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長寿の村の細菌がうつ病や鼻炎に有効

長寿の村の細菌がうつ病や鼻炎に有効中国の長寿の村で見つかった細菌が、プラセボ対照無作為化試験でうつ病や鼻炎の治療効果を示しました1,2)。精神の不調の世界的な負担の主因であるうつ病と、便秘などの胃腸不調の関連が最近になって報告されています。たとえば、米国人口を代表する米国国民健康栄養調査 (NHANES)の情報を調べた試験で、慢性の下痢や便秘がうつ病患者でより多く認められています3)。うつ病患者495例の慢性の下痢と便秘の有病率はそれぞれ15.53%と9.10%で、うつ病でない4,709例のそれらの有病率(それぞれ6.05%と6.55%)より高いことが示されました。いくつかの報告によると、うつ病などの気分障害と胃腸不調の関連には腸-脳軸(gut-brain axis)と呼ばれる腸と中枢神経系(CNS)のやり取りが関係しているようです。また、胃腸の微生物が胃腸と脳の通信を促しており、その乱れはうつ病、自閉症、パーキンソン病などの神経や精神の疾患と関連するようです。そこで、ためになる細菌(プロバイオティクス)などで腸内微生物環境を手入れして精神不調を治療する試みが増えています。長寿で知られる中国南西部の村(巴馬)の1人の長寿老人(centenarian)の便から見つかったBifidobacterium animalis subsp. Lactis A6(BBA6)という細菌の研究はその1つで、BBA6が微生物-腸-脳軸を手入れして注意欠如・多動症を模すラットの海馬や記憶の障害を緩和しうることが北京農業大学のRan Wang氏らの研究で示されています4)。その後Wang氏らはBBA6の研究を臨床段階へと進め、うつ病、具体的には便秘でもあるうつ病患者へのBBA6の効き目を調べるプラセボ対照無作為化試験を実施しました。試験にはうつ病患者107例が参加し、便秘でもあるうつ病患者と便秘ではないうつ病患者がそれぞれ8週間のBBA6かプラセボを投与する群に割り振られました。BBA6投与の効果は便秘合併うつ病患者に限って認められました。それら便秘合併うつ病患者への8週間のBBA6投与後のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)はプラセボ投与群より低くて済んでいました1)。便秘症状の評価尺度PAC-SYMもBBA6投与群のほうがプラセボ群より下がりました。便秘とうつ病の合併を模すラットで調べたところ、BBA6はうつ病患者に有害らしいキヌレニンを減らしてセロトニンを増やすことが示されました5)。便秘合併うつ病患者のBBA6投与後の血液や便にはセロトニンが多く、キヌレニンが少ないことも確認されており、ラットでの検討と一致する結果が得られています。また、BBA6が投与された便秘合併うつ病患者は先立つ研究でうつ病治療効果やセロトニン生成促進効果が示唆されているビフィドバクテリウムとラクトバチルスがより多く、トリプトファン生合成経路が盛んでした。どうやらBBA6はセロトニンやキヌレニンの出所であるトリプトファン代謝を手入れすることで便秘とうつ病の合併を緩和するようです。さて、BBA6が役立ちうる用途はうつ病治療に限られるわけではなさそうで、Wang氏らによる別のプラセボ対照無作為化試験では、アレルギー性鼻炎の治療効果が示されています2)。試験には通年性アレルギー性鼻炎患者70例が参加し、うつ病試験と同様にBBA6かプラセボが8週間投与され、ベースライン時と比べた8週時点の鼻症状検査点数低下の比較でBBA6がプラセボに勝りました。Wang氏らは便秘とうつ病の合併への長期の効果を調べる試験を予定しています5)。また、アレルギー性鼻炎治療効果のさらなる裏付け試験が必要と述べています2)。 参考 1) Wang J,et al. Sci Bull(Beijing). 2025 Apr 21. [Epub ahead of print] 2) Wang L, et al. Clin Transl Allergy. 2025;15:e70064. 3) Ballou S, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019;17:2696-2703. 4) Yin X, et al. Food Funct. 2024;15:2668-2678. 5) Probiotic breakthrough: Bifidobacterium animalis subsp. Lactis A6 shows promise in alleviating comorbid constipation and depression / Eurekalert

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うつ病予防に対するカフェインの作用メカニズム

 疫学研究において、カフェイン摂取はうつ病と逆相関しており、腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性があることが示唆されている。中国・重慶医学大学のWentao Wu氏らは、うつ病と腸内細菌叢との関連に着目し、予防的なカフェイン摂取が腸脳軸に作用することでうつ病発症に影響を及ぼすかを調査するため、本研究を実施した。European Journal of Pharmacology誌2025年8月5日号の報告。 オスC57BL/6Jマウスを対照群、慢性予測不能ストレス(CUS)を負荷した群(CUS群)、カフェイン(CAF)を腹腔内投与後、CUSを負荷した群(CAF群)にランダムに割り付けた。うつ病様行動および不安様行動を評価し、腸脳軸関連分子を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対照群と比較し、CUS群は、体重、スクロール嗜好、中心距離(%)が有意に低く、不動時間が長かった。しかし、対照群とCAF群では、これらの指標に差は認められなかった。・CUS群で有意な減少がみられた腸管バリア完全性関連因子(ZO-1、claudin-1、MUC2)は、CAF群では認められなかった。また、CUS群で認められた2つの血漿中炎症因子(LPS、NLRP3)の変動、4つの海馬中炎症関連因子(TNF-α、IL-1β、AC、BDNF)の変動は、CAF群では認められなかった。・対照群とCUS群との間で6つの分化遺伝子が同定されたが、対照群とCAF群との間では同定されず、これら6つの鑑別疾患のうち、5つとスクロール嗜好との有意な相関が確認された。 著者らは「これらの結果は、早期カフェイン介入が、腸内細菌叢、腸管バリアの完全性、神経炎症を調節することで、うつ病予防につながる可能性を示唆している」と結論付けている。

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ミニストローク後に持続的な疲労感を経験する人は多い

 一過性脳虚血発作(TIA)を経験した人では、その後、最長で1年間にわたり疲労感が持続する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。オールボー大学病院(デンマーク)のBoris Modrau氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に5月14日掲載された。 TIAでは、脳への血流が一時的に途絶えるが、本格的な脳卒中のように永久的な脳障害には至らない。このため、TIAはしばしば「ミニストローク」とも呼ばれる。Modrau氏は、「TIAを発症すると、顔面や腕の筋力低下や麻痺、言語不明瞭などの症状が現れることがあるが、通常は24時間以内に回復する。しかし、生活の質(QOL)の低下、思考障害、抑うつ、不安、疲労感などの問題となる症状が持続していることを報告する人もいる」と話す。 Modrau氏らは今回、TIAと診断された患者のうち、ベースライン時(退院の14日後)に疲労感の評価を受けた287人(平均年齢70.0歳、女性42.5%)を対象に、TIA患者における疲労感の推移とその予測因子について検討した。疲労感は、ベースライン時と退院の3、6、12カ月後にMultidimensional Fatigue Inventory(MFI-20)とFatigue Severity Scale(FSS)により評価した。MFI-20は、全般的疲労感、身体的疲労感、活動性の低下、意欲の低下、精神的疲労感の5つの尺度で構成される自記式の疲労感評価尺度である。 その結果、MFI-20で評価した全般的疲労感のスコアの平均値は、ベースライン時で12.3点、退院の3カ月後で11.9点、6カ月後で11.4点、12カ月後で11.1点であった。また、病的疲労感(MFI-20の全般的疲労感スコアが12点以上)が認められた対象者の割合は、それぞれ61.3%、53.5%、54.0%、53.8%であり、退院から12カ月が経過しても半数以上が病的な疲労感を報告していたことが明らかになった。 脳画像検査の結果からは、疲労感のある患者とない患者の間で急性梗塞の有病率は同程度であった。しかし、持続的な疲労感のある人ではない人に比べて、TIA発症前の不安やうつ病の出現頻度が2倍高かった。さらに、疲労感を予測する上では、ベースライン時の疲労感レベルが最も強い予測因子であることも示された。 Modrau氏は、「われわれの研究参加者のうち、退院後2週間以内に疲労感を感じていた人の多くで、最長で1年間にわたり疲労感が持続する可能性の高いことが分かった」と述べている。 さらにModrau氏は、「今後の研究では、TIAと診断された患者を数週間から数カ月にわたって追跡調査し、持続する疲労感の有無を評価する必要がある。これにより、長期的な疲労感に苦しみ、さらなるケアが必要となる可能性のある患者をより深く理解できる可能性がある」と話している。

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統合失調症に対するコリン作動薬の有用性~RCTメタ解析

 統合失調症患者の3人に1人は、副作用や限られた有効性のため、従来の抗精神病薬による治療反応が不十分である。ムスカリン受容体とニコチン受容体を標的とし、統合失調症の病態生理に関連するコリン作動薬の機能不全を活用した、新たな治療法が注目されている。インド・All India Institute of Medical SciencesのAmiya Shaju氏らは、統合失調症に対するコリン作動薬の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2025年5月2日号の報告。 MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneのデータベースおよびレジストリから得られた臨床試験データをレビュー担当者が抽出した。研究の質は、バイアスリスクツールとランダム効果モデルによるエフェクトサイズの推定により評価した。PRISMAガイドラインに従い、必要に応じてサブグループ解析、メタ回帰分析、感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・30件のRCT(3,128例)において、コリン作動薬の単剤療法または併用療法の検討が行われていた。・コリン作動薬は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の総スコアに有意な改善は認められなかったが(標準化平均差[SMD]:-0.38、95%信頼区間[CI]:-0.93~0.18、エビデンスの確実性:中)、陰性症状スコアの改善が認められた(SMD:-0.42、95%CI:-0.59~-0.25、エビデンスの確実性:中)。・ムスカリン作動薬は、PANSSの総スコア(SMD:-0.57、95%CI:-0.72~-0.42)、陽性症状スコア(SMD:-0.58、95%CI:-0.73~-0.43)、陰性症状スコア(SMD:-0.40、95%CI:-0.59~-0.21)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア(SMD:-0.48、95%CI:-0.65~-0.31)の改善を示した。・ニコチン作動薬は、PANSSの陰性症状スコア(SMD:-0.28、95%CI:-0.47~-0.09)およびCGI-Sスコア(SMD:-1.31、95%CI:-2.38~-0.24)の改善に寄与した。・有害事象の発生は、実薬群でより高かった(オッズ比:1.21、95%CI:0.94~1.56)。・多くの研究はバイアスリスクが低く、エビデンスの質は非常に低~中の範囲であった。 著者らは「コリン作動薬は陰性症状を改善し、ムスカリン作動薬は症状全体および重症度の改善に有効であり、安全性においてもプラセボと比較し、有害事象の大きな差は認められなかった」と結論付けている。

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うつ病合併片頭痛に対するフレマネズマブの有効性〜UNITE試験

 片頭痛とうつ病は併発することが多いものの、両疾患を合併した患者における片頭痛予防に関する有効性を評価したエビデンスは限られている。米国・Albert Einstein College of MedicineのRichard B. Lipton氏らは、うつ病を合併した成人片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化試験であるUNITE試験を実施した。JAMA Neurology誌オンライン版2025年5月5日号の報告。 UNITE試験は、4週間のスクリーニング期間、12週間の二重盲検期間および12週間の非盲検継続試験により構成され、2020年7月9日〜2022年8月31日に12ヵ国、55施設で実施した。対象患者は、スクリーニング前12ヵ月以上にわたりDSM-V基準に基づくうつ病歴があり、スクリーニング時に活動性の抑うつ症状を呈した反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)の成人患者。フレマネズマブ225mgを月1回投与したフレマネズマブ群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。継続試験に参加した患者には、フレマネズマブ675mgを四半期ごとに投与した。主要アウトカムは、12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化量とした。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた540例中353例(平均年齢:42.9±12.3歳、女性の人数:310例[88%]、EM:48%、CM:52%)が適格基準を満たし、フレマネズマブ群(175例)またはプラセボ群(178例)に割り付けられた。・12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化は、フレマネズマブ群で−5.1±0.50(95%信頼区間[CI]:−6.09〜−4.13)、プラセボ群で−2.9±0.49(95%CI:−3.89〜−1.96)であった(p<0.001)。・8週目におけるハミルトンうつ病評価尺度17項目スコアのベースラインからの平均変化は、フレマネズマブ群で−6.0±0.55(95%CI:−7.10〜−4.95)、プラセボ群で−4.6±0.54(95%CI:−5.66〜−3.55)であった(最小二乗平均差:−1.4±0.61、95%CI:−2.61〜−0.22、p=0.02)。・有害事象は、フレマネズマブによる他の試験結果と一致しており、その結果は継続試験期間を通じて維持された。 著者らは「うつ病を合併した成人片頭痛患者に対するフレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、1ヵ月当たりの片頭痛日数および抑うつ症状の改善に寄与することが示唆された。また、新たな安全性上の懸念は認められなかった」とし、「本結果は、うつ病を合併した成人片頭痛患者を評価するために特別に設定され、単一の薬理学的介入による片頭痛と抑うつ症状の有意な改善を実証した初めてのプラセボ対照ランダム化試験である」としている。

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思春期うつ病に最も効果的な抗うつ薬は?

 中国・Capital Medical UniversityのTianwei Wu氏らは、10代の若者におけるうつ病治療に対する各種抗うつ薬の有効性を評価し、思春期うつ病に対する治療の有効性および忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年5月10日号の報告。 対象は、各種診断基準(DSM-5、CCMD-3、DSM-4、ICD10/11)でうつ病と診断された6〜18歳の青年。2024年10月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)を主要データベース(PubMed、Cochrane Library、Web of Science)よりシステマティックに検索した。検索に使用したキーワードは、うつ病うつ病性障害、感情障害、青年期、若年成人、未成年者、fluoxetine、セルトラリン、パロキセチン、agomelatine、vilazodone、エスシタロプラム、ベンラファキシンとした。バイアスリスクは、Cochraneバイアスリスクツールを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・15件のRCT(1万2,258例)をネットワークメタ解析に含めた。・ほとんどの研究では、ランダム化および割り付けの盲検化に関してバイアスリスクが低かったが、盲検化やアウトカム評価の実施が不明瞭な研究もみられた。・ネットワークメタ解析では、Children's Depression Rating Scale-Revised(CDRS-R)、臨床全般印象度(CGI-S)、Child Global Assessment Scale(CGAS)などいくつかの主要指標では、agomelatine(平均差[MD]:−0.34、95%信頼区間[CI]:−0.59〜−0.09)、fluoxetine(MD:−0.31、95%CI:−0.42〜−0.21)、セルトラリン(MD:−0.27、95%CI:−0.47〜−0.06)は、プラセボと比較して、CDRS-Rスコアの有意な改善が認められた。・CGI-Sについては、セルトラリンがより有効であった(MD:−4.39、95%CI:−4.77〜−4.01)。・CGASについては、エスシタロプラムがより有効であった(MD:2.08、95%CI:1.33〜2.84)。・累積順位曲線下面積(SUCRA)値では、エスシタロプラムは、CGASおよび臨床全般印象度の改善度(CGI-I)において他の薬剤よりも優れた効果を示し(各々:96.1%、86.4%)、agomelatineは、CDRS-Rスコアの改善において他の薬剤よりも優れていた(86.4%)。・セルトラリン使用は、CGI-Iスコアの上昇抑制に対して最も可能性の高い戦略であることが示唆された(100%)。・Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアについては、パロキセチンは、他の薬剤よりも有意に優れていた(99.9%)。 著者らは「症状重症度尺度では、agomelatineとパロキセチン、機能改善尺度ではエスシタロプラムが最も高い評価を示した。セルトラリンは、CGI-SおよびCGI-Iにおいて優位性を示した」ことから「思春期うつ病の機能回復にはエスシタロプラム、迅速な症状改善が必要な重症患者にはセルトラリンを優先すべきである」と結論付けている。

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統合失調症うつ病における幻聴の違いは

 統合失調症および統合失調症様疾患では、4人に 3人以上の患者が幻聴を経験しているのに対し、うつ病では、6%の患者に幻聴が認められると報告されている。この2つの疾患における幻聴の鑑別は、診断および予後予測において重要である。インド・Dr D.Y. Patil Medical CollegeのTahoora Ali氏らは、統合失調症うつ病における幻聴の特徴を比較した。Industrial Psychiatry Journal誌2025年1~4月号の報告。 対象は、3次医療の精神科センターの入院患者より抽出された統合失調症およびうつ病患者110例。社会人口統計学的情報、臨床的特徴に関連する情報、幻聴評価尺度の特徴を含む本検討のために設計されたプロフォーマを用いて、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者とうつ病患者は、年齢、教育、職業、社会経済的地位によりマッチングされた。・統合失調症患者の幻聴は、うつ病患者と比較し、以下の項目において有意に高い評価を認めた。 ●幻聴の頻度 ●明瞭性 ●音調 ●重症度 ●注意力散漫 ●自己制御 ●苦痛 著者らは「統合失調症患者における幻聴の特徴は、うつ病患者とは大きく異なっていた。これは、診断を超えた重要な意義を示唆している。これらの幻聴の特性を臨床的に評価することは、診断精度の向上に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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抗精神病薬の減量、D2受容体親和性と再発との関連

 抗精神病薬維持療法は、初回エピソード精神疾患の再発予防に有効であるが、抗精神病薬使用患者の多くは、寛解後に副作用、長期的な健康上の懸念、スティグマ、自立への希望から、抗精神病薬の減量または中止を望むことは少なくない。現在のガイドラインでは、抗精神病薬の漸減が推奨されているが、とくに初発エピソードから寛解した患者における最適な漸減スピードは依然として不明である。また、抗精神病薬のD2受容体親和性によっても再発リスクに影響を及ぼす可能性がある。オランダ・University of GroningenのShiral S. Gangadin氏らは、初回エピソード精神疾患患者における寛解後の抗精神病薬減量と再発リスクとの関係およびD2受容体親和性の影響を評価した。World Psychiatry誌2025年6月号の報告。 対象は、抗精神病薬を漸減した精神疾患患者227例。初回エピソードから寛解後18ヵ月以内の再発リスクおよび再発までの期間を調査した。再発は、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、精神疾患による入院、または担当精神科医の明確な臨床判断に基づくコンセンサス基準を用いて二分的に定義した。減量スピードは、減量開始時と終了時の抗精神病薬投与量(1日当たりのオランザピン換算量)を日数で割って算出した。抗精神病薬のD2親和性に基づく分類は、パーシャルアゴニスト薬、低親和性薬、高親和性薬とした。年齢、性別、大麻使用、初回エピソードの症状持続期間、D2受容体親和性による薬剤分類の臨床的および社会人口統計学的特性の差について治療確率逆重み付けで調整した後、ロジスティック回帰分析およびCox比例ハザード回帰分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・パーシャルアゴニスト薬使用患者54例、低親和性薬使用患者116例、高親和性薬使用患者57例。・フォローアップ期間中、減量後に再発した患者は104例(45.8%)。・平均減量スピードは75日間でオランザピン換算10mgであり、平均減量期間は124日(範囲:6〜334日)であった。・ロジスティック回帰分析では、減量スピードは再発リスクを予測しないことが示された(z=0.989、p=0.323)。・高親和性薬使用患者と比較し、低親和性薬使用患者(z=−2.104、オッズ比[OR]=0.48、p=0.035)およびパーシャルアゴニスト使用患者(z=−2.278、OR=0.44、p=0.023)は再発リスクが低かった。・減量終了から再発までの期間は、高親和性薬使用患者(平均280日)が、低親和性薬使用患者(平均351日、p=0.027)およびパーシャルアゴニスト使用患者(平均357日、p=0.040)よりも短かった。 著者らは「寛解した初回エピソード精神疾患患者における再発予測において、抗精神病薬のD2受容体親和性は、減少スピードよりも重要であった。D2受容体への親和性の高い薬剤の使用は、他の抗精神病薬と比較し、再発リスクが約2倍高かった。減量後の再発リスクの高さは、抗精神病薬を初めて選択する際、考慮すべき因子であると考えられる。初回エピソード精神疾患から寛解後、強力なD2受容体親和性を有する薬剤を使用している患者では、減量期間中に追加のモニタリングが必要であろう」としている。

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労働時間ではなく仕事の種類がうつ病リスクに影響

 労働時間や労働形態が中高年のうつ病リスクに及ぼす影響を検討した研究は、比較的少ない。中国・Hangzhou Normal UniversityのYu Zhu氏らは、とくに報告の少ない中国における労働時間や労働形態とうつ病リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2025年8月1日号の報告。 本研究は、2011〜20年のChina Health and Retirement Longitudinal Survey(CHARLS)のデータを用いて検討を行った。うつ病の測定には、10項目からなるCESD-10尺度を用いた。潜在成長曲線モデル(LGCM)を用いて労働時間がうつ病リスクに及ぼす影響を分析し、マルチレベル一般化推定方程式を用いて労働形態(職種および雇用形態を含む)とうつ病リスクとの関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、45歳以上の中国人3,045人。・女性労働者の平均うつ病スコアは、男性よりも高かった(9.6 vs.7.1、p<0.001)。・LGCMでは、初期の労働時間やその変化は、うつ病レベルの変化に有意な影響を及ぼさないことが示唆された。・職種別では、非農業労働者は農業労働者よりもうつ病レベルが低かった(β:−0.92[−1.14〜−0.70])。・雇用形態別では、自営業者は雇用労働者よりもうつ病レベルが高かった(β:0.59[0.38〜0.81])。・労働時間や労働形態がうつ病リスクに及ぼす影響には、男女間で差は認められなかった。 著者らは「中国人の中高年において、労働時間がうつ病リスクと有意に関連しているかどうかは明らかでないが、労働形態の違いは、うつ病リスクに影響を及ぼすことが示唆された。このことから、政府は女性、農業労働者、自営業者のメンタルヘルスにより注意を払うべきである」と結論付けている。

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うつ病リスクに影響を及ぼす食事パターン、男女や年齢で違いがあるか?

 食生活パターンは、うつ病リスクと関連している可能性がある。男女間および年齢層別の食生活パターンの違いは報告されているものの、うつ病リスクへの影響はこれまで十分に検討されていなかった。フランス・マルセイユ大学のYannis Achour氏らは、性別および年齢層における食生活パターンとうつ病リスクとの関連性を調査し、ターゲットを絞った予防および介入戦略に役立てるため、脆弱な集団を特定することを目指し、本研究を実施した。Nutrients誌2025年5月4日号の報告。 2021〜23年に横断的オンライン国際調査ALIMENTAK研究として実施された。食生活データは検証済み食品摂取頻度質問票、うつ病データは検証済み自己申告質問票を用いて収集した。主要成分分析(PCA)を用いて、異なる食品摂取パターンを特定した。さらに食生活パターンとうつ病との関連性を評価するため、複数の潜在的な交絡因子で調整したのち、多変量解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・慢性疾患でないまたは現在向精神薬治療を行っていない参加者1万5,262人のうち、4,923人(32.2%)がうつ病群に分類された。・18〜34歳の参加者において、超加工食品摂取は、男女とも同様に、うつ病リスク上昇との関連が認められた。・18〜34歳の女性では、炭酸飲料および缶詰/冷凍食品は、うつ病リスク上昇と関連していた。●18〜34歳【超加工食品】女性のオッズ比(OR):1.21(95%信頼区間[CI]:1.15〜1.27)、男性のOR:1.21(95%CI:1.07〜1.18)【炭酸飲料】女性の調整OR:1.10(95%CI:1.06〜1.95)【缶詰/冷凍食品】女性の調整OR:1.10(95%CI:1.04〜1.15)・35〜54歳および55歳以上の参加者において、女性でのみ超加工食品とうつ病リスクとの関連が認められた。・果物、ナッツ、緑黄色野菜などの健康的な食事とうつ病リスク低下との間に有意な関連が認められた。●35〜54歳【超加工食品】女性の調整OR:1.30(95%CI:1.20〜1.42)【健康的な食事(果物、ナッツ、緑黄色野菜)】調整OR:0.82(95%CI:0.75〜0.89)●55歳以上【超加工食品】女性の調整OR:1.41(95%CI:1.11〜1.79)【健康的な食事(果物、ナッツ、緑黄色野菜)】調整OR:0.79(95%CI:0.64〜0.97) 著者らは「食生活パターンとうつ病リスクとの関連性は、男女間および年齢層間で有意な差があることが明らかとなった。これらの知見は、公衆衛生介入のより明確なターゲティングに役立つ可能性がある」と結論付けている。

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不定愁訴、魚介類の摂取不足が原因か

 女性は男性よりも原因不明の体調不良(不定愁訴)を訴える可能性が高い。今回、日本の若い女性における不定愁訴と抑うつ症状の重症度が、魚介類の摂取量と逆相関するという研究結果が報告された。研究は和洋女子大学健康栄養学科の鈴木敏和氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に4月3日掲載された。 不定愁訴は、器質的な疾患背景を伴わない、全身の倦怠感、疲労感、動悸、息切れ、脳のもやもやなどの症状を指す。これらの症状は、検査で原因が特定できない場合が多く、心身のストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられている。過去50年間に行われた様々な横断研究より、不健康なライフスタイルとそれに伴う栄養摂取の影響が不定愁訴に関連することが報告されている。しかし、不定愁訴と特定の食品、栄養素との関連は未だ明らかにされていない。このような背景を踏まえ、著者らは不定愁訴および抑うつ症状を定量化し、これらの症状の重症度と関連する栄養素や食品を特定することを目的として、日本の若年女性を対象とした横断的調査を実施した。 質問調査は2023年6~12月にかけて行われた。和洋女子大学に所属する18~27歳までの学部生86人が対象となり、参加者は同日に微量栄養素欠乏症関連愁訴質問票(MDCQ)、食物摂取頻度調査票(FFQg)、日本版ベック抑うつ質問票(BDI-II)の3種類の質問票に回答した。MDCQのスコアは26をカットオフとし、スコア26以下の参加者を愁訴の訴えが少ない群(LC群)、スコア27以上を訴えが多い群(HC群)とした。HC群では微量栄養素欠乏症の可能性があることを示す。BDI-IIスコアは、13をカットオフとし、13以下の参加者を抑うつ度の低い群(LD群)、14以上を抑うつ度の高い群(HD群)に分類した。2群間の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。 FFQgから得られた86人の体組成、栄養摂取量は、2019年の国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)から引用した20~29歳の日本人女性のそれとほぼ同等であった。参加者はMDCQスコア(≤26:LC群、≥27:HC群)とBDI-IIスコア(≤13:LD群、≥14:HD群)に基づいて2つのグループに分類された。摂取していた栄養素について、HC群とLC群およびHD群とLD群を比較したところ、HC群とHD群ではエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量が有意に少ないことが分かった。これらの栄養素は日本人において主に魚から摂取されているため、両群の魚介類の摂取量を比較した。その結果、HC群の魚介類の摂取量(中央値〔範囲〕)は有意にLC群より低かった(35.9〔0~107.7〕g vs 53.8〔2.6~148.7〕g、P=0.005)。HD群とLD群を比較した場合でも、同様の低下が認められた(35.9〔0~107.7〕g vs 53.8〔0~148.7〕g、P=0.006)。 参加者はさらに、愁訴の訴えが少なくかつ抑うつ度の低いLC-LD群(MDCQ≦26かつBDI-II≦13)と愁訴の訴えが多くかつ抑うつ度の高いHC-HD群(MDCQ≧27かつBDI-II≧14)の2群に分けられた。両群の栄養素・食品摂取量を比較したところ、HC-HD群のEPA、DHA、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量はLC-LD群よりも有意に低かった。さらに、HC-HD群では、亜鉛、セレン、モリブデン、パントテン酸といったその他の微量栄養素も有意に減少していた。食品摂取量に関しては、HC-HD群の魚介類の摂取量は、LC-LD群よりも75%低かった(12.8〔0~107.7〕g vs 53.8〔2.6~148.7〕g、P=0.001)。 本研究について著者らは、「本研究から、魚介類の摂取量は、不定愁訴の重症度および抑うつ状態に関連があることが分かった。魚介類の摂取または、EPA、DHA、ビタミンDなどの摂取が、精神神経疾患の不定愁訴およびうつ病の予防・管理に有効であるかどうかを検証するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。 本研究の限界点については、推定された栄養素および食品量は絶対値でなく概算値であったこと、食事の質や抑うつ症状の有病率に影響する社会経済的地位のような共変量を考慮していないことなどを挙げている。

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コーヒーは片頭痛予防に有効なのか?

 片頭痛は、不十分な薬物療法、不安、睡眠障害、うつ病、ストレスなど、さまざまなリスク因子の影響を受ける慢性的な神経疾患である。コーヒーは多様な生理活性作用が報告されており、急性片頭痛の症状緩和に役立つといわれているが、長期にわたる摂取を中止した場合、予期せぬ片頭痛の誘発につながる可能性がある。片頭痛患者の一部は、カフェインを潜在的な誘発因子として捉えているが、カフェインの片頭痛予防効果はいくつかの研究で示唆されている。コーヒーとその成分が片頭痛に及ぼす複雑な生理学的・薬理学的メカニズムは、依然として十分に解明されていない。中国・Shulan (Anji) HospitalのAyin Chen氏らは、コーヒーとその成分が片頭痛発症リスクに及ぼす影響を明らかにする目的で、メンデルランダム化(MR)解析を用いた調査を実施した。Neurological Research誌オンライン版2025年4月20日号の報告。 交絡因子およびバイアスリスクを低減するため、遺伝子変異を曝露量の代理指標としたMR解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー摂取と片頭痛リスクの間に、有意な逆相関が認められた。この結果は、コーヒーが頭痛障害を予防する可能性があるという過去の疫学研究と一致している。・MR解析では、7-メチルキサンチンが片頭痛のリスク低下と関連していたのに対し、カフェ酸硫酸塩はリスク上昇と関連していた。・感度分析では、トリゴネリンを除くすべての成分について一塩基多型選択に異質性は認められず、MR-Egger法およびMR-PRESSO検定の両方で水平多面発現性や外れ値は認められなかった。 著者らは、「本結果により、コーヒーおよびその成分が片頭痛リスクに及ぼす影響が明らかとなり、有益な食事に関する推奨事項が提供される」とし、「コーヒーの保護効果は、アデノシン受容体拮抗作用と密接に関連している可能性があり、根底にあるメカニズムの解明には、さらなる研究が求められる」とまとめている。

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抗精神病薬の過剰治療はどう変化しているのか

 抗精神病薬による過剰治療は、副作用の観点から重要な懸念事項である。これまでの研究では、抗精神病薬の多剤併用や過剰な高用量投与に焦点が当てられてきた。オランダ・フローニンゲン大学のStijn Crutzen氏らは、潜在的な過剰治療、抗精神病薬の多剤併用、抗精神病薬の総投与量、主観的な副作用の負担について、経時的な変化をマッピングし、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を調査するため、長期ケアを受けている患者を対象とした自然主義的コホート研究のデータを解析した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2025年5月7日号の報告。 自然主義的縦断的コホート研究であるPHAMOUS調査のデータ(2013~21年)を用いた。潜在的な過剰治療の定義は、リスペリドン換算5mg超の抗精神病薬投与量、または高い主観的な副作用の負担を伴う抗精神病薬の多剤併用とした。潜在的な過剰治療、多剤併用、総投与量、主観的な副作用の負担における傾向を調査し、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を評価するため、混合効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・全体で、5,107例における1万5,717件の観察データを用いた。・対象患者の3分の1に過剰治療の可能性があり、経時的な変化は認められなかった。・抗精神病薬の多剤併用の頻度は増加していたが、リスペリドン換算5mg超の投与量の頻度は減少しており、主観的な副作用の負担は軽減していた。・抗精神病薬の高用量投与および多剤併用は、主観的な副作用の負担の増加と関連が認められた。 著者らは、「抗精神病薬による過剰治療の可能性がある患者は、治療変更の必要性の評価のため再調査すべきである」とし、「患者が本当に過剰治療されているかどうかの評価には、患者の病歴、再発回数、患者の希望、全体的な機能、抗精神病薬治療の減少を試みた治療歴、過去の疾患重症度を考慮する必要がある」とまとめている。

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世界の主要な20の疾病負担要因、男性の健康損失が女性を上回る

 2021年の世界疾病負担研究(GBD 2021)のデータを用いた新たな研究で、女性と男性の間には、疾病負担の主要な20の要因において依然として格差が存在し、過去30年の間にその是正があまり進んでいないことが示された。全体的に、男性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や交通事故など早期死亡につながる要因の影響を受けやすいのに対し、女性は筋骨格系の疾患や精神障害など致命的ではないが長期にわたり健康損失をもたらす要因の影響を受けやすいことが示されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のVedavati Patwardhan氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Public Health」5月号に掲載された。 Patwardhan氏らは、GBD 2021のデータを用いて、1990年から2021年における10歳以上の人を対象に、世界および7つの地域における上位20の疾病負担要因の障害調整生存年(DALY)率について、男女別に比較した。DALYとは、障害や疾患などによる健康損失を考慮して調整した指標であり、1DALYとは1年間の健康な生活の損失を意味する。20の疾病負担要因は、COVID-19、心筋梗塞、交通事故、脳卒中、呼吸器がん、肝硬変およびその他の慢性肝臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰痛、うつ病、結核、頭痛、不安症(不安障害)、筋骨格系疾患、転倒、下気道感染症、慢性腎臓病、アルツハイマー病およびその他の認知症、糖尿病、HIV/エイズ、加齢性難聴およびその他の難聴であった。 その結果、2021年では、検討した20要因のうちCOVID-19や肝臓病など13要因で男性のDALYは女性よりも高いことが推定された。男女差が最も顕著だったのはCOVID-19で、年齢調整DALY(10万人当たり)は男性で3,978、女性で2,211であり、男性の健康負担は女性に比べて44.5%高かった。COVID-19の負担は地域を問わず男性の方が高かったが、特に差が大きかったのはサハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ諸国、カリブ海諸国だった。 DALYの男女差の絶対値が2番目に大きかった要因は心筋梗塞で、10万人当たりのDALYは男性で3,599、女性で1,987であり、男性の健康負担は女性より44.7%高かった。地域別に見ると、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアでは男女差が大きかった。 また、女性に比べて男性に多い要因は、年齢が低いほどリスク増加が小さい傾向が認められたが、交通事故による負傷は例外であり、世界中で10〜24歳の若い男性で不釣り合いに多く発生していた。 一方、女性は長期的な健康損失をもたらす疾患において男性よりもDALYが高い傾向が見られた。特にDALYの男女差が顕著だったのは、腰痛(絶対差478.5)、うつ病(同348.3)、頭痛(332.9)であった。また、女性には、人生の早い段階からより深刻な症状に悩まされ、その症状は年齢とともに悪化する傾向も認められた。 論文の共著者である米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のGabriela Gil氏は、「女性の健康損失の大きな要因、特に筋骨格系疾患と精神疾患は十分に注目されているとは言えない。女性のヘルスケアに対しては、性や生殖に関する懸念などこれまで医療制度や研究資金が優先してきた領域を超えた、より広範な取り組みが必要なことは明らかだ」と述べている。 論文の上席著者であるIHMEのLuisa Sorio Flor氏は、「これらの結果は、女性と男性では経時的に変動したり蓄積されたりする多くの生物学的要因と社会的要因が異なっており、その結果、人生の各段階や世界の地域ごとに経験する健康状態や疾患が異なることを明示している」との見方を示す。その上で、「今後の課題は、性別やジェンダーを考慮した上で、さまざまな集団において、早期から罹患率や早期死亡の主な原因を予防・治療する方法を設計して実施し、評価することだ」と述べている。

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高齢者の不眠を伴ううつ病に対する薬理学的介入効果の比較〜ネットワークメタ解析

 高齢者における睡眠障害を伴ううつ病に対するさまざまな薬物治療の有効性と安全性を比較するため、中国・北京大学のJun Wang氏らは、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychogeriatrics誌2025年5月号の報告。 主要な国際データベース(Medline、Cochrane Library、Scopus、Embase、WHO国際臨床試験登録プラットフォーム、ClinicalTrialsなど)より、事前に設定したワードを用いて、検索した。薬物治療またはプラセボ群と比較したランダム化比較試験(RCT)を対象に含めた。ネットワークメタ解析におけるエフェクトサイズの推定には、標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を用いた。データ解析には、頻度主義アプローチを用いた。安全性評価には、治療中に発現した有害事象および重篤な有害事象を含めた。 主な内容は以下のとおり。・検索された文献8,673件のうち、12件のRCTが基準を満たした(3,070例)。・すべての薬物治療介入は、不眠症重症度指数(ISI)およびうつ病スコアの低下に有効的であった。・セルトラリンは、高齢のうつ病および不眠症患者におけるISIおよびハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)の改善において、最も効果的な介入である可能性が高かった。【ISI】SMD:−2.17、95%CI:−2.60~−1.75【HAM-D】SMD:−3.10、95%CI:−3.60~−2.61・安全性評価では、エスシタロプラム、zuranoloneで報告された患者数において、ゾルピデム、seltorexant、エスゾピクロンは、プラセボまたは他の治療薬と比較し、重篤な有害事象リスクが高かった。 著者らは「セルトラリンは、高齢者の睡眠障害を伴ううつ病において最適な治療選択肢である可能性が最も高かった。エスシタロプラム、zuranolone、seltorexantでは、ISI改善において、有意な効果が認められなかった。これらの結果はエビデンスに基づいた臨床実践に役立つはずである」と結論付けている。

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研修医の自殺、研修開始後3ヵ月が最多

 米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)が行った以前の調査によると、2000~14年の米国における研修医・フェローの主な死亡原因は自殺とがんであった1)。後続研究としてACGMEは2015~21年のデータを分析し、以前の結果と比較した。Nicholas A. Yaghmour氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2025年5月14日号に掲載された。 主要アウトカムは前回(2000~14年)と今回(2015~21年)の2つの期間における研修医・フェローの死亡率の差であった。副次的アウトカムは一般の同年代との死亡率の比較、専門分野別の死亡原因の差異だった。 主な結果は以下のとおり。・2015~21年に370万778人の研修医・フェローが96万1,755人年分の研修に参加した。この期間に161人(女性50人[31.1%]、年齢中央値31[SD 29~35]歳)が研修中に死亡した。・47人(29.2%)が自殺、28人(17.4%)ががん、22人(13.7%)がその他の疾患、22人(13.7%)が事故、21人(13.0%)が事故による中毒で死亡した。・がんによる死亡率は、前回から今回にかけて減少した。一方、自殺を含むその他の全原因による死亡率には変化がなかった。・両期間とも、自殺による死亡は研修1年目の最初の3ヵ月間に最も多く発生し(今回:9/47人)、研修の最初の1年間での発生が3割(同:14/47人)を占めた。・今回の研修医・フェローの全原因による死亡率(自殺含む)は、同年代の比較対象群と比べて低かった。・専門分野別では、自殺の死亡率が最も高かったのは病理診断科(10万人年当たり19.76人)、がんの死亡率が高かったのは精神科(10万人年当たり9.67人)、中毒の死亡率が高かったのは麻酔科(10万人年当たり15.46人)だった。 研究者らは「両期間を比較すると、がんによる死亡率が減少した一方、全原因による死亡率は変化しなかった。両期間中に観察された、研修直後の3ヵ月における自殺数は依然として懸念される。研修医支援に向けた今後の取り組みは、とくに初期のストレスの要因と軽減に焦点を当てる必要がある」としている。

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抗精神病薬投与が脳構造変化に及ぼす影響

 精神疾患の自然経過に関連する潜在的な交絡因子を考慮せずに、抗精神病薬がMRI脳構造指標に及ぼす影響を明らかにすることは困難である。しかしながら、薬物治療中の患者を対象とした横断研究および縦断研究の結果を解明し、最終的な抗精神病薬の治療効果に及ぼす生物学的メカニズムの理解を深めるためには、これらの影響をより深く理解する必要がある。英国・King's College LondonのPierluigi Selvaggi氏らは、疾患の影響がない場合に、抗精神病薬投与がMRI脳構造指標の変化と関連しているかを明らかにするため、本検討を行った。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年5月7日号の報告。 健康ボランティアを対象としたランダム化二重盲検カウンターバランス順序クロスオーバープラセボ対照試験を実施した。抗精神病薬を1週間投与後にプラセボを投与する群またはその逆の投与を行う群にランダムに割り付けた(24例)。抗精神病薬には、Arm1ではamisulpride(400mg/日)、Arm2ではアリピプラゾール(10mg/日)を用いた。 主な内容は以下のとおり。・amisulpride群は、プラセボ群と比較し、左被殻および右尾状核のMRI容積推定値が増加した。・アリピプラゾール群は、プラセボ群と比較し、右被殻のMRI容積推定値が増加した。・皮質容積推定値、皮質厚、皮質表面積、T1緩和時間では、影響は認められなかった。・線条体の変化は、投薬中止後数週間以内で回復した。 著者らは「2種類の異なる抗精神病薬のいずれかを短期間投与すると、T1強調MRIで測定された線条体容積が一時的に増加するが、投与中止後、皮質の変化を伴わずに急速に正常化することが明らかとなった。線条体のMRI容積の違いは、少なくとも部分的に薬理学的作用に影響を及ぼす可能性を示唆している」としている。

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うつ病に対するブレクスピプラゾール増強療法とミトコンドリア遺伝子発現変化

 うつ病患者の20%は治療抵抗性を示し、いくつかの抗うつ薬単剤療法では治療反応が得られない。このような治療抵抗性うつ病患者には、抗精神病薬による増強療法が治療選択肢の1つとなりうる。しかし、抗精神病薬増強療法のメカニズムは、依然として解明されていない。愛媛大学の近藤 恒平氏らは、遺伝子発現レベルにおけるブレクスピプラゾール増強療法の作用メカニズムを解明するため、本研究を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2025年5月6日号の報告。 マウス神経紋由来の細胞株Neuro2a細胞に媒体、エスシタロプラム、ブレクスピプラゾール、ブレクスピプラゾール+エスシタロプラムを投与し、RNAシークエンシングを行った。20日間投与後のマウスの前頭前皮質、海馬およびうつ病患者の全血における遺伝子発現を測定した。 主な結果は以下のとおり。・定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、RNAシークエンシングおよび遺伝子オントロジー解析において、ミトコンドリア(MT)関連遺伝子の発現上昇が確認された。・これらの発現上昇遺伝子は、Neuro2a細胞およびCaco2細胞の両方で検証された。・うつ病患者の全血において、MT-ATP8の発現低下が認められた。・増強療法を行ったマウスでは、前頭前皮質および海馬において、MT-mRNAの発現変化が確認された。 著者らは「in vitroおよびin vivoの両実験において、ブレクスピプラゾール増強療法によるMT-mRNAの発現変化が確認された。これは、うつ病の病態解明および臨床実践を理解するうえで重要な知見となりうる」と結論付けている。

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超加工食品の摂取は早期死亡リスクを高める

 超加工食品の摂取量が多いほど早期死亡リスクも高まるようだ。新たな研究で、超加工食品の摂取に起因する早期死亡は、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の割合が高いほど増加することが明らかになった。オスワルド・クルス財団(ブラジル)のEduardo Nilson氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Preventive Medicine」に4月28日掲載された。 超加工食品は、飽和脂肪酸、でんぷん、添加糖など、主に自然食品から抽出された物質で作られており、風味や見た目を良くし、保存性を高めるために、着色料、乳化剤、香料、安定剤などさまざまな添加物が加えられている。具体例は、パッケージ済みの焼き菓子、砂糖が添加されたシリアル、すぐに食べられる、または温めるだけで食べられる製品などが挙げられる。研究の背景情報によると、超加工食品の摂取は心臓病、肥満、糖尿病、一部のがん、うつ病など32種類の健康問題と関連付けられているという。 今回の研究では、まず、過去の研究で用いた超加工食品の摂取とあらゆる原因による死亡(全死亡)との関連に関する10件の研究のうち、基準を満たした7件を選出し、量反応関係メタアナリシスを実施した。対象国は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、メキシコ、英国、米国の8カ国で、対象者の総計は23万9,982人であった。国ごとの超加工食品の摂取量は、コロンビア(15.0%)とブラジル(17.4%)では少なめ、チリ(22.8%)とメキシコ(24.9%)では中程度であり、オーストラリア(37.5%)、カナダ(43.7%)、英国(53.4%)、米国(54.5%)では多かった。 解析の結果、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の摂取量が10%増加するごとに全死亡リスクが2.7%上昇することが明らかになった(相対リスク1.027、95%信頼区間1.017〜1.037、P<0.0001)。次に、この相対リスクを用いて、早期死亡のうちどの程度が超加工食品の摂取に起因すると推定されるかを評価するために人口寄与割合(PAF)を計算した。その結果、超加工食品が原因と推定される早期死亡の割合は約4%から約14%に及ぶことが明らかになった。具体的には、最も低かったのがコロンビアの3.9%(7万2,940件)、最も高かったのは英国の13.8%(12万8,743件)、米国の13.7%(90万6,795件)であった。 Nilson氏は、「高所得国では超加工食品の摂取量はすでに高レベルだが、10年以上にわたって高止まりしたままだ。一方、低・中所得国では摂取量が増加し続けていることは懸念される。これは、現時点では高所得国での超加工食品摂取がもたらす健康への負担は他の国より高い一方で、その負担が他の国々でも増加しつつあるということだ」と述べている。 Nilson氏はさらに、「これは、世界的に超加工食品の摂取量を抑制し、地元の新鮮で最小限の加工食品に基づいた伝統的な食生活を促進する政策が喫緊で必要なことを示している」と「American Journal of Preventive Medicine」の発行元であるElsevier社のニュースリリースで強調している。

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高齢者の転倒対策、現場は何をすべきか?【外来で役立つ!認知症Topics】第29回

「縛るな!」――身体拘束ゼロへの取り組み病院・施設の高齢者における訴訟は増加しているが、訴訟の2大原因は、転倒と誤嚥だそうだ。いずれであれ、その判決内容、賠償金額によっては病院・施設の死活問題になりかねない。そこで誰もが転倒の予防対策として考えるのは身体抑制だろうが、これは人の尊厳を損なう最たるものである。さて「身体拘束ゼロ」、わが国のいわゆる老人病院で始まった高齢者医療・ケアの改革運動である。2001年には厚生労働省が『身体拘束ゼロへの手引き』を作成し、また、2024年には診療報酬改定で身体拘束最小化の基準が設けられた。とくに慢性期病院や介護施設は、身体拘束の最小化に向けて懸命に取り組んできた歴史がある。この流れの源流は、今年4月に亡くなられた吉岡 充医師にある。彼は、東大病院と都立松沢病院の勤務を経て、ご尊父が営む八王子の精神科病院に移られた。そこには数十年の入院生活で高齢化した統合失調症の患者さんたちがいた。これが彼の高齢者医療への取り組みの始まりだったと思う。1980年代に、この病院でアルバイトをさせてもらっていた私はこの当時、彼と初めて会った。「患者さんを縛っちゃいけないよ!」「どうして病院ではすぐに患者を縛るんだ? 朝田、おかしいと思わないか」という会話をした。正直、「理想はそう、病院では安静を守れない患者も、すぐに転んで骨折する患者もいます、必要悪ですよ」が私の本音だった。しかしその後、吉岡医師は類まれな意志力・行動力で「抑制廃止」(彼はいつも「縛るな!」と言っていた)を全国展開していった。転倒による死亡は交通事故の3倍こうした抑制廃止の裏面が、転倒である。今日、高齢者の転倒・転落は、広く高齢者医療の大きな課題として一般の人にもよく知られている。転倒による大腿骨骨頭骨折などの骨折はもとより、死亡例も驚くほど多い。2023年の資料では、こうした事故による死亡者数は全国で1万2,000例弱にも上り、交通事故死の3倍以上だというから恐ろしい1)。ところで老年医学は、1950年代からイギリス、北欧で芽生え成長してきた。この分野では、イギリスのバーナード・アイザックス(Bernard Isaacs)が1965年に提唱した「老年医学の4巨人」、すなわち転倒、寝たきり、失禁、認知症が今日に至るまで主要テーマである。筆者は1980年代にイギリスの大学老年科に留学して、老年医学の病棟のみならず患家にも立った。その影響で、帰国後は精神科領域における転倒を臨床研究のテーマにし、この領域の進歩に努めて触れてきた。そのポイントをまとめると、まずは転倒の危険因子、転倒予防、予後、そして手術と手術適応である。個人の転倒危険因子では、より高齢であること、転倒既往、認知症、パーキンソン病などの神経疾患、身体機能・ADLの低下、向精神薬など薬剤、飲酒などがある。また施設の住宅設備面から段差の解消、手すりや常夜灯の設置がある。一方で床にこぼれた水分や尿などを可及的速やかに拭き取ったり、落ちた紙などの障害物を除いたりすることも極めて重要である。というのは転倒の直接原因では、滑る・躓くが最多とされるからである。次に予後では、認知症者では、身体機能はもちろん、生命予後もよくない。アメリカのナーシングホームのデータ2)では、大腿骨頸部骨折の手術がなされた者では、6ヵ月以内に35~55%が、2年以内に64%が亡くなったとされる。また手術をしてもこうした患者の機能レベルは容易に転倒前まで戻らないこともわかっている。それだけに手術適応の決定も簡単ではない。これまで転倒予防として繰り返し強調されたのは、脚力を中心とした体力増強の運動である。もっともこの運動や薬剤の調整で発生リスクを2割ほど低減したとの数少ない論文はあるが、リスク低減のエビデンスは乏しい。今のところ、予防の決め手はないというのが現実だ。病院・施設はどのような対策をすべきか?さて訴訟に関し、転倒を含めた事故で病院・施設に過失があるとされるのは、「結果予見義務」と「結果回避義務」が尽くされなかった場合である。転倒・転落が起こるかもしれないという「結果予見義務」だが、裁判の論点にならなくなってきている。なぜなら今日では、認知症の有無、転倒歴、睡眠薬の使用などの転倒・転落リスクは、ほぼしっかり確認されているからである。そこで論点になるのが転倒・転落を防ぐための備え・工夫をしたかという「結果回避義務」になる。もっとも既述のように、転倒・転落は完全には防ぎ難いことはわかっている。それだけに事情通の弁護士によれば、転倒は予見の可能性が難しいだけに、判決として「病院・施設に責任ありとするが、賠償額を低く抑えることでバランスをとる」のが主流ではないかとの由。以上をまとめると、病院・施設側として転倒リスクの評価はまず入院時に不可欠である。そして計画した予防策は明文化し、たとえば定時の見守り・チェックなどは必ず記入する。また濡れた床拭き、靴の履き方直しなど臨機応変に対応したことの記録を残し、結果回避義務を強く意識した努力を記録として蓄積すべきだろう。参考1)厚生労働省「不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)」(e-Stat). 2)Berry SD, et al. Association of Clinical Outcomes With Surgical Repair of Hip Fracture vs Nonsurgical Management in Nursing Home Residents With Advanced Dementia. JAMA Intern Med. 2018;178:774-780.

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