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小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022

コロナ感染流行も踏まえた、6年ぶりの改訂版本書は、日本小児呼吸器学会および一般社団法人日本小児感染症学会が構成した委員会により作成され、前版から約6年ぶりの改訂となります。この間、新型コロナウイルス感染症の出現や検査法の発展など、小児呼吸器感染症の診療を取り巻く環境は大きく変化しました。クリニカルクエスチョン(CQ)などを通じて近年の知見にも触れることで、小児の呼吸器感染症を診療する一般医師だけでなく、感染症を専門としない専門性の高い医師(免疫不全担当医、小児神経医)や対象疾患に対して専門性の高い医師(小児感染症科医、小児呼吸器科医、小児集中治療医)の診療にも資する内容となっています。【特長】呼吸器感染症の各疾患を、部位(咽頭・扁桃~肺)、病原体(マイコプラズマ、百日咳、インフルエンザなど)、患者背景(基礎疾患別、院内肺炎など)の各視点から、CQで具体的にまとめています。CQについては、どのような対象集団に対して、どのような方法で成果を調査したのかを、一般医師にもわかりやすいように記載しています。判型をA4判とすることで見やすさの向上を図っています。また、本書購入者向けに電子書籍版(Web閲覧)を用意し、CQ論文の検索は電子書籍版で行う仕組みとすることで、本書のスリム化および検索の利便性を図っています(電子書籍版オリジナルとした約40ページ分のスリム化を実現)。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022定価4,950円(税込)判型A4判頁数174頁発行2022年10月監修石和田 稔彦/新庄 正宜作成小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会

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第135回 大阪急性期・総合医療センターにサイバー攻撃、「身代金受け取った」報道の町立半田病院の二の舞?

約2週間経っても一部の診療が可能になっただけこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球シーズンも完全に終わってしまったこの週末は、原稿書きをしながらネットの“ストーブリーグ”のニュースを読んで時間を潰しました。今ホットなのは、福岡ソフトバンクホークスの千賀 滉大投手、オリックス・バファローズの吉田 正尚選手、阪神タイガースの藤浪 晋太郎投手など、MLBへの挑戦を宣言している日本人選手たちがどこのチームと契約するかのニュースです。そんな中、個人的に気になったのはオリックスの吉田選手です。それなりの高評価を受けているとのことですが、本当でしょうか?私は吉田選手を何度か球場で観たことがあるのですが、バッティングはともかく、守備能力はプロ野球選手の平均以下で、とてもMLBで通用するようには見えませんでした。外野手ですが肩は弱く(だから左翼を守っているのでしょう)、走力も今ひとつで守備範囲も広くありません。かといって、DHのポジションを取れるほどの桁外れのパワーがあるわけでもありません。広島に帰って来た秋山 翔吾選手や、未だ来季の所属チームが決まっていない筒香 嘉智選手の二の舞を踏まないことを願うばかりです。さて今回は、10月31日に大阪の災害拠点病院で起きた電子カルテへのサイバー攻撃の事件について書いてみたいと思います。約2週間経った11月15日現在も、やっと一部の診療が可能になっただけで、全面復旧は来年1月頃になるとのことです。昨年起きた徳島県つるぎ町の町立半田病院のサイバー攻撃の事件を上回りそうな被害状況です。全国の医療機関の経営者は、自院のセキュリティ体制や、外部事業者との契約等について改めて調べ、検討し直す必要がありそうです。患者の電子カルテが閲覧できず、診療報酬の計算もできない状態地方独立行政法人 大阪府立病院機構・大阪急性期・総合医療センター(大阪市住吉区)は10月31日夜に記者会見を開き、ランサムウェア(身代金ウイルス)によるサイバー攻撃を受けたと発表しました。記者会見の席で岩瀬 和裕病院長らが事件の概要を説明しました。それによると、31日午前6時40分ごろ、職員がサーバーの障害に気づき、同8時半ごろ、業者の調査でランサムウェアの攻撃と判明したとのことです。サーバー上の画面には、英語で「全てのファイルは暗号化された。復元したければ、指定のアドレスにメールを送りビットコインで支払え。金額はメールを送る時間で変わる」と、データに対する「身代金」を要求するメッセージが表示されていたそうです。同センターは「金銭を支払う考えはない」として大阪府警に相談、同日夜の記者会見となりました。システム障害によって、患者の電子カルテが閲覧できず、診療報酬の計算もできない状態に陥り、31日は午前9時からの外来診療を中止し、緊急以外の予定手術は延期となりました。この日だけで最大1,000人の患者に影響が出たとのことです。復旧は遅々として進まず、全面復旧は来年1月ころに同センターは地方独立行政法人 大阪府立病院機構が運営する救急医療や災害医療の拠点病院で36診療科865床を有しています。府内の唯一の基幹災害医療センターであり、かつ府内に3ヵ所ある高度救命救急センターの1つでもあります。救急搬入数は府内に16ヵ所ある救命救急センターの中でもトップクラスとのことです。これまでサイバー攻撃を受けた病院と同様、サイバー攻撃からの復旧は2週間たった現在も遅々として進んでいません。各紙報道等によると、同センターは翌日以降も外来診療を含む通常診療を休止、紙のカルテを用いた手術の一部再開は11月4日、新規の手術や予約済みの外来診療が可能となったのは、電子カルテの一部が復旧した11月10日でした。元々カルテなどのデータのバックアップは取っていたとのことですが、閲覧するには攻撃を受けたシステムへの接続が必要で、安全性が確認できるまで閲覧できない状態が続きました。7日までに、攻撃を受ける直前の電子カルテのバックアップが確認でき、参照できる環境が整ったことで、10日から新規の手術や予約済みの外来診療が可能になったとのことです。同センターは一部復旧について、感染を免れた約1,000台(感染したサーバーや端末は約1,300台で全体の6割を占める)の端末のうち20台を使って、サーバーと切り離していたバックアップデータを参照できるようにした、と発表しています。診察内容の書き込みや担当部署への検査の発注などは10日時点でまだできていません。引き続き検査や新規の外来診療は停止しており、CTやMRIなどの画像診断システムも含めた全面復旧は来年1月ころになりそうだとのことです。ウイルスは給食の委託事業者のシステムから侵入そんな中、とても興味深い報道もありました。同センターが7日に開いた記者会見で嶋津 岳士総長が、障害の原因となったコンピューターウイルスは、給食の委託事業者のシステムから侵入した可能性が高い、と発表したのです。各紙報道等によれば、政府から派遣された専門家チームが調査した結果、患者の給食を納入している事業者の調理施設「ベルキッチン」(堺市)から、病院のサーバーに大量の不正なアクセスが確認されました。事業者側のシステムも病院と同様、ランサムウェアの感染が確認されました。脅迫文の内容などから、サイバー犯罪集団「Phobos」による攻撃の可能性があるそうです。事業者のシステムは、配食数や食事内容を管理するもので、病院のネットワークや電子カルテシステムと常時つながっており、病院はこのネットワークを利用し、糖尿病などの患者の食事内容を事業者に伝えていました。ベルキッチンを運営する社会医療法人・生長会の発表では、給食提供のためのシステムに障害が発覚したのは10月31日午前6時頃で、病院の電子カルテシステムの障害が発覚したのはこの約40分後だったそうです。ちなみに、事業者のVPN(仮想プラベートネットワーク)機器は、昨年10月にサイバー攻撃を受けた徳島県つるぎ町立半田病院と同じ製品で、ソフトウェアが更新されていませんでした。一方、病院側は最新のセキュリティ対策ソフトを導入するなどしていました。病院は「事業者のシステムに脆弱性があり、そこからウイルスの侵入を許し、こちらに入ってきた」との見方を示しています。病院自体はセキュリティ対策をしっかりしてきたつもりなのに、ネットワークにつながっていた外部の業者からウイルスが侵入してきたわけで、改めてハッカー対策の難しさが浮き彫りになった形となりました。つるぎ町の町立半田病院のサイバー攻撃から1年目に起きた事件サイバー犯罪集団のランサムウェアを用いた病院攻撃については、本連載でも徳島県つるぎ町の町立半田病院(120床)のケースを昨年のちょうど今頃、「第86回 世界で猛威を振るうランサムウェア、徳島の町立病院を襲う」で書きました。町立半田病院のケースは、2021年10月31日に起きました。病院システムのメインサーバーとバックアップサーバーが、「LockBit2.0」と名乗るロシア拠点の国際的なハッカー集団が仕掛けるランサムウェアに感染。同病院ではこの攻撃で患者約8万5,000人分の電子カルテが閲覧不能となり、急患や新患の受付ができなくなるなど、大きな被害が出ました。最終的にサーバーが復旧し、通常診療に戻ったのは2ヵ月後の2022年1月でした。本連載では、同病院のケースの調査報告書がまとめられた今年6月にも、「第118回 ランサムウェア被害の徳島・半田病院報告書に見る、病院のセキュリティ対策のずさんさ」で、その内容について書き、外部事業者に任せきりになっている医療機関のセキュリティ対策のずさんさを指摘しました。4つの興味深い共通点私はコンピューターウイルスの専門家ではないので細かなことはわかりませんが、素人目線で2つの事件を眺めると、いくつかの興味深い共通点があることがわかります。主な点を列挙してみます。1)どちらも10月31日に感染している。2)一度電子カルテシステムが感染すると紙のカルテに戻り、全面普及には2〜3カ月かかる。3)ソフトウェアの更新を怠っていたVPN経由で攻撃された。4)表向き「身代金は払わない」「身代金は払っていない」としている。1)はまったくの偶然でしょうが、ひょっとしたら何か理由があるかもしれません。皆さん、31日や来年の10月31日は気をつけたほうがいいかもしれません。2)紙のカルテについては、現在、ほとんどの病医院で運用していないと思いますが、こうした事態に備え、紙のカルテの使い方の練習もしておく必要があるかもしれません。東日本大震災の津波の被害の時も、紙のカルテに戻っていました。3)町立半田病院のVPN機器は、過去に認証情報の流出が問題になった米国フォーティネット社のもので、ソフトウェアが更新されていませんでした。報道によれば、大阪のケースでは、患者給食を納入している事業者のVPN機器がその機種で、やはりソフトウェアの更新がされていなかったようです。町立半田病院事件、「身代金受け取った」報道の謎そして、4)はなかなかセンシティブでグレーな問題です。報道等によると、今回の大阪のケースでは、身代金の支払いの「期限」が切れたとみられる1日午後4時過ぎ現在、支払いの指示に関する連絡はなかったそうです。このまま身代金を支払わず、全面復旧が実現すればいいのですが、気になるニュースもあります。10月26日付の共同通信によれば、町立半田病院の事件を巡り、「LockBit2.0」(現在は「LockBit3.0」と名称変更)が「データの『身代金』として3万ドル(約450万円)を受け取った」と主張していることがわかったのです。警察庁などは身代金を払うべきでないとしており、つるぎ町も払わないと表明していましたが、「復元を依頼されたIT業者の関係者が交渉した可能性がある」と共同通信は書いています。ランサムウェアの暗号を解除してデータを復元するのは技術的にほぼ不可能と言われています。だからこそ身代金要求が成立すると言えるでしょう。復元を依頼された IT業者が実際に身代金を払っていたかどうかは不明ですが、一部には、身代金の受け渡しを否定した町立半田病院に代わって、この業者が秘密裏にLockbit側と交渉、同病院(つるぎ町)から支払われた復旧費用(7,000万円だそうです)から身代金を捻出し支払うことで復元プログラムを入手し、電子カルテの復旧を実現したとの情報もあります。「身代金は払わない」と言っていた町立半田病院に内緒でこっそり450万円を支払い、7,000万円の売上を得ていたとしたら、それはそれで「契約違反」なわけでとても大きな問題です。なお、この件については、雑誌『選択』11月号が、「サイバー被害者『救済商法』に要注意 『半田病院事件』驚きの真相」という記事を掲載しています。そう考えると、医療機関のセキュリティ対策は、まず医療機関自身が自発的に取り組むことに加え、信頼に足る(そして暴利を貪らない)IT業者と組むことも重要と言えそうです。なお、厚生労働省は大阪急性期・総合医療センターの事件や、町立半田病院の身代金報道を受け、11月10日に「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策の強化について(注意喚起)」と題する事務連絡を発出しています1)。事務連絡は「医療機関を攻撃対象とする同種攻撃は近年増加傾向にあり、その脅威は日増しに高まっています」として、リスクを低減するための措置、インシデントの早期検知、インシデント発生時の適切な対処・回復、金銭の支払いへの対応などについて注意喚起しています。金銭の支払いについては、「金銭を支払ったからと言って、不正に抜き取られたデータの公開や販売を止めることができたり、暗号化されたデータが必ず復元されたりする保証がない」、「一度、金銭を支払うと、再度、別の攻撃を受け、支払い要求を受ける可能性が増える」といった理由を挙げ、サイバー攻撃をしてきた者の要求に応じて金銭を支払うことは、犯罪組織に対して支援を行うことと同義であり厳に慎むべきである、としています。大阪急性期・総合医療センターはかつて「某毒院」「大阪駆黴院」と呼ばれ、梅毒の検査・治療施設だったそうです。同センターは果たして、現代の病院の“感染症”を克服し、無事身代金を払わずに全面復旧までこぎつけることができるのでしょうか。幸いバックアップが生きているようで、先行きは明るそうですが、「全面復旧は来年1月」と少々先過ぎる点が、実はダメージは深刻なのではないかと気になります。今後の展開を注視したいと思います。参考1)医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策の強化について(注意喚起)/厚生労働省

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067)アトピー性皮膚炎と尋常性乾癬。こんな人が多い、気がする?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第67回 アトピー性皮膚炎と尋常性乾癬。こんな人が多い、気がする?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆普段の診療でもよくみかけるアトピー性皮膚炎の患者さん。それより数は少ないものの、ちらほらと受診される尋常性乾癬の患者さん。それぞれに、こんな雰囲気の人が多いかも? と思う、私の中での個人的な「患者像」を漫画にしてみました。毎月まじめに通ってきてくれるアトピー性皮膚炎の患者さんに多いのが、まじめできっちりしたタイプ。残りの薬の本数を細かく教えてくれたり、皮膚症状についての質問が細かかったりします。血液型占いでいうとA型っぽいイメージ。反対に、尋常性乾癬の患者さんに多いのは、ざっくりとしていておおらか? なタイプ。2~3ヵ月に1度、決まった薬をもらいに来て、腰など塗りにくい場所に皮疹が残っていても、本人はあまり気にしていなかったりします。血液型占いでいうとO型のイメージ。あくまで私が個人的に感じている傾向ですので、もちろん当てはまらない方もいます。ですが、なんとなく、こんな傾向があるように思っています。日々、皮膚科診療に携わる先生方、いかがでしょうか?「好発年齢やそれまでの経過、皮膚症状の特徴などが、こうした傾向に影響しているのかな~」などと、想像してみたりするのでした。それでは、また〜!

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英語で「あなたの趣味は何ですか」は?【1分★医療英語】第54回

第54回 英語で「あなたの趣味は何ですか」は?What do you do for fun?(あなたの趣味は何ですか?)I like watching Anime.(アニメを見るのが好きです)《例文》医師What do you do like to do for fun?(何か好きなことはありますか?)患者I enjoy biking.(自転車に乗ることです)《解説》今回は、「社会生活歴」にフォーカスを当てます。「社会生活歴」は英語でもそのまま“Social History”です。“What do you do for fun / What do you like to do for fun?”という表現で、ざっくりと日本語でいう「好きなことはなんですか」という意味になります。「趣味は何ですか?」というと真っ先に浮かぶのは中学で習った“What is your hobby?”ではないでしょうか。これも直訳した意味は同じになりますが、「“passionate”(熱烈)に打ち込んでいるもの」(楽器やスポーツのような)に限定して聞いている印象があるので、あまり一般的に使われる表現ではありません。今回紹介した“What do you do for fun?”のほうが自然で、日常会話でも頻繁に使われます。答え方としては、“I like〜”または“I enjoy〜”で始めれば無難です。小児科領域でいえば、米国では「HEADSS assessment」という独特の診察項目があり、思春期(11-13歳)になると親を部屋の外に出して子どもと医師が1対1になってHome、Education、Activities、Drugs、Sex、Suicideについて一通り聞くことが推奨されています。そのActivitiesを聞く際に“What do you do for fun?”は必ず使われる表現の一つです。ちなみに、職業を聞く際に使われる一般表現は、“What do you do for living?”(お仕事は何をされていらっしゃるのですか?)です。こちらも学校で習ったであろう“What is your job/occupation?”はかなり直接的な表現で失礼に当たる可能性もあるので、実際に使われる場面はほとんどありません。日本の診察場面では、患者さんが質問に答えた後に医師が反応することはあまりないでしょうが、米国では患者さんが、“I am an accountant.”(会計士です)と答えたら、医師側も“That is amazing!” “Wow, what a nice job!”などと大胆にリアクションをとることも多く、こうした“Social History”のやりとりを通して患者さんとラポートを形成しています。講師紹介

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第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?【統計のそこが知りたい!】

第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?今回は、前回紹介した、「順序尺度の相関関係を把握する解析手法」であるスピアマン順位相関係数(Spearman's rank correlation coefficient)の計算方法について解説します。まず、「タイ(tie)の長さ」を求めます。 タイとは同じ順位ということです。「トップタイ」なら1位が2人いて、その次の人が3位になるのは、とくに説明がなくてもわかると思います。事例として、あるクリニックの患者満足度調査(5段階評価)を行ったところ表1の結果が得られたとしましょう。受付スタッフの対応の満足度について、「やや満足」の「タイの長さ」を求めてみます。表1 患者満足度調査の結果一覧「タイの長さ」は下記(1)、(2)の手順で求めます。(1)まず、受付スタッフの対応の満足度のデータを降順あるいは昇順で並べ替える(2)同順位の個数を数える同じ順位の個数を「タイの長さ」と言い、“t”で表します。たとえば、受付スタッフの対応の満足度「やや満足」にあたる「4」は3個あるので、tは3になります。表2のようにまとめます。表2 受付スタッフ対応満足度のまとめ■スピアマン順位相関係数の計算方法上の計算式を活用し、スピアマン順位相関係数を求めるため、前述の回答で示した(1)、(2)に続いて以下の手順で計算を進めます。(3)t3-tを求め、合計Σ(t3−t)(タイ合計と呼ぶ)を求めます。その結果、受付スタッフの対応の満足度の合計は90であることがわかります。つぎに、(4)順位を求めます。同順位がある場合は、その平均を順位とします。たとえば、やや満足の「4」は7~9位に位置するので、「7、8、9」の平均である8を順位とします。(5)表3の右端の順位1は、No1~10の受付スタッフの対応の満足度の順位です。表3 受付スタッフ対応満足度の一覧画像を拡大する(6)受付スタッフの対応の満足度の順位を「順位1」、クリニック総合満足度の順位を「順位2」とします。また、順位1と順位2の差分を「d」とします。(7)dの2乗を求め、Σd2を求めると表4の通り103となります。表4 2項目の満足度の一覧画像を拡大する(8)ここで、受付スタッフの対応の満足度のタイ合計をx、クリニック総合満足度のタイ合計をyとすると、x=90、y=90(9)計算式に数値を代入し、TxとTyを求めるとTx=(n3-n-x)÷12=(1000-10-90)÷12=75Ty=(n3-n-y)÷12=(1000-10-90)÷12=75※nはサンプルサイズこの事例は同順位があるため、よって、受付スタッフの対応の満足度とクリニック総合満足度のスピアマン順位相関係数は0.3133になることがわかります。単相関係数は2変量に直線的な相関関係があれば適用されますが、そうでない場合やデータの順位しかわかっていない場合もありますよね。そんなときに有効なのがスピアマン順位相関係数なのです!■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第52回 相関比とは?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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PEACEを受講しよう【非専門医のための緩和ケアTips】第39回

第39回 PEACEを受講しよう緩和ケアが広がるにつれて専門誌や書籍も増え、独学でも学びやすくなりました。一方で、緩和ケアは個別性が高かったりコミュニケーションの要素が多かったり、書籍だけでは学べない部分も多くあります。今回は、そうした部分が学べる研修会をご紹介します。今日の質問緩和ケアについて学ぶには、何をすればいいでしょうか? 緩和ケアの連携は地域の実情によって異なる部分も多く、そういった面を学ぶのは本だけでは難しく感じます。ご質問いただいた方の着眼点は素晴らしいですね。おっしゃるとおり、地域の医療機関同士の連携や、在宅療養への移行などの際には地域ごとに事情が異なります。こうした座学では学びにくい領域って、どのように学べばよいのでしょうか? そんな方にお薦めなのが、今回ご紹介する「PEACE」という研修会です。PEACEの正式名称は、「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)」と長いため、PEACEの略称や単に「緩和ケア研修会」と呼ばれています。この研修会は、厚生労働省の委託事業として日本緩和医療学会と日本サイコオンコロジー学会がコンテンツを作成しています。事前学習としてE-learningを受講し、グループワークを含む集合研修に1日参加する、というのがその内容。対象は「がん等の診療に携わるすべての医師・歯科医師、緩和ケアに従事するその他の医療従事者」です。E-learning緩和ケア概論/全人的苦痛と包括的アセスメント/がん疼痛/呼吸困難/消化器症状/気持ちのつらさ/せん妄/コミュニケーション/療養場所の選択と地域連携/ACP、看取りのケア、家族・遺族のケアが必修コンテンツです。集合研修コミュニケーションのロールプレイ/全人的苦痛や症状緩和に関するケーススタディ/療養場所の選択と地域連携に関するケーススタディ/患者を支える仕組みについてのレクチャーといった、一人では学びにくいテーマのグループワークが中心です。がん拠点病院では、年に1回以上PEACEを開催することが施設要件になっているため、どの地域でも受講可能です。開催スケジュールは各都道府県の担当部署のサイトに公開されており、「都道府県名+緩和ケア講習会」などで検索すれば出てきます。地域の基幹病院の緩和ケアに関わる医療者と一緒に学ぶことは、連携構築の上での大きな機会となるでしょう。新型コロナの影響で集合研修をオンラインで開催するケースもあり、遠方でも参加しやすくなっています。少し注意が必要なのが内容の「レベル感」です。あくまでも基本的な緩和ケアについて学ぶ研修会であり、受講者の多くが初期研修医を含めた若手です。ベテランの方からすると少し簡単に感じられるかもしれません。一人では学べないことを学び、顔の見える関係をつくるための貴重な機会として、ぜひPEACEを活用してみてください。今回のTips今回のTips地域のがん拠点病院で開催されているPEACEを受講してみましょう。PEACEプロジェクトホームページ/日本緩和医療学会

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EVARデバイス監視モデルがリスク評価に有望/BMJ

 腹部大動脈瘤の血管内修復術(EVAR)後の長期にわたるデバイス(グラフト)監視に、リンク登録した医療費支払請求データを活用したところ、個々のデバイスの再手術リスクを特定したことが示された。米国・ダートマス-ヒッチコック・メディカルセンターのPhilip Goodney氏らによる検討の結果で、著者は「デバイスメーカーおよび規制当局は、リンク登録データソースを活用すれば、心血管手術後の実臨床における長期アウトカムの積極的なモニタリングが可能である」と述べ、今回の検討結果が、将来的なデバイス監視モデルになりうることを示唆した。BMJ誌2022年10月25日号掲載の報告。EVAR治療使用の4種のデバイスを長期監視、再手術・破裂を評価 研究グループは、実臨床での大動脈エンドグラフトの長期アウトカム(腹部大動脈瘤の再手術およびlate破裂)の評価に、リンク登録医療費支払いデータを用いることを検討する観察サーベイランス試験を行った。米国メディケア医療費とリンクするVascular Quality Initiative Registryを設定(2003~18年、282施設が参加)し検討した。 被験者は2万489例で、EVAR治療では4種のデバイスが使用されており、8,310例(40.6%)がExcluder(Gore製)、6,606例(32.2%)がEndurant(Medtronic製)、3,281例(16.0%)がZenith(Cook Medical製)、2,292例(11.2%)がAFX(Endologix製)を使用した。このうち、AFXは2014年後期に改良が行われたため、同群は2群に分類し(初期AFX群942例、後期AFX群1,350例)、他のデバイス群と比較した。検討には傾向マッチングCoxモデルが用いられた。 主要評価項目は、EVAR後の腹部大動脈瘤の再手術および破裂の発生。全患者(100%)が、登録または医療費支払ベースもしくは両者を介したアウトカム評価を完遂した。当局の警告発出は2017年、対して開発モデルのリスク特定時期は2013年半ば 被験者の年齢中央値は76歳(四分位範囲[IQR]:70~82)、男性が80.0%(1万6,386/2万489例)、追跡期間中央値は2.3年(IQR:0.9~4.1)であった。 5年粗再手術率は、初期AFX群がその他デバイス群と比べて有意に高率であった。初期AFX群27.0%(95%信頼区間[CI]:23.7~30.6)に対し、Excluder群14.9%(13.7~16.2)、Endurant群19.5%(18.1~21.1)、Zenith群16.7%(15.0~18.6)であった。 初期AFXでEVARを受けた患者の再手術リスクは、傾向マッチングCoxモデルでのその他デバイスとの比較において有意に高率であり(ハザード比[HR]:1.61、95%CI:1.29~2.02)、外科医レベル変数(臨床でのAFXグラフト使用が33%超)を用いた解析でも同様であった(1.75、1.19~2.59)。 リンク登録された医療費支払請求データが、早期AFXデバイスの再手術リスク増大を特定したのは2013年半ばであり、2017年に米国で最初の規制当局の警告が発出されるよりかなり前であった。

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英語で「経口摂取ができている」は?【1分★医療英語】第53回

第53回 英語で「経口摂取ができている」は?The patient is tolerating oral intake very well. (患者さんは、経口摂取がしっかりできています)Okay, then let’s plan to discharge him next week.(良いですね。それでは、来週退院の予定としましょう)《例文1》I will advance his diet because he is tolerating puree diet.(ペースト食が摂取できているので、食上げします)《例文2》Let’s make her NPO(nothing per os)for now as she is not tolerating PO.(経口摂取ができていないので、いったん絶食にしておきましょう)《解説》「経口摂取ができている」を直訳しようとすると、“The patient can eat~”というようなフレーズが思い浮かぶかもしれません。確かにそれでも意味は通じるでしょうが、医療現場では今回紹介した“tolerate”という動詞をよく用います。この“tolerate”を使うことで、「これまで食事が摂れていなかった人」、あるいは「食事摂取が十分できるかどうかわからなかった人」が、「十分耐性がある」「十分にその力がある」ことを確認した、というニュアンスを出すことができます。“tolerate”という動詞は「耐える」という訳が充てられることが多く、知らないと咄嗟に使うのは難しいかもしれませんが、実はよく医療現場で用いられる言葉で、患者さんの回復過程に相性の良い動詞です。他にも、「可能な範囲で食上げをしてください」という場合に、“Please advance his diet as tolerated.”というフレーズを使うことがあります。“tolerate”を“as”と一緒に用いて“as tolerated”とすると「できる範囲で」「可能な範囲で」といった意味合いを持たせることができます。医師が看護師さんへの指示を出す場合などによく用いる表現ですので、これもあわせて覚えてしまいましょう。講師紹介

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ガイドライン改訂ーアナフィラキシーによる悲劇をなくそう

 アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1.定義と診断基準」が変更になった。そこで、この改訂における背景やアナフィラキシー対応における院内での注意点についてAnaphylaxis対策委員会の委員長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)に話を聞いた。アナフィラキシーガイドライン2022で診断基準が改訂 改訂となったアナフィラキシーガイドライン2022の診断基準では、世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約された。アナフィラキシーの定義は『重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある』としている。海老澤氏は「基準はまず皮膚症状の有無で区分されており皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状のいずれかを発症していれば診断可能」と説明した。◆診断基準[アナフィラキシーガイドライン2022 p.2]※詳細はガイドライン参照 以下の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高い。1.皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、掻痒または紅潮、口唇・下・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間で)発症した場合。さらに、A~Cのうち少なくとも1つを伴う。  A. 気道/呼吸:呼吸不全(呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など)  B. 循環器:血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁など)  C. その他:重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など[特に食物以外のアレルゲンへの曝露後])2.典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に(数分~数時間で)発症した場合。 また、アナフィラキシーガイドライン2022はさまざまな国内の研究結果やWAOアナフィラキシーガイダンス2020に基づいて作成されているが、これについて「国内でもアナフィラキシーに関する疫学的な調査が進み、ようやくアナフィラキシーガイドライン2022に反映させることができた」と、前回よりも国内でのアナフィラキシーの誘因に関する調査や症例解析が進んだことを強調した。アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた変更点 今回の取材にて、同氏は「アナフィラキシーに対し、アドレナリン筋注を第一選択にする」ことを強く訴えた。その理由の一つとして、「2015年10月1日~2017年9月30日の2年間に医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書476件のうち、アナフィラキシーが死因となる事例が12件もあった。これらの誘因はすべて注射剤で、造影剤、抗生物質、筋弛緩剤などだった。アドレナリン筋注による治療を迅速に行っていれば死亡を防げた可能性が高いにもかかわらず、このような事例が未だに存在する」と、アドレナリン筋注が必要な事例へ適切に行われていないことに警鐘を鳴らした。 ではなぜ、アナフィラキシーに対しアドレナリン筋注が適切に行われないのか? これについて「アドレナリンと聞くと心肺蘇生に用いるイメージが固定化されている医師が一定数いる。また、アドレナリン筋注を経験したことがない医師の場合は最初に抗ヒスタミン薬やステロイドを用いて経過を見ようとする」と述べ、「アドレナリン筋注をプレホスピタルケアとして患者本人や学校の教員ですら投与していることを考えれば、診断が明確でさえあれば躊躇する必要はない」と話した。 アナフィラキシーを生じやすい造影剤や静脈注射、輸血の場合、症状出現までの時間はおよそ5~10分で時間的猶予はない。上記に述べたような症状が出現した場合には、原因を速やかに排除(投与の中止)しアドレナリン筋注を行った上で集中治療の専門家に委ねる必要がある。 また、アドレナリン筋注と並行して行う処置として併せて読んでおきたいのが“補液”の項目(p.24)である。「これまでは初期対応に力を入れて作成していたが、今回はアナフィラキシーの治療に関しても委員より盛り込むことの提案があった」と話した。 以下にはWAOガイダンスでも述べられ、アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた点を抜粋する。◆治療 2.薬物治療:第一選択薬(アドレナリン)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.21]・心疾患、コントロール不良の高血圧、大動脈瘤などの既往を有する患者、合併症の多い高齢患者では、アドレナリン投与によるベネフィットと潜在的有害事象のリスクのバランスをとる必要があるものの、アナフィラキシー治療におけるアドレナリン使用の絶対禁忌疾患は存在しない1)・アドレナリンを使用しない場合でもアナフィラキシーの症状として急性冠症候群(狭心症、心筋梗塞、不整脈)をきたすことがある、アドレナリンの使用は、既知または疑いのある心血管疾患患者のアナフィラキシー治療においてもその使用は禁忌とされない1)・経静脈投与は心停止もしくは心停止に近い状態では必要であるが、それ以外では不整脈、高血圧などの有害作用を起こす可能性があるので、推奨されない2)◆治療 2.薬物治療:第二選択薬(アドレナリン以外)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.23]・H1およびH2抗ヒスタミン薬は皮膚症状を緩和するが、その他の症状への効果は確認されていない3) このほか、同氏は「食物アレルギーの集積調査が進み、国内でも落花生やクルミなどのナッツ類や果物がソバや甲殻類よりも誘因として高い割合を示すことが明らかになった」と話した。さらに「病歴の聞き取りが不十分なことで起こるNSAIDs不耐症への鎮痛薬処方なども問題になっている」と指摘した。 なお、アナフィラキシーガイドライン2022は小児から成人までのアナフィラキシー患者に対する診断・治療・管理のレベル向上と、患者の生活の質の改善を目的にすべての医師向けに作成されている。日本アレルギー学会のWebからPDFが無料でダウンロードできるのでさまざまな場面でのアナフィラキシー対策に役立てて欲しい。

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ドイツでの医療活動カード【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第19回

ドイツで医師免許試験に受かった直後のことです。地区の医師会から電話がかかってきて、「大事な用事があるから医師会に直接きてください」と伝えられました。「やっぱりあの試験は無効だから、合格取り消し」と言われるんじゃないかと思い、一応ドイツ語で「弁護士を立てるから、続きは法廷で会おう」といったセリフを丸暗記して臨みました。緊張しながら医師会に到着すると奥の部屋に通され、事務のおばさまに早口でまくしたてられました。ドイツ語についていけない自分に気付いて、何度も繰り返し話をしてくれたのですが、とにかく「倒れている患者がいたら、絶対に無視するな」と言った内容でした。ドイツでは、医師は倒れている人を無視したら法律で罰せられます。たとえば飛行場に向かっている最中でも無視したらダメ。そのときは「飛行機は諦めてね」とのことでした。そして、「その際は、このカードをみせてから医療活動を行いなさい」とカードを渡されました。これがドイツでの「医療活動許可証」です。カードをよくみると、ドイツ語だけでなくEU内の各種言語で説明が書かれていました。カードを手にしたときは、なんかこう…「ああ、俺はEUの医者になったんだな」と感動しました。ドイツで医療活動を行うまでは本当に辛い道のりでした。次回からドイツ医師免許対策について、思い出しながら書いていきたいと思います。

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製薬医学入門-くすりの価値最大化をめざして-

医薬品開発の創薬から市販後、終売までを網羅的に解説日本における医薬品開発の創薬から市販後、ライフサイクルマネジメントまでを網羅的に解説した書。 創薬、安全性監視、関連法規の3部構成で、創薬については、治験や市販後調査について解説し、安全性監視についてはファーマコビジランスの解説およびそれを担うメディカルアフェアーズの役割と、求められるコンピテンシーについて詳述。関連法規では法整備や規制が推し進められてきた経緯や、製薬業界で働くうえで理解すべき法律および製薬協コードなどについて解説。製薬に携わる医療従事者必読の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    製薬医学入門-くすりの価値最大化をめざして-定価5,940円(税込)判型B5判変型頁数224頁発行2022年8月編集内田 一郎(大阪大学大学院薬学研究科)芹生 卓(APCER Life Sciences/京都薬科大学)

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慢性期統合失調症における抗精神病薬の減量・中止後の再発リスク因子~メタ解析

 精神疾患の再発予防に抗精神病薬による維持療法は有効だが、高用量での使用はリカバリーを妨げる可能性がある。そのため、慢性期統合失調症患者では、抗精神病薬の減量または中止が検討される。オランダ・Mental Health Services RivierduinenのJan P. A. M. Bogers氏らは、抗精神病薬の減量に伴う精神疾患再発のリスク因子を特定しようと試みた。その結果、慢性期統合失調症患者における抗精神病薬の減量では、精神疾患再発のリスク因子を考慮する必要があること、抗精神病薬の比較的急激な減量を行う場合でもハロペリドール換算3~5mgを最低用量とすることなどが報告された。また、著者らは、抗精神病薬の漸減は投与中止に伴う再発を回避し、必要最低用量を達成できる可能性があるとしている。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年10月6日号の報告。 1950年1月~2021年1月に公表された研究をMEDLINE、EMBASE、PsycINFOよりシステマティックに検索し、慢性期統合失調症患者における抗精神病薬の減量または中止後の再発率を検討したランダム化比較試験(RCT)のレビューを行った。再発の潜在的なリスク因子を特定するため、人年当たりの相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、47件のRCT(患者コホート54件、1,746人年)を含めた。・維持療法と比較した場合、抗精神病薬の減量・中止の精神疾患再発RRは2.3人年(95%CI:1.9~2.8)であった。・RRを上昇させる因子は以下のとおりであった。 ●抗精神病薬の中止 ●ハロペリドール換算量3~5mg未満への減量 ●比較的急激な減量(10週未満)・RRは、抗精神病薬の経口剤を減量した場合よりも長時間作用型注射剤のほうが低かった。・精神疾患再発リスクの上昇に関連するその他の因子は、若年、フォローアップ期間の短さであった。

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家族性大腸腺腫症への新たな治療戦略を日本で開発(J-FAPP Study III)

 京都府立医科大学の石川 秀樹氏らが大腸がんの超高危険群である家族性大腸腺腫症(FAP)患者に対し、予防のための内視鏡的積極的摘除術を世界で初めて開発したことがEndoscopy誌2022年10月10日号オンライン版に掲載された。家族性大腸腺腫症におけるIDPは結腸直腸がんを予防する有用な手段 結腸全摘は、家族性大腸腺腫症の標準治療であるにもかかわらず、若年層の家族性大腸腺腫症患者が手術を延期したり、手術を拒否したりするケースもあるという。そこで、同氏らは家族性大腸腺腫症 にきわめて多発する大腸ポリープのダウンステージングを目的とする積極的な内視鏡的摘除(IDP)の有効性を評価することを目的に内視鏡的積極的摘除術の多施設共同介入試験(J-FAPP Study III)を実施した。本試験は22施設で実施した単群介入研究で、参加者は2012年11月24日~2014年9月25日の間に登録。結腸切除術を受けていない、または結腸切除術を受けたが大腸が10cm以上残っている16歳以上で、100個のポリープがあった家族性大腸腺腫症患者を対象とした。IDPでは、10mm以上の大腸ポリープが摘除され、続いて5mm以上のポリープが摘除された。主要評価項目は5年間の介入期間中の結腸切除術の有無、副次評価項目は内視鏡による穿孔/出血、結腸直腸がんの発生、内視鏡治療に適さない腫瘍の発生、結腸直腸がんおよびその他の原因による死亡だった。 家族性大腸腺腫症に対しての積極的な内視鏡的摘除の有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・ 222例が本試験に適格だった。そのうち結腸切除を受けていない(非結腸切除群)のは166例、回腸直腸吻合を伴う結腸亜全摘術(IRA)を受けたのは46例、部分的な結腸切除術を受けていたのは10例だった。・介入期間中、5例(2.3%、95%信頼区間[CI]:0.74~5.18)が結腸切除術を受け、そのうち4例は非結腸切除群から、1例は結腸切除後群だった。・介入期間中、3例(1.4%)が死亡したが、死因から家族性大腸腺腫症との因果関係はないと推測された。・結腸切除なしの5年間の介入期間の完了は、結腸切除を受けていない者では150/166例(90.4%、95%CI:84.8~94.4)、以前に結腸切除を受けた者では47/56例(83.9%、95 %CI:71.7~92.4)だった。 本研究を踏まえ研究者らは、軽~中等度の家族性大腸腺腫症患者におけるIDPは、結腸切除術を実施せずに結腸直腸がんを予防する有用な手段となる可能性があることを示した。ただし、IDPの長期間の有効性はまだ不明であり多くの患者が結腸切除術を実施する必要がある可能性は残されたままである。

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従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付け【心不全診療Up to Date】第2回

第2回 従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付けKey Pointsエビデンスが確立している心不全薬物治療をしっかり理解しよう!1)生命予後改善薬を導入、増量する努力が十分にされているか?2)うっ血が十分に解除されているか?3)服薬アドヒアランスの良好な維持のための努力が十分にされているか?はじめに心不全はあらゆる疾患の中で最も再入院率が高く1)、入院回数が多いほど予後不良といわれている2)。また5年生存率はがんと同等との報告もあり3)、それらをできる限り抑制するためには、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)の実施が極めて重要となる4)。なぜこれから紹介する薬剤がGDMTの一員になることができたのか、その根拠までさかのぼり、現時点での慢性心不全の至適薬物療法についてまとめていきたい。なお、現在あるGDMTに対するエビデンスはすべて収縮能が低下した心不全Heart Failure with reduced Ejection Fraction(HFrEF:LVEF<40%)に対するものであり、本稿では基本的にはHFrEFについてのエビデンスをまとめる。 従来の薬剤治療のエビデンスを整理!第1回で記載したとおり、慢性心不全に対する投薬は大きく2つに分類される。1)生命予後改善のための治療レニン–アンジオテンシン–アルドステロン系(RAAS)阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)、β遮断薬、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)、SGLT2阻害薬、ベルイシグアト、イバブラジン2)症状改善のための治療利尿薬、利水剤(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)その他、併存疾患(高血圧、冠動脈疾患、心房細動など)に対する治療やリスクファクター管理なども重要であるが、今回は上記の2つについて詳しく解説していく。1. RAAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)1)ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬≧ARB)【適応】ACE阻害薬のHFrEF患者に対する生命予後および心血管イベント改善効果は、1980年代後半に報告されたCONSENSUSをはじめ、SOLVDなどの大規模臨床試験の結果により、証明されている5,6)。無症候性のHFrEF患者に対しても心不全入院を抑制し、生命予後改善効果があることが証明されており7)、症状の有無に関わらず、すべてのHFrEF患者に投与されるべき薬剤である。ARBについては、ACE阻害薬に対する優位性はない8–11)。ブラジキニンを増加させないため、空咳がなく、ACE阻害薬に忍容性のない症例では、プラセボに対して予後改善効果があることが報告されており12)、そのような症例には適応となる。【目標用量】ATLAS試験で高用量のACE阻害薬の方が低用量より心不全再入院を有意に減らすということが報告され(死亡率は改善しない)13)、ARBについても、HEAAL試験で同様のことが示された14)。では、腎機能障害などの副作用で最大用量にしたくてもできない症例の予後は、最大用量にできた群と比較してどうなのか。高齢化が進み続けている実臨床ではそのような状況に遭遇することが多い。ACE阻害薬についてはそれに対する答えを示した論文があり、その2群間において、死亡率に有意差は認めず、心不全再入院等も有意差を認めなかった15)。つまり、最大”許容”用量を投与すれば、その用量に関係なく心血管イベントに差はないということである。【注意点】ACE阻害薬には腎排泄性のものが多く、慢性腎臓病患者では注意が必要である。ACE阻害薬/ARB投与開始後のクレアチニン値の上昇率が大きければ大きいほど、段階的に末期腎不全・心筋梗塞・心不全といった心腎イベントや死亡のリスクが増加する傾向が認められるという報告もあり、腎機能を意識してフォローすることが重要である16)。なお、ACE阻害薬とARBの併用については、心不全入院抑制効果を報告した研究もあるが9,17)、生存率を改善することなく、腎機能障害などを増加させることが報告されており11,18)、お勧めしない。2)MR拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)【適応】スピロノラクトンは、RALES試験にて重症心不全に対する予後改善効果(死亡・心不全入院減少)が示された19)。エプレレノンは、心筋梗塞後の重症心不全に対する予後改善効果が示され20)、またACE阻害薬/ARBとβ遮断薬が85%以上に投与されている比較的軽症の慢性心不全に対しても予後改善効果が認められた21)。以上より、ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬を最大許容用量投与するも心不全症状が残るすべてのHFrEF患者に対して投与が推奨されている。【目標用量】上記の結果より、スピロノラクトンは50mg、エプレレノンも50mgが目標用量とされているが、用量依存的な効果があるかについては証明されていない。なお、EMPHASIS-HF試験のプロトコールに、具体的なエプレレノンの投与方法が記載されているので、参照されたい21)。【注意点】高カリウム血症には最大限の注意が必要であり、RALES試験の結果発表後、スピロノラクトンの処方率が急激に増加し、高カリウム血症による合併症および死亡も増加したという報告もあるくらいである22)。血清K値と腎機能は定期的に確認すべきである。ただ近年新たな高カリウム血症改善薬(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)が発売されたこともあり、過度に高カリウム血症を恐れる必要はなく、できる限り予後改善薬を継続する姿勢が重要と考えられる。またRALES試験でスピロノラクトンは女性化乳房あるいは乳房痛が10%の男性に認められ19)、実臨床でも経験されている先生は多いかと思う。その場合は、エプレレノンへ変更するとよい(鉱質コルチコイド受容体に選択性が高いのでそのような副作用はない)。2. β遮断薬(カルベジロール、ビソプロロール)【適応】β遮断薬はWaagsteinらが1975年に著効例7例を報告して以来(その時は誰も信用しなかった)、20年の時を経て、U.S. Carvedilol、MERIT−HF、CIBIS II、COPERNICUSなどの大規模臨床試験の結果が次々と報告され、30~40%の死亡リスク減少率を示し、重症度や症状の有無によらずすべての慢性心不全での有効性が確立された薬剤である23–26)。日本で処方できるエビデンスのある薬剤は、カルベジロールとビソプロロールだけである。カルベジロールとビソプロロールを比較した研究もあるが、死亡率に有意差は認めなかった27)。なお、慢性心不全治療時のACE阻害薬とβ遮断薬どちらの先行投与でも差はないとされている28)。【目標用量】用量依存的に予後改善効果があると考えられており、日本人ではカルベジロールであれば20mg29)、ビソプロロールであれば5mgが目標用量とされているが、海外ではカルベジロールであれば、1mg/kgまで増量することが推奨されている。【注意点】うっ血が十分に解除されていない状況で通常量を投与すると心不全の状態がかえって悪化することがあるため、少量から開始すべきである。そして、心不全の増悪や徐脈の出現等に注意しつつ、1~2週間ごとに漸増していく。心不全が悪化すれば、まずは利尿薬で対応する。反応乏しければβ遮断薬を減量し、状態を立て直す。また徐脈などの副作用を認めても、中止するのではなく、少量でも可能な限り投与を継続することが重要である。3. 利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、トルバプタン)、利水剤(五苓散など)【適応】心不全で最も多い症状は臓器うっ血によるものであり、浮腫・呼吸困難などのうっ血症状がある患者が利尿薬投与の適応である。ただ、ループ利尿薬は交感神経やRAS系の活性化を起こすことが分かっており、できる限りループ利尿薬を減らした状態でいかにうっ血コントロールをできるかが重要である。そのような状況で、新たなうっ血改善薬として開発されたのがトルバプタンであり、また近年利水剤と呼ばれる漢方薬(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)もループ利尿薬を減らすための選択肢の1つとして着目されており、心不全への五苓散のうっ血管理に対する有効性を検証する大規模RCTであるGOREISAN-HF試験も現在進行中である。この利水剤については、また別の回で詳しく説明する。【注意点】あくまで予後改善薬を投与した上で使用することが原則。低カリウム血症、低マグネシウム血症、腎機能増悪、脱水には注意が必要である。新規治療薬の位置付け上記の従来治療薬に加えて、近年新たに保険適応となったHFrEF治療薬として、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(Angiotensin receptor-neprilysin inhibitor:ARNI)、SGLT2阻害薬(ダバグリフロジン、エンパグリフロジン)、ベルイシグアト、イバブラジンがある。上記で示した薬物療法をHFrEF基本治療薬とするが、効果が不十分な場合にはACE阻害薬/ARBをARNIへ切り替える。さらに、心不全悪化および心血管死のリスク軽減を考慮してSGLT2阻害薬を投与する。第1回でも記載した通り、これら4剤を診断後できるだけ早期から忍容性が得られる範囲でしっかり投与する重要性が叫ばれている。服薬アドヒアランスへの介入は極めて重要!最後に、施設全体のガイドライン遵守率を改めて意識する重要性を強調しておきたい。実際、ガイドライン遵守率が患者の予後と関連していることが指摘されている28)。そして何より、処方しても患者がしっかり内服できていないと意味がない。つまり、内服アドヒアランスが良好に維持されるよう、医療従事者がしっかり説明し(この薬がなぜ必要かなど)、サポートをすることが極めて重要である。このような多職種が介入する心不全の疾病管理プログラムは欧米のガイドラインでもクラスIに位置づけられており、ぜひ皆様には、このGDMTに関する知識をまわりの看護師などに還元し、チーム医療という形でそれが患者へしっかりフィードバックされることを切に願う。1)Jencks SF, et al. N Engl J Med.2009;360:1418-1428.2)Setoguchi S, et al. Am Heart J.2007;154:260-266. 3)Stewart S, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes.2010;3:573-580.4)McDonagh TA, et al.Eur Heart J. 2022;24:4-131.5)CONSENSUS Trial Study Group. N Engl J Med. 1987;316:1429-1435.6)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1991;325:293-302.7)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1992;327:685-691.8)Pitt B, et al.Lancet.2000;355:1582-1587.9)Cohn JN, et al.N Engl J Med.2001;345:1667-1675.10)Dickstein K, et al. Lancet.2002;360:752-760.11)Pfeffer MA, et al.N Engl J Med. 2003;349:1893-1906.12)Granger CB, et al. Lancet.2003;362:772-776.13)Packer M, et al.Circulation.1999;100:2312-2318.14)Konstam MA, et al. Lancet.2009;374:1840-1848.15)Lam PH, et al.Eur J Heart Fail.. 2018;20:359-369.16)Schmidt M, et al. BMJ.2017;356:j791.17)McMurray JJ, et al.Lancet.2003;362:767-771.18)ONTARGET Investigators. N Engl J Med.2008;358:1547-1559.19)Pitt B, et al. N Engl J Med.1999;341:709-717.20)Pitt B, et al. N Engl J Med.2003;348:1309-1321.21)Zannad F, et al. N Engl J Med.2011;364:11-21.22)Juurlink DN, et al. N Engl J Med.2004;351:543-551.23)Packer M, et al.N Engl J Med.1996;334:1349-1355.24)MERIT-HF Study Group. Lancet. 1999;353:2001-2007.25)Dargie HJ, et al. Lancet.1999;353:9-13.26)Packer M, et al.N Engl J Med.2001;344:1651-1658.27)Düngen HD, et al.Eur J Heart Fail.2011;13:670-680.28)Fonarow GC, et al.Circulation.2011;123:1601-10.29)日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」

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アレルギー総合ガイドライン2022

“total allergist”に必携の1冊!アレルギー疾患の診療には、各種のアレルギー疾患の病態を踏まえた治療が必要です。また、アレルギー疾患は合併しやすいことから、アレルギー疾患全般を診療できる “total allergist”と表現される総合アレルギー医が求められます。本書は、診療科や年齢、性別を超えて横断的に出現するアレルギー疾患に対して、円滑に対処できるよう実用性を重視して作成された2019年版の全面改訂版で、各診療ガイドラインのエッセンスを精選して幅広いアレルギー診療の基本をまとめることで、前版より300ページ以上減のコンパクト化を実現しています。“total allergist”をはじめ、アレルギー疾患の診療に携わるすべての医療従事者のためのより実用的な1冊となっています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    アレルギー総合ガイドライン2022定価5,060円(税込)判型B5判頁数419頁発行2022年10月作成一般社団法人日本アレルギー学会

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TSLPを標的とした重症喘息の新たな治療選択肢

 2022年10月24日、アストラゼネカは、都内にて「テゼスパイアによる重症喘息治療への貢献」をテーマにメディアセミナーを開催した。TSLPは喘息の重症化や呼吸機能低下に関与 現在の重症喘息治療における課題は複雑な炎症経路である。ウイルスやアレルゲン、ハウスダストなど環境因子の刺激により、気道上皮から上皮サイトカインが産生され、その結果、アレルギー性炎症や好酸球性炎症、気道のリモデリングなど、複数の経路から喘息が増悪すると考えられている。 上皮サイトカインのなかでも、炎症カスケードの起点となっているのが胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)である。TSLPは、喘息の重症化や呼吸機能低下だけでなく、気道のリモデリングやステロイド反応性の低下、ウイルス感染に対する過剰な2型炎症にも関与していると考えられている。TSLPを標的とした生物学的製剤がテゼスパイア テゼスパイア皮下注210mgシリンジ(一般名:テゼペルマブ[遺伝子組換え]、以下「テゼスパイア」)はTSLPを標的とした生物学的製剤である。セミナーでは第III相国際共同試験(検証的試験)、NAVIGATOR試験について、昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 相良 博典氏が詳しく説明した。 対象は、コントロール不良な重症喘息(国際的な喘息診療指針Global Initiative for Asthma:GINAに基づく)を有する成人および12歳以上の小児患者1,061例。対象患者を地域および年齢によって層別化した後、テゼスパイア群およびプラセボ群に1:1で無作為に割り付け、52週間投与した。 主要評価項目である年間喘息増悪率はテゼスパイア群で0.93、プラセボ群で2.10であり、テゼスパイアの有効性が示された(プラセボ群に対する比:0.44、95%信頼区間[CI]:0.37~0.53、p<0.001)。また、その他の副次評価項目である血中好酸球数、FeNO、血清総IgE値のベースラインからの変化量について、テゼスパイア投与後、早期から低下する傾向が見られた。 安全性に関して、有害事象の発現率はテゼスパイア群で77.1%(407/528例)、プラセボ群で79.5%(422/531例)であった。主な有害事象(発現率>10%)は、テゼスパイア群(528例)で上咽頭炎が112例(21.2%)、上気道感染が58例(11.0%)、プラセボ群(531例)で上咽頭炎が113例(21.3%)、上気道感染が84例(15.8%)、喘息が56例(10.5%)に認められた。TSLPを阻害することでテゼスパイアは複雑な炎症経路を同時に抑制 テゼスパイアは、これまでの喘息治療薬とは異なる作用機序を有するため、新たな治療選択肢となる。「2型喘息患者では、いまだに増悪を来す患者が多く存在する。TSLPはさまざまな病態と関連しており、増悪・呼吸機能低下だけでなく、ステロイド抵抗性の獲得や粘液産生、気道リモデリング、神経炎症と、多岐にわたって影響を及ぼす。テゼスパイアは炎症の起点となるTSLPを阻害することで、複雑な炎症経路を同時に抑制し、優れた臨床的改善効果をもたらすことが期待される」と相良氏はまとめ、セミナーを終了した。

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futibatinib、既治療の切除不能肝内胆管がんに対しFDAの承認取得/大鵬

 大鵬薬品工業は、2022年10月3日、米国子会社の大鵬オンコロジーが、FGFR阻害薬futibatinib(開発コード:TAS-120)について、「前治療歴を有するFGFR2融合遺伝子またはその他の再構成を伴う切除不能な局所進行または転移性肝内胆管がん」の適応で米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。今回の承認は、FOENIX-CCA2試験での全奏効率(ORR)と奏効期間結果に基づくものである。 FOENIX-CCA2試験は、FGFR2遺伝子融合またはその他の再構成を有する切除不能な肝内胆管がん患者103例を対象とした第II相試験である。全身療法治療歴のある患者を対象に、病勢進行または許容できない毒性が認められるまでfutibatinib20mg/日を経口投与した。本試験の主要評価項目は全奏効率である。

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第121回 大都市、大学病院離れ鮮明に、医師臨床研マッチング結果/医師臨床研修マッチング協議会

<先週の動き>1.大都市、大学病院離れ鮮明に、医師臨床研マッチング結果/医師臨床研修マッチング協議会2.75歳以上の医療保険、所得に応じた負担増へ/厚労省3.マイナンバーと健康保険証の一体化に向け、検討会を立ち上げ/政府4.すべての医師にHPKIカード(医師資格証)の所有を促進/日本医師会5.総合診療医の育成コース、年収2,500万円で支援/新潟県津南町6.医療事故多発の赤穂市民病院に専門医の施設認定の停止/日本脳神経外科学会1.大都市、大学病院離れ鮮明に、医師臨床研マッチング結果/医師臨床研修マッチング協議会医師臨床研修マッチング協議会は10月27日に、令和4年度の研修医マッチングの結果を発表した。これによると、大都市部の6都府県(東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、福岡県)を除く道県での内定は59.6%、大学病院以外の臨床研修病院での内定は63.5%と、地方での研修や大学病院以外での研修が増えている傾向だった。マッチング開始直後の2004年度にはそれぞれ、大都市以外は50.6%、大学病院以外は47.3%だった。また、同日に厚生労働省は「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を開催し、医師偏在指標の算出結果(速報値)を公表し、医師多数区域においては医師偏在指標が減少する区域が多くなっていることが明らかにされた。新たな医師偏在指標では、全体的に医師偏在指標そのものは増加しており、これらを元に、令和4年度末に、国が、次期医師確保計画策定ガイドラインとあわせて都道府県に提供する医師偏在指標(暫定値)より、上位および下位1/3の閾値を決定する。また、令和元年度に9,420人に達した医学部の定員については、令和6年度も、令和元年度の定員数を上限とし、令和5年度の枠組みを暫定的に維持することになった。(参考)令和4年度 研修医マッチングの結果(医師臨床研修マッチング協議会)地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(厚労省)第9回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(同)2016年から2020年にかけて「医師の地域偏在」が進んでしまった!強力な偏在対策推進を!?地域医療構想・医師確保計画WG(1)(Gem Med)2023年4月からの医師臨床研修、都市部6都府県「以外」での研修が59.6%、大学病院「以外」での研修が63.5%に増加-厚労省(同)新医師偏在指標、平均値など多くの項目で増加 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(日経メディカル)2.75歳以上の医療保険、所得に応じた負担増へ/厚労省厚生労働省は、10月28日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度について、年金収入が年間153万円を超える所得の高い人の年間保険料の上限引き上げなどを含む案を提案した。同時に国民健康保険の保険料の上限を2万円引き上げて104万円にする方針も示された。2025年までに団塊の世代が全て後期高齢者となるため、現在の後期高齢者医療費の約17兆円が急増することが見込まれており、その前に、高所得の高齢者に負担を求め、現役世代の負担を抑制する方針。(参考)第156回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)75歳以上の医療保険、負担増を諮問…年金153万円超が対象の可能性(読売新聞)中高所得層の負担増 75歳医療保険料引き上げへ(産経新聞)医療、所得に応じ負担増 高齢者・現役の両方で 厚労省審議会、保険制度見直し着手(日経新聞)3.マイナンバーと健康保険証の一体化に向け、検討会を立ち上げ/政府岸田文雄総理は、10月28日の記者会見で、2024年の秋に予定しているマイナンバーカードと健康保険証の一体化に向け、関連省庁で検討会を設置することを表明した。これは保険証の廃止につながるとして医師会などから懸念の声が上がっているため。また、紛失などで手元にカードがなくても保険診療を受けられる制度を用意することも明らかにした。(参考)カード一体化の検討会 マイナと保険証、首相表明(日経新聞)「マイナ保険証」紛失でも保険診療 岸田首相(時事通信)4.すべての医師にHPKIカード(医師資格証)の所有を促進/日本医師会日本医師会は10月26日に定例記者会見を開催し、来年1月から、オンライン資格確認を活用した電子処方箋の運用開始を前に、全医師に対する公開鍵認証基盤(HPKI)に基づく医師資格証の発行を日本医師会が促進していく方針を示した。今年9月末の時点で、医師資格証の発行枚数は2万5,000枚を超え、現在3,000件以上の申請に対応しており、今後、すべての医師に取得してもらえるよう取り組むことを示した。なお、医師資格証の発行・更新費は医師会員であればすべて無料であり、非会員であっても実費のみで取得可能であること、新規の医師免許取得者も無料での取得が可能である。(参考)医師資格証、全医師への発行を「強力に加速」 日医・長島常任理事(MEDIFAX)医師資格証の全医師への発行について(日本医師会)医師資格証について(日本医師会 電子認証センター)5.総合診療医の育成コース、年収2,500万円で支援/新潟県津南町新潟県津南町は、深刻な医師不足に直面しており、若手総合診療専門医を育成するため、町立津南病院ならびに県立十日町病院で研修する場合、通常の給与に加えて年間1,000万円を最大4年間支給する研修プログラムを来年度から開始することを発表した。研修終了後も津南病院で2年働くことなどが条件。また、海外留学にも最大1,550万円の奨学金で支援する。専門医取得後は、病院の幹部として登用する。11月10日にオンライン説明会を実施する。(参考)地域で育成する日本初の総合診療医育成プログラムを開始します(津南町)「総合診療医」好待遇で志願者募集、新潟・津南病院が全国初の研修制度 幹部候補、海外留学を支援、年収2倍(新潟日報)「年収2,500万円で病院長候補を…」医師不足“全国最下位”の新潟県で始まる日本初の育成プログラム(新潟放送)6.医療事故多発の赤穂市民病院に専門医の施設認定の停止/日本脳神経外科学会兵庫県の赤穂市民病院は、2019年9月以降に同院の脳神経外科で多発した医療事故のため、日本脳神経学会は専門医指定訓練施設の認定を停止したことを明らかにした。これは以前、脳神経外科で勤務していた男性医師(依願退職済み)による医療事故が相次いだことを受け、学会側として対応したものとみられる。学会側は再認定には、医療安全管理体制の整備や医療事故の発生当時の問題点を総括することを求めている。(参考)医療事故相次ぎ8件→学会は11件指摘 赤穂市民病院脳神経外科の認定を停止 専門医の研修できなくなる(神戸新聞)市民病院医療事故多発 学会が訓練施設認定を停止(赤穂民報)

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