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高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

 高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。 2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。 主な結果は以下のとおり。・9万例超が対象の、26の比較群を含む20件の無作為化試験が解析された。・今回の結果は、2型糖尿病を含む複数の合併症を有する50〜75歳の男女高血圧患者における第1選択薬に関するものである。・第1選択薬としてのサイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬が、β遮断薬(6試験)、Ca拮抗薬(8試験)、ACE阻害薬(5試験)、およびα遮断薬(3試験)と比較された。・他の比較対照には、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、アリスキレン(直接的レニン阻害薬)、およびクロニジン(中枢作用薬)が含まれていたが、データが不十分だった。・重篤な有害事象の総数に関するデータを報告した研究は3件のみで、利尿薬とCa拮抗薬を比較した研究が2件、直接的レニン阻害薬と比較した研究が1件だった。β遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(リスク比[RR]:0.96[95%信頼区間:0.84~1.10]、5試験/1万8,241例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(5.4% vs.4.8%、RR:0.88[0.78~1.00]、絶対リスク減少[ARR]:0.6%、4試験/1万8,135例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:0.85[0.66~1.09]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、CHD(RR:0.91[0.78~1.07]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、心不全(RR:0.69[0.40~1.19]、1試験/6,569 例/確実性:低)。・有害作用による中止(10.1% vs.7.9%、RR:0.78[0.71~0.85]、ARR:2.2%、5試験/1万8,501例/確実性:中程度)。Ca拮抗薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.02[0.96~1.08]、7試験/3万5,417例/確実性:中程度)。・重篤な有害事象(RR:1.09[0.97~1.24]、2試験/7,204例/確実性:低)。・総心血管イベント(14.3% vs.13.3%、RR:0.93[0.89~0.98]、ARR:1.0%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:1.06[0.95~1.18]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.00[0.93~1.08]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、心不全(4.4% vs.3.2%、RR:0.74[0.66~0.82]、ARR:1.2%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(7.6% vs.6.2%、RR:0.81[0.75~0.88]、ARR:1.4%、7試験/3万3,908例/確実性:低)。ACE阻害薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.00[0.95~1.07]、3試験/3万961例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(RR:0.97[0.92~1.02]、3試験/3万900例/確実性:低)。・脳卒中(4.7% vs.4.1%、RR:0.89[0.80~0.99]、ARR:0.6%、3試験/3万900例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.03[0.96~1.12]、3試験/3万900例/確実性:中程度)、心不全(RR:0.94[0.84~1.04]、2試験/3万392例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(3.9% vs.2.9%、RR:0.73[0.64~0.84]、ARR:1.0%、3試験/2万5,254例/確実性:中程度)。α遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:0.98[0.88~1.09]、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(12.1% vs.9.0%、RR:0.74[0.69~0.80]、ARR:3.1%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)。・脳卒中(2.7% vs.2.3%、RR:0.86[0.73~1.01]、ARR:0.4%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)、CHD(RR:0.98[0.86~1.11]、2試験/2万4,396例/確実性:低)、心不全(5.4% vs.2.8%、RR:0.51[0.45~0.58]、ARR:2.6%、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(1.3% vs.0.9%、RR:0.70[0.54~0.89]、ARR:0.4%、3試験/2万4,772例/確実性:低)。 著者らは、本結果を以下のようにまとめている。・利尿薬と他のクラスの降圧薬の間で、おそらく死亡率に差はない。・利尿薬はβ遮断薬と比較して、心血管イベントをおそらく減少させる。・利尿薬はCa拮抗薬と比較して、心血管イベントと心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はACE阻害薬と比較して、脳卒中をおそらくわずかに減少させる。・利尿薬はα遮断薬と比較して、心血管イベント、脳卒中、心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はβ遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬と比較して、有害作用による中止がおそらく少ない。

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国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」【下平博士のDIノート】第103回

国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」今回は、小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤「バルベナジントシル酸塩カプセル(商品名:ジスバルカプセル40mg、製造販売元:田辺三菱製薬)」を紹介します。本剤は、わが国で初めて遅発性ジスキネジア治療薬として承認されました。これまで治療法がなかった遅発性ジスキネジアによる不随意運動の改善効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、遅発性ジスキネジアの適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月1日に発売されました。なお、「遅発性ジスキネジア」の診断は、米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』および『統合失調症治療ガイドライン第3版』が参考とされます。<用法・用量>通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与します。なお、症状により1日1回80mgを超えない範囲で適宜増減できます。増量については、1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ検討します。<安全性>遅発性ジスキネジア患者を対象とした国内第II/III相試験で認められた主な副作用は、傾眠、流涎過多、アカシジア、倦怠感などでした。重大な副作用として、傾眠(16.9%)、流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、鎮静、運動緩慢(いずれも1.2%)、落ち着きのなさ、姿勢異常(いずれも0.8%)、重篤な発疹、ジストニア、表情減少、筋固縮、筋骨格硬直、歩行障害、突進性歩行、運動障害(いずれも0.4%)、悪性症候群、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫(いずれも頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過剰になった脳内の神経刺激伝達を抑えることで、自分の意志とは無関係に体が動いてしまう、または無意識に口や舌を動かしてしまうなどの症状が出る遅発性ジスキネジアを改善します。2.眠くなったり、ふらついたりすることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作は行わないでください。3.抑うつや不安などの精神症状が現れることがあるので、体調の変化に気が付いた場合には連絡してください。4.飲み合わせに注意が必要な薬があるため、ほかの薬を使用している場合や新しい薬を使用する場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。5.不整脈が起きていないか確認するために、心電図検査が行われることがあります。<Shimo's eyes>画像:重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚労省)より本剤は、わが国初の遅発性ジスキネジア治療薬であり、1日1回服用の経口剤です。遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬などを長期間服用することで起こる不随意運動を特徴とした神経障害であり、ドパミン受容体の感受性増加などが原因と考えられています。症状は、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなど、顔面に主に現れますが、手や足が動いてしまうなど四肢や体幹部でも認められます。また、重症になれば嚥下障害や呼吸困難を引き起こす可能性もあります。本剤は、神経終末に存在する小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)を阻害することにより、ドパミンなど神経伝達物質のシナプス前小胞への取り込みを減らし、不随意運動の発生に関わるドパミン神経系の機能を正常化させます。遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害または抑うつ障害の患者を対象とした国内第II/III相プラセボ対照二重盲検比較試験(MT-5199-J02)において、本剤40mg/日または80mg/日を投与した結果、両群で用量依存的な異常不随意運動の改善効果が認められました。本剤は重症度を問わず処方が可能です。ただし、遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期使用に関連して発現するとされているため、原因薬剤の減量または中止を検討する必要があります。したがって、本剤の投与対象となるのは抗精神病薬など原因薬剤の減量や中止ができない、あるいは減量や中止を行っても遅発性ジスキネジアが改善しない患者さんとなります。投与に関しては相互作用が多いため併用薬の厳格なチェックが欠かせません。本剤はプロドラッグであり、未変化体はP糖タンパク質(P-gp)を阻害します。また、体内では主にCYP3Aによって代謝された後、活性代謝物は主にCYP2D6およびCYP3Aで代謝されます。本剤とパロキセチンを併用したとき、未変化体の変化は認められませんでしたが、活性代謝産物のCmaxおよびAUCはそれぞれ1.4倍、1.9倍に上昇したことが報告されています。本剤は、強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン、ダコミチニブ等)や、強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)を使用中、または遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さんなどでは、投与量を1日40mgから増量しないこととされています。なお、これらの条件が2つ以上重なる場合は、活性代謝物の血中濃度が上昇し、過度なQT延長などの副作用を発現する恐れがあるため、本剤との併用は避けることとされています。一方、中程度以上のCYP3A誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)を使用中の場合には、作用が弱まることを考慮して投与量を検討します。また、P-gpの基質薬剤(ジゴキシン、アリスキレン、ダビガトラン等)と併用するとこれらの血中濃度が上昇する恐れがあるので注意しましょう。中等度、あるいは高度の肝機能障害患者についても投与量に制限がかけられています。活性代謝産物の血中濃度が上昇した場合にはQT延長を引き起こす恐れがあるので、遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さん、QT延長を起こしやすい患者さん、相互作用に注意すべき薬剤を併用している患者さんでは定期的に心電図検査を行う必要があります。これまで、遅発性ジスキネジアについては原因薬の中止や他薬剤への変更に代わる対処法がありませんでした。よって、本剤の臨床的意義は高いと考えられます。なお、本剤は食事の影響を受けやすく、空腹時に服用すると食後投与と比較して血中濃度が上昇する恐れがあるため、副作用モニタリングと共に服用タイミングについても順守できているか確認しましょう。参考1)PMDA 添付文書 ジスバルカプセル40mg

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「エックスフォージ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第67回

第67回 「エックスフォージ」の名称の由来は?販売名エックスフォージ®配合錠エックスフォージ®配合OD錠一般名(和名[命名法])バルサルタン(日局、JAN)/アムロジピンベシル酸塩(日局、JAN)効能又は効果高血圧症用法及び用量成人には1日1回1錠(バルサルタンとして80mg及びアムロジピンとして5mg)を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。警告内容とその理由なし禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.ジヒドロピリジン系化合物に対し過敏症の既往歴のある患者3.妊婦又は妊娠している可能性のある女性4.アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)※本内容は2021年9月1日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年4月改訂(第16版)医薬品インタビューフォーム「エックスフォージ®配合錠・エックスフォージ®配合OD錠」2)ノバルティス:DR’s Net

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善玉ナトリウム利尿ペプチドは急性心不全には効かない?(解説:絹川 弘一郎 氏)-671

 心不全の悪玉は交感神経系とレニン・アンジオテンシン系である、といわれてきた。一方、診断や重症度分類に有用なナトリウム利尿ペプチドはANPとBNPが代表であり、血管拡張作用とあわせて善玉ではないかと推察されている。もっとも、この善玉は通常、悪玉に負ける弱いヒーローであるが、ネプリライシンという善玉分解酵素を抑制することで助け舟を出すとやっと力を発揮して、ついに(条件付きではあるけれども)ACE阻害薬を上回る効果を有する薬剤(sacubitril/valsartan)の開発に結実した。 では、そもそもANPやBNPを静注してみたらどうなのだろうと思うのは、当然わく疑問である。わが国においてはカルペリチドというANP静注製剤が急性心不全治療薬として非常にポピュラーであり、ほとんど無意識・無批判のうちに投与されてきたが、一転、海外に目を向けるとBNP静注製剤nesiritideはASCEND-HFという大規模臨床試験による検証を経て、そのシェアを著しく減らした。今回、同様のナトリウム利尿ペプチドであるularitideの大規模な検証が、このTRUE-AHF試験である。 結論から言うと、またもナトリウム利尿ペプチドは急性心不全に使用しても予後改善効果が得られず、ASCEND-HF試験と同じ結果に終わった。おそらく、ularitideは認可されることはないと思われる。この試験でNT-proBNPはularitide群で有意に低下しており、その利尿効果や血管拡張作用は心不全の血行動態改善に寄与していると考えられるが、それでも予後は差がない。 このようなことを考えると心不全のサロゲートマーカーとして観察研究では非常に有用である血中BNP濃度であるが、いつも予後のマーカーになるとは限らないわけである。この意味でBNPをエンドポイントにおいて一旦有用とされても、その後ハードエンドポイントで否定されることもありうる。その実例はアリスキレンのALOFT試験と、その後のATMOSPHERE試験である。急性心不全に対する治療薬は、ごく最近serelaxinも第3相試験で予後改善効果が認められなかったことが発表されて、新規薬剤承認の見通しが立たない様相を呈している。このようなグローバルの現況を受けて、わが国においてカルペリチドの予後改善効果について大規模臨床試験を行おうという声が、まったく出てこないのはどういうわけであろうか?

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慢性心不全、エナラプリルへのアリスキレン追加は有用か/NEJM

 慢性心不全患者に対し、エナラプリルに加えてアリスキレン(商品名:ラジレス)を投与しても、有害事象が増大するだけでベネフィットは増大しないことが、英国・グラスゴー大学のJohn J.V. McMurray氏らによる無作為化試験の結果、示された。アリスキレンのエナラプリルに対する非劣性は示されなかった。慢性心不全患者に対し、ACE阻害薬は死亡および入院の発生を減少することが知られている。しかし、それら患者に対するレニン阻害薬がどのような役割を果たすのかは不明であった。NEJM誌2016年4月21日号(オンライン版2016年4月4日号)掲載の報告。各単独、併用の3群に無作為化し心血管死・心不全入院の発生を比較 試験は2009年3月13日~13年12月26日に、43ヵ国789センターで8,835例を登録して行われた。単盲検の導入期間後、二重盲検法にて、3群(エナラプリル1日2回5または10mg投与群、アリスキレン1日1回300mg投与群、両薬併用群)のうちの1つに被験者を無作為に割り付けた(エナラプリル単独群2,336例、アリスキレン単独群2,340例、併用群2,340例)。 被験者の適格条件は、NYHA心機能分類II~IV、LVEF35%以下、12ヵ月以内に心不全入院歴のある場合BNP100pg/mL以上、登録時に一定用量でのACE阻害薬投与を受けている(エナラプリル1日10mg投与に相当)またはβ阻害薬投与を受けている患者とした。 主要アウトカムは、心血管死・心不全入院の複合とした。 3群の被験者バランスはとれており、ベースラインで糖尿病を有している患者はより高齢で、糖尿病を有していない患者よりも虚血性心疾患歴を有する割合が高かった。併用群のベネフィット認められず、複数の有害事象のリスクが上昇 追跡期間中央値36.6ヵ月後、主要複合アウトカムの発生は、併用群770例(32.9%)、エナラプリル単独群808例(34.6%)であった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.85~1.03)。また、アリスキレン単独群では791例(33.8%)で(対エナラプリル単独のHR:0.99、95%CI:0.90~1.10)、事前規定の非劣性検定の基準を満たさなかった。 併用群では、エナラプリル群よりも低血圧症のリスク上昇がみられた(13.8% vs.11.0%、p=0.005)。同様に、血清クレアチニン値上昇のリスク(4.1% vs.2.7%、p=0.009)、高カリウム血症のリスク上昇もみられた(17.1% vs.12.5%、p<0.001)。

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ACC(米国心臓病学会)2016 注目のLate Breaking Clinical Trial

2016年4月2~4日、米国シカゴでACC2016(米国心臓病学会)が開催されます。今年のACCは、5つのLate Breaking Clinical Trialセッションと2つのFeatured Clinical Researchセッションで最新の研究が発表される予定です。ケアネットでは、聴講スケジュールの参考としていただくために、Late Breaking Trialでの注目演題のアンケートを実施いたしました。その結果をセッションごとに、北里大学医学部循環器内科学 教授 阿古潤哉氏のコメントとともにご紹介いたします。また、レストランをはじめ開催地シカゴのおすすめスポットについても、会員の方々から情報をお寄せいただきました。ぜひ、ご活用ください。開催地シカゴのおすすめスポットはこちらOpening Showcase and the Joint ACC/JACC Late-Breaking Clinical Trials<Session 401:4/2(土)8:00am~10:00am、Main Tent (North Hall B1)>Partner 2: Transcatheter Aortic Valve Replacement Compared with Surgery in Intermediate Risk Patients with Aortic Stenosis: Final Results from the Randomized Placement of Aortic Transcatheter Valves 2 StudyHOPE 3: Blood Pressure Lowering in People at Moderate RiskHOPE 3: Effects of Combined Lipid and BP-Lowering on Cardiovascular Disease in a Moderate Risk Global Primary Prevention PopulationQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はTAVRに注目が集まっている様子。最初は手術リスクが高い人にのみ行われてきたTAVRが、中等度リスクの患者でどのような結果になるか、無作為化試験に注目が集まる。結果次第では現在の適応を大きく変えていく可能性も。Joint American College of Cardiology/Journal of the American Medical Association Late-Breaking Clinical Trials<Session 404:4/3(日) 8:00am~9:15am、Main Tent (North Hall B1)>ACCELERATE: Impact of the Cholesteryl Ester Transfer Protein Inhibitor Evacetrapib on Cardiovascular Events: Results of the ACCELERATE trialGAUSS-3: Comparison of PCSK9 Inhibitor Evolocumab Versus Ezetimibe in Statin-intolerant Patients: The Goal Achievement After Utilizing an Anti-PCSK9 Antibody in Statin Intolerant Subjects 3 (GAUSS-3) TrialFH Mutations: Low-density Lipoprotein Cholesterol, Familial Hypercholesterolemia Mutation Status and Risk for Coronary Artery DiseaseStepathlon: Reproducible Impact of a Global Mobile Health (mHealth) Mass-Participation Physical Activity Intervention on Step Count, Sitting Behavior and Weight: the Stepathlon Cardiovascular Health StudyLow Risk Chest Pain: Involving Patients with Low Risk Chest Pain in Discharge Decisions: A Multicenter TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はGAUSS試験に注目が集まっている。わが国でも承認されたPCSK9阻害薬が、スタチンを投与することができない患者に対してどの程度、有効性・安全性を示すか注目される。ACCELERATEはCETP阻害薬の試験。今までHDL-Cを上げる治療はなかなか有効性が示されていないが、evacetrapibでどのような結果となるか?Joint American College of Cardiology/TCT Late-Breaking Clinical Trials<Session 405:4/3(日)10:45am~noon、Main Tent (North Hall B1)>DANish (DEFERred stent): The Third DANish Study of Optimal Acute Treatment of Patients with ST-segment Elevation Myocardial Infarction: DEFERred stent implantation in connection with primary PCIDANish (iPOST conditioning): The Third DANish Study of Optimal Acute Treatment of Patients with ST-segment Elevation Myocardial Infarction: iPOSTconditioning during primary PCIEarly-BAMI: Effect Of Early Administration Of Intravenous Beta Blockers In Patients With ST-elevation Myocardial Infarction Before Primary Percutaneous Coronary Intervention. The Early-BAMI trial.Sapien 3: Sapien 3 Transcatheter Aortic Valve Replacement versus Surgery in Intermediate-Risk Patients with Severe Aortic Stenosis: A Propensity-Matched Comparison of One-Year OutcomesTAVR Volume/Outcome: Relationship Between Procedure Volume and Outcome for Transcatheter Aortic Valve Replacement in U.S. Clinical Practice: Insights from the STS/ACC TVT RegistryQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はSTEMIに対する試験が注目されている様子である。TAVRの演題は数字上低めとなっている。しかし、この日もSapienはintermediate riskの患者のデータであり、TAVR治療の今後の広がりを考える上では注目されよう。Featured Clinical Research Session I<Session 406:4/3(日)12:30pm~1:45pm、ACC.16 Main Tent (Room S103cd)>MR: Papillary Muscle Approximation versus Undersizing Restrictive Annuloplasty Alone for Severe Ischemic Mitral Regurgitation: a Randomized Clinical TrialIsch MR: Two-year Outcomes of Surgical Treatment of Moderate Ischemic Mitral Regurgitation: A Randomized Clinical Trial from The Cardiothoracic Surgical Trials NetworkSurgery Ischemic HF: Ten-Year Outcome of Coronary Artery Bypass Graft Surgery Versus Medical Therapy in Patients with Ischemic Cardiomyopathy: Results of the Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure Extension StudyCoreValve: 3-Year Results From the CoreValve US Pivotal High Risk Randomized Trial Comparing Self-Expanding Transcatheter and Surgical Aortic ValvesValve Deterioration: Incidence and Outcomes of Valve Hemodynamic Deterioration in Transcatheter Aortic Valve Replacement in U.S. Clinical Practice: A Report from the Society of Thoracic Surgery / American College of Cardiology Transcatheter Valve Therapy RegistryQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はischemic MRに対する試験と、虚血性心筋症に対するバイパス術と内科的治療を比較した臨床試験が注目を集めている。いずれも、clinical decision makingの助けとなる臨床試験が不足している領域であり、今後のガイドラインにも影響を与えそうな試験内容である。Joint American College of Cardiology/New England Journal of Medicine Late-Breaking Clinical Trials<Session 410:4/4(月)8:00am~9:15am、Main Tent (North Hall B1)>Resuscitation Outcomes: Antiarrhythmic Drugs for Shock-Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest: The Resuscitation Outcomes Consortium Amiodarone, Lidocaine or Placebo StudyFIRE AND ICE: Largest Randomized Trial Demonstrates an Effective Ablation of Atrial Fibrillation: the FIRE AND ICE TrialRate v Rhythm: A Randomized Trial of Rate Control Versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac SurgeryLATITUDE-TIMI 60: The Losmapimod To Inhibit P38 MAP Kinase As A Therapeutic Target And Modify Outcomes After An Acute Coronary Syndrome (LATITUDE-TIMI 60) Trial: Primary Results Of Part ACARIN: CMX-2043 for Prevention of Contrast Induced Acute Kidney Injury: The Primary Results of the CARIN TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はresuscitation、ablation、rate control or rhythm controlに注目が集まっているが、個人的にはLATITUDE試験の結果も興味深いのではないかと考える。Late-Breaking Clinical Trials<Session 412:4/4(月)10:45am~noon、Main Tent (North Hall B1)>ATMOSPHERE: Direct Renin-inhibition With Aliskiren Alone And In Combination With Enalapril, Compared With Enalapril, In Heart Failure (the ATMOSPHERE Trial)TRUE-AHF: Effect of Ularitide on Short- and Long-Term Clinical Course of Patients with Acutely Decompensated Heart Failure: Primary Results of the TRUE-AHF TrialIxCell-DCM: The Final Results of the IxCell-DCM Trial: Transendocardial Injection of Ixmyelocel-T in Patients with Ischemic Dilated CardiomyopathyINOVATE-HF: The Effect of Vagal Nerve Stimulation in Heart Failure: Primary Results of the INcrease Of VAgal TonE in chronic Heart Failure (INOVATE-HF) TrialIMPEDANCE-HF: Non-invasive Lung IMPEDANCE-Guided Preemptive Treatment in Chronic Heart Failure Patients: a Randomized Controlled Trial (IMPEDANCE-HF trial)Low Risk Chest Pain: Involving Patients with Low Risk Chest Pain in Discharge Decisions: A Multicenter TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日は心不全関連の演題が多く出されている。アリスキレンの演題の注目度が高いようだが、vagal stimulationなどの新たな試みも出てくるということで、心不全に関する新たな知見が期待される。Featured Clinical Research Session II<Session 416:4/4(月)2:00pm~3:30pm、Main Tent (Grand Ballroom S100bc)>PROMISE (Sex Differences): Sex Differences in Functional Stress Test vs CT Angiography Results and Prognosis in Symptomatic Patients with Suspected Coronary Artery Disease: Insights from the PROMISE TrialSTOP-CHAGAS: Short and Long Term Effects of Benznidazole, Posaconazole, Monotherapy and their Combination in Eliminating Parasites in Asymptomatic T. cruzi Carriers: The Study of Oral Posaconazole in the Treatment of Asymptomatic Chagas Disease (STOP-CHAGAS Trial)STAMPEDE: Bariatric Surgery vs. Intensive Medical Therapy for Long-term Glycemic Control and Complications of Diabetes: Final 5-Year STAMPEDE Trial ResultsVindicate: Vitamin D Supplementation Improves Cardiac Function In Patients With Chronic Heart Failure - Preliminary Results Of The Vitamin D Treating Chronic Heart Failure (vindicate) StudyRxEACH Trial: The Effect of Community Pharmacist Prescribing and Care on Cardiovascular Risk Reduction: The RxEACH Multicenter Randomized Controlled TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこのセッションにはさまざまなものが混じって入れられている。わが国にも関連があるのはsex differenceの演題かもしれないが、世界的にみるとCHAGAS病、肥満に対するbariatric surgeryなども重要な位置を占める。

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直接的レニン阻害薬に、降圧を超えたプラーク進展予防効果認めず(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(142)より-

 高血圧前症(prehypertension、血圧125~139/90mmHg未満)で、かつ心血管リスクを1つ以上有している冠動脈疾患症例において、直接的レニン阻害薬アリスキレンのプラーク進展予防効果をIVUSを用いて検討した試験である。 レニン-アンジオテンシン系を上流で直接的に阻害するアリスキレンは、RA系の究極の阻害薬として期待をもって登場したが、残念ながら臨床試験ではことごとくその有用性は否定されている。 本報告もその1つであり、血圧はプラセボ群に比べて若干下げているものの、プラークの退縮はまったく認めれなかった。ただし糖尿病患者以外では、RAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB)を服用中であることも考慮すると、RAS阻害薬に直接的レニン阻害薬の併用は動脈硬化の進展予防をもたらさないと解釈すべきかもしれない。RAS阻害薬治療を受けている2型糖尿病患者において、直接的レニン阻害薬追加は心血管イベントや腎イベントの抑制に繋がらず、むしろ高カリウム血症などの有害事象を生じるとの結果が最近ALTITUDE試験の結果で示されているが、本試験では、RAS阻害薬治療中の糖尿病症例は除外されている。 本試験では、IVUSを用いてプラークの退縮効果を観察することで、降圧以外の抗炎症効果によるプラーク退縮の可能性を検討したが、血圧が若干下がったにも関わらず進展予防効果が認められなかったことは、降圧以外の心血管系へのベネフィットは否定されたと考えるべきであろう。

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レニン阻害薬、動脈硬化進展を抑制せず/JAMA

 冠動脈疾患を有する高血圧前症患者へのレニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)投与はプラセボと比較して、アテローム性動脈硬化の進展を抑制しないことが、南オーストラリア健康・医療研究所(SAHMRI)のStephen J. Nicholls氏らによる無作為化試験AQUARIUSの結果、示された。著者は、「今回の結果は、アテローム性動脈硬化症の退縮または予防についてアリスキレン使用を支持しないものであった」と結論している。JAMA誌オンライン版2013年9月3日号掲載の報告より。アリスキレン300mg/日またはプラセボを104週間投与 アテローム性動脈硬化症では、血圧降下とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害が治療目標となる。一方、動脈硬化の進展に対するレニン阻害の効果はこれまで検討されていなかったことから、アリスキレンとプラセボを比較検討する本試験が行われた。 AQUARIUS(Aliskiren Quantitative Atherosclerosis Regression Intravascular Ultrasound Study)は前向き多施設共同二重盲検法にて2009年3月~2011年2月に、ヨーロッパ、オーストラリア、南北アメリカの103施設で被験者を募って行われた。 被験者は、冠動脈疾患、高血圧前症(収縮期血圧125~139mmHg)、2つ以上の心血管リスク因子(心筋梗塞等の既往歴あり、尿中アルブミン/クレアチニン比30~300mg/g、2型糖尿病など9因子のうち)を有する613例であった。冠動脈血管内超音波法(IVUS)検査による画像診断を受け、305例がアリスキレン300mg/日の経口投与を、308例がプラセボをそれぞれ104週間投与された。 治療72週以降にIVUS検査を行い、疾患進行について評価を行った。主要有効性指標は、アテローム容積率(PAV)のベースラインから試験終了までの変化とし、副次有効性指標は、標準化総アテローム容積(TAV)の変化およびアテロームが退縮した患者の割合などが含まれた。安全性および忍容性も評価された。主要有効性指標PAV、副次有効性指標TAVともに有意差がみられず ベースラインと追跡調査時の画像診断データが入手できたのは、458例(74.7%、アリスキレン群は225例)であった。 主要有効性指標のPAVは、両群間で有意差はみられなかった。アリスキレン群-0.33%(95%信頼区間[CI]:-0.68~0.02%)、プラセボ群0.11%(同:-0.24~0.45%)で群間差は-0.43%(同:-0.92~0.05%、p=0.08)だった。 副次有効性指標のTAVも差がみられなかった。アリスキレン群-4.1m3(95%CI:-6.27~-1.94m3)、プラセボ群-2.1m3(同:-4.21~0.07m3)で群間差は-2.04m3(同:-5.03~0.95m3、p=0.18)だった。 PAV、TAVの改善を示した患者の割合も両群間で有意差はなかった。PAV(アリスキレン群56.9%対プラセボ群48.9%、p=0.08)、TAV(同:64.4%対57.5%、p=0.13)だった。 有害事象については、低血圧症(同:7.2%対3.9%、p=0.04)、腎および尿路障害(6.9%対4.9%、p=0.38)の発生(試験担当者が報告)が、プラセボ群よりもアリスキレン群のほうがより多くみられる傾向があった。高カリウム血症(≧5.5mEq/L)の発生は、両群で同程度だった(アリスキレン群10.7%対プラセボ群9.8%、p=0.76)。なお有害事象による試験中断はアリスキレン群のほうが多かった(同:8.2%対4.5%)。

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心不全への標準治療に加えたアリスキレン投与、長期アウトカム改善せず/JAMA

 心不全入院患者に対し、利尿薬やβ遮断薬などの標準的治療に加え、直接的レニン阻害薬の降圧薬アリスキレン(商品名:ラジレス)の投与を行っても、6ヵ月、12ヵ月後のアウトカム改善は認められなかったことが、米国・ノースウェスタン大学のMihai Gheorghiade氏らによるプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、報告された。研究グループは、先行研究における、心不全患者に対するアリスキレン投与は脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を有意に低下し良好な血行動態をもたらすといった報告を踏まえて、アリスキレンの長期アウトカム改善の可能性に関する本検討を行った。JAMA誌2013年3月20日号掲載の報告より。世界316ヵ所で、心不全入院患者1,639例を無作為化 研究グループは2009年5月~2011年12月にかけて、南・北米、ヨーロッパ、アジアの316ヵ所の医療機関を通じ、心不全で入院した患者1,639例を対象に無作為化試験を行った。アリスキレンを、標準的な治療に加え投与した場合のアウトカムについて比較した。 被験者は18歳以上で、左室駆出率(LVEF)40%以下、BNP値400pg/mL以上、またはN末端プロBNP(NT-proBNP)値1,600pg/mL以上であった。また、水分過負荷の徴候や症状も認められた。 主要アウトカムは、6ヵ月後および12ヵ月後の心血管死または心不全による再入院とした。心血管死または心不全のイベント発生率、両群で同程度 被験者のうち最終的に分析対象に組み込まれたのは1,615例だった。平均年齢は65歳、平均LVEFは28%、平均推定糸球体濾過量(eGFR)は67mL/分/1.73m2だった。また被験者のうち41%が糖尿病を有していた。無作為化時点で利尿薬を服用していたのは95.9%、β遮断薬は82.5%、ACE阻害薬またはARBは84.2%、アルドステロン受容体拮抗薬は57.0%だった。 6ヵ月後の主要エンドポイント発生率は、アリスキレン群24.9%(心血管死:77例、心不全による再入院:153例)に対し、プラセボ群は26.5%(同:85例、同:166例)であり、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.76~1.12、p=0.41)。 12ヵ月後の同イベント発生率についても、アリスキレン群35.0%に対しプラセボ群37.3%と、両群で有意差はなかった(同:0.93、0.79~1.09、p=0.36)。 なお、高カリウム血症、低血圧症、腎機能障害や腎不全の発症率は、いずれもアリスキレン群で高率だった。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(57)〕 重ね着にメリットなし、かえって風邪をひくかも-ACE阻害薬とARB併用に効果増強みられず-

 Renin-angiotensine(RA)系抑制薬として、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)そして直接的レニン阻害薬 アリスキレン(商品名:ラジレス)が実用に供されているが、これらのうち2種類の併用を“dual blockade”と称する。最近このdual blockade 治療を検証したONTARGET試験やALTITUDE試験などで、その有用性が相次いで否定されている。 本試験はこれまで発表されたDual Blockade Therapy(DBT)に関する33のランダム化試験約6万8,000人のメタ解析である。その結果は、DBTは単独治療に比べて全死亡を減らすことはなく、高カリウム血症や低血圧、腎不全などの有害事象を増加させたというものである。本試験は、各トライアルの患者の臨床背景が不一致であるというメタ解析一般にみられるlimitationを差し引いても妥当な結果といえよう。 過剰なRA系の抑制は、かえって生体の代償機転を損ねる可能性が示唆されるが、今後保険上の縛りをいれることで、RA系同士の併用が処方されることのないようにわが国の臨床医に啓蒙していく必要があろう。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(40)〕 RA系抑制薬同士の併用はメリットなく、むしろ有害

レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬としては、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)および直接的レニン阻害薬(アリスキレン)があるが、これまでONTARGET試験などで、ACE阻害薬とARBの併用は、ACE阻害薬単独に比べて心血管合併症予防効果が認められず、むしろ有害事象が増加するのみという結果が示されている。今回の結果も、RA系抑制薬同士の併用はメリットがなく、有害であることを明瞭に示した点で意義のある試験である。 このトライアルを企画した意図としては、本試験のプロトコールどおり、すでにACE阻害薬あるいはARBを服用している高血圧または高リスク症例に対して、アリスキレンを上乗せすることで、さらなるメリットが得られる可能性を期待していたと思われる。しかし、本試験の結果は直接的レニン阻害薬の存在意義そのものが危うくなる結果であり、期待は大きく崩れた。 対象例のうち、より高リスクの症例では、より多くの降圧薬に加えて抗血小板薬やスタチン薬が処方されている。しかも、対象症例の試験開始時点の収縮期血圧140mmHg以上は40.8%、拡張期血圧85mmHg以上は12.2%にすぎないということは、血圧管理もかなりなされていることになる。さらに、アリスキレン追加群の血圧下降度について、プラセボ群と比べて群間差が収縮期血圧1.3mmHg/拡張期血圧0.6mmHgということから、追加によってもさらなる降圧が見込めるわけではないことも示した。 むしろRA系同士の併用は、高カリウム血症という危険な有害事象を招く可能性があることを教えてくれた貴重なトライアルである。 やはり降圧薬併用の基本は、降圧機序の異なる薬剤同士を少量ずつ組み合わせことである。 今後、この試験の結果はガイドラインでもきちんと活かされ、かつ保険上でも併用禁忌として記載され広く臨床医に周知されるべきである。

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2型糖尿病に対するアリスキレン追加投与/NEJM

 慢性腎臓病もしくは心血管疾患、または両方を有し標準的治療(ACE阻害薬またはARB)を受ける2型糖尿病の患者に対する、直接的レニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)追加投与に関する試験の結果が報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans-Henrik Parving氏らが、8,500人超について行ったプラセボ対照二重盲無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2012年12月6日号(オンライン版2012年11月3日号)で発表された。ACE阻害薬またはARBにアリスキレン1日300mg投与またはプラセボを追加投与 研究グループは2007~2010年にかけて、36ヵ国の医療機関を通じ、2型糖尿病の患者8,561人を無作為に2群に分け、ACE阻害薬またはARBに加えて、一方にはアリスキレン(1日300mg)を、もう一方にはプラセボを併用投与し比較検討した。 主要エンドポイントは以下の複合イベントで、心血管死または初回心停止(その後蘇生)までの期間、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による予定外入院、末期腎不全、腎不全起因の死亡、腎代替療法必要性の発生(透析および移植が不可能または非導入)、血清クレアチニン値のベースラインからの倍増だった。 被験者の平均年齢は64~65歳、女性は31~33%だった。心血管・腎イベント発生率を比較 試験は、第2回中間効果解析後に早期に中止された。追跡期間の中央値は32.9ヵ月で、その間、主要エンドポイントが発生したのは、アリスキレン群783例(18.3%)、プラセボ群732例(17.1%)だった(ハザード比:1.08、95%信頼区間:0.98~1.20、p=0.12)。腎機能に関する副次エンドポイントは、6.0%vs. 5.9%(同:1.03、0.87~1.23、p=0.74)だった。 収縮期・拡張期血圧は追跡期間中に上昇したが、アリスキレン群がプラセボ群より低く、群間格差はそれぞれ1.3mmHgと0.6mmHgだった。平均アルブミン-クレアチニン比の減少幅も、アリスキレン群がプラセボ群より大きく、群間格差は14ポイント(同:11~17)だった。 血清カリウム値が6mmol/L以上となる高カリウム血症は、11.2%vs. 7.2%、低血圧症は12.1%vs. 8.3%だった(p<0.001)。 研究グループは試験結果を受けて、2型糖尿病患者へのアリスキレンの標準的治療への追加投与の有効性は支持されず、むしろ有害の可能性があると結論している。

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エキスパートに聞く!「高血圧」Q&A

CareNet.comでは9月の高血圧特集企画を行う中で、会員の先生より「高血圧」に関する質問を募集しました。その中から、特に多くいただいた質問に対し、下澤達雄先生にご回答いただきます。家庭血圧を用いる際の留意点について教えてください。昨年8月に発表された英国の高血圧ガイドラインでは、24時間血圧あるいは家庭血圧を高血圧の確定診断ならびに降圧治療の効果判定に用いることが強く推奨されました。わが国でも家庭血圧測定の指針が高血圧学会より出されており、実臨床でも多くの先生がお使いになっていることが、今回たくさんのご質問をいただいたことからも推察されます。そこで、家庭血圧を用いる際の留意点をいくつか挙げたいと思います。1.信頼性機械そのものの信頼性は診察室で同時に用手法と比較することで確認することができますが、血圧手帳を用いた自己申告による血圧値は必ずしも信頼できません。高知県で行われた調査では実測値と自己申告値には開きがあり、患者は低めに申告することが報告されています。よって、家庭血圧が低い場合でも臓器障害がある場合にはとくに診察室血圧を参考にした降圧治療が必要となります。あるいはメモリー機能をもった家庭血圧計を用い、実測値を医療側が把握できるようにする工夫が必要です。2.家庭血圧の測定方法血圧は複数回測れば必ず異なった値を示します。一般的には数回測ると徐々に低い値となります。高血圧学会の家庭血圧の指針では1日1回でよいと書かれていますが、これはまず患者に家庭血圧を測定させるために簡便な最低限の方法が記載されていると理解しています。すでに家庭血圧を日常的に測定できる患者においては複数回測定し、一番高い値と一番低い値、あるいは平均値を記載してもらうのがいいかと思います。測定時間は服薬直前が望ましいですが、日常生活にあわせてほぼ同じタイミングで測定できる時間を指導しています。3.夜間血圧を反映するか?何がわかるのか?残念ながら夜間血圧は夜間に測定する必要があり、家庭血圧では知ることができません。正しく測定でき、正直に申告された家庭血圧で白衣性高血圧、仮面高血圧がわかることはもちろんですが、曜日による血圧変動(週末ストレスがない場合に血圧が下がる)や睡眠状態との関連を知ることもできます。4.診察室血圧との乖離前述のように白衣性高血圧、仮面高血圧と診断されますが、臓器障害がある場合は高いほうの血圧を目安に治療を行うべきです。血圧変動について教えてください。外来診察毎の血圧変動が大きいと脳血管イベントが多くなることが報告されました。以来、糖尿病の際の血糖の変動が臓器障害と関連づけられています。動物実験でも交感神経を切除して血圧変動を大きくすると、レニン・アンジオテンシン系が亢進して臓器障害が進行することが報告されています。ヒトにおいては長期にわたる一拍ごとの血圧変動をみることは困難であり確立したエビデンスはありませんが、血圧変動は少なくする方が望ましいでしょう。血圧変動が大きい原因として自律神経障害、褐色細胞腫のような器質的な異常のほかに服薬アドヒアランス不良、精神的ストレス、不眠(睡眠時無呼吸)といった要因もあり、医師のみならず看護師、薬剤師などからの患者の病歴、生活歴聴取が必要となります。服薬は管理されているにもかかわらず認知症患者ではとくに血圧変動が大きいことが問題になりますが、多くの場合は多発性脳梗塞を合併している例です。転倒のリスクがなければ認知症の進行、脳梗塞の再発予防を考えて血圧は低い値にコントロールしたいところです。実際には服薬数を増やせないなどの制限があり、合剤を積極的に使ってのコントロールとなります。食塩感受性について教えてください。塩分摂取により血圧が上昇する食塩感受性患者は、上昇しない非感受性患者にくらべ血圧値が同等でも心血管イベントが多いことから、食塩感受性の診断についての質問を多くいただきました。しかし、食塩感受性を診断するには現在のところ入院にて食塩負荷、減塩食を食べさせ、その間の血圧を測定することのほかには確実な方法はないのが現状です。実臨床においては早朝第二尿のナトリウムとクレアチニンを測定することで食塩摂取量を知ることができる(「日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告」日本高血圧学会より入手可能)ので塩分摂取量が多い患者について経時的に観察したり減塩指導の動機付けとして用いることもできます。あるいはサイアザイド系利尿薬に対する血圧反応性も食塩感受性を知る一つの方法です。効果的な減塩指導について教えてください。日本の食文化はみそ、塩、しょうゆの上に成り立っているので、減塩指導はともすれば日本の食文化を否定することにもなりかねません。しかし、現在の一般的食生活を見てみると加工食品がふんだんに使われており、この点を改善指導することで減塩は可能となります。たとえばソーセージ100gに塩は約2g、プロセスチーズでは約3g含まれており、こういった加工食品を減らすことを指導できるでしょう。また、加齢に伴い味覚は低下するため減塩が難しくなります。そこはワサビ、生姜、茗荷、唐辛子、胡椒といったスパイスをうまく使うように指導します。そして、食卓に出された食材に塩、しょうゆを追加でかけないよう、食卓には塩、しょうゆを置かないなどの細かな指導が必要となります。男性患者の場合、食事を実際に作る配偶者への指導も重要で、医師だけでなく看護師、栄養士、薬剤師、検査技師、保健婦など患者に関わるすべての医療従事者の協力体制が有効です。塩分過剰摂取は血圧上昇のみならず血圧が上昇しない場合でも酸化ストレスを増加させ耐糖能異常につながることが動物実験では示されており、摂取量を6g/日程度まで下げることは高血圧の有無にかかわらず有用であると思われます。降圧薬の減量、中止方法について教えてください。血圧のコントロールが良好で、臓器障害がないような場合、また尿中ナトリウムも低めの場合は降圧薬を中止できることもあります。その場合、4~5月位に中止し、夏の暑い間を経過観察し、10~11月から冬の寒い間に血圧が再上昇しないことを確認します。その後も家庭血圧で血圧を経過観察し、年に一回の臓器障害の進展のチェックを行います。多剤併用しており血圧が良好なコントロールの場合、薬剤の減量が可能です。長期にβ遮断薬を使っている場合は心筋虚血のリスクがあるのでβ遮断薬は漸減します。便秘、浮腫、歯肉腫脹、起立性低血圧がある場合はカルシウム拮抗薬の副作用の可能性もあるためカルシウム拮抗薬から減量します。昨今の酷暑ではとくに高齢者や腎機能低下例においては、レニン・アンジオテンシン系抑制剤や利尿薬の減量が必要となる例があります。早朝高血圧の対処方法について教えてください。家庭血圧を測定あるいは24時間血圧にて早朝高血圧が明らかになった場合、最近の研究では夜間高血圧ほどのリスクはないとの報告もありますが、降圧薬の服用時間を調整することでコントロール可能となることがあります。レニン・アンジオテンシン系阻害薬は夕方服用に適した薬剤といえます。ただし、夜間の過度の降圧に注意して少量より開始するのが好ましいでしょう。α遮断薬も有効とする報告もありますが、α遮断薬自体の臓器保護効果が疑問視されており、α遮断薬を追加投与するよりは現在服用しているレニン・アンジオテンシン系阻害薬の服用時間をずらすことが適切と考えます。難治性高血圧の対処方法について教えてください。異なる三系統の降圧薬を十分量を内服しても血圧のコントロールがつかない場合、難治性高血圧と呼ばれます。このような例では服薬アドヒアランス、二次性高血圧の再評価、睡眠時無呼吸の評価をまず行います。服薬アドヒアランスが不良の場合は合剤を用いること、服薬の必要性を再教育すること、服薬想起の道具(ピルボックスなど)が有効といわれており、医師だけでなく薬剤師、看護師、保健婦の協力が必要となります。すでに薬剤を服用している場合、ホルモン検査は薬剤の影響を受けるので評価が難しくなります。実臨床では副腎のCTを先行させてもいいと思います。あるいは十分量の抗アルドステロン薬(スピロノラクトンで75~100mg)を投与し治療的診断を行うことも有用です。腎血管性高血圧についてはMR angiographyが有用でしょう。以上のような精査で問題がない場合、中枢性の降圧薬(レセルピン)を少量朝1回追加することが有用である例を経験しています。あるいはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬をかんきつ類と一緒に服用させる、あるいはヘルベッサーと併用しジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度を高めることも有用でしょう。白衣性高血圧の対処方法について教えてください。イギリスのガイドラインでは診察室血圧と24時間血圧、あるいは家庭血圧を用いて高血圧の診断を行い、臓器障害がない場合は白衣性高血圧は薬物介入をせずに年に1回の経過観察をするとしています。24時間血圧を用いて病院来院時のみ高血圧でその他の日常生活の中では全くの正常血圧であり、アルブミン尿も含め臓器障害が認められず、糖尿病などのリスク因子がない場合は薬物介入は必要ないと考えます。しかし、経過観察は必要で、患者には日常生活の中で突然の来客などストレスがかかると血圧が上がっている可能性を話し、徐々に臓器障害が出てくる可能性を説明する必要があるでしょう。白衣性高血圧で患者が薬物介入を希望する場合、抗不安薬も有効です。また、臓器障害がある場合はJSH2009に則って合併する臓器障害に応じて薬物を選択します。その際、心拍数が上昇するといった副作用のない薬物をまず選択します。拡張期血圧の対処方法について教えてください。収縮期血圧が大動脈のコンプライアンスと心拍出量で規定されるのに対し、拡張期血圧は全身の末梢血管抵抗と心拍出量で規定されます。よって高齢者で大血管の硬化が明らかになると収縮期血圧が上昇し脈圧が増大します。心臓の仕事量は収縮期血圧と心拍数の積に比例するため、収縮期血圧が高くなると心筋酸素消費量が増え、心虚血と心不全のリスクが増えます。一方冠動脈は拡張期に灌流されるので、拡張期血圧を下げすぎると、冠血流が低下する危険があります。実際、大規模臨床試験をみても拡張期血圧と心血管イベントにはJカーブに近い現象が認められます。拡張期のみ高い例は若年者に多く認められますが、治療の第一歩は減塩にあります。また個人的経験ですが、10年ほど前にARBが発売された当初、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬にくらべ拡張期血圧がよく下がる印象がありましたが、統計的処理はされていません。また当時は利尿薬の使用頻度が低かったというバイアスもあります。現状では拡張期血圧のみを下げるための有効な治療法は生活習慣の改善のほかには確立されていないといえます。合剤の有用性について教えてください。いかなる服薬介入治療もその効果は服薬アドヒアランスに依存することは明白です。それゆえ、われわれは服薬アドヒアランスをよくする努力は惜しむべきではありません。アドヒアランスに関わる因子は複数ありますが、処方する立場として最も簡便にできることは服薬数を減らすことであり、その点において合剤はきわめて有効といえます。現在降圧薬に限らずぜんそく薬、糖尿病薬、高脂血症薬の合剤が日本でも使用可能ですが、海外の現状をみるとまだまだ立ち遅れています。私は実臨床の中で合剤の併用も行いARBの最大容量を合剤として処方し、3種の薬剤を2錠ですませ、患者の経済的負担も軽減するよう努力しています。

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ARBを含まない3剤併用療法で1ヵ月以内に30mmHgの降圧を達成:レニン阻害薬+Ca拮抗薬+利尿薬

 今や、ARB+Ca拮抗薬+利尿薬の3剤併用療法が降圧治療におけるゴールデンスタンダードとして繁用されている。この3剤以外の併用療法で、強力な降圧効果が期待できる組み合わせは存在するのか?2009年、わが国においてもレニン阻害薬アリスキレン(販売名=ラジレス)が登場し、10余年ぶりの新しい作用機序の降圧薬が治療のラインナップとして加わったが、Lacourcière氏らはアリスキレンを含めた3剤併用療法が2剤併用療法に比べ、有意に強力な降圧効果を発揮することをJournal of Hypertension誌に発表した。なお、この論文は出版前の7月22日に公開された。3剤併用療法では降圧治療開始から2週以内に、2剤併用療法より優れた治療経過を示した。 Lacourcière氏らは中等度から重度の高血圧患者1,191名を対象に1〜4週の単盲検下でのプラセボ投与後、下記の降圧薬併用治療群に無作為に割り付け、4週経過後に強制的に投与量を倍増する治療を合計8週間行った。1) アリスキレン(150mg/日→300mg/日)+アムロジピン(5mg/日→10mg/日)2) アリスキレン(150mg/日→300mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日→25mg/日)3) アムロジピン(5mg/日→10mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日→25mg/日)4) アリスキレン(150mg/日→300mg/日)+アムロジピン(5mg/日→10mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日→25mg/日)主な結果は下記のとおり。1. 3剤併用療法によって、ベースラインより4週目には-30.7/-15.9mmHg、8週目には  -37.9/-20.6mHgの降圧が得られ、この降圧度はどの2剤併用療法より有意に優れていた。2. 3剤併用療法によって、2週目にはすでに-27.8mmHgの降圧度を観測した。3. 24時間自由行動下血圧(ABPM)によって測定した24時間血圧、昼間血圧、夜間血圧においても  2剤併用療法より有意に優れた降圧度を示した。4. 降圧目標(140/90mmHg未満)達成率は  〔中等度および重症度例〕 62.3%  〔重症度のみ〕 57.5%

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直接的レニン阻害薬と他のRAS阻害薬の併用で高カリウム血症増加

直接的レニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)は、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させることが、カナダ・トロント大学のZiv Harel氏らの検討で示された。アリスキレンなどのレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、うっ血性心不全や高血圧、蛋白尿などのさまざまな病態の管理に用いられているが、他のRAS阻害薬との併用における重篤な合併症として高カリウム血症や急性腎障害が知られている。アリスキレンと他のRAS阻害薬の併用に関する試験の多くは代用アウトカム(surrogate outcome)を用いているため、真の有害事象の検出能は低いという。BMJ誌2012年2月4日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。アリスキレンの安全性をメタ解析で評価研究グループは、他のRAS阻害薬との併用におけるアリスキレンの安全性を検証するために、無作為化対照比較試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Embase、Cochrane Libraryおよび2つの臨床試験のレジストリーを用いて、2011年5月7日までに出版された文献を検索した。アリスキレンとアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用療法と、これらの薬剤の単剤療法を比較した無作為化対照比較試験(治療期間4週以上)のうち、有害事象として高カリウム血症と急性腎障害に関する数値データを提示した試験を抽出した。変量効果モデルを用いて総合リスク比と95%信頼区間(CI)を算出した。併用時は血清カリウム濃度のモニタリングを10試験、4,814例が解析の対象となった。アリスキレンとACE阻害薬またはARBの併用療法では、ACE阻害薬単剤やARB単剤(相対リスク:1.58、95%CI:1.24~2.02)あるいはアリスキレン単剤(同:1.67、1.01~2.79)に比べ、高カリウム血症が有意に増加した。急性腎障害のリスクについては、併用療法と単剤療法で有意な差は認めなかった(相対リスク:1.14、95%CI:0.68~1.89)。著者は、「アリスキレンは、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させる」と結論し、「これらの薬剤を併用する場合は、血清カリウム濃度の注意深いモニタリングを要する」と注意を喚起している。(菅野守:医学ライター)

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直接的レニン阻害剤(DRI)「ラジレス錠150mg」新発売

ノバルティス ファーマ株式会社は1日、高血圧治療薬として、直接的レニン阻害剤(Direct Renin Inhibitor: DRI)である「ラジレス錠150mg」(一般名:アリスキレンフマル酸塩)を発売した。同薬剤は、高血圧症を引き起こすRAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)の起点に位置する酵素であるレニンを直接的に阻害する、新しい作用機序を持つ薬剤であり、新規作用機序を持つ高血圧治療薬としては10余年ぶりに承認された薬剤。同薬剤はレニンを直接的に阻害することで、血漿レニン活性(Plasma renin activity:PRA)を抑制し、アンジオテンシンI以降のすべてのアンジオテンシンペプチドの産生を抑制する。同薬剤は国内外の臨床試験において、単独療法では既存のARB治療薬と同等の良好な降圧効果を示し、他の降圧薬との併用でもさらなる降圧効果を示したという。また、1日1回の投与で24時間以上にわたり持続的に安定した血圧コントロールを示し、プラセボと同様の安全性と良好な忍容性を示したとのこと。早朝高血圧や24時間血圧の変動は心血管イベントのリスクを高めることが知られており、同薬剤は高血圧症患者の血圧コントロールに有用な薬剤であるといえるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2009/pr20091001.html

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10余年ぶりの新しい作用機序の降圧剤 「ラジレス錠150mg」製造販売承認を取得

ノバルティス ファーマ株式会社は8日、高血圧治療薬として、直接的レニン阻害剤(Direct Renin Inhibitor: DRI)である「ラジレス錠150mg」(一般名:アリスキレンフマル酸塩)の製造販売承認を取得したと発表した。同剤は、高血圧症を引き起こすレニン系サイクルの起点に位置する酵素であるレニンを直接的に阻害する、新しい作用機序を持ち、新規作用機序を持つ高血圧治療薬としては10余年ぶりに承認された薬剤。国内外の臨床試験において、1日1回の投与で24時間以上にわたり持続的に安定した血圧コントロールを示し、プラセボと同様の安全性と良好な忍容性を示した。また、単独療法での有効性に加え、他の降圧薬との併用でもさらなる降圧効果を示したという。現在、同剤が降圧効果とは独立した臓器保護作用を有することを検討する、35,000名以上の患者を対象とした14の試験からなる臨床試験プログラム「ASPIRE HIGHER」が進められているとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2009/pr20090708.html

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