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ココカラファインとスギHD経営統合の背景に見えるもの【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第26回

店舗数が増加の一途にあるドラッグストア業界で大型再編のニュースが飛び込んできました。ドラッグストア大手のスギホールディングス(HD、愛知県大府市)とココカラファイン(横浜市)は6月1日、経営統合に向けた協議を始めた、と発表した。実現すれば、売上高は9千億円に迫り、業界トップのイオン系のウエルシアHD(東京都)を抜く。ココカラは4月にも、業界大手マツモトキヨシHDと資本業務提携の検討を始めると公表。6月1日の発表によると、マツモトキヨシとの協議も継続するとしており、巨大な企業連合が誕生することも見込まれる。(2019年6月1日 朝日新聞デジタル)これがどのくらいの規模の話なのか整理したいと思います。まず、業界6位のスギHDの売上は4,884億円(2019年3月期)、業界7位のココカラファインの売上は4,005億円(2019年3月期)です。業界1位のウエルシアHDの売上が7,791億円(2019年2月期)ですから、単純に合計すると業界1位に躍り出ることになります。店舗数に関しても、2社を合計すると約2,500店舗となり、こちらも業界1位となります。なお、ココカラファインはマツモトキヨシHDと資本業務提携の協議・検討を開始することを4月に発表しています。その協議・検討も続けるとのことで、スギHDとマツモトキヨシHDがココカラファインを取り合っている、とも報じられています。成長率鈍化傾向のドラッグストア業界で再編は進むか?なぜこのような大型の統合や提携の協議が立て続けに起こっているのでしょうか。近年では訪日外国人のいわゆる「爆買い」によるインバウンド消費の影響もありますが、食品や化粧品、プライベートブランド(PB)商品の販売を強化することで、何期も連続して最高益を更新する企業が多くありました。業界全体としても好調で、日本チェーンドラッグストア協会が2019年3月に発表した2018年度「ドラッグストア実態調査」によると、業界の全国総売上高は前年比6.2%増の7兆2,744億円であり、2017年度の5.5%増を上回る増収率でした。しかし、成長率という視点で見ると、2017年度の実績では2桁の増収増益が目立ちましたが、2018年度は既存店の売上の鈍化や販管費比率の上昇で営業減益を見込むチェーン店が増加しており、成長に減速感が見られるようになってきています。すでに大規模な再編を経験したコンビニエンスストアなどの他の小売業と同様に、都市部店舗の飽和による競争激化や人件費の上昇といった最重要課題の解決は、単独のチェーンでは難しくなってきているのでしょう。薬局という視点から見ると、調剤報酬や薬価の引き下げの方向性など、今後の調剤での利益縮小が予想されていることも影響しているかもしれません。ココカラファインとスギHDもしくはマツモトキヨシHDの統合・提携によりドラッグストア業界の勢力図が変わり、今後より一層再編が進む可能性があります。日用品や物販の効率化だけでなく、医療サービスの拡充がどのようになるのか注目していきたいと思います。

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腎細胞がんへのペムブロリズマブ+アキシチニブ、IMDC分類によらずベネフィット(KEYNOTE-426)/ASCO2019

 進行または転移を有する腎細胞がん(mRCC)の1次治療における、抗PD-1抗体ペムブロリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬アキシチニブの併用療法を評価した第III相試験KEYNOTE-426のサブグループ解析から、IMDC分類によらず、また予後不良とされる肉腫様変化を有する患者においても、併用療法のベネフィットが示された。米国・クリーブランドクリニックのBrian I. Rini氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。なお、本併用療法は同試験の結果に基づき、2019年4月にFDAから承認を受けている。 KEYNOTE-426は、治療歴のないmRCC患者に対するペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法の有効性と安全性を評価した、非盲検多施設共同無作為化試験。KPS(Karnofsky Performance Status)≧70、未治療のIV期淡明細胞型RCC患者が、腫瘍のPD-L1発現状況にかかわらず登録された。層別化因子は、IMDC分類(低 vs.中vs.高)と地域(北米 vs.西欧 vs.その他の地域)であった。登録患者は、ペムブロリズマブ(200mg)を3週ごとに静脈内投与(最大35サイクルまで)+1日2回アキシチニブ(5mg)の経口投与を受ける併用群、またはスニチニブ(50mg)を1日1回4週間経口投与後に2週間休薬するスニチニブ群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、独立中央評価委員会(BICR)がRECIST v1.1に準拠して評価したintention-to-treat(ITT)集団における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)であった。事前に規定された中間解析において、併用群はスニチニブ群と比較して、OS(ハザード比[HR]:0.53、p<0.0001)、PFS(HR:0.69、p<0.001)、およびORR(59.3% vs.35.7%、p<0.001)を有意に改善し、管理可能な安全性プロファイルを示している。 主な結果は以下のとおり。・全体で861例の患者が登録され、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用群に432例、スニチニブ群に429例が割り付けられた。・ITT集団における標的病変のベースライン時点からの腫瘍縮小率は、スニチニブ群と比較して併用群で優れていた(≧60%の縮小:併用群42% vs.スニチニブ群16%、≧80%の縮小:17% vs.6%、完全奏功[CR]:9% vs.3%)。・IMDC低リスクの患者は269例(併用群:138例、スニチニブ群:131例)、中/高リスクの患者は592例(併用群:294例、スニチニブ群:298例)であった。・IMDC低リスクの患者において、OS中央値は両群ともに未到達、HR:0.64、95%信頼区間[CI]:0.24~1.68、12ヵ月OS率:95% vs.94%。PFS中央値は17.7ヵ月vs.12.7ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.53~1.24、12ヵ月PFS率:68% vs.60%。ORRは66.7% vs.49.6%。・IMDC中/高リスクの患者において、OS中央値は両群ともに未到達、HR:0.52、95%CI:0.37~0.74、12ヵ月OS率:87% vs.71%。PFS中央値は12.6ヵ月vs.8.2ヵ月、HR:0.67、95%CI:0.53~0.85、12ヵ月PFS率:56% vs.40%。ORRは55.8% vs.29.5%。・肉腫様変化を有する患者は105例(併用群:51例、スニチニブ群:54例)含まれた。ベースライン時、年齢中央値は58.0歳 vs.58.5歳。IMDC低リスクが13.7% vs.18.5%、中リスクが66.7% vs.70.4%、高リスクが19.6% vs.11.1%。PD-L1 CPS≧1は74.5% vs. 79.6%であった。・肉腫様変化を有する患者において、OS中央値は両群ともに未到達、HR:0.58、95%CI:0.21~1.59、12ヵ月OS率:83% vs.80%。PFS中央値は併用群で未到達、スニチニブ群で8.4ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.29~1.00、12ヵ月PFS率:57% vs.26%。ORRは58.8% vs.31.5%、標的病変におけるCRは13% vs.2%であった。

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「0402通知」が示すこれからの薬剤師の姿【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第13回

4月に、厚生労働省から「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号平成31年4月2日厚生労働省医薬・生活衛局総務課長)が示されたことは周知の事実でありますが、この通称「0402通知」について、皆さんはどう思われましたか?調剤業務の効率化については、昨年行われた薬機法改正の議論でも、「調剤機器や情報技術の活用等も含めた業務効率化のために有効な取組の検討を進めるべき」(「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」平成30年12月25日厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 8頁)とされていましたが、具体的にこのような通知が出されたことに驚いた方も多いのではないでしょうか。目的は“対人業務の充実”この通知では、すでにご存じかと思いますが、一定の条件下において、薬剤師以外の者による一部薬剤のピッキングなどを認めています。この点について、これまでも薬局によっては、具体的な運用を考えて実際に薬剤師以外の者がピッキングを行っていたところもありましたし、私も法に適合する運用は可能であると以前から考えていました。しかし、行政の法解釈がはっきりしなかったため、これまで議論されることが多かったことからも、条件があるものの、薬剤師以外の者による調剤に関する業務が可能であると国が示したことによる影響は大きいでしょう。本通知が示されたことで、これまでは行われていなかったことが一般的になる可能性があり、今後の薬剤師業務は大きく変わるかもしれません。この通知は、「患者のための薬局ビジョン」における“対物から対人への実現”のために示されたとみることもできます。実際に「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」においても「対人業務を充実させるための業務の効率化」について言及されており、やはり目的は“対人業務の充実”にあるようです。薬機法改正も視野に運用方法を再考すべきこの通知が出されたことによって、将来的に調剤報酬(調剤料)への影響が出ることが想定されますので、今後は対人業務における薬剤師の評価が今まで以上に重要になるのではないでしょうか。現在予定されている薬機法の改正では、必要に応じて服用期間中も患者さんについて継続的かつ的確な把握をし、指導などを行うことが義務付けられる見通しですので、このような義務を実現していくための通知と捉えるべきとも考えられます。また、通知では以下のとおりに示され、仮にピッキングなどを薬剤師以外の者に実施させることができるとしても、あくまでも責任は薬剤師にあることが前提となっています。1調剤に最終的な責任を有する薬剤師の指示に基づき、以下のいずれも満たす業務を薬剤師以外の者が実施することは、差し支えないこと。なお、この場合であっても、調剤した薬剤の最終的な確認は、当該薬剤師が自ら行う必要があること。当該薬剤師の目が現実に届く限度の場所で実施されること薬剤師の薬学的知見も踏まえ、処方箋に基づいて調剤した薬剤の品質等に影響がなく、結果として調剤した薬剤を服用する患者に危害の及ぶことがないこと当該業務を行う者が、判断を加える余地に乏しい機械的な作業であることこれまでと同様に、責任は薬剤師が背負う以上、一部の調剤に関する業務を薬剤師以外の者に任せても安全性が確保できる運用方法を考える必要があります。いかなるときも、患者さんに正しく安全な薬剤を供給することは、薬剤師の重要な責務であることを忘れないようにしましょう。参考資料1)「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号平成31年4月2日厚生労働省医薬・生活衛局総務課長)

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第41回 老年薬学会に入って“日本沈没”を救え!【週刊・川添ラヂオ】

動画解説世界が経験したことのない超高齢社会。医療者として「ヤバイ」と感じますよね。それに立ち向かうべく設立された日本老年薬学会。「ポリファーマシーのことをやっている団体」と思われがちですが、医師と共同で高齢者に対する適切な薬物治療を研究しています。ロコモティブシンドロームや高齢者における薬物の影響を薬剤師が深く掘り下げることによって、超高齢化社会の問題を解決する糸口が見つかるかもしれません。

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エルロチニブ+ラムシルマブ、EGFR陽性NSCLCの新オプションに?(RELAY)/ASCO2019

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用が、エルロチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を大きく延長した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、第III相RELAY試験の中間解析結果を、近畿大学の中川 和彦氏が発表した。 エルロチニブを含む第1~第2世代TKIによる治療後、30~60%でT790M変異が発現する。第3世代TKIのオシメルチニブはT790M変異に対して有効だが、1次治療でオシメルチニブを投与した場合、その後の治療選択肢は限られる。 RELAY試験は、活性型EGFR変異(Exon19delまたはExon21 L858R)を有し、CNS転移のない、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第III相国際共同二重盲検無作為化試験。登録患者はラムシルマブ(10mg/kg、2週ごと投与)+エルロチニブ(150mg/日)群と、プラセボ+エルロチニブ(150mg/日)群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。また、患者は性別、地域(東アジア vs.その他)、EGFR変異ステータス(Ex19del vs.L858R)、EGFR変異検査法(Therascreen/Cobas vs.その他)で層別化された。 主要評価項目は治験責任医師の評価による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、PFS2(無作為化から2度目の病勢進行あるいは全死因死亡のいずれかの発生までの期間)、全生存期間(OS)、血漿T790M変異、安全性などであった。 主な結果は以下のとおり。・13ヵ国100施設から449例が登録され、ラムシルマブ併用群に224例、プラセボ群に225例が割り付けられた。女性は両群で63%、アジア人は両群で77%、年齢中央値は65歳/64歳、Ex19delは55%/54%であった。・データベースロックは2019年2月14日、追跡期間中央値は20.7ヵ月。・主要評価項目であるPFS中央値は、併用群が19.4ヵ月、プラセボ群で12.4ヵ月と、併用群で有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.591、95%信頼区間[CI]:0.461~0.760、p<0.0001)。・EGFR変異のステータス別でも、併用群でPFS中央値を有意に延長していた:Ex19delを有する患者で19.6ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.651、95%CI:0.469~0.903)、L858Rを有する患者で19.4ヵ月 vs. 11.2ヵ月(HR:0.618、95%CI:0.437~0.874)。・ORRは76.3% vs.74.7%と差がみられなかったが、DoR中央値は18.0ヵ月 vs.11.1ヵ月と、併用群で有意に延長した(HR:0.619、95%CI:0.477~0.805、p=0.0003)。・PFS2中央値は両群ともに未到達、併用群で有意に延長した(HR:0.690、95%CI:0.490~0.972、p=0.0325)。・中間解析時点でのOS中央値は両群ともに未到達、HR:0.832、95%CI:0.532~1.303、p=0.4209となっている。・ベースライン時にT790M変異陽性の患者はいなかったが、病勢進行30日後の測定では、併用群43%、プラセボ群47%で発現しており、両群に差はみられなかった(p=0.849)。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は併用群で72%、プラセボ群で54%の患者に発現した。しかし、TRAEによる治療中止は併用群が13%、プラセボ群が11%と同等であった。・併用群では高血圧(45% vs.12%)が多く発現したが、Grade4の症例はなかった。また、ALT(43% vs.31%)、AST(42% vs.26%)、出血性イベント(55% vs.26%)も併用群で多い傾向がみられたが、多くがGrade1~2であった。

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若年発症の脳卒中、一般集団と比べた長期死亡リスクは?/JAMA

 オランダにおいて、若年(18~49歳)発症の脳卒中の30日生存者は、一般集団と比較して死亡リスクが最長15年後まで高いままであることが示されたという。オランダ・ラドバウド大学のMerel Sanne Ekker氏らが、若年発症の脳卒中の短期および長期死亡リスク、死亡率の時間的傾向および死因を、年齢、性別、脳卒中サブタイプごとに明らかにすべく行ったレジストリー研究の結果を報告した。脳卒中は、依然として世界における主要死因の第2位であり、全脳卒中のうち約10~15%の発症は若年成人に認められるが、これまで若年発症の脳卒中の予後や死亡に関する情報は限定的であった。JAMA誌オンライン版2019年5月23日号掲載の報告。若年初発の脳卒中患者1万5,527例の死亡率を一般集団と比較 研究グループは、オランダにおいて1998~2010年の期間に初回の脳卒中を発症した18~49歳の脳卒中患者を、2017年1月1日まで追跡調査した。患者とアウトカムについて、オランダ全国民を対象とした病院退院登録(Hospital Discharge Registry)、死因登録(Cause of Death Registry)および人口登録(Dutch Population Register)を用いて、またICD-9およびICD-10でコードされた虚血性脳卒中、脳出血およびその他の脳卒中として特定し解析した。 主要アウトカムは、30日生存者の追跡終了時における累積全死因死亡で、年齢、性別、脳卒中サブタイプで層別化し、Cox比例ハザードモデルなどを用いて一般集団の累積全死亡率と比較した。 解析には1万5,527例(年齢中央値44歳[四分位範囲:38~47]、女性53.3%)が組み込まれた。30日生存者の15年死亡率は17.0% 追跡調査終了時点で、計3,540例(23.2%)が死亡していた。そのうち脳卒中発症後30日以内の死亡が1,776例で、残りの1,764例は追跡期間中央値9.3年(四分位範囲:5.9~13.1)の間に死亡した。 30日生存者の15年死亡率は17.0%であった(95%信頼区間[CI]:16.2~17.9)。一般集団と比較した標準化死亡比(SMR)は、虚血性脳卒中で5.1(95%CI:4.7~5.4)(実死亡率:12.0/1,000人年[95%CI:11.2~12.9/1.000人年]、予定死亡率:2.4/1,000人年、超過死亡率:9.6/1,000人年)、脳出血で8.4(95%CI:7.4~9.3)(実死亡率:18.7/1,000人年[95%CI:16.7~21.0/1,000人年]、予定死亡率:2.2/1,000人年、超過死亡率:16.4/1,000人年)であった。 なお、著者は、脳卒中の重症度や家族歴などの潜在的交絡因子を調整できていないこと、2006年以降は病院退院登録にデータを提供した病院が少なかったことなどを研究の限界として挙げている。

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第22回 救急外来に担ぎ込まれた外傷の症例2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は、外傷(ケガ)の症例を呈示します。身体の表面の外傷だけではなく、外傷による脳出血や内臓の損傷、それから骨折などに対する根本的な治療は外科医が専門ですが、内科医も外傷の初期診療に携わることがあります。外科医の持っている手術などの技術のない内科医が、どのようなことに注意しながら外傷の初期診療を行っているか、薬剤師の皆さんにご紹介したいと思います。患者さんHの場合◎経過──3今、男性の意識はありません。看護師が胸腔ドレナージチューブ(以下、ドレナージチューブ)の準備をしている間に、内科医は麻酔をすることなく注射針を左胸に刺しました。ちょうどその時、外科医が駆けつけてくれて、内科医からの状況説明を聞きながら、まもなく左胸の注射器を抜き、メスで2㎝ほど切開してドレナージチューブを左胸に挿入しました。内科医はバッグバルブマスク(BVM)を用いて補助換気を継続しています。外科医がドレナージチューブを挿入した瞬間、ドレナージチューブからは多量の空気と血液が排出されました。点滴の量はこの短時間で1,000mLを超えています。(SpO2と血圧が良くなってる...。少し身体の動きがあるみたい...〈表2〉)現場は少しだけ安堵した空気が流れました。「よし、じゃCTに行こう」と外科医が指揮をとりました。あなたは少し気になりましたが、病院を後にすることにしました。◎今回の経過と診断が知りたいあなたへ今回、高所からの転落で受傷した男性の診断は下記の通りでした。# 左側胸部打撲・擦過傷# 左肋骨骨折# 左脛骨骨折・腓骨骨折# 左肺挫傷# 左緊張性血気胸救急外来に搬入されたとき、男性は不穏・興奮状態でしたね。血圧はある程度維持されていましたが、脈拍は速く、ショックの徴候を疑わせます。(「ショックの診断基準・小項目」を確認してみてください。)同時にSpO2の低下があり、呼吸に異常があることがわかります。(SpO2についての説明はこちら。)私たち内科医は、手術など外傷の根本的な治療はできませんから、この内科医はバイタルサインに異常があるのを見て、直ちに外科と整形外科(足に骨折がありました)に連絡をしました。同時に呼吸と循環の治療を開始しています。呼吸の異常に対する治療は酸素投与であり、循環の治療は補液だったわけです(外傷のショックの原因の大部分は出血です)。本文に記載はありませんが、身体所見とベッドサイドでの超音波検査から、内科医は血気胸※2を疑っていました。その時、さらに呼吸と循環の状態が悪くなり、気管挿管とドレナージチューブの準備を始めました。左胸に注射針を刺したのは、外科的にドレナージチューブを挿入するまでの応急処置として、注射針を通して肺の空気を抜くためです。ショックの原因は、緊張性血気胸と胸腔内出血でしたから、ドレナージチューブによる治療(空気と血液の排出)と補液で改善しました。上記のprimary surveyが終わった後、詳細な病歴聴取・身体診察や画像診断などでsecondary surveyを行い、前述のような診断が得られました。内科医は手術こそできないものの、生命徴候の異常を素早く察知し、それに対する初期治療は可能です。こんなことに注意しながら内科医は外傷を診ていますが、外傷診療においてもバイタルサインの確認が重要というわけです。※2:肺の外傷により、出血した血液や肺からの空気が胸腔内に貯留した状態エピローグ数か月後、病院を訪れたあなたは、窓の清掃業者の男性が施設の窓をきれいに掃除しているところを見かけました。「そういえばあの患者さん、どうなったんだろう...。あら?」あなたは、てきぱきと窓をきれいにしているその男性が、あの日あの時あの救急の現場で暴れていた患者さんだったことに気付き、胸が温まる思いがしました。緊急度の判断病気にしても外傷にしても、生命を維持するのに必要な生理機能(気道・呼吸・循環・中枢神経)に異常を来している場合、緊急度が高いと判断されます。そのためにバイタルサインといわれる生命徴候(呼吸・脈拍・体温・血圧・意識レベル)を確認します。緊急度の判断にはバイタルサインのチェックが必須です。

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5剤目のEGFR変異陽性非小細胞肺がん治療薬「ビジンプロ錠15mg/45mg」【下平博士のDIノート】第26回

5剤目のEGFR変異陽性非小細胞肺がん治療薬「ビジンプロ錠15mg/45mg」今回は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)「ダコミチニブ水和物(商品名:ビジンプロ錠15mg/45mg)」を紹介します。本剤は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(HER)2および4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。<効能・効果>本剤は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん(NSCLC)の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはダコミチニブとして1日1回45mgを経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量し、副作用が現れた場合には、添付文書に記載されている基準を考慮して休薬、減量または中止します。本剤とCYP2D6基質の薬剤(デキストロメトルファンなど)を併用すると併用薬の血中濃度が上昇する恐れがあり、また、PPIなどの胃内pHを上昇させる薬剤を併用すると本剤の血中濃度が低下して有効性が減弱する可能性があるため、それぞれ併用注意となっています。<副作用>化学療法歴のないEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC患者を対象とした非盲検無作為化国際共同第III相試験において、本剤が投与された227例(日本人患者40例を含む)中220例(96.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢193例(85.0%)、爪囲炎140例(61.7%)、口内炎(口腔内潰瘍形成、アフタ性潰瘍など)135例(59.5%)、ざ瘡様皮膚炎111例(48.9%)、発疹・斑状丘疹状皮疹・紅斑性皮疹など82例(36.1%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として間質性肺疾患(2.2%)、重度の下痢(8.4%)、重度の皮膚障害(31.7%)、肝機能障害(28.6%)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、EGFRというタンパク質などの働きを抑えることで、がん細胞の増殖を抑えます。2.空咳、発熱など風邪のような症状が現れ、息切れや息苦しさを感じた場合には使用を中止し、すぐに受診してください。3.飲み始めに下痢が生じることが多いので、下痢止め薬が処方されている場合は持ち歩くようにしてください。脱水予防のため、水、白湯、お茶、スポーツドリンクなどでこまめに水分を補給しましょう。4.バランスのよい食事を心掛け、調理をする際は消化をよくするように工夫してください。乳製品、繊維質や脂質が多い食品、香辛料やコーヒー、アルコールなどの刺激物はなるべく控えましょう。5.薬を飲み続けていると、爪周囲や口腔内の赤み、腫れ、痛みなどが生じることがあります。患部は清潔に保ち、日常生活に支障がある場合はご相談ください。6.吹き出物や発疹などの皮膚症状が生じることがあります。症状の予防や軽減のため、低刺激の保湿剤によるスキンケアをこまめに行い、外出時は紫外線対策をしましょう。<Shimo's eyes>NSCLCは肺がん症例の約85%とされており、日本人のNSCLC患者の30~40%にEGFR遺伝子変異があるといわれています。本剤は、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)、エルロチニブ(同:タルセバ)、アファチニブ(同:ジオトリフ)、オシメルチニブ(同:タグリッソ)に続く、国内で5剤目のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)です。優先審査品目に指定され、申請から7ヵ月での承認となりました。本剤は、EGFRやHER2、HER4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することにより、EGFR遺伝子変異陽性のがん細胞の増殖を抑制すると考えられています。本剤で治療を行うためには、既存のEGFR-TKIと同様にEGFR遺伝子変異検査を実施する必要があります。臨床試験では副作用が高頻度で認められたため、患者さんには事前に発現率が高い副作用の好発時期を知らせておくことが重要です。個人差はありますが、投与を開始してから副作用が発現するまでの時期として、下痢は2ヵ月程度(中央値6日)、ざ瘡などの皮膚障害は4ヵ月程度(中央値9日)、口内炎や爪囲炎は6ヵ月間程度(それぞれの中央値9日、29日)が目安となります。投与初期から発現する可能性が高いので、それぞれの副作用への対策法も伝えるように心掛けましょう。NSCLCは分子標的薬の登場により着実に予後が改善しています。治療選択肢となる分子標的薬も増えたため、それぞれの薬剤の副作用プロファイルや用法を確認し、患者さんが安心して治療に専念できるように積極的にフォローしましょう。

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第40回 入らにゃ損!在宅療養支援連絡会J-HOPとは?【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回は川添先生による全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 J-HOPのご紹介。J-HOPでは在宅医療に関する基本的な情報や疑問などの”あるある"を検索できる「あるシェア」をはじめ、情報共有や横の連絡を大切にしています。2017年より医師、歯科医との合同大会として全国在宅医療医歯薬連合会全国大会を開催し、他職種連携のための繋がりの場ともなっています。この時代に在宅と無関係な薬剤師など存在しない!地域のドクターと繋がりが持てる!川添先生お勧め団体第1弾。

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CareNeTVプレミアム会員限定 長門流 認定内科医試験 直前対策LIVE!2019

「長門流 認定内科医試験 直前対策LIVE!2019」概要日 時 :2019年6月23日(日)15:00~17:00ごろ(休憩 10分)概 要 :CareNeTVプレミアム会員限定「長門流 認定内科医試験 直前対策LIVE!2019」講 師 :長門 直氏(中国中央病院 内科部長)会 場 :インターネット配信受講料 :無料(CareNeTVプレミアム会員限定)視聴ページへは CareNeTVトップページ からアクセスできます。対象はCareNeTVプレミアム会員のみです。CareNeTVプレミアムにご入会いただくと当日のライブを視聴することができます。※視聴ページはライブ配信開始直前に公開いたします。内科系に進む医師にとっての最初の登竜門「認定内科医試験」。年に1度のチャンスだけに一発でクリアしたいところ。そこでCareNeTVでは、今年7月7日に受験する方々のためだけに、プレミアム会員限定の直前インターネットライブ講義を開催します。講師は、CareNeTVの総合内科専門医試験・認定内科医試験対策番組で毎年出題傾向を予測し、高い的中率で支持されている長門 直先生。ライブだからこそ話せる際どい部分も含め、予想される出題のポイントを2時間でズバズバ解説していきます。認定内科医試験受験者の皆さん、ラストスパートは、この直前LIVE!で合格を確かなものにしてください。視聴環境について本ライブは、PC、スマートフォン、タブレットでご視聴いただけます。視聴環境についてはこちら視聴環境のチェックページはこちらスマートフォン、タブレット用アプリの詳細・ダウンロードはこちら配信 株式会社ブイキューブ開催当日のお問い合わせ窓口 TEL:03-6738-8185(受付時間 9:00~21:00)視聴ページへは CareNeTVトップページ からアクセスできます。対象はCareNeTVプレミアム会員のみです。CareNeTVプレミアムにご入会いただくと当日のライブを視聴することができます。※視聴ページはライブ配信開始直前に公開いたします。

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経済毒性を日本人がん患者対象に要因別に評価した結果

 先ごろ約3,500万円の医薬品が登場し社会的関心を集めたが、高額な治療費・医薬品費がどのような“副作用”をもたらすのか。愛知県がんセンター中央病院の本多 和典氏らは、米国で開発されたがん患者の経済毒性(financial toxicity)を測定するツール「COmprehensive Score for Financial Toxicity:COST」の日本語版を作成し、これまで予備的研究として日本人がん患者におけるCOSTツールの使用可能性を少数例で評価していた。その実績を踏まえて今回、同氏らはCOSTツールを用いて日本人がん患者の経済毒性を評価する前向き調査を行い、日本人がん患者における経済毒性を要因別に評価した。著者は、「今回の結果は、日本におけるがん対策政策にとって重要な意味を持つだろう」とまとめている。Journal of Global Oncology誌2019年5月号掲載の報告。経済毒性が高い項目は非正規雇用やがんによる退職など 研究グループは、2ヵ月以上化学療法を継続している20歳以上の固形がん患者を対象に、アンケート用紙と医療記録を用い、COSTツールの質問項目に加えて社会経済的な項目に関するデータを収集して解析した。 日本人がん患者における経済毒性を要因別に評価した主な結果は以下のとおり。・191例に協力を依頼し、156例(82%)から回答を得た。・156例の内訳は、大腸がん77例(49%)、胃がん39例(25%)、食道がん16例(10%)、甲状腺がん9例(6%)、頭頸部がん4例(3%)、その他11例(7%)であった。・COSTスコア(低スコアほど経済毒性が高いことを示す)の中央値は21(0~41)、平均値±SDは12.1±8.45であった。・多変量解析の結果、COSTスコアと正の相関(すなわち経済毒性が低い)を示した項目は、高齢(β:0.15/歳、95%CI:0.02~0.28、p=0.02)と世帯貯蓄の多さ(β:8.24/1,500万円、95%CI:4.06~12.42、p<0.001)であった。・COSTスコアと負の相関(経済毒性が高い)を示した項目は、非正規雇用(β:-5.37、95%CI:-10.16~-0.57、p=0.03)、がんによる退職(β:-5.42、95%CI:-8.62~-1.37、p=0.009)、がんの治療費を何らかの方法で捻出(β:-5.09、95%CI:-7.87~-2.30、p<0.001)であった。

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第23回 アジスロマイシン6日間連続投与はなぜ?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 だいぶ前の話ですが、患者さんから次のような質問を受けたことがあります。「咳が出ているので受診して、アジスロマイシン500mg(力価)を1日1回3日分処方されました。飲みきりましたが、咳が残っているので再度受診したところ、また同じ量を処方されました(受け取りはほかの薬局)。3日間の服用で7日間作用が続くと説明書に書いてあるのに、6日間も飲むことがあるのですか?」。疑義照会の対象だと思いますよね。実際、2回目の処方箋を持って行った薬局もその処方に対して疑義照会をしましたが、医師がその飲み方でよいと指示を出したため、それに従って調剤をしたとのことです。こうなるとそれなりに根拠がないと医師にも患者さんにも意見を言いづらいため、アジスロマイシンの6日間投与について調べてみました。添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意の項には、「4日目以降においても臨床症状が不変もしくは悪化の場合には、医師の判断で適切なほかの薬剤に変更すること」とあります。また、薬物動態の項には、半減期が長く分布容積が大きいことから、服用8日目でも十分な組織濃度を保つと書かれています。そもそも、血中から薬剤が消失した後も組織にとどまり効果が持続するので1日製剤や3日製剤があるわけですが、副作用も同様に持続する可能性があるため注意が必要です。アジスロマイシンのインタビューフォームには、米国では5日間投与(初日500mg 1日1回、2~5日目250mg 1日1回)、英国など欧州諸国では3日間投与が適応となっている、とありますが、6日間投与の記載はありません。そうなると、たまたま疑義照会を受けた医師が誤って変更を却下した可能性も否めませんが、イレギュラーな服用方法の論文も調べてみました。1つ目が、上記の患者さんと対象疾患は異なりますが、急性副鼻腔炎に対して、アジスロマイシン500mg/日を1日1回3日間服用(AZM-3)または6日間服用(AZM-6)と、アモキシシリン500mg/クラブラン酸塩カリウム125mgを1日3回10日間服用(AMC)の群に分けた二重盲検ランダム化比較試験です1)。アジスロマイシン6日間服用群を設定しているのは、日数に幅を持たせて最適な服用スケジュールを見いだすという意図のようです。主解析項目は、急性細菌性副鼻腔炎症状の改善でした。急性副鼻腔炎症状を呈している合計936例の患者をランダムに上記3群に振り分け(AZM-3:312例、AZM-6:311例、AMC:313例)比較したところ、治療終了時の治療成功率はAZM-3:88.8%、AZM-6:89.3%、AMC:84.9%で、試験終了時における治療成功率はAZM-3:71.7%、AZM-6:73.4%、AMC:71.3%でした。AMC投与群の副作用発生率は51.5%であり、AZM-3(31.1%、p<0.001)またはAZM-6(37.6%、p<0.001)よりも高いという結果でした。最も多かったのが下痢で、吐き気、腹部膨満感と続き、副作用による中止はAZM-3で7例、AZM-6で11例、AMCで28例でした。6日間投与が検討されていることはわかりましたが、効果と副作用のバランスをみると、あえて6日間も服用する必要性はなさそうです。アジスロマイシンを長期服用して安全性に影響なし?次に、気管支拡張症に対するアジスロマイシンの予防的投与についてです2)。またしても今回の患者さんとは対象疾患が異なる試験ですが、痰、咳、肺炎などが症状として出やすい疾患ですので、こちらのほうが患者像は近そうです。1999年2月~2002年4月に外来を受診し、以下の基準を満たした患者でアジスロマイシンの予防的投与が検討されています。CTスキャンで気管支拡張症と診断されたほかの原因となりうる要因に対する対処がなされている過去12ヵ月以内に4回以上の経口または静脈投与の抗菌薬治療を必要とする感染性の増悪エピソードあり慢性症状のコントロール不良 などマクロライドアレルギー例や肝機能異常例は除外され、平均年齢51.9歳(範囲18~77)の39例が組み込まれました。投与スケジュールは、500mgを1日1回6日間服用し、次に250mgを1日1回6日間服用し、その後は250mgを毎週月曜日/水曜日/金曜日服用するという、これはこれでまたイレギュラーなスケジュールです。治療開始1ヵ月後に血液検査を実施し、肺機能検査は開始後少なくとも4ヵ月後までに行っています。少なくとも4ヵ月の治療を完了した33例において、経口抗菌薬を必要とする感染性増悪エピソードが1ヵ月当たり平均0.71から0.13まで有意に減り(p<0.001)、抗菌薬の静脈内投与の必要量も月平均0.08から0.003へと有意に減少し(p<0.001)、肺機能パラメータも改善傾向がみられています。副作用による中止は、肝機能低下2例、下痢2例、発疹1例、耳鳴り1例で、すべてが治療初月に発生しています。そのほかの副作用は軽度なものばかりで、主に胃腸症状でした。アジスロマイシンを予防的投与として長期間服用しても、安全性には特段の問題はなさそうですが、こちらの論文も6日間投与の有用性に強い根拠を持てるものではなく、結局医師の意図はわかりませんでした。実はその後、いろいろ調べたものの、正当と思える理由が見つからないまま処方医へ再確認したところ、追加の3日分は服用なしとなったというオチがあります。いろいろと論文を読んで調べてもそういうときもあります。調べたことは無駄にはなりませんし、調べてもわからないことがあると知ったことに意味があったのかもしれません。1)Henry DC, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2003;47:2770-2774.2)Davies G, et al. Thorax. 2004;59:540-541.3)ジスロマック錠 添付文書 2018年10月改訂(第24版)・インタビューフォーム 2018年12月改訂(第22版)

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リキッドバイオプシーの次なる展開は?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第7回

第7回 リキッドバイオプシーの次なる展開は?1)Rothwell DG, et al. Utility of ctDNA to support patient selection for early phase clinical trials: the TARGET study. Nat Med. 2019;25:738-743.その他、参考文献としてLeighl NB, et al. Clinical Utility of Comprehensive Cell-free DNA Analysis to Identify Genomic Biomarkers in Patients with Newly Diagnosed Metastatic Non-small Cell Lung Cancer. Clin Cancer Res. 2019 Apr 15. [Epub ahead of print]Akamatsu H, et al. Clinical significance of monitoring EGFR mutation in plasma using multiplexed digital PCR in EGFR mutated patients treated with afatinib (West Japan Oncology Group 8114LTR study). Lung Cancer. 2019;131:128-133.Lin CC, et al. Outcomes in patients with non-small-cell lung cancer and acquired Thr790Met mutation treated with osimertinib: a genomic study. Lancet Respir Med. 2018;6:107-116.Blakely CM, et al. Evolution and clinical impact of co-occurring genetic alterations in advanced-stage EGFR-mutant lung cancers. Nat Genet. 2017;49:1693-1704.Chae YK, et al. Detection of Minimal Residual Disease Using ctDNA in Lung Cancer: Current Evidence and Future Directions. J Thorac Oncol. 2019;14:16-24.Bettegowda C, et al. Detection of circulating tumor DNA in early- and late-stage human malignancies. Sci Transl Med. 2014;19;6:224ra24.肺がん領域ではEGFR-TKI耐性例におけるT790M変異検出目的で広く浸透したリキッドバイオプシー。最近では毎月のように論文発表がなされているが、今後どのような方向性が検討されているのか。最近の研究を基に解説する。1)について英国での前向き研究。2つのパートからなり、今回はリキッドバイオプシーの忍容性を組織診断と比較したパートA部分(100例)が報告された。他の検討項目として、cell-free DNA(以下、cfDNA)解析結果の信頼性、結果報告までの日数、臨床応用の可能性、費用が挙げられている。対象は進行期悪性腫瘍で、患者数の多い順に大腸がん、乳がん、非小細胞肺がん、原発不明がんとなっている(これらの合計が67例)。過去の化学療法歴の中央値は2であった。がん関連遺伝子641個を収載したパネルを用い、cfDNA検体の解析成功率は99%、組織検体の成功率は95%であった(late lineの患者が多く含まれていることもあり、組織検体の採取時期がやや古い:2/3の患者で1年以上前、36%の患者で3年以上前)。結果報告までの日数中央値は、cfDNAで33日(範囲20~80日)、組織検体で30日と、かなり遅い印象である。組織検体と血液検体の一致率(変異陰性例も含む)は74.5%。約2割では組織で検出された変異が血液では確認できなかった。何らかの変異が確認されたのは41例。乳がん、原発不明がん、小細胞肺がんでは80%以上の症例で変異陽性とされたが、まったく変異が陰性のがん腫もあり、がん種による陽性率の差が示唆されている。変異陽性例では対応する阻害剤の第I相試験に参加可能であったが、確認された41例のうち参加者は11例にとどまった(17例では施設で該当治験がなかったことが不参加の理由)。11例の奏効率は36%。非小細胞肺がん患者では13例中9例(69%)で何らかの変異が検出され、4例がEGFR阻害剤、1例がMEK阻害剤を投与された。解説多くのドライバー変異が同定され、それぞれに対応する分子標的薬がすでに保険承認されている肺がんと異なり、他がん腫ではバイオマーカーの同定、薬剤開発に苦労しているものもある。そのような状況において、低侵襲に広範囲な変異を確認できるリキッドバイオプシーの実用可能性を示したのが本論文である。ただし現場ではHER2/HER3変異陽性例に対するneratinibのバスケット試験(Hyman DM. Nature. 2018.)のように、cfDNAの結果のみでも参加可能な試験が増えており、診断精度という観点ではそれほど新規性が高いわけではない。ただし肺がんにおいてもオシメルチニブやALK阻害剤の多彩な耐性機序などが昨今明らかになっており、リキッドバイオプシーを用いた臨床研究の実現可能性や介入の対象などはより多くの議論が交わされていくと思われる。臨床への応用という観点で、本論文における1ヵ月という結果報告までの時間(turn-around time:TAT)はとても厳しいと思われるが、Guardant360を用いたLeighlらの最近の報告(Leighl NB. Clin Cancer Res. 2019.)では導入が進むにつれTATが短縮し、最終的な中央値は9日とされている。「近い将来、どのような対象について介入が必要か」であるが、昨今注目されている話題の1つは慢性骨髄性白血病(CML)など血液腫瘍で実地応用されている治療早期のmolecular responseが長期予後を予測するという知見であり、肺がんでも国内外を問わず、すでに多数の報告が出そろっている(Akamatsu H, Lung Cancer. 2019.、Lin CC, Lancet Respir Med. 2018.)。また早期症例も含め、リキッドバイオプシーを用いた再発予測が画像より早期に可能ではないか、という指摘も多くなされており(Blakely CM, Nat Genet. 2017.)、これらに対する介入が検討されている(ChaeYK, J Thorac Oncol. 2018.)。一方で、cfDNAの陽性率が進行期においても腫瘍量に比例することはかなり前から示されており(Bettegowda C, Sci Transl Med. 2014.)、本研究でも2割では組織検体でのみ変異が検出されていることに注意は必要である。リキッドバイオプシーは測定・結果返却のシステムさえ整えば、(費用は別として)臨床でのハードルが高くないため、今後はより多数例の大規模な解析が報告されると思われる。本論文の後半で示されているが、彼らはそうした情報をwebで共有する計画を進めており(eTARGET)、将来的にこうしたデータベースを基にした研究・臨床への応用が準備されているようである。適切なバイオマーカーを有する患者に対する分子標的薬の効果の高さは皆が認めるところであり、本邦でも早急にこのような試みが検討されるべきであろう。

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第21回 救急外来に担ぎ込まれた外傷の症例1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は、外傷(ケガ)の症例を呈示します。身体の表面の外傷だけではなく、外傷による脳出血や内臓の損傷、それから骨折などに対する根本的な治療は外科医が専門ですが、内科医も外傷の初期診療に携わることがあります。外科医の持っている手術などの技術のない内科医が、どのようなことに注意しながら外傷の初期診療を行っているか、薬剤師の皆さんにご紹介したいと思います。プロローグ本日、薬剤師のあなたは研修の目的で病院へとやってきました。研修を終えたあなたは、病院内の見学を許可され、救急外来に入ってきたところです。「最近具合が悪くて病院に搬送した患者さんが多いけど、救急外来ってどんなところなのかしら...」患者さんHの場合◎経過──1「おい!痛いって言ってるだろ!なにするんだ!やめろ!」(え!?)そんな声が聞こえてからまもなく、ストレッチャーに横たわった男性が救急外来に担ぎ込まれてきました。周りには医師や複数の看護師がいます。医師の名札には「内科」と書かれていました。運ばれてきた男性は大声で叫んでおり、ストレッチャーの上で起きあがろうとしたり、暴れたりしています。「大丈夫ですか!?ここは病院ですからね!ケガの状態をみますよ!」「うるさい!こら!痛いじゃないか!放せ!」複数の看護師や内科医は男性を押さえつけながら、衣服を脱がせ、心電図モニターや血圧計を装着しています。見ると、左下腿は変形し、実際に骨折した人を見たことのないあなたでも明らかに骨折していることがわかりました。(何?どうなってるの!?)モニター画面に映し出されたバイタルサインと意識レベルは表1の通りです。(あ、SpO2が低下している...!)あなたがそう思ったその時、「待機の外科と整形外科に連絡して」内科医がそう言うと、1人の看護師が電話機の方に向かいました。◎経過──2内科医が、ケガをした状況を目撃していた病院の職員から情報を聞きつつ、診療にあたっています。「酸素10Lで開始、静脈路確保して(生理食塩液の)点滴を全開で」《男性が受傷したところを目撃した病院職員からの情報》24歳の男性です。委託の清掃会社で働いています。先程、病院の窓の清掃中に、2階の窓から転落しました。足から落ちたのですが、花壇の縁石に左胸をぶつけたようです。目撃した職員が、すぐ近くを通りかかった医師を呼び止め、すぐに病院のスタッフを集めてストレッチャーで救急外来に運びました。内科医は、変形した左足を横目に、脈をとりながら胸や腹部の診察を行っています。傍らには超音波の機器が置いてあり、放射線技師がポータブルで胸部と骨盤のレントゲンを撮影し終わりました。「何やってんだ!痛いのはそこじゃない!足が痛いんだ...!」そう叫び終えるとその男性は1度嘔吐しました。するとまもなく静かになり暴れなくなりました。(やっと落ち着いたのかしら...)遠くで見ていたあなたはちょっと安心しました。しかし、そんなあなたとは対照的に、救急外来は慌ただしさを増し、内科医が指示を出しています。「メス、トロッカー※1、(気管)挿管の準備をはじめて!静脈路をもう1か所確保して!!」モニターに目を移したあなたは背筋がゾッとしました〈表2〉。※1:胸腔ドレナージチューブのことPrimary surveyとSecondary surveyとTertiary survey第2回バイタルサインの測定法で述べた通り、急を要するときというのは、気道・呼吸・循環に異常がある場合です。その評価をする目的でバイタルサインと呼ばれる5つの生命徴候(呼吸・脈拍・血圧・体温・意識レベル)をチェックします。これらの生理学的徴候に異常を来している場合に急を要すると判断しますが、これは、内因性の疾患(病気)に限らず外傷の診療でも同じことが言えます。外傷患者に対する初期診療は、3段階に分かれます。第1段階はprimary surveyと呼ばれ、生命を維持するのに必要な生理機能(気道・呼吸・循環・中枢神経)の評価と治療を行います。もしこの段階で異常があれば、この時点でどの臓器にどんな外傷がどの程度あるのかなど具体的に診断できていなくても、直ちに生命徴候の異常を改善するように治療を開始します。上記の生理機能が安定すれば、次は第2段階secondary surveyに移ります。詳しく受傷の状況や病歴などを確認し、頭からつま先、背部に至るまでくまなく全身の診察を行いCTなどの画像診断を含め各種検査を行って、どの臓器にどんな外傷がどの程度あるのかを具体的に検索します。もちろんこの段階で生命徴候の異常が出現すれば、primary surveyに逆戻りします。そして第3段階のtertiary surveyでは、見落としがないかどうかを再度確認します。初期診療においては、生命を維持するのに必要な生理機能の異常を素早く察知して、その異常を正常化させること(primary surveyとその段階での初期治療)が救命のために大切であることを強調したいと思います。

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保険薬局協会が「公平な調剤報酬」求め要望書を提出【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第25回

「非薬剤師による調剤が可能」と明らかにした「0402通知」の発出、財務省での社会保障の議論など、2020年度診療報酬改定に向けた動きが着々と進んでいます。その報酬改定に関して、日本保険薬局協会(NPhA)が要望書を提出しました。日本保険薬局協会は5月9日、2020年度診療報酬改定に向けた要望書を厚労省に提出したと発表した。2016年度調剤報酬改定以降、一定規模以上の規模の薬局グループに対して調剤基本料の減算の流れが続いていることを「複雑化し、不公正な状況をもたらしている」と指摘。そのうえで、地域支援体制加算の要件について触れ、「各薬局、薬剤師が果たしている機能に応じた公正な調剤報酬に改定するよう」求めた。(2019年5月13日付 ミクスOnline)日本保険薬局協会は、保険薬局が中心となって2004年に設立された団体です。2018年4月時点での会員数(法人数)は、賛助会員を合わせると477法人となっています。日本薬剤師会が、中小の薬局の会員が多く、病院も含めた薬剤師全体の職能団体であるのに対し、日本保険薬局協会は、比較的店舗数が多い中堅以上の保険薬局チェーンを中心とした団体といえます。この日本保険薬局協会が示した地域支援体制加算の要件とはどのようなものなのでしょうか。立地や法人の規模で算定できる地域支援体制加算は「不公平」まず、地域支援体制加算とは、2018年度改定で新設された加算で、それ以前の基準調剤加算を踏襲し、より地域医療に貢献する薬局を評価する目的で新設されたものです。しかし、ふたを開けてみると、調剤基本料1を算定する保険薬局とそれ以外の薬局における難易度には雲泥の差があり、算定の実態から「調剤基本料1を算定しなければ取れない加算」、さらには「調剤基本料1を算定していれば取れる加算」とまでいわれる点数となりました。日本保険薬局協会は、「地域医療への貢献実績がなくても立地や法人の規模で算定できる地域支援体制加算は公平ではない」と指摘し、調剤基本料1以外の場合の既存8要件に「健康サポート薬局」「24時間開局」「地域ケア会議などへの参加」「AMR対策に関する啓発活動」などを加え、そのうち8つの要件を満たすことで算定を可能とすることを要望しています。また、地域支援体制加算以外にも、以下のような要望を提出したと報じられています。かかりつけ薬剤師指導料の算定要件に関して、勤務時間を女性活躍の視点から32時間から30時間に緩和すること調剤基本料を決める処方箋集中率の計算において、在宅関連点数に関わる処方箋を含めること認知症患者に対する在宅業務の重要性を評価する加算制度の創設吸入薬の服薬指導加算の創設医療機関、薬局間におけるプロトコル締結、運用の推進およびその評価薬局薬剤師によるポリファーマシー介入に対する評価ICT技術の活用要は、日本保険薬局協会は、薬局の立地ではなく、それぞれの薬局の機能や薬剤師が果たしている業務について評価することを求めているといえます。薬局はその医療環境によって特色があって当然だと私は思っているので、吸入指導や認知症対応、AMR対策などさまざまな評価項目があるのはよいことなのではないかと思います。立地や会社規模は関係なく、機能で勝負するために薬局を地域に適した方向に舵取りするということは、患者さんにとっても、そして現場で頑張る薬剤師にとってもメリットがあることなのではないでしょうか。

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第39回 札束の入った封筒を渡されたら【週刊・川添ラヂオ】

動画解説まるで自分の孫のことのように川添先生の結婚報告を喜んでくれた患者さん。彼女の認知機能がだんだんと低下していくのを目の当たりにした先生は…。在宅訪問を開始した98年に出会った高齢患者さんのエピソードをお話しします。今ならもっとできることがあったはず!患者さんの認知症にいち早く気が付く方法もご紹介。

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第20回 意識消失発作の症例から学ぶ脈拍の異常2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍の異常を来した患者さん2例を紹介します。脈の乱れは「不整脈」といわれ、その不整脈が徐脈であっても頻脈であっても、患者さんの状態が「不安定」であるときに急を要します。徐脈や頻脈が認められた時、どのような点に気を付けて患者さんと接することがポイントになるでしょうか?症例を通してシミュレーションしていきましよう。患者さんGの場合◎経過──156歳、女性。施設の介護職員です。勉強会が終了し後片付けをしていたときに急に動悸が始まって、倒れそうになりました。椅子に座り苦しそうにしています。「どうしたの?大丈夫?」と職員が心配して集まってきました。◎経過──2Gさんは、以前から動悸を自覚することがあり、病院では「WPW症候群※1、発作性頻拍症」と診断されていると話してくれました。今までは動悸が長く続くことがなかったため経過を見ていました。「今日は少しひどいみたい...」その日は休みだったのですが、勉強会のために施設に来ました。今は夕方ですが、その日に限って昼食はまだ食べておらず水分もあまり摂っていなかったそうです。顔色は蒼白で冷汗をかいています。脈は非常に速くて弱く不規則でした。なんとなく少しボーッとしています。(ショックの徴候かも...)そう思いました。バイタルサインは表の通りで、顕著な頻脈の他に血圧低下が認められました。総合的にみて「循環(C:circulation)」の異常があります。※1 Wolf-Parkinson-White syndrome:ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群正常な刺激伝導(電気信号の流れるルート)では、洞結節から発した電気信号は心房から房室結節を経て心室へ至る。しかし同症候群では、通常のルート以外にKent(ケント)束と呼ばれるバイパス(副伝導路)を有するため、心室への信号は房室結節とKent束を経由することになり、心電図上デルタ波と呼ばれる波形が生じる。副伝導路が存在するため、発作性上室性頻拍を来すことがある。◎経過──3勉強会後に一時席を外していた医師と看護師が戻ってきました。WPW症候群と診断されていることを聞き、Gさんの状態とバイタルサインを見て、救急車を呼ぶことにしました。医師の指示を受けた看護師は静脈路を確保しました。まもなく救急車が到着し心電図モニターを開始しました。「偽性心室頻拍※2ですね...」医師はそう言って、近隣の病院へと向かいました。※2 WPW症候群で心房細動発作が起こると、心房からの頻回の電気信号が、信号を通しやすい副伝導路を通り心室へと伝わる。デルタ波があるために、発作時のQRS幅が広く、心室頻拍のような心電図波形を示すことから「偽性心室頻拍」と呼ばれる。心室細動に移行する危険があるため緊急を要する場合が多い。頻脈に対する診療アルゴリズム図4は頻脈の診療アルゴリズムです。頻脈が確認されたら患者さんの状態が不安定か否かを確認します。図4にあるような症状や徴候があれば「不安定」な状態と考えられ、直ちに治療を開始します。ご覧の通り、不安定か否かを判断する基準は徐脈の場合と同じですね。エピローグ頻脈のGさんは、病院に搬送された後、救急外来で抗不整脈薬による治療を受けました。その日、大事をとって入院し、後日カテーテルアブレーション※3の治療を受けました。退院後、施設に薬を届けに行くとGさんは「あなたがいる所にはいろいろ事件が起こるわね」と冗談交じりに笑顔で話しかけてくれました。※3 経皮的にカテーテルを心臓内部の標的部位に挿入し、高周波通電を行い、頻脈の原因となる異常興奮部位(Kent束)を電気的に焼灼する方法。頻脈性不整脈を根治する治療法。徐脈と頻脈、安定と不安定「徐脈と頻脈」といっても多くの種類の不整脈があります。どんな徐脈性不整脈や頻脈性不整脈であっても、それにより血圧などの循環動態が悪くなったり、図3や図4に示すような「不安定な状態」を示唆したりするような、バイタルサインに大きく影響するような不整脈は緊急度が高いということは、知っておくとよいと思います。

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国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」【下平博士のDIノート】第25回

国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」今回は、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アンタゴニスト製剤「レルゴリクス錠(商品名:レルミナ錠40mg)」を紹介します。本剤は、フレアアップ現象を生じることなく子宮筋腫に基づく諸症状を改善する国内初の経口薬です。<効能・効果>本剤は、子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。また、2021年12月に「子宮内膜症に基づく疼痛の改善」の適応が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはレルゴリクスとして40mgを1日1回食前に経口投与します。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行います。本剤の投与によって、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられることがあるので、6ヵ月を超える投与は原則として行われません。<副作用>国内第III相試験で認められた主な副作用は、不正子宮出血(46.8%)、ほてり(43.0%)、月経異常(15.5%)、頭痛、多汗、骨吸収試験異常(各5%以上)などでした。なお、重大な副作用としてうつ状態(1%未満)、肝機能障害(頻度不明)、狭心症(1%未満)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、下垂体に作用して卵巣からの女性ホルモンの分泌を低下させることで、子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血などの症状を改善します。2.初回は、月経が始まった日から5日目までの間に服用を開始してください。3.食後の服用では薬の効き目が低下するため、食事の30分以上前に服用してください。4.この薬を服用している間はホルモン性避妊薬以外の方法で避妊をしてください。5.長期に使用すると骨塩量が低下することがあるため、日ごろから適度な運動を心がけ、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを含む食材を積極的に取りましょう。6.気分が憂鬱になる、悲観的になる、思考力が低下する、眠れないなど、うつ様の症状が現れた場合にはご連絡ください。7.女性ホルモンの低下によって、ほてり、頭痛、多汗などの症状が現れることがあります。症状がつらいときはご相談ください。<Shimo's eyes>従来、子宮筋腫の薬物療法としてGnRHアゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリン注)やブセレリン酢酸塩(同:スプレキュア皮下注/点鼻液)などが用いられています。GnRHアゴニストは、下垂体前葉にあるGnRH受容体を継続的に刺激することで本受容体を減少させ、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制させます。投与開始初期にはFSHやLH分泌が一過性に増加するため、不正性器出血や月経症状の増悪などのフレアアップ現象が生じやすいことが知られています。これに対しGnRHアンタゴニスト製剤である本剤は、GnRH受容体を選択的に阻害することでFSHとLHの分泌を抑制します。このため、投与開始初期であってもフレアアップ現象を生じることなく女性ホルモンであるエストラジオールおよびプロゲステロンの産生を低下させます。本剤は1日1回服用の経口薬であり、子宮筋腫に伴う諸症状に悩んでいる患者さんのアドヒアランスとQOLの向上が期待できます。投与に当たっては、妊娠中や授乳中でないかを確認するとともに、服用タイミングなどの指導をしっかり行ってこまめに経過を観察するようにしましょう。※2021年12月の添付文書改訂に伴い、一部内容の修正を行いました。

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