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英語で「うまくいくよう祈りましょう」は?【1分★医療英語】第17回

第17回 英語で「うまくいくよう祈りましょう」は?I’m worried that something bad will happen to my husband.(夫に何か悪いことが起こるのではないかと心配です)He is a strong man. Let’s keep our fingers crossed.(彼は強い人です。うまくいくよう祈りましょう)《例文1》Let’s keep our fingers crossed and hope for a good outcome.(良いアウトカムが出るように祈りましょう)《例文2》I’m keeping my fingers crossed that the treatment will go well.(治療がうまくいくよう願っています)《解説》“Fingers crossed”は、直訳すれば「指を交差させる」という意味です。“Let’s keep our fingers crossed”も、直訳すれば「私たちの指を交差させ続けましょう」となりますが、これではよく意味がわかりませんね。「指(人差し指と中指)を交差させる」という仕草は、日本ではあまりなじみのないものですが、西洋文化では十字架を象徴するもので、「悪運から守る」という意味を持ちます。“Keep one’s fingers crossed”という表現は、それがそのままイディオムとして定着したもので、「うまくいくように祈る」という意味になります。医療現場では、手術前や大切な治療の前に、医師や家族から患者への声掛けとしてよく使われるフレーズです。また、日常生活やメールの中などでもよく用いられる表現で、大切な試験や大仕事を控えている相手に対して「うまくいきますように」という気持ちを込めて使われます。他の表現としては、“Wish one luck”や“hope for the best”などとも言い換えることができますので、併せて覚えておきましょう。講師紹介

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転職では「選ぶ側」だったのに…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第36回

第36回 転職では「選ぶ側」だったのに…漫画・イラスト:かたぎりもとこ人材紹介会社を通じて転職やアルバイト斡旋を受けた経験のある医師ならば、「完全なる売り手市場」という実態を理解しやすいでしょう。実際、医師が人材紹介会社に登録すれば即時に多くの求人紹介を受けることができます。これは全国10万超ある医療機関の多くで医師が不足しており、常時「求職中の医師」より「医師を採用したい医療機関」のほうが多いために発生する事象です。一方、医業承継の場合、状況は転職とはまったく異なります。医業承継の場合、診療所を売りたい「売り手」と、買いたい「買い手」の二者が存在しますが、その数は売り手が圧倒的に少ないのが実情です。弊社で毎月お問い合わせを頂く売り手と買い手を見ると、その比率は「売り手:1」に対して「買い手:10」。つまり、承継物件を探す買い手が売り手の10倍存在する、ということです。転職では圧倒的な売り手市場なので、医師側は希望条件をコンサルタントに伝えれば多くの求人があったり条件を希望に近づけてもらったりできますが、医業承継の買い手となった場合はそうはいきません。私たちはメールマガジンを通じて会員に承継物件を案内していますが、「自分の理想(希望条件)に当てはまらない」となかなか検討していただけないケースがあります。でも、時間をかけても希望に近い案件がない場合は、その希望が実態とかけ離れている可能性もあります。そうした場合は希望条件の中で妥協できるところを探し、現実と折り合いをつけることが承継成功の近道です。転職時には「選ぶ側」だった医師も、医業承継で「買い手」になれば今度は売り手に「選ばれる側」。そうした意識の転換が必要なのです。

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新型コロナ感染、1年間の精神疾患リスクは?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は、同時期のSARS-CoV-2非感染者および歴史的対照者と比較して、さまざまな精神疾患(不安障害、うつ病性障害、ストレスおよび適応障害、オピオイド使用障害、オピオイド以外の物質使用障害、神経認知機能低下、睡眠障害など)のリスクが高いことが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。著者は、「COVID-19生存者のメンタルヘルス障害に対する取り組みは優先課題である」とまとめている。BMJ誌2022年2月16日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染者と、同時期の非感染者ならびにCOVID-19流行以前の対照者を比較 研究グループは、米国退役軍人省のデータを用い、2020年3月1日~2021年1月15日の間に少なくとも1回、SARS-CoV-2のPCR検査が陽性であった人(16万9,240例)を特定し、このうち陽性確認から30日後に生存していた人(COVID-19群15万3,848例)の転帰を調べ(追跡期間終了日:2021年11月30日)、精神疾患の発症リスクを2つの対照群と比較した。対照群は、COVID-19群と同時期にSARS-CoV-2の感染が確認されていない同時期対照群(563万7,840例)と、COVID-19流行以前の歴史的対照群(585万9,251例)である。 COVID-19と精神疾患発症との関連は、事前に定義した共変量およびアルゴリズムで選択された高次の共変量の両方に関して調整した逆確率重み付け法により、追跡期間中のハザード比(HR)と、各群における1年推定発生率の差に基づく1,000人当たりの1年間の補正後リスク差ならびにその95%信頼区間(CI)を算出した。同時期非感染者と比べ、何らかの精神疾患の診断・処方を受けるリスクが60%増加 COVID-19群では同時期対照群と比較して、不安障害(HR:1.35[95%CI:1.30~1.39]、群間リスク差11.06[95%CI:9.64~12.53])、うつ病性障害(1.39[1.34~1.43]、15.12[13.38~16.91])、ストレスおよび適応障害(1.38[1.34~1.43]、13.29[11.71~14.92])、抗うつ薬使用(1.55[1.50~1.60]、21.59[19.63~23.60])、ベンゾジアゼピン系薬剤使用(1.65[1.58~1.72]、10.46[9.37~11.61])の発生リスクが増加した。また、オピオイド処方(1.76[1.71~1.81]、35.90[33.61~38.25])、オピオイド使用障害(1.34[1.21~1.48]、0.96[0.59~1.37])、その他(オピオイド以外)の物質使用障害(1.20[1.15~1.26]、4.34[3.22~5.51])の発生リスクも増加した。 さらに、COVID-19群では同時期対照群と比較して、神経認知機能低下(HR:1.80[95%CI:1.72~1.89]、群間リスク差:10.75[95%CI:9.65~11.91])、睡眠障害(1.41[1.38~1.45]、23.80[21.65~26.00])の発症リスクも増加し、精神疾患の診断や薬の処方を受けるリスクも増加が認められた(1.60[1.55~1.66]、64.38[58.90~70.01])。 評価したアウトカムのリスクは、入院していない人でも増加していたが、COVID-19急性期に入院した人で最も高かった。 これらの結果は、歴史的対照群との比較においても一致しており、COVID-19で入院していない人vs.季節性インフルエンザで入院していない人、COVID-19で入院した人vs.季節性インフルエンザで入院した人、COVID-19で入院した人vs.その他の原因で入院した人、いずれの比較においても一貫してCOVID-19群で精神疾患の発症リスクが高かった。

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検査前確率+DダイマーでDVT診断向上/BMJ

 深部静脈血栓症(DVT)の診断において、検査前臨床的確率とDダイマーを組み合わせた戦略は、超音波検査の実施回数を減少させつつDVTのリスクが低い患者群を特定できることが、カナダ・マックマスター大学のClive Kearon氏らが実施した前向き試験「Designer D-Dimer Deep vein thrombosis(4D)試験」で示された。これまでのコホート研究で、検査前臨床的確率が低いまたはWellsスコアが低くDダイマー陰性の患者はDVTを除外できることの安全性が示唆されていた。BMJ誌2022年2月15日号掲載の報告。低確率+1,000ng/mL未満、中確率+500ng/mL未満はDVTを除外 研究グループは、カナダの大学病院10施設の救急診療部または外来を受診した、DVTの症状または兆候を有する患者を前向きに登録し、3ヵ月間追跡した。 登録時、Wellsスコアを用いてDVT検査前臨床的確率を低確率(スコア:-2~0)、中確率(1、2)、高確率(3以上)に分類するとともにDダイマーを測定し、低確率でDダイマー1,000ng/mL未満、または中確率でDダイマー500ng/mL未満の患者は追加検査なしでDVTを除外できると判断。その他のすべての患者には超音波検査を実施した。最初の超音波検査が陰性で、低~中確率かつDダイマー>3,000ng/mLまたは高確率かつDダイマー>1,500ng/mLの患者には、1週間後に再度超音波検査を行った。超音波検査でDVTが認められた患者には、抗凝固療法を実施した。 主要評価項目は、3ヵ月時の症候性静脈血栓塞栓症とした。4D診断アルゴリズムで、超音波検査の必要性がほぼ半減 2014年4月~2020年3月の期間に1,508例の登録と解析が行われた。1,508例中173例(11.5%)が今回の4D診断アルゴリズムによりDVTと診断された(168例は来院日の超音波検査で、5例は1週間後の再検査で確認)。DVTと診断されず抗凝固療法を受けなかった1,275例のうち、8例(0.6%、95%信頼区間[CI]:0.3~1.2)が、追跡期間中に静脈血栓塞栓症を発症した。 従来のDVT診断戦略と比較すると、今回のアルゴリズムでは超音波検査の平均回数が患者1例当たり1.36回から0.72回に減少し、差は-0.64回(95%CI:-0.68~-0.60)で、相対的な47%の減少に相当した。 なお著者は、入院患者、抗凝固療法中の患者、妊婦、肺塞栓症疑いの患者などが除外されていることなどを研究の限界として挙げている。

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オンライン?現地?学会参加状況と今年の開催希望/会員医師アンケート

 新型コロナウイルス感染流行の影響で、この2年あまり、学術集会はオンライン・ハイブリッド形式での開催が主流になっている。オンライン化によって医師の学術集会への参加状況は変わったのか。2020年の調査(急増するオンライン学会、参加経験と満足度は?/医師1,000人に聞きました)に引き続き、会員医師1,000人に昨年の参加状況や今年以降に希望する開催形態を聞いた。 「2021年に参加した学術集会の総数」を聞いた質問では、「2」との回答者が最多(22%)だったが、「0」との回答者が13%いる一方で「10以上」との回答者4%いるなどバラツキが見られた。 年代別に見ると、30代は平均2.8回(うちオンライン参加2.4回)、40代は3.3回(同2.7回)、50代は2.8回(同2.6回)と大きな差はなく、かつオンラインで参加した割合が高かったが、60代以上は4.1回(3.0回)と参加数が多く、ほかの世代に比べて現地参加した人の割合が高かった。 「オンライン開催になったことで初参加した学術集会はありますか?」(カッコ内は回答者の標榜科)との質問では、「日本内科学会」(循環器内科、腎臓内科等)、「日本内科学会地方会」(内科)、日本感染症学会(内科、産婦人科等)、「日本禁煙学会」(外科)等の多様な回答が集まった。専門領域の中心となる学会ではないが、サブ領域や従来から関心のあった分野の学会がオンライン化で参加しやすくなったので参加してみた、という流れのようだ。 「現地/オンライン/ハイブリッドのうち、今後数年間における学術集会の開催形式として、希望する形式はどれですか?」という質問には、「ハイブリッド」が60%で圧倒的な支持を集め、「オンライン」は27%、「現地」は13%だった。 各開催形態のメリット・デメリットを聞いた質問においても、ハイブリッド形式は「時間効率がよく、ギリギリまで仕事ができる」「コロナの流行状況によって判断できる」とメリットを挙げる声が多数だった。ハイブリッド形式のデメリットとしては「特にない」という声のほか、「開催費用がかさんで参加料が高くなりそう」「開催者の手間が多くなる」といった、参加者よりも開催者側からの問題点を挙げる声が目立った。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中『オンライン?現地?学会参加状況と今年の開催希望/会員医師アンケート』<アンケート概要>・タイトル:オンライン学会の参加状況について・内容:2021年の学会参加状況と、2022年に向けて希望する開催形式について。・対象:ケアネット会員医師1,000人(勤務先の病床数20床以上)・実施期間:2021年12月20日(月)・調査方法:インターネット

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調剤料がなくなった!組み替えられる薬剤師の仕事【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第84回

2022年2月9日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会が開催され、2022年度調剤報酬改定の個別項目と点数を厚生労働大臣に答申し、改定内容がほぼ決定しました。前回の改定と同様に、かなりスムーズな展開でした。とはいえ、今回は静かながらにかなり大きな変更が見られます。前回は対人業務や調剤後のフォローなど、「こっちの方向に行きますよ!」という方向性を打ち出したという印象でしたが、今回はそれらの内容を具体的に詰めたという印象があります。現状の薬局・薬剤師の業務を精査したうえで、どこを評価するのか、どこは評価しないのかということがはっきりと区別されました。調剤料と薬剤服用歴管理指導料を3つの点数に組み替え今回の改定の目玉は何といっても調剤料です。結論から言うと、これまでの調剤料はなくなります。メスが入るだろうなとは思っていましたが、調剤料自体がなくなるとは思っていなかったので驚きました。しかし、「調剤」という大きな枠組みを分解して、それぞれを評価し直すことが、今後の薬局・薬剤師業務には必要なのだとヒシヒシと感じています。具体的には、従来の調剤料と薬剤服用歴管理指導料が、主に対物業務に関する「薬剤調製料」(一律24点)、主に対人業務や薬歴管理に関する「調剤管理料」(日数に応じて4~60点/剤の4段階)、服薬後のフォローである「服薬管理指導料」(45~59点の4区分)に分かれます。14日処方の場合、改定前だと調剤料は55点ですが、改定後では薬剤調製料24点+調剤管理料28点で52点となり、3点の減算になります。28日処方の場合は、改定前だと調剤料は77点ですが、改定後だと薬剤調製料24点+調剤管理料50点で74点となり、こちらも3点の減算になります。従来の薬剤服用歴管理指導料の服薬指導に当たる服薬管理指導料をきちんと算定することが重要になってくるでしょう。その服薬管理指導料の算定要件は、薬剤服用歴管理指導料とほぼ変わりませんが、「処方された薬剤について薬剤師が必要と認める場合は、患者の薬剤の使用の状況などを継続的かつ的確に把握するとともに、必要な指導などを実施すること」というフォローアップに関する要件が加わっています。調剤後薬剤管理指導加算についても30点から60点に引き上げられましたので、これが薬剤師に期待されている役割なのでしょう。今後のことも見据えて、フォローアップは薬局内の仕組みとしてどんどんやっていきたいですね。地域支援体制加算は調剤基本料に応じて4区分に4年前に新設され、前回の改定で点数が上がった「地域支援体制加算」は従来の一律38点から4つの区分に分かれ、調剤基本料を算定している薬局が対象の地域支援体制加算1(39点)と2(47点)、それ以外の基本料を算定している薬局が対象の3(17点)と4(39点)となります。施設基準の要件については、在宅患者対応の実績件数が12件から24件に増えるなどの変化はありますが、地域支援体制加算4は施設基準の要件9つのうち8つを満たさなければ算定できないというなかなか厳しい要件ですので、圧倒的に調剤基本料1の場合に算定できる地域支援体制加算1と2が優遇されています。門前薬局を多く抱える大規模薬局チェーンでは、調剤基本料3に要件が追加されて引き下げになり、この地域支援体制加算でも引き下げになるというダブルパンチを食らう可能性があり、かなり苦しくなるのではないかと思います。今回は、全体的な印象やインパクトの大きかった改定点をピックアップしました。診療報酬全体で見ると、オンライン診療による初診の恒久化やリフィル処方などいろいろな動きがありますので、折を見て薬局への影響を紹介していきたいと思います。

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英語で「ズキズキする痛み」は?【1分★医療英語】第16回

第16回 英語で「ズキズキする痛み」は?Could you describe your pain?(どのような痛みか教えてもらえますか?)I have a cramping pain in my lower belly.(下腹部にズキズキするような痛みがあります)《例文1》My left leg is cramping right now.(今ちょうど、左足がつっています)《例文2》Do you have menstrual cramps?(月経痛はありますか?)《解説》筋肉が激しく収縮することによって生じるズキズキとした痛みを“cramp”といいます。“menstrual cramp”は月経痛、“muscle cramp”は筋痙攣(筋肉がつること)を意味します。“cramp”は名詞としても動詞としても使える単語で、“cramping pain”は筋肉がつるような痛み、ズキズキするような痛みを意味します。また、“throbbing pain”という表現もあり、これも同様に「ズキズキする痛み」を意味します。その他の痛みを描写する表現としては“sharp”(鋭い)、“dull”(鈍い)、“shooting”(電撃が走るような)、“pounding”(拍動するような)、“burning”(焼けるような)、“pressure-like”(圧迫されるような)といった表現があり、覚えておくと問診に役立ちます。なお、腹部は医学用語では“abdomen”ですが、一般用語としては“belly”や“stomach”を使います。「おなかに痛みはありますか?」は、“Do you have any pain in your belly?”と言うと患者に理解されやすいでしょう。講師紹介

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医師が目指すべきは“サイドFIRE”【医師のためのお金の話】第53回

「FIRE」というキーワードを目にする機会が増えました。ここでいうFIREとは“火”ではなく、“Financial Independence and Retire Early(=経済的自立と早期リタイア)”という考え方です。私がFIREを知ったきっかけは、2018年11月に掲載されたTHE WALL STREET JOURNALの記事でした。それまでも「早期リタイア」という考え方はありましたが、FIREとは少し趣が異なります。早期リタイアは「高収入のエリートサラリーマン」が「若いうちからハードワークして蓄財することで達成するもの」というイメージでした。一方で今話題のFIREは、「ハードワーク」ではなく「節約と資産運用」が両輪となっています。つまり従来の早期リタイアが「攻め」主体だったのに対し、FIREは「守り」を固めて経済的自立を達成しようとしているのです。FIREという概念がこれだけ一般的になった理由は、誰もが実践できる可能性があることでしょう。従来型の早期リタイアができるのは高収入を稼ぎ出す能力を持つ人に限られるため、ほとんどの人にとって現実的な話ではありませんでした。一方、FIREは節約と資産運用による経済的自立なので、ほとんどの人が目指すことができます。このため社会現象になるほどの広がりを見せたのですが、医師にとってもFIREは目指すべきものなのでしょうか?10年以上前に経済的自立を達成した私の視点FIRE達成の定義は、資産運用による経済的自立です。保有資産の運用益だけで生活できる状況になれば、理論上はリタイアが可能になります。ふむふむ、そう聞くとなんだか良さそうな感じがしますね。何を隠そう、私は2009年頃に経済的自立を達成しています。当時は金融資産が1億円の大台に乗ったばかりでしたが、不動産投資も行っていたために賃料収入だけで月間100万円以上が手元に残りました。このためいつでもリタイアできる状態だったのです。2013年には金融資産が融資残債を上回る、実質的無借金の状態となって現在に至っています。そんな状態なのに、なぜ今でも早期リタイアせずに働いているのでしょうか? 周囲の非医療者の知人からはよく不思議がられます。でも、医師であるあなたには、その理由がわかることでしょう。何といっても医師の仕事はとてもやりがいがあって楽しいですから。そして経済的自立を達成した状態で医師を続けることには、信じ難いほど大きな恩恵があります。しんどくなればいつでも辞めることができる…。これほど最強の立場はないと断言できます。医師として働いているとそれなりに嫌なことやストレスもあるものですが、2009年以降の私はこうしたものとはほぼ無縁になりました。もちろん手術等のプレッシャーは今でもありますが、職場環境や人間関係での理不尽さによるストレスは皆無です。ストレスフリーなので業務もサクサクはかどります。するとさらに働きやすくなる、という相乗効果で正のループが発動するのです。医師が目指すべきは「サイドFIRE」多くの人がFIREを目指せるとはいっても、実際に達成することは困難です。このため、資産運用だけでは足りない収入を副業やアルバイト収入で補う「サイドFIRE」が注目されています。これならハードルがさらに下がりそうですね。一方、医師にとってもサイドFIREは現実的だと思います。医師は若いときから比較的高収入なので、やり方次第ではFIRE達成が可能です。それにもかかわらずサイドFIREがお勧めなのはなぜでしょう。それは仕事のやりがいと社会とのつながり維持のためです。医師の資産形成をテーマとしたオンラインサロンのメンバーで、実際に早期リタイアした医師の話を聞く機会がありました。すると、経験者にしかわからないデメリットがありました。仕事をしていないと社会とのつながりが希薄になって、精神的におかしくなることまであるそうです。FIREも良いことずくめではないのです。FIREの概念が生まれた米国では、FIRE実現のためには利回り4%で資産運用をして生活費をまかなう必要がある、といわれています。しかし現在の日本で4%の資産運用は現実的ではありません。仮に2%で運用するとすれば、平均的な年収に当たる600万円を生み出すためには3億円の資産が必要です。オリジナルのFIRE実現には3億円程度の資産が必要、ということです。3億円という資産を築くハードルの高さに、医師の仕事のやりがいを捨てる難しさを加味すると、医師にとってサイドFIREが現実的な目標となることが、さらに理解していただけるでしょう。そしてサイドFIREを実現することで、医師として素晴らしい人生を謳歌できる可能性が高まります。あなたもサイドFIREを目標にして資産形成に取り組み、自由と仕事のやりがいの両取りを目指してください。

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スタッフの本音を引き出すコツ【今日から始める「医師の働き方改革」】第8回

第8回 スタッフの本音を引き出すコツ医師の働き方改革を進めるうえでは、スタッフ同士の信頼感の醸成が重要です。とくに役職者は部下の本音を聞き出すことが求められます。長崎大学病院・高度救命救急センターで働き方改革に取り組んで成果を上げつつある田崎 修氏に、部下との円滑なコミュニケーションのコツを聞きました。―働き方改革のための意見集約はどのように行ったのでしょうか?年次や役職にかかわらず、広く意見を聞きました。年長者が必ずしも「正解」を知っているだけではないので若い先生からも積極的に意見を聞いています。年長者として、若い先生に何ができるのかを常に考えています。具体的には、全員と1対1で話す時間をつくり、聞ける範囲でプライベートなことも聞いています。子供が受験で塾の送り迎えが必要、といった事情を知っていれば、カンファレンスを欠席した場合などもフォローがしやすくなります。新型コロナウイルス感染症の影響で、学会や会議がほとんどオンラインになり、浮いた移動時間を若手医師や学生への教育に充てられるのはありがたいですね。 ◆本音を引き出すためには働き方改革という正解のない取り組みの中では、スタッフからさまざまな意見を集め、その中で最適に近いものを探していく、というプロセスが必要です。長崎大学病院・高度救命救急センターでは以下のようなツールでスタッフの意見を集めました。【会議時に付箋を使う】テーマごとに意見を付箋に書いて貼り出します。話したことと違って書いたものは残るため忖度によって意見が消えることがなく、若手の方や新人が意見を出しやすいのです。また、付箋に書き出すことで、「書かれた意見」と「書いた人」を分離し、意見のみについて議論できる効果もあります。【聞く態度】1対1で話を聞く際には、聞く態度が重要になります。面談で話すときはもちろん、日常業務で話し掛けられたときも、一度手を止めて、相手の目を見て話し、メモを取るなど相手の話に集中します。腕組み、足組み、背もたれに寄り掛かった姿勢は相手に威圧感を与えるため、避けます。ワーク・ライフバランス社資料よりオンラインの場合、とくに表情が伝わりにくいので、上記に加えて大きめにうなずくなどのオーバーリアクションを心掛けましょう。オンライン会議が増える中では、ぜひこうしたコツも意識してみてください。

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中年期女性の血管運動神経症状に関連する不眠症に対するスボレキサントの効果

 神経ペプチドオレキシンは、覚醒促進、温度調節、閉経後に増加、女性に対しエストロゲン療法により正常化することから、血管運動神経症状(VMS)関連の不眠症治療においてオレキシン拮抗作用が重要な役割を果たしていることが示唆されている。米国・ハーバード大学のShadab A. Rahman氏らは、夜間のVMSに関連する慢性不眠症に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの有効性について評価を行った。Sleep誌オンライン版2022年1月11日号の報告。 夜間のVMS、不眠症重症度尺度(ISI)スコア15以上、日誌による入眠後覚醒30分超を有する慢性不眠症の女性患者56例を対象に二重盲検プラセボ対照ランダム化試験を実施した。対象患者は、スボレキサント群(10~20mg)27例またはプラセボ群29例にランダムに割り付けられ、4週間就寝前経口投与を行った。個人内のISIスコアの変化についての分析では、ベースライン時のISIと人種を考慮し、調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均ISIスコアは、スボレキサント群で18.1(95%信頼区間[CI]:16.8~19.4)、プラセボ群で18.3(95%CI:17.2~19.5)であった(p=0.81)。・スボレキサント群のベースラインから4週間後における個人内の平均ISIスコアの変化(-8.1、95%CI:-10.2~-6.0)は、プラセボ群(-5.6、95%CI:-7.4~-3.9)と比較し、減少が認められた(p=0.04)。・スボレキサント群の夜間VMSの頻度(日誌で評価)は、プラセボ群と比較し、有意な減少が認められた(p<0.01)。・入眠後覚醒と総睡眠時間については、スボレキサント群で改善傾向が認められたが、多重比較の調整後、有意な差は認められなかった。・日中VMSおよびその他の睡眠関連アウトカムについては、両群間で差が認められなかった。・スボレキサント群の忍容性は良好であった。 著者らは「スボレキサントは、VMS関連の不眠症に対し、忍容性が高く、効果的な治療薬であり、夜間VMSを低下させる可能性が示唆された。オレキシン受容体の拮抗作用は、VMS関連の慢性不眠症を有する女性に対する新規治療オプションとなりうる可能性がある」としている。

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ペイシェントハラスメントが5年で20%も増!?どんな対策してる?

 身勝手な患者による極悪非道な事件が昨年12月から2件も立て続けに発生したことを受け、CareNet.comでは各施設での患者からの迷惑行為(ペイシェントハラスメント1))対応策についてアンケート調査を実施した。本サイトでは2017年にも同様のアンケートを実施しており、両者の結果を照らし合わせると、なんとこの5年間でペイシェントハラスメントを受けた医師が20%も増加していることがわかった。また、2017年時点でペイシェントハラスメント対応マニュアルやガイドラインを設けている施設は30%超だったが、現在はどうなのだろうか。ペイシェントハラスメントを7割が経験、患者本人やその家族から Q1『ペイシェントハラスメントを受けたことがありますか?』との問いには、勤務医、開業医ともに7割もの人が「はい」と回答。年代別に見ると、40代の中堅医師が最も多く(81%)、次いで30代が72%も経験していた。一方、50代以降になると63~68%とペイシェントハラスメント経験はやや低下傾向だった。 続いて、Q2『誰にハラスメントされましたか?』については、患者本人からが3割、本人以外(家族、知人・友人、会社同僚など)からも3割が受けていた。患者本人からのハラスメントを受けたのは20代(59%)が突出して多かった。 さらにアンケートによると、2件の事件によって4割超の医師が影響を受け、その多くがペイシェントハラスメントの対策やマニュアルの再確認を行ったと回答している。 主なペイシェントハラスメント対応策は以下のとおり。<<ペイシェントハラスメント対応策>>・診察室には患者の目の前に警察の電話番号を掲示してしておく(60代、皮膚科)・ボイスレコーダー(60代、小児科)・紹介状に”大変神経質な方です”と書く(40代、皮膚科)・患者さんとは違う逃げ道[避難通路]を作る(60代、精神科/心療内科)・法人関連にて、各医療機関の診察券を共通化し、非常識な患者さんを当法人は何処でも受診拒否出来るようにしている(50代、内科)・タクティカルペン[護身具としての機能を持つペン]を常備(60代、その他)ペイシェントハラスメントから医療者を守るマニュアル ペイシェントハラスメントをする患者を、モンスターペイシェント(MP)と呼ぶこともある。これについて、医療従事者のためのモンスターペイシェント対策ハンドブック(執筆:滝川 稚也医師、編者:JA徳島厚生連 阿南共栄病院 教育委員会)2)では『病院の一般的なルールに沿って診療行為ができない患者』と定義付けている。なお、本書ではMPを3グループに分類している。1)職業的なMP 交渉を有利に進めるための手段のひとつとして、暴力を一つのリソースとして確信犯的に日常的に使うヒト ※暴力的行為による利益獲得が目的2)メンタルヘルス的な問題を抱えた患者 疾患のため社会的な適応能力が低下し、表現方法のひとつとして、暴力的な行動をとってしまうヒト ※障害・疾患や薬物・飲酒に起因3)ごく普通の患者 ごく普通の患者が、些細な意思疎通の手違いのため、本来はそういうヒトではないのに暴力という手段を使ってしまうヒト さらにこの書籍によると、このような患者対応を「個人の力量に任せるのではなく、組織全体で解決することが重要」ということにも触れていた。ところが、実際のアンケート結果を見ると、Q5『ハラスメントを受けた際、どのように対応しましたか?』(勤務医のみ、Q1で「はい」と回答した350人)では、53%は「上長らに相談」しているが、35%は「独断で対応した」と回答していた。年齢別にみると、50代が最も多く、責任者や部長という立場が影響しているのかもしれない。また、上記回答者の半数以上が外来診察室でペイシェントハラスメントを受けているという結果からも、上級医であったとしても、問題を抱え込まずに周囲のスタッフと連携して対応する必要があるかもしれない。 一方で、開業医の“モンスターペイシェント”対策状況を見ると、患者からのハラスメントを受けている医師が7割もいたにもかかわらず、ペイシェントハラスメント対策のためのマニュアルを用意していたのは、なんと1割強に留まった。また、開業医の4割はペイシェントハラスメントに遭遇した際にすぐに相談できる相手がいないことも明らかになった。 なお、今回の事件を受け、日本在宅医療連合学会では、今年7月に開催される大会において大会長の谷水 正人氏(四国がんセンター院長)の提案により、シンポジウム「在宅医療・ケア関係者の安全確保、訪問員を守る対策」が開催される予定だ。 現時点では、医療者をペイシェントハラスメントから守るマニュアルは各施設で制作するしか手立てがなく、開業医にとってはややお手上げ状態だが、今後、各学会で医療者を守るための方策が進められるかもしれない。患者に寄り添いひたむきな姿勢が評判だった2名の医師への哀悼の意を表するとともに、同様の事件を繰り返さないためにも本アンケートが少しでも現場の医師・医療者のお役に立てることを願って止まない。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中『患者の迷惑行為、勤務医/開業医の対応法は?』<アンケート概要>●タイトル:“モンスターペイシェント”からの迷惑行為、どんな対策してますか?●内容:医療者が巻き込まれる事件が相次いでいることを受け、病院・クリニックが取り組んでいる患者の迷惑行為対策、診療に対する心境の変化などを調査●実施期間:2022年2月1日(火)~2日(水)●調査方法:インターネット●対象:会員医師 1,000人(開業医:500人、勤務医:500人)

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第96回 2022年診療報酬改定の内容決まる(前編)オンライン診療初診から恒久化、リフィル処方導入に日医が苦々しいコメント

中医協総会で診療報酬改定の答申行われるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連休は気心が知れた山仲間数人で、八ヶ岳の東天狗岳に渋の湯、黒百合ヒュッテ経由で登ってきました。前日までの降雪でいい具合の積雪となった八ヶ岳は、待ってました!とばかりに登山者も多く、頂上直下は行列もできるほどでした。とはいえ厳冬期の八ヶ岳、1月には遭難も起こったルートです。極寒の中、程よいスリルと緊張感を味わって無事下山しました。さて、2月9日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2022年度診療報酬改定の答申1)が行われ、項目の詳細と点数が明らかになりました。今回の診療報酬改定、ニュースなどでは不妊治療(体外受精、顕微授精など)の保険適応が着目されていますが、ここではこのコラムでも触れてきた政策的な意味合いが大きいいくつかの項目について、その内容を見てみたいと思います。看護職員の処遇改善でプラス0.2%、不妊治療の保険適用でプラス0.2%今回の診療報酬改定率は、「第92回 改定率で面目保つも「リフィル処方」導入で財務省に“負け”た日医・中川会長」でも書いたように、医師らの人件費などにあたる「本体」部分を0.43%(国費で3,000億円相当)引き上げる内容となりました。このうち、看護職員の処遇改善でプラス0.2%、不妊治療の保険適用でプラス0.2%相当分の財源を使うことになります。一方で、リフィル処方箋の導入・活用促進でマイナス0.1%、小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来でマイナス0.1%の医療費低減を見込みます。結果、実質的な本体の増分はプラス0.23%とされています。なお看護職員の処遇改善は、2022年2~9月までは2021年12月20日に成立した2021年度補正予算で賄い、2022年10月以降に診療報酬で対応することになっています。財源的には0.2%分が不妊治療の適用に充てられ、今改定の岸田政権の目玉的存在として報道されています。現在は一部を除き公的保険外の不妊治療について、「人工授精」「体外受精」「顕微授精」などが新たに保険適用となりました。一般マスコミではこのほか、オンライン診療の見直しやリフィル処方箋の導入などを取り上げるところが目立ちました。時限的・特例的措置終了でオンライン診療初診から恒久化へコロナ禍となって普及・定着が求められてきたオンライン診療。本コラムでは、「第24回 オンライン診療めぐり日医と全面対決か?菅総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと」や「第29回 オンライン診療恒久化の流れに「かかりつけ医」しか打ち出せない日医の限界」などで取り上げて来ました。オンライン診療の初診は、コロナ流行期の時限的・特例的措置として2020年4月から認められています。菅政権では「オンライン診療の恒久化」が掲げられ、岸田政権でもそれを受け継ぐ形で議論が進められて来ました。2021年11月29日、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が、「かかりつけ医による診察を原則として、コロナの流行期に限らず初診からオンライン診療が行える」新指針案を了承、今年1月28日に、その新指針2)を公表しました。新指針は時限的・特例的措置が終了(新しい診療報酬が適用される4月1日)次第、適用される予定です。推進派と慎重派が対立、公益裁定で決定今改定に向けての中医協の議論でも、オンライン診療と推進派(経済界、保険者、オンライン診療システム事業者など)と、慎重派(日本医師会など)の間では激しい対立がありました。推進派は「規制は可能な限り緩めるべき」「点数は対面診療と同一にすることも含め、大幅引き上げを行うべき」などと主張、一方、慎重派は「安全性・有効性を確認しながら徐々に規制を緩めていくべき」「サービスの質が劣るため、対面診療よりも低い点数を維持すべき」などと反論してきました。対立は中医協論議の最終局面になっても収まらず、最終的に公益裁定(中医協委員の支払側と診療側で議論がまとまらないときに、公益側委員が中立・公正な立場で裁定すること)で点数等が決定しました。初診は251点で対面の初診料の約87%具体的な改定内容は、現行のオンライン診療料(71点)を廃止した上で、初診料、再診料(外来診療料)の中で「情報通信機器を用いた場合」として新たに点数を設定するというものです。オンライン診療による初診は251点で対面の初診料(288点)の約87%となり、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下で時限的・特例的に認められている電話・オンライン診療による初診料(214点)から大幅に引き上げられます。オンライン診療を行った場合に評価する14種類の医学管理料についても対面での評価の約87%に設定されます。再診料は73点で、対面診療と同じ点数になります。さらに、現行のオンライン診療料では、「日常的に通院または訪問による対面診療が可能な患者を対象」という距離要件、「オンライン診療の実施割合が1割以下」という実施割合要件が設けられていますが、今改定でこれらが撤廃されます。対面診療を提供できる体制を有することは求めた上で、オンライン診療で対応できない場合に、他の医療機関と連携して対応できる体制を有することなどが算定要件となります。「患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じたりした場合には見直しを要請」と日医・中川会長日本医師会の中川俊男会長は2月9日、診療報酬改定の答申を受けた会見で、「公益委員の裁定による決着となったが、オンライン診療では対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できないことが明示されたことを受けて、対面診療とオンライン診療とでは診療の対価に差を設けることは適当であるとされた」と総括、その上で、「患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じたりした場合には、期中であっても速やかに診療報酬要件の見直しを要請する」と述べたとのことです。オンライン診療は、コロナ禍でそのニーズが高まっているにも関わらず、点数設定や各種規制などによって普及が今ひとつであるのが問題視されています。対応できるのは2021年6月時点で全医療機関の約6%でした。大幅な点数増もあり、今回改定でオンライン診療はこれまで以上に普及しそうですが、推進派の掲げた要望はその一部が実現したに過ぎません。次期改定に向けて規制緩和の議論がまだ続きそうです。リフィル処方は1回29日以内で処方箋料の減算なしこのコラムの第92回で書いたリフィル処方ですが、4月から処方箋様式が下図のように変更され、「リフィル可」「調剤実施回数」の項目が追加、一定期間内、処方箋を反復利用できるようになります。新たな処方箋様式画像を拡大するリフィル処方の対象となるのは、「医師の処方により、薬剤師による服薬管理の下、一定期間内に処方箋の反復利用が可能である患者」で、留意事項として「総使用回数の上限は3回まで」、「1回当たり投薬期間及び総投薬期間については、医師が、患者の病状等を踏まえ、個別に医学的に適切と判断した期間」、「投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできない」などの要件が定められています。リフィル処方箋導入に合わせ、その普及を後押しするため処方箋料も見直されます。現在の処方箋料は、「1処方につき投与期間が30日以上の投薬を行った場合は、所定点数の100分の40の点数」になりますが、この一部が対象外になります。具体的には、「処方箋の複数回(3回までに限る)の使用を可能とする場合で、処方箋の1回の使用による投与期間が29 日以内」の投薬が対象から外れます。日本医師会を刺激しないよう大人しめのコメントの日薬・山本信夫会長日本薬剤師会にとって“悲願”とも言われたリフィル処方の導入。1月18日の都道府県会長協議会で日本薬剤師会の山本 信夫会長は、「薬剤師が担う役割は大きいものがあり、その判断や決断は重たくなる。覚悟を持って取り組まなければならない一大事業になる」と熱く語っていました。ただ、2月10日に開かれた三師会の会見では山本会長は、「どんな形の処方箋かによって職能が変わることはない。これまで同様に、きちんとした対応していくことに変わらない。これまでも薬剤師の職能が発揮されてきたからこそ、医師にも信頼され、地域の方々からの信頼を受けいまの状態がある。これをさらに進めていく」と、薬剤師と医師の関係の重要性を改めて強調するに留めました。リフィル処方導入に一貫して反対してきた日本医師会を刺激しないよう、大人しめのコメントにしたようです。日医・中川会長「リフィル処方箋を出すかどうかは医師が決める」と強調一方、日本医師会の中川 俊男会長は2月9日の答申を受けた会見で、過去10年近くにわたって「骨太の方針」等でその導入を求められてきたことや、今回の診療報酬改定の議論に先立って、2021年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2021」でも、改めてリフィル処方の導入が明記されたことに触れた上で、「日本医師会は症状が安定している慢性疾患の患者さんであっても、定期的に診察を行い疾病管理の質を保つことが重要であると主張してきた。日本では医師法により医師に処方権がある。今回の診療報酬改定では、厚生労働大臣・財務大臣両大臣合意でリフィル処方箋の導入が決まったが、両大臣合意でも『医師の処方により』行うものであることが明示されている」と語り、「リフィル処方箋を出すかどうかは医師が決める」と強調しました。そして、「今回、両大臣合意を踏まえたリフィル処方箋の導入ということになったが、患者さんにとって、適切な治療が行われることについて、十分配慮した運用が現場でなされることを期待している。現行制度において、投薬日数は医師の裁量とされている。ただ、これまでも繰り返し主張しているとおり、長期処方にはリスクがあり、不適切な長期処方には是正が必要と考えている」と長期処方のリスクに言及。「新しい仕組みを導入する際には、患者さんの健康に大いに関わるため、慎重の上にも慎重に、そして丁寧に始めることが望ましい」と語ったとのことです。「先生、私もリフィルで」と言い始めたら医師は抵抗できるか?中川会長のコメントからは、改定率と引き換えに受け入れてしまったリフィル処方に対する苦々しさが伝わって来ます。「処方するのは医師だ」という当たり前のことをあえて強調しなければならないほど、リフィル処方の導入を恐れているのでしょう。今回の診療報酬改定でのリフィル処方の影響は、再診料、処方箋料の減少などで改定率にしてマイナス0.1%と言われています。しかし、以前のコラムでも書いたように、もし国民がその割安感と利便性に気づいたら、それ以上の影響が出てくるかもしれません。日医が今恐れるのは、リフィル処方の仕組みや利用の仕方をテレビや一般マスコミが大々的に取り上げることではないでしょうか。患者がその割安感や利便性に気づき、「先生、私もリフィルで」と言い始めたら、医師は果たして立派な根拠を持って抵抗できるでしょうか。リフィル処方の今後の広がりが気になります。次回は、「かかりつけ医機能」について考えてみたいと思います。(この項続く)参考1)中央社会保険医療協議会 総会/厚生労働省2)オンライン診療の適切な実施に関する指針

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ステロイド配合錠の減薬提案時にヒヤッとした事例【うまくいく!処方提案プラクティス】第45回

 今回は、ステロイド・抗ヒスタミン配合錠を中止する際に注意すべきポイントを紹介します。ステロイドを長期投与中に急激に減量・中止した場合、コルチゾールの需要増大により急性副腎不全に似た離脱症状(withdrawal症候群)が出現する恐れがあります。ステロイド配合錠でも同様に考える必要がありますが、減薬提案時にそれを見落としており、ヒヤッとした事例でした。患者情報69歳、男性(介護施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、うっ滞性皮膚炎服薬管理施設職員処方内容1.クエチアピン錠25mg 1錠 分1 就寝前2.チアプリド錠25mg 6錠 分3 毎食後3.クエチアピン錠12.5mg 3錠 分3 毎食後4.ルパタジン錠10mg 1錠 分1 就寝前5.ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 4錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんの2回目の訪問診療時の血液検査結果はHbA1c:7.5%で、初回介入時よりも上昇していました。医師は糖尿病の基礎疾患こそないものの、長期的なステロイド使用により血糖異常に至っていると判断しました。うっ滞性皮膚炎の掻痒感も安定していたことから、医師と相談し、ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠を中止し、炎症や掻痒感の強い部分に関しては外用ステロイド薬の塗布で対応することになりました。薬局に戻り、同行時の記録を見直していたところ、以前書籍1)で読んだベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠(ベタメタゾン0.25mg/錠)の中止により離脱症状を来した事例を思い出し、今回の急激な中止は問題ではないかと気付きました。ベタメタゾン1mg(4錠分)=プレドニゾロン換算約6mgに相当し、数年間服用していたことから、この患者さんは副腎が萎縮(副腎機能低下)している可能性があります。もしこのまま急に中止した場合、全身倦怠感、脱力感、食思不振、悪心、嘔吐、不穏、頭痛、筋痛、関節痛などのステロイド離脱症候群が生じ、患者さんの負担になる恐れがあると考えました。漸減するにしても、副腎の回復を念頭に置いて時間をかけて慎重に行う必要があるため、トレーシングレポートとしてまとめることとしました。処方提案と経過下記のトレーシングレポート内容を医師に提出し、医師が話せる時間帯に電話で指示を確認することにしました。対象薬剤ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠報告内容本剤の急激な中断で副腎不全による離脱症候群が出現し、全身倦怠感、脱力感、食思不振、悪心、嘔吐、不穏、頭痛、筋痛、関節痛などの症状が生じる懸念があります。過去に別の事例で、長期的に服用していたプレドニゾロン換算5mgの中止に伴う下痢と食思不振が副腎不全の影響であったことを思い出しました。本件の現行量がプレドニゾロン換算約6mgに相当しますので、長期投与していることから副腎萎縮の可能性があります。訪問診療時にお伝えできず申し訳ございません。提案内容副腎不全の懸念から、下記(1)→(3)の段階的な減量はいかがでしょうか。(1)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 2錠 朝食後に減量。2週間様子見。(2)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 1錠 朝食後に減量。2週間様子見。(3)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 中止。その後、トレーシングレポートを確認した医師より電話があり、提案の内容で指示変更の承認を得ることができました。その後の患者さんの様子ですが、リバウンドで皮膚炎の症状が悪化することはなく、また離脱症状の出現もなく無事にベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠を中止することができました。1)矢吹拓. 薬の上手な出し方&やめ方. 医学書院;2020.2)PfizerPRO「ステロイド・プラクティス」

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添付文書改訂:アクテムラが新型コロナ中等症II以上に適応追加/ジャディアンスに慢性心不全追加/エフィエントに脳血管障害の再発抑制追加/アジルバに小児適応追加/レルミナに子宮内膜症の疼痛改善追加【下平博士のDIノート】第92回

アクテムラ点滴静注用:新型コロナ中等症II以上に適応追加<対象薬剤>トシリズマブ(遺伝子組換え)(商品名:アクテムラ点滴静注用80mg/200mg/400mg、製造販売元:中外製薬)<承認年月>2022年1月<改訂項目>[追加]効能・効果SARS-CoV-2による肺炎酸素投与、人工呼吸器管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。[追加]用法・用量通常、成人には、副腎皮質ステロイド薬との併用において、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを点滴静注します。症状が改善しない場合には、初回投与終了から8時間以上の間隔をあけて、同量を1回追加投与できます。<Shimo's eyes>本剤は、国産初の抗体医薬品として、2005年にキャッスルマン病、2008年に関節リウマチの適応を取得して、現在は世界110ヵ国以上で承認されているヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体です。今回、新型コロナによる肺炎の効能が追加されました。これまで中等症II以上の患者に適応を持つ、レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用)、バリシチニブ(同:オルミエント錠)、デキサメタゾン(同:デカドロン)の3製剤に本剤が加わり、新たな治療選択肢となります。新型コロナ患者の一部では、IL-6を含む複数のサイトカインの発現亢進を特徴とする炎症状態により呼吸不全を起こすことが知られており、同剤投与による炎症抑制が期待されています。参考中外製薬 薬剤師向けサイト アクテムラ点滴静注用80mg・200mg・400mgジャディアンス:慢性心不全(HFrEF)の適応追加<対象薬剤>エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス錠10mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)<承認年月>2021年11月<改訂項目>[追加]効能・効果慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。[追加]用法・用量通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与します。<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬としては、すでにダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が慢性心不全の適応を2020年11月に追加しており、本剤は2剤目の薬剤となります。2022年1月現在、添付文書には「左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者(HFrEF)に投与すること」と記載されていますが、HFpEF患者を対象とした第III相試験においても、2021年8月に良好な結果1)が報告されています。なお、本剤25mg錠には慢性心不全の適応はありません。参考エンパグリフロジンの慢性心不全への承認取得/日本ベーリンガーインゲルハイム・日本イーライリリー1)エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJMエフィエント:脳血管障害後の再発抑制が追加<対象薬剤>プラスグレル塩酸塩(商品名:エフィエント錠2.5mg/3.75mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化または小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)[追加]用法・用量通常、成人には、プラスグレルとして3.75mgを1日1回経口投与する。<Shimo's eyes>『脳卒中治療ガイドライン2021』では、非心原性脳梗塞の再発抑制に対しては抗血小板薬(クロピドグレル、アスピリンまたはシロスタゾール)の投与が勧められていますが、本剤の適応は、「大血管アテローム硬化または小血管の閉塞を伴う虚血性脳血管障害後の再発抑制」に限定されました。なお、適応追加の対象は2.5mg錠および3.75mg錠のみです。今回の改訂で、空腹時は食後投与と比較してCmaxが増加するため、空腹時の投与は避けることが望ましい旨の記載が追記されました。用法に「食後投与」は明記されていないので注意しましょう。既存薬のクロピドグレルは、主にCYP2C19によって代謝されるため、遺伝子多型による影響を受けやすいことが懸念されていますが、本剤は、ヒトカルボキシルエステラーゼ、CYP3AおよびCYP2B6などで代謝されて活性体となるプロドラッグであり、遺伝子多型の影響を受けにくいとされています。参考第一三共 医療関係者向けサイト エフィエント錠アジルバ:小児適応追加、新剤型として顆粒剤が登場<対象薬剤>アジルサルタン(商品名:アジルバ顆粒1%、同錠10mg/20mg/40mg、製造販売元:武田薬品工業)<承認年月>2021年9月<改訂項目>[追加]用法・用量<小児>通常、6歳以上の小児には、アジルサルタンとして体重50kg未満の場合は2.5mg、体重50kg以上の場合は5mgを1日1回経口投与から開始します。なお、年齢、体重、症状により適宜増減が可能ですが、1日最大投与量は体重50kg未満の場合は20mg、体重50kg以上の場合は40mgです。<Shimo's eyes>アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるアジルサルタンに、小児に対する用法および用量が追加されました。また、新剤型として顆粒剤も発売されました。顆粒剤は、成人にも小児にも適応がありますが、小児の開始用量である2.5~5mgを投与する際に便利です。参考武田薬品工業 医療関係者向けサイト アジルバレルミナ:子宮内膜症に基づく疼痛改善の適応が追加<対象薬剤>レルゴリクス(商品名:レルミナ錠40mg、製造販売元:あすか製薬)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果子宮内膜症に基づく疼痛の改善<Shimo's eyes>本剤は、経口GnRHアンタゴニストであり、2019年1月に子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善で承認を取得しています。子宮筋腫に続き、子宮内膜症患者を対象とした第III相試験の結果が報告されたことから、今回新たな適応が承認されました。本剤は下垂体のGnRH受容体を阻害することにより、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を阻害します。その結果、エストロゲンおよびプロゲステロンが抑制され、子宮内膜症の主な症状である骨盤痛を改善します。参考あすか製薬 医療関係者向け情報サイト レルミナ錠40mg

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排泄リハビリテーション 理論と臨床 改訂第2版

排泄に関連するすべての領域を網羅した成書 待望の改訂第2版!排泄リハビリテーションとは、排泄障害をもつ人が排泄の自立やQOLの向上を目指すとともに、その人の社会的統合の達成を目的とするものである。これを進めるうえで必要となる解剖や生理、障害を引き起こす疾患などの知識はもとより、治療・ケア、社会環境や医療経済について、多くの最新情報をもとに解説をアップデートした。 改訂第2版にあたって1)新しいガイドラインに基づいた知見を詳述2)排泄にかかわる解剖と生理を分かりやすい図を用いて解説3)排泄障害をもつ人に対し、どのような検査・アセスメントを行い、どのように治療・ケアを行っていけばよいかを詳述4)排泄障害に用いる製品の最新の情報を網羅5)「脳腸相関」「ディスバイオーシス」「仙骨神経刺激療法」「がん終末期の排泄ケア」「多職種連携・病診連携」などを新項目として追加6)改訂しても価格は据え置きの定価9,680円!!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    排泄リハビリテーション 理論と臨床 改訂第2版定価9,680円(税込)判型B5判/並製頁数576頁発行2022年2月編集後藤 百万(独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院)本間 之夫(日本赤十字社医療センター)前田 耕太郎(藤田医科大学病院 国際医療センター)味村 俊樹(自治医科大学)

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第89回 経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?

<先週の動き>1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?厚生労働省は10日、米・ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を特例承認した。日本国内では軽症者向けの経口薬としてモルヌピラビルに次ぐ2剤目となるが、作用機序は異なり、本剤は12歳以上で使用可能。臨床試験において、重症化リスクのある患者に投与した場合、非投与群に比べて入院・死亡リスクが88%減少したと報告されている。発症後5日以内の使用が推奨され、オミクロン株への効果も期待される。パキロビッドパックには5シートのPTP包装が含まれ、1シートに朝・夕服用分としてニルマトレルビル錠150mgが4錠(1回2錠)およびリトナビル錠100mgが2錠(1回1錠)で構成されている。2剤のうち、ニルマトレルビルはSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ阻害薬であり、HIV治療薬としても使用されるリトナビルはSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示さないが、ニルマトレルビルのCYP3Aによる代謝を阻害し、血漿中濃度を維持させる。リトナビルは各薬物代謝酵素やトランスポーターの強力な阻害作用を有するため、パキロビッドパックでは降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬など38成分と食品1つ(セイヨウオトギリソウ)が併用禁忌とされる。しかし、注意すべき薬剤はこれにとどまらず、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しており、当面の参考になるだろう。なお、今月27日までは全国約2,000医療機関での院内処方を原則として提供され、その間で適正使用の推進に向けた情報収集が行われる見込み。配分を希望する対象の医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録し、同センターを通じて配分依頼を行う必要がある。(参考)新型コロナウイルス治療薬の特例承認について(厚労省)厚労省 ファイザーの経口新型コロナ治療薬パキロビッドを特例承認 段階的に医療現場に提供(ミクスonline)ファイザー新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに今年度の診療報酬改定について、処方箋を3回まで繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入が決定した。高血圧や糖尿病などの慢性疾患において、症状が安定した患者が継続服用している場合に対応して、医師の診療なしで薬の受け取りが可能となる。一方で、投与量に限度がある湿布薬や向精神薬などは対象外となる。なお、今回の改定では湿布の処方上限が70枚から63枚に引き下げられた。また、紹介状を持たずに大学病院などを受診した患者に対する特別負担徴収の拡大についても、初診の場合は現在の5,000円から7,000円に、再診の場合は2,500円から3,000円にそれぞれ引き上げる方針となった。実施は10月1日から。対象となる医療機関は、これまでと同様に大学病院などの特定機能病院に加えて、地域医療支援病院のうち200床以上の病院も徴収の対象となる。わが国は国際的に見ても外来受診回数が多いとされるが、高度医療を担う外来にかかりつけ医を持たない患者が受診するのを抑制するとともに、来年度から開始される外来機能報告制度を用いて基幹病院を明確化し、機能分化を促進するのが狙いと考えられる。(参考)リフィルは1回29日以内で処方箋料の減算なし(日経ドラッグインフォメーション)大病院、紹介状なしなら初診7000円 診療報酬改定(日経新聞)外来機能報告制度 高度な外来を担う基幹病院を明確化し機能分化を促進(Beyond Health)3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で2022年度診療報酬改定の答申が行われ、焦点の1つだったオンライン診療の初診料は251点と、特例的対応の214点から対面診療の水準との中間程度まで引き上げられた。同様に、電話など情報通信機器を用いた再診料・外来診療料はいずれも73点とされた。これに伴い、現行のオンライン診療料(月1回71点)は廃止となる。通常診療の初再診料は据え置きとなった。これに対して、日本医師会の中川会長は「対面診療を提供できる体制を有すること」「患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には、他医療機関と連携して対応できる体制を有すること」が堅持されたことに言及。オンライン診療が対面診療と適切に組み合わせた上で実施されるよう注視していくとするとともに、患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じた場合には、期中であっても、すみやかに診療報酬要件の見直しを要請する考えを示した。(参考)オンライン初診料、4月から値上げへ 厚労省「診療報酬」見直し案(朝日新聞)オンライン診療に係る診療報酬について(日本医師会)中医協・22年度診療報酬改定を答申 オンライン診療で患者の受診機会増に期待 営利追及への懸念も(ミクスonline)4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁視覚障害者の就労先を保護するために、健常者向けの「あん摩マッサージ指圧師」の養成施設の新設を認めないとする厚労省の規制について、違憲性を争った訴訟の上告審の判決で、最高裁第2小法廷は7日に、視覚障害者の「自立と社会経済活動への参加を促す積極的な意義がある」として合憲であるとした。視覚障害者の団体は判決後、記者会見において「あん摩マッサージ指圧師の職は自立した社会参加の命綱。それを残すような判断が示されたことに大きな意味がある」と話した。厚労省の統計では、2020年末のあん摩マッサージ指圧師は約11万8,000人、うち視覚障害者は約2万6,000人となっている。(参考)指圧師養成、新設規制は「合憲」 最高裁初判断(日経新聞)指圧師 養成施設の設置規制 最高裁「憲法違反とはいえない」(NHK)5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ厚労省は10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、5~11歳の小児に対する新型コロナワクチン接種について議論を行い、ファイザー製ワクチンは一定の有効性が期待できるとしながらも、最終的に「努力義務」を課さない方針を正式に決めた。小児に対するファイザー製ワクチンの接種について、米国、カナダ、フランス、イスラエル、EUではすべての小児に対して接種を推奨している。わが国では予防接種法上の「臨時接種」に位置付けられ、小児用ワクチンは21日から各自治体に配布される。一方で、以前から努力義務の適応外とされていた妊婦への接種については、有効性や安全性のデータが確認され、妊娠後期に感染すると早産率が高くなったり、重症化リスクが高いとする報告もあることから、新たに努力義務の適用となった。(参考)新型コロナワクチンの接種について(厚労省)小児は努力義務適用外 コロナワクチン、妊婦は対象に―厚労省(時事通信)5~11歳の接種「努力義務の対象外」了承 厚労省分科会(毎日新聞)

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「仲間は多いほうがいい!?」、それ開業ではNGかも!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第35回

第35回 「仲間は多いほうがいい!?」、それ開業ではNGかも!漫画・イラスト:かたぎりもとこ「リスク分散のため」「多く仲間を募ったほうが成功確率は上がる」といった考えから、数人の仲間を募って開業したい、と考える方は多くいます。弊社でもこのような「仲間と開業したい」という医師の支援をしたことがありますが、結論から言えば、こうしたケースで医業承継(開業)の成約までいくのはごく一部で、その多くが途中で検討を中止します。中止の理由として一番大きいのは、開業という一定のリスクを伴う意思決定を行う際に、利害関係者の数が多いと、なかなか合意形成が図れないためです。開業する際には、多くの場合、配偶者や両親、場合によっては義理の両親などの親族からも合意を得る必要があります。自分ひとりで開業する場合であれば、自分だけの関係者の合意があれば話を進められますが、これが仲間と一緒に3人で開業を行うケースになると、関係者も3倍に膨れ上がります。価値観が違う多数の人の意見をまとめるためには、多くの時間と手間、いわゆる「説得コスト」を要します。この説得作業に時間を費やしている間に、「これであれば自分ひとりで開業したほうが早い」と考える人が出てきたり、他の買い手が狙っていた物件を買ってしまったり…、ということが発生して、開業が頓挫するのです。また、無事に開業まで行き着いたケースでも、最終責任者が明確にいれば問題ないのですが、複数の医師が共同代表となってフラットな関係で開業した場合では、しばしば「経営判断に際して、意見がまとまらない」といったことが発生します。「仲間と開業したい」と考えた場合は、そのメリットだけでなく、上記のようなデメリットもよく認識したうえで話を進めることをお勧めします。

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第46回 単相関係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第46回 単相関係数とは?第44回で説明したように、2つの変数xとyについて、両者の間に直線的な関連性が認められるとき「xとyの間には相関関係がある」と言います。その相関関係の程度を表す数値を「単相関係数」(Single correlation coefficient)と言います。また、「ピアソンの積率相関係数」(Pearson's correlation coefficient)とも言われます。上図に示すように、単相関係数が±1に近いときは2つの変数の関係は直線的です。±1から遠ざかるに従って直線的関係は薄れていき、0に近いときは項目間に直線的な関係はまったくありません。つまり、単相関係数の値が±1に近づくと相関関係が強くなり、反対に0に近づくと弱くなります。0の場合のみ相関関係がありません。逆にいうと、わずか0.05でも相関は弱いながらあるのです。したがって、強弱の違いはあるものの、ほとんどのケースにおいて相関関係はみられます。大事なのは強い相関があるかどうかです。ところが、「いくつ以上あれば相関が強い」という統計学的基準はありません。基準は各々の分析者が経験的な判断から決めることになります。下表は一般的な基準です(統計学が定めた絶対基準ではありません)。単相関係数がマイナスの場合は、絶対値(マイナスの符号をとる)でこの表を適用します。たとえば、人口10万人当たりの病床数と1人当たりの入院医療費の単相関係数が+0.71だったとします。絶対値0.71はこの表では「0.5~0.8」の範囲に該当するため、両項目間には関連があると言えます。表 単相関係数の判断基準■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第44回 相関関係とは?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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高度免疫グロブリン、COVID-19入院患者への有効性を認めず/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した健康成人の血漿から精製され、一定量かつ高濃度の抗体を含有するSARS-CoV-2高度免疫グロブリン静注製剤(hIVIG)について、レムデシビルを含む標準治療との併用は、末期臓器不全のないCOVID-19入院患者に対する有効性は認められないことが示された。米国・国立衛生研究所(NIH)の出資により実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin:ITAC試験」の結果を、オーストラリア国立大学のMark N. Polizzotto氏らが報告した。hIVIGによる受動免疫療法は、COVID-19のような感染症の発生に対し、迅速に利用できる特異的治療となる可能性があったが、hIVIGの無作為化臨床試験の実施はこれまで限られていた。Lancet誌2022年2月5日号掲載の報告。標準治療±レムデシビルへのhIVIG併用の有効性と安全性をプラセボ併用と比較 研究グループは、発症後12日以内で、急性終末臓器不全のないCOVID-19入院患者を、レムデシビル(禁忌ではない場合)あるいは他の標準治療に加えて、hIVIGを投与する群か、同量の生理食塩水を投与するプラセボ群のいずれかに、1対1の割合で無作為に割り付けた。追跡期間は28日間である。 有効性の主要評価項目は、7日目における患者の臨床状態で、呼吸状態および肺外合併症を考慮した7段階(症状なしまたはわずか~死亡まで)の順序尺度を評価項目とした。また、安全性の主要評価項目は、7日目までの死亡、重篤な有害事象(臓器不全、重篤な感染症を含む)、およびGrade3/4の有害事象の複合とし、28日目はGrade3/4の有害事象を除く7日目の評価項目について評価した。有効性および安全性の主要評価項目は、症状持続期間、抗スパイク中和抗体の有無、その他のベースライン因子によるサブグループ解析を行うことが事前に規定された。 解析は、適格基準を満たし無作為割り付けされた治験薬のすべてまたは一部を投与された患者を対象とする修正intention-to-treat(mITT)法にて行った。7日時点でhIVIG併用の臨床的な有効性は確認されず 2020年10月8日~2021年2月10日の期間に、11ヵ国63施設で計593例(hIVIG群301例、プラセボ群292例)が登録され、579例がmITT解析に組み込まれた。 hIVIG群はプラセボ群と比較して有効性の主要評価項目を達成しなかった(補正後オッズ比[OR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.77~1.45、p=0.72)。 Infusion reactionの発現率はhIVIG群のほうが高かったが(hIVIG群18.6% vs.プラセボ群9.5%、p=0.002)、忍容性は良好であった。安全性の主要評価項目である7日目の安全性複合評価項目イベントの発現は、hIVIG群(24%)とプラセボ群(25%)で類似していた(OR:0.98、95%CI:0.66~1.46、p=0.91)。 サブグループ解析の結果、有効性の主要評価項目(7日目における患者の臨床状態)については検討したサブグループでORに変化はみられなかったが、安全性の主要評価項目については治療効果の不均一性が認められ、抗体陽性患者ではプラセボ群と比較してhIVIG群でリスクが大きく(OR:2.21、95%CI:1.14~4.29)、抗体陰性患者では逆にhIVIG群でリスクが小さかった(OR:0.51、95%CI:0.29~0.90、相互作用のp=0.001)。

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