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三日熱マラリアの再発予防にtafenoquine単回投与は有効か?/NEJM

 三日熱マラリア原虫(P.vivax)マラリアの患者に対し、tafenoquineの単回投与は、再発予防に関して、プリマキン14日間投与に対する非劣性は示されなかった。グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)活性が正常値の患者において、ヘモグロビン値低下の有意差は認められなかった。ペルー・Peruana Cayetano Heredia大学のA. Llanos-Cuentas氏らが行った、第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験の結果で、著者は「tafenoquineはP.vivaxマラリアの根治治療(radical cure)に有効ではあるが、プリマキンに対する非劣性は示されなかった」とまとめている。tafenoquineの単回投与は、“根治治療”と称されるP.vivax血症と休眠体の消失により、再発予防と関連することが示されていた。NEJM誌2019年1月17日号掲載の報告。tafenoquine単回投与vs.プリマキン14日間投与 研究グループは、2015年4月30日~2016年11月4日に、ペルー、ブラジル、コロンビア、ベトナム、タイの病院または診療所7施設を通じて、P.vivax血症が確認された患者251例を対象に試験を行った。被験者は、G6PD活性が正常値、または中等度G6PD欠損症が認められた女性患者だった。 被験者を無作為に2対1の2群に分け、一方にはtafenoquine 300mg単回投与、もう一方にはプリマキン15mgを1日1回14日間投与した。被験者全員に、クロロキンを治療初日から3日間投与した。追跡期間は180日。 主要安全性評価項目は、プロトコールで規定したヘモグロビン値の低下(ベースラインから3.0g/dL超または30%以上の低下、または6.0g/dL未満への低下)とした。 主要有効性評価項目は、6ヵ月時点でP.vivax血症再発が認められないこととした。同評価は、本試験とtafenoquineとプリマキンを検討したその他の第III相試験を含むper-protocol集団で計画された患者レベルのメタ解析(治験実施計画書に適合した対象集団についての解析)において評価し、非劣性マージンは再発のオッズ比1.45(tafenoquine vs.プリマキン)とした。tafenoquine vs.プリマキンの再発オッズ比は1.81 プロトコール定義によるヘモグロビン値の低下が認められたのは、tafenoquine群166例中4例(2.4%、95%信頼区間[CI]:0.9~6.0)、プリマキン群85例中1例(1.2%、同:0.2~6.4)で、群間差は1.2ポイント(95%CI:-4.2~5.0)だった。 患者レベルのメタ解析の結果で、6ヵ月時点での無再発患者の割合は、tafenoquine群(426例)は67.0%(95%CI:61.0~72.3)、プリマキン群(214例)は72.8%(同:65.6~78.8)だった。tafenoquine vs.プリマキンの再発オッズ比は、1.81(95%CI:0.82~3.96)で、tafenoquineのプリマキンに対する非劣性は示されなかった。 なお著者は、本試験では中等度G6PD欠損症の適格患者が1例のみだったため、安全性の評価は限定的であると述べている。

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第3回 訪問の最後にはここを押さえる-基本を復習しましょう 接し方3-【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は、患者さんとの信頼関係を築くための基本的なポイントをお伝えします。ご存じのことが多いと思いますが、復習してみてください。目次信頼関係を築くためのポイント基本を復習しましょう 接し方1基本を復習しましょう 接し方2基本を復習しましょう 接し方3 ←今回はココ訪問したときに患者さんとの会話でキャッチできる情報以外に、聞いただけ、見ただけでは分からない患者さんの病状の変化や薬の副作用をキャッチしたいものです。この連載では、病態が急変した患者さんはもとより、普段と違う小さなサインを見逃さないためにも知っておきたいバイタルサインの基礎知識を具体的な症例とともに紹介します。今回はバイタルサインを見るまえに押さえておきたい患者さんとの接し方です。訪問の最後に患者さんとの話が終わる頃には、「質問はありませんか?」と聞くとよいでしょう。「次回は○月○日に伺います」など、今後の予定や計画がわかっていれば、確認しておくとよいですね。退席する時には是非「お大事に」と一言付け加えてください。患者さんと会った後に内容を記録する時には、主観的ではなく、客観的な記録を残すようにします。その記録に、次からお話しする「バイタルサイン」が加わるとよいですね。気を付けること医療従事者によるカンファレンスの場合などを除いて、患者さんの情報をむやみに話してはいけません(守秘義務)。「壁に耳あり障子に目あり」です。仲間と外食に行って「こんな患者さんがいて...」などと話をしていると、実は患者さんの関係者が近くにいたりして、信頼が損なわれるだけでなく思わぬトラブルとなることがあります。最後にひとこと患者さんの多くは高齢者や、障害のために身体が不自由な方だと思います。話しかけても意思疎通がとれないことがあるかもしれません。我々医療従事者は、そうした方々から多くを学ばせていただいていることを忘れてはいけないと思います。患者さんあっての我々です。どんな時でも敬意を持って接したいものです。よりよい医療を提供するためにはよりよい人間関係が大切です。自らをチェックしながら患者さんと接しましょう。

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健康サポート薬局を「知らない」92%【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第17回

「健康サポート薬局」の届け出が2016年10月に始まってから、早いもので2年以上がたちました。皆さんの薬局では届け出をされていますか? この健康サポート薬局に関する興味深いアンケート結果が公表されましたので紹介します。・「健康サポート薬局」を知らない人は92%、認知率が高いエリアは「近畿」・「健康サポート薬局」を使いたい人は51%、健康サポート薬局を知っている人では83%が「使いたい」と回答(日本薬剤師会調べ)このアンケートは、日本薬剤師会が「健康サポートと薬剤師に関する意識調査1)」として行ったインターネット調査です。調査会社のネットエイジアリサーチのインターネットモニター会員である20~79歳の男女1,000人を対象として、2018年9月5日~6日に実施されました。まず、健康サポート薬局を知っているかを聞いたところ、「知っている」が8.4%、「知らない」が91.6%と回答しています。認知率の最も高い近畿エリアでも10.7%で、最も低い北海道・東北エリアではわずか5.4%でした。うーん…、なかなか厳しい結果ですよね。開始から2年たち、健康サポート薬局はようやく1,000軒を超えました。単純計算して60軒に1軒の割合ですので、一般の方が認知するのはまだ難しいとは思いますが、約92%が知らない、というのは健康サポート薬局の制度がほとんど機能していないと言えると思います。とはいえ、この結果が意外かと考えると、そうでもないような気もします。この2年間で自分たちは健康サポート薬局を十分にアピールしてきたのか? この表示をできるようにするために必死に情報収集や行動をしていたか? と聞かれ、自信を持って「はい」と言える薬局は少ないのではないでしょうか。健康サポート薬局の軒数が少ないのは、健康サポート薬局はかかりつけ薬局・薬剤師としての基本的機能を有する必要があるため、第一歩としてかかりつけ薬局・薬剤師になることを優先されていたのかもしれません。また、土日開局の時間や要指導医薬品の在庫などが数値で規定されそうになったり、地域をまとめる中核薬局になるようなイメージがあったりするなど、健康サポート薬局のハードルが高く感じて二の足を踏んだ方もいると思います。そして、健康サポート薬局に加算がつかないというのも、積極的になれなかった要因かもしれません。薬剤師に相談したいのはダイエット!?薬剤師の健康サポートに対する一般の方のニーズは高いこともこのアンケートで示されました。健康サポート薬局を使いたいと思うか聞いたところ、「そう思う」が全体で51.3%、健康サポート薬局を知っている人では83.3%と好意的な反応です。「健康をサポートしてほしい専門家は?」という質問に対しても、病気については医師に次ぐ2位、市販薬と健康食品についてはともに1位に薬剤師が選ばれています。また、「薬剤師に相談できたらいいなと思うこと」では、「適切な診療科や近隣の病院の相談」「健康的な食事の相談」や、20代の5人に1人が希望した「ダイエットの相談」など意外な内容も挙げられています。一般の方の「こんなサポートをしてほしい」「誰かに聞きたいけれど誰に聞いたらよいかわからない」というニーズも読み取ることができますので、どんなことができるか考える際の参考にしてはいかがでしょうか。すべての保険薬局がすぐに「健康サポート薬局」を目指すというのはハードルが高いこともわかりますが、それぞれの薬局なりのかかりつけ薬局・薬剤師に向けての取り組みを続けるとともに、そろそろ地域の方の幅広い健康サポートにも目を向けてみませんか。出典1.https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pr-activity/PressRelease_20181129.pdf

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第22回 目標のない在宅医療なんてありえないのだ【週刊・川添ラヂオ】

動画解説お薬カレンダーの設置だけを在宅とは言わせない!在宅医療の流れは目標、実行、報告。この3段階についてそれぞれのポイントをお話しします。目標を立てる前には必ずケアマネさんと情報共有しましょう。患者さんの生い立ちや生活習慣、実現可能なゴールなど、細かな課題分析をしているケアマネさんからきっとヒントをもらえるはずです。

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最新のがん統計:男性では前立腺がんが上位に

 厚生労働省は、2016年に開始した「全国がん登録」による初めての結果を公表した。それによると、2016年において、新たにがん(上皮内がんを除く)と診断された患者は99万5,132例で、男性が56万6,575例(56.9%)、女性が42万8,499例(43.1%)だった。 部位別のがん罹患数は、男性では胃(16.4%)、前立腺(15.8%)、大腸(15.8%)、肺(14.8%)、肝(5.0%)の順で多く、女性では乳房(22.1%)、大腸(16.0%)、胃(9.8%)、肺(9.7%)、子宮(6.6%)の順で多かった。 この結果を、2014年における「地域がん登録」に基づくデータと比較すると、がん罹患数の女性における順位は同じだったが、男性のがん罹患数は2位と4位が入れ替わり、前立腺がんが増え、肺がんが減ったという結果であった。※「がん登録」では、最初に診断されたがんを登録している。また、1人の人で、独立した2種類以上のがんが発見された場合、それぞれのがんを独立して数えるため、罹患数は延べ人数で示されている。男性のがん罹患率のピークは女性と10歳ずれている 2016年における全部位のがん罹患数を年齢階級別に見ると、15歳未満の小児が0.2%、15~29歳が0.5%、30~44歳が3.9%、45~59歳が12.7%、60~74歳が40.3%、75歳~99歳が42.3%の割合を占めた。また、がん罹患率(人口10万対)は、5歳以上で段階を踏んで上がっていき(5歳階級)、男性では60歳以上、女性では65歳以上の階級で1,000を超過した。がん罹患率のピークは、男性では85~89歳、女性では95~99歳であった。 さらに、がん罹患率を都道府県別に見てみると、男女の総数は、長崎(454.9)、秋田(446.3)、香川(436.7)、北海道(428.2)、宮崎(426.4)の順で高かった。また、部位別のがん罹患率は、たとえば胃がんでは、新潟(74.7)、秋田(70.3)、山形(63.2)の順で高く、大腸がんでは秋田(73.7)、青森(72.2)、鳥取(71.4)の順で高かった。 今回公表されたデータでは、どの地域で何歳の患者さんが、どのがんに罹患したかがわかるため、詳細な分析が可能となる。「全国がん登録」制度の概要と作られた経緯 全国がん登録は、がん医療の質の向上ならびにがん予防の推進のため、情報提供の充実、その他のがん対策を科学的知見に基づき実施するため、がんの罹患、治療、転帰などの状況を把握し、分析することを目的としている。 「がん登録等の推進に関する法律」(平成25年法律 第111号)により、がんの初回診断が行われた病院などから都道府県知事に届け出られた者および市区町村長から報告される死亡者情報票によって把握されたがんによる死亡者を対象としている。また、2016年1月1日~12月31日にわが国で診断された日本人および外国人の事象を客体としている。集計は、国立がん研究センターにおいて行われた。 国立がん研究センターによると、以前は、都道府県がそれぞれの自治体内で診断されたがんのデータを集めた「地域がん登録」制度が用いられていたが、住んでいる都道府県以外の医療機関で診断・治療を受けた患者や、途中で他県に移動した患者などのデータが重複する可能性があった。また、すべての医療機関が協力しているわけではなく、正確なデータを集めることが難しかったため、「全国がん登録」制度という新しい仕組みができたという。

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第15回 低用量ピルのよくある質問に答えるエビデンス【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 低用量ピルは、避妊目的だけでなく、月経の周期、痛みや倦怠感などの月経困難症をコントロールすることで女性のさまざまな悩みを改善し、かつ安全性も高いという有用な薬剤です。しかし、副作用の懸念から抵抗を示される方も少なからずいらっしゃいます。副作用リスクを正しく認識していただいたうえでメリットを享受していただけるように、服薬指導でのよくある質問と参考となる研究を紹介します。低用量ピルは避妊のためのものではないのか低用量ピルには、避妊を目的とする経口避妊薬(Oral Contraceptive:OC)と月経困難症などの治療を目的とする低用量エストロゲン-プロゲスチン(Low dose estrogen-progestin:LEP)があり、どちらも服用すると、実際は妊娠していなくても下垂体は妊娠したと認識をするので排卵が起こらないようになります。低用量ピルの中止後は通常の月経に戻るのか月経をコントロールするという性質からか、低用量ピルの中止時に通常の月経に戻るのか、再び妊娠できる状態になるのか心配される方もいらっしゃいます。そういう場合には可逆性があることを説明できると安心材料になります。たとえば、レボノルゲストレル90μg/エチニルエストラジオール20μgを約1年服用した18〜49歳(平均年齢30.4歳)の女性で、通常の月経または妊娠に至るまでの期間を検討した観察研究では、最後の服用から90日以内に187例中185例(98.9%)で自然月経が再開または妊娠したという結果が出ています(自発月経181例、妊娠4例)。月経が再開するまでの期間の中央値は32日でした。これを踏まえると、中止後、妊娠していない状態で90日以上月経が再開しない場合は無月経の可能性が高いため、受診を勧める目安になります1)。低用量ピルを服用すると体重は増加するのかこれも比較的よくある質問ですが、服薬拒否にもつながりやすい事由なので丁寧な説明が求められます。体重増加について検討したコクランのシステマティックレビューがあり2)、試験の背景として体重増加がピル服用に関連していると考える女性が多く、服用の開始が遅れたり中止になったりすることが多いという問題が提示されています。しかしながら、実際にはプラセボ投与群または介入なし群を含む4試験では、低用量ピル(または避妊薬パッチ)の使用と体重増加の因果関係を支持する結果は見いだされませんでした。また、さまざまな種類のピルと投与量(エチニルエストラジオール20〜50μg)を比較した試験の大多数でも、グループ間で体重に関して有意差がないことが示されています。少なくとも大きな体重増加との関連はほぼないと説明してよさそうです。低用量ピルによる血栓症リスクはどれくらいあるのか血栓症ひいては静脈血栓塞栓症(VTE)は、ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠(商品目:ヤーズ配合錠)でブルーレターが発出されています。頻度としては低いのですが、低用量ピルに共通の副作用ですので、どの製剤であっても早期に兆候を察知して対処できるよう説明が必要です。VTEリスクの上昇は、エストロゲン含有ピルの摂取により、凝固因子II、VII、X、XII、VIIIおよびフィブリノゲンの血漿濃度が上がることが機序として考えられています3,4)。このリスクの感覚値をお伝えするうえで、参考になる症例対照研究があります5)。2015年にBMJ誌に掲載された研究で、2001~13年の間に英国においてVTEと診断された15~49歳の女性を対象としています。年齢、慣習、時期などをマッチさせた対照群を設定し、前年度の経口避妊薬摂取によってVTEの発生率が上がるかを検討したものです。オッズ比は、喫煙の有無、アルコール摂取、人種、BMI、合併疾患、他の経口避妊薬摂取などの因子で調整し、解析しています。その結果、年間10,000人当たりでVTEを発症する追加人数は、プロゲスチンの世代分類の観点からみると、第1世代(オーソ、シンフェーズ、ルナベルLD)と第2世代(トリキュラー、アンジュ)は6~7例の発生に対して、第3世代(マーベロン)は14例、第4世代(ヤーズ)は13例です。新しい世代のものほど、やや血栓症が出やすいという結果が出ています。一方で、エチニルエストラジオール含有量が高いほど脳卒中や心筋梗塞のイベントリスクが高い傾向にあり、表にあるようなプロゲスチンの種類による差は微々たるものであることを示唆するNEJM誌の論文もありますから6)、それも参考としてしっておくとよいかもしれません。VTEは早期の診断・治療が重要ですので、VTEの特徴的な兆候(英語の頭文字をとってACHES)を覚えておくと有用です。A:abdominal pain(激しい腹痛)C:chest pain(激しい胸痛、息苦しい、押しつぶされるような痛み)H:headache(激しい頭痛)E:eye/speech problems(見えにくい所がある、視野が狭い、舌のもつれ、失神、痙攣、意識障害)S:severe leg pain(ふくらはぎの痛み・むくみ、握ると痛い、赤くなっている)これらの兆候に気付いたら、重症化を防ぐため、すぐに中止のうえ受診を促す必要があるので、服薬指導時にお伝えしましょう。1)Davis AR, et al. Fertil Steril. 2008;89:1059-1063.2)Gallo MF, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jan 29:CD003987.3)Middeldorp S, et al. Thromb Haemost. 2000;84:4-8.4)Kemmeren JM, et al. Thromb Haemost. 2002;87:199-205.5)Vinogradova Y, et al. BMJ. 2015;350:h2135.6)Lidegaard O, et al. N Engl J Med. 2012;366:2257-2266.

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第9回 同等性を示すための試験方法は?【統計のそこが知りたい!】

第9回 同等性を示すための試験方法は?臨床試験において通常の解析では、p値が0.05よりも小さければ「差がある」と判断し、0.05以上であれば「差がない」と判断します。前回、統計的仮説検定は帰無仮説を棄却することだけにあり、帰無仮説が棄却できなかった場合は、「2つの薬剤(従来薬と新薬)の効果が等しい」と積極的に証明できたわけではなく、「結論は保留」、つまり「有意差がなかった」、あるいは「効果があったかどうかはわからなかった」というのが、結果の正しい解釈であることをご紹介しました。それでは、2つの薬剤の効果が等しいということを明らかにしたい場合、どうすればよいのでしょうか。今回は、同等性を示すために、どのような解析をすればよいのかを解説します。■p値から同等性を示すことはできない例:解熱剤である新薬Y(8例)と従来薬X(10例)を割り付けた臨床試験において、薬剤投与前後の低下体温平均値が新薬Yで1.0℃、従来薬Xで0.7℃であった(表1)。表1●問題 表1の臨床試験データに仮説検定を行った。帰無仮説 新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xと同等である。対立仮説 新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xと違いがある。p値=0.27p値>0.05により、帰無仮説を棄却できず、対立仮説を採択できない。以上により、この解析結果を正しく表しているのは次の3つのうちどれでしょうか?1)新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xと同等である。2)新薬Yの低下体温平均値が従来薬Xと違いがあるとはいえない。3)新薬Yの低下体温平均値が従来薬Xより低いといえる。解答を見る 解答 2p値は、「違いがあるといえない」ということは証明できても「同等である」ということを証明することはできないのです。■同等性を示すにはどうすればいいか下記に2つの臨床試験A(表2)とB(表3)を示します。AとBどちらも低下体温平均値は同じで、p=1.00>0.05でした。これよりどちらも帰無仮説は棄却できず、低下体温平均値は、YとXでは違いがあるということはできません。そして、この結果から、YとXが同等だということもいえません。表2 臨床試験結果A表3 臨床試験結果B同等性はp値では把握できないのですが、信頼区間を使って同等性をみることができるのです。では、この臨床試験AとBの信頼区間をみてみましょう。Aは、-0.55~0.55でBは、-0.09~0.09でした。p値は同じでも、このように信頼区間は、BのほうがAより幅が狭くなっています。一方、Aは幅が広すぎてYとXは同等といえそうにありませんが、Bは幅が狭いので同等といえそうですね。Bにおいて信頼区間が-0.09~0.09と狭く、臨床的に同等だとみなしてよいという判断ができれば、YとXは同等ということがいえます。ただし、この判断の基準になる「信頼区間がこのくらいであれば許容できる」という同等性の許容範囲は、研究を始める前に決めて、研究計画書に記載しておくことが義務付けられています。この許容範囲を「同等性マージン」と言います。図に示しましたようにBは同等性マージンの範囲に入っているので、同等性があるといえるのです。図 信頼区間と同等性マージンですから、論文を読む際には、何を示しているデータなのか、試験方法や同等性マージンの設定域、n数(サンプルサイズ)などをきちんとみなければなりません。このように同等性を示す場合には、信頼区間の上下限とも同等性マージンの幅の中に入らなければなりませんが、そのためには信頼区間がかなり小さくなるようにn数(サンプルサイズ)をいくつにするかを試験の前に設定し、十分なn数(サンプルサイズ)での試験をしなければなりません。そのため、その解決策として非劣性試験が行われることが多いのです。同等性試験については、後発医薬品などの申請に際し、添付すべき生物学的同等性試験のガイドラインが厚生労働省から示されており、そのガイドラインにおいて、試験方法、同等性評価パラメーター、生物学的同等の許容域(同等性マージン)、統計学的解析、同等性の判定などをどのようにすべきかなど、詳細に明記されています(参考:後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン)。次回は非劣性試験について解説いたします。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション7 信頼区間とはセクション8 信頼区間による仮説検定セクション10 p値による仮説検定

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第2回 患者さんと接するときのおさらい-基本を復習しましょう 接し方2-【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は、患者さんとの信頼関係を築くための基本的なポイントをお伝えします。ご存じのことが多いと思いますが、復習してみてください。目次信頼関係を築くためのポイント基本を復習しましょう 接し方1基本を復習しましょう 接し方2 ←今回はココ基本を復習しましょう 接し方3訪問したときに患者さんとの会話でキャッチできる情報以外に、聞いただけ、見ただけでは分からない患者さんの病状の変化や薬の副作用をキャッチしたいものです。この連載では、病態が急変した患者さんはもとより、普段と違う小さなサインを見逃さないためにも知っておきたいバイタルサインの基礎知識を具体的な症例とともに紹介します。今回はバイタルサインを見るまえに押さえておきたい患者さんとの接し方です。患者さんと接するとき背筋をピンと伸ばし、誠実な態度で接します。患者さんとは視線の高さをあわせるようにします。まず挨拶をして、自己紹介をします。初めての患者さんの時には、患者さんの名前を確認しましょう。(病院内では、人の間違いがないように、名前とカルテなどを指さし確認しています)協調的な信頼関係を築くためには、必要な情報を得ることです。まずは聞き役になりましょう。時にメモをとることは必要ですが、適宜アイコンタクトを保つようにします。患者さんが話しにくい内容であれば、初対面では根掘り葉掘り聞かずに、次の機会にでも時間をかけてゆっくり聞きましょう。相手が高齢者だからといって「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく、「○○さん」と必ず名前で呼ぶようにします。言葉は敬語を用います。聞きとりやすい速さで丁寧に、一般の人でもわかりやすい言葉(患者さんが用いる言葉)を使うようにしましょう。「ため口」や横柄な態度、専門用語を羅列すると、それだけで患者さんはイヤになってしまいます。相手を理解するような態度や、相手の不安を察するような態度で、気遣いの言葉(「大丈夫ですか?」「それは大変でしたね」「それでは不安になるのも当然ですよ」など)を交ぜながら話を聞くのもよい手法です。逆に、患者さんにとってよいことがあった時には、一緒に喜べるとよいですね。

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慢性蕁麻疹は、骨粗鬆症のリスク因子

 慢性蕁麻疹(CU)は骨粗鬆症に対して多くのリスク因子となるが、CUと骨粗鬆症における関連についてはデータが不足している。イスラエル・Clalit Health ServicesのGuy Shalom氏らは大規模な観察研究を行い、CUが骨粗鬆症のリスクとなる可能性があることを明らかにした。著者は、「ターゲットを適切にするためのスクリーニングを検討する必要がある」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年12月18日号掲載の報告。 研究グループは、地域住民を対象にCUと骨粗鬆症との関連性を評価する目的で、全国的な長期観察コホート研究を行った。 CUは、蕁麻疹と診断された4つの組み合わせで定義。それぞれのCUは、診断から6週間以内に記録され、プライマリケアの内科医が研究に登録した。CU患者と、その患者の年齢と性別が一致する者を対照群として割り付け、2002~17年における骨粗鬆症の発生頻度とその他の検査データを追跡した。 ステロイドの全身投与および骨粗鬆症に関連するほかのリスク因子についてのデータを得た。 年齢、性別、ステロイドの全身投与、肥満、喫煙、甲状腺機能亢進症および甲状腺機能低下症に関して補正したCox回帰モデルにて、骨粗鬆症のリスク分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・解析対象はCU患者群1万1,944例で、対照群は5万9,829例であった。・観察期間中、CU患者群のうち1,035例(8.7%)、対照群のうち4,046例(6.8%)が骨粗鬆症と診断された。・多変量解析の結果、CUは骨粗鬆症に対し、高リスクとして有意に関連していた(ハザード比:1.23、95%信頼区間[CI]:1.10~1.37、p<0.001)。

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2つの経路で眼房水排出を促進する緑内障・高眼圧症治療薬「エイベリス点眼液」【下平博士のDIノート】第16回

2つの経路で眼房水排出を促進する緑内障・高眼圧症治療薬「エイベリス点眼液」今回は、「オミデネパグ イソプロピル点眼液(商品名:エイベリス点眼液0.002%)」を紹介します。本剤は、世界初の選択的EP2受容体作動薬で、副作用などにより既存の緑内障・高眼圧症治療薬の使用が難しかった患者さんでも使用しやすい薬剤として期待されています。<効能・効果>本剤は緑内障、高眼圧症の適応で、2018年9月21日に承認され、2018年11月27日より販売されています。<用法・用量>1回1滴、1日1回点眼します。本剤とタフルプロストを含有する点眼薬との併用は禁忌であり、タフルプロストを除く緑内障・高眼圧症治療薬とは併用注意となっています。また、眼内レンズを挿入している患者、水晶体がない患者には使用することができません。<副作用>国内で実施された第II/III相試験(4週間投与、116例)、第III相長期投与試験(52週間投与、125例)および第III相切替試験(4週間投与、26例)の併合解析において、本剤を投与された267例中107例(40.1%)に副作用が認められました。主な副作用は結膜充血61例(22.8%)でした。また、重大な副作用として、眼内レンズ挿入患者に本剤を投与後、嚢胞様黄斑浮腫を含む黄斑浮腫の発現(5.2%)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、眼圧を調節している水分の排出を促して、眼圧を下げる緑内障・高眼圧症の薬です。2.毎日なるべく同じ時間に点眼してください。忘れた場合、その日のうちであれば気付いたときに点眼し、次の日からはいつもの時間に点眼します。翌日に気付いた場合、前日の分は点眼せずに1回分点眼してください。3.点眼後、一時的に眼がかすんだり、まぶしさを感じる場合がありますが、それらの症状が回復するまで自動車の運転や危険を伴う作業などは行わないでください。4.コンタクトレンズを使用している場合は、レンズを外した状態で点眼し、その後装着する場合は15分以上空けてください。5.使用前・使用後にかかわらず、必ず遮光袋に入れて保管してください。6.開封前は冷蔵庫などの冷所で保管してください。開封後は1ヵ月以内であれば室温で保管できますが、1ヵ月以上経過した場合は新しいものに取り換えてください。7.視力の低下、見えづらい、眼のかすみなどの症状が現れたら、すぐに医師の診療を受けてください。<Shimo's eyes>本剤は、プロスタグランジン関連薬に分類されますが、プロスタグランジン骨格を持たない低分子化合物です。既存のプロスタグランジン関連薬が、プロスタノイドFP受容体に作用して、眼房水排出の副経路であるぶどう膜強膜流出路からの排出を促すのに対し、本剤は、EP2受容体に選択的に作用することで、主経路である線維柱帯流出路(シュレム管)とぶどう膜強膜流出路の両方を介して眼房水の排出を促進し眼圧を降下させるという、新しい作用機序の点眼薬です。本剤の有効性は、FP受容体作動薬であるラタノプロスト群との比較試験において、非劣性が認められています。しかし、ラタノプロスト群に比べて高頻度で結膜充血の副作用が見られました。また、眼内レンズ挿入患者で嚢胞様黄斑浮腫を含む黄斑浮腫が報告されているため、眼内レンズを挿入している患者さんには禁忌となっています。本剤を初回処方された患者さんには、白内障手術歴の確認を忘れないようにしましょう。現在、緑内障・高眼圧症治療において、プロスタグランジン関連薬やβ遮断点眼薬が第1選択薬となっていますが、プロスタグランジン関連薬では、虹彩への色素沈着やまつげ・まぶたの多毛など、外見に影響する副作用が報告されており、β遮断点眼薬では呼吸器系・循環器系における全身性の副作用に対する懸念があります。本剤は、従来の治療薬に抵抗性を示した患者さんや、副作用に悩まされていた患者さんへの新しい選択肢となりうるでしょう。

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成育基本法が成立中 薬剤師は何を求められるのか【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第9回

2018年12月8日、「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律1)」が成立したことはご存じでしょうか。この法律は、「成育基本法」という略称で呼ばれています。一般的に「基本法」とは、国の重要な制度や政策などの基本方針を示した法律といわれています。また、憲法の理念を反映させるために憲法と個別の法律の間をつなぐものと位置付けられ、基本法を受けて個別の法律を作るなどの施策がとられることもあります。成育基本法は、「出生に始まり、新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの一連の成長」(成育基本法第二条第1項)である「成育」に関する基本方針を示したものであり、目的として以下のように定められています。成育基本法(目的)第一条 この法律は、次代の社会を担う成育過程にある者の個人としての尊厳が重んぜられ、その心身の健やかな成育が確保されることが重要な課題となっていること等に鑑み、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、成育医療等の提供に関する施策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、保護者及び医療関係者等の責務等を明らかにし、並びに成育医療等基本方針の策定について定めるとともに、成育医療等の提供に関する施策の基本となる事項を定めることにより、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦(以下「成育過程にある者等」という。)に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策を総合的に推進することを目的とする。この目的を見ると、「成育医療等の提供に関する施策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、保護者及び医療関係者等の責務等を明らかにし、」とありますので、薬剤師も内容を知っておきたいところです。条文に明記された医療関係者の責務は2つ「成育医療等」とは、「妊娠、出産及び育児に関する問題、成育過程の各段階において生ずる心身の健康に関する問題等を包括的に捉えて適切に対応する医療及び保健並びにこれらに密接に関連する教育、福祉等に係るサービス等をいう。」(成育基本法第二条第2項)とされています。また、「医療関係者等の責務」(成育基本法第七条)には薬剤師が対象として明記されており、「国及び地方公共団体が講ずる成育医療等の提供に関する施策に協力し、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与するよう努めるとともに、成育医療等を必要とする者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切な成育医療等を提供するよう努めなければならない」と、2つの事項が定められています。要するに、子供の健やかな成育と、妊産婦の健康の保持・増進への寄与などが求められていると考えられます。さらに、第三条では「高度化する成育過程にある者等の需要に適確に対応した成育医療等が切れ目なく提供されるよう、当該施策相互間の連携及びこれと関連する施策との連携を図りつつ、総合的に推進されなければならない」(成育基本法第三条第2項)とも定められており、従来の政策(児童福祉法、母子保健法など)と今後制定される政策を連携させ、「成育医療等」を切れ目なく提供することが期待されています。今後この成育基本法に基づいて、具体的な施策がとられていくことになると思いますが、薬剤師も医療機関や地域との連携などにおいて、重要な役割を担っていくと考えられます。一度条文に目を通してみてはいかがでしょうか。なお、医療に関する基本理念を明示する「医療基本法」を制定しようとする動きもあるようですが、成立までには至っていません。興味がある方は調べてみるのもいいかもしれません。参考資料1)衆議院 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律案

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第21回 在宅医療の本質を3つのキーワードで理解しよう【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回は地域包括ケアシリーズの第2弾として、在宅医療の本質を考えるための3つのキーワードであるリハ、ICF(国際生活機能分類)、CGA(高齢者総合機能評価)についてお話しします。リハを単なる身体機能訓練だと思っていませんか?リハビリテーションの本来の意味は「その人らしい人生を再構築すること」。それを実現するためにチームで患者さんの生活状況、症状を正しく評価することが大切です。

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腎疾患に遺伝子診断は有用か/NEJM

 3,000例超のさまざまな慢性腎臓病患者の集団を対象とした検討で、エクソーム解析に基づく遺伝子診断率は、10%未満であることが明らかにされた。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏らによる検討の結果で、NEJM誌オンライン版2018年12月26日号で発表された。慢性腎臓病を有する2コホート計3,315例を解析 研究グループは、慢性腎臓病の患者3,315例を含む2つのコホートを対象に、エクソーム解析と診断解析を行った。詳細な臨床データが入手できた患者について、診断率や、診断の臨床的意義、その他の医学的所見との関連を検証した。 被験者のうち、91.6%(3,037例)が21歳超で、自己申告に基づく非欧州系人種は35.6%(1,179例)を占めた。9.3%(307例)で診断変種を検出 被験者全体の9.3%(307/3,315例)で診断変種が検出され、66種の単一遺伝子病が認められた。これら単一遺伝子病のうち、39種(59%)の患者数はいずれも1例ずつだった。 エクソーム解析により検出された診断変種には、先天性/嚢胞性腎疾患(127/531例、23.9%)や、原因不明の腎障害(48/281例、17.1%)など、臨床的に定義された全カテゴリーの疾患が含まれていた。 評価対象2,187例の1.6%(34例)で、医療的に対応すべき問題が見つかり、腎障害とは関連がなく別の専門医に紹介し腎疾患マネジメントに関する情報提供を行うケースもあった。 同研究グループは、腎疾患の遺伝子診断率が9.3%であった点について「同診断率はがんの遺伝子診断率と似通った数字で、がんでは日常的に遺伝子診断が行われている」とし、その有用性を評価している。

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固定費削減の苦しみ【医師のためのお金の話】第16回

固定費削減の苦しみこんにちは、自由気ままな整形外科医です。資産形成を行ううえで、固定費削減は最重要課題の1つです。家計における固定費とは、光熱費や通信費のような毎月の決まった支出のことです。資産形成の元手となるタネ銭を蓄えるためには、必要性の低い固定費を最小限にまで削る必要があります。とくに金額の大きな固定費は、削減できるとインパクトが大きいので、集中的に検討してみることをお勧めします。人生の4大固定費固定費の中でも支払額の大きなものは、「人生の4大固定費」といわれています。その内訳は下記のとおりです。● 住宅ローン● 生命保険● 教育費● 自動車上記の4つの固定費は、いずれも削ることが難しい項目です。生活の質や人生設計に関わるものなので、削減するといっても一筋縄では行かないのが実情です。自動車関連の固定費削減を検討この中で、今回は自動車に関する固定費の見直しを行ったので、その経験をお話しさせていただきます。自動車関連の固定費削減を検討したのは、自宅購入がきっかけです。このたび地下鉄の駅から徒歩1分の立地に建つ、古ぼけた小さな事務所を購入し、自宅に改装することになりました。人通りの多い商業地なので、1階を駐車場にすると大きな機会損失になります。店舗にすれば賃料15万円以上は取れますが、自己使用の駐車場では1円も産みません。それならば思い切って、社会人になってからずっと維持していた自動車を売却し、自動車生活から脱却するのも選択肢の1つだと思いました。今回購入した物件は、公共交通機関と自転車だけで生活できる立地です。現状では1ヵ月に数回しか自動車に乗っていません。一方、自動車を維持するのに必要な1ヵ月当たりのコストを計算すると、車検費用(1万円)、駐車場代(4万円)、税金・保険費用(1万円)でした。まったく自動車に乗らなくても、毎月6万円もの出費になります。金銭面だけを見ると、まるきりペイしない状況です。自動車を「捨てる」ためのハードル自動車を維持するコストを考えると、車なしの生活も選択肢の1つとなります。しかし、実際に自動車を処分しようとすると、さまざまなハードルがあることに気付きました。最も大きなハードルは精神面です。なんだかんだ言って、自動車のある生活が便利なことに間違いはありません。めったに乗る機会がないとはいえ、自動車を所有していると選択肢が増えるからです。雨の日でも自動車があれば外出できますし、買い出しに行くときにも自動車があると便利です。自動車を放棄することで、このような快適さがなくなるのは少し寂しい気がします。論理的に考えれば、事あるごとにタクシーを呼べばそれで済む話です。しかし、そこまで割り切るには思い切りが必要です。実際、コストコなどへ買い出しに行くときには、自動車がないと困ります。しかし、よく考えるとコストコに毎日行くはずはありません。コストコは安いですが、月額6万円の自動車維持費用をカバーすることは到底できません。また、夕方に行う子供の塾の送り迎えでは、自動車があると便利ということもあります。しかし、都市部であればカーシェアリングを利用することで解決できます。仮にカーシェアリングでレンタルできないときであっても、タクシーを利用すれば対応できます。自由な時間と快適な自動車生活の二者択一このように考えると、自動車は生活の必需品ではないことに気付きました。自動車生活を捨てて、タクシーやカーシェアリングを利用することで、ずいぶん固定費削減になりそうです。しかし、論理的にはわかっていても、これを実践することは容易ではありません。その最大の理由は、現状の快適な生活を捨て去ることへの抵抗感です。得ることができるのは、自動車維持のためにかかる固定費ですが、あくまでバーチャルな収益にすぎません。実際に財布の中でお金が増えるわけではないのです。一方、失うのは目の前の快適な生活です。快適さを得るために支払うコストが過大であることを理解しつつも、実際に失うのはすでに享受している快適な生活です。この精神的な葛藤を乗り越えることが、最大のハードルと言っても言い過ぎではないでしょう。快適な自動車生活へのこだわりを持ち続けて、毎月6万円の無駄金を垂れ流し続けることは合理的ではありません。所得税+住民税率=50%の場合、6万円の収入を得るためには毎月12万円の収入が必要です。この金額は、1回3万円の定期夜診アルバイトに相当します。つまり、自動車を維持するためだけに毎週の夜診アルバイトをしていることになるのです。快適な自動車生活を維持するのか、もしくは自動車を捨ててアルバイトなしの生活を謳歌するのかは難しい判断ですね。

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第1回 信頼関係を築くためのポイント-基本を復習しましょう 接し方1-【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

こんにちは。勝野哲也と申します。愛知県の病院で内科医をしています。この連載では、病態が急変した患者さんはもとより、普段と違う小さなサインを見逃さないためにも知っておきたいバイタルサインの基礎知識を具体的な症例とともに紹介します。がん、脳卒中、意識障害の患者など、在宅患者の増加により薬剤師の訪問指導の機会は増えています。患者さんとの会話でキャッチできる情報もありますが、聞いただけ、見ただけでは分からない患者さんの病状の変化や薬の副作用もあるはず。具体的な症例紹介の前に、患者さんとの信頼関係を築くための基本的なポイントをお伝えします。ご存じのことが多いと思いますが、復習してみてください。目次信頼関係を築くためのポイント基本を復習しましょう 接し方1 ←今回はココ基本を復習しましょう 接し方2基本を復習しましょう 接し方3はじめて訪問する薬剤師さんへはじめて在宅患者さんに接する時、誰もが緊張することと思います。我々医療従事者の最大の目標は、患者さんの健康状態を改善することよりよい生活を送っていただくこと。そのために大切な点は、患者さんと協調的な信頼関係を築くことです。患者さんも十人十色で、人付き合いが上手で話し上手な方もいれば、なかなか自分の思っていることを口に出せない方もいます。まず、患者さんから必要な情報を得ることです。そして、患者さんに適切な情報を提供することです。言うのは簡単ですが、これがなかなか難しい・・・、医師として働き始めて14年が経ちましたが、そう感じることも多いです。患者さんと接する前に―身だしなみを整える身だしなみを整えます。下記のようなことに気を付けることが必要です。白衣や衣類清潔感のあるものにしましょう。名札はつけておくべきです。履物にも気を付けましょう。汚れた靴やサンダル、ヒールの高い靴は不快感を与えます。髪型や化粧・香水派手すぎず、不快に感じない程度とします。女性の長い髪はまとめておきましょう。手・爪意外と目に付くものです。手は清潔にしておき、爪は短く切っておきましょう。派手なマニキュアはよくありません。その他患者さんのお宅に訪問して、中に招かれた時には、脱いだ靴はそろえましょう。社会人として当たり前のことかもしれませんが、こうしたことが「信頼関係を築く」第一歩です。加えて、以前の記録や情報があれば、患者さんに会う前に確認しておくとよいでしょう。次は、「患者さんと接するとき」についておさらいしましょう。

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製薬会社からのボールペン、カレンダーの提供がついに世界的に禁止へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第16回

この年末年始に「あれ? カレンダーの数が少ないかも?」と思った薬剤師さんもいるのではないでしょうか。これまでは製薬会社のMRさんが年末や新年のあいさつに来られたときに、カレンダーや手帳などを持ってきてくれることが多くありましたが、2019年1月1日より、製薬会社のプロモーションに関連するルールが変更になり、今後はもらえなくなります。医療用医薬品のプロモーション活動に関する行動基準を示した日本製薬工業協会(製薬協)の「コード・オブ・プラクティス(COP)」の改定版が来年(編集部注:2019年)1月に施行される。(中略)会員企業はCOPを参考にして自社の基準を見直すことになる。今回の見直しで加盟会社は、来年1月以降はカレンダーや付箋紙、マウスパッドなどを医療機関に配れなくなる。(2018年12月19日付 日刊薬業)このコード・オブ・プラクティス(COP)の改定版は年明けからの施行でしたので、年内の配布は制限されていませんでした。しかし、年明けから配布禁止になるとわかっていたため、カレンダーの作製自体をやめた製薬会社もあったと聞きます。これはカレンダーだけでなく、ペン、メモ帳や付箋などでも同様です。すでに製薬協が加盟する国際製薬団体連合会のCOPが見直されており、製薬協のCOPもこれに合わせたということですので、このような医療者への物品提供の禁止は世界的な流れであると言えます。なお、これまで「国民的、文化的または宗教的な行事における贈り物の習慣」として除外されていた香典や供花、月餅の例外規定も今回の改定で削除されています。カレンダーやボールペンがもらえなくなる! ということだけでなく、このルールがどのようなもので、なぜ作られたのか、ということを知ることが大事だと思っていますので、背景を振り返りたいと思います。説明会時のペンやメモの配布は可能COPとは、医療用医薬品のプロモーションのあり方を定めたもので、会員会社である製薬会社のすべての役員・従業員が医療関係者や研究者、患者団体を含めた外部の関係者と接する際の行動基準です。かつては、医薬品購入時にキャッシュバックが行われたり、100錠の注文に100錠をサービスしたりする、というような過剰なサービスがありました。事実上の値引きや付加価値をつけることによって不当な購入を誘引することは問題ですよね。最近ではここまでひどいことは耳にしなくなりましたが、職場で使用するような販促物品や少額物品の提供は許容されていました。今回の改定により、付箋やボールペン、カレンダー、ティッシュなどの販促物品や贈り物の医療者への提供が禁止されますが、製薬会社が開催する説明会や研究会で、メモを取る目的でボールペンやメモ帳を渡すことは今後も可能です。血圧手帳などを製薬会社からもらっている薬局も多いと思いますが、これらも配布を継続できますが、製品名の記載は原則できません。これらの基準は一般的なものですので、外資系企業を中心に、企業によってはもっと厳しい自主ルールを規定するところもあると聞きます。これら規定の対象は主に製薬会社であり、医療者はこれらに拘束されるわけではありませんが、サービスの請求はMRさんに規約違反をさせることになったり、医療業界の信用を失墜させたりする可能性があることを知っておく必要があると思います。MRさんからもらったペンやメモ帳を主に使っている、という方もいると思いますが、自分の身に着けるものを厳選する、というのも作業効率化や自己演出にいいなぁと思っています。私は小児科の処方箋を受ける薬局で勤務していたとき、人気のあるキャラクターがバタバタ動くボールペンでお子さんの興味をよく引いていて、とても役に立っていました。新しい年に心機一転、自身や薬局で使用する物を見直してみてはいかがでしょうか。

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第10回 初心忘るべからず~心電図に先入観は禁物~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第10回:初心忘るべからず~心電図に先入観は禁物~新年、明けましておめでとうございます。2019年が皆さまにとって素敵な1年になるといいですね。おかげさまで、本連載も10回目を迎えることができ、今後ますます、心電図に関するわかりやすく有益な情報発信をしてゆく所存です。さて、新年一発目は初心にかえるべく大事な症例を扱いましょう。症例提示67歳、男性。糖尿病、高血圧で治療中。10年前に冠動脈インターベンション(PCI)実施の既往あり。4ヵ月前にも急性冠症候群(ACS:Acute Coronary Syndrome)で入院し、再狭窄(ステント内高度狭窄病変)の治療がなされていた。1ヵ月前から明け方の胸部不快・倦怠感が出現し、2週間前に救急外来を受診。諸検査結果から“帰宅可”とされた。今回は定期外来で受診し、以下のように症状を訴え、緊急入院となった。『今朝もまた調子が悪かったです。こないだ救急で来たときは大丈夫って言われました。前回の狭心症の時より軽いような気がするんですけど、なーんかやっぱり変なんです』定期外来時(図1)および救急外来時(図2)の心電図を以下に示す。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する(図2)救急外来時の心電図(2週間前)画像を拡大する【問題1】外来時の心電図(図1)の所見として正しくないものを2つ選べ。1)心室期外収縮2)心房細動3)ST低下4)異常Q波5)房室ブロック解答はこちら2)、4)解説はこちら1)×:肢誘導3拍目はワイドで洞周期のタイミングよりも早期に出ており、「心室期外収縮(PVC)」で間違いありません2)○:自動診断下部のコメントを見ると「心房細動が疑われます」となっていますね。でもこれは誤り。“悪魔のささやき”です(笑)。期外収縮の部分を除いてR-R間隔も整で、特徴的なf波(細動波)もありません(第4回)3)×:目を皿のようにして眺めると、I、II、そしてV2~V6誘導で「ST低下」があります。しかも、心筋虚血ありの時に多い“悪性”な「水平型」のようです4)○:aVR誘導を除き、最初に陰性に振れているQRS波はどこにもありません5)×:自動診断の「房室ブロックII度(Mobitz)」は×ですが、選択肢の「房室ブロック」は正しいです。これが最初から一人で見抜けたのなら、今回ボクから学ぶことはあまりないかも!?お決まりの読み“型”を思い出せ!さぁ、2019年はじめの症例は、冠危険因子リッチで、実際に心カテ治療歴もある男性です。ただ、今回は循環器外来での一場面。4ヵ月前に緊急PCIをされた時とは性状が少し違う、弱い胸部症状を訴えています。まずは、心電図(図1)を系統的な読み“型”(第1回)で判断すると、R-R間隔は不整、心拍数は期外収縮がない右側(胸部誘導)に対して検脈法を用いると48/分ですし、また、全体の10秒間の記録からは60/分(QRS波が10個)と算出できます(第3回)。ちなみに、どうしても最初に自動診断に目がいく人! それ自体は別に構いませんが、できれば自分で系統的な読みをした上での“たしかめ”に活用するほうが良いでしょう。次に、“ピッタリ”のP波はカタチがやや気になりますが、「向き」的には洞調律ですかね(第2回)。以下“クルッとスタート バランスよし!”でひっかかるのは、“スター”部分のST変化。なんだかST低下がありそうです。ここで、なーんかオカシイナと思ったら…過去の心電図との比較が重要です。この人の場合、2週間前にも同じような症状で救急受診しているので、その際の心電図(図2)と比べてみます。冠動脈疾患の既往がガッツリある人なので、どうしてもST変化に目がいってしまうのは医師の“性”でしょうか。現場では2枚の心電図を横に並べて、どこが変化したのかを見るのでしょう(そんなクイズも世間にありますね)。すると新規にST低下が出現しており、しかも虚血性ST変化としては“ホンモノ”を示唆することが多い「水平型」ではないですか! 左室肥大で見られるV5・V6誘導でのQRS高電位所見を伴わないST低下であることも重要だとボクは考えます。つまり、 このST変化は左室肥大では説明できないわけです。また、ST変化以外に今回問題となるのは、自動診断でも挙げられている「房室ブロック」です。細かく言うと「房室ブロックII度(Mobitz)」なので間違いもありますが、心電計がP波をきちんと認識できているということですから、ある意味スゴいです。これらの問題点を踏まえて次の問題をどうぞ。【問題2】心筋トロポニン、CK・CK-MBの上昇はなく、心エコーでの左室壁運動異常もなかった。以上のことからどんな病態を想定し、どうマネジメントするか?解答はこちら病態の想定:ACSや有症候性徐脈(房室ブロック)、冠攣縮性狭心症などマネジメント:冠動脈造影、房室ブロックの精査・加療を行う解説はこちらこの問題は、今回ボクが最も伝えたいことに関係します。この方は採血や心エコーでの異常はないようです。でも、濃厚な狭心症治療歴、加えて新出のST変化、とくに水平型ST低下ですから、冠動脈病変、なかでもACS再発を第一に疑うこと自体は悪くありません。“早朝だけ”のようなキーワードから「冠攣縮性狭心症」を思い浮かべた人もセンス良しです。また、既往にも以前の心電図にもない「房室ブロック」が認められていますので、これに関連した胸部症状ではないかどうかも疑うべきです。マネジメントとしては…狭心症を疑い、冠動脈造影を実施。また、房室ブロックについても精査する必要がありますね。実際、この方は「不安定狭心症(急性冠症候群)」の疑いで緊急入院となりました。これはGood-Jobだったのですが、まずかったのは、“その他”の選択肢を考えるのをやめてしまったこと。心臓カテーテル検査を行って冠動脈狭窄(動脈硬化症)や冠攣縮を評価し、場合によっては血行再建治療をすると同時に、もう一つの大きな異常である「房室ブロック」への対処も想定してこそデキるドクターです。徐脈に関連した症状や心不全徴候ありと考えればペースメーカー植え込みの適応がありますし、その前に一時ペーシングを行う必要性はありませんか…?ST部分にばかり気をとられて、心電図から「房室ブロック」を指摘できない人は、その先に進みようがありません。ST変化のほかに不整脈もあるぞ!病歴や背景因子からして、患者さんの胸部症状の原因として、冠動脈疾患(虚血性心疾患)を疑うのは定石ですし、できて当然だと思います。この方は左冠(状)動脈(前下行枝)に治療歴があり、心電図(図1)をよく見るとaVR誘導でST上昇もあるので、『かなり上流でのヤバイ病変なのでは…』と、とらえる人もいるかもしれません。もちろん、悪くないでしょう。同日に入院後、“準緊急”でなされた冠動脈造影では、ステント狭窄やほかの新規病変もありませんでした。そのためか、この時点で担当医は、心電図(図1)に心室期外収縮以外の大事な不整脈があるということを完全に見落とし、安心しきってしまいました。たしかに、心拍数もメチャクチャ遅いわけでもない、期外収縮もある、「心拍数62/分」と表示されていた…そのため「徐脈性不整脈」の存在と影響を頭に思い描くことができなかったのでしょう。ここで、心電図(図1)より抜粋したV1誘導(あるいは“僧帽性P”に見えるII誘導)を見て下さい(図3)。(図3)心電図(図1)よりV1誘導のみ抜粋画像を拡大する左から奇数個目のP波はブロックされており、QRS波は続きません。つまり、2:1房室ブロックと診断できるんです。自動診断の言う「II度(Mobitz)」ではなく、「2:1房室ブロック」。これが正しい心電図診断です。「2:1」というのは、“つながる”(房室伝導できる)と“落ちる”(房室伝導できずにQRS波が脱落する)が交互にくるという意味です。担当医はまず、2週間前の心電図(図2)のV1誘導と比べて、明らかにT波のカタチが変わっている(おかしい)ことに気づくべき(クルッ“ト”チェックの時点でね)。図中の矢印はP波ですよ! QRS波の直前にコンスタントにあるP波とまったく同じ波形がT波終末部に重なっているのです。このようにV1誘導のP波は、“2相性”であるなど目立つ形状のことも少なくありません。なので、P波の認識が外せない不整脈解析において、ほかよりもV1誘導が不整脈を読み解くのに適している理由の一つなんです。心電図のメッセージは漏れなく受信したい実際のカルテには「洞調律、以前にないST低下」という記載のみで、カテの翌日に退院可とされていました。サマリーにも房室ブロックに関する言及はありませんでした。この房室ブロックは間欠的(一過性)だったため、めまいやふらつき、息切れなどの典型的な徐脈症状もこの患者さんにはありませんでした(その後しばらく外来心電図でも房室ブロックなし)。そのためか、退院後も不定期に続く類似の訴えが問題提起されませんでした(外来担当医には“真実”が見えてなかったためでしょう)。そして緊急入院から半年以上も後のこと。患者さんは『以前は、時折、朝だけ出現していた症状が、最近は1日中になって身体全体が重くてだるい』と訴えて、再び救急受診することになります。この時に担当した別の医師は、「2:1房室ブロック」に気づき、最終的にペースメーカー植え込みがされました。幸い、術後は胸部症状と倦怠感が完全に消失(主訴が房室ブロックによるものであることを示唆しています)したそうです。めでたし、めでたし。ちなみに、心電図(図1)で認められたST低下についてはどうでしょう?血行再建を要するほどではない狭窄が数カ所あり、それが房室ブロックに伴う徐拍化で相対的に心筋虚血を生じた可能性などを考えますが、正確な機序に関しては難しいように思います。最後に述懐。当初、入院担当医、そして心カテも含め指導した上級医(外来医)は共に循環器医でした。彼らを笑う、あるいは責めたところで、何も問題は解決しませんし、ボクが最も嫌いなことです。むしろ“人の振り見て我が振り直せ”。先入観は時に“プロ”であっても盲目にさせるもの。担当者が心電図の放つメッセージをすべて受信できていたら、今回のようなジャッジには絶対ならなかったはずですし、どんな立場の医師であろうと、患者さん本人や家族にとっては“ヤブ医者”と感じるかもしれません。でも、もし半年前にペースメーカーを入れてあげられていたら、患者さんをもっと早く快適にできたわけですし、もしも「冠動脈狭窄なし=冠攣縮」のような短絡的思考でジルチアゼムなどを処方していたら、医原性に完全房室ブロックを作っていた可能性もあります。すべてがすべて、心電図の“読み落とし”に起因する結果と考えられませんか…?もちろん仮定の話で、悲観しすぎかもしれませんが。『この患者さんは“冠疾患の人”だから…』だと決めつけて、心電図でST変化だけしか見ない医師に“正解”は見えません。心電図を読む時は、まず先入観なく真っ白な気持ちで読むのです。その上で所見を解釈し、行動に移す段階で患者背景などの追加情報を乗せるのが正しい“順序”なのです。過剰な先入観の怖さ、そして系統的な心電図判読の重要さ…それを本症例が教えてくれている気がします。サン=テグジュペリの星の王子さまは、「大切なものは目に見えない」と言いました。ただ、心電図の場合には少し違います。すべて“見えてる”んです。でも、読む側の頭と心とが整わないと消えてしまうだけ。「心電図は漏れなく系統的に読むぞ!」皆さんが新年にDr.ヒロと改めてそう誓ってくれることを祈りたいと思います。Take-home Message1)「異常かな?」と思う所見があったら、必ず過去の心電図と比較せよ!2)強すぎる先入観は、心電図を読む上では障害! まずは頭を“真っ白”にして読もう3)不整脈解析にはV1誘導が最適な判断材料となることが多い【古都のこと~下鴨神社~】ボクの初詣といえば下鴨神社。この名前、実は通称で、本当は賀茂御祖(かもみおや)神社と言うそうです。1994年(平成6年)、世界遺産に登録されたこともあり、今年も全国からの参拝客で大賑わいでした(写真は早朝に撮影)。ボクの元日は家族とともにご祈祷を受けることから始まるのですが、このご祈祷、国宝の本殿に通されてさい銭を投げる参拝客の真ん前で執り行われるのです。そんな気恥ずかしさや足に心地よい玉砂利の感覚を味わうのが、ここ数年恒例の醍醐味なのです。

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第20回 病院薬剤師は地域包括ケアに関係ないなんて大間違い!【週刊・川添ラヂオ】

動画解説病院薬剤師は地域包括ケアにあまり関係ないなんて大間違い。入退院のタイミングでも地域包括ケアについて考えることはたくさんあります。まず入院時の持参薬チェックでは、お薬手帳の重要性を再確認するはずです。そして退院時には、今後どのような支援が必要になるのかを考えなければなりません。患者さんが入院時も退院後もスムーズな治療が受けられるよう、病院外の他職種との連携を深めましょう!

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