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第8回 内科クリニックからのクラリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?マイコプラズマ・・・7名百日咳菌・・・6名コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルス・・・3名結核菌・・・2名肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)・・・6名モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)・・・2名インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)・・・1名遷延性の咳嗽 清水直明さん(病院)3週間続く咳嗽であることから、遷延性の咳嗽だと思います。そうなると感染症から始まったとしても最初の原因菌は分からず、ウイルスもしくは非定型菌※による軽い感冒から始まったことも予想されるでしょう。他に、成人であっても百日咳の可能性も高いと思われます。その場合、抗菌薬はクラリスロマイシン(以下、CAM)でよいでしょう。初発がウイルスや非定型菌であったとしても、二次性に細菌感染を起こして急性気管支炎となっているかもしれません。その場合は、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Moraxella catarrhalisなどが原因菌として想定されます。このようなときにグラム染色を行うことができると、抗菌薬選択の参考になります。※非定型菌は一般の細菌とは異なり、βラクタム系抗菌薬が無効で、培養や染色は困難なことが多い。マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラなどがある。結核の可能性も 児玉暁人さん(病院)長引く咳とのことで、マイコプラズマや百日咳菌を疑います。患者背景が年齢しか分かりませんが、見逃すと怖いので念のため結核も考慮します。細菌感染症ではないのでは? 中西剛明さん(薬局)同居家族で最近かかった感染症があるかどうかを確認します。それで思い当たるところがなければ、まず、ウイルスかマイコプラズマを考えます。肺炎の所見もないので、肺炎球菌、インフルエンザやアデノウイルスなどは除外します。百日咳は成人の発症頻度が低いので、流行が確認されていなければ除外します。RSウイルスやコロナウイルス、エコーウイルスあたりはありうると考えます。ただ、咳の続く疾患が感染症とは限らず、ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物(シムビコート®)が処方されているので、この段階では「細菌感染症ではないのでは?」が有力と考えます。Q2 患者さんに何を確認する?薬物相互作用 ふな3さん(薬局)CAMは、重大な相互作用が多い薬剤なので、併用薬を確認します。禁忌ではありませんが、タダラフィル(シアリス®)などは患者さんにとっても話しにくい薬なので、それとなく確認します。喫煙の有無と、アレルギー歴(特にハウスダストなどの通年性アレルギー)についても確認したいです。自覚していないことも考慮  児玉暁人さん(病院)やはり併用薬の確認ですね。スボレキサント錠(ベルソムラ®)やC型肝炎治療薬のアナスプレビルカプセル(スンベプラ®)は、この年齢でも服用している可能性があります。ピロリ菌の除菌など、パック製剤だと本人がCAM服用を自覚していないことも考えられるので、重複投与があるかどうかを確認します。シムビコート®は咳喘息も疑っての処方だと思います。感染性、非感染性のどちらもカバーし、β2刺激薬を配合したシムビコート®は吸入後に症状緩和を実感しやすく、患者さんのQOLに配慮されているのではないでしょうか。過去に喘息の既往はないか、シムビコート®は使い切りで終了なのか気になります。最近の抗菌薬服用歴 キャンプ人さん(病院)アレルギー歴、最近の抗菌薬服用歴、生活歴(ペットなども含める)を確認します。受診するまでの症状確認とACE阻害薬 柏木紀久さん(薬局)この3週間の間に先行して発熱などの感冒症状があったか、ACE阻害薬(副作用に咳嗽がある)の服用、喫煙、胸焼けなどの確認。Q3 抗菌薬の使用で思い浮かんだことは?咳喘息ならば・・・ 清水直明さん(病院)痰のからまない乾性咳嗽であれば、咳喘息の可能性が出てきます。そのために、シムビコート®が併用されていると思われ、それで改善されれば咳喘息の可能性が高くなります。咳喘息に対しては必ずしも抗菌薬が必要とは思いませんが、今の状態では感染症を完全には否定できないので、まずは今回の治療で反応を見たいと医師は考えていると思います。抗菌薬の低感受性に注意 JITHURYOUさん(病院)CAMは、抗菌作用以外の作用もあります。画像上、肺炎はないということですが、呼吸器細菌感染症としては肺炎球菌、インフルエンザ菌を想定しないといけないので、それらの菌に対する抗菌薬の低感受性に注意しなければなりません。さらに溶連菌、Moraxella catarrhalisなども考慮します。抗菌薬の漫然とした投与に注意 わらび餅さん(病院)痰培養は提出されていないようなので、原因菌を特定できるか分かりません。CAM耐性菌も以前より高頻度になっているので、漫然と投与されないように投与は必要最低限を維持することが大切だと思います。再診時の処方が非常に気になります。CAMの用量 柏木紀久さん(薬局)副鼻腔気管支症候群ならCAMは半量での処方もあると思いますが、1週間後の再診で、かつ感染性咳嗽の可能性を考えると400mg/日で構わないと思います。しっかりとした診断を 荒川隆之さん(病院)長引く咳の原因としては、咳喘息や後鼻漏、胃食道逆流、百日咳、結核、心不全、COPD、ACE阻害薬などの薬剤性の咳など多くありますが、抗菌薬が必要なケースは少ないです。もし百日咳であったとしても、感染性は3週間程度でなくなることが多く、1~2カ月程度続く慢性咳嗽に対してむやみに抗菌薬を使うべきではないと考えます。慢性咳嗽の原因の1つに結核があります。ニューキノロン系抗菌薬は結核にも効果があり、症状が少し改善することがありますが、結核は複数の抗菌薬を組み合わせて、長い期間治療が必要な疾患です。そのため、むやみにニューキノロン系抗菌薬を投与すると、少しだけ症状がよくなる、服用が終わると悪くなる、を繰り返し、結核の発見が遅れる可能性が出てくるのです。結核は空気感染しますので、発見が遅れるということは、それだけ他の人にうつしてしまう機会が増えてしまいます。また、結核診断前にニューキノロン系抗菌薬を投与した場合、患者自身の死亡リスクが高まるといった報告もあります(van der Heijden YF, et al. Int J Tuberc Lung Dis 2012;16(9): 1162-1167.)。慢性咳嗽においてニューキノロン系抗菌薬を使用する場合は、結核を除外してから使用すべきだと考えます。まずはしっかりした診断が大事です。Q4 その他、気付いたことは?QOLのための鎮咳薬 JITHURYOUさん(病院)小児ではないので可能性は低いですが、百日咳だとするとカタル期※1でマクロライドを使用します。ただ、経過として3週間過ぎていることと、シムビコート®が処方されているので、カタル期ではない可能性が高いです。咳自体は自衛反射で、あまり抑えることに意味がないと言われていますが、本症例では咳が持続して夜間も眠れないことや季肋部※2の痛みなどの可能性もあるので、患者QOLを上げるために、対症療法的にデキストロメトルファンが処方されたと考えます。※1 咳や鼻水、咽頭痛などの諸症状が起きている期間※2 上腹部で左右の肋骨弓下の部分鎮咳薬の連用について 中堅薬剤師さん(薬局)原疾患を放置したまま、安易に鎮咳薬で症状を改善させることは推奨されていません1)。また、麦門冬湯は「乾性咳嗽の非特異的治療」のエビデンスが認められている2)ので、医師に提案したいです。なお、遷延性咳嗽の原因は、アレルギー、感染症、逆流性食道炎が主であり、まれに薬剤性(副作用)や心疾患などの要因があると考えています。話は変わりますが、開業医の適当な抗菌薬処方はずっと気になっています。特にキノロン系抗菌薬を安易に使いすぎです。高齢のワルファリン服用患者にモキシフロキサシンをフルドーズしようとした例もありました。医師の意図 中西剛明さん(薬局)自身の体験から、マイコプラズマの残存する咳についてはステロイドの吸入が効果的なことがあると実感しています。アレルギーがなかったとしても、マイコプラズマ学会のガイドラインにあるように、最終手段としてのステロイド投与(ガイドラインでは体重当たり1mg/kgのプレドニゾロンの点滴ですが)は一考の余地があります。また、マイコプラズマ学会のガイドラインにも記載がありますが、このケースがマイコプラズマであれば、マクロライド系抗菌薬の効果判定をするため、3日後に再受診の必要があるので3日分の処方で十分なはずです。ステロイド吸入が適切かどうか議論のあるところですが、シムビコート®を処方するくらいですから医師は気管支喘息ということで治療をしたのだと考えます。Q5 患者さんに何を説明する?抗菌薬の患者さんに対する説明例 清水直明さん(病院)「咳で悪さをしているばい菌を殺す薬です。ただし、必ずしもばい菌が悪さをしているとは限りません。この薬(CAM)には、抗菌作用の他にも気道の状態を調節する作用もあるので、7日分しっかり飲み切ってください。」CAMの副作用 キャンプ人さん(病院)処方された期間はきちんと内服すること、副作用の下痢などの消化器症状、味覚異常が出るかもしれないこと。抗菌薬を飲み切る 中堅薬剤師さん(薬局)治療の中心になるので、CAMだけは飲み切るよう指示します。また、副作用が出た際、継続の可否を主治医に確認するよう話します。別の医療機関にかかるときの注意 ふな3さん(薬局)CAMを飲み忘れた場合は、食後でなくてよいので継続するよう説明します。また、別の医師にかかる場合は、必ずCAMを服用していることを話すよう伝えます。後日談本症例の患者は、1週間後の再診時、血液検査の結果に異常は見られなかったが、ハウスダストのアレルギーがあることが分かり、アレルギー性咳嗽(咳喘息)と診断された。初診後3日ほどで、咳は改善したそうだ。医師からはシムビコート®の吸入を続けるよう指示があり、新たな処方はなされなかった。もし咳が再発したら受診するよう言われているという。1)井端英憲、他.処方Q&A100 呼吸器疾患.東京、南山堂、2013.2)日本呼吸器学会.咳嗽に関するガイドライン第2版.[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

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病院職員に"ハーバード流"マネジメント講義 健康長寿医療センターの試み

 病院経営にも一般企業と同様な組織マネジメントが必要と言われて久しいが、そうした体制がまだ十分に普及しているとはいえないのが現状だ。そんな中、東京都健康長寿医療センターでは、職種横断的にミドルマネジャーを対象とした"ハーバード流"の「医療マネジメントスクール」を開催、着実に成果を上げている。 この企画を発案し、自ら講師も務めているのは、同病院血管外科部長の中澤達氏。中澤氏は現役の外科医でありながら、ハーバード大学大学院で学び、北里大学大学院医療系研究科(医療マネジメント)の教授も務める。 「医療職の多くは、ビジネススキルをきちんと学んだことがない。しかし、組織の課題を見つけ、考えて、解決していくというプロセスが大切なのは、病院でも企業でも同じ。一般のビジネスパーソンがどのようなフレームで物事を考えて、事業を進めているか理解することは、病院職員にとっても意義があると考えた」(中澤氏)。 「医療マネジメントスクール」の開催は今年で2年目。90分のクラス年4回が1コースとなっており、各回のテーマは、「オペレーションマネジメント」「マーケティング」「組織行動とリーダーシップ」「経営戦略」。全4回を履修した職員には、修了証も発行。出欠管理、教材の購入と事前配布は、センターの経営企画局・医療戦略室が事務局として主導している。ハーバードの教材を予習して小グループで議論 同スクールの大きな特徴は、ハーバードビジネススクール(HBS)の講義形式をそのまま取り入れているところ。30人ほどの受講者は、HBSの教材として実際に使われている「ケース」を事前に読み込んでおかねばならず、当日の講義は、5~6人の小グループに分かれてのディスカッション中心に進行する。「すべて実際のビジネスの事例で、正解があるわけではない。みんなで意見を出し合い、考え、議論することそのものが『学び』になる」と中澤氏は言う。 9月5日に開催された2018年度第3回のクラスは、「ノバルティス:グローバル企業を導くということ」というHBSの教材と国内の病院のケースを用いた授業だった。参加者は、リーダーシップとマネジメントの違い、ピラミッド型組織・文鎮型組織それぞれの特徴、リーダーシップの役割、フォロワーのタイプなどについて、職種を超えて活発に議論していた。 このように医師、看護師、その他の医療職、事務職が混ざってディスカッションするのも有意義だと中澤氏は考えている。「病院という組織はどうしても職種で縦割りになりがち。多職種が小グループで真剣に議論することで、他職種に対する理解を深め、職場の風通しがよくなる効果も期待できる」。 「医療マネジメントスクール」は同じ形式で来年度以降も継続する予定だ。「病院側にも参加者にも効果を実感してもらえているので、今後はこの取り組みをもっと外部にも発信していきたい」と中澤氏は意欲を見せる。

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アスピリンは、健康な高齢者の死亡を抑制しない?/NEJM

 毎日アスピリンの投与を受けた健康な高齢者の死亡率は、プラセボと比較してむしろ高く、しかも主な死因はがん関連死であるとする予想外の研究結果が示された。オーストラリア・モナシュ大学のJohn J. McNeil氏らASPREE試験の研究グループが、NEJM誌オンライン版2018年9月16日号で報告した。本研究の初回解析では、アスピリンの毎日使用は、主要エンドポイントである無障害生存(disability-free survival)に関して便益をもたらさなかった。また、アスピリン使用者は、副次エンドポイントである全死因死亡率も高かったという。原因別の死亡率を探索的に解析 ASPREE試験では、2010年3月~2014年12月の期間に、オーストラリアと米国において参加者の登録が行われた(米国国立老化研究所[NIA]などの助成による)。2017年6月12日、介入を継続しても主要エンドポイントに関して便益が得られる可能性はきわめて低いことが示されたため、NIAの要請で試験は中止となった。 今回は、原因別の死亡について、事後的に探索的解析が行われた。対象は、年齢70歳以上(米国のアフリカ系およびヒスパニック系は65歳以上)で、心血管疾患、認知症、身体障害のない地域住民であった。 被験者は、アスピリン腸溶性製剤(100mg)またはプラセボを毎日投与する群に無作為に割り付けられた。割り付け情報を知らされていない研究者が、死亡を原因別に分類した。 登録された1万9,114例(オーストラリア:1万6,703例、米国:2,411例[52.7%がアフリカ系またはヒスパニック系])のうち、9,525例がアスピリン群に、9,589例はプラセボ群に割り付けられた。全死因死亡率:5.9 vs.5.2%、がん関連死亡率:3.1 vs.2.3%、解釈には注意を フォローアップ期間中央値は4.7年であり、この間に1,052例(5.5%)が死亡した(アスピリン群5.9% vs.プラセボ群5.2%)。全体の死亡の根本原因のうち、がん(原発、転移)は49.6%(522例)であり、心血管疾患(心筋梗塞、その他の冠動脈性心疾患、心臓突然死、虚血性脳卒中)は19.3%(203例)、大出血(出血性脳卒中、症候性頭蓋内出血、消化管の大出血、その他の頭蓋外出血)は5.0%(53例)だった。 全死因死亡の発生率は、アスピリン群が12.7件/1,000人年と、プラセボ群の11.1件/1,000人年に比べて高く(差:1.6件/1,000人年)、有意差が認められた(HR:1.14、95%信頼区間[CI]:1.01~1.29)。この死亡率の差には、がんによる死亡の寄与が大きく、アスピリン群はがん死の発生率が有意に高かった(3.1 vs.2.3%、HR:1.31、95%CI:1.10~1.56)。 心血管疾患による死亡(アスピリン群:1.0% vs.プラセボ群:1.2%、HR:0.82、95%CI:0.62~1.08)、大出血による死亡(0.3 vs.0.3%、1.13、0.66~1.94)、その他の疾患(敗血症、慢性肺疾患、認知症、心不全)による死亡(1.5 vs.1.3%、1.16、0.91~1.48)の発生率は、両群でほぼ同等であった。 がんによる累積死亡率の推移をみると、3年目あたりから両群の差が開き始めていた。また、個々のがん種に関連した死亡数は少なかったが、部位や病理学的タイプにかかわらず、アスピリン群で死亡率が高い傾向がみられた。 サブグループ解析では、事前規定の項目か否かにかかわらず、全死因死亡に及ぼすアスピリンの影響は全般的に一致していた。 著者は、「他のアスピリンの1次予防の研究では、このような結果は得られていないことから、今回の死亡率の結果は注意して解釈すべきである」と指摘している。

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相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】第10回

相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」今回は、「ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物カプセル(商品名:ネイリンカプセル100mg)」を紹介します。本剤は、薬物相互作用が少なく、休薬期間や服用時点の制限もないため、高齢者に多い爪白癬の新たな治療選択肢となることが期待できます。<効能・効果>皮膚糸状菌(トリコフィトン属)による爪白癬の適応で、2018年1月19日に承認され、2018年7月27日より販売されています。本剤は、トリアゾール系抗真菌薬であるラブコナゾールの水溶性および生物学的利用率を高めたプロドラッグであり、経口投与後速やかに活性本体であるラブコナゾールに変換され、真菌の発育に必要なエルゴステロールの生合成を阻害して抗真菌作用を示します。<用法・用量>通常、成人には、1日1回1カプセルを12週間経口投与します。なお、本剤はすでに変色した爪所見を回復させるものではないので、投与終了後も爪の伸長期間を考慮した経過観察が必要です。<副作用>国内第III相臨床試験において、101例中副作用が24例(23.8%)に認められました。主な副作用は、γ-GTP増加16例(15.8%)、ALT(GPT)増加9例(8.9%)、AST(GOT)増加8例(7.9%)、腹部不快感4例(4.0%)、血中Al-P増加2例(2.0%)でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、飲み続けることで爪白癬の原因となる真菌を殺菌する働きがあります。2.すでに変形・変色してしまった爪を回復させる薬ではありません。服薬終了後も健康な爪に生え変わるまで継続的な観察(約9ヵ月間)が必要です。3.自己判断で中止すると、再発・悪化につながります。医師の指示があるまではしっかり続けてください。4.爪が肥厚、変形している場合は、必要に応じてやすりや爪切りなどで爪のお手入れをしてください。5.爪白癬はご家族などに感染することがあります。患部はお風呂に入った後よく乾かし、清潔に保ってください。6.この薬を服用している間および使用を中止してから少なくとも3ヵ月間は必ず避妊をしてください。<Shimo's eyes>本剤は、経口爪白癬治療薬として約20年ぶりに承認された新薬で、適応は爪白癬のみとなっています。爪(NAIL)に薬物が入る(IN)ことからNAILIN(ネイリン)と命名されました。爪白癬治療薬として、経口薬ではテルビナフィン(先発品名:ラミシール)およびイトラコナゾール(同:イトリゾール)が発売されています。1997年に発売されたテルビナフィンは、肝機能障害や血球減少といった重篤な副作用が報告されているため定期的な採血が必要であり、また服用期間が約6ヵ月と長いことが課題でした。そのため、現在では主に1999年に発売されたイトラコナゾールのパルス療法(1週間投与して3週間休薬を1サイクルとして、3サイクル繰り返す)が行われています。しかし、イトラコナゾールは強力なCYP3A4とP糖蛋白の阻害作用を有するため、併用禁忌・併用注意薬が多くあり、高齢者や合併症のある患者さんでは使用しづらいこともあります。そのような中、爪外用液として2014年にエフィナコナゾール爪外用液10%(商品名:クレナフィン)、2016年にルリコナゾール爪外用液5%(同:ルコナック)が発売されました。しかし、爪外用液は、肝障害などの副作用や他剤との薬物相互作用が少ないというメリットがあるものの、爪が生え変わるまでの期間(1年程度)塗布し続ける必要があり、経口薬に比べて有効性が低い傾向があります。このように、これまでの爪白癬治療では、有効性や安全性、治療の利便性に課題があり、服薬アドヒアランスを良好に保つことが課題でした。本剤は、CYP3A阻害作用が比較的弱いため、シンバスタチンやミダゾラム、ワルファリンとは併用注意ですが、併用禁忌の薬はありません。また、1日1回12週間の連日服薬で、食事の影響がないため患者さんのライフスタイルに合わせて服用することができ、服薬アドヒアランスが良好に維持されることが期待されます。とくに要介護患者さんに対する爪外用液の使用で負担が大きかった介護者にとっては、負担が大きく軽減されるかもしれません。なお、国内臨床試験において、肝機能に関する重篤な有害事象は認められていませんが、海外で承認されている国および地域はありません※ので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。※2018年8月現在

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第7回 誰もが納得する「院外処方の意義」【週刊・川添ラヂオ】

動画解説「病院で薬もらえたほうが楽なのに、どうして院外処方にするんですか?」。患者さんにこう聞かれた経験がある薬剤師は多いと思います。この質問に明確に答えられますか。南国病院が院外処方に切り替える際に、たくさんの患者さんにこう聞かれた川添先生。いろいろ考えた末に、ほとんどすべての患者さんが理解できるわかりやすい理由を考えつきます。土佐のいごっそうたちを納得させたその理由とは?

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第6回 意識障害 その5 敗血症ってなんだ?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)バイタルサインを総合的に判断し、敗血症を見逃すな!2)“No Culture,No Therapy!”、治療の根拠を必ず残そう!3)敗血症の初療は1時間以内に確実に! やるべきことを整理し遂行しよう!【症例】82歳女性の意識障害:これまたよく出会う原因82歳女性。来院前日から活気がなく、就寝前に熱っぽさを自覚し、普段と比較し早めに寝た。来院当日起床時から38℃台の発熱を認め、体動困難となり、同居している娘さんが救急要請。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:10/JCS、E3V4M6/GCS血圧:102/48mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:24回/分 SpO2:97%(RA)体温:37.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+前回までの症例が一段落ついたため、今回は新たな症例です。高齢女性の意識障害です。誰もが経験したことのあるような症例ではないでしょうか。救急外来で多くの患者さんを診ている先生ならば、原因はわかりますよね?!前回までの復習をしながらアプローチしていきましょう。Dr.Sakamotoの10’s Ruleの1~6)を確認(表1)病歴やバイタルサインに重きを置き、患者背景から「○○らしい」ということを意識しながら救急車到着を待ちます。来院時も大きく変わらぬバイタルサインであれば、意識消失ではなく意識障害であり、まず鑑別すべきは低血糖です。低血糖が否定されれば、頭部CTを考慮しますが…。画像を拡大する原因は感染症か否か?病歴やバイタルサインから、なんらかの感染症が原因の意識障害を疑うことは難しくありません。それでは、今回の症例において体温が36.0℃であったらどうでしょうか? 発熱を認めた場合には細菌やウイルスの感染を考えやすいですが、ない場合に疑えるか否か、ここが初療におけるポイントです。この症例は、疫学的にも、そしてバイタルサイン的にも敗血症による意識障害が最も考えやすいですが、その理由は説明できるでしょうか。●Rule7 菌血症・敗血症が疑われたらfever work up!高齢者の感染症は意識障害を伴うことが多い救急外来や一般の外来で出会う感染症のフォーカスの多くは、肺炎や尿路感染症、その他、皮膚軟部組織感染症や腹腔内感染症です。とくに肺炎、尿路感染症の頻度が高く、さらに高齢女性となれば尿路感染症は非常に多く、常に考慮する必要があります。また、肺炎や腎盂腎炎は、意識障害を認めることが珍しくないことを忘れてはいけません。「発熱のため」、「認知症の影響で普段から」などと、目の前の患者の意識状態を勝手に根拠なく評価してはいけません。意識障害のアプローチの最初で述べたように、まずは「意識障害であることを認識!」しなければ、正しい評価はできません。感染症らしいバイタルサイン:qSOFAとSIRS*感染症らしいバイタルサインとは、どのようなものでしょうか。急性に発熱を認める場合にはもちろん、なんらかの感染症の関与を考えますが、臨床の現場で悩むのは、その感染症がウイルス感染症なのか細菌感染症なのか、さらには細菌感染症の中でも抗菌薬を使用すべき病態なのか否かです。救急外来など初療時にはフォーカスがわからないことも少なくなく、病歴や臓器特異的所見(肺炎であれば、酸素化や聴診所見、腎盂腎炎であれば叩打痛や頻尿、残尿感など)をきちんと評価してもわからないこともあります。そのような場合にはバイタルサインに注目して対応しましょう。そのためにまず、現在の敗血症の定義について歴史的な流れを知っておきましょう。現在の敗血症の定義は、「感染による制御不能な宿主反応によって引き起こされる生命を脅かす臓器障害1)」です(図1、2)。一昔前までは「感染症によるSIRS」でしたが、2016年に敗血症性ショックの定義とともに変わりました。そして、敗血症と診断するために、ベッドサイドで用いる術として、SIRS(表2)に代わりqSOFA (quickSOFA)(表3)が導入されました。その理由として、以下の2点が挙げられます。1)なんでもかんでも敗血症になってしまうSIRSの4項目を見ればわかるとおり、2項目以上は簡単に満たしてしまいます。皆さんが階段を駆け上がっただけでも満たしますよね(笑)。実際に感染症以外に、膵炎、外傷、熱傷などSIRSを満たす症候や疾患は多々存在し、さらに、インフルエンザなどウイルスに伴う発熱であっても、それに見合う体温の上昇を認めればSIRSは簡単に満たすため、SIRS+感染症を敗血症と定義した場合には、多くの発熱患者が敗血症と判断される実情がありました。2)SIRSを満たさない重篤な感染症を見逃してしまうSIRSを満たさないからといって敗血症でないといえるのでしょうか。実際にSIRSは満たさないものの、臓器障害を呈した状態が以前の定義(SIRS+感染症=敗血症)では12%程度認められました。つまり、SIRSでは拾いあげられない重篤な病態が存在したということです。これは問題であり、敗血症患者の初療が遅れ予後の悪化に直結します。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するそこで登場したのがqSOFAです。qSOFAは、(1)呼吸数≧22/分、(2)意識障害、(3)収縮期血圧≦100mmHgの3項目で構成され、2項目以上満たす場合に陽性と判断します。項目数がSIRSと比較し少なくなり、どれもバイタルサインで構成されていることが特徴ですが、その中でも呼吸数と意識障害の2項目が取り上げられているのが超・超・重要です。敗血症に限らず重症患者を見逃さないために評価すべきバイタルサインとして、この2項目は非常に重要であり、逆にこれら2項目に問題なければ、たとえ血圧が低めであっても焦る必要は通常ありません。心停止のアルゴリズムでもまず評価すべきは意識、そして、その次に評価するのは呼吸ですよね。また、これら2項目は医療者自身で測定しなければ正確な判断はできません。普段と比較した意識の変化、代謝性アシドーシスの代償を示唆する頻呼吸を見逃さないように、患者さんに接触後速やかに評価しましょう。*qSOFA:quick Sequential[Sepsis- Related] Organ Failure Assessment ScoreSIRS:Systemic Inflammatory Response Syndrome“No Culture,No Therapy!”:適切な治療のために根拠を残そう!“Fever work up”という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 感染症かなと思ったら、必ずフォーカス検索を行う必要があります。熱があるから抗菌薬、酸素化が悪いから肺炎、尿が濁っているから尿路感染症というのは、上手くいくこともありますが、しばしば裏切られて後々痛い目に遭います。高齢者や好中球減少などの免疫不全患者では、とくに症状が乏しいことがあり悩まされます。フォーカスがわからないならば、抗菌薬を投与せずに経過を診るというのも1つの選択肢ですが、重症度が高い場合にはそうも言っていられません。また、前医から抗菌薬がすでに投与されている場合には、さらにその判断を難しくさせます。そのため、われわれが行うべきことは「(1)グラム染色を行いその場で関与している菌の有無を判断する、(2)培養を採取し根拠を残す」の2つです。(1)は施設によっては困難かもしれませんが、施行可能な施設では行わない理由がありません。喀痰、尿、髄液、胸水、腹水など、フォーカスと考えられる場所はきちんと評価し、その目でちゃんと評価しましょう。自信がない人はまずは細菌検査室の技師さんと仲良くなりましょう。いろいろ教えてくださいます。(2)は誰でもできますね。しかし、意外とやってしまうのが、痰が出ないから喀痰のグラム染色、培養を提出しない、髄膜炎を考慮しながらも腰椎穿刺を施行しないなんてことはないでしょうか。肺炎の起因菌を同定する機会があるのならば、痰を出さなければできません。血液培養は10%程度しか陽性になりません、肺炎球菌尿中抗原は混合感染の評価は困難、一度陽性となると数ヵ月陽性になるなど、目の前の患者の肺炎の起因菌を同定できるとは限りません。とにかく痰を頑張って採取するのです。喀出困難であれば、誘発喀痰、吸引なども考慮しましょう。肺炎患者の多くは数日前から食事摂取量が低下しており、脱水を伴うことが多く、外液投与後に喀痰がでやすくなることもしばしば経験します。とにかく採取し検査室へ走り、起因菌を同定しましょう。髄液も同様です。フォーカスがわからず、本症例のように意識障害を認め、その原因に悩むようであれば、腰椎穿刺を行う判断をした方がよいでしょう。不用意に行う必要はありませんが、限られた時間で対応する必要がある場合には、踏ん切りをつけるのも重要です。敗血症の1時間バンドルを遂行しよう!敗血症かなと思ったら表4にある5項目を遂行しましょう。ここではポイントのみ追記しておきます。敗血症性ショックの診断基準にも入りましたが、乳酸値は敗血症を疑ったら測定し、上昇している場合には、治療効果判定目的に低下を入れ、確認するようにしましょう。血圧は収縮期血圧だけでなく、平均動脈圧を評価し管理しましょう。十分な輸液でも目標血圧に至らない場合には、昇圧剤を使用しますが、まず使用するのはノルアドレナリンです。施設毎にシリンジの組成は異なるかもしれませんが、きちんと処方できるようになりましょう。ノルアドレナリンを使用することは頭に入っていても、実際にオーダーできなければ救命できません。バンドルに含まれていませんが重要な治療が1つ存在します。それがドレナージや手術などの抗菌薬以外の外科的介入(5D:drug、drainage、debridement、device removal、definitive controlの選択を適切に行う)です。急性閉塞性腎盂腎炎に対する尿管ステントや腎瘻、総胆管結石に伴う胆管炎に対するERCPなどが代表的です。バンドルの5項目に優先されるものではありませんが、同時並行でマネジメントしなければ一気に敗血症性ショックへと陥ります。どのタイミングでコンサルトするか、明確な基準はありませんが、院内で事前に話し合って決めておくとよいでしょう。画像を拡大する今回の症例を振り返る今回の症例は、高齢女性がqSOFAならびにSIRSを満たしている状態です。疫学的に腎盂腎炎に伴う敗血症の可能性を考えながら、バンドルにのっとり対応しました。もちろん低血糖の否定や頭部CTなども行いますが、以前の症例のように積極的に頭蓋内疾患を疑って撮影しているわけではありません。この場合には、脳卒中以上に明らかな外傷歴はなくても、慢性硬膜下血腫など外傷性変化も考慮する必要があるため施行するものです。尿のグラム染色では大腸菌様のグラム陰性桿菌を認め、腎叩打痛ははっきりしませんでしたが、エコーで左水腎症を認めました。抗菌薬を投与しつつ、バイタルサインが安定したところで腹部CTを施行すると左尿管結石を認め、意識状態は外液投与とともに普段と同様の状態へ改善したため、急性閉塞性腎盂腎炎による敗血症が原因と考え、泌尿器科医と連携をとりつつ対応することになりました。翌日、血液培養からグラム陰性桿菌が2セット4本から検出され、尿培養所見とも合致していたため確定診断に至りました。いかがだったでしょうか。よくある疾患ですが、系統だったアプローチを行わなければ忙しい、そして時間の限られた状況での対応は意外と難しいものです。多くの患者さんの対応をしていれば、原因疾患の検査前確率を正しく見積もることができるようになり、ショートカットで原因の同定に至ることもできると思いますが、それまではコツコツと一つひとつ考えながら対応していきましょう。次回はアルコールや薬剤による意識障害の対応に関して考えていきましょう。1)Singer M, et al. JAMA. 2016;315:801-810.2)Levy MM, et al. Crit Care Med. 2018;46:997-1000

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肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射

CareNet DVD「肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射」をお買い上げいただき誠にありがとうございます。第3回~7回では、関連する筋肉の超音波画像をご用意しております。本編と合わせてご利用ください。※予告なく資料配布を終了する場合がありますので、あらかじめご了承下さい。ダウンロード【第3回 肩痛】棘上筋・棘下筋・肩甲挙筋・上腕二頭筋PDFを表示こちらからダウンロード【第4回 腰痛】脊柱起立筋群・殿筋群PDFを表示こちらからダウンロード【第5回 膝痛】外側広筋・内側広筋・大腿二頭筋腓腹筋・膝窩筋・ヒラメ筋PDFを表示こちらからダウンロード【第6回 頭痛】胸鎖乳突筋・頭板状筋・僧帽筋頸板状筋・咬筋・側頭筋PDFを表示こちらからダウンロード【第7回 胸痛・腹痛】大胸筋・小胸筋・前鋸筋・肋間筋僧帽筋・中斜角筋・前斜角筋・腹直筋腹斜筋・腸腰筋・下後鋸筋・脊柱起立筋群PDFを表示こちらからダウンロード【一括ダウンロード】肩痛・腰痛・膝痛・頭痛・胸痛・腰痛こちらからダウンロード関連番組のご紹介(CareNeTV)プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!(整形外科編)(全14回)シリーズ解説:プライマリ・ケア医が日頃の診療で感じる疑問や悩みに、その分野の専門医が一問一答で答えるQ&A番組。今回は整形外科がテーマです。肩痛や腰痛、膝痛の診断方法や治療といった前野哲博先生が厳選した疑問に、スペシャリスト斉藤究先生がズバリお答えします。CareNeTVはこちら斉藤究氏の番組ページはこちら

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第8回 アセトアミノフェンもワルファリン併用で用量依存的にINR上昇【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 ワルファリンはさまざまな食品や薬剤と相互作用があり、併用注意に当たる飲み合わせが多いことはよく知られています。私も以前、脳梗塞の既往があり、ワルファリンを服用している患者さんに、市販の解熱鎮痛薬を一緒に服用してよいか質問され、薬剤の種類や使用目的について少し回答に悩んだことがあります。ワルファリンの添付文書にも記載があるように、NSAIDsには血小板凝集抑制作用があり、互いに出血傾向を助長するおそれがあるため、アセトアミノフェンが優先して使用されることも多くあります。しかし、アセトアミノフェンも機序は不明ですが、ワルファリンの併用注意欄に作用増強の記載があり、疑義照会の判断に迷うところです。そこで、今回はワルファリンとアセトアミノフェンを併用したいくつかの研究を紹介します。まずは、1998年にJAMA誌に掲載された症例対照研究です(Hylek EM, et al. JAMA. 1998;279:657-662.)。症例対照研究はまれな疾患や症状を検証するのに適した研究デザインで、すでにある事象が発生している「症例群」と、その事象が発生しておらず条件をマッチさせた「対照群」を選び、過去にさかのぼって事象が生じた要因を特定しようとする研究です。研究開始時点ですでに事象が発生しているものを調べる後ろ向き研究であるという点で、コホート研究と趣が異なります。この研究では1995年4月~1996年3月に、ワルファリンを1ヵ月以上服用しており、目標INR 2.0~3.0の外来患者を対象としました。INRが6.0以上の症例群(93例)と1.7~3.3の対照群(196例)の比較から得られた結果の多変量解析により、INR 6.0以上になる要因としてアセトアミノフェンが独立して関連している可能性が示唆されました。とくにアセトアミノフェン服用量が9.1g/週(1.3g/日)以上のときのオッズ比は10倍以上(95%信頼区間:2.6~37.9)でした。次に、2006年に発表された二重盲検クロスオーバー試験です(Mahe I, et al. Haematologica. 2006;91:1621-1627.)。こちらもワルファリンを1ヵ月以上服用している患者(20例)が参加しています。アセトアミノフェン1gまたはプラセボを1日4回に分けて14日間服用し、2週間のウォッシュアウト期間を設けた後に試験薬と対照薬を入れ替えて経過を調査しました。4日目で脱落しINR値を測定できなかった患者1例とプロトコール違反1例が最終解析から除かれています。平均INRはアセトアミノフェンを服用開始後急速に上昇し、1週間以内にプラセボよりも有意に増加しました。INRの平均最大値はアセトアミノフェンで3.45±0.78、プラセボで2.66±0.73で、ベースラインからの上昇幅はアセトアミノフェンで1.20±0.62、プラセボで0.37±0.48でした。なお、プロトコールから逸脱する数値の上昇がある場合は中止され、出血イベントはいずれの群においてもみられませんでした。さらに、プラセボ対照のランダム化比較試験の報告もあります(Zhang Q, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2011;67:309-314.)。ワルファリン継続中の患者(45例)をアセトアミノフェン2g/日群、アセトアミノフェン3g/日群、またはプラセボ群に2:2:1の比率で割り付けて比較した研究です。2g群、3g群、プラセボ群のINRの平均最大増加率はそれぞれ0.70±0.49、0.67±0.62、0.14±0.42で、INRの上昇はアセトアミノフェン開始3日目で有意となりました。なお、INRが3.5を超えた場合には治療は中止されています。同様に、メタ解析の論文(Caldeira D, et al. Thromb Res. 2015;135:58-61.)や観察研究の系統的文献レビュー(Roberts E, et al. Ann Rheum Dis. 2016;75:552-559.)でも、その相互作用の可能性について警鐘が鳴らされています。アセトアミノフェン1.3g/日以上を3日以上連用なら注意が必要実践に落とし込むとすると、INRのモニタリングについて、アセトアミノフェン1.3g~2g/日を超える用量を連続3日以上服用している場合は、一定の注意を払ってもよいと思います。時にはその服用状況をワルファリンの処方医に報告することも必要でしょう。一方で、急性疾患による数日間の短期治療でアセトアミノフェンが1g/日を超えない程度であれば影響は少なそうです。この相互作用の機序については不明とされていますが、いくつかの説はありますので、最後にそのうちの1つであるNAPQI(N-acetyl-p-benzoquinone-imine)の影響だとする仮説を紹介しましょう。アセトアミノフェンは代謝を受けると毒性代謝産物であるNAPQIを生成します。通常は肝臓中のグルタチオン抱合を受けて速やかに無毒化されて除去されますが、アセトアミノフェンの服用量過多や糖尿病の合併などでNAPQIが蓄積しやすくなることがあります。これは、アセトアミノフェンによる肝障害の原因としても知られています。このNAPQIがビタミンK依存性カルボキシラーゼおよびビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害するため、複数のポイントでビタミンKサイクルを阻害し、ワルファリンの効果に影響を及ぼしているのではないかというものです(Thijssen HH, et al. Thromb Haemost. 2004;92:797-802.)。あくまでも仮説ですが、説得力はありますね。ワルファリンとアセトアミノフェンの併用はよくある飲み合わせですが、つい見落としがちな相互作用ですので意識してみてはいかがでしょうか。 1.Hylek EM, et al. JAMA. 1998;279:657-662. 2.Mahe I, et al. Haematologica. 2006;91:1621-1627.(先行研究はMahe I, et al. Br J Clin Pharmacol. 2005;59:371-374.) 3.Zhang Q, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2011;67:309-314. 4.Caldeira D, et al. Thromb Res. 2015;135:58-61. 5.Roberts E, et al. Ann Rheum Dis. 2016;75:552-559. 6.Thijssen HH, et al. Thromb Haemost. 2004;92:797-802. 7.ワーファリン錠 添付文書 2018年4月改訂(第26版)

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重症筋無力症〔MG : Myasthenia gravis〕

重症筋無力症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義神経筋接合部の運動終板に存在する蛋白であるニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor:AChR)やMuSK(muscle specific tyrosine kinase)に対する自己抗体が産生されることにより神経筋伝達の安全域が低下することで、罹患骨格筋の筋力低下、易疲労性を生じる自己免疫疾患である。■ 疫学本症は、特定疾患治療研究事業で国が指定する「特定疾患」の1つである。1987年のわが国での全国調査では本症の有病率は、5.1人/10万人と推計されたが、2006年には11.8人/10万人(推定患者数は15,100人)に上昇した1)。男女比は1:1.7、発症年齢は5歳以下と50~55歳にピークがあり、高齢発症の患者が増えていた1)。胸腺腫の合併はMG患者の32.0%、胸腺過形成は38.4%で認められていた。眼筋型MGは35.7%、全身型MGは64.3%であり、MGFA分類ではI・IIが約80%と多数を占めていた1)。また、抗AChR抗体の陽性率は73.9%であった1)。2018年の最新の全国疫学調査では、患者数は23.1人/10万人(推定29,210人)とさらに増加している。■ 病態本症の多くは、アセチルコリン(acetylcholine:ACh)を伝達物質とする神経筋シナプスの後膜側に存在するAChRに対する自己抗体がヘルパーT細胞依存性にB細胞・形質細胞から産生されて発症する自己免疫疾患である。抗AChR抗体は IgG1・3サブクラスが主で補体活性化作用を有していることから、補体介在性の運動終板の破壊がMGの病態に重要と考えられている。しかし、抗AChR抗体価そのものは症状の重症度と必ずしも相関しないと考えられている。MGにおいて胸腺は抗体産生B細胞・ヘルパーT細胞・抗原提示細胞のソース、MHCクラスII蛋白の発現、抗原蛋白(AChR)の発現など、抗AChR抗体の産生に密接に関与しているとされ、治療の標的臓器として重要である。抗AChR抗体陰性の患者はseronegative MGと呼ばれ、そのうち、約10~20%に抗MuSK抗体(IgG4サブクラス)が存在する。MuSKは筋膜上のAChRと隣接して存在し(図1)、抗MuSK抗体はAChRの集簇を阻害することによって筋無力症を惹起すると考えられている。抗MuSK抗体陽性MGは、抗AChR抗体陽性MGと比べ、発症年齢が比較的若い、女性に多い、球症状が急速に進行し呼吸筋クリーゼを来たしやすい、眼症状より四肢の症状が先行することが多い、筋萎縮を認める例が多いなどの特徴を持つ。また、検査では反復刺激試験や単一筋線維筋電図での異常の頻度が低く、顔面筋と比較して四肢筋の電気生理学的異常が低く、胸腺腫は通常合併しない。さらに神経筋接合部生検において筋の運動終板のAChR量は減少しておらず、補体・免疫複合体の沈着を認めないことから、その病態機序は抗AChR抗体陽性MGと異なる可能性が示唆されている2)。また、神経筋接合部の維持に必要なLRP4に対する自己抗体が抗AChR抗体陰性およびMuSK抗体陰性MGの一部で検出されることが報告されているが3)、筋萎縮性側索硬化症など他疾患でも上昇することが判明し、MGの病態に関わっているかどうかについてはまだ不明確である。画像を拡大する■ 症状本症の臨床症状の特徴は、運動の反復に伴う骨格筋の筋力の低下(易疲労性)、症状の日内・日差変動である。初発症状としては眼瞼下垂や眼球運動障害による複視などの眼症状が多い。四肢の筋力低下は近位筋に目立ち、顔面筋・咀嚼筋の障害や嚥下障害、構音障害を来たすこともある。重症例では呼吸筋力低下による呼吸障害を来すことがある。MGでは神経筋接合部の障害に加え、非骨格筋症状もしばしば認められる。精神症状、甲状腺疾患や慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の合併、その他、円形脱毛、尋常性白斑、味覚障害、心筋炎、赤芽球癆などの自己免疫機序によると考えられる疾患を合併することもある。とくに胸腺腫合併例に多い。MGの重症度評価にはQMGスコア(表1)やMG composite scale(表2)やMG-ADLスコア(表3)が用いられる。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する■ 分類MGの分類にはかつてはOsserman分類が使われていたが、現在はMyasthenia Gravis Foundation of America(MGFA)分類(表4)が用いられることが多い。また近年は、眼筋型MG、早期発症MG(発症年齢3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療目標は日常生活動作に支障のない状態、再発を予防して生命予後・機能予後を改善することであり、MGFA post-intervention statusでCSR (完全寛解)、PR(薬物学的寛解)、MM(最小限の症状)を目指す。MG治療は胸腺摘除術、抗コリンエステラーゼ薬、ステロイド薬、免疫抑制剤、血液浄化療法、免疫グロブリン療法(IVIg)などが、単独または組み合わせて用いられている。近年、補体C5に対するモノクローナル抗体であるエクリズマブが承認され、難治性のMGに対して適応となっている。全身型MGに対しては胸腺摘除、ステロイド・免疫抑制剤を中心とした免疫療法が一般的に施行されている。また少量ステロイド・免疫抑制剤をベースとして血漿交換またはIVIgにステロイドパルスを併用する早期速効性治療の有効性が報告されており、MGの発症早期に行われることがある。眼筋型MGでは抗コリンエステラーゼ薬や低用量のステロイド・免疫抑制剤、ステロイドパルス6)が治療の中心となる。胸腺腫を有する例では重症度に関わらず胸腺摘除術が検討される。胸腺腫のない全身型MG症例でも胸腺摘除術が有効であることが報告されているが7)、侵襲性や効果などを考慮すると必ずしも第1選択となるとは言えず、治療オプションの1つと考えられている。胸腺摘除術後、症状の改善までには数ヵ月から数年を要するため、術後にステロイドや免疫抑制剤などの免疫治療を併用することが多い。症状の改善が不十分なことによるステロイドの長期内服や、ステロイドの副作用にてQOL8)やmental healthが阻害される患者が少なくないため、ステロイド治療は必要最小限にとどめる必要がある。抗MuSK抗体陽性MGに対して、高いエビデンスを有する治療はないが、一般にステロイド、免疫抑制剤や血液浄化療法などが行われる。免疫吸着療法は除去率が低いため行わず、単純血漿交換または二重膜濾過法を行う。胸腺摘除や抗コリンエステラーゼ薬の効果は乏しく、IVIg療法は有効と考えられている。わが国では保険適応となっていないが、海外を中心にリツキシマブの有効性が報告されている。1)ステロイド治療ステロイド治療による改善率は60~100%と高い報告が多い。ステロイド薬の導入は、初期から高用量を用いると回復は早いものの初期増悪を来たしたり、クリーゼを来たす症例があるため、低用量からの導入のほうが安全である。また、QOLの観点からはステロイドはなるべく少量とするべきである。胸腺摘除術前のステロイド導入に関しては明確なエビデンスはなく、施設により方針が異なっている。ステロイド導入後、数ヵ月以内に症状は改善することが多いが、減量を急ぐと再増悪を来すことがあり注意が必要である。寛解を維持したままステロイドから離脱できる症例は少なく、免疫抑制剤などを併用している例が多い。ステロイドパルス療法は、早期速効性治療の一部として行われたり、経口免疫治療のみでは症状のコントロールが困難な全身型MGや眼筋型MGに行われることがあるが、いずれも初期増悪や副作用に注意が必要である。ステロイドの副作用は易感染性、消化管潰瘍、糖尿病、高血圧症、高脂血症、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死、精神症状、血栓形成、白内障、緑内障など多彩で、約40%の症例に出現するとされているため、定期的な副作用のチェックが必須である。2)胸腺摘除術成人の非胸腺腫全身型抗AChR抗体陽性MG例において胸腺摘除の有効性を検討したランダム化比較試験MGTX研究が行われ結果が公表された7)。胸腺摘除施行群では胸腺摘除非施行群と比較して、3年後のQMGが有意に低く(6.2点 vs. 9.0点)、ステロイド投与量も有意に低く(32mg/隔日 vs. 55mg/隔日)、治療関連の合併症は両群で同等という結果が得られ、非胸腺腫MGで胸腺摘除は有効と結論された。全身型MGの治療オプションとして今後も行われると考えられる。約5~10%の症例で胸腺摘除後にクリーゼを来たすが、術前の状態でクリーゼのリスクを予測するスコアが報告されており臨床上有用である9)(図2)。胸腺摘除術前に球麻痺や呼吸機能障害を認める症例では、術後クリーゼのリスクが高いため9)、血液浄化療法、ステロイド投与などを術前に行い、状態を安定させてから胸腺摘除術を行うのが望ましい。画像を拡大する3)免疫抑制剤免疫抑制剤はステロイドと併用あるいは単独で用いられる。免疫抑制剤の中で、現在国内での保険適用が承認されているのはタクロリムスとシクロスポリンである。タクロリムスは、活性化ヘルパーT細胞に抑制的に作用することで抗体産生B細胞を抑制する。T細胞内のFK結合蛋白に結合してcalcineurinを抑制することで、interleukin-2などのサイトカインの産生が抑制される。国内におけるステロイド抵抗性の全身型MGの臨床治験で、改善した症例は37%で、有意な抗AChR抗体価の減少が見られた。副作用としては、腎障害と、膵障害による耐糖能異常、頭痛、消化器症状、貧血、リンパ球減少、心筋障害、感染症、リンパ腫などがある。タクロリムスの代謝に関連するCYP3A5の多型によってタクロリムスの血中濃度が上昇しにくい症例もあり、そのような症例では治療効果が乏しいことが報告されており10)、使用の際には注意が必要である。シクロスポリンもタクロリムス同様カルシニューリン阻害薬であり、活性化ヘルパーT細胞に作用することで抗体産生B細胞を抑制する。ランダム化比較試験にてプラセボ群と比較してMG症状の有意な改善と抗AChR抗体価の減少が見られた。副作用として腎障害、高血圧、感染症、肝障害、頭痛、多毛、歯肉肥厚、てんかん、振戦、脳症、リンパ腫などがある。4)抗コリンエステラーゼ薬抗コリンエステラーゼ薬は、神経終末から放出されるAChの分解を抑制し、シナプス間のアセチルコリン濃度を高めることによって筋収縮力を増強する。ほとんどのMG症例に有効であるが、過剰投与によりコリン作動性クリーゼを起こすことがある。根本的治療ではなく、対症療法であるため、長期投与による副作用を考慮し、必要最小量を使用する。副作用として、腹痛、下痢、嘔吐、流嚥、流涙、発汗、徐脈、AVブロック、失神発作などがある。5)血液浄化療法通常、急性増悪期や早期速効性治療の際に、MG症状のコントロールをするために施行する。本法による抗体除去は一時的であり、根治的な免疫療法と組み合わせる必要がある。血液浄化療法には単純血漿交換、二重膜濾過法、TR350カラムによる免疫吸着療法などがあるが、いずれも有効性が報告されている。ただしMuSK抗体陽性MGでは免疫吸着療法は除去効率が低いため、単純血漿交換や二重膜濾過血漿交換療法が選択される。6)免疫グロブリン大量療法血液浄化療法同様、通常は急性増悪時に対症療法的に使用する。有効性は血液浄化療法とほぼ同等と考えられている。本療法の作用機序としては抗イディオタイプ抗体効果、自己抗体産生抑制、自己抗体との競合作用、局所補体吸収作用、リンパ球増殖や病的サイトカイン産生抑制、T細胞機能の変化と接着因子の抑制、Fc受容体の変調とブロックなど、さまざまな機序が想定されている。7)エクリズマブ補体C5に対するヒト化モノクローナル抗体であるエクリズマブの有効性が報告され11)、わが国でも2017年より全身型抗AChR抗体陽性難治性MGに保険適用となっている。免疫グロブリン大量静注療法または血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限り使用を検討する。C5に特異的に結合し、C5の開裂を阻害することで、補体の最終産物であるC5b-9の生成が抑制される。それにより補体介在性の運動終板の破壊が抑制される一方、髄膜炎菌などの莢膜形成菌に対する免疫力が低下してしまうため、すべての投与患者はエクリズマブの初回投与の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種し、8週後以降に再投与、5年毎に繰り返し接種する必要がある。4 今後の展望近年、治療法の多様化、発症年齢の高齢化などに伴い、MGを取り巻く状況は大きく変化している。今後、系統的臨床研究データの蓄積により、エビデンスレベルの高い治療方法の確立が必要である。5 主たる診療科脳神経内科、内科、呼吸器外科、眼科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)日本神経免疫学会(医療従事者向けの診療、研究情報)日本神経学会(医療従事者向けの診療、研究情報)難病情報センター 重症筋無力症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Myasthenia Gravis Foundation of America, Inc.(アメリカの本疾患の財団のサイト)1)Murai H, et al. J Neurol Sci. 2011;305:97-102.2)Meriggioli MN, et al. Lancet Neurol. 2009;8:475-490.3)Zhang B, et al. Arch Neurol. 2012;69:445-451.4)Gilhus NE, et al. Lancet Neurol. 2015;14:1023-1036.5)Grob D, et al. Muscle Nerve. 2008;37:141-149. 6)Ozawa Y,Uzawa A,Kanai T, et al. J Neurol Sci. 2019;402:12-15.7)Wolfe GI, et al. N Engl J Med. 2016;375:511-522.8)Masuda M, et al. Muscle Nerve. 2012;46:166-173.9)Kanai T,Uzawa A,Sato Y, et al. Ann Neurol. 2017;82:841-849.10)Kanai T,Uzawa A,Kawaguchi N, et al. Eur J Neurol. 2017;24:270-275.11)Howard JF Jr, et al. Lancet Neurol. 2017;16:976-986.公開履歴初回2013年02月28日更新2021年03月05日

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018)皮膚科医が感じる夏の終わり【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第18回 皮膚科医が感じる夏の終わりしがない皮膚科勤務医デルぽんです☆ここのところ涼しい日が続いております。皆さまいかがお過ごしでしょうか?今年の夏を思い出して、夏場の皮膚科外来にありがちな光景を漫画にしてみました☆夏の暑い時期、診察室ではクーラーや扇風機が大活躍!もう、これなしにはやっていけないほど、今年はとくに猛暑でしたね…。皮膚科外来では、これらの空調が発する空気の流れが、時に要注意となる場面があります。…それはズバリ、真菌検査!採取した検体は、スライドガラスに固定して検鏡するのですが、ガラスに乗せた鱗屑は、風に吹かれるとフワ~ッと飛び散ってしまいます。デルぽんの診察室には、デスクの真上にミニ扇風機が設置してあるため、いつもコイツの風に注意しながら運んでいます☆そんな忙しい夏も、そろそろおしまい…。今年は暑さのせいか汗疹が多かった…。忙しいのも大変ですが、秋の始まりは、ちょっぴりおセンチになるデルぽんです。それでは、また~!atsuko.takahashi8081

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「脂肪が燃えるサプリ」表示に根拠なし ドラッグストアに措置命令【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第9回

食品を販売している薬局では、この夏は熱中症対策として経口補水液や塩分補給の飴などのニーズが高かったのではないでしょうか。薬局が医薬品だけでなく食品や医療材料なども取り扱うことは、地域の方々の健康を支えるために必要なことだと思っています。ところが、ある健康食品の販売に関して気になる記事がありました。サプリメントの広告で合理的根拠がないのに「脂肪の消費を大幅UP」などと宣伝したのは景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は9月5日までに、関西を中心にドラッグストアを展開する「キリン堂」(大阪市)に再発防止を求める措置命令を出した。消費者庁などによると、対象となった商品は「グラリスゴールド」。(中略)摂取するだけで特段の運動や食事制限をしなくても体脂肪が燃焼し、痩せる効果が得られるような表示をしていた。(2018年9月5日付 日本経済新聞WEB)薬局で販売する健康食品の店頭表示物(いわゆるPOP広告)に関して、消費者庁から不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づく措置命令が出されました。問題になったPOP広告には、太った人物が腹部をつかんでいるイラストや細身の人物がサイズの大きなズボンを履いているイラストなどとともに、「食べるの大好き&運動嫌い でも燃えた!!」「脂肪燃焼力を大幅UP」「脂肪を減らしながら基礎代謝を上げる」など、運動しなくても痩身効果が得られるかのように表示されていました。消費者庁は当該表示の根拠を示すよう求めましたが、同社から提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められなかったため、表示内容が景品表示法に違反していたことの一般消費者への周知や、再発防止策の構築などを命じました。根拠なく優良誤認させるのは景品表示法違反 薬機法違反の可能性もご存じのように、医薬品や医薬部外品などは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)により、エビデンスや承認された効能効果に基づいて表示できる範囲が決められています。では、健康食品の広告には何を書いてもいいか、というとそんなことはありません。健康食品はあくまで食品ですので、薬機法で直接制限されるものではありませんが、一般消費者が誤った情報によって商品を選んで不利益を被ることがないよう、景品表示法で不当な表示をして販売してはならない旨が定められています。今回問題となったPOP広告は、景品表示法第5条第1号に抵触しました。これは、商品やサービスが実際のものよりも著しく優良であるとアピールして、一般消費者の選択を阻害するような不当な表示を禁止するものです。実際、当該健康食品を広告どおりの効果があるものだと期待して購入した方もいただろうと思います。しかも当該POP広告が表示されていた場所は薬局やドラッグストアですので、薬剤師や従業員が「これはダイエットにオススメですよ」と言ったら、一般の方は「効果があるんだ!」と信じてしまうでしょう。薬局で薬剤師が健康食品を販売するとなると、一般のスーパーで売られているものより説得力が増してしまうため、より表現に注意しなければなりません。なお、健康食品は薬機法の範疇ではないといっても、病気の治療や予防、身体機能の増強・増進を目的とする効能効果をうたった場合(暗示的な表現含む)には薬機法違反になります。今回のPOP広告はほぼ明示的に脂肪の消費を促したり、代謝をアップさせたりする効果があると表示されていますので、かなりクロに近いのではないかと思います。「本当にこれを掲示して一般の方は誤解を受けないだろうか?」「本社がそう言っているが、そのエビデンスはあるのだろうか?」「そもそもこれは食品? 医薬部外品?」と意識して、薬機法、景品表示法を守ることも薬剤師として必要な仕事です。皆さんの薬局のPOP広告は大丈夫でしょうか?

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臨床写真が語るみずみずしい臨床像

 2018年9月2日、第1回日本臨床写真学会学術集会(会長:忽那 賢志氏[国立国際医療研究センター 総合感染症科/国際感染症センター])が、国立国際医療研究センターにおいて開催された。集会では、臨床写真を診断に用いる有用性についての講演、珍しい写真を使用したクイズ、有名医学論文のClinical Pictureへの投稿掲載成功例などが発表された。臨床写真で知の共有化、そして経験値の向上へ はじめに会長の忽那 賢志氏が、今回の集会の目的と意義について説明。臨床写真とは、「病歴も含め臨床に関係する画像全般」と述べ、血液内を泳動するフィラリアの動画を示しながら動画もその範疇に含まれるとした。また、学会の目的として「臨床写真を撮ることで診断につながることはもちろん、このような場を通じて、臨床写真を共有することで、会員共通の財産とすることができ、臨床経験を共有すること、各自の経験値を増やすことができる。また、積極的に学術誌への投稿も目指したい」と説明した。臨床写真を撮ることで経験を次世代につなげていく 次に特別講演として講師に須藤 博氏(大船中央病院 院長)を迎え、「臨床写真と私」をテーマに臨床写真の重要性や撮影のテクニックについてレクチャーが行われた。 講演では、触手できる「急性胆嚢炎」、「マーカスガン瞳孔」、「遺伝性血管浮腫」、「リウマチ性多発筋痛症」、手表に特徴のある「貧血」など同氏の膨大なアーカイブから選出された臨床写真が紹介された。 同氏は講演の中で「臨床写真は、言語化が難しい症例を説明する格好の手段。とくに教科書症例は画像化が必要」と提案するとともに、臨床写真撮影のテクニックとして「治療前、治療後を撮影しておくと経過がわかり参考になる」「腹部所見は真横からも撮影する」「患者からの画像提供も診療の参考にする」など臨床現場で役立つポイントを語った。 おわりに同氏は、「身体所見をマスターすることとは、所見を知って・学んで、ひたすら待っていると、いつか経験する(気付く)ときが来る、そのとき記録する(反芻する)ことで、また最初に戻り、このサイクルを繰り返すことである。そして、写真は知恵を伝える重要なツールとなる。臨床写真を撮ることで、経験を次世代につなげていくことが重要だ」と語り、講演を終えた。Clinical Pictureへの投稿は日本発の症例が採用されやすい!? 次に“The New England Journal of Medicine(NEJM)”のClinical Pictureへの投稿採用について、過去に同コーナーで採用された5名の経験者を演者に写真撮影の経緯、投稿までのプロセス、投稿での注意点などがレクチャーされた。 NEJMの臨床写真の投稿採用率は2.5%とされながらも、日本からの投稿は採用されやすいという。それは日本独特の疾患である高安動脈炎やアニサキス症の写真が同誌の編集者の目を引くからではないかと推測されている。また、全体的に採用されやすい臨床写真の傾向として1)コモンな疾患だが特異的な所見、2)特異的な疾患だがコモンな症状の所見が採用される確率が高いとされる。講演ではClinical Pictureは「投稿に英語という壁があるものの、憶することなく積極的に投稿して欲しい」と演者は応援を送った。実際にClinical Pictureへの投稿で採用された臨床写真では「皮膚・口腔内写真(風疹)」、「内視鏡写真・動画(アニサキス症)」、「指の紫斑(アッヘンバッハ症候群)」、「第3指の膨張(ヘルペス性ひょう疽)」、「食道内視鏡画像(急性壊死性食道炎/black esophagus)」が示された。 その他学会では、講演の合間に臨床写真で診断をする“Clinical Picture Quiz”が行われ、緑膿菌肺炎の胸部X線と喀痰グラム染色写真、アフリカ紅斑熱の皮膚写真、パンケーキ症候群の顔面写真、フルニトラゼパムの不適正服用での口腔内写真などが発表された。また、「臨床写真鑑賞会」では、急性リンパ管炎の手腕写真、ミノサイクリン性色素沈着の下腿写真、アタマジラミの頭部毛髪・拡大写真などが発表され、参加者はみたことのない臨床写真を食い入るように見つめていた。 次回、第2回は2019年に開催される予定。

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第6回 「モノから人へ」を誤解していないか?【週刊・川添ラヂオ】

動画解説「モノから人へ」。薬剤師の仕事のあり方に関して、最近よく耳にする言葉です。川添先生は、この方向性を基本的に支持しながらも、少し間違えて理解している薬剤師がいるのではないか?と危惧します。フィジカルアセスメントはもちろん重要です。しかし、薬剤師の基本はやはり調剤。フィジカルアセスメントが完璧でも、薬というモノをしっかり扱えない薬剤師は優秀な薬剤師ではありません。川添先生は言います。「モノから人へ」ではなく…さて、何でしょう?

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日本の地方救急診療における認知症者の臨床的特徴

 岡山大学の田所 功氏らは、救急診療における認知症者の臨床的特徴を明らかにするため、検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2018年8月21日号の報告。 岡山県・倉敷平成病院の救急診療を受診した認知症者をレトロスペクティブに検討を行った。2014~17年の3年間に救急診療を受診した患者1万6,764例のうち、認知症者2,574例(15.4%)に焦点を当てた。 主な結果は以下のとおり。・認知症者の平均年齢は、84.9±0.1歳であり、これは全救急診療受診患者の平均年齢58.1±0.2歳よりも非常に高かった。・認知症者の入院率は54.9%であり、非認知症者の2倍以上(23.3%、p<0.01)高く、75歳以上の非認知症者(44.3%)よりも高かった。・救急診療受診および入院の最も主要な原因は、感染症(42.4%)、転倒(20.9%)であった。・認知症者の入院期間は、脳卒中、転倒、感染症、てんかん、湿疹、意識喪失、その他の原因または脱水によって延長された。・延長日数は脳卒中(64.0±5.3日)および転倒(51.9±2.1日)が、感染症、てんかん、湿疹、意識喪失、その他の原因(各々のp<0.001)または脱水(p≦0.005)よりも長かった。 著者らは「認知症者は、救急診療を受診することが多く、非認知症者よりも、高年齢、高入院率であり、とくに脳卒中および転倒により入院期間が長くなる」としている。■関連記事年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大精神疾患患者、救急受診の現状は急性期病院での認知症看護、その課題は:愛媛大

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第9回 かぶれやすい乳幼児の口まわりのスキンケア方法【使える!服薬指導箋】

第9回 かぶれやすい乳幼児の口まわりのスキンケア方法1)馬場 直子 著. 最新の皮膚科学に基づいた湿疹のケア. 助産雑誌;2014. 68巻8号2)五十嵐 隆(監), 大矢 幸弘(編). 国立成育医療研究センターBookシリーズ こどものアレルギー. メディカルトリビューン;2013.

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北海道地震で先遣JMAT初運用

 2018年9月12日、日本医師会は、先日の平成30年北海道胆振東部地震災害対策について記者会見を行った。中川 俊男氏(同会副会長)と石川 広巳氏(同会常任理事)を中心に、災害当日からの活動内容と今後の対策について語られた。初の「先遣JMAT(日本医師会災害医療チーム)」運用から活動開始・9月6日  3時07分 北海道胆振東部地震発生  3時19分 都道府県医師会に対し、災害時情報共有システムを通して情報提供を要請  6時15分 北海道医師会 災害対策本部を設置 11時54分 日本医師会 災害対策本部(本部長:横倉 義武氏/本会会長)を設置・9月7日 15時00分 長瀬 清氏(北海道医師会長)をリーダーとする先遣JMATが苫小牧医師会を訪問・9月8日 20時30分 北海道医師会、DMAT医療救護調整本部よりJMAT2隊の派遣要請を受け、手稲渓仁会病院・勤医協中央病院のチーム派遣を決定・9月9日 10時28分 JMATが随時被災地に到着し、DMATから引き継ぎを受けて活動開始 9月11日現在、JMATはむかわ町に5グループ派遣されており、待機が1グループ。先遣JMATの活動は終了している。派遣されたメンバーの内訳は、医師8名、看護職員6名、薬剤師3名、他医療関係者4名、事務職員5名の計26名。いつ発生するかわからない地震に備え、停電への対策を 石川氏は、「今回の地震で物流が大打撃を受け、ライフラインの重要さを改めて感じた」と語り、一時北海道の全域が停電したことに触れ、「現状の医療は電力に頼らざるをえないが、停電時の選択肢を多く備えておくことが重要だ。自家発電がないような診療所などでは、自前で訓練を行っているところもあるので、見習って取り組んでほしい」と強調した。※JMATの目的と運用について JMATは、被災者の生命及び健康を守り、被災地の公衆衛生を回復し、地域医療の再生を支援することを目的とする災害医療チームである。災害発生時、被災地の都道府県医師会の要請に基づく日本医師会からの依頼により、全国の都道府県医師会が、郡市区医師会や医療機関などを単位として編成する。日本医師会の直接的な災害対応能力とする。 活動内容は、主に災害急性期以降における避難所・救護所等での医療や健康管理、被災地の病院・診療所への支援(災害前からの医療の継続)である。さらに、医療の提供という直接的な活動にとどまらず、避難所の公衆衛生、被災者の栄養状態や派遣先地域の医療ニーズの把握と対処から、被災地の医療機関への円滑な引き継ぎまで、多様かつ広範囲におよぶ。■参考公益社団法人日本医師会 防災業務計画公益社団法人日本医師会 防災業務計画 JMAT要綱■関連番組(CareNeTV)大地震発生!そのとき僕らがすべきこと‐フツウの医師のための災害医療入門‐第2回 災害時の医療体制を知る‐専門チームの役割とは ※期間限定で無料公開

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被災地での診療に役立つコンテンツ

このたびの西日本豪雨、台風、北海道胆振東部地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。CareNet.comでは、被災地での診療に役立つコンテンツをご用意しております。被災地に入られる前の準備に、知識のブラッシュアップにご覧ください。(期間限定:10月31日まで公開いたします)

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第6回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3 患者さんに何を伝える?副作用と再受診 キャンプ人ペニシリン系の副作用である下痢、発疹、クラリスロマイシンの副作用である下痢について説明します。また、原因菌が不明なので、出張中もきちんと薬を飲んで再度病院へ受診して点滴するように説明します。抗菌薬を決まった時間に服用 奥村雪男オーグメンチン®配合錠に含まれるアモキシシリンがペニシリン系で時間依存であることから、飲み忘れなく定時に服用することが大事であることを説明します。他院受診時に服薬状況を伝えることとアセトアミノフェンの服用方法 ふな3出張先などで体調が急変した場合に備えて、必ずおくすり手帳(もしくは薬情)を携帯して、これらの薬剤を服用していることを受診先でも伝えるように説明します。また、アセトアミノフェンの量が多めなので、高熱や寒気がひどくなければ、1回300mg 1錠でも効果は得られることと、1回2錠で服用する場合にはできれば6時間、最低4時間をあけて、1日2回までの服用にとどめるよう伝えます。飲酒や喫煙を控える JITHURYOU薬剤と同時に飲酒することはもちろん、飲酒も控える(特にアセトアミノフェンと飲酒は代謝が促進され、肝毒性のリスクが上昇する)ことを伝えます。仕事が多忙のようですが、安静にして外出は控えたほうが良いです。咳嗽が誘発されるので当然喫煙は控えるよう伝えます。他者にうつさないように わらび餅仕事を続けるとのことなので、他者にうつさぬよう感染対策(マスクや手洗い、消毒など)をお願いします。原因菌がはっきりしていないので、良くなっても途中で服薬を中断せず、3日以内に再受診するよう説明します。治癒傾向 中西剛明治療の経過で、食欲不振、横になるより起きていたほうが楽、という状況が改善されない場合は「無効」「悪化」を疑わなくてはいけません。眠ることができるようになった、食欲が回復してきたら治癒傾向ですよ、とお話しします。Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するオーグメンチン®配合錠の規格 奥村雪男添付文書上のオーグメンチン®配合錠の用法用量は「1回375mg 分3~4 6~8時間」なので、念のためオーグメンチン®配合錠の規格が125RSでなく250RSで良いか確認します。ただし、原因菌としてペニシリン耐性肺炎球菌を想定して、アモキシシリンを高用量で処方した可能性を踏まえておきます。CYP3A4を基質とする併用禁忌の薬剤を服用していて中止できない場合は、マクロライド系でCYP3A4阻害作用の弱いアジスロマイシンへの変更を提案します。消化器系の副作用予防を考慮 清水直明オーグメンチン®配合錠250RS 6錠/日は添付文書の年齢、症状により適宜増減の範囲内、アモキシシリンは1,500mgと高用量で、S. pneumoniaeを念頭においた細菌性肺炎の治療としては妥当と考えます。ただし、オーグメンチン®配合錠250RSでアモキシシリンを1,500mg投与しようとすると、必然的にクラブラン酸の量も多くなり、消化器系の副作用が出やすくなると思います。小児用ではクラブラン酸の比率を下げた製剤がありますが、成人用ではありません。そのため、オーグメンチン®配合錠250RS 3錠/日+アモキシシリン錠250mg 3錠/日を組み合わせて投与する方が、消化器系副作用の可能性は低くできると思うので疑義照会します(大部分のM. catarrhalisや一部のH. influenzae、あるいは一部の口腔内常在菌は、β-ラクタマーゼを産生しアモキシシリンを不活化する可能性があり、β-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤が治療には適しているとされているので、あえてオーグメンチン®配合錠とアモキシシリンの組み合わせを提案します)。クラリスロマイシンについては、非定型肺炎も視野に入れて併用されていますが、M. pneumoniaeについてはマクロライド耐性株が非常に増加しています。しかし、そのような中でもM. pneumoniaeに対しての第1選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド系薬であり4)、初期治療としては妥当と考えます。細菌性肺炎であったとしても、マクロライド系薬の新作用※3を期待して併用することで、症状改善を早めることができる可能性があるため併用する意義があると思います。※3 クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、抗菌作用の他に、免疫炎症細胞を介する抗炎症作用、気道上皮細胞における粘液分泌調整作用、バイオフィルム破壊作用などをもつことが明らかになっている。保険で査定されないように 中西剛明抗菌薬の2種併用のため、疑義照会をします。医師から見ると「不勉強な薬剤師だ」と勘違いされてしまうかもしれませんが、抗菌薬の併用療法は根拠がない場合、査定の対象になることがあり、過去査定された経験があります。そのため「併用の必要性を理解している」上での問い合わせをします。耐性乳酸菌製剤の追加 中堅薬剤師過去に抗菌薬でおなかが緩くなって飲めなかったことがある場合は、耐性乳酸菌製剤の追加を依頼します。併用禁忌に注意 児玉暁人クラリスロマイシンとの併用禁忌薬を服用していれば、疑義照会をします。クラリスロマイシンの処方日数 ふな3セフトリアキソンを点滴していることから,処方医は細菌性肺炎を想定しつつも「成人市中肺炎診療ガイドライン」から非定型肺炎の疑いも排除できないため、クラリスロマイシンを追加したと考えました。セフトリアキソン単剤では、万一、混合感染であった場合に非定型肺炎の原因菌が増殖しやすい環境になってしまうことが懸念されるため、治療初期からクラリスロマイシンとの併用が望ましいと考えられるので、クラリスロマイシンの処方を4日に増やして、今日からの服用にしなくて良いのか確認します。基礎疾患の有無を確認してから 柏木紀久細菌性肺炎で原因菌が不明の場合を考え、まず「成人市中肺炎診療ガイドライン」に沿って基礎疾患の有無を確認します<表3> 。軽症基礎疾患がある場合のβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンは常用量と考えられるので、軽度基礎疾患が確認できた場合にはオーグメンチン®配合錠が高用量で良いのか確認します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。基礎疾患がない場合では、細菌性肺炎を考えつつも出張などで他者へ感染させる可能性を考慮して、非定型肺炎や混合感染を完全には排除せずクラリスロマイシンも処方したのでは、などと考えますが、念のためクラリスロマイシンの処方意図を確認します。疑義照会をしないガイドラインに記載有り キャンプ人特にしません。非定型肺炎との鑑別がつかない場合は、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」2)にも同用量の記載があります。協力メンバーの意見をまとめました疑義照会については・・・ 疑義照会をする オーグメンチン®配合錠の消化器系の副作用予防・・・3名抗菌薬の2種併用について・・・2名オーグメンチン®配合錠の規格の確認・・・1名耐性乳酸菌製剤の追加依頼・・・1名併用禁忌薬について・・・1名クラリスロマイシンの処方日数・・・1名基礎疾患に基づいて疑義照会・・・1名 疑義照会をしない 2名1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.

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成人の潜在性結核感染症に対するINH、RFPの比較試験(解説:吉田敦氏)-916

 潜在性結核感染症(LTBI)に対する治療は、イソニアジドの単剤投与(6~9ヵ月)が第1選択となる。しかしながら小生も自ら経験があるが、これだけ長い期間内服のアドヒアランスを保つのは容易ではなく、さらに肝障害のリスクもある。これまで他剤についても多くの検討が行われてきたが、今回イソニアジド9ヵ月(INH、5mg/kg/日、最大300mg/日)とリファンピシン4ヵ月(RFP、10mg/kg/日、最大600mg/日)のランダム化オープンラベル比較試験が9ヵ国で行われ、その結果が発表された。 まずLTBIと診断された成人を無作為にこの2群に割り付け、ランダム化から28ヵ月間に活動性結核感染症(微生物学的あるいは組織学的に証明された「確定例」を指す)を発症したかどうかを観察した(プライマリーアウトカム)。次にセカンダリーアウトカムとしてこの2群を追跡し、結核の「確定例」と「臨床診断例」が100人年当たりどの程度発生したか、さらにGrade3以上(薬剤中止を要する程度)の副作用と完遂率、耐性結核の割合を調査した。なお対象例にはHIV感染者は含まれるが、耐性結核に接触して感染した例や、妊娠例、抗結核薬と相互作用のある薬剤を内服している例は含まれない。また実際に処方の80%以上を服用した場合を完遂とした。 結果として、対象例のおよそ半数は18~35歳、3割が36~50歳であり、男性は4割であった。治療適応としては、活動性結核患者との濃厚接触が7割を占め、HIVは4%、その他の免疫不全は3%であった。また胸部X線写真上正常範囲内にあったものは78%であった。このうちRFP投与群3,443例では、活動性結核「確定例」は4例、「臨床診断例」は7,732人年で4例であった。一方INH投与群3,416例では、「確定例」は4例であり、「臨床診断例」は7,652人年で5例であった。RFP群からINH群を差し引いた差は、「確定例」のみならず「確定例」に「臨床診断例」を含めても100人年当たり0.01例と非常に小さくなった。さらにこの差の95%信頼区間を算出すると、RFP群はINH群に劣らなかったが、それに勝ってもいなかった。なお「確定例」4例で薬剤感受性を測定できたが、2例はすべての薬剤に感性、1例はINH耐性(INH群の患者)、1例はRFP耐性関連遺伝子を有するものの、感受性試験ではRFP感性(RFP群の患者)であった。また完遂率はRFP群78.8%、INH群63.2%、投与薬と関連が疑われるGrade3以上の副作用はそれぞれ0.8%、2.1%、肝障害はそれぞれ0.3%、1.7%であった(いずれもp<0.001)。このためRFP 4ヵ月投与はINH 9ヵ月投与に比べ完遂しやすく、効果もほぼ同等で、かつ安全性にも勝っていると結論した。 今回の検討は、国際的かつ大規模な多施設研究であることが大きな利点である。そしてこれまで観察研究等で得られていたRFP投与の非劣性が、より豊富なデータと詳細な解析で裏付けられた。HIV感染者の割合が低かったこと、活動性結核発症例が両群とも少なかったことが限界として挙げられているが、免疫抑制者をどのくらい含むかによっておそらく両群の結果も変わってくるであろう。免疫不全者におけるデータはINHであっても少ない。さらに本邦のように生物学的製剤使用者、透析患者、移植・免疫抑制薬使用者といった集団で、RFPがどの程度の効果を有するかは、さらに情報が必要である。 本検討ではまた、薬剤耐性・低感受性との関連についても知見がそれほど多くなかった。なおLTBIではないが、活動性結核治療後において、治療前のINH、RFPの最少発育阻止濃度(MIC)が感性のレンジ内であってもやや上昇していた例は、そうでない例に比べて再発が多かったという報告が最近なされている1)。RFPは単剤投与で耐性出現が懸念される薬剤でもある。これら薬剤の感受性との関連を把握することは容易ではないが、本検討を踏まえ、今後よりクローズアップされる課題であろう。

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