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胃酸分泌抑制薬との併用が可能になった慢性リンパ性白血病治療薬「カルケンス錠100mg」【最新!DI情報】第33回

胃酸分泌抑制薬との併用が可能になった慢性リンパ性白血病治療薬「カルケンス錠100mg」今回は、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬「アカラブルチニブマレイン酸塩水和物(商品名:カルケンス錠100mg、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、慢性リンパ性白血病治療薬としてすでに発売されているカプセル製剤とは異なり、胃酸分泌抑制薬を服用している患者にも使用しやすいフィルムコーティング錠です。<効能・効果>慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)を適応として、2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアカラブルチニブとして1回100mgを1日2回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>重大な副作用として、出血(頭蓋内血腫[頻度不明]、胃腸出血、網膜出血[いずれも0.2%]など)、感染症(肺炎[3.2%]、アスペルギルス症[0.2%]など)、骨髄抑制(貧血[5.5%]、好中球減少症[17.5%]、白血球減少症[17.5%]、血小板減少症[7.7%]など)、不整脈(心房細動[1.5%]、心房粗動[頻度不明]など)、虚血性心疾患(急性冠動脈症候群[0.2%]など)、腫瘍崩壊症候群、間質性肺疾患(いずれも0.4%)が報告されています。その他の副作用は、頭痛、下痢、挫傷(いずれも10%以上)、悪心、発疹、筋骨格痛、関節痛、疲労(いずれも5~10%未満)、浮動性めまい、鼻出血、便秘、腹痛、嘔吐、無力症(いずれも5%未満)、皮膚有棘細胞がん、基底細胞がん(いずれも頻度不明)があります。本剤は主にCYP3Aにより代謝されるので、強~中程度のCYP3A阻害薬(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾールなど)、強~中程度のCYP3A誘導薬(フェニトイン、リファンピシン、カルバマゼピンなど)との併用は可能な限り避け、代替の治療薬を考慮します。また、セイヨウオトギリソウ含有食品は摂取しないように指導する必要があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は慢性リンパ性白血病に用いられます。2.この薬は、自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。指示どおりに飲み続けることが重要です。3.セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む食品は摂取しないでください。4.この薬を服用中に発熱、寒気、喉の痛み、鼻血、歯ぐきからの出血、青あざができるなどの症状が現れたら、速やかに主治医に相談してください。5.他の医師を受診する場合や薬局などで他の薬を購入する場合は、必ずこの薬を使用していることを医師または薬剤師に伝えてください。<ここがポイント!>慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)は、Bリンパ球ががん化することで発症し、多くの場合は緩徐に進行します。CLLは初期段階では無症状であることが多いですが、進行すると脱力感、疲労感、体重減少、悪寒、発熱、寝汗、リンパ節の腫れ、腹痛などの症状が現れます。CLLの初回治療にはイブルニチブもしくはアカラブルニチブ±オビヌツズマブが推奨されています。アカラブルニチブは、経口投与可能なブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害薬であり、BTKの酵素活性を選択的かつ不可逆的に阻害します。アカラブルチニブはBTKの活性部位のシステイン(Cys-481)残基と共有結合することで、B細胞性腫瘍の増殖および生存シグナルを阻害します。アカラブルニチブはカプセル製剤(商品名:カルケンスカプセル)として2021年に承認され、CLL治療薬として販売されていますが、胃内pHが4を超える条件下では溶解度が低下します。そのため、プロトンポンプ阻害薬との併用は可能な限り避け、制酸薬およびH2受容体拮抗薬と併用するときは投与間隔を2時間以上空けるなどの注意が必要です。しかし、血液がん患者の20~40%は、胃内pHを変化させる薬剤の投与を受けていると推定されているため、胃内pHの条件に左右されずに溶出する新しい薬剤の開発が望まれていました。今回承認されたカルケンス錠は、アカラブルチニブをマレイン酸水和物にすることでpH依存的溶解プロファイルを改善し、生理学的pHの範囲内で十分な溶解性を有することが確認されています。健康被験者を対象とした生物学的同等性試験(海外第I相試験であるD8223C00013試験)において、本剤およびカプセル剤を空腹時投与した結果、カプセル剤投与に対する本剤投与におけるアカラブルチニブのCmaxおよびAUC(0-last)の最小二乗幾何平均値の比は、それぞれ1.00(90%信頼区間:0.91~1.11)および0.99(0.94~1.04)であり、いずれも生物学的同等性の判定基準範囲内(0.8~1.25)でした。これにより、生物学的同等性の基準を満たすことが確認できました。

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脾膿瘍の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第16回

画像を拡大するTake home message脾膿瘍には、血行性感染と腹腔内からの直接波及の機序の2つがあることを理解しよう。脾膿瘍に加えて黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の菌血症を見たら、感染性心内膜炎の可能性を念頭に置こう。リスクに応じて、ほかの起因菌も幅広く考慮しよう。皆さんは脾膿瘍(ひのうよう)を経験したことがありますか。頻度は高くないものの、非常に重要な疾患の1つです。以下、一緒に見ていきましょう。1)血行性感染感染性心内膜炎などの感染症から、脾臓に播種して膿瘍を形成するケースです。黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが頻度として高いですが、血液培養からこれらの菌が検出され、かつ画像検査で脾膿瘍が確認された場合には、積極的に感染性心内膜炎の精査を行うことが推奨されます。脾臓は腎臓と同様に遠隔転移巣として膿瘍を形成しやすい臓器であることが知られています。経胸壁心エコー、場合によっては経食道心エコーでの精査を検討します。2)腹腔内からの直接波及腹腔内からの感染では、腹膜炎などから直接波及するケースがあり、病原微生物として腸内細菌科細菌、腸球菌、腹腔内嫌気性菌などを考慮します。機序を考えれば複数菌による感染の可能性があることも容易に想像できるでしょう。とくにクレブシエラは高い病原性を持つ菌株が東アジアを中心に報告されており、侵襲性感染を引き起こすことがあるので注意が必要です。教科書的には糖尿病患者の肝膿瘍が有名ですが、脾膿瘍の報告もあり、念頭に置いておく必要があります。まれな病原微生物としては、猫の引っかきによるバルトネラ感染、白血病患者などに多い好中球減少症における肝脾カンジダ症(慢性播種性カンジダ症)などが知られています。この肝脾カンジダ症はフルコナゾールを含めたアゾール系抗真菌薬の予防内服の普及により現在は報告がきわめて少なくなりましたが、予防的抗真菌薬に耐性のカンジダも近年増加傾向であり、視野に入れておく必要があります。日本ではまれであるものの、東南アジアや北オーストラリアではBurkholderia pseudomalleiというブドウ糖非発酵菌が問題になることがあります。この菌による感染症を類鼻疽(るいびそ、英名:メリオイドーシス)と呼びます。これらの流行地域では、「原因不明の脾膿瘍を見たらメリオイドーシスを疑え」と医学生や研修医でも教えられるほど重要な疾患です。頻度は高くないものの、脾膿瘍は診断と治療が遅れると致死率が高い疾患です。皆さんもぜひ、脾膿瘍の成因と病原微生物を頭に入れておきましょう。1)Radcliffe C, et al. Open Forum Infect Dis. 2022;9:ofac085.2)Lee MC, et al. Can J Infect Dis Med Microbiol. 2018:8610657.3)Lee WS, et al. Yonsei Med J. 2011;52:288-92. 4)Guo RF, et al. Infect Dis Rep. 2015;7:5791.

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カルシニューリン阻害で免疫を抑制するループス腎炎治療薬「ルプキネス」【最新!DI情報】第27回

カルシニューリン阻害で免疫を抑制するループス腎炎治療薬「ルプキネス」今回は、カルシニューリン阻害薬「ボクロスポリン(商品名:ルプキネスカプセル7.9mg、製造販売元:大塚製薬)」を紹介します。本剤は、ループス腎炎に対する治療薬として承認された新規のカルシニューリン阻害薬であり、免疫抑制作用により予後が改善することが期待されています。<効能・効果>ループス腎炎の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。本剤投与により腎機能が悪化する恐れがあることから、eGFRが45mL/min/1.73m2以下の患者では投与の必要性を慎重に判断し、eGFRが30mL/min/1.73m2未満の患者では可能な限り投与を避けます。<用法・用量>通常、成人にはボクロスポリンとして1回23.7mgを1日2回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。本剤の投与開始時は、原則として、副腎皮質ステロイド薬およびミコフェノール酸モフェチルを併用します。<安全性>重大な副作用には、肺炎(4.1%)、胃腸炎(1.5%)、尿路感染症(1.1%)を含む重篤な感染症(10.1%)があり、致死的な経過をたどることがあります。また、急性腎障害(3.4%)が生じることがあるため、重度の腎機能障害患者への投与は可能な限り避けるようにし、中等度の腎機能障害患者には投与量の減量を行います。その他の副作用は、糸球体濾過率減少(26.2%)、上気道感染(24.0%)、高血圧(20.6%)、貧血、頭痛、咳嗽、下痢、腹痛(いずれも10%以上)、インフルエンザ、帯状疱疹、高カリウム血症、食欲減退、痙攣発作、振戦、悪心、歯肉増殖、消化不良、脱毛症、多毛症(いずれも10%未満)があります。本剤は、主としてCYP3A4により代謝されるため、強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤(アゾール系抗真菌薬やリトナビル含有製剤、クラリスロマイシン含有製剤など)との併用は禁忌です。また、P糖蛋白の基質であるとともに、P糖蛋白、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1およびOATP1B3への阻害作用を有するので、ジゴキシンやシンバスタチンなどのHMG-CoA還元酵素阻害薬との併用には注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ループス腎炎の治療薬であり、体内の免疫反応を抑制します。2.飲み始めは原則としてステロイド薬およびミコフェノール酸モフェチルと併用します。3.この薬は、体調が良くなったと自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。4.この薬を使用中に、感染症の症状(発熱、寒気、体がだるいなど)が生じたときは、ただちに医師に連絡してください。<ここがポイント!>ループス腎炎は、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)が原因で生じる腎機能障害です。この疾患は、尿蛋白や尿潜血を伴い、ネフローゼ症候群や急速進行性糸球体腎炎症候群を引き起こすことがあります。治療は、急性期の寛解導入療法と慢性期の寛解維持療法があり、急性期の寛解導入療法には強力な免疫抑制療法を実施し、尿蛋白や尿沈査、腎機能の正常化を目指します。治療薬はグルココルチコイド(GC)に加えてミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはシクロホスファミド間欠静注療法(IVCY)の併用投与が推奨されています。ボクロスポリンは、ループス腎炎の治療薬として開発された新規の経口免疫抑制薬です。最近の研究では、MMFとの併用療法がMMF単独療法に比べて、より有効であることが示されています。ボクロスポリンはカルシニューリン阻害薬であり、T細胞の増殖・活性化に重要な酵素であるカルシニューリンを阻害することで免疫抑制作用を発揮します。ボクロスポリンの投与開始時は、原則として、GCおよびMMFを併用します。ループス腎炎患者を対象とした国際共同第III相試験(AURORA1試験)では、主要評価項目である投与開始52週時点の完全腎奏効患者の割合は、本剤群の40.8%に対してプラセボ群は22.5%と有意な差が認められました(p<0.001、ロジスティック回帰モデル)。なお、本剤群およびプラセボ群ともに、MMFとGCが併用されていました。

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半減期が短く持ち越し効果が少ない不眠症治療薬「クービビック錠25mg/50mg」【最新!DI情報】第25回

半減期が短く持ち越し効果が少ない不眠症治療薬「クービビック錠25mg/50mg」今回は、オレキシン受容体拮抗薬「ダリドレキサント塩酸塩(商品名:クービビック錠25mg/50mg、製造販売元:ネクセラファーマジャパン)」を紹介します。本剤は新規のデュアルオレキシン受容体拮抗薬であり、不眠症患者の過剰な覚醒状態を抑制し、睡眠状態へと移行させることが期待されています。<効能・効果>不眠症の適応で2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはダリドレキサントとして1日1回50mgを就寝直前に経口投与します。患者の状態に応じて1日1回25mgを投与することもできます。入眠効果の発現が遅れる恐れがあるため、本剤の食事と同時または食直後の服用は避けます。<安全性>副作用には、傾眠(3%以上)、頭痛、頭部不快感、倦怠感、疲労、悪夢(いずれも1~3%未満)、浮動性めまい、睡眠時麻痺、悪心(いずれも1%未満)、幻覚、異常な夢、睡眠時随伴症(夢遊症、ねごとなど)、過敏症(発疹、蕁麻疹など)(いずれも頻度不明)があります。本剤は主に薬物代謝酵素CYP3Aによって代謝されるため、CYP3Aを強く阻害するイトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾール、ポサコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤、セリチニブ、エンシトレルビルフマル酸を投与中の患者には禁忌です。また、中程度のCYP3A阻害作用を持つジルチアゼム、ベラパミル、エリスロマイシン、フルコナゾールなどは併用注意です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過剰に働いている覚醒システムを抑制して、より自然に近い睡眠を促します。2.必ず寝る直前に服用してください。3.アルコールと一緒に服用しないでください。4.食事と同時または食事の直後には、服用しないでください。5.他の睡眠薬と一緒に服用しないでください。<ここがポイント!>不眠症は罹患頻度の高い睡眠障害の1つです。不眠は、眠気や倦怠感による生産性の低下や、概日リズム障害による不登校やうつ病の発症などを引き起こすため、公衆衛生上の問題となっています。オレキシンは、覚醒と睡眠の調整に深く関わっている神経ペプチドであり、オレキシンがオレキシン受容体に作用すると覚醒が維持されます。オレキシン受容体のサブタイプであるオレキシン受容体タイプ1(OX1R)とオレキシン受容体タイプ2(OX2R)を阻害すると、脳の覚醒促進領域の活動が低下します。ダリドレキサント塩酸塩は、OX1RおよびOX2Rの活性化を阻害する新規のデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)であり、不眠症患者の過剰な覚醒状態を抑制し、睡眠状態へと移行させることが期待されます。ダリドレキサント塩酸塩は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬にみられる依存や耐性、反跳性不眠が少なく、高齢に対してせん妄の発現の心配もありません。なお、日本ではDORAとしてスボレキサントおよびレンボレキサントが発売されていますが、ダリドレキサント塩酸塩は他のDORAと比較して半減期が6.5時間程度(非高齢者)と短く、翌日への眠気の持ち越しが少ないと考えられます。日本人不眠症患者を対象とした国内第III相試験(ID-078A304試験)において、総睡眠時間(sTST)のベースラインからの変化量について、本剤50mg群とプラセボ群との差は、4週時に20.30分(95%信頼区間[CI]:11.39~29.20)であり、プラセボ群と比較して50mg群で有意にsTSTを延長しました(p<0.001、線形混合モデル)。同様に、4週時における睡眠潜時(sLSO)のベースラインからの変化量の本剤50mg群とプラセボ群との差は-10.66分(95%CI:-15.78~-5.54)であり、プラセボ群と比較して50mg群で有意にsLSOを短縮しました(p<0.001、線形混合モデル)。

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国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」【下平博士のDIノート】第103回

国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」今回は、小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤「バルベナジントシル酸塩カプセル(商品名:ジスバルカプセル40mg、製造販売元:田辺三菱製薬)」を紹介します。本剤は、わが国で初めて遅発性ジスキネジア治療薬として承認されました。これまで治療法がなかった遅発性ジスキネジアによる不随意運動の改善効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、遅発性ジスキネジアの適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月1日に発売されました。なお、「遅発性ジスキネジア」の診断は、米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』および『統合失調症治療ガイドライン第3版』が参考とされます。<用法・用量>通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与します。なお、症状により1日1回80mgを超えない範囲で適宜増減できます。増量については、1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ検討します。<安全性>遅発性ジスキネジア患者を対象とした国内第II/III相試験で認められた主な副作用は、傾眠、流涎過多、アカシジア、倦怠感などでした。重大な副作用として、傾眠(16.9%)、流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、鎮静、運動緩慢(いずれも1.2%)、落ち着きのなさ、姿勢異常(いずれも0.8%)、重篤な発疹、ジストニア、表情減少、筋固縮、筋骨格硬直、歩行障害、突進性歩行、運動障害(いずれも0.4%)、悪性症候群、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫(いずれも頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過剰になった脳内の神経刺激伝達を抑えることで、自分の意志とは無関係に体が動いてしまう、または無意識に口や舌を動かしてしまうなどの症状が出る遅発性ジスキネジアを改善します。2.眠くなったり、ふらついたりすることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作は行わないでください。3.抑うつや不安などの精神症状が現れることがあるので、体調の変化に気が付いた場合には連絡してください。4.飲み合わせに注意が必要な薬があるため、ほかの薬を使用している場合や新しい薬を使用する場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。5.不整脈が起きていないか確認するために、心電図検査が行われることがあります。<Shimo's eyes>画像:重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚労省)より本剤は、わが国初の遅発性ジスキネジア治療薬であり、1日1回服用の経口剤です。遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬などを長期間服用することで起こる不随意運動を特徴とした神経障害であり、ドパミン受容体の感受性増加などが原因と考えられています。症状は、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなど、顔面に主に現れますが、手や足が動いてしまうなど四肢や体幹部でも認められます。また、重症になれば嚥下障害や呼吸困難を引き起こす可能性もあります。本剤は、神経終末に存在する小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)を阻害することにより、ドパミンなど神経伝達物質のシナプス前小胞への取り込みを減らし、不随意運動の発生に関わるドパミン神経系の機能を正常化させます。遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害または抑うつ障害の患者を対象とした国内第II/III相プラセボ対照二重盲検比較試験(MT-5199-J02)において、本剤40mg/日または80mg/日を投与した結果、両群で用量依存的な異常不随意運動の改善効果が認められました。本剤は重症度を問わず処方が可能です。ただし、遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期使用に関連して発現するとされているため、原因薬剤の減量または中止を検討する必要があります。したがって、本剤の投与対象となるのは抗精神病薬など原因薬剤の減量や中止ができない、あるいは減量や中止を行っても遅発性ジスキネジアが改善しない患者さんとなります。投与に関しては相互作用が多いため併用薬の厳格なチェックが欠かせません。本剤はプロドラッグであり、未変化体はP糖タンパク質(P-gp)を阻害します。また、体内では主にCYP3Aによって代謝された後、活性代謝物は主にCYP2D6およびCYP3Aで代謝されます。本剤とパロキセチンを併用したとき、未変化体の変化は認められませんでしたが、活性代謝産物のCmaxおよびAUCはそれぞれ1.4倍、1.9倍に上昇したことが報告されています。本剤は、強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン、ダコミチニブ等)や、強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)を使用中、または遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さんなどでは、投与量を1日40mgから増量しないこととされています。なお、これらの条件が2つ以上重なる場合は、活性代謝物の血中濃度が上昇し、過度なQT延長などの副作用を発現する恐れがあるため、本剤との併用は避けることとされています。一方、中程度以上のCYP3A誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)を使用中の場合には、作用が弱まることを考慮して投与量を検討します。また、P-gpの基質薬剤(ジゴキシン、アリスキレン、ダビガトラン等)と併用するとこれらの血中濃度が上昇する恐れがあるので注意しましょう。中等度、あるいは高度の肝機能障害患者についても投与量に制限がかけられています。活性代謝産物の血中濃度が上昇した場合にはQT延長を引き起こす恐れがあるので、遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さん、QT延長を起こしやすい患者さん、相互作用に注意すべき薬剤を併用している患者さんでは定期的に心電図検査を行う必要があります。これまで、遅発性ジスキネジアについては原因薬の中止や他薬剤への変更に代わる対処法がありませんでした。よって、本剤の臨床的意義は高いと考えられます。なお、本剤は食事の影響を受けやすく、空腹時に服用すると食後投与と比較して血中濃度が上昇する恐れがあるため、副作用モニタリングと共に服用タイミングについても順守できているか確認しましょう。参考1)PMDA 添付文書 ジスバルカプセル40mg

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国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」【下平博士のDIノート】第101回

国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」今回は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬「フィネレノン(商品名:ケレンディア錠10mg/20mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、わが国初の2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)の進行を防ぐMR拮抗薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月2日に発売されています。なお、原則としてACE阻害薬またはARBが投与されている患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはフィネレノンとして20mgを1日1回経口投与します。ただし、eGFRが60mL/min/1.73m2未満の場合は10mgから投与を開始し、血清カリウム値・eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量します。なお、血清カリウム値が4.8mEq/L以下の場合は、投与量が10mgでもeGFRが前回の測定から30%を超えて低下していない限り20mgに増量します。一方、血清カリウム値が5.5mEq/L超える場合は投与を中止し、中止後に5.0mEq/Lを下回った場合には、10mgから投与を再開することができます。<安全性>2つの国際共同第III相試験(FIGARO-DKDおよびFIDELIO-DKD)では、安全性解析対象6,510例中1,206例(18.5%)において、臨床検査値異常を含む副作用が報告されました。主な副作用は、高カリウム血症496例(7.6%)、低血圧92例(1.4%)、血中カリウム増加85例(1.3%)、血中クレアチニン増加69例(1.1%)、糸球体ろ過率減少67例(1.0%)などでした。また、重大な副作用として、高カリウム血症(8.8%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬と呼ばれ、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者における心臓や腎臓の機能低下を防ぎます。2.血圧が下がることにより、めまいやふらつきが現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には注意してください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数あります。服用している薬剤や健康食品、サプリメントがあれば報告してください。4.グレープフルーツやグレープフルーツジュースは、薬の効果を強めてしまう恐れがあるため、摂取を避けてください。5.この薬の服用により、血中のカリウム値が上昇することがあります。手や唇がしびれる、手足に力が入らない、吐き気などの症状が現れた場合はすぐに相談してください。また、カリウムの摂り過ぎや脱水、便秘には注意してください。6.(授乳中の方に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤を服用中は授乳しないでください。<Shimo's eyes>近年、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬が心腎保護作用の点から注目されています。既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)、エプレレノン(同:セララ錠)、エサキセレノン(同:ミネブロ)が発売されています。スピロノラクトンは女性化乳房などの副作用の課題があり、比較的それらの副作用が少ないエプレレノンも、中等度以上の腎機能障害患者(Ccr:50mL/min未満)や、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者への投与は禁忌となっています。一方で、エサキセレノンは本剤と同様にステロイド骨格を持たないという特徴がありますが、適応は高血圧症のみとなっています。2つの臨床試験では、CKDステージが軽度~比較的進行した糖尿病性腎症の患者さんに、ACE阻害薬・ARBによる既存の治療を行った上で本剤を投与した結果、主要評価項目である心血管複合エンドポイントの発現リスクは13%、腎複合エンドポイントの発現リスクは18%、プラセボ群に比べ有意に低下させました。こういった結果をもたらした国内で初めてのMR拮抗薬であり、2型糖尿病合併CKDの適応を持つ唯一のMR拮抗薬です。相互作用で注意すべき点として、本剤は主にCYP3A4により代謝されるため、強力なCYP3A4阻害作用を持つ薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を投与中の患者さんには禁忌となっています。また、併用注意の薬剤も多数あるので、併用薬はサプリメント等を含め、細やかに聞き取りましょう。MR拮抗薬といえば血清カリウム値上昇に注意が必要ですが、本剤はACE阻害薬あるいはARBとの併用が原則となっていることから、血清カリウム値のモニタリングが必須となります。対象患者の腎機能について、eGFRが60mL/min/1.73m2未満では投与量に制限があります。また、eGFRが25mL/min/1.73m2未満の場合は、本剤投与によりeGFRが低下することがあるため、リスクとベネフィットを考慮し投与の適否を慎重に判断することとされています。なお、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジン(同:フォシーガ)が2021年8月にCKDの適応を取得し、カナグリフロジン(同:カナグル)も、2022年6月に本剤と同じ2型糖尿病を合併するCKDに対する適応を取得しています。参考1)PMDA 添付文書 ケレンディア錠10mg/ケレンディア錠20mg

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薬物性味覚障害マニュアルが11年ぶりに改定、注意すべき薬剤と対策は?/厚労省

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル』は77項目に細分化され、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載されているが、今回、「薬物性味覚障害」の項が11年ぶりに改定された。薬剤性味覚障害は味覚障害の原因の約20%を占めていること、多くの薬剤の添付文書の副作用に記載されていることから、以下に示すような薬剤を服用中の患者の訴えには十分注意が必要である。<添付文書に口腔内苦味の記載がある薬剤の一例>・ニコチン(禁煙補助剤)・フルボキサミンマレイン酸塩(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI])・ラベプラゾールナトリウム(PPI)・レバミピド(胃炎・胃潰瘍治療薬) ・レボフロキサシン水和物(ニューキノロン系抗菌薬)・炭酸リチウム(躁病・躁状態治療薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚障害の記載がある薬剤の一例>・アロプリノール(キサンチンオキシダーゼ阻害薬・高尿酸血症治療薬)・ジクロフェナクナトリウム(フェニル酢酸系消炎鎮痛薬)・レトロゾール(アロマターゼ阻害薬・閉経後乳癌治療薬)・ロサルタンカリウム(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚異常の記載がある薬剤の一例>・アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)・アプレピタント(選択的NK1受容体拮抗型制吐薬)・イリノテカン塩酸塩水和物(I型DNAトポイソメラーゼ阻害型抗悪性腫瘍薬)・インスリンデグルデク[遺伝子組換え]・リラグルチド[遺伝子組換え](持効型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ配合薬)・エルデカルシトール(活性型ビタミンD3)・オロパタジン塩酸塩(アレルギー性疾患治療薬)・チアマゾール(抗甲状腺薬)・テルビナフィン塩酸塩(アリルアミン系抗真菌薬)・バルサルタン(選択的AT1受容体遮断薬)・フェンタニル(経皮吸収型持続性疼痛治療薬)・ボリコナゾール(トリアゾール系抗真菌薬)・メトトレキサート(抗リウマチ薬/葉酸代謝拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照 上記のような薬剤を服用している患者が症状を訴えた場合、まずは(1)原因薬剤の中止・減量を行うが、原疾患の治療上、中止などの対応ができない場合、または味覚障害を起こす可能性のある薬剤を複数服用して特定が困難な場合もある。そのような場合でも(2)亜鉛剤の補給[低亜鉛血症がある場合、味蕾の再生促進を期待して補給]、(3)口腔乾燥の治療などで唾液分泌を促進させる、(4)口腔掃除とケアで対応することが必要で、とくに(1)(2)は重要度が高いと記載されている。<早期に認められる症状>薬物性味覚障害は高齢者に多く、複数の薬剤を服用しており、また発症までの時間や症状もまちまちで、初期の症状を捉えることは困難なことが多い。初期症状を含め、よく訴える症状に以下のようなものがある。 1:味(甘・塩・酸・苦)が感じにくい 2:食事が美味しくない3:食べ物の好みが変わった 4:金属味や渋味など、嫌な味がする 5:味のしないところがある 6:口が渇く<患者が訴えうる自覚症状>1:味覚減退:「味が薄くなった、味を感じにくい」2:味覚消失・無味症:「まったく味がしない」 3:解離性味覚障害:「甘みだけがわからない」4:異味症・錯味症:「しょう油が苦く感じる」 5:悪味症:「何を食べても嫌な味になる」6:味覚過敏:「味が濃く感じる」 7:自発性異常味覚:「口の中に何もないのに苦みや渋みを感じる」 8:片側性味覚障害:一側のみの味覚障害 本マニュアルには医師、薬剤師などの医療関係者による副作用の早期発見・早期対応に資するため、ポイントになる初期症状や好発時期、医療関係者の対応などが記載されている。 また、患者が読みやすいように、患者やその家族に知っておいてもらいたい副作用の概要、初期症状、早期発見・早期対応のポイントをできるだけわかりやすい言葉で記載してもいるので、ぜひ参考にしていただきたい。

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「プラザキサ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第64回

第64回 「プラザキサ」の名称の由来は?販売名プラザキサ®カプセル75mgプラザキサ®カプセル110mg一般名(和名[命名法])ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩 (JAN)効能又は効果非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制用法及び用量通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150mg(75mgカプセルを2カプセル) を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。警告内容とその理由警告本剤の投与により消化管出血等の出血による死亡例が認められている。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されていないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者3.出血症状のある患者、出血性素因のある患者及び止血障害のある患者[出血を助長するおそれがある。]4.臨床的に問題となる出血リスクのある器質的病変(6ヶ月以内の出血性脳卒中を含む)の患者5.脊椎・硬膜外カテーテルを留置している患者及び抜去後1時間以内の患者[外傷性や頻回の穿刺や術後の硬膜外カテーテルの留置によって脊髄血腫や硬膜外血腫の危険性が増大する。]6.イトラコナゾール(経口剤)を投与中の患者※本内容は2021年8月11日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年4月(第16版)医薬品インタビューフォーム「プラザキサ®カプセル75mg/カプセル110mg」2)ベーリンンガーインゲルハイム:医療用医薬品基本情報

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日本初のがん悪液質治療薬「エドルミズ錠50mg」【下平博士のDIノート】第72回

日本初のがん悪液質治療薬「エドルミズ錠50mg」今回は、グレリン様作用薬「アナモレリン塩酸塩錠(商品名:エドルミズ錠50mg、製造販売元:小野薬品工業)」を紹介します。本剤は、国内初のがん悪液質の治療薬であり、食欲増進や筋肉増強、体重増加作用によって患者QOLや薬物療法の忍容性が向上することが期待されています。<効能・効果>本剤は、非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんにおけるがん悪液質の適応で、2021年1月22日に承認され、4月21日に薬価収載されています。なお、切除不能な進行・再発の適応がん、栄養療法などで効果不十分、6ヵ月以内に5%以上の体重減少と食欲不振があり、かつ以下の(1)〜(3)のうち2つ以上を認める患者に使用することとされています。(1)疲労または倦怠感(2)全身の筋力低下(3)CRP値0.5mg/dL超、ヘモグロビン値12g/dL未満またはアルブミン値3.2g/dL未満のいずれか1つ以上食事の経口摂取が困難または消化吸収不良の患者には使用できません。<用法・用量>通常、成人にはアナモレリン塩酸塩として100mg(2錠)を1日1回、空腹時に経口投与します。本剤は食事の影響を受けるため、服用後1時間は食事摂取を控えます。本剤投与により体重増加または食欲改善が認められない場合は、投与開始3週後をめどに原則中止します。なお、12週間を超える本剤の投与経験はなく、体重や問診により食欲を確認するなど、定期的に投与継続の必要性を検討します。<安全性>国内第II相試験および第III相試験(ONO-7643-03、04、05試験)の安全性評価対象187例中84例(44.9%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、γ-GTP増加12例(6.4%)、グリコヘモグロビン増加11例(5.9%)でした(承認時)。重大な副作用として、刺激伝導系抑制(10.7%)、高血糖(4.3%)、糖尿病の悪化(4.3%)、肝機能障害(6.4%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、がんによる食欲不振や体重減少などの症状を改善します。脳の視床下部に作用して食欲を増進させ、脳下垂体に作用して成長ホルモンの分泌を高めることで筋肉がつくられ、体重が増加します。2.本剤は空腹時に服用し、服用後1時間は食事をしないでください。食後服用では効果が低下することがあります。3.服用中に検査で心電図の異常がみられた場合や、めまい、気を失う、立ちくらみ、脈が遅くなる、息切れなどが現れた場合は、すぐに主治医に相談してください。4.糖尿病の悪化や高血糖を引き起こすことがあります。体がだるい、体重が減る、喉が渇く、水を多く飲む、尿量が増えるなどの症状が現れた場合は、速やかに病院か薬局に連絡してください。<Shimo's eyes>日本初の「がん悪液質」に対する治療薬が誕生しました。がん悪液質とは、がんに伴う代謝異常により、食欲低下と骨格筋の持続的な減少を認める多因子性の症候群です。がん患者のQOLを低下させ、予後を悪化させる因子であると考えられていますが、これまで有効な治療方法は確立されていませんでした。本剤は、食欲を制御する体内ペプチドホルモンの一種であるグレリンと同様の働きをする経口低分子のグレリン様作用薬です。食欲中枢へ作用して食欲を増進させるとともに、分泌された成長ホルモンが肝臓に働くことでインスリン様成長因子-1が放出され、筋タンパク合成を促進して体重を増加させます。使用に当たってまず注意すべきは、すべてのがん種が適応ではなく、非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんに限られている点です。また、がん悪液質は「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3つのステージに分類されますが、前悪液質は本剤による治療の対象からは除外されます。本剤は、食事の影響を受けるため、服用時間の指導が重要ですが、アドヒアランスが低下しないように患者の生活リズムに合わせた服用タイミングのアドバイスを行いましょう。一方で、経口の食事摂取が困難または消化吸収不良の患者には使用できない点にも注意が必要です。服薬後のフォローアップとしては、治療開始3週後をめどに効果が認められない場合は、原則投与を中止します。患者向け資材の中に「効果と副作用のチェックシート」があるので、こちらも活用しましょう。重大な副作用として「刺激伝導系抑制」が現れる恐れがあるため、うっ血性心不全、高度の刺激伝導系障害がある患者には禁忌です。中等度以上の肝機能障害のある患者や、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ボリコナゾールなどを服用中の患者にも禁忌となっています。なお、警告として、「本剤はがん悪液質の診断および治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例にのみ投与すること。また、本剤投与開始に先立ち、患者またはその家族に本剤のベネフィットおよびリスクを十分説明し、理解したことを確認したうえで投与を開始すること」とされています。現時点ではがん悪液質に関する明確な基準や共通認識が確立されているとは言えないため、しっかりと患者さんの状態をフォローしましょう。参考1)PMDA 添付文書 エドルミズ錠50mg

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第42回 ついに始まるワクチン接種、妊婦は努力義務から除外

<先週の動き>1.ついに始まるワクチン接種、妊婦は努力義務から除外2.集団接種と個別接種を組み合わせたワクチン実施体制を/日医3.睡眠導入剤混入事件の小林化工、116日間の業務停止処分4.見送られていた100万人以上の二次医療圏、地域医療構想が進む5.「病床機能再編支援事業」かかりつけ医の定義を求める声1.ついに始まるワクチン接種、妊婦は努力義務から除外厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が12日に開催され、米・ファイザーと独・ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンを特例承認した。14日の厚労大臣による承認を経て、さっそく17日から国立病院機構など100病院の医師・看護師ら1万人以上への先行接種が実施される。その後は副反応を含めた有害事象の収集を行い、安全対策などを確立した上で、3月中旬からは全国の医療従事者、4月以降は今年度中に65歳以上となる約3,600万人の高齢者などを対象に接種が進められる。ワクチンの対象年齢である16歳以上の国民全員に接種券が送付されるが、厚労省は、妊婦については接種努力義務から除外する方針を明らかにしている。15日から、厚生労働省新型コロナワクチンコールセンターが開設された。接種時期や場所についての質問は、各市町村の相談窓口で対応することとなる。また、ファイザーは医療従事者専用サイトを開設し、情報提供している。▼厚生労働省新型コロナワクチンコールセンター電話番号:0120-761-770(フリーダイヤル)受付時間:9:00~21:00(参考)ファイザー新型コロナウイルスワクチン医療従事者専用サイト<新型コロナ>ワクチン接種努力義務から妊婦は除外 14日正式承認、16歳以上全員に接種券送付へ(東京新聞)新型コロナ ワクチン、きょう正式承認 厚労省、あすから相談窓口を設置(毎日新聞)2.集団接種と個別接種を組み合わせたワクチン実施体制を/日医10日、日本医師会・中川会長と今村副会長が総理官邸を訪れ、意見交換を行った。中川氏は、新型コロナワクチンの接種体制について、「地域の実情に応じ、集団接種と個別接種を組み合わせた柔軟な対応が必要であり、とくに基礎疾患のある高齢者に対しては、かかりつけ医による個別接種が望ましいケースもある」とし、国が主導する大掛かりなワクチン接種事業に全面的に協力する意向を菅総理に伝えた。今後、医師会などを通して各自治体への情報伝達が開始されるが、多くの自治体が準備に追われている状況。接種開始までの手続きの煩雑さについては、河野 太郎ワクチン担当大臣から、「新たに構築する予定の接種管理のためのデータベースについて、バーコードを読み取るのみで情報収集できるといった現場に負担のかからない仕組みとすることを考えている」と説明があった。(参考)菅総理にワクチン接種事業への全面協力を約束(日本医師会)COVID-19ワクチン接種体制の構築へ向けた提言(自民党)3.睡眠導入剤混入事件の小林化工、116日間の業務停止処分経口抗真菌薬イトラコナゾールに睡眠導入剤を混入した小林化工に対して、福井県は116日間の業務停止処分と業務改善命令を9日に通達した。国内の医薬品企業への行政処分としては過去最長となる。本事件では、イトラコナゾールを服用した人の7割近い239例が健康被害を報告しており、2例が死亡している。これまで明らかになっているのは、承認内容と異なった医薬品の製造工程や二重帳簿の作成、品質試験結果の捏造など、長期間にわたる「法令遵守への意識の欠如」だ。小林 広幸社長は、患者対応が一段落したら辞任する意向を示している。今回の事件により、不備が判明した製品の相次ぐ自主回収が行われており、安定供給の確保と信頼性の回復にはかなりの時間がかかるだろう。(参考)小林化工40年前から試験結果を捏造 製品の8割で「二重帳簿」作成(福井新聞)医薬品医療機器法違反業者に対する行政処分について(福井県)水虫治療薬に睡眠導入剤混入 小林化工に116日間の業務停止命令(NHK)4.見送られていた100万人以上の二次医療圏、地域医療構想が進む厚労省医政局は12日に「地域医療構想に関するワーキンググループ」を開催し、これまでは見送られていた、人口100万人以上の二次医療圏の地域医療構想について議論した。人口100万人以上の構想区域は、人口50万人以上100万人未満の構想区域より小さい面積の中に、約2倍の病院が存在する傾向である。よって、従来のアプローチではなく、まず各公立・公的医療機関などにおいて、周辺医療機関の診療実績や医療需要の推移など地域の実情に関する各種データも踏まえつつ、自らが担うべき役割・医療機能など具体的対応方針の妥当性について確認し、地域医療構想調整会議などであらためて議論するよう求めている。(参考)資料 人口100万人以上の構想区域に係る分析について(厚労省)人口100万人以上区域の病院再編、厚労省新たな関与せず 地域医療構想WG、「診療実績が少ない」は指定済み(CBnewsマネジメント)5.「病床機能再編支援事業」かかりつけ医の定義を求める声厚労省は、8日に社会保障審議会・医療部会を開催し、医療法の改正案(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案)などについて議論した。質・安全が確保された医療を持続可能な形で患者に提供するために、医師の働き方改革だけでなく、地域医療構想の実現に向けた医療機関の取り組みを支援するべく、2020年度から開始された「病床機能再編支援事業」について、今年度以降も国が全額を負担して継続される。一部の医療機関に外来患者が集中し、さまざまな課題が生じていることについては、外来医療機能の明確化・連携の推進を進め、患者の流れをより円滑にすることで、外来患者の待ち時間短縮や勤務医の外来負担の軽減、医師の働き方改革につなげる方針が打ち出された。これに対し、あらためて「かかりつけ医」の定義付けを行うべきという意見も出た。(参考)資料 良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(厚労省)外来機能連携へ、「かかりつけ医」の定義化求める意見 社保審・医療部会(CBnewsマネジメント)

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第38回 イトラコナゾール睡眠薬混入事件、SNSの医師コメントが更なるリスクを生み出す?

まさに前代未聞というべき事態になっている。福井県のジェネリック医薬品企業・小林化工が出荷した抗真菌薬イトラコナゾールの一部ロットにベンゾジアゼピン系睡眠導入薬のリルマザホン(商品名:リスミーなど)の成分が混入。しかも混入量は1錠あたり最大で臨床使用量の2.5倍という高用量。この結果、12月23日時点で判明している健康被害は164件、このうち自動車などによる事故を起こした服用者は21人、緊急搬送・入院者(すでに退院した人も含む)は35人、さらに痛ましいことに70代女性が亡くなったことが報告されている(これ以外に1人の死亡が報告されているが、主治医が服用と死亡の間に因果関係が認められる可能性は低いとの見解を示している)。この事件では製造過程で目減りする成分を補充するため、医薬品製造販売承認書に記載のない中途での成分つぎ足しを実施していたことが発覚。現在までにつぎ足しの際に明らかに形状の違うイトラコナゾールとリルマザホンの容器を取り違え、そこで行われるはずのダブルチェックもなかったことが事件の原因と考えられている。また、一部では最終段階での品質管理で混入を疑わせるデータがありながら、そのチェックが不十分だったとも報じられている。この件についてSNSなどを概観した私見では、一般人と医療従事者ではやや受け止め方が違うと感じている。端的に言うならば一般人は医薬品そのものへの信頼性、医療従事者はジェネリック医薬品への信頼性をそれぞれ疑っているという印象だ。この違いは、一般向けの報道では今回の医薬品がジェネリック医薬品であることにあっさり言及する程度、中にはまったく触れていないことも少なくないためだろうと考えられる。一般向けに医療記事を書くことも多い私だが、事件発生以来、この件について書いて欲しいとのオーダーがあったら、書き方にかなり苦労するだろう思っている。なぜならこの件について平たく書こうとすればするほど、問題の製品がジェネリック医薬品であることに触れざるを得ず、どんなに気を付けて書いても読者の一部に「ジェネリック医薬品=粗悪品」という感情を抱かせかねないからだ。そしてそのような誤解をさせることは私にとって本意ではない。多くの医療従事者がご存じの通り、国は医療費抑制策の一環としてジェネリック医薬品の使用促進策を推進し、2017年6月の閣議決定で政府目標として2020年9月までに数量ベースでの使用割合80%達成を掲げ、これに伴う診療報酬の改定措置を行ってきた。代表格は各保険薬局のジェネリック医薬品の数量ベース調剤割合に応じて調剤料の加算報酬がつく「後発医薬品調剤体制加算」の設置だ。これにより医師による変更不可の指示がない限り、調剤の段階でジェネリック医薬品の代替が行われるようになり、実際の2020年9月時点の使用割合は78.3%と目標には達しなかったものの、もはや目標達成目前である。ちなみにこの件について一部の医療従事者から「お金のために薬局が嬉々としてジェネリックに変更している」と批判的な物言いも耳にしたことがあるが、この変更にあたって薬局側では目を皿にして各ジェネリック医薬品企業の安定供給レベルや品質などを吟味していることが多く、この作業が決して楽なものではないことは承知しているつもりだ。しかし、今回の事件が深刻化すればするほど、ジェネリック医薬品に対する国民や医療従事者の信頼度は低下し、ひいては前述の使用割合の低下にもつながりかねない。それに伴ってもともとジェネリック医薬品に対して良い感情を持っていない医療従事者、とりわけ医師からジェネリック医薬品批判が出てくるであろうことは想像に難くない。というか、もうすでにそれは出ている。内科医で芸能人でもある、おおたわ史絵氏のブログを引用した東京スポーツ新聞の記事である。この記事、一見するともっとものように頭に入って来る。ただ、誤解を招きやすい点がいくつかある。まず、「不正」という言葉の使い方だ。おおたわ氏は、医薬品製造販売承認書にない製造プロセス、いわば製造途中での成分のつぎ足しを「不正」と言っているのだろうが、一般読者にとってこうした細かい話はさっと触れられただけでは意味がわかるようでわからないことが往々にしてある。場合によってはつぎ足し時に取り違えたる「過失」と思われる行為が「不正」のように読めてしまう。こうした読み解き(読み違え)は、とりわけ「製薬会社=悪」「医師=悪」のような陰謀論的な考え方をする人にはありがちだ。そのうえで、そうした誤解に基づくSNSでの発信や拡散が行われてしまう危険性がある。次に気になるのがジェネリック医薬品について、「1つの薬に対してジェネリックは5つも10も存在することがあります。そのどれを選ぶか? 選択権は患者さんにはありません。実は我々医者にもありません。選択権を持っているのは薬局です。どこのメーカーのジェネリックを採用するかは薬局の裁量にかかっています」という記述である。一応、その後に薬局についてフォローしているものの、重ねて「医者も患者も選択権を持っていない」と強調しているため、まるで薬局に選択権があること自体やその選択内容が全体的に問題であるとの印象を与えてしまう。だが、それ以上にややミスリーディングではないかと感じてしまう点が、「ジェネリックと言う選択肢がこの国に現れてからずっと不安でした。多数の工場やメーカーが参入するほど、監視の目が行き届かなくなるからです」や「我々医師はみんないつかこんな事故、事件が起きると不安に思っていました」という、ある意味潜在的なジェネリック医薬品不信を述べている点である。同じような印象を持っている医師はほかにもいるだろうし、その感想を述べる自由はある。ただ、今回の事件は現時点では小林化工という一企業が有する構造的な問題として発生した、つまり小林化工特有の問題でたまたま事件が発生したのがジェネリック医薬品メーカーだったのか、ジェネリック医薬品メーカー全体が有する構造的な問題として発生したかはいまだ不明である。だが、この書き方はまさに私が懸念する「ジェネリック医薬品=粗悪品」という印象を抱かせてしまう。こんなことがきっかけでジェネリック医薬品を服用している患者が不安を感じ、医療機関や薬局に薬剤変更を求めて駆けつける、あるいはジェネリック医薬品の使用に積極的な医師や薬剤師をむやみに批判するという混乱は避けなければならない。メディアの報道が時に物議を醸し、医療従事者から「だからメディアは…」とおしかりを受けることも少なくない。だが、それでもなお患者にとって医療従事者、とりわけ医師の発言はメディア以上に重大な影響を与える。それは時として警察官が持つ拳銃や手錠と同等の権威・脅威を与えるものなのである。

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小林化工の抗真菌薬に2.5倍量の睡眠薬混入はなぜ?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第59回

※本原稿は2020年12月11日時点での情報をもとに作成しています。医薬品の自主回収はさまざまな理由によって行われるため、望ましいことではありませんが、回収自体はそれほど珍しくはありません。しかし今回、死亡例を含む多くの健康被害が起こってしまった回収事例が発生しました。福井県は12月4日、同県あわら市の製薬会社「小林化工」が、爪水虫など皮膚病の治療に使う経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」約10万錠分を自主回収すると発表した。製造過程で通常の服用量を超える睡眠導入剤成分が混入し、岐阜、大阪、佐賀の3府県で計12人に意識消失や強い倦怠感などの副作用が確認されたという。(2020年12月5日付 日本経済新聞夕刊)この製造過程で混入した睡眠導入薬とは短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬「リルマザホン塩酸塩水和物(以下、リルマザホン)」で、当然ながら通常は含まれることなどありえません。しかも、イトラコナゾール錠50mgの1錠中に、リルマザホンの最大量の約2.5倍という高用量が混入していました。イトラコナゾールの内服薬は、1日1回もしくは1日2回服用しますので、朝食後に服用することも多くあります。短時間作用型の睡眠薬を朝食後に服用し、そのまま車を運転して出勤…などと考えるとゾッとしますが、残念なことに、12月11日時点で重篤を含む健康被害は計133例に上り、死亡例も1例生じています。製薬会社のずさんな製造工程のために、患者さんに健康被害が生じるなどあってはならないことで怒りが込み上げてきます。混入した経緯としては、厚生労働省に事前に承認された手順ではないものの、薬の製造過程で原薬の量が減った際に小林化工の担当者が成分を後で追加していたとのことで、その際にリルマザホンが混入したとされています。これが本当であれば、医薬品医療機器等法の違反です。今回のイトラコナゾール錠の回収については、製造販売元である小林化工株式会社から患者用のFAQが出ていますので抜粋して紹介します(一部改変)。ロット番号が不明の『イトラコナゾール錠50「MEEK」』を持っていますが、服用していいですか?絶対に服用しないでください。このお薬を服用された方は、自動車や自転車などの運転や危険を伴う機械の操作は絶対にやめてください。どのロットが回収対象ロットですか?睡眠薬の成分(リルマザホン塩酸塩水和物)が混入していることが判明したロットは「T0EG08」のみですが、ほかのロットについても、すべて回収いたします(50mg製剤)。服用を中止した残薬はどうしたらよいですか?残薬については、処方元または入手した薬局に返却してください。費用などは補償してもらえるのでしょうか?薬代などの補償については、服用されていた製剤を回収し、代替処方が必要となる際に補償をさせていただきます。イトラコナゾール錠の50mg製剤は、すべてのロットを対象として患者さんの手元にあるものまで回収されます。100mgと200mg製剤は、リルマザホンの混入が認められていないとのことですので、患者さんの手元にあるものは回収しないようですが、承認書に記載のない工程で製造していたことが判明したため、医療機関にあるものは回収となります。なお、リルマザホンが混入している当該ロットが調剤された患者さんは全員が特定されていて、服薬中止の連絡が行われたとのことです。すでに服用してしまった患者さんも多くいると思いますが、これ以上被害が拡大しないことを切に願うとともに、原因がきちんと解明・公表されて二度と同じようなことが起こらないようにしてほしいと思います。

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「ハルシオン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第23回

第23回 「ハルシオン」の名称の由来は?販売名ハルシオン®0.125mg錠ハルシオン®0.25mg錠一般名(和名[命名法])トリアゾラム(JAN)効能又は効果○不眠症○麻酔前投薬用法及び用量○不眠症通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。高度な不眠症には0.5mgを投与することができる。なお、年齢・症状・疾患などを考慮して適宜増減するが、高齢者には1回0.125mg~0.25mgまでとする。○麻酔前投薬手術前夜:通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。なお、年齢・症状・疾患などを考慮し、必要に応じ0.5mgを投与することができる。警告内容とその理由【警告】本剤の服用後に、もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)があらわれることがある。また、入眠までの、あるいは中途覚醒時の出来事を記憶していないことがあるので注意すること。理由国内において“もうろう状態”“健忘”等の副作用報告があり、このような状態下においては重大な事故につながる危険性があるため【警告】を設け特に注意を喚起した。更に、2007年3月14日に米国食品医薬品局(FDA)は本剤を含む睡眠剤について、十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していないとの報告があることを踏まえて、当該薬剤の米国添付文書の改訂指示を行っていることから、本剤においても注意喚起することとした。禁忌内容とその理由【禁忌(次の患者には投与しないこと)】(1)本剤に対し過敏症の既往歴のある患者(2)急性狭隅角緑内障のある患者(3)重症筋無力症の患者[筋弛緩作用により、症状を悪化させるおそれがある。](4)次の薬剤を投与中の患者:イトラコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール、HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル、リトナビル等)、エファビレンツ、テラプレビル【原則禁忌(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)】肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で呼吸機能が高度に低下している患者[呼吸抑制により炭酸ガスナルコーシスを起こしやすいので投与しないこと。やむを得ず投与が必要な場合には、少量より投与を開始し、呼吸の状態を見ながら投与量を慎重に調節すること。]※本内容は2020年10月28日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2018 年12月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「ハルシオン®0.125mg錠/ハルシオン®0.25mg錠」2)Pfizer PROFESSIONALS

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双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」【下平博士のDIノート】第56回

双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」今回は、抗精神病薬/双極性障害のうつ症状治療薬「ルラシドン塩酸塩(商品名:ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、長期間の治療が必要な統合失調症や双極性障害のうつ症状の患者に対し、忍容性を保ちながら適切な治療効果を維持することが期待されています。<効能・効果>本剤は、統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月11日より発売されています。<用法・用量>《統合失調症》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回、食後に経口投与します。なお、年齢、症状により適宜増減しますが、1日量は80mgを超えることはできません。《双極性障害におけるうつ症状の改善》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20mgから開始し、1日1回、食後に経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、増量幅は20mgとして、1日量60mgを超えることはできません。<安全性>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象876例中338例(38.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、アカシジア75例(8.6%)、悪心40例(4.6%)、統合失調症29例(3.3%)、傾眠28例(3.2%)、頭痛、不眠症各25例(2.9%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、遅発性ジスキネジア、高血糖、白血球減少(いずれも1%未満)、悪性症候群、痙攣、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、肺塞栓症、深部静脈血栓症、横紋筋融解症、無顆粒球症(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内のドパミン、セロトニンなどのバランスを整えることで、幻覚、幻聴、妄想、不安、緊張、意欲低下などの症状を和らげ、また、双極性障害におけるうつ症状を改善します。2.薬の飲み始めや増量した時期に低血圧が起こることがあります。眠気が出たり、注意力・集中力・反射運動能力が低下したりすることもあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.薬を飲み始めてから、じっとしていられない、興奮が強くなる、ちょっとしたことで怒りっぽくなるなど、普段と異なる様子がみられた場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.血糖値が上がることがあるので、本剤を服用後に激しい喉の渇きを感じたり、尿の回数や量が増えたりしたら連絡してください。5.動きが遅い、手足の震えやこわばり、呼吸回数の減少、低血圧などが現れたらご相談ください。6.アルコールは薬の効果を強めることがあるので、本剤を服用中は飲酒を控えてください。また、グレープフルーツを含む飲食物によっても、薬の作用が強く現れることがあるので、本剤を服用中は摂取しないよう気を付けてください。<Shimo's eyes>本剤は第2世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)で、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)に分類されます。既存のSDA内服薬としては、リスペリドン(商品名:リスパダール)、ペロスピロン(同:ルーラン)、ブロナンセリン(同:ロナセン)、パリペリドン(同:インヴェガ)の4剤があり、本剤が5番目となります。本剤は、ドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2A受容体および5-HT7受容体に対してはアンタゴニスト、5-HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニストとして作用する一方で、抗ヒスタミン作用や抗コリン作用は少ないと考えられています。そのため、本剤は既存のSDAにはない、統合失調症における幻聴や妄想といった陽性症状、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状の改善のほか、不安や落ち込みといったうつ症状の改善も期待できます。統合失調症患者もしくは双極I型障害うつ患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤の忍容性に関して大きな問題は認められませんでした。また、長期投与試験において、統合失調症患者の精神症状に対する効果および双極性障害患者のうつ症状に対する効果は、それぞれ52週にわたり維持されたことが確認されています。2020年5月現在、統合失調症治療薬として、欧米を含む47の国と地域で承認されており、また、双極I型障害のうつ症状治療薬としては米国を含む7つの国と地域で承認されています。海外の最新治療ガイドラインでは、体重増加、糖代謝異常などの代謝系副作用が少ないなどの観点から統合失調症に対して推奨され、双極性障害におけるうつ症状では第一選択薬の1つとして推奨されています。処方時の注意点として、中等度以上の腎機能・肝機能障害のある患者では、投与量の制限があるため、投与量を適宜減量し、慎重に投与することとされています。また、本剤は、1日1回食後に服用することで最高血中濃度が引き上げられ、効果が継続するため、食後投与を厳守する必要があります。なお、本剤と同様に「双極性障害におけるうつ症状」の適応を有するクエチアピンフマル酸塩徐放錠(商品名:ビプレッソ)は就寝前投与なので、服用時点を混同しないように注意しましょう。相互作用としては、CYP3A4の基剤であるため、クラリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬などのCYP3A4を強く阻害する薬剤や、リファンピシンなどのCYP3A4を強く誘導する薬剤は禁忌です。アルコールやグレープフルーツ含有食品も併用注意になっており、摂取には注意が必要であることを伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ラツーダ錠20mg/ラツーダ錠40mg/ラツーダ錠60mg/ラツーダ錠80mg

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カリウムイオンを補足する非ポリマー型高K血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」【下平博士のDIノート】第53回

カリウムを便中に出す非ポリマーの高カリウム血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」今回は、高カリウム血症改善薬「ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(商品名:ロケルマ懸濁用散分包5g/10g、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、体内に吸収されない非ポリマーの無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させることにより、血清カリウム値を低下させます。<効能・効果>本剤は高カリウム血症の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年5月20日より発売されています。なお、本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用できません。<用法・用量>通常、成人には開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間(血清カリウム値や患者の状態に応じて最長3日間まで)経口投与します。以後の維持量は1日1回5gですが、血清カリウム値や患者の状態に応じて1日1回15gを超えない範囲で適宜増減できます。なお、増量を行う場合は5gずつとし、1週間以上の間隔を空けます。血液透析施行中の場合は、初回から1回5gを水で懸濁して、非透析日に1日1回経口投与します。なお、最大透析間隔後の透析前の血清カリウム値や患者の状態に応じて、1日1回15gを超えない範囲で適宜増減します。<安全性>本剤承認の根拠となった主要な第III相試験(非透析患者を対象としたHARMONIZE Global試験、J-LTS試験および慢性血液透析患者を対象としたDIALIZE試験)において確認された主な副作用は、浮腫、体液貯留、全身性浮腫、末梢性浮腫、末梢腫脹、便秘(いずれも10%未満)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、低カリウム血症(11.5%)、うっ血性心不全(0.5%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.このお薬は、消化管内で吸収される前のカリウムを吸着し、便とともに排泄することで、血液中のカリウム値を低下させます。2.分包された薬剤を容器にすべて出してから、約45mL(大さじ3杯)の水と合わせて服用します。この薬は水に溶けないため、よくかき混ぜて、沈殿する前に飲んでください。飲んだ後に容器に薬が残っていたら、水を追加して再度かき混ぜてすべて服用してください。3.飲み忘れた場合は、1回飛ばして、次に飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。4.いつもと違う手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉のこわばり、呼吸のしにくさ、めまい、動悸などがある場合は、薬が効き過ぎている可能性があるため、すぐにご連絡ください。<Shimo's eyes>通常、カリウムは腎臓から排泄されて血中のカリウム値は一定の範囲に保たれますが、慢性腎臓病患者や透析患者では、腎機能の低下によりカリウム排泄が低下するため、高カリウム血症を発症しやすくなります。高カリウム血症に用いる既存のカリウム吸着薬としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム製剤(商品名:ケイキサレート)およびポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤(同:カリメート、アーガメイトゼリーなど)があり、いずれもポリマーで構成された陽イオン交換樹脂製剤です。既存薬には独特の味と舌触りがあり、投与量が多いことも相まって、患者さんが継続服用するのが困難な場合があります。飲みにくさを改善するために、ゼリー製剤やフレーバーが開発されているだけでなく、複数の医療機関から飲みやすさの工夫に関する研究結果も報告されています。また、ポリマー性吸着薬は水分によって膨張するため、便秘や腹痛、腹部膨満感などの懸念があります。本剤は国内初となる非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させます。無味無臭の白色粉末で、開始時は10gを1日3回経口投与であるものの、3日目からは通常5gを1日1回となり、服用量・回数共に比較的少ないため、アドヒアランスの向上が期待できます。本剤の相互作用については、胃内pHの上昇によって、アゾール系抗真菌薬、チロシンキナーゼ阻害薬などの溶解性低下が起きることがあるので、注意が必要です。生活指導としては、腎臓への負担を少しでも減らすために、カリウムを多く含む食品の過剰摂取に注意することや、茹でたり水にさらしたりするなどの調理方法の工夫を伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ロケルマ懸濁用散分包5g/ロケルマ懸濁用散分包10g

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入眠と中途覚醒を改善するオレキシン受容体拮抗薬「デエビゴ錠2.5mg/5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第50回

入眠と中途覚醒を改善するオレキシン受容体拮抗薬「デエビゴ錠2.5mg/5mg/10mg」今回は、不眠症治療薬「レンボレキサント(商品名:デエビゴ錠2.5mg/5mg/10mg、製造販売元:エーザイ)」を紹介します。本剤は、わが国で2剤目のオレキシン受容体拮抗薬です。より自然に近い催眠作用によって、スムーズな入眠と睡眠維持、翌朝の覚醒改善が期待されています。<効能・効果>本剤は不眠症の適応で、2020年1月23日に承認されています。<用法・用量>通常、成人にはレンボレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与します。なお、患者の症状により1日1回10mgを超えない範囲で適宜増減できます。本剤とCYP3Aを中程度または強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシンなど)を併用する場合は、1日1回2.5mgが上限となっています。<安全性>不眠症患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤が投与された884例(日本人155例を含む)中249例(28.2%)に副作用が認められました。主な副作用は、傾眠95例(10.7%)、頭痛37例(4.2%)、倦怠感27例(3.1%)などでした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.本剤は、覚醒と睡眠リズムを調整することで寝つきをよくし、より正常な睡眠の維持を促します。2.このお薬は、食直後を避け、就寝直前に服用してください。入眠後、一時的に起床して活動する必要がある日には服用しないでください。3.眠気や注意力・集中力・反射運動能力の低下など、薬の影響が翌朝以降も続くことがありますので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作は行わないようにしてください。4.不眠症の改善は、適度な運動を心掛けるなど、生活習慣を見直すことも大切です。起床時間と就寝時間を一定にし、睡眠リズムを整えましょう。<Shimo's eyes>不眠症治療の中心的薬剤として、ベンゾジアゼピン系薬剤が長年使用されていますが、長期服用時の依存形成や薬物の不適切使用が問題となっています。近年では、より自然に近い睡眠・覚醒リズムを整える薬剤として、2010年にはメラトニン受容体作動薬のラメルテオン(商品名:ロゼレム)、2014年にはオレキシン受容体拮抗薬のスボレキサント(同:ベルソムラ)が発売されました。本剤は、国内で2番目のオレキシン受容体拮抗薬で、オレキシン神経伝達に作用して過剰な覚醒状態を抑制するため、より自然な睡眠を促し、中途覚醒時間を短縮することが可能と考えられています。本剤の特徴として、年齢による用量の制限がなく、また調剤時の一包化が可能となっているため、高齢者にも比較的使用しやすい薬剤といえるでしょう。第III相試験においては、入眠と睡眠維持の両方の改善を示し、プラセボと比較して翌日のふらつきや記憶力においても問題となる悪化は認められず、日中機能の改善が確認され、6ヵ月投与した中止後の離脱症状は見られませんでした。なお、<用法・用量>に記載のとおり、相互作用については禁忌ではないものの、肝薬物代謝酵素CYP3Aを中程度または強力に阻害する薬剤と併用する場合には、本剤の投与量を1日1回2.5mgに制限する必要があります。また、中等度肝機能障害の患者に対しては、本剤の血中濃度が上昇する可能性があるため、1日1回5mgが上限となっています。医薬品リスク管理計画書(RMP)における本剤の潜在的リスクとして、ナルコレプシー症状が挙げられています。副作用については、日中の過剰な眠気、睡眠時麻痺、入眠時幻覚がないかなど、細やかな聞き取りを心掛けましょう。参考1)PMDA デエビゴ錠2.5mg/5mg/10mg

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抗真菌薬の妊婦への処方は安全か?

 皮膚科医にとって難問の1つとなっている妊婦への抗真菌薬投与について、デンマークの全国規模の妊娠登録ベースコホートにおける研究結果が発表された。デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのNiklas Worm Andersson氏らによる検討で、経口または局所テルビナフィンの投与と、主要な形成異常または自然流産のリスク増大の関連は特定できなかったという。テルビナフィンは一般的に使用される抗真菌薬だが、妊娠中の使用に関する安全性データは限定的である。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年3月4日号掲載の報告。抗真菌薬の妊婦への投与について165万649例を対象にデータ解析 抗真菌薬の妊婦への投与についての検討は、1997年1月1日~2016年12月31日に妊娠が登録された165万649例を対象とし、2019年7月11日~10月20日にデータの解析が行われた。 傾向スコアマッチング法を用いて、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露(1対10の割合)、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露(1対10)、経口vs.局所のテルビナフィン曝露(1対1)の比較を行った。曝露の定義は、経口または局所のテルビナフィンを処方された場合とした。 主要評価項目は、ロジスティック回帰法を用いて算出した主要な形成異常に関する有病率オッズ比(主要アウトカム)、Cox比例ハザード回帰法を用いて算出した自然流産のハザード比(副次アウトカム)であった。 妊婦への抗真菌薬投与についての研究の主な結果は以下のとおり。・ベースコホートの妊娠165万649例において、経口テルビナフィン曝露例は891例(平均年齢30.4[SD 6]歳)、局所テルビナフィン曝露例は3,174例(29.5[SD 5.4]歳)であった。解析に包含された非曝露妊娠例の合計は最大4万650例であった。・主要形成異常リスクの傾向マッチング比較において、有病率オッズ比は、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.01(95%信頼区間[CI]:0.63~1.62)であった(絶対リスク差[ARD]:0.04%、95%CI:-1.69~1.76)。・同様に、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.08(95%CI:0.81~1.44)であった(ARD:0.26%、95%CI:-0.73~1.26)。・同様に、経口vs.局所のテルビナフィン曝露では、1.18(95%CI:0.61~2.29)であった(ARD:0.59%、95%CI:-1.71~2.88)。・自然流産のリスクに関するハザード比は、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.06(95%CI:0.86~1.32)であった(ARD:0.13%、95%CI:-1.97~2.24)。・同様に、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.04(95%CI:0.88~1.21)であった(ARD:0.17%、95%CI:-0.64~0.98)。・同様に、経口vs.局所のテルビナフィン曝露では、1.19(95%CI:0.84~1.70)であった(ARD:1.13%、95%CI:-2.23~4.50)。

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抗菌薬が十分量処方されていなかったため上乗せを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第14回

 今回は、動物咬傷による皮膚軟部組織感染に対する抗菌薬の処方提案です。病状の改善や耐性菌を生み出さないためには抗菌薬を十分量投与する必要があります。医師の選択した抗菌薬の種類だけでなく、投与量も適切かどうか確認するクセをつけましょう。患者情報50歳、男性(外来)体  重:60kg基礎疾患:高血圧症、糖尿病、足白癬既 往 歴:とくになし主  訴:ペットの犬に噛まれた右手の疼痛、発熱直近の検査値:血清クレアチニン(Scr)0.9mg/dL推算CCr:83.3mL/min処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.シタグリプチン錠50mg 1錠 分1 朝食後3.テルビナフィンクリーム 10g 1日1回 足全体4.エフィナコナゾール液10% 3.56g 1日1回 爪全体5.アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠 分3 毎食後本症例のポイント糖尿病患者さんは、感染症に罹患しやすく、重篤化しやすいため、十分量の抗菌薬が処方されているか慎重に確認する必要があります。今回の患者さんは、糖尿病の基礎疾患があり、動物咬傷による皮膚軟部組織感染と推察できますので、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日(アモキシシリンとして750mg/日)では治療効果が十分ではなく、1,500mg/日程度が必要と考ました。しかし、アモキシシリンが治療に有効な力価になるまで配合錠を増量すると、クラブラン酸が高用量になり過ぎてしまいます。高用量のクラブラン酸は下痢や嘔気などの消化器症状が増加する懸念がある一方で、抗菌効果の増強にはならないと指摘されていますので良いところなしです。そのため、アモキシシリンの用量を上げたい場合は、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠を増量するのではなく、アモキシシリン単剤を追加してアモキシシリンの力価だけを増やすことがあります。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠とアモキシシリン錠の先発品名から「オグサワ」と呼ばれる有名な治療方法です。海外製品のアモキシシリン・クラブラン酸配合錠の標準比は、アモキシシリン:クラブラン酸=4:1だが、日本製品(成人用)は2:1でアモキシシリンの配合比が低い。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日にアモキシシリン単剤250mg 3錠/日を追加することでアモキシシリン:クラブラン酸=4:1となり、クラブラン酸を増量せずに十分量のアモキシシリンを投与することができる。処方提案と経過処方医に想定される起炎菌と重症度を確認したところ、傷の深さや発熱などの症状から重症度は高めで、ブドウ球菌や嫌気性菌を考えているとのことでした。核心の用量については、逆に抗菌薬の十分量について質問を受けたので、上記のアモキシシリン250mg/回を追加することで十分な治療効果が見込め、腎機能も推算CCrから問題ない旨をお伝えしました。その結果、処方はアモキシシリン錠250mg 3錠 分3 毎食後をアモキシシリン・クラブラン酸配合錠に同日数分上乗せするよう指示を受けました。数日後、医師より患者さんの体調が回復したというご報告と、オグサワの使用経験がなく不安があったが今後の診療でも活用していきたいというコメントを頂きました。1)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019(第49版). ライフサイエンス出版;2019.2)オーグメンチン配合錠インタビューフォーム

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治療方針が明確に、「皮膚真菌症診療ガイドライン2019」

 2019年12月、日本皮膚科学会は「皮膚真菌症診療ガイドライン」を10年ぶりに改訂した。日本において、真菌感染症のなかでも、足白癬の有病率は人口の約21.6%、爪白癬では10.0%と推計される。この10年間に外用剤(クリーム、液剤、スプレー)や新たな内服薬が発売され、治療状況も変化しつつあるため、改訂した皮膚真菌症診療ガイドラインのポイントを紹介する。「皮膚真菌症診療ガイドライン2019」改訂のポイント 皮膚真菌症診療ガイドライン2019によれば、“保険診療上認められていない治療法や治療薬であっても、すでに本邦や海外において医学的根拠のある場合には取り上げ、推奨度も書き加えた。保険適用外使用についても記載した”と記され、各疾患の治療についてはClinical question(CQ)が設定されている。 CQは1~21まで作成され、足白癬や爪白癬をはじめとする真菌症治療に対して、外用・内用療法、各薬剤の有用性について推奨度が示されている。この推奨度は、GRADE分類を参考にしつつも日本皮膚科学会編「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版」で採用されたエビデンスレベル分類と推奨度の分類基準に準拠している。併用注意や投与時の注意事項を簡潔に記載 第1章の「疾患概念と診断・治療の原則」には、手・足白癬治療の中心は外用の抗真菌薬(CQ1)を、角化型や接触皮膚炎を合併しているような難治例に対しては内服の抗真菌薬で治療を行うのも良い(CQ2)旨が記されている。また、手・足白癬の爪白癬合併例や爪白癬単独症例では、経口抗真菌薬を第1選択とすべき(CQ5、6、7)とも記載されている。 皮膚真菌症診療ガイドライン2019中盤では各CQの解説がなされており、CQ1では足白癬に対する外用抗真菌薬の有用性が各薬剤の研究報告とともに書かれているほか、皮膚真菌症診療ガイドライン2019発刊時点で発売されている外用薬の一覧表が公開されている。爪白癬治療については、外用薬だけによる完全治癒率は低いものの、経口抗真菌薬が服用できない患者や希望しない患者に使用される、などの注意点が盛り込まれている。<主なCQを抜粋>*CQ8~21については、ガイドラインを参照。CQ1: 足白癬に抗真菌薬による外用療法は有用か(推奨度:A)CQ2: 足白癬に抗真菌薬による内服療法は有用か(推奨度:A)CQ3: 爪白癬にエフィナコナゾール爪外用液は有用か(推奨度:B)CQ4: 爪白癬にルリコナゾール爪外用液は有用か(推奨度:B)CQ5: 爪白癬にテルビナフィンの内服は有用か(推奨度:A)CQ6: 爪白癬にイトラコナゾールの内服は有用か(推奨度:A)CQ7: 爪白癬にホスラブコナゾールの内服は有用か(推奨度:A) なお、皮膚真菌症診療ガイドライン2019は日本皮膚科学会のホームページ上でも公開されている。

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心拍数を下げて心臓の負担を減らす慢性心不全治療薬「コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg」【下平博士のDIノート】第40回

心拍数を下げて心臓の負担を減らす慢性心不全治療薬「コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg」今回は、HCN(hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated)チャネル遮断薬「イバブラジン塩酸塩錠」(商品名:コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg、小野薬品工業)を紹介します。本剤は、心臓の伝導性、収縮性、再分極および血圧に影響を与えず、心拍数を減少させる新規慢性心不全治療薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全(β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2019年9月20日に承認され、2019年11月19日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはイバブラジンとして1回2.5mgを1日2回食後経口投与します。1回投与量は2.5mg、5mg、7.5mgのいずれかとし、増量する際は2週間以上の間隔を空けて段階的に調節します。目標とする安静時心拍数は50~60回/分とし、目標値を超える場合は段階的な増量、下回るまたは徐脈関連症状(めまい、倦怠感、低血圧など)が認められた場合は段階的な減量が必要です。なお、本剤は次のいずれかの患者に対して投与を検討します。β遮断薬の最大忍容量を投与されても安静時心拍数が75回/分以上の患者β遮断薬に対する忍容性がない、もしくは禁忌など、β遮断薬を使用できない患者<副作用>国内第III相試験(ONO-1162-03試験)および海外第III相試験(SHIFT試験)において、本剤が投与された安全性評価対象3,359例のうち、636例(18.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、徐脈122例(3.6%)、光視症95例(2.8%)、胃腸障害47例(1.4%)、心不全27例(0.8%)、霧視15例(0.4%)でした。なお、心拍数減少を含む徐脈(8.0%)、光視症(同上)、霧視(同上)、房室ブロック(0.6%)、心房細動(0.3%)、心電図QT延長(0.2%)が、重大な副作用として報告されています(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、心臓の過剰な働きを緩やかにすることで、心臓の負担を軽減して心不全の悪化を防ぎます。2.暗い部屋で突然稲妻のような光が見えたり、目がチカチカしたり、視界がかすんで見えたりするような症状が生じることがあります。これらの症状が認められた場合は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないでください。3.めまい、立ちくらみ、息切れ、脈が飛ぶ、動悸などの症状が現れたら、すぐに医師に連絡してください。4.このお薬は、妊娠・授乳している女性には使うことができません。妊娠を希望する場合は主治医に相談してください。<Shimo's eyes>慢性心不全の患者さんでは、十分な血液量を拍出できない心臓の働きを補うために、心拍数が高くなることがあります。それが長期間継続すると、日常生活に支障が生じるのみならず、予後にまで悪影響を及ぼすことが知られています。本剤は、心臓の洞結節に発現するHCNチャネルを阻害することで、心臓のペースメーカー電流を抑制して心拍数を減少させます。対象となる患者さんは、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けていて、安静時心拍数が75回/分を上回る方に限定されますが、副作用や禁忌によってβ遮断薬が使用できない場合も可能です。本剤の効果が期待できるのは、心臓が正常なリズムを示す洞調律を保った患者さんであり、洞不全症候群や洞房ブロックなどの患者さんは禁忌です。また、収縮期血圧が90mmHg未満または拡張期血圧が50mmHg未満の低血圧、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)の患者さんにも使用できません。本剤はCYP3Aの基質であるため、強力なCYP3A阻害作用を持つイトラコナゾール、クラリスロマイシンなどのほかにも、中等度のCYP3A阻害作用に加えて心拍数減少作用を持つベラパミル、ジルチアゼムとは併用禁忌です。副作用の眼症状発現について、本剤は洞結節のHCN4チャネルに加えて、視細胞のHCN1チャネルを阻害することが原因の1つと考えられています。光視症、霧視を認めた場合は、本剤の減量や投与中止を含めた対応を提案しましょう。なお、2019年9月現在、本剤は「慢性心不全」に関連する効能・効果について、100以上の国または地域で承認されています。参考1)PMDA コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg

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