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第2回 重症低血糖を防ぐために【高齢者糖尿病診療のコツ】

第2回 重症低血糖を防ぐためにQ1 低血糖により高まるリスクにはどのようなものがありますか?高齢者の低血糖はさまざまな悪影響を及ぼします(表1)。軽症の低血糖でも認知機能障害を及ぼすことがあるため注意が必要です。また、低血糖の頻度が多くなるとうつ症状や糖尿病負担感の増加をもたらし、QOL低下を招きます。低血糖があると転倒や骨折が起こりやすくなり、重症化すると心血管疾患、うつ、認知症、および死亡のリスク因子ともなります。さらに重症低血糖と認知症、うつ、フレイルは相互に悪循環をもたらします。画像を拡大するQ2 高齢者で低血糖が起こりやすくなる理由、若年者とは違う“非典型的な”症状とは?高齢者(とくに75歳以上)で重症低血糖を起こしやすくなる原因は、(1)腎機能障害による経口血糖降下薬の蓄積、(2)加齢による低血糖症状の変化、(3)急な食事摂取量の低下、(4)低血糖の対処能力の低下、(5)薬剤の誤用などがあります(図1)。画像を拡大するとくに80歳以上では、腎機能障害(eGFR 45mL/分/1.73 m2未満)の頻度が多くなり、腎排泄の経口血糖降下薬(とくにSU薬)の蓄積をもたらします。持続時間が長いSU薬では、重症低血糖だけでなく、ブドウ糖投与で一時回復後も低血糖が持続する「遷延性低血糖」もきたしやすい点に注意が必要です。低血糖の典型的な自律神経症状である発汗、動悸、手のふるえなどが60歳以上では出にくくなり、無自覚性低血糖が起こりやすくなります。高齢者の低血糖では、頭がくらくらする、体がふらふらする、めまい、脱力感といった非典型的な症状であらわれることが多いので、見逃さないように注意が必要です。そのほか、目が見にくい、ろれつ不良、動作がぎこちない、片麻痺、物事の段取りがうまくいかない、意欲低下、せん妄などの神経・精神症状が起こる場合もあります。高齢者では肺炎などの急性疾患によって、急激に食事摂取量が低下することが多くなり、嘔吐、下痢などの消化器症状をきたすこともあります。こうしたシックデイ時に、SU薬やインスリンを通常量で服用・投与してしまうと、重症低血糖をきたす恐れがあるので、SU薬の減量・中止やインスリンの減量を適切に行うことが重要です。また、欠食などの食生活の乱れが低血糖の誘因になる場合もあります。認知症を合併した糖尿病患者では、低血糖への対処ができないために、さらに重症低血糖のリスクが高まります。普段は認知機能が正常な高齢者であっても、血糖値が47~54mg/dLになると認知機能障害を起こすことが知られています(図2)。軽度の低血糖であっても、実行機能障害、注意力低下、判断力低下などの認知機能障害を起こし、ブドウ糖をとるといった低血糖の対処ができなくなる事態が起こり得ます。この低血糖による認知機能障害は、認知症と異なり血糖値の正常化により回復することが多いので、ブドウ糖投与で症状が改善するかどうかを確認します。画像を拡大するQ3 どのような患者が低血糖を起こしやすいのでしょうか?表2に重症低血糖を起こしやすい患者の特徴を示します。加齢と関連する特徴としては、とくに認知機能障害の重症度が進むにつれて、低血糖リスクも高くなることに注意が必要です(図3)。画像を拡大する画像を拡大する Q4 低血糖を何とか未然に防ぐ“コツ”はあるでしょうか?1)低血糖の予測経口血糖降下薬を使用している場合、HbA1c 7.0%未満(または空腹時血糖110mg/dL未満)で低血糖リスクが加速度的に高まるので9)、低血糖とみられる症状がないか問診を行います。またインスリン使用者ではHbA1c高値でも、低血糖が起こる可能性を考える必要があります。2)SU薬の減量・中止SU薬はeGFRで腎機能を評価しながら、できるだけ少量で用います。eGFR 45mL/分/1.73m2未満で減量、eGFR30mL/分/1.73m2未満で原則中止とされています。高齢者ではグリベンクラミドの使用を控え、グリメピリドは0.5mg/日でも低血糖が起こりうることに注意が必要です。グリクラジドが最も低血糖のリスクが小さく、10~20mg/日の少量で使用します。HbA1c6.5%未満または何らかの低血糖の症状がみられた場合には、SU薬をさらに減量すべきでしょう。最終的には、グリクラジド10~20mg/日かグリニド薬に変更します。3)血糖自己測定の活用とインスリンの減量インスリン治療中、HbA1cが高くても低血糖リスクが高まるのは、日内または日差の血糖変動が大きいために、血糖値やHbA1cの値だけでインスリンを増量すると低血糖を起こしやすいことが原因と考えられます。したがって、血糖測定を毎食前と眠前の1日4回行い、血糖変動をみながらインスリン量を慎重に調節することが重要になります。同じ時間帯に血糖100mg/dL未満が連続する場合には、責任インスリン(その時間の血糖値に最も影響を及ぼしているインスリン)を1~2単位減量できないか検討するとよいでしょう。SU薬でもインスリン治療でも、低血糖は午前5時、6時台の発生が最も多くなります。したがって、早朝5時の血糖測定を行うことができれば理想的です。午前5時の血糖値100mg/dL未満が連続する場合も、インスリンの減量を検討します。4)柔軟な血糖コントロール目標日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会による「高齢者の血糖コントロール目標 (HbA1c値)」では、重症低血糖が危惧される薬剤(インスリンやSU薬、グリニド薬など)の使用がある場合は、重症低血糖を防ぐために目標値を甘めに設定しており、さらに目標下限値も設定しています。もし目標下限値を下回ったら、問診、またはSMBG、CGM、FGMなどを活用して低血糖の評価を行うべきでしょう。低血糖がなければ現在の治療を継続しますが、無自覚性低血糖がある場合は、それらの薬剤を減量します。例えばHbA1c6.0%未満など、下限値を大きく下回る場合は、その時点でSU薬やインスリンの減量を考慮したほうがよいでしょう。5)低血糖教育高齢者では重症低血糖のリスクが高い患者に対して、患者のみならず介護者を含めて、低血糖教育を行うことが大切になります。(1)高齢者の低血糖の非典型的な症状とその対処法、(2)毎食炭水化物を摂取し、欠食や極端な炭水化物制限をしないこと、(3)運動時の低血糖に注意すること、(4)食事摂取量が低下した場合や下痢、嘔吐の場合にはSU薬を減量・中止、またはインスリンを減量すること、を理解してもらうことが必要です。 1)Warren RE, Frier BM. Diabetes Obes Metab. 2005;5:493-503.2)Araki A, et al. J Am Geriatr Soc. 2004;52:205-10.3)Laiteerapong N, et al. Diabetes Care. 2011;34:1749-53.4)Johnston SS, et al. Diabetes Obes Metab. 2012;14:634-43.5)Chiba Y, et al. J Diabetes Complications. 2015;29:898-902.6)Pilotto A, et al. Biomed Res Int. 2014 Feb 13.[Epub ahead of print]7)Whitmer RA, et al. JAMA. 2009;301:1565-72.8)Goto A, et al. BMJ. 2013 Jul 29;347:f4533.9)Bramlage P, et al. Cardiovasc Diabetol. 2012;11:122. 10)Feil DG, et al. J Am Geriatr Soc. 2011;59:2263-72.

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新規糖尿病治療薬imeglimin、日本での第III相試験の患者登録完了

 代謝性疾患の革新的な治療薬の研究開発に取り組んでいるフランスのバイオ医薬品企業POXEL SA(以下Poxel社)は、開発中の2型糖尿病治療薬imegliminの日本における第III相試験であるTIMES 1試験の患者登録が2018年7月3日に完了したことを発表した。本剤に関して、今年6月の第78回米国糖尿病学会(ADA)のサイエンスセッションで、前臨床モデルにおけるimeglimin独自の作用機序に関連した新規知見が発表されている。 imegliminは、世界保健機関(WHO)によって新たな化合物クラスである「Glimins」として登録され、同クラスとして初めて臨床試験が実施されている。本剤は、ミトコンドリアの機能を改善するという独自のメカニズムを有しており、また、2型糖尿病治療において重要な役割を担う3つの器官(肝臓・筋肉・膵臓)において、グルコース濃度依存的なインスリン分泌の促進、インスリン抵抗性の改善および糖新生の抑制という作用を示し、血糖降下作用をもたらすことが期待されている。さらに本剤の作用機序は、糖尿病によって引き起こされる細小血管・大血管障害の予防につながる血管内皮機能および拡張機能の改善作用や、膵臓β細胞の保護作用を有する可能性も示唆されている。 本剤の日本における第III相試験であるTIMES試験(Trials of Imeglimin for Efficacy and Safety)は、合計約1,100例の患者を対象とした3本のピボタル試験で構成されている。TIMES 1試験は、200例を超える日本人2型糖尿病患者を対象とした、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照比較、無作為化、単剤療法試験である。TIMES 2およびTIMES 3試験の登録も2018年下半期の完了が期待されており、Poxel社は、提携する大日本住友製薬と緊密に連携し、2020年に予定している日本での承認申請をサポートするという。 2018年6月25日に開催された第78回米国糖尿病学会(ADA)のサイエンスセッションでは、前臨床モデルにおけるimeglimin独自の作用機序に関連した重要な新規知見が発表された(タイトル「Imeglimin Protects Ins-1 Cells and Human Islets Against High Glucose and High Fructose-induced Cell Death by Inhibiting the Mitochondrial PTP Opening」)。研究グループの一人であるフランス・グルノーブルアルプス大学のEric Fontaine氏は、このデータから、細胞死に関与するミトコンドリアのチャネルmPTPの開口を阻害する独自の作用機序によって、フルクトースおよびグルコースが誘発する細胞毒性によるβ細胞の細胞死に対して、imegliminが防御機能を有することが確認されたと述べている。

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糖尿病入院患者の血糖コントロールは人工膵臓で自動化されるか?(解説:住谷哲氏)-893

 糖尿病患者数の増加に伴って糖尿病を合併した入院患者の割合も増えている。その結果、筆者も含めて多くの先生方は、血糖コントロール目的以外で他科に入院している患者の血糖コントロールを依頼されることになる(大阪では共観といいます)。ほとんどの患者は感染症、心不全などの治療や手術目的の入院であり、その血糖コントロール目標も<180mg/dLとほぼ確立している。また治療法も基本は持効型インスリンと超速効型インスリンによるBasal-bolus therapyになる。食事をしている患者であれば毎食前および就眠前の4回の自己血糖測定を実施してインスリン量を調節する。これが研修医にとっての大切なトレーニングになっているのであるが、将来このトレーニングも不要になるかもしれないような報告である。 Closed-loop insulin delivery system(以下、人工膵臓とする)は1型糖尿病患者においては実用化しつつあるが、2型糖尿病患者においてはまだ実用化には至っていない。本論文の著者らは、すでに先行研究において2型糖尿病患者における人工膵臓を用いたRCTでその有効性を報告している1)。今回の報告は、前報では英国のみであった実施施設をスイスも含めた2箇所にしたことと、人工膵臓の装着期間を3日から15日まで延長した点が新しい。 結果は血糖値が目標範囲内(100~180mg/dL)であった時間の割合(平均±SD)は、人工膵臓群65.8±16.8%、対照群41.5±16.9%で人工膵臓群が有意に高値であった(p<0.001)。平均血糖値も人工膵臓群154mg/dL、対照群188mg/dLであった(p<0.001)。また低血糖の時間、インスリン投与量に両群間で差はなかった。 筆者も以前は20人以上の共観患者のインスリン量を調節していたこともあるが、当然ながらかなりの労力を要した。人工膵臓の使用が実用化すれば、われわれ医師を含めた医療スタッフの負担は軽減されるのは確実だろう。しかし本試験で示された、人工膵臓で得られる血糖コントロールの改善が、何らかの臨床アウトカムの改善に結びつくか否かは、現時点では不明である。この点が明らかにされるまでは、研修医のためのトレーニングの機会がなくなることはないだろう。

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抗精神病薬の代謝への影響に関するランダム化比較試験

 青少年の非精神病性の破壊的行動障害の治療において、抗精神病薬は一般的に使用されている。米国・セントルイス・ワシントン大学のGinger E. Nicol氏らは、青少年の初回抗精神病薬曝露と代謝への影響を検討するため、身体計測とインスリン感受性の標準的な評価を用いて調査を行った。JAMA psychiatry誌オンライン版2018年6月13日号の報告。 1つ以上の精神疾患および臨床的に有意な攻撃性を有すると診断され、抗精神病薬治療が考慮された、ミズーリ州セントルイスの抗精神病薬を処方されていない青少年(6~18歳)を対象とし、ランダム化臨床試験を実施した。対象は、2006年6月12日~2010年11月10日に登録され、小児の破壊的行動障害に一般的に使用される3種類の経口抗精神病薬のいずれかを投与する群にランダムに割り付けられ、12週間の評価を受けた。データ解析は、2011年1月17日~2017年8月9日に実施された。主要アウトカムは、全体脂肪率(DXA法[二重エネルギーX線吸収法]で測定)と筋肉のインスリン感受性(安定同位体でラベルされたトレーサーによる高インスリンクランプを介して測定)とした。副次的アウトカムは、腹部肥満(MRIで測定)、脂肪および肝組織のインスリン感受性(トレーサーによるクランプを介して測定)とした。 主な結果は以下のとおり。・対象は144例(男性:98例[68.1%]、平均年齢[SD]:11.3[2.8]歳)、アフリカ系米国人が74例(51.4%)、ベースライン時の過体重または肥満患者は43例(29.9%)であった。・アリピプラゾール群49例、オランザピン群46例、リスペリドン群49例にランダムに割り付けられ、12週間の治療が行われた。・ベースラインから12週目までの主要アウトカムについて、DXAによる全体脂肪率は、リスペリドン群1.18%増加、オランザピン群4.12%増加、アリピプラゾール群1.66%増加であり、リスペリドン群およびアリピプラゾール群よりもオランザピン群において有意に大きかった(治療相互作用による時間:p<0.001)。・ベースラインから12週目までのインスリン刺激による骨格筋の糖取り込み率の変化は、リスペリドン群2.30%増加、オランザピン群29.34%減少、アリピプラゾール群30.26%減少であり、薬剤間に有意な差は認められなかった(治療相互作用による時間:p<0.07)。・インスリン感受性の主要な測定値は、プールされた試験サンプルにおいて、12週間有意に減少した。・ベースラインから12週目までの副次的アウトカムについては、リスペリドン群またはアリピプラゾール群よりもオランザピン群において、皮下脂肪の有意な増加が認められた(治療による時間:p=0.003)。・すべての群において、行動の改善が認められた。 著者らは「青少年に対する12週間の抗精神病薬治療中に、脂肪量およびインスリン感受性の有害な変化が認められ、オランザピンにおいて最も大きな脂肪量の増加が認められた。このような変化は、治療に起因するものであると考えられ、早期の心筋代謝性罹患率および死亡率のリスクと関連している可能性がある」とし、「青少年に対する抗精神病薬使用はリスクとベネフィットを考慮する必要がある」としている。■関連記事破壊的行動障害に対する非定型抗精神病薬使用小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は

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クローズドループシステムの人工膵臓、入院中の2型DMに有用/NEJM

 非集中治療下の2型糖尿病(DM)患者において、クローズドループ型インスリン注入システム、いわゆる人工膵臓の使用は、従来のインスリン療法と比較して、低血糖リスクは上昇せず血糖コントロールを有意に改善することを、スイス・ベルン大学のLia Bally氏らが、非盲検無作為化試験で明らかにした。DM患者は、入院すると急性疾患に対する代謝反応の変動、食事摂取の量やタイミングの変化、薬物性の一時的なインスリン感受性の急速な変化などによって、血糖コントロールの目標達成が難しくなることがある。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型DM患者において血糖コントロールを改善できるという報告が増えていた。NEJM誌オンライン版2018年6月25日号掲載の報告。人工膵臓と従来のインスリン療法の血糖コントロールを比較 研究グループは、英国とスイスにある第3次病院において、一般病棟に入院中のインスリン療法を必要とする18歳以上の2型DM患者136例を、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵臓)群(70例)と、従来の皮下投与によるインスリン療法を受ける対照群(66例)に無作為に割り付けた。 両群とも、血糖値はAbbott Diabetes Care社の持続血糖測定器(CGM)Freestyle Navigator IIを用いて測定した。人工膵臓群では、インスリン注入は完全に自動化され、CGMの低血糖アラームは63mg/dLに設定された。対照群では、CGMのデータは盲検下で、臨床チームが末梢血の随時血糖測定によりインスリン投与量の調整を行った。 主要評価項目は、最大15日間あるいは退院までの期間における、CGMによる血糖値が目標範囲内(100~180mg/dL)であった時間の割合で、intention-to-treat解析にて評価した。人工膵臓群で血糖コントロールが良好 血糖値が目標範囲内であった時間の割合(平均±SD)は、人工膵臓群65.8±16.8%、対照群41.5±16.9%、群間差は24.3±2.9ポイント(95%信頼区間[CI]:18.6~30.0、p<0.001)で、人工膵臓群が有意に高値であった。また、目標範囲を超えていた時間の割合は、それぞれ23.6±16.6%および49.5±22.8%、群間差は25.9±3.4ポイント(95%CI:19.2~32.7、p<0.001)であった。 平均血糖値は、人工膵臓群154mg/dL、対照群188mg/dLであった(p<0.001)。低血糖(CGMによる血糖値が54mg/dL未満)の期間(p=0.80)や、インスリン投与量(投与量中央値は人工膵臓群44.4単位、対照群40.2単位、p=0.50)に関しては、両群で有意差は認められなかった。 重症低血糖あるいは臨床的に重大なケトン血症を伴う高血糖は、両群ともに発生がみられなかった。

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糖尿病での心理的負担が全死亡に影響~日本人男性

 2型糖尿病の日本人男性において、糖尿病に特異的な心理的負担感が全死因死亡と有意に関連することがわかった。天理よろづ相談所病院(奈良県)に通院する糖尿病患者を対象とした大規模レジストリ(Diabetes Distress and Care Registry in Tenri:DDCRT18)を用いた前向きコホート研究の結果を、天理よろづ相談所病院内分泌内科の林野 泰明氏らが報告した。Diabetologia誌オンライン版2018年6月8日号に掲載。 糖尿病患者は、セルフケア(運動、食事療法)や複雑な治療内容(経口血糖降下薬、インスリン注射、自己血糖測定)のために心理的負担感を抱いていることが明らかになっている。本研究では、DDCRT18での2型糖尿病患者3,305例の縦断的データを用いて、心理的負担感をProblem Areas in Diabetes(PAID)スコアで評価し、その後の全死因死亡リスクとの関連を調査。潜在的な交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、PAIDスコアと全死因死亡との独立した関連を調べた(平均追跡期間:6.1年)。 主な結果は以下のとおり。・研究の集団は、男性2,025例、女性1,280例、平均年齢64.9歳、平均BMI 24.6、平均HbA1c値58.7mmol/mol(7.5%)であった。・多変量調整モデルにおいて、PAIDスコアの第1五分位に対する第2~第5五分位の全死因死亡の多変量調整HR(95%CI)は、順に1.11(0.77~1.60、p=0.56)、0.87(0.56~1.35、p=0.524)、0.95(0.63~1.46、p=0.802)、1.60(1.09~2.36、p=0.016)であった。・サブグループ解析において、男性ではPAIDスコアと全死因死亡との関連がみられた(HR:1.76、95%CI:1.26~2.46)が、女性では認められなかった(HR:1.09、95%CI:0.60~2.00)。糖尿病の心理的負担感と性別との間に、有意な関連(p=0.0336)が認められた。

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第4回 水分摂取と各飲料水の糖分について【実践型!食事指導スライド】

第4回 水分摂取と各飲料水の糖分について医療者向けワンポイント解説水分摂取と各飲料水の糖質比較これからの時期、水分摂取を意識することが増え、ペットボトルを購入する機会も多くなりますが、ここに水分摂取の落とし穴があります。1日の水分摂取量の目安として、水分制限がない場合は約1.5~2.0Lといわれています。これは、コップ1杯を200mLと換算して、8~10杯ほどです。水分には、「酸素や栄養素を運ぶ働き」「老廃物を排泄する働き」「血液を循環させる働き」「汗として体温を調整する働き」「体液の性状を一定に保つ働き」など多くの働きがあります。朝、起きがけの1杯から始め、こまめな水分摂取が必要です。夏の時期、「電解質の多いスポーツドリンクを飲んだほうが良い」と考えている糖尿病患者さんなどが、無意識下で清涼飲料水による糖分の過剰摂取で高血糖や清涼飲料水ケトーシスを引き起こすケースもあります。大手2社のスポーツドリンク(ペットボトル500mL)で清涼飲料水の糖質を比較した場合、A社は23.5g、B社は31gでした。これを1本3gのスティックシュガーで換算すると、A社は約8本分、B社は約10本分に相当します。また、最近では、水と間違えてしまうような清涼飲料水もあります。これでは、水分を摂取しているつもりで、糖質を大量に摂取してしまうことになります。飲料に入っている糖分の問題点は、もう1つあります。裏の表示を見ると「果糖ぶどう糖液糖」「果糖 砂糖」などの表記があります。果糖(フルクトース)やブドウ糖(グルコース)は単糖類に分類され、それ以上加水分解されない糖のため、体内に入るとすぐに腸管から吸収されます。また、液糖であることでより吸収がされやすくなります。吸収された糖は、血糖値の急上昇へつながるため、血糖コントロールへの影響、糖化など、生活習慣病のリスクが高くなります。また、果糖は、内臓肥満やメタボへの影響が強く、米国・カリフォルニア大学デービス校のStanhope氏らは「ヒトにエネルギー比25%のフルクトースを10週間摂取させると、内臓脂肪の増加、脂質代謝異常、インスリン抵抗性の発症が引き起こされる」と報告しています1)。さらに、フルクトースはグレリンの抑制作用がなく、満腹中枢にも働かないため、その点においても肥満を助長させる大きな要因となります。空調のきいた室内にいることが多い、運動などをあまりしないなど、大量に汗をかくような環境ではない方や、食事がきちんと食べられている方は、食事から塩やミネラルが摂れるので、水、お茶、麦茶(ミネラル含有)などを中心に水分を摂取してもらいましょう。まずは清涼飲料水の糖質量の多さを認識してもらうこと、清涼飲料水に多く含まれる果糖摂取のリスクを患者さんに認識してもらうことが大切です。飲み物を買う際には、原材料名が記載されたラベルの確認を習慣にするよう伝えることもお勧めします。1)Stanhope KL, et al. J Clin Invest. 2009;119:1322-1334.

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第1回 高齢者糖尿病は何歳から? 何に注意が必要?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第1回 高齢者糖尿病は何歳から? 何に注意が必要?Q1 加齢と糖尿病の関係とは?糖尿病の頻度は加齢とともに増加します。平成28年度の国民栄養調査によると、70歳以上の高齢者で糖尿病が疑われる頻度は男性で23.2%、女性で16.8%となっています(図1)。また、糖尿病患者の中で70歳以上の割合は31.9%を占めています。加齢に伴う糖尿病患者の増加は、加齢に伴うインスリン抵抗性の増加、インスリンの追加分泌の低下、身体活動量の低下などが関係していると考えられています。画像を拡大するQ2 何歳以上を「高齢者糖尿病」として注意すべきでしょうか?高齢者糖尿病は一般に65歳以上の糖尿病を指しますが、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」では、75歳以上の後期高齢者と機能低下がある一部の前期高齢者が、「高齢者糖尿病」として、とくに注意すべき治療の対象とされています。これは、後期高齢者の糖尿病が前期高齢者の糖尿病と比較して、異なる特徴を示しているからです。第一に、高齢糖尿病患者を対象としたJ-EDIT研究における、MMSE(認知機能検査)の点数をみてみると、65~69歳の患者と比較して75歳以上の患者ではじめて有意に低下します(図2a)。また、日常生活動作であるADLも80歳以上で低下します。同じJ-EDIT研究で老研式活動能力指標を用いて、買い物、金銭管理などの手段的ADL、知的活動、社会的役割を含む高次ADLの障害数を評価したところ、80歳以上で有意に高次ADLの障害数が大きくなります(図2b)。画像を拡大するさらに、高齢者は加齢とともに体組成が大きく変化します。65歳以上の入院高齢糖尿病患者を対象に内臓脂肪面積100cm2以上の蓄積の頻度をみると、75歳以上で内臓脂肪蓄積が増加しています(図3a)。さらに、DEXA法で四肢の筋肉量(除脂肪量)をみると、男女ともに80歳以上で有意に低下しています(図3b)。この内臓脂肪の増加と筋肉量の低下は、インスリン抵抗性を大きくすることで、高齢者糖尿病の病態に大きく関わっています。画像を拡大する腎機能も75~80歳以上で有意に低下します。eGFRcreは筋肉量の影響を受けやすく、eGFRcysや血清シスタチンC濃度の加齢変化をみてみると、80歳以上で有意に増加しています(図4)。この腎機能障害は腎排泄性の薬剤(たとえばSU薬)の蓄積をもたらし、低血糖などの副作用を起こしやすくします。低血糖に関しても、80歳以上の患者で救急外来を受診する低血糖や重症低血糖が起こりやすいことが知られています。この重症低血糖の増加の原因は、上記の薬剤の蓄積しやすさに加えて、急性疾患によって食事摂取が低下しやすいこと、認知機能やADLの低下によって低血糖の対処能力が低下することが考えられます。合併症の中では、80歳以上の患者で脳卒中と心不全が起こりやすいことが知られています。上記に加えて、社会サポートが低下しやすいために、自立した生活を送ることが難しくなるだけでなく、インスリン注射などの糖尿病に関するセルフケアも困難になります。画像を拡大する Q3 「高齢者糖尿病」の治療目的・診断は若壮年者と違うのでしょうか?上記の理由から、「高齢者糖尿病」の治療目的は合併症の予防だけではなく、QOLの維持向上を目指し、さらに認知機能障害、ADL低下、サルコペニアなどの老年症候群を予防することにあります(図5)。また、QOLの維持・向上を図るためには、低血糖などを防ぎ、食のQOLを保つことも大切です。さらに、患者のみならず介護者の治療の負担を軽減することも大切です。なお、高齢者糖尿病の診断は若い人と同様に行います。画像を拡大する

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高血圧・高脂血症の治療は認知症を予防するか

 アルツハイマー病(AD)と血管リスク因子(VRF)の関連について疫学的エビデンスはあるが、VRFの治療が認知症やADの発症率を低下させるのか不明である。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C. Larsson氏らが、認知症およびADの発症におけるVRFの治療の影響について系統的レビューとメタ分析で検討した結果、降圧薬とスタチンが認知症やADの発症率を低下させる可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2018年6月9日号に掲載。 著者らは、PubMedで2018年1月1日までに公表された関連研究から、認知症とAD発症率に対するVRF治療の影響を調査した無作為化比較試験(RCT)と前向き研究を同定した。 主な結果は以下のとおり。・8件のRCTと52件の前向き研究が同定された。・降圧治療により、RCT(5件、相対リスク[RR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.69~1.02)および前向き研究(3件、RR:0.77、95%CI:0.58~1.01)では、有意ではないが認知症リスクが低下し、前向き研究(5件、RR:0.78、95%CI:0.66~0.91)ではADリスクが低下した。・前向き研究において、スタチンによる高脂血症治療により認知症(17件、RR:0.77、95%CI:0.63~0.95)およびAD(13件、RR:0.86、95%CI:0.80~0.92)のリスクが低下したが、スタチン以外の脂質降下薬では低下しなかった。1件のRCTで、スタチンと認知症発症との関連は示されなかった。・1件のRCTおよび6件の前向き研究のデータから、血糖降下薬またはインスリン療法による認知症リスクへの有益な影響は示されなかった。

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第3回 意識障害 その3 低血糖の確定診断は?【救急診療の基礎知識】

72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+10のルールのうち低血糖に注目この症例は前回お伝えしたとおり、左中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症でした。誰もが納得する結果だと思いますが、脳梗塞には「血栓溶解療法(rt-PA療法)」、「血栓回収療法」という時間に制約のある治療法が存在します。つまり、迅速に、そして正確に診断し、有効な治療法を診断の遅れによって逃すことのないようにしなければなりません。頭部CT、MRIを撮影すれば簡単に診断できるでしょ?! と思うかもしれませんが、いくつかのpitfallsがあり、注意が必要です。今回も“10’s Rule”(表1)にのっとり、説明していきます1)。今回は5)からです。画像を拡大する●Rule5 何が何でも低血糖の否定から! デキスタ、血液ガスcheck!意識障害患者を診たら、まずは低血糖を除外しましょう。低血糖になりうる人はある程度決まっていますが、緊急性、簡便性の面からまず確認することをお勧めします。低血糖の時間が遷延すると、低血糖脳症という不可逆的な状況となってしまうため、迅速な対応が必要なのです。低血糖によって片麻痺や失語を認めることもあるため、侮ってはいけません2)。低血糖の診断基準:Whippleの3徴(表2)をcheck!画像を拡大する低血糖と診断するためには満たすべき条件が3つ存在します。陥りがちなエラーとして血糖は測定したものの、ブドウ糖投与後の症状の改善を怠ってしまうことです。血糖を測定し低いからといって、意識障害の原因が低血糖であるとは限りません。必ず血糖値が改善した際に、普段と同様の意識状態へ改善することを確認しなければなりません。血糖低値と低血糖は似て非なるものであることを理解しておきましょう。低血糖の原因:臭いものに蓋をするな!低血糖に陥るには必ず原因が存在します。“Whippleの3徴”を満たしたからといって安心してはいけません。原因に対する介入が行われなければ再度低血糖に陥ってしまいます。低血糖の原因は表3のとおりです。最も多い原因は、インスリンやスルホニルウレア薬(SU薬)など血糖降下作用の強い糖尿病薬によるものです。そのため使用薬剤は必ず確認しましょう。画像を拡大するるい痩を認める場合には低栄養、腹水貯留やクモ状血管腫、黄疸を認める場合には肝硬変(とくにアルコール性)を考え対応します。バイタルサインがSIRS(表4)やqSOFA(表5)の項目を満たす場合には感染症、とくに敗血症に伴う低血糖を考えフォーカス検索を行いましょう(次回以降で感染症×意識障害の詳細を説明する予定です)。画像を拡大する画像を拡大する低血糖の治療:ブドウ糖の投与で安心するな!低血糖の治療は、経口が可能であればブドウ糖の内服、意識障害を認め内服が困難な場合には経静脈的にブドウ糖を投与します。一般的には50%ブドウ糖を40mL静注することが多いと思います。ここで忘れてはいけないのはビタミンB1欠乏です。ビタミンB1が欠乏している状態でブドウ糖のみを投与すると、さらにビタミンB1は枯渇し、ウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群を起こしかねません。ビタミンB1が枯渇している状態が考えられる患者では、ブドウ糖と同時にビタミンB1の投与(最低でも100mg)を忘れずに行いましょう。ビタミンB1の成人の必要量は1~2mg/日であり、通常の食事を摂取していれば枯渇することはありません。しかし、アルコール依存患者のように慢性的な食の偏りがある場合には枯渇しえます。一般的にビタミンB1が枯渇するには2~3週間を要するといわれています。救急外来などの初療では、患者の背景が把握しきれないことも少なくないため、アルコール依存症以外に、低栄養状態が示唆される場合、妊娠悪阻を認める患者、さらにはビタミンB1が枯渇している可能性が否定できない場合には、ビタミンB1を躊躇することなく投与した方が良いでしょう。ウェルニッケ脳症はアルコール多飲患者にのみ発症するわけではないことは知っておきましょう(表6)。画像を拡大するそれでは、いよいよRule6「出血か梗塞か、それが問題だ!」です。やっと頭部CTを撮影…というところで今回も時間がきてしまいました。脳卒中や頭部外傷に伴う意識障害は頻度も高く、緊急性が高いため常に考えておく必要がありますが、頭部CTを撮影する前に必ずバイタルサインを安定させること、低血糖を除外することは忘れずに実践するようにしましょう。それではまた次回!1)坂本壮. 救急外来 ただいま診断中!. 中外医学社;2015.2)Foster JW, et al. Stroke. 1987;18:944-946.コラム(3) 「くすりもりすく」、内服薬は正確に把握を!高齢者の多くは、高血圧、糖尿病、認知症、不眠症などに対して定期的に薬を内服しています。高齢者の2人に1人はポリファーマシーといって5剤以上の薬を内服しています。ポリファーマシーが悪いというわけではありませんが、薬剤の影響でさまざまな症状が出現しうることを、常に意識しておく必要があります。意識障害、発熱、消化器症状、浮腫、アナフィラキシーなどは代表的であり救急外来でもしばしば経験します。「高齢者ではいかなる症状も1度は薬剤性を考える」という癖を持っておくとよいでしょう。また、内服薬はお薬手帳を確認することはもちろんのこと、漢方やサプリメント、さらには過去に処方された薬や家族や友人からもらった薬を内服していないかも、可能な限り確認するとよいでしょう。お薬手帳のみでは把握しきれないこともあるからです。(次回は7月25日の予定)

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メポリズマブは難病EGPAの治療を変えるか

 2018年6月6日、グラクソスミスクライン株式会社は、同社のメポリズマブ(商品名:ヌーカラ)が、5月25日に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以下「EGPA」と略す)の適応追加の承認を取得したことを期し、本症に関するメディアセミナーを都内で開催した。 セミナーでは、EGPAの診療概要ならびにメポリズマブの説明が行われた。EGPAの診断、喘息患者に神経症状が現れたら要注意 セミナーでは、石井 智徳氏(東北大学 血液免疫病学分野 特任教授)が、「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症について」をテーマにEGPAの最新の知見を講演した。 EGPAは、従来「チャーグ・ストラウス症候群」や「アレルギー性肉芽腫性血管炎」と呼ばれていたが、2012年より本症名で統一された。EGPAの病態は、気管支喘息というアレルギーの要素と種々の臓器障害という血管炎の要素を併せ持った疾患であり、自己抗体(ANCA:抗好中球細胞質抗体)が出現することで著明な好酸球増多を起こし、血管に炎症を起こすとされている。わが国のEGPAの患者像として、推定患者は約2,000例、男女比では女性が多く、その平均発症年齢は55歳、気管支喘息の既往歴のある患者が多いという。 EGPAの全身症状としては、発現頻度順にしびれ、感覚障害などの「神経症状」(93%)、発熱、関節痛などの「全身症状」(76%)、肺炎などの「呼吸器症状」(60%)、紫斑などの「皮膚症状」(51%)、糸球体腎炎などの「腎障害」(39%)、副鼻腔炎などの「耳鼻咽喉症状」(23%)、不整脈などの「心血管系症状」(16%)、腹痛、下痢などの「消化器症状」(16%)、強膜炎などの「粘膜・目の症状」(10%)が報告されている。 診断では、先行症状の喘息、副鼻腔炎などからEGPAに結びつけることは難しく、ANCAでは臨床検査を行っても陽性率が30~50%とあまり高くなく、診断では見逃されている可能性が高いという。石井氏は「EGPAの診断では、患者教育と丁寧な問診、診察が求められ、患者が『最近、喘息発作が多い』『手足がしびれた感じがする』『足首に力が入らず上げられない』など訴えた場合は、本症を疑うべき」と診療のポイントを示した。また、EGPAでは、血管炎による心血管症状が最も予後に関わることから息切れ、心電図異常、MRI・心エコー検査の結果に注目する必要があるという。メポリズマブによるEGPA治療でステロイドを減量できた EGPAの治療では、現在第1選択薬としてステロイドが使用されている。ステロイドは、効果が確実に、早く、広く作用する反面、易感染症、骨粗鬆症、糖尿病の発症、脂質異常症、肥満など副作用も多いことが知られている。そこでステロイド抵抗性例やステロイドの減量を目的に、シクロフォスファミド、アザチオプリン、タクロリムスなどの免疫抑制剤が治療で併用されている。効果はステロイドのように広くないものの、長期投与では副作用がでにくく、最初はステロイドで治療し、免疫抑制剤とともにステロイドを減量する治療も行われている。そして、今回登場した生物学的製剤メポリズマブは、好酸球を作るIL-5に結合することで、好酸球の増殖を阻止し、血管などでの炎症症状を抑える効果を持つ。副作用も注射部位反応はプラセボに比べて多いものの、重篤なものはないという。 最後に石井氏は、「本症のステロイド治療者で糖尿病を発症し、インスリン導入になった患者が、メポリズマブを使用したことでステロイドの減量が可能となり、インスリンを離脱、糖尿病のコントロールができるようになった」と具体的な症例を紹介するとともに、「メポリズマブは、好酸球浸潤のコントロールが難しかった症例への適用やステロイドが減量できなかった症例への効果が期待でき、さらに再燃を抑制し、寛解維持を目指すことができる」と希望を寄せ、講演を終えた。メポリズマブの製品概要 薬効分類名:ヒト化抗IL-5モノクロナール抗体 製品名:ヌーカラ皮下注 100mg 効能・効果:(追加として)既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 用法・容量:通常、成人にはメポリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを4週間ごとに皮下に注射する

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高齢者糖尿病の治療で避けたい治療薬

 2018年5月24日より3日間開催された第61回日本糖尿病学会年次学術集会(学会長:宇都宮 一典)にて「高齢者糖尿病の病態と診療のポイント」をテーマに、井藤 英喜氏(東京都健康長寿医療センター 理事長)が教育講演を行った。 本稿では教育講演の概要をお届けする。全糖尿病患者の約80%が60歳以上という現実 わが国の高齢者人口は、全人口の27%を超え、これに伴い60歳以上の糖尿病患者が全糖尿病患者の約80%を占める状況となった。こうした状況を受け、高齢糖尿病患者特有の症状や病態を考慮に入れ、欧米のガイドラインなどを参考に、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会により作成された『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』(南江堂)、『高齢者糖尿病治療ガイド2018』(文光堂)が発行された。ガイドラインでは、高齢者糖尿病を認知機能やADLなどの条件で3つのカテゴリーに分け、血糖コントロール目標値をカテゴリー別に7.0~8.5%未満に設定するとともに、重症低血糖が危惧される糖尿病薬を使用している場合は目標値に下限値を設けるなどの指針を示すものとなっている。高齢者糖尿病に特有な病態の理解が必要 高齢者糖尿病は2型がそのほとんどを占め、発症原因として生活習慣の集積に加え、臓器の加齢変化が指摘されている。また、患者は糖尿病に加え、高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症(ASO)、腎機能障害、がんなど多彩な疾患を合併していることが多く、多剤を併用しているケースが多い。多剤併用や糖尿病薬で起こる低血糖は、うつ、認知機能低下、QOLの低下、転倒・骨折など、さまざまな弊害をもたらす。とくに低血糖に関し、「高齢者では、無自覚、あるいは症状があっても非典型的な場合もあり、周囲からの注意も必要だ」と同氏は警鐘を鳴らす。また、糖尿病自体が、要介護の原因となる認知症や転倒・骨折などの老年症候群の危険因子であることが明らかにされており、「高齢者糖尿病の診療では、いかに老年症候群の発症・進展を予防するかも含め、考える必要がある」と同氏は指摘する。高齢者糖尿病の治療で大事なポイント 高齢者糖尿病の治療では、大きな目標として成人糖尿病と同じく「血管合併症の予防」があるが、同時に、高齢者では「健康寿命の延伸」「老年症候群の予防」「重症低血糖の予防」が重要であり、そのためには「患者背景に即した安全・妥当な治療」の実施が求められる。血糖に関しては、診療ガイドラインに記載されているとおり、年齢、認知機能、ADLの状況、併存疾患、使用薬剤を考慮に入れ、個々の症例に最適と考えられている血糖コントロール目標値を目安にコントロールする。 食事療法は、75歳以上の後期高齢者ではタンパク質摂取量が少ないほど死亡率が上昇する。そして、高齢者ではタンパク質摂取量が低下すると筋肉量や筋力が減少し、フレイルやサルコペニアなどの老年症候群が惹起されやすくなるといったことから、タンパク質を含む食品、肉や魚、さらに大豆、ミルク・乳製品、豆類などの摂取が推奨される。また、大豆製品や野菜、海藻などの摂取は、認知機能維持に有用という報告もあるので、高齢者ではとくにこれらの食品の摂取が勧められる。 運動療法は、定期的な身体活動が代謝異常の是正だけでなく、生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制に有用であるとされる。歩行、水泳などに代表される有酸素運動、スクワット、ダンベルに代表されるレジスタンス運動のほかに、高齢者糖尿病では、片脚立ちなどのバランス運動が転倒予防に有効であり、これらを絡めて行う必要がある。 薬物療法では、ガイドライン記載のとおり、「低血糖の防止」「多剤併用への注意」が重要となる。とくに「低血糖を起こしやすいSU薬、グリニド薬、インスリンの使用はなるべく避け、使用する場合は、低血糖対策を立て、患者や介護者にその対処法を十分説明しておく必要がある。また、高齢者はシックデイになりやすいので、低血糖同様にそれへの対応・予防策の教育も大事だ」と同氏は指摘する。 最後に「高齢者糖尿病患者の診療は、患者のQOLの維持・向上、現在の生活の継続を支援するという視点から考えた治療を行い、患者の生活背景を考慮に入れ、起こりうる有害事象を避けながら治療を継続していくことが重要だ」と同氏は語り、講演を終えた。

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週1回製剤が糖尿病患者の負担軽減

 近年、糖尿病治療にはさまざまな薬物療法が登場する中、患者の意向や負担を考慮し、個々のライフスタイルに合わせた治療方法の選択が望まれている。しかし、糖尿病患者の負担を評価する既存の質問票では、薬物治療に対しての負担を抽出して評価することは難しい。 そこで今回、奈良県立医科大学は、日本イーライリリー株式会社の支援により、2型糖尿病患者における薬物治療の負担を測定するアンケート調査手法、「DTBQ(Diabetes Treatment Burden Questionnaire:糖尿病薬物治療負担度質問票)」を開発し、検証・調査を行った。 本試験の解析結果より、DTBQの信頼性が示され、服用による患者負担は、注射薬より経口薬のほうが小さく、また投与頻度が少ないほど小さくなることが明らかになった。本結果は、論文としてDiabetes Therapy誌2018年3月29日号に掲載された。 本研究は、外来で以下の6種類のうち1種類の治療を12週間以上受けている 2型糖尿病患者236例を対象に行われた。1. 注射薬(GLP-1受容体作動薬:以下GLP-1)を週1回±経口血糖降下薬2. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日1回±経口血糖降下薬3. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日2~3回±経口血糖降下薬4. 経口血糖降下薬のみを週1回5. 経口血糖降下薬のみを1日1回6. 経口血糖降下薬のみを1日2~3回 DTBQは、(1)基本情報を聴取するパートと、(2)薬物療法に対する負担感を評価するパートで構成されている。(2)の質問は、18項目それぞれを1~7点で回答し、このスコアレベルをもとに治療負担を評価する。 検証は、信頼性評価として、236例を対象に1回目のDTBQ記入を実施、ならびに再現性評価として、47例を対象に、1回目のDTBQ記入に続き2回目の記入を実施した。 主な結果は以下のとおり。・週1回の経口薬の患者負担が最も小さく、次いで1日1回の経口薬、週1回の注射薬の順となり、1日複数回の服用は患者負担が大きかった。・HbA1c値が7.0%未満の患者と7.0%以上の患者を比較すると、後者のほうがより負担を感じていた。・低血糖経験のない患者よりも、経験のある患者のスコアが有意に高く、低血糖経験のある患者のほうが治療に対して負担を感じていた。・注射薬、経口血糖降下薬ともに、コンプライアンスのよい患者は治療に対する負担が軽度であった。・本試験の解析の結果、Cronbach’s α係数が0.7775~0.885であったことから各質問に対する回答の一貫性が示され、信頼性が明らかになった。・級内相関係数(ICC)が0.912であったことから、1回目の回答と2回目の回答の一致度が高いことが示され、再現性に優れていることが判明した。 この結果について、石井 均氏(奈良県立医科大学 糖尿病学講座 教授)は、「今後この結果は患者さんをより理解すること、そのうえで患者さんに合った、より良い治療方針を決定していくことに役立つことを確信しています」とコメントしている。■原著論文1)Ishii H, et al. Diabetes Ther. 2018 Mar 29. [Epub ahead of print]■参考日本イーライリリー株式会社 プレスリリース

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SGLT2阻害薬は死亡率、心血管イベントの低減に最も有用(解説:吉岡成人氏)-856

2型糖尿病の治療薬の選択 糖尿病の治療薬の選択に対して、日本糖尿病学会では患者の病態に応じて薬剤を選択することを推奨しているが、米国糖尿病学会ではメトホルミンを第一選択薬とし、心血管疾患の既往がある患者では、SGLT2阻害薬ないしはGLP-1受容体阻害薬を併用することを推奨している。その背景には、EMPA-REG OUTCOME試験、CANVASプログラム、LEADER試験、SUSUTAIN-6などの臨床試験によって、これらの薬剤が心血管イベントに対して一定の抑制効果を示したことが挙げられる。 それでは、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体阻害薬との比較ではどうなのか、日本で最も使用されているDPP-4阻害薬と比較した場合はどうなのだろうかという疑問に答える論文が報告された。ネットワークメタ解析での比較 通常のメタ解析では治療介入を行ったランダム化比較試験(RCT)を統合して介入の効果を検証するが、3種類以上の介入の効果を比較検討することはできない。Zheng SLらはネットワークメタ解析の手法を用いて、実際のhead-to-headの試験を行うことなく、多数のRCTの結果を統計学的に併合して直接的、間接的な比較を行った結果を報告している。本論文では各薬剤を使用して12ヵ月間以上観察された236件のRCTを抽出し、各薬剤とコントロール群、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬とSGLT2阻害、GLP-1受容体阻害薬とSGLT2阻害の各群において、全死亡を主要アウトカム、心血管死、心不全、心筋梗塞と不安定狭心症、脳卒中を二次アウトカムとして薬剤間の有用性を検証している(Zheng SL, et al. JAMA. 2018 Apr 17;319: 1580-1591. )。SGLT2阻害の有用性が明らかに 各群における対象患者の平均年齢は50代前半から後半までと比較的若く、HbA1cも8.2%前後で、罹病期間が長く血糖コントロールが不良な患者は多く含まれてはいない。しかし、全死亡については、GLP-1受容体阻害薬とSGLT2阻害薬はコントロール群、およびDPP-4阻害薬投与群に比較して有意に減少させており、GLP-1受容体作動薬投与群とSGLT2阻害薬投与群との間には有意差はなかった。この傾向は心血管死亡率についても同様であった。一方、心不全イベントについては、SGLT2阻害の有用性が最も高く、コントロール群、DPP-4阻害薬投与群に対してのみならず、GLP-1受容体投与群に対しても有意に心不全イベントの抑制効果を示していた。 欧米では、2型糖尿病の治療に対して、低血糖や体重増加を来しにくい薬剤が推奨されており、メトホルミンが第一選択薬となっている。今回の結果は、心血管イベントによる死亡が多い欧米人にあっては、SGLT2阻害が第二選択薬としてのポジションをより強固なものにした印象を与える。日本でも、虚血性心疾患のハイリスク患者、心不全患者、糖尿病腎症の患者などでは積極的に、SGLT2阻害薬が使用されつつある。しかし日本人の糖尿病患者では欧米に比較して心血管イベントは少なく、65歳以上の高齢者が多く、インスリン分泌も低い。これらの点を考慮すると、現在広く用いられているDPP-4阻害が重用される現状はしばらく続くのかもしれない。

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日本糖尿病学会 第61回年次学術集会 :シンポジウム 「甦れβ細胞よ! ~女性研究者が糖尿病を克服する~」 を開催[5月25日(金)]

 日本糖尿病学会「女性糖尿病医をpromoteする委員会」は、第61回年次学術集会(2018年5月24日(木)~26日(土))内で以下のシンポジウムを開催する。「甦れβ細胞よ! ~女性研究者が糖尿病を克服する~」:シンポジウム20 (日本糖尿病学会 第61回年次学術集会)【日時】2018年 5月25日(金) 14:20 ~ 17:20【会場】JPタワー 4F: ホール1+2 (東京)(第61回年次学術集会: 第16会場)【座長】植木 浩二郎氏(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター)成瀬 桂子氏(愛知学院大学 歯学部内科学講座)【講演】The changing beta cellSusan Bonner Weir, PhD (Harvard Medical School/Joslin Diabetes Center)ヒト iPS 細胞から膵臓β細胞への分化誘導の技術開発粂 昭苑氏(東京工業大学生命理工学院)アクティブゾーンタンパク質ELKSのインスリン分泌における役割今泉 美佳氏(杏林大学医学部生化学)蛍光技術を活用した生理活性物質放出機構の解析高橋 倫子氏(北里大学医学部生理学)膵β細胞からα細胞への変換メカニズム小谷 紀子氏(慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科)【総合討論】「Women, be ambitious ! 」テーマ1: 女性研究者として研究を続け、キャリアップするために、何が重要かテーマ2: 女性研究者を育てるために、重要なこと■関連リンク「女性医師応援ライブラリ」 (日本糖尿病学会ホームページ 「女性糖尿病医サポートの取り組み」)

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肥満2型糖尿病に対するメタボリックサージェリーの展望

 わが国では、2014年4月に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術手術が保険適応になってから、すでに4年が経っている。このほかに実施されている3つの術式(腹腔鏡下スリーブバイパス術、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術)はそれぞれ自費診療であったが、2型糖尿病を合併する重症肥満患者に対する腹腔鏡下スリーブバイパス術が、先進医療として2018年1月に認可された。この治療法の開発者であり普及を目指す、笠間 和典氏(四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センター センター長)が2018年4月11日、メドトロニック株式会社本社にてメタボリックサージェリーについて講演した。日本の治療件数は認知度に相関 同氏によると2018年3月に開催されたアジア太平洋肥満代謝外科学会(APMBSS)でのNational reportの結果では、全手術件数トップはサウジアラビアの1万7,000件、それに対して日本は471件。隣国の台湾でも2,834件と日本と比較すると大きな乖離があり、「この原因は言うまでもなく認知度が低いためである」という。手術適応患者の要件 日本肥満学会によると、日本人の肥満症の定義であるBMI≧25は、WHOが定義するBMI≧30とは異なる。肥満患者はさまざまな合併症を伴っており、その中の1つが2型糖尿病である。患者は一生、糖尿病と共存するだけではなくさまざまな合併症も併発し、治療上多くの薬剤が必要となることから医療経済にも負担を強いることとなる。また、美容目的で施術される脂肪吸引と混同されがちなため、日本肥満症治療学会が手術適応患者を以下のように定義している。<肥満手術の要件>・年齢18歳以上、65歳以下・ 6ヵ月以上の内科的治療が行われているにもかかわらず、有意な体重減少および肥満に伴う合併症の改善が認められず、次のいずれかの条件を満たすもの 1)減量が目的の場合はBMI 35以上であること 2)合併疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の場合、糖尿病または糖尿病以外の2つ以上の合併疾患を有する場合は BMI 32以上であること腹腔鏡下スリーブバイパス術が体内にもたらす影響とは 海外で多く実施されている胃バイパス術は、術後体内に空置きされた胃が残ってしまう。日本人は胃がんのリスクが高いため、術後胃がん検査を行えないこの術式は不適である。また、現在日本で多くの実績を上げている腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は術後の合併症が少ないものの、重症2型糖尿病の改善率が低い。そこで、これらの長所を生かしたのが腹腔鏡下スリーブバイパス術である。この術式は胃の幽門と十二指腸とを吻合するため、ダンピングが少ない、潰瘍が少ない、胃の観察が通常の胃内視鏡でできるなどのメリットがある。それに加えて、糖尿病などの内分泌疾患の改善が報告されているという。そこで、同氏は減量外科治療のうち、スリーブバイパス術を受け、1年間経過観察された2型糖尿病の日本人75例のHbA1c、BMI、そして薬物離脱率を検証。対象患者のうち48%が術前にインスリンを使用し、糖尿病罹患期間は7.2±6.2年であった。結果は以下のとおり。・HbA1c<7.0%を達成したのは、術後1年後で93%だった。また、術後インスリンを離脱できたのは97%だった。・BMIは術前38.5から術後1年後27.2、5年後は28.4(p<0.001)と減少を維持できた。糖尿病外科誕生に期待 同氏は、「2型糖尿病患者が糖尿病のない人生を送るために、外科と内科が手を組んでメタボリックサージェリーを普及させる時が来た」と意気込みを語った。また、米国糖尿病学会(ADA)ガイドライン2017年版では“肥満を伴う糖尿病の治療”としてBMIに応じて外科治療を推奨する治療アルゴリズムが採用され、「糖尿病治療としての位置付けが確立した」と述べた。同ガイドラインでは、“糖尿病外科治療はBMI 27.5から32.4の内服や注射薬でも良好な血糖コントロールの得られないアジア人に対して、オプションとして考慮されるべきである”とされている。 最後に同氏は「安全が第一であり、これらが急速に普及した場合の問題に備え、日本内視鏡外科学会ならびに日本肥満症治療学会では、合同で腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術導入要件を発表して注意喚起を行っていく」と締めくくった。■参考日本肥満症治療学会編.日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013 年版)日本内視鏡外科学会および日本肥満症治療学会における腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術の導入要件

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POEMS(クロウ-深瀬)症候群

1 疾患概要■ 概念・定義POEMS症候群の名称は、polyneuropathy、organomegaly、endocrinopathy、M-protein、skin changeの頭文字に由来する。「クロウ-深瀬症候群」、「高月病」とも呼ばれる。名称のとおり、多発ニューロパチーを中核症状とし、肝脾腫などの臓器腫大、内分泌異常、皮膚変化(色素沈着、剛毛、血管腫など)という多彩な症状を呈し、M蛋白を伴う全身性の疾患である。症状は多彩であるが、その病態基盤は形質細胞異常(plasma cell dyscrasia)とサイトカインである血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の上昇であると考えられている。多発ニューロパチーが中核症状となることが多い一方で、plasma cell dyscrasia由来の疾患でもあり、神経内科または血液内科で診療することが多い。2015年1月に、新規に指定難病の1つとなった。■ 疫学わが国で行われた2003年の全国調査に基づく推定有病率は、10万人当たり0.3人であり、いわゆる希少疾病である。しかし、その多彩な症状ゆえに、診断が困難な例も少なくなく、実際の有病率はもう少し高い可能性がある。平均発症年齢は50代であるが、30代の発症もまれではない。男性に多い。■ 病因上述のごとく、POEMS症候群の病態の中心はplasma cell dyscrasiaとVEGFの上昇であると推定されている。VEGFは血管新生作用以外に強い血管透過性亢進作用を持ち、本症候群で特徴的に認められる浮腫、胸腹水などの所見とよく合致する。しかし、plasma cell dyscrasiaとVEGF上昇がどのように関連するかについては、現時点では不明である。また、多発ニューロパチー、内分泌異常、皮膚異常などの症状が生じるメカニズムについても明確になっていない。VEGF上昇とともに、TNFα、IL6、IL-12を含む複数の炎症性サイトカインの上昇も確認されており、複雑な病態に関与している可能性が高い。■ 症状POEMS症候群で認められる臨床症状として頻度が高いのは、多発ニューロパチー、浮腫、皮膚変化、リンパ節腫脹、女性化乳房である。典型的な多発ニューロパチーは、下肢優位の四肢遠位のしびれと筋力低下を呈する。重症度は症例により異なり、アキレス腱反射の低下のみの症例から重度の四肢麻痺の症例まで存在する。また、数ヵ月の経過で、歩行に介助が必要になるまで進行する例が多い。通常、浮腫は下腿以遠に目立つ。進行例では、明確な圧痕を残すほど顕著となり、腹部、上肢、顔面にも浮腫が出現する。皮膚変化は、色素沈着、剛毛の頻度が高い。色素沈着は独特のやや赤味を帯びた褐色を呈する(図)。剛毛は前腕や下腿に目立つ。画像を拡大する■ 予後POEMS症候群の機能・生命予後は、適切な治療が行われない場合、不良である。機能予後は、多発ニューロパチーの重症度に依存する。無治療では過半数の症例が、発症1年以内に杖歩行となる。また、1980年代は適切な治療が行われなかったため、平均生存期間は33ヵ月と報告されている。近年、疾患の認知度向上による診断技術の向上、ならびに骨髄腫治療の本症候群への応用による治療の進歩で、予後は大幅に改善しつつある。しかし、急速な悪化を認めうる疾患であり、また多臓器障害が生じることも少なくないので、治療方針検討や経過観察には、慎重を期す必要がある。低アルブミン血症、初回治療への反応性不良、高齢(50歳以上)、肺高血圧、胸水、腎機能障害などが、予後不良因子として挙げられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)POEMS症候群の診断は診断基準に基づいて行われる。しかし、類似の診断基準が複数あり、いずれも感度・特異度について検討されていないのが、現在の問題点である。国際的に最も代表的な基準は、2012年のCochrane database systematic reviewで採用されているものである。しかし、わが国では、下表の診断基準が指定難病の認定に使用されている。本診断基準の特徴は、単クローン性形質細胞増殖が検出できない例であっても、積極的に診断できる点において優れている。そのため、日常診療で運用する上では、下表の診断基準を用いる方が、診断感度も高く、利便性にも優れる。表 POEMS症候群の診断基準●大基準多発ニューロパチー血清VEGF上昇(1,000 pg/mL以上)M蛋白(血清または尿中M蛋白陽性 [免疫固定法により確認] )●小基準骨硬化性病変、キャッスルマン病、臓器腫大、浮腫、胸水、腹水、心嚢水、内分泌異常*(副腎、甲状腺、下垂体、性腺、副甲状腺、膵臓機能)、皮膚異常(色素沈着、剛毛、血管腫、チアノーゼ、爪床蒼白)、乳頭浮腫、血小板増多(1)Definite:大基準3つ+小基準 少なくとも1つ(2)Probable:大基準2つ+小基準 少なくとも1つ*糖尿病と甲状腺機能異常は有病率が高いため、これのみでは本基準を満たさない。引用: Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.以下に、検査、診断に際しての注意点を列記する。1)多発ニューロパチー明確な自覚症状を認めない場合もあり、神経伝導検査によるニューロパチーの有無の検索と性状の確認は必須である。原則は、本症候群のニューロパチーの性状は脱髄と二次的軸索変性である。非常に軽症例では、ごくわずかの異常しか認められない場合もある。2)単クローン性の形質細胞増殖血液・尿のM蛋白のスクリーニングにより、大部分の症例では検出可能である。しかし、POEMS症候群ではM蛋白の量は非常に微量のため、免疫固定法による確認が必須である。M蛋白のサブクラスの多くはIgGまたはIgAのλ型である。3)VEGF外注検査会社で測定可能である。VEGF値の測定は、診断確定、治療効果判定に非常に有用であるが、現時点では保険適用にないことが大きな問題点である。血清・血漿のいずれで測定すべきかの結論は出ていない。しかし、指定難病の認定は血清で行われている。外注検査会社に「血清で測定」の指示にて依頼する。4)骨病変硬化性変化が一般的である。しかし、溶骨性変化や混合性変化を認めることもある。胸腹水の検索目的で施行した胸腹骨盤部のCT検査の骨条件で胸骨、椎体、骨盤などの硬化性病変をスクリーニングすることが可能である。さらに精査を進める際には、PET検査が有用である。5)内分泌障害性腺機能異常、甲状腺機能異常、耐糖能異常、副腎機能異常などの頻度が高い。スクリーニング検査として、LH・FSH・E2(エストラジオール)・テストステロン・TSH・FT3・FT4・血糖・インスリン・ACTH・コルチゾールなどの検査を行う。鑑別診断として問題となりやすいのは、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)、ALアミロイドーシスである。POEMS症候群の進行例では、浮腫・皮膚障害をはじめ、多彩な典型的症状を伴うため、鑑別が問題となることは少ない。しかし、発症初期で臨床症状や検査所見が揃わない場合には、ニューロパチーの臨床および神経伝導検査所見を詳細に比較することにより、鑑別が可能となる。CIDPの典型例の臨床症状は、左右対称性のしびれと近位筋を含む筋力低下であり、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈するPOEMS症候群とは臨床症状が異なる。しかし、CIDP、POEMS症候群とも、神経伝導検査は脱髄所見を示すこと、CIDPのほうが有病率・認知度ともに高いことが影響し、POEMS症候群がCIDPと初期診断される確率は高い。典型的CIDPの多くの症例では、ステロイド、免疫グロブリン、血漿交換などの治療に反応する。したがって、治療抵抗例では診断の再考が必要な場合がある。ALアミロイドーシスは、POEMS症候群と同様、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈する。しかし、神経伝導検査では軸索変性所見を呈するため、POEMS症候群とは異なる。その他、大量の胸水や腹水単独で発症する例もあり、原因が特定できない場合には、本症候群を鑑別疾患の1つとして挙げることも考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)POEMS症候群の症状は多彩であるが、治療のターゲットはplasma cell dyscrasiaである。そのため、近年は骨髄腫の治療法が本症候群に応用されている。治療方針の原則は、若年者では自家移植、高齢者では免疫調整薬が第1選択とされてきた。移植適応年齢の上限は、65歳から70歳へと、近年引き上げられつつある。自家移植に伴う関連死や再発のリスクが明確になりつつあることを考慮すると、若年軽症例、とくに30代の患者では、リスクとベネフィットおよび長期にわたる疾患コントロールの観点から、移植が第1選択とは必ずしもいい切れなくなってきている。そのような症例では、免疫調整薬が第1選択となる可能性がある。以下に、現在有効であると考えられている治療法について概説する。しかし、いずれも保険適用がないのが、問題点となっている。■ 自己末梢血幹細胞を伴う高用量化学療法通常、骨髄腫とほぼ同様の方法で行われている。自己末梢血幹細胞採取は、顆粒球コロニー刺激因子単独またはシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)併用で行われる。続いて、高用量のメルファラン(同:アルケラン)による前処置後に幹細胞移植が行われる。最近では、移植前にサリドマイド(同:サレド)、レナリドミド(同:レブラミド)やボルテゾミブ(同:ベルケイド)などの前治療を行い、病勢をコントロールしてから、自家移植へ進むこともある。移植後、VEGF値は約1~3ヵ月で速やかに低下し、引き続き臨床症状全般の改善が生じる。移植後の再発に関する報告も増えつつあり、無増悪生存率は1年で98%、5年で75%とされる。再発後の治療の選択肢としては再移植、サリドマイドなどの免疫調整薬などが選択されることが多い。■ 免疫調整薬現時点における免疫調整薬の選択肢は、サリドマイド、レナリドミドである。サリドマイド、レナリドミドとも、やはり骨髄腫と同様の用法・用量で使用されており、デキサメタゾン(同:レナデックス、デカドロンなど)が通常併用される。ポマリドミド(同:ポマリスト)は、レナリドミドの次に開発された免疫調整薬であるが、本症候群への使用の報告はまだない。サリドマイドは、本症候群における有効性が、プラセボ対照二重盲検ランダム化群間比較試験で、唯一示されている薬剤である。前記試験は、わが国において医師主導治験として実施されており、適用取得に向けて準備中である。レナリドミドについても、単群オープン試験が報告されており、やはり有効性が示されている。副作用として、サリドマイドでは徐脈、末梢神経障害などに、レナリドミドでは骨髄抑制に、とくに注意が必要である。若年軽症例では、現時点では自家移植ではなく免疫調整薬を選択しても、将来的には自家移植の適応となる可能性がある。その際には、レナリドミドの長期使用により、幹細胞採取が困難となる可能性があるため、長期的な展望の下に、薬剤の選択と治療期間の検討を行う必要がある。■ プロテアソーム阻害薬骨髄腫治療薬として主要な位置付けとなっているプロテアソーム阻害薬も、POEMS症候群に有効な可能性がある。本症候群においては、ボルテゾミブの有効性についての症例報告が集積されつつある。臨床試験の報告はない。カルフィルゾミブ(同:カイプロリス)については、1例の報告のみで、神経症状の安定化が認められたとされる。イキサゾミブ(同:ニンラーロ)については、現在、米国で臨床試験が進行中である。用法・用量は、骨髄腫と同様に使用されることが多い。しかし、プロテアソーム阻害薬の注意すべき副作用として、末梢神経障害がある。そのため、投与中は末梢神経障害の発現に注意しつつ、投与間隔の延長や治療の中断を考慮する。ボルテゾミブに関しての報告が最も多く、効果の発現が免疫調整薬と比較し、速やかな可能性がある。亜急性進行を示す例において、選択肢の1つとなる可能性がある。4 今後の展望現在、骨髄腫治療薬は、早いスピードで開発が進んでいる。これまでの免疫調整薬・プロテアソーム阻害薬の本症候群における有効性を鑑みると、新規薬もおそらく有効である可能性が高い。そのため、本症候群に応用できる選択肢が、今後も引き続き増加することが予測される。現時点では、本症候群における新規治療の試みは、希少かつ重篤な疾患であるがゆえに、1~数例の報告が主体である。しかし、サリドマイドの本症候群への適応拡大のために行われたランダム化群間比較試験のように、今後は適切な臨床試験を可能な限り行い、エビデンスを積み重ね、治療戦略を構築する試みを継続すべきである。治療の進歩に伴い、本症候群の認知度は確実に向上しており、早期診断・治療の加速により、予後は明らかに改善しつつある。また、稀少疾病の新規治療開発を加速させる手段の1つとして、本症候群の症例登録システムも構築されている。全国に散在している症例の情報を集積し、新規治療の有効性や予後について明らかにすることが目的である。さらに、未来の新規治療薬の臨床試験においては、適応となりうる患者に迅速に情報を届けることも、もう1つの主要な目的である。一方で、診断・病勢のマーカーとなるVEGF測定や有効とされる新規治療が、いまだ1つも保険適用とされていないことが、すべての患者さんが、いずれの医療機関でも標準的な診療を受けることへの大きな障壁となっている。このような問題点に関しても、今後の解決が期待される。5 主たる診療科神経内科または血液内科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター クロウ・深瀬症候群(一般利用者と医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 J-POST trial(医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 患者登録システム(一般利用者と医療者向けの症例登録の窓口)患者会情報POEMS症候群 サポートグループ(本症の患者および家族の会)1)Kuwabara S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;6:CD006828.2)Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.3)Dispenzieri A. Am J Hematol. 2014;89:214-223.4)Misawa S, et al. Lancet Neurol. 2016;15:1129-1137.5)Jaccard A. Hematol Oncol Clin North Am. 2018;32:141-151.6)Nozza A, et al. Br J Haematol. 2017;179:748-755.7)Mitsutake A, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2015年07月28日更新2018年04月24日

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小児期の過体重、何歳まで続くと2型糖尿病リスクが高まるか/NEJM

 7歳時に過体重の男児は、思春期以降まで過体重が持続した場合に限り、成人2型糖尿病のリスクが増大することが、デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのLise G. Bjerregaard氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2018年4月5日号に掲載された。小児期の過体重により、成人期の2型糖尿病リスクが増加する。世界の小児の23%以上が過体重または肥満であることから、小児期の過体重が2型糖尿病のリスクに及ぼす有害な影響は、成人期に至る前に正常体重に回復した場合は減少に転じるか、またインスリン感受性が著明に低下する思春期の体重増加が、後年の2型糖尿病の発症に主要な役割を担うかを検証することが重要とされる。7、13、17~26歳の過体重と、30歳以降の罹患リスクの関連を評価 研究グループは、過体重の男児は、成人早期までに過体重を解消することで、2型糖尿病のリスクが低下するかを検討した(欧州連合[EU]の助成による)。 1930~89年の期間に出生し、コペンハーゲン市の公立または私立の学校に入学したほぼすべての小児の情報を蓄積したデータベース(Copenhagen School Health Record Register[CSHRR])を用いて、7歳、13歳、成人早期(17~26歳)に体重と身長が測定され、過体重または肥満と判定されたデンマーク人男性6万2,565例が解析の対象となった。 過体重と肥満の定義は、米国疾病管理予防センター(CDC)の年齢別、性別の基準に則った(過体重は、BMIが7歳時は≧17.38、13歳時は≧21.82、成人早期は≧25、肥満は、それぞれ≧19.12、≧25.14、≧28.31)。国の保健登録(National Patient Register)から、2型糖尿病の状態に関するデータを取得し、30歳以降に2型糖尿病の診断を受けた6,710例(10.7%、フォローアップ期間:196万9,165人年)を同定した。思春期を含む期間の過体重が、リスクを高める可能性 過体重児の割合は、7歳時の5.4%(3,373/6万2,565例)から、13歳時は5.5%(3,418/6万2,565例)へ、成人早期は8.2%(5,108/6万2,565例)へと増加し、どの年齢の過体重も2型糖尿病リスクと正の関連が認められた。過体重と2型糖尿病リスクの関連は、過体重の年齢が高いほど、また2型糖尿病の診断時年齢が低いほど強かった。 7歳時に過体重であったが13歳になる前に過体重が解消した男性が、30~60歳時に2型糖尿病と診断されるリスクは、過体重を経験していない男性とほぼ同様であった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.75~1.21)。 7歳時、13歳時に過体重だったが成人早期には過体重でなかった男性は、過体重を経験していない男性に比べ、2型糖尿病リスクが高かった(HR:1.47、95%CI:1.10~1.98)が、過体重が持続した男性に比べると低かった(過体重を経験していない男性と比較した過体重が持続した男性のHR:4.14、95%CI:3.57~4.79)。 7歳から成人早期の期間におけるBMIの上昇は、7歳時に標準体重であった男性でも、2型糖尿病リスクの増加と関連した。成人早期の肥満は、7歳時のBMIにかかわらず、2型糖尿病のリスクが著明に高かった。 著者は、「7歳時に過体重の小児が、成人2型糖尿病に罹患するリスクは、思春期に至る前に過体重を解消して成人早期まで正常体重を維持することで低下した。思春期にわたる、13歳から成人早期までの過体重は、7歳時のみ、13歳時のみ、7歳時と13歳時のみ、成人早期のみ、および7歳時と成人早期にのみ過体重であった場合に比べ、2型糖尿病のリスクが高かった」とまとめている。

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低血糖予測しインスリン中断、回復後に自動再開。次世代インスリンポンプ発売

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 トニー セメド)は2018年4月2日、インスリン治療を必要とする糖尿病患者の低血糖問題に新しい選択肢をもたらす次世代インスリンポンプ「ミニメド640Gシステム」を、2018年3月26日より販売開始したと発表。 ミニメド640Gシステムにはメドトロニックの独自技術であるスマートガードテクノロジーを搭載し、低血糖予防に向けた新しい技術を通じて、糖尿病患者の血糖コントロールを改善するよう設計されている。Enlite(エンライト)センサによって持続的にグルコース変動をモニタリングし、グルコース値が下限値に達する、または近づくと予測されると自動的にインスリン注入を中断し、グルコース値の回復が確認されるとインスリン注入を再開する日本初のシステム。低グルコースや高グルコースにいたる前に警告(音やバイブレーション)を発信する機能も備えている。 さらに、ミニメド640Gシステムは、PHC株式会社の自己検査用グルコース測定器「コントアネクストLink 2.4」とワイヤレス接続が可能。正確性の高い血糖測定結果をインスリンポンプに送信することができ、ボーラスウィザードやセンサの較正の際、患者の手入力によるミスを防ぎ、入力の手間を軽減する。

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GLP-1受容体作動薬セマグルチドが承認取得

 ノボ ノルディスク社は3月23日、週1回投与のGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:オゼンピック)が、2型糖尿病の治療薬として厚生労働省から製造販売承認を受けたことを発表した。 セマグルチドは、血糖値に応じてインスリン分泌を促進させると同時にグルカゴン分泌を抑制し、食欲を抑制して食物摂取量を減らす効果を持つ。今回の承認は、8,000例以上の2型糖尿病患者を対象とした8つの第3a相臨床試験からなるグローバル臨床試験プログラムSUSTAINに基づくもので、このうち5つの臨床試験に約1,200例の日本人2型糖尿病患者が含まれている。本プログラムでは、セマグルチドによる治療の対照薬と比較して優れたHbA1c改善効果、体重減少効果が認められている。

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