サイト内検索|page:79

検索結果 合計:4939件 表示位置:1561 - 1580

1561.

収入減!勤務医と開業医、それぞれの対策【医師のためのお金の話】第49回

医師も給与が減ったときの対策を考えなければいけない…。こんな状況は数年前まで想定外でした。2030年になると医師数が充足するので、給与水準も少しずつ下がっていくのかなぁと、のんきに考えていたぐらいです。ところがコロナ禍で状況は一変しました。図らずも医師の高給は砂上の楼閣であることが白日の下に晒されたわけですが、私たちにも生活があるので傍観しているわけにはいきません。減収対策を考えてみましょう。まずは緊急止血!減収で家計が待ったなしの状況になったら何をするべきでしょうか? まずは即効性のある手段をとりましょう。1)この先1ヵ月間で絶対に必要な出費を天引き2)キャッシュレス決済やクレジットカードを封印3)ふるさと納税をノーブランドのお米に全振り緊急止血が必要な状況で考えるべきことは、月々の収支をマイナスにしないことです。この目的を達成するためには、まずは出費の天引きをしましょう。毎月一定金額を給料から天引きして貯蓄する方法は有名ですが、緊急時には絶対必要な出費を天引きすることが有効です。出費を天引きした残りの金額で1ヵ月間生き延びることを考えましょう。そのためにはキャッシュレス決済やクレジットカードを封印して「現金で支払う痛み」を感じることも有効です。便利さは犠牲になりますが、現金支払いの痛みは節約にとても有効です。そして普段多めの税金を払っている医師ならではの節約法としては、ふるさと納税を最大限に利用しましょう。そして返礼品はちょっとぜいたくなモノではなく生活必需品にします。一般的にはお米ですが高級米である「つや姫」「魚沼産コシヒカリ」を選んではいけません。寄付金当たりで最大のキロ数を稼げるお米を選びましょう。止血ができたら、次の手当てを月々の収支をプラスに維持できたのであれば、中期的な節約と収入増を考えましょう。節約に関してまず考えるべきことは固定費の削減です。固定費とは、住居費、生命保険、自動車関連費、光熱費、通信費などの毎月払っている支出です。住宅ローンの金利交渉や借り換え、生命保険の見直し、自動車を手放す、電気やガス会社の変更、携帯電話プラン変更や他社への乗り換えなどで固定費の削減を考えましょう。本気で節約しようとすれば必ず結果は出るのでやりがいがあります。次に、収入増を考えます。勤務医であればアルバイト情報を収集しましょう。医局や勤務先全体で減収している場合には、みんなが苦しい状況なので身近な人のツテを頼ることはできません。このようなケースではアルバイト情報をマメに収集する必要があります。開業医の場合、一朝一夕に増患はできないので、減少した医業収益に合わせて固定費削減を実施する必要があります。コロナ禍で激変した医療情勢は比較的長期にわたって続くことが予想されますので、しかるべき手を早めに打っておくべきです。スタッフの解雇にまで踏み込むのは難しいでしょうが、勤務時間の短縮などのワークシェアリングで医業収益減少に見合った経費削減を達成すべきです。減収の先にある“フロンティア”を目指そうここまで手取り収入を確保することを主眼に考えてきましたが、ようやく前向きなことを考えるステージに来ました。コロナ禍で顕在化したように、収入を医業に100%依存している状態は不安定と言わざるを得ません。もちろん医療という高い参入障壁に守られた世界を、職業のメインに据えるべきでしょう。しかし、医療から半歩でも外の世界に踏み出すことは、増収と安定性の両方を確保することにつながります。具体的には「投資」と「事業展開」を考えてみましょう。ここでは、勤務医と開業医で戦略が異なります。ポイントは背負っているリスクの大きさの差です。経済的なリスクが少ないのは勤務医です。極論すると勤務医のリスクは「自らの健康」だけなので、投資だけではなく事業立ち上げのリスクを取ることも可能です。一方で、すでに経営的リスクを背負っている開業医は、新規事業の立ち上げで追加リスクを取ることは得策ではありません。このため開業医が経済的安定を得るためには不動産や株式投資にとどめることを推奨します。投資や事業によって結果を残すことは簡単ではありません。必勝法は存在せず、かなりの労力を投入しても思っていたほどの結果を残せないことも多いでしょう。しかし、座していても何も状況は変わりません。人生100年時代に突入しようとしている状況では、40歳以下の人が逃げ切ることは困難だと思われます。一般的に医師は有利な立場ですが、それに甘んじることなく果敢に挑戦したいものですね。

1562.

第42回 相関分析とは?【統計のそこが知りたい!】

第42回 相関分析とは?2つの事柄(項目、変数)の関係を調べる解析手法を総称して相関分析(Correlation analysis)、別称、2変量解析(Bivariate analysis)といいます。相関分析にはいろいろな手法がありますが、使用する解析手法は、測定されたデータが「数量データ」、「順位データ」、「カテゴリーデータ」のうち、どのタイプかによって決まります。■各テーマの相関分析のデータタイプ、解析手法、相関係数たとえば、次の5つのテーマについて調べる場合、選択肢、データタイプ、解析手法、相関係数は表のようになります。(1)学習時間とテストの成績は関係があるか(2)所得階層と支持する政党は関係があるか(3)年齢と相性が合うお医者さんは関係があるか(4)体型と血糖値は関係があるか(5)受付の満足度と病院の総合満足度は関係があるか画像を拡大する次回から、関数関係、相関関係、因果関係、そしてそれぞれの相関係数について解説していきます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問9 多変量解析を学ぶ前に知っておくべき統計の基礎を教えてください(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)

1563.

ドイツで産んでみた(1) ドイツの産婆システム【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第6回

私事ですが、ドイツで産まれた双子の娘達が、9月に満2歳の誕生日を迎えます。娘たちはドイツ産まれですが、妻がドイツ語に不自由だったために、本当に大変な出産となりました。しかし、移民国家であるドイツでは「ドイツ語の話せない患者」は珍しくないので、みんなに親切にしてもらいながら無事に出産にたどり着くことができました。私は、沢山の人に質問して、ネットで調べて、役所に何度も足を運んで制度を教えてもらって…と、今から思い返しても非常にタフな出来事でした。ドイツの産婆さん“Hebamme”妊娠がわかって、一番力になってくれたのが“Hebamme(ヘバメ)”と言われる職種の方です。いわゆる産婆さんです。ドイツでは産婆さんにかかる費用も保険で賄うことができます。このHebammeさんは、出産前から定期的に家に来てくれて、妊婦の診察をしてくれます。それに加えて、出産前に何を準備すべきなのか、などの指導をしてくれます。ただ、Hebammeさんは保育園並みに競争率が高いです。何ヵ所にも電話をかけて、ようやく見つかって来てくれたのは2児のママで30代前半の若いHebammeさんでした。いつもチャリンコで汗かきながらやってきて、ずっと笑顔で前向きな発言しかしない、明るい人でした。筆者の家族を担当してくれた明るいHebammeさん私の家族を担当してくれたHebammeさんは、出産前後の指導だけでなく、普段の生活のことでも全力でサポートしてくれる、熱い人でした。たとえば、注文したソファに不具合があったときも、代わりに電話で抗議してくれて、あっという間に新品に取り替えてもらったこともありました。妻が、切迫早産で3回、大学病院に緊急入院になったときも、毎回顔を出しに来てくれて、病棟の看護師さん達に「くれぐれも優しく対応してほしい」と言い続けてくれました。また、夜中に緊急で帝王切開になったときも駆けつけてくれたし、本当に力強い味方になってくれました。出産後も、赤ちゃんの洗い方からオシメの替え方まで、つきっきりで指導してくれました。彼女のおかげでドイツでの出産のストレスがどれだけ軽減できたかわかりません。核家族化の進むドイツでは、Hebamme制度は必須のシステムといえます。Hebammeさんには、「何がなんでも妊婦の味方になるんだ」という熱い人が多いそうです。その他、ドイツのシステムに助けられたことが多々ありましたので、次回も思い出しながら書いていきたいと思います。

1564.

ヒブ(Hib)ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第10回

今回は、ワクチンで予防できる疾患、VPD(vaccine preventable disease)としてヒブを取り上げる。ヒブ(Hib)は、“Haemophilus influenzae type b”(インフルエンザ菌b型)の頭文字をとった呼称で、髄膜炎などにより多くの子供たちの命を奪ってきた病原体の1つである。しかし、2008年にワクチンが国内に導入されてからHib感染症の報告数は激減し、2014年以降、5歳未満のHib侵襲性感染症は報告されていない。あまりに目覚ましい発症予防効果のため、Hib感染症そのものが忘れ去られつつある今、本稿では改めてこの疾患の特徴と疫学、成人におけるワクチンの活用について取り上げる。ヒブワクチンで予防できる疾患Hibは気道を介して感染する(飛沫感染と接触感染)。乳幼児の上気道に定着し、ほとんどの場合は無症状である。ワクチンが導入される前の保菌率は、15歳以下の17%、16~30歳の5.1%であった。しかし、気道から血流感染を起こすと、図に示すように髄膜炎、肺炎、敗血症、喉頭蓋炎、中耳炎などさまざまな臓器に侵襲性感染症を起こす。なかでもHib髄膜炎の致死率は5%と高く、4人に1人にてんかん、難聴、発育障害などの後遺症を残す1)。1996~1998年の調査ではHib髄膜炎は年間約600人で、罹患リスクの高い生後2ヵ月~5歳までの間に2,000人に1人の割合で罹患していると推測されていた。インフルエンザ菌による侵襲性感染症は感染症法において、第5類感染症全数届出疾患となっている2)。図 ワクチン導入前のHib感染症の病型画像を拡大する細菌学的にみるとHibはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の1つで、インフルエンザ菌はa~f型の6つの莢膜菌型と、これらに該当しない型別不能の菌(Non-typable H. influenzae:NTHi)に分かれる。感染防御にあたって最も重要な宿主因子は莢膜多糖体(PRP/polyribosylribitol phosphate)に対する抗体である。通常は5歳以上になるとワクチン未接種であっても抗PRP抗体価が自然に上昇するため、感染リスクが低くなる。逆に乳児は感染リスクが高く、実際にワクチン導入前の侵襲性感染症の93%が5歳未満で、ピークは生後8ヵ月であった。このことから、生後早期に免疫を獲得しておくことが重要であるとわかる。ワクチンの概要表 ワクチンの概要と接種スケジュール画像を拡大する1)開発、普及の歴史ヒブワクチンは1980年代に開発が進んだ。はじめに開発されたのは莢膜多糖体(PRP)を抗原としたワクチンで、18ヵ月以上の小児を対象として導入されたが、効果は限定的で、また最も侵襲性感染症のリスクが高い2歳未満の小児への免疫原性が弱かった。その後、2歳未満の小児への免疫原性が改善された、PRPにキャリア蛋白を結合させた結合型ワクチン(conjugate vaccine)が開発され、現在わが国ではこのワクチンが採用されている。2006年、WHOが乳児期のワクチンとして推奨し、日本では2008年12月に販売開始となった。2010年11月には「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」により多くの自治体で公費助成の対象となり、さらに2013年4月からは定期接種(A型疾病)が開始された。2)効果発症予防効果は90%以上と高い。米国ではワクチン導入5年で、5歳未満の侵襲性感染症の罹患率が99%減少したと報告されている。日本でも1道9県における疫学調査により、公費助成後のHib髄膜炎の減少率は100%と示されている3,4)。3)副反応ワクチン接種による一般的な副反応のみで、特異的な副反応は報告されていない。複数回の接種により、副反応の発現率が上昇することはない。4)注意点ヒブワクチンによるアナフィラキシーを起こしたことがある場合には禁忌である。日常診療で役立つ接種ポイント【5歳以上のワクチンについて】無脾症、待機的脾摘手術予定者、脾機能低下症、造血幹細胞移植者において、ヒブワクチンの接種が推奨される。前述の通り通常5歳以上では、ワクチン未接種であっても抗RPR抗体が上昇するため、ワクチン接種が不要である。しかしながら、上記のハイリスク群では、ワクチンによって十分な抗体価を維持する必要がある。米国の予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)では、ヒブワクチン未接種の無脾症、待機的脾摘手術予定者では1回接種(脾摘術の場合は、術前14日前に接種)、造血幹細胞移植者ではヒブワクチン接種歴に関わらず移植後6~12ヵ月からの3回接種を推奨している。今度の課題、展望ヒブワクチンは、侵襲性Hib感染症の発症予防効果が非常に高く、Hib髄膜炎は今や過去の病気になりつつある。しかしながら臨床で遭遇することが減ったのは、高いワクチン接種率の恩恵であることを忘れてはならない。今後も肺炎球菌ワクチンと共に、ヒブワクチンの重要性を伝え、乳児期および高リスク者への接種を推奨してもらいたい。Hib感染症の減少とともに、非b型のインフルエンザ菌および無莢膜型(non-typable H. infuenzae:NTHi)による侵襲性感染症の増加が報告されている。2019年度感染症流行予測調査では、検討された58株のうち、3株がe型、4株がf型、その他の51株はNTHi であった。臨床診断名では26名が肺炎で最も多く(45%)、NTHiによる高齢者の肺炎が課題となっている。現在NTHiに対する複数のワクチン開発が進んでおり、今後の実用化が期待される。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト日本ワクチン産業協会 予防接種に関するQ&A集2020.インフルエンザ菌b型(Hib)感染(pdf)1)Plotkin SA, et al(eds). Plotkin's Vaccines (Seventh Edition).Elsevier.2018.2)国立感染症研究所. 令和元年度(2019年度)感染症流行予測調査報告書.(最終アクセス2021.7.15)3)厚生労働科学研究費補助金. 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業 Hib、肺炎球菌、HPV及びロタウイルスワクチンの各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究 平成26年度 総括・分担研究報告書 庵原俊昭、「小児細菌性髄膜炎および侵襲性感染症調査」に関する研究(全国調査結果)(厚生労働科学研究成果データベース閲覧システム)4)菅秀. ワクチンの実地使用下における有効性・安全性及びその投与方法に関する基礎的 ・ 臨床的研究 平成28年度 委託研究開 発成果報告書(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)(最終アクセス2021.7.27)5)CDC. MMWR. 2014;63:1-14.講師紹介

1565.

プロバイオティクス、ICUでの人工呼吸器関連肺炎を抑制せず/JAMA

 人工呼吸器を要する重症患者において、プロバイオティクスであるLactobacillus rhamnosus GGの投与はプラセボと比較して、集中治療室(ICU)における人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生に関して有意な改善効果はなく、有害事象の頻度は高いことが、カナダ・トロント大学のJennie Johnstone氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年9月21日号で報告された。3ヵ国の44のICUの無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、ICUにおけるVAPや新たな感染症、その他の臨床的に重要なアウトカムの予防におけるL. rhamnosus GG投与の有効性の評価を目的とする無作為化プラセボ対照比較試験であり、2013年10月~2019年3月の期間にカナダと米国、サウジアラビアの44のICUで患者登録が行われた(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、ICUの治療チームによって72時間以上の機械的換気を要すると予測された患者であった。被験者は、ICUで1日2回、L. rhamnosus GG(1×1010コロニー形成単位)を投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、二重盲検下の中央判定によるVAPの発生とされた。VAPは、2日以上の機械的換気の後に、胸部X線上で新たな進行性または持続性の浸潤所見がみられ、次の3項目のうち2つ以上を満たした場合とされた。(1)発熱(中核体温>38℃)または低体温(体温<36℃)、(2)白血球数<3.0×106/Lまたは>10×106/L、(3)膿性痰。感染症、死亡、ICU入室日数などにも差はない 2,650例(平均年齢[SD]59.8[16.5]歳、女性40.1%)が登録され、プロバイオティクス群に1,318例、プラセボ群に1,332例が割り付けられた。平均APACHE IIスコア(ICU入室の指標0~71点、点数が高いほど重症度および死亡リスクが高い)は22.0(SD 7.8)点で、61.2%が強心薬または昇圧薬を投与され、8.1%は腎代替療法を受けていた。82.5%が、無作為化の日に抗菌薬を処方または投与されていた。試験薬の投与期間中央値は9日(IQR:5~15)だった。 VAPの発生率は、プロバイオティクス群が21.9%(289/1,318例)、プラセボ群は21.3%(284/1,332例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.87~1.22、p=0.73、絶対群間差:0.6%、95%CI:-2.5~3.7)。 約20項目の副次アウトカム(ICU関連感染症、下痢、死亡、ICU入室日数など)のうち、統計学的に有意な差がみられたものはなかった。 また、有害事象(無菌部位の培養でのL. rhamnosus単離、非無菌部位の培養での単独または優勢な微生物)は、プロバイオティクス群が15例(1.1%)、プラセボ群は1例(0.1%)で発現した(オッズ比:14.02、95%CI:1.79~109.58、p<0.001)。 著者は、「今回の結果は、機械的換気を要する重篤な病態の患者における、VAPの予防を目的とするL. rhamnosus GGの使用を支持しない。これらの知見は、日常診療や施策に影響を及ぼすもので、重篤な病態へのプロバイオティクスの処方には慎重さが求められることが示唆される」としている。

1566.

ニボルマブとイピリムマブが悪性胸膜中皮腫に引き続き良好な成績(CheckMate743)/ESMO2021

 転移を有する悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブとイピリムマブの併用第III相試験CHeckMate743の3年追跡結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress2021)で発表され、良好な長期ベネフィットが示された。これが転移のある悪性胸膜中腫に対する免疫療法としては、初めての長期成績の報告となる。・対象:転移のある切除不能な未治療の悪性胸膜中皮腫・試験群:ニボルマブ(3mg/m2)2週ごと+イピリムマブ(1mg/m2)6週ごと・対照群:シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド3週ごと6サイクル・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS )[副次評価項目]全奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、盲検化独立評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群18.1ヵ月に対し、化学療法群は14.1ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87)であり、ニボルマブ+イピリムマブ群の優越性は引き続き示された。・組織別にみると、上皮型中皮腫では18.2ヵ月に対し16.7ヵ月(HR:0.85)、非上皮型中皮種では18.1に対し8.8ヵ月(HR:0.48)、といずれもニボルマブ+イピリムマブで良好であった。・その他のサブグループにおいてもすべてニボルマブ+イピリムマブ群で良好であった。・PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月に対し、化学療法群は7.2ヵ月であった(HR:0.92)。・ORRはニボルマブ+イピリムマブ群39.6%に対し、化学療法群は44.0%であった。・奏効期間はニボルマブ+イピリムマブ群11.6ヵ月に対し、化学療法群は6.7ヵ月であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ+イピリムマブ群では80%、化学療法群では92%に発現した。・TRAEのため治療中止となったニボルマブ+イピリムマブ群症例におけるOS中央値は25.4ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群全体に対しても劣っていなかった。 発表者は、3年追跡結果においても、ニボルマブとイピリムマブの併用は、切除不能悪性胸膜中皮腫の標準治療であることを確認できたとしている。

1567.

添付文書改訂:フォシーガにCKD追加/エンレストに高血圧症追加/リンヴォックにJAK阻害薬初の間節症性乾癬追加/リオナに鉄欠乏性貧血追加/ロナセンに小児適応追加【下平博士のDIノート】第83回

フォシーガ:SGLT2阻害薬で初のCKD適応追加<対象薬剤>ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2021年8月<改訂項目>[追加]効能・効果慢性腎臓病(CKD)ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く。<Shimo's eyes>わが国では現在、本剤を含めて6種類のSGLT2阻害薬が発売されています。本剤はイプラグリフロジン(商品名:スーグラ錠25mg/50mg)と共に、2型糖尿病だけでなく1型糖尿病にも適応があります。2020年11月にはSGLT2阻害薬で初めて慢性心不全の適応を取得し、さらに2021年8月にCKDの適応も取得しました。NEJM誌に掲載された国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験(第III相DAPA-CKD試験)の結果によると、本剤はプラセボと比較して、CKD患者の腎機能低下もしくは死亡などの複合リスクを有意に低下させました。これは、心不全の結果(DAPA-HF試験)と同様に、2型糖尿病合併の有無にかかわらず認められています。参考アストラゼネカ 医療関係者向けサイト フォシーガエンレスト:高血圧症の適応追加<対象薬剤>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト錠100mg/200mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)<承認年月>2021年9月<改訂項目>[追加]効能・効果高血圧症[追加]用法・用量通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、最大投与量は1日1回400mgです。なお、本剤の投与により過度な血圧低下の恐れなどがあり、原則、高血圧治療の第一選択薬としては使えません。<Shimo's eyes>2020年6月に承認された「慢性心不全」に対する適応に加えて、今回「高血圧症」が適応追加されました。本剤は、新しいクラスであるARNIに分類され、ネプリライシン(NEP)とARBであるバルサルタンを分子内に持つ薬剤です。海外では2021年6月時点で、高血圧症に係る適応ではロシアと中国で承認、慢性心不全に関連する適応では欧米を含む110以上の国・地域で承認されています。なお、慢性心不全とは異なり、同錠50mgは適応追加の対象外となっています。参考ノバルティスファーマ 医療関係者向けサイト エンレストリンヴォック:JAK阻害薬で初めて間節症性乾癬の適応追加<対象薬剤>ウパダシチニブ水和物(商品名:リンヴォック錠7.5mg/15mg/30mg、製造販売元:アッヴィ合同会社)<承認年月>2021年5月、8月、9月<改訂項目>[追加]効能・効果関節症性乾癬(5月)、アトピー性皮膚炎(8月)[追加]剤形30mg錠(9月)<Shimo's eyes>本剤は2020年1月に関節リウマチの適応を取得し、2021年5月に関節症性乾癬、8月にアトピー性皮膚炎の適応が承認されました。また、同年9月に承認された30mgはアトピー性皮膚炎のみの適応です。関節症性乾癬の治療薬としては、関節炎に対してはNSAIDsが第一選択となり、活動性が高い場合はメトトレキサートなどのDMARDsが追加されます。それでも効果が不十分の場合は生物学的製剤が検討されますが、既存薬では寛解または疾患コントロールの目標と考えられる最小疾患活動性が達成できていない患者も多くいます。今回の適応追加により、機能障害を予防・軽減し、QOLを改善する新たな治療選択肢となることが期待されています。参考アッヴィ 医療関係者向け情報サイト リンヴォックリオナ:鉄欠乏性貧血の適応追加<対象薬剤>クエン酸第二鉄水和物(商品名:リオナ錠250mg、製造販売元:日本たばこ産業)<承認年月>2021年3月<改訂項目>[追加]効能・効果鉄欠乏性貧血[追加]用法・用量通常、成人には、クエン酸第二鉄として1回500mgを1日1回食直後に経口投与する。患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1回500mgを1日2回までとする。<Shimo's eyes>鉄欠乏性貧血は、最も頻度の高い貧血であり、動悸、息切れなどの貧血症状のほか、異食症や易疲労感などが認められます。治療としては、鉄欠乏を来す原因疾患の治療とともに鉄剤の投与が行われます。貧血と高リン血症は慢性腎臓病(CKD)の主要な合併症です。本剤は透析を受けているCKD患者の高リン血症治療薬として2014年に発売され、今回、鉄欠乏性貧血治療薬としても承認されました。本剤は胃腸管で食事に含まれるリン酸塩に結合し、リン酸第二鉄として不溶性の沈殿を形成させることでリンの消化管吸収を抑制するリン吸着剤です。鉄の一部が吸収されるため、ヘモグロビン濃度の上昇につながることから、本剤の投与により貧血の改善も期待できます。参考鳥居薬品 医療関係者向けサイト リオナ錠250mgロナセン:統合失調症治療薬として初の小児適応<対象薬剤>ブロナンセリン(商品名:ロナセン錠2mg/4mg/8mg、ロナセン散2%、製造販売元:大日本住友製薬)<承認年月>2021年3月<改訂項目>[追加]用法・用量小児:通常、小児にはブロナンセリンとして1回2mg、1日2回食後経口投与より開始し、徐々に増量する。維持量として1日8~16mgを2回に分けて食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は16mgを超えないこと。<Shimo's eyes>本剤は統合失調症治療薬として2008年に発売され、2019年には世界で初めて統合失調症を適応としたテープ剤(経皮吸収型製剤)も発売されています。さらに今回、わが国で初めて統合失調症の小児適応が追加されました。統合失調症は18歳より前に発症すると、その後の重症度が高く、成人で発症した場合と比べて神経認知障害がより重度になることがあります。米国児童青年精神医学会の指針では、小児であっても成人と同様に薬物療法と心理社会的療法を併用することが治療の基本とされています。参考大日本住友製薬 医療関係者向けサイト ロナセン

1568.

HER2陽性早期乳がんへの術前トラスツズマブ+ラパチニブ併用、メタ解析で生存延長示す/ESMO2021

 HER2陽性早期乳がんの術前補助療法としての化学療法とトラスツズマブ、ラパチニブの併用については、複数の試験で病理学的完全奏効(pCR)率の増加が確認されているが、生存に対する有効性については結果が一致していない。イタリア・パドヴァ大学のValentina Guarneri氏らは、同併用療法の生存に対するベネフィットについてメタ解析を実施し、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 Guarneri氏らは、4つの無作為化比較試験(CHER-LOB、NSABP-B41、NeoALTTO、CALGB40601)から1,410例を本解析の対象とした。4試験の主な違いとしては、CHER-LOB、NSABP-B41試験では術前にアントラサイクリン系・タキサン系薬剤が使用されており、NeoALTTO、CALGB40601試験では術前にタキサン系、術後にアントラサイクリン系薬剤が使用された。またNeoALTTO試験のみ術後に試験時の薬剤が投与され、その他3試験ではトラスツズマブが投与された。 全試験でトラスツズマブ+ラパチニブ併用群のpCR率の増加がみられたが、生存に関する評価項目の有意な改善がみられたのはCALGB40601試験のみだった。 メタ解析の主な結果は以下のとおり。・無再発生存期間(RFS)は、トラスツズマブ単独と比較してトラスツズマブ+ラパチニブ併用群で改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]0.46~0.85)。また全生存期間も併用群で改善がみられた(HR:0.65、95%CI:0.43~0.98)。・組み合わせたすべての治療において、pCRを達成した患者は、手術時に残存病変を有する患者よりもRFS(HR:0.45、95%CI:0.34~0.60)およびOS(HR:0.32、95%CI:0.22~0.48)が良好だった。・ホルモン受容体陰性の患者では、pCRは再発リスクの65%減少(HR:0.35、95%CI:0.23~0.53)および死亡リスクの73%減少(HR:0.27、95%CI:0.15~0.47)と関連していた。・ホルモン受容体陽性の患者も、pCRを達成した患者はRFSが改善(HR:0.60、95%CI:0.37~0.97)したが、その効果はホルモン受容体陰性の患者よりも小さかった。 Guarneri氏は、pCRが予後予測の強力なマーカーであることが確認され、この傾向はとくにホルモン受容体陰性の患者で強くみられるとした。さらにトラスツズマブ単独の場合と比較して、トラスツズマブ+ラパチニブの併用療法は生存に対するベネフィットを示し、pCRをサロゲートマーカーとして、ラパチニブの早期での使用を考慮すべきではないかとまとめている。

1569.

臨床試験の考え方

すべての医療従事者へ 偏りのないエビデンスの構築と解釈に必読の書!臨床試験の実施においては、いかにバイアスを避け、参加者の人権を守り、得られた成績の信頼性を確保するかという点がとりわけ重要となります。また、この臨床試験を行うときに求められる知識と、EBMの実践にあたって臨床試験論文を読み解く際に求められる知識の多くは共通しています。本書では、このような「考え方」をベースに、臨床試験の科学的裏付けから歴史、実施上の管理や規則までを網羅しており、当該領域で指導的立場を果たしてきた景山 茂氏が、明快にわかりやすく書き下しました。臨床試験は一人の優れた研究者によって成し遂げられるものではなく、患者はもとより、生物統計家、モニター、コーディネーターなどなど多くの関係者の利他的な協力なしには実施すらできません。そのことを筆者は「音楽で言えばオペラのようなもの」と称しています。臨床試験に携わるすべての方、医療の現場にエビデンスを適確に取り入れたい方にお薦めの一冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    臨床試験の考え方定価2,640円(税込)判型A5判頁数120頁発行2021年9月著者景山 茂(東京慈恵会医科大学客員教授/臨床研究適正評価教育機構理事)Amazonでご購入の場合はこちら

1571.

現場で使う「型」を身に付けろ!【医療者のための英語学習法】

「正しい文法・キレイな発音でないと伝わらない」と思っていませんか?こんにちは。山田 悠史と申します。医学部を卒業し、日本各地の病院の総合内科・診療科に勤務し、2015年からは米国ニューヨークのマウントサイナイ大学関連病院で内科医として勤務しています。米国の医療状況のほか、英語の勉強法についても発信しています。今回は、私がこれまでの米国勤務経験で学んできた、医療英語の習得法をお伝えできればと思います。 医療現場で必要となる英語の能力は、これまで高校や大学で学んできた英語のスキルとは大きく異なります。たとえば、日本の英語教育では「文法」の重要性が強調されますが、実際には基本的なルールを守ることさえできれば、コミュニケーションを取るうえで、あまり強く文法や構文を意識し過ぎる必要はありません。これは真面目に学べば学ぶほど強く意識してしまうもので、私自身もどうしても文法が気になってしまい、「文法が間違っていて意味が通じないのではないか」という先入観から、うまく話せないことがよくありました。しかし、本当は自分が気にし過ぎているだけなのです。実際、米国に住んでみてわかったのは、ネイティブを含む周囲の人も案外適当に話をしていることです。これは、「発音」についても言えることです。多種多様な背景を持つ人が共存する米国では、多くの人に何かしらの訛りがあります。自分の訛りを気にしているのは自分だけだったりするかもしれません。実際、医療現場で私たちに求められるのは、医療者としてのスキルや信頼感であり、英語の正しい文法やキレイな発音ではありません。そして、もうひとつ大切なことは、言語でのコミュニケーションがうまくいかなくても、非言語的なコミュニケーションによって伝わることはとても多い、という点です。このように、まずは「正しい文法・キレイな発音でないと伝わらない」という先入観を捨て、不要な不安を取り除くところが医療英語学習スタートの第一歩です。「医療英会話から」のスタートが理にかなう英会話学校では、初級レベルの「日常英会話」クラスから始まり、上級者になると「ビジネス英会話」のクラスに進む、という形式になっていることが多いので、何となく、「日常会話もできないのに、医療現場での会話なんてとんでもなく難しいのだろう」と尻込んでしまうと思います。それも英語学習がおっくうになる原因かもしれません。しかし、実際に難しいのは日常英会話のほうなのです。著者の私は米国の医療現場に立って5年目になりますが、医療現場での会話にあまり難しさは感じなくなってきたものの、日常英会話はいまだに難しいと感じます。これは私に限った話ではなく、ほかの日本人医師に聞いても同様です。なぜなら、私たちは医療のプロフェッショナルですから、使う単語は日本の医療現場と変わりませんし、思考過程も変わりません。初めは慣れない単語に戸惑うかもしれませんが、使われる言葉は限られています。このため、慣れてしまえば、言葉がわからないことはすぐになくなります。また、シチュエーションが助けてくれることも多いでしょう。日本での臨床経験がある医療者であれば、「このシチュエーションではこんな会話をするよね」という記憶があるので、言葉の端々が聞き取れなくても、シチュエーションからの理解がそれを補ってくれるのです。一方で、日常英会話では、そういった経験による助けがありません。話題も政治、経済、スポーツなどさまざまで、無数の知らない単語が出てきます。米国で生まれ育った人なら当たり前に知っているような有名人の名前もわからないことがほとんどです。背景知識がない場合には、言葉の端々まで聞き取れないと、あるいは完全に聞き取れたとしても、何を言っているかさっぱりわからない…、ということになります。そもそも日本語で知らないことは、英語でわかるわけがないのです。こうしたことから、医療者が仕事で英語を使いたいのであれば、「日常英会話学習から」ではなく「医療英会話から」始めるほうが、ハードルが低く理にかなっているのです。現場で使う「型」を身に付ける実際の医療英会話、回診やカンファレンスでのプレゼンテーションは「文章も長いし、専門用語ばかりなので難しそう」と感じられるかもしれませんが、実際には「型」を覚えてしまえば、簡単にできるようになります。英語自体のレベルというより、型に慣れているかどうかのほうが問題なのです。型の習得は、日常会話よりもよっぽど早くできるはずです。実際、私も米国に来て間もないころは、回診での長いプレゼンテーションはできるのに、サブウェイでは満足にサンドイッチが注文できない、という状態でした。少し注意が必要なのは、カンファレンスでのフォーマルなプレゼンテーション回診における新入院患者のプレゼンテーション前日からすでに入院している既知の患者のプレゼンテーションこのそれぞれで、求められる「型」が異なるという点です。このあたりをフレキシブルにできるようにするには、少しスキルや慣れが必要でしょう。例を挙げてみます。Mr. Anderson is a 70-year-old man who presented with chest pain. Chest pain started two hours prior to the presentation. He described his chest pain as pressure-like, persistent, and 7/10 on a pain scale. He denied any nausea or vomiting. Past medical history includes type 2 diabetes and hypertension. Physical Exam was significant for…これはある新入院患者のプレゼンテーションです。みんなが知らない患者ですから、患者の状況を詳細まで伝えることが求められます。これ対して、既知の患者であったらどうでしょう?Mr. Anderson is a 70-year-old man with PMH of type 2 DM and HTN who was admitted for STEMI, now status post PCI to RCA. 既知の患者のプレゼンテーションは、“one liner”や“two liner”で、と言われます。聴衆はすでに前日にhistoryの詳細を聞いて患者の状態を把握しているわけですから、ここでいちいちchest painがどうだったというような詳細を繰り返す必要はなく、1行か2行で済むような端的な説明が求められます。こうした「型」を身に付けてしまえば、あとはそこに各症例の情報を当てはめていくだけです。型に慣れることに加えて、英語独特の慣習になじむ必要もあるでしょう。たとえば、カルテ上ではステント留置の計画を‘Plan is to place a stent’と正確な表現で記しますが、回診での会話では指導医が‘Let’s stent him’や‘Let’s cath him’(心臓カテーテル=cardiac catheterがcathと略されます)などと言ってくるかもしれません。名詞を動詞として使う現代風の表現が好まれているのです。有名な‘Google it’(グーグルを使って調べなさい)と同様の表現です。「言葉は生き物」ですので、それぞれの時代に合う新しい表現を医療の世界でも多く耳にすると思います。こういった表現は英語の教科書や医学書ではどこにも見当たらないもので、現場で慣れていくしかないものだといえるでしょう。臨床留学を目指している方であれば、コロナ禍でハードルが高くなってしまいましたが、現地でのObservership(一定期間、研修先の米国の病院で医療行為を見学する制度)などを活用するのが近道だと思います。あとは仕事をしながら慣れる、に尽きるでしょう。4スキルの現状把握にはTOEFLが便利「留学前にどのくらい英語を勉強しておけばいいですか?」という質問をよく受けますが、必要な勉強量は帰国子女かそうでないか、これまで英語をどの程度勉強してきたか、語彙力はどのくらいあるか、などによってかなり差が出るので、一概に答えを論じるのは難しいのです。とはいえ、やってやり過ぎることはありません。とくに語彙力は多ければ多いほど苦労が減るでしょう。先ほど紹介したように、実際には現場で働いてみないとわからない表現が数多く存在することも事実ですが。多くの非帰国子女の方は、「リーディングが得意で、スピーキングが苦手」という傾向があると思います。学校での英語教育がどうしても読み書きに偏るので、口語コミュニケーションが苦手な傾向が出るのでしょう。そうした意味で英語学習は「話す」「聞く」に重心を置く、という意識が重要です。そして、多くの場合、その上達は英語に触れる量や頻度に依存しています。日本にいる間には、できるだけ毎日英語に触れるようにする、留学のチャンスがあれば積極的に参加して、英語を毎日話すようにする。当たり前ですが、使用頻度が増えれば増えるほど上達のカーブは急になります。英語学習の目標設定や学習計画を立てるのが難しいと感じられる方もいるかもしれませんが、幸い語学力を数値化してくれる試験がいくつか存在します。たとえば、TOEFL。米国での臨床医としての就職活動にTOEFLの点数が求められることはありませんが、依然として、大学院留学などの場面ではTOEFLスコアの提出を求められます。TOEFLの良いところは、「リスニング・リーディング・ライティング・スピーキング」の4スキルが同じ重さで評価される点です。4スキルの現在値を測り、成長曲線を描き、目標設定に用いるという目的には非常に有効です。あなたの4スキルのバランスを見て、得点の低いスキルから集中的にトレーニングする戦略を立てましょう。もちろん医療英語の力は評価できませんが、求められるボキャブラリーが学術的、専門的というところが良い点です。一般的に一流大学の大学院がTOEFL 100点程度を求めるので、たとえば100点を最終目標に勉強を開始し、TOEFLを3ヵ月ごとに受け、初回が60点なら、次の3ヵ月でまず70点を目指そう、といったやり方になるでしょう。そうやって一定期間での目標と成長を知ることで、自分に必要な勉強量を測ることができます。私たち「めどはぶ」では、医療英語学習の「きっかけ」づくりから、個々人の学習の目標設定までをお手伝いし、グローバルに活躍する医療者の輪を広げる取り組みをしています。ご関心をお持ちの方は、ぜひこちらをご覧ください。<執筆者>

1572.

急性低酸素性呼吸不全、超低容量換気は転帰を改善せず/JAMA

 急性低酸素性呼吸不全(AHRF)患者において、従来の低容量人工換気(low-tidal-volume mechanical ventilation)と比較して、体外式二酸化炭素除去装置(ECCO2R)を用いた超低容量人工換気は、90日死亡率を改善しないことが、英国・クイーンズ大学ベルファストのJames J. McNamee氏らによる多施設共同無作為化非盲検実用的臨床試験「REST試験」で示された。機械的人工換気を必要とするAHRFにおいて、従来の低容量換気よりも1回換気量をさらに減少することで、転帰が改善する可能性が考えられていた。JAMA誌2021年9月21日号掲載の報告。1回換気量≦3mL/kgと6mL/kgを比較 研究グループらは、2016年5月~2019年12月の期間に、英国の集中治療部門51施設において、中等度~重度のAHRFで人工換気を受けている患者412例を登録し(予定症例数は1,120例)、少なくとも48時間のECCO2Rを用いて1回換気量を段階的に減少し超低容量(≦3mL/kg予測体重)とする群(ECCO2R群)(202例)、または従来の低容量換気(6mL/kg予測体重)を行う標準治療群(210例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は無作為化後90日の全死因死亡。事前に規定された副次評価項目は28日時点の人工呼吸器離脱期間および有害事象等であった。 本試験は、予定された中間解析に基づき、独立データモニタリング/倫理委員会が無益性および実現性を理由に試験の中止を勧告したことから、2020年2月11日に試験が中止された(追跡調査は2020年3月11日に終了)。90日死亡率は41.5% vs.39.5% 無作為化された412例(平均年齢59歳、女性143例[35%])のうち、405例(98%)が試験を完遂した。 90日死亡率は、ECCO2R群41.5%、標準治療群39.5%であった(リスク比:1.05[95%信頼区間[CI]:0.83~1.33]、群間差:2.0%[95%CI:-7.6%~11.5%]、p=0.68)。人工呼吸器離脱期間は、ECCO2R群のほうが標準治療群より有意に短かった(平均7.1日[95%CI:5.9~8.3]vs.9.2日[7.9~10.4]、平均群間差:-2.1[95%CI:-3.8~-0.3]、p=0.02)。 重篤な有害事象は、ECCO2R群で62例(31%)、標準治療群で18例(9%)報告され、頭蓋内出血が9例(4.5%)vs.0例(0%)、その他の部位の出血が6例(3.0%)vs.1例(0.5%)などであった。また、ECCO2Rに関連した重篤な有害事象は、21例に22件認められた。

1573.

重症化リスクのある外来COVID-19に対し吸入ステロイドであるブデソニドが症状回復期間を3日短縮(解説:田中希宇人氏、山口佳寿博氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではエビデンスの乏しかった2020年初頭からサイトカインストームによる影響がいわれていたことや、COVID-19の重症例のCT所見では気管支拡張を伴うびまん性すりガラス陰影、いわゆるDAD(diffuse alveolar damage)パターンを呈していたことから実臨床ではステロイドによる加療を行っていた。2020年7月に英国から報告された大規模多施設ランダム化オープンラベル試験である『RECOVERY試験』のpreliminary reportが報告されてからCOVID-19の治療として適切にステロイド治療が使用されることとなった。『RECOVERY試験』では、デキサメタゾン6mgを10日間投与した群が標準治療群と比較して試験登録後28日での死亡率を有意に減少(21.6% vs.24.6%)させた(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704. )。とくに人工呼吸管理を要した症例でデキサメタゾン投与群の死亡率が29.0%と、対照群の死亡率40.7%と比較して高い効果を認めた。ただし試験登録時に酸素を必要としなかった群では予後改善効果が認められず、実際の現場では酸素投与が必要な「中等症II」以上のCOVID-19に対して、デキサメタゾン6mgあるいは同力価のステロイド加療を行っている。 また日本感染症学会に「COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例」のケースシリーズが報告されたことから、吸入ステロイドであるシクレソニド(商品名:オルベスコ®)がCOVID-19の肺障害に有効である可能性が期待され、COVID-19に対する吸入ステロイドが話題となった。シクレソニドはin vitroで抗ウイルス薬であるロピナビルと同等以上のウイルス増殖防止効果を示していたことからその効果は期待されていたが、前述のケースシリーズを受けて厚生労働科学研究として本邦で行われたCOVID-19に対するシクレソニド吸入の有効性および安全性を検討した多施設共同第II相試験である『RACCO試験』でその効果は否定的という結果だった(国立国際医療研究センター 吸入ステロイド薬シクレソニドのCOVID-19を対象とした特定臨床研究結果速報について. 2020年12月23日)。本試験は90例の肺炎のない軽症COVID-19症例に対して、シクレソニド吸入群41例と対症療法群48例に割り付け肺炎の増悪率を評価した研究であるが、シクレソニド吸入群の肺炎増悪率が39%であり、対症療法群の19%と比較しリスク差0.20、リスク比2.08と有意差をもってシクレソニド吸入群の肺炎増悪率が高かったと結論付けられた。以降、無症状や軽症のCOVID-19に対するシクレソニド吸入は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版』においても推奨されていない。 その他の吸入ステロイド薬としては、本論評でも取り上げるブデソニド吸入薬(商品名:パルミコート®)のCOVID-19に対する有効性が示唆されている。英国のオックスフォードシャーで行われた多施設共同オープンラベル第II相試験『STOIC試験』では、酸素が不要で入院を必要としない軽症COVID-19症例を対象にブデソニド吸入の効果が検証された(Ramakrishnan S, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:763-772. )。本研究ではper-protocol集団およびITT集団におけるCOVID-19による救急受診や入院、自己申告での症状の回復までの日数、解熱薬が必要な日数などが評価された。結果、ブデソニド吸入群が通常治療群と比較して有意差をもってCOVID-19関連受診を低下(per-protocol集団:1% vs.14%、ITT集団:3% vs.15%)、症状の回復までの日数の短縮(7日vs.8日)、解熱剤が必要な日数の割合の減少(27% vs.50%)を認める結果であった。 本論評で取り上げた英国のオックスフォード大学Yu氏らの論文『PRINCIPLE試験』では、65歳以上あるいは併存症のある50歳以上のCOVID-19疑いの非入院症例4,700例を対象に行われた。結果は吸入ステロイドであるブデソニド吸入の14日間の投与で回復までの期間を通常治療群と比較して2.94日短縮した、とのことであった。本研究は英国のプライマリケア施設で実施され、ブデソニド吸入群への割り付けは2020年11月27日~2021日3月31日に行われた。 4,700例の被検者は通常治療群1,988例、通常治療+ブデソニド吸入群1,073例、通常治療+その他の治療群1,639例にランダムに割り付けられた。ブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入し、最大14日間投与するという治療で、喘息でいう高用量の吸入ステロイド用量で行われた。症状回復までの期間推定値は被検者の自己申告が採用されたが、通常治療群14.7日に対してブデソニド吸入群11.8日と2.94日の短縮効果(ハザード比1.21)を認めている。同時に評価された入院や死亡については通常治療群8.8%、ブデソニド吸入群6.8%と2ポイントの低下を認めたが、優越性閾値を満たさない結果であった。 今までの吸入ステロイドの研究では主に明らかな肺炎のない症例や外来で管理できる症例に限った報告がほとんどであり、前述の『STOIC試験』においても酸素化の保たれている症例が対照となっている。本研究ではCOVID-19の重症化リスクである高齢者や併存症を有する症例が対照となっており、高リスク群に対する効果が示されたことは大変期待できる結果であった考えることができる。ただしCOPDに対する吸入ステロイドは新型コロナウイルスが気道上皮に感染する際に必要となるACE2受容体の発現を減少させ、COVID-19の感染予防に効果を示す(Finney L, et al. J Allergy Clin Immunol. 2021;147:510-519. )ことがいわれており、本研究でもブデソニド吸入群に現喫煙者や過去喫煙者が46%含まれていることや、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)症例が9%含まれていることは差し引いて考える必要がある。そして吸入薬であり「タービュヘイラー」というデバイスを用いてブデソニドを投与する必要がある特性上、呼吸促拍している症例や人工呼吸管理がなされている症例に対してはこの治療が困難であることは言うまでもない。 また心配事として、重症度の高いCOPD症例に対する吸入ステロイドは肺炎のリスクが高まるという報告がある(Vogelmeier C, et al. N Engl J Med. 2011;364:1093-1103.、Crim C, et al. Ann Am Thorac Soc. 2015;12:27-34. )ことである。この論評で取り上げたYu氏らの論文では重篤な有害事象としてブデソニド吸入群で肋骨骨折とアルコールによる膵炎によるものの2例が有害事象として報告されており治療薬とはまったく関係ないものとされ、肺炎リスクの上昇は取り上げられていない。ただもともと吸入ステロイド薬であるブデソニドは、気管支喘息や閉塞性換気障害の程度の強いCOPDや増悪を繰り返すCOPDに使用されうる薬剤であり、ステロイドの煩雑な使用は吸入剤とはいえ呼吸器内科医としては一抹の不安は拭うことができない。 心配事の2つ目として吸入薬の適切な使用やアドヒアランスの面が挙げられる。この『PRINCIPLE試験』で用いられているブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入、最大14日間であるが、症状の乏しいCOVID-19症例に、しかも普段吸入薬を使用していない症例に対しての治療であるので実臨床で治療薬が適切に使用できるかは考えるところがある。COVID-19症例や発熱症例に対して対面で時間をかけて吸入指導を行うことは非現実的なので、紙面やデジタルデバイスでの吸入指導を理解できる症例に治療選択肢は限られることになるであろう。 最後に本研究が評価されて吸入ステロイドであるブデソニドがコロナの治療薬として承認されたとしても、その適正使用に関しては慎重に行うべきであると考える。日本感染症学会に前述のシクレソニド吸入のケースシリーズが報告された際も、一部メディアで大々的に紹介され、一時的に本邦でもCOVID-19の症例や発熱症例に幅広く処方された期間がある。その期間に薬局からシクレソニドがなくなり、以前から喘息の治療で使用していた患者に処方ができないケースが散見されたことは、多くの呼吸器内科医が実臨床で困惑されたはずである。COVID-19の治療選択肢として検討されることは重要であるが、本来吸入ステロイドを処方すべき気管支喘息や増悪を繰り返すCOPD症例に薬剤が行き渡らないことは絶対に避けなければいけない。

1574.

ニボルマブ、小児ホジキンリンパ腫に対する承認取得/BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、小児の再発又は難治性古典的ホジキンリンパ腫に対する承認を取得したことを発表した。 ホジキンリンパ腫はリンパ細網系から生じた細胞の限局性又は播種性の悪性腫瘍であり、国内の年間発症患者数は約1,720人、小児における年間発症患者数は約70人と推定されている。小児ホジキンリンパ腫の一次治療には化学療法等が行われ、再発または治療抵抗性の場合にはさらなる化学療法や抗CD30モノクローナル抗体であるブレンツキシマブ ベドチン等による治療が行われているものの予後は厳しく、ニボルマブは新たな選択肢の一つとして期待される。 今回の承認取得は、国立がん研究センター中央病院で実施された、小児期およびAYA(思春期・若年成人)世代の患者を対象としたニボルマブの有用性を見ることを目的とした医師主導治験(PENGUIN試験)の結果に基づいたもの。本試験は、小児・AYA世代の難治悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫患者のうち、標準的な治療(2種類以上の化学療法後)抵抗性の患者を対象とし、主要評価項目は用量制限毒性相当の有害事象の発生割合、副次評価項目は全生存期間、無増悪生存期間、奏効率等だった。 試験は2017年から開始され、26例の患者(平均年齢12.4歳、11歳以下10/26[38.5%]、12~17歳13/26[50.0%]、18歳以上3/26[11.5%]が組み入れられた。参加者のがん種は横紋筋肉腫が4/26(15.4%)、ユーイング肉腫が3/26(11.5%)、神経芽腫および神経節芽腫が2/26(7.7%)、古典的ホジキンリンパ腫、肺の神経内分泌がんなどが1名ずつだった。結果として、古典的ホジキンリンパ腫の1例において完全奏効が得られ、成人患者での承認時用量と同様の3mg/kgの体重換算用量で確認した結果、有害事象と薬物動態について成人において観察されたものと大きな違いがないことが確認された。 その他のがん種に対するニボルマブの有効性など、本試験の詳細な結果は10月21日から開催されるSIOP 2021(国際小児腫瘍学会)で発表予定となっている。

1575.

反復性片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性~日韓共同第III相試験

 片頭痛の約90%を占める反復性片頭痛に対する予防療法は、現在の利用可能な治療では十分でない。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、慢性および反復性片頭痛に対して効果および忍容性が確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の反復性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌2021年7月号の報告。 反復性片頭痛患者を対象にフレマネズマブのランダム化プラセボ対照試験を実施した。対象患者は、フレマネズマブ月1回投与群(初回、4週目、8週目に225mg)、フレマネズマブ四半期ごと投与群(初回675mg、4週目プラセボ、8週目プラセボ)、プラセボ群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、初回投与後12週間での1ヵ月当たりの頭痛日数のベースラインからの平均変化量とした。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化された患者357例のうち、安全性の分析には356例、全体の分析には354例を含めた。・各群における12週間での1ヵ月当たりの頭痛日数の最小二乗平均変化は以下のとおりであり、フレマネズマブ群は、プラセボ群と比較し、頭痛日数の有意な減少が確認された(各々対プラセボ、p<0.0001)。 ●フレマネズマブ月1回投与群(121例):-4.0±0.4日 ●フレマネズマブ四半期ごと投与群(117例):-4.0±0.4日 ●プラセボ群(116例):-1.0±0.4日・フレマネズマブ群における12週間での1ヵ月当たりの平均頭痛日数が50%以上減少した患者(治療反応患者)の割合は、プラセボ群よりも高かった。また、その他の副次的評価項目でも、同様であった(各々対プラセボ、p<0.001)。【治療反応患者の割合】 ●フレマネズマブ月1回投与群:41.3% ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:45.3% ●プラセボ群:11.2%・フレマネズマブ治療による注射部位の反応は、より頻繁に認められた。 ●フレマネズマブ月1回投与群:25.6% ●フレマネズマブ四半期ごと投与群:29.7% ●プラセボ群:21.4% 著者らは「フレマネズマブは、日本人と韓国人の反復性片頭痛患者の予防的治療において、これまで報告された結果と同様の有効性が認められ、安全性に対する新たな懸念は認められなかった」としている。

1576.

ファイザー製ワクチン、3回目接種後の副反応は?

 米国食品医薬品局(FDA)は9月22日、ファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)の3回目接種(ブースター接種)について、65歳以上や重症化リスクの高い人などを対象に緊急使用許可を承認した1)。この承認に当たり開催されたFDAの諮問委員会でファイザー社が提出した資料2)には、ブースター接種による免疫応答と安全性についてのデータが含まれた。本稿では、安全性データについてまとめる。※なお、9月30日更新の米国疾病予防管理センター(CDC)からの推奨事項では3)、BNT162b2ブースター接種の対象は、65歳以上、18歳以上の介護施設の居住者、基礎疾患のある者、リスクの高い環境で働く者、リスクの高い環境に住む者とされている。対象:phase1試験から12人(65~85歳)、phase2/3試験から306人(18~55歳)試験概要:参加者はBNT162b2 30μgの2回接種の後、phase1試験参加者は約7~9ヵ月後、phase2/3試験参加者は約6ヵ月後にBNT162b2 30μgの3回目接種を受けた。安全性の評価:参加者はブースター接種後1日~7日目まで副反応と解熱鎮痛薬の使用についてe-diaryで報告した。副反応には、接種部位反応(痛み、発赤、腫れ)および全身性反応(発熱、倦怠感、頭痛、悪寒、吐き気、下痢、筋肉痛、関節痛)が含まれる。その他の安全性評価には、各投与後30分以内に発生する副反応、1回目投与からブースター接種後1ヵ月間の非重篤な未確認の副反応、およびブースター接種からデータカットオフ日(phase1:2021年5月13日、phase2/3:2021年6月17日)までの重篤な副反応が含まれた。 dose1(16~55歳、2,899人)、dose2(16~55歳、2,682人)のデータと比較したdose3接種後の副反応報告は以下のとおり。・phase1試験の12人(65~85歳)、phase2/3試験の289人(18~55歳)からe-diaryによる報告が得られた。接種部位反応・痛み:dose1(83.7%)、2(78.3%)、3(18~55歳:83.0%、65~85歳:66.7%)・腫れ:dose1(6.3%)、2(6.8%)、3(18~55歳:8.0%、65~85歳:0.0%)・発赤:dose1(5.4%)、2(5.6%)、3(18~55歳:5.9%、65~85歳:0.0%)全身性反応・倦怠感:dose1(49.4%)、2(61.5%)、3(18~55歳:63.8%、65~85歳:41.7%)・頭痛:dose1(43.5%)、2(54.0%)、3(18~55歳:48.4%、65~85歳:41.7%)・筋肉痛:dose1(22.9%)、2(39.3%)、3(18~55歳:39.1%、65~85歳:33.3%)・悪寒:dose1(16.5%)、2(37.8%)、3(18~55歳:29.1%、65~85歳:16.7%)・関節痛:dose1(11.8%)、2(23.8%)、3(18~55歳:25.3%、65~85歳:16.7%)・下痢:dose1(10.7%)、2(10.0%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)・嘔吐:dose1(1.2%)、2(2.2%)、3(18~55歳:1.7%、65~85歳:0.0%)・発熱(≧38.0℃):dose1(4.1%)、2(16.4%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)・解熱鎮痛薬の使用:dose1(27.8%)、2(45.2%)、3(18~55歳:46.7%、65~85歳:33.3%) ブースター接種から1ヵ月後までのphase2/3試験参加者(306人)において報告された副反応のうち、最も多かったのはリンパ節腫脹(5.2%)で、最初の2回(0.4%)よりも多かった。その他複数の参加者で報告されたのは、悪心(0.7%)、注射部位の痛み(0.7%)、痛み(0.7%)、腰痛(0.7%)、首の痛み(0.7%)、頭痛(0.7%)、 不安感(0.7%)、および接触性皮膚炎(0.7%)だった。 ブースター接種後1ヵ月以上が経過した後のモニタリング期間中に、1件の急性心筋梗塞が重篤な副反応として報告されたが、ファイザー社は因果関係は認められないと評価し、FDAもそれに同意している。その他の重篤な副反応、死亡例は報告されていない。 報告書では、ブースター接種後に報告された副反応の頻度および重症度は、2回目接種後と差がみられなかったとしている。(2021年10月1日 記事内容を一部修正いたしました)

1577.

腹膜播種診療ガイドライン 2021年版

腹膜播種診療に本邦初となる臓器横断的なガイドライン登場!腹膜播種は、腫瘍細胞が腹腔内に散布された形で多数の転移を形成する予後不良の病態で、がん種や地域ごとに様々なアプローチで診断・治療がされており、統一した治療指針が確立されていない。日本腹膜播種研究会では臓器横断的な観点から腹膜播種患者の予後向上を目指し、本邦初となるガイドラインを策定。腹膜播種特有の手技(審査腹腔鏡、腹腔内温熱化学療法、CART)に対するCQ等、臨床で有用な推奨を明示した。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    腹膜播種診療ガイドライン 2021年版定価3,300円(税込)判型B5判頁数B5判・212頁・図数:3枚発行2021年8月編集日本腹膜播種研究会電子版でご購入の場合はこちら

1578.

薬局倒産件数が過去最多!“薬局余り”が現実に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第76回

新型コロナウイルス感染症による“受診控え”の影響が、薬局の「倒産」という数字で表れてきました。2021年1-8月の「調剤薬局」の倒産は22件(前年同期比83.3%増)に達し、2004年の調査開始以来、年間最多だった2017年(17件)を大幅に上回った。22件のうち、コロナ関連倒産は4件(構成比18.1%)で、今後さらにコロナ関連倒産が増加しそうだ。(東京商工リサーチ 2021年9月7日付)倒産とは、ついにそこまで来てしまったか、という感じです。この調査結果の「調剤薬局」とは、いわゆる調剤を主に行う薬局のことで、医薬品小売業やドラッグストアは除かれています。コロナ禍でマスクや消毒液などの購買が伸びたこともあってか、調剤薬局を除く医薬品小売業やドラッグストアの倒産件数はそれぞれ前年同期を下回っていましたので、調剤の売り上げおよび利益の確保が難しくなったということでしょう。これは8月までの結果ですので、残念ながらその後も倒産件数はまだ伸び続けると思われます。では、昨年の調剤医療費はどのくらい変化したのでしょうか。8月末に厚生労働省が2020年度の調剤医療費を発表していますが、調剤医療費は7兆4,987億円(前年度比2.6%減)でした。その内訳は技術料が1兆8,779億円(同5.0%減)、薬剤料が5兆6,058億円(同1.8%減)でした。また、処方箋単価は9,849円(同7.2%増)、処方箋枚数は7億6,135万枚(同9.2%減)でした。ものすごく単純に考えると、調剤薬局の売り上げは単価×処方箋枚数ですから、単価の増加が処方箋枚数の減少をカバーしきれなかったのでしょう。また、調剤という業務の実態を考えると技術料はほぼそのまま利益と考えられますが、その技術料が5%減ったというのも経営的に大打撃です。この20年ほどは、薬剤師が余る、調剤だけを行う薬局が多すぎる、と言われてきましたが、ついに現実になったのだなと思います。受診控えや感染対策による感染症の減少によって患者数が減ったままという流れはまだ続くと予想できます。では、売り上げが好調なマスクや消毒液を売ればいいのかというとそんなに簡単な話ではなく、在宅や地域活動に力を入れて技術料や加算を算定していく、専門薬剤師などの資格を取得して高度医療に挑戦する、もしくはOTC医薬品などを知識も交えて販売できるようにするなど、薬局の大きな方向性を決めなくてはいけないのだと思います。数年後には、処方箋を待っているだけの薬局はなくなっているかもしれません。参考1)「調剤薬局」の倒産が過去最多、コロナで受診控えが響く(2021年1-8月)|東京商工リサーチ(tsr-net.co.jp)2)調剤医療費(電算処理分)の動向~令和2年度版~|厚生労働省(mhlw.go.jp)

1579.

第79回 ACE2をつてに細胞感染しうるコウモリコロナウイルスを発見

フランス・パリのパスツール研究所のウイルス学者Marc Eloit氏が同国と東南アジアの同僚と協力してコウモリ645匹を調べた研究1,2)の甲斐あって新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源探しが大いに前進しました。SARS-CoV-2が見つかってからこれまでにその起源発見を目指して種々の動物が調べられました。昨年にNature誌に掲載された報告によると10年近く前の2013年に中国の雲南省のコウモリから見つかったコロナウイルスRaTG13はゲノム配列がSARS-CoV-2と96.2%同一であり3)、Eloit氏らの今回の研究が報告されるまではコウモリコロナウイルスの中でSARS-CoV-2に最も近縁でした。よく知られているようにヒト細胞のACE2(hACE2)がSARS-CoV-2の受容体であり、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合領域(RBD)の17アミノ酸がACE2と相互作用します。RaTG13のゲノム配列全般はSARS-CoV-2と非常に似通っていますがRaTG13のRBDのそれら17アミノ酸のうちSARS-CoV-2と一致するのはわずか11のみであり、hACE2への親和性はごく僅かです2,4)。新たな研究でEloit氏らはインドシナ半島のラオス北部の洞窟のコウモリ645匹の血液、唾液、糞/肛門、尿を調べ、RaTG13を含む今まで知られているどのウイルスよりもSARS-CoV-2に似ていてSARS-CoV-2と同様にhACE2を介してヒト細胞に侵入しうるコロナウイルス3種を発見しました2)。それらウイルス3種のRBDはRaTG13とは対照的にSARS-CoV-2のそれとアミノ酸配列が1つか2つしか違わず、流行しはじめの頃のSARS-CoV-2株と同様に手際よくhACE2に結合しうることが示されました。また、3種のうちの1つ・BANAL-236のスパイクタンパク質を導入した代理ウイルス(pseudovirus)はhACE2発現ヒト細胞に侵入することができ、その侵入にはhACE2を必要としました。代理ウイルスではなくBANAL-236を細胞培養で増やすことはすでに実現しており、これからはBANAL-236そのものの病原性が動物実験で検討される予定です1)。SARS-CoV-2が研究所の人為的産物ではないかと疑う向きがありますが、hACE2を介してヒト細胞に侵入しうるコロナウイルスがコウモリから今回同定されたことはSARS-CoV-2の自然発生をいっそう物語っています。しかし、まだわからないこともあります。たとえば今回ラオスで見つかったコロナウイルスのスパイクタンパク質にはヒト細胞のプロテアーゼ・フリン(furin)による切断部位(フリン切断部位)がありません。フリン切断部位はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質には存在し、ヒト細胞への侵入をより容易にすることが知られています。フリン切断部位は調べたコウモリの数が不十分で見つからなかったのかもしれませんし、コウモリから別の動物への過渡期、あるいは人間界を巡りはじめて間もない頃にウイルスに備わった可能性もあります2)。東南アジアのコウモリやその他の野生動物のさらなる調査が多数進行中であり1)、それらの取り組みでSARS-CoV-2の起源の疑問がさらに解消していくでしょう。参考1)Closest known relatives of virus behind COVID-19 found in Laos / Nature2)Coronaviruses with a SARS-CoV-2-like receptor-binding domain allowing ACE2-mediated entry into human cells isolated from bats of Indochinese peninsula. Research Square. 2021 Sep 16.3)Zhou P,et al. Nature. 2020 Mar;579:270-273.4)Liu K,et al. Cell 2021 Jun 24;184:3438-3451.

1580.

いよいよ総裁選!医師が希望する次期総裁は?…会員1,000人アンケート

 9月29日、自民党総裁選の開票が行われる。出馬する4氏のうち次期総裁になって欲しい人物や、次期総裁に期待する政策について、会員医師1,000人を対象にアンケートを行った(2021年9月22日実施)。 「出馬を表明した4氏のうち、次の総裁になってほしいのは誰ですか?」との問いには河野 太郎氏(行政改革担当大臣)が54%の支持を集めトップで、続く21%の高市 早苗氏(前総務相)に倍以上の差をつけた。岸田 文雄氏(前政務調査会長)は高市氏と僅差の20%、野田 聖子氏(幹事長代行)は5%と伸び悩んだ。 回答者の勤務先別で見ると、20床以上の病院に勤務する層では20床未満の層よりも河野氏の支持率が高く、高市・岸田両氏の支持率が低かった。年代別で見ると20~30代では河野氏の支持率が60%と高い一方、60代以上は同53%となり、河野氏の代わりに岸田氏の支持率が上がっていた。新型コロナ対策よりも経済政策を優先 「次期総裁について、最も注力すべきとお考えの政策は何ですか?」との問いでは、「経済・財政政策」が43%と最多で、「新型コロナ対策」の33%を10%上回る結果となり、新規感染者数に減少傾向が続き、緊急事態宣言の解除が見込まれる状況において、経済再生への期待が強い状況を反映する結果となった。 「最も注力すべき政策」では、支持する候補別に傾向の違いも顕著となった。河野氏の支持者は「新型コロナ対策」が42%と最多だが、高市氏の支持者は「経済・財政政策」が42%で最多、「外交・安全保障政策」が38%でこれに続き、「新型コロナ対策」は12%に留まった。岸田氏は「経済・財政政策」が52%と4候補の中で唯一過半を占め、野田氏は「新型コロナ対策」が36%で最多ながら、他候補では1%未満の「ジェンダーや多様性」が4%となるなど、強調する政策の違いが現れた。 「新型コロナウイルス感染症対策の中で、最も注力すべきとお考えの政策は何ですか?」との問いには「医療体制の整備、病床確保」「ワクチン・治療薬の開発・確保」がそれぞれ約40%という結果となった。 自由回答には「今回の総裁選は面白い」「初の女性宰相誕生に期待」とのコメントが集まり、久しぶりに白熱する総裁選に注目する声が集まった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『いよいよ総裁選!医師が希望する次期総裁は?…会員1,000人アンケート』

検索結果 合計:4939件 表示位置:1561 - 1580