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コロナ後遺症、6~11歳と12~17歳で症状は異なるか/JAMA

 米国・NYU Grossman School of MedicineのRachel S. Gross氏らは、RECOVER Pediatric Observational Cohort Study(RECOVER-Pediatrics)において、小児(6~11歳)と思春期児(12~17歳)の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)を特徴付ける研究指標を開発し、これらの年齢層で症状パターンは類似しているものの区別できることを示した。これまでPASC(またはlong COVID)に関する研究のほとんどは成人を対象としたもので、小児におけるPASCの病態についてはあまり知られていなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月21日号掲載の報告。6~11歳の約900例と12~17歳の約4,500例について解析 RECOVER-Pediatricsコホート研究は、4つのコホートで構成され、前向き研究と後ろ向き研究を併合して解析した。今回は、SARS-CoV-2感染歴の有無にかかわらず医療機関および地域から新規に募集した0~25歳の参加者を含むde novo RECOVERコホートと、米国最大の思春期の脳の発達に関する長期研究であるAdolescent Brain Cognitive Development(ABCD)コホートのデータの解析結果が報告された。 対象は2022年3月~2023年12月に登録された6~17歳の、初感染日が明らかなSARS-CoV-2感染既往者(感染群)と、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗体陰性が確認された非感染者(非感染群)であった。 9つの症状領域にわたる89の遷延症状に関する包括的な症状調査を行った。 主要アウトカムは、COVID-19パンデミック以降に発症または悪化した、調査完了時(感染後少なくとも90日以上)の4週以上持続する症状とした。4週以上続く症状を有していたが調査完了時に症状がなかった場合は、対象に含まなかった。 小児898例(感染群751例、非感染群147例)および思春期児4,469例(感染群3,109例、非感染群1,360例)が解析対象集団となった。背景は、小児が平均年齢8.6歳、女性49%、黒人またはアフリカ系アメリカ人11%、ヒスパニック系、ラテン系またはスペイン人34%、白人60%、思春期児がそれぞれ14.8歳、48%、13%、21%、73%であった。初感染から症状調査までの期間の中央値は、小児で506日、思春期児で556日であった。小児は神経認知症状、疼痛、消化器症状、思春期児は嗅覚/味覚障害、疼痛、疲労が多い 小児では感染者の45%(338/751例)、非感染者の33%(48/147例)、思春期児ではそれぞれ39%(1,219/3,109例)、27%(372/1,369例)が、持続する症状を少なくとも1つ有していると報告した。 性別、人種、民族で調整したモデルにおいて、小児と思春期児の両方で非感染者と比較して感染者で多くみられた症状(オッズ比の95%信頼区間下限が1を超えるもの)は14個あり、さらに小児のみでみられた症状は4個、思春期児のみでみられた症状は3個であった。これらの症状はほとんどすべての臓器系に影響を及ぼしていた。 感染歴と最も関連の高い症状の組み合わせを特定し、小児と思春期児のPASC研究指標を作成した。いずれも、全体的に健康や生活の質の低下と相関していた。小児では神経認知症状、疼痛、消化器症状、思春期児では嗅覚や味覚の変化や消失、疼痛、疲労に関連する症状が多かった。 クラスタリング解析により、小児では4個、思春期児では3個のPASC症状表現型(クラスター)が同定された。両年齢群ともに症状の負荷が大きいクラスターが1個存在し(成人と同様)、疲労と疼痛の症状が優勢なクラスターも同定された。その他のクラスターは年齢群で異なり、小児では神経心理および睡眠への影響を有するクラスター、消化器症状が優勢なクラスターが、思春期児では、主に味覚と嗅覚の消失を有するクラスターが同定された。

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医師偏在に対する6項目の考え方/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、「医師偏在に対する日本医師会の考え方」について、過去の地域医療と医師会の取り組みや実績を辿りつつ、今後の医師偏在への医師会の取り組みについて、その考え方を説明した。 会見では松本会長が、日本医師会は、地域のかかりつけ医として自院の診療や在宅診療以外に「地域の時間外・救急対応」、「行政・医師会などの公益活動」、「地域保健・公衆衛生活動」、「多職種連携(訪問診療などの在宅医療ネットワークへの参画など)」、「その他(看護師・准看護師養成所、種々の診断書の作成など)」の活動を地域と連携して行い、住民の健康を守るため、それぞれの地域を面として支えてきたことを説明した。 そのうえで、「医師偏在については、解決のためあらゆる手段を駆使して複合的に対応していく必要がある」と簡単な解決策はないことを示唆し、「超高齢・人口減少社会を迎える中で、医師会も医師偏在対策に主体的かつ積極的に取り組み、地域医療の強化につなげていくとともに、都道府県における議論とこれまでの取り組みを引き続き充実させていく」として、以下6項目の取り組みを提示した。【医師偏在に対する日本医師会の考え方】(1)公的・公立病院の管理者要件 現在、2020年度に臨床研修を開始した医師から適用されている医師少数区域勤務経験を求める地域医療支援病院の管理者要件の対象病院を、今後医師免許を取得する医師のキャリア形成などに十分に配慮した上で、公的・公立病院にも拡大する。 臨床研修医への導入や、いわゆる後期研修医などの若手医師の研修で、医師少数地域での研修期間をのばすプログラムも検討する。(2)医師少数地域の開業支援など 医師少数地域において新たに診療所を開設する医師に対して、開設から一定期間の資金支援策を創設するとともに、医師少数地域で働く医師(勤務医・開業医)の確保・派遣を強化する。(3)全国レベルの医師マッチング支援 医師不足地域での勤務を希望する医師に対し、リカレント研修や現場体験を行いつつ、医師少数地域での勤務を全国的にマッチングする仕組みを創設する。(4)保険診療実績要件 保険医療機関の管理者として、卒後一定期間の保険診療実績の要件を加え、保険診療の質を高める。(5)地域医療貢献の枠組み推進 現行の地域に必要とされる医療機能を担うことへの要請の枠粗みを制度化し、地域で足りない医療機能を強化し、実績をフォローアップする仕組みを導入する。(6)医師偏在対策基金の創設 上記の施策を5~10年で推進するための1,000億円規模の基金を国において創設する。 とくに(1)では、管理者要件を緩和して拡大することに加え、研修プログラムの工夫とモチベーションの向上について整備すること、(2)では、地域の重要なクリニックなどの継承にも対応すること、(3)では、医師会の「女性医師支援センター」のノウハウを活用して、医師のマッチングにつなげること、(4)では、わが国の医療の根幹は保険医療であることから、保険医の経験を管理者要件として重視すること、(5)では、医師会の種々の取り組みを今後もフォローアップすること、(6)では、国に対して要望し、実現に向けて働きかけを行うことを各項目ごとに解説した。

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X世代とミレニアル世代でがん罹患率が上昇

 X世代(1965年から1980年の間に生まれた世代)とミレニアル世代(1981年から1990年代半ば頃までに生まれた世代)でがん罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかにされた。若い世代ほど、34種類のがんのうちの17種類の罹患率が上昇していることが示されたという。米国がん協会(ACS)のサーベイランス・健康公平性科学の上級主任研究員であるHyuna Sung氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Public Health」8月号に掲載された。 今回の研究でSung氏らはまず、2000年1月1日から2019年12月31日の間の、34種類のがんの罹患率と25種類のがんによる死亡率のデータを入手した。このデータは、2365万4,000人のがん罹患者と734万8,137人のがんによる死亡者で構成されていた。Sung氏らは、これらの人を、1920年から1990年までの5年ごとの出生コホートに分け、出生コホート間でがんの罹患率比(IRR)と死亡率比(MRR)を計算して比較した。 その結果、世代を追うごとに34種類のがんのうちの17種類でIRRの増加傾向が認められ、このうちの8種類のがんでは出生コホートの影響が有意であることが示された。特に、男女にかかわらず、1990年生まれのコホートの小腸がん、腎臓・腎盂がん、および膵臓がんのIRRは1955年生まれのコホートの2〜3倍に達していた(IRRは同順で、3.56、2.92、2.61)。また、女性では、肝臓がん・肝内胆管がんのIRRも2倍であった(IRR 2.05)。さらに、残りのエストロゲン受容体陽性乳がん、子宮体がん、大腸がん、非噴門部胃がん、胆嚢がん・その他の胆管がん、卵巣がん、精巣がん、男性の肛門がん、男性のカポジ肉腫の9種類のがんについては、古い世代で減少傾向が認められた後に、若い世代での増加傾向が認められた。がんの罹患率が最も低い世代と比べた1990年生まれのコホートでの罹患率上昇には、卵巣がんでの12%から子宮体がんでの169%までの幅があった。 MRRは、肝臓がん・肝内胆管がん(女性)、子宮体がん、胆嚢がん・その他の胆管がん、精巣がん、大腸がんについては、若い出生コホートでIRRの増加に伴い増加が認められたが、ほとんどのがん種で、若い出生コホートでのMRRは減少するか一定であった。 Sung氏は、「これらの知見は、最近増加しつつある、ベビーブーマー以降の世代でのがんリスクの増加を示すエビデンスに新たに加わるものだ。これまで、若年発症の大腸がんといくつかの肥満関連のがんの若い世代での発症増加が報告されていたが、今回の結果は過去のこの知見を広げる、より広範ながん種を網羅している」と述べている。 本論文の上席著者である、ACSのサーベイランス・健康公平性科学のシニアバイスプレジデントであるAhmedin Jemal氏は、「このような若年層におけるがん死亡率の増加は、がんリスクの世代交代を示すものであり、しばしば、国が今後追うことになるがん負担の早期指標となる」と述べている。またJemal氏は、「このデータは、X世代とミレニアル世代における根本的なリスク因子を特定し、予防戦略に反映させる必要性を強調するものだ」と主張する。 本研究には関与していない、ACSがんアクションネットワーク(ACS CAN)会長のLisa Lacasse氏は、「この研究結果は、米国の中年および若年層における包括的なヘルスケアの必要性をも浮き彫りにするものだ。若い世代でのがんの負担増加は、がんの転帰の重要な要因である手頃な包括的医療保険へのアクセスを年齢を問わず全ての人に保証することの重要性を強調している」とACSのニュースリリースで述べている。

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英語で「オブラートに包む」は?【1分★医療英語】第145回

第145回 英語で「オブラートに包む」は?《例文1》I did not sugarcoat anything when I obtained informed consent.(インフォームドコンセントを得た際には、まったくオブラートに包まず話しました)《例文2》I will be always honest with you.(私は、常にあなたに対して正直に接します)《解説》医療現場では、患者に対してがん診断などの重大な告知をすることがあります。その状況でよく使われる日本語の表現に「オブラートに包んで話す」があります。この表現を英語に訳すのは難しいと思われるかもしれませんが、実は適切な類似語があり、感覚的にはほぼ直訳することが可能です。“sugarcoat”という英語表現は、「砂糖で物質の表面をコーティングする」ことを意味し、苦い薬を飲みやすくするために使用される動詞です。そのため、“sugarcoat”は「受け入れ難い内容を、直接的でない言い方で伝える」という意味もあります。一方、オブラートはゼラチン質の薄い膜で、苦い薬を包んで飲みやすくするために使われることから、日本語の「オブラートに包む」という表現の由来となっています。単語自体は異なりますが、その由来は驚くほど類似しています。ほかの類似表現としては、“be honest with someone”があります。直訳すると、「相手に対して正直である」という意味です。講師紹介

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麻酔科「麻酔維持期はアタマを使え!」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第8回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための麻酔科ベーシックより、鈴木昭広先生の「麻酔維持期はアタマを使え!」を鑑賞します。実は民谷先生の研修時代の指導医である鈴木先生。軽妙でわかりやすいレクチャーでは医師としての心得も学べます。

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重篤な薬疹を起こしやすい経口抗菌薬は?/JAMA

 一般的に処方される経口抗菌薬の中には、マクロライド系薬と比較して救急外来受診または入院に至る重篤な皮膚有害反応(cADR)のリスクが高い薬剤があり、とくにスルホンアミド系とセファロスポリン系で最も高いことが、カナダ・トロント大学のErika Y. Lee氏らによるコホート内症例対照研究の結果で示された。重篤なcADRは、皮膚や内臓に生じる生命を脅かす可能性のある薬物過敏症反応である。抗菌薬はこれらの原因として知られているが、抗菌薬のクラス間でリスクを比較した研究はこれまでなかった。結果を踏まえて著者は、「処方者は、臨床的に適切な場合はリスクの低い抗菌薬を優先して使用すべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年8月8日号掲載の報告。経口抗菌薬のクラスと重篤なcADRの関連性について解析 研究グループは、2002年4月1日~2022年3月31日に、カナダ・オンタリオ州の行政保健データベースを用いて、コホート内症例対照研究を実施した。データソースは、65歳以上のオンタリオ州住民に処方された外来処方薬のデータを含むOntario Drug Benefit database、救急外来受診の詳細情報を含むCanadian Institute for Health Information(CIHI)National Ambulatory Care Reporting System、入院患者の診断と治療のデータを含むCIHI Discharge Abstract Database、オンタリオ州健康保険(Ontario Health Insurance Plan)データベースである。ICES(旧名称:Institute for Clinical Evaluative Sciences)でこれらのデータを個人レベルで連携し、分析した。 対象は、少なくとも1回経口抗菌薬を処方された66歳以上の患者で、このうち、処方後60日以内に重篤なcADRのため救急外来を受診または入院した患者を症例群、これらのイベントがなく各症例と年齢と性別をマッチさせた患者(症例1例当たり最大4例)を対照群とした。 主要解析では、条件付きロジスティック回帰分析を用い、マクロライド系抗菌薬を参照群として、抗菌薬のクラスと重篤なcADRとの関連を評価した。スルホンアミド系とセファロスポリン系で重篤なcADRのリスク大 20年の研究期間において、症例群2万1,758例、対照群8万7,025例を特定した(両群とも年齢中央値75歳、女性64.1%)。 多変量調整後、スルホンアミド系抗菌薬が重篤なcADRと最も強く関連しており、マクロライド系抗菌薬に対する補正後オッズ比(aOR)は2.9(95%信頼区間[CI]:2.7~3.1)であった。次いで、セファロスポリン系(2.6、2.5~2.8)、その他の抗菌薬(2.3、2.2~2.5)、ニトロフラントイン系(2.2、2.1~2.4)、ペニシリン系(1.4、1.3~1.5)、フルオロキノロン系(1.3、1.2~1.4)の順であった。 重篤なcADRの粗発現頻度が最も高かったのはセファロスポリン系(処方1,000件当たり4.92、95%CI:4.86~4.99)で、次いでスルホンアミド系(3.22、3.15~3.28)であった。 症例群2万1,758例のうち重篤なcADRで入院した患者は2,852例で、入院期間中央値は6日(四分位範囲[IQR]:3~13)、集中治療室への入室を要した患者は273例(9.6%)で、150例(5.3%)が病院で死亡した。 なお、著者は研究の限界として、ICD-10コードを使用してcADRを特定したが重篤なcADR専用のコードはなく本研究固有の定義を作成したこと、cADRを引き起こす可能性のある非ステロイド性抗炎症薬などの市販薬の使用については調査できなかったことなどを挙げている。

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日本発の論文数は横ばい、博士課程への進学者は微増/文科省

 文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の科学技術予測・政策基盤調査研究センターが毎年発行している『科学技術指標2024』が公開された。 この指標は、わが国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき、体系的に把握するための基礎資料であり、科学技術活動を「研究開発費」、「研究開発人材」、「高等教育と科学技術人材」、「研究開発のアウトプット」、「科学技術とイノベーション」の5つのカテゴリーに分類、約160の指標で状況を表している。 2024年版の主要な指標では、産学官を合わせた研究開発費、研究者数は主要国(日米独仏英中韓の7ヵ国)中第3位、論文数(分数カウント法)は世界第5位だった。注目度の高い論文を見るとTOP10%・TOP1%補正論文数で第13位・第12位であり、いずれについても昨年と同順位だった。また、博士課程入学者数は長期的に減少していたが、2023年度に対前年度比4.4%増加した。特許数は6.7万件で世界1位 主要指標におけるわが国の動向は次のとおり。・研究開発費:3位(前年3位)19.1兆円(参考:1位 米国、2位 中国)・研究者数:3位(前年3位)70.6万人(参考:1位 中国、2位 米国)・論文数(分数カウント):5位(前年5位)7.2万件(参考:1位 中国、2位 米国、3位 インド、4位 ドイツ)・Top10%補正論文数(分数カウント):13位(前年13位)3.7千件(参考:1位 中国、2位 米国、3位 英国、4位 インド、5位 ドイツ、6位 イタリア、7位 オーストラリア、8位 カナダ、9位 韓国、10位 フランス、11位 スペイン、12位 イラン)・Top1%補正論文数(分数カウント):12位(前年12位)3.1百件(参考:1位 中国、2位 米国、3位 英国、4位 ドイツ、5位 イタリア、6位 インド、7位 オーストラリア、8位 カナダ、9位 フランス、10位 韓国、11位 スペイン)・特許(パテントファミリー)数:1位(前年1位)6.7万件(参考:2位 米国、3位 中国)・居住国以外への商標出願数(クラス数):6位(前年6位)12.0万件(参考:1位 米国、2位 中国、3位 ドイツ、4位 英国、5位 フランス)特許の出願数は世界1位だがシェアは低下傾向 「2024年版の全体傾向」によると、企業・大学部門の研究開発費は、米国が主要国中1番の規模であり、両部門ともに2010年代に入って伸びが大きくなった。わが国の政府負担分は同時期に44%増加し、企業部門全体における重みは小さいが、研究開発費の増加には政府部門の寄与もある。大学部門では、2000年代に入ってから、ほぼ横ばいに推移しており、この間に中国、ドイツ、英国がわが国を上回っていた。 「高等教育と科学技術人材の状況」では、わが国の大学院への入学者数が伸び悩んでいたが、修士課程入学者数は2020年度を境に増加。大学院修士課程の入学者数は、2023年度は対前年度比1.4%増の7.7万人だった。そのうち社会人の割合は9.3%。大学院博士課程の入学者数は2003年度をピークに長期的には減少傾向にあったが、2023年度は増加し1.5万人、対前年度比4.4%増(うち社会人は0.6万人で、対前年度比は3.9%)。大学院博士課程の男女別入学者数は、ピーク時と比較すると女性は4%減であるのに対して、男性は24%減で、男女ともに「自然科学」系の方が「人文社会科学・その他」系より多かった。博士号取得者数は、2006年度をピークに減少傾向、2010年代半ばからほぼ横ばいに推移していたが、近年微増している。2021年度の日本の博士号取得者数は1万5,767人、主要専攻別では「保健」が最も多く6,796人と全体の43.1%を占めた。 「研究開発のアウトプットの状況」では、論文数(分数カウント法)は世界第5位、注目度の高い論文をみるとTop10%・Top1%補正論文数で第13位・第12位であり、中国はすべての論文種別で世界第1位だった。国際共著論文割合は上昇基調であるが、2020年頃から、すべての分野で低下し、主要国の中でも中国の低下が大きい。論文の各分野の2022年時点の割合は、環境・地球科学は33.1%、物理学では32.9%であり、他分野に比べ国際共著論文割合が高かった。臨床医学は22.9%であり、国際共著論文割合が1番低かった。 「パテントファミリー(2ヵ国以上への特許出願)数」では、世界第1位を保っているが、世界シェアは2000年代半ばから低下傾向。中国は2017~19年で世界第3位であり、着実にその数を増やしている。

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現金給付は、医療アクセスを改善するか/JAMA

 貧困は医療へのアクセスの大きな障壁となり、健康アウトカムの悪化と関連することが知られている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSumit D. Agarwal氏らは、現金給付が医療サービス利用と健康にベネフィットをもたらすかを無作為化試験で調べた。現金給付を受けた人では、とくに精神疾患や物質使用障害(substance use disorder:SUD)に関連した理由での救急外来の受診が有意に減少し、入院に至った救急外来の受診の減少や専門外来の受診の増加もみられた。著者は、「試験の結果は、所得支援の提供で貧困を軽減しようとする政策が、健康および医療アクセスに大きなメリットをもたらす可能性があることを示唆するものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年7月22日号掲載の報告。月額最大400ドルを給付、主要アウトカムは救急外来の受診 本試験は、マサチューセッツ州ボストン近郊の低所得者コミュニティであるチェルシー市が、現金給付を受ける人を抽選により選ぶ無作為化法にて行われた。2020年9月17日に抽選を行い、当選者には市庁舎でデビットカードを配布した。入金は、初回が同年11月24日、その後8ヵ月間に毎月行われ、当選者には月額最大400ドルが給付された。デビットカードの使用はVisaが使える場所ならどこでも可能であった。参加者の医療記録は、複数の医療システムと結び付いていた。 2020年11月24日~2021年8月31日の介入期間にアウトカムを評価。主要アウトカムは、救急外来の受診であった。副次アウトカムは、4つのタイプ別にみた救急外来の受診(入院に至った受診、精神疾患またはSUD[アルコール、薬物]に関連した受診、SUDに関連した受診、回避可能だった救急外来受診[緊急性の低い状況で治療できた可能性のある受診])、外来全体および専門外来の利用状況、COVID-19ワクチン接種、コレステロール値などのバイオマーカーなどであった。現金給付により救急外来の受診が有意に減少 抽選に応募したのは2,880例で、平均年齢45.1歳、女性が77%を占めた。 現金給付を受ける群に割り付けられた1,746例は対照群と比較して、救急外来の受診が有意に少なかった(217.1 vs.317.5件/1,000人、補正後群間差:-87.0件/1,000人[95%信頼区間[CI]:-160.2~-13.8])。これには、精神疾患またはSUD関連の受診(-21.6件/1,000人[-40.2~-3.1])、SUD関連の受診(-12.8件/1,000人[-25.0~-0.6])および入院に至った受診(-27.3件/1,000人[-53.6~-1.1])の減少が含まれた。 現金給付は、すべての外来受診(424.3件/1,000人[95%CI:-118.6~967.2])、プライマリケア受診(-90.4件/1,000人[-308.1~127.2])、精神疾患またはSUDの専門外来受診(83.5件/1,000人[-182.9~349.9])には、統計学的に有意な影響を及ぼさなかった。 その他の専門外来受診は、対照群と比較して現金給付群でより多く(303.1件/1,000人[95%CI:32.9~573.2])、とくに車を持たない人で多かった。 現金給付は、COVID-19ワクチン接種、血圧、体重、グリコヘモグロビン、コレステロール値には、統計学的に有意な影響を及ぼさなかった。

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第226回 東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(前編)「金銭に対する強い執着心」のワンマン理事長、「いずれ辞任するが、今ではない」と最後に抗うも解任

第三者委員会の調査報告書公表後、臨時理事会で岩本理事長解任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は高校野球観戦三昧でした。知人に早稲田実業OB、OGが多いため、早実の試合を中心にテレビで観たのですが、8月15日の鶴岡東高校戦、17日の大社高校戦ともに好試合で高校野球の面白さを満喫しました。早実はいずれの試合も相手校の好投手を打ちあぐね、西東京大会では爆発(準々決勝以降10点以上得点)していた打線が沈黙していたのが印象的でした。それにしても、大社高校戦で9回裏に早実が敷いたスクイズ警戒のための内野5人シフト(左翼手を投手の右斜め前に配置)には驚きました。しかもそれが的中してタイブレークに持ち込むとは…。最終的に早実は負けてしまいましたが、歴史に残るであろう名試合でした。さて今回は、再び東京女子医大(東京都新宿区)を取り上げます。本連載でも、「第207回 残された道はいよいよ身売りか廃校・学生募集停止か? ガバナンス崩壊、経営難の東京女子医大に警視庁が家宅捜索」、「第219回 女子医大のXデー近づく?警視庁の家宅捜索の次は、卒業生の教員への採用・昇格に寄付金要請、推薦入試での寄付金受け取りも発覚」などで度々書いてきたワンマン理事長、岩本 絹子氏が招いた東京女子医大の数々な問題は、第三者委員会の調査報告書公表、臨時理事会での理事長解任をもって次なるフェーズに入ったようです。私も調査報告書1)を読んでみたのですが、大学経営のことは二の次、三の次にして、私腹を肥やすことばかりに注力してきた前理事長の経営姿勢は本当に呆れるほかありません。また、前理事長の暴走を長年黙認してきた大学の理事会や、評議員会も大いに責められるべきでしょう。同窓会組織・至誠会と学校法人の不適切な資金支出を指摘、寄付金を重視する推薦入試や人事のあり方も問題視東京女子医大の同窓会組織・至誠会を巡って不透明な資金支出等があった問題で、同大が設置した第三者委員会(委員長=山本 秀明弁護士)は調査報告書をまとめ、8月2日に公表しました。調査報告書は至誠会の不適切な資金支出を指摘するだけでなく、学校法人の不適切な資金支出も指摘、さらに寄付金を重視する推薦入試や大学の人事のあり方も問題視しました。そして、その根本原因として、同大は岩本前理事長に権限が集中する「一強体制」で「ガバナンス機能が封鎖された」と指摘しました。日本経済新聞等の報道によれば、委員長の山本弁護士は2日の記者会見で、岩本氏について「問題が明るみに出ても説明責任を果たさず、不満分子の鎮圧に躍起となっていた。非常に問題だと認定した」と語ったそうです。同大は、調査報告書を受け取った直後も、「内部統制・ガバナンスの機能不全の問題を重く受け止め、ステークホルダーの皆様の信頼回復に向けて、本学の理念である『至誠と愛』に今一度立ち返って、組織の改善・改革に全身全霊で取り組んでまいります」という通り一遍のコメントをWebサイトなどで出したのみでした。しかし、8月7日に開かれた臨時理事会において岩本理事長の解任動議が出され、解任が決定しました。そして、新体制発足までの暫定措置として肥塚 直美理事(東京女子医大病院・病院長)が新理事長に選任されました。8月8日付の毎日新聞等の報道によれば、臨時理事会で「理事が岩本氏に辞任を勧告したが、岩本氏は『いずれ辞任するが、今ではない』と拒否。理事長職の解任の動議が提出され、岩本氏を除く10人全員が賛成した」とのことです。その後、8月16日には、東京女子医大の臨時評議委員会が開かれ、岩本氏は同大の理事と評議員からも解任されました。これによって、岩本氏は同大のすべての役職から退くことになりました。また、同日、大学経営及びガバナンス体制の正常化を速やかに進めるために、岩田 喜美枝・元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長らを委員とする「新生東京女子医科大学のための諮問委員会」が設置されています。総額約33億円の工事等を受注した複数社が岩本氏側近関与の3社にコンサル料などの名目で総額約1億数千万円支払う第三者委の調査対象は、本連載の「第207回 残された道はいよいよ身売りか廃校・学生募集停止か? ガバナンス崩壊、経営難の東京女子医大に警視庁が家宅捜索」でも詳しく書いた、学校法人及び至誠会における不透明な資金支出が中心でした。調査報告書の「岩本絹子理事長及び経営統括部による資金の不正支出・利益相反行為の疑義」と題する章では、資金の不正支出・利益相反行為を5つに分類し、その不正の有無を細かく検証しています。至誠会の元職員が元事務長と共謀して、勤務実態がないのに約2,000万円の給与を至誠会から受け取ったとする特別背任容疑で警視庁が3月、理事長室や岩本氏宅など十数カ所を家宅捜索しました。そして、この問題については、元職員と元事務長が大学から業務委託を受けた会社の雇用になった後、同社と至誠会から給与が出ていたとして「二重払い」と指摘、この業務委託は岩本氏に近い2人の利益を図る行為で、過大な報酬だった疑いがあるとしました。また、学校法人の不適切な資金支出についても指摘しました。岩本氏が副理事長に就任した直後の2015年、学校法人は外部企業とコンサルティング契約を結びましたが、この会社は岩本氏の知人が代表でした。法人が支払った600万円の一部が岩本氏側に還流した可能性が高いとしました。さらに、2015年から2023年にかけて学校法人から総額約33億円の工事等を受注した複数社が、岩本氏が経営する江戸川区の葛西産婦人科の関係者であった人物が関与する3社にコンサル料などの名目で総額約1億数千万円が支払われていたことも明らかになりました。この工事費等が還流した疑義について調査報告書は、「3社が受領した金銭のその後の流れ等については本調査の限界から解明に至らなかったところ、銀行取引の状況を把握している警察による捜査によって解明されることを期待したい」としています。この他にも、岩本氏が至誠会から顧問料や現金賞与等の名目で利益を享受していたことや、法人全体として人件費等を積極的に削っていったにもかかわらず岩本氏は自身の報酬を継続的に増額していったことなども指摘しています。ちなみに2016年度1,714万円だった岩本氏の理事長報酬は、2023年度は3,179万円まで膨れ上がっていました。一連の行為について「岩本氏の金銭に対する強い執着心の端をうかがうことができる」と断じています。今年3月に警視庁捜査2課が至誠会、大学本部、葛西産婦人科などを家宅捜索した件についてはまだ捜査中とのことです。今後、特別背任などの罪で、書類送検、起訴の可能性も大いにあると言えるでしょう。至誠会の推薦入試における寄付金の収受は、入試での寄付金の受け取りを禁じた文部科学省通知に反する可能性第三者委員会が調査したもう一つの大きな問題は、「第219回 女子医大のXデー近づく?警視庁の家宅捜索の次は、卒業生の教員への採用・昇格に寄付金要請、推薦入試での寄付金受け取りも発覚」でも書いた推薦入試です。至誠会が持つ枠(約10人)で推薦する生徒を決める際、寄付額が加点要素となっていた点について、調査報告書は、受験生側から至誠会と法人への寄付は、推薦対象者を選ぶための面接の直前2ヵ月間に集中、2019~22年度は受験生側による寄付の年間総額の64%にあたる計3,520万円がこの期間に寄付されていた、としています。寄付の実績がない受験生が計700万円を寄付した受験生に順位で抜かれて推薦を受けられなかった事例や、1回目の面接後、2回目の面接前に至誠会に10万円、法人に300万円を寄付した事例もありました。調査報告書には実際の「面接採点票」が1枚掲載されています。それには「面接での質問・確認事項」の欄に採点者が手書きで「寄付等」と記し、「回答内容」の欄にやはり手書きで「協力をおしまない」と書かれており、「評価」は最高得点の5点となっています。そうした調査結果を踏まえ、調査報告書では、至誠会の推薦入試における寄付金の収受は、入試での寄付金の受け取りを禁じた文部科学省通知に反する可能性がある、としています。「医科大学と大学病院を擁する本法人の理事長としての適格性が備わっていたのかという点について、疑問と言わざるを得ない」と経営面での無能ぶりも指摘また、調査報告書は、東京女子医大卒業生の大学への採用・昇格などにおいて寄付金の多寡等を点数化する「至誠会ポイント」(当時大学副理事長、至誠会代表理事だった岩本氏の提案で2018年にスタート)が評価要素となっていたことについても、「採用・昇進・昇格を望む教員が、寄付を行わなければ採用・昇進・昇格に事実上不利益となると考えていたと認められる。至誠会ポイント制度が事実上寄付を強いる制度になっていたと評価せざるを得ず、この制度が「公正かつ厳格・適切」なものであったとは到底評価することができない」としています。数年前から東京女子医大で問題視されてきたさまざまな事案について、第三者委員会は以上のような結論を下したわけですが、私が調査報告書を読んで興味深かったのは、後半で岩本氏の経営手法について評価した部分です。「そもそも医科大学と大学病院を擁する本法人の理事長としての適格性が備わっていたのかという点について、疑問と言わざるを得ない」とその経営面での無能ぶりをあけすけに記述しています。その内容は医療機関経営、大学医学部経営に携わる人にも参考になりそうです。次回はその内容を紹介したいと思います。(この項続く)参考1)第三者委員会による調査報告書の公表について/東京女子医科大学

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重症敗血症へのアセトアミノフェン、生存日数を改善せず/JAMA

 重症敗血症患者において、アセトアミノフェン(パラセタモール)の静脈内投与は、安全性は高いものの、生存日数および臓器補助(腎代替療法、機械換気、昇圧薬)が不要な日数を改善しないことが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのLorraine B. Ware氏らが実施した「ASTER試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2024年8月6日号で報告された。米国の無作為化第IIb相試験 ASTER試験は、米国の40の病院の救急診療部または集中治療室(ICU)で実施した二重盲検無作為化第IIb相試験であり、2021年10月~2023年4月に参加者のスクリーニングを行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。 年齢18歳以上の敗血症で、呼吸器系または循環器系の臓器障害を有する患者447例(平均年齢64[SD 15]歳、女性51%、平均SOFAスコア5.4[SD 2.5]点)を登録した。被験者を、アセトアミノフェン1gを6時間ごとに静脈内投与する群(227例)、またはプラセボ群(220例)に無作為に割り付け、5日間投与した。 主要エンドポイントは、28日目までの生存日数および臓器補助(腎代替療法、機械換気、昇圧薬)が不要な日数とした。28日間の全死因死亡にも差はない ベースラインで全体の76%の患者が昇圧薬の投与を、42%が補助換気を受けており、登録前に44%がアセトアミノフェンの投与を受けていた。 アセトアミノフェンは安全であり、治療群間で肝酵素値の異常や低血圧の頻度、体液バランスに差はなかった。 28日目までの生存日数および臓器補助不要日数は、アセトアミノフェン群が20.2日(95%信頼区間[CI]:18.8~21.6)、プラセボ群は19.6日(18.2~21.0)であり、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:0.6日、95%CI:-1.4~2.6、p=0.56)。 また、臓器補助の各項目のいずれにも両群間に差はなく、28日間の全死因死亡(アセトアミノフェン群17.5% vs.プラセボ群22.5%、群間差:-5.0%、95%CI:-12.4~2.5、p=0.19)にも差はみられなかった。7日以内のARDSの発生率が有意に改善 15項目の副次アウトカムのうち、7日以内の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発生率のみがアセトアミノフェン群で有意に低く(2.2% vs.8.5%、群間差:-6.3%、95%CI:-10.8~-1.8、p=0.01)、他の項目には両群間に差はなかった。 また、アセトアミノフェン群は、2、3、4日目の総SOFAスコア(いずれもp<0.05)とSOFA凝固系スコア(いずれもp<0.05)の改善度が有意に優れた。 著者は、「本試験の結果で重要な点は、重症敗血症では、アセトアミノフェンの6時間ごとの5日間投与はプラセボに比べ、肝障害のバイオマーカーの異常、全身性低血圧、その他の有害事象の発生率に差がなく安全であったことである」としている。

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英語で「代わりに来ました」は?【1分★医療英語】第144回

第144回 英語で「代わりに来ました」は?《例文1》Good morning, my name is Dr. Smith. I came to see you on behalf of Dr. Yamada while he's away at a conference. How can I assist you today?(おはようございます。スミスと申します。山田医師が学会に出席しているので、代わりに診察に来ました。本日はどうされましたか?)《例文2》Dr. Johnson is here on behalf of Dr. Tanaka to discuss your test results.(ジョンソン先生が田中先生の代わりにあなたの検査結果についてお話しします)《解説》“on behalf of”は、「ほかの医師の代わりに診察を行う」際に使用できる丁寧な表現です。“on behalf of”は「〜の代わりに」「〜を代表して」という意味を持ち、比較的フォーマルな場面で使用されます。この表現は、ビジネスや法律の分野でも頻繁に使用されますが、医療現場においても適切な表現だといえるでしょう。「代表して」というニュアンスがあるので、たとえば、“I would like to thank you on behalf of my team.”(チームを代表して、私がお礼を申し上げたいです)といったようにも使えます。医療現場では急な代診や担当医の変更など、予期せぬ状況が発生することがあります。そのような場面で“on behalf of”を使用することで、専門的かつ丁寧に状況を説明することができます。なお、このような代診のシチュエーションでは、以前に扱った“fill in for”も“I'm filling in for Dr. Yamada today.”のように使えますので、そちらのフレーズとセットで覚えておいていただくとよいでしょう。講師紹介

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腎機能障害患者でも用量調節が不要な抗てんかん薬「ブリィビアクト錠25mg/錠50mg/静注25mg」【最新!DI情報】第21回

腎機能障害患者でも用量調節が不要な抗てんかん薬「ブリィビアクト錠25mg/錠50mg/静注25mg」今回は、抗てんかん薬「ブリーバラセタム(商品名:ブリィビアクト錠25mg/錠50mg/静注25mg、製造販売元:ユーシービージャパン)」を紹介します。本剤は、既存薬の課題であった眠気や精神症状が少なく、腎機能障害患者でも用量調節が不要な薬剤として期待されます。<効能・効果>下記の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。錠 てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)静注一時的に経口投与ができない患者における、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)の治療に対するブリーバラセタム経口製剤の代替療法<用法・用量>錠 通常、成人にはブリーバラセタムとして1日50mgを1日2回に分けて経口投与します。静注ブリーバラセタムの経口投与から本剤に切り替える場合は、通常、ブリーバラセタム経口投与と同じ1日用量および投与回数で、1回量を2~15分かけて静脈内投与します。ブリーバラセタムの経口投与に先立ち本剤を投与する場合は、通常、成人にはブリーバラセタムとして1日50mgを1日2回に分け、1回量を2~15分かけて静脈内投与します。いずれの場合においても、症状により適宜増減できますが、1日最高投与量は200mgです。<安全性>重大な副作用に攻撃性(0.3%)があります。本剤の服用中は、攻撃性、激越、精神病性障害、易刺激性などの精神症状が現れ、自殺企画に至ることがあるので、患者の状態および病態の変化を注意深く観察する必要があります。その他の副作用として、傾眠(14.9%)、浮動性めまい(10.9%)、疲労(3%以上)、易刺激性、不安、不眠症、悪心、食欲減衰、回転性めまい(いずれも1~3%未満)、うつ病、激越、精神病性障害、好中球減少症、便秘、嘔吐、上気道感染、咳嗽(いずれも1%未満)、インフルエンザ、1型過敏症(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に使用されます。脳内の神経の過剰な興奮を鎮めて、てんかん発作を抑えます。2.この薬は、指示どおり飲み続けることが重要です。自己判断で服用を中止したり、量を加減したりすると、発作の悪化やてんかん重積状態が現れることがあります。3.傾眠やめまいなどが起こることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作は行わないようにしてください。4.妊婦または妊娠している可能性がある人は医師に相談してください。5.アルコールを含む飲食物はこの薬に影響しますので、控えてください<ここがポイント!>ブリーバラセタムは2ピロリドン誘導体で、脳内のシナプス小胞タンパク質2A(SV2A)に選択的に結合して、てんかん発作抑制作用を発揮します。作用機序は、レベチラセタム(商品名:イーケプラ)と同様ですが、レベチラセタムに比べてカルシウムチャネルおよびAMPA受容体に対する作用がほとんどなく、SV2Aに対する親和性も高いことから、眠気や精神症状が軽減されることが期待されます。また、レベチラセタムとは異なり、腎機能障害を有する患者での用量調節は不要です。剤形としては錠剤と注射剤がありますが、基本は錠剤です。注射剤は、一時的に経口投与ができない患者における代替療法として、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に使用されます。部分発作を有する成人てんかん患者(アジア人)を対象としたブリーバラセタム併用療法の国際共同第III相試験(EP0083試験)において、治療期間の28日あたりの部分発作回数のプラセボ群に対する減少率は、全体集団で50mg/日群が24.5%および200mg/日群が33.4%であり、いずれの本剤群もプラセボ群との間に優越性が検証されました(それぞれp=0.0005およびp<0.0001、ANCOVA)。また、日本人集団においては、50mg/日群が14.5%および200mg/日群が30.0%であり、全体集団と同様に、いずれの本剤群もプラセボ群と比較して高い減少率でした。しかし、日本人被験者は例数が少ないため、統計解析処理は実施されませんでした。

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腎盂腎炎のときによく使う抗菌薬セフトリアキソンを極める!【とことん極める!腎盂腎炎】第6回

腎盂腎炎のときによく使う抗菌薬セフトリアキソンを極める!Teaching point(1)セフトリアキソンは1日1回投与が可能で、スペクトラムの広さ、臓器移行性のよさ、腎機能での調整が不要なことから、腎盂腎炎に限らず多くの感染症に対して使用される(2)セフトリアキソンとセフォタキシムは、スペクトラムがほぼ同じであるが、投与回数の違い、腎機能での調整の有無の違いがある(3)セフトリアキソンは利便性から頻用されているが、効かない菌を理解し状況に合わせて注意深く選択する必要があることや、比較的広域な抗菌薬で耐性化対策のために安易に使用しないことに注意する(4)セフトリアキソンは、1日1回投与の特徴を活かして、外来静注抗菌薬療法(OPAT)に使用される1.セフトリアキソンの歴史セフトリアキソンは、1978年にスイスのF. Hoffmann-La Roche社のR. Reinerらによって既存のセファロスポリン系薬よりさらに強い抗菌活性を有する新しいセファロスポリンの研究開発のなかで合成された薬剤である。特徴としては、強い抗菌活性と広い抗菌スペクトラムならびに優れたβ-ラクタマーゼに対する安定性を有し、かつ既存の薬剤にはない独特な薬動力学的特性をも兼ね備えている。血中濃度半減期が既存のセファロスポリンに比べて非常に長く、組織移行性にも優れるため、1日1回投与で各種感染症を治療し得る薬剤として、広く使用されている。わが国においては、1986年3月1日に製造販売承認後、1986年6月19日に薬価基準収載された。海外では筋注での投与も行うが、わが国においては2024年8月時点では、添付文書上は認められていない。2.特徴セフトリアキソンは、セファゾリン、セファレキシンに代表される第1世代セファロスポリン、セフォチアムに代表される第2世代セファロスポリンのスペクトラムから、グラム陰性桿菌のスペクトラムを広げた第3世代セファロスポリンである。多くのセファロスポリンと同様に、腸球菌(Enterococcus属)は常に耐性であることは、同菌が引き起こし得る尿路感染や腹腔内感染の治療を考える際には重要である。その他、グラム陽性球菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に耐性がある。グラム陰性桿菌は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Stenotrophomonas maltphilia、偏性嫌気性菌であるBacteroides fragilisはカバーせず、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)も感受性があることが少ない。ESBL(extended-spectrum β-lactamase:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)産生菌やAmpC過剰産生菌といった耐性菌に対しては感受性がない。グラム陽性桿菌は、リステリア(Listeria monocytogenes)をカバーしない。血漿タンパク結合率が85~95%と非常に高く、半減期は健康成人で8時間程度と長いため、1日1回投与での治療が可能な抗菌薬となる。タンパク結合していない遊離成分が活性をもつ。そのため、重症患者ではセフトリアキソンの実際のタンパク結合は予想されるより小さいとされているが1)、その臨床的意義は現時点では不明である。排泄に関しては、尿中排泄が緩徐であり、1gを投与12時間までの尿中には40%、48時間までには55%の、未変化体での排泄が認められ、残りは胆汁中に、血清と比較して200~500%の濃度で分泌される。水溶性ではあるが、胸水、滑液、骨を含む、組織や体液へ広く分布し、髄膜に炎症あれば脳脊髄移行性が高まり、高用量投与で髄膜炎治療が可能となるため、幅広い感染症に使用される。3.腎盂腎炎でセフトリアキソンを選択する場面は?腎盂腎炎の初期抗菌薬治療は、解剖学的・機能的に正常な尿路での感染症である「単純性」か、それ以外の「複雑性」かを分類し、さらに居住地域や医療機関でのアンチバイオグラム、抗菌薬使用歴、過去の培養検査での分離菌とその感受性結果を踏まえて抗菌薬選択を行う。いずれにしても腎盂腎炎の起因菌は、主に腸内細菌目細菌(Enterobacterales)となり、大腸菌(Escherichia coli)、Klebsiella属、Proteus mirabilisが主な起因菌となる2)。セフトリアキソンは一般的にこれらをすべてカバーするため、多くのマニュアルにおいて第1選択とされている。しかし、忘れられがちであるが、セフトリアキソンは比較的広域な抗菌薬であり、これらの想定した菌の、その地域でのアンチバイオグラム上のセファゾリンやセフォチアムの耐性率が低ければ、1日1回投与でなければいけない事情がない限り、後述の耐性化のリスクや注意点からも、セファゾリンやセフォチアムといった狭域の抗菌薬を選択すべきである。アンチバイオグラムを作成していない医療機関での診療の場合は、厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(Japan Nosocomial Infections Surveillance:JANIS)の都道府県別公開情報3)や、国立研究開発法人国立国際医療研究センター内のAMR臨床リファレンスセンターが管理する感染対策連携共通プラットフォーム(Japan Surveillance for Infection Prevention and Healthcare Epidemiology:J-SIPHE)の公開情報4)を参考にする。国内全体を見た場合にはセファゾリンに対する大腸菌の耐性率は高く、多くの施設において使用しづらいのは確かである。一方で、セフトリアキソンは、前述の通り耐性菌である、ESBL産生菌、AmpC過剰産生菌、緑膿菌はカバーをしないため、これらを必ずカバーをする必要がある場面では使用を避けなければいけない。4.セフトリアキソンとセフォタキシムとの違いは?同じ第3世代セファロスポリンである、セフトリアキソンとセフォタキシムは、スペクトラムがほぼ同じであり、使い分けが難しい薬剤ではあるが、2剤の共通点・相違点について説明する。セフトリアキソンとセフォタキシムとのスペクトラムについては、尿路感染症の主な原因となる腸内細菌目細菌に対してのスペクトラムの違いはほとんどなく、対象菌を想定しての使い分けはしない。2剤の主な違いは、薬物速度、排泄が大きく異なる点である。セフォタキシムは投与回数が複数回になること、主に腎排泄であり腎機能での用法・用量の調整が必要であり、利便性からはセフトリアキソンのほうが優位性がある。しかし、セフトリアキソンが胆汁排泄を介して便中に排出され、腸内細菌叢を選択するためか5)、セフォタキシムと比較し、腸内細菌の耐性化をより誘導する可能性を示す報告が少なからずある6,7)。そのため、投与回数や腎機能などで制限がない限り、セフトリアキソンよりセフォタキシムの使用を優先するエキスパートも存在する。5.投与量論争? 1gか2gかサンフォード感染症治療ガイドでは、化膿性髄膜炎を除く疾患では通常用量1〜2g静注24時間ごと、化膿性髄膜炎に対しては2g静注12時間ごと、Johns Hopkins ABX guidelineでは、化膿性髄膜炎を除く通常用量1〜2g静注もしくは筋注24時間ごと(1日最大4mg)での投与と記載されている。米国での集中治療室における中枢神経感染症のない患者でのセフトリアキソン1g/日と2g/日を後方視的に比較評価した研究において、セフトリアキソン1g/日投与患者で、2g/日投与患者より高い治療失敗率が観察された8)。腎盂腎炎ではないが、非重症市中肺炎患者を対象としたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、1g/日と2g/日の直接比較ではないが、同等の効果が期待できる可能性が示唆された9)。日本における全国成人肺炎研究グループ(APSG-J)という多施設レジストリからのデータを用いたpropensity score-matching研究において、市中肺炎に対するセフトリアキソン1g/日投与は2g/日と比較し、非劣性であった10)。以上から、現時点で存在するエビデンスからは、重症患者であれば、2g/日投与が優先され、軽症の肺炎やセフトリアキソンの移行性のよい臓器の感染症である腎盂腎炎であれば、1g/日も許容されると思われるが、1g/日投与の場合は、慎重な経過観察が必要と考える。6.セフトリアキソン使用での注意点【アレルギーの考え方】セファロスポリン系では、R1側鎖の類似性が即時型・遅延型アレルギーともに重要である11)。ペニシリン系とセファロスポリン系は構造的に類似しているが、分解経路が異なり、ペニシリン系は不完全な中間体であるpenicilloylが抗原となるため、ペニシリン系アレルギーがセファロスポリンアレルギーにつながるわけではない。セフトリアキソンは、セフォタキシム、セフェピムとR1で同一の側鎖構造(メトキシイミノ基)を有するため、いずれかの薬剤にアレルギーがある場合は、交差アレルギーが起こり得るので、使用を避ける。ただし、異なるR1側鎖を有する複数のセファロスポリン系にアレルギーがある場合は、β-ラクタム環が抗原である可能性があり、β-ラクタム系薬以外の抗菌薬を選択すべきである。【胆泥、偽性胆道結石症】小児で問題になることが多いが、セフトリアキソンは胆泥を引き起こす可能性があり、高用量での長期使用(3週間)により胆石症が報告されている。胆汁排泄はセフトリアキソンの排泄の40%までを占め、胆汁中の薬物濃度は血清の200倍に達することがある12,13)。過飽和状態では、セフトリアキソンはカルシウムと錯体を形成し、胆汁中に沈殿する。この過程は、経腸栄養がなく胆汁の停留がある集中治療室患者では、増強される可能性がある。以上から、重症患者、高用量や長期使用の際には、胆泥、胆石症のリスクになると考えられるため、注意が必要である。【末期腎不全・透析患者とセフトリアキソン脳症】脳症はセフトリアキソンの副作用のなかではまれであるが、報告が散見される。セフトリアキソンによる脳症の病態生理的メカニズムは完全には解明されていないが、血中・髄液中のセフトリアキソン濃度が高い場合に、β-ラクタム系抗菌薬による中枢神経系における脳内γ-アミノ酪酸(GABA)の競合的拮抗作用および興奮性アミノ酸濃度の上昇により、脳症が引き起こされると推定されている。セフトリアキソン関連脳症の多くは腎障害を伴い、患者の半数は血液透析または腹膜透析を受けていることが報告され、これらの患者のほとんどは、1日2g以上のセフトリアキソンを投与されていた14)。セフトリアキソンの半減期は、血液透析患者では正常腎機能患者と比較し、8~16時間と倍増することが判明しており15)、透析性の高いほとんどのセファロスポリンとは異なり、セフトリアキソンは血液透析中に透析されない14)。以上から、末期腎不全患者の血中および髄液中のセフトリアキソン濃度が高い状態が持続する可能性がある。サンフォード感染症治療ガイドやJohns Hopkins ABX guidelineなど、広く使われる抗菌薬ガイドラインでは、末期腎不全におけるセフトリアキソンの減量については言及されておらず、一般的には腎機能低下患者では投与量の調節は必要ないが、末期腎不全患者ではセフトリアキソンの減量を推奨するエキスパートも存在する。また1g/日の投与量でもセフトリアキソン脳症となった報告もあるため16)、長期投与例で、脳症を疑う症例があれば、その可能性に注意を払う必要がある。7.外来静注抗菌薬療法(OPAT)についてOPATはoutpatient parenteral antimicrobial therapyの略称で、外来静注抗菌薬療法と訳され、外来で行う静注抗菌薬治療の総称である。外来で点滴抗菌薬を使用する行為というだけではなく、対象患者の選定、治療開始に向けての患者教育、治療モニタリング、治療後のフォローアップまでを含めた内容となっている。OPATという名称がまだ一般的ではない国内でも、セフトリアキソンは1日1回投与での治療が可能という特性から、外来通院や在宅診療でのセフトリアキソンによる静注抗菌薬治療は行われている。外来・在宅でのセフトリアキソン治療は、本薬剤による治療が最も適切ではあるものの、全身状態がよく自宅で経過観察が可能で、かつアクセスがよく連日治療も可能な場合に行われる。OPATはセフトリアキソンに限らず、インフュージョンポンプという持続注射が可能なデバイスを使用することで、ほかの幅広い薬剤での外来・在宅治療が可能となる。詳細に関しては、馳 亮太氏(成田赤十字病院/亀田総合病院感染症内科)の報告を参考にされたい17)。1)Wong G, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2013;57:6165-6170.2)原田壮平. 日本臨床微生物学会雑誌. 2021;31(4):1-10.3)厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業:道府県別公開情報.4)感染対策連携共通プラットフォーム:公開情報.5)Muller A, et al. J Antimicrob Chemother. 2004;54:173-177.6)Tan BK, et al. Intensive Care Med. 2018;44:672-673.7)Grohs P, et al. J Antimicrob Chemother. 2014;69:786-789.8)Ackerman A, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2020;64:e00066-20.9)Telles JP, et al. Expert Rev Anti Infect Ther. 2019;17:501-510.10)Hasegawa S, et al. BMC Infect Dis. 2019;19:1079.11)Castells M, et al. N Engl J Med. 2019;381:2338-2351.12)Arvidsson A, et al. J Antimicrob Chemother. 1982;10:207-215.13)Shiffman ML, et al. Gastroenterology. 1990;99:1772-1778.14)Patel IH, et al. Antimicrob Agents Chemother. 1984;25:438-442.15)Cohen D, et al. Antimicrob Agents Chemother. 1983;24:529-532.16)Nishioka H, et al. Int J Infect Dis. 2022;116:223-225.17)馳 亮太ほか. 感染症学雑誌. 2014;88:269-274.

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1日も早く自宅に帰りたい-入院中に生じる廃用症候群/転倒を防ぐには?【こんなときどうする?高齢者診療】第4回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年7月に扱ったテーマ「転倒予防+α」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。転倒・廃用症候群の予防は、入院・外来を問わず高齢者診療に欠かせません。その背景と介入方法を症例から考えてみましょう。90歳女性。 既往症は高血圧、膝関節症。認知機能は保たれている。バルサルタンとアセトアミノフェンを服用。独居でADL/IADLはほぼ自立。買い物で重いものを運ぶのは難しいと感じている。3日前からの排尿痛と発熱で救急受診。急性腎盂腎炎の診断。入院して抗菌薬による治療を開始。本人は1日も早く帰宅し、自宅での自立生活を再開したいと希望している。原疾患の治療に加えて、自立生活を再開できる状態を作ることが入院中の治療・ケアのゴールになりますが、入院中に著しい身体機能低下を来す患者は少なくないのが実情ではないでしょうか。入院が高齢者に及ぼす影響まず、その背景を確認しましょう。入院中の高齢者は87~100%の時間をベッド上で過ごすといわれています1)。入院期間のほとんどがベッド上での生活となれば、当然、身体活動量は低下します。その他に、慣れ親しんだ自宅と異なる環境により、睡眠障害や口に合わない食事などで食欲不振、栄養不良に陥ることも珍しくありません。これらが引き金になり、筋肉量や有酸素能力が低下したり、歩行に必要な体のバランス機能や認知機能などが低下したりします。ちなみに、20~30代をピークに筋肉量の減少が始まることが多く、有酸素運動能力は25歳を過ぎると10年ごとに約10%減少していくともいわれています2-5)。加齢に伴う変化としての身体機能低下に、入院による負の変化が加わることで、廃用症候群のリスクが極めて高くなるのです。さらに悪いことに、こうした機能低下によって転倒をきっかけに入院した高齢患者が退院後6カ月以内に転倒する割合は約40%。そのうち15%は転倒により再入院に至るという研究もあります1)。そのほかに施設入所の増加、フレイルの悪化、ひいては死亡率の上昇などが生じます。急性疾患の治療を目的とした入院自体が機能低下の悪循環に入る原因になってしまうのです。入院中に生じる廃用症候群・転倒の悪循環を止めるには?このことから、身体機能低下を予防することは原疾患の治療と並ぶ重要な介入であることがわかると思います。ここからは、入院中の機能低下を最小限に抑えて、可能な限り身体機能を維持または強化し、患者の「家に帰りたい」という願いを叶える方法を探りましょう。まずアセスメントです。ここでは、簡単にできる機能評価・簡易転倒リスクのスクリーニング方法を2つ紹介します。1つめは、以下に挙げる4つの質問を使う方法です。(1)ベッドや椅子から自分で起き上がれますか?(2)自分で着替えや入浴ができますか?(3)自分で食事の準備ができますか?(4)自分で買い物ができますか?1つでも「いいえ」がある場合は、より詳しい問診やリハビリテーションチームに機能評価を依頼するなど、詳細な評価を検討します。また同時に、視力や聴力の程度、過去1年の転倒歴、歩行や転倒に関しての本人の不安なども、転倒リスクを見積もるために有用な質問です。2つめは、TUG(Timed up and Go)テストです。椅子から立ち上がって普通の速度で3m歩いてもらい、方向を変えて戻ってくるまでにかかる時間を計ります。10秒未満で正常、20秒未満でなんとか移動能力が保たれた状態、30秒未満では歩行とバランスに障害があり補助具が必要な状態と判断します。入院患者のアセスメントでは、15秒以上かかる場合は理学療法士に詳しいアセスメントや助言を求めるとよいでしょう。医師が押さえておくべき運動処方の原則さて、患者の状態を把握できたら次はどのような運動介入を行うかです。ここでは、「歩行のみ」のトレーニングはかえって転倒のリスクを高めるということを覚えておきましょう。転倒予防やADLの維持をサポートするには、筋力トレーニング、有酸素運動、バランストレーニング、歩行/移動トレーニングなどの複数の運動療法を組み合わせて、バランスよく総合的に鍛えることが重要です。そのほかにも関節可動域訓練などさまざまな訓練がありますから、患者の状態に合わせてリハビリテーションチームと共に計画を立ててみましょう。 外来での転倒予防のポイントはオンラインサロンでサロンでは外来患者のケースで、転倒リスクになる薬剤や外来でのチェックポイントや介入のコツを解説しています。また、サロンメンバーからの質問「高齢患者に運動を続けてもらうコツ」について、樋口先生はもちろん、職種も働くセッティングも異なるサロンメンバーが経験を持ち寄り、よりよい介入方法をディスカッションしています。参考1)Faizo S, et al. Appl Nurs Res. 2020:51:151189.2)Janssen I, et al.J Appl Physiol (1985). 2000;89:81-88.3)Mitchell WK, et al. Front Physiol. 2012 Jul 11:3:260.4)Hawkins S, et al. Sports Med. 2003;33:877-888.5)Kim CH, et al. PLoS One. 2016;11:e0160275.

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小児科「小児の発熱」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第7回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための小児科ベーシックより、遠藤周先生と 西﨑直人先生の「小児の発熱」を鑑賞します。成人とは異なる鑑別方法で診なければならない小児。実習に入る前に注意点を把握しておきましょう!

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コーヒー5杯/日以上で脳梗塞リスクが高まる!?

 大規模な国際症例対照研究であるINTERSTROKE研究で、コーヒー、紅茶、緑茶などの摂取量と脳卒中の関連を検討したところ、コーヒーを多量摂取(1日5杯以上)する人は脳卒中全体と脳梗塞のリスクが高く、逆に緑茶を摂取する人ではこれらのリスクが低かったという。カナダ・McMaster University and Hamilton Health SciencesのAndrew Smyth氏らがInternational Journal of Cancer誌オンライン版2024年6月18日号で報告した。 INTERSTROKE研究はすでに発表されている国際症例対照研究で、2007 年 3 月~ 2015 年 7 月に32ヵ国 142施設から初回脳卒中症例を募集し、対照は脳卒中既往歴のない人を性別・年齢でマッチングした。本研究では、参加者にコーヒー、紅茶、緑茶、その他のお茶を「1日何杯飲むか?」と質問し、「まったく飲まない」「1~2杯」「3~4杯」「5杯以上」に分類した(症例では脳卒中発症前の摂取量)。各飲料の摂取量と脳卒中(脳梗塞または脳出血)との関連について、多変量条件付きロジスティック回帰を用いて、「まったく飲まない」人を基準にオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・症例1万3,462例および対照1万3,488例で、平均年齢は61.7歳、男性は59.6%だった。・コーヒーは、1日摂取量が1~2杯もしくは3~4杯の人では脳卒中との関連はみられなかったが、5杯以上の人は、脳卒中全体(OR:1.37、95%CI:1.06~1.77)および脳梗塞(OR:1.32、95%CI:1.00~1.74)のオッズが高かった。・緑茶は、3~4杯の人における脳卒中全体(OR:0.73、95%CI:0.57~0.93)および脳梗塞(OR:0.75、95%CI:0.57~0.99)、また5杯以上の人における脳卒中全体(OR:0.70、95%CI:0.54~0.90)および脳梗塞(OR:0.69、95%CI:0.52~0.91)のオッズが低かった。・お茶全体(紅茶、緑茶、その他のお茶)では、1~2杯、3~4杯、5杯以上のすべてのカテゴリーにおいて脳卒中全体および脳梗塞のオッズが低かった(5杯以上での脳卒中全体のOR:0.81、脳梗塞のOR:0.81)。 今回の結果から著者らは、1日5杯以上のコーヒー摂取を避けることを検討するよう提案している。

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お腹や腕の脂肪は神経変性疾患リスクと関連

 お腹や腕の周りの脂肪が増えたという人は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の発症リスクが高い可能性のあることが、四川大学(中国)のHuan Song氏らによる研究で示唆された。一方で、筋力が強い人では筋力が弱い人と比べて神経変性疾患のリスクが低い可能性のあることも示された。この研究結果は、「Neurology」に7月24日掲載された。 Song氏らは今回、UKバイオバンクの参加者41万2,691人(登録時の平均年齢56.0歳、女性55.1%)の健康上および身体上の特徴を平均で9.1年追跡したデータを分析した。参加者は研究登録時に、ウエストやヒップのほか、握力や骨密度、脂肪量、除脂肪体重などの測定を受けていた。 追跡期間中に8,224人がアルツハイマー病やその他のタイプの認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患を発症していた。高血圧や喫煙、飲酒、糖尿病など脳に影響を与える可能性のある健康上のリスク因子を調整して分析した結果、お腹周りの脂肪量が多い(中心性肥満)人では、脂肪量が少ない人と比べて神経変性疾患のリスクが13%高いことが示された。また、腕周りの脂肪量が多い人も、脂肪量が少ない人と比べてリスクが18%高いことが判明した。その一方で、筋力が強い人では筋力が弱い人と比べてこれらの神経変性疾患のリスクが26%低いことが示された。 Song氏は、「この研究は、体組成を改善することで、これらの疾患の発症リスクを抑制できる可能性があることを浮き彫りにした」と話す。また同氏は、「健康的な筋肉を育てながらお腹や腕の周りの脂肪を減らすことにターゲットを絞った介入は、一般的な体重コントロールよりもこれらの疾患に対する予防効果が高いかもしれない」と付け加えている。 さらに媒介分析からは、腕や腹部の脂肪量が多いことと神経変性疾患との関連には、脳に有害な影響を与え得る心疾患や脳卒中のような心血管疾患が部分的に関与している可能性も示されたという。この点についてSong氏は、「アルツハイマー病やパーキンソン病、そのほかの神経変性疾患の発症を予防したり、発症を遅らせたりするには、こうした心血管疾患の管理が重要であることを明確に示したものだ」と「Neurology」の発行元である米国神経学会(AAN)のニュースリリースの中で指摘している。

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今こそExcelで学ぶ統計解析入門

Excelで統計学の基本を学ぶ!!統計関連の書籍はRからPythonが主流になりつつあります。機械学習との親和性もあり、Pythonで分析する人が増えています。とはいえデータサイエンティストのような統計のプロの人ならともかくR、Pythonはプログラムということで敷居が高いと感じる人も少なくありません。また、文系を中心とした大学ではSPSSが多いですが、自宅で持ち帰って分析することはできないため、自学自習ではExcelで学習するニーズはあります。本書は統計解析に必要な知識を解説します。まず、基本的な理論を学び、その内容をExcelで実践するものです。理解度テストは企業向けの例題で活用できるものを用意しております。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する今こそExcelで学ぶ統計解析入門定価2,750円(税込)判型A5判頁数192頁発行2024年8月著者志賀 保夫、姫野 尚子監修菅 民郎ご購入はこちらご購入はこちらAmazonでご購入の場合はこちら

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5~17歳の10人に1人がADHD/米国調査結果

 米国疾病予防管理センター(CDC)下の組織である国立衛生統計センター(NCHS)は、2024年3月に米国における注意欠如・多動症(ADHD)に関する調査結果を発表した。この報告書によると、2020~22年にADHDと診断された5~17歳の子供の割合(有病率)は11.3%だったという。 その他の主な結果は以下のとおり。・5~17歳では、男児(14.5%)のほうが女児(8.0%)より有病率が高く、この傾向は5~11歳と12~17歳の年齢別においても一貫していた。・5~11歳の有病率(8.6%)よりも、12~17歳の有病率(14.3%)のほうが高かった。・有病率は、すべての人種において、5~11歳よりも12~17歳のほうが高かった。・5~17歳の子供のうち、黒人の子供(10.8%)やヒスパニック系の子供(8.9%)よりも白人の子供(13.4%)のほうが有病率が高かった。・世帯収入が上がるにつれてADHDの有病率は減少する傾向があり、5~17歳の有病率は世帯収入が米国貧困水準の100%未満の場合は14.8%だったが、200%以上では10.1%となった。世帯収入の増加とともにADHDの有病率が減少するパターンは、いずれの年齢層の子供にもみられた。・5~17歳の子供では、ADHDの有病率が最も高かったのは公的保険に加入している子供(14.4%)で、最も低かったのは無保険の子供(6.3%)だった。

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腰椎変性すべり症、除圧術単独は固定術併用に非劣性/BMJ

 腰椎変性すべり症に対する除圧術単独vs.固定術併用を検討した多施設共同無作為化非劣性試験「Nordsten-DS試験」の5年間の追跡調査で、除圧術単独群の固定術併用群に対する非劣性が示され、indexレベルまたは隣接腰椎レベルでの新たな手術実施の割合に群間で差はなかったという。ノルウェー・Haukeland University HospitalのEric Loratang Kgomotso氏らNordsten collaboratorsが報告した。BMJ誌2024年8月7日号掲載の報告。術後5年でOswestry disability index約30%低下達成の患者割合を評価 Nordsten-DS試験は、ノルウェーの公立整形外科および脳神経外科16ヵ所で腰椎変性すべり症患者を対象に、固定器具を用いて行う除圧術(固定術併用)に対して除圧術単独が非劣性であるかを、初回手術から5年後の時点で評価した。対象は、症候性腰部脊柱管狭窄症を有し、狭窄レベルで3mm以上のすべりがある18~80歳の患者であった。 主要アウトカムは、ベースラインから追跡5年時点のOswestry disability indexの約30%の低下。事前に規定した非劣性マージンは、主要アウトカム達成患者の割合の差が15%ポイントであることとした。副次アウトカムは、Oswestry disability index、Zurich claudication questionnaire、脚部・腰部疼痛の数値的評価スケール、およびEuroQol Group 5-Dimension(EQ-5D-3L)質問票の平均変化値などであった。修正ITT解析の達成患者割合は両群63%、事前規定の非劣性マージン達成 2014年2月12日~2017年12月18日に、267例が1対1の割合で除圧術単独群(134例)または固定術併用群(133例)に無作為に割り付けられた。このうち230例(88%)が5年時の質問票に回答した(除圧術単独群121例、固定術併用群109例)。ベースラインの平均年齢は66.2歳(SD 7.6)、女性は69%を占めた。 欠損データに対する多重代入法を用いた修正ITT解析において、除圧術単独群84/133例(63%)と固定術併用群81/129例(63%)が、Oswestry disability indexの30%以上低下を達成し、群間差は0.4%ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.2~11.9)であった。per protocol解析の結果は、除圧術単独群65/100例(65%)、固定術併用群59/89例(66%)で、群間差は-1.3%ポイント(-14.5~12.2)であった。修正ITT解析およびper protocol解析のいずれにおいても、95%CI値は事前規定の非劣性マージンである-15%を下回らなかった。 ベースラインから5年時までのOswestry disability indexの平均変化値は、両群ともに-17.8だった(平均群間差:0.02[95%CI:-3.8~3.9])。その他の副次アウトカムの結果は、主要アウトカムと同様の傾向を示した。 新たな腰椎手術は、追跡2~5年の間に除圧術単独群で6/123例(5%)、固定術併用群で11/113例(10%)に行われた。ベースラインから5年時までの同手術の総数は、除圧術単独群21/129例(16%)、固定術併用群23/125例(18%)であった。

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