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第VIII因子インヒビター重症血友病A患者に対するAICCの予防的投与戦略

第VIII因子インヒビターを有する重症血友病A患者に対し、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(AICC、商品名:ファイバ)を予防的に投与することで、関節内出血およびその他の部位での出血頻度が有意に低下することが明らかになった。予防的投与の安全性も確認された。米国・チュレーン大学ルイジアナセンターのCindy Leissinger氏らによる前向き無作為化クロスオーバー試験「Pro-FEIBA」からの報告による。同患者は、重篤な出血性合併症リスク、末期関節症への進行リスクが高いことが知られる。AICCがそうした患者に対し出血を予防する可能性についてはこれまで散発的な報告はなされていたが、最適な投与方法については確立されていなかった。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。34例を対象に予防的投与期間中とオンデマンド治療期間中の出血回数を比較研究グループは、欧米16ヵ所の血友病治療センターで2003年11月~2008年9月に、2歳以上のインヒビター高値の血友病A患者で、出血に対しバイパス製剤による治療を始めていた(試験前6ヵ月間で6回以上出血エピソードがあった)患者34例を登録した。被験者は無作為に、AICCの予防的静注[目標用量85U/kg体重(±15%)を週3回(連続しない日に投与)]を6ヵ月間行う治療と、オンデマンド治療[出血に対し目標用量85U/kg体重(±15%)のAICCを投与]を6ヵ月間行う治療をクロスオーバーで受け、それぞれの治療期間における出血回数を主要エンドポイントとして比較された。両治療の間には、3ヵ月間の休薬期間が設けられ、その間の出血についてはオンデマンド治療が行われた。予防的投与は全出血エピソードを62%減少試験を完了しper-protocol解析で有効性評価がされたのは、34例中26例であった。結果、オンデマンド治療期間と比較して予防的投与期間は、全出血エピソードが62%減少(P<0.001)、関節血症は61%減少(P<0.001)、標的関節出血(6ヵ月間の治療期間中片方の関節血症が3回以上)は72%減少(P<0.001)した。被験者の33例が1回以上試験薬を受けており、それら被験者について安全性の評価が行われた。結果、1例が試験薬に対するアレルギー反応を有した。(武藤まき:医療ライター)

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英国電子カルテ・NHS医療記録サービス、臨床家の利益は限定的、患者の利益は不明

英国で国家的IT戦略の一つとして2002年により導入が開始された2次急性期病院への電子カルテシステム「NHS医療記録サービス」について、エジンバラ大学集団保健センターeHealth研究グループのAziz Sheikh氏らが、早期導入した12病院の状況の長期質的評価を行った。結果、サービス実行には時間がかかり骨が折れるものであること、臨床家にとって利益は限定的で、患者にとっては明確な利益が不明であったという。英国の全377病院は2010年末までに同システムを導入しなければならなかったが、稼働は5つに1つの病院にとどまっており、今後の進め方について見直しの議論が進められているという。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月17日号)掲載報告より。2年半にわたる関係者への面接、観察、文書データ解析でシステム導入を質的評価本報告は2年半にわたって行われた評価の最終評価であった。評価は、深層面接、観察、ケーススタディあるいは導入戦略について広範な国家的成果に影響があると認められた文書からデータが集められ、導入初期から全体にわたる解析が行われた。集められたデータは次の通りであった。病院スタッフ、デベロッパー、政府のステークホルダーなどキーとなるステークホルダー431人の準組織的な面接記録。590時間にわたる戦略会議とソフトウェア活用に関する記録。334セットの観察ノートと分析者のフィールド調査ノートおよび国の会議ノート。809のNHS文書と、58の地方および国の文書。ソリューション全体の目標を見失ってはならない結果、当初計画したよりも、システム導入には非常に時間がかかっており、導入は限定的で、実質的に臨床的には機能してないことが認められた。国家戦略の成果は限定的で、より広範な開発が導入への重荷となっていた。特に、遅れは想定外のシステム能力や、ソフトウェアの構築・設定・カスタマイズに時間を要したこと、システムが医療の供給をサポートしたことを証明する作業が必要なこと、エンドユーザーへの訓練とサポートが必要なことなどが関係していた。その他導入進展を妨げた要因として、NHSの政策方針と優先事項の変化、契約再交渉が繰り返されたこと、NHS医療記録サービスシステム開発ステージの多様性、異なるステークホルダー間の複雑なコミュニケーションプロセス、NHS提供者を除外して進められた契約協定などだった。早期のシステム稼働が組織内・組織間の重大な学びに結びつくこと、NHS病院内の適切な権限開発に結びつくことが認められた。研究グループは、「この結果が後発病院にもあてはまるとは限らないが、われわれの評価は大規模な新しいシステム実行のプロセスで起きたことを明らかにした」と述べ、「われわれの中間解析に基づき提唱した局所的意思決定増大への移行がNHSによって推進され歓迎されているが、政策担当者は、ソリューション全体の目標を見失ってはならない」と結論している。

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戸田克広 先生の答え

麻薬の使用法治療としていわゆる麻薬はどのような状況、症状の時に使うべきなのでしょうか。また、投与中止はどのようにおこなうべきでしょうか。非癌性慢性痛に麻薬を使用することは依存を引き起こすのではないかと危惧する意見があります。しかし、痛みがある患者さんに適切に使用する限りは、依存は起こらないと考えられています。後者の仮説には明確なデータはないため麻薬の使用は慎重におこなうべきです。しかし、適切な治療を1年以上おこなっても鎮痛効果が不十分な場合や、初診時に激烈な痛みがあり、自殺の恐れがある場合には麻薬を使用してもよいと思います。喫煙者などの物質依存者や約束を守らない人格と判断される場合には麻薬を使用しないことが望ましいと思います。モルヒネには「天井効果がないため上限量はない」という考えもありますが、「200mg / 日を超える場合にはさらに十分な評価が必要」という意見もあります。ペインクリニック専門医ではない場合には200mg / 日を超えるモルヒネは査定される可能性が高いという非公式の制度があるため注意が必要です。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは使用すべきではありません。トラマドール塩酸塩〔トラムセット〕またはコデイン、モルヒネ、フェンタニル〔デュロテップパッチ〕の順で使用することが一般的です。モルヒネは薬価が高いため、1回量が20mgになれば薬価の安い散剤にした方が良いと思います。麻薬が有効な場合、その他に有効な薬を見つけて麻薬を減量または中止する努力が必要です。減量とは1回量の減量であって、投与間隔を延長してはいけません。モルヒネであれば1回量を2-4週間ごとに10mgずつ減量し、痛みが悪化すれば再び増量することが望ましいと思います。※〔 〕内の名称は商品名です 中枢性過敏についてこの概念と定義はどなたが提唱したものなのでしょう。概念をもう少し詳しくお聞かせください。御多忙中とは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします。Woolfが中枢性過敏(central sensitization: CS)を提唱しました。CSにはさまざまな定義があります。Woolfは「侵害受容刺激により中枢の侵害受容経路のシナプス効果と興奮性が長期間ではあるが可逆的に増加すること」と定義していますが、国際疼痛学会は「正常あるいは閾値下の求心性入力に対する中枢神経系内の侵害受容ニューロンの反応性の増加」と定義しています。私は次のように考えています。侵害受容性疼痛や末梢性神経障害性疼痛という痛み刺激のみならず、精神的ストレスなどの刺激が繰り返し脳に送られ続けると、中枢神経に機能障害が起こってしまいます。機能障害ではなく器質的障害なのかもしれませんが、現時点の医学レベルではよくわかっていません。中枢神経に機能障害が起こるとさまざまな刺激に対して過敏になり、痛みを感じない程度の刺激が中枢神経に入っても痛みを感じさせてしまいます。また、中枢神経に起こった機能障害の部位そのものが痛みなどの症状の原因になる、つまり機能障害の部位から痛みなどの情報が流れてしまうと推測しています。一方、Yunusが中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)を提唱しました。CSSの主な原因はCSと推測されています。CSは主に痛みに関する理論ですが、CSSには痛みを主訴とするFM以外にも、慢性疲労症候群、異常感覚を主訴とするむずむず脚症候群、化学物質過敏症、うつ病、外傷後ストレス障害なども含まれます。CSSの代表疾患の一つがFMなのです。CSは日本でも知られていますが、CSSはFM以上に日本では知られていません。CSSに含まれる疾患は定まっていません。不安障害、皮膚掻痒症、機能性胃腸障害、更年期障害、慢性広範痛症、慢性局所痛症などもCSSに含まれると私は考えています。(日本医事新報No4553, 84-88, 2011)FMの症状について口の中が痛くて、硬いものがかめない症状や、下肢痛があり車や電車に乗ると悪化するような症状はFMに該当するでしょうか?口の症状はFMの症状です。FMでは身体のどこにでもアロジニア(通常痛みを引き起こさない程度の刺激により痛みが起こること)が起こります。口腔内にそれが起これば、硬いものをかめない症状が生じます。口の症状のみがある場合には舌痛症と診断すべきかもしれませんが、舌痛症はFMの部分症状と考えることも可能です。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化すると訴えるFM患者を私は知りませんが、FMの症状と考えても矛盾はありません。FMでは、歩行時より下肢を動かさない状態の時に痛みが強い場合が多いからです。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化する場合には、むずむず脚症候群の可能性もあります。むずむず脚症候群では歩行時よりも安静時に下肢のむずむず感が強くなるため、自動車や電車に乗るとそれが強くなる場合があります。むずむず感などの違和感を痛みと表現する患者さんもいます。FMとむずむず脚症候群はしばしば合併するため注意が必要です。者の性差について患者で女性が8割を占める理由について病態の解明は進んでおりますでしょうか。現在わかっている範囲でお教えください。FMの原因は脳の機能障害という説が定説ですが、厳密にはわかっていません。そのため、女性が8割を占める理由も当然わかっていません。FMの原因解明が進めば、その理由もわかるのではないかと期待しています。FMを含むFMよりも広い概念の慢性広範痛症においては双子を用いた研究により半分が遺伝要因、半分が環境要因と報告されています。性ホルモンはFMに影響を及ぼす要因の一つと考えられています。ただし、性ホルモンは遺伝子により大きな影響を受けるため、性ホルモンの差と遺伝子の差を厳密に区別することは困難です。なお、FM患者の中で女性と男性でどちらの症状が強いかに関しては、男女差はないという報告、女性の症状が強いという報告、男性の症状が強いという報告があり、何ともいえません。治療選択について非薬物療法を患者さんが選択し、希望する場合、一番効果的なものはどれでしょうか。先生の私見でも結構ですのでご教示願えますか。非薬物療法の中では禁煙、有酸素運動、認知行動療法、温熱療法、減量、患者教育が有用です。激しい受動喫煙を含めた喫煙者では、禁煙が一番有効と考えていますが、非喫煙者では有酸素運動が一番有効と考えています。患者本人の喫煙継続は論外ですが、間接受動喫煙防止のため配偶者には禁煙、その他の家族には屋外喫煙が必要です。有酸素運動は、技術や人手が不要、安価で、誰でもできるという長所があるため、非喫煙者では最も有効と考えています。散歩や水中歩行のみならずヨガ、太極拳も有効です。歩行すると痛みが悪化する人では、深呼吸で代用も可能です。安静が有効な場合もありますが、これは痛みが起こらない程度の安静を保つことを意味するのであって、過度な安静は逆に有害です。痛みに対する認知行動療法は、論文上有効なのですが、実際に何をすれば良いのかよくわからないこと、適切な治療を行う施設が少ないこと、費用が高いことが欠点です。欧米を中心にしたインターネットによる調査では約8%の人しか認知行動療法を受けておらず、患者さんが自己評価した有効性もあまりよくありませんでした。温熱療法には、温泉療法、温水中の訓練、遠赤外線サウナ、近赤外線の照射などが含まれます。FMは心因性疼痛ではなく、恐らく脳の機能障害が原因であろうことの説明や痛いときには無理をしないことの説明などが患者教育です。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という根拠はありません。対照群のない研究では鍼は有効なのですが、適切な対照群のある研究では鍼の有効性が証明されていません。交感神経ブロックも鍼も、5回行って一時的な鎮痛効果しかなければ、それ以上継続しても一時的な効果しかないと私は考えています。トリガーポイントブロックの長期成績は不明です。非薬物治療は組み合わせて行うことが望ましく、さらに言えば、非薬物治療は薬物治療と併用することが望ましいと報告されています。線維筋痛症の患者とうつ病同症の患者では精神疾患(特にうつ病)を併発されている方も多いと聞きます。その場合のケアと薬剤の処方のポイントについてご教示ください。抑うつ症状あるいはうつ病に痛みが合併した場合、痛みはうつ病の一症状であるという理論は捨てる必要があります。痛みと、抑うつや不安症状は対等の症状と見なすことが重要です。FMとうつ病(または不安障害)が合併した場合、当初はより重症な症状のみを治療することをお勧めします。一方の症状がある程度軽減した後に、他方の症状を治療した方が治療は容易です。抗うつ作用がまったくない薬で痛みが軽減しても、抑うつ症状が軽減することはありふれたことです。しかし、両症状とも強い場合には、両方を同時に治療せざるを得ないこともあります。その場合には抑うつ症状に対する治療と、痛みに対する治療は分けた方がよいと思います。SSRIと短期間の抗不安薬を抑うつ症状に対する治療と考え、その他の薬は痛みに対する治療と考えた方がよいと思います。三環系抗うつ薬とSNRIは抑うつにも痛みにも有効ですが、痛みのみに有効と見なし、抑うつがついでに軽減すれば「儲け物」という程度に考えた方がよいと思います。なお、三環系抗うつ薬では鎮痛効果を発揮する投与量より抗うつ効果を発揮する投与量の方が多いのですが、SNRIでは両効果を発揮する投与量は同程度です。SSRIも痛みに対する薬も通常漸増する必要があります。それらを同日投与や同日増量すると副作用が生じた場合に、原因薬物の特定が困難になる場合があります。そのため、投与開始や増量は少なくとも中2日は空けたほうがよいと思います。抗不安薬は、SSRIが抗うつ効果や抗不安効果を発揮するまでの一時しのぎとして抗不安薬を使用すべきです。抗不安薬を半年以上投薬する場合には、転倒や骨折の増加、運動機能の低下、理解力の低下、認知機能の低下、抑うつ症状の悪化、新たな骨粗鬆症の発症、女性での死亡率の増加を説明する必要があります。抗不安薬を半年以上使用すると常用量依存が起こりやすく、その場合中止が困難になります。薬物療法とガイドライン解説の中で薬物療法について「ガイドラインでは科学的根拠がない」と記されていますが、近々に発表される、または欧米のものが翻訳される見込みはございますか。教えていただける範囲でお願いします。「線維筋痛症のガイドライン」は、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパ、カナダ、スペインから発表されています。日本語に翻訳されて発表される見込みは現在不明です。日本のガイドラインの改訂版は今後発表される予定ですが、いつになるのか未定です。アメリカ、ドイツ、ヨーロッパのガイドラインは各治療方法の有効性のエビデンスを記載しています。カナダのガイドラインはエッセイ様式です。スペインと日本のガイドラインはサブグループに分けています。スペインのガイドラインは修正デルフィ法(参加者の匿名のアンケートとそれに対する評価を繰り返し一つの結論を出す方法)によりGieseckeらの分類方法を採用しています。日本のガイドラインの最大の特徴はFMをサブグループに分けて、サブグループごとに治療方法を変える点です。世界では、FMのサブグループ分けは多くの研究者により行われています。痛み、抑うつ状態などのさまざまな指標により得られたデータによりサブグループ分けが行われていますが、報告により異なるサブグループに分けられています。ただし、日本のガイドラインに含まれる「筋付着部炎型」は私が知る限り、報告された分類方法のどのサブグループにも存在しません。また、前回と今回の日本のガイドラインでは同じサブグループの推奨薬物が異なっていますが、その変更の根拠が記載されていません。「分類の根拠、およびサブグループごとに推奨する薬物が異なる根拠は論文化されていない」由が、今回のガイドラインに記載されています。日本のガイドラインでは各執筆者は自分自身の執筆した部分のみに責任を持つことも特徴の一つです。睡眠薬との関連痛みがひどくて眠れない患者さんに睡眠薬を処方することもあるかと思います。その場合、注意する点などご教示ください。FMに限らず、痛みのために不眠の患者さんの睡眠改善目的にまず処方する薬は、睡眠薬ではなく鎮痛薬です。もちろん非ステロイド性抗炎症薬ではなく神経障害性疼痛に対する鎮痛薬です。鎮痛薬が主で、睡眠薬は従の関係です。当初は睡眠薬を処方せず、鎮痛薬を私は処方しています。三環系抗うつ薬、ガバペンチン〔ガバペン〕、プレガバリン〔リリカ〕は鎮痛効果が強い上に、眠気の副作用が強いのでその副作用を睡眠改善に使用することも可能です。しかし、眠気の副作用がほとんどないワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物〔メジコン〕により痛みが改善すれば、結果的に睡眠が改善することもあります。FMの不眠に有効な睡眠薬はゾピクロン〔アモバン〕、ゾルピデム酒石酸塩〔マイスリー〕ですが、副作用報告の少ないゾピクロンを私は優先使用しています。FMの睡眠障害に対して抗不安薬を使用することは避けるべきです。常用量依存を作りやすいからです。特に、作用時間が短く抗不安作用が強いため常用量依存を作りやすいエチゾラム〔デパス〕を睡眠薬として使用することは避けるべきです。※〔 〕内の名称は商品名です。日本での患者数わが国における患者の推定数はどのくらい見積もられておりますでしょうか、また、欧米の患者数、人種差、性差なども合わせてお教え下さい。日本における地域住民の有病率は約1.7%と報告されていますが、その報告には調査人数や具体的な調査方法が記載されていません。今後、科学的根拠の高い日本人の有病率が世界に知られることを期待しています。日本の病院敷地内での女性就労者の2.0%、男性就労者の0.5%がFMと報告されています。アジア、欧米を中心とした報告によるとFMの有病率は約2%、そのグレーゾーンの有病率は約20%と推測されます。圧痛点の数は経時的に変動することや論文上の有病率は一時点の有病率であることを考えると、真の有病率は約2%、日本では250万人程度のFM患者がいると推測しています。中国での有病率は0.05%という報告がありますが、調査方法や診断能力に原因があるのかもしれません。同一の研究チームが異人種を調べた研究は3つあり、ブラジル(非白人2.65%と白人2.26%)とイラン(Caucasians0.6%とトルコ人0.7%)では人種差がなく、マレーシア(マレー系1.19%、インド系2.58%、中国系0.33%)では人種差がありました。そのため有病率に人種差があるのかどうかは不明です。FM患者の約8割は女性であり、性比には大きな人種差はないようです。医師以外の関与線維筋痛症について、ナースやコメディカルが介入できる余地はありますでしょうか。例えば理学療法士がストレッチを指導する、ナースが話を聞くなどで患者の日常生活から改善していくなどです。その際の保険点数など参考になるものがございましたらご教示お願いします。薬物治療以外では、コメディカルが介入できる余地がたくさんあります。ただし、FMという病名では保険点数はつきません。理学療法士や作業療法士は、有酸素運動、筋力増強訓練、ストレッチ、水中訓練などを指導できます。しかし、FMなどの痛みを引き起こす疾患では保険点数は取れません。関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、運動器不安定症などが合併していれば運動器リハビリテーション料を請求することができます。ナースが患者の話を聞いたり、患者の痛みや生活の質を評価するアンケートの記載方法の説明を行うことができます。ただし、ナースが患者の話を聞いても保険点数を請求できません。うつ病に対する認知行動療法に対して、厳しい条件はあるものの2010年から保険点数が取れるようになりました。しかし、FMなどの痛みに対する認知行動療法では保険点数を請求できません。総括FMが知られていない日本医学は世界の標準医学から大きく乖離しています。FM以上に中枢性過敏症候群は、日本では知られていません。FMのみならず中枢性過敏症候群を認めて世界の標準医学に追いつく必要があります。FMの治療はFMのみならずそのグレーゾーン、つまり人口の約20%に有効です。グレーゾーンにもFMの治療を行うのですから、臨床の観点ではFMの診断は厳密に行う必要はありません。心因性疼痛、仮面うつ病、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断するより、FMやそのグレーゾーンと診断する方が、有効な治療方法が多いためほぼ間違いなく治療成績が向上します。異なる医学理論が衝突した場合には、「脚気論争」と同様に治療成績がよい医学理論を採用すべきです。自分が長年信じていた医学理論を捨てることは困難ですが、臨床医は自分が信じる医学理論を守ることより、よりよい治療成績を求めるべきです。戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

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米国18歳未満対象の段階的運転免許制度、死亡事故抑制には機能しておらず

米国の18歳未満を対象とする段階的運転免許(graduated driver licensing:GDL)制度の効果について検証したCalifornia Department of Motor VehiclesのScott V. Masten氏らは、16歳ドライバーの死亡事故はかなり低かったが、18歳ドライバーの死亡事故がやや高くなっており、「18歳ドライバー死亡事故の原因解明とGDL制度を改善すべきかを検証する必要がある」とまとめた報告を、JAMA誌2011年9月14日号で発表した。米国では自動車事故死が10代若者の主要な死因となっており、2000~2008年の16~19歳自動車死亡事故者は、ドライバー2万3,000人、同乗者1万4,000人以上に上った。また、事故発生は18~19歳で最も多かったが、走行距離補正後の死亡事故発生はより若い年齢で高く、18~19歳と比べて16歳は150%増、17歳は90%増であったという。GDL制度と1986~2007年の16~19歳自動車死亡事故との関連を調査現在全米50州とワシントンD.C.で導入されているGDL制度は、18歳未満を対象とした、無制限の運転免許を与える前に低リスク下での運転経験を十分に積んでもらうことを目的としたもので、最初の段階では3ヵ月以上の成人運転熟達者の同乗が必要とされ、続く段階として運転熟達者の同乗は不要だが夜間運転の禁止もしくは10代同乗者の禁止(またはいずれも禁止)が特徴となっている。Masten氏らは、GDL制度と16~19歳自動車死亡事故との関連を調べるため、1986~2007年の四半期ごとの自動車死亡事故についてプール横断時系列解析を行った。主要評価項目は、年齢ごとの対人口でみた死亡事故発生率と、GDL制度を取り入れていない州-地域と比較した、規制が強い州-地域(夜間運転と10代同乗者のいずれも禁止されている)、規制が緩い州-地域(どちらか一方のみが禁止されている)それぞれの割合および95%信頼区間とした。解析は、22年間で4地域・51州の4,488州-地域を対象に含んだ。規制が強い州-地域とGDL制度なし州-地域との、全年齢複合死亡事故発生率比は0.97結果、死亡事故発生率はおおよそ年齢とともに増加する傾向にあり、人口10万人当たり、16歳ドライバー28.2、17歳ドライバー36.9、18歳ドライバー46.2、19歳ドライバー44.0だった。16歳が最も低く、18歳が高かった。潜在的交絡因子で補正後、16歳ドライバー死亡事故発生率の低さと、GDL制度の特徴である規制との関連が認められた。規制のない州-地域との比較でみた、規制が強い州-地域の発生割合(RR)は0.74(95%信頼区間:0.65~0.84)だった。しかしながら一方で、18歳ドライバーの死亡事故発生率の高さと、GDL制度規制の強さとの関連も認められ、規制のない州-地域との比較でみた、規制が強い州-地域のRRは1.12(同:1.01~1.23)だった。また、その他の年齢および全年齢複合の規制との関連については、統計的な格差が認められなかった。RRはそれぞれ、17歳ドライバー0.91(95%信頼区間:0.83~1.01)、19歳ドライバー1.05(同:0.98~1.13)、16~19歳ドライバー複合0.97(同:0.92~1.03)だった。(武藤まき:医療ライター)

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1997~2000年卒業の医学生、87.3%が専門医資格を取得:全米調査

米国専門医認定機構(ABMS)の専門医資格取得について、1997~2000年に医学校を卒業した医師の取得状況と、その背景因子について調査した結果、取得率は87.3%に上り、人種による取得率の違いや、抱えている負債と取得領域との関連などの実態が明らかになった。ABMS取得は米国で医師のクオリティ尺度となっている。調査は、ワシントン大学医学校のDonna B. Jeffe氏らにより行われ、JAMA誌2011年9月7日号で発表された。4万2,440人のABMS専門医資格の取得について後ろ向きに調査Jeffe氏らは、1997~2000年に米国の医学校を卒業した4万2,440人の、卒業時の専門領域選択によってグループ化し、2009年3月2日現在までのABMS専門医資格の取得について後ろ向きに調査した。また専門分野ごとの多変量ロジスティック回帰モデルにて、取得に関連する因子を調べた。結果、調査対象4万2,440人のうち、3万7,054人(87.3%)がABMS専門医資格を取得していた。取得背景は、専門分野ごとに異なる専門医取得率は、すべての専門分野で、米国医師国家試験(USMLE)のSTEP 2臨床医学試験を最高位の三分位得点で、1回で合格した人で高い傾向(1回目は不合格だった人と比べて)が認められた。同取得格差(最高位得点1回で合格vs. 1回目不合格)の補正後オッズ比(AOR)は、専門領域で異なっており、救急専門医取得の格差は最も小さく(87.4%対73.6%、AOR:1.82、95%信頼区間:1.03~3.20)、一方、最も大きかったのは放射線専門医の取得だった(98.1%対74.9%、同:13.19、5.55~31.32)だった。家庭医を除き、マイノリティと自認している卒業生の専門医取得は低率だった(白人との比較で)。同取得格差(マイノリティvs. 白人)が最も小さかったのは小児科専門医でAORは0.44(95%信頼区間:0.33~0.58)、最も大きかったのはその他非一般専門医で同0.79(0.64~0.96)だった。負債額5万ドル単位区分別にみた、最高位群(≧15万ドル)と負債なし群との取得格差が小さかったのは、卒業時に産婦人科/婦人科を選択した群だった(AOR:0.89、95%信頼区間:0.83~0.96)。一方で格差が大きかったのは家庭医を選択した群だった(同:1.13、1.01~1.26)。(武藤まき:医療ライター)

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作りました、「時間がない人」専用のPubMed

ケアネットは2011年8月、世界初のクラウド型論文検索サービス「PubMed CLOUD」をWEB サイト上および App Store にて提供を開始した。開始後iPadアプリはiTunesメディカル(無料)部門でダウンロード第1位を獲得し、好評を得ている同サービスについて開発担当の同社藤原健次氏に話を伺った。PubMed CLOUDとは?PubMed CLOUD(パブメド クラウド)は、気になった論文を世界最大級の医学文献データベース「PubMed」(※1)を検索して、その論文のアブストラクトを保存・管理できるツールです。2011年8月より、医師・医療従事者専門サイト「CareNet.com」会員に向けて、無料でサービスを提供しています。このサービスにはクラウドで連動している、iPhone、iPadに対応したiOSアプリも用意しましたのでApp Store にてアプリをダウンロードしていただければ、保存したアブストラクトをいつでもどこでも、好きな時間にアクセス、閲覧することができます。ケアネット会員であれば、医師でなくても誰でも利用できますので、多くの会員の皆さんに活用していただきたいです。※1「PubMed」は米国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)により提供されている世界最大級の医学・生物文献データベース「MEDLINE」を、インターネットで検索できるサービス。PubMed CLOUDで時間を有効活用私も仕事で「PubMed」はよく利用していたのですが、「PubMed」は、検索結果とアブストラクトが別の画面に表示されるので、画面を行ったり来たりと手間がかかり、目的のアブストラクトにたどり着くまで、時間がかかっていました。しかし、「PubMed CLOUD」では検索結果とアブストラクトを同じ画面に表示させるレイアウトを採用しているので、これにより検索結果をさくさくと閲覧でき、目的のアブストラクトに素早く到達することができます。また、過去に「PubMed」で検索して見つけた論文が再度必要となり、その時に入力した検索式をどこかにメモを残していたりしていないので、またもう一度同じ論文を求めて検索し直すという煩わしい経験を何度もしたことがありました。でも「PubMed CLOUD」では、気になった論文をその場でボタン一つで保存できるので、簡単に自分専用の論文ライブラリーができあがります。さらに、保存されたデータはインターネット上に記録されるので、勤務先でも自宅でも、またiPhoneやiPadにアプリを入れておけばいつでも、どこでも自分専用論文ライブラリーにアクセスできます。時間がない先生方にとって論文検索時間の短縮、閲覧時間の確保・拡張となり、時間の有効活用になると考えています。WEB サイトとモバイル間で同期ができる「PubMed」がほしい!これまでにも「PubMed」を検索できるiPhone、iPad向けアプリは存在していましたが、iPadとiPhone間との同期の機能がなかったため、例えばiPad上に検索・保存したものがiPhoneでは見ることができず、残念な思いをしていました。また「PubMed」はパソコンでの利用が多いため、WEB サイトとiPhone、iPadで同期ができる「PubMed」の開発を始めました。7割超のユーザーから保存機能がよいと好評価8月にリリースする前に、7月21~23日に開催された第9回日本臨床腫瘍学会(JSMO)のブースにて「PubMed CLOUD」のβ版を先行して公開いたしました。「PubMed」というキーワードで足を止めた学会参加者の方も多く、多くの先生方に興味を持っていただき3700名の学会参加者のうち300名もの方々からβ版のご利用の申し込みをいただくことができました。また、サービスを開始してから「CareNet.com」会員の方に「PubMed CLOUD」についてアンケートをしたところ、「非常に興味あり」「興味あり」と答えた方が7割強と会員の方々からの関心の高さを伺い知ることができました。7割くらいの方が気に入った点として「保存機能」を挙げており、私と同じように、従来の「PubMed」をもっと快適に利用したい会員の方々が多いのかもしれませんが、早々に「PubMed CLOUD」が支持され始めているのだと実感いたしました。役立つ論文を自分専用ライブラリーにどんどん保存できるのが醍醐味1ユーザーとして、私はインターネットでお気に入りのホームページ等をブックマークするように、「PubMed CLOUD」で論文を検索して、役立つ論文を自分専用ライブラリーにどんどん保存できるのがこのサービスの醍醐味だと感じています。これまでは購入した原著論文はパソコンのフォルダで管理していましたので、外出先でとっさに閲覧した場合も確認することはできませんでした。現在では原著を「PubMed CLOUD」で保存・管理していますのでiPadで見たい時に見られるようになり、論文の利用機会が一変しました。これまで文献検索結果や原著の管理方法にゴールデンスタンダードはなかったので、会員の方々のゴールデンスタンダードになれば嬉しいですね。「PubMed CLOUD」を通して、会員の方々の臨床力向上のお手伝いができればと思っています。

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米国でピーナッツバターが原因の集団食中毒を契機に、国内外に強制力を持つ食品安全システムが始動

米国CDC人畜共通感染症センターのElizabeth Cavallaro氏らは、2008年11月以降に全米各地で報告されたサルモネラ菌食中毒について、調査の結果、1ブランドのピーナッツバターとそれを原料としたピーナッツ製品の摂取が原因であり、3,918製品が回収されたことを報告した。報告によると、米国ではこの食中毒発生を契機に食品安全システムへの議論が再浮上、2009年3月に食品汚染事案を24時間以内に報告するFDA’s Reportable Food Registryが始動し、2011年1月4日のFood Safety Modernization Act制定により、FDAが国内外の食品供給元に対し、回収および安全計画提出を命じることができるようになったという。NEJM誌2011年8月18日号より。トレースバック調査と摂取環境調査にて、1企業のピーナッツバターが特定研究グループは、2008年9月1日から2009年4月20日の間にネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)集団発生株への感染が検査で確認された食中毒報告例を症例と定義。マッチ対照群とによる2つの症例対照研究(研究1:摂取製品のトレースバック調査、研究2:摂取環境調査)を行った。全米46州で同定された症例患者は714例、そのうち入院が166例(23%)、死亡が9例(1%)だった。研究1(症例群65例、対照群174例)の結果、疾患との関連が認められたのは、何らかのピーナッツバターを摂取(一致オッズ比:2.5、95%信頼区間:1.3~5.3)、ピーナッツバターを含んだ製品を摂取(同:2.2、1.1~4.7)だった。冷凍チキン製品の摂取も関連が認められたが(同:4.6、1.7~14.7)特定製品を食べたわけではなかった。一方でピーナッツバターについては、9企業に関連した限局的集団発生と単発症例の調査から、これら企業に供給していたピーナッツバター1企業のブランド製品(ここではブランドXと呼ぶ)が特定された。研究2(症例群95例、対照群362例)では、外出先でのピーナッツバター摂取(一致オッズ比:3.9、95%信頼区間:1.6~10.0)、2つのブランドのピーナッツバター・クラッカーを摂取(ブランドAの一致オッズ比:17.2、95%信頼区間:6.9~51.5、ブランドB:3.6、1.3~9.8)と疾患との関連が明らかになった。そして2つのブランドのクラッカーはいずれもブランドXのピーナッツペーストから作られていた。食品安全システムの今後は、予算確保と関係当事者の継続的な協力次第結果として集団発生株は、ブランドXのピーナッツバター、ブランドAのクラッカー、その他15の製品から分離され、2009年1月10日から4月29日までの間に合計3,918のピーナッツバター含有製品がリコールされた。研究グループは、「汚染されたピーナッツバターとそのピーナッツ製品が全国規模のサルモネラ症集団発生を引き起こした。成分由来の集団発生は検出が難しく、多数の食品を広範にわたって汚染する可能性がある」と警告。この事案を契機に食品安全システムが強化されたことを報告したうえで、最後に「システム成功のカギは十分な予算確保と、規制当局と州、保健担当者、企業担当者との継続的な協力による」とまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

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国民への心血管疾患予防プログラム、適度の達成で年間医療費3,000万ポンド削減可能

英国・バーミンガム大学医療経済学教室のPelham Barton氏らは、「国民への心血管疾患予防を目的としたリスク因子低減の各種プログラムは、適度でも達成さえすれば国民の健康増進とともに、医療制度財源の正味のコスト削減にも結びつく」ことを、イングランドとウェールズ全住民を対象としたモデル研究の結果、報告した。英国での心血管疾患死亡は年間15万人以上、罹患者は500万人以上、医療コストは年間300億ポンド以上に上るという。BMJ誌2011年8月13日号(オンライン版2011年7月28日号)掲載報告より。モデル分析で、降圧、減塩など各種プログラムの10年効果を試算Barton氏らは経済モデル分析法にて、心血管疾患リスク因子を減らす各種国民啓発・介入プログラムの疾患予防効果および費用対効果を評価した。10年間にわたる心血管疾患低下のためのプログラム効果を測定する表計算式を作成し、ベネフィットが男女、全年齢、全リスク群に適用され続けた場合と仮定したモデルを作成。同モデルを、血圧と総コレステロールを少しでも減らすことを目的とした2つの一般向け啓発プログラムと、塩分とトランス脂肪酸の摂取減を定めた2つの法的介入プログラムに適用して試算した。主要評価項目は、介入効果によって回避された心血管イベント数、獲得されたQALYs(質調整生存年)、削減された医療コストとした。目標アウトカム達成のために費やされた対価についても推定された。コレステロール、血圧の平均値5%低下で8,000万~1億ポンド以上の医療費削減結果、プログラム1つの介入で、何も介入がされなかった場合と比較して、心血管イベントは年間、イングランドとウェールズ全住民(約5,000万人)の1%までに減少し、医療コストは3,000万ポンド以上削減されると試算された。また、コレステロールと収縮期血圧の平均値低下5%が達成となれば(5%は他国ではすでに達成されている)、医療コスト削減は8,000万~1億ポンド以上と試算された。塩分摂取を3g/日とする(現状では約8.5g/日)法的およびその他の対策による効果は、年間で約3万例の心血管イベント回避と、4,000万ポンド以上の医療コスト削減をもたらすと試算された。トランス脂肪酸については、摂取量を総エネルギー量の約0.5%までに減らし続ければ、約57万生存・年の獲得と、英国の国民健康保険制度であるNHSに年間2億3,000万ポンドのコスト削減効果をもたらす可能性が試算されたという。

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多発性骨髄腫の治療戦略-日欧における現状と展望

 多発性骨髄腫の治療においては、近年、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)、サリドマイド(商品名:サレド)、レナリドミド(商品名:レブラミド)といった新規薬剤が開発・発売され、わが国では、現在、再発・難治性症例に対して承認されている。一方、欧米では、これらの薬剤が、再発・難治性症例だけでなく、他のステージでも使用され、次々と臨床研究結果が報告されている。 ここでは、2011年8月8日に都内で開催された多発性骨髄腫治療に関するセミナー(主催:セルジーン株式会社)における、トリノ大学血液学科骨髄腫ユニットチーフ Antonio Palumbo氏、がん研有明病院化学療法科・血液腫瘍科部長 畠清彦氏の講演から、欧米とわが国における多発性骨髄腫治療の現状と展望についてレポートする。欧米における治療戦略とレナリドミドの成績 Palumbo氏によると、多発性骨髄腫の治療には、まず完全寛解(CR)を達成すること、さらにCR期間を延長させるために治療を継続することが重要である。また、CRのなかでも、より深い寛解である分子生物学的寛解、すなわちDNAレベルでの効果が重要である。 今回の講演で、Palumbo氏は、主にレナリドミドによる維持療法の成績について取り上げ、移植適応の若年者に対する移植後の維持療法については、フランスIFMの試験では無増悪期間(PFS)が、また米国CALGBの試験ではPFS、全生存期間(OS)が、レナリドミド投与群において有意に延長したことを紹介した。 また、移植非適応の65歳以上の高齢者におけるレナリドミド維持療法については、MPR(メルファラン、プロドニゾン、レナリドミド)による寛解導入療法後にレナリドミド(10mg/日、3週間投与)で維持療法を行うMPR-R群を、維持療法を行わないMPR群、MP群と比較した海外多施設臨床試験を紹介した。この試験では、MPR-R群ではMPR群に比べ増悪リスクが約70%減少し、また、年齢、寛解の程度、病期(ISS)にかかわらずPFSが有意に延長したことが示されている。 Palumbo氏は、欧米における多発性骨髄腫患者に対する治療アルゴリズムを、多発性骨髄腫に関する最新のレビューにまとめている(N Engl J Med. 2011;364:1046)。それによると、移植適応症例では、新規薬剤を含む併用レジメン(主に欧州では3剤、米国では2剤併用)で寛解導入後に移植を実施し、サリドマイドもしくはレナリドミドによる維持療法を実施、また、移植非適応例では、新規薬剤を含む併用レジメンを実施し、そのうちレナリドミドを含むレジメンの場合は、増悪もしくは不耐容となるまで継続するとしている。日本における現状と展望 畠氏は、わが国における課題と展望について、レナリドミドの特徴やがん研有明病院における使用状況を交えて紹介した。 レナリドミドの特徴については、経口剤のため外来治療が可能で、頻回通院の必要がなく遠方の患者さんでも通院しやすい、2011年8月から長期投与可能となり使いやすくなった、と畠氏は評価している。その他の特徴として、高リスク例に対して有効である、細胞性免疫の増強作用がある、腎障害例における減量が必要、末梢血幹細胞は早期採取が必要であることを挙げた。また主な副作用として、好中球減少、疲労、筋痙攣などが報告されている。 がん研有明病院においては、7月28日時点のレナリドミド使用経験は14例で、投与症例は、経口剤が適している、遠方から来院、肺障害がある、高齢といった症例という。投与方法は、レナリドミド25mg(21日間投与、7日間休薬)+デキサメタゾン40mg(週1回投与)であり、血栓予防としてアスピリンを、またアスピリンによる消化器障害に対してプロトンポンプ阻害薬を併用しているとのことである。また、がん研有明病院の取り組みとして、レナリドミドの承認前から医師、病棟看護師、外来看護師、病棟薬剤師によってチームを立ち上げ、院内マニュアルの作成や投与すべき症例の選択などの準備を進めていたことを紹介した。 わが国における課題として畠氏は、海外とのドラッグラグはもちろん、臨床現場への普及の遅れを指摘している。多発性骨髄腫においては、日本で長い間標準治療であったMP療法、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法から、新規薬剤による治療に移行しつつあり、現時点ではこれらの薬剤を年齢、病態、合併症に応じて選択し、日本での長期の成績により評価していく必要があると述べた。 最後に、畠氏は、今後はわが国では承認されていない初発例に対する治療や新規薬剤どうしの併用やアルキル化剤との併用、さらに維持療法など、より有効な治療法の確立が望まれると締めくくった。

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性暴力を受けた女性、精神的・身体的障害の発症リスク増大

親密なパートナーなどからによる性暴力を経験した人は、精神的障害や身体的障害の発症リスクが増大することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学精神医学校のSusan Rees氏らが、オーストラリア在住の女性4,500人弱を対象にした横断研究の結果を分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年8月3日号で発表した。回答者の27%が、性暴力を経験研究グループは、2007年時点でオーストラリア国内に居住する16~85歳の女性を対象に行われた「Australian National Mental Health and Well-being Survey」に回答した、4,451人の結果を分析した。調査の回答率は65%だった。調査では、親密なパートナーによる暴力、強姦、その他の性的暴行、ストーキングの4種の性暴力経験の有無と、不安障害、気分障害、薬物使用障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症との関係について分析を行った。その結果、いずれかの性暴力を1つでも受けたことがあると答えたのは、回答者の27.4%にあたる1,218人だった。性暴力経験女性の精神的障害発症リスクは7倍、身体的障害発症リスクは4倍なかでも、4種のうち3種以上の性暴力を経験した139人は、不安障害の発症率が77.3%(オッズ比:10.06、95%信頼区間:5.85~17.30)、気分障害が52.5%(オッズ比:3.59、同:2.31~5.60)、薬物使用障害が47.1%(オッズ比:5.61、同:3.46~9.10)、PTSDが56.2%(オッズ比:15.90、同:8.32~30.20)にみられた。また同139人の、いずれかの精神障害の発症率は89.4%(オッズ比:11.00、同:5.46~22.17)、自殺企図が34.7%(オッズ比:14.80、同:6.89~31.60)だった。性暴力を経験した人はそうでない人に比べ、精神的障害の発症リスクは7.14倍、身体的障害の発症リスクは4.00倍だった。特に重度の精神的障害の発症リスクは4.60倍に、また3種以上の精神的障害を有するリスクは7.79倍であることが認められた。その他にも、生活の質の低下(2.96倍)、障害を伴う日の増大(3.14倍)など格差が認められ、全体的障害発症リスクは2.73倍だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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糖尿病性腎症に対するbardoxolone methyl、52週時点でも腎機能改善確認

糖尿病性腎症の治療薬として新規開発中のbardoxolone methylについて、長期効果と用量反応が検証された第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験の結果、検討されたいずれの用量群でも、主要アウトカムである24週時点の腎機能の有意な改善が認められ、副次アウトカムである52週時点でも有意な改善が持続していたことが報告された。米国・Renal Associates(テキサス州、サンアントニオ)のPablo E. Pergola氏ら治験研究グループが、NEJM誌2011年7月28日号(オンライン版2011年6月24日号)で発表した。bardoxolone methylは、糖尿病性腎症の慢性炎症および酸化ストレスに着目し開発された経口抗酸化炎症調節薬。試験の結果を踏まえ研究グループは「bardoxolone methylは治療薬として有望である可能性が示された」と結論している。227例をプラセボ群と25mg、75mg、150mg各群に無作為化し52週治療bardoxolone methylの長期有効性を検討する第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験は、中等度~重症のCKD(eGFRが20~45mL/分/1.73m2体表面積)を伴う2型糖尿病患者を適格患者として行われた。米国内43施設から集められた573例がスクリーニングを受け、227例が無作為に(1)プラセボ投与群(57例)、(2)bardoxolone methyl 1日1回25mg投与群(57例)、(3)同75mg投与群(57例)、(4)同150mg投与群(56例)に割り付けられ、52週にわたり治療が行われた。4群の基線プロフィールは同等で、平均年齢は67歳、98%がACE阻害薬かARBまたは両方を服薬していた。主要アウトカムは、各治療群の24週時点のeGFRの基線からの変化値で、プラセボ群と比較された。副次アウトカムは、同52週時点の変化値とされた。24週時点で有意な改善、52週時点でも有意な改善持続試験の結果、eGFRの基線からの変化は12週でピーク値を示し、その後、試験期間終了の52週まで比較的安定的に推移していた。24週時点のeGFRの基線からの変化は、bardoxolone methyl各投与群ともプラセボ群との比較で有意な上昇が認められた。eGFR変化の平均値(±SD)は、25mg投与群8.2±1.5mL、75mg投与群11.4±1.5mL、150mg投与群10.4±1.5mLであった(すべての比較のP<0.001)。また、25mg投与群と75mg投与群との変化値の差は有意だったが(P=0.04)、75mg投与群と150mg投与群との差は有意ではなかった(P=0.54)。各投与群のプラセボ群と比較した有意なeGFR上昇は、52週時点でも持続していた[変化値はそれぞれ5.8±1.8mL(P=0.002)、10.5±1.8mL(P<0.001)、9.3±1.9mL(P<0.001)]。bardoxolone methyl各投与群で最も頻度が多かった有害事象は筋痙縮だったが、総じて軽度であり、また用量依存に認められた。その他、よくみられたのが、低マグネシウム血症、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の軽度上昇、胃腸への影響であった。(武藤まき:医療ライター)

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インドでのロタウイルス自然感染防御効果の研究からわかったこと

ロタウイルス自然感染の防御効果について、ロタウイルス感染死者数が世界で最も多いと報告されているインドでコホート研究を行ったインド・キリスト教医科大学のBeryl P. Gladstone氏ら研究グループは、「アジアやアフリカで、ロタウイルスのワクチン効果が、なぜ予想よりも低いかを説明し得るか」について知見を得られたことを、NEJM誌2011年7月28日号で発表した。「インドでは早期感染、再発頻度が高く、ウイルスが多様であり、結果として、その他地域で報告されているよりも防御効果を低くしている」という。ロタウイルスの防御効果については、メキシコの出生コホート研究で、2度の連続自然感染により、その後に感染しても中等度~重度の下痢症状を完全に防御できるという報告が寄せられていた。Gladstone氏らは、その報告を踏まえて、インド(経口ワクチン効果が一般的に期待されるより低い)の出生コホートについて調査を行った。インドの都市部スラム街の小児373例を3年間追跡研究グループが対象としたのは、インド・Velloreの都市部のスラム街で生まれた小児で、出生後3年間、週2回往診して追跡した。追跡調査期間は2002年3月~2003年8月で、当初452例が登録され、追跡が完了したのは373例だった。調査は、便検体を2週間ごとに集め、酵素免疫測定(ELISA)法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でロタウイルス抗原を同定する検査が行われた。なお、下痢症状が認められる期間は2日ごとに便検体を集め検査が行われた。また、血清検体を6ヵ月ごとに採取し、セロコンバージョンの評価(IgG抗体価4倍上昇またはIgA抗体価3倍上昇と定義)が行われた。全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%結果、インドの都市部スラム街では、概して生まれて間もなくロタウイルスに感染している実態が明らかになった。生後6ヵ月までの感染率は56%だった。再感染率は高く、調査期間中の全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%だった。中等度~重度疾患に対する防御効果は、感染回数が増すごとに高まってはいたが、感染3回後も防御率は79%にとどまっていた。最もよくみられたウイルス株の遺伝子型はG1P[8](15.9%)で、G2P[4](13.6%)、G10P[11](8.7%)、G9P[8](7.2%)、G1P[4](4.4%)、G10P[4](1.7%)、G9P[4](1.5%)、G12P[6](1.1%)、G1P[6](0.6%)と続いた。同一タイプのウイルス株への初回、再感染リスクについて評価した結果、遺伝子型に基づく明らかな防御効果は認められなかった。これら結果を踏まえGladstone氏は最後に、「インドや同等の地域では、ロタウイルスワクチン戦略を見直すべきことを示す結果であった。投与量や回数を増加したり、ワクチン接種を早期に行う(たとえば新生児のうちの接種、あるいは母親への接種など)ことも考慮していく必要があるだろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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中東からの帰還兵に多い呼吸器障害の原因とは

1990年代に配備され最近帰国したイラク、アフガニスタンからの帰還兵では、呼吸器症状の報告が一般的になっているという。米国、英国、オーストラリアで行われた疫学的研究では、他地域配備と比べて中東配備兵での呼吸器障害の発生率増大が報告され、2009年の報告ではイラク内陸部への配備との関連が示されたが、配備中に吸入性傷害を負ったことは明らかになったものの病理学的な検証はなされていない。そこで米国・Meharry医科大学のMatthew S. King氏らは、帰還後に労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例について症例記述研究を行った。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例を評価King氏らが研究対象としたのは、フォート・キャンベル(ケンタッキー)の陸軍病院から運動耐容能評価のため、2004年2月~2009年12月の間に大学病院に紹介されてきた80例の帰還兵であった(配備先:イラクのみ62例、イラクとアフガニスタン17例、アフガニスタンのみ1例)。いずれも配備前は健康であったが、帰還後は呼吸困難のため2マイルランテストの米陸軍基準を達成することができなくなってしまっていた。帰還兵に対し、病歴、曝露歴、身体検査、肺機能検査、CT検査が行われ、非侵襲性評価では症状について説明がつかなかった49例には、さらにバイオプシー検査が行われ、心肺運動負荷検査および肺機能検査データについて、これまで集積されてきた陸軍データ(対照群)との比較が行われた。説明のつかなかった49例はびまん性狭窄性細気管支炎バイオプシー検査が行われたのは49例で、全例に異常が認められ、うち38例は狭窄性細気管支炎であった。残る11例は、その他の診断で呼吸困難の説明がついた。被験者が配備期間中、イラクのモスルで2003年夏に大規模な硫黄鉱山火災があった。その曝露歴は被験者に一般的で、全例には及ばなかったものの、狭窄性細気管支炎と診断された38例では28例に曝露歴が確認された。検査所見については、38例全例が胸部X線所見は正常であったが、胸部CTでは約4分の1に、モザイク状のエアートラッピングまたは小葉中心性結節が確認された。肺機能検査および心肺運動負荷検査の結果は、概して正常範囲内であったが、対照群データよりも劣っていた。King氏は、「説明のつかなかった49例は、バイオプシー検査によりびまん性狭窄性細気管支炎であることが判明した。38例については、おそらく吸入性曝露によるものと思われる」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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座長:岩田健太郎先生「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる:CareNet+Style連携特別企画」

【CareNet+Style連携特別企画】6月12日(日)神戸にて、震災の復興支援活動として災害発生時のリスク・コミュニケーションを考える機会を得ることを目的に、チャリティー・シンポジウムが開催されました。 これは、災害時の記者会見、メディア報道、言葉、コミュニケーションはどうあるべきなのか。当代きっての論客が登場し、東日本大震災時のコミュニケーションのあり方を総括し、あるべき姿を模索したものです。なお、収益は全額寄付し被災地の支援に役立てられます。ケアネットでは、チャリティー・シンポジウムの趣旨に賛同し、映像の撮影、配信、告知をサポートします。※「DocFun」はリニューアルし「CareNet+Style」に生まれ変わりました。1.シンポジウムPR用映像本編はCareNet+Style「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる」をご覧ください視聴者の皆様から義援金を募集しております。振込み先情報は上記ページに記載されております。ご協力賜れますようお願い申し上げます。 2.出演者プロフェール(敬称略、五十音順)※1岩田健太郎 神戸大学都市安全研究センター、大学院医学研究科教授島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、セントルークス・ルーズベルト病院、亀田総合病院などを経て現職。専門は感染症学。著書に『バイオテロと医師たち』『悪魔の味方 米国医療の現場から』『予防接種は「効く」のか?『「患者様」が医療を壊す』『感染症は実在しない』など。上杉隆 ジャーナリスト 都留文科大学卒業。テレビ局・衆議院公設秘書・「ニューヨークタイムズ」東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。自由報道協会(仮) 暫定代表。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『ジャーナリズム崩壊』『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』など多数。内田樹 武道家、思想家。神戸女学院大学名誉教授東京大学卒業。東京都立大学人文科学研究科博士課程中退。同大学助手を経て神戸女学院大学へ異動。2010年3月に同学教授職を退職。神戸女学院合気道会主宰(合気道6段)。著書に『他者と死者 ――ラカンによるレヴィナス』『現代思想のパフォーマンス』『先生はえらい』『私家版・ユダヤ文化論』(第6回小林秀雄賞)『下流志向』『日本辺境論』(2010年新書大賞)『街場のメディア論』ほか多数。2011年 伊丹十三賞受賞。蔵本一也 神戸大学大学院経営学研究科准教授関西学院大学卒業後、ミズノ株式会社などを経て現職。33年間のサラリーマン経験を活かし、企業活動における社会的責任のあり方に関心を寄せる。コンプライアンス、消費者対応、消費者問題にも詳しい。消費者問題に関する論文多数。2009年 内閣府消費者担当大臣賞受賞。鷲田清一 哲学者 大阪大学総長京都大学大学院文学研究科博士課程修了。関西大学教授、大阪大学大学院文学研究科教授、同理事・副学長を経て、2007年8月大阪大学総長に就任。著書に『モードの迷宮』(サントリー学芸賞受賞)、『じぶん-この不思議な存在』『「聴く」ことの力』 (桑原武夫学芸賞受賞)、『「待つ」ということ』、『てつがくを着て、まちを歩こう―ファッション考現学』、『死なないでいる理由』、『新編 普通をだれも教えてくれない』、『臨床とことば』(河合隼雄氏との共著)、『わかりやすいはわかりにくい?-臨床哲学講座』 など多数。2004年紫綬褒章。※1岩田健太郎氏ブログ『楽園はこちら側から http://georgebest1969.typepad.jp/blog/ 』「災害時のリスクとコミュニケーションを考えるチャリティー・シンポジウム開催について(ご案内)」より転載。写真はシンポジウム時のもの。本編はCareNet+Style「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる」をご覧ください質問と回答を公開中!

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岩田健太郎先生の回答

PTSD日本人はPTSDの頻度は低いと聞きますがその理由は何が考えられますか?そういう話は初耳でした。僕は専門家ではないのであまりうまいコメントはできませんが、PTSDってシチュエーションによって発症頻度にものすごい差があるのですね(1-80%以上まで)。日本ではPTSDという概念の認知そのものが遅いみたいですし、その頻度が本当に低いかは僕にはよく分かりません。阪神淡路大震災後16ヶ月のフォローでは被害の程度にもよりますがだいたい3%くらいの有病率だったそうです(窪田 予防時報2005)。新しいメディアの形内田先生のお話の中で、巨大メディアが崩壊したときに情報難民が生まれる、この層に向けた対処が必要とのお話があったかと思います。岩田先生が考える情報難民を救う新しいメディアの形とは?もしアイデアがありましたらご教示願います。多分、ある特定の新しいメディアというより、いろいろなメディアのミックスをあちこちつまみ食いする、、、というのが新しい形だと思います。新聞とテレビだけ、という定型から脱却するところからスタートではないかと。健康被害が懸念されたタイミングについて医師の目からみて、今回どのあたりの段階から放射性物質による健康被害が懸念されたのでしょうか?医師の中には震災直後から疎開された方がいると聞きました。医師のネットワークの中で何か特別な情報等が流れていたのでしょうか?「懸念」は震災直後からありました。その懸念がどれくらいのものかを見積もるのは、とても困難だと思いましたが(今でも困難を感じています)。医師のネットワークだけで「特別な」情報が流れていたとは思いません。ただ、ネット上にも公開されているチェルノブイリ関係の論文とかの多くは英語ですし、そういう論文へのアクセスや読み方には医師は慣れている傾向があります。メディア今回の論客は皆さん素晴らしい方だと思います。皆さんとは、普段からメディアのあり方について議論するようなお知り合いだったのでしょうか?上杉さん、藏本さん、鷲田さんとは初対面。内田さんとはよくメディアの話をする機会がありました。「街場のメディア論」も愛読しましたし。内田さんと鷲田さんはお知り合いですが、それ以外はみな初対面だったと思います。メディア崩壊について利益相反のお話、大変興味深く拝聴しました。巨大メディアがスポンサーに逆らえない。とはいえ、昔から収益の構造は同じはず。ここまで廃れた原因はなんでしょうか?昔から同じだと思います。露呈しただけで。潔癖症の方へのケア被災された方の中には潔癖症の方もいらっしゃったかと思います。避難所ではどのような行動を取っていたのでしょうか?また、そんな方へのケア方法などございましたら教えてください。避難所で潔癖症の方がどうされていたかは寡聞にして存じません。清潔の維持やプライバシーについては皆さん、大分お悩みだったと思います。避難所での簡易住宅を提供している建築家もいたとききました(段ボールだけだとさすがに、と僕も思います)。アルコールの手指消毒薬はわりとふんだんに提供されていたようですが、お風呂とかはたいへんでしょうね。仮設住宅入居者へのケア避難所と仮設住宅では、ケアの方法も変わってくるかと思います。仮設住宅にいる方々のQOLを考えた場合、必要なケアは何ですか?また、仮設住宅地で懸念される感染症についてもご教示いただければ幸いです。僕の意見では、やはりコミュニケーションだと思います。阪神淡路大震災でも仮設住宅で孤独になってしまった人は多かったとききます。仮設住宅に特化して増える感染症は特にないと思います。高齢者とのコミュニケーション仮設住宅地をボランティアで回っている医学生です。高齢者とうまくコミュニケーションがとれる秘訣があればご教示下さい。一般のコミュニケーションと同じです。相手の話を聞くこと。岩田先生の情報ソースを教えて下さい。岩田先生は、基本テレビは見ない(サッカーしか見ない)、ニュースも最低限だけとおっしゃっていましたが、そんな中で、岩田先生の一番重要な情報ソースは何でしょうか?一番、というのを作らないようにしています。いろいろな情報ソースからトライアンギュレーションをかけています。上杉さんもそんなことおっしゃってましたよね。総括みなさんするどい質問ばかりですね。緊張しました。座長:岩田健太郎先生「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる:CareNet+Style連携特別企画」

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暴力事件防止のため匿名情報を医療機関、警察、自治体で共有・活用することは有効

世界保健機構(WHO)では、個人間の暴力による死者は世界中で60万人、重傷者は1,720万人に上り、15~29歳の死因の第5位、30~44歳では第6位という実情を踏まえ、「個人間の暴力は世界的な保健問題」と位置付けている。個人間の暴力事件には地域レベルでの防止戦略が有効な可能性はあるが、そうした取り組みについてこれまで科学的に検証はされていなかった。そこで、米国疾病管理予防センター暴力事件部門のCurtis Florence氏らは、イギリス・ウェールズの首都カーディフで2001年に導入された地域暴力事件防止プログラムの評価を行った。BMJ誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月16日号)掲載より。プログラムを開発・導入したカーディフと、その他14都市との変化を比較各種調査により世界的に、医師が治療にあたった相当数の暴力事件が警察に知られていないことが明らかになっているなかで、また警察情報は被害者の申告に頼っているのが実態のなかで、カーディフの防止プログラムは、警察情報に医療機関のERからの情報を加味することで防止効果を高めることを狙いとした点が斬新なものであったという。開発には3年がかけられていた。なおイギリスでは1998年に、警察、自治体、NHS機関が協力して地域暴力防止戦略を開発し取り組むことが法的義務として課せられているという。Florence氏らは、カーディフで策定された地域協力体制に基づくプログラムの有効性を、実験的研究・時系列解析にて評価した。比較対象として、イギリスおよびウェールズから内務省データに基づきカーディフと最もよく似た14都市を選び、暴力事件に関連する入院記録と、暴力事件および軽度な暴力事件の警察記録データを主要評価項目として検証した。カーディフでは、33ヵ月を開発期間として、市内ER受診患者または重傷例の報告から、暴力事件防止に重要とみなされ匿名化された情報(事件発生場所、時間、月日、武器の詳細)を集積し、その後51ヵ月間にわたり警察と自治体で共有し、事件防止のリソースとして活用された。カーディフ vs. その他都市発生率比、入院0.58、傷害事件0.68、軽度暴力事件1.38結果、情報共有と活用は、暴力事件による入院件数を相当数、有意に減少したことが認められた。カーディフでは、人口10万あたり月7件から5件へと減少していた。一方でその他の都市では、5件から8件に増えていた(補正後発生率比:0.58、95%信頼区間:0.49~0.69)。警察の暴力事件記録は、カーディフでは人口10万あたり月54件から82件への変化であったが、その他の都市では54件から114件に増えていた(同:0.68、0.61~0.75)。軽度な暴力事件は、カーディフの警察では記録例が15件から20件に増えていたが、その他の都市では42件から33件に減っていた(同:1.38、1.13~1.70)。Florence氏は、「カーディフでの医療機関、警察、自治体間の情報共有の取り組みは、その他の取り組みを行っていない都市と比べて、暴力事件負傷者の有意な減少に結びつき、軽度な暴力事件の検挙数を増やした」とまとめている。

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アロマターゼ阻害薬エキセメスタン、閉経後女性の浸潤性乳がん発症を有意に減少

 閉経後女性の乳がん予防に関して、アロマターゼ阻害薬のエキセメスタン(商品名:アロマシン)が、浸潤性乳がん発症を有意に減少することが示された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのPaul E. Goss氏ら「NCIC CTG MAP.3」試験グループが行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果による。これまで乳がん一次予防の化学療法としては、選択的エストロゲン受容体調節薬であるタモキシフェン(抗がん薬、商品名:ノルバデックスなど)やラロキシフェン(骨粗鬆症薬、同:エビスタ)が注目されてきたが、毒性効果がもたらすリスクに対する懸念からこれらの使用は広がっていないという。一方、エキセメスタンは、閉経後女性のエストロゲン抑制に優れ、実験モデルにおいて乳がん発症を減少することが認められ、また早期乳がん対象の試験において、対側原発性乳がんを、タモキシフェンよりも減少し副作用も少ないことが報告されていた。NEJM誌2011年6月23日号(オンライン版2011年6月4日号)掲載より。4ヵ国から4,560例を登録し、無作為化プラセボ対照二重盲検試験 NCIC CTG MAP.3試験は、カナダ、米国、スペイン、フランスで被験者を募り、35歳以上で適格条件[60歳以上、Gail 5年リスクスコア>1.66%(5年以内の浸潤性乳がん発症が100である可能性)、異型乳管過形成、異型小葉過形成、非浸潤性小葉がん、乳房切除を伴う非浸潤性乳管がん]を1つ以上有する閉経後女性を対象とし行われた。 本試験は、浸潤性乳がんの65%の相対的減少を検知するようデザインされた。主要アウトカムは浸潤性乳がん発生率で、毒性効果、健康関連QOL、閉経期特異的QOLについても測定が行われた。2004年11月~2010年3月の間に、4,560例が登録。被験者の年齢中央値は62.5歳、Gailリスクスコアは2.3%で、無作為にエキセメスタン群(2,285例)とプラセボ群(2,275例)に割り付けられ追跡された。追跡期間中央値35ヵ月時点で、エキセメスタン群の65%の相対的減少を検知 結果、浸潤性乳がんの65%の相対的減少は、追跡期間中央値35ヵ月時点で検知された。同時点の浸潤性乳がん発生は、エキセメスタン群11例(0.19%)、プラセボ群32例(0.55%)で、ハザード比0.35(95%信頼区間:0.18~0.70、P=0.002)だった。 副次エンドポイントの侵襲性+非侵襲性(非浸潤性乳管がん)乳がんの年間発生率は、エキセメスタン群0.35%、プラセボ群0.77%(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.27~0.79、P=0.004)であった。 有害事象は、エキセメスタン群88%、プラセボ群85%で発生した(P=0.003)。毒性効果の評価指標である骨折、心血管イベント、その他のがん、治療関連の死亡に関して両群間で有意差は認められなかった。 QOLの差はわずかだった。健康関連QOLはSF-36質問票にて悪化、不変、改善の区分でスコア化されたが、両群間で有意な差は認められなかった。閉経期特異的QOLについてはエキセメスタン群の悪化(全体的に7%多く)が認められた。Goss氏は、「乳がんリスクが中程度に上昇した閉経後女性に対して、エキセメスタンは侵襲性乳がんを有意に減少した。また追跡期間中央値3年の間、エキセメスタンは重篤な毒性効果との関連は認められず、健康関連QOLについての変化はわずかだった」と結論している。

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長期的ダイエットを成功または失敗させる食事、生活習慣とは?

体重安定には摂取カロリーと消費カロリーのバランスを要することから、長期的な体重増加を予防するには、「食事量を減らし、運動量を増やす」というアドバイスが単純明快な戦略にみえる。これに対して、米国・ブリガム&ウィメンズ病院循環器部門のDariush Mozaffarian氏らは、「特定の食事や生活習慣が成功の可否に影響する可能性がある」として、食事や生活習慣の詳細と体重増加との関係を調査した。NEJM誌2011年6月23日号掲載より。異なる3つのコホートで前向き研究研究グループは、12万877例の米国人男女(ベースラインで慢性疾患も肥満もない)が参加した3つの独立したコホート集団を対象に前向き研究を実施した。追跡調査期間はそれぞれ、1986~2006年、1991~2003年、1986~2006年だった。生活習慣の各因子と体重変化との関係は、年齢、各調査期間のベースラインBMI、すべての生活習慣を同時に多変量補正して、4年間隔で評価を行った。コホート特異的、性特異的な結果は類似しており、分散逆数重み付けメタ解析を用いて統合した。「カウチポテト」はやはり体重増加をもたらす?4年の間に、参加者の体重は平均3.35 lb*(5~95パーセンタイル:-4.1~12.4)増加した。食品ごとの1日の摂取量増加と4年間の体重変化をみてみると、ポテトチップス(1.69 lb)、ジャガイモ(1.28 lb)、加糖飲料(1.00 lb)、未加工の赤肉(0.95 lb)、加工肉(0.93 lb)については正の相関が最も強く認められ、野菜(-0.22 lb)、全粒穀物(-0.37 lb)、果物(-0.49 lb)、ナッツ(-0.57 lb)、ヨーグルト(-0.82 lb)では逆相関が認められた(それぞれの比較のP<0.005)。食事変化の集積は、体重変化の差と大きく関係していた(食事変化の五分位範囲にわたる体重変化は3.93 lb)。その他、身体活動(五分位範囲で-1.76 lb)、アルコール摂取(1日1杯につき0.41 lb)、喫煙(新規禁煙者5.17 lb、過去の喫煙者0.14 lb)、睡眠(6時間未満と8時間超で体重増加)、テレビ視聴(1日1時間につき0.31lb)などの生活習慣の各因子にも、体重変化と独立した関連が認められた(P

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英国がん生存率の低さは、レジストリの問題ではない

がんレジストリ・データから推定するがん生存率が、英国のデータは他のヨーロッパ諸国よりも低いデータが示されることに関して、London School of Hygiene and Tropical medicineのLaura M Woods氏らは、最近のBMJエディトリアルで指摘された、登録プロセスにおける2つの特異的なエラーがミスリードの原因なのかどうかを検証した。英国の低過ぎるがん生存率をめぐっては、10年以上の間、それが治療によりもたらされる違いなのかどうかが議論されているという。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月9日号)掲載より。診断日ではなく再発日の記録、5年以上生存者未登録が問題なのかをシミュレーションWoods氏らはシミュレーション研究にて、仮定されている2つのエラーのエビデンスについて検証した。すなわち、(1)死亡診断書からの登録者について診断日の代わりに再発日を記録していること、(2)レジストリに登録されていない5年以上の長期生存者がいること、についてシミュレーションし、それらの相対生存率への影響の可能性を推定し、英国の低い生存率はいずれか一方のエラーまたは両方によるものかを確認した。対象としたのは、イングランドとウェールズの全国がんレジストリ。具体的には、1995~2007年の間にイングランドとウェールズで登録され、2007年12月31日まで追跡された、乳がん(女性のみ)、肺がん、大腸がんと診断された患者だった。主要評価項目は、各シミュレーションとの関連でみた、1年相対生存率、5年相対生存率の平均絶対パーセントの変化とした。たとえエラー要因のレベルが極端に大きくても説明がつかない結果、英国とスウェーデンとの間にみられる乳がん1年生存率の格差は、(1)の仮定によっては説明することができた。診断日が死亡に至った女性の70%以上で、平均1年以上の誤差を有し記録されていた。一方で、(2)の仮定については、長期生存者が40%であったとしても、1年生存率の格差を説明する半分にも満たなかった。肺がんと大腸がんについても、同様の結果だった。Woods氏は、「がん登録データについて仮定されたエラー要因のレベルが極端に大きくても、英国とその他のヨーロッパ各国とにみられる生存率の国際間格差は説明することが不可能だった」と結論。最後に、英国のがん患者の生存率は実際のところ低いと言え、診断の遅れ、ヘルスケアへの投資の低さ、最適とは言えないケアに関連していそうだと述べ、「問題とすべきは、根底にある原因は何か、何をすれば英国のがん患者のアウトカムが改善されるかである」とまとめている。

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脳卒中の2次予防におけるterutroban、アスピリンとの非劣性確認できず

虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴のある患者に対する抗血小板薬治療として、terutrobanはアスピリンと同等の有効性を示しながらも、非劣性基準は満たさないことが、フランス・パリ-ディドロ大学のMarie-Germaine Bousser氏らが行ったPERFORM試験で示され、Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年5月25日号)で報告された。同氏は、「現在でもアスピリンがgold standard」としている。脳卒中は世界的に身体障害、認知症、死亡の主要原因であり、虚血性脳卒中やTIAの既往歴のある患者は脳卒中の再発や他の心血管イベントのリスクが高い。terutrobanは、血小板や血管壁に存在するトロンボキサン-プロスタグランジン受容体の選択的な拮抗薬で経口投与が可能であり、動物やヒトでアスピリンと同等の抗血小板活性が確認されているという。世界46ヵ国802施設が参加、勧告により早期中止PERFORM(Prevention of cerebrovascular and cardiovascular Events of ischaemic origin with teRutroban in patients with a history oF ischaemic strOke or tRansient ischaeMic attack)試験は、非心原性脳虚血イベントの既往歴のある患者を対象に、terutrobanとアスピリンの脳および心血管の虚血性イベントの予防効果を比較する無作為化並行群間比較試験。2006年2月22日~2008年4月7日までに、46ヵ国802施設から過去3ヵ月以内に虚血性脳卒中を発症した患者、あるいは8日以内にTIAをきたした患者が登録され、terutroban(30mg/日)あるいはアスピリン(100mg/日)を投与する群に無作為に割り付けられた。患者と主治医には治療割り付け情報は知らされなかった。有効性に関する主要評価項目は、致死的/非致死的な虚血性脳卒中、致死的/非致死的な心筋梗塞、他の血管死(出血死を除く)の複合エンドポイントとした。非劣性の解析を行ったのち、優越性について解析することとし、intention-to-treat解析を実施した。なお、本試験はデータ監視委員会の勧告に基づき早期中止となっている。主要評価項目は同等だが、非劣性基準満たさず、安全性の改善も得られず1万9,120例が登録され、terutroban群に9,562例が、アスピリン群には9,558例が割り付けられた。それぞれ9,556例(男性63%、平均年齢67.2歳)、9,544例(同:62%、67.3歳)が解析可能であった。平均フォローアップ期間は28.3ヵ月(SD 7.7)であった。主要評価項目の発現率は、terutroban群が11%(1,091/9,556例)、アスピリン群も11%(1,062/9,544例)で、非劣性の判定基準(ハザード比>1.05)は満たされなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間:0.94~1.12)。2次評価項目(14項目)、3次評価項目(6項目)にも有意な差は認めなかった。小出血の頻度がterutroban群で有意に上昇した[12%(1,147/9,556例) vs. 11%(1,045/9,544例)、ハザード比:1.11、95%信頼区間:1.02~1.21]が、その他の安全性に関する評価項目に有意な差はみられなかった。著者は、「事前に規定された判定基準により、terutrobanのアスピリンに対する非劣性は確証されなかった。主要評価項目の発現率は両群で同等であったが、terutrobanは安全性についても改善効果をもたらさなかった」と結論し、「世界的にみて、有効性、耐用性、医療コストの観点から、現在もアスピリンは脳卒中の2次予防における抗血小板薬治療のgold standardである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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