、かつ、現在でも既に需要の高まりによって慢性的な供給不足になっているという課題を指摘している。 論文共著者の1人である米フロリダ大学のBurton Singer氏は、「これらの課題に対しては多面的なアプローチが必要だ。医薬品の価格を製造コストに見合ったものとし、需要を満たし得る生産能力を確保しなければならない。それと同時に、多くの人々が必要な治療を受けられていないという、アクセスの問題にも取り組まなければならない」と述べている。

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新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第269回

新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク疾患によっては、罹病中に運転することが交通事故のリスクとされるものがあります。たとえば、糖尿病でインスリン治療を受けている人は、無自覚低血糖によって運転の支障を来すことがあります。そのため、運転免許証の取得や更新時に虚偽申告をした場合の罰則規定が設けられています。運転前に血糖測定を行うように指導することが重要です。発熱していて、医療機関を受診する場合、公共交通機関を使うと他人に感染を広げてしまうので、自家用車を自分で運転して受診する人が多いでしょう。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、どうも交通事故のリスクが高くなるようで…。Erdik B, et al. Driving Under the Cognitive Influence of COVID-19: Exploring the Impact of Acute SARS-CoV-2 Infection on Road Safety. Neurology, 2024;103 (7_Supplement_1):S46-S47.この論文は、COVID-19の急性発症と交通事故数の関連性を調査したものです。2020~22年のデータを用いて、米国7州での交通事故記録とCOVID-19の統計を比較分析しました。結果、急性のCOVID-19と交通事故増加の関連性が観察されました(オッズ比:1.5)。つまり、急性期のCOVID-19で運転すると、交通事故のリスクが高くなるということです。ちなみに、この交通事故リスクは、飲酒運転やてんかんを持っている場合のリスクと同程度であったと考察されています。これを受けて筆者らは、COVID-19は、その後の後遺症(Long COVID)だけでなく、急性期の交通事故リスクを高める可能性があると指摘しています。熱があればそりゃしんどいだろうと思いますが、機序としてはウイルスの神経系への影響とも述べられています。医療従事者は、COVID-19の患者を診療する際、認知・運転の低下の可能性を考慮する必要があります。できるなら、家族が運転する車で来院いただきたいところですね。

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飛行機内でインスリンポンプに軽微な影響が生じる可能性

 インスリンポンプを装着して飛行機に乗ると、上昇中と降下中に、血糖値にわずかな変化が生じる可能性のあることが報告された。ただし、その影響は医学的な問題を引き起こすほどのものとは考えにくいという。英サリー大学のKa Siu Fan氏らによる研究の結果であり、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。 インスリンポンプは、インスリンを連続的に自動投与する機器で、主に1型糖尿病の治療に用いられている。急激な気圧の変動が生じた場合、機器の内部に気泡が発生し、インスリン注入速度に微妙な影響を及ぼす可能性がある。Fan氏らはその影響を、飛行中の機内の気圧変化を模したチャンバー(密閉された部屋)を用いて検討した。 3種類、計26台のインスリンポンプをチャンバー内に入れ、まず20分かけて高度8,000フィート(約2,440m)に相当する550mmHgまで減圧。その後、30分間は巡航状態としてそのまま維持し、続いて20分かけて海面高度の気圧に近い750mmHgまで加圧した。この間、インスリン注入速度は1時間当たり0.6単位に設定した。データを解析した結果、20分間の減圧(飛行機では上昇に相当)中に、インスリンは設定した用量より平均0.60単位過剰に注入されていた。一方、加圧(降下)中には、設定した用量より平均0.51単位不足していた。 Fan氏は、「飛行機が上昇中は気圧の低下により、ポンプ内部に気泡が発生してカートリッジから設定よりも多いインスリンが注入されるため、インスリン注入量がわずかに増加することがあり得る。反対に飛行機が降下中は気圧の上昇により気泡が消失して、インスリンがポンプ内部に吸い戻されるため、インスリン注入量がわずかではあるが減少することがあり得る。インスリンポンプを使用している人は、飛行機内の気圧の変化がインスリン注入量に影響を及ぼす潜在的な可能性のあることを知っておいた方が良いだろう」と述べている。 同氏らは、今回の研究で示された影響の程度は、健康上の問題を引き起こすほどではなかったとしている。しかし、より高い高度へ短時間で上昇するようなことが起きた場合、機内の急激な減圧によって深刻な問題が発生する可能性はゼロではないという。具体的には、インスリンが過剰に注入されて血糖値が大きく低下し、低血糖が生じるリスクが想定されるとしている。ただしそのような事態に対しては、消化吸収の速い糖質を摂取するという一般的な方法で対処可能だ。 Fan氏によると、「飛行中の気圧変化によるインスリン注入量の変化が血糖値に及ぼす影響は、個々の患者のインスリン感受性、血糖管理状態、搭乗前に食べた食事によってそれぞれ異なる」とのことだ。また、「血糖値への意図しない影響を防ぐために、インスリンポンプを使用している患者は、離陸前にポンプを一時的に外しておき、巡航高度に達したら、気泡の有無の確認および除去をした上で再装着すると良い」としている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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新規2型DM、短期強化インスリン後リナグリプチン+メトホルミンが有用/BMJ

 新たに2型糖尿病と診断されたHbA1c値8.5%以上の患者において、短期強化インスリン療法(SIIT)後に経口療法(とくにリナグリプチンとメトホルミンの併用)を用いるという強力かつ簡便な戦略は、持続的な血糖コントロールをもたらし、β細胞機能を改善することが示された。中国・中山大学第一付属病院のLiehua Liu氏らが、中国の15施設で実施した無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「この治療戦略は、2型糖尿病の臨床管理における意思決定に有望な方向性を示すものである」とまとめている。BMJ誌2024年10月15日号掲載の報告。SIIT後、リナグリプチン、メトホルミン、両者併用を生活習慣改善指導のみと比較 研究グループは、新たに2型糖尿病と診断され、年齢20~70歳、血糖降下薬の投与歴なし、糖尿病に関する医師の助言や介入を受けたことがない、BMI値22.0~35.0、空腹時血糖値7.0~16.7mmol/L、スクリーニング時のHbA1c値8.5%以上の患者を、リナグリプチン(5mg/日)+メトホルミン(1,000mg/日)併用群、リナグリプチン(5mg/日)群、メトホルミン(1,000mg/日)群、対照群(生活習慣の改善指導のみ)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化された全例が、2~3週間の持続皮下インスリン注入法によるSIITの後、割り付けに従って48週間の治療を受けた。 主要アウトカムは、SIIT後48週時のHbA1c値<7.0%を達成した患者の割合。副次アウトカムは、HbA1c値<6.5%を達成した患者の割合、ベースラインからのHbA1c値、空腹時および食後2時間血糖値、β細胞機能指数、インスリン感受性指数の変化などであった。48週時のHbA1c値<7.0%達成、SIIT+リナグリプチン+メトホルミン併用群80% 2017年12月~2020年12月に464例がスクリーニングを受け、412例が無作為化された。患者背景(平均値±SD)は、年齢46.8±11.2歳、BMI値25.8±2.9、HbA1c値11.0±1.9%であった。SIIT後に来院しなかった39例を除く373例が有効性解析対象集団に組み入れられた。 48週時にHbA1c値<7.0%を達成した患者の割合は、対照群60%(56/93)に対し、リナグリプチン+メトホルミン併用群80%(78/97例)(p=0.003)、リナグリプチン群72%(63/88例)(p=0.12)、メトホルミン群73%(69/95例)(p=0.09)であった(実薬3群全体のp=0.02、いずれもχ2検定による)。 また、48週時にHbA1c値<6.5%を達成した患者の割合は、対照群48%(45/93例)に対して、リナグリプチン+メトホルミン併用群70%(68/97)(p=0.005)、リナグリプチン群68%(60/88)(p=0.01)、メトホルミン群68%(65/95)(p=0.008)であった(実薬3群全体のp=0.005、いずれもχ2検定による)。 ロジスティック解析の結果、対照群との比較において、リナグリプチン+メトホルミン併用群が48週時にHbA1c値<7.0%を達成する可能性が高いことが示された(オッズ比:2.78、95%信頼区間:1.37~5.65、p=0.005)。また、リナグリプチン+メトホルミン併用群では、空腹時血糖値およびβ細胞機能指数が最も顕著に改善した。 忍容性はすべての治療群で良好であった。

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週1回注射のインスリンは低血糖の出現に注意を (解説:小川大輔氏)

 1型糖尿病患者を対象とした週1回の基礎インスリン(insulin efsitora alfa)の第III相試験の結果が発表された1)。1日1回の基礎インスリンインスリン デグルデク)と比較し、有効性と安全性を比較した結果、有効性については非劣性が確認されたが、安全性については重篤な低血糖が多いと報告された。 成人1型糖尿病患者692例を、基礎インスリンとしてinsulin efsitora alfaを投与する群(efsitora群)とインスリン デグルデクを投与する群(デグルデク群)に無作為に割り付け、追加インスリンとしてインスリン リスプロを両群とも併用投与した。その結果、ベースラインから26週目までのHbA1cの変化量は両群に差がなく非劣性が確認された。別の言い方をすればefsitora群に優越性は認められなかったということになる。 一方、有害事象である低血糖のエピソードについてはefsitora群がデグルデク群に比べて有意に多いという結果であった。とくにレベル2(血糖値<54mg/dL)の低血糖と、レベル3(他者の支援を必要とする状態)の重症低血糖を合わせた発生頻度は、efsitora群のほうが有意に高かった。また夜間の低血糖には差がなく、非夜間の低血糖がefsitora群でとくに多く認められた。 別の週1回投与の基礎インスリンであるインスリン イコデクの試験でも、インスリン デグルデクと比較し非劣性が示され、重症低血糖の発生頻度はイコデクのほうが有意に多く認められた2)。試験の対象やプロトコールは異なるが、週1回投与のイコデク、efsitoraの両者とも1日1回投与の基礎インスリンより重症低血糖が多く認められたという事実は重く受け止めなければならない。 週1回注射のインスリンは、インスリン治療を行っている糖尿病患者の注射回数を減らすことができ、さらに負担を軽減することができると期待されている。今回の試験で、efsitoraはデグルデクと比較し有効性については劣らないことが示された。その一方で低血糖、とくに重症低血糖が多く認められた点については留意する必要があるだろう。6ヵ国82の専門施設で行われているので、インスリンの調節が不適切であったとは考えにくい。今後efsitoraの投与方法や用量調節についてはさらに検討する必要がある。また低血糖は主に昼間に多く出現しており、持続血糖モニターをより活用する必要があるだろう。 1日1回から週1回投与のインスリンに切り替えることで、1型糖尿病の血糖コントロールが改善するわけではなく、重症低血糖の頻度はむしろ増えることが示された。私自身は週1回の基礎インスリンが登場することを楽しみにしているが、「注射回数が減り楽になる、便利になる」というだけで、安易に週1回投与のインスリンに切り替えることは慎みたいと考えている。

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座位時間を毎日1時間減らすと腰痛の悪化は防げるか

 ソファや椅子に座って過ごす時間を短くすることは、腰痛の悪化を防ぐ効果的な方法であるかもしれない。腰痛リスクのある人が6カ月間、毎日わずかでも座位時間を減らすことで、腰痛の悪化を抑えられる可能性を示唆した研究結果が報告された。論文の筆頭著者であるトゥルク大学(フィンランド)のJooa Norha氏は、「腰痛や座位時間が長過ぎる傾向があり、腰の健康が心配な人は、仕事中や余暇中の座位時間を減らす方法を考えてみるとよいだろう」と助言している。研究結果の詳細は、「BMJ Open」に9月28日掲載された。 Norha氏らによると、座位時間の長さが背中の健康と腰痛に与える影響については、あまり研究されていないという。この点を明らかにするために、今回の研究で同氏らは、過体重または肥満でメタボリックシンドロームを有する40〜65歳の成人64人を対象に、6カ月にわたる座位時間を減少させる介入が腰痛と腰痛関連の障害、傍脊柱筋(脊柱起立筋と横突棘筋)のインスリン感受性(グルコース取り込み)および脂肪含有率に及ぼす影響を調べた。対象者のうち、33人は座位時間を毎日1時間減らすことを目指す群(介入群)、残る31人は通常通りに過ごす群(対照群)にランダムに割り付けられた。 その結果、対照群では介入群に比べて腰痛の強度は有意に増加していたが、介入群では変化が認められなかった。また、試験期間中に、痛みに関連する障害は両群で増加していた。しかし、痛みに関連する障害、オスヴェストリー能力指数(Oswestry Disability Index;ODI、腰痛・下肢痛による日常生活動作への影響を測定する尺度)、脊柱起立筋のグルコース取り込みおよび脂肪含有率の変化に関しては、有意な群間差は認められなかった。 Norha氏はこれらの結果について、「驚きはなかった」と話す。同氏は、「本研究の対象者は、座位時間が長く、運動をほとんど行わない、やや体重の増えたごく普通の中年成人だった。これらの要因は、心血管疾患のリスクだけでなく腰痛リスクも高める」と話す。 ただし、活動量を増やすことで腰痛が抑制されるメカニズムは明らかにされていない。本研究では、対象者の背筋のMRI検査が実施されたが、「腰痛の変化と、背筋の脂肪量や糖代謝の変化との間に関連は認められなかった」とNorha氏は説明している。 Norha氏は、腰痛持ちの人に対して運動を行うことを勧めている。同氏は、「ただ立っているだけよりも、歩行やより活発な運動などの身体活動の方が効果的であることに留意することが重要だ」とトゥルク大学のニュースリリースで述べている。

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第237回 血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発

血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発血中のブドウ糖濃度(血糖値)に応じて自ずと働くか休む賢いインスリンをNovo Nordiskの研究チームが開発し、低血糖を引き起こすことなく血糖値をほどよく下げうることがブタへの投与実験で確認されました1)。低血糖は糖尿病のイスリン治療の難題の1つです。ひとたび投与したインスリンはたとえ血糖値が正常化しても働き続け、血糖値を危険水準まで下げてしまう恐れがあります。それゆえインスリン投与量は血糖値を正常域にする範囲を超えないように調節する必要があります。しかし絶えず変化する血糖値にインスリン用量を合わせるのは難儀で、必要量よりちょっとばかり多めに投与しただけで低血糖が生じる恐れがあります。低血糖は軽~中等度でも不安、脱力、混乱などを招き、ひどければ意識消失や発作などの重症症状を引き起こし、最悪の場合死に至りさえします。低血糖を避けるために多くの糖尿病患者はインスリン用量を控えめにします。そうすると今度は血糖値が十分に下がらず、高血糖が続くことに起因する合併症が生じ易くなります。“素”のインスリンを使うのではなく、血糖値の変化に応じる仕組みを備えたインスリン治療なら低血糖の心配なく血糖値をよい頃合いに保てそうです。そのような付加価値付きのインスリンを作る試みは結構長い歴史があり、1970年代から続いています1)。血糖値上昇に応じてインスリンを放出する皮下投与ポリマーの開発がそういう取り組みのこれまでの主流でした。しかし糖が皮下に行き着くまでや皮下から血中へのインスリンの到達はより時間を要し、時宜にかなわないという欠点があります。それに、インスリンは皮下から一方的に放出されるのみで、ひとたび放出されたインスリンはもはや糖に応じることはなく働き続けるのみです。そこでNovo Nordiskはインスリンの放出をどうにかするのではなく、ブドウ糖に反応する仕組みを備えた賢いインスリンの開発に取り組み、その有望な成果を先週16日のNature誌の報告で披露しました。Novo Nordiskが開発した賢いインスリンはNNC2215と呼ばれ、血糖値に応じて働くか休むかが切り替わります。その切り替え機能はインスリン本体の両端についた2つの分子が担います。その1つはブドウ糖から生じる分子・グルコシドです。もう1つは大環状分子(macrocycle)で、その名のとおりいわばドーナツに似た環状構造をしています。血糖値が低いとグルコシドが大環状分子に収まってインスリンを不活性な状態に保ちます。一方、血糖値が高いとグルコシドではなくブドウ糖が大環状分子に収まり、インスリンは開放状態となって働けるようになります。ブタやラットで調べたところNNC2215の血糖値を下げる効果が認められました。特筆すべきことにブタへの投与実験では目下のインスリン治療で生じるような低血糖をどうやら生じずに済むらしいことが示されました。ただし、検討されたのは糖尿病患者の典型的な血糖値より広いブドウ糖濃度範囲でのNNC2215の活性です2)。今後の課題としてより狭い濃度範囲でのNNC2215の働きを調べる必要があります。また、安全性の検討も必要ですし、実用化されたとしてどれくらいの値段になるかも気になるところです。NNC2215の想定どおりの働きが示されて一安心とはいえまだ先は長く、Novo NordiskはNNC2215の最適化に取り組んでいます2)。参考1)Hoeg-Jensen T, et al. Nature. 2024 October 16. [Epub ahead of print]2)Smart insulin switches itself off in response to low blood sugar / Nature

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ヘム鉄摂取が2型糖尿病のリスクを高める

 ヘム鉄の摂取が2型糖尿病のリスク増大と関連しているとする研究結果が、「Nature Metabolism」に8月13日掲載された。米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のFenglei Wang氏らの研究によるもの。未加工の赤肉を好む食事パターンが2型糖尿病のリスクを高めるとされているが、その関連性の多くは、ヘム鉄の過剰摂取で説明可能と考えられるという。 これまでにも、食事からのヘム鉄の摂取が2型糖尿病のリスク増大と関連していることが示唆されてきているが、血液バイオマーカーなどを絡めた検討は十分に行われていない。Wang氏らはこの点について、米国内で実施されている観察期間が最長36年間におよぶ3件の大規模コホート研究のデータを用いた検討を行った。 解析対象者数は計20万4,615人で女性が79%であり、この対象全員のデータから、鉄(ヘム鉄と非ヘム鉄)の摂取量と2型糖尿病リスクとの関連が調査された。また、この対象のうち3万7,544人(女性82%)のサブセットでは血漿代謝バイオマーカー、9,024人(同84%)のサブセットではメタボロームプロファイルの評価も施行した。 解析の結果、ヘム鉄の摂取量が多いことと2型糖尿病リスクとの間に有意な正の関連が認められた(摂取量の最高五分位群と最低五分位群を比較した多変量調整ハザード比が1.26〔95%信頼区間1.20~1.33〕、傾向性P<0.001)。その一方、非ヘム鉄の摂取量については、2型糖尿病リスクとの有意な関連が見られなかった。 この研究では、未加工の赤肉を多く摂取するといった特定の食事パターンに関連する2型糖尿病リスク増大のかなりの部分を、ヘム鉄の摂取量の多さで説明できる可能性も示された。また血漿代謝バイオマーカーなどとの関連の解析から、ヘム鉄摂取量が多いことと、高インスリン血症や炎症、脂質代謝異常などの2型糖尿病リスクに関連する好ましくない血漿プロファイルとの相関が認められた。ヘム鉄と2型糖尿病との関連を媒介する可能性がある代謝物としては、L-バリンや尿酸などが特定され、これらが2型糖尿病の病因に大きな影響を及ぼしている可能性が考えられた。 著者らは、「われわれの研究結果は、2型糖尿病予防のためのガイドライン策定に際して、ヘム鉄を多く含む食品、特に赤肉を毎日摂取するような食事パターンの制限を推奨すべきであることを意味しており、公衆衛生上の重要な意味を持っている」と述べている。また、「植物性食品由来の代替肉に、風味の調整などのためにヘム鉄を添加することに関しても懸念がある」と付け加えている。 なお、1人の著者が、Vinasoy社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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第236回 GLP-1薬セマグルチドは運動意欲を減らすらしい

GLP-1薬セマグルチドは運動意欲を減らすらしいマウスはよく走ります。回転車を与えると活動期である夜に10~12kmも毎日走ります1)。しかし糖尿病や肥満症の治療薬・オゼンピックやウゴービの成分であるセマグルチドをマウスに与えるとどうやら走る意欲が減るようで、プラセボ群の半分ほどしか走らなくなりました2)。セマグルチドのようなGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)は今や信仰にも似たよすがとなっており、医療情報を提供するKFFが今年5月に結果を発表した調査では、米国の成人の実におよそ8人に1人(12%)がGLP-1薬を使ったことがあると回答しました3)。また、およそ17人に1人(6%)は使用中でした。セマグルチドはインスリン生成を促し、胃が空になるのを遅らせ、満腹感がより長続きするようにするGLP-1に似た働きを担います。過去20年ものあいだ調べられてきたGLP-1の代謝調節の仕組みはかなり詳しく判明しています。一方、最近になってGLP-1の代謝調節領域を超えたより広範な働きや脳への作用が明らかになりつつあります。そのような秘めたGLP-1の働きのいくつかが今月初めの米国・シカゴでの神経科学会(Society for Neuroscience)年次総会(Neuroscience 2024)で発表されました。セマグルチドがマウスの走る意欲をどうやら減退させることを示したイエール大学の上述の研究成果はその1つです。GLP-1の作用は食べ物、アルコール、コカイン、ニコチンと関連する快楽のほどを変えます。ネズミにGLP-1やその模倣薬を与えるとそれらの摂取意欲が下がることが示されています。セマグルチドを使う人の食べる楽しみが使い始める前ほどではなくなるのは、同剤が快楽や渇望に携わる脳領域の活性を抑えることに起因するようです。また、その働きのおかげでセマグルチドが薬物依存の治療の助けになりうることも示唆されています。イエール大学のRalph DiLeone氏らは運動などの気持ちよくなる行動にもセマグルチドの影響が及ぶかもしれないと考えました4)。そこで、根っからの運動好きで、それがどうやら楽しいらしいマウスを使ってセマグルチドの運動意欲への影響が調べられました。DiLeone氏らは14匹のマウスの半数7匹にセマグルチド、もう半数の7匹にはプラセボを1週間投与しました。それらマウスが回転車で毎日どれだけ走るかを調べたところ、セマグルチド投与群の走る距離は同剤投与前に比べて4割ほど(37.9%)減っていました2)。一方、プラセボ投与群ではそのようなことはなく、どうやらセマグルチドはマウスの走る意欲を減衰させたようです。続いて実際に走る意欲が低下しているのかが別のマウスを使って調べられました。その検討ではマウスが走っている最中に回転車がときどき強制停止(ロック)されます。マウスは鼻でレバーを押すこと(押下)でそのロックを解除することができます。ロックはその回数が多くなるほどレバーをより多く押下しないと解除できないようになっており、最終的にマウスはロックの解除を諦めます。諦めた時点でのレバー押下回数は回転車を走る意欲がどれだけ高いかを反映する指標となります。5日間のセマグルチド投与期間中のマウスのレバー最大押下回数はプラセボ投与群に比べて平均25%少なく、肥満マウスを使った検討でも同様の結果となりました4)。すなわちセマグルチドは食べ物や薬物への渇望を減らすのと同様に運動意欲も減らすようです。ヒトでの同様の作用は示されていません。オゼンピックやウゴービのヒトのデータのほとんどが運動を含む他の手当てを伴ったものであることがその理由かもしれません。とはいえ、セマグルチドのようなGLP-1薬が負の行動のみならず有益な振る舞いも妨げてしまう恐れがあることを今回の結果は示唆しています。Neuroscience 2024では他にもセマグルチドやGLP-1の類いの興味深い中枢神経系(CNS)作用の報告がありました。韓国のGachon Universityの研究者らはGLP-1受容体に結合するアンタゴニストexendin 9-39の断片の1つexendin 20-29の痛み緩和作用を示したマウス実験結果を報告しています5)。その研究ではexendin 20-29が痛み信号の伝達に携わる受容体TRPV1に結合し、GLP-1受容体機能には手出しすることなく痛みを緩和することが示されました。また、フランスの研究受託会社Neurofitのチームはセマグルチドのアルツハイマー病治療効果を示すマウスやラットの実験結果を報告しています6)。その効果の検討は臨床試験でも大詰め段階に入っており、Novo Nordisk社は初期アルツハイマー病患者へのセマグルチドの第III相試験2つ・EVOKE7)とEVOKE Plus8)を2021年に開始しています。結果は来年判明する見込みです9)。参考1)The Unexplored Effects of Weight-Loss Drugs on the Brain / TheScientist2)Semaglutide administration reduces free running as well as motivation for wheel access as measured by progressive ratio in mice / Neuroscience 20243)KFF Health Tracking Poll May 2024: The Public’s Use and Views of GLP-1 Drugs / KFF4)Weight-loss drugs lower impulse to eat - and perhaps to exercise too / NewScientist5)Glp-1 and its derived peptides mediate pain relief through direct trpv1 inhibition without affecting thermoregulation / Neuroscience 2024 6)Semaglutide's cognitive rescue: insights from rat and mouse models of alzheimer's disease / Neuroscience 20247)A Research Study Investigating Semaglutide in People With Early Alzheimer's Disease (EVOKE)8)A Research Study Investigating Semaglutide in People With Early Alzheimer's Disease (EVOKE Plus) 9)Atri A, et al. Alzheimers Dement. 2022;18:e06415.

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