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第28回 医薬分業批判で問われる薬剤師の反論姿勢

先週はドラマ化された漫画「アンサング・シンデレラ」をフックに薬剤師について触れたが、奇しくも記事公開日に私は久しぶりに飛行機に乗り、第53回日本薬剤師会学術大会の取材のため札幌に出張した。コロナ禍の最中ということもあり、リアルの会場とweb配信のハイブリッド方式。同大会は毎年厚生労働省(厚労省)の複数の幹部が講演することが慣例だ。今回はそのうちの一人として薬系技官の頂点にいる山本史・厚労省大臣官房審議官(医薬担当)が「薬機法改正における薬局への期待」と題して講演した。その中で山本氏は現在の保険調剤薬局の在り方について「点数を付けたことしかやらない」とかなり辛辣な一言を放った。実は医薬分業とその最前線にいる保険調剤薬局についてかなり厳しい指摘をする俗称「分業バッシング」は主に2つの方面から聞こえてくる。ちなみに念のため言葉の定義を明らかにしておくと、バッシングとは特定の個人や組織・集団に対する過剰あるいは根拠のない批判を指す。おおむね「分業バッシング」は過剰な批判と捉えていいだろう。その2つの方面だが、1つは日本医師会(日医)である。昨今の出来事で言えば、2014年に日医会長に当選した横倉 義武氏(前会長)が就任早々、「医薬分業が国民のためになったのか、よく考えないといけない」と発言。その後、2017年に厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会でスタートした薬機法改正議論では、日医・横倉執行部で当時副会長の地位にあり、今年6月から会長に就任した中川 俊男氏が激しい分業批判を展開した。端的に言えば、病院薬剤部と院外の保険調剤薬局で技術的な差は少ないにもかかわらず、分業の中心を担う保険調剤薬局に対する調剤報酬が高すぎるという指摘である。そしてもう1つの方面は冒頭で紹介した山本審議官のような厚労省の中の人、よりスペシフィックに言えば薬局薬剤師にとって「身内」とも言える薬系技官である。たとえば、前述の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で中川氏が分業批判を展開した際は、薬機法改正で薬剤師が患者の服薬期間中、つまり薬を渡した後の薬学的管理を法律上で明文化しようという議論が進んでいた。中川氏はこれに疑問を呈した。要は明文化するまでもなくやるべき業務であり、法律条文に書き込むのは違和感があるという主張だ。これに対し、同部会で薬系技官でもある厚労省監視指導・麻薬対策課長(現・日本薬剤師会専務理事)の磯部 総一郎氏は「本来、これは先生がおっしゃるように、薬剤師の意識でこういうものは当然やっていくものだと私は思います。ただ、なかなかうまく改革がいかないということで…」と薬剤師に批判的な視座を示している。また、2014年以降の日医方面からのバッシングが始まってからは、薬剤師が中心となる学会で講演する薬系技官は人が変われど「分業を支持するエビデンスの構築を」と繰り返し訴えている。これは激励にも受け止められるが、裏を返せば「十分にやれていない」という批判とも解釈できる。実際、私もある薬系技官から「今の状況では医薬分業に反対する人たちを説得できるに十分なデータがない」とぼやきを聞かされたことがある。ちなみにこれに加えて、私などもそのクラスターに入る医療系専門メディアも、バッシングする側の見解を頻繁に報じるという観点から、同じ穴のムジナ的に薬剤師の方々からは捉えられることがある。その意味では3方面からのバッシングであるという見方もある。医薬分業批判その1:薬剤師の本気が見えないとはいえ、医療専門メディアも含めた3方面が同じ視座で「分業バッシング」を行っているかと言えば、そうではない。やや雑駁に言えば日医の立脚点は社会保障費の中で医科診療報酬と調剤報酬をどう配分するかの陣取り合戦、下世話に言えば「俺の財布により多く」である。これに対し、そもそも医薬分業を調剤報酬で誘導してきた側の核にいる厚労省の薬系技官は「可愛さ余って憎さ百倍」あるいは「近親憎悪」ともいうべきもの。医薬分業を推進したい、あるいは薬剤師の地位向上を目指したいと思っているのに薬剤師業界全体としてはその期待値に応えていないという類のものだ。そして医療専門メディアの視座もこの厚労省薬系技官とほぼ同様と言っていいだろう。実際、私個人に関してもそうした思いはある。ちなみに中川氏が分業批判を展開した制度部会では、中川氏並に辛辣な意見を展開した委員がいる。患者団体・認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)・理事長の山口 育子氏である。中川氏が分業批判を展開する中で、日本薬剤師会(日薬)から参加していた委員である同会副会長(当時)の乾 英夫氏が、一元的な薬剤管理といったかかりつけ機能としての薬局・薬剤師のメリットを強調した際、山口氏は次のような意見を表明した。「乾委員がおっしゃったことは、かかりつけ薬剤師・薬局の機能がうまくいった場合には効果があると思いますが、その一方で、機能を果たせていない薬局が多いことが問題であり、医薬分業はかなり瀬戸際に来ているのではないかと感じています」こうした山口氏の意見もおおむね薬系技官や医療専門メディアが薬剤師業界を見る目と似ている。もっと平たく言えば、これらの人たちは薬剤師が本気になればここまでこんなことができるはずという構想・理想がある中で、現状の業界平均値はそこからあまりにも乖離が大きすぎるという苛立ちを表現したものだともいえる。医薬分業批判その2:批判を無視する薬剤師会のスタンスこういった周囲の見方には、薬剤師の世界の中でも様さまざまな意見はあるだろう。そうした意見は、いくつか類型に集約することができるように感じているが、その個々に対して細かくどうこう言うつもりはない。ただ、昨今この界隈を見ていて思うことがある。それはいわゆる分業バッシングを「単なる医師会のポジショントークだから無視しておけばいい」との考えが薬剤師業界の中にそこそこに見受けられることへの懸念である。一見するとこのスタンスは「大人の対応」とも言えるし、まったく的外れな見方ではない。もっといえば薬剤師業界の総本部ともいえる日薬がこのスタンスである。しかし、この姿勢は一歩間違えれば取り返しのつかない事態を招く危険がある。そもそも前述の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では中川氏、山口氏といった分業批判の「急先鋒」だった委員以外にも有識者、患者団体、メディアから参加した委員が、医薬分業にとくにメリットを感じていないという「漠然とした不満感」が相次いで表明された。この状態は例えて言うと、4階建ての建物の1階でガス管からシューシューガスが漏れ(中川氏・山口氏による批判)、2~4階(有識者、患者団体、メディアから参加した委員)に徐々にガスが広がり始めている状態である。このまま時間が経過し、誰かが火種を近づければ一気に大爆発してしまう。実はこれは本格的なバッシングが起こる前夜の状況である。情報流通の側にいる自分はバッシングが起こる状況は人並み以上に理解しているつもりである。大概は多くの人が明快な言葉にしきれない漠然とした不満を抱いている状況に、それを表現する明快な言葉・エビデンスを投じた時がバッシングの起こる時である。では、そうした火種は薬剤師を巡る世界にあるのだろうか?私はそこそこにあると思っている。医薬分業批判その3:ヒヤリ・ハットすら点数ノルマ化薬剤師の方々は、日本医療機能評価機構が2009年からスタートさせた「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」はご存じだろう。全国の薬局から事例を収集・分析して、広く薬局医療安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、医療安全対策の一層の推進を図ることを目的とした事業だ。日薬を中心に各薬局に参加を呼び掛けたこの事業は、初年度の2009年の参加薬局は1774軒、報告されたヒヤリ・ハットは1460件。スタートから9年目の2017年の参加薬局は1万1400軒、報告されたヒヤリ・ハットは6084件だった。参加薬局は9年で6倍となったが、そもそも日本国内にある薬局軒数が約6万軒弱であることを考えればやや寂しい数字だ。ところが2018年には参加薬局数は一気に3倍近い3万3083軒、 2019年には3万8677 軒、ヒヤリ・ハットの報告数はそれぞれ7万9973件、14万4848件に増加した。何があったのか?単純で2018年4月の調剤報酬改定の際に地域医療に貢献する体制が有る薬局で算定できる「地域支援体制加算」の算定要件にこのヒヤリ・ハット報告が含まれるようになったからである。冒頭の山本氏の言葉を借りれば、「点数がつくからやった」のである。2019年実績から考えれば参加薬局1軒あたり年間4件弱のヒヤリ・ハット事例の報告があることになる。この数が多いかどうかはここでは評価するつもりはない。むしろ医療安全にとって極めて重要なヒヤリ・ハット情報を年4件弱報告することはお金をもらわねばやれないほど大変なことなのだろうか?ちなみに2018年からこの事業に参加した薬局・薬剤師の皆さんには敢えて次の一文を読んでもらいたい。「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」言わずと知れた薬剤師法第一条である。2018年から参加した薬局・薬剤師は、私から言わせれば、夏休み終了数日前から慌てて白紙の宿題をやり始める学生のようなもの。そこに「公衆衛生の向上及び増進に寄与し」という姿勢はみじんも感じない。薬剤師は正しくも“勝つ”戦略を考えてほしいと、ここまでかなり厳しく書いた。では、もし日医による分業バッシングが一般にも静かに浸透していった時に、今書いたような実態を一般向けに柔らかくして報じたらどうなるだろう。それは幅広いバッシングにつながり、さらにそのバッシングの核になる主張に多少の間違い・誤解があっても、まるで事実のように広がって定着する「インフォデミック」が起きてしまう危険性が十分ある。こういう動きは一旦始まったら周囲ではほぼ止めようがなくなるのが最も怖いことなのである。ところがこうした懸念を伝えてもピンとこない薬剤師は意外に少なくない。私個人の印象では薬剤師は医師などと比べおとなし目の人が多い。しかし、現在言われている分業バッシング・批判が的外れな場合は、薬剤師も個人・組織の双方から即時に反論していく姿勢が必要だと考える。嫌な言い方だが、世では常に「相手の弱いところを見つけて攻撃する」慣習は消えない。これは私がもう一つの取材領域にしている国際紛争でもよく目にする。多くの場合、開戦に踏み切る側は相手の反撃能力が低いことを見越して攻撃に映る。残念ながら弱いと思われたら攻撃を受けるのである。それでもそれにじっと耐えきれば何らかの利益が得られるならば、それも良いかもしれない。しかし、現在のように将来的な社会保障費のひっ迫が見え、各当事者が財布の奪い合いをしている中では、もし前述のような大規模なバッシングにつながるようなことが起これば、弱いところが割を食うことになり、その面でおとなし目の薬剤師業界は長期的にはかなりの浸食を受ける恐れもある。それでも「目の前の患者さんに誠心誠意接していれば…」という人もいるかもしれない。それはそうだが、これまた嫌な言い方だが、世の中は「正しいことを行う者が常に勝つ」ともならないのが現実である。よりベストは「正しいことを行う者が正しい戦略で進めば勝つ」だが、実際には「ちょっと正当性に疑問符が付くが、正しい戦略で進んだ結果勝った」というケースはごまんとある。日本の戦国時代の歴史として語られる織田信長→豊臣秀吉→徳川家康という政権変遷も、ズバリ言ってしまえば血統・系統の正当性ではなく、戦略の正当性の結果である。その意味で繰り返しになるが、今の分業を巡る議論を俯瞰すると私は嫌な空気しか感じない。私が考える最悪の想定が外れることを願いたいが、こと薬剤師の皆さんにはこうした見方もあるのだということをちょっとは心に留めておいて欲しいと思う今日この頃である。

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コロナ禍の医療者への不当な扱い、励ましの実態とは/医師500人の回答結果

 ケアネットと病院経営支援システムを開発・提供するメディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、医師・病院関係者が新型コロナウイルス感染症に対応する中で、どのような体験をしたかを調べる共同調査を実施した。その結果、医師・病院関係者の子どもが登園・登校を控えるよう要請されるなど誤解や過剰反応からの体験があった半面、地域住民や企業からの応援メッセージが届き、励まされるなどの体験が倍以上あったことが明らかとなった。励ましが差別や不当な扱いを大幅に上回る この調査はWEBを通じて実施し、ケアネットは会員医師511人(アンケート期間:9月30日のみ)、MDVは110病院(同:9月30日~10月7日)から回答を得た。  「コロナ禍の下でどのような体験をされましたか」という質問について、ケアネット会員医師は、「差別や不当な扱いと感じる体験をした」が7.4%(38人)、「周囲から励まされるなどの体験をした」が27.6%(141人)、「とくになし」が66.3%(339人)だった。差別や不当な扱いと感じる体験をした方の内訳は、本人が6.7%(34人)、家族が2.2%(11人)で、本人・家族いずれもと回答したのは6人(1.1%)だった。また、自由記述で聞いた体験内容は以下のとおり。・実際には(PCR検査)陰性だったが、あたかもコロナに感染したかのような扱いを受けた・医療関係者かどうかを尋ねられた・アルバイト先から出勤を断られかけた・発熱外来をやるといったら、秘書が近寄らなくなった。1週間放置された・近所、子供の学校の先生に疎んじられた・国内での流行期前に海外渡航していたために職場で不当な差別をされた 「周囲から励まされるなどの体験をした」と回答した方は、本人が24%(123人)、家族が2.9%(15人)で、本人・家族いずれもと回答したのは2.3%(12人)だった。自由記述で聞いた体験内容は以下のとおり。・タクシー運転手に励まされた・医療に携わり、この時期大変ですねぇと励まされました・往診中にご苦労様と見知らぬ方より挨拶あり・外来の患者さんから声をかけられ、差し入れをもらうようになりました・患者から体調を気遣われた・患者さんからの感謝状・企業からの飲料水や消毒用具等の提供があった・地域の小学校、会社などから救急医療へのエールが届いた病院関係者向け調査では半数以上が励ましを受けていた MDVが行った病院関係者(本人、家族、同僚含む)向けアンケートでも同様の質問を行ったところ、「差別や不当な扱いと感じる体験をした」が24.5%(27施設)、「周囲から励まされるなどの体験をした」が51.8%(57施設)、「とくになし」が38.2%(42施設)、その他が9.1%(10施設)だった。また、差別や不当な扱いと感じる体験を自由記述で聞いたところ、「看護師の子どもさんが保育園から預かりを拒否された」「親が医療関係者なので飲食関係のアルバイトのシフトから外された」「配偶者が出勤停止となった」「病院の職員でなくてよかったなどの言葉が聞こえてきた」といった声があった。 また、「周囲から励まされるなどの体験をした」の自由記述の回答では、地域住民や企業からの激励のメッセージや寄付などが相次いでいることも明らかになった。

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非転移性去勢抵抗性前立腺がんでダロルタミドは転移無再発期間を延長(解説:宮嶋哲氏)-1297

 ダロルタミドは独自の化学構造を持つアンドロゲン受容体阻害薬であり、非転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として承認されている。 本報告は、二重盲検プラセボ対照試験で1,509例をアンドロゲン除去療法を継続しながらダロルタミドを投与する群(955例)とプラセボ投与群(554例)に2:1の割合で無作為に割り付けるARAMIS試験の主要解析に注目している。第III相試験で計画されていた主要解析では転移無再発期間中央値がダロルタミド群で40.4ヵ月とプラセボ群(18.4ヵ月)よりも有意に延長していた。主要評価項目の結果が肯定的であることが判明した後、治療割り付けの盲検を解除し、プラセボ群からダロルタミドの非盲検投与へのクロスオーバーを許可している。最終解析は約240例が死亡した後に行うこととし、その時点で全生存期間とその他の副次評価項目を評価した。 追跡期間中央値は29.0ヵ月であり、データの盲検を解除した時点でプラセボの投与を継続していた170例全例がダロルタミド投与にクロスオーバーし、盲検解除前にプラセボを中止していた患者のうち137例がダロルタミド以外の延命治療を1種類以上受けていた。3年全生存率はダロルタミド群で83%、プラセボ群で77%であり、死亡リスクは、ダロルタミド群のほうがプラセボ群よりも有意に31%低かった(HR:0.69、p=0.003)。ダロルタミドは症候性の骨関連事象発現までの期間(HR:0.65、p<0.001)や細胞傷害性化学療法開始までの期間(HR:0.58、p<0.001)など、その他すべての副次評価項目で有意に良好な成績を示していた。投与開始後の有害事象発現率は両群で同程度であった。 非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者において、投与開始して3年の時点での生存率は、ダロルタミドの投与を受けた患者のほうがプラセボの投与を受けた患者よりも有意に高かったことと、副作用の発現頻度がプラセボと同等であったことは注目に値する。 現在、アンドロゲン受容体阻害薬としてわが国でも数種類使用されているが、副作用を含めた患者QOLの面を考慮すると、薬剤の選択は慎重にならざるを得ない。本薬剤の効果を考慮すると、mHSPCを対象とした試験結果が待たれるところである。

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離島に代診で行ってみた その1【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第19回

中島みゆきさんの『銀の龍の背に乗って』を口ずさみながら、最寄りの串木野港から高速船で70分。9月の日本帰国時に、鹿児島県は甑(こしき)島の手打診療所に代診のお手伝いに行ってきました。甑島は、漫画やドラマでおなじみの『Dr.コトー診療所』(作者・山田 貴敏)のDr.コトーのモデルになった瀬戸上健二郎先生が診療に携わっていらした島で、今は私の先輩であり、CareNet.comの「一般内科医が知っておきたい他科の基本処置」の監修をされている齋藤 学先生が後任として勤務しています(もっともドラマのロケは沖縄の与那国島で行われたみたいですが)。実は甑島を訪れるのは今回で2度目、15年前の研修医の頃、1ヵ月の地域医療研修で訪れたことがあります。15年ぶりに訪れた診療所はまったく変わっておらず、懐かしい気分に包まれました。診療所の中に入るとあちこちから「先生、久しぶり~!」の声が。いや~懐かしいなぁ…見覚えのある顔がここにもそこにも…。いや、知ってる人、多すぎないか?そっか、皆ずっとここで働いてたんだ…。お世辞じゃなくて、見た目もあんまり変わっていませんでした。ただ、島には新しくスーパーができていたり、オシャレなカフェができていたり、多少の変化も見られましたが…。15年前、できたばかりの駐車場のアスファルトに、バイクのスタンドで開けちゃった穴が今もしっかりあったりして。「ああ、俺は確かに15年前、ここに来てたんだな~」と感慨に浸った気分になったりもしました。真ん中の水色が筆者です。後ろに見えるのは甑島が誇る「ナポレオン岩」です。ある日、ご近所のおじさんに夕食へ招待されました。さすが島だけあって、魚は絶品! ドイツではけっして口にすることができない料理が山ほど並べられていました。ふっと部屋の片隅に目をやると、同じ銘柄の焼酎が山積みにされて置かれていました。「ああ、先生。そいつは飲む用だよ」と言いながら、おじさんは床の間に並べられた高級そうな焼酎を指差し、「あっちの焼酎は寝かせる用」と言いました。「どんな焼酎でもさ! 15年も寝かせたら、トロ〜っとして、たまらん味になるんよ!」とうっとりした顔で語ってくれました。そうか…焼酎は15年、寝ているだけでトロミが出ておいしくなるのか…。俺は15年、アクセク働いてきたけどな~。まだトロミが出てきた実感はないな~。ドイツへ行く前も、行った後も、いつも悩んでばかりいたのですが…。焼酎が美味しくなることを15年待てるおじさんをみていると、「俺はちっせぇ男だな」と思わざるを得ませんでした。バタバタした帰国でしたが、離島でのお手伝いはいい気分転換になりました。時間ができたら、また、元気をもらいに遊びに行きたいなと思います。

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第28回 再生医療の協議会発足と“山中バッシング”に通底する官主導政策への懸念

政府の健康・医療戦略推進本部に設けられ、9月に初会合が開かれた「再生・細胞医療・遺伝子治療開発協議会」。日本再生医療学会の役員は「構成員を見ると、上から目線のメンバーばかり。政府がコントロールしようという意図が透けて見える」と話す。その一方で沸き上がっている“山中バッシング”と共に、研究者から上がるのは、再生医療の行く末を案じる懸念の声だ。厚生労働省のホームページを見ると、協議会の構成員は以下の通りだ。▽内閣官房健康・医療戦略室長(議長)▽文部科学省研究振興局長▽厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官▽厚生労働省医政局長▽経済産業省大臣官房商務・サービス審議官▽五十嵐 隆・国立研究開発法人成育医療研究センター理事長▽岩間 厚志・東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター教授▽越智 光夫・広島大学学長▽金田 安史・大阪大学理事・副学長▽齋藤 英彦・独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター名誉院長/国立研究開発法人日本医療研究開発機構再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクトプログラムディレクター▽畠 賢一郎・一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム代表理事会長。政府によるコントロールの動きは、すでに昨年から見られた。議長の和泉 洋人・首相補佐官は、不倫相手と目された大坪 寛子・厚労省大臣官房審議官(当時)と共に昨年夏、京都大学iPS細胞研究所を訪問。所長の山中 伸弥教授に対し、iPS細胞ストック事業への政府補助金削減を通告した。ストック事業を巡っては、折しも文部科学省の有識者会合で継続が認められたばかりというタイミングだった。しかも、事業の存続にかかわる重要な決定が3人だけの面談で告げられたため、山中教授は昨年11月、「透明性の高い議論で決めてほしい」と日本記者クラブの会見で訴えた。しかし、このことが永田町や霞が関の一部から反感を買った。「京大に研究費が流れ過ぎ。大坪審議官は公平にしようとした」「山中教授の人間的な魅力のなさのため、人が離れたり、資金的な援助をしようという企業や人が現れなかったりしている」という声まで上がった。“山中バッシング”の背景の一つに、iPS細胞ストック事業が日本初の試みでもあり、なかなか思うようにいかなかったことが考えられる。このような中、山中教授は研究資金集めに奔走している。2018年と2019年にはチャリティーコンサートを開き、今年4月には、iPS細胞研究所の細胞備蓄事業を引き継ぐ新財団も発足させた。ある再生医療の研究者は「山中教授は良い人だが、ストイックなので下の人が付いて行くのが大変だとは聞いている。ただ、資金はキャラクターに付くのではなく、成果に付くもの。キャラクターへの攻撃は間違った批判」と話す。“山中バッシング”と軌を一にするかのような協議会の発足。ノーベル賞で一躍脚光を浴びた日本の再生医療だが、政府がコントロールする研究の行く末は果たして…。

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第11回日本製薬医学会年次大会開催のご案内(現地/web併催)

 一般財団法人日本製薬医学会は、2020年10月30日(金)、31日(土)に東京・日本橋ライフサイエンスビルでの開催を予定していた『第11回日本製薬医学会年次大会』を現地開催及びWeb開催の併催へと変更した。Webで参加する場合、参加登録者は会期中に全セッションを随時視聴可能である。また、後日、全参加者を対象としたWeb配信も予定されている[2020年11月14日(土)~11月23日(月)]。 開催概要は以下のとおり。【日時】2020年10月30日(金)~31日(土)【参加条件】登録方法:オンライン参加登録(10月31日まで。10月19日17時までは早期割引あり)参加費:ホームページ参照【テーマ】”産官患民学”連携による製薬医学の推進〜より良い医薬品を"1日も早く"患者さんとそのご家族にお届けするために〜【大会長】小居 秀紀氏(国立精神・神経医療研究センター)【大会概要】学会初日に開催される招待講演は、「医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み」として、PMDA理事長の藤原 康弘氏に講演いただく。基調講演は、昨今ますます注目が高まっている疾患レジストリに関連し、「精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~」として、国立精神・神経医療研究センター病院長の中込 和幸氏にお願いしている。そのほか、シンポジウムでは、コロナ禍でのMA/MSL活動、医療現場と産学の協働に関するセッションや次世代医療基盤法とリアルワールドデータなどに着目した、最新の製薬医学に関連するセッションを皆さまへお届けする。【招待講演】10月30日(金) 13時10分~14時10分テーマ:医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み座長:岩本 和也氏(日本製薬医学会 理事長)演者:藤原 康弘氏(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構[PMDA]理事長)【基調講演】10月31日(土) 11時30分~12時30分テーマ:精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~座長:小居 秀紀氏(第11回日本製薬医学会年次大会 大会長/国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 情報管理・解析部長)演者:中込 和幸氏(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院長/理事)概略はこちら【お問い合わせ】一般財団法人日本製薬医学会 事務局〒108-0023 東京都港区芝浦4-15-33 芝浦清水ビル 株式会社 マディア 内E-mail:zymukyoku@japhmed.org

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ESMO2020レポート 肝胆膵腫瘍

レポーター紹介はじめにESMO VIRTUAL CONGRESS 2020はASCO 2020 Virtualに引き続き、オンラインでの開催となった。開催会場を模したトップページ上から各会場へとアクセスでき、これまでの開催のように人々が集う様子には新型コロナウイルス感染症の収束への願いが現れていた。本稿では肝胆膵領域からいくつかの演題を紹介したい。巨大肝細胞がんに対するFOLFOXを用いたHAICの有効性が示されるHepatic arterial infusion chemotherapy (HAIC) with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX) versus transarterial chemoembolization (TACE) for unresectable hepatocellular carcinoma (HCC): A randomised phase III trial 【Presentation ID:981O】Intermediate stageの手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞がんに対して行われるTACEの有効性は、巨大な肝細胞がんに対しては病勢制御割合は50%未満、全生存期間は9~13ヵ月といまだ十分とは言えない。FOLFOXを用いたHAICの第II相試験での良好な抗腫瘍効果を受けて、巨大な切除不能肝細胞がん患者におけるFOLFOXを用いたHAICおよびTACEを比較する無作為化第III相試験の結果が報告された。最大径7cm以上で大血管への浸潤もしくは肝外転移のない切除不能肝細胞がんを有する、Child-Pugh分類A、ECOG PS0または1の患者が適格とされた。登録された患者はHAIC(オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、1日目にフルオロウラシルボーラス400mg/m2、およびフルオロウラシル注入2,400mg/m2を24時間、3週間ごとに繰り返し6サイクルまで投与)またはTACE(エピルビシン50mg、ロバプラチン50mg、リピオドールおよびポリビニルアルコール粒子)に1対1で割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効割合(ORR)および安全性が評価された。データカットオフは2020年4月でフォローアップは継続されている。HAIC群に159例、TACE群に156例が登録された。患者背景に大きな差はなく、HAIC群/TACE群のHBV陽性例が88.1/90.4%、AFP 400ng/mL以上は52.2/48.1%であった。最大腫瘍径の中央値はHAIC群9.9cm(範囲:7~21.3)、TACE群9.7cm(7~19.8)であり、腫瘍数が3個以下であった症例はHAIC群51.6%、TACE群47.7%であった。治療回数の中央値はHAIC群で4回(2~5)、TACE群で2回(1~3)であった。治療のクロスオーバーはTACE群で多く、HAIC群では後治療として切除が行われた症例が多かった(p=0.004)。RECIST ver.1.1によるHAIC群のORRは45.9%とTACE群の17.9%に比べ有意に高かった(p< 0.001)。Modified RECISTによる評価でも同様にHAIC群が有意に高い結果であった(48.4% vs.32.7%、p=0.004)。主要評価項目であるOS中央値はHAIC群23.1ヵ月(95%信頼区間:18.23~27.97)、TACE群16.07ヵ月(95%信頼区間:14.26~17.88)であり、HAIC群で有意な延長を認めた(HR=0.58、95%信頼区間:18.23~27.97、p<0.001)。PFS中央値は、HAIC群9.63ヵ月(95%信頼区間:7.4~11.86)、TACE群5.4ヵ月(95%信頼区間:3.82~6.98)であり、HAIC群で有意に延長した(HR=0.55、95%信頼区間:0.43~0.71、p<0.001)。Grade3以上の治療関連有害事象はHAIC群で19%、TACE群で30%とHAIC群で少なかった(p=0.03)。巨大な切除不能肝細胞がんを有する患者に対するFOLFOXを用いたHAICはTACEに比べて有効性および安全性ともに良好であった。これまで本邦では5-FUおよびシスプラチンを併用したHAICは外科的切除およびその他の局所治療の適応とならない肝細胞がんを対象としてソラフェニブへの上乗せ効果を第III相試験で示すことができなかったことなどを含めて、標準治療とされてこなかった。しかし、今回のような巨大肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告、および門脈腫瘍栓を有する肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告などが続いており、今後の開発に注目していきたい。転移を有する膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されるThe Canadian Cancer Trials Group PA.7 trial: Results of a randomized phase II study of gemcitabine (GEM) and nab-paclitaxel (Nab-P) vs. GEM, Nab-P, durvalumab (D) and tremelimumab (T) as first line therapy in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC)【Presentation ID:LBA65】ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用療法(GnP)は転移を有する膵がんに対する標準的な1次治療として確立されている。一方で、DNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を呈する場合を除き膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は限られたものとされるが、線維芽細胞を含めた腫瘍環境因子による免疫チェックポイント阻害薬の耐性はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用により克服されるとの報告がある。これらを受け、抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(D)および抗CTLA-4抗体であるtremelimumab(T)をGnP療法に上乗せする4剤併用療法は、11例のsafety run-inコホートでの安全性が確認されたうえで、その有効性がランダム化第II相試験で検討された。試験はカナダ全域より28施設が参加し行われた。全身状態の保たれた未治療の転移のある膵管腺がんを有する患者が適格とされ、GnP群(ゲムシタビン、nab-パクリタキセルそれぞれ1,000mg/m2、125mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与、28日を1サイクル)または4剤併用群(GnP療法に加えてD 1,500mgおよびT 75mgを1日目に投与)の2群に2対1の割合でランダム割り付けされた。ECOG PS、術後補助化学療法歴の有無により層別化が行われた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、ORRが設定された。OSの中央値をGnP群8.5ヵ月に対して4剤併用群13.1ヵ月(HR=0.65)、両側αエラー0.1、統計学的検出力0.8として150イベントが必要であると算出された。データカットオフは2020年3月15日とされた。4剤併用群に119例、GnP群に61例が割り付けられ、患者背景は両群に差はなかった。ECOG PS0/1は4剤併用群で22.7/77.3%、GnP群で23/77%、術後補助化学療法歴は4剤併用群で10.1%、GnP群で11.5%が有しており、アジア人が4剤併用群に8.4%、GnP群に9.8%含まれる集団であった。主要評価項目であるOSの中央値は4剤併用群9.8ヵ月(90%信頼区間:7.2~11.2)、GnP群8.8ヵ月(90%信頼区間:8.3~12.2)であり4剤併用群の優越性は示されなかった(層別HR=0.94、90%信頼区間:0.71~1.25、p=0.72)。PFSの中央値は4剤併用群5.5ヵ月(90%信頼区間:3.8~5.7)、GnP群5.4ヵ月(90%信頼区間:3.6~6.6)であった(層別HR=0.98、90%信頼区間:0.75~1.29、p=0.91)。ORRは4剤併用群30.3%、GnP群23.0%(オッズ比1.49、90%信頼区間:0.81~2.72、p=0.28)であり、PFS、ORRいずれも両群に有意な差はなかった。治療期間中のGrade3以上の有害事象は両群に差はなく4剤併用群で84%、GnP群で76%に認められ、倦怠感、血栓塞栓イベント、敗血症などが多かった。治療期間中のGrade3以上の検査値異常はおおむね同等であったが、リンパ球減少が4剤併用群で38%、GnP群で20%と4剤併用群で有意に高かった(p=0.02)。GnP療法へのデュルバルマブおよびtremelimumabの上乗せはOS、PFS、ORRいずれにおいても有意に改善することができなかった。現在cfDNAの網羅的遺伝子解析を用いて免疫学的観点からの有効性の探索が行われている。A multi-cohort phase II study of durvalumab plus tremelimumab for the treatment of patients (pts) with advanced neuroendocrine neoplasms (NENs) of gastroenteropancreatic or lung origin: The DUNE trial (GETNE 1601)【Presentation ID:1157O】TMB(tumor mutational burden)、PD-L1蛋白発現、およびリンパ球浸潤がいずれも低い、いわゆる「cold」な腫瘍である神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害の意義は限られたものである。しかしながら昨今、免疫チェックポイント阻害薬の併用がNENに対して良好な抗腫瘍効果を報告しており、今回抗PD-L1抗体であるデュルバルマブと抗CTLA-4抗体であるtremelimumabの併用療法がマルチコホート第II相試験で検討された。標準治療後に増悪した消化管、膵または肺を原発とする進行NENを有する患者が適格とされ、C1:ソマトスタチンアナログ(SSA)および分子標的薬または化学療法の治療歴を有する定型/非定型肺カルチノイド、C2:SSAおよび分子標的薬もしくは放射性核種療法の治療歴を有するGrade1/2消化管NEN、C3:化学療法、SSA、分子標的薬のうち2~4の治療歴を有するGrade1/2膵NENおよびC4:白金製剤を含む化学療法の治療歴を有するGrade3消化管および膵NENの4つのコホートに登録された。登録された患者はデュルバルマブ1,500mgおよびtremelimumab 75mgを4週ごとに4サイクルまで投与を受けた後、デュルバルマブ単剤療法を9サイクルまで継続して投与された。主要評価項目はC1からC3ではRECIST ver.1.1による9ヵ月時点の臨床的有効割合とされ、C4では9ヵ月時点の生存割合とされた。副次評価項目として安全性、PFS、OS、ORRおよび奏効期間(duration of response:DOR)が評価された。C1からC3では臨床的有効割合の閾値を30%、期待値を50%、C4では生存割合の閾値を13%、期待値を23%とし、片側αエラーを0.05、統計学的検出力を0.8として仮説検定に必要な症例数をそれぞれ28例および30例に設定された。C1/C2/C3/C4にそれぞれ27/31/32/33例が登録され、患者背景は以下のようであった。画像を拡大するC1からC3では主要評価項目である9ヵ月時点の臨床的有効割合はC1/C2/C3で7.4/32.3/25%であった。ORRはC1/C2/C3で0/0/6.9%(RECIST ver.1.1)および7.4/0/6.3%(irRECIST)であった。PFSはC1/C2/C3で5.3ヵ月(95%信頼区間:4.52~6.06)/8.0ヵ月(95%信頼区間:4.92~11.15)/8.1ヵ月(95%信頼区間:3.80~12.46)であった。C4では主要評価項目である9ヵ月時点の生存割合は36.1%(95%信頼区間:22.9~57)であった。ORRは7.2%(RECIST ver.1.1)および9.1%(irRECIST)であった。PFSは2.5ヵ月(95%信頼区間:21.5~2.75)であった。すべてのコホートにおける有害事象は倦怠感(43.1%)、下痢(31.7%)、掻痒(23.6%)などであった。進行消化管、膵および肺原発NETに対するデュルバルマブおよびtremelimumabの併用療法の抗腫瘍効果は十分なものではなかった。WHO grade3のNENに対する併用療法は事前に設定した統計学的設定を満たす結果であり、さらなる検討に資するものであった。これまで膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍はいずれもcold tumorとされ、免疫チェックポイント阻害薬の有効性は十分に示されていない。耐性克服のひとつの方向性として併用療法に大きな期待が寄せられていたが、今回の結果もまた厳しいものであった。免疫チェックポイント阻害薬の進行中のバイオマーカーの検討の結果が待たれるとともに、その他の薬剤との併用療法の開発などにも期待し、この領域における免疫療法の開発が継続していくことに期待したい。1次治療中にも転移を有する膵がん患者のQOLは損なわれているThe QOLIXANE trial - Real life QoL and efficacy data in 1st line pancreatic cancer from the prospective platform for outcome, quality of life, and translational research on pancreatic cancer (PARAGON) registry【Presentation ID:1525O】転移を有する膵がんは病勢が早く予後は不良である。GnP療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)はMPACT試験などの結果により転移を有する膵がんに対する1次治療として確立されているが、これを受ける患者のQOLに関する報告はいまだなかった。本研究は独95施設が参加する多施設共同前向き観察研究として行われ、GnP療法を受ける転移を有する膵がんが対象とされた。主要評価項目はITT集団における3ヵ月時点でのEORTC QLQ-C30のQoL/Global Health Status(GHS、全般的健康)が維持された患者の割合とされた。ベースラインと比較してスコアの変化が10ポイント未満であった場合に「QoL/GHS Scoreは維持された」と定義された。600人が登録され、患者背景は年齢の平均は68.7歳、男性/女性が58.2/41.8%、ECOG PS 0/1/2/3が32.0/48.7/12.3/1.5%、進行/再発は85.1/13.7%、膵頭部/体部/尾部は48.7/18.2/19.2%であった。GnP療法の投与サイクル数中央値(範囲)は4.0サイクル(0~12)で、45.7%で用量調整が行われており、後治療移行割合は48.5%であった。無増悪生存期間中央値は5.85ヵ月(95%信頼区間:5.23~6.25ヵ月)、全生存期間中央値は8.91ヵ月(95%信頼区間:7.89~10.19ヵ月)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は貧血3.9%、好中球減少症5.1%、白血球減少4.3%などで、22例(3.8%)の治療関連死亡が報告された。EORTC QLQ-C30はベースラインでは588例(98%)、3ヵ月時点、293例(48.8%)で評価が可能であった。主要評価項目である3ヵ月時点でQoL/GHS Scoreが維持された患者の割合は61%であった。QoL/GHS Scoreが維持された期間の中央値は4.68ヵ月(95%信頼区間:4.04~5.59ヵ月)であった。単変量解析ではその他のサブスケールと同様にベースラインのQoL/GHS Scoreは生存に有意に寄与した(HR=0.86、p<0.0001)。多変量解析ではEORTC QLQ-C30の各サブスケールのうち、機能スケールでは身体機能(HR=0.86、0.82~0.96、p=0.004)、症状スケールでは悪心・嘔吐(HR=1.06、1.01~1.13、p=0.33)がそれぞれ生存に有意に寄与するものであった。これまでゲムシタビン単剤療法、mFOLFIRINOX療法およびオラパリブなどの第III相試験におけるQOLに関する報告はされていたものの、GnP療法を受ける転移を有する膵がん患者のQOLの情報は不足していた。今回はリアルワールドデータとしてGnP療法を受ける患者のQOLに関する検討が報告された。実臨床でも実感することであるかもしれないが、GnP療法を継続できている患者においても病勢増悪より先にQOLが低下している。転移を有する膵がんに対して、本邦でも今年ナノリポソーム型イリノテカンが承認されるなど治療の選択肢は着実に広がっている。治療をつなぐためにも、このような検討がさらに進んでいくことに期待したい。おわりに今回紹介しきれなかったが、胆道がんにおけるmFOLFIRINOX療法の有効性の報告や、欧州らしく免疫チェックポイント阻害薬以外にも多くの神経内分泌腫瘍に関する演題が多く報告されていた。ASCOに引き続くオンライン開催であったが、世界の最新のエビデンスに日本にいながらにして触れることができるなどオンラインだからこそのメリットもある。新型コロナウイルス感染症の早い収束を願うとともに、がん克服に向けた努力がさらに加速することに期待したい。

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セルメ税制の延長・拡大でスイッチOTC化は増える?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第55回

セルフメディケーション税制は、スイッチOTC医薬品を購入した際に、その購入費用が所得控除できる制度で、5年間の特例として2017年に始まりました。あまり盛り上がることもなく若干忘れられつつある気がしますが、このセルフメディケーション税制が延長・拡大しそうです。厚生労働省は21年度税制改正要望をまとめた。(中略)セルフメディケーション税制は、2017年~2021年の5年間に限って適用が認められている。厚労省は「インセンティブ効果の維持・強化が重要で、政策効果の検証を引き続き実施することが必要」とし、「2022年から5年間の延長」(2026年まで)を求める。対象品目については既存制度の対象である「スイッチOTC薬」に加えて、「非スイッチOTC薬のうち、治療・療養に使用されるものも対象とする」ことを要望する。(RISFAX 2020年9月25日)期間の延長だけではなく、対象となる医薬品の拡大や所得税控除額上限の引き上げなども要望しています。昨年の調査では、セルフメディケーション税制の認知度は71.3%と高いものの、利用意向は11.0%と低調でしたが、これが実現するとずいぶん使いやすくなりそうです。また、5月には、内閣府の規制改革推進会議において、「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大に向けた意見」が示され、スイッチOTC医薬品の開発や普及のための取り組みを求めるなど、セルフメディケーションに関する議論が活発化しています。スイッチOTCについてはもはや説明するまでもありませんが、医療用医薬品として用いられている成分を一般用医薬品へ転用することです。スイッチOTC化する成分については、以前は日本薬学会が候補成分を選定し、日本医学会などの関係医学会に意見を聞いたうえで了承していましたが、2015年6月の閣議決定を受けて、関連学会や団体、消費者などから候補成分の要望を受け付けて、医学・薬学の専門家などで構成される評価検討会議が議論、承認するという新しいスキームができました。この新しいスキームでは消費者の意見も反映されるため脚光を浴びました。しかし、実際に新しいスキームによって発売されたスイッチOTC医薬品は「フルコナゾール点鼻薬」の1成分のみです。この新しいスキームなるものは、スイッチOTC化を推進するどころか、結果的にスイッチOTC化をせき止めてしまったと言っても過言ではないかもしれません。この問題に着目した規制改革推進会議は、スイッチOTC化を推進するだけでなく、評価検討会議の役割の見直しなどセルフメディケーション全体を促進する仕組みを再構築する旨の意見を提出しています。セルフメディケーションの推進はもはや国策ですので、おそらく今後はスイッチOTC化が進むと想像できます。コロナもセルフメディケーションを推進国の政策とは別に、セルフメディケーションが進む要因として新型コロナウイルス感染症の流行も考えられます。医療機関への受診が抑制されたこともあり、軽い症状の場合は自宅での療養を選択する患者さんが多くなってきました。思ってもみなかったセルフメディケーションへの追い風で、受診しなくても購入可能なOTC医薬品の利用がさらに進むのではないかと思っています。これらの変化が実際にセルフメディケーションにどう影響するのか、そして販売する薬剤師の役割がどう変わるのか、引き続きウオッチしていきたいと思います。

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薬機法の定めるオンライン服薬指導と「0410対応」は似て非なるもの【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第21回

本年9月1日から、改正薬機法の一部が施行されました。今回施行されたものの中で、薬剤師業務に影響が大きいと考えられるのは、患者の継続的な薬学管理が義務付けられたことと、オンライン服薬指導が解禁になったことかと思います。このうちオンライン服薬指導については、新型コロナウイルスのために示された「0410対応1)」によって、すでに電話などによる服薬指導が行われているため、施行となっても大きなインパクトはなかったかもしれません。しかし、この「0410対応」は、あくまで「時限的・特例的」な取り扱いであり、原則として3ヵ月ごとに見直されることとなっており、恒久的なものではありません。麻薬・向精神薬は初診時の処方不可、要件を満たさない場合の処方上限など再周知2020年8月6日に開催された厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、当面の間「0410対応」を継続する方針となったようですが、不適切な事例も指摘されました。このような事例を踏まえ、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(事務連絡 令和2年9月4日 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)が発出されています。1.初診からの電話や情報通信機器を用いた診療に伴う処方箋により調剤を行う薬局における留意事項初診から電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医療機関に関して、4月10日付け事務連絡1.(1)に記載している以下の要件を遵守しない処方が見られたことから、薬局においても、これまでの来局の記録等から判断して疑義がある場合には、処方した医師に以下の要件を遵守しているかどうか確認すること。(1)麻薬及び向精神薬を処方してはならないこと(2)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とすること(3)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(いわゆる「ハイリスク薬」)の処方をしてはならないこと※「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」より一部抜粋これを受けて、日本薬剤師会からも「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)2)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)が発出されています。「0410対応」では、医療機関に対し初診から電話などを用いた診断や処方が認められていますが、この場合、麻薬・向精神薬は処方してはならないことや、状況によって日数の制限が設けられています。薬局では、これらの要件を必ずしも把握できるものではありませんが、疑義がある場合には医師への確認など、適切な運用に資する対応が求められています。日薬も「混同せずに運用する」よう求めている「0410対応」もオンライン服薬指導も、必要性だけでなく安全性も考慮してルールが定められています。単に電話やオンラインでの服薬指導が可能となったということではなく、正しいルールを確認しておく必要があります。今回紹介したこれらの通知も踏まえて、いま一度「0410対応」についての運用を確認するとよいでしょう。また、厚労省の事務連絡においても、薬機法改正による9月1日施行のオンライン服薬指導について言及があるとともに、日本薬剤師会の通知では、時限的・特例的な「0410対応」と薬機法に基づくオンライン服薬指導は異なることを指摘したうえで、混同せずに運用することも求めています。「0410対応」が進んでいるため、オンライン服薬指導も簡易にできるような印象を持ちますが、薬機法上のオンライン服薬指導にはさまざまな要件が設けられており、適法に運用するためにはより注意が必要です。これらの違いも意識し、内容を確認すべきでしょう。参考資料1)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いについて」(事務連絡 令和2年4月10日厚生労働省医政局医事課 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)2)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)

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売買契約が決まったのに、スタッフの大量退職で大ピンチ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第2回

第2回 売買契約が決まったのに、スタッフの大量退職で大ピンチ!漫画・イラスト:かたぎりもとこ診療所の買い手にとって、一番の価値はすでに通っている「患者さんを引き継げる」ということです。加えて、現在のスタッフを引き継げることも大きな魅力といえます。というのも、患者さんは、(売り手である)現院長やそこで働く顔なじみのスタッフへの信頼や安心感から通院しているのであり、スタッフを引き継ぐことは患者さんの離反防止にもつながるからです。また、スタッフも現院長や同僚、現在の雇用環境に満足しているからこそ働いているのです。医業承継が決まり、新院長に交代する話は、基本的に買い手との最終契約が締結されてからスタッフへ開示することが鉄則です。ここで一定の割合で発生するのが「そんな話は聞いていない! 院長が交代するなら辞めます!」と言ってスタッフが大量に離職してしまうケースです。スタッフを引き継ぎたいと考えている買い手にとって、これは大きな痛手です。実際、スタッフの離職が原因となって買い手に辞退されるケースもあるのです。では、このようなケースはどうしたら防ぐことができるでしょうか? 私たちは以下のようにアドバイスをしています。それは「最終契約を締結した後に、新院長になる方に引き継ぎ先の診療所にて数ヵ月の間アルバイトをしてもらい、スタッフとの関係性を築いたうえで情報を開示する」というものです。これでスタッフの不安を払拭し、院内での人間関係もできたタイミングでスムーズに開業することができます。設備や医療機器と違って、スタッフや患者さんは人間です。その気持ちに配慮しながら、上手にコミュニケーションをとることが開業の成功につながります。スタッフへの告知時期や方法は仲介会社などのアドバイスを受けて決定するとよいでしょう。

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Dr.飯村の英語の発音が劇的に変わるトレーニング

第1回 日本人のカタカナ英語はこんなにヤバイ!?第2回 LとRともう1つの「ラ行」第3回 BとVの違いは口の形にあらず第4回 母音はshortとlongの2つずつ覚えればOK第5回 「あ」の発音は3つにしちゃってOK第6回 多くの日本人が読めない「it」第7回 carsとcardsを区別できているか?第8回 「ん」の発音でぐっとネイティブっぽくなる第9回 poolとpull 2つの「う」をマスターする第10回 ネイティブスピードで喋るためのテクニック 学会や症例カンファレンスで必要と感じながら、なかなか習得することができない英会話。なかでも日本人に足りないとされるのは「英語で喋る力」です。もしかして英語が喋れないのは発音に自信がないからではないですか?英語の発音をきちんと理解すると自信を持って話せるだけでなく、驚くほどリスニング力も上達します。Dr.飯村が考案したこの特別なメソッドで、ネイティブのように聞こえる発音をマスターしましょう!第1回 日本人のカタカナ英語はこんなにヤバイ!?「発音記号がわからないから」「外国人っぽく喋るのは恥ずかしいから」と言って、あえて平坦なカタカナ英語を喋っていませんか?第1回では日本人にありがちなカタカナ英語が外国人に一体どのくらい伝わっているのかというヤバイ実情を解説します。この番組をきっかけにネイティブ発音をマスターしましょう!第2回 LとRともう1つの「ラ行」LとRの発音が一発で分かる、目からウロコのトレーニング法をお教えします。あなたが今使っている「L」はネイティブには「T」や「D」に聞こえているかもしれない!?そんなLの発音が今すぐできるようになる秘密の裏技も収録!練習セクションは声に出して繰り返しご覧ください。第3回 BとVの違いは口の形にあらず今回はBとVの発音の違いについて解説します。Bは日本語のバ行、Vは下唇を噛んで発音すればいいと思っていませんか?実は2つの発音の最も重要なポイントは破裂音と摩擦音という違いなんです。この違いを意識すれば、患者さんの「vein(血管)」が「bane(苦しみ)」に間違われるなんてこともなくなります。ぜひ繰り返し再生して練習してください。第4回 母音はshortとlongの2つずつ覚えればOK英語の母音にはshort vowelsとlong vowelsというまったく違う2つの読み方があります。いわゆる短母音と長母音。漢字1つの音読みと訓読みを間違えるだけで文章の意味がわからなくなってしまうのと同様に、この母音1つの読み方が違うだけで、アメリカ人はあなたの英語を聞き取ることができません。番組では「aorta」「edema」など、読み方を間違えやすい臨床英単語をご紹介します。第5回 「あ」の発音は3つにしちゃってOK英語には、「あ」に聞こえる発音記号は6つもあります。「お」っぽい「あ」、口をまるめた「あ」、曖昧な「あ」...そんなに言い分けるのは無理という人は、実はこの3つを覚えてしまえばOKという方法があります。アメリカでも若い世代を中心に発音の省略が行われており「Cot-Caught Merger」と「Short A Tensing」と呼ばれている現象です。後半ではAR、ORの音の違いを学び、発音のトレーニングをします。第6回 多くの日本人が読めない「it」itとeatの発音の違いは「イット」と「イート」という音の長さではなかった!?「い」でも「え」でもないShort Iの音は難しく感じられますが、実は私たちの生活の中にも存在する、誰でも発音できる音なのです。Short Iの発音を覚えて正確なitの発音をマスターしましょう!第7回 carsとcardsを区別できているか?今回は英語における四つ仮名「じ・ぢ・ず・づ」について解説。日本語で喋るときに四つ仮名を意識することはあまりありませんが、英語ではこれら4つの発音を間違えると意味が通じません。たとえばcarsとcardsはどう言い分ければいいでしょうか。実はその違いは明確で、練習すれば誰でも習得できる音なんです。聞けば納得、たった13分でわかる簡単な発音のコツをお教えします!第8回 「ん」の発音でぐっとネイティブっぽくなる今回は「ん」の発音について解説します。英語の”ん”はN、M、NGの3種類。実は日本語の”ん”の方がバリエーションが多いので、この3つをしっかり区別して発音しないと伝わらないことがあります。またNの周りでは様々な発音の変化が起こります。suscreenはなぜサンツクリーンと読むのか、mentalのtは読んではいけないなど、ぐっとネイティブに近づく発音のコツを教えます!第9回 poolとpull 2つの「う」をマスターするpoolとpullは「プール」と「プル」ではない!第6回で解説した“itとeat”と同様に英語は音の長さで単語を区別することはありません。いわゆる「う」のlong OOと、「うとおの間」のshort OOの発音の違いをわかりやすく解説します。また、英語にはろうそくを吹き消すような「ふ」という音も存在しません。ネイティブに伝わる「う」と「ふ」をマスターしましょう!第10回 ネイティブスピードで喋るためのテクニック最終回の目標はネイティブのような速いスピードで英語を話すこと。滑らかに喋るための発音の変化、単語の削り方のルールをお伝えします。書いてあるのにどうしても聞こえない文字ってありますよね。それ、聞こえないんじゃなくて言ってないんです!ラストには英文の症例サマリーもあるので、これまでに勉強した発音のコツを復習しながら、ぜひシャドーイングに挑戦してください!

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KRASG12C阻害薬sotorasib、進行固形がんに有望/NEJM

 複数の前治療歴のあるKRAS p.G12C変異が認められる進行固形腫瘍の患者に対し、sotorasibは、有望な抗腫瘍活性を示したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDavid S. Hong氏らによる第I相臨床試験の結果、報告された。Grade3または4の治療関連毒性作用の発生は11.6%であった。sotorasibは、開発中のKRASG12Cを選択的・不可逆的に標的とする低分子薬。KRAS変異をターゲットとしたがん治療薬は承認されていないが、KRAS p.G12C変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)では13%、大腸がんやその他のがんでは1~3%で発生が報告されているという。NEJM誌2020年9月24日号掲載の報告。sotorasibを1日1回投与し、安全性などを評価 sotorasibの第I相臨床試験は、KRAS p.G12C変異が認められる進行固形腫瘍患者を対象に行われた。被験者は、sotorasibを1日1回経口投与された。 主要評価項目は安全性。主な副次評価項目は、薬物動態および固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECISTガイドライン)バージョン1.1で評価した客観的奏効だった。治療関連有害事象は約57%で発生 被験者は計129例(NSCLC 59例、大腸がん42例、その他の腫瘍28例)で、用量漸増および拡大コホートに包含された。被験者の転移がんに対する前治療数の中央値は3(範囲:0~11)だった。 用量制限毒性や治療関連死の有害事象は認められなかった。治療関連有害事象の発生は73例(56.6%)で、そのうちGrade3または4の発生は15例(11.6%)だった。 NSCLCの患者のうち、客観的奏効(完全または部分奏効)が確認されたのは32.2%(19例)で、病勢コントロール(客観的奏効または病勢安定)が認められたのは88.1%(52例)だった。無増悪生存期間の中央値は6.3ヵ月(範囲:0.0+~14.9[+はデータカットオフ時に打ち切られた患者データが含まれていることを示す])だった。 大腸がん患者では、客観的奏効が確認されたのは7.1%(3例)、病勢コントロールは73.8%(31例)、無増悪生存期間の中央値は4.0ヵ月(範囲:0.0+~11.1+)だった。膵がん、子宮内膜がん、虫垂がん、悪性黒色腫の患者においても、奏効が認められた。

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「ウテメリン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第20回

第20回 「ウテメリン」の名称の由来は?販売名ウテメリン錠®5mg※注射剤は錠剤のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])リトドリン塩酸塩(JAN)効能又は効果切迫流・早産用法及び用量通常、1回1錠(リトドリン塩酸塩として5mg)を1日3回食後経口投与する。なお、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.強度の子宮出血、子かん、前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例、常位胎盤早期はく離、子宮内胎児死亡、その他妊娠の継続が危険と判断される患者[妊娠継続が危険と判断される。]2.重篤な甲状腺機能亢進症の患者[症状が増悪するおそれがある。]3.重篤な高血圧症の患者[過度の昇圧が起こるおそれがある。]4.重篤な心疾患の患者[心拍数増加等により症状が増悪するおそれがある。]5.重篤な糖尿病の患者[過度の血糖上昇が起こるおそれがある。また、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることもある。]6.重篤な肺高血圧症の患者[肺水腫が起こるおそれがある。]7.妊娠16週未満の妊婦8.本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者※本内容は2020年10月7日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2016年2月(改訂第5版)医薬品インタビューフォーム「ウテメリン®錠5mg」2)キッセイ薬品:製品情報

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初回訪問で服用薬の処方経緯を確認し、減薬を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第28回

 今回は、新しく担当することになった在宅患者さんの処方薬を整理した事例を紹介します。患者さんとの面談で、どのような経緯があって処方された薬剤なのかをよく確認してみると、減薬のヒントを見つけられることが多々あります。漫然処方を解消するためにも、薬剤師がヒアリングして情報収集することは非常に重要です。患者情報90歳、女性(個人在宅)基礎疾患高血圧症介護度要支援2既往歴半年前に血便あり(精査なし)訪問診療の間隔2週間に1回介護サービスの利用週1回、通所介護在宅訪問開始の理由前任の薬局が閉局したため、当薬局で引き継いだ。備考過去に降圧薬を後発医薬品に変更して血圧が上昇したことがあり、降圧薬は先発医薬品がいいというこだわりがある。処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カンデサルタン シレキセチル錠8mg 1錠 分1 朝食後3.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 1錠 分1 朝食後4.クロチアゼパム錠5mg 1錠 分1 就寝前5.ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後6.ジフェニドール塩酸塩錠25mg 3錠 分3 毎食後7.ビフィズス菌製剤散 3g 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは長年訪問診療を利用していましたが、前任の薬局が閉局したため、当薬局で引き継ぐことになりました。ご高齢者の独居ということで、これらの薬剤をしっかりと服用できているかどうか確認が必須だと考えました。初回訪問時に服薬管理状況と残薬を確認したところ、薬剤はピルケースに1週間分をセットしてご自身で管理されていました。しかし、降圧薬は飲み忘れなく服薬しているものの、他の薬剤は自己調節していました。服用理由は曖昧で、効果も評価もされないまま飲み続けていることもわかりました。そこで、患者さんとの面談で、各薬剤が処方された経緯や服薬状況、残薬を確認し、整理してみると下表のようになりました。画像を拡大するこのように、症状や処方の経緯、薬に対する考え方を聴取しました。減らせる薬剤があれば減らしたいという患者さんの想いも確認し、医師に処方整理を提案することにしました。処方提案と経過医師に、トレーシングレポートで残薬の状況と現在の服用状況を報告しました。ファモチジンとジフェニドールについては、服用していなくても症状が出ていないことから中止を提案し、クエン酸第一鉄ナトリウムについては一度血液検査をして貧血項目および血清鉄やフェリチン、総鉄結合能(TIBC)の評価を行うことを提案しました。医師より返事があり、ファモチジンとジフェニドールは中止の承認を得ることができ、クエン酸第一鉄ナトリウムについては採血して評価をするという返答がありました。患者さんからは、薬剤師に相談したことで薬剤数が減り、服薬の煩雑さが軽減されて良かったと喜んでもらえました。現在は降圧薬のみ定期内服しており、クロチアゼパム錠とビフィズス菌製剤散を頓用で継続しています。服薬アドヒアランスは維持できていて、経過も安定しています。

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1日1回投与の長時間作用型COMT阻害薬「オンジェンティス錠25mg」【下平博士のDIノート】第59回

1日1回投与の長時間作用型COMT阻害薬「オンジェンティス錠25mg」今回は、末梢COMT阻害薬「オピカポン錠(商品名:オンジェンティス錠25mg、製造販売元:小野薬品工業)」を紹介します。本剤は、血漿中レボドパの脳内移行を効率化することで、パーキンソン病の日内変動を改善してOFF時間を短縮することが期待されています。<効能・効果>本剤は、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)改善の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。なお、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩による治療において、十分な効果の得られない患者に限り使用することができます。<用法・用量>通常、成人にはオピカポンとして25mgを1日1回、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩の投与前後および食事の前後1時間以上空けて経口投与します。<安全性>国内第II相試験の安全性評価対象428例中、215例(50.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、ジスキネジア74例(17.3%)、便秘24例(5.6%)、幻覚19例(4.4%)、起立性低血圧18例(4.2%)、体重減少16例(3.7%)、悪心15例(3.5%)、幻視12例(2.8%)、口渇、傾眠各9例(2.1%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、ジスキネジア(17.3%)、幻覚(4.4%)、幻視(2.8%)、幻聴(0.7%)、せん妄(0.5%)、傾眠(2.1%)、前兆のない突発的睡眠(1.2%)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、レボドパを分解する酵素の働きを抑えることで、脳内で不足しているドパミンを増やし、レボドパ製剤の効果が低下するOFF時間を短くします。2.食事やレボドパ製剤服用の前後1時間を避けて、毎日同じ時間帯に服用する必要があります。服用タイミングが難しい場合はご相談ください。3.体が勝手に動く、耐え難い眠気が突然現れる、ギャンブルや買い物、暴食などの衝動が抑えられない、実際にはないものがあるように感じる、便秘症状が強いなど、気になる症状がある場合はご連絡ください。4.眠気、立ちくらみ、めまいなどが現れることがあるので、自動車の運転、高所での作業など、危険を伴う作業は行わないでください。また、起立性低血圧などを引き起こす可能性があるので、転倒に伴うけがには十分に注意して生活してください。<Shimo's eyes>パーキンソン病の薬物療法では、病状の進行に伴ってレボドパ製剤の作用持続時間が短縮し、症状の日内変動(wearing-off現象)が発現することがあります。そのような場合には、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬などのドパミン附随薬の併用が検討されます。本剤は、エンタカポン(商品名:コムタンほか)に続く2番目のCOMT阻害薬です。エンタカポンは、レボドパ製剤と同時に1日数回服用する必要がありますが、本剤は長時間作用型であるため1日1回投与となっています。本剤は血液脳関門(BBB)を通過せず、末梢でのレボドパ分解を抑制して脳内へのレボドパ移行率を高める薬剤です。レボドパ・カルビドパ(同:ネオドパストン、メネシットほか)または、レボドパ・ベンセラジド塩酸塩(同:マドパー、イーシー・ドパールほか)と併用して用いることで効果を発揮します。副作用では、レボドパのドパミン作動性により引き起こされるジスキネジア、幻覚、悪心、嘔吐、起立性低血圧などに注意が必要です。相互作用については、本剤はカテコール基を持つ薬物全般の代謝を阻害するため、COMTにより代謝される薬剤(アドレナリン、ノルアドレナリン、dl-イソプレナリンなど)だけでなく、MAO-B阻害薬(セレギリンなど)、三環系・四環系抗うつ薬、ノルアドレナリン取込み阻害作用あるいは放出促進作用を有する薬剤(SNRI、NaSSAなど)との併用によっても、作用が増強して血圧上昇などを引き起こす恐れがあります。また、本剤は消化管内で鉄とキレートを形成する可能性があり、本剤と鉄剤それぞれの効果が減弱する恐れがあるため、鉄剤とは少なくとも2~3時間以上空けて服用する必要があります。本剤は、1日1回1錠の投与で良好なアドヒアランスが期待できますが、毎日一定の時間帯に服用する必要があり、最適な服用タイミングは患者さんの生活リズムによって変わります。できる限り少ない負担で続けられる時間帯を確認するなど、適切なフォローを心掛けましょう。参考1)PMDA 添付文書 オンジェンティス錠25mg

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オラパリブ、去勢抵抗性前立腺がんでOS延長(PROfound)/NEJM

 3つの遺伝子(BRCA1、BRCA2、ATM)のうち1つ以上に変異のある転移のある去勢抵抗性前立腺がん男性において、PARP阻害薬オラパリブは、エンザルタミドまたはアビラテロン+prednisoneに比べ全生存(OS)期間を有意に延長し、2回目の病勢進行(PD)までの期間も長いことが、米国・ノースウェスタン大学のMaha Hussain氏らが実施した「PROfound試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月20日号に掲載された。本試験の主解析では、オラパリブは主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、進行および死亡のリスクを66%低減したと報告されている(ハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.25~0.47、p<0.001)。この時点では、主な副次評価項目の1つであるOSのデータは不十分であり、フォローアップが継続されていた。2つのコホートのOSの結果を報告 本研究は、非盲検無作為化第III相試験(AstraZenecaとMerck Sharp & Dohmeの助成による)で、対象は、エンザルタミドまたはアビラテロン+prednisoneによる治療中に病勢が進行した転移のある去勢抵抗性前立腺がんの男性で、事前に規定された15の遺伝子のうち1つ以上に変異がみられる患者387例であった。これらの患者は、BRCA1、BRCA2、ATMの3つの遺伝子のうち1つ以上に変異のある患者245例(コホートA)と、その他の12遺伝子の1つ以上に変異を有する患者142例(コホートB)に分けられた。 被験者は、オラパリブ(300mg、1日2回)の投与を受ける群(256例)または担当医選択薬(エンザルタミド[160mg、1日1回]またはアビラテロン[1,000mg、1日1回]+prednisone[5mg、1日2回])の投与を受ける群(131例、対照群)に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。一定の基準を満たし、画像検査で病勢の進行が認められた対照群の患者は、オラパリブへのクロスオーバーが許容された。 主要評価項目と他の主な副次評価項目はすでに報告済みで、今回はOSの結果が示された。66%がクロスオーバーしたが、コホートAでOSが有意に延長 対照群の66%(86/131例)がオラパリブにクロスオーバーした。 コホートAのOS期間中央値は、オラパリブ群が19.1ヵ月と、対照群の14.7ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.69、95%CI:0.50~0.97、p=0.02)。クロスオーバーで補正後のOS期間のHRは、0.42(95%CI:0.19~0.91)であった。 また、コホートBのOS期間中央値は、オラパリブ群が14.1ヵ月、対照群は11.5ヵ月であり、両群間に有意な差はなかった(HR:0.96、95%CI:0.63~1.49)。クロスオーバー補正後OS期間のHRは0.83(95%CI:0.11~5.98)だった。 コホートAとBを合わせた全体で、64%(248/387例)が死亡し、OS期間中央値はオラパリブ群が17.3ヵ月、対照群は14.0ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.61~1.03)。クロスオーバー補正後OS期間のHRは0.55(95%CI:0.29~1.06)。 コホートAのサブグループ解析では、タキサン系薬剤による治療歴のある患者は、オラパリブ群でOSが良好であり(HR:0.56、95%CI:0.38~0.84)、治療歴のない患者では差がなかった(1.03、0.57~1.92)。探索的解析では、BRCA1のみの変異を有する患者のOSのHRは0.42(95%CI:0.12~1.53)で、BRCA2変異のみの患者は0.59(037~0.95)であり、BRCA以外の遺伝子変異の患者は0.95(0.68~1.34)だった。 コホートAにおける担当医判定による2回目のPDまたは死亡までの期間は、オラパリブ群が15.5ヵ月と、対照群の10.6ヵ月よりも長く(HR:0.64、95%CI:0.45~0.93)、コホートBではそれぞれ9.9ヵ月および7.9ヵ月と差がなかったが(0.77、0.50~1.21)、全体では13.4ヵ月および9.7ヵ月であり、オラパリブ群で延長した(0.68、0.51~0.90)。 主解析のフォローアップ期間と比較して、その後の長期のフォローアップ期間に、新たな安全性シグナル(safety signal)は観察されなかった。オラパリブ群とオラパリブへクロスオーバーした患者で頻度の高い治療関連有害事象は、貧血(39%)、悪心(36%)、疲労/無力症(32%)であり、オラパリブによる貧血で治療を中止した患者は7%、好中球減少、血小板減少、悪心、嘔吐、疲労/無力症で治療中止となった患者はそれぞれ1%だった。オラパリブ群で10例(4%)、対照群で6例(5%)、オラパリブへのクロスオーバー群で3例(4%)が有害事象によって死亡し、このうち2例(オラパリブ群と対照群で1例ずつ)が治療関連死と判定された。 著者は、「これらの知見は、同じ患者集団で、オラパリブ群は対照群に比べ画像検査に基づくPFS期間が有意に延長したとの主解析の結果を支持するものである」としている。

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