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消化管障害と相互作用が少ない二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「オルケディア錠1mg/2mg」【下平博士のDIノート】第9回

消化管障害と相互作用が少ない二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「オルケディア錠1mg/2mg」今回は、「エボカルセト錠(商品名:オルケディア錠1mg/2mg)」を紹介します。本剤は、既存のシナカルセト錠(商品名:レグパラ錠)と同等の有効性で、上部消化管に関する副作用の軽減が期待されます。<効能・効果>維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症の適応で、2018年3月23日に承認され、2018年5月22日より販売されています。副甲状腺細胞表面のカルシウム(Ca)受容体に作用して、副甲状腺ホルモン(PTH)の合成と分泌を抑制することで、血清PTHや血清Ca濃度を低下させます。<用法・用量>通常、成人には、エボカルセトとして1日1回1~2mgを開始用量として経口投与します。以降は、PTHおよび血清Ca濃度の十分な観察のもと、1日1回1~8mgの間で維持量を適宜設定します。効果不十分な場合には、1日1回12mgまで増量することができます。なお、増量を行う場合は増量幅を1mgとし、2週間以上の間隔をあけて行います。<副作用>国内臨床試験において、安全性評価対象の493例中、臨床検査値異常を含む副作用が208例(42.2%)に認められました。主な副作用は、低Ca血症83例(16.8%)、悪心23例(4.7%)、嘔吐20例(4.1%)、腹部不快感18例(3.7%)、下痢16例(3.2%)でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、PTHの過剰な分泌を抑え、血液中のCaとリン(P)の濃度を下げる作用があります。2.しびれ、痙攣、気分不良、不整脈、血圧低下が起こることがあります。このような症状が現れた場合は、すぐに連絡してください(低カルシウム血症の症状)。3.この薬を使用中に妊娠が判明した場合は、ただちに使用を中止して連絡してください。4.透析療法下の二次性副甲状腺機能亢進症では、薬による治療とともに食事療法も併せて行い、体内のPとCa、PTHのバランスを整えることが大切です。<Shimo's eyes>二次性副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺以外の病気が原因でPTHが過剰に分泌される疾患で、腎機能の低下によっても生じます。PTHは血液中のPとCaを調節するホルモンであり、PTHが過剰に分泌されると、血液中のCa濃度が上がって骨折しやすくなったり(骨吸収)、血管などにCaが沈着・石灰化して動脈硬化や心臓弁膜症などを引き起こしたりします。透析下の二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療としては、従来から活性型ビタミンD製剤やP吸着薬が用いられてきましたが、2008年にCa受容体作動薬であるシナカルセト錠が承認され、血清Ca濃度を上昇させずにPTH分泌を抑制し、有意に血清PTH濃度を低下させることができるようになりました。しかし、上部消化管に対する副作用のため、十分な効果を示す用量まで増量できないこともありました。本剤は、シナカルセトに続く2剤目の経口Ca受容体作動薬であり、シナカルセトと同様に1日1回の服用で同等の有効性を示すことが確認されています。一方で、上部消化管に関する有害事象は本剤投与群317例中41例(12.9%)、シナカルセト群317例中77例(24.3%)と少ない傾向が見られました(第III相実薬対照二重盲検比較試験)。そのため、服薬アドヒアランス向上による治療継続率の向上が期待されます。本剤の代謝経路はタウリン抱合とグリシン抱合であり、CYP関連で併用注意の対象薬がなく、他剤併用のリスクが軽減されています。ただし、妊婦には禁忌なので注意が必要です。

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加齢黄斑変性の抗VEGF阻害薬治療、3年後視力と強い関連

 滲出型加齢黄斑変性症(nAMD)に対する抗血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬への初期反応を基に、長期視力予後を予測できるだろうか。オーストラリア・シドニー大学のVuong Nguyen氏らは、前向き観察研究において、抗VEGF阻害薬の4回目の投与までに良好な視力を達成することは、3年後の視力のアウトカムと強く関連しており、その他のパラメータは中等度の関連があることを明らかにした。著者は、「導入期の3ヵ月間におけるローディングドーズによる初期反応は、その後の治療方針決定を左右するのに役に立つ」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2018年8月24日号掲載の報告。 研究グループは、Fight Retinal Blindness! outcome registryにおいて2007年1月1日~2014年3月1日の期間に抗VEGF阻害薬による未治療nAMD患者を対象に、治療開始後最初の3ヵ月に抗VEGF阻害薬を3回投与した。初期反応を4回目の投与までに発生したものとして定義し、3年後の視力との関連を調査した。また、1)良好なVAの達成(70文字以上[20/40])、2)ベースラインからのVAの絶対的変化、3)脈絡膜新生血管病変が非活動性と最初に評価されるまでに要する時間、4)連続投与におけるVAの最大変化率の4項目について評価した。 主要評価項目は、3年経過時にVAが70文字以上を達成している眼の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、未治療nAMD患者1,828例の2,051眼であった。・3年経過時の視力良好の達成は、以下の4つと有意に相関した。1)4回目の投与までに良好な視力を達成(VA≧70文字vs.VA<70文字におけるオッズ比[OR]:9.8、95%信頼区間[CI]:6.5~14.7)。2)投与初期にVA低下と比較してVAが改善:(視力改善が1~5文字と少ない場合OR:1.8、95%CI:1.2~2.6、p=0.002)、5文字よりも多い場合(OR:1.8、95%CI:1.3~2.5、p<0.001)。3)病態が非活動性になるまでの投与回数の少なさ:≦3回 vs.>3回(OR:1.6、95%CI:1.2~2.1、p<0.001)。4)連続投与期間における緩徐な病態変化(-4~4文字)と急速な視力改善(>5文字):急速な視力低下(OR:1.7、95%CI:1.1~2.6、p=0.015)vs.急速な視力低下(OR:1.6、95%CI:1.1~2.3、p=0.018)。・投与初期の視力改善が少ないもしくは多い眼は、3年経過時に同等の視力を達成し(それぞれ65.0文字、64.7文字)、投与初期にVAが低下した眼(57.2文字)より視力良好であった。

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アスピリンは、糖尿病患者にとって有益か有害か/NEJM

 アスピリンは、糖尿病患者において重篤な血管イベントを予防するが、大出血イベントの原因にもなることが、英国・オックスフォード大学のLouise Bowman氏らが行ったASCEND試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年8月26日号に掲載された。糖尿病により、心血管イベントのリスクが増加する。アスピリンは、閉塞性血管イベントのリスクを抑制するが、糖尿病患者の初回心血管イベントの予防におけるその有益性と有害性のバランスは不明とされる。心血管疾患がない糖尿病患者で有効性と安全性を評価 本研究は、糖尿病患者におけるアスピリンの有効性と安全性を評価する進行中の無作為化試験であり、ファクトリアルデザインを用いて、同時にω-3脂肪酸の検討も行われた(英国心臓財団などの助成による)。 対象は、年齢40歳以上、型を問わず糖尿病と診断され、心血管疾患がみられず、抗血小板療法の有益性が実質的に不確実な患者であった。被験者は、アスピリン100mgを1日1回服用する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、初回の重篤な血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中[頭蓋内出血を除く]、一過性脳虚血発作、血管死[頭蓋内出血を除く])とした。安全性の主要アウトカムは、初回の大出血イベント(頭蓋内出血、失明のおそれのある眼内出血、消化管出血、その他の重篤な出血)であった。副次アウトカムには、消化器がんなどが含まれた。重篤な血管イベント12%低下、大出血イベント29%増加 2005年6月~2011年7月の期間に1万5,480例が登録され、アスピリン群に7,740例、プラセボ群にも7,740例が割り付けられた。ベースラインの平均年齢は、アスピリン群が63.2±9.2歳、プラセボ群は63.3±9.2歳、男性がそれぞれ62.6%、62.5%であった。両群とも、2型糖尿病が94.1%を占め、罹患期間中央値も同じ7年(IQR:3~13)だった。 全体の平均フォローアップ期間は7.4年、平均アドヒアランス率は70%であった。 重篤な血管イベントの発生率は、アスピリン群が8.5%(658/7,740例)と、プラセボ群の9.6%(743/7,740例)に比べ有意に低かった(率比[RR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.79~0.97、p=0.01)。探索的解析として、フォローアップ期間別の評価を行ったところ、このアスピリンの効果は5年までで、それ以降は、実質的にイベントは抑制されなかった。 これに対し、大出血イベントの発生率は、アスピリン群が4.1%(314/7,740例)と、プラセボ群の3.2%(245/7,740例)に比し有意に高く、アスピリンの有害な作用が示された(RR:1.29、95%CI:1.09~1.52、p=0.003)。出血への影響には、経時的な減衰は示唆されなかった。また、頭蓋内出血(1.22、0.82~1.81)と失明のおそれのある眼内出血(0.89、0.62~1.27)には両群間に有意な差はなく、消化管出血(1.36、1.05~1.75)とその他の重篤な出血(1.70、1.18~2.44)がアスピリン群で有意に高頻度であった。 ベースライン時の重篤な血管イベントの推定5年リスクが高い患者ほど、重篤な血管イベント/血行再建術、および大出血の頻度が高かった。 消化器がん(アスピリン群:2.0% vs.プラセボ群:2.0%)および全がん(11.6 vs.11.5%)の発生率には、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「アスピリンの絶対的な有益性は、そのほとんどが出血の有害性によって相殺された」とまとめ、「がんについては、今後、長期のフォローアップを行う予定である」としている。

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第5回 ワークライフバランスに悩んだら、思い出してほしい言葉【週刊・川添ラヂオ】

動画解説川添先生が薬剤師によく質問されるテーマに、ワークライフバランスがあるそうです。新卒からベテランまで、実にさまざまな薬剤師に聞かれるので、薬剤師にとって普遍的なテーマなのではないかと考えるようになったと言います。目の前の患者さん、家で待つ幼い子ども、年老いた親。誰との時間を優先したらいいのか、もちろん正解はありません。「よく遊び、よく学び、よく働こう」。川添先生が作り、今もくろしお薬局で受け継がれている社のモットーに、先生にとっての“答え”があります。その真意とは?

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地方病院の認知症やせん妄患者に対するボランティア介入が再入院率に及ぼす影響

 地方の急性期病院における、認知症、せん妄、せん妄リスクを有する患者に対するパーソン・センタード(person-centered)のボランティアプログラムが臨床アウトカムに及ぼす影響について、オーストラリア・Southern NSW Local Health DistrictのAnnaliese Blair氏らが検討を行った。International Psychogeriatrics誌オンライン版2018年8月13日号の報告。 本研究は、非無作為化比較試験として実施された。対象は、オーストラリアの農村部にある急性期病院7施設に入院している高齢患者。介入群270例は、65歳超の認知症またはせん妄の診断を受けた、もしくはせん妄のリスク因子を有する患者で、ボランティアサービスを受けていた。対照群188例は、ボランティアプログラム開始12ヵ月前に同じ病院に入院し、時期が違えばボランティアプログラムの適格基準を満たしていただけであろう患者。ボランティアプログラム介入では、訓練を受けたボランティアスタッフによる、栄養・水分補給、聴覚・視覚補助、活動、オリエンテーションに焦点を当てた1:1のパーソン・センタード・ケアを提供した。ボランティアの訪問、診断、入院日数、インシデント行動、再入院、指定率、死亡、介護施設への入所、転倒、褥瘡、薬剤使用について、医療記録より評価した。 主な結果は以下のとおり。・全施設において、介入群では、1:1指定率、28日再入院率に有意な低下が認められた。・入院日数は、対照群において有意に短かった。・介入群と対照群において、その他のアウトカムに差は認められなかった。 著者らは「ボランティア介入は、地方の病院における認知症、せん妄、せん妄のリスク因子を有する急性期の高齢患者をサポートするうえで、安全かつ効果的で、再現可能な介入である。今後は、コストへの影響、家族の介護者、ボランティア、スタッフ経験に関しても報告を行う予定である」としている。■関連記事日本の認知症者、在院期間短縮のために必要なのは認知症患者と介護者のコミュニケーションスキル向上のために米国の長期介護における向精神薬を使用した認知症ケア改善に関する研究

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第3回 カリメート処方が査定/ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定/心筋梗塞でのH-FABP検査の査定/自己免疫疾患の臨床検査での査定【レセプト査定の回避術 】

事例9 カリメート処方が査定高カリウム血症で、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(商品名:カリメート散)15gを処方した。●査定点カリメート散15gが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」で「急性および慢性腎不全に伴う高カリウム血症」と記載されているにもかかわらず、「急性および慢性腎不全」の病名が漏れていました。※とくに、高カリウム血症で他から紹介された患者の場合などで「急性および慢性腎不全」の病名が漏れやすいので注意が必要です。事例10 ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定ヘリコバクター・ピロリ感染症で、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン(商品名:ランサップ800)を7シート処方した。●査定点ランサップ800の7シートが査定された。解説を見る●解説ランサップ800は、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシンの3種類の経口剤が1つのシートにまとめられています。ランソプラゾールの「効能・効果」では、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍」の病名が求められていますので、ヘリコバクター・ピロリ感染症と胃潰瘍または十二指腸潰瘍の病名が必要になります。事例11 心筋梗塞でのH-FABP検査の査定急性心筋梗塞(3ヵ月前の診療開始日)で、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査を請求した。●査定点心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査が査定された。解説を見る●解説心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査は、「急性心筋梗塞の診断を目的に用いた場合」のみ算定できるとされています。検査結果についても、心筋細胞が障害を受けると、速やかに約1時間から上昇をしはじめ、5~10時間後でピークになります。そのため3ヵ月前の診療開始日では査定の対象になります。事例12 自己免疫疾患の臨床検査での査定全身性エリテマトーデス、急速進行性糸球体腎炎で、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)、ループスアンチコアグラント定量検査を請求した。●査定点ループスアンチコアグラント定量検査が査定された。解説を見る●解説抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)は「急速進行性糸球体腎炎の診断又は経過観察のために測定した場合」のみ算定でき、ループスアンチコアグラント定量検査は「抗リン脂質抗体症候群の診断を目的として行った場合」に限り算定することになっています。両病名が記載されていないと査定の対象となります。

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認知症は1種類だけではないはず(解説:野間重孝氏)-912

 認知症とは「後天的要因(脳疾患、全身疾患、その他の外因)が原因で社会生活や職業の遂行が困難なレベルにまで多領域の認知機能が障害された状態」と定義され、わが国では65歳以上の15%、85歳以上では4割を超えると報告されている。 少し回りくどいようだが、この論文を検討するに当たって重要なことなので、認知症に関する基本的な知識を整理してみよう。まず認知症は変性性認知症と血管性認知症に2大別される。前者の代表がアルツハイマー病であり、その他レビー小体認知症、前頭側頭型認知症(ピック病を含む)が含まれる。前者が人格変化を伴うのに対して、血管性のものでは人格は保たれる例が多い。進行は前者が緩徐ながら常に進行していくのに対し、後者では段階的に進行することが特徴とされる。 ここで重要なことが2点ある。まず認知症のかなりの部分を占める変性性認知症(アルツハイマーだけで認知症の約半分を占める)では原因が特定できないことで、高血圧・糖尿病・心疾患などとの明らかな相関が認められているのは血管性のものだけだということ。第2点はマスコミがアルツハイマー病による若年性認知症などを取り上げて話題にすることが多いため、変性性認知症は年齢と関係がないと思っている向きも多いが、高齢者に多い、つまり年齢との相関があることははっきりしている。一方、逆に血管性というと高齢者の病気とばかり考えられがちだが、若年型も相当数いるという事実である。血管性認知症が全認知症に占める割合は20%~30%とされており、予防・治療には血圧の管理が最も重要であることはすでにわかっている事実である。 このような点を踏まえてこの論文を読み返してみると、奇妙な点に気付くはずである。認知症の型分類がなされていないのである。米国心臓協会の提示するライフ シンプル7が健康寿命を延長するということには誰も異論がないとして、ではどの型の認知症をどの程度予防するのか。こうした健康基準がアルツハイマー病やピック病の予防にも適応されるというのだろうか。 評者はフランスにおける認知症事情については決して詳しくはないが、同国では本年(2018年)8月にアルツハイマー病に対する薬物療法の有効性が問題となり、かなり広い範囲の認知症治療薬が保険適用外になることが議論を呼んでいることは承知している。つまり認知症の型分類は当然重要問題として認識されているものと考えられる。「認知機能低下や認知症と関連するリスク因子を予防するため、心血管の健康増進が望まれる」といった健康増進のための標語のような結論が、なぜこのような有力雑誌で受け入れられたのか、評者には謎に思われてならない。

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第7回 スタチンの服薬アドヒアランスに影響する7つの要因【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 服薬アドヒアランスの改善は服薬指導における大きなテーマの1つです。とくに、すでに生じている症状の改善ではなく、将来的な発症の予防目的で長期的に服用する薬では、服薬アドヒアランスが低くなりがちですので、薬剤師としてどのような視点でアプローチすべきか試行錯誤されているのではないでしょうか。服薬アドヒアランスが低下しがちな薬剤の代表格であるスタチンは、服用6〜12ヵ月で25%〜50%の患者が服薬を中止し、2年経つころには75%に達するという推計(Brown MT, et al. Mayo Clin Proc. 2011;86:304-314.)もあります。心血管イベントリスクの高いほうではとくに服薬指導時の説明の工夫が必要です。そこで今回は、スタチンの服薬アドヒアランスに影響する要因を検討した質的研究を統合したシステマティックレビューを紹介します。なお、質的研究とは、インタビューや観察を通して被験者の行動やプロセスを分析して解釈的理解を行うことを目的とした研究です。Patient beliefs and attitudes to taking statins: systematic review of qualitative studies.Ju A, et al. Br J Gen Pract. 2018;68:e408-e419.このシステマティックレビューは、スタチンの服用に対する患者の視点、経験および態度について明らかにすべく、2016年10月6日までにPsycINFO、CINAHL、Embase、MEDLINEの各データベースや博士号論文から、スタチンに対する成人患者の視点に関する質的研究を検索し、得られた各文献からすべての文章と被験者のコメントを抽出してテーマ別に分析しています。主だった研究データをすべて反映させているため、情報の透明性は高そうです。最終的に8ヵ国、22〜93歳の888例からなる32の研究がレビューに含まれ、服薬アドヒアランスに影響する7つの要素が見い出されました。 1.予防効果の信頼(有効性の信頼、長期的な致命的心血管イベントリスクの最小化、安定したコレステロール値の獲得、高コレステロール状態の不安緩和) 2.ルーティン化(日常生活への取り込み) 3.薬理効果への疑問(効果の不認識、薬理学的メカニズムの不確実性) 4.医療に対する不信(過剰投与ないし医師の処方動機に対する疑い、治療開始へのプレッシャー) 5.健康への脅威(副作用リスク、体への毒性) 6.病気の実感(薬物に頼らざるを得ないことへの恐れ、治療意欲の喪失) 7.経済的な負担結果として、1のスタチンが心血管イベントを予防できるという期待と、2のスタチン服用を日常生活に取り入れることで服薬アドヒアランスが改善した一方で、3〜7の要素は障壁となりやすい傾向にありました。7つの要素から見えてくる具体的なアプローチ7つの要素からどのようなことが見えてくるでしょうか。たとえば、治療目的や将来期待できる効果について説明する、残薬の話から生活習慣の話へつなげて服薬の習慣への組み入れをアドバイスする、患者さんの性格や理解度別に丁寧に処方の理由や薬の作用を説明するなど、当たり前のようで漏れがちな取り組みかもしれません。残薬確認1つとっても聞き方はさまざまで、「処方薬を全部服用するのは大変かと思いますが、どのくらい飲み忘れたりしますか?」「何か事情があって中止されたお薬はありますか?」「何か気になる副作用はありましたか?」など批判的にならないように聞くのもよいでしょう。効果やリスクなどは、絶対リスク減少率など誤解をしにくい指標で期待できる効果をお伝えすることも患者さんの治療受容度に寄与しうるという研究もあります(Stovring H, et al. BMC Med Inform Decis Mak. 2008;8:25.)。冒頭の論文で例として挙げられている患者コメントの中には、「体調は悪くないので、服用すべきかわからない。効果の実感がない」「ずっと飲み続けなければならないのか不安」などネガティブなものから、「未来のために今服用する」「薬が効いているし、服用で健康になっているように感じられる」「ひげそり、コーヒーを入れるという朝のルーティンの一環で毎朝同じ時間に服用する」という積極的なものまで、アドヒアランス向上のヒントとなるような実践的な要素が散りばめられています。患者さんが日頃どのようなことを考えながら治療を受けているのかを知り、アプローチを考えてみてはいかがでしょうか。1)Brown MT, et al. Mayo Clin Proc. 2011;86:304-314.2)Ju A, et al. Br J Gen Pract. 2018;68:e408-e419.3)Stovring H, et al. BMC Med Inform Decis Mak. 2008;8:25.

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起業のルールが劇的に変わった!【医師のためのお金の話】第12回

起業のルールが劇的に変わった!こんにちは、自由気ままな整形外科医です。前回は、医師が起業に有利な3つの理由を挙げたうえで、チャンスがあれば起業にチャレンジすることは、理にかなっていることをお話ししました。しかし、医師と起業の親和性が高いことはわかったけど、実際どのようにして新規ビジネスに取り組んだら良いのか皆目見当もつかない…。そんなことを感じている方が、多いのではないでしょうか? もちろん、新規のビジネスを始めるに当たっても、それなりの定石は存在します。今回は、私の経験も踏まえて、このことについてお話ししたいと思います。情報化時代のビジネス成功4原則ビジネスで成功する確率を高めるためには、まずそのビジネスが生き残ることを考えなければなりません。ビジネスを継続することは非常に難しく、新しく生まれたビジネスの9割は、5年以内に消えてなくなると言われています。ビジネスを継続することの難しさが良くわかる数字ですね。そして、ビジネスが立ち行かなくなる原因のほとんどは、コストを上回る収益を獲得することができないからです。このことから、ビジネスを継続させるためには、下記の4つの原則が重要となります。(1)小資本で始められる(2)在庫がない(あるいは少ない)(3)利益率が高い(4)毎月の定期収入が確保できるこの4原則は、ホリエモンこと堀江 貴文さんが提唱されたことで有名になりました。まず(1)の小資本で始めることで、手元資金を温存しつつ、融資による利払いの発生を回避します。理想は自己資金のみでの開業です。そして、(2)の在庫を抑える(もしくはなくす)ことで、資金が寝てしまう(滞留する・活用されないこと)ことや、在庫管理にかかるコストを回避します。(3)の利益率が高いことは、ビジネスを継続させる最大の原動力です。上場企業であれば数%の利益率*でも事業継続が可能ですが、起業したてのビジネスでは最低でも利益率50%以上を目指すべきでしょう。そもそも10%未満の利益率を目的に起業するのでは、貴重な手元資金や自分の時間を投入する価値はないと考えたほうが良さそうです。そして、(4)の毎月の定期収入があると、ビジネスを継続させるうえでとても有利になります。ビジネスで最も難しいことの1つは、新規顧客の開拓です。これは大企業であっても同じで、すべての会社が新規顧客開拓のために、血眼になっていると言っても過言ではありません。苦労して獲得した顧客が1回限りの人ばかりでは、いつまでたってもビジネスは不安定なままです。毎月の定期収入を収益源とするビジネスは、ストック型ビジネスと呼ばれています。代表的なものは、電力会社や通信キャリアです。もちろん、インフラ系企業を今からつくることは不可能ですが、そのビジネスモデルは、大いに参考にするべきでしょう。*この場合の利益率は「経常利益率」を指します2010年以降に起業のルールは劇的に変わった!1990年代に、パソコンのOSソフトWindowsが広く利用されるようになりましたが、ビジネスへの取り組み方を変えるには至りませんでした。2000年代に入ってからインターネットが本格的に社会で普及し始めました。メールが一般化したおかげで、情報伝達のコストが劇的に減少しました。2010年代に入ると、次に述べる4つのツールが、無料もしくは格安で利用できるようになりました。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)オンラインストレージクラウドサービスクラウド会計ソフトこれらインターネット上で提供されているサービスを利用することで、従来であれば大規模な初期投資や維持管理コストが必要だった起業のハードルが劇的に下がりました。このことは、まさに「起業のルールが変わった」と言っても過言ではありません。ビジネス成功の要因として、アイデアがより重要になったのです。このことに気付いたIT業界界隈の20~30代前半の人たちは、新しいアイデアを思い付くと、軽い気持ちでどんどん起業するようになりました。一方で、医師の20~30代前半は専門性を高める時期に相当するため、世の中の流れに乗り遅れている印象を受けます。老婆心ながら、少しもったいない気がします。やはり、リスクはないのでやるしかない!ここまで詳述してきたように、医師免許の持つ経済的安定性とほかからの参入障壁の高さだけではなく、IT技術の劇的な進化も医師の起業を後押しする強力なツールです。何度も申し上げるように、医師は失敗しても失うものがほとんどありません。チャンスがあれば起業にチャレンジすることは理にかなっています。自分には無理だと自ら制限をかける前に、キャリア選択の1つとして、起業も考えてみてはいかがでしょうか。

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第5回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?(協力メンバー12名、複数回答)Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)・・・11名Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)・・・10名Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)・・・9名Moraxella catarrhalis(モラクセラ・カタラーリス)・・・6名Chlamydia pneumoniae(肺炎クラミジア)・・・5名Legionella 属(レジオネラ属)・・・2名Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)・・・2名細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性 奥村雪男オーグメンチン®配合錠が選択されていることから、S. pneumoniae、 H.influenzae(BLPAR※1を含む)、M. catarrhalis。クラリスロマイシンが選択されていることから、M.pneumoniae、 Legionella 属、 C. pneumoniae。市中肺炎であり原因菌が同定されていないため、細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性を考え、原因菌として主要な6つの病原体を全てカバーしていると考えます。点滴を行った時点では細菌性肺炎が強く疑われていたようですが、出張となるので非定型肺炎であった場合でも対応できるようにマクロライドが追加され、このような処方になったと考えます。肺炎の重症度は、「成人市中肺炎診療ガイドライン」1)では、A-DROPシステム<表1>のスコアが0→外来治療、1~2→外来または入院、3→入院治療、4~5→ICU入院としているので、入院が望ましいが外来でも可とのことから、1~2に該当する中等度肺炎と予想されます。※1 BLPAR:β-lactamase-positive ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)非定型肺炎の鑑別診断も参考に 荒川隆之一般成人の市中肺炎なので、細菌性肺炎としてはS. pneumoniaeやH. influenzae、 M. catarrhalis、非定型肺炎としてはM. pneumoniaeやC. pneumoniae、Legionella 属などを想定します。「成人市中肺炎診療ガイドライン」の細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別<表2>を参照すると、この患者さんの場合、1~5の5項目中1、2、5を満たすと考えれば、非定型肺炎を疑う必要もあります。結核菌の可能性も 中西剛明外来なので市中肺炎の3 大原因菌( S. pneumoniae、 H. influenzae、 M.pneumoniae)の中から絞り込みます。尿検査をしているので、S. pneumoniaeの可能性は低い(尿中肺炎球菌抗原で原因菌の絞り込みが可能)、血液検査でマイコプラズマ抗体の検査が可能なこと、1週間点滴に通うようにと提案されている(M. pneumoniaeに感受性のある点滴はミノサイクリンくらいしか外来治療では使えない)ことから、H. influenzaeを疑います。それも、耐性菌の可能性を念頭に、BLPAR/BLNAR※2の線が濃厚です。処方日数が3日なのは、原因菌の特定が完全ではないこと、感受性試験の結果を見て薬剤を変更する余地を残していることが考えられます。加えて、結核の除外診断はついていないと予想できます。もし医師が結核の可能性がないと判断していれば、BLPAR/BLNARに対してレボフロキサシン単剤で処方2)していたでしょう。なお、結核疑いのままレボフロキサシンなどのキノロン系薬単剤で治療を開始することは、「結核診療ガイドライン」3)では禁忌事項に記載されています。※2 BLNAR:β-lactamase-negative ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)複数の原因菌が混合している可能性も 柏木紀久喀痰検査が行われず、血液検査、尿検査を行った上での処方なので、細菌性肺炎か非定型肺炎か明らかでなかったか、または混合感染の可能性も考えますが、セフトリアキソンの点滴を行っているので原因菌不明の細菌性肺炎を主に想定していると考えます。Q2 抗菌薬について、患者さんに確認することは?併用薬と抗菌薬での副作用歴 中堅薬剤師併用薬と、今まで抗菌薬で副作用がなかったか。アレルギーと抗菌薬服用による下痢の経験 柏木紀久ペニシリンアレルギーと、抗菌薬の服用で下痢になったことがあるか。再受診と毎食後に服用可能か ふな33日後の再受診についてどのように指示されているか。食欲・嘔気の有無、食事は規則的か=毎食後で飲めるか。検査結果、既往歴、抗菌薬使用歴 佐々木康弘検査結果について確認したいです。Legionella属、M. pneumoniae、S. pneumoniaeの検査結果は抗菌薬選択に大きく影響します。既往歴や抗菌薬使用歴も確認したいです。気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既往歴があれば、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)も想定した抗菌薬治療が必要ですし、抗菌薬治療していて増悪している場合はニューキノロン系薬剤の使用も考慮します。インフルエンザウイルスへの先行感染 奥村雪男受診時期が冬季であれば、インフルエンザウイルスへの先行感染が無かったか確認したいです。その場合は原因菌としてS. aureusを想定する必要があります。ただ、メチシリン感受性S. aureusであれば、オーグメンチン®配合錠で治療可能と考えます。職業や活動範囲などの情報収集 JITHURYOU患者インタビューの質を上げて、できるだけ多くの情報を得られるよう努めます。喫煙習慣、職業温泉や湖や沼などに最近行ってないか?(Legionella属鑑別)家族など周囲に咳が強く出ている人がいないか?(患者の年齢だと10~20代の子供がいる可能性があり、その年代は比較的M. pneumoniaeが多いとされている)鳥との接触はあるか?(オウム病鑑別)併用している抗菌薬の確認のため、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法を受けているか、COPDなどの呼吸器系基礎疾患があるか(マクロライド長期療法を受けている可能性を考慮)後編では、本症例の患者さんに何を伝える、疑義照会をする/しない 理由を聞きます。1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.[PharmaTribune 2015年12月号掲載]

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なぜ美容整形手術を受けるのか、初の前向き観察研究

 美容整形手術の人気が高まっているにもかかわらず、手術を受ける患者の動機付けとなっている社会文化的な要因やQOLに関わる因子はあまり解明されていない。米国・ノースウェスタン大学のAmanda Maisel氏らは、患者がなぜ侵襲の少ない美容整形手術を受けるのかを包括的に評価する、初となる検討を行った。その結果、一般的な理由は、外見を良くしたいという願望に加えて、感情的、心理的、そして実用的な動機であることが明らかになったという。著者は、「患者の年齢や求める手術における相対的差異については、さらなる調査が必要だろう」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年8月15日号掲載の報告。 研究グループは、侵襲の少ない美容整形手術を受ける患者の動機となる因子の相対的な重要度を評価する目的で、米国すべての地域を代表する大学2施設および皮膚科の診療所11施設にて多施設共同前向き観察研究を行った。2016年12月4日~2017年8月9日の期間に、美容整形に関する診察または治療のために受診した成人患者を対象とし、最近開発された主観的動機付けの枠組みと人口統計学的質問調査票の回答に基づいて調査ツールを完成させた。 主要評価項目は、QOLの各カテゴリーにおいて自己報告された最も一般的な動機であった。副次評価項目は、多く報告されたその他の動機、および特定の手術に関連した動機であった。 主な結果は以下のとおり。・適格患者529例中、511例が研究への参加に同意し登録、調査を完了した。・511例の患者背景は、女性が440例(86.1%)、45歳以上が286例(56.0%)、白人386例(75.5%)、大卒469例(91.8%)、美容整形手術歴2回以上270例(52.8%)であった。・審美的外見(美しい皮膚と若く魅力的な外見に対する願望など)に関連する動機を除くと、身体的健康(健康状態または症状悪化の予防)は475例中253例(53.3%)、心理社会的well-being(幸せを感じたい、自信を持ちたい、QOLを全般的に改善したいなど)は467例中314例(67.2%)、自分へのご褒美またはお祝いは463例中284例(61.3%)、職業上の見栄えは476例中261例(54.8%)が一般的な動機として報告された。・費用や利便性に関連した動機は、低い位置付けだった(483例中68例[14.1%])。・大部分の動機は、内面に生じ、他人ではなく患者自身が満足することを目的としたもので、患者自身が美容整形手術を受けることを決めていた。そのため、配偶者の影響はほとんどなかった。・45歳未満の患者は、老化予防の目的で手術を受けることが有意に多かった(45歳未満:212例中54例[25.5%]vs.45歳以上:286例中42例[14.7%]、p<0.001)。・特定の手術(体形補正、ざ瘡瘢痕治療、入れ墨除去など)を希望する患者は、心理的・感情的な動機が多い傾向が見られた(それぞれ、22例中19例[86.4%]、42例中36例[85.7%]、11例中8例[72.7%])。

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ファブリー病〔Fabry disease〕

ファブリー病のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 定義α-ガラクトシダーゼAの酵素欠損により心臓、腎臓などの組織を中心にグロボトリオシルセラミド(GL-3)が蓄積することにより、心不全、腎不全を来す疾患である。遺伝形式はX-連鎖の遺伝形式をとる。■ 疫学約4万人に1人と推定される。腎不全患者の0.2~0.5%、左室肥大の患者の4%、女性左室肥大の12%、男性脳卒中患者の4.9%、女性患者の2.4%。イタリアでは新生児男児3,100人に1人の頻度、台湾では1,250人に1人と患者頻度は高い。■ 病因ライソゾーム酵素であるα-ガラクトシダーゼの酵素欠損により全身組織にグロボトリオシルセラミド(GL-3)などの糖脂質が蓄積する(図1)。とくに血管内皮細胞に蓄積、心筋、腎臓、リンパ節、神経節など、全身組織に蓄積する。画像を拡大する■ 臨床症状(表1)ファブリー病の臨床症状は多彩である。小児期からの四肢の激痛、無痛、無汗などの自律神経症状、蛋白尿、腎不全などの臨床症状、不整脈、弁膜症、心不全などの心症状、頭痛、脳梗塞、知能障害などの神経症状、精神症状、皮膚症状として被角血管腫、難聴、めまい、耳鳴り、角膜混濁などの眼科症状、咳などの呼吸器症状などを認める。ファブリー病の臨床症状の進展は図1を参照。画像を拡大する■ 分類臨床的には「古典型」、心型、腎型といわれる「亜型」、「ヘテロ接合体女性患者」に分類される古典型(表2)では皮膚症状(被角血管腫)、自律神経症状(低汗、無痛、四肢痛など)を有する。心型、腎型ではこれらの症状は少ない。ヘテロ接合体女性患者では心症状が主体であるが、痛みなどは男性患者と同様に認められる。画像を拡大する■ 予後古典型の患者は早期の酵素補充療法をしないと、腎不全、心不全、脳梗塞で40~50代で死亡する患者が多い。心型、腎型では60~70代で死亡、ヘテロ女性患者は60~70代で心不全にて死亡する患者が多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)次の流れに従い、診断を行う。(1)臨床症状:小児期からの四肢の激痛、無汗、皮膚の被角血管腫、心不全、蛋白尿、腎不全、脳梗塞などの症状(2)血清、白血球、尿などでα-ガラクトシダーゼの酵素欠損を証明する(3)尿中GL-3の蓄積(4)皮膚での病理所見:電子顕微鏡でミエリン様蓄積物質を認める(5)遺伝子診断 3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ファブリー病の治療として対症療法と根治療法がある。表3に概略をまとめた。画像を拡大する1)対症療法(1)疼痛ファブリー病での痛みは、患者に大きな負担である。幼少時から四肢の灼熱感のある痛みが生じ、思春期はとくに強い。女性患者でも4~5歳から四肢の痛みを感じる患者がいる。痛みは四肢以外にも下顎、頸部などさまざまである。とくに梅雨の時期、夏などは疼痛が強い。カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)、ガバぺンチン(同:ガバペン)などが有効である。(2)消化器症状腹痛、胃痛、下痢などがみられ、整腸剤などの投与が有効である。(3)心肥大、心不全、不整脈徐脈性不整脈には、ペースメーカーが有効である。心筋保護作用としてのACE阻害薬、 ARBの投与が推奨される。高血圧、高脂血症の予防は重要である。(4)腎障害腎保護策のためにARB、ACE阻害薬は有効との報告がある。蛋白食制限、減塩は必要である。腎不全に対しての腹膜あるいは血液透析療法、さらには腎移植が試みられている。(5)脳梗塞脳梗塞の予防のためのアスピリン、抗血小板凝集薬の投与などの抗凝固療法が必要。(6)その他めまい、難聴などに対する対症療法として、めまいにはベタヒスチンメシル(同:メリスロンほか)、突発性難聴にはステロイドが使用される。2)酵素補充療法酵素補充療法は、現在遺伝子工学的手法の進歩に伴いαガラクトシダーゼAの酵素製剤が2製剤開発されている。アガルシダーゼ アルファ(商品名:リプレガル)とアガルシダーゼ ベータ(同:ファブラザイムほか)が開発されている。アガルシダーゼ ベータはCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞から遺伝子工学手法で作成された。投与量としては体重1kgあたりアガルシダーゼ アルファは0.2mg、アガルシダーゼ ベータは1mgを2週間に1回投与する。副作用としては蕁麻疹、悪寒、吐き気、鼻汁、軽度血圧低下、気道に違和感などの症状が見られるが、抗ヒスタミン薬、ステロイドの投与で軽快する場合が多い。副作用は投与後3~5ヵ月後に多く見られ、その後は軽快する場合が多い。そして、効果のポイントは次のとおりである。(1)痛みへの効果痛みは軽減傾向にある。発汗障害は改善傾向にある。(2)腎臓への効果腎臓、とくに腎血管内皮細胞でのGL-3の蓄積は除去される。糸球体のたこ足細胞でのGL-3の蓄積の除去には時間がかかる。GFRが60mL/min/1.73m2以上であれば治療後も維持できる。また、60mL/min/1.73m2 以下であれば、治療にかかわらず機能は低下することが明らかにされている。尿蛋白質では、蛋白の排泄が+1以上であれば酵素治療しても腎機能は低下するが、尿蛋白がマイナスであれば腎機能は悪化しない。(3)心機能への効果心筋の肥厚、左室心筋重量は酵素補充療法により減少する。左室機能改善の改善を認める。(4)脳神経系への効果酵素補充療法により血管の内皮細胞への蓄積は軽快するが、脳梗塞の所見は治療により変化はないと考えられる。また、白質変性への効果も少ない。(5)耳鼻科的効果酵素補充による聴力への効果はあまり期待できない。聴力検査で効果が認められていない。(6)眼症状への効果角膜に対する効果は軽快する傾向にある。網膜動脈閉塞で失明する。(7)皮膚症状への効果被角血管腫への効果は少ない。低(無)汗症への効果はみられ、酵素治療により汗をかくようになりQOLは上がる。(8)消化器症状への効果酵素補充療法により下痢などに対する効果が報告され、酵素治療とともに下痢、腹痛は改善傾向にある。体重は増加する患者が多い。4 今後の展望1)シャペロン治療低分子薬(デオキシノジリマイシンなど)は、ライソゾーム酵素のゴルジーライソゾーム系での酵素の合成、分解過程で作用する。すなわち変異酵素が分解促進、あるいは活性基が障害されている場合、シャペロンは有効であり、全体の約50~60%の患者の遺伝子異常に効果があるといわれている。ミガーラスタット(商品名:ガラフォルド)は、2018年5月に発売され、わが国でも保険適用となった。今後、効果や安全性について、さらに知見の積み重ねがなされる。2)遺伝子治療・細胞治療ファブリー病の最終治療としては、遺伝子治療法の開発が重要である。ファブリー病マウスを用いて「アデノ随伴ウイルス」(AAV)あるいは「レンチウイルスベクター」を用いての治療研究が進められており、モデルマウスではGL-3の臓器からの除去に成功している。また、骨髄幹細胞、あるいは間質幹細胞を用いて、遺伝子治療と組み合わせての治療効果も研究されている。3)ファブリー病のスクリーニングファブリー病の治療のためには、早期診断が重要である。早期診断のための新生児マス・スクリーニングも報告され、ガスリー濾紙血を用いて酵素診断することにより可能である。濾紙血による新生児スクリーニングでは、台湾でのファブリー病患者頻度は1/1,250(男児)、イタリアでは1/3,500(男児)、日本では1/6,500の頻度であり、決して珍しい疾患でないことが証明されている。また、ハイリスク患者スクリーニングとして、心筋症患者、左室肥大患者、腎不全患者、若年性脳梗塞患者にはファブリー病の患者の頻度が高いことが報告されている。早期診断により治療効果をあげることが重要である。5 主たる診療科腎臓内科、循環器内科、小児科、皮膚科、眼科、耳鼻科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療情報難病情報センター ライソゾーム病(ファブリー病を含む)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ふくろうの会(ファブリー病患者と家族の会)1)Desnick RJ, et al. α-Galactosidase A deficiency: Fabry disease. In: Scriver CR et al, editors. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed. New York: McGraw Hill; 2001. p. 3733–3774. 2)Eng CM, et al. N Engl J Med. 2001; 345: 9–16.3)Rolfs A, et al. Lancet. 2005; 366: 1794–1796.4)Sims K, et al. Stroke. 2009; 40: 788-794.5)衛藤義勝. 日本内科学雑誌.2009; 98: 163-170.公開履歴初回2013年2月28日更新2018年9月11日

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不適切な一般薬の販売が増加傾向 スイッチOTC化の障害となる?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第8回

一般用医薬品の販売には一定のルールがあることはご存じだと思います。しかし、そのルールは順守されているのでしょうか? 一般用医薬品の販売実態に関して、厚生労働省が一般消費者の目線で調査した結果が公表されました。厚生労働省は8月27日、2017年度の「医薬品販売制度実態把握調査」結果を公表した。PPI製剤のスイッチOTC薬化の審議にあたり問題視された「乱用のおそれがあるOTC薬を複数購入しようとしたときの対応」が不適切な例が増加したことを示した。エフェドリンやコデイン(鎮咳去痰薬に限る)などを含むOTC薬を複数購入しようとしたところ、「質問などされずに購入できた」店舗が38.8%あり、前年度より2.2ポイント増加した。(2018年8月28日付 RISFAX)調査期間は2017年11~12月で、全国5,017軒の薬局・店舗販売業の許可を取得している店舗を一般消費者である調査員が訪問し、調査しました。いわゆる“覆面調査”というものです。一般用医薬品は、薬局だけでなく店舗販売業でも販売可能ですので、その両方が調査対象となっています。主な調査項目は、従業者の区別状況、陳列・販売方法、情報提供の有無やその方法などでした。ほとんどの項目で前年とほぼ同様の結果となっていますが、幾つか残念なポイントが見受けられます。乱用の恐れがある一般薬を「質問されずに複数購入できた」約40%たとえば、エフェドリン、コデインやジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)などを含むいわゆる風邪薬を複数購入しようとした患者さんに対し、どのような対応を取ることが適切でしょうか。乱用の恐れがある一般用医薬品を必要以上に購入しようとする場合は、理由確認が必要ですが、まず1つだけ購入してもらいその後にまた症状が続いていたら相談してもらう、ひどいようなら受診勧告…など、さまざまな対応があり、答えは1つではありませんよね。この調査で不適切とされたのは「質問などをされずに複数購入できた」という場合であり、複数必要な理由を伝えたところ合理性があると判断されて購入できた、という場合も適切と判断されています。乱用の恐れがある一般用医薬品を複数購入希望の患者さんへの対応が不適切であった店舗の割合は、全体の38.8%(薬局30.4%、店舗販売業39.0%)もありました。2017年の同様の調査では36.6%でしたので、2.2%悪化しています。この数字に有意差があるかは別にして、「不適切な店舗が増加」という印象は強く、今後のスイッチOTC化の議論でまた障害になることが懸念されます。このほかにこの調査結果で私が気になったのは、「名札等により専門家の区別ができたか」という項目です。区別できた割合は、全体として79.7%(薬局73.9%、店舗販売業82.2%)で、これも前年度の83.2%から下がっていました。名札を着けるのは、医薬品販売だけでなく、患者さんとの関わりの中で基本中の基本だと思います。名札なんて着けなくても…と思っている店舗が2割程度あるようですが、このくらいのルールも守れないのか! 要指導・一般用医薬品の販売はやっぱり不安だな…、と思われても仕方ないと思います。これまでのスイッチOTC化の議論を見ていると、大きな法人か個店かどうかにかかわらず、一店舗一店舗の対応が薬局全体への信頼や今後の方向性に影響していることがわかります。まずはこのアンケートで調査された項目の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

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ケアネット白書~糖尿病編2018

インデックスページへ戻る1.調査概要本調査の目的は、糖尿病診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている糖尿病治療薬を評価することである。本調査は、2018年2月23日~3月2日に、ケアネットの医師会員約14万人のうち、2型糖尿病患者を1ヵ月に10人以上診察している医師500人を対象にCareNet.com上で実施した。2.結果(1)回答医師の背景回答医師500人の主診療科は、糖尿病・代謝・内分泌科が240人(48.0%)で最も多く、一般内科162人(32.4%)、循環器科41人(8.2%)などが続いた。医師の所属施設は、一般病院が194人(38.8%)で最も多く、以下、医院・診療所・クリニック125人(25.0%)、大学病院93人(18.6%)、国立病院機構・公立病院88人(17.6%)など。医師の年齢層は50代が160人(32.0%)で最も多く、次いで40代(129人、25.8%)、30代(125人、25.0%)が続いた。(2)薬剤の処方状況(1stライン)糖尿病治療薬をSU薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、ビグアナイド(BG)薬、チアゾリジン薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)、DPP-4阻害薬、インスリン、GLP-1、SGLT2阻害薬、その他に分類し、食事・運動療法に加えて薬物療法を実施する際の1stラインの処方状況を聞いた(図1)。図1を拡大する処方が最も多かったのはDPP-4阻害薬で、回答した医師全体の38.3%が1stラインで使っている。昨年と比べると0.1ポイント減少で、ほぼ横ばいといえる。次いで多かったのはBG薬(27.6%)で、昨年と比べて1.3ポイント増加した。そのほか、SGLT2阻害薬(6.4%)は昨年と比べて2.7ポイント増加し、過去5年間において最も多かった。<糖尿病・代謝・内分泌科での1stライン>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合、1stラインでの処方割合が最も多かったのはDPP-4阻害薬(35.4%)だが、これに続くBG薬が34.8%であり、割合は拮抗している。一方、SU薬は過去5年の推移をみても一貫して減少傾向にあるようだ(図2)。図2を拡大する<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での1stライン>回答医師の属性がその他の診療科の場合、1stラインの処方割合はDPP-4阻害薬が最も多く(41.0%)、昨年と比べて0.3ポイント増とほぼ横ばいであった(図3)。図3を拡大する(3)薬剤の処方状況(2ndライン)●DPP-4阻害薬単剤処方例からの治療変更1stラインでDPP-4阻害薬を単剤投与しても血糖コントロールが不十分だった場合、2ndラインではどのような治療変更を行うかについて、1.SU薬を追加、2.速効型インスリン分泌促進薬を追加、3.α-GIを追加、4.BG薬を追加、5.チアゾリジン薬を追加、6. SGLT2阻害薬を追加、7. BG薬とDPP-4阻害薬の配合剤への切り替え、8. その他配合剤への切り替え、9.他剤への切り替え、10.その他―の分類から処方状況を聞いた(図4)。なお、2018年度は選択肢から「GLP-1を追加」、「インスリンを追加」を削除し、「BG/DPP-4阻害薬配合剤へ切り替え」「その他配合剤へ切り替え」を追加している。図4を拡大する最も多かったのはBG薬の追加で、回答した医師の40.8%に上った。SGLT2阻害薬の追加は過去5年間で年々増加傾向にあり、14.1%と昨年と比べて4.2ポイント増加した。一方、SU薬やα-GIの追加は減少傾向にある。BG/DPP-4阻害薬配合剤への切り替えは10.1%であった。回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科とその他の診療科を比較すると、専門医ではBG薬の追加が全体平均よりも高い傾向にあり、逆にα-GIの追加を選ぶ医師は少ない傾向があった。専門医以外では、α-GIの追加のほか、BG/DPP-4阻害薬配合剤を選択する割合が多い傾向がみられた(図5)。図5を拡大する●BG薬単剤処方例からの治療変更また、1stラインでBG薬を単剤投与しても血糖コントロールが不十分だった場合2ndラインではどのような治療変更を行うかについて、1.SU薬を追加、2.速効型インスリン分泌促進薬を追加、3.α-GIを追加、4.チアゾリジン薬を追加、5. DPP-4阻害薬を追加、6. SGLT2阻害薬を追加、7. BG薬とDPP-4阻害薬の配合剤への切り替え、8. その他配合剤への切り替え、9. DPP-4阻害薬(配合剤以外)への切り替え、10. DPP-4阻害薬以外の薬剤(配合剤以外)への切り替え、11.その他―の分類から処方状況を聞いた(図6)。図6を拡大する最も多かったのは前年に引き続きDPP-4阻害薬の追加(55.1%)であった。SGLT2阻害薬の追加(13.2%)を選択する医師の割合は、前年比で5.2ポイント増となり、2番目に多い選択肢となっている。回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科とその他の診療科を比較すると、専門医で最も多かったのはDPP-4阻害薬の追加(52.2%)で、次いでSGLT2阻害薬の追加(16.3%)となっていた。その他の診療科と比べると、DPP-4阻害薬の追加が少なく、SGLT2阻害薬の追加が多い傾向がみられた(図7)。図7を拡大する(4)薬剤選択の際に重要視する項目本調査では、薬剤を選択する際に重要視する項目についても聞いている(複数回答)。最も多いのは昨年に続き「低血糖をきたしにくい」で、77.8%の医師が挙げている。以下、「重篤な副作用がない」(65.0%)、「血糖降下作用が強い」(64.0%)などが続き(図8)、例年と大きな変化はみられなかった。図8を拡大する(5)配合剤に対する認知状況と処方意向今年度から新たに、配合剤の認知度や処方意向についても聞いている。配合剤がラインナップにあることが薬剤の選択理由のひとつになるかという問いに対しては、「とてもそう思う」、「そう思う」、「まあそう思う」と答えた医師が全体の7割強となった。また、処方したいと思う配合剤の組み合わせについて、1. DPP-4阻害薬とビグアナイド薬の配合剤、2. DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤、3.上記以外の配合剤、4. 配合剤を処方するつもりはない―の4項目について聞いたところ(複数回答)、DPP-4阻害薬とビグアナイド薬の配合剤について63.4%の医師が処方意向を示した(図9)。図9を拡大する開発中、または開発検討中の配合剤の認知度について、1. シタグリプチン/イプラグリフロジンの配合剤、2. リナグリプチン/エンパグリフロジンの配合剤、3. アナグリプチン/メトホルミンの配合剤、4.なし―の4項目を聞いたところ(複数回答)、「なし」と答えたのは47.0%で、5割強の医師が開発中の何らかの配合剤を認知しているという結果となった。さらに、認知している配合剤が今後発売された場合、どのように処方したいかという問いに対しては、リナグリプチン/エンパグリフロジンの配合剤について52.0%の医師が「発売時より処方を検討していきたい」と回答し、処方意向が比較的高い傾向がみられた(図10)。図10を拡大するインデックスページへ戻るなお、本データはアンケートを用いた集計結果であり、処方実態を反映しているものではございません。

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臨床研究法施行で何が変わったか~メリット・デメリット

 今年4月1日に「臨床研究法」が施行された。降圧薬に関する臨床研究でのデータ操作への疑念や、メーカーの関与といった問題の発覚から制定されたこの法律に、戸惑っている研究者も多いのではないだろうか。今回、今月末に日本で初めて開催されるICPM(International Conference on Pharmaceutical Medicine:国際製薬医学大会)2018の大会長である今村 恭子氏(東京大学大学院薬学系研究科ファーマコビジネス・イノベーション特任教授)とICPM組織委員会の広報担当である松山 琴音氏(日本医科大学研究統括センター副センター長/医療管理学特任教授)に、臨床研究法の要点、メリット・デメリット、研究を行う医師への影響などを伺った。なお、この法律については、ICPM2018と同時開催される第9回日本製薬医学会(JAPhMed)年次大会のセッションでも取り上げられる予定だ。臨床研究法における書式統一の先駆け的存在が日本製薬医学会 JAPhMedは、製薬企業や行政の勤務医をはじめ、大学・医療機関において臨床研究に従事する医師などによる学会である。今村氏によると、「所属会員は現在約300名だが、メディカルアフェアーズ(MA)、メディカルサイエンスリエゾン(MSL)という職種に注目が集まるなか、医師以外の参加者が増えている」という。 学会活動の1つに「企業等が研究機関に対して契約に基づき資金を提供する場合に使用する契約書式の例示」がある。臨床研究に関する契約書式を医薬品企業法務研究会(企業に所属する弁護士や法務担当者を中心に作られている研究団体)の経済法研究部会と共同で2009年に第1版を作成しており、JAPhMedは臨床研究法における書式統一の先駆け的存在ともいえる。臨床研究法では特定臨床研究の管理方法が厳重に “承認申請目的の医薬品等の臨床試験”である「治験」には医薬品医療機器等法(薬機法)に基づくGCPが適用される。一方、薬機法における未承認・適応外の医薬品等の臨床研究や、製薬企業などから資金提供を受けて実施される医薬品等の臨床研究である「特定臨床研究」は、法に縛られることなく倫理指針に基づいて行われてきたため、研究資金の提供や研究不正に対する歯止めがきかない状態であった。これを見直すべく、臨床研究法が2017年4月14日に公布、今年4月1日に施行された。 臨床研究法では、医療機関での特定臨床研究の実施に係る措置として、1)モニタリング・監査の実施、利益相反の管理、研究対象者の保護、疾病等の報告や5年間の記録の保存、2)研究計画書の厚労省への提出義務、3)研究対象者への補償、4)実施基準違反に対する指導・監督の4点が設けられた。松山氏は、「法制定により倫理審査委員会(IRB)が認定制になった。これまでは委員会要件を満たせば誰でも委員になれたが、今後は、委員の経歴や適格性なども含め、各地方厚生局の審査を経て厚労省に届け出すことになった。また、研究を行う医師にも、懲役もしくは罰金の罰則が設けられた」と管理方法が厳重になったことに言及した。 また、臨床研究法が施行された2018年4月1日より前から実施している特定臨床研究については、法施行後1年間の経過措置が設けられており、認定臨床研究審査委員会による審査を経たうえで、2019年3月31日までに厚生労働大臣に実施計画書を提出することが義務付けられている。 一方、製薬企業などに対しては、「契約の締結」と「研究資金等の提供に関する情報等の公表」の2点が義務付けられた。公表の対象となる資金の提供先には、医療機関や大学、NPO法人などが含まれ、1)研究資金等、2)寄附金、3)原稿執筆および講演の報酬その他の業務に要する費用の3つについては、インターネット上で5年間公表し続けることになっている。臨床研究法の患者目線での必要性の理解を求めた 臨床研究法におけるメリット・デメリットについては、次の内容が挙げられる。<メリット>・書式の統一化・Single IRB:これまでは関連する機関すべてのIRBで審査をかけていたが、認定された1つのIRBのみで可能となる・倫理的観点だけでなく科学的観点も重要視:技術専門員による評価が必須(対象領域を専門とする医師/歯科医師、生物統計家、臨床薬理学者など)・透明性:利益相反管理基準(特定企業から年間250万円以上を受け取っている医師は、原則、研究代表医師になれない)の適用 このことを踏まえ、今村氏は「スムーズに進めるための書式の標準化をはじめ、委員会要件が明確に定義されたことで、全国で統一された研究体制が期待できるようになる」と臨床研究法による法的規制に対する期待を膨らませた。<デメリット>・雇用負担:認定IRBの専任事務局員4名の配置が必要・契約における時間の増大:認定臨床研究審査委員会の中には、審査費用の支払いに当たり契約が必要なところがあり、審査までの時間が増大するケースがある(ただし、認定臨床研究審査委員会契約が不要な認定審査委員会もある)・書類作成負担の増大:企業が準備を担っていた書式を研究責任医師が準備する・臨床研究保険の措置:補償内容も含めた説明文書の作成と患者の文書による同意が必要・資金提供契約が必要:研究者自身が主体となって、企業に研究の提案を行うとともに、臨床研究に必要な計画および予算を提示し、資金提供契約に基づく実施を目指す必要がある 臨床研究法には上記のようなデメリットがあり、研究者にとっては研究がやりづらくなるものの、今村氏は「治験では契約があるのに、これまで臨床研究の契約がなかったことがおかしい」とし、また、「研究目的だけが先行して、患者に結果を返せていなかった」と患者目線での臨床研究法の必要性に対する理解を求めた。臨床研究に参加する前に、まずは臨床研究法を学んでほしい 両氏は、「実施計画作成などの研究に必要なプロセスを経ずに研究を行ってきた医師を教育し、研究費の予算立てをして製薬企業に研究の必要性をアピールする能力を育成する重要性を臨床研究医に発信していかないといけない」と述べ、製薬企業に対しては「MAの定着に努めてほしい」とコメントした。加えて、今村氏は「これらのニーズに対して貢献できる学会を目指したい。MSL制度認証の普及に寄与し、患者が求めているものを創る、患者中心の医療開発を目指して学会運営に取り組んでいる」と、医療における学会の役割を示し、「まずは臨床研究に参加する前に臨床研究法を学んでほしい」とICPM2018、日本製薬医学会(JAPhMed)年次大会への参加を呼びかけた。<ICPM2018、第9回日本製薬医学会(JAPhMed)年次大会の概要>会期:2018年9月27日(木)、28日(金)9:00~19:30 ICPM&JAPhMed共通   2018年9月29日(土)9:00~16:00 JAPhMed年次大会場所:東京大学 伊藤国際学術研究センター(9月27・28日)   東京大学医学部教育研究棟14階鉄門記念講堂(9月29日)ホームページ:https://www.icpm2018tokyo.com/index.html

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第5回 臨床試験で必要なn数(サンプルサイズ)【統計のそこが知りたい!】

第5回 臨床試験で必要なn数(サンプルサイズ)前回は、地域住民や患者さんを対象にアンケート調査(市場調査、社会調査)を行う際に必要なn数(サンプルサイズ)の計算方法について解説しました。今回は、臨床試験を行う際に必要なn数(サンプルサイズ)について解説します。■臨床研究計画を立てるときのn数(サンプルサイズ)設定の考え方臨床試験は、被験者の負担や臨床試験にかかる費用を少なくするために、できるだけ少ない被験者で行いたいのが実情です。しかし、被験者が少な過ぎると標準誤差が大きくなることから信頼区間の幅が広くなり、治療に効果があるのにその効果を臨床試験の結果として検出できないことがあります。一方、被験者が多過ぎると母集団の信頼区間の幅は狭くなり過ぎて、医学的に意味のない結果を検出することもあります。ですから医学的に意味のある結果を、できるだけ少ない被験者(症例数)で示すためにn数(サンプルサイズ)の設定が重要になります。■検定結果で誤る2つの可能性臨床試験で避けなければならない失敗の1つは、「効果のない治療を効果がある」と判定してしまうことです。このような間違いを「第一種の誤り(過誤)」といいます。第一種の過誤は、「αエラー」ともいい、統計的観点から立てる仮説である帰無仮説(新しい治療法は従来の治療法と同じ効果である)が正しいのに、それを棄却してしまうという誤りです。n数(サンプルサイズ)が大きいときに起こる可能性が高くなります。このαは有意水準のことです。もう1つの失敗は、「本当は効果がある治療を効果がないと判断して臨床試験を中止してしまう」ことです。このような間違いを「第二種の誤り(過誤)」といいます。第二種の過誤は、「βエラー」といい、帰無仮説が間違っているのに、それを見逃す誤りです。n数(サンプルサイズ)が小さいときに起こる可能性が高くなります。臨床試験を行う研究者にとっては、治療が有効であると考えているのですから、このβエラーは極力避けたいものです。検出力は「1-β」で定義され、本当は効果がある治療が正しく「効果がある」と判断される確率です。■n数(サンプルサイズ)の設定臨床試験の際のn数(サンプルサイズ)の設定には、「有意水準」、「検出力」、「検出したい治療効果の大きさ」の値が必要です。有意水準(α)は0.05もしくは0.01が用いられることが多く、検出力(1-β)は0.8~0.9に設定されます。そのため、実際に算出する必要があるのは「治療効果の大きさ(効果量)」だけになります。治療効果の大きさ(効果量)は、過去の臨床試験データやそれまでの予備試験データなどから効果をどのくらいに設定するのか、ということです。たとえば、新しい治療と既存の治療との間で血圧の平均値の差が8mmHgであるというように、臨床試験によって起こりうる結果を試験開始前に推測しておくということです。効果が大きい場合にはn数(サンプルサイズ)は小さくてよく、一方で効果が小さい場合にはn数(サンプルサイズ)は大きくならなければなりません。たとえば効果が半分になれば必要なn数(サンプルサイズ)は4倍になります。また、臨床試験で得られたデータのバラツキ(標準偏差)が小さければn数(サンプルサイズ)は小さくてよく、一方でデータのバラツキが大きければ必要なn数(サンプルサイズ)は大きくなります。たとえば標準偏差が2倍になれば必要なn数(サンプルサイズ)は4倍となります。効果が半分になれば、必要なn数(サンプルサイズ)は4倍になります。■実際のn数(サンプルサイズ)の計算方法実際のn数(サンプルサイズ)の計算方法は、一様ではなく、どのような検定法で臨床試験結果を判断するのかによって、異なる数式から求められます。臨床試験で必要なn数(サンプルサイズ)を計算・シミュレーションできる、有償・無償のソフトウエアが、今ではたくさんありますので、簡単にn数(サンプルサイズ)を求めることができます。1つ注意しておきたいことは、国際的なガイドラインである「CONSORT声明(Consolidated Standards of Reporting Trials Statement:臨床試験報告に関する統合基準に関する声明)」では、研究結果をまとめた論文に、研究計画時にどのようにしてn数(サンプルサイズ)を決定したのかを記載するよう定めています。ですから、一度決めたn数(サンプルサイズ)を容易に変更することはできないということです。■実際のn数(サンプルサイズ)の計算方法の一例(母平均の検定)サンプルサイズの計算方法●検出力とは?実際は対立仮説が成り立っているときに、帰無仮説を正しく棄却する確率を検出力といいます。これは第二種の誤りを起こさない確率であり、「1-β」と表します。●サンプルサイズの検定【検出力】とは?母平均の検定を例に解説します。検定統計量の値は、サンプルサイズ(=標本数)と検出力に大きく影響を受けます。一般的に、サンプルサイズや検出力が大きくなれば、検定統計量の値は大きくなる傾向にあり、反対に小さくなれば値は小さくなります。帰無仮説m=m0で本当はmとm0に意味のある差がみられても、サンプルサイズや検出力が小さければ、統計量|t0|の値は大きくならず、「有意差なし」となります。逆にmとm0の差が小さくても、サンプルサイズや検出力が大きければ「有意差あり」となります。このような検定結果をうのみにするのは危険です。したがって、サンプルサイズと検出力の設定を行った後に、そのサンプルサイズの下で再度検定をやり直す必要があります。●計算方法母平均の検定において、を設定する場合のサンプルサイズの決定を解説します。帰無仮説の下での値m0と真のmとの差が母標準偏差σの何倍あるのかを示す量が、のとき、有意水準αに対して検出力1-βでH0を棄却したかったとします。そのために必要なサンプルサイズnの設定のための式は、以下のとおりです。分子のZα/2、Z1-βは、それぞれ標準正規分布の上側100(α/2)、100(1-β)%点です。【例題】有意水準αが0.05で、帰無仮説と対立仮説がそれぞれである母平均の検定を考えます。かつ 検出力 1-β=0.90でH0を棄却したい場合、サンプルサイズはいくつ必要でしょうか。【解答】サンプルサイズnを計算すると、*Z=標準正規分布表の値です。したがって、サンプルサイズの候補はn=13あるいはn=12です。今回は、臨床試験を行う際に必要なn数(サンプルサイズ)について解説してきました。臨床試験の論文を読むときには、主要エンドポイントとその統計手法、サンプルサイズの計算などを必ず確認するようにしましょう。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション1 母集団、n数、サンプル数、サンプルサイズとは第4回 ギモンを解決! 一問一答質問2 何人くらいの患者さんを対象にアンケート調査をすればよいですか?

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処方提案、残薬調整の法的な位置付けは?【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第5回

先日、身内が入院することになり、付き添いで大学病院に行ってきました。病院に着いて、まずは入院の事務手続きをし、部屋が決まり、その後、病棟に行き、荷物の整理をしていると、白衣を着た女性が部屋にやってきました。「○○さん。薬剤師の△△です。少しお話しさせてください」と。薬剤師の先生でした。私としては、薬剤師とこうして病棟で会ったことがなかったので新鮮でしたし、なにより、入院して一番初めに話す医療者が薬剤師であったことに、とても驚きました。身内と薬剤師のやり取りでは、他の病院から処方されている薬剤、市販薬なども含めて持参薬の確認、薬に関する質問などがありました。その後、薬剤師がどのような業務を行うのか詳細はわかりませんが、その情報を基に入院中の処方検討などをするのかと思います。病院によっては、医師による診察の前に行う薬剤師外来というものがありますが、それと同様に、処方提案や残薬調整なども行うのかもしれません。さて、このようなやり取りを見て、薬剤師が病棟で活躍する時代になったことを実感するとともに、対人業務が重視されるなか、処方提案や残薬調整についての業務は、薬剤師の重要な業務であることを再認識しました。そこで、このような業務の法的な位置付けについて考えてみました。現行法は薬剤師の職務の広がりに追いついていない?薬剤師の業務については薬剤師法に規定されており、具体的な内容は、その第4章(業務)で定められています。第19条 調剤の独占第20条 薬剤師の名称独占第21条 応需義務第22条 調剤の場所第23条 処方せんに基づく調剤第24条 疑義照会第25条 調剤した薬剤の表示第25条の2 調剤した際の情報提供および指導第26条 調剤済み処方せんへの署名など第27条 処方せんの保存第28条 調剤録の記入・保存第28条の2 薬剤師の氏名の公表第28条の3 事務の区分これを見るとわかるように、処方提案や残薬調整というのは、薬剤師法において、明確には規定されていません。調剤の定義をどのように捉えるのかによって変わる、あるいは情報提供や指導に含まれるのでは、という議論もあるかもしれません。しかし、調剤は処方せんに基づくのが前提であり、情報提供や指導も調剤した際の義務なので、調剤前の段階や自らが調剤していない薬剤の残薬調整となると、これらのなかに含めて考えるのは難しいような気もします。「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」にも調剤を行う場合の服薬状況および服用歴の確認などの規定がありますが、薬剤師法と同様に明確なものではありません。残薬調整に関係しそうな条文としては、在宅での残薬調整を前提にした以下の規定(薬剤師法施行規則13条の2第1項2号)がありますが、これも自身で調剤することを前提としています。薬剤師が、処方せんを交付した医師又は歯科医師の同意を得て、当該処方せんに記載された医薬品の数量を減らして調剤する業務(調剤された薬剤の全部若しくは一部が不潔になり、若しくは変質若しくは変敗するおそれ、調剤された薬剤に異物が混入し、若しくは付着するおそれ又は調剤された薬剤が病原微生物その他疾病の原因となるものに汚染されるおそれがない場合に限る)。以上のとおり、現在の対人業務で重要とされる処方提案などに、患者との関係では契約上の義務とされる場合があるとしても、法的に明確な規定はありません。薬剤師の任務についての規定は薬剤師法第1条にあり、もちろん調剤だけではありませんが、第4章の業務に規定されているのは、調剤に関わるものであり、薬剤師の職務の広がりを見ると、法が追い付いていないという側面があるかもしれません。(薬剤師の任務)第1条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。今後の医薬品医療機器等法改正で薬剤師の対人業務はさらに明記される?処方提案や残薬調整などは、法的に明確な位置付けはありませんが、薬剤師の専門性から期待されている業務といえるかと思います。そのため、調剤報酬などでは評価されているのでしょう。薬剤師が、処方提案や残薬調整などを積極的に行っていくことは好ましいはずです。現状の具体的な例を挙げますと、2014年に「必要な薬学的知見に基づく指導」(薬剤師法25条の2)が追加されました。このことは対人業務の充実への期待といえますので、ほかの業務でもよい結果を示すことが、今後の法改正につながるかもしれません。法に明記されるということは、国民からの期待といってもいいかと思いますし、薬剤師に対してそのような期待を持ってもらいたいところです。“対物”から“対人”という流れで、薬剤師の業務も今後、より変化していくでしょう。そういう意味で、来年予定されている医薬品医療機器等法の改正には注目をしたいところです。参考資料1)e-Gov 薬剤師法2)e-Cov 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則3)e-Gov 薬剤師法施行規則

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第4回 「在宅医療」は家に訪問することじゃない!【週刊・川添ラヂオ】

動画解説最近、在宅医療に取り組む薬局が増えていますが、在宅薬剤師の元祖ともいえる川添先生は、若干疑問を感じているようです。調剤報酬が上がったから、在宅訪問の実績がないとかかりつけ薬剤師指導料が取れないから、そんな理由で「在宅」に積極的に取り組んでいるとしたら、まさに本末転倒。在宅医療=薬剤師が訪問して薬を届けて服薬指導すること、ではない!と語気を強める川添先生。在宅医療の目的は何なのか?薬剤師は何をすべきなのか?熱く熱く語ります。

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中等度CVDリスクへのアスピリン1次予防効果は?/Lancet

 心血管疾患リスクが中等度の55~60歳以上の患者に対し、アスピリン100mgを毎日投与しても、プラセボと比較して心血管イベントの発生率に有意差は認められなかったという。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJ. Michael Gaziano氏らが、7ヵ国の約1万3,000例を対象に5年間追跡したプラセボ対照無作為化比較試験「ARRIVE試験」の結果を、Lancet誌オンライン版2018年8月26日号で発表した。心血管イベント1次予防におけるアスピリン投与については、なお議論の的となっている。ARRIVE試験では、中等度リスクを有する患者におけるアスピリンの有効性と安全性の評価が行われた。55歳以上の男性、60歳以上の女性を対象に 試験は2007年7月5日~2016年11月15日にかけて、7ヵ国、501ヵ所の医療機関を通じ、心血管疾患リスクが中等度(特定リスクの因子数で規定)の55歳以上の男性、または60歳以上の女性、合わせて1万2,546例を対象に行われた。消化管出血やその他の出血リスクが高い患者、および糖尿病患者は除外された。 被験者をコンピュータ生成無作為化コードにより1対1の割合で2群に分け、一方にはアスピリン腸溶錠(100mg)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ1日1回投与した。患者、研究者、その他の治療・データ解析者は、割付治療についてマスキングされた。 主要有効性エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)の複合アウトカム。安全性エンドポイントは、出血イベントおよびその他の有害イベント発生だった。解析はいずれもintention-to-treat集団にて行った。アスピリンよりもリスクマネジメント戦略の効果が勝る? 追跡期間中央値は、60ヵ月だった。有効性のエンドポイント発生率は、アスピリン群4.29%(269/6,270例)、プラセボ群4.48%(281/6,276例)で、有意な差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.81~1.13、p=0.6038)。 一方、消化管出血の発生は、プラセボ群0.46%(29例)に対し、アスピリン群は0.97%(61例)と2倍強認められた(HR:2.11、95%CI:1.36~3.28、p=0.0007)。 重篤な有害事象発生率については両群とも20%程度(アスピリン群20.19%、プラセボ群20.89%)、有害事象全般の発生率はともに80%強(82.01%、81.72%)と、いずれも同程度だった。治療関連の有害事象については、プラセボ群13.54%に対しアスピリン群16.75%と、より高率に認められた(p<0.0001)。 死亡の報告は、アスピリン群2.55%(160/6,270例)、プラセボ群2.57%(161/6,276例)で有意差はなかった(HR:0.99、95%CI:0.80~1.24、p=0.9459)。 これらの結果について著者は、「イベント発生率が予想よりも大幅に低かった。おそらく、近年のリスクマネジメント戦略が功を奏しており、試験対象が実質的に低リスク集団になっていたと思われる」と指摘し、中等度リスク患者におけるアスピリンの1次予防を検証する試験にはならなかったとしている。そのうえで、「先行研究で公表されている低リスク集団に観察されたアスピリン効果の所見が、今回の試験でもみられた」とまとめている。

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