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201.

急性期統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬~メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の再発予防効果が期待できるが、急性期患者においてもベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症患者に対する第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIに関するエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性期統合失調症に対し、SGA-LAIは効果的な治療選択肢であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年6月23日号の報告。 急性期統合失調症を対象にSGA-LAI(オランザピン、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール)とプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー、およびメタ解析を実施した。統合失調症の精神症状を主要アウトカムとし、有効性および忍容性の23項目のアウトカムを分析した。ランダム効果、ペアワイズメタ解析、サブグループ解析を行った。研究の質の評価には、Cochrane-Risk-of-Bias-Tool ver.1を用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、66の研究、1万6,457例を含めた。・内訳は、SGA-LAIとプラセボを比較した研究は11件、SGA経口抗精神病薬とプラセボを比較した研究は54件、SGA-LAI(アリピプラゾール)と経口抗精神病薬を比較した研究が1件であった。・4種類のSGA-LAIは、プラセボと比較し、全体的な症状改善効果が認められた。 【オランザピン】標準化平均差(SMD):-0.66(95%信頼区間[CI]:-0.90~-0.43) 【アリピプラゾール】SMD:-0.64(95%CI:-0.80~-0.48) 【リスペリドン】SMD:-0.62(95%CI:-0.76~-0.48) 【パリペリドン】SMD:-0.42(95%CI:-0.53~-0.31)・SGA-LAIの副作用プロファイルは、経口剤で確認されている既知の副作用と同様であった。・プラセボと比較したサブグループ解析では、一部の副作用における経口剤とLAIとの顕著な違いは認められなかった。・LAIでは、一部の副作用が経口剤よりも低い可能性があるものの、間接的な比較であるため、今後の直接比較によるRCTが求められる。

202.

急性期うつ病治療における21種の抗うつ薬の睡眠への影響~ネットワークメタ解析

 抗うつ薬による急性期治療中に見られる睡眠関連副作用は、コンプライアンスの低下や寛解を阻害する要因となりうる。中国・北京大学のShuzhe Zhou氏らは、抗うつ薬の睡眠関連副作用の種類、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関連を評価するため、本検討を行った。その結果、ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、不眠症または傾眠のリスクが高かった。また、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関係は、さまざまであった。結果を踏まえて著者らは、「抗うつ薬による急性期治療中には、睡眠関連副作用の発現に、より注意を払う必要がある」としている。Sleep誌オンライン版2023年7月9日号の報告。 2023年4月までに公表されたうつ病に対する二重盲検ランダム化比較試験をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceより検索した。短期間の抗うつ薬単剤療法中の睡眠関連副作用を報告した研究を解析に含めた。ネットワークメタ解析により睡眠関連副作用のオッズ比(OR)を算出した。用量反応性を評価するため、ベイジアンアプローチを用いた。研究間の不均一性の評価には、τ2およびI2統計を用いた。感度分析は、バイアスリスクの高い研究を除いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、6万4,696例(216試験)であった。・13種類の抗うつ薬において、プラセボと比較し、傾眠の高いORが確認された。最も高いORが認められた薬剤は、フルボキサミンであった(OR:6.32、95%信頼区間[CI]:3.56~11.21)。・11種類の薬剤は、不眠症リスクが高く、最も高かった薬剤は、reboxetineであった(OR:3.47、95%CI:2.77~4.36)。・傾眠または不眠症との用量反応曲線は、直線形、逆U字形、その他が含まれていた。・研究間に有意な不均一性は認められなかった。・ネットワークメタ解析結果のエビデンスの質は、非常に低い~中程度(GRADE)であった。

203.

労働時間の変化にかかわらず睡眠時間減少が心理的苦痛に関連

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で行われた日本人対象の横断研究から、労働時間の増減にかかわらず、睡眠時間が減った場合に心理的苦痛が強くなる可能性が示された。産業医科大学環境疫学研究室の頓所つく実氏、藤野善久氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Psychology」に3月14日掲載された。 COVID-19パンデミックが人々のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼしていることについては、既に多くの研究報告がある。ただし、その影響を労働時間および睡眠時間の変化と結びつけて検討した研究は数少ない。パンデミックの初期には、職業や勤務形態によって労働時間が減る場合と増える場合があった。また、睡眠時間が大きく変わった人も少なくないことが知られている。藤野氏らは、産業医科大学が行っている「COVID-19流行下における労働者の生活、労働、健康に関する調査(CORoNaWork研究)」の一環として、パンデミック下での労働時間と睡眠時間の変化と、心理的苦痛の変化との関連を検討した。 2020年12月20~26日(パンデミック第3波の最中)にインターネット調査を行い、2万5,762人の労働者(正社員のほかに派遣・契約社員、在宅勤務者、自営業者などは組み入れ、アルバイトは除外)から有効回答を得た。うつ病と診断されている人や極端な低体重者(30kg未満)などは除外されている。アンケートは、パンデミックの前後で労働時間と睡眠時間がどのように変化したかという質問と、過去30日間の心理的苦痛の程度を把握する「ケスラー6(K6)」という指標の質問で構成されていた。K6は6項目の質問に対して0~4点で回答し、合計24点満点のスコアで評価する。本研究では5点以上の場合を「軽度の心理的苦痛がある」と判定した。 アンケートの回答に基づき、全体を以下の九つのグループに分類。1.パンデミック後に、労働・睡眠時間がともに増加した群、2.労働時間は増加し睡眠時間は変化していない群、3.労働時間は増加し睡眠時間は減少した群、4.労働時間は変化せず睡眠時間が増加した群、5.労働・睡眠時間がともに変化していない群、6.労働時間は変化せず睡眠時間が減少した群、7.労働時間が減少し睡眠時間は増加した群、8.労働時間が減少し睡眠時間は変化していない群、9.労働・睡眠時間ともに減少した群。 解析結果に影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、治療中の病気、教育歴、居住地域(緊急事態宣言が発出された地域か否か)、婚姻状況、12歳未満の子どもの有無、家族と過ごす時間、通勤時間、業種、勤務先の従業員数、就業形態(テレワークの頻度)、職位、仕事上のストレス、経済状況など〕を統計学的に調整し、「軽度の心理的苦痛がある」オッズ比を算出した。 まず労働時間に着目すると、労働時間が増加した群は変化なしの群に比べて、軽度の心理的苦痛がある確率が有意に高かった〔オッズ比(OR)1.15(95%信頼区間1.03~1.28)〕。労働時間が減少した群は変化なしの群と有意差がなかった。次に、睡眠時間との関連を見ると、睡眠時間が減少した群は変化なしの群に比べて、軽度の心理的苦痛がある確率が2倍近く高かった〔オッズ比(OR)1.97(同1.79~2.18)〕。睡眠時間が増加した群は変化なしの群と有意差がなかった。 続いて、前記の5番目の「労働・睡眠時間がともに変化していない群」を基準として9群の比較を行った結果、労働時間の増加・減少・不変に関係なく睡眠時間が減少した場合に、軽度の心理的苦痛がある確率が有意に増加していたことが明らかになった。一方、労働時間が増加しても睡眠時間も増加した場合は、有意なオッズ比上昇が観察されなかった。 オッズ比の有意な上昇が認められた群は以下の通り。2番目の「労働時間は増加し睡眠時間は変化していない群」はOR1.24(1.08~1.43)、3番目の「労働時間は増加し睡眠時間は減少した群」はOR1.98(1.64~2.39)。6番目の「労働時間は変化せず睡眠時間が減少した群」はOR1.94(1.72~2.18)。9番目の「労働・睡眠時間ともに減少した群」はOR2.59(2.05~3.28)。なお、オッズ比の有意な低下が見られた群はなかった。 以上より著者らは、「労働時間にかかわりなく、睡眠時間の減少が心理的苦痛の主な要因である可能性が示された。パンデミックの初期段階での経済的困難を伴う労働時間の減少が睡眠時間の減少を引き起こし、その結果、心理的苦痛を増大させたのではないか」と述べている。また、「この知見は、労働者の良好なメンタルヘルス維持のための睡眠衛生の重要性を物語っている」と付け加えている。

204.

抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム~ナラティブレビュー

 重篤な精神疾患である統合失調症は、世界の障害の主な原因トップ10の1つであり、人口の約1%に影響を及ぼす。統合失調症に対する最良の治療選択肢として、抗精神病薬治療が挙げられるが、抗精神病薬治療では脂質異常症を含むメタボリックシンドロームリスクが増加する。実際に、統合失調症患者は、一般集団と比較し、メタボリックシンドロームリスクが高いといわれている。カナダ・マニトバ大学のPelumi Samuel Akinola氏らは、抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームの有病率、メカニズムおよび対処法について、まとめて報告した。Metabolic Syndrome and Related Disorders誌オンライン版2023年6月22日号の報告。 本研究は、ナラティブレビューとして実施した。PubMedを用いて電子データベースMedlineを検索し、抗精神病薬を使用した成人集団におけるメタボリックシンドロームの有病率および対処法を調査した研究を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬で治療されている患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は、37~63%の範囲であった。・抗精神病薬の影響には、体重増加、腹囲の増加、脂質異常症、インスリン抵抗性2型糖尿病、高血圧などが含まれた。・メタボリックシンドローム発症を促進する薬剤として、クロザピン、オランザピンが報告されている。・メタボリックシンドローム患者では、代謝系副作用リスクの低い抗精神病薬(ルラシドン、lumateperone、ziprasidone、アリピプラゾールなど)を優先して用いる必要がある。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームに対する非薬物療法として、有酸素運動、食事カウンセリングが有効であることが確認されている。・このような患者の体重増加に対して有効性が確認された薬物療法は、ほとんどなかった。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームは、リスクを早期に認識し、注意深くモニタリングすることが求められる。・メタボリックシンドロームまたは関連症状に対する1次および2次予防は、抗精神病薬使用患者の死亡リスクの減少に役立つ可能性がある。

205.

ポジティブ思考トレーニングでうつ病リスクは軽減するか

 過去の記憶、未来の想像、今の状態と違う状態を考えるマインドワンダリング。とくにその頻度は、心理的ウェルビーイングに重要な役割を果たすといわれている。また、反復的なネガティブ思考は、うつ病の発症や持続のリスクと関連している。オランダ・フローニンゲン大学のMarlijn E. Besten氏らは、認知科学および実験臨床心理学の手法を組み合わせたマインドワンダリングによる反復的なネガティブ思考に対する影響を調査した。その結果、うつ病に対する脆弱性の根底にあるストレス誘発性のネガティブ思考は、ポジティブ空想により部分的に改善できる可能性があり、うつ病だけでなく不適応思考の特徴を有する疾患の治療に役立つ可能性があることを報告した。Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry誌オンライン版2023年6月16日号の報告。 対象は、ネガティブ思考およびうつ病に対する脆弱性が高い群42例、低い群40例。クロスオーバーデザインにて、ポジティブ空想1セッション、ストレス誘発1セッションの後、持続的注意課題(SART)を行った。介入前後の感情状態を測定した。 主な結果は以下のとおり。・ストレス誘発セッション後は、ネガティブ思考が増加したが、ポジティブ空想セッション後は、ポジティブ思考が増加し、ネガティブ思考が減少した。・ポジティブ空想セッション後は、ストレス誘発セッション後と比較し、仕事以外の思考、過去に関連した思考、ネガティブ思考が減少した。・ネガティブ思考を受け入れやすい人は、ストレスが少ない人と比較し、ポジティブ空想セッション後よりもストレス誘発セッション後に、タスク外の思考をより多く示した。・本研究の限界として、ベースライン測定が含まれていない点、SARTに自身の懸念事項を含めるとネガティブ要素につながる可能性がある点が挙げられる。

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食習慣と片頭痛リスクとの関係

 片頭痛発症に対する食事の影響は知られているものの、大規模サンプルにおける片頭痛リスクと食習慣との潜在的な因果関係については、よくわかっていない。中国・山東大学のXinhui Liu氏らは、食習慣と片頭痛発症リスクとの潜在的な因果関係および片頭痛リスク因子のメディエーターの役割を明らかにするため、本研究を行った。その結果、食習慣と片頭痛リスクとの関連が認められ、一部の食物は不眠症やうつ病にも影響している可能性が示唆された。Frontiers in Nutrition誌2023年6月7日号の報告。 大規模ゲノムワイド研究のサマリー統計に基づき、83の食習慣と片頭痛およびそのサブタイプとの潜在的な因果関係を調査するため、2サンプルのメンデルランダム化(MR)および双方向MRを実施した。また、ネットワークMRを用いて、片頭痛リスク因子のメディエーターの役割を調査した。 主な結果は以下のとおり。・複数のテストを補正後、遺伝的に予測された片頭痛リスク低下と関連する食物は、コーヒー、チーズ、脂っこい魚、アルコール(赤ワイン)、生野菜、ミューズリー、全粒粉/全粒パンであり、これらのオッズ比の範囲は0.78(チーズ、95%信頼区間[CI]:0.63~0.95)から0.61(飲酒者が通常の食事と一緒に飲む、95%CI:0.47~0.80)であった。・片頭痛リスクと正の相関が認められた食物は、白パン、コーンフレーク/フロスティ、鶏肉であった。・白パン、全粒粉/全粒パン、ミューズリー、アルコール(赤ワイン)、チーズ、脂っこい魚の摂取に対する遺伝的傾向は、不眠症および/またはうつ病のリスク上昇と関連しており、これらの食習慣が片頭痛発症のメディエーターである可能性が示唆された。・遺伝的に予測された片頭痛と飲酒の種類との間には負の相関があり、片頭痛と1日当たりの紅茶の摂取との間に正の相関が認められた。

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双極性障害女性患者における抗精神病薬使用後の乳がんリスク

 統合失調症女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連は、さまざまな疫学データより報告されている。しかし、双極性障害女性患者を対象とした研究は、これまであまり行われていなかった。香港大学のRachel Yui Ki Chu氏らは、双極性障害女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連を調査し、統合失調症との比較を行った。その結果、統合失調症女性患者では、第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連が認められ、双極性障害女性患者では、第1世代および第2世代抗精神病薬のいずれにおいても、乳がんリスクとの関連が認められた。Psychiatry Research誌8月号の報告。 香港の公的医療データベースを用いて、双極性障害または統合失調症の18歳以上の女性患者を対象に、ネステッドケースコントロール研究を実施した。incidence density samplingを使用して、乳がんと診断された女性を対照群(最大10例)としてマッチした。 主な結果は以下のとおり。・症例群672例(双極性障害:109例)、対照群6,450例(双極性障害:931例)を分析対象に含めた。・第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連は、統合失調症(調整オッズ比[aOR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.17~1.90)または双極性障害(aOR:1.80、95%CI:1.11~2.93)の女性患者のいずれにおいても認められた。・第2世代抗精神病薬は、双極性障害女性患者のみで乳がんリスクと関連しており(aOR:2.49、95%CI:1.29~4.79)、統合失調症女性患者では有意な関連が認められなかった(aOR:1.10、95%CI:0.88~1.36)。・抗精神病薬を使用中の双極性障害女性患者の乳がんリスクについては、さらなる研究が必要とされる。

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日本人統合失調症患者の再入院予防に対する長時間作用型注射剤のベネフィット

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬のベネフィットに関するリアルワールドでのエビデンスは、とくに日本の就労人口において限られている。ヤンセンファーマのMami Kasahara-Kiritani氏らは、雇用されている患者を含む統合失調症患者の再入院予防に対するLAI抗精神病薬の影響を評価した。その結果、日本人統合失調症患者の入院予防に対するLAI抗精神病薬のベネフィットが示唆された。LAI抗精神病薬による治療を受けた患者は、フォローアップ期間中の入院期間および再入院リスクが有意に低下することが明らかとなった。Asian Journal of Psychiatry誌2023年8月号の報告。 日本医療データセンター(JMDS)の健康保険レセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ観察的集団ベース研究を実施した。対象は、2012年4月~2019年12月にLAI抗精神病薬を処方された就労者または被扶養者の統合失調症患者。LAI処方日をインデックス日とし、ベースライン時(インデックス日の365日前)の1年間のフォローアップ期間中におけるすべての原因による入院、精神医学的入院、統合失調症関連の入院を評価した。 主な結果は以下のとおり。・期間中にLAI抗精神病薬が処方された患者1,692例のうち、就労者患者55例(37.7%)、被扶養者患者91例(62.3%)を含む146例を分析対象とした。・平均年齢は37歳、女性は74例(50.7%)であった。・ベースライン期間中に入院しなかった患者は61例(41.8%)であった。・フォローアップ期間中に7日間以内の入院を経験した患者は、67例(45.9%)であった。・就労者は、被扶養者と比較し、フォローアップ期間中に入院しなかった患者の割合が高かった。 ●すべての原因による入院がなかった患者の割合:69.1% vs.61.5% ●精神医学的入院がなかった患者の割合:76.4% vs.67.0% ●統合失調症関連の入院がなかった患者の割合:87.3% vs.71.4%

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腸内細菌叢の変化は前臨床期アルツハイマー病のサイン?

 脳内にアミロイドβ(Aβ)とタウの2種類のタンパク質が異常に蓄積しているが、認知症の症状はない前臨床期アルツハイマー病の状態にある人では、そのような状態にはない人と比べて腸内細菌叢に違いのあることが、米セントルイス・ワシントン大学神経学教授のBeau Ances氏らの研究で示された。認知症のリスクが高い人を見つけ出す方法や、認知症高リスク者に対する治療法の開発につながる可能性がある研究結果として期待が寄せられている。研究の詳細は、「Science Translational Medicine」6月14日号に掲載された。 腸内細菌叢は消化機能以外にも、免疫防御、ビタミンや抗炎症化合物、さらには脳に影響を与える化学物質の産生など、数多くの身体機能において重要な役割を果たしている。また近年、腸内細菌叢と、心疾患、うつ病、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患を含むさまざまな疾患との関連について検討した研究が急増している。先行研究では、アルツハイマー病患者の腸内細菌叢には、アルツハイマー病ではない高齢者とは異なる特徴があることが示されている。しかし、そのような違いが前臨床期アルツハイマー病の段階から認められるのかどうかについては不明だった。 Ances氏らは、同大学で実施された研究に参加した、正常な認知機能を有する68~94歳の高齢者164人(男性45%)を対象に、前臨床期アルツハイマー病の人と健常者との間で、腸内細菌叢の組成やその機能に違いがあるのかを調べた。同研究では、全例で脳の画像検査と認知機能検査、腰椎穿刺による髄液採取と便の採取のほか、試験参加者による食事記録が行われていた。 試験参加者の約3分の1(49人)は、脳内にAβとタウの異常な蓄積が認められる前臨床期アルツハイマー病と見なされた。これらの参加者の腸内細菌叢をそれ以外の健常者と比較した結果、前臨床期アルツハイマー病と見なされた参加者では、腸内に存在する細菌の種類や細菌が関与する生物学的プロセスが健常者とは異なっていることが明らかになった。さらに、これらの違いは、Aβとタウの蓄積量とは関連するが、神経変性とは関連しないことも判明した。Aβとタウの蓄積量は認知症状が現れる前に増加し、神経変性は認知スキルが低下し始めたときに明らかになる。 こうした結果からAnces氏は、「われわれは、腸内細菌叢の変化はアルツハイマー病のかなり早い段階から現れることを確認した」と話す。ただし、これだけでは、腸内細菌叢の変化がアルツハイマー病の一因であると証明したことにはならない。脳内でのアルツハイマー病発症へのプロセスが腸内細菌叢を変化させている可能性も考えられる。しかし、もし腸内細菌叢がアルツハイマー病の寄与因子であるのなら、早期アルツハイマー病に対する治療への道も開けてくる可能性がある。例えば、プロバイオティクスや糞便移植によりアルツハイマー病になりやすい腸内細菌叢の状態を変えれば、アルツハイマー病の経過も変化させられる可能性がある。 では、なぜ腸内細菌叢が脳の疾患に関係しているのだろうか。これについては、完全には明らかにされていないが、Ances氏と、今回の研究には関与していない米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のRobert Vassar氏は、アルツハイマー病を含む多くの疾患では、慢性的な炎症が大きな影響を与えていると考えられていることを指摘する。Vassar氏は、「アルツハイマー病患者の脳に認められるAβやタウなどのタンパク質の異常な蓄積は、慢性的な炎症状態をもたらす」と説明している。一方Ances氏は、一部の腸内細菌が産生する酸や化学物質が腸壁にダメージを与え、本来は腸壁を透過しないさまざまな物質が体内に漏れやすくなる「リーキーガット」という状態が引き起こされることで、腸から炎症性物質が脳へと運ばれ、脳内の炎症が悪化する可能性もあると指摘している。 Ances氏は、腸内細菌叢が問題を引き起こしていると証明されてはいなくても、アルツハイマー病のより早期の診断に役立つ可能性はあると話す。また、最終的には便検査によってアルツハイマー病リスクの高い人を特定できるようになる可能性もあると述べている。

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日本の双極性障害外来患者に対する向精神薬コスト~MUSUBI研究

 双極性障害の治療コストは、地域的要因および普遍的要因と関連しているが、西欧諸国以外からのデータは、限られている。また、臨床的特徴と外来薬物療法のコストとの関連性は、十分にわかっていない。札幌・足立医院の足立 直人氏らは、日本人の統合失調症外来患者における治療コストとその後の臨床症状との関連性の推定を試みた。とくに、医療費の大部分を占め、近年増加傾向にある医薬品コストに焦点を当てて調査を行った。その結果、日本における双極性障害患者の1日当たりの平均治療コストは約350円であり、患者特性および精神病理学的状態と関連していることを報告した。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。 日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」では、2016年に日本の精神科176施設の外来を受診した双極性障害患者3,130例を対象にレトロスペクティブに評価を行った。臨床的特徴および薬剤の処方状況を記録し、向精神薬治療の1日当たりの総コストを算出した。日本における双極性障害外来患者の年間医療コストは、人口統計に基づき推定した。1日当たりの医療コストと臨床的特徴との関連を評価するため、重回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・向精神薬の1日当たりのコストは、0~3,245円の範囲であり(平均349円、32.5米ドル相当)、指数関数的な分布がみられた。・双極性障害外来患者にかかる年間コストは、約519億円(5億1,900万米ドル)であった。・日本の双極性障害外来患者にかかる推定年間コストは、米国を除くOECD諸国と同等であり、一部のアジア諸国よりも高かった。・重回帰分析では、向精神薬の1日当たりのコストと強い関連が認められた因子は、社会適応、抑うつ症状、年齢、ラピッドサイクラー、精神症状、他の精神疾患の併存であった。

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コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連

 これまで、コーヒー摂取と身体状態や死亡リスクとの関連性に関するエビデンスは蓄積されているが、精神疾患との関連性を評価した報告は限られていた。中国・杭州師範大学のJiahao Min氏らは、コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査し、さらにコーヒーの種類や添加物による影響を検討した。その結果、コーヒーを1日当たり2~3杯摂取することは、メンタルヘルス改善のための健康的なライフスタイルの一環として、重要である可能性が示唆された。Psychiatry Research誌8月号の報告。コーヒーとうつ病および不安症との間にはJ字型の関連性 英国バイオバンクのデータを用いて、2006~10年のベースラインタッチスクリーンアンケートに回答した参加者14万6,566人のデータを分析した。フォローアップ期間中、2016年にこころとからだの質問票(PHQ-9)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)を用いて、うつ病および不安症の発症を確認した。コーヒーのサブタイプは、インスタントコーヒー、ひいたコーヒー、カフェインレスコーヒーとし、添加物にはミルク、砂糖、人工甘味料を含めた。関連性の評価には、多変数調整ロジスティック回帰モデルおよび制限付き3次スプラインを用いた。 コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・コーヒーを摂取していた参加者は約80.7%、多くは1日当たり2~3杯(41.2%)摂取していた。・コーヒー摂取とうつ病および不安症との間には、いずれもJ字型の関連性が認められた。・精神疾患の発症リスクが最も低かったコーヒー摂取量は、1日当たり約2~3杯であった。・ひいたコーヒー、ミルク入りコーヒー、無糖コーヒーを1日当たり2~3杯飲んでいた参加者も、同様の結果であった。

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統合失調症治療の専門家、早期の長時間作用型注射剤使用を支持

 統合失調症は、精神症状、陰性症状、認知機能低下などを来す慢性疾患である。統合失調症患者は、一般的にアドヒアランスが不良であり、これに伴う再発によりアウトカム不良に至る可能性がある。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、治療アドヒアランスを改善し、再発・再入院リスクを低下させることが期待される。初発や発症初期の統合失調症患者にLAIを使用することで、その後のベネフィットが得られる可能性があるものの、歴史的にLAIの使用は慢性期患者を中心に行われてきた。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のCelso Arango氏らは、初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスを報告した。その結果、疾患の重症度、再発回数、社会的支援の有無にかかわらず、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療が支持された。しかし、この結果は臨床医の認識とギャップがあるため、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療に関するエビデンスを作成していくことが求められる。BMC Psychiatry誌2023年6月21日号の報告。 初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスは、3段階のデルファイ法プロセス(第1段階:紙面調査、1:1面談、第2~3段階:電子メール調査)を用いて収集した。文献レビューおよび専門家5人からなる運営委員会の意見に基づき、患者集団、有害事象マネジメント、機能回復に関するステートメントを作成した。専門家の意見が次の段階に進むかどうか、および合意レベルのコンセンサスが得られるかを分析ルールに従い判断した。中心傾向(最頻値、平均値)および変動性(四分位範囲)の測定値が報告され、パネリストがグループ全体の反応を参照し、以前の反応を評価することに役立てた。 主な結果は以下のとおり。・デルファイ法のパネリストは、フランス、イタリア、米国、ドイツ、スペイン、デンマーク、英国の7ヵ国でLAIによる統合失調症の治療経験を有する精神科医17人であった。・パネリストに対し3つのカテゴリ(患者集団、薬剤の投与量・マネジメント・有害事象、機能回復の領域および評価)に関する73のステートメントが提示された。・55のステートメントにおいて、コンセンサスとみなされる80%以上の合意が得られた。・合意度が低い(40~79%)または非常に低い(39%以下)項目は、初発および発症初期の統合失調症患者における投与開始時期、有効性の喪失時のマネジメント、ブレークスルーエピソードのマネジメントであり、現在のエビデンスギャップを反映していた。・初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAIのベネフィットが強調されており、再発、再入院、機能不全のリスク軽減に関するコンセンサスが得られた。・LAI使用に対しては、これらのベネフィットだけでなく、症状寛解を超えた長期的な機能回復との関連性が支持された。

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COPD患者への抗うつ薬、増悪や肺炎のリスクに

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に多い併存疾患として、うつ病や不安症などの精神疾患が挙げられる。抑うつの併存率は、欧米では80%、日本人では38%という報告もある1,2)。しかし、COPD患者における抗うつ薬のリスク・ベネフィットに関するエビデンスは乏しい。そこで英国・ノッティンガム大学の研究グループは、英国のプライマリケアにおける診療記録のデータベースを用いて、COPD患者における抗うつ薬とCOPD増悪、肺炎のリスクの関係を検討した。その結果、抗うつ薬の使用はCOPD増悪や肺炎のリスクを上昇させ、抗うつ薬の使用を中止するとそのリスクは低下したことが示された。本研究結果は、Rayan A. Siraj氏らによって、Thorax誌2023年6月19日号で報告された。 英国のプライマリケアにおける診療記録のデータベース(The Health Improvement Network)を用いて、自己対照ケースシリーズ研究(Self-Controlled Case Series)を実施した。少なくとも1回以上の抗うつ薬処方を受けたCOPD患者3万1,253例が対象となった。対象患者におけるCOPD増悪と肺炎の発生率を調べた。 主な結果は以下のとおり。・COPD患者3万1,253例のうち、COPD増悪が認められたのは1万8,483例、肺炎が発生したのは1,969例であった。・抗うつ薬処方から90日間において、COPD増悪の発生率は16%増加した(年齢調整発生率比[aIRR]:1.16、95%信頼区間[CI]:1.13~1.20)。抗うつ薬処方91日後~抗うつ薬中止までの期間において、COPD増悪の発生率はやや増加したが(aIRR:1.38、95%CI:1.34~1.41)、抗うつ薬の中止後に減少した。・抗うつ薬処方から90日間において、肺炎の発生率は79%増加したが(aIRR:1.79、95%CI:1.54~2.07)、抗うつ薬の中止後にこの関連は消失した。 著者らは、「抗うつ薬はCOPD患者におけるCOPD増悪、肺炎のリスク上昇と関連があり、そのリスクは抗うつ薬の中止により低下した。本結果は、抗うつ薬の副作用を注意深くモニタリングすること、精神疾患に対する非薬物療法を考慮することを支持するものであった」とまとめた。

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統合失調症の発症時期と抗精神病薬に対する治療反応との関係

 統合失調症は、発症年齢が遺伝的要因の影響を受けており、予後を予測することが可能であると考えられる。中国・北京大学のYi Yin氏らは、遅発性、早期発症型、定型発症型の統合失調症患者における症状の特徴および抗精神病薬に対する治療反応を比較するため、本検討を行った。その結果、40歳以上で発症した統合失調症に対する抗精神病薬治療は、発症年齢が40歳未満の場合と比較し、陽性症状の早期改善が期待できることが示唆されたことから、統合失調症治療では、発症年齢を考慮した個別治療が求められることを報告した。Schizophrenia Research誌2023年7月号の報告。 中国5都市の精神保健病院の入院部門5ヵ所を対象に、8週間のコホート研究を実施した。対象患者は、発症から3年以内かつ最低限の治療を実施した遅発性統合失調症(LOS、発症年齢:40~59歳)106例、早期発症型統合失調症(EOS、発症年齢:18歳未満)80例、定型発症型統合失調症(TOS、発症年齢:18~39歳)214例。ベースライン時および抗精神病薬治療8週間後の臨床症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を使用した。抗精神病薬治療の8週間における症状改善効果を比較するため、混合効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療開始後、3群ともにすべてのPANSSスコアの減少が認められた。・性別、罹病期間、ベースライン時の抗精神病薬投与量で調整した後、LOSは、EOSと比較し、8週間後のPANSS陽性スコアの有意な改善が認められた。・LOSは、EOSまたはTOSと比較し、オランザピン等価換算量で体重1kg当たり1mg投与されていた場合において8週間の陽性症状改善との関連が認められた。

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思春期うつ病と脂質異常症との関連

 小児期および思春期のうつ病患者は、若年性心血管疾患(CVD)リスクが上昇するといわれている。思春期うつ病患者において、CVDの重要なリスクファクターである脂質異常症の兆候が認められているかは、よくわかっていない。カナダ・Sick Kids Research InstituteのAnisa F. Khalfan氏らは、思春期うつ病患者における脂質異常症の有病率を調査した。その結果、思春期うつ病患者の脂質異常症レベルは、健康対照群と同レベルであった。うつ病の経過とともに出現する脂質異常症のタイミングや思春期うつ病患者のCVDリスク増加に関連するメカニズムを明らかにするためには、今後の研究において、うつ症状と脂質関連検査値の軌跡を調査することが求められる。Journal of Affective Disorders誌2023年10月号の報告。 精神科クリニック外来および地域社会より募集した若者を、診断後にうつ病群または健康対照群に分類した。HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセライド(TG)濃度などのCVDリスクファクターに関する情報を収集した。うつ病の重症度評価には、小児のうつ病スケールを用いた。うつ病群およびうつ病重症度と脂質濃度との関連を評価するため、重回帰分析を用いた。年齢、性別、標準化されたBMIでモデルの調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は243例(女性の割合:68%、平均年齢:15.04±1.81歳)。・うつ病群および健康対照群における脂質異常症(48% vs.46%、p>0.7)、高TG血症(34% vs.30%、p>0.7)のレベルは同程度であった。・未調整モデルでは、思春期うつ病患者におけるうつ病重症度と総コレステロール濃度の高さとの関連が認められた。・共変量で調整した後、うつ病重症度と高HDL-C、低TG/HDL-C比との関連が認められた。

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医師によるうつ病の重症度評価と患者本人の苦痛の乖離に、幼少期の逆境体験などが関与

 医師が臨床的に評価した重症度よりも強い苦痛を感じているうつ病患者には、幼少期の逆境体験や自閉症傾向などが多く見られるとする、国立精神・神経医療研究センターの山田理沙氏、功刀浩氏(現在の所属は帝京大学医学部精神神経科学講座)らの研究結果が、「Clinical Psychopharmacology and Neuroscience」に5月30日掲載された。著者らは、「うつ病の重症度評価において、患者の主観的な苦痛の強さを把握することが、より重要なケースが存在する」と述べている。 近年、患者中心の医療の重要性が認識されるようになり、精神科医療でも治療計画の決定などに患者本人の関与が推奨されるようになってきた。これに伴い、うつ病の重症度についても、医師が評価スケールなどを用いて判定した結果と、患者への質問票による評価結果が一致しないケースのあることが分かってきた。ただ、そのような評価の不一致に関連する因子はまだ明らかにされていない。 研究の対象は、2017年10月~2020年2月に国立精神・神経医療研究センター病院気分障害センターの外来を受診した、17歳以上の大うつ病性障害(MDD)患者60人および双極性障害(BD)患者40人、計100人〔年齢中央値33歳(四分位範囲24~46)、男性52%〕。診断は、米国精神医学会の診断基準の第4版(DSM-4)に即して行われた。 医師によるうつ病の重症度評価には「ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)」、患者自身の主観的評価には「ベック抑うつ質問票(BDI)」を用いた。両者の評価結果の関連を検討したところ、有意な正相関(r=0.624、P<0.001)が認められた。 次に、HAMD-17とBDIの回帰直線からBDIスコアまでの乖離の程度の四分位数で、全体を以下の3群に分類。BDIスコアが回帰直線より高値であり、その乖離幅の大きい25%の群を、医師の評価よりも主観的な苦痛の大きい群(BO群)とした。反対に、BDIスコアが回帰直線より低値であり、その乖離幅の大きい25%の群を、医師の評価よりも主観的な苦痛が少ない群(BU群)とし、残りの50%は両者の評価が一致している群(BC群)とした。これら3群間に、年齢、性別や疾患(MMD、BD)の分布、自殺未遂の既往、治療薬、教育歴、およびHAMD-17などに有意差はなかった。 医師の重症度評価と患者の主観的評価に関連する可能性のある因子としては、幼少期の逆境体験(CTQ-6)、成人用対人応答性尺度(SRS-A)、問題への対処行動の傾向(WCCL)を評価した。それらの評価結果をBO群、BU群、BC群で比較すると、一部のスコアに有意な群間差が認められた。 例えばCTQ-6については、合計スコア、および精神的虐待を表す下位尺度が、BU群よりBO群の方が高値だった。下位尺度のうち身体的虐待および情緒的ネグレクトについては、3群間に有意差がなかった。また、SRS-Aについては、合計スコアと自閉症傾向を表す下位尺度などが、BC群やBU群よりBO群の方が高値だった。WCCLに関しては、自責スコアはBC群やBU群よりBO群が高く、希望的観測と回逃・避避のスコアはBC群よりBU群の方が低かった。 著者らは本研究の限界点として、サンプル数が十分でなく比較的若年の患者が多いこと、大半の患者が既に薬物療法が開始された状態で検討していること、BD患者の躁症状については主観的評価を行っていないことなどを挙げている。その上で、「幼少期の逆境体験や自閉症傾向、問題に対して自責の念を抱きやすい傾向などを有するうつ病患者は、臨床医が客観的に評価するよりも大きな苦痛を感じている可能性がある」と結論付け、「そのような懸念のある患者では、主観的評価を積極的に行うべきではないか」と提言している。

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(前編)【なんで嘘くさくても知りたがるの?(噂好きの心理)】Part 2

なんで嘘くさくても知りたがるの?フェイクニュースをつくる目的は、金儲け、承認、プロパガンダなどであることがわかりました。それでは、なぜ私たちはフェイクニュースに引っかかってしまうのでしょうか? もっと言えば、フェイクニュースに限らず、なぜ私たちは噂話など不確かな情報でも、つい知りたくなってしまうのでしょうか? ここから、この噂好きの心理の要素を大きく3つ挙げてみましょう。(1)びっくりしたいから樹は上司に「『青虫うどんの真相?』って、真相が記事の中身に書かれていないのに、完全な釣りタイトルです。語尾に?をつければ許されるってものじゃありません」と怒りをぶつけます。自分の記事のタイトルが、上司の指示で書き換えられていたのでした。彼女は「難しい記事はウケない。アホな記事ほど評価される」とボヤいてもいました。1つ目の心理は、びっくりしたいからです。これは、新奇性(サリエンス)と呼ばれています。たとえば、「最新」「天才」などの目新しくてまれなもの(好奇心)、「陰謀」「真相」などの奇妙で不可解なもの(恐怖心)、「不正」「不倫」「差別」などの嫌悪するもの(道徳的感情)に私たちは敏感であることがわかっています2)。だからこそ、悪い噂は早く広まり、根拠がない陰謀論がいつも何かしらあるのです。さらに、ニュースが溢れている情報化社会では、これらのよりわかりやすい「煽りワード」が優先的に選ばれてしまうというわけです。この心理を見越して、つくる側は、ますます過激なタイトルのわりに中身(根拠)のないニュースを量産します。この悪循環は、ニュース記事だけでなく、動画においてもです。最近では、インパクトのあるサムネイルの画像の内容が再生中に出てこない動画も増えています。また、「ディープフェイク」と呼ばれる精巧な偽の動画をつくることが技術的に可能になり、もはや本物と区別がつかなくなるという別の問題も出てきています。なお、サリエンスの心理の詳細については、関連記事2の後半部分をご覧ください。(2)信じたいものだけを信じるから樹は上司に「フェイクニュースを転載したまとめサイトは30万PV」「一方、うちが出した『CSSの偽サイトに注意!「日本の奴隷労働の現状」はフェイクニュース』。こちらの記事は5万PV。拡散したフェイクニュースの6分の1しか閲覧されていない」と嘆きます。その後、上司は「自分にとって都合の悪い話は信じない。信じたいものだけを信じる。だったら、こっちもバカが喜ぶニュースを流すまでだ」と吐き捨てています。2つ目の心理は、信じたいものだけを信じるからです。これは、確証バイアスと呼ばれています。あることについて、それを肯定する情報(確証)に注意が向きやすくなる一方、否定する情報(反証)には注意が向きにくくなることです(認知の偏り)。つまり、私たちは、一度そう思ったら、その考えをなかなか変えたくなくなるのです。これは、「良し悪しは第一印象で決まる」(初頭効果)という印象形成のバイアスにもつながります。たとえば、ある有名な教育法の本のサブタイトルには、「才能をぐんぐん伸ばす」ともっともらしく書かれています。これは、この教育法によって「才能が伸びる」ことを説明しているわけですが、私たちは「この教育法でなければ才能は伸びない」と思ってしまいます。つまり、このサブタイトルは確証バイアスを巧みに利用していることになります。実は、この教育法でなくても、一般的な子育てによって「才能は、あるなら勝手に伸びる」という根拠が別にあり、反証することができます。この詳細については、関連記事3をご覧ください実際に、ツイッターの大規模な研究では、事実と比べて誤情報は70%多いことがわかっています2)。つまり、私たちは、情報を偏って選びがちであるということです。さらに、広告と同じようにニュースも自動的に「より自分にマッチするもの」だけに選別されて流れてくるネットサービス(パーソナライズ検索機能)では、ますます信じたいものだけを信じてしまうようになってしまいます。なお、このような個人情報を学習したアルゴリズムによって、その人に都合の良い情報だけに選別されて流れてくる状況は、まるで特定の情報の「膜」の中に閉じ込められ、孤立していく危うさもあります。これは、フィルターバブル(膜の泡)と呼ばれています2)。(3)同じ考えでつながりたいから樹が取材したまとめサイト管理人は「こっちが右寄り、こっちが左寄りのサイトです。例の青虫うどん騒ぎの場合、右派サイトでは『鶴亀(うどん)とテイショーは反日のブラック企業!』ってまとめをつくって、左のサイトでは『差別反対!鶴亀うどんを守れ!』ってね」と得意げに説明します。そんな彼に、樹は「つまり、お金儲けのために、対立を煽ってる」と即ツッコミます。3つ目の心理は、同じ考えでつながりたいからです。これは、同類性と呼ばれています。「類は友を呼ぶ」ということわざがあるように、見た目や考え方が近い人ほど親近感を抱きやすく集まりやすいということです。これは、「人は周りに染まりやすい」という社会的影響(同調)の心理との相乗効果があります。実際の研究では、健康に関する交流の実験用のSNSをつくり、つながりがランダムなネットワークと同類性が高いネットワークに分けて、情報共有を行ったところ、同類性が高い方がダイエット日記の取り組みや広がりが強まったという結果が出ました2)。つまり、情報の拡散には、同類性が高いネットワークの方が効率的であることがわかります。さらに、同類性の高い「友人」を自動的に勧められるSNSでは、ますます同じ考えの人とつながってしまうというわけです(集団極性化)。 これは、樹が「対立を煽っている」と言ったように、社会のつながりの分断を引き起こします。もはや、SNSの空間は、自分が意見を発信しても自分とそっくりな意見ばかりがこだまのように返ってくる状況になってしまいます。これは、エコーチェンバー(こだま部屋)と呼ばれています2)。その結果、過激なバッシングも生まれています。この心理の詳細については、関連記事4をご覧ください。1)フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話 シナリオブック:野木亜紀子、20232)フェイクニュースを科学する P14、P45、P48、P71、P73、P80、P96:笹原和俊、化学同人、2021<< 前のページへ■関連記事ザ・サークル【「いいね!」を欲しがりすぎると?(承認中毒)】Part 1ビューティフルマインド【統合失調症】伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 1苦情殺到!桃太郎(前編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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アリピプラゾール含有グミ製剤でアドヒアランスは向上するか

 精神疾患の治療を成功させるためには、服薬アドヒアランスを良好に保つことが重要である。医薬品のオーダーメイドは、アドヒアランスが不十分な患者に対し、個々の患者ニーズを満たす剤形を提供可能とする。静岡県立大学の河本 小百合氏らは、市販されているアリピプラゾール(ARP)製剤を用いて、ARP含有グミ製剤の調製を試みた。Chemical & Pharmaceutical Bulletin誌2023年号の報告。 健康対照者10人(平均年齢:23.7±1.2歳)を対象に、味覚検査を実施し、ARP含有グミ製剤の味を調査した。ココア味とフルーツ味の2種類のグミ(ARP:6.0mg、グミ:3.5g)を用いて、味覚テストを実施した。全体的なおいしさの評価には、100mmビジュアルアナログスケール(VAS)を用いた。ARP含有グミ製剤の嗜好性と5段階評価スケールを用いて評価した受容性のVASスコアの分析には、ROC曲線分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・総合的な味に関して最も高いVASスコアが示したのは、ココア風味のARP含有グミ製剤の中で、アスパルテーム、ココアパウダー、バナナ風味を組み合わせたもの(ABC-ARP含有グミ製剤)であった。・すべてのフルーツ風味の中で最も高いVASスコアを示したのは、グレープフルーツ風味のもの(GF-ARP含有グミ製剤)であった。・ABC-ARP含有グミ製剤およびGF-ARP含有グミ製剤のVASスコアは、ROC曲線より算出した許容性のカットオフ値を大きく上回っていた。・アドヒアランス向上、個々の患者ニーズを満たすために、ARP含有グミ製剤は、代替可能な手法である可能性が示唆された。

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双極性障害ラピッドサイクラーの特徴

 双極性障害(BD)におけるラピッドサイクリング(RC、1年当たりのエピソード回数:4回以上)の存在は、1970年代から認識されており、治療反応の低下と関連する。しかし、1年間のRCと全体的なRC率、長期罹患率、診断サブタイプとの関連は明らかになっていない。イタリア・パドヴァ大学のAlessandro Miola氏らは、RC-BD患者の臨床的特徴を明らかにするため、プロスペクティブに検討を行った。その結果、BD患者におけるRC生涯リスクは9.36%であり、女性、高齢、BD2患者でリスクが高かった。RC患者は再発率が高かったが、とくにうつ病では罹患率の影響が少なく、エピソードが短期である可能性が示唆された。RC歴を有する患者では転帰不良の一方、その後の再発率の減少などがみられており、RCが持続的な特徴ではなく、抗うつ薬の使用と関連している可能性があることが示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月4日号の報告。 RCの有無にかかわらずBD患者1,261例を対象に、記述的および臨床的特徴を比較するため、病例および複数年のフォローアップによるプロスペクティブ調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・1年前にRCであったBD患者の割合は9.36%(BD1:3.74%、BD2:15.2%)であり、男性よりも女性のほうが若干多かった。・RC-BD患者の特徴は以下のとおりであった。 ●年間平均再発率が3.21倍高い(入院なし) ●罹患率の差異は小さい ●気分安定に対する治療がより多い ●自殺リスクが高い ●精神疾患の家族歴なし ●循環性気質 ●既婚率が高い ●兄弟や子供がより多い ●幼少期の性的虐待歴 ●薬物乱用(アルコール以外)、喫煙率が低い・多変量回帰モニタリングでは、RCと独立して関連した因子は、高齢、抗うつ薬による気分変調、BD2>BD1の診断、年間エピソード回数の増加であった。・過去にRC-BDであった患者の79.5%は、その後の平均再発率が1年当たり4回未満であり、48.1%は1年当たり2回未満であった。

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双極性障害患者の入院期間に影響を及ぼす要因

 双極性障害患者の入院期間やそれに影響を及ぼす因子を特定するため、 中国・首都医科大学のXiaoning Shi氏らは、本検討を行った。その結果、入院期間の長い双極性障害患者は、自殺リスクが高く、複雑な多剤併用が行われていた。入院期間を短縮するためには、うつ病エピソードの適切な管理と機能的リハビリテーションが有用な可能性がある。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月19日号の報告。 双極I型障害またはII型障害患者を対象に多施設共同観察コホート研究を実施した。2013年2月~2014年6月に中国6都市、7施設より募集した外来患者520例を、継続的なサンプリングパターンを用いてフォローアップ調査を行った。本研究は、12ヵ月のレトロスペクティブ期間と9ヵ月のプロスペクティブ期間で構成された。対象患者の人口統計学的特徴および臨床的特徴を収集した。入院期間(プロスペクティブ期間の入院日数)の影響を及ぼす因子の分析には、ポアソン回帰を用い、入院期間(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間)の分析には、線形回帰分析を用いた。性別、年齢、教育年数、職業的地位、在留資格、精神疾患の家族歴、薬物乱用の併存、不安障害の併存、自殺企図の回数(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間での発生回数)、初回エピソード特性、双極性障害のタイプ(I型またはII型)を変数として用いた。 主な結果は以下のとおり。・ポアソン回帰分析では、入院期間と相関が認められた因子は、自殺企図の回数(発生率[IRR]:1.20、p<0.001)、抗精神病薬の使用(IRR:0.62、p=0.011)、抗うつ薬の使用(IRR:0.56、p<0.001)であった。・線形回帰分析では、うつ病エピソード期間の長期化や機能低下と関連する可能性のある双極II型障害(β:0.28、p=0.005)および失業(β:0.16、p=0.039)は、長期入院との関連が認められた。・自殺企図の回数と短期入院との間に関連傾向が認められた(β:-0.21、p=0.007)。・自殺リスクの高い患者では、治療が不十分、コンプラインアンス不良の傾向があるため、入院中に適切に評価し、治療を行う必要がある。

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