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中等度~重度の外傷性脳損傷アウトカム、非制限輸血vs.制限輸血/NEJM

 貧血を伴う重度の外傷性脳損傷患者において、非制限輸血戦略は制限輸血戦略と比較して6ヵ月後の不良な神経学的アウトカムのリスクを改善することはなかった。カナダ・ラヴァル大学のAlexis F. Turgeonらが、無作為化比較試験「Hemoglobin Transfusion Threshold in Traumatic Brain Injury Optimization pragmatic trial(HEMOTION試験)」の結果を報告した。重度の外傷性脳損傷患者のアウトカムに対する制限的輸血戦略と非制限輸血戦略の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版、2024年6月13日号掲載の報告。6ヵ月後の神経学的アウトカム不良について比較検証 HEMOTION試験は、カナダ、イギリス、フランス、ブラジルの神経集中治療専門の外傷センター34施設で実施された、PROBE(Prospective Randomized Open Blinded End-Point)デザインの試験である。 研究グループは、中等度または重度の外傷性脳損傷(グラスゴー昏睡尺度[GCS、スコア範囲3~15で低スコアほど意識レベルが低いことを示す]スコア3~12)および貧血(ヘモグロビン値10g/dL以下)の18歳以上の患者を、非制限輸血戦略群(非制限群)と制限輸血戦略群(制限群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 非制限群では、ヘモグロビン値が10g/dL以下で、制限群ではヘモグロビン値が7g/dL以下で赤血球輸血を行った。 主要アウトカムは、拡張グラスゴー転帰尺度(Glasgow Outcome Scale-Extended[GOS-E]、スコア範囲:1[死亡]~8[上位の良好な回復])の評価に基づく6ヵ月後の不良なアウトカムであった。ベースライン時点で各患者の予後を3つのリスクレベル(最悪、中間、最良)に分類し、6ヵ月後のGOS-Eスコアがそれぞれ3、4、5以下であった場合に不良なアウトカムと定義した。 副次アウトカムは、6ヵ月以内の死亡、機能的自立度(Functional Independence Measure[FIM])、QOL(EQ-5D-5Lなど)、うつ病(Patient Health Questionnaire-9[PHQ-9])などであった。主要アウトカムに両群で有意差なし 2017年9月1日~2023年4月13日に、計742例が無作為化され(各群371例)、722例が主要アウトカムの解析対象集団となった。集中治療室(ICU)におけるヘモグロビン値(中央値)は、非制限群では10.8g/dL、制限群では8.8g/dLであった。 不良なアウトカムは、非制限群では364例中249例(68.4%)、制限群では358例中263例(73.5%)に認められた(制限群と非制限群の補正後絶対群間差:5.4%、95%信頼区間[CI]:-2.9~13.7)。 6ヵ月死亡率は非制限群26.8%、制限群26.3%(ハザード比:1.01、95%CI:0.76~1.35)であった。6ヵ月時の生存例において、非制限群は制限群と比較し機能的自立度やQOLの一部で良好なスコアが得られたが、輸血戦略と死亡率またはうつ病との間に関連性は認められなかった。 静脈血栓塞栓症の発現率は各群8.4%で、急性呼吸窮迫症候群は非制限群で3.3%、制限群で0.8%に発現した。 なお、著者は研究の限界として、貧血患者のみを募集し、より重度の外傷脳損傷患者を対象としたこと、ベースラインでいくつかの予後変数を含む両群間の不均衡が確認されたこと、治療の割り付けに関して診療チームに対する盲検化はできなかったことなどを挙げている。

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抗うつ薬中断後症状の発生率〜メタ解析

 抗うつ薬中断後症状は、実臨床においてさらに重要度が増しているが、その発生率は定量化されていない。抗うつ薬中断後症状の推定発生率を明らかにすることは、治療中断時に患者および臨床医、抗うつ薬治療研究者に対する有用な情報提供につながる。ドイツ・ケルン大学のJonathan Henssler氏らは、抗うつ薬とプラセボを中断した患者における抗うつ薬中断後症状の発生率を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet Psychiatry誌2024年7月号の報告。 2022年10月13日までに公表された、抗うつ薬中断後症状の発生率を評価したランダム化比較試験(RCT)、その他の比較試験、観察研究を、Medline、EMBASE、CENTRALよりシステマティックに検索した。対象研究は、精神疾患、行動障害、神経発達障害の患者を対象に、既存の抗うつ薬(抗精神病薬、リチウム、チロキシンを除く)またはプラセボの中断または漸減を調査した研究とした。新生児の研究および器質性疾患による疼痛候群などの身体症状に対して、抗うつ薬を使用した研究は除外した。研究の選択、サマリデータの抽出、バイアスリスク評価後のデータを用いて、ランダム効果メタ解析を行った。主要アウトカムは、抗うつ薬またはプラセボの中断後の症状の発生率とした。また、重度の中断後症状の発生率も分析した。方法論的変数のテストには、感度分析、メタ回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた論文6,095件から79件(RCT:44件、観察研究:35件)、2万1,002例(女性:72%、男性:28%、平均年齢:45歳、年齢範囲:19.6〜64.5)をメタ解析に含めた。・民族に関するデータは、一貫して報告されなかった。・1万6,532 例の患者が抗うつ薬を中止し、4,470 例の患者がプラセボを中止した。・1つ以上の抗うつ薬中断症状の発生率は、抗うつ薬中断群(研究グループ:62件)で0.31(95%信頼区間[CI]:0.27〜0.35)、プラセボ群(研究グループ:22件)で0.17(95%CI:0.14〜0.21)であった。・対象のRCTにおける抗うつ薬中断群とプラセボ群における中断後症状の発生率の差は、0.08(95%CI:0.04〜0.12)であった。・重度の抗うつ薬中断後症状の発生率は、抗うつ薬中断群で0.028(95%CI:0.014〜0.057)、プラセボ群で0.006(95%CI:0.002〜0.013)であった。・抗うつ薬中断後症状の発生率の高い薬剤は、desvenlafaxine、ベンラファキシン、イミプラミン、エスシタロプラムであり、重症度と関連していた薬剤は、イミプラミン、パロキセチン、desvenlafaxine、ベンラファキシンであった。・結果の異質性は、顕著であった。 著者らは、「プラセボ群における非特異的効果を考慮すると、抗うつ薬中断後症状の発生率は約15%であり、中断した患者の6〜7人に1人が影響を受けることが明らかとなった。サブグループおよび異質性の分析では、診断、投薬、試験関連特性では説明不能な因子を示唆しており、患者、臨床医、またはその両方の主観的因子が影響している可能性がある。結果を解釈するには、残存または再発の精神病理を考慮する必要があるが、本結果は、過度の不安を引き起こすことなく、抗うつ薬中断後症状の可能性に関する知見を患者、臨床医が得ることにつながるであろう」としている。

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高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024

高齢者に関わるすべての医療介護福祉専門職へ!超高齢社会を迎えたわが国では、CGAによる包括的・全人的な評価と、それに基づいた個別化された医療・ケアの提供が求められている。多職種協働により取り組む必要があり、CGAはその共通言語となる。本ガイドラインは、医師だけではなく高齢者に関わる医療介護福祉関係の多職種向けに作成した。診療やケアに幅広く活用いただきたい。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024定価1,980円(税込)判型B5判頁数102頁発行2024年6月編集長寿医療研究開発費「高齢者総合機能評価(CGA)ガイドラインの作成研究」研究班日本老年医学会国立長寿医療研究センターご購入はこちらご購入はこちら

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高齢者の重症低血糖には治療の脱厳格化も重要/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17~19日の日程で、東京国際フォーラムをメイン会場として開催された。 糖尿病患者への薬物治療では、時に重症低血糖を来し、その結果、さまざまな合併症や死亡リスクを増加させる可能性がある。また、低血糖でも無自覚性のものは夜間に起こると死亡の原因となるなど注意が必要となる。 そこで本稿では、「シンポジウム29 糖尿病治療に伴う低血糖・ライフステージごとの特徴」で発表された「高齢者の糖尿病治療における低血糖」(演者:杉本 研氏[川崎医科大学総合老年医学 教授])の概要をお届けする。高齢者糖尿病は低血糖の自覚症状が乏しい 2023年に『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が日本老年医学会と日本糖尿病学会の共同編集で発行され、杉本氏はこのガイドラインに沿って講演を行った。 同ガイドラインでは、QI-8「高齢者糖尿病の低血糖にはどのような特徴があるか?」で今回のテーマに関する事項が触れられている。低血糖の代表的な症状であるめまいや倦怠感については、高齢者では症状を自覚しにくいこと(無自覚性低血糖)、重症低血糖を起こしやすいこと、低血糖が認知症、転倒などのリスクとなり、大小血管障害の危険因子となることが記されている。とくに認知症と低血糖の関係については、認知症があると低血糖になるという側面と、低血糖があると認知症が進むという側面がある1)。そのため高齢者では血糖値は低すぎても、高すぎても問題となる。 低血糖とフレイルの関係については、低血糖が1回以上ある患者では、転倒は1.7倍、骨折は1.8倍にリスクが上がる2)こと、また低血糖はフレイル発症と関わるため、フレイル予防においても低血糖の防止が必要である。フレイルのある糖尿病患者に厳格な血糖マネジメントは必要かという点では、厳格な血糖マネジメントをしても合併症や死亡が抑制できず、重症低血糖がさらに増えることから、フレイルのある高齢者では厳格なマネジメントは必要ないとされている。そのため、高齢者糖尿病の血糖のマネジメント目標は、認知機能やADL、さらには多疾患併存状態がないかを評価したうえで設定することが推奨されている。 そのほか、重症低血糖を防ぐためには連続血糖測定(CGM)を用いた血糖マネジメントを提案すること、また血糖降下薬の選択では、SU薬、グリニド薬、超速効・速効型インスリンは重症低血糖を起こすリスクがあるため、これらの薬剤を選択する場合には低血糖に留意しながら慎重に使用する必要があることを指摘した。高齢者の重症低血糖の因子は、「70歳以上」「認知症」「CKD」など 多疾患併存疾患(multimorbidity)の患者の実態について、低血糖をターゲットに調べてみると、75歳以上で4つ以上の併存疾患がある患者で発生割合が非常に多かった一方で、重症低血糖は0.6%と多くはなかったという。 重症低血糖を起こす因子としては、「70歳以上」「認知症」「慢性腎不全(CKD)」「心不全」「悪性腫瘍」「骨折」などが挙げられている。薬剤としては「SU薬」「インスリン」「グリニド薬」「BOT療法」のほか、3剤以上の経口血糖降下薬の併用も危険因子とされている。さらに10剤以上処方されていると重症低血糖が起こるリスクも上がることからに、ポリファーマシーへの介入が低血糖の発生予防に寄与すると考えられる。 さらにアメリカ糖尿病協会(ADA)の指針についても触れ、血糖マネジメントが難しい患者、たとえば認知機能やADLの低下している患者や介護施設に入所している患者などに対しては、そもそもHbA1cの目標値を設定せず、低血糖や症候性高血糖を避けるよう求められていると説明するとともに、「治療の単純化、脱厳格化を考慮することが必要」と触れた。高齢糖尿病患者では治療の「単純化」と「脱厳格化」を考える 治療の単純化について、たとえばインスリンであれば持効型インスリンへの切り替えや注射のタイミングを睡眠前ではなく、朝に注射するように変更するなどの工夫が参考となる。 重症低血糖後の治療の脱厳格化についての研究では、5割近くのSU薬処方者が脱厳格化しているという報告があり、その実施数も増加してきている。脱厳格化する患者モデルとしては、ADLが低下している患者、CKD、うつ病、転倒の既往がある患者では実施率が高いとされ、以後の重症低血糖を減少させることにつながると考えられる。 さらに台湾の研究では、在宅サービスがあること、服薬アドヒアランスが良いと低血糖は起こりにくく、処方薬剤が5剤以上ある高齢者では在宅サービスにより介入することが低血糖発生回避につながるメリットとなることが報告されている。 最後に杉本氏は、「単に血糖値を下げるのではなく、低血糖を起こさない治療が高齢の糖尿病患者には重要であり、重症低血糖は認知症やフレイルと相互に関係している危険因子であるので、個々の患者評価が重要となる。高齢者ではHbA1cの目標値を設定する際には認知機能やADLの評価が不可欠であり、また低血糖の既往者などでは、CGMを使用してモニタリングし、TBR(Time below range:血糖が70mg/dL未満で推移する時間の割合)を減らすことが推奨される。重症低血糖の既往がある高齢患者では脱厳格化を行うことが重要な治療介入となり、ポリファーマシーに留意し、低血糖を生じやすい薬剤を中心に減薬を考慮することが必要」と述べ、講演を終えた。

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統合失調症に対する2種類の長時間作用型注射剤抗精神病薬の併用療法

 統合失調症患者のうち、複数の治療に対し抵抗性を示す患者の割合は、最大で34%といわれている。継続的かつ適切な治療が行われない場合、再発、再入院、抗精神病薬による薬物治療の効果低減、副作用リスクの上昇を来す可能性が高まる。統合失調症患者のコンプラインアンスを向上させ、臨床アウトカムやQOLの改善に対し、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の有用性が示唆されており、治療抵抗性統合失調症患者に対しては、2種類のLAI抗精神病薬を同時に投与することが推奨されている。イタリア・University of Campania Luigi VanvitelliのSalvatore Cipolla氏らは、統合失調症またはその他の精神病スペクトラム障害患者に対する2種類のLAI抗精神病薬併用に関する利用可能なエビデンスのレビューを行った。Brain Sciences誌2024年4月26日号の報告。 PRISMAステートメントに従い、2024年2月9日までに公表された2種類のLAI抗精神病薬のさまざまな組み合わせに関する研究を、PubMed、Scopus、APA PsycInfoより検索した。統合失調症および関連疾患の患者に対する2種類のLAI抗精神病薬の組み合わせとその臨床アウトカムを報告した研究を対象に含めた。 主な結果は以下のとおり。・最終分析には、ケースレポート9件、ケースシリーズ4件、観察的レトロスペクティブ研究2件を含めた。・LAI抗精神病薬の併用療法では、良好な治療反応が報告され、新規または予期せぬ副作用は報告されなかった。・さまざまな薬剤の組み合わせが使用されていた、アリピプラゾール水和物とパリペリドンパルミチン酸月1回(32回)の併用が最も多かった。 著者らは「2種類のLAI抗精神病薬による治療レジメンは、すでに多くの臨床現場で用いられており、統合失調症スペクトラム障害の治療に有用であり、効果的かつ比較的に安全な治療戦略であると認識されている」としている。

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初発統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤と経口剤抗精神病薬の有用性〜メタ解析

 長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAI)は、慢性期統合失調症患者の再発および入院の予防に対し、経口抗精神病薬(OAP)よりも優れていることが示唆されているが、初発や最近発症した統合失調症、つまり早期段階の統合失調症患者におけるエビデンスは、明確ではない。イタリア・ヴェローナ大学のGiovanni Vita氏らは、早期段階の統合失調症患者の維持療法におけるLAIとOAP治療による中長期の相対的な有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2024年6月2日号の報告。 早期段階の統合失調症の維持療法におけるLAIとOAP治療を比較した直接比較ランダム化比較試験(RCT)を、主要な電子データベースより検索し、ペアワイズランダム効果メタアナリシスを実施した。研究のエンドポイントで測定された再発/入院および忍容性(すべての原因による治療中止)を共通の主要アウトカムとし、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。サブグループ解析では、LAIとOAP治療間の有効性および忍容性の差を緩和する因子の特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・直接比較RCT 11件(2,374例、年齢中央値:25.2歳、男性の割合:68.4%、罹病期間中央値:45.8週間)が特定された。・13〜104週間(中央値:78週間)にわたり、LAIとOAP治療との間で、再発/入院予防(RR=0.79、95%CI:0.58〜1.06、p=0.13)、忍容性(RR=0.92、95%CI:0.80〜1.05、p=0.20)に有意な差は認められなかった。・対象試験の方法論および患者集団に関しては、非常に異質であった。・安定した患者(RR=0.65、95%CI:0.45〜0.92)、実用的な試験デザイン(RR=0.67、95%CI:0.54〜0.82)、厳格なITTアプローチ(RR=0.64、95%CI:0.52〜0.80)の研究において、LAIは再発/入院の予防に対しOAPよりも優れた結果が認められた。・LAIは、統合失調症患者のみを対象(RR=0.87、95%CI:0.79〜0.95)、罹病期間が長い(RR=0.88、95%CI:0.80〜0.97)、不安定な患者(RR=0.89、95%CI:0.81〜0.99)、LAIの補充療法としてのOAP使用可能(RR=0.90、95%CI:0.81〜0.99)とした研究において、忍容性の向上が認められた。 著者らは、「全体としてLAIとOAP治療は、初発統合失調症患者の再発/入院の予防や忍容性の関して有意な差が認められなかったが、サブグループ解析では、いくつかの場合において、LAIはOAPよりも優れていることが示されており、OAPがLAIよりも優れている点は見当たらなかった。初発統合失調症患者におけるLAIとOAPの違いをさらに明らかとするためにも、より質の高い実用的な研究が求められる」としている。

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統合失調症うつ病の治療ガイドライン普及が睡眠薬処方に及ぼす影響

 信州大学の中村 敏範氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」が、日本における統合失調症およびうつ病に対する、精神科医による睡眠薬の処方や処方する睡眠薬の種類に及ぼす影響を調査した。これは、精神疾患の治療ガイドラインによる教育が、精神科医の睡眠薬処方に及ぼす影響を評価した、初めての研究である。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。 EGUIDEプロジェクトは、日本における統合失調症うつ病のエビデンスに基づく臨床ガイドラインに関する、全国的なプロスペクティブ研究である。2016〜21年にEGUIDEプロジェクト参加施設から退院した患者を対象に、臨床データと処方データを用いて、睡眠薬の処方状況を調査した。EGUIDEプロジェクトに参加している精神科医から処方された患者と参加していない精神科医から処方された患者における、睡眠薬の処方率および各タイプの睡眠薬の処方率を比較した。睡眠薬のタイプは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬、非ベンゾジアゼピン受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬に分類した。EGUIDEプロジェクトが睡眠薬処方に及ぼす影響を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、統合失調症患者1万2,161例、うつ病患者6,167例。・EGUIDEプロジェクトに参加した精神科医は、統合失調症患者およびうつ病患者に対し、睡眠薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率が有意に低かった(各々、p<0.001)。 著者らは「EGUIDEプロジェクトは、睡眠薬の処方、とくにベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率削減に、重要な役割を果たしていると考えられる。本結果は、EGUIDEプロジェクトが治療行動の改善に寄与する可能性を示唆している」としている。

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日本人高齢者におけるうつ病、認知症、死亡リスクの関係〜JAGES縦断的研究

 日本人高齢者を対象とした全国コホートに基づき、中国・広東薬科大学のShan Wu氏らは、うつ病、認知症、すべての原因による死亡率の関連および用量反応関係を調査した。The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences誌オンライン版2024年5月23日号の報告。 2010〜19年に実施された日本老年学的評価研究(JAGES)の65歳以上の参加者4万4,546例を対象に縦断的研究を実施した。抑うつ症状は老年期うつ病評価尺度(GDS-15)、認知症は公的な長期介護保険(LTCI)を用いて評価した。うつ病の重症度が認知症の発症率およびすべての原因による死亡率に及ぼす影響を評価するため、Fine-gray modelおよびCox比例ハザードモデルをそれぞれ用いた。認知症を介したうつ病とすべての原因による死亡率との関連性の評価には、因果媒介分析(CMA)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・軽度および重度の抑うつ症状は、いずれも認知症累積発症率およびすべての原因による死亡率と関連しており、とくに重度の抑うつ症状で関連が認められた(p<0.001)。・認知症の多変量調整ハザード比(HR)は、非うつ病患者と比較し、軽度うつ病患者で1.25(95%信頼区間[CI]:1.19〜1.32)、重度うつ病患者で1.42(95%CI:1.30〜1.54)であった(p for trend<0.001)。・すべての原因による死亡率の多変量調整HRは、非うつ病患者と比較し、軽度うつ病患者で1.27(95%CI:1.21〜1.33)、重度うつ病患者で1.51(95%CI:1.41〜1.62)であった(p for trend<0.001)。・年齢が若いほど、うつ病は認知症およびすべての原因による死亡率に強い影響を及ぼした。・認知症は、うつ病とすべての原因による死亡率の関連性を有意に媒介していることが示唆された。 著者らは「認知症や早期死亡を予防するために、重度のうつ病を標的とした介入は効果的な戦略となる可能性が示唆された」としている。

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睡眠時無呼吸は将来の入院リスクと関連

 睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では症状がない人に比べて、将来、病気で入院するオッズが21%高いことが新たな研究で明らかになった。この研究を実施した米フロリダ大学医学部のChristopher Kaufmann氏は、「この結果は、過体重、健康不良、うつ病といった医療サービス利用の増加に寄与する可能性のある因子を考慮した後でも変わらなかった」と話している。この研究結果は、米国睡眠学会および睡眠研究学会の年次総会(SLEEP 2024、6月1〜5日、米ヒューストン)で発表され、要旨が「Sleep」5月増刊号1に掲載された。 睡眠時無呼吸は、睡眠中に呼吸停止が繰り返し起こることで眠りが妨げられる症状を指し、閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸に大別される。症例が多いのは閉塞性睡眠時無呼吸であり、睡眠中に空気の通り道である上気道が閉塞して呼吸が停止することで発生する。睡眠時無呼吸を未治療でおくと、高血圧、冠動脈疾患、心房細動、脳卒中、2型糖尿病などの健康問題を招く恐れがあることが知られている。 Kaufmann氏らの研究では、加齢に伴い生じる健康問題に関する研究であるHealth and Retirement Studyの2016年と2018年の調査に参加した50歳以上の成人2万115人のデータが分析された。調査参加者は、2016年の調査で睡眠時無呼吸も含めた睡眠障害の有無について、2018年の調査では、その後の医療サービスの利用(入院、在宅医療、ナーシングホームの利用など)の有無について尋ねられていた。参加者の11.8%が睡眠時無呼吸を有していることを報告していた。 人口統計学的属性やBMI、健康状態、抑うつ症状の有無で調整して解析した結果、2016年の時点で睡眠時無呼吸を有していた人では有していなかった人に比べて、2018年に医療サービスの利用を報告するオッズが21%有意に高いことが明らかになった(調整オッズ比1.21、95%信頼区間1.02〜1.43)。医療サービスの中では、入院のオッズが有意に高かったが(同1.21、1.02〜1.44)、在宅医療の利用に有意差は認められなかった(同1.23、0.99〜1.54)。 Kaufmann氏は学会のニュースリリースの中で、「われわれの研究では、睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では有していない人に比べて、将来的に医療サービスを利用する可能性の高いことが示唆された」と述べた上で、「睡眠時無呼吸に対処することは、個人の健康状態を改善するだけでなく、医療資源への負担を軽減し、より効率的かつ効果的な医療提供につながる可能性がある」との考えを示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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米国てんかんセンター協会がガイドライン改訂

 米国てんかんセンター協会(National Association of Epilepsy Centers;NAEC)はこのほど、てんかんセンターが提供する医療に関するガイドラインを改訂。米ホフストラ大学ザッカー医学部のFred A. Lado氏らが作成したガイドラインの要約版が、「Neurology」に2月2日掲載された。 NAECは米国内の260以上のてんかんセンターが加盟している非営利団体で、1990年に初のガイドラインを発行。初版発行以降、約10年サイクルで改訂を重ねてきており、前回の改訂は2010年だった。今回の改訂に際してはPubMedとEmbaseを用いたシステマティックレビューが行われ、重複削除後の5,937報から197報を抽出。医師、患者、介護者、看護師、検査技師などさまざまなバックグランドを持つ41人から成る委員会が、それらの報告に基づき推奨の草案を作成。その後、修正デルファイ法によって最終的な合意を得るという手法により、信頼できるコンセンサスベースの推奨(trustworthy consensus-based statements;TCBS)として52項目がまとめられた。 52項目の推奨事項は、診断、外来、入院および脳波モニタリングユニット(epilepsy monitoring unit;EMU)、手術に大別され、外来については、診療、薬物管理、患者教育、食事療法、リハビリテーション、心理社会的支援などに細分化されている。推奨事項のいくつかを具体的に挙げると、例えば診断の項目では、全てのてんかんセンターは遺伝子検査が有用と思われる患者を選別するための確立されたプロトコールを持つべきであり、認定カウンセラーによる遺伝カウンセリングを提供する必要があるとしている。また外来での心理社会的支援としては、てんかん患者に生じ得る教育的、社会的、感情的、職業的な障害を把握し対処するために、全てのてんかんセンターには臨床ソーシャルワーカーを配置すべきとの項目が掲げられている。 今回のガイドライン改訂の背景について、筆頭著者であるLado氏は、「医学が進歩していることに加え、近年では発作の管理にとどまらず、患者の総合的な健康や幸福について介入が求められるように環境が変化してきた。不安症やうつ病などの併存疾患のケア、患者-ケアチーム間のコミュニケーションの強化なども、今では欠くことができない。てんかんセンターやその他の医療機関が、質の高い包括的ケアを提供する上で必要なリソースを確保するためにも、ガイドラインの拡充が切に必要とされていた」と語っている。 なお、2人の著者が製薬企業および医療テクノロジー関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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片頭痛予防の再定義、抗CGRPモノクローナル抗体による早期治療が治療反応を強化

 片頭痛予防に承認されている抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、患者によって治療反応が異なり、多くの国では費用償還(reimbursement)ポリシーがあるため、治療が妨げられることもある。スペイン・Vall d'Hebron HospitalのEdoardo Caronna氏らEUREkA study groupは、6ヵ月間の抗CGRP抗体に対する良好/優良な治療反応およびそれに関連する臨床的因子を調査するため、本研究を実施した。Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry誌オンライン版2024年5月22日号の報告。 本研究は、2018年3月以降に抗CGRP抗体による治療を行った高頻度の反復性片頭痛または慢性片頭痛患者を対象とした欧州の多施設共同プロスペクティブリアルワールド研究である。良好/優良な治療反応の定義は、6ヵ月後の1ヵ月あたりの頭痛日数(MHD)の減少がそれぞれ50%以上、75%以上とした。治療反応と独立して関連する変数を特定するため、一般化混合効果回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、5,818例(女性の割合:82.3%、年齢中央値:48.0歳[40.0〜55.0])であった。・ベースライン時のMHD中央値は20.0日/月(14.0〜28.0)、慢性片頭痛と診断された患者は72.2%であった。・6ヵ月後、良好な治療反応が認められた患者は56.5%(4,963例中2,804例)、優良な治療反応が認められた患者は26.7%(4,963例中1,324例)であった。・一般化混合効果回帰モデルでは、良好な治療反応を予測する因子として次の因子が検出された(AUC:0.648、95%信頼区間[CI]:0.616〜0.680)。●高齢(1.08、95%CI:1.02〜1.15、p=0.016)●片側痛(1.39、95%CI:1.21〜1.60、p<0.001)●うつ病あり(0.840、95%CI:0.731〜0.966、p=0.014)●1ヵ月あたりの片頭痛日数の減少(0.923、95%CI:0.862〜0.989、p=0.023)●ベースライン時のMigraine Disability Assessmentの低さ(0. 874 、95%CI:0.819 〜0.932、p<0.001)・上記の因子は、良好な治療反応の予測因子でもあった(AUC:0.691、95%CI:0.651〜0.731)。・一般化混合効果回帰モデルでは、性別は重要な因子ではなかった。 著者らは、「片頭痛の頻度が高く、ベースライン時の障害が大きい場合、抗CGRP抗体に対する治療反応が低下する可能性が、大規模リアルワールド研究において明らかとなった。治療を成功させる可能性を最大限にするためには、早期治療が必要であることが示唆された」としている。

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統合失調症に対する抗精神病薬の有効性および安全性の性差

 抗精神病薬は、精神疾患患者にとって中心的な治療薬であるが、有効性と安全性のバランスをとることが求められる。治療アウトカムを改善するためにも、抗精神病薬の有効性および安全性に影響を及ぼす個別の因子を理解することは重要である。オーストラリア・モナシュ大学のMegan Galbally氏らは、抗精神病薬に関連する有効性および忍容性における性差について、調査を行った。CNS Drugs誌オンライン版2024年5月7日号の報告。 大規模抗精神病薬比較試験であるClinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness(CATIE)の第IおよびIa相試験のデータを2次分析した。CATIE試験では、統合失調症患者を経口オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidone、ペルフェナジンによる治療にランダムに割り付け、二重盲検治療を行った。評価基準には、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度(CGI)、Calgary Depression Rating Scale、自己報告による副作用、服薬コンプライアンス、投与量、体重、さまざまな血液パラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は1,460例(女性:380例、男性:1,080例)であった。・治療反応、副作用、コンプライアンス、抗精神病薬の投与量は、男女間でほとんど差が認められなかった。・便秘(28% vs.16%)、口渇(50% vs.38%)、女性化乳房/乳汁漏出(11% vs.3%)、失禁/夜間頻尿(16% vs.8%)、自己報告による体重増加(37% vs.24%)は、女性において男性よりも有意に多く報告された(各々、p<0.001)。・リスペリドン治療群では、女性(61例)において男性(159例)よりもプロラクチンレベルの有意な上昇が認められた(p<0.001)。・臨床医の評価による測定値、体重増加、その他の臨床検査値は、全体として差が認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の有効性および忍容性は、全体としての性差は限られていたが、リスペリドンについては、いくつかの特定の知見がみられた。抗精神病薬の試験において性差を評価することは、統合失調症患者に対する個別化治療だけでなく、有効性の向上や副作用の軽減にとっても重要である」としている。

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新剤形追加・添付文書改訂:クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬/エンレストに粒状錠小児用規格追加【最新!DI情報】第17回

アレジオン眼瞼クリーム0.5%<対象薬剤>エピナスチン塩酸塩(商品名:アレジオン眼瞼クリーム0.5%、製造販売元:参天製薬)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回塗布のクリーム剤<ここがポイント!>既存のエピナスチン点眼液は1日4回、エピナスチンLX点眼液は1日2回の点眼が必要でしたが、エピナスチン眼瞼クリームは1日1回眼周囲(上下眼瞼)の塗布で、有効性が終日にわたり維持します。点眼が苦手な小児や高齢者に加え、日中の点眼でメイクが落ちるのが気になる人に対しても、就寝前や夜のスキンケア時の塗布で効果が期待できるため、利便性が高いと考えられます。クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬は世界初であり、眼瞼皮膚を通過して眼球・眼瞼結膜に成分が分布します。第III相CAC試験(スギ花粉抗原を用いた結膜抗原誘発試験)において、アレルギー性結膜炎の眼そう痒感および結膜充血スコアをプラセボに比べて有意に抑制しました。また、第III相長期投与試験(環境試験)において、本剤の安全性および有効性が確認されています。エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<対象薬剤>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[追加]規格粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<ここがポイント!>小児慢性心不全は、病状が進むと心肥大や心拡大などが進行し、不整脈や突然死を引き起こすことがあります。サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠50mg/100mg/200mgは2024年2月9日に1歳以上の小児慢性心不全の効能・効果で承認を取得しました。しかし、体重が50kg未満の場合、薬剤師が粉砕懸濁して用量の調整を行う必要がありました。粒状錠小児用12.5mg/31.25mgは、用量を組み合わせることでさまざまな体重に対応することができ、調剤の簡便化が可能になります。粒状錠は、小児でも飲みやすい小さな粒状の錠剤ですので、カプセル型容器から取り出した錠剤を食べ物に混ぜて服用できます。粒状錠小児用は、カプセル型容器に充填したあと、PTP包装しています。パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg<対象薬剤>ペマフィブラート(商品名:パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg、製造販売元:興和)<発売年月>2023年11月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回投与の徐放性製剤<ここがポイント!>高脂血症治療薬のペマフィブラート錠0.1mgは1日2回投与の即放性製剤でしたが、新剤形として1日1回投与のマルチプルユニット型徐放性製剤が2023年11月に販売されました。服用回数の増加は服薬アドヒアランスの低下に関連することが報告されているため、徐放性製剤の発売でアドヒアランスの向上が期待できます。第III相検証試験(K-877-ER-02)において、徐放性製剤0.2mgおよび0.4mgは、既存の即放性製剤と比較し、空腹時血清TGのベースライン値からの変化率が非劣性であることが確認されています。販売名のXRは徐放性(Extended Release)製剤であることを示しています。レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg<対象薬剤>ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:大塚製薬)<改訂年月>2023年12月<改訂項目>[追加]効能又は効果うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)[追加]用法及び用量通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量することができる。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤の併用は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤等による適切な治療を複数回行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤による副作用(アカシジア、遅発性ジスキネジア等の錐体外路症状)や他の治療も考慮した上で、その適否を慎重に判断すること。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又はミルタザピンと併用すること。(本剤単独投与での有効性は確認されていない)<ここがポイント!>本剤の適応症は統合失調症のみでしたが、2023年12月に「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」が追加されました。成人では1日1回1mg投与しますが、忍容性に問題なく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量できます。中等症および重症の大うつ病性障害には、SSRI、SNRI、ミルタザピンが第1選択として用いられますが、これらの薬剤による治療でも十分な効果を示さない症例も多く存在します。本剤は、アリピプラゾールに次ぐ抗うつ効果増強療法に用いる非定型抗精神病薬で、SSRI、SNRIまたはミルタザピンと併用して使用します。

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精神病性うつ病の維持療法に対する抗うつ薬や抗精神病薬治療の実際の有効性

 精神病性うつ病は、機能障害や自殺リスクの高さを特徴とする重度の精神疾患であるが、その維持療法に使用される薬物療法の有効性を比較した研究は、あまり多くない。フィンランド・東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、日常診療下における精神病性うつ病患者の精神科入院リスクに対する特定の抗精神病薬と抗うつ薬、およびそれらの併用療法の有効性を比較するため、本研究を実施した。World Psychiatry誌2024年6月号の報告。 新たに精神病性うつ病と診断された16〜65歳の患者を、フィンランド(2000〜18年)およびスウェーデン(2006〜21年)の入院、専門外来、病気休暇、障害年金のレジストリより特定した。主要アウトカムは、重度の再発を表す精神科入院とした。特定の抗精神病薬および抗うつ薬による薬物療法の影響を比較した。薬剤の使用期間および非使用期間に関連する入院リスク(調整ハザード比[aHR])は、各個人を自身の対照とする個人内デザインにより評価し、層別Coxモデルで分析した。フィンランドとスウェーデンの2つのコホート研究をそれぞれ事前に分析し、次に固定効果メタ解析を用いて統合した。 主な結果は以下のとおり。・フィンランドのコホートには1万9,330人(平均年齢:39.8±14.7歳、女性の割合:57.9%)、スウェーデンのコホートには1万3,684人(平均年齢:41.3±14.0歳、女性の割合:53.5%)が含まれていた。・抗うつ薬未使用と比較し、再発リスク低下と関連する抗うつ薬は、bupropion(aHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.63〜0.85)、ボルチオキセチン(aHR:0.78、95%CI:0.63〜0.96)、ベンラファキシン(aHR:0.92、95%CI:0.86〜0.98)であった。・長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(aHR:0.60、95%CI:0.45〜0.80)およびクロザピン(aHR:0.72、95%CI:0.57〜0.91)は、抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスク低下と関連していた。・単剤療法のうち、ボルチオキセチン(aHR:0.67、95%CI:0.47〜0.95)とbupropion(aHR:0.71、95%CI:0.56〜0.89)のみが、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下と関連していた。・探索的解析では、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法において、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下が認められた組み合わせは、アミトリプチリン+オランザピン(aHR:0.45、95%CI:0.28〜0.71)、セルトラリン+クエチアピン(aHR:0.79、95%CI:0.67〜0.93)、ベンラファキシン+クエチアピン(aHR:0.82、95%CI:0.73〜0.91)であった。・ベンゾジアゼピンおよび関連薬(aHR:1.29、95%CI:1.24〜1.34)、ミルタザピン(aHR:1.17、95%CI:1.07〜1.29)は、再発リスク増加と関連が認められた。 著者らは、「精神病性うつ病の維持療法において再発リスク低下と関連している薬剤は、bupropion、ボルチオキセチン、ベンラファキシン、LAI抗精神病薬、クロザピンおよびごく少数の特定の抗うつ薬と抗精神病薬との併用療法であった。このことから、精神病性うつ病の標準治療として、抗精神病薬と抗うつ薬との併用療法を推奨している現在の治療ガイドライン(詳細は明記されていない)に対し異議を唱えるものである」としている。

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うつ病と心血管疾患発症の関連、女性でより顕著

 日本人400万人以上のデータを用いて、うつ病と心血管疾患(CVD)の関連を男女別に検討する研究が行われた。その結果、男女とも、うつ病の既往はCVD発症と有意に関連し、この関連は女性の方が強いことが明らかとなった。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏らによる研究であり、「JACC: Asia」2024年4月号に掲載された。 うつ病は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などのCVD発症リスク上昇と関連することが示されている。うつ病がCVD発症に及ぼす影響について、性別による違いを調べる研究はこれまでにも行われているものの、その明確なエビデンスは得られていない。 そこで著者らは、日本の外来・入院医療のレセプト情報データベース(JMDC Claims Database)より、2005年1月~2022年5月における健診データが利用でき、18~75歳の人のうちCVDや腎不全の既往のある人などを除いた412万5,720人(年齢中央値44歳、男性57%)を対象とする後方視的コホート研究を行った。初回健診以前にうつ病と診断されていた人を、うつ病の既往ありと定義した。CVDには心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動を含め、これらの複合を主要評価項目として男女別に解析した。 対象者のうち、うつ病の既往のあった人は男性が9万9,739人(4.2%)、女性が7万8,358人(4.5%)だった。平均追跡期間1,288±1,001日(最短1日~最長5,534日)において、CVDは男性で11万9,084件(1万人年当たり発症率140.1)、女性で6万1,797件(同111.0)発症した。 うつ病とCVD発症との関連について、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足の影響を統計学的に調整して解析した結果、うつ病の既往のCVD発症に対するハザード比は、男性で1.39(95%信頼区間1.35~1.42)、女性では1.64(同1.59~1.70)であり、男女ともに有意な関連が認められた。この関連には性別の影響が認められ、女性の方が男性と比べて関連が強いことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。また、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動のそれぞれとうつ病との関連、および性別の影響を解析した場合も、同様の結果が得られた(全て交互作用P<0.05)。 さらに、サブグループ解析として50歳以上と50歳未満に分けて検討した結果と、肥満の有無で分けて検討した結果のいずれにおいても、うつ病の既往とCVD発症との関連は、女性の方が強いことが明らかとなった。また、複数の感度分析を行った結果も一貫していた。 今回の研究により、うつ病とその後のCVD発症の関連は、女性の方がより顕著であることが示された。著者らは、考えられるメカニズムの一つとして、妊娠や閉経など、ホルモンが変化する重要な時期にうつ病を経験しやすいため、女性では心血管系への影響がより大きくなる可能性があると説明。一方で、男女差が生じるメカニズムの完全な解明には、さらなる研究が必要だとしている。著者らは、「うつ病とCVDの関連についての性差をよりよく理解し、うつ病の男性と女性のそれぞれに最適なケアを提供することで、心血管系の健康につながる可能性がある」と述べている。

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双極性障害とうつ病で異なる臨床的特徴

 中国・上海交通大学のZhiguo Wu氏らは、うつ病と診断された患者とうつ病と診断されたものの双極性障害(BP)I型およびII型であった患者における、現在のうつ病エピソードの人口統計学的および臨床学的特徴を調査した。BMC Psychiatry誌2024年5月10日号の報告。 うつ病およびうつ病と診断されたBP-I、BP-IIのDSM-IV診断を確定させるために精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を実施した。中国の8ヵ所の精神科施設より抽出されたBP-I、BP-II、うつ病患者1,463例を対象に、人口動態、うつ症状、精神疾患の併存を比較した。診断の臨床的相関を評価するため、多項ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・最初にうつ病と診断された患者のうち14.5%は、最終的にBPと診断された。・BP-IおよびまたはBP-II患者は、うつ病患者と比較し、若年、再発率が高い、気分変調性の併発、自殺企図、興奮、精神病的特徴、不眠症を含む精神医学的併存疾患、体重減少、身体症状などの広範な特徴を有していた。・うつ病と比較すると、BP-IよりもBP-IIのほうが、より多くの違いが観察され、異なる症状プロファイルおよび併存疾患パターンが示された。 著者らは、「本結果は、BP-IおよびBP-IIとうつ病を臨床的に鑑別し、BPのより正確な診断を行うために、重要な意味を持つであろう」としている。

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東日本大震災による住宅被害や精神的ダメージと修正可能な認知症リスクとの関連

 東北大学の千葉 一平氏らは、地域住民の高齢者における、東日本大震災による住宅被害および精神的ダメージと認知症の修正可能なリスク因子との関連を評価する目的で横断的研究を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2024年5月3日号の報告。 対象は、地域住民の高齢者2万9,039人(平均年齢:69.1±2.9歳、女性の割合:55.5%)。東日本大震災後の災害関連被害(住宅全壊または半壊)および精神的ダメージ(心的外傷後ストレス反応[PTSR])を、自己申告式アンケートを用いて収集し評価した。修正可能なリスク因子には、うつ病、社会的孤立、身体不活動、喫煙、糖尿病を含んだ。災害関連被害と修正可能なリスク因子との関連を評価するため、社会人口統計学的変数と健康状態変数を調整した後、最小二乗法および修正ポアソン回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・震災による住宅の全壊は2,704人(10.0%)、PTSRは855人(3.2%)で認められた。・修正可能なリスク因子の数は、住宅全壊者(β=0.23、95%信頼区間[CI]:0.19~0.27)およびPTSR者(β=0.60、95%CI:0.53~0.67)で有意に多かった。・住宅全壊者は、修正可能なリスク因子のうち、うつ病と身体的不活動の割合が高かった。・PTSR者は、修正可能なリスク因子のすべての分野で割合が有意に高かった。 著者らは「東日本大震災による住宅被害および精神的ダメージは、認知症のリスク因子増加と関連していることが示唆された。認知症リスク軽減については、とくに災害で住宅被害や精神的ダメージを経験した高齢の被災者に対し、修正可能なリスク因子のさまざまな側面に応じた多元的な支援が求められる」としている。

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治療抵抗性統合失調症患者の再入院に対するLAI抗精神病薬併用の効果

 台湾・Taoyuan Psychiatric CenterのYun Tien氏らは、クロザピンで治療中の治療抵抗性統合失調症患者における長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用と精神科入院リスクの関連を評価した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2024年5月1日号の報告。 本研究は、3次精神科センター単一施設レトロスペクティブコホート研究として実施された。DSM-IV-TRおよびDSM-5の診断基準による治療抵抗性統合失調症患者の再入院ハザード比(HR)を分析した。経口抗精神病薬またはLAI抗精神病薬の有無にかかわらず、クロザピンのさまざまな向精神薬レジメンを検討した。クロザピンの投与量と入院歴により層別化を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は719例。・分析は、3ヵ月、6ヵ月、1年にわたり、すべての患者で実施した。・クロザピンとLAI抗精神病薬で治療された患者は、過去の入院回数が有意に多かった(p=0.003)。クロザピンと経口抗精神病薬で治療された患者は、クロザピン単独療法およびクロザピンとLAI抗精神病薬で治療された患者よりも、クロザピンの1日投与量が多かった(p<0.001)。・LAI抗精神病薬で治療された患者は、3つの試験群間で1年以内の再入院のHRが有意に低かった。・LAI抗精神病薬の保護効果は、疾患の重症度を示すクロザピンの1日投与量および過去の入院回数によって層別化されたすべてのサブグループにおいて観察された。 著者らは「クロザピンとLAI抗精神病薬の併用は、クロザピンと経口抗精神病薬の併用やクロザピン単独療法と比較し、再入院リスクが有意に低かった。クロザピンで治療中の治療抵抗性統合失調症患者の再入院予防には、LAI抗精神病薬の使用を考慮する必要がある」としている。

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治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニストの用量別比較

 治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニスト(アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazine)による抗うつ効果増強療法は、これまでのネットワークメタ解析において比較されている。しかし、これら薬剤の用量反応の有効性比較は、十分に行われていなかった。iこころクリニック日本橋の寺尾 樹氏らは、用量反応関係を推定し、各ドパミンパーシャルアゴニストの効果を、用量別に比較した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年4月19日号の報告。 2023年1月1日までに公表された研究を、各種データベース(Cochrane Library、PubMed、CINHAL、ClinicalTrials.gov)より、システマティックにレビューした。対象には、治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineを評価した二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を含めた。変量効果用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・各薬剤の最大有効用量は、アリピプラゾールで5.5mg、ブレクスピプラゾールで1.6mg、cariprazineで1.5mgであった。・3剤すべての用量において、プラセボと比較し、有意に有効であった。・アリピプラゾール5.5〜12.5mgは、ブレクスピプラゾール0.5mgおよびcariprazine 0.5〜1mgよりも有意に有効であった。・アリピプラゾール7.5〜12.5mgは、cariprazineのすべての用量よりも有意に有効であった。・ブレクスピプラゾール1〜3mgは、cariprazine 0.5mgよりも有意に有効であり、ブレクスピプラゾール1.6〜2.5mgは、cariprazine 1mgよりも有意に有効であった。・ブレクスピプラゾールは、アリピプラゾールより優れた用量はなく、cariprazineは、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールよりも優れた用量はなかった。 著者らは「治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニストは、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineの順で有効であり、最大有効用量は、それぞれ5.5mg、1.6mg、1.5mgであった」としている。

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週末の短時間の「寝だめ」、うつ病改善に役立つ可能性

 週末にまとまった睡眠をとる、いわゆる「寝だめ」は疲労回復や心身の健康に役立つのか。賛否が分かれる議論であったが、寝だめがうつ病の改善に一定の効果があるとする研究結果が発表された。中国・中南大学湘雅医院のZhicheng Luo氏らによる本研究はJournal of Affective Disorders誌2024年6月1日号「Research paper」に掲載された。 研究者らは、米国成人における「週末の寝だめ」(Weekend Catch-up Sleep:WCS、週末の睡眠時間から平日の睡眠時間を引いた時間/1日当たり)が米国の成人のうつ症状に与える影響を調査した。2017~20年の国民健康栄養調査(NHANES)から7,719人の参加者を登録した。睡眠時間とうつ症状に関する情報は、自己申告による質問とPHQ-9スコアで評価し、回帰分析を使用してWCSと抑うつ症状の関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・WCSのうつ症状に対するオッズ比は0.746(95%信頼区間[CI]:0.462~1.204、p=0.218)、PHQ-9スコアの変化は-0.429(95%CI:-0.900~0.042、p=0.073)であり、有意な相関性は見出せなかった。・WCSとうつ病の相関は滑らかなL字型を示し、持続時間0~2時間のWCSのみ、うつ症状やPHQ-9スコアと統計的有意に関連していた。・サブグループ分析では、WCSとうつ症状は、男性、65歳未満、および平日の睡眠時間が短い人でマイナスの関連がより強かった(相互作用のp<0.05)。 研究者らは、「本研究は適度なWCSがうつ症状の発生率の低下と関連していることを示唆しているが、この研究は横断的デザインであるため因果関係を確定することはできない。将来的には縦断的研究を通じて、より詳細な因果関係を解明する必要がある」としている。

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