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ジムの継続率はわずか●%【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第150回

ジムの継続率はわずか●%いらすとやより使用ライ●ップがCMに流れ始めた頃から、徐々に浸透してきた「ジム」。最近、仕事帰りにジムに通って汗を流している医師も多いでしょう。しかし、こういうのって「長続きしない」のが世の常で。「なかなか痩せない」と言いながら、寝る前におやつを食べているなんて、ザラです。Sperandei S, et al.Adherence to physical activity in an unsupervised setting: Explanatory variables for high attrition rates among fitness center members.J Sci Med Sport. 2016 Nov;19(11):916-920.リオデジャネイロから興味深い報告がありました。フィットネスセンターに通っている人が、いつまで継続できるかを調べたものです。2005年1月~14年6月の間に、フィットネスセンターに通っていた5,240人の来店記録を参照して、12ヵ月または退会まで追跡し、トレーニング継続率を算出しました。Kaplan-Meier曲線を描いてみると、驚きの結果が得られました(図)。まず、新規会員になった人の63%が3ヵ月までにトレーニングをやめてしまったのです。3ヵ月……いくらなんでも意志が弱すぎるんじゃあ!(千鳥のノブ風)画像を拡大するトレーニング継続率は、6ヵ月で13.6%、1年だとわずか3.7%にまで減少しました。おいおい、やる気あんのかよ、というレベルです。もちろん、一概に日本と比較できるデータではありませんが、思っているより早期ドロップアウトって多いんだなぁと身につまされました。「そういえば最近ジムに行っていないなぁ」というそこのアナタ! 本当に続けられますか!?

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メラノーマ・腎がん・肺がんに対するニボルマブの5年生存率/JAMA Oncol

 進行メラノーマ、腎細胞がん(RCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗PD-1抗体ニボルマブ治療の5年生存率が報告された。米国・Johns Hopkins Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのSuzanne L. Topalian氏らが米国内13施設270例の患者を包含して行った第I相の「CA209-003試験」の2次解析の結果で、著者は「長期生存と関連する因子を明らかにすることが、治療アプローチおよびさらなる臨床試験開発の戦略に役立つだろう」と述べている。ニボルマブは進行メラノーマ、RCC、NSCLCおよびその他の悪性腫瘍に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているが、これまで長期生存に関するデータは限定的であった。JAMA Oncology誌2019年10月号(オンライン版2019年7月25日号)掲載の報告。 研究グループは、ニボルマブ投与を受ける患者の長期の全生存(OS)を分析し、臨床的および検査所評価で腫瘍部位とOSの関連を明らかにするため、第I相の「CA209-003試験」の2次解析を行った。同試験は米国内13の医療センターで行われ、2008年10月30日~2011年12月28日に登録された、ニボルマブ投与を受ける進行メラノーマ、RCC、NSCLCの患者270例が包含された。 被験者は、ニボルマブ(0.1~10.0mg/kg)を2週間ごとに8週間のサイクルで投与され、完全奏効した場合、容認できない毒性作用が認められた場合、患者が中止を申し出た場合を除き、病勢進行まで最長96週間投与された。 解析は、オリジナルのプロトコールの規定、およびその後の2008~12年にプロトコール改正で組み込まれた方法に基づき、統計的解析は、2008年10月30日~2016年11月11日に行われた。安全性とニボルマブの活性を評価。OSは、最短フォローアップ期間58.3ヵ月の事後解析のエンドポイントであった。 主な結果は以下のとおり。・解析に含まれた270例のうち、107例(39.6%)がメラノーマ(男性72例[67.3%]、年齢中央値61歳)、34例(12.6%)がRCC(26例[76.5%]、58歳[35~74])、129例(47.8%)がNSCLC(79例[61.2%]、65歳[38~85])の患者であった。・推定5年OS率は、メラノーマ患者34.2%、RCC患者27.7%、NSCLC患者15.6%であった。・多変量解析の結果、肝臓転移(オッズ比[OR]:0.31、[95%信頼区間[CI]:0.12~0.83]、p=0.02)、骨転移(0.31[0.10~0.93]、p=0.04)が5年生存率の低下と独立して相関する可能性が示された。一方で、ECOG PSの0が、独立的に5年生存率の上昇と関連していた(2.74[1.43~5.27]、p=0.003)。・OSは、治療関連有害事象のない患者(OS中央値5.8ヵ月[95%CI:4.6~7.8])と比較して、あらゆるGradeの治療関連有害事象を有する患者(19.8ヵ月[13.8~26.9])およびGrade3以上の患者(20.3ヵ月[12.5~44.9])において、有意な延長が認められた(ハザード比に基づく両群間比較のp<0.001)。

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第16回 その腹痛、重症?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)発症様式に要注意! 安易に胃腸炎と診断するな!2)お腹が軟らかくても安心するな! 血管病変を見逃すな!3)陥りやすいエラーを知り、常に意識して対応を!【症例】66歳女性。来院当日の就寝前に下腹部痛を自覚した。自宅で様子をみていたが、症状改善せず救急外来を受診。担当した医師は、お腹は軟らかいので消化管穿孔はないと判断し一安心。しかし、痛みの訴えが強いためルートを確保し、アセトアミノフェンを点滴から投与し、まずは腹部単純CT検査をオーダーし、ほかの患者を診ることとしたが…。●搬送時のバイタルサイン意識1/JCS血圧148/92mmHg 脈拍102回/分(整) 呼吸24回/分 SpO298%(RA)体温35.9℃ 瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧、脂質異常症内服薬アムロジピン(商品名:アムロジン)、アトルバスタチン(同:リピトール)腹痛診療は難しい!?腹痛は、救急外来、一般外来どちらでも頻度の高い症候です。ところが、問題なく帰宅とした患者さんが再受診することも珍しくありません。救急外来を受診し、72時間以内に再受診した患者のうち、最も頻度の高い症候が「腹痛」であったと報告されています1)。「心窩部痛で来院して、その後虫垂炎と判明した」「胃腸炎だと思ったら糖尿病ケトアシドーシスだった」「急性膵炎だと思ったらアルコール性ケトアシドーシスだった」など、誰もが経験あるでしょう。さらに、急性心筋梗塞、大動脈解離、腹部大動脈瘤切迫破裂、上腸間膜動脈塞栓症、精巣捻転、女性であれば異所性妊娠や卵巣捻転など、見逃してはならない疾患も複数存在するため、心して診療する必要があります。重篤な腹痛の見極め方救急外来など、発症早期に受診する場において、確定診断するのは簡単ではありませんが、目の前の患者が重篤なのか、緊急性が高いのかを判断することは、意外と難しくありません。危険な疼痛を見逃さないために着目するポイントは、表の6つです。腹痛を例に1つずつ確認していきましょう。表 危険な疼痛を見逃すな ―常に意識すべき6つのこと―1)痛みの訴えが強い場合は要注意!患者さんが痛みを強く訴えている場合には、慎重に対応する必要があります。当たり前のようですが、バイタルサインが安定しているケースで、検査で異常を見いだせない場合は、「大げさだなぁ」と思ってしまいがちです。また、発症早期の場合には検査上、異常がないことはよくあることです。さらに、今回の症例のように、単純CT検査ではなかなか腸管や血管の病変の詳細な評価が困難なことは容易に想像がつくでしょう。初療をしつつ、痛みはなるべく早期に取り除くようにしましょう。苦痛を取り除き、詳細な病歴を聴取し、十分な身体所見をとるのです。鎮痛薬を使用することで診断が遅れることはありません。むしろ適切な判断ができるでしょう2,3)。絞扼性腸閉塞、上腸間膜動脈塞栓症は、単純CTや造影CT検査で異常がなく問題なしと判断され、見逃される典型です。患者さんの訴えを重視し、対応しましょう。2)突然発症の疼痛は要注意!Sudden onsetの病歴はきわめて重要です。腹痛では大動脈解離、上腸間膜動脈閉塞症、腹部大動脈瘤切迫破裂などが代表的です。来院時にバイタルサインや痛みが安定しているようでも、発症様式が“突然”であった場合には、注意する必要があることはあらためて理解しておきましょう。大動脈解離や腹部大動脈瘤切迫破裂では、失神を主訴に来院することもあります。失神は瞬間的な意識消失発作でしたね(第13~15回を参照)。どちらの疾患も裂け止まっていると、バイタルサインも症状も落ち着いているものです。発症様式から具体的な疾患を想起し、意識して所見をとりにいきましょう。鑑別に挙げなければ、血圧の左右差を確認することもないですし、腹部の拍動、さらにはエコーで見るべきところを見忘れてしまいます。3)増強する疼痛は要注意!アセトアミノフェンの静注薬が使用可能となり、来院早期から鎮痛薬を使用することが多くなったのではないでしょうか。患者さんの痛みを早期に取り除くことは、望ましい対応ですが、1つ注意点があります。“鎮痛薬の使用は原則1回まで!”、これを意識しておきましょう。使いやすく投与時間が短い(15分)ため、繰り返し使用したくなりますが、一度使用し効果が乏しい場合には、その時点で“まずい”と判断し、対応する必要があります。もちろん、鎮痛薬使用前に評価は行いますが、同時に複数の患者を診ることが多いのが通常でしょうから、痛みは速やかにとりつつ、効果が乏しければ1時間様子をみるなどせず、次のアクションに移りましょう。絞扼性腸閉塞や上腸間膜動脈閉塞症では、痛みが持続し、増強していきます。時間が経てば誰でも判断可能ですが、その前の状態で拾い上げるためには、「経静脈的な鎮痛薬でも効果が乏しい」ということを意識しておくとよいでしょう。4)非典型的な経過は要注意!腹痛で見逃されやすい代表疾患の1つに虫垂炎があります。発症早期で疑いながらも診断へ至らないことも多いですが、胃腸炎と誤診されることも少なくありません。異所性妊娠も同様に胃腸炎と誤診されやすいことも合わせて覚えておいてください。これを防ぐのは意外と簡単です。胃腸炎の典型例を知ること、これだけでだいぶ違うでしょう。胃腸炎には満たすべき条件が3つ存在します。それが(1)嘔吐・腹痛・下痢の3症状あり、(2)上から下の順に(1)の症状が出現、(3)摂取してからの時間経過が合致、です4)。虫垂炎は心窩部痛→嘔気・嘔吐→右下腹部痛が典型的です。異所性妊娠も腹痛の後に嘔吐を認めることが多いでしょう。その他、腸閉塞や急性膵炎、胆管炎や尿管結石などなど、意識すれば拾い上げられる疾患は多岐にわたります。(3)は中毒との鑑別に有用です。食べた物によって消化管の症状が生じるには最低でも30分、通常数時間のタイムラグが生じます。食事中に、または食べてすぐに嘔吐などの症状を認める場合には、中毒を疑い、混入物などに気を配ったほうがいいでしょう。5)Common is common!腹痛を訴える30代の女性が、顔面に蝶形紅斑様、四肢の関節痛の症状を認めたら何を考えるでしょうか。蝶形紅斑とくれば全身性エリテマトーデス(SLE)と考えがちですが、それ以上に頻度の高い疾患が存在します。それが伝染性紅斑、いわゆる「りんご病」です。疫学は非常に重要であり、それを無視してしまうと、診療は複雑化し、さらに患者は不安をあおられます。頻度の高い疾患の非典型的症状と、頻度の低い疾患の典型的症状は、どちらが遭遇する頻度が高いかといえば、一般的には前者です。今回の例でいえば、伝染性紅斑は成人に起こると、発熱、関節痛がメインに出て、小児で認められるようなレース状皮疹を認める頻度は下がります。子供の間で流行していると、そこから接触時間の長い母親や保育士さんへ感染するのです。それに対して、SLEは名前こそ有名ですが、救急外来でSLEの初発症状に出くわすことはまれです。頻度の高い疾患から考え、対応し、確定できれば、重篤な疾患もルールアウトできるのですから、きちんと“common disease”を理解しておくことは重要なのです。「お子さんの学校で、りんご病流行っていませんか?」「息子さん、最近りんご病にかかりませんでしたか?」と問診し、「YES」と回答があればその時点で診断確定でしょう。抗核抗体をとりあえず提出、膠原病の可能性を患者に伝えてしまうと、患者は不安で仕方なくなってしまうでしょう。腹痛患者に皮疹を認める場合には、網状皮斑(livedo)であれば、ショックと考え焦る必要があります。その他、腹痛に加え関節痛、紫斑を認めれば、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)も考えましょう。6)病歴・身体診察・Vital signsは超重要!病歴(History)、身体診察(Physical)、Vital signs、これらは常に超重要です。Hi-Phy-Vi(ハイ・ファイ・バイ)を軽視し、検査を行うとまず見逃します。意識すべき病歴は前述のとおりであり、ここでは身体診察、Vital signsのポイントをコメントしておきましょう。(1)身体診察診察上、腹膜炎を示唆するカッチカチの腹部所見であれば、悩むことは少ないでしょう。それに対して、本症例のように腹部が軟らかい場合には判断を誤りがちです。漏れているのが消化液の場合(消化管穿孔など)には腹部がカッチカチとなりますが、血液の場合(腹部大動脈瘤切迫破裂や異所性妊娠)には軟らかいままです。腹部が軟らかいのに反跳痛を認める場合には、これらの疾患を積極的に疑い、エコーなど精査を迅速に進めましょう。(2)Vital signs呼吸数、意識にとくに注目しましょう。発熱がないから、頻脈でないから、血圧が保たれているからと、重症度を見誤ることがあります。内服薬の影響、糖尿病・アルコール多飲者・パーキンソン病などでは、自律神経障害の影響などによって、見た目の重症度がマスクされることがあります。呼吸数や意識状態に影響する薬剤を常時内服している人はまれであるため、頻呼吸を認める、意識障害を認める場合には“まずい”サインと認識し、精査を進めましょう。本症例の66歳の女性は、突然発症ではなかったものの、痛みの程度は強く、アセトアミノフェン投与後も症状は大きく変化しませんでした。単純CT検査では明らかな閉塞機転は見いだすことができず、対応に困って研修医から相談があった一例です。エコーでは、初診時に認めなかった少量の腹水を認め、その他腹痛を説明しうる所見が認められなかったため、来院後の経過から「絞扼性腸閉塞の疑い」として外科へコンサルトし緊急手術となりました。検査は以前と比較しオーダーしやすくなりました。しかしそのために、検査で異常を見いだせないと患者の訴えを無視してしまいがちです。Hi-Phy-Viに重きを置き、検査前確率を意識して適切な検査のオーダーと解釈を心掛けましょう。1)Soh CHW, et al. Medicina (Kaunas). 2019;55. pii:E457. doi:10.3390/medicina55080457.2)Ranji SR, et al. JAMA. 2006;296:1764-1774.3)坂本 壮. medicina.2019;56:1620-1623.4)坂本 壮. 見逃せない救急・見逃さない救急. プライマリ・ケア. 2019;4.(in press)

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USMLE Step1、あなどれない基礎医学【臨床留学通信 from NY】第3回

第3回:USMLE Step1、あなどれない基礎医学今回から、USMLEのStepについてそれぞれ具体的な対策に触れていきます。まずはStep1です。この試験は基礎医学からの出題となりますが、その内容は臨床に必要な基礎医学を問うもので、いわゆる医学部低学年で基礎医学の試験を受けるのとは異なる印象でした。ただ、臨床をやりながら英語に興味があって英文の医学雑誌が読めたとしても、基礎医学の英語については馴染みがないのが普通です。そのため、Step1の問題に出てくる英語を逐一覚えていく(というより、問題を解きながら内容と共に頭に入れていく)という点で、Step2 CKとは大きく異なり、労力を要する試験と言えます。さらに私の場合、前述した通り、医学部時代の大部分をテニスに費やしたため、基礎医学の内容が日本語でもよくわかっていませんでした。早い段階で受験を考えていれば、学生のうちにStep1に挑戦する人もいますが、臨床をやりながら受験する際には、その時の忙しさ等も鑑みて、半年以上の時間を割けるタイミングでの受験となります。具体的な試験対策としては、First Aidを一度通読した後、オンライン問題集のUSMLE worldを解き始めるわけですが、1回目は辛うじて理解するのがやっとであり、各セクションの参考書で知識を補完していく形で進めることになると思います。ちなみに、USMLE worldの解説は、かなり丁寧でわかりやすいです。以下に私が使用した参考書を列挙します。Behavioral scienceこの分野は日本にはなく、Board Review Series (BRS Behavioral Science)を一読しました。Biochemistry配点が高いとされるBiochemistryについては、Lippincottで勉強はしましたが、通読はハードルが高く、わからないところは問題を解きながらその都度つぶしていくのがいいと思います。単語を覚えるのにも苦労しました。Microbiology臨床で感染症が得意であれば、さほど難しくはないと思います。日々の臨床で、Bacteria等の分類などを意識するようにしましょう。Lippincottを持ってはいましたが、どんどん問題を解いていくのがいいでしょう。PathologyこちらもBRSを一読しました。そこまで難しくない分野かと思います。Pharmacologyこちらも、薬理学的作用を日頃から意識するようにしておけば、難しくはないと思います。Lippincottを持ってはいましたが、こちらも問題をどんどん解いていくのがいいと思います。その他、physiologyなどの分野に関しては、First AidとUSMLE worldのみで勉強しました。やはり徹底した問題集研究こそが王道!とにもかくにも興味がある人は、教科書から入るのではなく、First Aidをざっと見終わったら、思い切ってUSMLE worldを解いてみるのがいいでしょう。医学部の試験も、専門医の試験も過去問から、と言われている通り、いくら教科書を読み込んでも、すぐさまアウトプットに結びつかないものなのです。Column画像を拡大する先月(9月)は、サンフランシスコでTCTというカテーテルの学会に参加してきました。ポスターではありますが、登壇し、口頭の発表と質問応答をする必要がありました1)。渡米して1年を超えましたが、まだまだ英語力が足りていないのを痛感しました。1)http://www.onlinejacc.org/content/74/13_Supplement/B305

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NSCLCのALK検査、リキッド・バイオプシーも有用(BFAST)/ESMO2019

 非小細胞肺がん(NSCLC)の遺伝子変異検査で、血液を検体とするリキッド・バイオプシーの有用性を評価した前向き臨床試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Rogel Cancer Center/University of MichiganのShirish M. Gadgeel氏より発表された。 BFAST試験は、血液検体のみを用いた6つのコホートからなる国際共同の前向き第II/III相試験である。今回はその中からALK陽性コホートのみ発表された。その他のコホートはRET陽性、ROS1陽性、TMB陽性、Real World Dataなどであり、血液検査(cfDNA)はFMI社によって実施された。・対象:Stage IIIB/IVの未治療のNSCLC。試験全体で2,219例をスクリーニング、ALK陽性は119例(5.4%)で、87例が本試験に登録された。・試験群:ALK陽性コホートにおいては、アレクチニブ600mg×2回/日投与・評価項目:[主要評価項目]治験担当医評価(INV)による奏効率(ORR)[副次評価項目]INVによる奏功期間(DOR)と無増悪生存期間(PFS)。独立評価委員(IRF)によるORR、DOR、PFS[探索的検討項目]脳転移を有する患者群の主治医判定によるORR 必要症例数算定などのために、同じくアレクチニブの国際共同試験であるALEX試験の結果をリファレンスとした(ALEX試験は腫瘍組織検査)。アレクチニブの用量が日本の承認用量とは異なるため、日本からはこのコホートへの登録はなかった。 主な結果は以下のとおり。・登録患者のベースライン特性は、年齢中央値55歳、脳転移有り40%などで、既報のALEX試験と大きな差はなかった。・追跡期間中央値12.6ヵ月。・INVによるORRは87.4%(95%信頼区間[CI]:78.5~93.5)、IRFによるORRは92.0%(95%CI:84.1~96.7)であった。・脳転移を有する患者群(35例)でのINVによるORRは91.4%、脳転移なしの患者群(52例)では84.6%であった。病勢進行(PD)の症例は各群1例と0例であった。・INVによるDORは中央値未到達で、6ヵ月時点でのイベントフリーは63例でありその割合は90.4%であった。・INVによるPFSも同様に中央値未到達であり、12ヵ月時点でのPFSは78.4%(95%CI:69.1~87.7)であった。・Grade3/4の有害事象(AE)は35%、AEによる治療中止は7%、用量減量は8%であった。主なAEは便秘などの消化器症状、浮腫、倦怠感、筋肉痛などであり、既報のアレクチニブの安全性プロファイルと差はなかった。 発表者のGadgeel氏は「血液サンプルでの遺伝子検査(NGS)は、ALK陽性NSCLC患者の治療方針決定に臨床的な意味がある事を示した」と述べた。

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治療抵抗性の逆流関連の胸やけ、手術が薬物よりも有効/NEJM

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)抵抗性の胸やけで紹介された患者のうち、全身の精密検査によって、真にPPI抵抗性で胃食道逆流に関連する胸やけが判明した患者は少数であったが、このきわめて選択性の高い患者の治療では、腹腔鏡下Nissen噴門形成術が薬物療法よりも優越性を示したとの報告が、米国・ベイラー大学医療センターのStuart J. Spechler氏らによって発表された。研究の成果は、NEJM誌2019年10月17日号に掲載された。PPIによる治療を行っても持続する胸やけは、頻度の高い臨床的問題であり、考えられる複数の原因が存在する。一方、PPI抵抗性の胸やけの治療は有効性が証明されておらず、逆流を抑制する薬剤(例:バクロフェン)や逆流防止手術による胃食道逆流のコントロール、または神経修飾薬(例:デシプラミン)による内臓の過敏性の抑制に重点が置かれているという。GERD-HRQLの改善を3群で比較する無作為化試験 研究グループは、全身の精密検査で胃食道逆流症(GERD)以外の疾患と機能障害を除外し、食道内の多チャンネル管腔内インピーダンス(MII)-pHモニタリングで逆流関連と判明した患者の治療では、逆流防止手術が薬物療法よりも有効性が優れるとの仮説を立て、これを検証する目的で無作為化試験を実施した(米国退役軍人省共同研究プログラムの助成による)。 PPI抵抗性の胸やけで、米国退役軍人省の消化器クリニックを紹介された患者が、オメプラゾール(20mg、1日2回、2週間)の投与を受けた。このうち胸やけが持続する患者について、内視鏡検査、食道生検、食道内圧測定、食道内MII-pHモニタリングを実施。検査により逆流関連の胸やけと判明した患者が、外科治療(腹腔鏡下Nissen噴門形成術)を受ける群、実薬(オメプラゾール+バクロフェン、症状に応じてデシプラミン追加)投与を受ける群、対照薬(オメプラゾール+プラセボ)投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは治療成功とし、1年後におけるGERD-健康関連QOLスコア(GERD-HRQL、0~50点、点数が高いほど症状が重度)の50%以上の改善(低下)と定義された。366例中288例が除外、治療成功率:67% vs.28% vs.12% 2012年8月29日~2015年12月2日の期間に366例(平均年齢48.5±12.2歳、男性280例)が登録され、無作為化前の検査により288例が除外された。 除外例の内訳は、2週間のオメプラゾール投与中に胸やけが改善(42例)、試験手順を完了せず(70例)、その他の理由(54例)、GERD以外の食道疾患(23例)、機能性胸やけ(PPI投与中のMII-pHモニタリングで食道内酸曝露が正常、症状関連確率[SAP]≦95%[逆流エピソードと胸やけに有意な関連がないことを示す])の患者(99例)であった。 残りの78例(平均年齢45.4±11.8歳、男性64例)が無作為化された。外科治療群が27例、実薬群が25例、対照薬群は26例であった。また、MII-pHモニタリングでSAP>95%(逆流性過敏)のみの患者が37例、異常な酸逆流のみの患者が15例、両者に該当する患者は25例だった(1例でデータが欠落)。 1年後の治療成功率は、外科治療群が67%(18/27例)と、実薬群の28%(7/25例、p=0.007)および対照薬群の12%(3/26例、p<0.001)に比べ、いずれも有意に優れた。実薬群と対照薬群との差は16ポイント(95%信頼区間[CI]:-5~38、p=0.17)だった。 外科治療群のうち、逆流性過敏(SAP>95%、14例)の患者の治療成功率は71%、異常な酸逆流(酸逆流のみの患者と、酸逆流+SAP>95%の患者、13例)の患者の治療成功率は62%であった。 重篤な有害事象は、外科治療群が4例で5件、実薬群が4例で4件、対照薬群は3例で5件認められた。 著者は、「食道内MII-pHモニタリングを含む全身の精密検査は、逆流防止手術が奏効する可能性のある逆流性過敏を含むPPI抵抗性胸やけの患者サブグループを同定可能である」と結論している。

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第1回 AIで薬剤師はいらなくなる?

第1回 AIで薬剤師はいらなくなる?―「0402通知」をどのように思いましたか?鈴木:個人的には0402通知には反対です。もう少し段階を踏んでから行うべきものだったと思います。「物から人へ」の流れで、健康サポート薬局が推進されていますが、健康サポート薬局の業務には臨床推論とかOTCの知識などが必須なはずです。現状は基本となる「物」の部分もまだまだ不十分なのに、基本的な部分が抜けた状態で次のステップに進むのを危惧しています。それなのに通知には「調剤は薬剤師でなくてもできますよね?」のように書かれていたことには思うところもあります。ただ、薬剤師が調剤に従事していればいいという考えはないですね。行き着く先は、薬学的ケアの充実だと思っているので。山﨑:以前私が勤めていた薬局では、0402通知の以前から専従のテクニシャンを組み込んだ業務設計をしていましたのでスッと入ってきました。エラー率の統計を出すと、純粋にピッキングという行為にフォーカスすれば、薬をみていろいろ思い浮かべてしまう薬剤師よりも調剤補助者がフラットな目線で棚番に基づいて収集するほうがエラー率が低い傾向にあるというのもあったかと思います。そのおかげで薬剤師は勉強時間を確保して、患者さんに専念することができました。ただ、そういうオペレーションを組めていない薬局がいきなり始めろ、って言われたら、採用や手順など考えることが多そうです。徹底してやるには手順を構築することが重要で、人間はミスをする生き物であるということを前提に業務を設計することも必要です。鈴木:確かに通知は「各自でやってね」という感じでしたからね。リーダーのような薬局がやり方を提示して、わかりやすく伝えられる通知にしたほうがよかったと思います。笹川:私は通知には賛成です。調剤は仕事か作業かという面で考えると、作業だと思うんです。しっかりとマニュアルを組んで教えれば誰でもできることですので、そのような作業は必ずしも薬剤師でなくてもいいのではないでしょうか? 一方で、処方監査は時間と頭を使って行う必要があります。それは仕事なので薬剤師が行い、指示出しをする必要があると思います。―将来的に薬剤師の仕事はどうなると思いますか?山﨑:服薬指導など付加価値を生む業務に再配分されていくように思います。調剤や監査の一部はすでに機械化されています。例としてシンガポールの国営病院でロボットアームによる調剤が行われていて、待ち時間が半減したという実績もあります。本邦だと抜本的な機械化には包装の規格化が必要かもしれませんが。また、添付文書レベルの相互作用や用量などの監査や、入力された処方のビッグデータから傾向分析をしてまれな処方パターンにアラートをかけるなどはシステムで可能ですが、その先は薬剤師判断であり説明の応酬は残っていくと思います。笹川:機械が発達しているので、現在では散剤とか軟膏とかの調剤に職人の技というものはなくなりましたね。これだけ機械化が進んでくれば調剤の主役はいずれ置き換わるでしょう。もっとも、在宅業務は無理でしょうが。鈴木:在宅はいろいろな問題が潜伏していますからね。生活状況、現病歴・既往歴、経済的な部分など多岐にわたる分析が必要です。AIでは無理ですよ。患者さん個々で差があるので、人である薬剤師が関わる意義はそこにこそあるのだと思います。機械でできることは薬剤師が力を入れなくてもいいと思うので、空いた時間を薬の本質的な部分とか病気のこととか、人をみるうえで必要な学術的な部分に充てて磨いていくべきではないでしょうか?山﨑:AIに知見のある社内エンジニアと話をしていると、今の調剤プロセスで機械による代替が難しいのは、会話の応酬や患者周辺の情報を把握しての対応のようです。とくに在宅は周辺の環境要素が増えるのでシステム化が難しいようです。だからこそやりがいもあると思います。鈴木:在宅とか一歩踏み込んだ指導を日頃からしていないと、そういう発想が出てこないと思うんですよ。今もこれからも、やっぱり薬剤師が個々の患者さんの実際の生活や服薬状況など今より一歩踏み込んでいく必要があると思います。在宅に出て臨床的想像力が広がった―現在の在宅への取り組みを教えてください。笹川:現在、個人宅で7~8人の在宅患者さんがいます。在宅に行くと、外来では全然みることができていなかったんだなということがよくわかります。残薬も大量にありますし。患者さんの動線や倒れる可能性のあるポイントを見たくてトイレを借りてチェックさせてもらったり、仏壇を拝見してキーパーソンを探したりしています。鈴木:在宅では患者さんがご家族と疎遠なのか親密なのかよく見えてきますよね。契約のときに同席しているか、ご家族の写真は飾られているか、などから普段の様子がわかります。家族と疎遠で誰もキーパーソンがいないということを行って初めて知ることもあります。山﨑:私は外来メインで勤務していたため、在宅の経験はさほど多くはありません。ただ、現職では在宅を含む多くの現場を見る機会が増えているので改めて勉強しているところです。外来においても薬歴を見て、何の確認が必要で何を話したら喜んでもらえるか考えながらやっていましたが、在宅もそれが外に出ただけというスタンスでやっていました。ただ、訪問すると薬剤管理を含め想像以上にカオスなことも多かったですね。それもあって、生活背景をおもんぱかる想像力が養われ、外来の役にも立ったと思います。笹川:確かに、想像力が豊かになったのは在宅に行き始めてからかもしれません。それまでは高齢患者さんの生活を思い浮かべる際に、自分の祖父母宅の平屋を想像していたのですが、実際の患者さん宅はエレベーターのない団地の3階ということもあり、ギャップがありました。鈴木:患者さん宅の構造を考えて、重い栄養剤をどうやって持って帰るんだろう、薬剤師として何ができるんだろう、という発想はAIではできないでしょうね。外来と在宅がまったく違うとは思っていませんが、在宅を担当することで外来の患者さんとの関わり方は少し変わりました。個々の患者さんの実際の生活や服薬状況をイメージして、一歩踏み込んだ指導を日頃からする必要があると痛感しています。―次回は、激変している薬局の環境について話を伺います。

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第30回 抗精神病薬による体重増加、薬剤ごとに差【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗精神病薬による体重増加、脂質異常症や高血糖などの代謝障害は比較的よく知られている副作用で、とくに第1世代に比べて第2世代の抗精神病薬で高頻度に報告されています。治療継続の妨げになったり、長期的な心血管イベントのリスクが上昇したりすることがあるため、長期間服用するためには体重や検査値のチェックが欠かせません。今回は、体重増加の機序や薬剤による違い、対処方法について紹介します。体重増加の機序体重増加の原因は特定されておらず、薬剤の影響で食欲が亢進して過剰に摂食したというだけでなくさまざまな説があります。実際、自覚的な食事量が変わらなくても体重が増加しているケースもあるように思います。その機序として、脂質酸化の減少と炭水化物酸化の増加、セロトニン/ドパミン/ヒスタミンなどの各種受容体への作用、視床下部ペプチドによって食欲亢進や満腹感低下が生じる可能性が指摘されています。さらに、摂食やエネルギー代謝に関わるペプチドであるアディポネクチンの減少、抗精神病薬により脂肪組織から放出されるホルモンであるレプチンに対する耐性がカロリー摂取量の増加と脂肪組織の増加の機序として考えられています1)。ダイエットに関心がある患者さんで、アディポネクチンやレプチンを知っている方にお会いしたことがありますので、そういう患者さんに詳しく説明し過ぎるとアドヒアランスに影響しかねないため注意が必要な場合もあると思います。総脂肪率増加の程度1つ以上の精神障害や攻撃性のため精神病薬を検討している6~18歳の患者144例を、経口アリピプラゾール(49例)、オランザピン(46例)またはリスペリドン(49例)にランダムに割り付けて12週間治療し、総体脂肪率およびインスリン感受性を調べた試験があります。12週時点で、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)で測定した総脂肪率は、リスペリドンで1.18%増加、オランザピンで4.12%増加、アリピプラゾールで1.66%増加しました。インスリン刺激によるグルコース消失率の変化は、リスペリドンで2.30%増加、オランザピンでは29.34%減少、アリピプラゾールで30.26%減少となっており、薬剤間で有意差はありませんでした。MRIによる腹部脂肪測定では、皮下脂肪はリスペリドンまたはアリピプラゾールよりもオランザピンで有意に増加していました。なお、すべての治療群で行動の改善がみられています2)。体重増加の薬剤間比較体重増加の程度は薬剤によって異なりますが、とくにクロザピンやオランザピンでその程度が大きいことが示唆されています。第2世代抗精神病薬で治療された患者の体重、コレステロールおよびグルコースの変化を評価した48のランダム化比較試験のシステマティックレビューの結果は次のとおりです3)。クロザピンはリスペリドンと比較して体重が増加した(平均差[MD]:2.86kg、95%信頼区間[CI]:1.07~4.65、459例の患者を対象とした4試験の分析)。オランザピンは以下の薬剤よりも有意に体重が増加した。○アミスルプリド※(MD:2.1kg、95%CI:1.29~2.94、671例の患者を対象とした3試験の分析)○アリピプラゾール(MD:3.9kg、95%CI:1.62~6.19、患者656例を対象とした2試験の分析)○クエチアピン(MD:2.68kg、95%CI:1.1~4.26、患者1,173例を対象とした7試験の分析)○リスペリドン(MD:2.44kg、95%CI:1.61~3.27、2,302例の患者を対象とした16試験の分析)○ジプラシドン※(MD:3.82kg、95%CI:2.96~4.69、1,659例の患者を対象とした5試験の分析)※国内未承認体重増加の対処方法日本神経精神薬理学会が作成した『統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー』において、体重増加の対処方法の例として薬剤変更が挙げられています4)。実際に、心血管疾患の危険因子を改善するために、オランザピン、クエチアピンまたはリスペリドンからアリピプラゾールに切り替えた非盲検のランダム化比較試験がありますので見てみましょう5)。上記3剤のいずれかにより治療されている統合失調症ないし統合失調感情障害を有する患者215例(平均年齢41歳)を、アリピプラゾールへの切り替え群(109例)またはそのまま継続した群(106例)にランダムに割り付けて24週間経過をみています。全患者が、BMI≧27kg/m2および非HDLコレステロール≧130mg/dLで、プライマリアウトカムは非HDLコレステロール値の変化です。両群を比較した結果は、平均体重減少は3.6kg対0.7kg(p<0.001)、平均非HDLコレステロール減少は20.2mg/dL対10.8mg/dL(p=0.01)、トリグリセライドは25.7mg/dL減少対7mg/dL増加(p=0.002)であり、切り替えに一定の効果を認めています。安易に薬剤を切り替えたり中止したりすることは避けなければなりませんが、体重や体脂肪率増加の理由、程度、発現時の代替案などを聞かれる機会もあるかと思いますので、参考にしていただければと思います。1)Maayan L, et al. Expert Rev Neurother. 2010;10:1175-1200.2)Nicol GE, et al. JAMA Psychiatry. 2018;75:788-796.3)Rummel-Kluge C, et al. Schizophr Res. 2010;123:225-233.4)日本神経精神薬理学会編. 統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー. 日本神経精神薬理学会;2018.5)Stroup TS, et al. Am J Psychiatry. 2011;168:947-956.

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脳転移のあるPD-L1陽性肺がんにもペムブロリズマブ単剤が有効/ESMO2019

 米メイヨークリニックのAaron S. Mansfield氏は、ペムブロリズマブに関する臨床試験であるKEYNOTE-001、010、 024、042の統合解析結果から、脳転移があるPD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単独療法は、脳転移なしと同等以上の予後改善効果があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 統合解析に用いた4試験(KEYNOTE-001、010、024、042)のうちKEYNOTE-001のみが単群試験で、その他はいずれも化学療法との比較試験である。 主な結果は以下のとおり。・統合解析による全症例数は3,170例。うち脳転移ありは293例、脳転移なし2,877例であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例の全生存期間(OS)中央値はペムプロリズマブ群が19.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.1~31.4)、化学療法群が9.7ヵ月(95%CI:7.2~19.4)であった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.71~0.85)。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が19.4ヵ月(95%CI:17.0~22.4)、化学療法群が11.7ヵ月(95%CI:10.1~13.1)であった(HR:0.66、95%CI:0.58~0.76)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が13.4ヵ月(95%CI:10.4~18.0)、化学療法群が10.3ヵ月(95%CI:8.1~13.3)であった(HR:0.83、95%CI:0.62~1.10)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が14.8ヵ月(95%CI:13.4~16.1)、化学療法群が11.3ヵ月(95%CI:10.2~12.0)であった(HR:0.78、95%CI:0.71~0.85)であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での無増悪生存期間(PFS)中央値はペムブロリズマブ群が4.1ヵ月(95%CI:2.3~10.6)、化学療法群が4.6ヵ月(95%CI:3.5~8.4)であった(HR:0.70、95%CI:0.47~1.03)。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が6.5ヵ月(95%CI:6.1~8.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:5.8~6.2)であった(HR:0.69、95%CI:0.62~0.78)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が2.3ヵ月(95%CI:2.1~3.9)、化学療法群が5.2ヵ月(95%CI:4.2~8.3)であった(HR:0.96、95%CI:0.73~1.25)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が4.3ヵ月(95%CI:4.2~5.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:6.0~6.3)であった(HR:0.91、95%CI:0.84~0.99)であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での奏効率(ORR)はペムブロリズマブ群が33.9%、化学療法群が14.6%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が38.1%、化学療法群が26.1%であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのORRはペムブロリズマブ群が26.1%、化学療法群が18.1%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が25.8%、化学療法群が22.2%であった。・奏効期間(DOR)中央値はPD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が7.6ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が33.9ヵ月、化学療法群が8.2ヵ月であった。・DOR中央値はPD-L1 TPS≧1%の脳転移ありの症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が8.3ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が30.4ヵ月、化学療法群が8.1ヵ月であった。・Grade3以上のAE発現率は脳転移ありのペムブロリズマブ群が15%、脳転移なしのペムブロリズマブ群が18%、脳転移ありの化学療法群が46%、脳転移なしの化学療法群が43%であった。 この結果からペムブロリズマブ単独療法は脳転移の有無にかかわらず、なおかつPD-L1 TPS≧50%、PD-L1 TPS≧1%のいずれの場合でも脳転移ありの症例ではDOR中央値が未到達であることをMansfield氏は強調。「ペムブロリズマブ単独療法は脳転移を有する場合も含めPD-L1陽性の進行NSCLCの標準治療」との結論を述べた。

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低リスク妊娠、第3期のルーチン超音波は有益か?/BMJ

 低リスク単胎妊娠において、妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことは通常ケアと比較して、出産前の在胎不当過小(SGA)胎児の検出率を高めるが、重度有害周産期アウトカムの発生減少には結びつかないことが明らかにされた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのJens Henrichs氏らが、1万3,046例の妊婦を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は「妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことを支持しない結果であった」とまとめている。BMJ誌2019年10月15日号掲載の報告。妊娠28~30週、34~36週に超音波検査を提供し通常ケアと比較 研究グループは2015年2月1日~2016年2月29日にかけて、オランダ国内の助産施設60ヵ所を通じて登録した、16歳以上の低リスク単胎妊娠の妊婦を対象に無作為化比較試験を行った。 施設では通常のケアとして、定期的な子宮底長測定と、臨床的に必要な超音波検査を行った。試験開始3、7、10ヵ月の各時点で、被験者の3分の1をコントロール群から介入群に割り付け、介入群に対しては、通常ケアに加え、妊娠28~30週、34~36週に2回のルーチン超音波検査を提供した。両群に対して同様の多専門的アプローチを行い、胎児発育の特定とケアを行った。 主要アウトカムは、複合重度有害周産期アウトカム(周産期死亡、Apgarスコア4未満、意識障害、仮死、てんかん発作、補助呼吸、敗血症、髄膜炎、気管支肺異形成症、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、壊死性腸炎と規定)だった。副次アウトカムは、母体の重篤な病的状態、自然分娩・出生だった。重度有害周産期アウトカム発生、介入群32%、コントロール群19% 試験には1万3,520例(平均妊娠22.8週)が登録され、解析には、オランダ全国周産期レジストリまたは病院記録のデータがある1万3,046例(介入群7,067例、コントロール群5,979例)が包含された。 SGA胎児の検出率は、コントロール群19%(78/407例)に対し、介入群は32%(179/556例)と有意に高率だった(p<0.001)。 一方で、主要アウトカム発生率は、介入群1.7%(118例)、コントロール群1.8%(106例)だった。交絡因子を補正後、両群には有意差は認められなかった(オッズ比[OR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.70~1.20)。 なお、介入群ではコントロール群に比べ、誘発分娩の発生率が高く(OR:1.16、95%CI:1.04~1.30)、陣痛促進の発生率は低かった(0.78、0.71~0.85)。母体のアウトカムとその他の産科学的介入について有意な差はなかった。

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NAFLD/NASH患者、リスク因子補正後のAMIや脳卒中リスクとの関連は?/BMJ

 欧州の大規模な4つのデータベースを用いた検討で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断された成人は、年齢、性別、診療情報を適合したNAFLDを有さない成人と比較して、既知の心血管リスク因子補正後、急性心筋梗塞(AMI)や脳卒中の発生リスクに、わずかな増大は認められるが有意差はないことが明らかにされた。英国・GlaxoSmithKlineのMyriam Alexander氏らが計1,770万例を対象とした適合コホート試験の結果で、著者は「NAFLD診断成人の心血管リスク評価は重要だが、一般集団のそれと同様とすべきであろう」と述べている。NAFLDは、メタボリックシンドロームやその他のAMIや脳卒中のリスク因子との関連が認められている。AMIおよび脳卒中リスク増大との関連、および心血管疾患の代用マーカー(surrogate marker)との関連が示されているが、既知のリスク因子補正後の関連性について完全には確立されていなかった。BMJ誌2019年10月8日号掲載の報告。NAFLD/NASH診断例約12万例を追跡 研究グループは欧州4ヵ国の、2015年12月までのプライマリケアの電子データベースを用いて、住民ベースの適合コホート試験を行った。各データベースの患者数は、イタリア154万2,672例、オランダ222万5,925例、スペイン548万8,397例、英国1,269万5,046例だった。 そのうち、NAFLDまたは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断を受け、かつその他の肝疾患のない12万795例を対象に分析を行った。同一データベースから、診断日の年齢、性別、医療機関、受診状況、診断日前後6ヵ月時点の医療記録でマッチングした、NAFLDまたはNASHのない被験者を最大100例選んだ。 主要アウトカムは、致死的または非致死的AMIおよび虚血性/unspecified脳卒中だった。ランダム効果メタ解析により、Coxモデルを用いて複数データベースのプールド・ハザード比(HR)を推計した。年齢や喫煙、血圧、2型DM、総コレステロール値などで補正後、リスク増大なし NAFLD/NASHの診断を受けた12万795例について、診断日からの追跡期間はコホート集団により異なり、中央値2.1~5.5年だった。 年齢と喫煙について補正後、AMI発症に関するHRは1.17(95%信頼区間[CI]:1.05~1.30)だった(イベント数はNAFLD/NASH群1,035件、コントロール群6万7,823件)。より多くのリスク因子情報を含むNAFLD/NASH患者8万6,098例と適合コントロール466万4,988例についての解析では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン服用の有無、高血圧症で補正後、AMI発症に関するHRは1.01(95%CI:0.91~1.12)だった(NAFLD/NASH群747件、コントロール群3万7,462件)。 年齢と喫煙状況で補正後の、脳卒中発症に関するHRは1.18(同:1.11~1.24)だった(NAFLD/NASH群2,187件、コントロール群13万4,001件)。より多くのリスク因子の情報を含む集団についての解析では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン服用の有無、高血圧症で補正後、脳卒中発症に関するHRは1.04(同:0.99~1.09)だった(NAFLD/NASH群1,666件、コントロール群8万3,882件)。

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031)なくならない「差し入れ」の文化【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第31回 なくならない「差し入れ」の文化しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆外来をやっていると、たまに患者さんから差し入れをもらうことがありますよね。だいたいは、包装されたお菓子が紙袋に入っており、「皆さんでどうぞ」といただくパターンが多いです。紙袋を抱えた患者さんが診察室に入ってくると、「差し入れかも!?」と思わず目がいってしまいませんか? 当然、患者さんの手荷物であることがほとんどですが・・・。そんなときは、「つい心のどこかで期待をしてしまった自分」をこっそりと恥じます(笑)。(紙袋をバッグとして持ち歩いている患者さん、いますよね…?)このように、外来に持参される紙袋には、ちょっと緊張してしまうデルぽんです。もちろん、差し入れは紙袋に入ったお菓子ばかりではありません。封筒に入ったお手紙や商品券もありますし、なかには自筆の本を置いていかれた患者さんもいました。「贈り物は受け取らない」と決めている医療機関もあるようですが、差し入れの文化はいまだに根強いものがあります。皮膚科ではあまり多いことではありませんが、差し入れでなくとも、患者さんの感謝の気持ちが伝わると純粋に嬉しいですよね。今回は、病院への差し入れにまつわるお話でした。それでは、また~!

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第6回 ハザケンが考える薬剤師3.0【噂の狭研ラヂオ】

動画解説これからの薬剤師はバイタルがとれないとダメ?どこまでの医療行為が許されるの?そんな疑問の声に、今回は狭間先生がこれからの薬剤師が持つべき3つのスキルをばっちりお答えします。薬剤師1.0では薬売りとしてあれもこれも売れてしまう商売上手の人が良しとされました。薬剤師2.0としてはスムーズに薬を提供できて薬歴も書ける人が良しとされてきました。さて薬剤師3.0の重要な役割とは?

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【荻野☓池野対談】第3回 思い切った改革と地道な改革を両輪で

日本の医学部を卒業した医師であり今は米国を拠点に活躍する、ハーバード大学の医学大学院および公衆衛生学大学院教授の荻野 周史氏とスタンフォード大学主任研究員の池野 文昭氏。ともに日米の大学・起業現場を熟知する教育者・研究者である2人の対談。最終回は、今の日本と教育現場を変える、具体的な改革案を語ります。第1回はこちら / 第2回はこちら英語特区&子供世帯優遇荻野日本の方によく言っているのが「国家戦略特区を使って、日本語と英語両方を公用語とする小都市をつくればいい」という提言です。詳しくは私のブログ1)で説明していますので、ぜひご覧ください。私自身、長年英語で苦労してきて、その根本的原因は日本語にはない音を聞き取りにくいからでは、と考えるに至りました。視覚に頼り過ぎていた英語教育のツケを払っているのです。この問題を解決するには、聞き取りの能力が発展しつつある幼少期から、英語の音に慣れるのが理想です。若ければ若いほど脳は柔らかく、柔軟性・可塑性が高いほど、英語の音に慣れるのに苦労しないでしょう。一部のインターナショナルスクールなどではそうした環境があるのでしょうが、もっと大規模に、経済的な負担を少なく、同様の環境をつくれないでしょうか。国民の20%、いえ10%でも英語を苦にしなくなれば、日本の世界での地位の向上に大きく役に立つはずです。ほぼすべての国民が6年以上も英語を一生懸命勉強しているのに、英語を日常で使えないのはおかしいと気付いていない、あるいは気付いていても対策を取っていないのが問題です。そのための提案が、この「英語公用特区」なのです。ここでは官公庁や学校、病院などのすべての公共機関およびテレビ、ラジオなどのメディアが2ヵ国語を使います。海外からの移住者も呼び込みやすいですし、教育熱心なファミリー世帯の増加も見込めるでしょう。大都市では難しいでしょうから、アカデミズムに理解のある、地方の学園都市などでスタートするとよいのではと思います。例を挙げれば、茨城県つくば市、千葉県成田市、沖縄県の那覇近郊地区などです。池野実現は少しハードルが高そうですが、確かに高齢化・過疎化が進む地方都市では、関心を持つ首長がいそうですね。荻野もちろん、「幼少のころから多言語の環境下にいると、母国語の習得に弊害が出る」「バイリンガルは、母国語も第二言語も中途半端になる児童が多い」といったご批判があることは承知しています。それでも、苦もなく英語ができなければ、情報を手に入れるのが遅れ、研究者は研究を売り込めず、ビジネスでは商品を売り込めない。せめて国民の10%でいいから、バイリンガルを増やすべきなのです。英語ができれば世界中で仕事ができます。世界で活躍する日本人が増えれば、情報はもっと日本に入ってくるし、日本が活性化します。私の研究室にもよく日本から若い学生が見学に来ますが、彼らの多くは目を輝かせて私の話を聞きます。かつて日本にいた私には、そんなチャンスはありませんでした。日本の未来はまだまだ明るいと感じますが、そうした人は少数派であることも事実。日本の学校教育は多数派主義なのがいけません。飛び級制度なども含めて、少数の精鋭をもっと磨くことも重要だと思います。海外の学会で日本人同士のみでつるんでいたり、Facebookでよい発言をしているのに言語が日本語だけだったり、といった世界における日本人のコミュニケーション力のなさを見て歯がゆい思いをすることがあります。英語によるコミュニケーションは最初の一歩が大事なのに、そこにすら行き着けないのですから。実際、シンガポールは英語公用語化で高い国際競争力を手に入れました。香港は言うまでもありません。凋落しつつある日本が再び世界で存在感を示すには、そのくらい思い切ったやり方が必要では、と思うのです。もう1つ、子供を生んだ世帯にはもっと思い切った支援があるべきではないでしょうか?フランスで少子化が改善したのは、子供を生むほどに税負担が軽減する制度を導入したことが大きい、と聞いています。池野日本では自治体によって出産時にまとまった一時金を出したり、幼保教育や高校の無償化で負担を軽減したり、という方向での支援はありますね。恒久的な減税となると、国のデザインそのものを変える必要があり、ようやく消費税増税を実現した今の状況下では、政府もそちらにかじを取りにくいのではないでしょうか。荻野難しい点は承知しています。でも、次の世代の国民を育てているのですから、国からサポートがあることは当然だと思います。一人親でも、結婚していない人でも、いっときの給付金ではなく国がずっと子育てを支援してくれる。その安心感がなければ、子供を生み育てる気にはなれないでしょう。身近な成功モデル&トライアル・アンド・エラー文化池野大組織や教育・行政が変わるためには時間を要します。だからこそ、私は日本で若い人の起業支援に力を入れています。起業は、学生や若者の選択肢としてずいぶん身近なものとなってきました。ただ、米国と比べるとまだ周回遅れの感があります。米国では、起業は一般的な選択肢であり、事例も身近に山ほどあります。その中で、新たな方法で社会問題を解決し、経済的にも成功して初めて評価される。日本ではまだ成功例が少ないので、起業すること自体を目指したり、評価したりする傾向がある。ただ、これは時間が解決する問題でしょうから、日本のやる気と能力がある人をサポートすることで、身近な成功例を増やしたいと考えています。荻野そう、こちらでは、世界的な起業家、ノーベル賞受賞者や候補者がその辺を歩いていて、話し掛けてみると「おお、意外と普通やな」と思えたりする。そうした環境が大切ですね。池野もう1つ気になるのが、我慢を美徳とし、失敗に不寛容な日本の文化です。典型的なのが就職で、転職は昔に比べて一般的になったとはいえ、転職を重ねる人はあまりよい目で見られない傾向があります。米国人はキャリアアップのための転職は当たり前で、数年おきに仕事を変える人が珍しくありません。給与アップはもちろん動機の1つですが、「もっと面白そうな仕事を見つけたから」という動機の人も多い。荻野「とにかくやってみよう」という意識が強いですよね。「ダメだったらまた次に行けばいい」とカジュアルに転職するし、周囲もそれを当然と受け止めます。私は「実験」が仕事なので、「失敗なんて当たり前」と体感していますし、「失敗しないように、と思い過ぎて挑戦しないことこそが失敗」という価値観を皆さんにもっと知ってほしい。幼少期、学童期からもっとやってみさせて、「失敗してもまったくOKだよ、チャレンジするのが一番大事だよ」というメッセージを送らないといけません。池野私は日本の地方都市で起業支援や教育改革のプロジェクトに参加する機会があるのですが、旗振り役になる人がなかなか出てこないのです。「失敗したら何を言われるか」「この土地にいられない」と言って尻込みする。だから「では、私がまとめ役をやりましょうか」と手を挙げると、その後は案外スムーズに事が進む。私の場合は、失敗したところで米国に帰ればいいだけですから(笑)。「矢面に立たないで済むなら改革に参加したい」と考える人は実はたくさんいるのです。本来であれば、彼ら自らがリーダーとなり、失敗してもまた挑戦すればいい、と言える環境であってほしいと思います。米国は「落ちぶれることも自由」荻野日本に対していろいろ言ってきましたが、米国にも問題点は多い。私も長く身を置いてきた競争社会が、最近はちょっと行き過ぎているように感じます。研究の世界でもポジションや予算の奪い合いが年々激化し、研究の道を諦める人も増えました。つい最近も、一緒に研究していた有望な若手研究者が、大学を辞め製薬会社に就職してしまいました。私が来た当初より、生き残るのが数倍大変になっている、という実感があります。池野こちらは成功するのも自由だが、落ちぶれるのも自由、という厳しさがありますね。私は渡米3年目の時、仕事が途切れて貯金が底を突きかけたことがあります。保険の掛け金も払えない状況に、妻は「身の危険を感じる」と言って4人の子供を連れて日本に帰ってしまいました。そんな中でも、私はどこかで「いざとなれば、誰かがなんとかしてくれる」と信じていました。それまでの公務員気質が抜けていなかったのです。もちろん、誰も助けてはくれませんでした。そこでようやく理解したのです。この国では、何もしなければ落ちぶれるだけ、それが自由の怖さであり代償なのだと。米国は、サバイブ能力のある人は高く羽ばたけますが、それ以外の人は高過ぎる生活費や医療費などであっという間に生きることすら困難になることも、また事実です。「外からの風」になる池野戦後の日本が急速に経済発展した背景には、上の世代の多くが戦争でいなくなったために、若い世代が先入観なく自由に物事に取り組めた、という点もあるでしょう。現在、上の立場にいる方がすぐに立場を譲ることは難しいかもしれませんが、若手の方が自由に動ける環境をつくったり、組織として学びを支援したりすることはできるでしょう。荻野大学や研究機関のトップに外部の人を招聘することも重要だと思います。組織が変わるのはやはりトップの力が大きい。内部昇格者だけでは視点に多様性が生まれず、新しい発想が生まれにくい。組織のトップにもっと若い人を登用したり、5年や10年など任期を設けたりなど、無理やり変化を促すことも必要でしょう。人は皆、トップのポジションにはいたがるものですから。池野実は、数年前に、本気で政治家になって日本を変えようと考えたことがあるのです。知り合いの政治家に相談したところ、「あなたは絶対に選挙に勝てない」と言われました。その理由は「見てくれが悪い・年を取り過ぎている・政治家の親戚がいない(地盤がない)」。あんまりな物言いですが、「確かに」と納得しました。続けて「本当に政治家になったら、地元の住民に忖度して、自分の関心のない政策に振り回される。あなたのような人は、自分で政治家になるよりも、政治家を動かす立場になったほうがいい」とも。そのアドバイスが非常に腑に落ちたので、外から冷静に日本を見つつ官僚や政治家にアドバイスする、という今の立場に落ち着きました。私は今52歳ですが、日米を月3回は往復するハードな日々を送っています。体力的にはつらいですが、やりたくない仕事は1つもないので、非常に充実しています。以前、公務員として働いていた時には、日曜の夜から憂鬱になる「サザエさん症候群」に悩まされたこともありました。でも、渡米してからはそうしたことが一切ありません。夢を追い求めているからか、組織内の変な気遣いが要らないからか、はっきりとはわかりませんが。日本に帰ってきて高校時代の同級生と会うと、「定年までどう勤め上げるか」といった後ろ向きの話が多くてちょっとげんなりします。日本でも、いくつになっても目をキラキラさせて働く人が増えてほしいと思います。荻野私も渡米してから今に至るまで、ずっといつも「今が一番楽しい」と感じています。日本と比べ、こちらの人は一般的に仕事だけでなく趣味も含めて人生を丸ごと楽しむ術を知っている。それに倣い、ずっと次のステージを追い求めてきました。ここ数年は、自分の経験を日本に還元したいという思いが強まり、ボストンで日本人研究者の交流会に関わったり、日本語のブログを始めたりしました。こうした活動を通じ、今後も日本に貢献できる機会をつくりたいと思っています。参考1)https://www.ogino-mpe.org/

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わが国の肺がんの静脈血栓塞栓症の発生率(Rising-VTE)/WCLC2019

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、悪性腫瘍でよくみられる合併症である。しかし、肺がんの診断時のVTEの発生率についてはほとんど知られていない。日本の40施設を対象とした多施設前向き観察研究Rising-VTE/NEJ037について、県立広島病院の濱井 宏介氏が世界肺癌学会(WCLC2019)で発表した。 Rising-VTE/NEJ037の対象は、切除または放射線治療不能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者。VTEは造影CTまたは下肢エコー検査に基づき診断された。試験の主要評価項目は、中央判定委員会が評価する登録後2年間の症候性および無症候性の再発または新たに診断されたVTEの発症率である。  主な結果は以下のとおり。・2016年6月〜2018年8月に手術または放射線療法不能なNSCLC患者1,021例が登録され、ベースラインデータとして1,013例の患者のデータが利用可能であった。・年齢の中央値は71歳、組織型は、腺がん(63.7%)、扁平上皮がん(17.8%)、小細胞肺がん(13.5%)、その他(5.1%)であった。・VTEの発生は6.0%(61例)であった。・VTEの内訳は、深部静脈血栓症(DVT)が47.5%、肺塞栓症(PE)が12.1%、DVTとPEの併存が27.9%であった。・ VTEの90.2%は腺がんであった。 同研究の主要評価項目は、登録から2年間の症候性/非症候性VTEの再発または新規発症率。最終結果は2021年の予定で、現在追跡調査が進行中。

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WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019 レポート

レポーター紹介世界肺がん学会WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019はスペインのバルセロナで、2019年9月7~10日の期間に行われた。今年は9月末に欧州臨床腫瘍学会が同じスペインのバルセロナで行われることもあり、例年のWCLCと比べるとトピックスが少ない印象ではあったが、公式発表では100ヵ国以上から7,000例以上がWCLCに参加し、多くの演題(2,853演題)が報告された。学会初日の印象では参加人数が例年よりも少なそうで寂しい印象を受けたが、Presidential Symposiumの発表時には、会場はほぼ満席であり活気に満ちたものであった。このレポートでは、私的に選んだ今学会でのトピックスをいくつか紹介する。外科手術のトピックVIOLET試験の効果と安全性に関する探索的検討clinical stage cT1~3、N0~1、M0の肺がん、もしくは肺がんが強く疑われる患者を対象に、開胸手術とVATSを比較する第III相試験における早期の効果と安全性の結果が報告された。入院中の死亡率は、VATS群で1.4%(VATS治療から開胸手術の移行率5.7%)であった。また、完全切除率については、VATS群で98.8%、開胸切除で97.4%であり、有意差を認めなかった(p=0.839)。術後の疼痛についてmedian(visual analogue)pain scoreで評価が行われており、術後1日では術後疼痛についてmedian scoreに差を認めなかったが、術後2日では術後疼痛の強さがVATS群で有意に改善され、入院期間についてもVATS群が4日、開胸手術群が5日と有意に短くなる(p=0.008)ことが報告された。また、入院中の術後合併症がVATS群で32.8%、開胸手術群で44.3%と有意に低下する(p=0.008)という結果であった。今回の報告では、VATSと開胸手術において、侵襲の少ないVATSが開胸手術と比較しても根治率が変わらないことが報告され、合併症や入院期間、術後疼痛が良好であることが報告され、日常臨床で広く浸透しているVATSが短期的な指標では有用であることが検証された試験である。今後の長期予後データなどの報告が待たれる。(Lim E, et al. PL 02-06)分子標的療法におけるトピックスLIBRETTO-001 study進行非小細胞肺がんのRET-fusion遺伝子変異に対する分子標的療法で、保険償還承認が得られた治療はまだ存在しない。LIBRETTO-001試験で使用されたLOXO-292はRETを選択的に強く阻害する分子標的薬であり、脳への移行性も高く、RET-fusion遺伝子変異に対する治療薬として期待されている。今学会ではLIBRETTO-001試験における、LOXO-292療法の効果と安全性についての第I/II相試験の結果が報告された。253例のRET-fusion陽性の非小細胞肺がんの患者が参加し、うちprimary analysis set (PAS) に139例が登録された。105例が初回にプラチナ製剤併用化学療法を受け、58例がPD-1/PD-L1阻害薬療法を受けていた。奏効率(ORR)は68%(95%CI:58~76%、n=71/105)であり、RET fusionのパートナーにかかわらず治療効果を認めた。また治療奏効期間は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0ヵ月)であり、脳転移のある患者における脳転移のORRは91%(n=10/11:2 confirmed CRs、8 confirmed PRs)であった。さらに未治療のRET-fusion陽性の患者ではORR85%(95%CI:69~95%、n=29/34)であった。毒性(AEs)は、ほとんどがGrade1/2と軽微であり、頻度では口腔内乾燥、下痢、高血圧、AST/ALTの上昇が多かった。今回のLOXO-292のデータは非常に良好であり、RET-fusion陽性肺がんの標準療法になりうると考えられ早期での臨床導入が期待される。(Drilon A, et al. PL 02-08)免疫チェックポイント阻害薬のトピックスCASPIAN study進展型小細胞肺がんに対し、初回治療でのプラチナ(シスプラチンもしくはカルボプラチン)+エトポシド(EP)療法の標準療法と、デュルバルマブもしくはデュルバルマブ+tremelimumabの上乗せ治療を比較するオープンラベル下での第III相試験である。この試験はプレスリリースにおいて、デュルバルマブ上乗せ群が標準療法群に対してOSを有意に改善したと発表しており、今学会の最注目演題であった。今学会ではCASPIAN試験における、標準療法群とデュルバルマブ併用療法群の結果が報告された。PS 0~1の未治療進展型小細胞肺がんの患者を対象に、デュルバルマブ1,500mg+EP療法を3週ごと、デュルバルマブ1,500mg+tremelimumab 75mg+EP療法を3週ごと、もしくはEP療法を3週ごと4コースの治療を行った。免疫療法群では、4コース終了後のデュルバルマブ維持療法が認められており、EP療法では6コースまで投与をすることが認められていた。また、主治医判断での予防的全能照射(prophylactic cranial irradiation [PCI])も認められていた。EP+デュルバルマブ療法群に268例、EP療法群に269例が割り付けられ、56.8%の患者が6コースのEP療法を受けていた。全生存期間においてEP+デュルバルマブ群がEP療法群と比較して、HR0.73、95%CIは0.591~0.909、p=0.0047と生存期間を有意に延長し、生存期間中央値(mOS)はEP+デュルバルマブ療法群で13ヵ月、EP療法群で10.3ヵ月であった。また18ヵ月の時点で、EP+デュルバルマブ療法群では33.9%の患者が生存しており、EP療法群では24.7%の患者が生存していた。無増悪生存期間(PFS)や奏効率(ORR)においてもEP+デュルバルマブ療法群がEP療法群よりも優れた結果であった。EP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でそれぞれ、mPFSが5.1ヵ月と5.4ヵ月、PFSはHR0.78、95%CIは0.645~0.936、12ヵ月PFS rateが17.5%と4.7%、ORR(RECIST v1.1:unconfirmed)が79.5%と70.3%(odds ratio:1.64、95%CI:1.106~2.443)であった。毒性(AEs)ではEP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でGrade3/4 AEsが61.5%と62.4%、AEsによる治療中断率は各9.4%と差を認めなかった。この試験では、先行するIMpower133試験(カルボプラチン+エトポシド療法にアテゾリズマブの上乗せの有効性が証明された)と同様にPD-L1阻害薬の標準療法への上乗せが証明された。この試験では、EP+デュルバルマブ+tremelimumab療法群の結果、すなわちPD-L1阻害薬+CTLA-4阻害薬の標準療法への上乗せ効果は公表されておらず、いまだ不明のままである。(Luis Paz-Ares, et al. PL 02-11)CheckMate 817試験(Cohort A1)PS 2や肝障害やHIV感染症を持つPS 0~1(all other special population:AOSP)のIV期非小細胞肺がんの初回治療として、ニボルマブ(PD-1阻害薬)+イピリムマブ(CTLA-4阻害薬)併用療法の効果と安全性を確認する第IIIb/IV相試験の結果が報告された。この試験での治療方法はニボルマブ240mg(2週ごと)、イピリムマブ1mg/kg(6週ごと)の固定容量での治療である。この試験ではPS 2の患者139例とAOSPの患者59例が試験に登録された。安全性についてはPS 2の患者でも、AOSPの患者でも、通常のPS 0~1の患者と比較して、治療関連有害事象や治療関連有害事象による治療中断、治療関連死に差がないことが示された。奏効率は、PS 2で20%、AOSPで37%であり、PS 0~1で35%であったが、PFSはPS 2やAOSPの患者で、PS 0~1の患者より有意に短かった。免疫チェックポイント阻害薬の併用において、PS不良の患者でも安全性はPS良好な患者と同様であり、初回治療の選択肢となりうることが示されたと考えてよいだろう。(Valette CA, et al. OA 04-02)その他の免疫チェックポイント阻害薬のトピック今回の学会では、以前に発表された第III相試験の長期予後データについていくつかの報告があった。PD-L1 50%陽性、EGFRやALK変異陰性の患者で行われた第III相試験であるKEYNOTE-024試験の3年目解析データが報告された。生存期間中央値(mOS)はペムブロリズマブ群26.3ヵ月(18.3~40.4)、殺細胞性抗がん剤治療群14.2ヵ月(9.8~18.3)で、OSはHR0.65、95%CIは0.50~0.86、p=0.001であり、長期間の観察期間でも有意にOSを延長していることが報告された。また、この発表では抗がん剤治療群からのペムブロリズマブのクロスオーバーしたペムブロリズマブの治療成績が報告されており、奏効率(ORR)は20.7%であり、治療奏効期間の中央値は20.9ヵ月と報告された。(Reck M, et al. OA 14-01)また、扁平上皮がんに対するプラチナ+タキサン療法へのアテゾリズマブの上乗せを検討しているIMpower131試験の最終解析結果も報告された。この試験は、ASCO2018においてOSの有意な延長が示されておらず、PD-L1 1~49%群でのOSがプラチナ製剤併用療法群と比較してクロスすることが報告されていた。今回の最終解析において、カルボプラチン+nabパクリタキセル+アテゾリズマブ群とカルボプラチン+nabパクリタキセル群の生存期間中央値(mOS)は14.2ヵ月vs.13.5ヵ月で、OSはHR0.88、95%CIは0.73~1.05、p=0.158で、OSの延長効果は示されなかった。ただし、PD-L1TPS 50%以上の高発現群においては、mOSは23.4ヵ月vs.10.2ヵ月、OSはHR0.48、95%CIが0.29~0.81とサブグループ解析ではあるが有意に延長していることが報告された。同じ扁平上皮がんを対象としたプラチナ+タキサン療法へのペムブロリズマブの上乗せを検討したKEYNOTE-407試験では、ペムブロリズマブの上乗せの生存延長効果が示されているだけに、PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬で扁平上皮がんに効果に違いが出るのか興味深いところではある。(Cappuzzo F, et al. OA 14-02)小細胞肺がんのトピックスSensitive Relapse小細胞肺がんを対象にカルボプラチン+エトポシドとトポテカンを比較した第III相試験トポテカンはヨーロッパでは小細胞肺がんの2次療法で承認されている数少ない抗がん剤であり、ヨーロッパだけでなく本邦含めグローバルで標準療法として広く用いられている。この試験では、初回治療から90日以上たってから再燃してきた小細胞肺がんをsensitive relapse小細胞肺がんとして定義しており、この対象を満たし初回治療でプラチナ+エトポシド療法が施行されている患者に対して、カルボプラチン+エトポシドとトポテカンの比較試験が行われた。この試験での意義は初回治療のre-challengeと標準療法であるトポテカンのどちらが良いかを比較している点で、今までのクリニカル・クエスチョンを確認する試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、中央値がre-challenge群で4.7ヵ月(95%CI:3.9~5.5)、トポテカン群で2.7ヵ月(95%CI:2.3~3.2)、PFSがHR0.6、95%CIは0.4~0.8、p<0.002であり、re-challenge群が有意にPFSを延長していた。またre-challenge群とトポテカン群の比較において、他の主な評価項目では、奏効率が49% vs.25%(p<0.002)とre-challenge群で有意に奏効率が高かったが、全生存期間ではmOSが7.5ヵ月(95%CI:5.4~8.7)vs.7.4ヵ月(95%CI:6.0~9.3)であり、両群で有意な差を認めなかった。毒性では、トポテカン群はGrade3/4の好中球減少が35.8% vs.19.7%(p<0.001)と有意に高かったが、発熱性好中球減少症が13.6% vs.6.2% (p=0.19)で両群に有意な差を認めず、その他の毒性も両群で差を認めなかった。この試験の結果からは、日常臨床で行われることが多いsensitive relapse小細胞肺がんにおけるre-challenge療法を、標準療法の一つとして考えてもよいのかもしれない。(Monnet I, et al. OA 15-02)

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急性咽頭炎に対するアモキシシリンへの変更提案の論拠【うまくいく!処方提案プラクティス】第7回

 今回は、抗菌薬の処方提案について紹介します。抗菌薬の処方提案においては、(1)感染臓器、(2)想定される起炎菌(ターゲット)、(3)感受性良好な抗菌薬の理解が必要不可欠です。また、医師に提案する際は、上記の擦り合わせや治療方針の確認を心掛けましょう。患者情報40歳、男性(会社員)現 病 歴 :高血圧血圧推移:130/70台既 往 歴 :15歳時に虫垂炎にて手術主  訴:咽頭痛、発熱、頸部リンパ節の腫脹処方内容1.アムロジピン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.レボフロキサシン錠500mg 1錠 分1 朝食後3.トラネキサム酸錠500mg 3錠 分3 毎食後4.ポビドンヨード含嗽剤7% 30mL 1日数回含嗽症例のポイントこの患者さんは、2日前より咽頭痛と発熱が生じたため、かかりつけの診療所を受診しました。来院時の発熱は38℃後半で、圧痛を伴う頸部リンパ節の腫脹から急性咽頭炎と診断され、上記の薬剤が処方されました。薬局でのインタビューでは、とくに咽頭の症状が強く、唾をのみ込むときに口の中や咽頭に強い痛みを感じていましたが、鼻汁や咳嗽はないということを聞き取りました。まず気になったのは、急性咽頭炎に対してレボフロキサシンが処方されていたことです。急性咽頭炎の大多数はウイルス性であり、細菌性の割合は10%程度と低めですので、抗菌薬が必要ないことも多くあります。この患者さんは下表のように細菌性も十分疑われますが、細菌性の場合に主にターゲットとなりうる起炎菌はA群β溶血性連鎖球菌(group A β-hemolytic streptococcus:GAS)です。レボフロキサシンは広域スペクトラムかつ肺結核をマスクするリスクなどもありますので、本症例においては特別な理由がなければ第1選択には挙がらない抗菌薬ではないかと考えました。咽頭感染かつGASがターゲットであればペニシリン系抗菌薬のアモキシシリンが第1選択薬となります。そこで、患者さんにペニシリンやほかのβラクタム系抗菌薬によるアレルギーがないことを確認したうえで、医師に疑義照会することにしました。<細菌性咽頭炎を疑うためのツール>(文献2より改変)処方提案と経過電話にて、本症例における処方医の考えるターゲットと治療方針を確認したところ、GAS迅速抗原検査は陽性であり、細菌性咽頭炎の診断はついているということがわかりました。そして、「GAS陽性=レボフロキサシン」という認識で薬剤選択をしたと回答がありました。確かにレボフロキサシンも感受性はありますが、今回の症例のように症状が咽頭に限局しているGASをターゲットとして治療する場合、アモキシシリンのほうがより狭域で感受性が高いことを提案しました。医師は、アモキシシリンはあまり使ったことがないからそれでよいのか判断に迷われていましたが、処方提案の承認を得ることができました。薬剤変更の結果、アモキシシリン錠250mg 4錠 分2 朝夕食後で10日間投与することとなりました。その後、患者さんは10日間のアモキシシリンの治療を終了し、咽頭炎は軽快しました。1)厚生労働省健康局結核感染症課 編. 抗微生物薬適正使用の手引き 第一版. 厚生労働省健康局結核感染症課;2017.2)岸田直樹. 総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!. じほう;2015.3)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019. 第49版. ライフサイエンス出版;2019.

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新規ADC薬・sacituzumab-govitecan、尿路上皮がんに有望(TROPHY-U-01)/ESMO2019

 転移を有する尿路上皮がん(mUC)に対する、抗体薬物複合体(ADC)である新規薬剤sacituzumab-govitecan(SG)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Weill Cornell MedicineのScott T. Tagawa氏より発表された。 本試験(TROPHY-U-01)は、オープンラベル・シングルアームの国際共同第II相試験である。本試験薬(SG)は、尿路上皮がんやトリプルネガティブ乳がんなどの腫瘍細胞表面に高発現しているTrop-2タンパクを標的としたヒト化抗体(hRS7)に、トポイソメラーゼ阻害薬であるSN-38を分子レベルで結合させた新規のADCである。 対象はプラチナ系薬剤と免疫チェックポイント阻害薬(CPI)の前治療歴のあるmUC患者(コホート1)100例、およびプラチナ系薬剤不適応でCPI治療後の病勢進行患者40例(コホート2)。試験群にはSG10mg/kgをday1、8に投与3週間ごと。主要評価項目は奏効率(ORR)、副次評価項目は安全性、奏効期間、無増悪生存期間、全生存期間であった。今回は、コホート1の35例による中間解析結果の報告である。 主な結果は以下のとおり。・前治療のライン数の中央値は3(2~6)で、63%の症例に内臓転移があった(肺転移40%、肝転移23%、その他11%)。・追跡期間中央値4.1ヵ月時点での全体のORRは29%(CR:6%、PR:23%)で、前治療が2ラインのサブグループでは18%。3ライン以上のサブグループでは33%であった。・内臓転移を有する症例群でも23%のORRが得られ、全症例の74%で何らかの腫瘍縮小効果が得られた。・安全性は、Grade3/4の好中球減少が55%、白血球減少が29%、発熱性好中球減少が12%、尿路感染が11%、下痢が9%、全身倦怠感6%などであり、3例が治療関連有害事象により投薬中止となっている。また、間質性肺炎や治療関連死はなかった。

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