サイト内検索|page:38

検索結果 合計:5097件 表示位置:741 - 760

741.

調剤後薬剤管理指導が“格上げ”、対象の薬と患者が拡大【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第127回

2024年度の調剤報酬改定の内容が確定しました。これまでの改定は華々しく何かがスタートしたりしましたが、あまり浮足立った感じはなく、しっかりと地に足が着いた改定のように感じます。今回は2024年度の調剤報酬改定によって新設や変更となった加算を紹介します。「調剤後薬剤管理指導料」が加算→指導料に変更薬学管理料の「調剤後薬剤管理指導加算」が廃止され、「調剤後薬剤管理指導料」が新設されます。2020年度改定で新設された調剤後薬剤管理指導加算は、薬剤を服用中の患者に対する薬剤師のフォローアップを評価する目的で新設された点数でした。その基本的な考え方は受け継がれつつ加算から指導料へ変更されたということは、これらの指導が評価されて格上げされたと考えてよいでしょう。調剤後薬剤管理指導加算の対象となっていた糖尿病薬の範囲はインスリンとSU薬でしたが、「糖尿病用剤」に拡大され、また対象患者に慢性心不全患者が追加されました。調剤後薬剤管理指導加算では、かかりつけ薬剤師管理指導料の算定患者では算定できませんでしたが、調剤後薬剤管理指導料では算定患者に対してフォローアップを実施した場合でも算定ができるようになります。加算から指導料になっても60点という点数に変更はありません。しかし、この調剤後のフォローアップが踏襲され、しかも対象が広がったということは、これを積極的に取り組んでいる薬局が評価されたということでとてもうれしいです。調剤後薬剤管理指導料を算定できる薬局は、地域支援体制加算を算定可能として届出をしている薬局です。ベースが地域支援体制加算というのは、今後も基本要件になってくる可能性は高いでしょう。「在宅移行初期管理料」が新設在宅訪問を開始する際には、あらかじめ患者さん宅やケアマネジャーさんを訪問してさまざまな確認をすると思いますが、その加算や指導料はとくにありませんでした。今回、患者さんが病院から退院するときなど、在宅医療に移行する際の薬学管理に対する評価として、新たに「在宅移行初期管理料」が導入されます。退院直後などに薬局薬剤師が患者宅を訪問し、服薬状況の確認や薬剤の管理などの必要な指導を実施した場合に、1回に限り230点を算定できます。1回だけの算定とはいえ230点は大きいですし、その1回を確実に意味のあるものにしようという気合と責任が芽生えますよね。ただし、認知症や精神疾患、小児、末期がんなど条件を満たす患者さんのうち、とくに重点的な服薬支援を行う必要性があると判断された場合に限る、とされているので、対象となる患者さんの注意が必要です。私は、日々患者さんのために頑張っている薬局や薬剤師が報われてほしいと思ってこのコラムを書いていますが、今回の改定内容を読み込めば読み込むほど、薬局がどんどん増え、薬剤師は稼げると言われた時代は過ぎ去り、地域医療のために実績を上げている薬局や薬剤師が生き残る時代に突入したのだなという実感がします。今回新設・変更された項目に対する取り組みや実績が今後の報酬改定で評価されればよいなと思います。

742.

高アルカリ水での尿路結石再発予防は困難

 「アルカリ水」として販売されている飲料を、尿路結石の予防目的で飲んだとしても、効果を得られる可能性は低いのではないかとする論文が発表された。それらの飲料に含まれているアルカリ成分は少なすぎて、尿のpHレベルに影響を与えるほどではないという。米カリフォルニア大学アーバイン校のRoshan Patel氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Urology」に2月1日掲載された。研究グループによると、アルカリ水よりもむしろオレンジジュースの方が良い選択肢である可能性があるとのことだ。 Patel氏らは論文中に研究の背景として、「高pH水」とも呼ばれるアルカリ水への人気の高まりを指摘している。水道水のpHは7.5程度だが、アルカリ水はそれより高い。尿路結石は再発しやすい疾患であり、再発予防には尿のpHを上げることが重要で、その方法として薬物治療としてはクエン酸カリウムが処方される。しかしクエン酸カリウムの錠剤はサイズが大きく、毎日複数回飲む必要があるため、服用したがらない患者も少なくない。このような人たちの間で、アルカリ水への尿路結石再発予防効果への期待が広がっているのだという。 そこでPatel氏らは、米国で市販されている5種類のアルカリ水のpHを測定した。また、尿のpHを上昇させる可能性のある、ほかの飲料や食品についても、公表されているデータの検討を行った。 検討の結果、5種類のアルカリ水のpHは、9.69~10.15の範囲であり、アルカリ含有量は1L当たり、わずか0.1mEqだった。研究者によると、この量は体内で代謝産物として生成される酸が1日に約40~100mEqであることに比べると、「取るに足りない」レベルだという。また、ある製品には、少量のクエン酸塩が含まれていたが、製品ラベルにはそのことが記載されていなかった。Patel氏は、「アルカリ水のpHは水道水よりも高いが、アルカリ含有量は無視できる程度のものだ。このことは、腎臓やその他の部位にできる尿路結石の発生に影響を与えるほど、尿のpHを上げることができないことを示唆している」と、大学発のリリースの中で述べている。 対照的に、尿のpHを上昇させる可能性のある市販製品が見つかった。例えば、オレンジジュースの中にはアルカリ含有量が1L当たり最大15mEqに達する製品があり、費用対効果の高い予防手段となる可能性が認められた。もう一つの低コストで効果的な選択肢は、料理に「膨らし粉」として用いられる重曹(重炭酸ナトリウム)が挙げられる。ただし、重曹についてはナトリウムが含まれているため、研究者らは「健康上の懸念がある」と指摘している。 これらの結果を基にPatel氏は、「われわれの報告は、アルカリ水ではない一部の市販飲料や食品が尿路結石の再発予防に役立つ可能性を示している」と述べている。ただし、「得られたデータは研究室内での解析結果であり、実際に尿のpHを上昇させるための最良の方法は、臨床試験により確認する必要がある」とのことだ。

743.

肥満症治療薬のチルゼパチドで肥満者の血圧が低下

 肥満症治療薬のZepbound(ゼップバウンド、一般名チルゼパチド)の効果は、体重の減少や糖尿病コントロールの改善にとどまらないようだ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター心臓病学部長のJames de Lemos氏らによる研究で、チルゼパチドを使用した肥満患者では収縮期血圧(上の血圧)が有意に低下し、同薬が肥満者の血圧コントロールにも有効である可能性が示唆されたのだ。チルゼパチドの製造販売元であるEli Lilly社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Hypertension」に2月5日掲載された。 この研究の背景情報によると、収縮期血圧は拡張期血圧(下の血圧)よりも心疾患に関連した死亡リスクとの関連の強いことが判明しているという。De Lemos氏は、「これまでの研究では、チルゼパチドの肥満症治療薬としての効果が検討されてきたが、今回の研究の参加者で確認された同薬による血圧の低下は印象的なものだった」と話す。 チルゼパチドは、体内でインスリンの分泌を促し食後のインスリン感受性を高める作用を持つ2種類のホルモンと同じように働く。同薬には消化のスピードを緩やかにして食欲を低下させ、血糖値の調節を助ける作用がある。なお、日本では、現時点でのチルゼパチドの適応症は糖尿病のみである。 今回の研究では、肥満の成人600人(平均年齢45.5歳、平均BMI 37.4、女性66.8%)をプラセボ投与群(155人)、またはチルゼパチドを5mg(145人)、10mg(152人)、15mg(148人)のいずれかの用量で皮下注射する群にランダムに割り付けた。 その結果、チルゼパチド群ではプラセボ群に比べて試験開始時から36週間目までの間に収縮期血圧が、チルゼパチド5mg投与で平均7.4mmHg、10mg投与で平均10.6mmHg、15mg投与で平均8mmHg低下したことが明らかになった。また、チルゼパチドの降圧効果は日中だけでなく夜間にも認められた。De Lemos氏らによると、日中よりも夜間の収縮期血圧の方が心疾患に関連する死亡リスクのより強い予測因子であるという。 De Lemos氏は、「血圧降下がチルゼパチドによるものなのか、あるいは研究参加者の体重減少によるものなのかは不明だが、チルゼパチドを使用した参加者で認められた血圧の低下度は、多くの降圧薬の使用による低下度に匹敵するものであった」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースで説明している。 今回の研究には関与していない米ミシシッピ大学医療センターのMichael Hall氏は、「全体として、チルゼパチドのような新規の肥満症治療薬は、体重減少だけでなく肥満に伴う高血圧や2型糖尿病、脂質異常症などの心血管代謝系の合併症を大いに改善させることが示されており、励みになる結果だ」と話している。 Hall氏はまた、「これらの有益な効果はいずれも重要ではあるが、肥満に関連した合併症の多くは相乗的に心血管疾患リスクを高める。したがって、肥満に関連した複数の合併症を抑える戦略は、心血管イベントのリスク低下につながる可能性がある」との見方を示している。 ただしHall氏は、「心筋梗塞や心不全、その他の心臓に関連した健康上の問題に対するチルゼパチドの長期的な効果について明らかにするには、さらなる研究が必要だ」と指摘。また、「チルゼパチドのような薬剤を中止した場合に血圧がどのように変化するのか、例えば再び上昇するのか、あるいは低下が維持されるのかを明らかにするための研究も必要だ」と話している。

744.

医療への信頼 Trust in Medical Care

医療従事者の喜び・葛藤・苦悩、患者・家族の医療への信頼を写真でジャケット写真はタラワ環礁。彼岸と此岸のあわい。ジャケットをめくると表1(おもて表紙)には、水平線の位置に英文タイトル1行のみ、“Trust in Medical Care” と刷られている。「医療への信頼」という言葉を定着させたいと著者は言う。重度の障害をもって生まれた夏帆の36年、ともに歩んだ家族、寄り添い続けた医療従事者たち。これからも夏帆の生あるかぎり続く営みの記録。夏帆生後5ヵ月半から21歳まで主治医を務め、世を去った粟屋 豊先生の写真をひと目みて、あるドクターが言葉を発した。「この先生、いい顔してはる。医者の鑑や」。本書に登場する医療従事者たちの風貌、気概をみて感じとってほしい。写真というメディアの底力を。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する 医療への信頼 Trust in Medical Care定価4,400円(税込)判型B5変型判頁数208頁発行2023年11月編集河田 真智子ご購入はこちらご購入はこちら

745.

【緊急寄稿】働き方改革、スタート目前!米国医師の働き方を変えた「10の仕組み」~第1回・勤務体制編~

2024年4月から、いよいよ日本では「医師の働き方改革」の新制度が施行されます。私は日本で初期研修医、そして新専門医制度下での内科専攻医を経験した後、2021年に渡米し、現在は米国で内科レジデントとして働いています。米国の内科レジデンシーは全部で3年間あり、内科に特化した研修を行います。日本で内科の専攻医を経験した後に米国での内科レジデンシーを経験したことから、日本と米国の内科研修の違いを肌で感じました。その中で最も衝撃を受けたのは「米国の働き方改革とデジタル化は、日本よりもはるかに進んでいる」という点です。この寄稿では、日米の内科研修を両方経験した立場から、どのようなツールやシステムが米国の働き方改革に貢献しているか、1)勤務体制編、2)スマホアプリ編、3)電子カルテ編の3つに分けて、10の仕組みを紹介、解説します。この寄稿が日本での働き方改革を議論するうえで、少しでも参考になればと思います。第1回の今回は、米国医師の働き方を改革した勤務体制の仕組みづくりについて、4つの具体例を挙げて説明します。仕組み1:チーム制・シフト制米国の多くの病院では、入院患者の管理は専門科医ではなく、ホスピタリスト(病院総合診療医)が担当します。専門科医はコンサルタントとして関与する形です。ホスピタリストの指導の下、3~4人の内科レジデントが患者をケアするチームをつくり、看護師同様にシフト制で勤務します。私の勤める病院では、2~3年目の先輩レジデントが1年目の新人レジデントに指導をしながら、チーム全体で約16~20人の患者を受け持ちます。シフトは早番と遅番に分かれ、早番は朝7時~夕方5時、遅番は朝7時~夜8時の勤務です。シフトの終わりには、自分が担当した患者の情報を次の担当者に引き継ぎ、ToDoリストや急変時の対応プランを確認します。シフト終了後は看護師から連絡が入ることはなく、帰宅してリラックスする時間が確保されます。チーム制・シフト制を採用することで仕事とプライベートのオンオフがはっきりします。図1仕組み2:夜勤とsick callレジデントのローテーションの中には、夜勤のみを行う期間があります。夜勤レジデントは、毎晩の当直(夜8時~翌朝7時)を6日間勤務+1日休みのサイクルで2週間勤務するスケジュールで働き、入院患者の管理や救急外来からの新規入院患者の対応を行います。この夜勤システムにより、夜勤レジデントは昼間に休息を取り、夜間に働くという生活リズムを維持できます。これにより、日勤レジデントは当直の必要がなくなり、体内時計の乱れを避けることが可能になります。また、「sick call」と呼ばれる病欠者のカバーをするシフトが存在します。ほかのレジデントが病気やその他の理由で勤務できないときに、そのシフトをカバーする担当のレジデントのことで、呼び出しがなければ自宅待機します。このように、誰かが休んでも業務が特定の人に集中することを防ぎ、全体の負担を軽減するシステムが構築されています。仕組み3:勤務上限時間の設定神戸市の病院で勤務していた若手医師が長時間労働下で自殺し、労災と認定された事件は記憶に新しいですが1)、米国ではACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education、米国卒後医学教育認定評議会)という団体が研修プログラムのレジデントやフェローの労働時間を規制しており、このルールにより若手医師は過剰労働や業務過多から守られています。具体的には、週に80時間までの勤務7日間に1日の割合で休日を設ける連続勤務は24時間まで24時間勤務の後は次の勤務まで14時間空けるといったルールが定められています。このルールをレジデント全員が常に守る必要があるため、綿密なスケジュール調整が必要になります。日本では働き方改革に当たり、教育や研究が「自己研鑽」の扱いになるかどうかが議論され、厚生労働省が「教育・研究に直接関連性のある研鑽は労働時間に該当する」と明示したことが話題になりました2)。米国では教育的なレクチャーは、昼食時や週に半日ある「Academic Half Day」と呼ばれる臨床業務が免除される時間に行われるケースが多く、平日の勤務時間内に組み込まれています。研究に関しては、自由に選択できるローテーションで「研究」を選択することで、臨床業務が免除され学会発表の準備や論文執筆の時間に充てることができます。十分な人員がいるからこそ実現可能なのかもしれませんが、このように自己研鑽が労働時間外にならないよう配慮されています。なお、日本の内科専門医制度では「J-OSLER」と呼ばれる症例登録制度があり、内科専門医を取得するためには160症例の症例登録と29症例の病歴要約の提出が求められています。私自身、休日や時間外を含めて多くの時間を費やすこととなり苦労しました。一方で、米国の内科レジデンシーでは症例登録や病歴要約の提出は一切必要ないものの、一緒に働いた指導医やプログラムの評価を頻繁に提出することが求められます。上記のACGMEが各プログラムや指導医の質を評価することで教育の質を担保する、というシステムです。レジデントの負担を考慮した、合理的かつ効率的な制度だと感じます。仕組み4:ACGMEによる監視システム研修プログラムが勤務時間の規則を順守しているのか、確認するシステムがあります。レジデントはオンラインで勤務時間を報告することが義務付けられており、さらにACGMEによる査察が定期的に行われます。査察はレジデントとの抜き打ちの面接や匿名のアンケートによって行われ、定められた勤務スケジュールとレジデントが報告する勤務時間に乖離がないかを確認します。ACGMEは研修プログラムの評価および認定機関でもあるので、規則に違反したことが明らかになった場合には、さまざまな罰則を科すことができ、最悪の場合には研修施設としての認定の取り消しに至ることもあります。このような監視システムがあることで、ルールの形骸化を防いでいるのです。1)“26歳医師が自殺で遺族会見 ‘極度の長時間労働’で労災認定”. NHK NEWS WEB. 2023-08-18.,(参照2024-03-04).2)“医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について”. 厚生労働省. 2024-01-15.,(参照2024-03-04).

746.

日本人NASH患者の臨床的特徴~5年間のRWDを用いた症例対照研究

 得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに関連する患者の臨床的特徴を調べるため、国民健康保険ならびに後期高齢者レセプトデータベースといったReal World Data(RWD)を用いて症例対照研究を行った。その結果、NASHの診断定義を満たした患者では非NASH患者に比べてBMIが有意に高いことが示唆された。また、女性、脂質異常症、高血圧症、胃食道逆流症(GERD)、2型糖尿病の罹患割合はNASH群で高く、NASHは肝硬変や肝がんのリスク上昇と関連していたことも示唆された。BMJ Open誌2023年8月22日号掲載の報告。 研究者らは、2015年4月~2020年3月までにNASH(ICD-10の分類表記K75.8[非アルコール性脂肪性肝炎]、K76.0[その他の炎症性肝疾患/その他の脂肪肝])と診断された患者をNASHの診断定義を満たす患者として非NASH患者と照合させ、性別、生年月日、居住地域に従ってランダムに選択した。1次および2次アウトカムの測定値(年齢、性別、BMI、NASH関連の併存疾患、生活習慣病など)の患者背景間の関係についてオッズ比(OR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・NASH患者545例(男性:38.3%)と非NASH(対照)患者18万5,264例(同:43.2%)を抽出した。各群の年齢中央値は68歳(四分位範囲:63.0~75.0)と65歳(同:44.0~74.0)であった。・BMIはNASH患者のほうが対照患者よりも有意に高かった(25.8kg/m2 vs.22.9kg/m2、p<0.001)。・女性、高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病の割合はNASH患者のほうが高かった。さらに、NASHは肝硬変のリスク増加と関連しており(OR:28.81、95%信頼区間[CI]:21.79~38.08)、次に肝臓がんのリスクが高かった(OR:18.38、95%CI:12.56~26.89)。・NASHとうつ病(OR:1.11、95%CI:0.87~1.41)、不眠症(OR:1.12、95%CI:0.94~1.34)、慢性腎臓病(OR:0.81、95%CI:0.58~1.34)のリスクとの間には有意な関連はみられなかった。 これまでの国内研究報告1)にてNAFLD患者の特徴(中年男性と高齢女性の有病率が高い)は示されていた。NASHに関する今回の研究を通じて、本研究者らは「日常診療において、性別や年齢の違いを考慮し、肝臓がんのリスクやNASHに関連するそのほかの生活習慣関連の併存疾患に細心の注意を払う必要がある」としている。

747.

新型コロナ公費支援、3月末で終了を発表/厚労省

 厚生労働省は3月5日付の事務連絡にて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の医療提供体制および公費支援について、予定どおり2024年3月末をもって終了し、4月以降は通常の医療体制とすることを発表した1)。新型コロナの医療提供体制については、2023年5月8日に5類感染症変更に当たり特例措置が見直され、同年10月に公費支援を縮小し、2024年3月末までが「移行期間」であった。4月以降、医療機関への病床確保料や、患者のコロナ治療薬の薬剤費および入院医療費の自己負担に係る支援、高齢者施設への補助などが打ち切りとなる。無料で行われてきた新型コロナワクチンの特例臨時接種も予定どおり3月末で終了する。新型コロナの特例的な財政支援の終了について記載された資料も公開された2)。医療提供体制の移行(外来・入院・入院調整) 外来医療体制については、移行期間に各都道府県が策定した移行計画に沿って、外来対応医療機関数のほか、かかりつけ患者以外に対応する医療機関数が拡充されてきた。4月以降は広く一般の医療機関による対応に移行し、外来対応医療機関の指定・公表の仕組みは3月末をもって終了する。 4月から病床確保料は廃止となる。2023年10月~2024年3月末の病床確保料の金額は、ICUの場合、特定機能病院等では1日17万4,000円、一般病院では1日12万1,000円。HCUの場合、一律1日8万5,000円。その他病床の場合、特定機能病棟等では1日3万円、一般病院では1日2万9,000円であった。 4月以降の新型コロナ患者の入院先の決定(入院調整)は医療機関間で行う。医療機関等情報支援システム(G-MIS)での受け入れ可能病床数および入院患者数が入力できる日時調査等の項目は残される。厚労省からの入力依頼は3月末で終了するが、4月以降は都道府県で必要に応じて管轄下の医療機関に対してG-MISの入力を依頼するなどの活用が可能だ。令和6年度診療報酬改定での感染症への対応 6月1日からの施行となる令和6年度診療報酬改定では、コロナに限らない感染症を対象とした恒常的な対策へと見直されるが、新型コロナを含む感染症患者への診療も一定の措置が取られる。新興感染症に備えた第8次医療計画に合わせ、診療報酬上の加算要件(施設基準)も強化される。 外来感染対策向上加算の医療機関を対象に、発熱患者等への診療に加算(+20点/回)や、とくに感染対策が必要な感染症(新型コロナ含む)の患者入院の管理を評価し、(1)入院加算の新設(+100~200点/日)、(2)個室加算の拡充(+300点/日)、(3)リハビリに対する加算の新設(+50点/回)が行われる。新型コロナ患者等に対する公費支援の終了 新型コロナ患者の治療費および入院医療費については、一定の自己負担ともに公費支援が継続されてきたが、3月末で終了する。4月以降は、他の疾病と同様に、医療保険の自己負担割合に応じて負担することとなるが、医療保険における高額療養費制度が適用され、所得に応じた一定額以上の自己負担が生じない取り扱いとなる。 3月末までは新型コロナ治療薬の薬剤費のうち、医療費の自己負担割合に応じて3割負担の人で9,000円、2割負担の人で6,000円、1割負担の人で3,000円という上限額が設けられ、これらの上限額を超える部分を公費で負担していたが、4月以降は公費負担を終了する3)。 4月以降の新型コロナ治療薬の1治療(5日分)当たりの薬価と自己負担額の目安は以下のとおり。・モルヌピラビル(ラゲブリオ):約9万4,000円 1割負担:9,400円、2割負担:1万8,800円、3割負担:2万8,200円・ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド):約9万9,000円 1割負担:9,900円、2割負担:1万9,800円、3割負担:2万9,700円・エンシトレルビル(ゾコーバ):約5万2,000円 1割負担:5,200円、2割負担:1万300円、3割負担:1万5,500円 入院医療費については、3月末まで高額療養費制度の自己負担額限度額から最大1万円の減額が行われていたが、4月以降は他の疾病と同様に、医療保険の負担割合に応じた通常の自己負担と、必要に応じて高額療養費制度が適用となる。 高齢者施設等については、約9割が医療機関との連携体制を確保し、感染症の予防およびまん延防止のための研修と訓練を実施していることが確認されたため、3月末までで新型コロナに関わる高齢者施設等への支援も終了する。令和6年度介護報酬改定において、今後の新興感染症の発生に備えた高齢者施設等における恒常的な取り組みとして、新興感染症発生時に施設内療養を行う高齢者施設等を評価する加算の創設などを行う。ゲノムサーベイランスは継続 そのほかの措置として、各自治体が実施しているゲノムサーベイランスについては、実施方法を見直したうえで4月以降も継続する方針で、引き続き行政検査として取り扱われる。また、自治体が設置している相談窓口機能について、今後の対応は各自治体の判断によるが、厚労省では4月以降も新型コロナ患者等に対する相談窓口機能が設けられる予定だ。新型コロナ緊急包括支援交付金(医療分)終了 新型コロナへの対応として、都道府県の取り組みを包括的に支援することを目的として行われてきた「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)」については、3月末で終了する。救急で新型コロナ対応として使用する個人防護具(PPE)について、都道府県や市町村が購入する場合の費用も本措置の補助対象であった。

748.

うつ病に有効な運動は?/BMJ

 運動はうつ病にとって有効な治療法であり、とくに運動強度が強いウォーキングやジョギング、ヨガ、筋力トレーニングが他の運動よりも有効であり、またヨガと筋力トレーニングは他の治療法と比べて忍容性が良好であることが示された。運動は、併存疾患の有無やうつ病の重症度を問わず、有効性は同等とみられることも示唆されたという。オーストラリア・クイーンズランド大学のMichael Noetel氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「今後の研究では、参加者やスタッフを盲検化することを目指せば、期待される効果を軽減することができるだろう」と指摘したうえで、「これらの運動は、うつ病治療の中心的な治療法として、心理療法や抗うつ薬と並んで検討されるものとなるだろう」とまとめている。BMJ誌2024年2月14日号掲載の報告。ネットワークメタ解析で、最適な運動量および方法を特定 研究グループは、心理療法、抗うつ薬およびコントロール条件との比較により、大うつ病性障害の治療に対する最適な運動量および方法を特定することを目的として、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 Cochrane Library、Medline、Embase、SPORTDiscus、PsycINFOデータベースを検索。大うつ病の臨床カットオフ値を満たす参加者を対象として、運動療法の効果について検討したあらゆる無作為化試験を適格とした。 スクリーニング、データ抽出、コードおよびバイアスリスクの評価は、2人の独立した著者により実行。主要解析では、アームベースのベイジアンマルチレベルネットワークメタ解析を行い、各群のエビデンスの質は、オンラインツールのCINeMA(confidence in network meta-analysis)を用いて等級付けした。筋力トレーニングとヨガが最も受容性が高い 検索により、218の特異的な研究(495群、被験者1万4,170例)が対象に含まれた。 アクティブコントロール群(例:通常ケア、プラセボ錠剤)と比較して、ウォーキングまたはジョギング(1,210例、κ=51、Hedges' g:-0.62[95%信用区間[CrI]:-0.80~-0.45])、ヨガ(1,047例、33、-0.55[-0.73~-0.36])、筋力トレーニング(643、22、-0.49[-0.69~-0.29])、混合有酸素運動(1,286、51、-0.43[-0.61~-0.24])、太極拳または気功(343、12、-0.42[-0.65~-0.21])は、うつ病を中程度に軽減したことが認められた。 運動の効果は、運動の強度に比例しており、筋力トレーニングとヨガが最も受容性の高い運動であることが示唆された。 結果は、出版バイアスに対して頑健であるとみなされたが、バイアスリスクが低いとのCochrane基準を満たした研究は1件のみであった。そのため、CINeMAによる信頼度はウォーキングまたはジョギングでは低く、その他の治療については非常に低いとの結果だった。

749.

ブレクスピプラゾールvs.アリピプラゾール、日本人のうつ病に対する有効性・安全性に差は?

 抗うつ薬治療に対し効果不十分な日本人のうつ病患者における、ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性、受容性、忍容性、安全性プロファイルの違いを検討するため、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、全体としてブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、同程度の有効性が認められ、良好なリスクベネフィットバランスを有していることが確認された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年1月14日号の報告。ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールとの間に有意な差は認められない ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性などの違いを検討するために、変量効果モデルを用いたシステマティックレビュー、および頻度主義ネットワークメタ解析を行った。主要アウトカムは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアとした。その他のアウトカムには、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア、社会機能評価尺度(SFS)、非治療反応率、非寛解率、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、1つ以上の有害事象発現、重篤な有害事象、アカシジア、振戦、体重増加を含めた。 ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性などの違いを検討した主な結果は以下のとおり。・検索の結果、3件の二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が特定された。・内訳は、ブレクスピプラゾールの研究(ブレクスピプラゾール1mg/日および2mg/日)1件、アリピプラゾールの研究(3mg/日および日本承認用量内のフレキシブルドーズ)2件であった(1,736例)。・ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、プラセボと比較し、両剤ともに有効性が認められた。・ブレクスピプラゾールは、プラセボと比較し、有害事象による治療中止が多かったが、アリピプラゾールでは認められなかった。・アリピプラゾールは、プラセボと比較し、1つ以上の有害事象発現が多かったが、ブレクスピプラゾールでは認められなかった。・ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、プラセボと比較し、アカシジアと体重増加リスクが高かった。・いずれのアウトカムにおいても、ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールとの間に、有意な差は認められなかった。・ブレクスピプラゾール1mg/日は、有効性が良好であったが、体重増加リスクが認められた。・ブレクスピプラゾール2mg/日は、有効性は良好であったが、有害事象による治療中止、アカシジア、体重増加リスクが認められた。・ブレクスピプラゾール2mg/日におけるアカシジアのリスクは、初回用量0.5mg/日で減少が認められた。

750.

普段から活発な高齢者、新型コロナ発症や入院リスク低い

 健康のための身体活動(PA)は、心血管疾患(CVD)、がん、2型糖尿病やその他の慢性疾患の予防や軽減に有効とされているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症や入院のリスク低下と関連することが、米国・ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のDennis Munoz-Vergara氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2024年2月13日に掲載の報告。 本研究では、COVID-19パンデミック以前から実施されている米国成人を対象とした次の3件のRCTのコホートが利用された。(1)CVDとがんの予防におけるココアサプリメントとマルチビタミンに関するRCT、65歳以上の女性と60歳以上の男性2万1,442人、(2)CVDとがんの予防におけるビタミンDとオメガ3脂肪酸に関するRCT、55歳以上の女性と50歳以上の男性2万5,871人、(3)女性への低用量アスピリンとビタミンEに関するRCT、45歳以上の女性3万9,876人。 本研究の主要アウトカムは、COVID-19の発症および入院とした。2020年5月~2022年5月の期間において、参加者はCOVID-19検査結果が1回以上陽性か、COVID-19と診断されたか、COVID-19で入院したかを回答した。PAは、パンデミック以前の週当たり代謝当量時間(MET)で、非活動的な群(0~3.5)、不十分に活動的な群(3.5超~7.5未満)、十分に活動的な群(7.5以上)の3群に分類した。人口統計学的要因、BMI、生活様式、合併症、使用した薬剤で調整後、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19による入院について、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて非活動的な群とほかの2群とのオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・6万1,557人(平均年齢75.7歳[SD 6.4]、女性70.7%)が回答した。そのうち20.2%は非活動的、11.4%は不十分に活動的、68.5%は十分に活動的だった。・2022年5月までに、COVID-19の確定症例は5,890例、うち入院が626例だった。・非活動的な群と比較して、不十分に活動的な群は感染リスク(OR:0.96、95%CI:0.86~1.06)または入院リスク(OR:0.98、95%CI:0.76~1.28)に有意な減少はみられなかった。・一方、非活動的な群と比較して、十分に活動的な群は感染リスク(OR:0.90、95%CI:0.84~0.97)および入院リスク(OR:0.73、95%CI:0.60~0.90)に有意な減少がみられた。・サブグループ解析では、PAとSARS-CoV-2感染との関連は性別によって異なり、十分に活動的な女性のみが感染リスクが低下している傾向があった(OR:0.87、95%CI:0.79~0.95、相互作用p=0.04)。男性では関連がなかった。・新型コロナワクチン接種状況で調整後に解析した場合も、非活動的な群と比較して不十分に活動的な群は、感染と入院のORはほとんど変化しなかった。・新型コロナワクチンは、PAレベルに関係なく感染と入院のリスクを大幅に減少させた。感染リスクはOR:0.55、95%CI:0.50〜0.61、p<0.001、入院リスクはOR:0.37、95%CI:0.30~0.47、p<0.001。

751.

T-DXd中止後の乳がん治療、最も多いレジメンは?(EN-SEMBLE)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXd中止後に実施した治療レジメンの分布を調査したEN-SEMBLE試験の中間解析の結果、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことを、愛知県がんセンターの能澤 一樹氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 現在、T-DXdの後治療に関しては見解が割れており、間質性肺疾患などの有害事象や病勢進行によってT-DXdを中止した後の最適な治療の決定は喫緊の課題である。そこで、研究グループは、T-DXd中止後に使用される治療レジメンの分布とその有効性・安全性を検討するために多施設コホート研究を行った。今回は、中間解析としてT-DXd中止後の治療レジメンの分布に関するデータが発表された(データカットオフ:2023年5月31日)。 対象は、特定使用成績調査に登録し、切除不能または転移を有するHER2陽性の乳がんに対して2020年5月25日~2021年11月30日にT-DXdの投与を開始したものの、2023年5月31日までに中止し、後治療を開始した患者であった。主要評価項目は、T-DXd中止後の治療レジメンの分布、無増悪生存期間、治療成功期間、後治療に切り替えるまでの期間、全生存期間、全奏効率などで、T-DXdを中止した理由別に評価される予定。 主な結果は以下のとおり。・解析には664例が組み込まれた。65歳未満は62.5%、年齢中央値は60.0歳(範囲 30~89歳)、女性が99.5%であった。・T-DXdの後治療で多かったのは、(1)トラスツズマブ+ペルツズマブ(204例[30.7%])、(2)トラスツズマブ(157例[23.6%])、(3)ラパチニブ(104例[15.7%])を含むレジメンであった。・(1)のトラスツズマブ+ペルツズマブを含むレジメン(30.7%)にさらに併用された治療は、化学療法が23.0%(エリブリン11.6%、ビノレルビン2.7%、ドセタキセル2.0%、パクリタキセル2.0%、カペシタビン1.5%、S-1 1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、レトロゾール0.9%、アナストロゾール0.5%など)で、併用薬なしは4.7%であった。・(2)のトラスツズマブを含むレジメン(23.6%)にさらに併用された治療は、化学療法が16.7%(エリブリン5.4%、ビノレルビン3.8%、S-1 2.0%、ゲムシタビン1.5%、カペシタビン1.4%、パクリタキセル1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、アナストロゾール0.8%、タモキシフェン0.5%など)で、併用薬なしは4.2%であった。・(3)のラパチニブを含むレジメン(15.7%)にさらに併用された薬剤は、カペシタビン13.6%、レトロゾール0.6%、アナストロゾール0.5%などで、併用薬なしは0.3%であった。・エリブリンが投与された130例(19.6%)のうち、併用が多かったのはHER2抗体薬17.3%(トラスツズマブ+ペルツズマブ11.6%、トラスツズマブ5.4%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+レトロゾール0.2%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+その他の薬剤0.2%)、ドセタキセル0.2%で、併用薬なしは2.1%であった。・ベバシズマブが投与された53例(8.0%)のうち、パクリタキセルが併用されたのは7.8%、nab-パクリタキセルが併用されたのは0.2%であった。・CDK4/6阻害薬が投与された19例(2.9%)のうち、アベマシクリブとの併用が多かったのはフルベストラント1.2%、アナストロゾール0.5%、エキセメスタン0.2%、レトロゾール0.5%、LH-RHアゴニスト0.2%、パクリタキセル0.2%であった。パルボシクリブとの併用が多かったのはレトロゾール0.5%、フルベストラント0.5%であった。・化学療法の有無別にみると、化学療法を含む後治療は484例(72.9%)であった。化学療法との併用で多かったのは、抗HER2療法53.3%、化学療法のみ9.8%、分子標的薬(抗HER2療法以外)8.1%、抗HER2療法+内分泌療法0.9%、抗HER2療法+その他の薬剤0.3%、抗HER2療法+分子標的薬(抗HER2療法以外)0.3%、免疫チェックポイント阻害薬0.2%であった。・化学療法を含まない後治療は180例(27.1%)であった。抗HER2療法のみが11.1%で最も多かったが、抗HER2療法+内分泌療法6.8%、内分泌療法のみ4.2%、分子標的薬(抗HER2療法以外)+内分泌療法3.0%、分子標的薬(抗HER2療法以外)のみ0.5%、抗HER2療法+分子標的治療(抗HER2療法以外)0.2%などもあった。 これらの結果より、能澤氏は「T-DXd中止後の乳がん治療において、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことが明らかになった。最終的な分析として、後治療のレジメンの有効性と安全性を調査する予定である。EN-SEMBLE試験の結果は、アンメット・メディカル・ニーズであるT-DXdの後治療の最適化に関する知見を提供できると考える」とまとめた。

752.

1型糖尿病に対する週1回の基礎インスリン補充の効果と安全性は(解説:安孫子亜津子氏)

 新たな週1回製剤であるインスリンicodecは、世界で第III相の臨床試験が行われており、1型糖尿病に対する52週間の無作為化非盲検第IIIa相試験である「ONWARDS 6」の結果が、2023年10月17日号のLancet誌で報告された。 この試験は日本を含む12ヵ国99施設で行われ、基礎インスリンとして週1回投与のicodecと、1日1回投与のデグルデクを比較したものであり、両群ともにボーラスインスリンとしてはアスパルトを併用している。主要評価項目はベースラインから26週時におけるHbA1cの変化量であり、その他の有効性評価項目としては52週時におけるHbA1cの変化量、26週時の空腹時血糖値の変化、22~26週における血糖日内変動におけるTime in range(TIR)など。安全性の評価項目としては体重変化、平均インスリン週投与量、54mg/dL未満の臨床的に重大な低血糖、夜間低血糖、重症低血糖などである。 2021年4月30日~10月15日に655例がスクリーニングされ、このうち582例がicodec群(290例)またはデグルデク群(292例)に割り付けられた。 icodec群およびデグルデク群のHbA1c値は、ベースラインでそれぞれ7.59%、7.63%から、26週時には0.47%、0.51%低下した。推定平均変化量の群間差は0.05%(95%CI:-0.13~0.23)であり、icodec群のデグルデク群に対する非劣性が確認された(p=0.0065)。52週時点のHbA1cではicodec群0.37%、デグルデク群0.54%の低下でデグルデク群のほうが有意に低下しており(p=0.021)、空腹時血糖値は26週および52週においてデグルデク群で有意な低下が認められたが、TIRには両群で有意差はなかった。 安全性の評価項目では、26週時までの54mg/dL未満の低血糖または重症低血糖の発生頻度は、icodec群19.9件/人年、デグルデク群10.4件/人年で、icodec群が有意に高かった(p<0.0001)。57週時においても、icodec群ではデグルデク群と比較し低血糖の発生頻度が有意に高かった(17.0件/人年vs.9.2件/人年、p<0.0001)。体重変化は両群で差はなく、総使用インスリン量は両群で差がなかったが、基礎インスリン量はicodec群で多く、ボーラスインスリン量はデグルデク群で多かった。 2型糖尿病を対象としたONWARDS 1~5ではicodecでHbA1c値の低下が認められている結果が多いが、今回の1型糖尿病では差が認められなかった。ONWARDS 6の対象はベースラインのHbA1c値が7.6%前後に管理された1型糖尿病患者であるといった特徴もある。空腹時血糖値70~130mg/dLを目標として基礎インスリン量の調整をする中で、icodec群で有意に低血糖の発生が多く、さらにicodec群で総基礎インスリン使用量が多かったにもかかわらず、空腹時血糖値はデグルデク群ほど低下していなかった。この結果から1型糖尿病でicodecを使った強化インスリン療法において、低血糖を避けて適切な用量調整をするには今後の課題があると感じた。

753.

調剤基本料は引き上げ、賃上げなるか!?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第126回

2024年2月14日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会が開催され、本年度の調剤報酬改定の個別項目と点数が厚生労働省に答申されました。これでおおむねの内容と点数が決まりました。2023年11月の本コラムで、2024年度の調剤報酬改定の目玉は「調剤基本料と地域支援体制加算の見直しになりそう」と書きました。良いサービスを提供し続けるためにも薬局が調剤で得られる報酬がどうなるかというのは大きな問題ではあるのですが、今回の改定はそれだけでなく、「薬局ではこういうことができるんですよ!」と大きな声で世の中に言いたくなるような、薬局のこれからの方向性を大きく示すような改定になるのではないかと思います。では、改定の内容を見ていきましょう。調剤基本料1~3は3点ずつ引き上げられました。地域の医薬品供給の拠点としての役割を担うこと、地域医療に貢献すること、また賃上げを実施することなどが目的とされているようです。全体的に引き上げられたことに少し驚いています。しかし、調剤基本料だけで薬局が成り立つ時代はもう終わりを迎え、「調剤以外に何ができるか」ということが求められ、それらについては地域支援体制加算でしっかり評価をするという建付けになったことが伺えます。さて、その地域支援体制加算についてです。地域支援体制加算1~4の点数は、それぞれ7点引き下げられました。これまでも指摘されていた調剤基本料1とそれ以外の薬局の実績の要件が違いすぎるという点については今回統一されました。中小規模の面薬局であれば優遇されるといった経過措置のような期間はもう終わりで、これからは調剤以外の機能と実績で算定しますよ、というメッセージのような気がします。地域支援体制加算が新設されたのが2018年の調剤報酬改定ですから、10年ほどかけてようやく「調剤だけからの脱却」が見えてきたのではないでしょうか。正直、この加算がこれほど大きな役目を負うとは思っていませんでしたが、いい旗振り役になったのではないかと思います。今回の改定の施行開始は2024年6月1日ですので、まだ時間があります。じっくり取り組むしかない、そんな気がします。今回は、全体的な印象や調剤基本料と地域支援体制加算をピックアップしました。診療報酬全体で見ると、他にもさまざまな動きがありますので、折を見て薬局への影響を紹介していきたいと思います。

754.

英語力ゼロからの国際学会成功ガイドブック

この本と、挑戦する気持ちがあれば国際学会プレゼンはできる!英語が苦手でも留学経験がなくても大丈夫!医師になってから英語を始めた著者たちだからこそ教えられる、経験をもとに本当に役に立つテクニックと、日本人が英語で苦労する部分やつまずきやすいポイントの解決策を1冊でマスター。アクセプトされる抄録の書き方、流暢に話せなくても成功するための方法、かっこよくてわかりやすいスライドづくりのノウハウなど、実際に準備するステップごとに解説。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する 英語力ゼロからの国際学会成功ガイドブック定価2,420円(税込)判型A5判頁数88頁発行2024年2月著者山田 悠史、原田 洸、園田 健人協力Medical English Hubご購入(電子版)はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら

755.

薬歴からサルファ剤アレルギー患者の過敏症を回避【うまくいく!処方提案プラクティス】第58回

 今回は、化学構造式のスルホンアミド構造に目を向けて、類似構造を有する薬剤の薬剤過敏症を未然に回避した事例を紹介します。サルファ剤はスルホンアミド構造をもつ薬剤の総称1)ですが、意外な薬剤がこの構造を有していることがあります。副作用やアレルギーの記録を活用し、どのような有害エピソードがあったのかを聴取してみましょう。患者情報70歳 女性(外来)基礎疾患高血圧症、骨粗鬆症副作用歴「サルファ剤」とだけ薬歴に記載処方内容1.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カルベジロール錠10mg 1錠 分1 朝食後3.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1カプセル 分1 朝食後4.アレンドロン酸35mg 1錠 起床時 毎週月曜日服用【新規処方】1.セレコキシブ錠100mg 2錠 分2 朝夕食後2.レバミピド錠100mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、基本動作はすべて自立していましたが、今回腰を痛めて整形外科を受診しました。そこで鎮痛薬を希望し、セレコキシブとレバミピドが処方されました。当薬局で処方箋を受け付け、鑑査のタイミングで薬歴を確認したところ、サルファ剤のアレルギーが登録されていることに気がつきました。そこで患者さんに、感染症治療の抗菌薬で副作用が出たことがあったかどうか確認しました。すると、過去に尿路感染症治療で服用したスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠で全身に発疹と呼吸困難感が生じたと話してくれました。今回の処方薬をそのまま服用した場合、構造活性相関としてセレコキシブのスルホンアミド構造によりサルファ剤アレルギーが生じる可能性が高いため、医師に処方変更を提案することにしました。スルホンアミド骨格(セレコキシブ添付文書より)処方提案と経過医師に電話で、患者にサルファ剤によるアレルギー症状の既往があり、発疹と呼吸困難感が生じていたことを報告しました。今回処方となったセレコキシブもスルホンアミド構造を有していて、過敏症による有害反応の可能性があることを伝えました。医師より代替薬はどうしたらよいか相談があったので、安全面などを考慮してアセトアミノフェン500mg 3錠 分3 毎食後を提案し、了承を得ました。患者は、アセトアミノフェンを7日間内服して腰痛も改善し、その後はアセトアミノフェンも終了となりました。1)岡田 正人ほか. 薬局. 薬剤過敏症歴がある患者の薬物治療. 2018;69:63.2)セレコックス錠 添付文書

756.

キムチでスリムに?

 キムチは古くから韓国の食卓の定番メニューであり、近年では米国でも人気が高まってきている。そのキムチを日常的に摂取することが、体重増加の抑制につながるのではないかとする研究結果が、「BMJ Open」に1月30日掲載された。論文の上席著者である中央大学校(韓国)のSangah Shin氏によると、「男性では、1日当たり1~3人前分のキムチを摂取していることが、肥満リスクの低下と関連がある」という。ただし同氏は、「キムチには塩分が多く含まれていることに注意が必要であり、またキムチ摂取量がより多い場合には、肥満リスクが上昇する可能性も示唆された」と付け加え、「キムチを多く食べるほど良い」と単純化した解釈をしないよう注意を呼び掛けている。 これまでの動物実験から、キムチ由来のプロバイオティクスには抗肥満作用があることが示されている。ただし、ヒトを対象とする疫学研究でのエビデンスはわずかしかない。Shin氏らは、2004~2013年の韓国国民健康栄養調査(KNHANES)のデータを用いた横断的解析により、この点を検討した。解析対象は、40~69歳の成人11万5,726人(平均年齢51歳、男性31.8%)。肥満(BMI25以上)の有病率は、男性36.1%、女性24.7%。 キムチの総摂取量が1日当たり1食分未満の群を基準として、年齢や飲酒・喫煙・運動習慣、摂取エネルギー量、食物繊維・ナトリウム・カリウム摂取量、婚姻状況、教育歴、所得などを調整後、男性ではキムチ総摂取量が1日当たり1~2食分の群の肥満オッズ比(OR)は、0.875(95%信頼区間0.808~0.947)、1日当たり2~3食分の群ではOR0.893(同0.817~0.978)であり、オッズ比の有意な低下が示された。一方、女性ではキムチ総摂取量と肥満との関連が非有意だった。 キムチの素材によって、体重との関連が異なることも考えられる。例えば、1食分の重量も水分含有量によって50~95gの範囲で異なる。そこで、素材別の解析を施行した。すると女性でも、白菜を用いるキムチ(ペチュキムチ)の摂取量が1日当たり2~3食分の群でOR0.921(95%信頼区間0.865~0.981)、大根を用いるキムチ(カクトゥギ)の摂取量が1日当たり1~2食分の群でOR0.895(同0.855~0.938)という有意な関連が示された。なお、ペチュキムチ、カクトゥギの1食分の重量はともに50g。 男性では、ペチュキムチ、カクトゥギのいずれについても、キムチ総摂取量での解析結果とほぼ同様の結果が示されたが、カクトゥギについては1日当たり2~3食分の場合に肥満リスクとの関連が非有意だった。また、男性・女性ともに、その他の素材のキムチの摂取量は、肥満リスクとの関連が乏しかった。 研究者らによると、キムチに含まれているLactobacillus brevisやL. plantarumという植物性乳酸菌には、抗肥満作用があることが知られているという。ただし、「本研究からは因果関係は証明されず、ほかの因子によってこの関連が生じているのかもしれない」と、研究の限界点を述べている。また、示された関連はJカーブのようであり、1日当たりのキムチ総摂取量が5食分以上の場合、肥満のオッズ比が性別を問わず、非有意ながら1を上回っていることも、留意すべき点として挙げている。 そのほかの留意点として、キムチには塩分が多く含まれているため、心臓には良くない可能性があることを指摘。一方で、野菜を発酵させて作るキムチにはカリウムが多く含まれているため、塩分による健康リスクが軽減される可能性もあるとのことだ。研究グループでは結論として、「キムチに含まれる塩分やそのほかの成分の健康への影響を考慮した上で、適量を摂取することが推奨されるのではないか」と述べている。

757.

第200回 脳神経外科の度重なる医療過誤を黙殺してきた京都第一赤十字病院、背後にまたまたあの医大の影(後編)派遣先の医局員の技術向上や医療安全には無頓着だった府立医大

幾度も警鐘が鳴らされていたにもかかわらず、まったく改善策が取られなかった背景こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2月16日、植村 直己冒険賞の発表がありました。同賞は冒険家・植村 直己氏の功績と精神を後世に継承するために設けられた賞で、自然を相手に創造的な勇気ある行動をした人、または団体に贈呈されてきました。主催は植村氏の出身地、兵庫県豊岡市です。今年は4人が選ばれましたが、そのうち、大西 良治氏と田中 彰氏はネパールのヒマラヤ山中にある人跡未踏の谷「セティ・ゴルジュ」を探検した功績が評価されました。昨年7月に放送された、NHKスペシャル「ヒマラヤ“悪魔の谷”〜人跡未踏の秘境に挑む〜」に登場した2人です。水位が下がる真冬に400メートル以上の谷底にロープで降下、激流を探検する姿はテレビで見ても生きた心地がしませんでした。その大西氏は私の大学時代の山のクラブの後輩です。卒業後、特に沢登りの世界で頭角を現し、北アルプスで前人未踏として知られた称名ゴルジュ(称名滝とその上のゴルジュ帯)の単独遡行がとくに有名です(興味がある方は大西氏の著書『渓谷登攀』《山と溪谷社刊》をどうぞ)。我々のクラブは、宮城・山形県境に位置する二口(ふたくち)山塊の沢で沢登りのトレーニングを積んでいたのですが、その二口での沢の経験が、植村 直己冒険賞にまでつながるとは……。大西氏受賞のニュースを聞いて、感慨深く感じました。さて前回は、京都市保健所が京都第一赤十字病院(京都市東山区、池田 栄人院長)に対して医療法25条による立ち入り調査を行い、改善を求める行政指導を行ったというニュースについて、どのような事案が問題とされ、どういった指導が行われたかについて、新聞報道や「月刊Hanada」(飛鳥新社)の記事などを基に書きました。今回は多発していた医療過誤、医療事故に対して幾度も警鐘が鳴らされていたにもかかわらず、改善策がまったく取られずに事故が続いた背景について、独自に取材した内容も交えながら書きます。脳腫瘍ではない正常脳の一部を摘出、脳圧が高まっている患者では禁忌の腰椎穿刺を研修医が単独で実施京都市保健所が不適切と判断した事例は、いずれも同病院の脳神経外科で確認されたものです。たとえば、2020年に行われた70代女性に対する脳腫瘍摘出手術は、一度目の手術で執刀医は箇所を間違えて開頭、脳腫瘍ではない正常な脳の一部を摘出していました。また、2021年に起きた研修医の医療処置を受けた患者が死亡した事例は、静脈洞血栓症が疑われる20代女性に対し、脳圧が高まっている状態では禁忌とされる腰椎穿刺を、研修医が独断かつ単独で行い、患者を死に至らしめていました。いずれのケースも患者や家族に実際の治療経過は正しくは伝えられず、腰椎穿刺の事例は院内の安全対策委員会でも調査委員会は設置されませんでした。こうした一連の、過誤もみ消しとも取れる対応について、京都市保健所は1月17日、診療録の記載方法、治療法などについての患者への説明方法、患者の遺族に対する診療経過の説明方法、死亡診断書の記載方法、医療安全管理委員会の運用方法などに関する指導を行いました。さらに、医療安全部門での把握や医療事故対応等について12件を再検証し保健所に報告するよう求めました(再検証のみ求められたものも49件)。元第一脳神経外科部長が10月に市に公益通報を行い京都市が動く立ち入り調査のきっかけとなったのが、2023年9月26日発売の「月刊Hanada」の11月号の記事、「告発スクープ!正常脳を切除、禁忌の処置で死亡 医療事故を放置 日本赤十字社の闇」です。この報道を契機として、第一日赤の元第一脳神経外科部長(以下、元部長)が10月に市に公益通報を行い、京都市が動いたのです。公益通報とは、「労働者が、不正の目的でなく、その労務提供先又はその役員・従業員等について一定の法令違反行為が生じ、またはまさに生じようとしていることを、その労務提供先や行政機関、外部機関に対して通報すること」とされています。企業の法令違反行為などを行政機関等に通報する際に活用される仕組みで、通報者は公益通報者保護法によって公益通報をしたことを理由とした解雇や、その他の不利益な取り扱いから保護されます。他大学脳神経外科の傘下となると府立医大脳神経外科傘下とする第二脳神経外科が新設第一日赤の元脳神経外科の部長が脳神経外科で起こっていた事故を公益通報する、とは一体どういうことでしょうか。取材によれば、第一日赤で事故が多発していた2019〜2020年当時、同病院には脳神経外科が2つ存在していました(現在は1つ)。元々、同病院の脳神経外科は1つでした。同科は2016年以降、京都府立医科大学脳神経外科の傘下でした。しかし、医師補充をスムーズにすることを目的に、2019年2月に府立医大から離れ、他大学の脳神経外科の傘下となりました。すると、同年3月、京都府立医科大学脳神経外科傘下の第二脳神経外科が新設されたのです。背景には、「第103回 大津市民病院の医師大量退職事件、『パワハラなし』、理事長引責辞任でひとまず幕引き」などでも書いた、府立医大のジッツ戦略があったとみられます。幾度も注意喚起を行うも事態は是正されず「月刊Hanada」の報道にもあるように、その後、第二脳神経外科で事故が多発しました。第一脳神経外科の元部長は、病院幹部に医療事故が頻発していること等の是正を求める文書を提出するなど、幾度も注意喚起を行いましたが、一向に事態は是正されませんでした。脳腫瘍摘出手術で開頭部位を間違えて正常脳を摘出してしまった事案や、研修医が脳圧が高まっている状態では禁忌とされる腰椎穿刺を行った事案は、注意喚起後に起こっています。同部長は同病院の経営陣だけでなく、日本赤十字社本社、さらには府立医大の脳神経外科などにも注意喚起を行い、改善を求めたものの、事態が改善されることはなかったとのことです。第一脳神経外科は2022年3月に解体、元部長らは第一日赤を自主退職「月刊Hanada」によれば、元部長は府立医大の脳神経外科の教授に医師の再教育や再発防止などへの協力を要請していますが、「別病院のことなので介入できない」と一蹴されています。ただ一方で、2021年夏には、同部長に他病院への異動を要請、同科のもう一人の医師に対しても、府立医大脳神経外科の医局に所属した上での他病院への異動を求めていました。なお、その後、第一脳神経外科は2022年3月に解体され、元部長と同科にもう一人いた医師は第一日赤を自主退職しています。元部長が事故を起こした第二脳神経外科の医師に科を越えて指導したことがパワハラと捉えられたり、注意喚起を目的に実際に起きた医療事故数例を学会発表したことが他科の症例写真の無許可使用とされたことなどが、第一脳神経外科解体と自主退職を余儀なくされた理由とみられます。最終的に、第一日赤の脳神経外科では、医療事故を注意喚起してきた第一脳神経外科の医師たちが放逐され、事故を頻発してきた府立医大脳神経外科系列の第二脳神経外科が「脳神経外科」として残ることになりました。その後も、同科による事故は続き、事態が一向に改まらなかったことを憂いた元部長が、「月刊Hanada」の報道をきっかけに公益通報を敢行、京都市保健所の立ち入り検査に至ったわけです。医療の質・安全学会学術集会で脳圧亢進時の処置による死亡例3例を示し注意喚起も発表取り下げ取材したところ、元部長が注意喚起を目的に学会発表していたのは、2021年11月の第16回医療の質・安全学会学術集会でのことでした。「医学の細分化の果てに忘れ去られつつある医学の常識:恐れを知らない医師と流される看護師-医療安全を阻むものとの戦い-」と題された発表では、「うっかりミスや技能の未熟が原因ではない医療事故は、連続し、防止するのが極めて困難」として、脳ヘルニア時の腰椎ドレナージによる死亡例(処置した医師が禁忌であることを知らなかったと思われる事例)、小脳腫脹時の腰椎穿刺による死亡例(研修医がCT読影ができなかった事例、前述の20代女性の事例)、脳圧亢進時の血液透析による死亡例(脳圧亢進時の透析は呼吸が止まる危険性があることを知らなかった事例)の3例の詳細が発表されていました。いずれも脳圧亢進時の処置による死亡で、3例目は腰椎穿刺は関係なく、透析による不均衡症候群(病院はICU入室中の窒息と診断)でした。「死亡事例から学ぶことが、救命できなかった患者さんに対する医療者としての責務」発表では、医療安全を阻む要素として、「医師の傲慢さ」、「看護師の臆病さ」(知っていても声をあげない点など)、「病院幹部の無関心」を指摘、「まとめ」において「一つの死亡事故の真の原因を解明することは同じ原因で起こる次の事故を未然に防ぐことになる」「表面的には隠された、重大な医療事故が起こっている組織を安全にするためには、その組織の文化にまでメスを入れ、従来の価値観、やり方を大きく変える必要がある」と医療事故調査の重要性や組織体制の見直しの必要性を指摘、「死亡事例から学ぶことが、救命できなかった患者さんに対する医療者としての責務」と結んでいます。なお、この発表のスライドは2週間程度学会のWebサイトで閲覧できましたが、その後、第一日赤の池田 栄人院長より取り下げの依頼があり、取り下げられています。「判断を医療機関のみに委ねるのではなく、明確な指針が必要だ」として遺族などが医療事故調査制度見直しを提言医療事故が起こっても、院内事故調査委員会を設置して原因究明をしようとせず、患者や家族には虚偽の説明を繰り返して来た第一日赤。その悪質さは度を越しており、現行の医療事故調査制度の欠点を改めてあぶり出したと言えるでしょう。医療事故調査制度は、すべての医療機関に対して、医療事故で患者が死亡した場合、第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告することや、原因を調査することなどを義務付けています。しかし、報告や調査を行うケースに該当するかどうかは医療機関の院長等の判断に任されています。そうした運用ルールが過誤や事故の隠蔽につながっていることが最近問題視されています。先週の2月12日には、医療事故の遺族などが都内でシンポジウムを開き、医療事故調査制度の課題や改善策について意見を交わしています。NHKなどの報道によれば、「医療過誤原告の会」の宮脇 正和会長は、団体に相談があったおよそ60件について、医療事故として報告されたのは14%に留まり、アンケートでは報告されなかった遺族の9割以上が「納得できなかった」と答えたと紹介、その上で宮脇会長は、「判断を医療機関のみに委ねるのではなく、明確な指針が必要だ」として、医療事故調査制度を見直す必要があると語ったとのことです。ジッツ拡大には注力するも派遣先の医局員の技術向上や医療安全にはまったくもって無頓着だった府立医大それにしても、事故を頻発していた科を温存し、警鐘を鳴らしていた科を閉鎖してしまうとは、普通では考えられない病院運営と言えます。そこまで、府立医大に依存しないと第一日赤はやっていけないということなのでしょうか。加えて、医師を派遣する府立医大が、ジッツ拡大には注力するものの、派遣先の医局員の技術向上や医療安全にはまったくもって無頓着だったことにも驚きます。京都市保健所が、第一日赤に対して再検証し、保健所に報告するよう求めた期限は3月18日です。第一日赤がどこまで事故や過誤の詳細を詳らかにし、患者や家族への説明・謝罪に真摯に対応するかが注目されます。

758.

薬剤性過敏症症候群、国際的コンセンサスを策定

 薬剤性過敏症症候群(DRESS:Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms)の重症度評価と治療に関する国際的なコンセンサスを策定する研究結果が、スイス・チューリヒ大学病院のMarie-Charlotte Bruggen氏らにより報告された。DRESSは、発現頻度は低いものの、死に至る可能性もある重症薬疹の1つである。研究グループはRAND/UCLA適切性評価法(デルファイ変法)を用いて100項目について検討を行い、93項目について合意形成に至った。著者は、「DRESSはさまざまな特徴を有する重度の皮膚有害反応を呈する薬疹で、臨床医は診断と治療管理に難渋する。今回のコンセンサスは、DRESS患者の診断、評価、治療を支援するものであり、将来的なガイドライン開発の基礎となるはすだ」と述べている。JAMA Dermatology誌2024年1月1日号掲載の報告。 研究グループは、DRESS患者の診断、重症度評価、治療に関する国際的なコンセンサスを策定することを目的に、デルファイ変法を用いて各国の専門家による検討を行った。DRESSの専門家57人に参加を呼び掛け、54人が2022年7~9月に実施された調査に参加。DRESSのベースライン診断、重症度評価、急性期および亜急性期の治療管理に関する100項目を評価した。合意形成の基準は、デルファイ変法(1点[きわめて不適切]~9点[きわめて適切])による評価の中央値が7点以上かつ見解不一致指数(disagreement index)が1点未満と定義した。 主な結果は以下のとおり。・第1回の適切性評価において、82項目について合意形成が得られた。・第2回評価で13項目が改訂・評価され、最終的に、全体で93項目の合意形成が得られた。・専門家らは、基本的な診断法や重症度評価、臓器固有のさらなる研究について合意した。・また、肝臓、腎臓、血液の関与の程度とその他臓器の損傷に基づく重症度評価(軽症、中等症、重症)について合意した。・DRESSの重症度に応じた治療管理の主な方針に関しても合意した。・DRESS患者の急性期後のフォローアップおよびアレルギー検査に関する一般的推奨事項も策定された。

759.

日本人統合失調症患者の死亡、入院、退職、病欠と関連する因子

 統合失調症の治療において、早期死亡リスク、入院リスクに影響を及ぼす再発、離職は、重要な課題である。北里大学の稲田 健氏らは、日本人統合失調症患者における重要なアウトカムである死亡、入院、退職、病欠のリスク因子を評価した。BMC Psychiatry誌2024年1月3日号の報告。 日本のレセプトデータベースより特定した統合失調症患者を対象に、ネステッドケースコントロール研究を実施した。各アウトカムは、年齢、性別、インデックス日、雇用状況(従業員または扶養家族)が一致した最大4つのコントロールと比較した。潜在的なリスク因子は、イベント発生前または発生月から3ヵ月以内の処方箋または診断により定義した。潜在的なリスク因子と各アウトカムとの関連性は、ステップワイズ変数選択を伴う多変数条件付きロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・各アウトカムにおけるケースと対象患者は以下のとおりであった。【死亡】144例、3万8,451例【入院】1,520例、3万5,225例【退職】811例、1万8,770例【病欠】4,590例、1万8,770例・抑うつ症状は、死亡(オッズ比[OR]:1.92、95%信頼区間[CI]:1.12~3.29)、入院(OR:1.22、95%CI:1.05~1.42)、病欠(OR:1.46、95%CI:1.36~1.57)のリスク因子であることが示唆された。・死亡に対するその他のリスク因子は、入院歴、チャールソン併存疾患指数(CCI)スコア、下剤の処方であった。・睡眠薬、下剤の処方、抗コリン薬の処方は、入院のリスク因子であった。・催眠薬と抗コリン薬の処方は退職のリスク因子であった。・CCIスコア、睡眠薬の処方、下剤の処方、糖尿病治療薬の処方は、病欠のリスク因子であった。 著者らは「われわれの知見は、統合失調症患者の重要な臨床アウトカムのリスク因子として、抑うつ症状および便秘、錐体外路症状など、いくつかの身体症状が特定されていることを示唆している。統合失調症の治療では、抑うつ症状と身体症状の両方に注意を払う必要がある」としている。

760.

朝食抜きや夕食後の間食、食行動の「数」が抑うつと関連

 抑うつにはさまざまな因子が関係するが、不健康な食行動が多いこともその一つと言えそうだ。朝食を抜く、夕食後に間食をするといった不健康な食行動について、その「数」に着目した研究が新たに行われた。その結果、これらの食行動の数が多い人ほど、抑うつのリスクが高かったという。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らによる研究結果であり、詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」に12月22日掲載された。 朝食を抜くことと抑うつリスクとの関連については、著者らの先行研究を含め、これまでにもいくつか報告されている。しかし例えば、夕食後の間食が朝食抜きに影響を及ぼす可能性などもあることから、食行動のそれぞれではなく、その積み重ねと抑うつとの関連を検討する方が現実に即している。ただ、この観点での研究はほとんど行われていなかった。そこで、これらの点を踏まえて今回、食行動の数による影響が詳細に検討された。 著者らは、栄養疫学調査に参加した製造業の従業員を対象とし、ベースライン時(2012年4月と2013年5月)と3年間の追跡期間後(2015年4月と2016年5月)に調査を実施した。抑うつ症状は自己評価尺度(CES-D)を用いて評価した。不健康な食行動は、朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食の3つについて、週に3回以上行っている行動の数を調査。その他、生活習慣や労働環境、栄養摂取の状態なども調査した。 解析対象者は19~68歳の914人(男性816人、女性98人)だった。不健康な食行動の数で分類すると、1つもない人は429人(平均43.0歳、男性87.4%)、1つの人は364人(同41.4歳、89.8%)、2~3つの人は121人(同39.6歳、94.2%)だった。不健康な食行動の数が多い人ほど、若年齢、男性・交代勤務・喫煙者の割合が高い、残業時間が長い、仕事・家事・通勤中の身体活動が多いという傾向があった。また、仕事のストレスが大きく、一人暮らしの傾向があり、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、マグネシウム、亜鉛の摂取量が少なかった。 3年間の追跡期間中、抑うつ症状(CES-D≧16)を発症したのは155人(17.0%)だった。対象者の背景因子や職業・生活習慣因子の違いによる影響を調整して解析した結果、不健康な食行動が2~3つの人は、1つもない人と比べて、抑うつのリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.87、95%信頼区間1.10~3.21)。しかし、栄養因子による影響を加えて調整すると、抑うつリスクの差は有意ではなくなった(同1.67、0.96~2.90)。一方、重度の抑うつ症状(CES-D≧23)については、全ての因子を調整しても、不健康な食行動が2~3つの人の方がリスクは有意に高かった。 著者らは、これまでの研究との違いに関して、「抑うつの予防効果が示唆されている、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、n-3系多価不飽和脂肪酸、マグネシウム、亜鉛の摂取量」による影響を含めて検討したと説明している。その上で、「朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食という不健康な食行動の数が抑うつのリスク上昇と関連していた」と結論付け、「この関連は、気分を改善する効果のある栄養素の摂取量が少ないことにより、部分的に説明できるかもしれない」と述べている。

検索結果 合計:5097件 表示位置:741 - 760