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ADHD治療薬、長期使用で心血管疾患リスク増大

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。 2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。 主な結果は以下のとおり。・CVDを発症した1万388例(年齢中央値34.6歳、男性59.2%)を同定し、CVDを有さない対照者5万1,672例とマッチさせた。両群の追跡期中央値は4.1年だった。・ADHD治療薬の使用期間が長いほど、非使用者と比較したCVDリスクが増加していた。(使用期間1~2年の調整オッズ比[aOR]:1.09、3~5年:1.27、5年超:1.23)。・ADHD治療薬の長期使用は高血圧(5年超のaOR:1.80)、動脈疾患(5年超のaOR:1.49)のリスク増加と関連していた。・14年の追跡期間全体では、ADHD治療薬の使用期間が1年延長するごとにCVDリスクが4%増加し、最初の3年は8%とより大きなリスク増加が見られた。小児および青年(25歳未満)、成人(25歳以上)において同様のパターンが観察された。 研究者らは「この症例対照研究では、ADHD治療薬の長期服用がCVD、とくに高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連していることが明らかになった。これらの所見は、ADHD治療薬の長期使用について治療方針を決定する際に、潜在的な利益とリスクを慎重に比較検討することの重要性を強調するものである。臨床医は治療期間中、定期的かつ一貫して心血管系の徴候や症状をモニタリングすべきである」と結論付けている。

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母乳最低限の超早産児の神経発達、ドナーミルクvs.早産児用粉ミルク/JAMA

 最小限の母乳しか与えられなかった超早産児は、ドナーミルクまたは早産児用粉ミルクのいずれを与えられても、修正月齢22~26ヵ月時点の神経発達アウトカムに差異は認められなかった。米国・アイオワ大学のTarah T. Colaizy氏らが、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkに参加している米国の大学医療センター15施設で実施した無作為化二重盲検臨床試験「MILK試験」の結果を報告した。出生後入院中の超早産児の母乳育児は、早産児用粉ミルクと比較して神経発達の良好なアウトカムと関連しているが、母乳をまったく与えていない、または最小限しか与えていない超早産児において、ドナーミルクが早産児用粉ミルクと同様の神経発達上の利点をもたらすかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年1月30日号掲載の報告。修正月齢22~26ヵ月でのBSID認知スコアを比較 研究グループは、2012年9月7日~2019年3月13日に、生後7日未満で参加施設に入院した在胎週数29週0日未満または出生時体重1,000g未満の新生児を登録した。主な登録基準は、(1)出産した母親が授乳を開始していない、(2)授乳は開始されたが出産後21日以前に母親が搾乳を中止、(3)出生後7~21日の間、母乳供給量が最小限(5日間の平均母乳量が3オンス/日以下)であった。 登録した新生児をドナーミルク群または早産児用粉ミルク群に無作為に割り付け、無作為化から生後120日時点か死亡または退院のいずれか早い日まで与えた。母乳の基準が満たされていれば、生後21日目までいつでも無作為化できるとした。 主要アウトカムは、修正月齢22~26ヵ月で測定されたBayley乳幼児発達検査(BSID)の認知スコアとした。無作為化から修正月齢22~26ヵ月の間に死亡した乳児には、54ポイント(スコア範囲:54~155、≧85は神経発達の遅れがないことを示す)を割り当てた。副次アウトカムは、BSIDの言語および運動スコア、院内での成長、壊死性腸炎、死亡などを含む24項目であった。修正月齢22~26ヵ月の追跡調査終了日は2021年11月15日であった。ドナーミルク群と早産児用粉ミルク群で神経発達アウトカムに有意差なし 適格新生児1,965例のうち、483例が無作為化された(ドナーミルク群239例、早産児用粉ミルク群244例)。在胎週数中央値は26週(四分位範囲[IQR]:25~27)、出生時体重中央値は840g(IQR:676~986g)、女児52%であった。出産した母親の人種は、自己申告で黒人52%(247/478例)、白人43%(206/478例)、その他5%(25/478例)であった。 追跡調査前に死亡した乳児は54例だった。生存乳児の88%(376/429例)は、修正月齢22~26ヵ月で評価された。 調整平均BSID認知スコアは、ドナーミルク群80.7(SD 17.4)、早産児用粉ミルク群81.1(SD 16.7)、補正後平均群間差は-0.77(95%信頼区間[CI]:-3.93~2.39)で、両群間に有意差はなかった。補正後平均BSID言語スコアおよび運動スコアにも有意差は認められなかった。 死亡率(追跡調査前の死亡)は、ドナーミルク群13%(29/231例)、早産児用粉ミルク群11%(25/233例)であった(補正後群間リスク差:-1%、95%CI:-4~2)。壊死性腸炎は、ドナーミルク群では4.2%(10/239例)に発生したが、早産児用粉ミルク群では9.0%(22/244例)に発生した(-5%、-9~-2%)。 体重増加は、ドナーミルク群22.3g/kg/日(95%CI:21.3~23.3)、早産児用粉ミルク群24.6g/kg/日(23.6~25.6)で、ドナーミルク群のほうが緩徐であった。

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令和6年度コロナワクチン接種方針を発表、他ワクチンと同時接種が可能に/厚労省

 厚生労働省は2月7日の「新型コロナワクチン接種体制確保事業に関する自治体向け説明会」1)にて、令和6年度(2024年度)の接種方針を発表した。2月5日に開催された第55回生科学審議会予防接種・ワクチン分科会2)の議論を踏まえ、2024年3月末まで特例臨時接種が実施されている新型コロナワクチンは、4月以降、インフルエンザや高齢者の肺炎球菌感染症と同じ定期接種のB類疾病に位置付け、高齢者等に対して個人の発病または重症化を予防し、併せて蔓延予防に資することを目的とした接種を実施することとした。対象は65歳以上、もしくは60歳~64歳で心臓、腎臓、呼吸器のいずれかの機能の障害、またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害を有する者。定期接種開始は9月以降となる。他ワクチンとの同時接種も可能に 新型コロナワクチンと他疾病ワクチンとの接種間隔については、特例臨時接種となっている現在は、インフルエンザの予防接種は同時接種可能であるが、その他の予防接種との間隔は13日以上空けることとされている。4月以降は定期接種実施要領の規定どおり、注射生ワクチン以外のワクチンにおいては接種間隔を定めず、医師がとくに必要と認めた場合は同時接種を行うことが可能とした。この方針は、諸外国における新型コロナワクチンと他疾病ワクチンとの同時接種を可能とする状況も参考にされた。秋冬接種はWHO推奨株を基本に 接種に使用するワクチンについて、これまでは流行株の状況やワクチンの有効性等に関する知見に加え、諸外国の動向も踏まえて決定し、その後、ワクチンの製造販売業者による薬事申請等がなされ供給されていた。また、世界保健機関(WHO)は2023年以降、株構成に関する専門家会議を少なくとも年2回開催する方針を示している。直近では2023年12月に開催された3)。これらを踏まえ、令和6年度の秋冬接種に用いられるワクチンの検討については、最新のWHOの推奨株を用いることを基本とした。選択肢の確保の観点から、mRNAワクチン以外にもさまざまなモダリティのワクチンを開発状況に応じて用いることとし、具体的な対応株の検討などは、インフルワクチン同様に、研究開発及び生産・流通部会にて行われる。

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フレイル、「やせが多い」「タンパク質摂取が重要」は誤解?

 人生100年時代といわれ、90歳を迎える人の割合は女性では約50%ともされている。そのなかで、老衰が死因の第3位となっており1)、老衰の予防が重要となっている。また、要介護状態への移行の原因の約80%はフレイルであり、フレイルの予防が注目されている。 そこで、2024年1月26日(腸内フローラの日)に、青森県りんご対策協議会が「いま注目の“健康・長寿”における食と腸内細菌の役割 腸内細菌叢におけるりんごの生体調節機能に関する研究報告」と題したイベントを開催した。そのなかで、内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授)が「京丹後長寿研究から見えてきたフレイルの現状~食と腸内細菌の役割~」をテーマに、日本有数の長寿地域とされる京丹後市で実施している京丹後長寿コホート研究から得られた最新知見を紹介した。フレイルの4つのリスク因子、やせではなく肥満がリスク 内藤氏はフレイルのリスク因子は、大きく分けて4つあることを紹介した。1つ目は「代謝」で、糖尿病や高血圧症、がんの既往歴、肥満などが含まれる。実際に、京丹後市のフレイルの人にはやせている人はほとんどいないとのことである。2つ目は「睡眠」で、睡眠時間ではなく睡眠の質が重要とのことだ。3つ目は「運動」で、日常的な身体活動度の低さがリスク因子になっているという。4つ目は「環境」で、これには食事、薬剤、居住地などが含まれる。このなかで、内藤氏は運動と食事の重要性を強調した。高タンパク質食はフレイルの予防にならない!? 厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、65歳以上の高齢者のフレイルやサルコペニアの発症予防には、少なくとも1g/kg/日以上のタンパク質摂取が望ましいとしている2)。しかし、内藤氏はこれだけでは不十分であると指摘した。高齢者の高タンパク質食は、サルコペニアの発症予防にならないどころか発症のリスクとなっているという報告もあり3)、単純にタンパク質を多く摂取すればよいわけではないことを強調した。フレイル予防に有用な栄養素とは? 内藤氏は、京丹後長寿コホート研究でフレイルと非フレイルを比較した結果を報告した(未発表データ)。3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)について検討した結果、フレイルの有無によって脂質や炭水化物の摂取量には差がなく、タンパク質についても植物性タンパク質がフレイル群でわずかに少ないのみであった。しかし、6大栄養素(3大栄養素+ミネラル、ビタミン、食物繊維)に範囲を広げて比較すると、フレイル群はカリウムやマグネシウム、ビタミンB群、食物繊維の摂取が少なかった。また、食物繊維を多く含む食品のなかで、その他野菜(非緑黄色野菜)や豆類の摂取がフレイル群で少なかったことも明らかになった。 京丹後長寿コホート研究では、食物繊維の摂取が腸内細菌叢にも影響することもわかってきた。食物繊維の摂取と酪酸産生菌として知られるEubacterium eligensの量に相関が認められたのである。Eubacterium eligensの誘導に重要な食物繊維はペクチンであり4)、内藤氏は「りんごにはペクチンが多く含まれており、フレイル群で不足していたカリウムやマグネシウムも多く含まれているので、フレイル予防に役立つのではないか」と述べた。 食物繊維について、現在の日本人の食事摂取基準2)では成人男性(18~64歳)は21g/日以上、15~64歳の女性は18g/日以上が摂取目標値とされている。しかし、最新の世界保健機関(WHO)の基準では、10歳以上の男女は天然由来の食物繊維を25g/日摂取することが推奨されているため5)、内藤氏は「日本が世界基準に遅れをとっていることを認識してほしい」と述べた。

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超改訂版 流れがわかる学会発表・論文作成 How To

症例報告で身につける「一生モノ」のアカデミックスキル本格的な研究活動を行う際に身につけておきたいアカデミックスキルは、症例報告を通じて習得することができます。本書では、症例報告の準備から実際の発表までの「流れ」をわかりやすくまとめています。2004年に出版され、好評を博した初版以来のエッセンスを残しつつ、全ページ新しく原稿を書きおろした事実上の新刊です。オンライン発表、英語での論文執筆などにも触れており、時代の変化と著者自身の経験の蓄積を反映した指南書となっています。若手医師や医学生はもちろん、薬剤師・看護師・理学療法士など、臨床に携わりながら症例報告を行う可能性のあるすべての医療関係者に向けた1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する 超改訂版 流れがわかる学会発表・論文作成 How To定価4,180円(税込)判型B5判頁数248頁発行2023年12月著者佐藤 雅昭ご購入はこちらご購入はこちら

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第200回 非オピオイド鎮痛薬が米国承認申請へ

まずは急性痛第III相試験が成功本連載で2年ほど前に取り上げた依存やその他のオピオイドにつきものの副作用の心配がない経口の非オピオイド鎮痛薬が2つの第III相試験で術後痛を有意に緩和し、いよいよ米国FDAの承認申請に進みます1)。試験の1つには腹部の脂肪を除去する腹壁形成手術患者1,118例、もう1つには外反母趾の瘤(バニオン)を取る手術患者1,073例が参加しました。それら2試験のどちらでも米国のバイオテック企業Vertex Pharmaceuticalsの神経ナトリウムチャネル阻害薬VX-548の時間加重合計(SPID48)がプラセボを有意に上回りました。SPID48は点数が大きいほど48時間に痛みがより鎮まったことを意味し、腹壁形成手術患者と外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はプラセボ群をそれぞれ有意に48点と29点上回りました。しかしながら、定番のオピオイド薬との比較ではVX-548は勝てませんでした。腹壁形成手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬(ヒドロコドンとアセトアミノフェンの組み合わせ)より高めでしたが勝ったとはいえず、外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬未満でした。オピオイド薬との比較は残念な結果となりましたが、第一の目標であるプラセボとの比較で勝利したことを受けてVX-548はいよいよ今年中頃までに米国FDAに承認申請されます。手術や手術以外も含む多様な患者へのVX-548の効果や安全性を調べた別の第III相試験の結果も踏まえ、急な痛みの治療薬として承認申請される予定です。対照群なしのその第III相試験ではVX-548使用患者の83%が好転(good, very good, or excellent)したと自己評価しました。慢性痛の用途も目指すVX-548は慢性痛への効果の検討も進んでおり、去年の12月には糖尿病患者の神経痛(糖尿病神経障害)への効果を調べた第II相試験での有望な結果が報告されています2)。点数が大きいほどより痛いことを意味する下限0で上限10の数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale:NPRS)が一日一回のVX-548投与で有意に2点強下がり、糖尿病神経障害の治療薬プレガバリンの1日3回投与と同程度の効果がありました。プレガバリンと効果が同程度でもVX-548の1日1回投与は強みになるかもしれません。Vertex社はFDAとの協議の後に糖尿病神経障害へのVX-548の大詰め試験を始める予定です。糖尿病神経障害は末梢神経痛の2割を占めます。Vertex社はさらに患者数が多い腰仙部神経根障害への同剤の第II相試験も昨年の12月に開始しています3)。腰仙部神経根障害は末梢神経痛の実に4割を占めます。装い新たなオピオイド薬も健闘オピオイド薬はとくに慎重な扱いが必要とはいえ、VX-548が勝てなかったことも示すように頼りになる薬として引き続き出番は多そうです。それゆえより安全に使えるようにする取り組みが脈々と続いています。米国のサンディエゴを拠点とするEnsysce Biosciences社が開発している半減期が長いオピオイド薬PF614はその1つで、第II相試験後のFDAとの協議結果を踏まえたうえで今年後半に第III相試験が始まります4)。VX-548の試験でも使われたhydrocodoneとアセトアミノフェンの合剤の製品Vicodinは4~6時間ごとの服用が必要ですが5)、PF614は半減期が12時間と長いので1日2回の服用で事足ります。また、乱用されやすさを確認する試験でPF614はオキシコドンに比べて好まれず、再び使いたいという欲求の程がより低くて済むことが確認されています。米国のオピオイド乱用の惨禍は深刻で、2021年のオーバードーズによる死者10万例(10万6,699例)の75%が処方用オピオイドを含む何らかのオピオイドに関連するものでした6)。ゆえにオピオイドの代わりとして使いうるVX-548やPF614のようなより安全な新しい処方薬の役割は大きいに違いなく、同国のオピオイド惨禍を落ち着けることに役立つでしょう。参考1)Vertex Announces Positive Results From the VX-548 Phase 3 Program for the Treatment of Moderate-to-Severe Acute Pain / BUSINESS WIRE 2)Vertex Announces Positive Results From Phase 2 Study of VX-548 for the Treatment of Painful Diabetic Peripheral Neuropathy / BUSINESS WIRE3)Evaluation of Efficacy and Safety of VX-548 for Painful Lumbosacral Radiculopathy (PLSR)4)Ensysce Biosciences Announces Positive End of Phase 2 Meeting with FDA for PF614 to Treat Severe Pain / ACCESSWIRE5)Vicodin / FDA6)Drug Overdose Death Rates / NIH

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GLP-1受容体作動薬、従来薬と比較して大腸がんリスク低下

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として日本をはじめ海外でも広く承認されている。GLP-1受容体作動薬には、血糖低下、体重減少、免疫機能調節などの作用があり、肥満・過体重は大腸がんの主要な危険因子である。GLP-1受容体作動薬が大腸がんリスク低下と関連するかどうかを調査した研究がJAMA Oncology誌2023年12月7日号オンライン版Research Letterに掲載された。 米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のLindsey Wang氏らの研究者は、TriNetXプラットフォームを用い、米国1億120万人の非識別化された電子カルテデータにアクセスした。GLP-1受容体作動薬と、インスリン、メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤(ただし、SGLT2阻害薬は2013年、DPP-4阻害薬は2006年が開始年)の7薬剤を比較する、全国規模の後ろ向きコホート研究を実施した。 コホートは、人口統計、社会経済的な健康決定要因、既往症、がんや大腸ポリープの家族歴および個人歴、生活習慣要因などで調整され、ハザード比(HR)および95%信頼区間[CI]を用いた解析を行った。次いで、肥満・過体重、性別で層別化した患者を対象にした解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2005~2019年に2型糖尿病を理由に医療機関を受診し、それまでに抗糖尿病薬の使用歴がなく、受診後に抗糖尿病薬を処方された、大腸がんの診断歴がない122万1,218例が対象となった。・追跡期間15年時点で、GLP-1受容体作動薬はインスリン(HR:0.56、95%CI:0.44~0.72)、メトホルミン(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97)と比較して、大腸がんのリスク低下と有意に関連していた。この有意差は男女でも一貫しており、肥満・過体重の患者ではインスリン(HR:0.50、95%CI:0.33~0.75)、メトホルミン(HR:0.58、95%CI:0.38~0.89)と、さらなるリスク低下が見られた。・SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤との比較でもリスク低下は見られたが、インスリン、メトホルミンほどではなかった。α-グルコシダーゼ阻害薬とDPP-4阻害薬との比較では、統計学的有意差は見出されなかった。 研究者らは、本研究の限界として「未測定または未制御の交絡因子、自己選択、逆因果、観察研究に特有のその他のバイアスの可能性があるため、本試験の結果は他のデータや研究集団による検証が必要である。また、抗糖尿病治療歴のある患者における効果、基礎となる機序、GLP-1受容体作動薬がほかの肥満関連がんに及ぼす効果についても、さらなる研究が必要である」としている。

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第196回 がん治療にも影響大?患者が医師に相談できず困っていること

人が日常生活の中で加齢を感じる瞬間の1つが“食”に関するものだろう。「若い頃はあれだけ食べられたのに」という話はよく聞く。ちなみにこの点については、私もいくつか思い当たることがある。最初の経験は、いわゆるアラフォーの頃だ。20代から市中の牛丼チェーン店に行くと「大盛・つゆだく」を頼むことが常態化していたが、この頃からいつものように頼んだ牛丼を食べ始めて2~3分で、「ちょっと多過ぎたかな」と感じ始めるようになった。とはいえ、当時はまだなんとか食べきれる。が、食後に胸焼けが起こり、最終的には「大盛・つゆだく」のオーダーを後悔してしまうのだ。この頃はまだ老いを認めたくない時期でもあったため、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で同じことを約2年間は繰り返した。さすがにアラフィフとアラカンの中間地点にいる現在は、アラフォー当時ほど馬鹿な真似はしない。よほどのことがない限り大盛は頼まなくなり、たまたま入店した飲食店がいわゆる普通盛りでも盛りの良い店の場合、料理到着時にギョッとする(とはいえ、ほとんどの場合は食べ切ってしまうのだが)。そしてこれからは少食化も年々進行するだろう。そう思うのは親、とりわけ父親を見ているからだ。元々、食べることは大好きな父親だったが、最近は通常の1人前の弁当やラーメンなら、7割程度は食べるが、食べきることは少なくなった。一方、母親はある時期を境に完全な少食となった。今から約20年前、胃がんの手術で胃体部を中心に胃の約3分の1を切除したからである。日本有数のがん専門病院で手術をした母親は、術後も地元から新幹線を利用して定期受診のため上京し、その度ごとに私は母の受診に同伴した。同伴したのにはいくつか理由がある。まず、母親は医学的知識に乏しく、私が同伴しているほうが心強いと考えていたことが最も大きい。これに付随した理由を挙げるならば、一応、私は母親の2人の子供のうちの1人だから、主治医も顔を合わせておきたいということもあるだろう。そしてもう1つの付随する理由、今考えれば比較的大きな理由だったと考えられるのは“食事”のことだ。術後の母親は物理的に胃が小さくなったのだから、当然今までと同じようには食べられなくなった。周知のように胃切除後には「ダンピング症候群」が起こる。結果、驚くほど母親の食は細くなった。そのため、受診同伴時に母親は私と食事をしたがった。普通の1人前が食べきれないから、自分が食べられる範囲に留め、残りは私に食べてもらうためである。術後1年ほどはやたらと寿司店を選択することが多く、そこではいわゆる握りのセットではなく、お好みで食べることがほとんどだった。理由は単純で量を調節しやすいからだった。今でもよく覚えているのは、ある時に握りずしを2貫食べると、「もうお腹いっぱい」と半ば苦しそうに呟いた母親の姿。まだ、30代前半だった私は内心で「え?たった2貫?」と驚いたものだ。そして母親が寿司屋を選んだ理由には、たぶん店側への配慮もあったと思う。母親の受診先の近辺は寿司屋と言っても高級店が多く、母親が2貫でも私が握りの上などを注文すれば、それなりの勘定になったからだ。母親の社会人生活はほぼ自営業だったゆえに、店側のことも考えていたのはほぼ間違いないだろう。私を食事に同伴させるときの口癖が「残したらお店の人に悪い」だった。そんな母親も術後約20年を経た今はあの当時よりは食べられるようになった。それでも外で提供される食事の場合、食べられるのは最大で6割ほどである。以前の本連載で歩行が退化しつつある軽度認知障害(MCI)の父親を老老介護する母親が、父親に適した車椅子をなかなか見つけられない悩みを書いたが、今年の正月の帰省時に実はこの食事のことも母親の悩みの一つであるらしいことを知った。それは私が久しぶりに両親と地元の繁華街で食事をした時のことである。この時は両親が行ったことがない創業約100年の老舗・中華料理店を選んだ。味も接客も素晴らしい店で、私の中学校の同級生の実家である。両親とも非常に喜んでくれたし、いつもよりも2人とも食べていたと思うが、やはり両親とも自分が選んだ料理は食べきれず、残りは私が食べることになった。私が2人の食べ残しを口にしている最中、食べ終えたはずの母親はなぜか再び店のメニューに目を通していた。そして父親に向かってふと口にした。「あ、小皿料理があるね。これだったら来やすいね、お父さん」そうか。胃がんの手術後に食が細くなった母親にとって、父親までもが食が細くなったことは、父親の歩行退化と同時に外出の足かせの1つになっていたのだ。今後、2人と食事に行く時はそのことも考慮しなければならないのだと痛感したのである。そして最近、あるプロジェクトを目にした。スキルス胃がん患者の轟 哲也氏(2016年逝去)が作ったスキルス性胃がんの患者会で、現在は特定非営利活動法人となっている「希望の会」が始めた「はんぶんごはんプロジェクト」。現在同法人の理事長は亡くなった哲也さんの妻・轟 浩美氏が務めている。同プロジェクトは胃がんの症状・術後障害・副作用、あるいはその他の体調不良などで今まで通りに食べることが叶わなくなった人向けに少量の提供が可能な飲食店、調理キットを扱う業者などの情報を収集して公開・検索サイト化を目指すもの。なんと素晴らしい試みだろう。実現すれば自分にとっても両親にとっても有益なものになる。そんな希望を抱いている。だが、同時に同プロジェクトを知り、忸怩たる思いも抱いている。約20年、このプロジェクトが解決しようとしている悩みを私も頭の片隅に置いていたはずなのに、提供できる情報が思い浮かばない。たぶん母親もそうだろう。結局、現状は仕方がないのだと諦めていたのだ。実はこのプロジェクトを目にした瞬間、ほぼ忘れかけていた約20年前の記憶がよみがえってきた。母の受診日ではないある日、私は受診先の病院周辺を歩き回っていた。周辺で一軒一軒の飲食店の店先を舐めまわすように眺めて歩いた。この時の私が何をしていたかと言うと、店先に「少量提供可」のような表示がある飲食店がないかと探していたのである。前述のように母親の受診先は日本有数のがん専門病院。母親のような悩みを抱えている人が多く受診していることだけは疑いがない。だからその病院の周辺にはもしかしたら母親が気兼ねなく入れそうな、しかもそうしたことを謳っている飲食店があるかもしれないと思ったのだ。しかし、少なくとも私が歩き回った範囲ではそうした飲食店は見当たらなかった。完全な徒労だった。当時、私は会社員記者を辞め、フリーとなり3年目。仕事はやや壁にぶち当たっていた。帰り際にふと「もし物書きとして生きていけなければ、この街で母親のような人向けに飲食店でもやろうか」と思った。今考えればフリーの物書きとして実績も出せない人間が栄枯盛衰の激しい飲食業界で生き残っていけるわけはないのだが…。むしろそう思うくらいなら、表示がなくとも各飲食店の「病気のために少ししか食べられない人向けに少ない量の提供は可能でしょうか?」と一軒一軒訪ね歩けばよかったのだ。結局、約20年、私は母親の悩みを半ば他人事のように考えてきたのだろうと猛省している。多様性の社会と言われるようになって久しいが、その多様なニーズに応える世の中にはまだまだ至っていないのが実状である。多くの人はそれぞれが大切だと思う身近な問題を抱えながら生きている。とはいえ、それはあくまで身近、せいぜい半径1km程度圏内で経験することがほとんどだ。多様性が加速すればするほど、人はそのニーズに追いつけていけなくなる。多様性に応えきれていない世の中なのは、極論を言えば誰のせいでもない。だからこそ自分が感じたふとした疑問・悩みを世に明らかにし、形にしていくことが重要だと、このプロジェクトを知って改めて痛感している。この件で何も提供できる情報はない私だが、たぶんこの場に集う医療者の中にはこのプロジェクトに提供できる情報をお持ちの人も少なくないだろう。ぜひご協力をお願いしたい。

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肥満の変形性関節症患者での減量は「ゆるやかに」が重要

 肥満症治療薬を使って体重を徐々に落とすことは変形性関節症(osteoarthritis;OA)患者の延命に役立つことが、新たな研究で明らかになった。ただし、急速な減量は、生存率の改善には寄与しないばかりか、場合によっては心血管疾患のリスクをわずかに上昇させる可能性も示された。中南大学(中国)のJie Wei氏らによるこの研究の詳細は、「Arthritis & Rheumatology」に12月6日掲載された。 肥満は関節炎の悪化要因である上に、早期死亡のリスク因子でもある。現行のガイドラインでは、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症の患者に対しては減量が推奨されているが、OA患者での減量と死亡との関連に関するデータは少ない。 そこでWei氏らは今回、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症患者6,524人(平均年齢60.9歳、女性70.2%、平均BMI 38.1)を対象に、肥満症治療薬による1年間の体重減少と全死亡率やその他の疾患との関連を検討した。対象患者のデータは、ウゴービやZepbound(ゼップバウンド)のような肥満症治療薬が登場する前の2000年1月1日から2022年3月31日の間に収集されたものであり、患者は肥満症治療薬としてオルリスタット(5,916人)、シブトラミン(488人)、rimonabant(リモナバント、120人)を服用していた。 5年間の追跡期間中の全死亡率は、1年の間に体重が増加したか変化のなかった人で5.3%、体重減少が緩徐〜中等度(2〜10%の減少)だった人で4.0%、急速(10%以上の減少)だった人で5.4%であった。体重が増加したか変化のなかった人を基準とした場合の全死亡のハザード比は、「緩徐〜中等度」の人では0.72(95%信頼区間0.56〜0.92)と有意に減少していたが、「急速」の人では0.99(0.67〜1.44)と有意ではなかった。さらに、「緩徐〜中等度」と「急速」のいずれの群でも、体重の減少に伴い、高血圧、2型糖尿病、静脈血栓塞栓症のリスクが低下するという減量の保護効果が認められた。しかし、体重減少が急速だった人では、心血管疾患のリスクについては、統計的に有意ではないものの上昇が認められた。一方、がんリスクについては、どちらの群でも有意な関連は認められなかった。 では、なぜ急速に減量した人でのみ、心血管疾患のリスク増加が認められたのだろうか。研究グループによると、先行研究では、急速な減量は心臓にダメージを与える可能性のあるタンパク質や電解質、微量栄養素の欠乏といった不健康な状態に関係することが示されているという。 研究グループは、本研究から学ぶべき重要ポイントとして、「肥満症治療薬によるゆるやかな減量は、過体重や肥満のOA患者の全体的なウェルネスを改善させる可能性がある」とまとめている。また、「今回の結果は、ゆるやかな減量を推奨している、肥満症治療の世界的なガイドラインと一致するものだ」と述べている。

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第197回 強引過ぎる零売薬局規制とやる気のないスイッチラグ対策で実感する厚労省の守旧派ぶり、GLP-1ダイエット処方規制の方が最優先では?

食事なしのビジネスホテルにポツンと放り込まれた被災者たちこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。能登半島地震から4週間が過ぎました。先週のこの連載では、被災者の地元外にある1.5次や2次避難所への移動が本格化したものの、実際に移ったのは2,607人、避難者全体の17%とほとんど進んでいないと書きましたが、その後、1月26日のNHKニュースでは、2次避難所等への移動が進まない意外な理由を報じていました。それによれば、2次避難所に避難したものの、食事提供がないため再び被災地の避難所に戻る人が少なくないというのです。食事の提供がある旅館などの避難所は既に満員のため、現在、県などが用意するのはビジネスホテルなどの食事提供がない避難所。場合によっては、食事代だけではなく駐車場代も自己負担になるとのことです。被災した高齢者たちを金沢市などのビジネスホテルにポツンと放り込んで、食事はコンビニや外食、自腹でなんとかしろと言っているわけです。被災者たちが「多少不便でも地元の避難所がいい」というのもわかります。「災害関連死予防のため」と言いながら、行政のこの対応は無責任としかいいようがありません。福祉避難所ではないので、おそらく医療や介護の体制も手薄で被災者任せではないかと思われます。国や県はこうした問題をすでに把握しているとのことですが、早急な対応が望まれます。零売は「やむを得ない場合」のみ販売可能にさて、今回は、処方箋なしで一部の医療用医薬品が購入できる「零売薬局」や日本でなかなか進まないスイッチOTC化など薬の販売を巡る動きについて書いてみたいと思います。厚正労働省は昨年12月18日に開いた医薬品の販売制度に関する検討会において、零売の法令規定や、 乱用の恐れのある医薬品の販売規制強化、 一般用医薬品の販売区分の統廃合などを盛り込んだ改正案をとりまとめました。年が明けた1月11日には、「医薬品の販売制度に関する検討会とりまとめ」と題する正式文書を公表しました1)。その中で、かねてから問題視されてきた零売について、「やむを得ない場合」のみ販売可能であることを法令で明記し、販売可能時の条件も法令で定める方針を打ち出しました。法制化は2024年中にも行われるとみられます。2005年4月の薬事法改正時の通知で零売に法的根拠厚労省が「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売」、すなわち零売を公式に認めたのは、2005年とそんなに昔のことではありません。2005年4月の薬事法改正時に、医薬品分類を現在の分類に刷新するとともに「処方箋医薬品以外」の医療用医薬品の薬局での販売を条件付きで認める通知を発出し、零売に法的な根拠を与えました。零売については本連載でも、「第127回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(後編)」で取り上げました。この時は、コロナ禍で医療機関の受診控えが起こったことなどを背景に、東京都内をはじめ大都市圏で零売薬局が急増している状況と、私自身の零売利用体験について記し、「零売は医療機関を受診しない(保険診療ではない)ことで、医療費の削減につながります。国が言う、セルフメディケーション推進の流れにも合っているわけで、風邪や下痢などのコモンディジーズや患者自身も十分に理解している疾患に限っては、零売は『規制』よりも『推進』があるべき形だと考えられます」と書きました。 医薬品の販売制度に関する検討会で零売を法律で規制する方向にしかし、世の中はそうは動きませんでした。利用者にとっては医療機関に受診しないで処方薬が手に入る利便性がある一方で、さまざまな不適切事例(「処方箋なしで病院の薬が買えます」と通知で不適切とされる広告を出していた企業があるなど)を厚労省も把握しており、不適切事例に対する指導を徹底するよう、度々通知を出してきました。そうした流れの延長線で、今回の医薬品の販売制度に関する検討会も議論が進みました。結果、「とりまとめ」では零売を法律でしっかりと規制しようという内容となったわけです。具体的には、医療用医薬品については処方箋に基づく交付が基本処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、例外的に「やむを得ない場合」については薬局での販売を認めることを法令上規定上記「やむを得ない場合」は、「医師に処方され服用している医療用医薬品が不測の事態で患者の手元にない状況となり、かつ、診療を受けられない場合」、「OTC医薬品で代用できない場合、又は代用可能と考えられるOTC医薬品が容易に入手できない場合(例:通常利用している薬局及び近隣の薬局等において在庫がない場合等)」に限定。なお、その他の特殊な場合として「社会情勢の影響による物流の停滞・混乱や疾病の急激な流行拡大で薬局での医薬品販売が必要となった時」を付記。となっています。不適切な処方・販売なら「GLP-1ダイエット」の方がよほど悪質零売という販売システムにおいて甚大な健康被害があったわけでもなく、単に広告表現に不適切な事例が散見されただけで、零売という薬剤販売のユニークな仕組みを一律に法律で規制してしまうというのは、相当強引なやり方ではないかと私は思います。薬の不適切な処方、販売ということでは、美容クリニックなどが自由診療でGLP-1受容体作動薬を処方する、通称「GLP-1ダイエット」のほうがよほど悪質なのではないでしょうか。急性すい炎など重篤な副作用の報告や健康被害も報告されているようです。2023年12月20日に国民生活センターはダイエットなどを目的としたオンライン診療でトラブルについて注意喚起を行っています2)。それによると、ダイエットを含む美容医療のオンライン診療に関する相談は、2022年度が205件と前年度の約4.2倍に増加。2023年4月~10月末は169件の相談があり、前年同期比の約1.7倍に上っていたそうです。相談の約半数が、ダイエット目的によるオンライン診療のトラブルで、基礎疾患の問診や副作用の説明が十分行われずに、数ヵ月分の糖尿病治療薬を処方される事例が目立っていました。実際に、頭痛や吐き気、めまいなどの副作用が起きた事例もあったとのことです。また、処方薬の中途解約に条件があり、返品や取り消しができないといった相談も多かったそうです。医師ではない職員がGLP-1受容体作動薬を自由診療で処方との報道も12月11日のNHKの「GLP-1ダイエット」に関する報道によれば、オンラインで診療する医師の医師免許が確認できないクリニックも多数あったとのことです。つまり、対面ではなくオンラインであることを悪用し、医師ではない職員が医師を騙ってGLP-1受容体作動薬を自由診療で処方しまくっているケースが相当あるようなのです。以上を比較してみると、同じ薬の処方、販売に関することなのに、国はGLP-1受容体作動薬を“偽医者”を使ってオンラインで自由診療として処方する医療機関には「とても甘く」、きちんと薬剤師が薬の説明もしてくれる零売薬局には「厳し過ぎる」と言えるのではないでしょうか。オンライン診療については、「第101回 私が見聞きした“アカン”医療機関(中編) オンライン診療、新しいタイプの“粗診粗療”が増える予感」でも、そのゆるさと危険性について書きました。コロナ禍を経たことで、オンライン診療推進という流れに揺るぎはないようです。しかし、ことオンラインにおける自由診療となると多くの悪い奴らが暗躍しているようです。零売規制やスイッチラグ解消に消極的な姿勢から浮かび上がる厚労省の守旧派ぶり薬の販売では、日本におけるスイッチOTC化の遅れも大きな問題と言えます。内閣府の規制改革推進会議の健康・医療・介護ワーキンググループは、12月11日に開いた第3回会合で、規制改革実施計画に盛り込まれているスイッチOTC促進策のフォローアップを行いました。会合では、諸外国における医療用から一般用への転用実績との格差、いわゆる「スイッチラグ」が社会課題であると再確認、厚労省に対して改めて推進を前提に審査期間・手順の見直しを迫るとともに、具体的な数値目標とロードマップの策定を求めました。スイッチラグについては、本連載の「第113回 規制改革推進会議答申で気になったこと(後編)PPIもやっとスイッチOTC化?処方薬の市販化促進に向け厚労省に調査指示」でも書きましたが、厚労省は相変わらず煮え切らない対応を繰り返しているばかりです。12月24日付の薬局新聞の報道によれば、12月11日の規制改革推進会議の健康・医療・介護ワーキンググループの会合では、厚労省がPPIなどスイッチラグの代表的な成分のOTC化に関して「重大な疾患の症状が見落とされる危惧があり、また販売制度実態調査などの状況から薬剤師による説明が十分なされていない実態がある」とそのリスクを説明したところ、ワーキンググループの委員から、「日本の薬剤師はレベルが低いと聞こえる」との疑問が呈されたそうです。理不尽とも思える零売規制やスイッチラグ解消に消極的な姿勢から浮かび上がるのは、厚労省の頑固と言える守旧派ぶりです。その背景には、日本医師会など医師団体に対する“忖度”も少なからずあるのかもしれません。医薬品販売の規制は、実際に多くの健康被害が確認されているところにフォーカスされるべきでしょう。厚労省は規制の矛先を間違えているとしか言いようがありません。参考1)「医薬品の販売制度に関する検討会」の「とりまとめ」 を公表します/厚生労働省2)痩身目的等のオンライン診療トラブル/国民生活センター

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歯磨きは入院患者の肺炎リスクを低下させる

 院内肺炎(hospital acquired pneumonia;HAP)は入院患者に発生する肺の感染症で、死亡率の上昇や入院期間の延長、医療費の増大などを招く恐れがある。しかし、毎日、歯を磨くことでHAP発症リスクを低減できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。集中治療室(ICU)入室患者では、歯磨きにより死亡リスクが有意に低下する傾向も示された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院内科のMichael Klompas氏と米ハーバード大学医学大学院Population Medicine分野のSelina Ehrenzeller氏によるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に12月18日掲載された。 Klompas氏は、「歯磨きが死亡リスク低下に対して驚くほど効果的なことが示唆された」と述べ、「病院での予防医学において、このような安価なのに高い効果を見込める方法は珍しい。今回の研究結果は、新しい機器や薬剤ではなく、歯磨きのような簡単なことが患者の転帰に大きな違いをもたらす可能性があることを示唆するものだ」との考えを示している。 Klompas氏らは、毎日の歯磨きが入院患者のHAP罹患やその他の患者転帰に与える影響を検討するために、総計1万742人の対象者(ICU入室患者2,033人、ICU非入室患者8,709人)から成る15件のランダム化比較試験を抽出。ICU以外の患者を対象にしたクラスターランダム化試験を有効なサンプルサイズに削減し、最終的に2,786人の患者を対象にメタアナリシスを行った。 その結果、毎日歯を磨いた患者ではHAP発症リスクが有意に低下し(リスク比0.67、95%信頼区間0.56〜0.81)、またICU入室患者では、歯を磨くことで死亡リスクも有意に低下することが明らかになった(同0.81、0.69〜0.95)。人工呼吸器装着の有無で分けて歯磨きによるHAP発症リスクの低下を見ると、人工呼吸器装着患者ではリスク低下は有意だったが(同0.68、0.57〜0.82)、非装着患者では有意ではなかった(同0.32、0.05〜2.02)。さらに、ICU入室患者では、歯磨きを行った患者では、歯磨きを行わなかった患者と比べて、人工呼吸器装着期間(平均差−1.24日、95%信頼区間−2.42〜−0.06)とICU入室期間(同−1.78、−2.85〜−0.70)が有意に短縮していた。 研究グループは、「肺炎は、口腔内の細菌が気道に吸い込まれて肺に感染することで発症する。フレイル状態にある患者や免疫力が低下している患者は、入院中に肺炎を発症するリスクが特に高まる。歯を毎日磨くことで口腔内の細菌量が減少し、肺炎の発症リスクが低下する可能性がある」と述べている。 また、研究グループは、「今回のレビューで対象とした研究のほとんどがICUで人工呼吸器を装着している患者を対象としていたものの、歯磨きの肺炎予防効果は他の入院患者にも当てはまるはずだ」との考えを示している。 Klompas氏は、「本研究で得られた知見は、入院患者に歯磨きを含む口腔衛生をルーチンで実施することの重要性を強調するものだ。われわれの研究が、入院患者が毎日確実に歯を磨くようにするための政策やプログラムのきっかけになることを願っている。患者が自分で歯を磨けない場合は、患者のケアチームのメンバーがサポートすると良いだろう」と話している。

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うつ病や不安症などの診療におけるライブ双方向ビデオ治療~24週間のランダム化対照試験

 スマートフォンやその他のデバイスを用いて自宅から簡単にアクセス可能な双方向ライブビデオは、精神科治療における新たな医療アクセスになりつつある。しかし、実臨床現場では、その有効性を示すエビデンスが限られており、一部の国において保険診療による承認の妨げとなっている。慶應義塾大学の岸本 泰士郎氏らは、現在の主な通信手段となっているスマートフォンおよびその他のデバイスを用いた双方向ビデオのさまざまな精神疾患に対する長期治療の有効性を評価するため、実用的な大規模ランダム化比較試験を初めて実施した。その結果から、スマートフォンやその他のデバイスを用いた双方向ビデオによる治療は、実臨床における対面治療と比較し、劣っていないことが明らかとなった。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年12月15日号の報告。 亜急性期およびまたは維持期のうつ病、不安症、強迫症患者を対象に、双方向ビデを用いた治療と対面治療の有効性を比較するために24週間のランダム化対照試験を実施した。対象患者は、双方向ビデオ群(50%以上のビデオセッション)または対面群(100%対面セッション)にランダムに割り付けられ、公的医療保険が適用となる標準治療を実施した。主要アウトカムは、健康関連QOL尺度36-Item Short-Form Health Survey Mental Component Summa(SF-36 MCS)スコアとした。副次的アウトカムは、すべての原因による中止、作業同盟、有害事象、各疾患の重症度評価スケールを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は199例。・双方向ビデオ群105例(うつ病:53例、不安症:34例、強迫症:18例)、対面群94例(うつ病:45例、不安症:32例、強迫症:17例)にランダムに割り付けられた。・24週間の治療後、双方向ビデオ群のSF-36 MCSスコアは、対面群と比較し、劣っていなかった(48.50 vs. 46.68、p<0.001)。・すべての原因による中止、治療効果、満足度など、ほとんどの副次的アウトカムにおいて、両群間に有意な差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「自宅から簡単にアクセス可能な最新の遠隔医療は、ヘルスケア診療の1つの手段として利用可能であろう」としている。

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第196回 「医師の働き方改革」本格実施直前、大学病院勤務医、教育・研究の「研鑽」は労働に該当と厚労省が通知で明示

能登半島地震、県内外の2次避難所に移ったのは避難者全体の17%にとどまるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。能登半島地震から3週間が過ぎました。先週のこの連載では、被災者の地元外にある1.5次や2次避難所への移動が本格化してきたと書きましたが、1月22日付の日本経済新聞は、「進まぬ2次避難」というタイトルの記事で、「21日時点の県のまとめによると、県内外の2次避難所に移っているのは2,607人。徐々に増えているものの、避難者全体の17%にとどまる」と書いています。県などは2次避難所として約3万人分の受け入れ先を用意しているそうです。環境が整った避難所が用意されているのに移ろうとしない主な理由は、長年暮らした土地を離れたくない被災者が少なくない(高齢であればあるほど)のようです。テレビの報道でも、復旧の目処がまったく立たないのに、「ここを離れたくない」と語る被災者が多いことに驚きます。災害関連死を防ぐことは重要ですが、被災者の土地への強い愛着を無視しての移動要請は逆に大きなストレスの原因ともなります。被災地ではとても難しい選択が迫られているようです。「教育・研究のみならず、これらに不可欠な準備・後処理や直接関連性のある研鑽は労働時間」さて、今回は1月15日に厚生労働省が、医師の研鑽に係る労働時間に関する通知を一部改正しましたので、それについて書いてみたいと思います。今回の通知では、大学の附属病院等に勤務する教育・研究を本来業務とする医師について、教育・研究のみならず、これらに不可欠な準備・後処理や、直接関連性のある研鑽は、労働時間に含まれるとの見解が明示されました。「医師の働き方改革」の本格実施を直前に控えた昨年は、医師の教育や研究に携わる時間が労働時間に当たるかどうかの議論があちこちで沸き起こりました。神戸市の公益財団法人甲南会・甲南医療センターで勤務していた男性専攻医が昨年5月に自殺したことについて西宮労働基準監督署が労災認定した件や、名古屋大学病院が勤務医の時間外の教育・研究活動を労働ではない自己研鑽として原則扱っていた件などは、全国ニュースとなり、厚生労働省にも早急な対応が求められていました。「医師本人と上司の間で円滑なコミュニケーションを取り、理解の一致のために十分な確認を行うこと」1月15日に厚生労働省労働基準局監督課長名で発出された通知「『医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について』の一部改正について」1)によれば、今回の改正は「解釈の明確化を図ったものであり、これまでの労働基準法の取扱いを変更するものではない」と説明、その上で、新たな「留意事項」2)で、大学病院に勤務し、診療のほかに教育・研究も本来の業務としている医師については、教育・研究に直接関連性のある研鑽は労働時間に該当すると明示しました。また、2019年に通知と同時に出された「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」3)に記述された「診療等の本来業務」について、大学病院の勤務医は「等」の中に教育・研究が含まれるとの見解を示しました。なお、大学病院の医師は研鑽と本来業務の明確な区分が困難な場合が多いことが考えられるため、研鑽の実施に当たっては、医師本人と上司の間で円滑なコミュニケーションを取り、双方の理解の一致のために十分な確認を行うことに特に留意する必要がある、としています。教育・研究活動を自己研鑽として原則扱っていた名古屋大学病院今回の通知改正のインパクトは、大学病院の勤務医に限って、教育・研究活動は本来業務として扱うことが明確化されたことでしょう。昨年11月、朝日新聞の報道等によって、名古屋大学病院が勤務医の時間外における教育・研究活動を、労働ではない自己研鑽として原則扱っていることが問題となりましたが、全国の大学病院における教育・研究に対する曖昧な取り扱いに、一定の方向性を示したものと言えます。2023年11月20日付の朝日新聞の報道によれば、名古屋大学病院では、病院に導入された勤怠管理システムにおいて、勤務時間内の行為はすべて業務として扱う一方、時間外の診療・教育・研究については業務か自己研鑽かを判断するための「区分表」をつくって、2022年11月から適用していたとのことです。たとえば、診療のうち、手術や患者対応は業務として認めていましたが、手術の練習、新薬の情報収集は自己研鑽としていました。一方で、教育と研究については、この時点では「大学院生・学部生への指導」「入試関係業務」「外部資金による研究業務」などが業務として認められており、また、休日の学会出席も業務として認められていたとのことです。しかし、こうした取り扱いをしたことで2022年11月~2023年3月、職員への時間外手当の支払いは月3,000万円ほど増えたそうです。朝日新聞によれば、2023年4月に名大病院は、このまま推移すれば「病院経営が立ちゆかなくなる」として時間外労働を減らす方針を打ち出し、勤怠管理システムの区分表から教育と研究に関する項目をすべて削除、業務とするには、上司の許可を得た上で、「その他」項目からしか申請できない仕様に変えたとのことです。教育と研究は自己研鑽に区分しておきながら論文数増加を要請していた名大こうした対応が朝日新聞等の記事になってしまったのには、また別の事情もからんでいたようです。私が同大の関係者から聞いた話では、勤怠管理システムの区分表から教育と研究に関する項目をすべて削除した直後、同病院の臨床研究中核病院(名古屋大学病院は全国に15ある臨床研究中核病院の一つです)の責任者から、医師宛に「論文数が減っているからもっと研究して論文を書くように」という趣旨のメールが届いたのだそうです。「勤怠システムで教育と研究は自己研鑽に区分しておきながら、もっと論文を書けとは何事か!と怒った誰かが新聞社にタレ混んだのではないでしょうか」とその人は話していました。専攻医が過労自殺した甲南医療センターは院長らが書類送検今回の通知は、教育・研究を本来業務として行う大学病院の勤務医の業務を対象とするもので、医局から派遣されて働く市中病院の勤務医は対象ではありません。そのため、市中病院では、自己研鑽か労働時間かの区分けについて、より実態に即した対応が求められることになります。本連載の「第177回 「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定で感じた共通する“病根”(前編)」、「第178回 同(後編)」で書いた専攻医が過労自殺した甲南医療センターについて、西宮労働基準監督署は12月19日、同センターを運営する公益財団法人甲南会と具 英成院長(代表理事・同法人の代表理事でもあります)、上司にあたる医師1人を、労働基準法違反容疑で神戸地検に書類送検しています。送検容疑は昨年4月、労使協定で定めた上限の95時間を超え、少なくとも113時間56分の時間外労働を専攻医にさせたというものです。各紙報道によれば、労基署はこの時間を「病院側の指揮命令下にあったと確実に認定できる時間」としているとのことです。なお、書類送検したことについて、武見 敬三厚生労働大臣は12月22日の閣議後会見で、「悪質な労基法違反は厳正に対処する」と述べています。自己研鑽か労働かの区分けは、病院がどこまで医師の人件費増に耐えられるかという経営の問題でもあります。2024年の診療報酬改定では、プラス部分の中に「40歳未満の勤務医師の賃上げに資する措置分」が含まれていると厚生労働省の文書に明記されていますが、医師の働き方改革の本格実施を前に、大学病院においても市中病院においても、経営の舵取りは今まで以上に難しくなりそうです。参考1)基監発0115第2号 令和6年1月15日/厚生労働省2)基監発0701第1号 令和元年7月1日、改正基監発0115第2号 令和6年1月15日/厚生労働省3)基発0701第9号 令和元年7月1日/厚生労働省

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多くの親子が新年や新学期に目標を設定、米調査

 米ミシガン大学ヘルスシステムC.S.モット小児病院が12月18日に公表した「小児の健康に関する全国調査」から、米国では多くの親子が、新年や子どもが新学期を迎える際に目標を立てていることが明らかになった。 この調査は2023年の8月に、ランダムに抽出された、0〜18歳の子どもと同居する親2,044人を対象に実施された(調査完了率62%)。調査では、育児に関する目標を立てているか、11〜18歳の子どもがどのような目標を持ち、それを親がどのようにサポートするかなどが問われた。 その結果、71%の親が新年(25%)や新学期(9%)、あるいは自分の誕生日(8%)に個人的な目標を立てていることが明らかになった。その目標が子育てに関するものであると答えたのは、母親の47%、父親の35%に上った。また、74%は「目標を設定することで自分がより良い親になれるように思う」と答え、また85%は「目標を設定することで、それを達成するためにどうすれば良いのかを子どもが学ぶのに役立つ」と答えた。 子育てに関する目標の具体的な内容としては、「もっと忍耐強くなる」が78%と最も多く、次いで、「スマートフォンの使用時間を減らす」(56%)、「しつけにもっと一貫性を持たせる」(47%)が多かった。また、「子どものために健康的になる」(52%)や「もっと健康的な食事やおやつを与える」(48%)、「子どもと一緒に運動をする」(37%)など健康に関わる目標や、「子どもを精神的な活動に参加させる」(34%)、「子どもの学校に積極的に関わる」(21%)など、子どもをより広いコミュニティに結び付けるための目標を立てている親も見受けられた。このほか、3人以上の子どもを持つ多忙な家庭の親は、子どもの数がそれよりも少ない親に比べて、しつけの一貫性や精神的な活動への家族の参加を目標として設定する傾向が強いこともうかがわれた。 この調査の共同ディレクターを務めたC.S.モット小児病院のSarah Clark氏は、「子育てを改善するための目標設定は、親の価値観や優先順位を明確にするのに役立ち、家族全体の健康とウェルビーイングに良い影響をもたらす」と話す。 一方、11〜18歳の子どもの目標は学校の成績に関するものが最も多く(68%)、そのほかに、「何らかの活動を成功させる」(52%)、「運動をする」(43%)、「お金を稼ぐ」(40%)、「食習慣や栄養摂取状況を改善する」(40%)、「新しいことに挑戦する」(39%)、「友情を育む」(23%)、「ボランティア活動をする」(20%)などが挙げられた。また、15〜18歳のティーンエイジャーは、運動と栄養を中心に目標を設定する傾向が認められたのに対し、11〜14歳のティーンエイジャーは何か新しいことを探求することに関心を持っていることがうかがわれた。 Clark氏は、「目標設定は、子どもが自分の行動に責任を持つことを学び、グロースマインドセット(人は努力や経験により成長できるとする考え方)を身に付けるのに役立つ。親が目標設定の手本を示すことで、子どもは何かに向かって努力することと、失敗から学ぶことの大切さを学ぶことができるのだ」と話す。 目標を達成しようとする子どもをサポートする方法として最も多かったのは、「改善しようとする努力をほめる」(70%)であり、そのほかに、「子どもと一緒に目標達成に取り組む」(58%)、「目標達成への進捗状況を把握するのを手伝う」(52%)、「経済的な援助を行う」(51%)、「目標を達成した際に褒美を与える」(44%)などが挙げられた。Clark氏は、「親が目標を達成しようとする子どもを手助けしたい場合には、具体的な戦略を示すと良いかもしれない」と助言している。 また、Clark氏は、「新年の抱負を掲げても、日々を送る中でその決意は徐々に薄れていくものだ。家族で決めた抱負を最後まで守りたいのなら、具体的で現実的な目標を設定し、その目標を達成するために必要なステップを踏む時間を確保することが重要だ」と述べている。

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英語で「(計画は)バッチリだね」は?【1分★医療英語】第114回

第114回 英語で「(計画は)バッチリだね」は?《例文1》That sounds like a plan to me!(私は良いと思います!)《例文2》We’ll meet here at 8 am tomorrow?(明日はここで午前8時に集合でしたっけ?)It sounds like a plan!(そうです!)《解説》今回紹介した“sounds like a plan”を、単語を追いかけて日本語に直訳してしまうと「計画のように聞こえる」となり、意味がよくわからなくなってしまいます。実際には、「その計画は良さそう!」「賛成!」と同意を示す表現です。“plan”の前に“good”や“great”を補うと、意味が見えやすくなるかもしれません。英語の口語表現の中で自然発生的に生まれてきたフレーズといわれており、聞いたことがないとわかりにくいかもしれませんが、米国にいると本当によく耳にするフレーズです。“Sounds good to me.”、“That works for me.”などと言ってもいいところですが、英語は繰り返しを好まない言語なので、同じ意味のフレーズを何通りも覚えておいて損はないでしょう。なお、例文のように、冒頭に“That”や“It”を付けて前に言われた内容を受けたり、最後に“to me”と付けて用いたりすることもできます。“Sounds good.”(いいですね)という表現は皆さんご存じだと思いますが、併せて“Sounds like a plan.”も使えれば、より「こなれた」英語になると思います。ぜひ、マスターしてください。講師紹介

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脳梗塞再発予防薬のアンダーユースに介入【うまくいく!処方提案プラクティス】第57回

 脳梗塞後の再発予防薬として、その塞栓機序に基づいて抗血小板薬やDOACなどが用いられますが、出血などの問題から導入が見送りになっているケースもあります。脳梗塞が再発した場合の患者さんやその介護者への負担は大きなものとなるため、適応とならなかった原因やリスクの評価が必要です。今回は、再発予防薬のアンダーユース(本来使うべき薬が処方されていない)にどのように介入したかを紹介します。患者情報80歳 女性(個人在宅)基礎疾患アテローム性脳梗塞、高血圧症、認知症既往歴2ヵ月前に虚血性腸炎で入院、血便もあったため抗血小板薬を中止介護度要介護2訪問診療の間隔2週間に1回介護サービスの利用週2回、通所介護主な介護者同居の長女、胃瘻からの経管投与処方内容1.カンデサルタンOD錠4mg 1錠 分1 朝食後2.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後3.ランソプラゾールOD錠15mg 1錠 分1 朝食後4.ピタバスタチンOD錠1mg 1錠 分1 朝食後5.ピコスルファート内用液 便秘時 適宜調節(未排便3日で10滴)本症例のポイントこの患者さんの通院には元々長女が同行していましたが、2ヵ月前の虚血性腸炎の入院を契機に訪問診療を利用することとなりました。当薬局もそのタイミングで介入となり、服薬管理や血圧の状況、排便状況のモニタリングを開始しました。気になるポイントとしては、血便をきっかけにアテローム性脳梗塞の再発予防薬が中止になっていたことです。薬局スタッフがOP(観察計画)として、抗血小板薬の再開について確認と計画を立てていました。しかし、この計画を立てた後のアクションがなく、そのままになっていたので、訪問時に血便や排便の状況を改めて確認することにしました。訪問時に長女に話を聞いたところ、退院後は血便は1回も出ておらず、排便コントロールもブリストル便形状スケール3〜4の正常便が連日出ていたことが確認できました。出血していた頃はスケール1〜2の硬便が出ていたことから、肛門口を傷つけていたのではないかと医師から話があったことも聴取できました。いずれにしても、すでに血便は解消しています。このまま抗血小板薬が再開されないことで脳梗塞の再発を招いた場合、高次機能障害から患者本人と介護者への負担が増大するというリスクを抱えていたため、医師への確認が必要だと判断しました。ブリストル便形状スケールによる便の性状分類画像を拡大する処方提案と経過医師にトレーシングレポートで、現状は排便に問題がなく、血便もないことを伝え、抗血小板薬の再開を検討してみてはどうか提案しました。医師より返事があり、出血や貧血もなく、再開をどうするか検討していたので次回の訪問診療で再開について家族に話をします、と返答がありました。また、薬剤師にこのようにリマインドしてもらえるのは、処方漏れを回避できるのでとても助かるとコメントをいただきました。その後、この患者さんはクロピドグレル錠を再開する予定でしたが、肝機能や血球系の副作用を懸念して、低用量アスピリンが開始となりました。今後は脂質の評価を行い、必要に応じてスタチンの導入を提案したいと考えています。

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父親の飲酒は子の先天性異常と関連

 妊婦の飲酒が胎児の健康に悪影響を及ぼすことは、これまで多くの研究で指摘されている。しかし、男性の飲酒も新生児の先天性異常のリスクを高める可能性のあることが新たな研究で明らかになった。論文の上席著者である米テキサスA&M大学獣医学・生物医学科学大学教授のMichael Golding氏は、「新生児の先天性異常を避けたい男性は、妊娠を試みる3カ月前から禁酒するべきだ」と述べている。この研究結果は、「Andrology」に12月3日掲載された。 胎児性アルコール症候群は妊娠中の大きなリスクであり、出生児に顔面などの形態異常、低出生体重、注意力や多動性の問題、協調性の欠如などを引き起こす可能性がある。胎児性アルコール症候群を診断する際には、母親の妊娠中の飲酒の有無を確認する必要があるが、父親に対する確認は必要とされていない。Golding氏は、「長い間、男性の飲酒については全く考慮されてこなかった。ここ5〜8年間でようやく、特定の条件下では、父親のアルコール摂取が胎児の発育に非常に強い影響を及ぼす可能性のあることが検討されるようになった」と話す。 研究グループによると、定期的に飲酒する男性の精液は、胎児性アルコール症候群やその他の妊娠合併症に関連する脳や顔の欠陥に関連し、父親の飲酒により精子の遺伝子に生じたエピジェネティックな変化が子の外観や性質などに影響を及ぼすことが、先行研究で示唆されているという。しかし、禁酒することで精子のエピジェネティックな変化がどの程度緩和するのかについては、明確になっていない。 Golding氏らは今回、定期的に飲酒している人が飲酒を4週間控えた場合に、精巣上体頭部での精子の遺伝子発現パターンが飲酒をしていない場合と比べてどう変わるのかを、マウスを用いた実験で検討した。マウスには、6%または10%のアルコールを10週間摂取させ、その後の4週間は摂取させなかった。その後、精巣上体の頭部から精子を採取してRNAやミトコンドリアDNAの解析を行い、アルコール摂取が精子のsmall RNA量やミトコンドリアDNAのコピー数に及ぼす影響を検討した。これまでの研究では、small RNAが親から子への環境情報のエピジェネティックな伝達において中心的な役割を果たすことや、アルコール摂取が肝臓でのミトコンドリアDNAのコピー数と転写に影響を与えることが示唆されている。 その結果、慢性的なアルコール摂取は、精巣上体頭部のミトコンドリア機能、酸化的リン酸化、および一般的なストレス応答に関連する遺伝的経路の転写制御に変化をもたらすことが明らかになった。また、精巣上体全体にわたってアルコール摂取によりミトコンドリアDNAのコピー数が変化し、この変化はアルコールに曝露した精子のミトコンドリアDNA含有量の増加と関連することも判明した。アルコールを摂取したマウスでは、アルコールの離脱から1カ月が経過してもミトコンドリアDNAのコピー数の増加が維持され、small RNAの一種であるマイクロRNA(mir-196a)はアルコールを摂取していないマウスの約100倍であった。 こうした結果を受けてGolding氏は、「この研究では、アルコールからの離脱期間でも、精子はアルコール摂取の悪影響を受け続けていることが明らかになった。これは、精子がもとの正常な状態に戻るまでには、これまで考えられていたよりもはるかに長い時間がかかることを意味する」と大学のニュースリリースで述べている。 またGolding氏は、「離脱期間中に肝臓は恒常的に酸化ストレスにさらされるため、肝臓から体全体にそのシグナルが送られる。生殖系はそのシグナルを、『酸化ストレスが非常に強い環境に置かれている』と解釈し、その環境にも適応できるように子孫をプログラムしている可能性がある」と説明する。そして、そうした適応が、胎児性アルコール症候群のような問題を引き起こしている可能性が高いとの見方を示している。 Golding氏は、今回の研究で得られた知見により、妊娠アウトカムが改善するとともに、アルコール関連の先天性異常の責任を母親にのみ求める考え方に変化が生じることに期待を示している。また、「精子は60日かけて作られ、アルコール離脱には少なくとも1カ月かかるため、安全を期して、父親は、妊娠の3カ月前からアルコールの摂取を控えるべきだ」と助言している。

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小児期の学校での逆境体験が成人後の社会的ひきこもりに関連

 他人との関係を築こうとせずに「社会的ひきこもり」の状態にあるとされる成人には、子どもの頃に学校で逆境体験のあった人が多いとするデータが報告された。公益社団法人子どもの発達科学研究所の和久田学氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Public Health」に10月26日掲載された。 小児期の逆境体験(adverse childhood experience;ACE)は、成人後のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことが知られている。就労や婚姻などの人生の重要なイベントに多大な影響が生じる成人後のひきこもりも、ACEと関連のある可能性が考えられるが、そのような視点での検討は十分なされていない。また、ACEに関するこれまでの研究の多くは主として家庭内で保護者から受けた行為の影響を調査しており、学校で教師や級友から受けた行為の影響については理解があまり進んでいない。これらを背景として和久田氏らは、学校でのACEを体験した成人の割合、それらの体験と成人後の抑うつ・不安レベルおよび社会的ひきこもりとの関連についてのインターネット調査を行った。 調査対象は、ネット調査パネルに登録している20~34歳の成人4,000人であり、匿名で回答してもらった。回答者の1人はトラップ項目(盲目的に回答している人を除外するために設けた質問)に反応したため、解析対象は3,999人となった〔平均年齢27.2±4.3歳、男性と女性がともに49.4%(その他1.2%)〕。 ACEの評価には、10項目(保護者による身体的虐待、言葉の虐待、性的虐待、ネグレクト、夫婦間の家庭内暴力、離婚、死別など)のトラウマ体験を問い、「はい」と回答した項目数を「総ACEスコア」として解析に用いた。学校でのACEの評価には、教師から受けたACEについては前記の質問の主語の「保護者」を「学校または幼稚園の先生」と置き換えて質問し、該当項目数を「教師ACEスコア」として解析。子ども間でのACEについては、同級生または上級生によるいじめ被害の体験を「いじめACEスコア」として解析した。また、教師ACEスコアといじめACEスコアを統合した「学校ACEスコア」も解析に用いた。 抑うつや不安のレベルは、PHQ-4という4項目の質問から成る評価指標を用いて把握した。PHQ-4は0~12点でスコア化され、スコアが高いほど抑うつや不安が強いと評価される。本研究では6点以上を中等度以上の抑うつ・不安と定義した。 病気や妊娠、家族の介護、新型コロナウイルス感染症対策、自然災害などの理由がないにもかかわらず、6カ月以上にわたり他者との交流を伴う外出をしていない場合を「社会的ひきこもり」と定義すると、138人(3.5%)が該当した。解析対象全体のACEスコアは平均0.76±1.37で、1点以上が35.9%、4点以上が6.1%だった。学校ACEスコアの平均は0.96±1.18で、1点以上が55.1%、教師ACEスコアは0.32±0.75、いじめACEスコアは0.64±0.71だった。またPHQ-4は2.65±3.16で、16.3%が中等度以上の抑うつ・不安を抱えていると判定された。 社会的ひきこもり状態を目的変数、年齢、性別、教育歴、世帯人員、生活環境(収入源や暮らし向き)、および総ACEスコア、学校ACEスコアを説明変数とするロジスティック回帰分析の結果、世帯人員〔1人多いごとのオッズ比(OR)1.14(95%信頼区間1.01~1.30)〕とともに、学校ACEスコア〔1点高いごとにOR1.29(同1.13~1.47)〕が独立した正の関連因子として抽出された。反対に、教育歴が長いこと〔OR0.65(0.57~0.74)〕や生活環境が良好なこと〔OR0.65(0.58~0.74)〕とは、負の有意な関連が認められた。一方、年齢や性別、および総ACEスコア〔OR1.01(0.89~1.13)〕は、社会的ひきこもりとの有意な関連が示されなかった。 学校ACEスコアの代わりに教師ACEスコアといじめACEスコアの二つを説明変数として用いた解析でも、世帯人員以外の有意な正の関連因子は、教師ACEスコア〔OR1.23(1.01~1.51)〕といじめACEスコア〔OR1.37(1.06~1.78)〕であり、総ACEスコアは非有意だった。なお、中等度以上の抑うつ・不安を目的変数とする解析では、学校ACEスコアとともに総ACEスコアも有意な正の関連因子として抽出された。 以上の結果を基に著者らは、「学校関連のACEは家庭内でのACEより高頻度で発生している可能性があり、かつ成人後の社会的ひきこもりの発生とメンタルヘルスの悪化に関連していた。教育関係者は、学校が成人期まで影響が続く危害を子どもたちに及ぼし得る場であることを認識する必要があるのではないか」と述べている。

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事例040 特定疾患処方管理加算の漏れ【斬らレセプト シーズン3】

解説診療所のレセプト点検にてよく指摘させていただく事例です。主病の「高コレステロール血症」は、「B000 特定疾患療養管理料」(以下「管理料」)算定対象です。「高コレステロール血症」に対する投薬があれば「F400 注4・注5 特定疾患処方管理加算」(以下「加算」)が算定できます。投与日数が28日分以上であるので「加算」2が月1回算定できます。同月に「加算」1を算定していた場合には、「加算」1を取り消して「加算」2を算定します。この「加算」の算定要件は、生活習慣病などの厚生労働大臣が別に定める疾患(告示「特掲診療料の施設基準等」別表第1)を主病とする患者について、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理(全身管理)を行うことを評価した「管理料」と同じです。対象疾病に対する投薬があれば必ず算定ができます。事例では、「高コレステロール血症」が別表1に表示されていないから算定ができないと誤解されていました。別表第1には、結核、悪性新生物など、32の病名が表示されています。この病名は「疾病、傷病及び死因の統計分類基本分類表(ICD-10)」から設定された3桁の病名分類です。この下位に続く傷病名が「管理料」と「加算」の対象となります。「高コレステロール血症」は、別表第1に示された「E78 リポ蛋白代謝障害及びその他の脂質血症」の下位「E78.0 純正型高コレステロール血症」に分類されて該当となります。また、医療機関で呼称される疾病名が異なっていても、医学的内容が同様である場合は対象となりますが、できる限り標準病名を使用することが望ましいとされています。

540.

LGBTQ患者の診療、困った経験は?/医師1,000人アンケート

 わが国にはLGBTQの人は3~10%程度いるとされている。「患者のほとんどが高齢者のためLGBTQは関係ない」と思われるかもしれないが、高齢者にもLGBTQの人は存在し、日常接している患者さんの中にも少なからずLGBTQ患者がいると考えられる。CareNet.comでは、会員医師1,029人を対象に、LGBTQ患者の診療経験に関するアンケートを実施した。その結果、多くの医師が今後の対応の必要性を認識しているものの、現状では診療体制が不十分であることが多く、今後の診療に影響が生じかねないケースもあったことが明らかになった(2023年12月25日実施)。過去にLGBTQ患者を診療した経験がある医師は43.9% Q1では、過去にLGBTQ患者を診療した経験があるかどうかを聞いた(単一回答)。その結果、「ない」と回答した医師は44.2%で最も多く、「ある」が43.9%、「わからない」が11.9%であった。 通常の診療では目の前の患者さんがLGBTQ患者かどうか意識しないことが多いと考えられるため、「わからない」が最も多いのではないかと予想していたが、はっきりと「ない」と回答した医師が多いのは意外であった。LGBTQ患者とわかった理由は「自己申告」が最多 Q2では、上記Q1で「ある」と回答した場合、LGBTQ患者だとどうやってわかったかを聞いた(複数回答)。多いものから自己申告、雰囲気や外見からの推測、問診表、保険証に記載されている名前や性別、治療・投薬内容、他の人からの伝聞などであった。 フリーコメントでは、「やはり自己申告をしていただかないといかんともしがたい」「本当にLGBTQかどうか確かめる方法がないのが困る」「本人がカミングアウトしていないが、保険証の性別や外見などからLGBTQとわかった場合の対応が難しい」などの声が寄せられた。LGBTQ患者の診療で困った医師は少数 Q3では、LGBTQ患者の診療で困ったことはあるかどうかを聞いた(単一回答)。その結果「ある」が16.3%、「ない」が83.7%と大差が付いた。 フリーコメントでは、困ったこととして「男性と申告した患者の腹部CTの際、放射線科の読影で子宮を腫瘍と読影され精査を追加した」「使用しているホルモン剤の影響を判断できる情報がない」「紹介先がわからない」など、今後の診療に影響しうる内容も多かった。LGBTQ患者を診察する際の不安は「プライバシーの保護」 Q4ではLGBTQ患者を診察する際の不安や懸念について聞いた(複数回答)。最も多かったのは「プライバシーの保護」であった。次いで、使用するトイレや入院時の病棟の決め方、LGBTQ患者に特有の治療(ホルモン剤や性別適合手術後のケアなど)、患者とのコミュニケーション、パートナーによる手術の同意/看取りの立ち合い/病状説明/面会の可否、患者がカミングアウトした場合の受け止め方、などが続いた。 フリーコメントではトイレや更衣室、入院病棟に関するコメントが圧倒的に多く、「共通トイレがなく困った」「トイレ使用に関してクレームがきた。やはり化粧はしていても髭の生えた人が女性トイレに入れば問題になる」「外来はプライバシーが守られたらよいと思うが、入院となると大部屋は悩ましいなと思う」など、ほかの患者さんとの関係を危惧するコメントが多く寄せられた。 Q5ではフリーコメントとして、LGBTQ患者の診療で困った経験、行っている取り組み、あるとよいと思う制度や仕組み、聞きたいことなどを聞いた。診察や治療に関するご意見・あまり最初から身構えずに、カルテの性別を基本にとして対応しています。・もちろん時に特別なことも必要かもしれませんが、通常はほかの患者さんとまったく同様の手順と気持ちで普通に診察できるようになるべきだと思います。・直接関わりがない部分はあまりむやみに聴取しないほうがよいと思ってはいるが、逆に遠慮して正しい診断に至らない可能性もあり、そもそもLGBTQなのか、どこまで聞いてよいのかなどほかの診療でどうやっているのか聞きたい。・妊娠の有無は教えてほしい。・医療に関しては遺伝子での性別に限定してほしい。施設に関するご意見・トイレが最大の問題だと思います。・施設利用(とくにトイレの使用)における法的な解釈や社会共通のコンセンサスがほしい。・トイレなどの施設的な問題はすぐには改善できないことが不安。・大部屋に入院させるときの対応について、ほかの施設の経験を知りたい。・当院での診療対応はできないのが実際。院内ルール、法整備に関するご意見・公文書の性別が男女の2択になっている現状を変えてほしい。・病院としての指針を作っておいてほしいです。・どこまで配慮すべきなのか基準が知りたい。・パートナーの同意で医療行為を行ってよい法的補償。・法規制の隙間に入ることが多いので、社会的な保護と義務について対応できる窓口がほしい。その他のご意見・今のところ診察したことないですが、これからのことを考えると対策を早急に考えるべきですね。・専門性があるので、ある程度、専門医療機関での診療に統合したほうがよいと思います。・患者側への啓発をする医療団体があればよいと思う。・もっと病気を周知してほしいです。・周囲のスタッフ間で情報の共有が難しい。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。https://www.carenet.com/enquete/drsvoice/cg004543_index.html

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