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プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか

 1970年代以降、統合失調症患者への薬物治療の基本である抗精神病薬の一般的な有害事象として、高プロラクチン血症(HPRL)に対する認識が臨床医において浸透してきている。第二世代抗精神病薬(SGA)による治療中の血漿中プロラクチン(PRL)レベルは第一世代抗精神病薬使用時と比較して低いが、これらのPRLレベルに及ぼす詳細な影響は完全には明確にされていない。さらに、新規に承認された抗精神病薬[アセナピン、イロペロリドン、ルラシドン(いずれも国内未承認)]のPRLレベルに及ぼす影響に関するレビューは現時点においてない。ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のJ. Peuskens氏らは、第二世代抗精神病薬および新規に承認された抗精神病薬のPRL上昇への影響を評価するため、MEDLINE文献検索によるレビューを行った。その結果、アセナピンとイロペロリドンはクロザピンと同程度の、ルラシドンはジプラシドン(国内未承認)およびオランザピンと同程度のプロラクチン上昇作用を有する所見が得られたことを報告した。CNS Drugs誌2014年3月号の掲載報告。 著者らは、PRLの生理学、PRLの測定、診断、原因、HPRLの機序と転帰、思春期および成人患者におけるSGAおよび新しく認可された抗精神病薬に伴うHPRL新規発症の発生経過、再診時に高値が維持されているPRLに関する疑問などについて言及することを目的に本レビューを行った。MEDLINEデータベース(1966年~2013年12月)を用いて文献検索を行い、HPRLの最新情報とSGAおよび新規承認抗精神病薬のPRL上昇に関する適用可能なエビデンスを概説している代表的な文献を特定した。 主な結果は以下のとおり。・HPRLは通常、正常上限値を超えるPRLレベルの持続と定義されているが、本検討における上限値は報告によりさまざまであるため、試験間の解釈や比較は困難であった。さらに多くの報告が、PRL測定に関する詳細なデータを十分に提供していなかった。・アミスルプリド(国内未承認)、リスペリドン、パリペリドンに関しては、HPRLが高頻度であるとの報告が一貫してなされていた。・一方、アリピプラゾールとクエチアピンは、PRLプロファイルに悪影響を及ぼさないことが示された。・すべてのSGAは、とくに治療開始時にPRL上昇を惹起しうること、HPRLの新規発症を引き起こす可能性があることなどが示された。・新規承認抗精神病薬によるPRL上昇作用から、アセナピンとイロペロリドンはクロザピンと、ルラシドンはジプラシドンとオランザピンと、同程度のPRLプロファイルを有していることが示唆された。・一般に、抗精神病薬によるPRL上昇は用量依存性であるが、PRL上昇のポテンシャルを有する抗精神病薬(アミスルプリド、リスペリドン、パリペリドンなど)は、低用量であってもPRLレベルに大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。・一方、PRLレベルに及ぼす影響が小さい抗精神病薬は、ほとんどすべての用量でPRLレベルは不変(クエチアピン)または減少(アリピプラゾール)が認められた。・PRLを上昇させる抗精神病薬は、長期服用後も忍容性が示され、PRLレベルの低下も起こりうるが、大半は正常上限値を超えるレベルが維持された。・小児および思春期患者における抗精神病薬のPRLプロファイルは、成人と同様のようであった。・抗精神病薬によるプロラクチン上昇の影響は、多くの場合、下垂体前葉のプロラクチン産生細胞レベルにおけるドパミンD2受容体への親和性(および、その他の神経伝達メカニズム)、血液脳関門通過性と関連していた。・抗精神病薬は、HPRLを引き起こす最も一般的な薬物要因であるが、最近の研究では、初回エピソード精神病または精神状態がリスクにさらされている患者において、抗精神病薬の治療を受けていない状況でHPRLが存在する可能性が示されていた。関連医療ニュース 抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー 薬剤誘発性高プロラクチン血症への対処は 初回エピソード統合失調症患者はプロラクチン値が高い

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自殺リスクの高いパーキンソン病患者の特徴は

 トルコのパーキンソン病患者において、若年発症、罹病期間、うつ、衝動制御障害(ICD)が自殺念慮の高いリスクと関連していることが、トルコ・Erenkoy Mental Health and Neurology Training and Research病院のBetul Ozdilek氏らによって明らかとなった。Neuropsychiatric disease and treatment誌2014年3月26日号掲載の報告。 本研究は、トルコのパーキンソン病患者において、自殺念慮と自殺企図を予測する因子を調査することを目的とした。 120例のパーキンソン病患者を対象とした。臨床所見は統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)を基に評価を行った。重症度はホーエン・ヤール(H&Y)分類、障害の程度はSchwab & England ADLスケールを用いて評価を行った。精神鑑定は、精神障害の診断・統計マニュアル(DSM-IV)第1軸障害に基づいた構造化面接を基準とし、一人の精神科医によって行われた。うつの重症度は、ハミルトンうつ病評価尺度を用いて評価した。自殺念慮と自殺企図については、患者が生存期間中に経験した場合を「あり」とした。自殺リスクを評価するために、自殺確率尺度を用いた。データは、自殺念慮と自殺企図に関連する変数を識別するために、ロジスティック回帰モデルによって解析した。 主な結果は以下のとおり。・ロジスティック回帰分析の結果、教育レベル、病気の発症年齢、罹病期間、うつ病、および過去にICD行動が認められることが、自殺念慮の有意な予測因子であった。・とくに、うつ病および過去にICD行動を認めた患者では、自殺念慮リスクはそれぞれ5.92倍、4.97倍に増加した。・自殺企図患者は一人もいなかったが、パーキンソン病患者のうち11.6%(14/120例)の患者が生涯の間に自殺念慮を経験していた。

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膝OA痛や慢性腰痛へのデュロキセチン、治療効果の判断はいつ?

 疼痛治療戦略を変更する時期に関する研究は十分ではなく、慢性疼痛における差の1つとなっている。オーストラリア・メルボルン大学のOwen D Williamson氏らは、変形性膝関節症による痛み(膝OA痛)や慢性腰痛症に対するデュロキセチン治療について、その治療戦略を変更する判断時期を明らかにする検討を行った。結果、4週時点での疼痛改善が10%未満の場合は、12週間治療をしても疼痛改善効果の達成は限定的であることを報告した。Clinical Therapeutics誌オンライン版2014年3月17日号の掲載報告。 研究グループは、膝OA痛または慢性腰痛症を有する非うつ病患者を対象とした、デュロキセチン治療とプラセボを比較した試験から、疼痛重症度の変化の事後分析を利用して検討を行った。 分析に組み込むための試験選択は、試験デザインの類似性をベースとした。疼痛重症度は、数値的評価尺度(0:痛みなし~10:最も激しい痛み)を用いて測定し、患者日誌に毎日記録して、24時間平均値を求めてから週平均値を算出し、疾患状態別にプールした。疼痛重症度が、ベースラインから30%以上改善の場合は中等度改善と定義し、10%未満改善の場合は最小改善と定義した。 非改善または最小改善患者について、デュロキセチン治療3ヵ月間での最小改善達成の確率を、治療2、4、6週後にKaplan-Meier法を用いて推算した。同様に、最小改善(疼痛重症度改善30%未満)を達成しなかった全患者についても算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、デュロキセチン60または120mg/日投与に無作為に割り付けられた膝OA痛患者239例と慢性腰痛症患者541例であった。・治療2週後に最小改善であった患者が、3ヵ月後に中等度改善を達成する確率は40%未満であった。・治療4週後に最小改善であった患者の場合は、3ヵ月後の中等度改善達成率は膝OA痛で30%未満、慢性腰痛で25%未満であった。・治療2週後に中等度改善であった患者は、中等度改善達成率が膝OA痛62%、慢性腰痛52%であった。・治療4週後に中等度改善であった場合は、それぞれ50%未満および40%未満であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「膝OA痛または慢性腰痛患者でデュロキセチン治療を受けている患者について、4週後の疼痛改善が10%未満(最小改善)である場合は、最終的に12週(3ヵ月)後に最小改善さえ達成することが限定的である可能性が示唆された」とまとめた。

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てんかん患者の精神疾患有病率は健常人の8倍

 アイルランド・ボーモント病院のMaurice J Clancy氏らが行ったシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、てんかん患者において精神疾患を有する人は最大6%存在し、そのリスクは健常対照と比較して8倍高かったことが報告された。また、側頭葉てんかん患者で7%と、とくに高かったことも判明した。てんかんは、精神疾患のリスク因子であると思われてきたが、著者は、「今回明らかになった関連は、さらなる検討により、精神疾患の病因学的な手がかりが得られる可能性を示唆するものである」とまとめている。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年3月13日号の掲載報告。 リスクとしてのてんかんのエフェクトサイズについては、試験方法の違いやてんかんの診断基準の変化などもあり、試験間の所見にはばらつきがみられる。研究グループは、システマティックレビューとメタ解析にて、てんかん患者の精神疾患有病率、ならびに対照群と比較した推定リスクを評価する検討を行った。2010年9月時点でPubMed、OVIDMEDLINEなどの電子データベースをソースに文献検索を行った。検索キーは、有病率、発生率、割合、率、精神疾患、統合失調症、統合失調様障害、てんかん、発作、側頭葉てんかんであった。 主な結果は以下のとおり。・参考文献、文献参照リストも含めた検索の結果、215論文が特定された。そのうち58本(27%)がレビューに関連したデータを有していた。157本はさらなる詳細評価の結果、除外された。・レビュー包含試験のうち10%は、住民ベースの試験であった。・対照と比較した、てんかん患者の精神疾患リスクに関するプールオッズ比は、7.8であった。・てんかん患者における精神疾患のプール推定有病率は、5.6%(95%CI:4.8~6.4%)であった。・試験間の不均一性は大きかった。・側頭葉てんかん患者の精神疾患有病率は7%(同:4.9~9.1%)であった。てんかん患者の発作間欠期の精神疾患有病率は5.2%(同:3.3~7.2%)、発作後の精神疾患有病率は2%(同:1.2~2.8%)であった。関連医療ニュース 扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんの特徴は:国立精神・神経医療研究センター てんかん患者の頭痛、その危険因子は?:山梨大学 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

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うつ病患者、SSRI治療開始1年以内に約半数がセカンド治療に

 大うつ病性障害(MDD)患者において、ファーストライン治療でSSRI投与を受けた人のうち、約半数がセカンドライン治療を受けており、その多くがアドオン療法を受けていることが明らかになった。米国・イーライリリー社のSusan Ball氏らが診療報酬支払請求データベースを分析して報告した。ただしセカンドライン治療は、残存症状の寛解を目標としたものと思われ、著者らは「今回の分析結果は、寛解を達成するために、医師と患者がもっとよりよきパートナーとなり付加的介入を行う必要があることを示唆するものであった」とまとめている。Annals of General Psychiatry誌オンライン版2014年3月19日号の掲載報告。 本検討は、2010年にSSRI単独治療を開始したMDD患者の、治療パターン、治療コストとセカンドライン治療との関連を調べることを目的としたものであった。MDDの診断を受け、SSRI単独治療を受けており、初回処方日が特定できた患者の支払請求データベースを分析して行われた。被験者は、18歳以上で、初回処方特定日より1年前(pre-index)から同1年後(pro-index)の間の治療が保険でカバーされており、pre-index期間中に抗うつ薬の処方を受けていなかった患者であった。患者特性、SSRI開始薬、セカンド治療で最も処方頻度が高かった薬、および年間医療費を分析した。 主な結果は以下のとおり。・分析には5,012例の患者が組み込まれた。女性が65.2%、平均年齢は41.9歳であった。・最も処方頻度が高かったSSRIは、シタロプロム(30.1%)、セルトラリン(27.5%)であった。・SSRI初回処方特定日後の1年間(pro-index)に、セカンドライン治療を受けた人は52.9%であった。・セカンドライン治療は、アドオン療法の頻度がスイッチ療法の2倍で、アドオン療法において最も多くみられた処方薬は、抗不安薬(40.2%)および抗うつ薬(37.1%)であった。・セカンドライン治療(アドオンまたはスイッチ)を受けた患者は、SSRI治療を継続した患者または治療を中断した患者と比較して、年間医療費が高かった。・なお本検討は、支払請求データベースを用いたもので、投薬量や臨床症状、有害事象、治療反応に関する情報はなく、限定的なものであった。関連医療ニュース 抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か SSRI/SNRIへの増強療法、コストパフォーマンスが良いのは 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学

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双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか

 双極性障害(BD)患者は大うつ病性障害(MDD)患者に比べて、自殺企図の頻度が高いことが示された。フィンランド国立健康福祉研究所のK Mikael Holma氏らが、BD患者とMDD患者における自殺企図の頻度と要因について調べた結果、自殺企図の要因として、混合性エピソードに代表されるハイリスク病期の期間が長いことが示唆されたという。これまで自殺企図のリスクが、BD患者とMDD患者で異なるのか否かは不明であった。Bipolar Disorders誌オンライン版2014年3月17日号の掲載報告。 研究グループは本検討において、BD患者とMDD患者における自殺企図の累積リスク差が、ハイリスク期の期間の違いによりみられるのか、あるいはハイリスク期における単位時間当たりの発生頻度によってみられるのか、あるいはその両方に起因するのかを検討した。Jorvi Bipolar Study(176例、18ヵ月)とVantaa Depression Study(249例、5年間)の2つのコホートを対象に、さまざまな病期における自殺企図発生頻度をプロスペクティブ生命表に基づいて比較した。リスク因子と診断との関連は、Cox比例ハザードモデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・18ヵ月の間に自殺企図をした患者は、BDが19.9%、MDD が9.5%であった。・BD患者では混合性エピソード期は4.6%であったが、大うつ病性エピソード期は35%、閾値下うつ病期は39%であり、いずれもMDD患者(大うつ病性エピソード期:21%、閾値下うつ病期:31%)に比較して長かった。・自殺企図の合計発生頻度は、完全寛解期と比べて閾値下うつ病期は5倍、大うつ病性エピソード期は25倍、混合性エピソード期は65倍高かった。・症状が類似している期間において、コホート間で自殺企図の頻度に差はみられなかった。・Coxモデルにおいて、大うつ病性エピソード期および閾値下うつ病期、過去に自殺企図歴がある患者、女性患者、社会的サポートが乏しい患者、40歳未満の患者においてハザード比は上昇したが、BDの診断との関連はなかった。・以上のことから、BD患者はMDD患者に比べて自殺企図の累積頻度が高かった。これは主にハイリスク病期の期間が長かったことに起因し、ハイリスク病期中の発生頻度や双極性そのものによるものではないと考えられた。・混合性エピソード期は、短期間であるものの、きわめて高頻度の自殺企図と関連していることが示唆され、自殺企図を防止するには、ハイリスク期の期間を軽減することが重要であると考えられた。関連医療ニュース 双極性障害の自殺予防に求められるのは 眠れないと自殺リスクは高まるのか うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は

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救急搬送患者に対する抗精神病薬の使用状況は

 最近の専門ガイドラインでは、救急部門(ED)に搬送されてきた激しい興奮を呈する患者へのファーストライン治療として、第二世代抗精神病薬(SGA)の経口投与が推奨されているが、現実的にはほとんど投与は行われておらず、処方の増加もみられないことが判明した。また投与されている場合は通常は経口投与で、しばしばベンゾジアゼピン系薬の併用投与を受けており、アルコール依存症患者への処方頻度が最も高かったことも明らかになった。米国・UC San Diego Health SystemのMichael P. Wilson氏らが報告した。Journal of Emergency Medicine誌オンライン版2014年3月21日号の掲載報告。 これまでEDにおいて、どのような薬物投与が行われているのか、SGAがどれくらい処方されているのかは不明であった。研究グループは、1)患者特性、ベンゾジアゼピン系の併用投与を調べ、またSGAの使用についてハロペリドールまたはドロペリドールの使用と比較すること、2)ED患者へのSGA処方率の経時的変化を調べた。2つの大学EDを2004~2011年に受診した患者コホートを後ろ向きに分析した。コホートの患者は、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン(国内未発売)の処方を受けていた。記述的分析法にて年齢、性別、ハロペリドール/ドロペリドールなど第一世代抗精神病薬(FGA)の使用、ベンゾジアゼピン系薬併用使用の割合を比較。線形回帰分析法にてSGA処方が時間とともに増大しているかを調べた。 主な結果は以下のとおり。・試験期間中にEDを受診しSGA処方を受けていた記録は、患者1,680例、1,779件であった。・EDでSGA処方を受けた患者の大半は、経口投与であった(93%)。・ベンゾジアゼピン系薬の併用は、受診者の21%でみられた。また受診者の21%がアルコールに関連した患者であった。・EDにおけるSGA使用の割合は、時間とともに増加はしていなかった。関連医療ニュース 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か?

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河川や水道水で抗うつ薬検出:東ヨーロッパ

 抗うつ薬は低濃度曝露であっても、脊椎動物・無脊椎動物のいずれにおいても中枢系および末梢神経系を通じてホメオスタシスを妨げ、水生生物に若干の有害作用をもたらす可能性がある。これまで東ヨーロッパの河川または水道水における、抗うつ薬の存在に関する報告はなかったことから、ポーランド・ワルシャワ大学のJoanna Giebultowicz氏らは、21種の抗うつ薬の出現について、ポーランドの主要河川であるヴィスワ川の特異的地点と、ワルシャワ近郊の小さな川であるウトラタ川、そしてワルシャワの水道水について調べた。その結果、河川からは21種のうち11種が、水道水からは同5種が検出されたことなどを報告した。本調査は、東ヨーロッパの水資源中の抗うつ薬の含有状況についての最初の調査報告であった。Ecotoxicology and Environmental Safety誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。 月に2回の頻度で検体を集め、固相抽出(SPE)法、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)、多重反応モニタリング(MRM)を用いて分析した。ポーランドにおける抗うつ薬の環境リスクアセスメントは、NFZ(Narodowy Fundusz Zdrowia国民保健サービス)の年報データ(医薬品の償還に関する)を基礎として推定し、ターゲット医薬品の環境中濃度(PEC)の予測値と、実測濃度(MEC)を比較した。また、抗うつ薬の環境リスクアセスメントに関するEMEA/CHMPガイドラインの適用についても考察した。 主な結果は以下のとおり。・モクロベミドやトラゾドンといった抗うつ薬が環境中に存在するかが調べられたのは本検討が初めてであった。・モクロベミド、ベンラファキシン、シタロプラムの検出濃度が最も高かった。・河川からは21種のうち11種の抗うつ薬が検出された。・最も高い濃度の抗うつ薬が観察されたのは、小さい川であるウトラタ川であった。・水道水では、シタロプラム(痕跡量:最高1.5ng/L)、ミアンセリン(最高0.9ng/L)、セルトラリン(<3.1ng/L)、モクロベミド(最高0.3ng/L)、ベンラファキシン(最高1.9ng/L)の5種の抗うつ薬だけが検出された。・一方で、このことは飲用水処理施設での不十分な除去状況を浮き彫りにした。・飲用水および水資源中における抗うつ薬の検出は、長期にわたる低曝露が起きていることを示唆するものであり、とくに、医薬品間の相互作用が起きている可能性があることを示すものであった。関連医療ニュース 難治性うつ病に対する効果的な治療は何か 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは

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抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学

 抗精神病薬に誘発される代謝異常の管理はしばしば困難であり、これらを軽減するうえで薬剤の併用は理にかなっているとされている。慶應義塾大学の水野 裕也氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬誘発性の代謝異常に対する薬物療法の有効性を明らかにすることを目的とした、システマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、各種薬剤の併用により体重増加およびその他の代謝異常の軽減が図られることが示され、なかでもメトホルミンは体重増加の軽減、インスリン抵抗性の改善、血清脂質の低下など代謝異常の是正に好ましい多彩な作用を示すことを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2014年3月17日号の掲載報告。 2013年11月までに公表された文献について、5つの電子データベースを用いて検索した。未公表の試験に関しては臨床試験登録により調査した。検索対象とした試験は、統合失調症患者を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、抗精神病薬に誘発される代謝異常に対する薬物併用の効果を主要アウトカムとしているものとした。検索した試験データから、被験者、介入、比較、アウトカムおよび試験デザインに関連する変数を抽出し分析した。主要アウトカムは体重変化とし、副次アウトカムは臨床的に意味のある体重変化、空腹時血糖値、HbA1c値、空腹時インスリン値、インスリン抵抗性、コレステロール値およびトリグリセリド値とした。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、40試験、19の独自の介入を包含した。・体重に関して最も広範囲に検討されていたのはメトホルミンであり、プラセボと比較した体重の平均差は-3.17kg(95%CI:-4.44~-1.90kg)であった。・トピラマート、シブトラミン(国内未発売)、アリピプラゾ-ル、レボキセチン(国内未発売)のプール有効性解析においても、プラセボとの間に差がみられた。・メトホルミンとロシグリタゾン(国内未発売)は、インスリン抵抗性を改善した。・アリピプラゾール、メトホルミンおよびシブトラミンは、血清脂質を低下した。・統合失調症患者において、抗精神病薬に誘発される体重増加およびその他の代謝異常の軽減が、非薬物療法単独では不十分な場合、あるいは相対的に体重への影響がない抗精神病薬への切り替えができそうもない場合は、メトホルミンをファーストチョイスとした反作用の薬物療法を行うことが文献上では支持された。関連医療ニュース 抗精神病薬性の糖尿病、その機序とは オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学 最初の1年がピーク、抗精神病薬による体重増加と代謝異常

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スタイルを気にしすぎる女性はうつに注意を

 加齢に伴う体型の変化は、女性のボディーイメージの認識に影響を与えるが、中年女性におけるボディーイメージについてはほとんど知られていない。米国・ノースウェスタン大学のKathryn L Jackson氏らは、白人およびアフリカ系アメリカ人の中年女性を対象に、ボディーイメージと抑うつ症状との関連を検討した。Archives of women's mental health誌オンライン版2014年3月13日号の報告。 対象者はシカゴのSWAN(the Study of Women's Health Across the Nation)サイトより抽出した405人。ボディーイメージはスタンカードの評価尺度を用い測定した。抑うつ症状の臨床的に有意なレベルは、CES-D(うつ病自己評価尺度)スコア16点以上と定義した。現状認知、理想的なボディーイメージの認知、実際のサイズ、質問票で得られた体重の満足度や魅力の違いとCES-Dスコア16点以上との関連はロジスティック回帰分析を用い検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・63人(15.6%)は抑うつ症状が臨床的に有意なレベルであった。・ボディーイメージに不満を持つ女性(オッズ比 1.91、p=0.04)または魅力的でないと感じている女性(オッズ比 7.74、p<0.01)ではCES-Dスコア16点以上の割合が高率で認められた。・人種間での有意な差は認められなかった。・本研究結果では、BMIによる交絡はみられなかった。・低いボディーイメージを有する中年女性では、抑うつ症状が臨床的に有意なレベルである可能性が高いことが示唆された。関連医療ニュース ロマンチックな恋愛は幸せか不安か 仕事と家庭の両立への悩み、女性ではうつ病リスク うつ病や拒食症の女性における感情調節困難調査

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ミスト(前編)【信じ込む心(宗教)】

今回のキーワード信じ込む原始宗教同調崇拝モラル(集団規範)社会構造「なんでこんなにみんなで一生懸命になるの?」皆さんは、単なる利益追求をしない医療機関などで、同僚と一致団結して働いていて、すがすがしく思う一方、「自分は特別には得しないのになんでこんなにみんなで一生懸命になってしまうんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?そのわけは「そうするのが良いから」と信じ込んでいるわけです。それでは、なぜ「信じ込む心」は起きるのでしょうか?実は、この心理には、集団の安定や一体化のために駆り立てられている心理が関係していることがよくあります。さらに、それは宗教と同じくする根っこの心理でもあります。今回は、「信じ込む心」をテーマに、2007年の映画「ミスト」を取り上げます。そして、自己愛、社会性の心理を掘り下げ、そこから宗教の起源の心理に迫っていきたいと思っています。これらの心理を、新しい科学の分野である進化精神医学や進化心理学の視点から解き明かし、私たちはこの信じ込む心とどううまく付き合っていけば良いのかをいっしょに考えていきましょう。私たちはなぜ争うのか?―自己愛性舞台はある田舎町。最初のシーンで、大嵐の後、主人公のデヴィッドの庭にあるボート小屋は、隣人のノートンさんの倒れた枯れ木によって、破壊されていました。デヴィッドは「3年前に切ってくれと頼んでたのに」と苛立ちます。以前からデヴィッドは土地の境界線争いでノートンさんともめており、仲が悪かったのです。このように、私たちは常日頃から隣人トラブルによる争いに悩まされます。規模が大きくなれば、それは領土問題などの隣国トラブルになります。もともと私たち人間を含む多くの動物は、このような縄張り争いの行動をとります。私たちの遺伝子は、縄張りを守ることで心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たち人間を含む動物の祖先は、もともと食糧や繁殖のパートナーなどの資源が限られた環境で自分の縄張りのための争い(競争)を本能的に行ってきました。そして、約700万年前にチンパンジーとの共通の祖先と分かれた人間は、この利己的な行動を動機付ける心理、つまり自分が大事であるという心理(自己愛)を進化させてきました。そして、この心理を持っている種が子孫をより残してきたわけです。さらに、約1万年前に狩猟採集による移動から農耕牧畜による定住へと私たちの生活スタイルが大きく変わりました。この時から、土地などのさまざまな所有権の概念が芽生え、争いは激化していったのです。私たちはなぜ助け合うのか?―社会性デヴィッドは状況を伝えにノートンさん宅に行きます。すると、ノートンさんの方は、枯れ木によって愛車のクラシックカーが大破していたのでした。デヴィッドは「気の毒に。心から同情するよ」と気遣います。それを聞いたノートンさんは笑みを浮かべ「そう言ってくれると嬉しいよ」「(ボート小屋については)後で保険会社の連絡先を伝える」と心を許したのでした。そして、「もしかして今日、町に行く予定はある?」とデヴィッドに尋ねます。こうして、町まで同乗させてほしいというノートンさんの申し出にデヴィッドは応じるのです。このように、私たちは、助け合うこと(協力)をきっかけにしてお互いの心の距離を縮め、親近感や友情を芽生えさせることもできます。私たちの遺伝子は、助けることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たち人間の祖先は、300~400万年前にアフリカの森から草原へ出ました。その時は、猛獣の襲撃や飢餓などの脅威があり、まだまだ弱々しい存在でした。しかし、私たちの祖先は、生き延びるために、血縁関係をもとに共同体(集団)の人数を増やしていき、助け合ったのです。そして、この助け合いを動機付ける心理、つまり相手(集団)が大事であるという心理(社会性、利他性)を進化させてきました(社会脳)。そして、この心理をより持っている種の共同体が子孫をより残してきたわけです。私たちは、自己愛性によって利己的であると同時に、社会性によって利他的でもあるのです。私たちはなぜ噂好きなのか?―情報への嗜好性町に向かう車の中で、すれ違う軍隊の車両を見てノートンさんは「きみは地元民だ」「『アローヘッド計画』、何か知らないか?」とデヴィッドに訊ねます。近くの山の上には軍の基地があるからです。デヴィッドは「ミサイル防衛に関する研究らしい」「きみも知ってるだろ」と答えます。ノートンさんは「基地には墜落したUFOと宇宙人の冷凍死体があるって聞いたよ」と冗談めかして言うと、デヴィッドは「エドナ(町の知り合い)だな」「歩くタブロイド紙だからな」と答え、噂話をして盛り上がります。このように、私たちは噂話を楽しみます。私たちの遺伝子は、噂をすることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たちは助け合い(協力)をするようになって、生存確率を高めました。しかし、同時に、協力して得た資源を横取りする種、つまり裏切り者に悩まされるようになりました。「ただ乗り遺伝子(フリーライダー)」です。この遺伝子は、みんながお金を払って乗り物に乗っているのに、1人だけただで乗ろうとするような心理を駆り立てます。私たちは、助け合いの心理を進化させる中で、実はこの困った心理も進化させてしまったのです。なぜなら進化の本来の姿は競争だからです。私たちの祖先は、信頼による協力と騙しによる競争の心理を器用に使い分けて、バランスを取りながら進化してきたのでした。つまり、私たちの心の中には、信頼の心と同時に、常に裏切りの心が潜んでいるわけです。そんな中、約20万年前に私たちの祖先が現生人類(ホモ・サピエンス)に進化してから、喉(のど)も進化して、複雑な発声ができるようになり、言葉を話すようになりました。そして、言葉によってその場にいない人のことを伝え合い、裏切り者を事前に知ることができるようになりました。さらに、裏切りに対する抑止も働き、お互いの人間関係がよりスムーズになったのです。こうして、噂を話す行動を動機付ける心理、つまり相手や自分の評判(情報)を気にする心理(情報への嗜好性)を進化させてきました。そして、この心理をより持っている種の共同体は、子孫をより残してきたわけです。かつては、共同体のあるメンバーの裏切りが成功したら、残りのメンバーたちの生存が脅かされる状況があったのでしょう。だからこそ、現代の私たちは良い噂よりも悪い噂に敏感です。自分についての悪口はもちろんですが、他人についての悪口や裏話にもつい聞き耳を立ててしまいます。私たちのおしゃべりの大半は、共通に知っている人の新しい噂話の共有であると言えます。ですので、テレビの事件報道、ゴシップ特集、ワイドショーの視聴率が良いのもうなずけます。表1 自己愛性と社会性の違い自己愛性社会性特徴競い合い(競争)利己的騙し、裏切り助け合い(協力)利他的信頼私たちはなぜ感謝の言葉を口にするのか?―互恵性の確認町のスーパーマーケットで、ノートンさんはデヴィッドに「今日は助かったよ。ありがとう」とお礼を言います。いっしょに連れられてきたデヴィッドの幼い息子ビリーはその言葉を聞いて、「友達になれたの?」「ケンカしないね」とデヴィッドに訊ねてきます。デヴィッドは「どうかな。これから友達になれそうかな」とほほ笑みます。このように、私たちは好意、感謝、同情などの気持ちをあえて言葉にして確認し合います。その言葉だけでは相手に何も物理的に得になることはありません。しかし、私たちの遺伝子は、そうすることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?その理由は好意、感謝、同情という抽象的な言葉が、助け合いの心理の証となり、将来的な見返りがなされるシンボルの役割を果たすようになったからです(返報性、互恵性)。こうして、私たち人間の祖先は、約10万年前には、様々なシンボルを用いるようになりました。シンボルは、言葉だけでなく、首飾りなどの贈り物(トークン)や貨幣にも発展していきます。私たちはなぜまとまるのが難しいのか?―認知のずれデヴィッドたちがスーパーマーケットで買い物をしていると、突然、非常サイレンが鳴り渡り、外では辺り一面に濃い霧(ミスト)が立ち込め覆い尽くします。そして、人々を飲み込んだ霧の中からは、次々と悲鳴や絶命の叫び声が聞こえてきます。ある男性は「霧の中に何かいる!」「ドアを閉めろ!」と血だらけになりながら、スーパーマーケットの中に駆け込みます。ガラス越しに見える外の濃い真っ白な霧の世界では、想像もできない何かが起こっているのです。こうして、デヴィッドたちを含む数十人の買い物客たちは、スーパーマーケットに閉じ込められてしまいます。食糧には困りませんが、電話、テレビ、ラジオなどのあらゆる通信機器が機能せず、助けも来ず、先行きも見えず、彼らは完全に孤立しています。その後、霧の中から現れた巨大なタコの触手のような吸盤によって、ある店員が皮膚を丸ごと剥ぎ取られた上に連れ去られます。このあり得ない状況をデヴィッドたちの限られた数人がまず目の当たりにします。一方、ノートンさんは、弁護士でもあることから、デヴィッドの話を「証拠が足りない」として信じられず、自然災害だと決め付けてしまいます。状況が分からない不安から苛立ちが募り、デヴィッドとノートンさんはせっかく仲直りしていたのに、また言い争いを始めます。そして、ノートンさんは、しびれを切らします。助けを求めるために、数人を引き連れて外の霧の中に入っていくのです。スーパーマーケットにたまたま居合わせた数十人の群集は、まさに原始の時代の閉ざされた1つの共同体に見立てられます。運命共同体です。約20万年前には、私たちの祖先は、最大100~150人(ダンバー数)くらいの閉鎖的な共同体(集団)をそれぞれつくっていました。しかし、集団全員の考えは毎回必ずしも一致するわけではありません。情報が不確かであればあるほど、意見の違い(認知のずれ)が起こり、裏切りや争いを招きやすくなります。私たちは何によってまとまるのか?―(1)知識や知恵(文化)買い物客の中からは、「隣町の工場から出た汚染物質の雲だよ」「化学薬品の爆発だろう」と様々な憶測が飛び交います。こうして、憶測が憶測を呼び、伝えられていきます。このように、私たちは、人間関係の噂話だけでなく、その延長として、環境のあらゆることについての噂話(情報)も伝達し合います(情報の嗜好性)。約20万年前に私たちの祖先が言葉を話すようになってから、噂話は、単にその時の共同体のメンバーの間だけでなく、祖先からの教えとして世代を超えて語り継がれていくようになりました。それは、共通の生きる知識や知恵(文化)として、共同体の生存の確率を高める役割も果たしていたことでしょう。こうして、この文化によって、私たち人間は、遺伝子の突然変異による進化よりも、早く広く環境に適応することができるようになりました。つまり、文化は、「第2の遺伝子」とも言えそうです。私たちは何によってまとまるのか?―(2)宗教スーパーマーケットにいる買い物客の中で、カーモディさんはもともと信心深い人です。しかし、同時に信仰への勧誘に熱心すぎたため、町の変わり者として人々からは距離を置かれていました。しかし、あり得ない異様な事態の中、彼女は存在感を発揮し始めます。彼女は恐怖におののく人々に「外は死よ」「この世の終わり」「ついに審判の日が来たの」「間違いない」「あなたたちは罪深い人生を送ってきた」「神のご意志には逆らえない」「見ようとしない者ほど盲目な者はいない」「その目を開いて真実を悟りなさい」と熱心に説き始めます。そして、自分たちの状況を聖書の教えになぞらえ、「今夜、闇と共に怪物が襲ってきて、誰かの命を奪う」と予言します。そして、その予言が当たってしまいます。人々には、さもずばり的中させたかに見えてしまうのです。すると、人々は、今まで聞く耳を持とうとしていなかったのに、次々と彼女の話に耳を傾け始め、「信徒の群れ」になっていくのです。一体、何が起きているのでしょうか?カーモディさんの導く信仰心によって、人々は感情的に結び付きを強めていきます。信仰の秘めたる力です。この信仰が組織化され制度化されたものが宗教です。そもそも宗教(religion)の語源は、ラテン語の「再び結ぶ(religare)」に由来しています。この宗教の秘めたる力の正体は何か?なぜ宗教に染まるのか?そもそもなぜ宗教はあるのか?これらの疑問を踏まえて、宗教の本質から私たちの心の本質を探っていきましょう。宗教の起源(原始宗教)には、3つの要素があります。宗教の起源とは?―(1)同調周りの人が目の前で次々と死んでいくという極限状況の中、デヴィッドたち数人を除くほとんどの人々がカーモディさんの元に集まります。彼女がその信者たちに「共に神の道を歩みたい」と呼びかけると、彼らは揃って「償いだ!」と同じ言葉を唱え、エネルギッシュに1つにまとまっていきます。このように、人々は、同じ言葉を唱えたり拝んだり、一緒に歌を歌ったり、ダンスでリズムを合わせたりして一体感を高めます。私たち人間の遺伝子は、同じ発声や動作をすることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たち人間の祖先は、助け合い(協力)をする中で、共同体のメンバーの和を乱さないように周りを意識して(心の理論)、周りに調子を合わせる心理(同調)を進化させてきました。20万年前よりもさらに遡った原始の時代では、複雑な発声がまだできませんでした。しかし、その代わりに唸り声などの音を合わせたり、歩調を合わせたりして、協力するサインを出していたでしょう(サイン言語、非言語的コミュニケーション)。このように、周りに調子を合わせることで、連帯感や共通の意識を強め、共同体への帰属意識(集団同一性)を高めました。そして、この心理をより多く持っている種の共同体ほど助け合い、生存確率が高まっていたわけです。このように、同じ発声や動作を繰り返すことで、共同体が1つにまとまりました。そして、それは音楽やダンスのリズムとして儀式化されていきました。この儀式こそが、現代の私たちが宗教と呼ぶものの起源の1つの要素となっているのではないかと思います。つまり、宗教という制度が先にあったのではなく、同調の心理を高めるために行っていた儀式が先にあり、それが制度化されて後に宗教と呼ばれるになったと考えられます。この同調の心理は、現代ではコミュニケーションのテクニックとして意識的に利用されています。例えば、さりげなく相手と同じしぐさをしたり口癖を言うことで、相手からの好感を高めることができます(ミラーリング)。また、「似た者夫婦」とは、仲の良い夫婦が無意識のうちに同調の心理を高めていると言えます。昔から「類は友を呼ぶ」とはよく言ったものです。宗教の起源とは?―(2)崇拝 1. 超越的な存在デヴィッドは、買い物に出かける前、湖の対岸から大きく立ち込めて来た不気味な霧を見て、妻に「2つの前線がぶつかって起きた現象さ」「おれは気象予報士じゃないけどね」と説明して、納得しようとしていました。このように、現代の私たちは、自然現象を科学的にとらえようとします。そこに、恐怖はありません。しかし、科学が発展していない原始の時代はどうだったでしょうか?地震、嵐、雷などの様々な災いを招く自然の脅威や謎に対して説明する役割を果たしたのは、超越的な存在への崇拝であったと考えられます。その理由はこうです。私たちの祖先は、助け合い(協力)と競い合い(競争)の狭間で、相手の心を読む、つまり相手の視点に立つ心理を進化させてきました(心の理論)。その相手は、人間だけでなく、自然や動物などあらゆるものへと広がりました。つまり、自然や動物とも協力関係を築こうと、それらを崇拝したのです(アニミズム)。相手の視点に立つのは同時に、外から自分自身を見る視点でもあり、さらには過去・現在・未来という時間軸の全体像を見る視点でもあります(メタ認知)。こうして、約10万年前にシンボルを用いる心理(抽象的思考)が発達してからは「自分は死んだらどうなるのだろう?」「世界は何でできているのだろう?」と死後の世界や自然環境に対して好奇心や恐怖を抱くようになりました。この好奇心や恐怖から、自然を観察し、気候の変化や動物の行動のパターンを予測しようとしました。そして、少しずつ、自然をコントロールできるようになりました。例えば、水がないなら井戸を掘り、風除けがないなら石壁を作りました。大きな土木工事も行うようになりました。また、実験的に植物や動物を管理するようになりました。こうして、自然の環境は変えられるという発想が生まれていきました。その時、コントロールしている側とされている側の両方の視点に立つことができるようになったのです。そして、自分たちを支配している超越的な存在を意識するようになったのです。宗教の起源とは?―(2)崇拝 2. 神秘体験スーパーマーケットにたまたま居合わせたある軍人は、カーモディさんに問い詰められて、真相を打ち明けます。「この世界は異次元空間に囲まれていて、軍の科学者がそこに『窓』を開けたんだ」「事故で向こうの世界がこっちに来た」と。まさにカーモディさんが「大地は忌まわしい汚物(=霧)を吐き、残忍で汚れた恐ろしい魔物(=見たこともない生物)が解き放たれた」と説いた教えに重なります。原始の時代の私たちの祖先が意識した超自然界は、この「異次元空間」に見立てることができます。そして、この超自然界を確信させたのは、夢見やトランスなどの神秘体験であると思われます。夢見は、すでに亡くなった家族と夢で再会することがあるため、神秘的な意味付けがされたでしょう。亡くなった家族は、あの世という超自然界で生きていると思えたのです。こうして、すでに超自然界に旅立った祖先たちを、超自然界で自分たちを見守ってくれる存在として崇め奉りました(祖先崇拝)。画像また、トランスは、同調の心理を高めるための儀式を延々とやっている最中に、重度の疲労から意識がもうろうとして体験される錯覚や幻覚です(せん妄)。夢との連続性があり、白昼夢とも言えます。これは、苦行という儀式を強いる古くからの宗教と重なります。こうして、トランスも、超自然界との交信の場という神秘的な意味付けがなされたでしょう。例えば、幻聴は、超自然界からのメッセージ、つまりお告げと受け止められます。そこから、予知夢、正夢という過剰な意味付けもなされたでしょう。さらに、トランスは、薬草や毒キノコによって、より手軽に体験できることが後に発見されます。そして、金縛り(睡眠麻痺)、幽体離脱(体脱体験)や臨死体験など様々な精神症状も、神秘的な意味付けがされるようになりました。それは、超自然界を垣間見て、魂の存在を確信する体験です。てんかん発作もまた、超自然界に近付ける神聖な病であると解釈されました。統合失調症の妄想は、現代では「自分は巨大な闇の組織に操られている」という訴えが典型的です。しかし、その訴えは、原始の時代では、超自然界を確信しているというだけのごく当たり前のことだったでしょう。このように、いくつかの精神症状は、神秘体験との共通点があり、原始の時代には一定の役目を果たしていた可能性も考えられます。宗教の起源とは?―(2)崇拝 3. 心の拠りどころ(愛着)カーモディさんの教えに従い、スーパーマーケットで信者と化した人々は、神に祈りを捧げます。このように、原始の時代の人々も、自然崇拝(アニミズム)や祖先崇拝から、超越的な存在そのもの、つまり神を崇拝するようになっていきました(神仏信仰)。彼らは、その見返り(恩)として、恵み(恩恵)、慈しみ(慈悲)、そして助け(救済)を求めました。それは、協力関係を超えて、保護者(母親)と子どもの関係です。そこから、神が、人間を含む万物を創り上げた生みの親であるという発想が生まれます。神(母親)が人間(子ども)を無条件に守ること(母性)を意識することで、人間が神に無条件に守られていると信じ込む心理(愛着)が働きます。こうして、神の存在は、人々が共通して信じる心の拠りどころとなっていくのです。そこには、母親に抱かれる赤ん坊になったような安らぎがあります。母性や愛着の心理と同じように、信仰の心理にも、オキシトシンという精神状態を安定させるホルモンが関係している可能性が考えられます。神という保護者に見守られていると確信しているからこそ、そして、全ては神の思し召し(意図)という解釈がなされるからこそ、自らの死への恐れや大切な人の死への悲しみなどを引き起こす不運や災難にも、意味を見いだし、受け入れ、乗り越えることができるようになりました。「信じる者は救われる」という言い回しは、的を射ています。神の恩恵や救済を信じてすがることで、愛着の心理であるオキシトシンが活性化して、ストレス耐性を高めるメカニズムが考えられるからです。これが、宗教的な寛大さや寛容さの源でもあります。それは同時に、心の拠りどころを共有することで、個人だけでなく、共同体(集団)の結束力(協力関係)も強めるというメリットもあります。例えば、昔から、神の超越的な力で病気を治してもらうために、お祈り(ヒーリングダンス)、お祓い、お参りなどがなされてきました。もちろん科学的には効果はなく、病気は治りません。しかし、これらの行為は、みんなが揃って何かをするという同調の心理を高めます。同調もまた、オキシトシンを活性化させます。この心理とあいまって、結果的に人々の心を一体化させ、不安におののく集団への癒しの役目を果たしていたのでした。このように、心の拠りどころを共有することで、共同体が1つにまとまりました。そして、それは、共同体の中で、超越的な存在(神)への崇拝として制度化されていきました。これこそが、現代の私たちが宗教と呼ぶものの起源の1つの要素となっているのではないかと思います。つまり、神の存在が先にあったのではなく、人々が共通に抱いていた超越的な存在が先にあり、それが後に神と呼ばれるようになったのでしょう。また、宗教という制度が先にあったのではなく、超越的な存在(神)への崇拝が先にあり、それが制度化されて後に宗教と呼ばれるになったと考えられます。「なぜ神はいるのか?」という宗教的、哲学的な問いへの答えはなかなか見つかりません。しかし、「なぜ神はいると思うのか?」という進化心理学的な問いへの答えは、このような人間の心理を根拠に説明することができます。宗教の起源とは?―(3)モラル(集団規範)デヴィッドたち数人のグループは、カーモディさんの一団を尻目に話し合います。「ここは文明社会よ」と言う女性に、デヴィッドは「都市(文明社会)が機能していて、警察通報できるならね」「でもひとたび闇の中に置かれ、恐怖を抱くと人は無法状態になる」「粗暴で原始的に」「恐怖にさらされると人はどんなことでもする」と答えます。さらに別の男性は「人間は根本的に異常な生き物だよ」「部屋に2人以上いれば最後は殺し合うんだ」「だから政治と宗教がある」と付け加えます。デヴィッドたちは、状況を鋭く言い当てています。スーパーマーケットに閉じ込められてから、その外では、科学では説明できないことが次々と起こっています。これは、まさに原始の時代の自然環境に見立てられます。そこは、次に何が起きるか予測ができず、翻弄されるばかりの恐ろしい世界です。原始の時代、このような恐怖に安心感や安全感を与え、共同体を平穏に保つ役割を果たしたのは、すでに超自然界に旅立った祖先たちによって語り継がれてきた教えだったでしょう。そして、その教えは、やがて生きる道しるべや戒めとして普遍性を帯びていき、共同体のメンバーに同じ考えを根付かせて同じ方向を向かせる拠りどころとなったのです。つまりはモラル(集団規範)です。このモラルを自分たちが守っているかどうかを、超自然界にいる祖先、さらには絶対的な存在(神)が見張っていると人々は解釈しました。見守られていることは、見方を変えれば、見張られていることでもあります。神は、保護者(母性)の役割だけでなく、監視者(父性)の役割も果たしていることが分かります。こうして、モラルは、人々に共通の意識を生み出し、そこからより高度な秩序が生まれました。このように、モラルを持つことで共同体が1つにまとまりました。そして、それは政治などのルール作りの源になっています。このモラルによる社会構造こそが、現代の私たちが宗教と呼ぶものの起源の1つの要素となっているのではないかと思います。つまり、宗教という制度が先にあったのではなく、モラルによる社会構造が先にあり、それが制度化されて後に宗教と呼ばれるになったと考えられます。表2 宗教の3つの要素同調崇拝モラル(集団規範)特徴同じ発声や動作を繰り返すことによる一体感同じ思いを持つことによる一体感神秘体験による強化神の保護による集団の安全感(心の拠りどころ)神の監視による秩序形成ルール作りの源医療機関で働く私たちは?これまで考えてきた宗教の3つの要素から、宗教とは、原始の時代から共同体を1つにまとめ上げるシステム(社会構造)そのものであることが分かります。私たちの祖先は、原始の時代からこのシステムと共に歩んできました。そして、人間の文明の進歩に大きな役割を果たしてきました。その1つとして挙げられるのが、大陸大移動(グレートジャーニー)の促進説です。20万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生してから、寒冷期(氷河期)と温暖期が繰り返されていました。しかし、最初は温暖期になってもなかなか人類は広がりません。しかし、6万年前の4回目の温暖期で突然、私たちの祖先は大胆な移動を始めたのです。その理由こそ、当時に出来上がった宗教が共同体の絆を強くしていたからであるという可能性が考えられます。現代の社会で、宗教そのものは原始の時代ほど大きな役割を果たしていません。なぜなら、現代の私たちは、ルール(法律)と科学によって理性的な社会生活を送っているからです。しかし、逆に、私たちが組織(集団)になる時、そして一致団結する時、得てして原始の時代の宗教的な心が目を覚ましやすくなります。それは、集団の安定のために、相手と同じ行動や考えを好み(同調)、何かを拠りどころとして信じ込み(崇拝)、従いやすくなる心理(集団規範)です。これは、私たちの本質的な心理です。例えば、医療機関という組織(集団)で働く私たちは、みな白衣を着て自分たちしか分からない専門用語を駆使して、職業倫理や崇高な理念を持ち、組織の独自のルールにも従っています。それ自体は、すばらしいことです。この心理があるからこそ、医療機関の組織は、単なる利益集団にはなりません。また、このように組織に染まる仕組みが分かっているからこそ、組織では、新人教育で泊まり込みの合宿などをさせて、この心理を芽生えさせ、感化させようとするわけです。私たちの社会(集団)は、程度の差はあれ、この心理により、うまく回っていると言えます。しかし、この心理に魅力がある一方で、危うさもあります。例えば、それはマインドコントロールです。私たちは、この心理の魅力と同時に、危うさもよく知っておく必要があります。次回は、その危うさやデメリットであるマインドコントロールについて、さらに深く掘り下げていき、私たちの組織のあり方や私たちの生き方そのものを見つめ直してみたいと思います。果たしてカーモディさんの説く教えによって1つになった彼らに未来はあるのでしょうか?1)ニコラス・ウェイド:宗教を生み出す本能、NTT出版、20112)NHKスペシャル取材班:ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか、角川書店、20123)進化と人間行動:長谷川眞理子、長谷川寿一、放送大学教材、2007

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抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か

 抗うつ薬による治療後に症状が悪化した患者に対するうつ病治療(抗精神病薬による補助療法を含む)の有効性は十分に検討されていない。米国・カリフォルニア大学のJ Craig Nelson氏らは、抗うつ薬による治療で効果不十分であった大うつ病性障害患者に対するアリピプラゾール補助療法の有効性、安全性、忍容性を検討した。CNS spectrums誌オンライン版2014年3月18日号の報告。 抗うつ薬による治療(ADT)で効果不十分であった大うつ病性障害患者を対象にアリピプラゾール補助療法の有効性、安全性、忍容性を検討した3試験(プラセボ対照二重盲検試験と同様に設計)のデータを利用し、事後解析を行った。研究は、8週間のADT期間と6週間の補助療法期間(アリピプラゾールまたはプラセボ)の2期に分かれていた。本研究では、ADT期間中に症状が悪化した患者に焦点を当て分析を行った。悪化の定義は、MADRS総スコア0%超の増加とした。補助療法期間における治療反応はMADRS総スコア50%以上減少と定義した。寛解はMADRSスコア10以下とした。 主な結果は以下のとおり。・ADT期間に反応が得られなかった患者は1,065例であった。そのうち症状悪化が認められたのは160例(ADT悪化群)、症状が不変であったのは905例(ADT非悪化群)であった。・ADT悪化群における補助療法後(エンドポイント)の治療反応率は36.6%(アリピプラゾール補助療法)、22.5%(プラセボ)であった。・ADT非悪化群における治療反応率は37.5%(アリピプラゾール補助療法)、22.5%(プラセボ)であった。・また、ADT悪化群における寛解率は25.4%(アリピプラゾール補助療法)、12.4%(プラセボ)であった。・ADT非悪化群における寛解率は29.9%(アリピプラゾール補助療法)、17.4%(プラセボ)であった。 以上の結果より、抗うつ薬単独療法で効果不十分な患者に対するアリピプラゾール補助療法は有効な介入方法であることが示された。関連医療ニュース 治療抵抗性うつ病に対し抗精神病薬をどう使う 治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ 難治性うつ病に対する効果的な治療は何か

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子供はよく遊ばせておいたほうがよい

 小児および思春期の身体活動パターンと将来のうつ病との関連はほとんど知られていない。オーストラリア・Menzies Research Institute TasmaniaのCharlotte McKercher氏らは、小児期から成人期における余暇の身体活動パターンと青年期うつ病リスクとの関連についてナショナルサーベイ被験者を対象に検討した。その結果、小児期に不活発であった群に比べ、活動的であった群では青年期にうつ病を発症するリスクが少ないことを報告した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。 ナショナルサーベイの9~15歳被験者(男性759 例、女性871例)を対象に、約20年後に再び聞き取り調査を行った。余暇の身体活動について、1985年のベースライン時と2004~2006年の追跡調査時に自己申告してもらい、また両時点の間隔をつなぐため、15歳から成人までの余暇の身体活動を、追跡調査時に後ろ向きに自己申告してもらった。 身体活動を公衆衛生の観点から群別し、最も不利(持続的に不活発)なパターンを、より有利(活動性が増減および持続)なパターンと比較した。うつ病(大うつ病性障害または気分変調性障害)の評価は、統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview ; CIDI)により行った。 主な結果は以下のとおり・結果は、小児期のうつ病発症例を除外し、社会人口統計学的因子および健康因子で補正を行った。・その結果、活動性が増加傾向または持続していた男性は、持続的に不活発であった群と比べ、成人期にうつ病を発症するリスクがそれぞれ69%、65%少なかった(いずれもp<0.05)。・後ろ向き解析において、活動性が持続していた女性は成人期にうつ病を発症するリスクが51%少なかった(p=0.01)。・有意差はなかったものの、女性における余暇の身体活動と男性における過去の余暇活動に同様の傾向がみられた。・前向きおよび後ろ向きの両検討結果から、小児期から日常的に自由に活動させておくことが、青年期にうつ病を発症するリスクを減少させることが示唆された。関連医療ニュース 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか?  担当者へのご意見箱はこちら

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双極性障害における神経回路異常が明らかに

 双極性障害にみられる各種の行動異常と神経回路異常との関連について、米国・ピッツバーグ大学のMary L. Phillips氏らは神経画像を用いたこれまでの研究を検証した。その結果、前頭前野皮質と側頭皮質、扁桃体、海馬における灰白質の容量減少や白質路におけるFractional anisotropyの減少などを背景に、感情プロセスや感情制御さらに報酬機能の神経回路に異常が生じていることを報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。 本批判的レビューでは、双極性障害の神経学的背景に関する最近の知見を明らかにし、神経画像研究の将来への道筋を提供することを目的に、双極性障害の感情プロセス、感情制御、報酬機能の神経回路に関する神経画像所見について検討した。機能MRI、容量分析、拡散画像およびresting-state法を用いた双極性障害に関する主要な研究すべての知見を評価し、神経回路異常の理解を深めることを目的とした。  主な結果は以下のとおり。・双極性障害は、前頭前野皮質(とくに腹外側部前頭前野皮質)-海馬-扁桃体の感情プロセスおよび両側性の感情制御回路において、左側腹部線条体内腹外側および眼窩前頭皮質の報酬回路における“活動亢進”とともに生じている障害として概念化されうることが示唆された。・また、双極性障害に伴う感情易変性、感情制御異常、報酬感受性増加といった行動異常との関連が示唆された。・これらの機能的異常は、前頭前野皮質と側頭皮質、扁桃体、海馬における灰白質の容量減少、ならびに前頭前野および皮質下領域とつながる白質路におけるFractional anisotropyの減少といった構造的背景が基盤にあると考えられた。・双極性障害の神経画像研究により、ある程度の限界はあるものの、感情プロセス、感情制御および報酬回路をサポートする神経回路異常が明らかとなった。・これらを踏まえて著者は、「今後は、ディメンショナルアプローチを用いた研究も導入すべきであろう」と指摘している。・また、若年患者における神経発達過程の検討や双極性障害のリスクなどを検討するより大規模な研究、統合したシステムアプローチを用いた多モード神経画像研究、パターン認識アプローチを用いた研究などにより、臨床的に有用な個体レベルでのデータが明らかになる可能性も指摘し、「それらの研究が、双極性障害患者に対する個別の診断と治療方針決定のための臨床的に有意義なバイオマーカーの同定にも役立つであろう」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか 統合失調症と双極性障害の違い、脳内の炎症/ストレスに派生 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所

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ロマンチックな恋愛は幸せか

 人は恋に落ちる。これまでの研究では青年、成人のどちらもロマンチックな恋愛の喜びや幸せといった精神状態を経験していることが示されている。一方で、思春期のロマンチックな恋愛は抑うつや不安症状と関連しているというエビデンスがあるが、成人におけるこれらのデータは存在しない。イラン・テヘラン大学のHafez Bajoghli氏らは、成人におけるロマンチックな恋愛と抑うつや不安、軽躁症状や睡眠との関連を調査した。International journal of psychiatry in clinical practice誌オンライン版2014年3月10日号の報告。 100人のイラン人成人を対象に調査を行った(平均年齢:26歳、男性比率:53%)。調査対象者はロマンチックな恋愛と抑うつ、不安、軽躁症状、睡眠に関するアンケートへの回答を行った。 主な結果は以下のとおり。・ロマンチックな恋愛の増加状態は、軽躁症状の明るい面、および強い抑うつ症状や不安状態、より良い睡眠の質と関連していた。・睡眠時間との関連は認められなかった。・首尾よく恋をしているごく限られた成人を対象とした精神生物学的研究結果と異なり、成人においてもロマンチックな恋愛は人生の喜びや幸せだけを提供する期間ではないことが示された。・若年成人においても思春期同様に、恋愛は不確実で不快な感情に関連する重要なライフイベントであると考えられる。関連医療ニュース 食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 1日1杯のワインがうつ病を予防  担当者へのご意見箱はこちら

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高度貧困地域からの転出、男児は精神障害リスクが増大/JAMA

 米国の高度貧困地域に住む子供が、家族と共に低所得者居住地域に引っ越すことで、男児では思春期におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神障害の発症リスクが2~3倍増大することが報告された。一方で女児については、同引っ越しにより、思春期のうつ病や行為障害の発症リスクが4~9割減少した。米国・ハーバードメディカルスクールのRonald C. Kessler氏らが、小児約3,700例について行った前向き無作為化比較試験の結果、報告した。高度貧困地域の子供は思春期に心の問題を抱える青少年が多い。本検討は、地域への介入について、地域が与える影響を理解することを目的に、小児期への住環境介入とその後の思春期の精神障害との関連を調べた。JAMA誌2014年3月5日号掲載の報告より。小児と家族を低所得者地域、または地域制限なしで転出補助 研究グループは1994~1998年にかけて、米国の高度貧困地域に住む4,604家族とその子供たち3,689例を対象に試験を行った。対象家族を無作為に3群に分け、第1群には低所得者居住地域への引っ越しについて家賃補助を行うとともに、引っ越しに関するカウンセリングを強化した(対象小児は1,430例)。第2群には、引っ越し地域は設けず家賃補助を行った(同1,081例)。第3群はコントロール群として、何の介入も行わなかった(同1,178例)。 10~15年後(2008年6月~2010年4月)に、13~19歳の被験者(試験開始時には0~8歳)について追跡調査(面談調査)を行った。主要アウトカムは、「精神障害の診断と統計の手引き」(第4版)に基づく、過去12ヵ月間の精神障害症状の有無だった。男児はうつ病リスクが2.2倍、PTSD、行為障害は3倍以上 追跡時の面談調査を行ったのは、3,689例中2,872例で、そのうち男児は1,407例、女児は1,465例だった。 男児において、コントロール群では大うつ病罹患率は3.5%だったのに対し、低所得者居住地域転出群では7.1%と、2倍以上だった(オッズ比:2.2)。PTSDはそれぞれ1.9%と6.2%(オッズ比:3.4)、行為障害は2.1%と6.4%(オッズ比:3.1)と、いずれもリスクは3倍以上だった。 一方で女児では、地域制限なし転出群でコントロール群に比べ、大うつ病や行為障害の罹患率がそれぞれ4割と9割の減少がみられた。コントロール群では、大うつ病の罹患率は10.9%、行為障害は2.9%だったのに対し、地域制限なし転出群ではそれぞれ6.5%(オッズ比:0.6、p=0.04)と0.3%(同:0.1、p=0.02)だった。なお、低所得者居住地域転出群についてはそれぞれ6.5%(同:0.6、p=0.06)、1.5%(同:0.5、p=0.20)だった。

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統合失調症治療、家族への介入に効果はあるか

 支援的でポジティブな家族がいることは、統合失調症患者のアウトカムを改善する。一方で、家族が批判的で敵対的あるいは関与が過剰な場合は、アウトカムが不良で再発頻度が高いことが示唆されている。そこで現在、ポジティブ環境を広め、家族間の感情レベルを低減するようデザインされた心理社会的介入が、広く導入されるようになっている。英国・ノッティンガム大学のUzuazomaro Okpokoro氏らは、統合失調症もしくは統合失調症様障害患者の短期的家族介入の効果を評価することを目的にレビューを行った。Cochrane Database Systematic Reviews誌オンライン版2014年3月5日号の掲載報告。 CINAHL、EMBASE、MEDLINE、PsycINFOをベースとするCochrane Schizophrenia Group Trials Registerを2012年7月時点で検索し、さらに選出した試験の参考文献も調べて試験を検索し、著者と連絡して追加情報も得た。適格とした試験は、統合失調症もしくは統合失調症様障害患者の家族に焦点が当てられ、短期的心理社会的介入と標準ケアとの比較に関連していたすべての無作為化試験であった。試験の選択、質的評価およびデータ抽出は厳格に行われた。バイナリアウトカムについて、標準推定リスク比(RR)とその95%信頼区間(CI)を算出。また連続アウトカムについて、グループ間の平均差(MD)とその95%CIを算出し、主要アウトカムやサマリーに記された所見のエビデンスの質をGRADEにて評価した。なお、包含試験のバイアスリスクについても評価した。 主な結果は以下のとおり。・レビューに組み込むことができたのは、4本の無作為化試験、被験者計163例のデータであった。・結果、短期的家族介入が、患者の医療サービスの利用を抑制するかどうかは不明であった。・結果の大半は長期的で不確かなものであり、主要アウトカムとして入院に関するデータを報告していたのは、1試験(30例)のみであった(RR:0.50、95%CI:0.22~1.11、質的エビデンス:非常に低い)。・また再発に関するデータも、中期的で不確かなものであった(1試験・40例、RR:0.50、95%CI:0.10~2.43、質的エビデンス:低い)。・一方で、家族アウトカムに関するデータのうち、家族メンバーの理解が短期的家族介入を有意に支持することを示した(1試験・70例、MD:14.90、95%CI:7.20~22.60、質的エビデンス:非常に低い)。・入院日数、有害事象、服薬コンプライアンス、QOLまたはケアへの満足感、あらゆる経済的アウトカムなどに関するその他のアウトカムデータを報告した試験はみられなかった。・著者は、「今回、データを抽出した試験の規模および質により、顕著なレビュー結果は得られなかった。分析したアウトカムも極小でメタ解析はできなかった。また、サマリー所見におけるすべてのアウトカムの質的エビデンスは、低い(もしくは非常に低い)ものであった」とした。そのうえで、「しかしながら、需要があり、役立つリソースであるとの現状から、短期的家族介入の重要性は完全に退けられるべきではない」と述べ、「短期介入のデザインは大規模試験でより効果的となるよう修正することが可能であり、同時に臨床現場に十分な影響力をもたらす可能性があるだろう」とまとめている。関連医療ニュース この25年間で統合失調症患者の治療や生活環境はどう変わったのか? 複雑な薬物療法レジメン、認知症介護者の負担増加 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始

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躁病の早期発見・予防は可能となるか

 米国ジャッカー・ヒルサイド病院のChristoph U Correll氏らは、10代後半の思春期躁病の前駆症状について系統的評価を行った。その結果、思春期に双極I型障害(BD-I)を呈した人では、比較的長期にわたり閾値下の躁病や抑うつ的精神病理学的症状を含む、遅発の躁病前駆症状が一般的にみられることを報告した。著者は、「これらの所見は、双極性障害における早期診断と介入が可能であることを示唆するものである」として、躁病発症直前の臨床症状と関連する生物学的マーカーを特定することが、躁病が完全に発症する前の早期の検出および予防の機会を増すことに結びつく可能性があると報告している。Bipolar Disorders誌オンライン版2014年3月5日号の掲載報告。 本検討は、BD-Iの研究診断基準を満たした52例の若者(16.2±2.8歳)を対象に、初発躁病に先行する中等度以上躁病の新規発症/症状悪化/徴候を系統的に評価したものであった。若者や介護者に、双極性障害前駆症状尺度を用いてレトロスペクティブに半構造化インタビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・躁病前駆症状は、大半が思春期(88.5%)に段階的にみられるようになることが報告された。症状は緩徐(59.6%)もしくは急速な(28.8%)悪化を呈するが、一方で、前駆症状が急に発症し悪化することはまれであった(11.5%)。・3つ以上の症状で定義した躁病前駆症状の持続期間は、10.3±14.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.3~14.4ヵ月)であった。被験者の65.4%は4ヵ月以上症状が認められた。・若者の50%以上が前駆症状を報告したが、そのうち3例は実質的に閾値以下の躁病であった(易刺激性:61.5%、観念奔逸:59.6%、気分/活動度の上昇:50.0%)。また2例は非特異的で(学業/仕事機能の低下:65.4%、気分変動/不安定:57.7%)、抑うつが1例(抑うつ気分:53.8%)、閾値下の躁病/鬱病が1例(不注意:51.9%)であった。・“特異的”な閾値下の躁病症状(気分高揚、誇大妄想、睡眠欲求の減少、観念奔逸、性行動過剰など)を有している若者は、その有する数が増えるほど該当者は減少し、持続期間も短縮することが判明した。・すなわち同症状が1以上の若者は84.6%で9.5±14.9ヵ月間(95%CI:5.0~14.0ヵ月)、2以上は48.1%で3.5±3.5ヵ月(同:2.0~4.9ヵ月)、3以上は26.9%で3.0±3.2ヵ月(同:1.0~5.0ヵ月)であった。関連医療ニュース アリピプラゾールは急性躁病治療のファーストラインになりうるか うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? 双極性障害の自殺予防に求められるのは

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セロトニン症候群の発現メカニズムが判明

 米国フロリダ・アトランティック大学のRui Tao氏らは、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOIs)と選択的セロトニン(5-HT)再取り込み阻害薬(SSRIs)併用時に惹起されるセロトニン症候群のメカニズムを明らかにするため、ラットにクロルギリンおよびパロキセチンを投与して検討を行った。その結果、5-HTの通常の10倍以上の過剰分泌がセロトニン症候群の発現に関連し、セロトニン症候群の重症度はMAOIによるシナプス後性回路の薬理学的変化に起因する可能性を示唆した。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2014年2月28日号の掲載報告。 MAOIsと選択的5-HT再取り込み阻害薬(SSRIs)の薬物相互作用として惹起されるセロトニン症候群は、通常は軽度であるが重度となることもある。しかしながら、本症候群の誘発と重症化に関連する神経メカニズムはほとんど知られていない。本研究では、セロトニン症候群の誘発と重症度は2種類の異なる、ただし相互に関係のあるメカニズムによるのではないかと仮説を立てた。すなわち、「セロトニン症候群は脳内5-HTの過剰により惹起され (シナプス前性のメカニズム)、重症度は5-HT2A およびNMDA受容体を含む神経回路に起因する(シナプス後性のメカニズム)」との仮説を検証するため、ラットにMAOIであるクロルギリンを1日1回、3、6または13日間投与し、5-HTの基礎分泌とシナプス後性回路を薬理学的に変化させた。セロトニン症候群の重症度は、クロルギリンとSSRIのパロキセチン併用に応答してみられる5-HT分泌、神経筋活性および体幹の温度から推定した。 主な結果は以下のとおり。・セロトニン症候群は、5-HTがベースラインと比べ10倍以上の過剰分泌となった段階で発現し、シナプス前性メカニズムの仮説が確認された。・クロルギリンを3日間および6日間連日投与したラットにおいて、神経筋および体幹温度の異常は(薬剤非投与ラットでは軽度であったが)、セロトニン症候群を有意に重症化させた。ただし、13日間連日投与されたラットでは有意な重症化はみられなかった。・重症化はM100907およびMK-801により阻害されたことから、5-HT2A およびNMDA受容体に関わる回路を介して重症度が多様になることが示唆される。・以上より、MAOIによる前治療で薬理学的にシナプス後性回路を変化させることが、セロトニン症候群の重症度の変化に関与していると考えられた。■関連記事各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学抗精神病薬で気をつけるべき横紋筋融解症遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学セロトニン症候群を起こしやすい薬剤は

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治療抵抗性うつ病に対し抗精神病薬をどう使う

 治療抵抗性の大うつ病性障害(MDD)患者に対して非定型抗精神病薬による増強療法を行う場合、どのような投与パターンが適切なのだろうか。韓国・カトリック大学校のChi-Un Pae氏らは、MDDに対する増強療法におけるアリピプラゾールの投与パターンについて、過去の使用経験をもとに検討を行った。International clinical psychopharmacology誌2014年3月号の報告。 2009年1月1日から2012年3月31までの間に抗うつ薬とともにアリピプラゾールの増強療法を施行したMDD患者276例を対象に、電子カルテや臨床データをレビューした。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール増強療法の平均期間:約5ヵ月・初回投与から増量するまでの平均期間:約3週間・平均初回投与量:3.4mg/日・平均初回タイトレーション用量:4.2mg/日・平均最大投与量:4.7mg/日・平均維持用量:4.4mg/日・主な有害事象:不眠、不安、鎮静 これらの結果から、著者らは「治療抵抗性のMDD患者に対しアリピプラゾール増強療法を行う場合には、プラセボ対照臨床試験や米国FDAが推奨する投与量よりも低用量で効果が期待できる」としたうえで、「とくに実臨床におけるルーチンのMDD治療において、低用量アリピプラゾールの増強療法をより正確に理解するために、十分な検出力を備え、適切な対照を置いた前向き研究が必要である」と述べている。■関連記事難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用かうつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

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