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メトホルミンとDPP-4阻害薬との早期併用療法の有効性は実証されたか?(解説:住谷哲氏)-1144

 2型糖尿病患者には程度の差はあるがインスリン抵抗性とインスリン分泌不全の両者が存在する。したがって病態生理学的にはその両者に早期から介入する薬物療法が、その一方だけに介入する薬物療法よりも血糖管理においてより有効であることは理解しやすい。血糖降下薬の有効性を評価する指標はいくつもあるが、どれだけ長期間にわたってHbA1cを<7.0%に維持可能であるかを示すdurabilityもその1つである。インスリン抵抗性改善薬であるメトホルミンとインスリン分泌不全改善薬のDPP-4阻害薬であるビルダグリプチンを診断直後から併用することが(early combination therapy:早期併用療法)、メトホルミン単剤で治療を開始して血糖コントロールが維持できなければビルダグリプチンを併用する段階的治療(sequential metformin monotherapy:段階的治療)に比較してdurabilityを延長できるか否かを検討したのが本試験である。 本試験は試験デザインが複雑で、かつ治療失敗treatment failureという見慣れないエンドポイントが設定されているので論文を一読するだけでは内容を容易に理解しがたい。試験に組み込まれたのは2型糖尿病診断後2年以内、未治療(メトホルミン使用4週間以内は許容されている)、HbA1c 6.5~7.5%の初回治療患者である。3週間のrun-in期間でメトホルミンを1,500mgまで増量を試みて、メトホルミン1,000mg以上服用できた患者のみ無作為化された。つまり本試験は最初から併用療法で治療を開始するinitial combination therapyではない。2,001例の患者が早期併用療法群(メトホルミン1,000mg+ビルダグリプチン50mg x 2)と段階的治療(メトホルミン1,000mg+プラセボ x 2)の2群に1対1に振り分けられた。すべての患者で無作為化後の4週間にメトホルミンは2,000mgまで増量が試みられた。患者は13週ごとに受診したが、HbA1c 7.0%以上が連続した2回の受診で認められた場合にその時点で治療失敗と定義された。主要評価項目は1回目の治療失敗までの時間(period 1)とした。2回目の治療失敗までの時間(period 2)は副次評価項目とされた。段階的治療は1回目の治療失敗後にメトホルミン+ビルダグリプチンの併用療法に移行した。つまりperiod 2の治療法は両群で同一となっている。試験観察期間が予定より短くなることの多いevent-driven型の心血管アウトカム試験とは異なり、すべての患者は無作為化後5年にわたり観察された。 試験開始5年後の主要評価項目のイベント発生率は段階的治療が62.1%、早期併用療法が43.6%であった。別の表現にすると50%の患者が1回目の治療失敗に至るまでの時間(median observed time to treatment failure)が段階的治療では36.1ヵ月、早期併用療法では61.9ヵ月(これはカプランマイヤー曲線からの推定値である)、つまり早期併用療法において段階的治療に比較してdurabilityが約2年延長したことになる。副次評価項目のイベント発生率は本文に記載がないが、Figure 3Bのグラフから読み取ると多く見積もって段階的治療が45%、早期併用療法が35%であった。 以上の結果をどのように解釈したら良いのだろうか? period 1で検討されたdurabilityは早期併用療法で約2年延長することが証明された。しかし段階的治療のイベント発生率は62.1%であり、約40%の患者はメトホルミン単剤のみで5年間HbA1c<7.0%を維持できたことになる。さらに実臨床でより重要なのは、治療失敗する前から併用する早期併用療法と、メトホルミン単剤で開始して治療失敗した後に併用する段階的治療とを比較した副次評価項目である。その差はわずかに10%であり、単純にいえば90%の患者はどちらの治療法でも結果は同じだったことになる。しかしこの点についても解釈に注意が必要である。実臨床で併用療法に移行する、言い換えればメトホルミンに他の血糖降下薬を追加するのは容易でないのに対して、本試験では1回目の治療失敗患者はすべて併用療法に移行している点である。したがってリアルワールドにおける両群の差が10%以上になる可能性は十分にある。 2型糖尿病治療においてもclinical inertiaの重要性が強調されている。しかしあらゆる治療にはbenefitとharmがある。天秤の皿の一方に載せるのがclinical inertiaとすればもう一方の皿に載せるべきはovertreatmentであろう。もしすべての患者に早期併用療法を実施したとすると、本試験の結果によればその中の約40%の患者は不要な治療、すなわちovertreatmentを受けたことになる。本試験はclinical inertiaとovertreatmentとのバランスの重要性をVERIFYした試験といっても良いだろう。(12月2日 一部記事内容を修正いたしました)

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1型DMにはクローズドループシステムが有用/NEJM

 1型糖尿病患者において、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵島)の利用は、リアルタイム持続血糖モニター(CGM)機能付きインスリンポンプ(CSII)の利用と比較して、血糖値が目標範囲内であった時間の割合を増加させることを、米国・バージニア大学のSue A. Brown氏らが、6ヵ月間の多施設共同無作為化試験「International Diabetes Closed Loop trial:iDCL試験」で明らかにした。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する可能性があり、これまでのメタ解析ではその有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2019年10月16日号掲載の報告。リアルタイムCGM機能付きCSIIと比較、血糖値目標範囲内の達成時間を評価 研究グループは、2018年7月12日~10月9日の期間で、1型糖尿病患者をクローズドループ型インスリン注入システムで治療を受けるクローズドループ群またはリアルタイムCGM機能付きCSIIで治療を受ける対照群のいずれかに、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、CGMで測定される血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)であった時間の割合。intention-to-treat集団を対象として線形混合効果回帰モデルを用いて解析した。 合計168例が無作為にクローズドループ群(112例)、対照群(56例)に割り付けられた。患者の平均年齢は33歳(範囲:14~71)、糖化ヘモグロビン値は5.4~10.6%であった。全168例が試験を完遂した。クローズドループシステムのほうが血糖コントロール良好 血糖値が目標範囲内であった平均(±SD)時間割合は、クローズドループ群でベースライン時61±17%から6ヵ月間で71±12%まで上昇したが、対照群はいずれも59±14%で変化しなかった(補正後群間差:11ポイント、95%信頼区間[CI]:9~14、p<0.001)。 副次評価項目(血糖値が>180mg/dLであった時間割合、平均血糖値、糖化ヘモグロビン値、血糖値が<70mg/dLまたは<54mg/dLであった時間割合)に関しては、いずれも事前に定義した有意差の階層的基準をすべて満たし、クローズドループ群が良好であることが認められた。 6ヵ月間で血糖値が<70mg/dLであった時間割合の補正後群間差(クローズドループ群-対照群)は-0.88ポイント(95%CI:-1.19~-0.57、p<0.001)、6ヵ月時の糖化ヘモグロビン値の補正後群間差は-0.33ポイント(-0.53~-0.13、p=0.001)であった。クローズドループ群において、システムがクローズドループ・モードであった時間の割合(中央値)は、6ヵ月間にわたり90%であった。 両群とも重篤な低血糖イベントの発生は認めなかった。クローズドループ群で糖尿病性ケトアシドーシスが1例報告された。

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第30回 抗精神病薬による体重増加、薬剤ごとに差【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗精神病薬による体重増加、脂質異常症や高血糖などの代謝障害は比較的よく知られている副作用で、とくに第1世代に比べて第2世代の抗精神病薬で高頻度に報告されています。治療継続の妨げになったり、長期的な心血管イベントのリスクが上昇したりすることがあるため、長期間服用するためには体重や検査値のチェックが欠かせません。今回は、体重増加の機序や薬剤による違い、対処方法について紹介します。体重増加の機序体重増加の原因は特定されておらず、薬剤の影響で食欲が亢進して過剰に摂食したというだけでなくさまざまな説があります。実際、自覚的な食事量が変わらなくても体重が増加しているケースもあるように思います。その機序として、脂質酸化の減少と炭水化物酸化の増加、セロトニン/ドパミン/ヒスタミンなどの各種受容体への作用、視床下部ペプチドによって食欲亢進や満腹感低下が生じる可能性が指摘されています。さらに、摂食やエネルギー代謝に関わるペプチドであるアディポネクチンの減少、抗精神病薬により脂肪組織から放出されるホルモンであるレプチンに対する耐性がカロリー摂取量の増加と脂肪組織の増加の機序として考えられています1)。ダイエットに関心がある患者さんで、アディポネクチンやレプチンを知っている方にお会いしたことがありますので、そういう患者さんに詳しく説明し過ぎるとアドヒアランスに影響しかねないため注意が必要な場合もあると思います。総脂肪率増加の程度1つ以上の精神障害や攻撃性のため精神病薬を検討している6~18歳の患者144例を、経口アリピプラゾール(49例)、オランザピン(46例)またはリスペリドン(49例)にランダムに割り付けて12週間治療し、総体脂肪率およびインスリン感受性を調べた試験があります。12週時点で、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)で測定した総脂肪率は、リスペリドンで1.18%増加、オランザピンで4.12%増加、アリピプラゾールで1.66%増加しました。インスリン刺激によるグルコース消失率の変化は、リスペリドンで2.30%増加、オランザピンでは29.34%減少、アリピプラゾールで30.26%減少となっており、薬剤間で有意差はありませんでした。MRIによる腹部脂肪測定では、皮下脂肪はリスペリドンまたはアリピプラゾールよりもオランザピンで有意に増加していました。なお、すべての治療群で行動の改善がみられています2)。体重増加の薬剤間比較体重増加の程度は薬剤によって異なりますが、とくにクロザピンやオランザピンでその程度が大きいことが示唆されています。第2世代抗精神病薬で治療された患者の体重、コレステロールおよびグルコースの変化を評価した48のランダム化比較試験のシステマティックレビューの結果は次のとおりです3)。クロザピンはリスペリドンと比較して体重が増加した(平均差[MD]:2.86kg、95%信頼区間[CI]:1.07~4.65、459例の患者を対象とした4試験の分析)。オランザピンは以下の薬剤よりも有意に体重が増加した。○アミスルプリド※(MD:2.1kg、95%CI:1.29~2.94、671例の患者を対象とした3試験の分析)○アリピプラゾール(MD:3.9kg、95%CI:1.62~6.19、患者656例を対象とした2試験の分析)○クエチアピン(MD:2.68kg、95%CI:1.1~4.26、患者1,173例を対象とした7試験の分析)○リスペリドン(MD:2.44kg、95%CI:1.61~3.27、2,302例の患者を対象とした16試験の分析)○ジプラシドン※(MD:3.82kg、95%CI:2.96~4.69、1,659例の患者を対象とした5試験の分析)※国内未承認体重増加の対処方法日本神経精神薬理学会が作成した『統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー』において、体重増加の対処方法の例として薬剤変更が挙げられています4)。実際に、心血管疾患の危険因子を改善するために、オランザピン、クエチアピンまたはリスペリドンからアリピプラゾールに切り替えた非盲検のランダム化比較試験がありますので見てみましょう5)。上記3剤のいずれかにより治療されている統合失調症ないし統合失調感情障害を有する患者215例(平均年齢41歳)を、アリピプラゾールへの切り替え群(109例)またはそのまま継続した群(106例)にランダムに割り付けて24週間経過をみています。全患者が、BMI≧27kg/m2および非HDLコレステロール≧130mg/dLで、プライマリアウトカムは非HDLコレステロール値の変化です。両群を比較した結果は、平均体重減少は3.6kg対0.7kg(p<0.001)、平均非HDLコレステロール減少は20.2mg/dL対10.8mg/dL(p=0.01)、トリグリセライドは25.7mg/dL減少対7mg/dL増加(p=0.002)であり、切り替えに一定の効果を認めています。安易に薬剤を切り替えたり中止したりすることは避けなければなりませんが、体重や体脂肪率増加の理由、程度、発現時の代替案などを聞かれる機会もあるかと思いますので、参考にしていただければと思います。1)Maayan L, et al. Expert Rev Neurother. 2010;10:1175-1200.2)Nicol GE, et al. JAMA Psychiatry. 2018;75:788-796.3)Rummel-Kluge C, et al. Schizophr Res. 2010;123:225-233.4)日本神経精神薬理学会編. 統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー. 日本神経精神薬理学会;2018.5)Stroup TS, et al. Am J Psychiatry. 2011;168:947-956.

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糖尿病診療ガイドライン2019を公開~日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、『糖尿病診療ガイドライン2019』を発行し、同会のホームページ上で公開を始めた。 糖尿病診療ガイドラインは、エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的に3年ごとに改訂されて、今回の第6版が最新版となる。糖尿病診療ガイドライン2019はCQ・Q方式を踏襲し、付録も充実 糖尿病診療ガイドライン2019の記載方式は2016年版と同様に「CQ・Q方式」とし、推奨グレードも策定委員の投票で決定し、合意率も記載されている。また、今般では、CQ・Qの各項目を適宜見直すとともに、必要に応じ新たなCQ・Qを設定している。 糖尿病診療ガイドライン2019の内容としては、新しい文献をできうる限り引用し、これらの知見を取り上げているほか、付録としてわが国における大規模臨床試験「J-DOIT 1〜3」「JDCP study」「J-DREAMS」を紹介している。とくに食事療法に関しては、従来の標準体重の代わりに目標体重という概念を取り入れ、より個々の症例に対応可能な柔軟な食事療法が示されている。もちろん日本動脈硬化学会や日本高血圧学会の最新のガイドラインを参考に、これらとの齟齬がないような改訂が行われている。糖尿病診療ガイドライン2019は21項目で詳細に診療方針を記載 糖尿病診療ガイドライン2019は「糖尿病診断の指針」から始まり、「糖尿病治療の目標と指針」「食事療法」「運動療法」「血糖降下薬による治療(インスリンを除く)」など大きく21項目に分け、その中にCQまたはQ、その両方が記載される構成である。 たとえば、「血糖降下薬による治療(インスリンを除く)」のQ5-1「血糖降下薬の適応はどう考えるべきか?」に対し、ステートメントとして2項目が詳細に説明されている。 糖尿病診療ガイドライン2019の策定に関する委員会では、「このガイドラインがわが国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに、さらに発展を続けていくことを願っている」と糖尿病診療への活用に期待を寄せている。 詳しくは、同学会のホームページを参照されたい。また、糖尿病診療ガイドライン2019の書籍については10月中旬に南江堂より発刊される予定。

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第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?高齢糖尿病患者は罹病期間が長い例が多く、進行した合併症を有する例も多く経験します。今回はいわゆる三大合併症について解説します。合併症の進展予防には血糖管理だけではなく、血圧、脂質など包括的な管理が必要となりますが、すべてを厳格にコントロールしようとするがあまり“ポリファーマシー”となり、症例によっては、かえって予後を悪化させる場合もありますので、実際の治療に関しては個々の症例に応じて判断していくことが重要になります。Q1 微量アルブミン尿が出現しない場合も? 糖尿病腎症の管理について教えてください。高齢糖尿病患者でも、高血糖は糖尿病腎症の発症・進展に寄与するため、定期的に尿アルブミン・尿蛋白・eGFRを測定・計算し、糖尿病腎症の病期分類を行うことが推奨されています1)。症例にもよりますが、血液検査は外来受診のたび、尿検査は3~6カ月ごとに実施していることが多いです。高齢者では筋肉量が低下している場合が多く、血清Cre値では腎機能をよく見積もってしまうことがあり、BMIが低いなど筋肉量が低下していることが予想される場合には、血清シスタチンCによるeGFR_cysで評価します。典型的な糖尿病腎症は微量アルブミン尿から顕性蛋白尿、ネフローゼ、腎不全に至ると考えられており、尿中アルブミン測定が糖尿病腎症の早期発見に重要なわけですが、実際には、微量アルブミン尿の出現を経ずに、あるいは軽度のうちから腎機能が低下してくる症例も多く経験します。高血圧による腎硬化症などが、腎機能低下に寄与していると考えられていますが、こういった蛋白尿の目立たない例を含め、糖尿病がその発症や進展に関与していると考えられるCKDをDKD (diabetic kidney disease;糖尿病性腎臓病)と呼びます。加齢により腎機能は低下するため、DKDの有病率も高齢になるほど増えてきます。イタリアでの2型糖尿病患者15万7,595例の横断調査でも、eGFRが60mL/min未満の割合は65歳未満では6.8%、65~75歳で21.7%、76歳以上では44.3%と加齢とともにその割合が増加していました2)。一方、アルブミン尿の割合は65歳未満で25.6%、 65~75歳で28.4%、76歳以上で33.7%であり、加齢による増加はそれほど目立ちませんでした。リスク因子としては、eGFR60mL/min、アルブミン尿に共通して高血圧がありました。また、本研究では80歳以上でDKDがない集団の特徴も検討されており、良好な血糖管理(平均HbA1c:7.1%)に加え良好な脂質・血圧管理、体重減少がないことが挙げられています。これらのことから、高齢者糖尿病の治療では、糖尿病腎症の抑制の面からも血糖管理だけではなく、血圧・脂質管理、栄養療法といった包括的管理が重要であるといえます。血圧管理に関しては、『高血圧治療ガイドライン2019』では成人(75歳未満)の高血圧基準は140/90 mmHg以上(診察室血圧)とされ,降圧目標は130/80 mmHg未満と設定されています3)。75歳以上でも降圧目標は140/90mmHg未満であり、糖尿病などの併存疾患などによって降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満への降圧を目指すとしています。しかしながら、こうした患者では収縮期血圧110mmHg未満によるふらつきなどにも注意したほうがいいと思います。降圧薬は微量アルブミン尿、蛋白尿がある場合はACE阻害薬かARBの使用が優先されますが、微量アルブミン尿や蛋白尿がない場合はCa拮抗薬、サイアザイド系利尿薬も使用します。腎症4期以上でARB、ACE阻害薬を使用する場合は、腎機能悪化や高K血症に注意が必要です。また「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、75歳以上で腎症4期以上では、CCBが第一選択薬として推奨されています4)。腎性貧血に対するエリスロポエチン製剤(ESA)の使用については、75歳以上の高齢CKD患者では「ESAと鉄剤を用い、Hb値を11g/dL以上、13g/dL未満に管理するが、症例によってはHb値9g/dL以上の管理でも許容される」となっています。高齢者ではESAを高用量使用しなければならないことも多く、その場合はHbA1c 10g/dL程度を目標に使用しています。腎臓専門医への紹介のタイミングは日本腎臓学会より示されており、蛋白尿やアルブミン尿の区分ごとに紹介基準が示されているので、ご参照ください(表)。画像を拡大するQ2 網膜症、HbA1cの目安や眼科紹介のタイミングは?高血糖が糖尿病網膜症の発症・進展因子であることは高齢者でも同様です。60歳以上の2型糖尿病患者7万1,092例(平均年齢71歳)の追跡調査では、HbA1c 7.0%以上の患者ではレーザー光凝固術の施行が10.0%以上となり、HbA1c 6.0%未満の患者と比べて約3倍以上となっています5)。また、罹病期間が10年以上の高齢者糖尿病では、10年未満の患者と比べて重症の糖尿病性眼疾患(失明、増殖性網膜症、黄斑浮腫、レーザー光凝固術施行)の頻度は高くなりますが、80歳以上ではその頻度がやや減少すると報告されています6)。このように、高齢糖尿病患者では罹病期間が長く、光凝固術の既往がある例も多く存在します。現在の血糖コントロールが良好でも、罹病期間が長い例では急激に糖尿病網膜症が進行する場合があり、初診時は必ず、その後も少なくとも1年に1回の定期受診が必要です。増殖性前網膜症以上の網膜症が存在する場合は急激な血糖コントロールにより網膜症が悪化することがあり、緩徐に血糖値をコントロールする必要があります。どのくらいの速度で血糖値を管理するかについて具体的な目安は明らかでありませんが、少なくとも低血糖を避けるため、メトホルミンやDPP-4阻害薬単剤から治療をはじめ、1~2ヵ月ごとに漸増します。インスリン依存状態などでやむを得ずインスリンを使用する場合には血糖目標を緩め、食前血糖値200mg/dL前後で許容する場合もあります。そのような場合には当然眼科医と連携をとり、頻回に診察をしていただきます。患者さんとのやりとりにおいては、定期的に眼科受診の有無を確認することが大切です。眼科との連携には糖尿病連携手帳や糖尿病眼手帳が有用です。糖尿病連携手帳を渡し、受診を促すだけでは眼科を受診していただけない場合には、近隣の眼科あての(宛名入りの)紹介状を作成(あるいは院内紹介で予約枠を取得)すると、大抵の場合は受診していただけます。また、収縮期高血圧は糖尿病網膜症進行の、高LDL血症は糖尿病黄斑症進行の危険因子として知られており、それらの管理も重要です。高齢者糖尿病の視力障害は手段的ADL低下や転倒につながることがあるので注意を要します。高齢糖尿病患者797人の横断調査では、視力0.2~0.6の視力障害でも、交通機関を使っての外出、買い物、金銭管理などの手段的ADL低下と関連がみられました7)。J-EDIT研究でも、白内障があると手段的ADL低下のリスクが1.99倍になることが示されています8)。また、コントラスト視力障害があると転倒をきたしやすくなります9)。Q3 高齢者の糖尿病神経障害の特徴や具体的な治療の進め方について教えてください。神経障害は糖尿病合併症の中で最も多く、高齢糖尿病患者でも多く見られます。自覚症状、アキレス腱反射の低下・消失、下肢振動覚低下により診断しますが、高齢者では下肢振動覚が低下しており、70歳代では9秒以内、80歳以上では8秒以内を振動覚低下とすることが提案されています10)。自律神経障害の検査としてCVR-Rがありますが、高齢者では、加齢に伴い低下しているほか、β遮断薬の内服でも低下するため、結果の解釈に注意が必要です。検査間隔は軽症例で半年~1年ごと、重症例ではそれ以上の頻度での評価が推奨されています1)。しびれなどの自覚的な症状がないまま感覚障害が進行する例もあるため、自覚症状がない場合でも定期的な評価が必要です。とくに、下肢感覚障害が高度である場合には、潰瘍形成などの確認のためフットチェックが重要です。高齢者糖尿病では末梢神経障害があると、サルコペニア、転倒、認知機能低下、うつ傾向などの老年症候群を起こしやすくなります。神経障害が進行し、重症になると感覚障害だけではなく運動障害も出現し、筋力低下やバランス障害を伴い、転倒リスクが高くなります。加えて、自律神経障害の起立性低血圧や尿失禁も転倒の誘因となります。また、自律神経障害の無緊張性膀胱は、尿閉や溢流性尿失禁を起こし、尿路感染症の誘因となります。しびれや有痛性神経障害はうつのリスクやQOLの低下だけでなく、死亡リスクにも影響します。自律神経障害が進行すると神経因性膀胱による排尿障害、便秘、下痢などが出現することがあります。さらには、無自覚低血糖、無痛性心筋虚血のリスクも高まります。無自覚低血糖がみられる場合には、血糖目標の緩和も考慮します。また、急激な血糖コントロールによりしびれや痛みが増悪する場合があり(治療後神経障害)、高血糖が長期に持続していた例などでは緩徐なコントロールを心がけています。中等度以上のしびれや痛みに対しては、デュロキセチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬が推奨されていますが、高齢者では副作用の点から三環系抗うつ薬は使用しづらく、デュロキセチンかプレガバリンを最小用量あるいはその半錠から開始し、少なくとも1週間以上の間隔をあけて漸増しています。両者とも効果にそう違いは感じませんが、共通して眠気やふらつきの副作用により転倒のリスクが高まることに注意が必要です。また、デュロキセチンでは高齢者で低Na血症のリスクが高くなることも報告されています。1)日本老年医学会・日本糖尿病学会編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2017.南江堂; 2017.2)Russo GT,et al. BMC Geriatr. 2018;18:38.3)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;20194)日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社会; 20185)Huang ES, et al. Diabetes Care.2011; 34:1329-1336.6)Huang ES, et al. JAMA Intern Med. 2014; 174: 251-258.7)Araki A, et al. Geriatr Gerontol Int. 2004;4:27-36.8)Sakurai T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2012;12:117-126.9)Schwartz AV, et al. Diabetes Care. 2008;31: 391-396.10)日本糖尿病学会・日本老年医学会編著. 高齢者糖尿病ガイド2018. 文光堂; 2018.

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高リスク2型糖尿病の心血管リスク、リナグリプチンvs.グリメピリド/JAMA

 心血管リスクが高い比較的早期の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬リナグリプチンはSU薬グリメピリドに対し、心血管死、非致死的な心筋梗塞・脳卒中の複合のリスクが非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCAROLINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクを増加させる。リナグリプチンの心血管安全性を評価したプラセボ対照比較試験では非劣性が示されているが、実対照薬との比較試験は実施されていなかった。43ヵ国607施設が参加した実薬対照非劣性試験 本研究は、43ヵ国607施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照非劣性試験であり、2010年11月~2012年12月の期間に患者登録が行われた(Boehringer IngelheimとEli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、HbA1c 6.5~8.5%の2型糖尿病で、心血管リスク因子として、(1)アテローム動脈硬化性心血管疾患(虚血性心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)、(2)2つ以上のリスク因子(2型糖尿病罹患期間>10年、収縮期血圧>140mmHg、喫煙など)、(3)年齢70歳以上、(4)細小血管合併症(腎機能障害、増殖網膜症など)を満たす患者であった。 被験者は、通常治療に加えて、リナグリプチン(5mg、1日1回)を投与する群またはグリメピリド(1~4mg、1日1回)を投与する群に無作為に割り付けられた。担当医には、臨床的必要性に応じて、主にメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジンジオン系薬、インスリンを追加または用量を調整することで、血糖降下治療を強化することが奨励された。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合とし、リナグリプチンのグリメピリドに対する非劣性の評価が行われた。両側検定で、ハザード比(HR)の95.47%信頼区間(CI)の上限値<1.3を満たす場合に非劣性と判定した。体重が1.54kg低く、低血糖が少ない 6,033例(平均年齢64.0歳、2,414例[39.9%]が女性、平均HbA1c値7.2%、罹患期間中央値6.3年、大血管疾患42%、メトホルミン単剤療法59%)が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値は6.3年だった。 主要アウトカムは、リナグリプチン群が3,023例中356例(11.8%、2.1/100人年)、グリメピリド群は3,010例中362(12.0%、2.1/100人年)で発生し、非劣性の判定基準を満たした(HR:0.98、95.47%CI:0.84~1.14、非劣性のp<0.001)。一方、優越性は認められなかった(p=0.76)。 主な副次アウトカムとして、主要アウトカムに不安定狭心症による入院を加えて解析を行ったところ、リナグリプチン群が3,023例中398例(13.2%、2.3/100人年)、グリメピリド群は3,010例中401例(13.3%、2.4/100人年)で発生していた(HR:0.99、95%CI:0.86~1.14)。 全死因死亡(HR:0.91、95%CI:0.78~1.06、p=0.23)、心血管死(1.00、0.81~1.24、p=0.99)、心血管系以外の原因による死亡(0.82、0.66~1.03、p=0.08)には有意な差はみられなかった。 HbA1c値の平均変化は、当初、リナグリプチン群よりもグリメピリド群で良好であったが、全体では両群間に有意な差はなかった(256週までの補正後平均重み付け平均差:0%、95%CI:-0.05~0.05)。また、グリメピリド群で早期にわずかな体重増加が認められ、その後は増加せずに維持されたが、全体ではリナグリプチン群のほうが体重が低かった(-1.54kg、-1.80~-1.28)。 有害事象は、リナグリプチン群が2,822例(93.4%)、グリメピリド群は2,856例(94.9%)で発現した。重篤な有害事象は、それぞれ46.4%および48.1%にみられた。 審査によって確定された急性膵炎は、リナグリプチン群15例(0.5%)、グリメピリド群16例(0.5%)に認められ、慢性膵炎は3例(0.1%)および0例(0.0%)、膵がんは16例(0.5%)および24例(0.8%)にみられた。また、1回以上の低血糖エピソードは、それぞれ320例(10.6%)および1,132例(37.7%)で発現し(HR:0.23、95%CI:0.21~0.26)、重症低血糖は10例(0.3%)および65例(2.2%)、入院を要する低血糖は2例(0.1%)および27例(0.9%)に認められた。 著者は「心血管へのベネフィットが証明されているメトホルミン治療後に、さらなる血糖降下治療を要する場合は、リナグリプチンなどのDPP-4阻害薬は低血糖や体重増加のリスクが少ない選択肢となる」としている。

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インスリン療法開始時の選択肢にも有用ーゾルトファイ配合注

 インスリン療法時の低血糖回避が血糖コントロール不良を招き、心疾患の発症に影響を及ぼすことがある。このようなジレンマを新たな薬剤が解決してくれるかもしれない-。 2019年9月26日、ノボノルディスクファーマがゾルトファイ配合注フレックスタッチの発売を記念してプレスセミナーを開催。綿田 裕孝氏(順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学 教授)が「インスリン デグルデク/リラグルチド(IDegLira):2型糖尿病治療の新たな選択肢」と題して、新薬の有用性について語った。新たな配合剤の適応やメリットは? 今回発売されたIDegLira(商品名:ゾルトファイ配合注)は、インスリンとGLP-1受容体作動薬を組み合わせた製剤で、インスリン療法が適応となる2型糖尿病に投与可能である。1日1回の用法で2剤が同時投与でき、“注射時刻は原則として毎日一定とする”という条件を守れば、患者のライフスタイルに応じた投与スケジュールを作成できる。これに対し、綿田氏は「患者QOLやアドヒアランス向上にも寄与する」と、コメントした。持効型インスリン/GLP-1配合剤はこれまでの治療不安を払拭できるか 2型糖尿病のインスリン治療には、「低血糖」「体重増加」「血糖コントロール」の3つのアンメットメディカルニーズが存在する。低血糖を起こすと、救急搬送や入院にかかる費用だけではなく、事故や就労不能、業務効率低下といった社会経済にも影響を及ぼし、さらにはHbA1cの目標値達成を阻害する。そして、インスリン治療がもたらす体重増加がHbA1cの目標達成の障壁となり、Basalインスリンを投与する2型糖尿病患者の半数以上はHbA1cの目標値を達成していない。 このような問題が生じることから、インスリン治療に抵抗を示す医師も少なくない。綿田氏が示したデータによると、医師の理想より、実際にインスリン治療を開始する時期は遅れており、患者が実際にインスリン治療を医師から薦められた際の平均HbA1cは9.6%であった1)。GLP-1受容体作動薬との組み合わせで副作用軽減 GLP-1受容体作動薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制するため、インスリンと比べても低血糖リスクは少ない。心血管疾患リスク低下や体重減少も報告されていることから、GLP-1受容体作動薬の併用はインスリン治療のデメリット改善につながる。GLP-1受容体作動薬を単独で投与すると胃腸障害(悪心、嘔吐、下痢)の出現頻度は高いが、「IDegLiraは10ドーズにリラグルチドとして0.36mg含有と少量のため、徐々に用量を増加していくと、単独で使用するよりも副作用の出現は低いと考えられる」と、同氏は述べた。 日本人を対象としたIDegLiraの大規模臨床試験(DUAL I JAPAN試験2)、DUAL II JAPAN試験3))結果によると、低血糖リスクや体重増加、悪心などのリスクを回避しながらHbA1cの変化量および平均値の改善を達成した。これを踏まえて同氏は「インスリン製剤、GLP-1受容体作動薬はそれぞれの課題を有しているが、併用することでお互いを補い合う作用が期待できる治療法である。ほかのインスリン療法と比較しても好ましい治療法であることがメタ解析からも示唆された」と述べ、「IDegLiraはBasalインスリンからの治療強化だけではなく、新規にインスリン療法を開始する際の選択肢にもなる」と締めくくった。

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多価不飽和脂肪酸に糖尿病の予防効果はあるか?(解説:小川大輔氏)-1115

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)にはオメガ3脂肪酸(魚油に多く含まれるドコサヘキサエン酸[DHA]やエイコサペンタエン酸[EPA]、また植物油に含まれるαリノレン酸など)とオメガ6脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸など)が含まれる。PUFAには中性脂肪を低下する効果があることが知られている。一方、糖代謝や糖尿病の発症を防止する効果については有効と無効のどちらの報告もあり、一定の見解が得られていない。今回著者らはシステマティックレビューの研究を検索し、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸、総PUFAの増加と2型糖尿病の予防および治療に対する効果をメタ解析により検討した1)。 著者らは、PUFAの摂取による影響を検討した無作為化比較試験83件、12万1,070例の症例を対象とし、長鎖オメガ3脂肪酸、αリノレン酸、オメガ6脂肪酸、総PUFAの摂取量と糖尿病の診断、ヘモグロビンA1c、血糖値、空腹時インスリン、HOMA-Rなどに関するデータを解析した。その結果、長鎖オメガ3脂肪酸の摂取増加と糖尿病の診断、ヘモグロビンA1c、血糖値、空腹時インスリン、HOMA-Rにほとんど影響がないことが示された。またαリノレン酸、オメガ6脂肪酸、総PUFAの増加も長鎖オメガ3脂肪酸と同様の結果であった。さらに、サプリメントによる高用量の長鎖オメガ3脂肪酸の摂取やαリノレン酸の摂取増加は、むしろ糖代謝に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。 今回の検討により、多価不飽和脂肪酸、なかでも「体に良い」といわれるDHAやEPAといった長鎖オメガ3脂肪酸に糖尿病の発症を予防する効果はないことが明らかになった。また、多量のオメガ3飽和脂肪酸摂取による糖代謝悪化の機序は不明であるが、日常診療で高血糖の鑑別に健康食品やサプリの多量摂取も念頭に置く必要があると考えられる。

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国内初のインスリン+GLP-1受容体作動薬の配合注射液「ゾルトファイ配合注フレックスタッチ」【下平博士のDIノート】第33回

国内初のインスリン+GLP-1受容体作動薬の配合注射液「ゾルトファイ配合注フレックスタッチ」今回は、持効型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ配合注射液「インスリン デグルデク/リラグルチド(商品名:ゾルトファイ配合注フレックスタッチ)」を紹介します。本剤は、持効型インスリンとGLP-1受容体作動薬を1回で投与できる国内初の配合注射製剤で、より簡便で確実な血糖コントロールが期待されています。<効能・効果>本剤は、インスリン療法が適応となる2型糖尿病の適応で、2019年6月18日に承認されています。<用法・用量>通常、成人では、初期は1日1回10ドーズ(インスリン デグルデク/リラグルチドとして10単位/0.36mg)を皮下注射します。投与量は患者の状態に応じて適宜増減しますが、1日50ドーズを超える投与はできません。注射時刻は原則として毎日一定とします。なお、投与量は1ドーズ刻みで調節可能です。<副作用>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象症例380例中126例(33.2%)に224件の臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、便秘28例(7.4%)、下痢18例(4.7%)、悪心16例(4.2%)、糖尿病網膜症11例(2.9%)、および腹部不快感9例(2.4%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、低血糖、アナフィラキシーショック、膵炎、腸閉塞(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、不足している基礎インスリン分泌を補充する薬と、血糖値が高くなるとインスリンの分泌を促す薬の2種類が配合されており、血糖コントロールを改善します。2.めまいやふらつき、動悸、冷や汗などの低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転など、危険を伴う作業には注意してください。これらの症状が認められた場合は、ただちに糖質を含む食品を摂取してください。3.嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などが現れた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けてください。4.未使用の薬剤は冷蔵庫内に保管してください。凍ってしまった場合は使えなくなるので注意してください。なお、旅行などに際して短期間ならば室温に置いても差し支えありません。5.使用開始後は、30℃以下の室内で遮光して保管してください。25℃以下の環境であれば4週間以内、30℃に近くなる環境では3週間以内に使用してください。<Shimo's eyes>本剤は、国内初の持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の配合皮下注射製剤です。インスリン デグルデク(商品名:トレシーバ)と、リラグルチド(同:ビクトーザ)が固定比率で配合され、デバイスにはプレフィルドペン型注入器「フレックスタッチ」が採用されています。インスリンを用いた治療では、経口血糖降下薬と持効型インスリン製剤を組み合わせた「BOT(Basal Supported Oral Therapy)」や、持効型インスリン製剤と(超)速効型インスリン製剤を組み合わせた「強化インスリン療法」がよく行われています。本剤のような、持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬を組み合わせた治療法は「BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 Therapy)」と呼ばれています。1日1回の投与で空腹時血糖と食後血糖両方の改善を期待できることから、BOTから強化インスリン療法にステップアップする前段階の治療として、近年注目されています。これまでBPTを行う場合は2種類の注射薬が必要でしたが、本剤によって1種類での治療が可能となったため、長期治療を必要とする糖尿病患者さんのアドヒアランスの向上と血糖コントロールの改善が期待できます。臨床試験では、本剤は基礎インスリン製剤に比べて低血糖のリスクを上げることなく、空腹時および食後の血糖コントロールを改善していますが、外来で変更する場合はとくに低血糖発現時の対応方法や連絡方法をしっかりと確認しましょう。なお、リラグルチドとDPP-4阻害薬はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有しているため、併用処方の場合には疑義照会が必要です。参考KEGG 医療用医薬品 : ゾルトファイ

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糖尿病と認知症リスク~メタ解析

 糖尿病と認知機能障害や認知症リスクとの関連については、明らかになっていない点が残っている。中国・青島大学のMei Xue氏らは、これらの関連について、さまざまな側面から検討を行った。Ageing Research Reviews誌オンライン版2019年8月17日号の報告。 2019年6月までのプロスペクティブ研究をPubMedより検索した。相対リスク(RR)の推定には、変量効果モデルを用いた。それぞれのメタ解析の信頼性を評価し、メタ回帰分析およびサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・特定した2万8,082件の文献のうち、システマティックレビューの基準に合致した研究は144件であった。そのうち、122件についてメタ解析を行った。・糖尿病は、認知障害(認知機能障害および認知症)に対する1.25~1.91倍の過剰リスクが認められた。・前糖尿病においても、認知症リスクが高かった。・糖尿病関連の生化学的指標では、空腹時血糖(FPG)は、認知障害と非線形に関連していた。2時間血糖値(2h-PG)、HbA1cレベルの上昇、空腹時血漿インスリン(FPI)の低値および高値は、認知症リスクの増加と関連が認められた。・ピオグリタゾンの使用により、糖尿病患者の認知症リスクは、47%の減少が認められた。 著者らは「糖尿病、前糖尿病、糖尿病関連の生化学的指標の変化は、認知機能障害や認知症の発生率増加を予測した。ピオグリタゾンの保護効果については、ランダム化試験でさらなる調査が求められる」としている。

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内臓脂肪を減らす「スマート和食」、そのメカニズムとは

 「和食(Washoku)」が、日本の伝統的な食文化として、ユネスコの無形文化遺産に登録されたのは2013年。その健康効果には世界的に注目が集まっているが、ヒトの内臓脂肪蓄積に与える影響やメカニズムについては不明である。 今回、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)、高瀬 秀人氏(花王株式会社 生物科学研究所)らの研究グループは、日本の伝統に基づく食事が、内臓脂肪面積あるいはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)分泌に及ぼす効果を調査した。Nutrition journal誌2019年9月2日号の報告。 同グループは、これまでの研究で、1万1,438人の内臓脂肪と食習慣、さらに579人の3日間の食事記録と食習慣を調査した。それらのデータを詳細に解析した結果、「タンパク質/脂肪比≒1.0」「食物繊維/炭水化物比≧0.063」「ω-3脂肪酸/脂肪比≧0.054」これら3つの条件が、内臓脂肪蓄積の予防と関連することが明らかになった1)。 坂根氏らは、この3つの比を取り入れた日本食を「スマート和食」と呼び、スマート和食と現代食が内臓脂肪蓄積に与える影響について、クロスオーバー試験で調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象は21人の過体重あるいは肥満の男性(平均年齢:41.0 ± 9.0 歳、平均BMI:25.2 ± 2.0 kg/m2)。・単回の食事負荷試験で、食後0、30、60、120、180、240分におけるGIPの曲線下面積(AUC)を算出した。スマート和食では、現代食と比べ、食後GIP濃度が有意に低かった(AUC:700.0 ± 208.0pmol/L・4 h vs.1117.0 ± 351.4 pmol/L・4 h、p <0.05)。一方、同時に測定した血糖、中性脂肪、インスリン、GLP-1、peptide YY、グレリンでは、両群間で差を認めなかった。・2週間にわたるスマート和食の介入では、内臓脂肪だけでなく、LDL-コレステロール、中性脂肪、HbA1c値が有意に減少した。 これらの結果から、スマート和食は、おそらくGIP分泌の抑制を介して、過体重/肥満男性の内臓脂肪面積を低下させ、代謝パラメーターを改善する可能性が示された。 坂根氏はコメントで、「今回の結果より、GIPが和食の内臓脂肪低減効果のメカニズムに関与していることが示唆された。ポッコリお腹を何とかしたいという患者さんはたくさんいる。食事では、脂質を減らしてタンパク質を増やす、糖質を摂る前に野菜・きのこ・海藻類などの食物繊維をたっぷり摂る、脂質を摂るならω-3系脂肪酸を積極的に摂る、という3つのポイントが大事」と示唆し、内臓脂肪を減らすための食事指導を勧めている。

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小児・思春期2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の有用性と安全性(解説:吉岡成人氏)-1111

 2019年6月、米国食品医薬品局(FDA)は10歳以上の2型糖尿病患者に対してGLP-1受容体作動薬であるリラグルチドの適応を承認した。米国において小児2型糖尿病治療薬が承認されるのは、2000年のメトホルミン以来のことである。 わが国における『糖尿病診療ガイドライン2016』(日本糖尿病学会編・著)には、小児・思春期における2型糖尿病の治療薬について、メトホルミン(10歳以上)とグリメピリドを除いた薬剤は「『小児などに対する安全性は確立していない』ことを本人ならびに保護者に伝え、使用に際しては説明に基づいた同意を得るようにする」と記載されている。 NEJM誌8月15日号に、基礎インスリンの併用の有無を問わず、メトホルミンによる治療を受けている小児・思春期2型糖尿病患者にリラグルチドを追加投与することの有用性について検討した成績が発表されている(Tamborlane WV, et al. N Engl J Med. 2019;381:637-646.)。10~16歳の患者135例を、リラグルチドを最大1.8mg/日まで追加投与する群とプラセボ群に分け、26週間二重盲検試験を行い、その後、非盲検試験として26週間延長して追跡を行っている。リラグルチド投与群では26週でHbA1cが0.64ポイント低下し、プラセボ群では0.42ポイント上昇しており、その差は-1.06ポイント、52週では群間の差が-1.30ポイントとなった。リラグルチド投与群では、嘔気、嘔吐、下痢など消化器系の有害事象が投与開始8週目までに多かったものの、小児・思春期糖尿病患者においてGLP-1受容体作動薬を併用することの血糖コントロール改善に対する有用性が確認されたと結論付けている。 2型糖尿病では経年的に膵β細胞の容積が減少し、それに伴い、インスリン分泌能が低下する。その要因として、膵β細胞のアポトーシスや分化転換(trans-differentiation)が関与していると想定されている。膵β細胞が脱分化し、α細胞などの非β細胞に分化するのではないかというのである。マウスのデータではあるが、GLP-1が膵α細胞を分化転換させ、膵β細胞を新生させるという実験成績もある(Lee YS, et al. Diabetes. 2018;67:2601-2614.)。膵細胞の分化転換に重要な役割を担っていると推定されるGLP-1 の受容体は多くの臓器に存在している。さまざまな臓器においてGLP-1受容体を長期にわたって刺激することの安全性は確立されておらず、膵腫瘍の発生リスクに関しても一定の結論は得られていない。 臨床の現場において、新たに、有用性が高い革新的な治療を行うことは重要であろうが、保守的であっても、安全性の高い医療を心掛ける姿勢も忘れてはならないのではなかろうか。

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災害対策、周りの施設はどうしている?-アンケート結果発表

9月1日は「防災の日」。皆さまの施設は災害時に備え、万全の対策を行っているでしょうか? 自然災害時には医師も被災者の1人。しかし、自らの家族だけではなく、経営者や勤務医としての立場から患者や従業員の命を守ることが求められます。今後、いつなんどき発生するかわからない災害に備え、全国の医師の災害に対する認識や自施設での取り組みについて、CareNet.com会員医師約200人に調査しました。結果概要「自施設において、検討または実施している対策はあるか?」という問いに対し、半数以上の施設で対策をしていないという結果に。画像を拡大する対策を行っていない回答者の中には、「災害拠点病院ではない」という理由も見られたが、災害拠点病院以外でもスタッフや患者への配慮が必要となるため、スタッフとの話し合いは欠かせないと考えられる。医師が考える具体的な対策とは…?自施設での対策を実施していると回答した69人(うち、4人は無効)における主な対策の内訳を『スタッフの安全確保』『休診対応』『災害拠点病院としての対応』『(日々の診療における)薬剤処方に関する対応』『備蓄』『その他』の6つに区分したところ、グラフのような結果になった。画像を拡大する具体的な回答として、「スタッフの出勤方法と出勤時間の確認」「緊急連絡用の掲示板整備やホームページでの休診連絡」「災害拠点病院として他院に連絡をとる」「日頃から薬剤の処方日数を1週間分増やす」「缶詰、米、水、燃料を備蓄する」などが挙がった。また、『その他』としては、「自家発電機を準備」「行政と連携し障害者や老人の存在を把握する」「在宅酸素療法の会社に災害時の態勢を確認」「院内放送で津波の有無を連絡」などがあった。具体策を講じている回答者で最も割合が高かった年代は、50代(34%)と40代(26%)であった。また、所属施設で最も割合が高かったのは、200床以上の病院(60%)で、続いて0床のクリニックなどが15%だった。画像を拡大する地域での話し合いは14%にとどまる「近隣のクリニックや病院、地域医師会などで対策を話し合ったことはあるか?」については、あると回答したのは14%のみで、ほとんどの施設が「地域間での話し合いの経験がない」と回答した。画像を拡大する地域の話し合いがあると回答した30人(14%)には、自施設での対策を行っていない12人が含まれていた。「ない」の理由は“機会がない”だけ?話し合われた内容としては、「患者の情報提供」「受け入れ状況の伝達」「避難経路や連絡・中継場所」「患者さんへの説明方法」「地震発生時の拠点病院、地域の医療ケア児の対策」「スプリンクラーの設置について」などが挙がった。一方で、「ない」と答えた医師の主な回答として「話し合いの機会がない」が最も多く(23%)、「自治体に委ねられている」「役員・立場ではない」「近隣のクリニックとは対象疾患が異なるから」などがあった。また7%と少数意見ではあるが、「大きな災害の想定がない」など危機感の乏しさも明らかになった。画像を拡大する設問詳細Q1.自施設において、検討または実施している対策はありますか?あるないQ2.設問1で「ある」と答えた方にお伺いします。それはどのような対策ですか?(自由記述)例)「薬剤の処方日数を1週間分増やした」「患者ごとにインスリンなどの対策を説明」「スタッフや来院患者の被害を防ぐため、早めに休診を決定し、患者にその旨を連絡する」などQ3.災害対策について、近隣のクリニックや病院、地域医師会などで対策を話し合ったことはありますか?あるないQ4.設問3で「ある」と答えた方は主な対策内容を、「ない」と答えた方はその理由をお答えください(自由記述)。画像を拡大する

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2型糖尿病の予防・治療に不飽和脂肪酸は影響せず?/BMJ

 英国・イースト・アングリア大学のTracy J. Brown氏とJulii Brainard氏らは、新たに診断された糖尿病と糖代謝に対する多価不飽和脂肪酸(PUFA)の影響を評価する、未発表データを含むこれまでで最も広範囲なシステマティックレビューとメタ解析を実施し、オメガ3、オメガ6または総PUFAの増加は、2型糖尿病の予防および治療に対し影響が少ないかあるいは影響がないことを明らかにした。これまで、オメガ3は実験データでは糖尿病のコントロールを悪化させることや、観察研究のシステマティックレビューでは有益性と有害性の両方が示唆されていた。また、オメガ6の上昇は、糖代謝の改善および悪化の両方と関連することが観察研究で報告されており、オメガ3、オメガ6および総PUFAの、糖代謝および2型糖尿病への影響は結論が得られていなかった。BMJ誌2019年8月21日号掲載の報告。無作為化試験83件のシステマティックレビューとメタ解析を実施 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane CENTRAL、WHO international Clinical Trials Registry Platform、Clinicaltrials.gov、および関連するシステマティックレビューの研究を検索し、α-リノレン酸、長鎖オメガ3、オメガ6、総PUFAの増加による影響を評価した24週以上の無作為化比較試験を対象として、糖尿病の診断、空腹時血糖または空腹時インスリン、HbA1c、インスリン抵抗性(HOMA-IR)に関するデータを収集し、相対リスクと平均差を用いたランダム効果メタ解析による統計解析と感度解析を実施した。 ファンネルプロットを検討し、サブグループ化により介入の種類、ベースライン時の糖尿病リスク、抗糖尿病薬の使用、試験期間、用量などの影響を評価した。バイアスのリスクはCochrane toolとGRADEを用いたエビデンスの質で評価した。 検索により、無作為化比較試験83件(主に長鎖オメガ3補給の影響を評価)が解析に組み込まれた。10件はバイアスのリスクがlow(低)であった。長鎖オメガ3の高用量摂取で糖代謝が悪化 長鎖オメガ3は、糖尿病診断の可能性(相対リスク:1.00、95%信頼区間[CI]:0.85~1.17、5万8,643例、糖尿病発症3.7%)、あるいは糖代謝の測定値(HbA1c平均差:-0.02%[95%CI:-0.07~0.04]、血漿グルコース平均差:0.04mmol/L[95%CI:0.02~0.07]、空腹時インスリン平均差:1.02pmol/L[95%CI:-4.34~6.37]、HOMA-IR平均差:0.06[95%CI:-0.21~0.33])に関する影響が少ないかまたはまったく影響がなかった。 長鎖オメガ3の摂取量が4.4g/日を超えると、負の影響が示唆された。糖尿病の診断に対するα-リノレン酸、オメガ6および総PUFAの影響はエビデンスの質が非常に低いため不明であったが、α-リノレン酸の増加が空腹時インスリンを増加(約7%)させる可能性があることを除いては、糖代謝の測定値に対する影響は少ないかまたはないことが示された。 オメガ3/オメガ6比が糖尿病または糖代謝に重要であるというエビデンスは確認されなかった。

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10~16歳の2型DMにリラグルチド追加は有効?/NEJM

 2型糖尿病の小児・思春期患者(10~17歳)において、メトホルミンへのリラグルチド(1.8mg/日)追加投与は、基礎インスリン投与の有無にかかわらず、52週間にわたり血糖コントロール改善の効果があることが示された。ただし、消化器系有害事象の発現頻度がかなり高かった。米国・イェール大学のWilliam V. Tamborlane氏らが、135例を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2019年8月15日号で発表した。メトホルミンは、疾患初期の若い2型糖尿病患者の大半にとって選択肢として承認された血糖コントロール薬である。一方で、メトホルミン単独治療を受けていると血糖コントロールが早期に不能になることが観察されている。若い2型糖尿病患者においてリラグルチドの追加(基礎インスリンの有無を問わず)の安全性および有効性は明らかになっていなかった。26週二重盲検の後、26週間非盲検延長 研究グループは、10歳以上17歳未満の2型糖尿病患者135例を無作為に2群に分け(1対1)、リラグルチド(最大量1.8mg/日)またはプラセボの皮下投与を行った。試験は、26週間の二重盲検期間と、その後26週間延長しての非盲検下期間を設定して行われた。 被験者の選択基準は、BMIが85thパーセンタイル超で、糖化ヘモグロビンが7.0~11.0%(食事療法と運動療法のみの治療下の場合)、または6.5~11.0%(基礎インスリンの有無を問わずメトホルミン治療を受けている場合)とした。 試験期間中は、全被験者にメトホルミンが投与された。 主要エンドポイントは、26週以降の糖化ヘモグロビン値のベースラインからの変化値だった。副次エンドポイントは、空腹時血糖値の変化などだった。安全性は、全試験期間を通して評価した。糖化ヘモグロビン値、リラグルチド群で0.64ポイント低下、プラセボ群は上昇 被験者135例のうち134例が、リラグルチド(66例)またはプラセボ(68例)を1回以上投与された。両群の人口動態的特性は類似していた(平均年齢は14.6歳)。 主要エンドポイントの26週時点の解析では、糖化ヘモグロビン値はリラグルチド群で0.64ポイント低下した一方、プラセボ群は0.42ポイント増加した。推定治療差は-1.06ポイントだった(p<0.001)。同差は、52週時点までに-1.30ポイントに増大した。 空腹時血糖値は、リラグルチド群では26週時と52週時で共に低下したのに対し、プラセボ群では上昇していた。 有害事象が報告された患者数は両群間で類似していたが(リラグルチド群56例[84.8%]、プラセボ群55例[80.9%])、全有害事象発生率と消化器系有害事象の発生率はリラグルチド群で高かった。

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アドヒアランス不良のカリウム薬の中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第3回

 今回は、長期間にわたってカリウム薬を服用していたことに着目した症例です。患者さんより聴取した不満を契機に医師へ血液検査結果を基にした中止提案を行い、中止後の検査値や自覚症状に問題がないことを医師および患者さんと確認し、無事に中止することができました。患者情報外来患者、70歳、女性、身長:154cm、体重:52kg現病歴:高血圧、骨粗鬆症投薬時に、毎食後の服薬が苦痛で、L−アスパラギン酸カリウムの服用をよく忘れるとの相談あり(医師には伝えていない)。市販薬やサプリメントの使用はなし。食事は規則正しく1日3食で、食事摂取量にむらはなし。処方内容(1、3の内科からの処方薬は10年以上服用中)1.テルミサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後2.アルファカルシドールカプセル0.25μg 1カプセル 分1 朝食後3.L−アスパラギン酸カリウム錠300mg 3錠 分3 毎食後症例のポイント患者さんは上記1と3の処方薬を長年服用していますが、L−アスパラギン酸カリウムを毎食後に服用することを苦痛に感じていました。たびたびあった服用忘れを医師には伝えていなかったため、アドヒアランスが良好だということを前提に処方が継続されている可能性がありました。L−アスパラギン酸カリウムは、薬剤性低カリウム血症のカリウム補給に用いられることが多くあります。低カリウム血症の原因となる薬剤として、漢方薬(芍薬甘草湯など市販薬にも成分として含まれるので要注意)や利尿薬(とくにループ利尿薬)、グリチルリチン酸、インスリンが挙げられますが、この患者さんの処方内容からは薬剤性の低カリウム血症が生じている可能性は低いと考えられました。患者さんから聞き取った範囲では、1日3食しっかりと食事を摂取していることから、食事でカリウムが著しく不足しているとも考えにくいです。直近の血液検査結果を持参してもらうと、アドヒアランス不良であったにもかかわらず、血清カリウム値は4.5mEq/Lと充足しており、中止しても大きな影響はないと推察しました。医師に血液検査結果と患者さんの希望について話をしてみたところ、そもそもL−アスパラギン酸カリウムの処方を開始したのは前医のため処方意図がわからないこと、血清カリウムなどのL−アスパラギン酸カリウムの評価を失念されていたことが発覚し、L−アスパラギン酸カリウムの処方が中止となりました。その際、次回診察の際にカリウム値の採血を提案しました。低カリウム血症とは、血清カリウム値が3.5mEq/L未満の場合であり、2.5~3.0mEq/Lが中等症、2.5mEq/L未満は重症と定義されている。2.5mEq/L未満の重症ないし急速な低下時には、心臓(不整脈)、筋肉(筋力低下・倦怠感・麻痺・筋痙攣)、消化管(イレウス・食欲不振・嘔気)、腎臓(多尿・腎機能障害)などに症状が出現する。とくにジギタリス製剤服用中の患者では致死的不整脈が起こりやすいので、血清カリウム値のモニタリングが重要となる。処方提案と経過L−アスパラギン酸カリウムの中止から1ヵ月後に患者さんが再来局されました。血液検査で血清カリウム値は4.1mEq/Lと基準値内であり、食欲不振や倦怠感・筋力低下による症状などの低カリウム血症に基づく症状もありませんでした。患者さんは薬局に相談したことで負担となっていた薬剤を中止できたことを喜んでくださり、信頼関係の構築にもつながって血圧・血液検査の提示や相談の機会も増えました。

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第12回 低血糖、シックデイ、アドヒア―注射剤にまつわる問題への対処法【高齢者糖尿病診療のコツ】

第12回 低血糖、シックデイ、アドヒア―注射剤にまつわる問題への対処法前回に引き続き、GLP-1受容体作動薬とインスリンそれぞれについて、高齢者での使い方のポイントをご紹介します。低血糖や、GLP-1受容体作動薬での消化器症状、そしてきちんと打てているかが心配な注射剤のアドヒアランスについて、状態を確認する方法と対処法をまとめます。Q1 低血糖や消化器症状、シックデイが心配。どのようにコントロールしますか?1)低血糖について高齢者では発汗・動悸といった典型的な低血糖症状が出づらく、めまいや脱力感が前面に出る場合が多く、低血糖症状が見逃されることがあります。また、低血糖症状がせん妄として現れることもあり、注意が必要です。インスリン使用者あるいはGLP-1製剤にSU薬やグリニド薬を併用している例では、低血糖のリスクがあるため、定期受診時に非典型的な症状も含めて症状の有無を確認します。また、HbA1cの下限も意識し、過度のコントロールにならないようにインスリンやSU薬、グリニド薬を減量します。2)消化器症状について肥満の非高齢者では好ましいGLP-1受容体作動薬の食欲低下作用ですが、高齢者では脱水やサルコペニアを惹起する可能性があり、食思不振や過度の体重減少に注意が必要です。そのため、筋肉量が少ないと予想される「やせ型」の高齢者にはあまりいい適応ではありません。週1回のGLP-1受容体作動薬は消化器症状が比較的出づらいといわれていますが、リスクはあるため、定期外来受診時は食欲と体重の推移に注意する必要があります。3)シックデイについて水分や炭水化物の摂取などの一般的なシックデイ対応が前提ですが、ここでは注射製剤の取扱いについて記述します。GLP-1受容体作動薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進するため、基本的には食事量が少なくても中止する必要はありませんが、嘔気などの消化器症状が強い場合は増悪させる危険性があるため中止します。持効型や中間型などの作用時間の長いインスリンは中止しないことが原則です。とくに、1型糖尿病などインスリン依存状態の場合は、たとえ食事摂取ができなくとも持効型製剤は絶対に中止しないように指導します。2型糖尿病でインスリン分泌能が保たれている場合には投与量を減量する場合もあります。超即効型製剤は、食事(炭水化物)量に応じ調整(例:食事摂取量が半量ならインスリン半量など)するように指導し、紙に書いて渡していますが、高齢者では対応困難な場合が多く、強い症状が半日以上続く、24時間以上経口摂取ができないなどといった場合1)は医療機関を受診するように指導しています。Q2 手技指導のポイントがあれば、教えてください。1)自己注射の可否の判断認知機能の低下した高齢者にとって新たに注射手技を獲得することは非常に困難です。DASC-8や時計描画試験を含むMini-Cogなどを用いて認知機能をスクリーニングし(第4回参照)、本人への指導を行うかを検討します。本人が難しい場合には介護者への指導を行うことになりますが、老々介護の世帯も多く、介護者への指導も難しいこともあり、インスリン分泌能が保たれている場合には、訪問看護やデイケアの看護師が行う週1回のGLP-1製剤が有用な選択肢として考えられます。また、注射自体は患者本人が可能なものの、インスリンの準備やその単位設定が困難な場合があるので、注射手技の一部を介護者に依頼することもよくあります。2)自己血糖測定本人や介護者が注射手技は獲得できても、自己血糖測定が困難な場合もあるため、指導状況をみながら自己血糖測定の指導を行うかどうか検討します。GLP-1製剤のみを使用している場合で、低血糖リスクが少ないと判断した場合は、血糖測定は必須ではありません。インスリン注射の場合で血糖測定が困難なときには、低血糖回避のため、やむを得ず血糖コントロール目標を緩和することがあります。自己血糖測定が可能な場合には、低血糖を回避するために、食前または眠前の血糖値100mg/dL未満が継続する場合にその前の責任インスリンの減量(1~2単位)を考慮します。また、血糖値の変動が大きい場合には、インスリンボールができていないかどうかを確認し、固くない場所に注射するように指導します。3)注射のアドヒアランス自己注射を行えていた例でも、加齢に伴って打ち忘れがあったり、注射の実施が困難になったりする場合もあります。明らかな誘因がなくコントロールが悪化したときは、注射の打ち忘れと注射手技を確認します。とくに眠前の持効型インスリンは、つい早く寝てしまって、打ち忘れが起こりやすいので、朝食前や夕食後に変更することがあります。外出や旅行の際のインスリンの打ち忘れも起こりやすいので、あらかじめバッグに予備の注射薬を入れておくように指導します。インスリン注射は実施できていても単位を間違えることが懸念される場合は、多少の血糖上昇には目をつぶり、毎回のインスリン量を同じにする、10単位など覚えやすい単位数に設定するなどの工夫をすることもあります。インスリン単位数は処方箋の記載だけでなく、必ず紙に書いて(多くは自己血糖記録用紙に)渡すようにし、外来受診時に何単位打っているかを患者さんに答えてもらって、単位数の間違えがないかを確認しています。独居で介護者がいない場合は低血糖リスクを極力下げるため、血糖管理目標を緩和します。訪問看護を導入すると、インスリンの残量を確認することで実際に打てているかどうかをわかることがあります。インスリン注射が必要であるが、自己管理が困難で、かつ介護者が不在の場合は外来での対応は困難であり、入院あるいは短期入所のうえ環境調整が必要です。入院・入所を拒否された場合でも、説得を続けながら地域包括支援センターなどに相談します。1)日本老年医学会・日本糖尿病学会編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2017.南江堂;2017.

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下垂体性成長ホルモン分泌亢進症〔pituitary hypersecretion of growth hormone〕

1 疾患概要■ 概念・定義下垂体性成長ホルモン(GH:growth hormone)分泌亢進症とは、GHとその仲介ホルモンであるインスリン様成長因子(IGF:insulin-like growth factor)-Iの過剰により特有の外観(顔貌や体型など)、種々の代謝合併症を来す疾患である。■ 疫学欧米の疫学調査では人口10万人あたり3~13人の罹患率とされているが、実際には診断されていない潜在的な症例がこれより多く存在する可能性が指摘されている1)。男女差はなく、幅広い年代にみられるが40~50歳代に多い。■ 病因本症の病因の97%以上はGH産生下垂体腺腫による。ごくまれに異所性GH産生腫瘍(膵がんなど)によるGH分泌過剰、異所性成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)産生腫瘍(気管支や膵臓の神経内分泌腫瘍など)により下垂体過形成を介してGH分泌亢進症を生じる病態がある。■ 症状わが国の診断の手引き2)では下垂体性巨人症、先端巨大症について以下の症候が挙げられている。症状は緩徐に進行するため本人も自覚していない場合があり、診断確定までに約10年経過することもある1)。1)下垂体性巨人症主症候:著明な身長の増加(最終身長は男子185cm以上、女子175cm以上)2)先端巨大症主症候:手足の容積の増大、先端巨大症様顔貌(眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出など)、巨大舌副症候:発汗過多、頭痛、視野障害(下垂体腺腫が視交叉を圧排すると両耳側半盲を来す)、女性における月経異常、睡眠時無呼吸症候群、耐糖能異常、高血圧、咬合不全、変形性関節症,手根管症候群■ 分類1)GH過剰が発症した時期による分類骨端線が閉鎖する以前に発症し、著明な高身長を呈するものを下垂体性巨人症(gigantism)、骨端線閉鎖後に発症するものを先端巨大症(acromegaly)という。2)厚生労働省による指定難病としての重症度分類以下に示す項目のうち最も重症度の高い項目を疾患の重症度とする。(1)軽症:血清GH濃度1ng/mL未満、血清IGF-1濃度SDスコア+2.5未満治療中の合併症がある。(2)中等症:血清GH濃度1ng/mL以上2.5ng/mL未満、血清IGF-1濃度SDスコア+2.5以上臨床的活動性(頭痛、発汗過多、感覚異常、関節痛のうち、2つ以上の臨床症状)を認める。(3)重症:血清GH濃度2.5ng/mL以上、血清IGF-1濃度SDスコア+2.5以上臨床的活動性および合併症の進行を認める。■ 予後手術で寛解した場合や薬物療法で良好なコントロール(血中IGF-Iの正常化)が得られた場合の生命予後は一般人と変わらない。しかし、長期にわたってGH過剰が続いた場合は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを併発し、心血管系合併症により生命予後は悪化する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)先端巨大症では、主症候(手足の容積の増大、先端巨大症様顔貌、巨大舌)のいずれかに加え、検査所見にて血中GHの過剰(経口75gブドウ糖投与で血中GHが正常(4 今後の展望前述のように内視鏡下での手術が主流となっている。近年の光学機器の進歩は目覚ましく、そのような背景からこれらの手術にも4K、8Kシステムなどが導入されつつある。今後も画質の向上が期待でき、手術成績も良くなる可能性が期待される。難治症例についてはソマトスタチン誘導体、ドパミン作動薬、GH受容体拮抗薬など複数の薬剤を組み合わせる治療も試みられている。5 主たる診療科内分泌代謝内科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報下垂体患者の会(患者とその家族および支援者の会)1)Zahr R, et al. Eur Endocrinol. 2018;14:57–61.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班 編集. 間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂版). 日本内分泌学会雑誌. 2019;95:1-60.公開履歴初回2019年8月13日

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第11回 高齢者でも!注射剤の活用法【高齢者糖尿病診療のコツ】

第11回 高齢者でも!注射剤の活用法高齢者は個人差が大きく、ひとくくりに高齢者といっても、認知機能が保たれており、予後が10年以上見込まれる75歳の方と、認知症など多くの並存疾患があり、予後不良が予想される65歳の方では治療方針が異なります。注射剤の使用で問題となるのは自己管理が困難な高齢者だと思いますので、そうした方々を念頭に、私が普段の診療で行っていることを中心に記述します。なお、インスリン依存状態や、注射製剤(とくにインスリン)の導入や中止の判断に迷う場合には専門医への紹介をぜひご検討ください。また、GLP-1受容体作動薬とインスリンは同じ注射薬ではありますが、効果や使用目的が根本的に異なるため、分けて考える必要があります。Q1 高齢者でのインスリン注射のはじめどきは?高齢者でも、インスリン注射の適応は非高齢者と同様です1)。(1) インスリン分泌能の低下、(2)抗GAD抗体陽性あるいは抗IA-2抗体陽性、(3) 経口血糖降下薬3剤でも血糖コントロール不良、(4) 重度の肝障害、腎症4期以降で使用できる経口血糖降下薬が少なく、血糖コントロール不良、(5) ステロイドの使用、(6)感染症などの急性期、(7)高血糖が持続し、積極的に糖毒性の解除を行うときなどの場合に、インスリン注射を検討します。インスリン療法では、超即効型製剤を各食前と持効型製剤による強化インスリン療法が血糖管理のうえでは理想的ですが、インスリン分泌能や本人・介護者の能力・実行力に応じて、注射回数を決定し、それに応じたインスリン製剤を選択します。頻回注射は難しいことが多く、持効型製剤を1回、介護者が可能な時間帯に打つか、本人の注射手技を確認してもらいます。インスリン グラルギン(商品名:ランタスXR)では±3時間、インスリン デグルデク(商品名:トレシーバ)では±8時間の注射時刻のずれは効果・安全性に影響しないことが示されており、日による注射時刻の変動は許容できます。Q2 高齢者でのGLP-1受容体作動薬のはじめどきは?(1)インスリン分泌は保たれているが、経口血糖降下薬3剤でも血糖コントロール不良、(2)高齢者でも減量のメリットが得られる場合、(3)腎症4期以降で使用できる経口血糖降下薬が少なく、血糖コントロール不良、(4)認知機能障害などで服薬アドヒアランス不良、かつサポート不足があるなどの場合に、GLP-1受容体作動薬を検討します。とくに(4)の場合はアドヒアランスを重視し、週1回製剤を選択することが多いです。週1回の注射を介護者あるいは訪問看護師、デイケアなどの施設看護師が打つようにすると打ち忘れることもなく、複数回の経口薬と比べ、アドヒアランスが上がる場合があり、独居で注射手技の獲得が困難な高齢者でも使用できます。Q3 インスリンの注射の減量・中止を考えるとき注射製剤の中止を考える場合は、良好なコントロールが持続し、かつ注射管理が困難となった場合や、患者あるいは家族の強い希望があった場合などです。インスリンを中止する場合には、たとえ少量のインスリン使用で良好なコントロールが得られている場合でも、インスリン分泌能や抗GAD抗体を測定したうえで、中止を検討します。インスリン分泌能が保持されている場合は、経口薬を調整しながらインスリンを漸減し、インスリンの中止を試みます。一方、インスリン分泌能が高度に低下している場合には、インスリンを中止することは難しいため、介護サービスなどを利用し、持効型製剤1回でもどうにか注射できる体制を構築する必要がありますが、実際には外来診療ではなかなか時間がとれず、入院していただき環境調整を行うことも多くあります。入院ではまず、強化インスリン療法で糖毒性を解除します。インスリン依存状態でなければインスリンの中止、あるいは持効型1回打ちへの変更を目標として、忍容性があれば入院早期からメトホルミンを投与し、経過に応じてDPP-4阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬を検討します。GLP-1受容体作動薬を追加しても食後血糖がコントロールできない場合はグリニド薬やαグルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)を考慮します。外来でのインスリン治療の簡略化は米国糖尿病学会のposition statementが参考になります(図)2)。強化インスリン療法を行っている場合には基礎インスリン(持効型・中間型インスリン)は継続し、空腹時血糖値が目標内(90~150mg/dL、個々の症例に応じて要調整)に入るように調整。SMBGにおける空腹時血糖値の半数が150mg/dL以上の場合は基礎インスリンを2単位増加し、血糖が80mg/dL以下の場合は2単位減量。食前インスリン(速攻型・超速効型インスリン)については、経口薬を追加し、10単位以下であればそのまま中止、10単位より多い場合は半量とするとされています。画像を拡大する本邦では、3単位以下ぐらいが追加インスリン中止の目安であろうと思います。追加する経口薬は、eGFR≧45mL/minで忍容性があればメトホルミン500mg分2を、すでにメトホルミンが投与されているか使用できない場合にはDPP-4阻害薬などを使用し、追加インスリンの中止を検討。混合型インスリンを使用している場合には総インスリン投与量の7割の持効型製剤に変更し、インスリン量、経口薬を調整するようにしています。Q4 GLP-1受容体作動薬の中止を考えるときGLP-1受容体作動薬もインスリンと同様に良好なコントロールが持続し、かつ注射管理が困難となったときに、DPP-4阻害薬等に変更し、中止を検討します。週1回のGLP-1受容体作動薬を使用している場合にはかえってアドヒアランスが落ちる場合もありますので、経口薬の管理が可能かを介護者や、場合によってはケアマネージャーに確認して中止しています。本人が自己管理困難になってきた場合には、連日投与から週1回製剤への切り替えを行います。また、GLP-1受容体作動薬の作用である食欲低下作用が強く出過ぎてしまい、過度の体重減少をきたし、サルコペニアが懸念される場合にも中止します。1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2018-2019.文光堂;2018.2)American Diabetes Association.Diabetes Care.2019;42:S139-147.

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高血糖の脳梗塞患者、強化血糖コントロールは有効か/JAMA

 高血糖を有する急性期虚血性脳卒中患者の治療において、最長72時間の強化血糖コントロールは標準治療と比較して、90日時に機能アウトカムが良好な患者の割合に差はないことが、米国・バージニア大学のKaren C. Johnston氏らが行った「SHINE試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年7月23日号に掲載された。急性期虚血性脳卒中患者では、高血糖は不良な転帰と関連するが、高血糖への強化治療の効果は知られていないという。ベースラインのNIHSSスコア別に、90日時のmRSを評価 本研究は、米国の70施設が参加した無作為化臨床試験であり、2012年4月~2018年8月の期間に63施設から1例以上の患者が登録された(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、発症から12時間以内の虚血性脳卒中で、高血糖がみられ、米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)のスコア(0~42点、点数が高いほど神経症状が重度)が3~22点の患者であった。 被験者は、コンピュータによる意思決定支援ツールを用いた持続静脈インスリン注入を受ける強化治療群(目標血糖値:80~130mg/dL[4.4~7.2mmol/L])、またはスライディングスケールに基づき、必要に応じて6時間ごとにインスリンを皮下投与する標準治療群(80~179mg/dL[4.4~9.9mmol/L])に無作為に割り付けられ、最長で72時間の治療が行われた。 有効性の主要アウトカムは、90日時の修正Rankinスケール(mRS、0[無症状または完全な回復]~6[死亡]点)に基づく良好なアウトカムとした。良好なアウトカムは、ベースラインのNIHSSスコアが3~7点の患者は90日時のmRSが0点、8~14点の患者は0~1点、15~22点の患者は0~2点と定義した。 事前に規定された中間解析の基準により、2018年8月、試験登録は無効中止となった。8割が糖尿病合併、重症低血糖の発現は有意に高い 1,151例(平均年齢66[SD 13.1]歳、女性529例[46%]、糖尿病920例[80%])が割り付けの対象となり、1,118例(97%)が試験を完遂した。23%がラクナ梗塞、50%が軽症脳梗塞(NIHSS:3~7点)で、再灌流療法は68%で行われていた。ベースラインの血糖値中央値は188mg/dL(10.4mmol/L)であった。 治療中の平均血糖値は強化治療群が118mg/dL(6.6mmol/L)、標準治療群は179mg/dL(9.9mmol/L)であった。 良好なアウトカムは、強化治療群が581例中119例(20.5%)で、標準治療群は570例中123例(21.6%)で達成され、両群間に有意な差はみられなかった(補正相対リスク 0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.08、p=0.55、補正前リスク差:-0.83%、95%CI:-5.72~4.06)。 主な副次アウトカム(90日時の良好なNIHSSスコア、90日時の良好なBarthelインデックススコア、90日時の脳卒中特異的QOLスコア)は、いずれも両群間に有意な差はなかった。 低血糖または他の有害事象により早期に治療が中止された患者の割合は、強化治療群が581例中65例(11.2%)、標準治療群は570例中18例(3.2%)であった。 重症低血糖(<40mg/dL[<2.22mmol/L])は強化治療群の15例(2.6%)に認められ、標準治療群では発現しなかった(補正前リスク差:2.58%、95%CI:1.29~3.87、p<0.001)。 著者は、「これらの知見は、高血糖の急性期虚血性脳卒中患者における強化血糖コントロールの使用を支持しない」としている。

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