サイト内検索|page:246

検索結果 合計:5042件 表示位置:4901 - 4920

4901.

CRPそのものは、冠動脈心疾患の原因か?:約19万5,000人の遺伝学的メタ解析

血中C反応性蛋白(CRP)濃度自体は冠動脈心疾患の原因因子ではないことが、C Reactive Protein Coronary Heart Disease Genetics Collaboration(CCGC)による検討で示された。CRPの血中濃度は将来的な冠動脈心疾患のリスクと強力かつ持続的に相関するが、この関連性が両者の因果関係を反映するかは不明だ。一方、CRP関連遺伝子の変異はCRP濃度の代替指標として因果関係の判定の一助に使用可能とされる。これまでに実施された試験は、冠動脈心疾患におけるCRPの因果的な役割の可能性を評価するにはパワー不足で精密性にも欠けるという。BMJ誌2011年2月19日号(オンライン版2011年2月15日号)掲載の報告。CRP遺伝子のSNP、血中CRP濃度、他のリスク因子の関連を評価CCGCの研究グループは、CRP関連遺伝子の変異は、冠動脈心疾患におけるCRPの因果的な役割の評価において、血中濃度の非交絡的な代替指標として使用可能か否かについて検討した。15ヵ国で実施された47の疫学試験の個々の患者データを用いて、遺伝学的なメタ解析を行った。冠動脈心疾患患者4万6,557人を含む19万4,418人において、CRP遺伝子の4つの一塩基多型(SNP)(rs3093077、rs1205、rs1130864、rs1800947)、血中CRP濃度、その他のリスク因子の程度の関連について解析を行った。主要評価項目は、従来のリスク因子および個人内のリスク因子レベルの変動で調整した上での、血中CRP濃度自体のequivalent differenceのリスク比に対する遺伝学的なCRP上昇に関連した冠動脈心疾患のリスク比とした。遺伝学的リスク比と、CRP濃度自体のリスク比に関連なし個々のCRP遺伝子変異は、血中CRP濃度と最大で30%までの関連が認められた[p<10(−34)]が、他のリスク因子との関連はみられなかった。CRP上昇と関連する対立遺伝子を一つ加えた場合の冠動脈心疾患のリスク比は、rs3093077が0.93(95%信頼区間:0.87~1.00)、rs1205が1.00(同:0.98~1.02)、rs1130864が0.98(同:0.96~1.00)、rs1800947は0.99(同:0.94~1.03)であり、有意な関連は認めなかった。複合解析では、血中CRP濃度の自然対数リスク比が遺伝学的に1SD上昇するごとの冠動脈心疾患のリスク比は1.00(95%信頼区間:0.90~1.13)であった。プロスペクティブ試験においては、血中CRP濃度の自然対数リスク比の1SD上昇ごとの冠動脈心疾患のリスク比は1.33(95%信頼区間:1.23~1.43)であった(差の検定:p=0.001)が、これは遺伝学的な知見とは一致しなかった。著者は、「遺伝学的データにより、血中CRP濃度そのものは冠動脈心疾患の原因となる因子ではないことが示された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

4903.

診療の後の1杯がもたらす至福の一時!Dr.岡田のワインクリニック

気軽に美味しくワインを楽しむために、聖路加GENERALでおなじみの岡田正人先生(聖路加国際病院アレルギー膠原病科)が登場。実は、パリで勤務されていた時にワインの魅力にはまり、本格的なワインスクールに通われたほどのワイン通です。岡田先生曰く「銘柄選びと並んで重要なのは、美味しい飲み方を知っていること。そうするともっとワインは楽しくなります」ということで是非、そのコツを伝授していただきたいというのが番組の趣旨です。番組では、ワインの選び方からテイスティング、ワインに合う食材の選択からワインと健康について4回のシリーズで解説します。診療で疲れた体のリフレッシュに、1杯のワイン!どうぞリラックスしてご覧ください。第1回 ワインの楽しみ方・基本のキフランスワインの宝庫・ボルドー第1回は、ワインのベーシックな知識と食材との相性についてお話を伺います。なぜ肉料理には赤ワインで、魚料理には白ワインなのか。なぜワイングラスはあの形なのか。知っておくとよりワインが楽しめるお話を満載してお届けします。<ワインと健康>vol.1ワインに関する論文の数第2回 飲み方ひとつで美味しさが大違い!シャンパーニュと白ワインブルゴーニュは女性的でエレガント?第2回は、日本人が大好きなシャンパーニュと白ワインについてお話を伺います。お祝いの席やアニバーサリーでは欠かせない存在となったシャンパーニュ。その種類と美味しい飲み方、そして、白ワインではワインの種類の説明をはじめ、グラスによって味が変わる不思議な現象について教えていただきました。ソムリエは宮嶋秀之氏(ENOTECA株式会社)。<ワインと健康>vol.2フレンチパラドックスとワインの効能第3回 赤ワイン(前篇) ブルゴーニュとイタリア飲み方ひとつで美味しさが大違い!第3回はフランスのブルゴーニュとイタリアの赤ワインです。「赤ワイン=渋い」というイメージがあるかもしれませんが、空気と触れさせることによって味がまろやかになるデキャンタのテクニックについては必見です。また、ワインと健康のコーナーでは、様々な医学論文に掲載されたワインに含まれるポリフェノールやレスベラトロールに関する研究をご紹介します。ソムリエは宮嶋秀之氏(ENOTECA株式会社)。<ワインと健康>vol.3話題の成分レスベラトロールの効果第4回 赤ワイン(後篇) 掘り出し物がたくさん!個性豊かなボルドーワインさまざまな食事に合うワインを選択最終回はフランス ボルドーの赤ワインです。長い間5大シャトーが第1級のワインを産出してきたボルドーのジロンド川をはさんで味の違うワインができるお話や肉料理にベストマッチの銘柄選びまで、美味しくワインが飲めるポイントを岡田正人先生が説明いたします。また、好評のワインと健康のコーナーでは、ワインとアンチエイジング、アルツハイマー予防、ワインと長寿の関係など医学論文を基にご紹介します。ソムリエは宮嶋秀之氏(ENOTECA株式会社)。<ワインと健康>vol.4ワインのアンチエイジング作用出演者プロフィールエノテカ株式会社「For All Wine Lovers」を経営理念として掲げ、ワインを愛するすべての人を大切なお客様と考え、そのお客様のために出来る限りのサービスを提供することを企業理念といたします。

4904.

小児入院の約3%が退院後1年以内に4回以上再入院、小児入院医療費の約23%に:米国

米国小児病院の入院患児の約3%が、退院後1年以内に4回以上の再入院を繰り返し、それにかかる医療費は小児入院医療費全体の約23%、入院件数にして約19%に上ることが明らかにされた。また再入院を繰り返す小児の大半は、同一器官系の問題によるものだったという。米国・ハーバード・メディカルスクールのボストン小児病院総合小児科のJay G. Berry氏らが、全米の小児病院に入院した32万児弱について行った、後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月16日号で発表した。全米37の小児病院への入院患児を約5年間追跡Berry氏らは、2003年に全米37ヵ所の小児病院に入院した31万7,643児(入院件数:57万9,504件)について、2008年まで追跡した。主要評価項目は、追跡5年の間の、各365日以内での最大再入院回数。結果、退院後365日以内に1回以上の再入院をしたのは、全体の21.8%にあたる6万9,294児だった。退院後365日以内に4回以上の再入院を繰り返したのは、全体の2.9%にあたる9,237児で、退院から次の入院までの期間の中央値は、37日(四分位範囲:21~63)だった。これらの患児の入院件数は10万9,155件と、全体入院件数の18.8%を占めた。またこれらの患児の入院医療費については、追跡期間中の被験児全体にかかった入院医療費の23.2%(34億ドル)に上った。再入院件数増加につれ、複雑慢性症状の罹患率、技術的サポートは増加1年以内の再入院件数増加に伴い、神経節の障害など複雑な慢性症状の罹患率は増加する傾向がみられた。再入院回数0の22.3%(24万8,349児中5万5,382児)から再入院回数4回以上では89.0%(9,237児中8,225児)へと増加が認められた(p<0.001)。その他、消化や神経などに関する技術的サポートを要する患児の割合は、同5.3%から52.6%へ(p<0.001)、公的保険加入者の割合は、同40.9%から56.3%へ(p<0.001)へ、また非ヒスパニック・黒人患者児は、同21.8%から34.4%へ(p<0.001)増加する傾向が認められた。一方で、1年以内の再入院件数増加に伴い、喘息や蜂巣炎といった外来治療が可能な疾患による再入院率は、23.1%から14.0%へと減少する傾向がみられた(p<0.001)。1年以内に4回以上再入院した患児のうち、28.5%にあたる2,633児は、すべての入院が同じ器官系の問題によるものだった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4905.

院外心肺蘇生におけるリアルタイム音声画像フィードバックシステムの有効性

院外心配蘇生(CPR)中のリアルタイム音声画像フィードバックシステムは、その手技をガイドラインにより即したものへと変化させることは認められたが、自己心拍再開やその他臨床転帰の改善には結びつかなかったという。米国・ピッツバーグ大学救急医学部のDavid Hostler氏らが、前向き集団無作為化試験を行った結果から報告した。BMJ誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)より。CPRの手技は改善されたが試験は、院外CPR中のリアルタイム音声画像フィードバックシステムを実行することによって、病院到着前に自己心拍再開する患者の比率が高まるかが検討された。Hostler氏らは、米国とカナダの蘇生転帰協会(Resuscitation Outcomes Consortium)に加入する3地域の救急医療サービスを対象に、モニター付き除細動器に取り付けられたリアルタイム音声画像フィードバックシステムを使ったCPRによる介入を行った。被験者は、救急隊員によって院外CPRが試みられた心停止患者1,586例で、フィードバックありが815例、なしは771例だった。ベースラインにおける患者および救急医療サービスの特徴に群間差はなかった。主要評価項目は、CPR後の病院到着前の自己心拍再開率とした。試験の結果、フィードバック中に救急隊員の14%がフィードバック音を消していることが示された。また、フィードバックなし群と比較して、フィードバックあり群の方が、心臓マッサージ継続時間が増加(64%対66%、群間補正後差:1.9、95%信頼区間:0.4~3.4)、圧迫の深さが増加(38mm対40mm、補正後差:1.6、95%信頼区間:0.5~2.7)、圧迫後の不完全リリースの減少(15%対10%、補正後差:-3.4、95%信頼区間:-5.2~-1.5)との関連が認められた。自己心拍再開率、生存退院率とも改善に結びつかずしかし、到着前自己心拍再開率は、フィードバックの有無における有意な差は認められなかった(45%対44%、補正後差:0.1%、95%信頼区間:-4.4%~4.6%)。同様に、病院到着時に脈拍あり(32%対32%、補正後差:-0.8、95%信頼区間:-4.9~3.4)、生存退院率(12%対11%、補正後差:-1.5、95%信頼区間:-3.9~0.9)退院時覚醒率(10%対10%、補正後差:-0.2、95%信頼区間:-2.5~2.1)においても有意差は認められなかった。

4906.

CABG直後のCK-MBやトロポニン上昇は中・長期死亡率を増大:大規模メタ解析より

冠動脈バイパス術(CABG)後24時間以内のクレアチンキナーゼMB(CK-MB)分画やトロポニン値の上昇は、中・長期死亡率増大の独立予測因子であることが明らかになった。CK-MB分画は最も強力な独立予測因子で、術後30日から1年後の死亡率は、正常値上限を超え5ポイント増加するごとに、死亡リスクは1.17倍程度増大するという。米国マウントサイナイ大学のMichael J. Domanski氏らが、1万9,000人弱対象の大規模メタ解析の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。30日・1年死亡率、CK-MB分画増加に伴い増大研究グループは、CABGについて行われた無作為化試験やレジストリ試験で、術後24時間以内に心臓マーカーの測定を行った7試験、追跡期間3ヵ月から5年にわたる、被験者合計1万8,908人の分析を行った。結果、死亡率はCK-MB分画増加に伴い単調に増大する傾向が認められた。具体的には、30日死亡率が、CK-MB分画0~1未満の群では、0.63%、1~2未満では0.86%、2~5未満0.95%、5~10未満では2.09%、10~20未満では2.78%、20~40未満・40以上では7.06%だった。CK-MB分画は、30日死亡率に関する最も強力な独立予測因子であり、試験開始時点でのその他のリスク因子について補正後も有意なままだった(x2=143、p<0.001)。正常値上限を超え5ポイント増加ごとのハザード比は1.12(95%信頼区間:1.10~1.14)であった。この傾向は、術後30日死亡率について最も強くみられたが、その後も術後1年まで継続した(x2=24、p

4907.

心房細動患者のリスク層別化にはCHA2DS2-VAScスコアの方が優れる

心房細動患者のリスク層別化に、CHA2DS2-VAScスコアがCHADS2スコアよりも優れることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院循環器部門のJonas Bjerring Olesen氏らが、デンマーク国内登録心房細動患者データをベースにコホート研究を行った結果による。CHADS2スコアは脳卒中リスクの層別化に最もよく用いられてきたが、その限界も指摘され、2006年以降のACC・AHA・ESC各ガイドラインでは、その他リスク因子を加味することが示され、その後エビデンスが蓄積しCHA2DS2-VAScスコアとして示されるようになっていたという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月31日号)掲載の報告より。7万3,538例を対象に、CHADS2とCHA2DS2-VAScの血栓塞栓症の予測能を評価研究グループは、CHADS2スコアのリスク因子(うっ血性心不全、高血圧、≧75歳、糖尿病、脳卒中既往)と、CHA2DS2-VAScスコアのリスク因子(CHADS2因子に加えて、血管系疾患、65~74歳、性別、また75歳以上で脳卒中既往の場合はリスクの重みづけを倍加する)を評価し、いずれが血栓塞栓症の予測能に優れるシェーマかを検証することを目的とした。対象とした被験者は、1997~2006年にデンマーク国内データベースに登録された、ビタミンK拮抗薬を服用していなかった心房細動患者で、非弁膜症性心房細動患者12万1,280例のうち、適格であった7万3,538例(60.6%)を対象に検証を行った。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓症であった。10年追跡時点のC統計量、CHADS2スコア0.812、CHA2DS2-VAScスコア0.888低リスク群(スコア0)における1年追跡時点での血栓塞栓症発生率は100人・年当たり、CHADS2では1.67(95%信頼区間:1.47~1.89)であったのに対し、CHA2DS2-VAScでは0.78(同:0.58~1.04)であった。中等度リスク群(スコア1)においては、同CHADS2スコアでは4.75(95%信頼区間:4.45~5.07)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアでは2.01(同:1.70~2.36)だった。これら発生率について示されたパターンは5年、10年追跡時点でも同様の結果が示された。また高リスク群はいずれのスコアも同じように、低・中等度リスク群よりも著しく高率な血栓塞栓症の発生を示した。血栓塞栓症の発生率は、スコアを構成しているリスク因子に依り、また両スコアとも血栓塞栓症イベントの既往に関連するリスクは過小に評価することが認められたという。低・中・高の各リスク群に層別化された患者の10年追跡時点でのC統計量は、CHADS2スコアが0.812(95%信頼区間:0.796~0.827)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアは0.888(同:0.875~0.900)であった。

4908.

米国の営利ホスピス、低ケアニーズの患者の割合が高く、利用期間はより長期

米国のホスピス利用者について、営利ホスピスと非営利ホスピスとを比較したところ、営利ホスピスでは、ケアニーズのスキルが低い患者の割合が高く、また利用期間がより長期であることが明らかになった。米国ハーバード大学医学部付属ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合医療・プライマリ・ケア部門のMelissa W. Wachterman氏らが、約4,700人のホスピス利用者について調べ明らかにした。調査は、米国の公的高齢者向け医療保険メディケアが、ホスピスに対して定額日払い制の償還をしており、その“特別手当”が集中的ケアの必要がより少ない患者を選んだり、より長期の利用を生み出している可能性を調べるため、また営利、非営利ホスピスにより“特別手当”に関して違いがみられるかを調べるために行われた。JAMA誌2011年2月2日号で発表された。営利ホスピス145ヵ所、非営利ホスピス524ヵ所の利用終了者を調査研究グループは、2007年の全米のホスピスに関する調査「National Home and Hospice Care Survey」の結果を元に、ホスピスを利用し、そのサービスを終了した4,705人について調査を行った。主要評価項目は、利用者の診断名、営利・非営利種別にみたサービス提供の場所(自宅、ナーシングホーム、病院、ホスピス、その他)、利用期間、ホスピスの看護師などによる1日当たりの訪問回数とした。分析の対象となった営利ホスピスは145ヵ所で利用者数は1,087人、非営利ホスピスは524ヵ所で利用者数は3,618人だった。がん患者の割合は営利が34%、非営利が48%利用者の診断名についてみると、がんの診断を受けていたのは、非営利ホスピスが48.4%(95%信頼区間:45.0~51.8)だったのに対し、営利ホスピスは34.1%(同:29.9~38.6)と低率だった(補正後p

4909.

SSRIのescitalopram、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のescitalopramは、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減することが示された。服用後8週間で、ほてりの頻度が半分以下に減少したと報告した人は、escitalopram群の50%に上った。米国ペンシルベニア大学産科婦人科のEllen W. Freeman氏らが、200人超の女性を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与に関して、効用よりもリスクが上回るとする試験結果が発表されて以来、閉経期のほてりに対する効果的治療薬は他にないのが現状という。escitalopramとプラセボを投与し8週間追跡研究グループは、2009年7月~2010年6月にかけて、40~62歳の閉経期の女性、205人(アフリカ系アメリカ人95人、白人102人、その他8人)について調査を行った。被験者の平均年齢は53歳だった。同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはescitalopram 10~20mg/日を、もう一方にはプラセボを8週間投与し追跡した。主要評価項目は、服用後4週と8週時点の、ほてりの頻度と程度で、被験者の日記に基づき評価を行った。副次評価項目は、ほてりの程度、臨床改善指数(基線から50%以上ほてりの頻度が減少と定義)とした。ほてりの頻度減少幅、escitalopram群4.6回に対しプラセボ群が3.2回試験開始時点での、被験者のほてりの回数は、1日平均9.78回(標準偏差5.60)だった。8週後、1日のほてりの頻度の減少幅は、プラセボ群が平均3.20回(95%信頼区間:2.24~4.15)だったのに対し、escitalopram群では平均4.60回(同:3.74~5.47)で、両群の平均差は1.41回(同:0.13~2.69)だった(p<0.001)。8週時点で、ほてりの頻度が半分以下に減ったと答えた人の割合は、プラセボ群が36%に対し、escitalopram群では50%だった(p=0.009)。ほてりの程度の軽減幅に関する平均スコアも、プラセボ群が-0.30(95%信頼区間:-0.42~-0.17)に対し、escitalopram群では-0.52(同:-0.64~-0.40)だった(p

4910.

部長 中山優子 先生「がん治療における放射線治療医は多くの可能性をもつ魅力ある分野」

1959年7月8日神奈川県横須賀市生まれ。84年群馬大学医学部卒業。専門分野は放射線腫瘍学・肺がんの放射線治療。99年群馬大学医学部放射線科講師、05年東海大学医学部放射線治療科学准教授、08年神奈川県立がんセンター放射線腫瘍科部長就任。日本医学放射線学会・放射線科専門医、日本放射線腫瘍学会・放射線腫瘍学認定医、日本がん治療認定医機構・がん治療認定医等。日本放射線腫瘍学会(評議員)、米国放射線腫瘍学会、日本医学放射線学会、日本肺癌学会(評議員)、世界肺癌学会、日本癌治療学会など。放射線治療医の魅力放射線治療を専門とするがん専門医のことを、私たちは放射線腫瘍医と言っていますが、ここではわかりやすく放射線治療医という言い方をします。私が卒業した群馬大学医学部は、放射線治療がとても盛んで、講義も臨床実習も内科や外科と同じコマ数があり、おかげでびっしりと放射線治療について学ぶことができました。また、私がいた群馬県内の病院では、放射線科だけで50床あり、そこで全身の状態を内科的診療で診ながら放射線治療ができるという理想的な環境にありました。放射線治療が対象とするがんは広範囲です。がん診療では通常、消化器、呼吸器など診療科ごとに特定の臓器への関与に限られます。しかし、放射線治療は、脳腫瘍から骨、皮膚、その他すべての臓器と横断的に関われるというのが、私にとって一番の魅力でした。医療手技についても幅広く習得できました。日常臨床で、頭頸部の診察なら喉頭ファイバー、肺の診察なら気管支ファイバー、消化器であれば消化管の内視鏡検査、婦人科であれば内診をやりますから、このような手技的にも幅広く経験できるのです。放射線治療では、人の身体全体を診ることにより新たな知識を得ることができます。たとえば、放射線治療は、喉頭がん、子宮頸がんの早期には非常に高い治療効果があるので、同じ扁平上皮がんの肺がんでも治療効果は高いはずだ、などの考え方ができるようになります。このように、医師としての深い知識を横断的に得ることができたのも大きな魅力だといえます。幅広い放射線治療の可能性がんにおける放射線治療の活用方法は幅広いものです。まず、がんの根治を目的とする根治照射、延命を図るための姑息照射、そして骨転移・脳転移などの症状を和らげる緩和照射まで適応可能です。それに加え最近では、一方向からの放射線の線量を変えたり、精度高く照射部位を絞ったり、重粒子線などを用いることによる治療のバリエーション拡大で、個々の患者さんに合った治療選択ができるようになりました。放射線治療の特長として考えられるのは、まず身体への侵襲の少なさです。放射線治療は一般に身体外からの照射ですので、手術と異なりメスを入れずにすみます。また、放射線治療は局所療法ですので、抗がん剤とは異なり全身性の副作用が少ないのです。そのため、全身状態が悪い人や高血圧・心臓疾患などの合併症を患っている方、高齢者にも適応しやすいというメリットがあります。もう一つの特長は、臓器の機能保持が可能だということです。同じ局所療法でも手術とは異なり、放射線療法では臓器を残し機能を温存することができます。たとえば、声門部がんでの喉頭部摘出などは、患者さんのQOLに関わる大変重要な問題ですが、放射線治療が適応できれば喉頭部を残すことができます。臓器を残せるというメリットは非常に大きいといえます。放射線治療が有用ながんの代表は,早期の頭頸部がんです。その他子宮頸部などの扁平上皮がんには非常に高い効果があります。また、進行がんにも適応が確立しつつあり、遠隔転移がない肺、食道、頭頸部の進行がんでは抗がん剤と併用する化学放射線療法が積極的に行われています。さらに、術後の照射にも使用が拡大しています。乳がん乳房温存手術後の放射線照射により、術後の顕微鏡的な残存腫瘍を根絶するというものです。この治療により再発リスクが約3分の1に減少することが明らかになっています。放射線治療の新しい分野である重粒子線治療についても具体的な有用性が明らかになっています。骨肉腫や悪性黒色腫などの難治性腫瘍や穏やかな脊索腫などで高い効果を上げています。今までX線の放射線では治らなかったがんが治癒できるということは画期的なことです。何よりも患者さんにとって非常に大きな朗報だといえるでしょう。重粒子線治療ができる施設は千葉県の重粒子医科学センター病院など日本全国で現在3つしかありませんが、今後増えていくでしょう。日本における放射線治療の現状と問題点放射線治療医が足りないことが大きな問題です。放射線治療に興味を持ってもらうためには、まず大学教育の改革が大切だと思います。今まで、多くの大学では放射線科講座がひとつあるだけで、そこで画像診断、核医学、放射線治療もすべて教えるという状況でした。そのため日本放射線腫瘍学会では、治療科と診療科の講座を別々にしてくださいという要望を各大学に出しています。その結果、いくつかの医学部では診断と治療が独立する方向で、放射線治療の講座ができつつあります。学会でも学生教育が最重要課題と考え、放射線治療の魅力を知っていただくために、夏に学生や研修医を対象としたセミナーを継続して開いています。国でも、がんプロフェッショナル養成プランにより放射線療法に関する腫瘍専門医師の養成を推進しています。臨床の現場では各臓器別のキャンサーボードに、内科系、外科系、病理、画像診断、そして放射線治療医が集まり患者さんの治療方針について検討するのが理想です。各臓器のスペシャリストの先生方と同じ土俵で討論するには知識が必要ですが、放射線治療医の特性も上手く生かせると思います。各スペシャリストと我々の違うところは、我々はがんについて広く知っているという強みです。また、現在は一臓器だけでなく、様々ながんを合併して発症している患者さんも少なくありません。たとえば、頭頸部と食道部に合併しているがんでは、放射線治療により両方治療できるのも大きな利点です。このように、放射線治療医としての特性や放射線治療のメリットを生かしながら、スペシャリストの先生方に積極的に関わっていくという姿勢が必要であると思います。そして、がん治療に関わっている先生方には放射線治療についてもっと知っていただけたらと思います。我々からのアプローチ不足もありますが、これも大きな問題です。たとえば、新規患者さんが来られた場合、放射線治療ができるかどうかを放射線治療医に相談していただければと思います。大きな腫瘍だから抗がん剤でないとダメ……など先入観や知識不足から、放射線治療の適応があるにもかかわらず治療選択肢に入らないことも少なくないと思います。がんが進行してから我々に相談されることもありますが、それでは患者さんにとって最良の治療ができなくなってしまうことが多々あります。放射線治療の適応については、独自に判断せず、是非治療を始める前に一度近くの放射線治療医の意見を聞いて欲しいと思います。現状では放射線治療医の常勤がいないこともありますが、せめて電話での問い合わせをしていただくとか、こちらに患者さんに来ていただいてお話を聞くという方法でも構わないと思います。新設予定の神奈川県立がんセンターの重粒子治療施設平成26年度にオープンする予定の重粒子治療施設ができれば、日本で5ヵ所目の施設となります。神奈川がんセンターの中にできるこの施設は、病院との併設型です。各診療科でがんの各臓器の専門医がいるところにできるので、包括的なサポートが可能になります。この施設はよりたくさんの患者さんに治療を提供できるように、臨床に特化した施設にしようというのが我々のポリシーです。さらに、一般的なX線治療にも高精度治療装置が導入されます。そこに一つのモダニティとして重粒子線治療が入ります。ですから構想的にいえば、放射線腫瘍センターに来られた患者さんに、重粒子線治療を含めた最も適した放射線治療を提供できるように準備していきたいと思っています。設備には大変な金額がかかりますが、それでも重粒子線でなければ治らない患者さんもいます。このセンターができれば、県内だけでなく東京都南部及び西部からの通院が可能な位置にあることから、全身状態が悪くない患者さんについては外来で治療を行う"外来通院型"の重粒子線治療を目指しています。これは現役で仕事をされているような患者さんにとっては大変な朗報だと思います。放射線治療医を目指す皆さんへ前述の通り、放射線治療医はすべてのがんを診ることができます。また、自分がやりたいスタイルを選ぶことができます。たとえば、ベッドを持たず外来診療だけを行っている施設もあります。このような施設では夜中に入院患者さんの治療で呼び出されるということはありません。これは家庭があってお子さんのいる女性医師にとっては、とても魅力的だと思います。逆に、以前私が働いていた病院のように、ベッド数を多く持ち患者さんの全身を診ながら放射線治療を行う、内科的な意味合いも兼ねた放射線治療医という形もあります。放射線治療科といっても機能の幅が広いので、自分がどのような医師になりたいか、あるいは自分のライフスタイルやポリシーに合った施設を選ぶことができるのです。最近の放射線治療では、物理的に精度の高いロボットのような機械を用いて治療することがあります。若い医師の中には、自分の手を使わずにロボットでがん治療するという、物理学的な興味から入ってくる方も多いですね。一方、外科的な部分もありますので、外科医もやりたいけどがんを全体的に診たいという人も入ってきます。生物学的、物理学的研究なども、広く学べる。がん治療のチームに入ったならばどのポジションもできるのが放射線治療医なのです。質問と回答を公開中!

4911.

副院長 教授 加藤良二 先生の答え

がん化学療法は外科医が身につけるべき手技でしょうか?一地方病院の21年目の腫瘍内科医です。わが国には腫瘍内科医の養成システムがなく、すべての癌に自信を持って化学療法ができるようになったのは、ここ数年のことです。先日も分子標的薬関連の講演会があり出席しましたが、数人の外科医がスペシャリストとして講演していました。外科医の本分は手術であり、化学療法に手を出す前にたとえば消化管の専門にとらわれず尿路変向や子宮付属器切除など隣接臓器の外科的手技を身につける方が合理的ではないかと思っていました。私は血液腫瘍を含め全ての悪性腫瘍の治療をすぐに行えますが、薬物による治療という共通点があるからこそできることで、超人的なこととも思えません。むしろ人材の有効利用につながると思います。外科医が手術をやりながら(手術の技術を身につけながら)化学療法をやることなどは不器用な私などには到底出来そうもありません。私が外科医であれば(細かい手作業が得意で、卒業直後は外科医になるつもりでした)各領域の手術の技術の腕を上げることに邁進するだろうと常々思っています。現在は腫瘍内科医の不足があり外科の医師に手伝ってもらうのはやむを得ないと思いますが、今後も外科医は化学療法を必要な技術として身につけるべきでしょうか。あるいは外科系の診療科や教室に化学療法の専門家が必要なのでしょうか。現在、日本臨床腫瘍学会を中心として数多くの抗がん剤治療(化学療法)の治験が行われています。また日本癌治療学会と提携して癌治療専門医を認定しています。現実に多くの施設で外来化学療法室が設置されてきています。この中心は化学療法専門医であるべきと考えます。これからは術前・術後を問わずこれらの治療専門医に化学療法を任せる時代が来ると思ってはいますが、如何せん医師数の絶対的不足が時代の到来を阻んでいます。佐倉病院でも外来化学療法室の大半が外科系医師によって運営されています。我々が外科医となってから、つい最近まで血液腫瘍内科を除いて、術後の補助化学療法は外科医の手によってなされていました。一旦手術を受けた患者さんは外科医を信頼しており(腹の中まで見てもらったから何でも理解していると信じ込んでる?)外来を離れようとしません。他の内科医または放射線治療医を紹介すると放り出された(あるいは見放された)と感じていたようです。一方、外科医は施術した患者さんをなんとか最後まで面倒みようとした結果であると理解しています。今ほどエビデンスも有効な治療薬も無い頃で再発の可能性を肌で感じながら、ああでもないこうでもないと努力しました。勿論、化学療法は片手間にやるものでは無いと思いますが、癌を治療する上で手術や照射あるいは免疫治療等と同様に集学的治療のひとつであると位置づけています。自分の知らないことは専門医に任せておけばいいと思いますか?各分野がそれぞれの立場を主張し、理解した上で患者さんにとって最良の治療を勧めるべきであると考えます。それには外科医も化学療法、放射線治療に関して充分な知識を持つことが必要です。外科の手術修練は大変ですが、朝から晩まで糸を縛っているだけじゃありません(笑)。外来で患者さんと長く付き合うようになった時、適切なアドバイスをしてあげたいと思います。私は内科へ進む研修医にも暇があれば手術に誘います。自分が診断した結果を見て欲しいからです。手術の何たるかを知らずに患者さんに手術を勧められますか?興味あること全てにチャレンジして欲しいものです。何をやっても患者さんの役に立つと信じています。先生の方針は伝統になりますでしょうか?加藤先生が目指されているように、外科医なら外科領域全般を扱えるように指導することは大変重要だと考えます。ところで、主任教授が変わると方針も変わるかと思います。それでも佐倉病院としては、外科手術全般を学ぶ方針(育成方針?)は変わらず維持されるのでしょうか?大変良い方針なので、変わらず伝統としていただきたいものです。有り難うございます。応援に感謝します。これから育つ若手外科医に全領域を経験させることで、外科の領域全てで怖いものがなくなり何でもやるようになれば、彼らが指導する時に伝統となったということです。佐倉病院外科がひとつである限り、全領域を学ぶ姿勢は変わらないと信じていますし、外科医が溢れかえってもそうあるべきです。佐倉の若手は肺・乳腺や甲状腺同様に腸管や肝胆膵も扱います。いろんな経験をすることで、それぞれの違いが分かってきています。いろんな事をやれば自分は大変な思いをしますが、すべて役に立ちます。幸いなことに当科の若手は順調に育ってきていますし、この考えを踏襲してくれると信じています。 外科医の道現在医学部に通う者です。佐倉病院ではまず外科全般を学ぶとのことですが、何年くらい時間を費やすのでしょうか?また、途中で心臓や脳に興味がでてきた場合、その専門分野に特化する道もあるのでしょうか?拙い質問ですが、ご教示のほど宜しくお願いします。ひととおりの分野を経験し、理解できるのに4年はかかります。また自分で手術をできるようになるのに卒後7、8年を要します。心臓に関しては当科内のローテーションに入っていますが、心臓外科を志望する学生が少ないので希望してくれれば大助かりです。外科としては脳外のローテーションは組んでいませんが、興味が湧いてくればいつでも(1年の途中というわけにはいきませんが)、どこ(どの病院)からでも可能ではないでしょうか?勿論、佐倉病院の脳外科を志望してくれたら、大歓迎です(笑)。また外科的手術手技を学んだ婦人科や泌尿器科医がいても良いと思います。元々は脳外科、泌尿器科、婦人科などは外科から分化したものであり、外科的手技はどの外科系診療の基礎となり得るものであるはずです。日本でも珍しい育成システムについて記事拝見しました。「当外科の最大の特徴です。呼吸器でも消化器でも、外科手術全般においてまず学ぶ。つまり、外科手術の分野においてすべての症例に対応できる医師の育成という日本でも珍しいシステムを構築しています。」とありますが、差し支えなければ、もう少し詳しく教えていただけると幸いです。私が勉強不足なのかも知れないが、あまり聞いたことのないシステムですので、興味があります。宜しくお願いします。全国には数多くの外科学教室がありますが、残念ながら主催する教授の得意とする専門臓器分野に偏る傾向があります。例えば大腸を得意とする教室では食道・上部消化管あるいは肝胆膵が苦手とか、消化器外科医は肺の手術ができないとか、逆に肺癌を主に扱っている教室では消化管の手術経験が少ないというようにです。消化管主体の教室では外科専門医の資格を得るのに心臓専門の教室や呼吸器を扱っている教室に一時期留学あるいは研修に出なければなりません。当教室では外科専門医資格を得るために必要な手術症例はすべて指導でき、経験できるようになっており、他所にわざわざ出向く必要が無いということです。どのような研究を行っているのでしょうか?東邦大学医療センター佐倉病院さんでは、どのような研究を行っているのでしょうか?また、今一番力を入れている研究はどんなものでしょうか?ホームページには載っていなかったので、教えて頂ければと思います。内科その他の研究に関しては、東邦大学ホームページから閲覧が可能ですので参照して下さい。佐倉病院外科での研究についてご説明します。優しい手術をテーマに「外科侵襲と悪性腫瘍の進展」「外科侵襲・化学療法とストレス」「消化器(管)悪性腫瘍・呼吸器・乳腺・甲状腺の外科治療」「低侵襲手術法の開発」「がんの増殖・転移の抑制」「術前・術後の補助化学療法」「センチネルリンパ節生検による術式の選択」「腫瘍免疫」「分子生物学的手法による悪性腫瘍の診断と治療」「CT・MRI・PET等を用いた術前画像診断」「疼痛管理と遺伝子診断」など多岐にわたっています。残念ながら当施設では動物実験舎を備えていません(現在計画中)ので、基礎研究は東邦大学関連の習志野キャンパス、大森キャンパス(医学部)や筑波にある他機関の研究施設などを利用しています。臨床研究は、随時当施設で行っています。また全国的に実施されている多施設共同の治療研究にも参加しています。外科医になってよかったと思ったことは何ですか?単純な質問で失礼かと思いますが、外科医になってよかったと思ったことは何でしょうか?今臨床研修で色々とローテートしています。どの科も良いなと思っていますが、外科系だけは、短い研修期間の中では何が魅力なのか実感ができません。とはいえ、指導医の先生は、忙しそうですが、なんだか使命感に燃えているような印象があります(他の科の先生よりも特に。)。加藤先生が長年外科医をやってきて、その中で「外科医になってよかったな」と思ったことを教えて頂ければ幸いです。感動を瞬時に得られます。患者さんが治った時あるいは痛み・苦しみから解放されたと解った時の達成感です。外科の手術は、よく大工さんに例えられますが職人が後世に残る家を造り上げるような感じかもしれません。ひとつの作品を造り上げたような満足感に近いものかもしれません。これらは短期間で消えていくものですが、患者さんがいれば、また望まれればいつでも何処でも腕や知恵をフルに使って治療することに力を注ぎます。何度も押し寄せる大波小波を乗り越えることに楽しみを感じています。ですから夜中あるいは緊急の手術ほど燃えてきて、集まった仲間達はみんな生き生きしています。外科医は「鬼手仏心」と言い、仏の心を持ってメスを振るうことを基本としています。人を傷つけるのは嫌ですが、早く治したい、早く苦しみから救いたいという使命感は強いと思います。患者さんの笑顔と沢山会えるようにしたいものです。女性が外科医になることについてメディトウキングの記事を拝見しました。よく聞かれることかも知れませんが、女性が外科医になることについて如何お考えでしょうか?私は是非外科系に進みたいと考えていますが、将来的なことを考えると(出産や家庭の事情など)外科医よりも他の科を考えた方が良いと周囲から言われます。でも本当にそうなんでしょうか?運よく(?)外科医は不足するので、出産して育児をしても、復帰できる場はたくさんありそうですし。忌憚ないご意見いただけると幸いです。佐倉外科は今年、20周年を迎えます。最近になって2名の女性が入局してくれました。今後ますます増えることを期待しています。外科を目指す女性は頑張り屋さんが多いようです。体力的にも一生懸命やっていれば、多くの男性外科医は優しく、みんなでカバーしようとしますから、出産や家庭の事情などは、なんとかなると考えています。外科でもダイナミックな手術から腕力を必要としない手術まで様々な分野があります。乳腺や甲状腺などは力を必要としませんし、消化器や肺癌などでも鏡視下手術であれば力は要りません。実際、佐倉外科では全麻下腹部手術の約7割、胸腔鏡下手術の9割が鏡視下手術ですから女性外科医の活躍の場は沢山あり、安心して外科医になってください。必要なのは、素直さと情熱です。外科医不足の解消について田舎の総合病院で外科医しています。先生が提言されているように外科医は臓器別に専門化(細分化)され過ぎているように感じています。(大学病院が高度医療のみを提供するという前提であれば良いですが…)今の先生方は、専門化された中で外科医として教育されているので、私どもの病院に来てくれるのはありがたいのですが、最初は盲腸も切れないような先生もいます。逆にいうと、佐倉病院さんのように外科医全般を最初から叩き込んで教育していただくと、私どものような病院にとってはすぐに戦力になります。専門分野は本人の興味次第で後から身につきますし。こう考えると、外科医全般を叩き込んだ先生が増えれば増えるほど外科医の解消につながりそうなのですが。先生のご意見を頂きたいと思います。 専門に特化した外科医も必要です。中央と地方の必要性をバランス良く配分することが必要なのです。しかし学会中心だとどうしても専門性に偏ってしまいます。医学会総会や外科系連合学会など幅広い分野を網羅した学会が、あまり人気の無いのも憂うべきです。しかし、大学病院に盲腸が少ないのも現実ですし、最先端から第一線の診療など、何からなにまで網羅するのも困難です。専門性を追求するのも良いですが、少なくとも外科専門医を取得するまではできるだけ多くの専門分野をまわって多様な経験や勉強を積むべきであると考えます。外科全般にわたって一人前になるのにかなりの時間が必要で、鏡視下手術ができてもアッペも切れない外科医を指導するのも地方の先生方の役割でもあると考えます。自分が育ててもらったように、手間暇掛けてみんなで育てましょう。少しでも多くの若い人達に外科の醍醐味と感動を味わってもらいましょう。ご家族とのコミュニケーションについてプライベートなことで恐縮です。差し支えなければ教えていただきたいことがあります。外科医は患者さんを待たせることできないので、緊急オペが多く、なかなか家族との時間が持てません。先生も同じ状況だとは思いますが、何か家族とのコミュニケーションを円滑にするお知恵があればご教示お願いします。一番は家族の理解です。時間的には短いですが、濃い時間を過ごすことだと思っています。患者さんに使う時間は全知全霊を傾けて行動しているはずですが、家族とも同様に接しなければなりません。外科医に限ったことではありませんが、患者さんの話を良く聞き、状況を理解した上で、持てる力をフルに発揮して適切な治療を行うことは必要なことです。家族も同様に接することであると思います。ちょっと手を抜くとたちまち大変なことになってしまいます。簡単にできることではありませんが、つねに誰とでも真剣に接し、体力知力の続く限り頑張ることだと思います。専門診療科について外科の中の専門診療科に、「消化器」「呼吸器」「心臓血管」「乳腺」とあります。なぜこの4つなのでしょうか?特別な意図があれば是非ご教示いただきたく思います。(とんちんかんな質問でしたら申し訳ありません。)他にも甲状腺や副腎などを扱う「内分泌外科」や「小児外科」もありますが、佐倉外科では充分な診療経験の上で消化器、呼吸器、循環器、乳腺の専門医がおり、それぞれに教育・研究が行われていますので4つの分野を示しました。専門といっても指導する上級医の一人か二人だけで若い連中は特にグループ間の壁を意識していません。私自身が何でもやるので、若い連中はいろんな疾患を担当しても違和感がないようです。甲状腺や副甲状腺は主に呼吸器外科で扱いますが、副腎は消化器を含む腹部外科が担当しています。先天奇形などの小児外科は県の専門子供病院にお願いしておりますが、幽門狭窄、腸重積、鼠径ヘルニアなどは一般外科として消化器や呼吸器のグループでも担当しています。総括外科医は絶滅危惧種です。新入会員が減り続けており、今のままだとあと10年もすれば極端に少なくなります。何でもできる外科医になりましょう。今ならみんな必死になって育てようとしています。10年後、あなた達はスターです。副院長 教授 加藤良二 先生「人を助けるために何かをしたい。その動機が医師の原点となる」

4912.

無煙タバコをやめたい人にも、禁煙補助薬バレニクリンは有効

 無煙タバコの常飲が多くの国で増加しているという。特に北欧ではその地位が確立しており、スウェーデンでは常飲者が逆転(19% vs. 11%)、ノルウェーでは16~35歳の32%が毎日無煙タバコを喫煙しているという。背景には、無煙タバコは有煙タバコより有害ではないと広く信じられていることがあり、そのことが禁煙補助薬の有効性の試験で無煙タバコに関する報告をみかけないことに反映されているとして、スウェーデンFagerstrom Consulting ABのKarl Fagerstrom氏らは、無煙タバコをやめたい人を対象に禁煙補助薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)の有効性と安全性について検討を行った。スウェーデンではタバコをやめたい人の約30%が無煙タバコ常飲者だという。BMJ誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月6日号)掲載より。無煙タバコ常飲者で禁煙希望者を対象、投与12週間+14週間の禁煙率を評価 試験は、ノルウェー7つ、スウェーデン9つの医療施設(大半はプライマリ・ケア診療所)で行われた二重盲検プラセボ対照パラレル群の多施設共同無作為化試験。 参加者は新聞で公募され、18歳以上男女で、無煙タバコを1日8回以上常飲し、スクリーニング前1年以内では3ヵ月以上禁煙していた期間がなく、完全に禁煙をしたいと思っている人を被験者とした。3ヵ月以内に、有煙タバコを除く他のニコチン含有製品を常飲していた人、禁煙治療を受けていた人、その他先行する疾患治療、精神疾患治療を受けていた人は除外された。 被験者は無作為に、バレニクリン1日2回1mg(最初の1週間は滴定)投与群もしくはプラセボ投与群に割り付けられ、12週間治療され、その後14週間追跡調査された。 主要エンドポイントは、治療最終4週間(9~12週)の禁煙率で、コチニン濃度で確認した。副次エンドポイントは、9~26週間の持続性の禁煙率であった。安全性と忍容性の評価も行われた。 無作為化後に1回以上の試験薬投与を受けた被験者は431例(バレニクリン群213例、プラセボ群218例)だった。被験者の実態的人口統計学的背景、ベースラインでの無煙タバコ消費に関するデータは両群で同等だった。たとえば、男性被験者の割合はバレニクリン群89%(189例)、プラセボ群90%(196例)、平均年齢は両群とも43.9歳、無煙タバコ常飲は両群とも1日約15回、寝起き30分以内に常飲する人は両群とも約80%など。治療9~12週のバレニクリン群禁煙率の相対リスク1.60、優位性はその後も持続 結果、治療最終4週間(9~12週)の禁煙率は、バレニクリン群の方が有意に高かった。禁煙率はバレニクリン群59%(125例)に対しプラセボ群39%(85例)で両群差20ポイント、相対リスク1.60(95%信頼区間:1.32~1.87、P<0.001)、治療必要数(NNT)は5例だった。 このバレニクリン群の優位性は治療後の追跡調査期間14週の間も持続した。9~26週間の禁煙率は、バレニクリン群45%(95例)に対しプラセボ群34%(73例)で両群差11ポイント、相対リスク1.42(95%信頼区間:1.08~1.79、P=0.012)、NNTは9例だった。 プラセボ群との比較でバレニクリン群で最も共通してみられた有害事象は、嘔気(35%対6%)、疲労感(10%対7%)、頭痛(10%対9%)、睡眠障害(10%対7%)であった。治療中断に至った有害事象の発生(9%対4%)、また重篤な有害事象の発生(1%対1%)は両群ともにわずかであった。 結果を受けてFagerstrom氏は、「バレニクリンは、無煙タバコをやめたい人の安全な助けとなる」と結論。また最後に「本試験では、プラセボ群の禁煙率が高かったが、それは禁煙に後ろ向きの人が少なかったためだ」とも述べている。

4913.

妊娠初期の抗てんかん薬カルバマゼピン、二分脊椎症と関連

妊娠第一トリメスターにおける抗てんかん薬カルバマゼピン(商品名:テグレトールなど)服用と先天異常との関連について、バルプロ酸(商品名:デパケンなど)よりも低リスクではあったが、二分脊椎症が特異であると認められることが、システマティックレビュー、ケースコントール試験の結果、示された。オランダ・フローニンゲン大学薬学部門のJanneke Jentink氏らによる。カルバマゼピンは、妊娠可能な欧州女性において最も一般的に服用されている。これまでその先天異常との関連を示唆する試験は複数あるが、個々の試験は小規模でリスク検出力が統計的に不十分なものであった。BMJ誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月2日号)掲載より。文献レビューと380万分娩登録ベースのEUROCATデータを用いて解析試験は、妊娠第一トリメスターにおけるカルバマゼピン曝露と特異的な主要先天異常との関連を同定することを目的とし、Jentink氏らは、これまで公表されたすべてのコホート試験で試験目的のキーとなるインディケーターを同定し、住民ベースのケースコントロール試験で、そのインディケーターを検証した。レビューは、PubMed、Web of Science、Embaseを使って文献検索を行うとともに、1995~2005年に欧州19の先天異常レジストリから登録されたデータを含むEUROCAT Antiepileptic Study Databaseのデータも解析に含んだ。被験者は、文献レビューからは8試験のカルバマゼピン単独療法曝露2,680例、EUROCATからは先天異常が報告登録された9万8,075例(分娩全体数は380万例)であった。主要評価項目は、妊娠第一トリメスターでのカルバマゼピン曝露後の主要先天異常の全出現率、文献レビューで規定した5つの先天異常のタイプの症例群とコントロール群の2群(非染色体症候群と染色体症候群)との比較によるオッズ比であった。バルプロ酸よりもリスクは低い結果、文献レビューでの全出現率は3.3%(95%信頼区間:2.7~4.2)であった。先天異常登録例では131例の胎児がカルバマゼピンに曝露していた。先天異常のうち二分脊椎症だけが、カルバマゼピン単独療法群との有意な関連が認められた(非抗てんかん薬群との比較によるオッズ比:2.6、95%信頼区間:1.2~5.3)。しかし、そのリスクはバルプロ酸と比べると低かった(オッズ比:0.2、95%信頼区間:0.1~0.6)。その他の先天異常についてはエビデンスが得られなかった。総肺静脈還流異常症はカルバマゼピン単独療法群では0例であり、唇裂(口唇裂有無含む)オッズ比は0.2(95%信頼区間:0.0~1.3)、横隔膜ヘルニアは同0.9(同:0.1~6.6)、尿道下裂は同0.7(同:0.3~1.6)であった(オッズ比はすべて非てんかん薬群との比較)。さらに探索的解析の結果では、単心室欠損症と房室中隔欠損症のリスクが高いことは示された。Jentink氏は、「バルプロ酸よりもリスクは低いが、カルバマゼピンの催奇形性として相対的に二分脊椎症が特異である」と結論。また、データセットは大規模であったが、複数の主要な先天異常のリスク検出力は不十分であったとも述べている。

4914.

死亡率が最も低いのはBMI値20~25未満:白人成人146万人の解析

これまで、BMI値30.0以上の肥満と定義される人では、心血管疾患や脳卒中、その他特異的がんによる死亡率が増大することが立証されていたが、全死因死亡率との関連については明らかにされていなかった。そこで米国立がん研究所 疫学・遺伝学部門のAmy Berrington de Gonzalez氏ら研究グループは、19の前向き試験に参加した白人成人146万人のデータを集め解析した。NEJM誌2010年12月2日号掲載より。白人成人146万人のデータを解析解析対象となった19の試験は、米国立がん研究所Cohort Consortiumに登録された前向き試験で、1970年以後を基線とし、追跡期間5年以上、各試験の被験者死亡に1,000例以上の非ヒスパニック系白人を含むものだった。基線での、身長、体重、喫煙データがあり、既往歴(メラノーマ以外のがん、心疾患)、飲酒、教育レベル、婚姻状況、身体活動に関する情報があった。解析された被験者は、19~84歳(中央値58歳)の白人成人146万人分のデータで、年齢、参加していた研究、身体活動、飲酒、教育、婚姻状況で補正後、Cox回帰分析を用いて、BMI値と全死因死亡率との関連についてのハザード比と95%信頼区間を推定した。BMI値と全死因死亡率はJ字型曲線の関連被験者の基線におけるBMI中央値は、26.2だった。追跡期間中央値10年(5~28年)の間に、16万87例が死亡していた。非喫煙者の健常者についてみたところ、BMI値と全死因死亡率とにはJ字型曲線の関連が認められた。BMI値22.5~24.9階層群を基準とした、女性の、BMI値とのハザード比(95%信頼区間)は以下であった。 ・15.0~18.4階層群 1.47(1.33~1.62)・18.5~19.9階層群 1.14(1.07~1.22)・20.0~22.4階層群 1.00(0.96~1.04)・25.0~29.9階層群 1.13(1.09~1.17)・30.0~34.9階層群 1.44(1.38~1.50)・35.0~39.9階層群 1.88(1.77~2.00)・40.0~49.9階層群 2.51(2.30~2.73)男性のハザード比も女性と同等だった。また20.0未満のハザード比は、追跡期間が長期となるにつれ小さくなっていた。Gonzalez氏は、「白人成人では、過体重と肥満、そしておそらく低体重も、全死因死亡率の上昇と関連する。概して全死因死亡率は、BMI値20.0~24.9階層群で最も低い」と結論している。なお、米国では成人の3分の2が、その他先進諸国では半数以上が、過体重もしくは肥満であるという。(武藤まき:医療ライター)

4915.

低リスク前立腺がん患者には積極的経過観察が妥当、選択は個々人の意思で

65歳で前立腺がんの診断を受けた仮定的コホートで、選択した治療の違いによるQOL調整後の期待余命(Quality-adjusted life expectancy ;QALE)について検討した意思決定解析の結果、積極的経過観察を選択した患者群が、他の放射線治療や手術などを選択した患者群に比べアウトカムは良好で、積極的経過観察が妥当な治療戦略であることが示された。米国ハーバード大学医学部ダナファーバーがん研究所のJulia H. Hayes氏らの報告によるもので、「治療か積極的経過観察かの選択は個々人が中心的に担うもの」と結論している。JAMA誌2010年12月1日号掲載より。仮想患者のPSA値は10ng/mL未満、病期分類T2a以下、グリーソン・スコア6以下本研究の背景には、米国では、2009年には前立腺がん患者が19万2,000人に上り、そのうち低リスク患者が70%を占め、90%以上が初期治療として手術や放射線治療を受けるものの、その大半が一つ以上の副作用を有するとの報告を踏まえ、「PSAスクリーニングを受けた人の最大60%で前立腺がんが診断される時代に、治療を義務づけることはないであろう」という著者らの提起がある。しかし、低リスク前立腺がんに対する積極的経過観察と、放射線治療や外科治療について、その長期アウトカムや生活の質(QOL)に与える影響を分析した試験はほとんどなかった。研究グループは、65歳で初めて診断を受けた、臨床的限局性の低リスク前立腺がんの仮想コホートについて、過去の研究結果に基づくシミュレーション・モデルを作り、意思決定解析を行った。仮想患者のPSA値は10ng/mL未満、病期分類T2a以下、グリーソン・スコア6以下の患者とされた。患者の選択肢は、近接照射療法、強度変調放射線治療(IMRT)、前立腺全摘除術、または積極的経過観察だった。積極的経過観察では、定期的な直腸内診、PSA値検査と、生検(診断の1年後、それ以降は3年ごと)を行い、グリーソン・スコアが7以上や、その他疾患の進行が認められた場合や、患者の選択意思が示された場合に処置が行われた。主要評価項目は、それぞれの選択肢におけるQALEだった。QALEは積極的経過観察が最高、次いで近接照射療法、最低は前立腺全摘除術結果、QALEが最高だったのは積極的経過観察群で、質調整後の生存年数は11.07 QALYだった。次いで、近接照射療法の10.57 QALY、IMRTの10.51 QALY、前立腺全摘除術の10.23 QALYだった。前立腺がんでの死亡の相対リスクは、診断時にいずれかの治療をした場合が、積極的経過観察群と比べ0.6倍と低かった。それにもかかわらず、QALEは積極的経過観察群が最高のままだった。QALE増加、最適治療は、個々人が積極的経過観察かいずれかの治療を行うかによっていることが認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4916.

教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

1981年滋賀医科大学卒業後、千葉大学医学部第二内科入局。アイルランド・トリニティ大学留学。2003年東邦大学医学部付属佐倉病院内科助教授、2004年同院消化器センター長、2006年より現職。日本消化器内視鏡学会認定指導医、日本消化器病学会認定専門医。難病「潰瘍性大腸炎」「クローン病」が日本で急増中「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は、日本ではまだ歴史が浅い病気で、元々は欧米諸国の白色人種に多いことで知られています。特に北欧・西欧・北米地域で広がりをみせており、クローン病は近代化された地域の人たちに多く発症している病気であると認知されています。しかし、今、日本でこれら両疾患が急増しています。当院の診療科では約800人以上の患者さんを診療しており、外来には多い時で1日約100人位の患者さんが来院します。患者さんの絶対数は欧米諸国に比べまだまだ少ないのですが、増加率が他の国に比べ高いのが特徴です。私は日本人を取り巻く食生活、ライフスタイル、衛生環境などの変化が影響していると考えています。我々が最近注目している発症要因の一つに、腸内細菌のバランスがあります。まだ研究している段階ですが、腸というのは実は複雑な臓器で腸内の各種要因、特に細菌叢のバランスが重要で、それらは大脳へも強く影響している可能性もあることがわかってきました。最近話題にされるメタボリックシンドロームですが、その病因にも腸が関係している可能性があり、腸の働きがクローズアップされています。私たち人間の体は腸の働きによって健康を保っているとも考えられているのです。よって、我々は「潰瘍性大腸炎」「クローン病」と、腸内細菌叢のバランスとの因果関係に注目しているのです。難病相談、講演活動の日々が臨床開発のヒントに十数年前まで、千葉県には「潰瘍性大腸炎」「クローン病」を専門に診察する医師がいなかったこともあり、現在では急増する患者さんに対応が追いつかない医療機関が多くあります。また、最近では治療方法の選択肢が多くなったため、治療の質を上げてもらうために、それぞれの治療成績、治療戦略、対処方法などについて講演して回っている状況です。また、講演活動とともに地域での難病相談にも20年近く携わっています。県内全域を一人で回っていたこともありました。講演・難病相談とともに年々回数が増加していますが、今では後輩の専門医が参加してくれるようになり、手分けして対応できるようになりました。悩み相談に応じることにより、多くのことを学ぶことができました。病院の外来では、多い時で1日100人の患者さんを診察しなければならないため、残念ながら一人の患者さんに多くの時間を割くことができません。一方、難病相談では一人ひとりに時間を割けるため、様々なことを知ることができます。その中から研究開発のヒントを得たことは数多く、まさに臨床は研究の基礎でもありますね。患者さんには情報を開示して治療の道を迷わせない「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」はとても手ごわく、またきめ細かい診断が必要です。そのため私は内視鏡を用いた検査から診断まで、一貫して自分で行うようにしています。その他はチームで治療にあたることになりますが、良質のチーム医療を行うためにはスタッフ同士の意思統一が必要不可欠です。また、最近ではインターネット上に疾患の情報が氾濫しているため、疾患や治療方法に対する誤った認識をもたらしているようです。そのため、私は医師をはじめ、看護師、薬剤師、栄養士と患者さんたちが一堂に会する会合をもち、栄養・薬剤・治療などに関する正確な情報開示を行い、当院での治療方針を説明し共有してもらうようにしています。スタッフの意思を統一し、また患者さんの気持ちをきちんと落ち着かせるためにも、このような会合を大切にしています。海外研究留学でクローン病患者と再度出会ったことで私が入局した頃は、海外留学をして欧米から学ぶというスタイルがほとんどでした。私はEPAの抗炎症効果に関する共同研究をすることになり、アイルランドに研究留学しました。研修医として初めての受け持ち患者さんがクローン病だったのですが、不思議な御縁で、留学でクローン病とまた出会うことになりました。留学するまで、クローン病はまだまだ日本では珍しい病気でしたのであまり意識したことはありませんでした。また、それまでの私は、当時の先端医療をリードしていた内視鏡が好きで、特にがん領域での内視鏡治療に携わっていきたいとの強い思いがありました。しかし、この留学で2年間内視鏡から離れたこと、多くのクローン病の患者さんたちに出会い、おそらくこれから日本でも増加する病気の一つになるだろうと思うようになったことから、「潰瘍性大腸炎」「クローン病」の臨床研究をしていきたいと考えるようになりました。そして帰国後は、困っている難病患者さんを前にして留学での経験を生かして貢献したいという気持ちが日に日に大きくなり、今に至っています。今の若い人たちは海外留学を希望する人が少ないと聞いていますが、自分の専門分野がどこで一番臨床研究されているかと考えると、やはり留学は重要な位置を占めるのではないでしょうか。そういった意味でも後輩たちに留学を勧めています。海外の生活は苦労が多いのですが、その苦労が人生のプラスにもなりその後の医師としてのキャリアに大いに役立つと思います。若い人にはもっと外へ出かけ、知識や技術を磨くきっかけにして欲しいと考えています。グローバルに活躍できる医療現場がここにはある今現在、当院では世界同時進行で、新薬の臨床製薬治験を行っています。病院のある佐倉市は都市部からは離れていますが、この地で欧米諸国と肩を並べられる、最先端の診療体制を構築することができたと自負しております。私の場合、身近にこの分野の先輩・指導者はいませんでした。そのため積極的に外へ出かけていき専門医の先生たちとコミュニケーションを取る、海外に出向き最新治療の情報を入手するなどして勉強することが多かったです。特に難病の専門分野を極めるにはこれが一番大事だと私は思います。医師としてこの分野で頑張るという強い思い、志は高く持ち、視線は患者さんと同じでいるというのが私のいつも信条としていることです。患者さんと同じ目線で病気を診ていると、わからなかったこともみえてくるものです。医師は自分の思い込みだけで診療をしていては駄目ですね。困っている患者さんは大勢います。私が若い時は欧米からただ学ぶだけでしたが、今の日本は他国をリードすることができると思います。目の前で困っている患者さんのためにも、今まで以上に世界に先駆けた臨床研究を行って欲しいと思うのです。最近、診療など上手くこなせる若い医師は多いのですが、一歩踏み出していける人が少ないと感じています。難病は先がみえず、特にこの病気は再発を繰り返す特徴があり、患者さんにとっては一生を通じて苦痛が伴いますから、患者さんの情報をしっかり把握できることが望ましいでしょうね。私はチームスタッフや若い医師に、「私たちの治療は世界で肩を並べられるものである。自信を持つよう」と常々言い聞かせています。佐倉から世界へ最新治療・治験の発信を行っており、これからもここ佐倉から発信していくつもりです。これからの医療を創っていく若い医師たちには、どんな場所でも、どんな環境でも、自信を持って世界に通じる医療創りに挑戦していただきたいと思います。質問と回答を公開中!

4917.

教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス・細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

4918.

会員の皆様方へお知らせ NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会のご案内

NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会とは近年、産科、小児科などの医師不足、診療科の偏在化が問題視されていますが、その影で外科崩壊も進んでいます。日本は将来、外科医が激減し、手術を受けられない患者さんがあふれるという事態に陥りかねません。2009年に発足されたNPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(略称:若手外科系医師を増やす会)は、外科系医師の待遇改善と志望者の増加を目指し、「教育」「広報」「行政対応」の3本柱を軸に日々活動しています。詳細は日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会ホームページへ代表者のご挨拶近年、医師の偏在が社会的問題として取り上げられ、日本学術会議や日本医師会からも声明や要望が出されています。医師・診療科の偏在に対して厚労省は医学部定員の増加などの対応をしていますが、現状を改善するためには十分とは言えません。特に医学生は3K(きつい、汚い、厳しい)の科には進まず、現在では3無し(当直がない、救急がない、癌がない)の科に進路を進めています。その結果、小児科、産科のみならず外科医の希望者も減少し、同時に政府の医療費削減等は外科医の労働環境を悪化させて、リスクの高い外科を選択しない事に拍車をかけているのです。この状況では何十年先に本邦に於いて、癌、心臓および移植手術等が受けられなくなる日が来るかもしれません。我々は日本から外科医がいなくなることを憂い、我々の考えに賛同してくださった多くの方の支援を得て、このNPO法人を設立することにしました。そして皆様の共に行動を起こし、この危機を解決し国民の健康に貢献していきたいと願っています。理事長 松本晃 副理事長 北島政樹画像を拡大する画像を拡大する日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会は、ご賛同いただける皆様のご支援をいただくために協力会員を広く募集しています。協力会員募集ページへ外科医の魅力とは?外科系先輩医師からの熱いメッセージを動画で視聴いただけます。動画メッセージのページへ「きみが外科医になる日」 2010年11月19日発売日本の将来のためには外科医が必要だ!日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会著者「きみが外科医になる日」が講談社から発売されました。若い外科医を目指す若者たちに向けた名医からのメッセージ、若手外科医から先輩医師としての外科医のナマの生活を公開、巻頭対談としてソフトバンク王貞治会長と理事北島先生の対談と盛りだくさんな内容です。ご興味のある方はぜひお手にとってみてください。Amazonで購入する© 株式会社 講談社 2010 Printed in Japan <内 容>■第一章「世界の王を支える外科医」医療対談 王貞治×北島政樹(主治医)■第二章明日の手術の担い手たち「今日だけは、私も外科医だ」これが外科医の仕事場だ臨床研修の現場から若手外科医インタビュー■第三章名医からのメッセージ■第四章外科医を取り巻く社会環境■第五章近未来の外科医療低侵襲化への挑戦注目される手術支援ロボット ほか■付 録診療報酬改定表日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会 主な活動内容ほかケアネットは、「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を応援しています

4919.

プライマリ・ケアで、高血圧の検出率が高い地域は冠動脈疾患死亡率が低い

プライマリ・ケアで高血圧の検出率が高い地域では、冠動脈疾患(CHD)死亡率が低いことが、英国Leicester大学保健科学部門のLouis S. Levene氏らの調査で明らかになった。英国内各地域でプライマリ・ケアを担う152ヵ所のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)を対象に住民ベースの調査を行い明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表された。英国では2000年に、「2010年までに75歳未満のCHD死亡率を5分の2に引き下げる」との目標を立て、すでに実現したのだが、PCT間のCHD死亡率に格差があるという。調査は、格差の要因を見つけることを目的に行われた。CHD死と、各トラストの集団特性、医療サービス特性との関連を分析研究グループは、英国内152のPCT(2008年時点の登録患者数:5,430万人)について、2006~2008年のCHDの年齢調整死亡率と、各PCTの集団特性(貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合)や提供する医療サービス特性(プライマリ・ケアサービス提供量、高血圧検出率、P4Pデータ)との関連について、階層的回帰分析を行った。CHDの年齢調整死亡率は、ヨーロッパ基準人口10万当たり2006年が97.9人(95%信頼区間:94.9~100.9)、2007年が93.5人(同:90.4~96.5)、2008年が88.4人(同:85.7~91.1)だった。年間の減少率は、10万人当たり約5人だった。貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合と正の相関、高血圧検出率と負の相関調査期間3年間を通じて、集団特性のうち、貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合の4項目が、CHD死亡率と正の相関が認められた。一方で、医療サービス特性のうち、高血圧検出率が、同死亡率と負の相関が認められた(各年の補正後決定係数は、2006年がr2=0.66、2007年がr2=0.68、2008年がr2=0.67)。なお、人口10万人当たりのプライマリ・ケア医数やスタッフの労働時間など、その他の医療サービス特性とCHD死亡率には、有意な相関は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4920.

講師 斎藤充先生「骨粗鬆症治療「50%の壁」を打破する「骨質マーカー」」

日本整形外科学会認定専門医、日本骨粗鬆症学会評議員など多数の学会所属、役員・評議員を務める。骨質研究会世話人。日本における骨粗鬆症関連研究では多くの研究奨励賞受賞、主にコラーゲンと骨質関連の基礎研究および臨床研究を得意とする関節外科医。高齢化の波で患者は増加、治療は「50%の壁」に阻まれている骨粗鬆症の患者さんは現在約1,100万人いるといわれています。60歳以上では約半数の方に症状が見受けられます。私は外来で400人くらいの患者さんを診ていますが、その他、郊外型の病院でも約400人の患者さんを受け持っています。しかし、約1,100万人のうち15%ほどの患者さんしか治療されておらず、残りの約85%は骨折しやすい状況にあるのにもかかわらず治療されていません。医師の骨粗鬆症に対する認識不足と、高齢者の急増も相まって、治療が追いついていないのが現状です。高齢者は骨粗鬆症がきっかけで寝たきりになる確率が高く、同時に死亡の危険性が高まるため治療すべき疾患であり、高齢者医療の大きな問題の一つになっています。骨粗鬆症による骨折を起こされた方は、骨折のない方に比べて、死亡のリスクは8倍も上昇します。これまで、骨粗鬆症の治療にあたっては、骨密度を高める薬剤の処方のみで、他にこれといった治療が施されていませんでした。しかし、骨密度が改善したにもかかわらず新たに骨折を起こしてしまう方が少なくありません。これが「治療効果の50%の壁」です。人間にいろいろなタイプの人がいるように、骨粗鬆症にもいろいろなタイプがあり、その人に合う治療を考えなくてはいけません。そのような理解を踏まえて、私たちの研究により骨の強さは、骨密度すなわちカルシウムの量の問題だけで説明できないことがわかってきたのです。私たちはここから骨の量や密度だけではなく、「骨の質」が重要ということを発見しました。私は、整形外科の長年の診療経験の中で、手術で骨を触りすべての患者さんは個々に違う骨を持っていることを実感しました。人間の体の中で、骨だけを治療しても何の解決にもつながらないのです。臨床医は、現場で患者さんを直接診察し、治療して疑問点を基礎研究に展開し、その原因を突き止めることができます。骨粗鬆症は3つのタイプに区別される骨の強さは骨密度だけではないということは、整形外科医には一般的に知られていましたが、今まで骨の質、またその質を具体的に評価するものさしがありませんでした。私は、整形外科医として、骨や血管・軟骨・腱といった組織を支えるコラーゲンの研究をしていました。コラーゲンに分子レベルで過剰な老化産物が蓄積している患者さんは、骨にカルシウムが蓄積されていても、骨や血管がもろく、骨折や動脈硬化を同時に発症することを見出しました。そこで、遺伝子の研究と並び蛋白質の老化について世界初となる分析装置を独自に開発・研究し、骨の質を評価するマーカー「骨質マーカー」を作り上げました。骨質マーカーはコラーゲンの老化産物そのものを測定、患者さんの全身のコラーゲンの老化状態を判別します。コラーゲンは、鉄筋コンクリートの鉄筋、骨密度はコンクリートに相当するため、錆びの程度を骨質マーカーで評価することで患者さんの体質に合ったテーラーメイド治療ができます。骨質マーカーで判別できる骨粗鬆症の患者さんの3つのタイプI、「骨質劣化型」……骨密度が高く骨質が悪いII、「低骨密度型」……骨密度が低く骨質が良いIII、「低骨密度+骨質劣化型」……骨密度・骨質ともに低い「骨密度が高く骨質の良い人」に比べて、Iのタイプでは1.5倍、IIでは3.6倍、IIIのタイプは7.2倍も骨折の危険性が高くなることが判明しています。糖尿病、高血圧、動脈硬化、腎機能障害、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの患者さんは、全身性のコラーゲンに過剰老化が生じるため、骨のコラーゲンの錆びにより、骨密度が高くても骨質劣化型骨粗鬆症と診断できます。骨密度を高める薬剤以外に、骨質を改善するエストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)や、各種ビタミン類(ビタミンB群、葉酸、ビタミンK・D)の併用も、骨密度と骨質を同時に改善できます。SERMsとの併用は一般的には行われないため、保険適応のあるビタミン剤を併用するのがよいでしょう。骨質の良悪は、血液・尿検査で、血中のホモシステインという悪玉アミノ酸の測定、コラーゲンの老化産物(ペントシジン)の測定による2つの評価が有効です。「骨質マーカー」は、誰も研究していなかった分野から生まれた私には中学・高校とサッカーのインターハイ・国体の選手として活躍した経験があります。そのため、自然とスポーツ医学を勉強したいと考えるようになりました。当時、慈恵医大はスポーツ医学に関して他大学より一歩リードしていたという理由から入学を決断しました。しかし、スポーツ医学を学ぶ前に運動器疾患の基礎となる整形外科を学ばなくてはいけませんでした。整形外科医として学んでいる間に、世間は高齢化と共ともに骨粗鬆症患者が急増、手術執刀で様々なタイプの骨を観察することにより、骨の強さは量や密度ではなく、質が重要であると実感しました。同時に、何が原因で骨質が悪くなり骨折するのかと疑問が湧いてきたのです。そこで、手術治療で患者さんの骨を触り、元々骨がもろい人、堅い人もいる骨の体質に注目しました。病態の解明のため患者さんの骨にどんな違いがあるのかと漠然と考えていました。そんな時、コラーゲンの研究を多く手がけた教授から、昔行っていたコラーゲンの研究を引き継ぐようにいわれましたが、ゲノム・遺伝子研究が全盛の時代、コラーゲンと蛋白質の研究にはまったく興味を持てませんでした。師に従い研究を始めましたが、コラーゲンの研究は楽ではなかったので、独自に分析装置を開発しました。この分析装置の開発がきっかけとなり今日の骨質低下の機序の解明からバイオマーカーの発見に至ったわけです。世界中の研究者は、手間のかかるコラーゲンの研究には手を出さずキットさえあればできる遺伝子解析に没頭していた当時からすると、私としては、まさか15年後にこんな発見に繋がるとは夢にも思いませんでした。私は、臨床医として患者さんの治療、日々実験を続けるうちに、コラーゲンの老化が進行しやすい患者さんは、骨密度が高くても骨折や動脈硬化を同時に発症することに気づきました。そして,コラーゲンの過剰老化こそ、骨質低下の本体であることを突き止めました。長年の無駄に思える実験や臨床経験は、今思えば何一つ無駄ではありませんでした。「無駄こそ大事な引き出し」で、今では世界のライバル達から、どのような質問をされても誰にも負けない豊富な引き出しのおかげで返答し戦うことができます。私は、この臨床を行いながら行う基礎研究という日本独自のスタイルは、世界と戦うためにも良いシステムだと思っています。臨床研究の発表、研究が世界で認知されるためには誰も注目していなかった骨質とコラーゲンの密接な関係と体全体の老化が、世間で話題になり始めたころ、この臨床研究の分野で分子レベルから患者さんの臨床データまで持っていたのは私だけでした。その圧倒的な引き出しの数は世界のどのチームにも負けませんでした。そして、世界中の研究者たちが、ポストゲノムの時代に突入し、ようやく蛋白質の研究に目を向け出したころ、我々のデータの正当性が次々と世界から追認され、妥当性が証明されました。せっかくのデータを埋もれさせないために、私はその成果を世界の研究者に知ってもらう手立てとして、必死に英文の研究論文を執筆していきました。ある欧米の教授に「世界と戦うためには、同じサッカー場に入らなくてはいけない。そのために日々、スパイクを磨き、技術を磨け。今、君はそのすべてを備えた。自信を持ってフィールドに入ってきなさい。Trust your Brain !!」と。海外留学の経験のない私でも、英語論文を発表することで、世界はよい仕事には正しい評価をしてくれるのだと思いました。今では、骨研究の名だたる英文雑誌から総説執筆の依頼を受けるなど、オピニオンリーダーになることができました。十数年、地道に頑張ってきたことが報われた、と感じています。最先端のことも大切ですが、地道に継続することが大事でしょう。現在、研究で発見した基礎的、臨床的事実は、診療ガイドラインに盛り込まれるようになり、臨床に役立つ基礎研究ができたと自負しています。今後の骨粗鬆症の治療において、骨質マーカーの測定が一般的になり、適切な治療をされてない患者さんがいなくなることを祈ります。臨床研究は目の前にあるもの、標準は世界へ地道で長い研究生活でしたが、数年前まで研究はあまり楽しいとは思えませんでした。世間に認知されるために様々な臨床的事実を把握し、基礎研究で解明できないかを自分で考えてきました。私の研究はすべてを自分たちで行っています。町工場ともいえるような時間と手間が他の研究チームと比べて数倍かかり、決して楽ではありません。データを取り、積み重ねていくことで、知られていた理論を提唱づけることができ、社会的にも認知されるわけです。しかし、これは臨床医だからできることですね。海外留学をして論文を書き、華々しくこれから活躍したいという方もおられると思います。しかし、長くは続かず消えていく方も多く見てきました。また、先端医療など新しいことに飛びつきたくなる時が必ずありますが、そうではない研究課題でも、どこかに宝は隠れているものです。私の場合、研究が進むにつれ、知識という引き出しが多くなり、いつの間にか、どんな質問、疑問にも答えられるようになっている自分に気が付くことができました。どんな研究でも地道に頑張っていれば、必ず花が開き患者さんのためになるでしょう。いくら有名な先生のもとで研究室の一つの歯車の一つとして動いて立派な論文を作成したとしても、その後の自分自身のアイデアで研究が立案できるか、それを世界というフィールドにもっていけるかが大切なのです。良いアイデアを持ち研究を続けていくことができるのかにかかっています。情熱を注げるもの、テーマに出会えた時、患者さんの治療に生かすことができるのなら医師として研究者として幸せだと思います。そして、世間で認知され、国内からそれは世界へと道が続いていきます。あなたの目の前には研究すべきテーマ、やらなければいけないことがあるかもしれません。それが面白いと思えば、人に伝えることも容易になり、プレゼンもきっとうまくなります。自分の分野が明確化し、その分野での自分の地位を築くことにつながるでしょう。質問と回答を公開中!

検索結果 合計:5042件 表示位置:4901 - 4920