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ステロイド外用薬を「短期使用薬」とするのは誤認、OTC薬給付見直しで声明/日本皮膚科学会ほか

 日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会、日本アレルギー友の会は2026年9月3日、3団体共同で「OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明」を発表した。声明はステロイド外用薬を「急性増悪時の短期使用薬」とするのは誤認と指摘するなど、全9項目からなる。 「OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明」は以下のとおり。1. 声明の趣旨 政府が検討を進める「OTC類似薬の保険給付見直し案」について、皮膚科医療の専門性および患者の生活実態の観点から重大な懸念があるため、3団体は共同して本声明を公表する。 本見直し案は、単なる薬剤費負担の問題ではなく、我が国の皮膚科診療のあり方そのものに影響する制度であり、国民の健康に直結する重大な課題である。2. 制度趣旨との齟齬 見直し案には、アトピー性皮膚炎をはじめとする重症・慢性疾患が多数含まれている。これは「軽症疾患の自己治療を促す」という制度趣旨と整合せず、なし崩し的な対象拡大である。3 .医学的誤認に基づく制度設計 皮膚科治療の根幹であるステロイド外用薬が「急性増悪時の短期使用薬」と誤認されている。 診療ガイドラインは、寛解維持のための計画的外用を推奨しており、外用薬は「塗り薬」ではなく皮膚バリア治療という医療行為である。 医学的誤認に基づく負担増は、制度として成立しない。4. 皮膚科医療の基盤への影響 負担増により標準治療の継続が困難となれば、再燃・重症化が増加し、受診抑制・自己判断・誤用・経皮感作という連鎖が生じる。 皮膚科医療の基盤が揺らぎ、国民の安全性に直結する。5. 歴史的教訓と現在の誤情報 1990年代の「悪魔の薬」報道は科学的根拠のない恐怖を全国に拡散し、受診中断・重症化が続出した。 その後、臨床皮膚科医会と患者団体が協働し、誤情報を是正し標準治療を回復してきた。 しかし現在も「脱ステ」「民間療法」「高額サプリ」等の誤情報がSNSで拡散し、若年層の受診遅延・重症化が続いている。 外用薬の負担増は、誤情報に流される患者をさらに増やす。6. 公衆衛生上の重大な懸念 茶しずく石けん事件では、加水分解コムギ末による経皮感作により全国1,800人以上が食物アレルギーを新規発症した。 皮膚バリア破綻が公衆衛生事案を引き起こすことは明確である。 皮膚は免疫の入口であり、皮膚科医療は国民医療の基盤である。7. 患者・家族の生活実態 アトピー性皮膚炎は痛み、痒み、睡眠障害、皮膚裂傷、浸出液などにより生活を深刻に損なう疾患である。 外用薬は「生きるための薬」であり、寛解維持のための計画的外用が不可欠である。 負担増は治療中断・再燃・重症化を招き、誤情報に惑わされる危険性は今も続く。8. 3団体共同の要望 1. 軽症疾患と中等症・重症・慢性疾患を区別し、なし崩し的な対象拡大を行わないこと。 2. ステロイド外用薬を「短期使用薬」と誤認した負担増を撤回すること。 3. 皮膚科診療の根幹を損なわない制度設計を行うこと。 4. 検討過程に当事者の声を適切に反映すること。9. 総括 本見直し案は、皮膚科医療の基盤と国民の健康に直結する制度である。 3団体は、国民の安全を守る観点から、慎重な再検討を強く求める。

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アトピー性皮膚炎に、Tregを調節する新規IL-2受容体作動薬が有望/Lancet

 中等度~重度のアトピー性皮膚炎患者において、rezpegaldesleukinはプラセボと比較して、重症度評価指標のEczema Area and Severity Index(EASI)スコアの変化率を含む複数の臨床評価項目を有意に改善し、良好な有害事象プロファイルをもたらすことが示された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らREZOLVE-AD Study Investigatorsが「REZOLVE-AD試験」の結果を報告した。rezpegaldesleukinは、制御性T細胞(Treg)を選択的に増殖させ、その機能を強化するインターロイキン-2(IL-2)受容体作動薬であり、アトピー性皮膚炎などの自己免疫疾患や炎症性疾患に新たな治療アプローチを提供すると考えられている。研究の成果は、Lancet誌2026年8月29日号で報告された。3用量とプラセボを比較する無作為化第IIb相試験 REZOLVE-AD試験は、10ヵ国(北米、欧州、オーストラリア)の107施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第IIb相試験であり、2023年11月~2025年1月に参加者を登録した(Nektar Therapeuticsの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、登録の少なくとも12ヵ月前に診断が確定した慢性アトピー性皮膚炎(米国皮膚科学会コンセンサス基準)で、EASIスコア(0~72点、高点数ほど病変の重症度が高く、より広範)が16.0点以上、validated Investigator Global Assessment for Atopic Dermatitis(vIGA-AD)スコア(0~4点、高点数ほど病変の全体的な外観が重度)が3点(中等度)以上であり、病変の体表面積(BSA)が全身の10%以上に及ぶ患者であった。 被験者393例(平均年齢37.1歳[SD 14.4]、女性203例[52%])を、rezpegaldesleukin 24μg/kg(2週ごと)投与群(104例)、18μg/kg(2週ごと)投与群(106例)、24μg/kg(4週ごと)投与群(110例)、プラセボ群(73例)に無作為に割り付けた。 本論では、導入期間(16週間)の結果が報告された。主要評価項目は、ベースラインから16週までのEASIスコアの平均変化率であった。24μg/kg(2週ごと)投与群で、副次評価項目がすべて改善 平均発症時年齢は15.9歳(SD 19.2)、平均罹患期間は21.5年(SD 14.9)であった。ベースラインのvIGA-ADスコアは3点が68%、平均総EASIスコアは26.0(SD 9.77)点、関連病変のBSAが全身に占める平均割合は40%(SD 20.00)であった。 ベースラインから16週までのEASIスコアの平均変化率は、rezpegaldesleukin 24μg/kg(2週ごと)投与群が-61%(SE 3.8)、18μg/kg(2週ごと)投与群が-58%(SE 3.8)、24μg/kg(4週ごと)投与群が-53%(SE 3.7)、プラセボ群は-31%(SE 4.5)であった。 16週時における平均EASIスコア変化率のプラセボ群との差は、rezpegaldesleukin 24μg/kg(2週ごと)投与群で-30%ポイント(95%信頼区間[CI]:-41.3~-18.0、p<0.0001)、18μg/kg(2週ごと)投与群で-27%ポイント(95%CI:-38.5~-15.7、p<0.0001)、24μg/kg(4週ごと)投与群で-22%ポイント(95%CI:-33.3~-10.3、p=0.0002)であり、いずれも有意に優れた。 rezpegaldesleukin 24μg/kg(2週ごと)投与群では、6項目の副次評価項目がすべて、プラセボ群に比べ有意に改善した。EASI-50達成率のプラセボ群との差は32%(p<0.0001)、EASI-75達成率の差は26%(p=0.0008)、EASI-90達成率の差は16%(p=0.011)、vIGA-AD奏効(0~1点の達成かつベースラインから2点以上の低下)の差は12%(p=0.047)、Numerical Rating Scale(NRS)奏効(ベースラインでスコアが4点以上の患者における4点以上の低下)の差は27%(p=0.0011)、BSAのベースラインからの変化率の差は-37%(p<0.0001)であった。70%で注射部位反応 投与期間中に発生した有害事象で、rezpegaldesleukin投与群(320例)の少なくとも5%に認め、かつプラセボ群(73例)よりも発生率が高かったイベントとして、注射部位反応(223例[70%]vs.3例[4%])、好酸球増多(25例[8%]vs.2例[3%])、発熱(20例[6%]vs.2例[3%])、頭痛(20例[6%]vs.3例[4%])、上気道感染症(19例[6%]vs.4例[5%])、関節痛(16例[5%]vs.1例[1%])を認めた。 注射部位反応のほぼすべて(>99%)は、重症度が軽度~中等度であり、最終的に消退した。重篤または重度の有害事象のリスク増加を示す証拠はなく、導入期間中に死亡例の報告はなかった。 著者は、「これらの知見は、Treg増強に基づく新たな生物学的製剤のさらなる開発を支持するものである」としている。また、「重要な点として、本研究はTregの調節が臨床的な有益性をもたらすことを示した初めての大規模臨床試験であり、アトピー性皮膚炎の治療パラダイムにおける主要な標的としてのTregの臨床的可能性を明らかにしたことが挙げられる」と指摘している。

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第329回 医師にバトンは渡された、OTC類似薬の保険給付の見直し

INDEX負担の対象となる医療用医薬品「別途の負担を求めない者」と「求めない療養」の範囲医師にも判断が委ねられる負担の対象となる医療用医薬品6月5日に公布された改正健康保険法などにより、これまで懸案だった一部の医療用OTC類似薬の処方に関し、2027年3月より一部保険外療養として別途の負担が求められることが決まっている。新たな制度で対象となるのはOTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が同じ医療用医薬品77成分。主な対応症状は、「鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌」などとされる。これらを使用する患者は、薬剤費の4分の1を保険外の別途負担として追加で支払うことになる1)。もっともこれを機械的に適用すると、一部の患者に不利益が生じる可能性がある。具体的には、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えているような医学的観点からOTC類似薬の長期使用が必要となる患者である。このため厚生労働省は「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」を設置し、6月から4回にわたって会合を開き、別途の負担を求めない患者や求めない療養の範囲について検討を行い、中間とりまとめを8月に公表した2)。まず前述のOTC類似薬77成分は、多くの場合、各成分とも医療用医薬品としての適応は複数ある。これと1日最大用量が同じ同一成分のOTC医薬品の適応を比較し、原則双方で適応が共通する場合は別途の負担の対象、医療用医薬品のみにある適応を別途の負担の対象外としている。この結果、77成分267適応のうち、184適応が対象、83適応が対象外となった。比較的わかりやすい事例を挙げると、抗アレルギー薬はOTC医薬品では花粉症に伴うアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎の適応で販売されているものが多く、この適応でのOTC類似薬側の処方は別途の負担の対象になるが、OTC医薬品が適応としていない気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などは対象外となっている。また、酸化マグネシウムではOTCの適応である便秘症は支払い対象、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、尿路シュウ酸カルシウム結石の発生予防では対象外である。「別途の負担を求めない者」と「求めない療養」の範囲一方、別途の負担を求めない患者やその療養範囲に関しては、患者分類などに応じて分かれている。まず、がん患者では「がんの治療中に、がんやその治療に関連して生じた状態」に対するOTC類似薬の使用は対象外。がん治療中の定義については「がんおよびその治療に関連して生じた状態に対し、現に治療行為を伴う診療を継続的に受けている場合または治療開始に向けて具体的な治療計画の下で継続的な診療管理を受けている場合」としている。これらの表現はややわかりにくいため、理解を深めるために『がん治療中(別途の負担の対象外)』には該当しない(=別途の負担が課される)事例を列挙する。がんの診断歴はあるものの、現在は再発なく、定期受診のみ継続しているがん術後で定期的な画像検査などによる経過観察を受けているものの、がんに対する薬物療法などの治療行為は終了がんの疑い・再発疑いで精査中前がん病変の状態がんやその治療に関連して生じた症状以外また、指定難病やそれに付随して発生する症状、国の公費負担医療の対象者が対象症状に対して用いる場合、医師の管理下で集中的かつ継続的な治療を受けている入院患者、検査・処置・手術の管理目的での14日以内の処方も、別途の負担の対象外となる。医師にも判断が委ねられる以上は比較的わかりやすいが、かなり判断がグレーになるのが「医師が対象医薬品の長期使用などが医療上必要と考える患者」である。ここでは、症状が季節や環境要因によらず持続し、医師の管理下で継続的な治療が行われている状態を指し、必ずしもその時点までのOTC類似薬の処方期間の長短を問わない。ただし、内服薬に関しては比較的使用期間が把握しやすいことから、年間処方日数がおおむね50週を目安としている。ただし、負担対象を判断する時点で50週の継続処方に該当しなくとも、初診から6ヵ月間にわたり、症状の持続・反復と対象OTC類似薬の継続的・反復的な使用が確認され、通年使用することが医療上必要であると医師が認めている場合は対象外である。さらに長期使用で問題になるのが、内服薬と異なり、使用量や使用頻度に個人差が大きく、処方量のみで長期使用が判断しにくい外用薬である。これについては、以下を踏まえて総合的に判断するとした。明確なようでかなり曖昧である。(1)慢性または反復性の疾患として明確に診断されている(2)該当成分の継続的または反復的な使用が症状緩和にとどまらない有用性・必要性があることが診療ガイドラインなどで示されている(3)継続の必要性が患者の自覚症状や使用感に過度に依存せず客観的に判断できる(4)同一または類似薬効群との均衡やOTC医薬品で対応している患者との公平性を確保できるちなみにこれ以外でも薬の類型による目安も設けられ、抗真菌外用薬、消毒薬、ステロイド外用薬、消炎鎮痛外用薬は、一時的な治療や急性増悪時に用いられることが多いとして、別途の負担の対象とし、皮膚保湿剤・保護剤はアトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質と尿素、通年性アレルギーに対する点眼薬は対象外となった。この内容は8月26日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会でも事務方から報告され、この日の総会の議論の中心となった1)。とくに診療側委員から出た意見の中心は医療機関側の業務負担の増大である。以下は各診療側委員からの主な意見だ。<日本医師会常任理事 江澤 和彦氏>「これらの複雑な仕組みについて医師が患者さんの診察の都度判断し、医療機関として対応しなければならないこととなり、日常診療へ支障をおよぼすことにもなる。一般診療所の45%、一般病院の35%は紙カルテを用いて診療を行っており、この場合はこれらの管理は極めて困難をきたし、日々の診療に多大なる支障をきたすことが想定される」「今後の導入に向け、医師や医療機関の事務負担が最小限となる簡略なチェックリストの活用、あるいは電子カルテ・レセコンのベンダーに対する必要な情報の迅速な提供をお願いしたい」「制度が実施されると、医療機関の窓口で患者さんへの説明業務など混乱が生じることは明白。会計計算の複雑化など事務負担も非常に大きくなる。国が国民に対してこの制度についてわかりやすく説明いただくことが必須」<日本医療法人協会副会長 太田 圭洋氏>「対象薬を処方する際に、効能・効果、がんや難病との関連、長期使用の医学的必要性などを確認して、対象外の場合にはその理由をレセプトに記載するとともに、処方箋にも必要な情報を記載する形。これらを個々の医師が処方の度に確認して判断・入力することになれば、外来診療で相当な負担が生じることは明らか。年齢、公費、対象薬剤、過去の処方歴など機械的に判定できる項目は、可能な限りシステムで自動判定して、医師による入力は医学的判断が必要な最小限の項目に限定することが必要」「今後も当然、スイッチOTC化が進めば新たな成分が対象に加わることが想定される。その都度、医療機関や薬局にシステム改修やマスター更新を求めることになれば、恒常的な負担となる。対象薬の見直しを年1回など一定の時期に集約するとともに、対象薬の決定から実施まで十分な準備期間を設ける必要がある」<日本歯科医師会常務理事 大杉 和司氏>「歯科の特徴は院内処方で対応する小規模な歯科診療所が多いこと。窓口での患者説明や会計事務が新たに発生することが確実」<日本薬剤師会副会長 渡邊 大記氏>「長期収載品の選定療養と違い、対象患者(自身)が選択できない状況で負担が発生する。薬局は説明するというより、納得してもらう必要が生じてくる。その分、大変な業務負担がかかると思っている」<全国自治体病院協議会副会長 小阪 真二氏>「対象外の理由をレセプトに記載し査定があった場合は、最終的に患者自己負担として払うことになる。2~3ヵ月後に査定があったら、患者にもう一回請求するのか? 請求するならば当然事前に伝えねばならない。処方箋を渡す時に査定があったら2~3ヵ月後に再徴収がありますと説明しなければならないのか」中医協の診療側委員の意見は、一般論として「医療機関側の都合ばかり」と厳しい指摘もあるが、今回は「医療機関の混乱」≒「患者の混乱」の部分が多い。正直、私個人もこの制度には個別細部ではかなりモノ申したいことはそれなりにある。そもそもOTC類似薬の保険給付のあり方については、過去から同様の議論が行われながら、医学的・制度的な困難さと当事者からの反発で具体的な進展はなかったものだ。それが今回は政治主導、より踏み込んで言うならば自民党が連立を組む日本維新の会の主張に寄り添う形で性急に決められたものである。いわば結論ありきで帳尻合わせが行われている。少なくとも制度スタートまで半年を切った今、順調にスタートできそうだとはとても思えないのだが…。参考1)厚生労働省:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(令和8年8月26日)2)OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ

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第309回 ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省

<先週の動き> 1.ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省 2.OTC類似薬で患者負担増を懸念 患者調査で見直し要求/保団連 3.熊本地震で医療機関の断水続く 介護保険手続きなど緩和/厚労省 4.自治体病院の赤字2,180億円 物価・人件費高騰で「経営努力に限界」/全自病 5.イヌ飼育で要介護認知症リスク48%減 公的支出5,920億円削減試算/国環研ほか 6.豪雨で医療・介護施設91ヵ所被災 透析転院や手術制限続く/千葉県 1.ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省厚生労働省は、医療従事者の処遇改善を支援するベースアップ評価料などについて、医療機関が届け出た施設基準と実際の診療報酬請求の内容に齟齬が生じているケースが散見されるとして、8月診療分以降の請求前に改めて施設基準を確認するよう求めた。対象は外来・在宅ベースアップ評価料I・II、入院ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料I・II、調剤ベースアップ評価料、看護職員処遇改善評価料など。2026年度診療報酬改定では、医療スタッフのさらなる賃上げを目的に、ベースアップ評価料の対象職種拡大や点数引き上げが行われた。外来・在宅ベースアップ評価料Iでは継続的に賃上げに取り組む医療機関をより高く評価し、入院ベースアップ評価料でも従来から賃上げを実施してきた医療機関を手厚く評価する仕組みが導入された。これに伴い、改定前から評価料を算定していた医療機関でも、6月以降に継続算定する場合は6月1日までに改めて施設基準を届け出る必要があった。しかし、6・7月診療分の請求では、届け出で受理された評価項目と実際に請求した評価料の種類や点数が一致しない例が確認された。厚労省は、改定対応が多岐にわたったことを踏まえ、この2ヵ月分については審査支払機関で特段の調整を行っていた。その一方で、8月診療分以降については、4月24日付の事務連絡や施設基準の届け出早見表を参照し、適切に請求するよう強く要請している。病院では、過去の賃上げ実績や入院ベースアップ評価料の選択状況によって、算定点数、入院料減算の有無、提出すべき様式が異なる。厚労省は、特設サイトでも必要書類や手続きを示しており、医療機関に対し自院で受理された施設基準とレセプト請求内容が一致しているか、請求前に改めて確認するよう呼びかけている。 参考 1) ベースアップ評価料等に係る診療報酬請求について(厚労省) 2) 令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について(同) 3) ベア評価料、診療報酬請求の内容に疑義が散見 受理された施設基準「改めて確認を」厚労省(CB news) 4) ベースアップ評価料の施設基準届出と請求との齟齬が頻発、8月分以降の請求に備え改めて自院の施設基準確認し、適切な請求を(Gem Med) 2.OTC類似薬で患者負担増を懸念 患者調査で見直し要求/保団連全国保険医団体連合会(保団連)は、厚生労働省が進めるOTC類似薬の保険給付見直しについて、患者への配慮措置が限定的で、慢性疾患の治療継続を妨げる恐れがあるとして制度の撤回・見直しを求めた。8月6~13日に実施した緊急調査では9,641人が回答し、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、慢性便秘症、高尿酸血症など慢性疾患で対象薬の処方を受ける患者が約85%を占めた。厚労省は、市販薬と成分などが類似する医療用医薬品77成分、約1,100品目について、通常の窓口負担とは別に追加料金を求める制度を検討している。がんや指定難病患者、長期使用が医学的に必要な場合などは配慮対象とする方針だが、原疾患と関連しない症状や季節性の花粉症などは対象外となるケースが多い。保団連調査では花粉症・アレルギー性鼻炎患者の42.1%がいずれの配慮類型にも該当しなかった。保団連は、アトピー性皮膚炎で症状に応じてステロイド外用薬を変更するケースや、喘息で抗アレルギー薬を断続的に併用する場合など、治療自体は継続していても個々の薬剤が「通年使用」とならず配慮対象から外れる点を問題視。慢性腰痛や関節リウマチなどで使用する湿布薬も長期使用であっても原則対象外となるため、患者負担が大きくなると訴えた。保団連の試算では、制度による医療費削減は年間約900億円、保険料軽減効果は加入者1人当たり年約400円にとどまる一方で、花粉症で内服薬、点眼薬、点鼻薬を併用すれば月約1,500円の負担増になる可能性がある。また、医師が過去の治療歴や処方期間を確認して配慮対象を判定する必要があり、診療・薬局業務の複雑化や患者とのトラブルも懸念される。保団連は「配慮する必要のない患者という線引きに医学的根拠はない」とし、必要な医療へのアクセスを損なわない制度設計を求めている。 参考 1) OTC類似薬の配慮措置に関する疾患、処方薬ごとの影響(保団連) 2) OTC類似薬の保険給付見直し、配慮措置の適用は限定的-保団連が9,641人の患者調査結果公表(日本医事新報) 3) 「働いて身を削り、次は健康を…」花粉症薬など“保険除外”で年数万円の負担増も?現役世代の家計圧迫に医師・患者ら撤回要望(弁護士JPニュース) 3.熊本地震で医療機関の断水続く 介護保険手続きなど緩和/厚労省最大震度7を記録した2026(令和8)年熊本地震の発生から3週間が経過したが、医療・介護施設への影響が続いている。厚生労働省によると、8月18日午前10時時点で熊本県内の18医療機関が断水しており、このうち14施設が八代市に集中している。被災医療機関はピーク時に92施設、断水は88施設に上った。県内ではDMAT15隊、DPAT12隊、災害支援ナース、JMAT、JRATなどが支援を継続している。高齢者施設でも960施設が建物被害や停電、断水、ガス停止などの影響を受けている。厚労省は、被災者への介護保険上の特例も相次いで示している。災害救助法が適用された10市10町1村の被保険者について、要介護・要支援認定の有効期間を市町村判断で最大12ヵ月延長でき、また、介護サービス事業者や介護施設などの指定更新についても、一定の権利の有効期限を2027年1月27日まで延長する特例を設けた。介護サービス利用料については、住宅の全半壊や床上浸水、主たる生計維持者の死亡・失職など一定の被害を受けた場合、市町村判断で自己負担1~3割を猶予・免除できる。すでに支払った利用料についても申請により還付が可能で、11月までの利用分などが対象となる。被保険者証を紛失した場合も氏名や生年月日などの確認でサービス利用を認める。さらに、公費負担医療の新規申請では、災害で申請が遅れた被災者について、医師の診断書に記載された日を受給開始日として取り扱える特例を設けた。厚労省は、被災者が医療・介護サービスや行政上の権利を失わないよう、柔軟な運用を自治体や関係機関に求めている。 参考 1) 熊本地震から3週間、18医療機関で断水(MEDIFAX) 2) 公費負担医療の新規申請、被災者は「診断日」を適用熊本地震で厚労省(同) 3) 令和8年熊本地震で被災した介護保険サービス利用者の利用料(1-3割負担)の猶予・免除、詳細な考え方提示-厚労省(Gem Med) 4) 令和8年熊本地震、要介護認定等の有効期間延長、介護サービス事業者等の指定更新の特例を認める-厚労省(同) 4.自治体病院の赤字2,180億円 物価・人件費高騰で「経営努力に限界」/全自病全国自治体病院協議会(全自病)がまとめた2025年度病院事業決算状況調査で、有効回答494病院の84%に当たる413病院が経常赤字となり、赤字額は計2,180億円に上った。前年度から赤字病院の割合は5ポイント改善したものの、依然として8割超が赤字で、自治体病院の厳しい経営環境が続いている。医業収益は前年度比3.3%増えた一方で、医業費用も3.0%増加。職員給与費は3.6%、材料費は5.3%増え、物価高と賃上げが収支を圧迫した。病床規模別では200床以上300床未満の病院がすべて経常赤字となった。大規模病院では改善がみられたが、500床以上でも8割超が赤字だった。経常収支の改善には、2025年度補正予算による1床当たり19万5,000円の賃上げ・物価高支援や救急受け入れ実績に応じた加算、国・都道府県の補助金、自治体からの繰入金増加が寄与した。その一方で、医業収支はなお大幅な赤字で、補助金がなければ経営はさらに厳しかったと全自病は推測している。全自病と全国自治体病院開設者協議会は8月19日、厚生労働省と総務省に緊急要望書を提出した。自治体病院は救急や不採算医療など地域医療の「最後の砦」を担う一方で、中東情勢悪化や円安を背景に医療用手袋、カテーテル、燃料などの価格上昇が続くとして、医療物資の安定確保や物価高対策、診療報酬の中間年改定を含む財政措置を要請。2026年度人事院勧告の月給3.51%引き上げが、ベースアップ評価料で想定した賃上げ水準を上回ることも経営悪化要因になると訴えた。地方交付税や特別交付税の拡充、公立病院の再編・統合、建て替え支援の強化も求めた。病院事業債の交付税措置対象となる建築単価上限は1平方メートル85万円に引き上げられたが、資材高騰でなお不足しているという。一方、四病院団体協議会は21日、2027年度税制改正に向け、社会保険診療報酬の消費税非課税制度を見直し、軽減税率やゼロ税率を含む課税取引へ転換するよう厚労省に要望した。仕入れや設備投資時に生じる控除対象外消費税が、病院建て替えや医療DX投資を妨げているとして、還付制度の創設を含む抜本的な制度見直しを要求。高額医療機器の特別償却制度の延長・対象拡大も求めており、病院団体は診療報酬、財政支援、税制の三面から経営基盤の立て直しを政府に迫っている。 参考 1) 自治体病院の8割が経常赤字 25年度、計2,000億円のマイナス続く(日経新聞) 2) 地域医療の砦となる自治体病院を守るため、物価高騰対応、期中の診療報酬改定含めた財政措置等の拡充等を要望-全自病(Gem Med) 3) 診療報酬の中間年改定含む対応を要望、2団体 物価高騰踏まえ 全自病など(CB news) 4) 控除対象外消費税の問題、抜本解決に向け重点要望病院を課税取引に 四病協(同) 5.イヌ飼育で要介護認知症リスク48%減 公的支出5,920億円削減試算/国環研ほかイヌを飼っている高齢者は、イヌを飼った経験がない高齢者に比べ、要介護認知症を発症するリスクが48%低い可能性があることが、国立環境研究所、東京都健康長寿医療センター、東京大学などの研究チームによる大規模疫学研究でわかった。研究成果は国際学術誌“International Journal of Environmental Research and Public Health”に掲載された。研究では、自宅で暮らす高齢者1万1,224人を「現在イヌを飼育」「過去に飼育」「飼育経験なし」の3群に分け、7.5年間追跡。要介護認知症の発症や死亡との関連を調べた。逆因果や把握できない交絡因子の影響を抑えるため操作変数解析を用いた結果、現在イヌを飼育している人の要介護認知症発症リスクは、飼育経験がない人と比べて48%低く、オッズ比は0.52だった。イヌとの暮らしには、散歩による身体活動の増加や外出機会の確保、地域住民との交流、精神的健康の維持などが伴うことから、研究チームはこうした健康行動が認知症発症の抑制に寄与している可能性があるとみている。さらに、高齢者のイヌ飼育率が13.4%まで増加すると仮定して予算への影響を試算したところ、イヌの飼育に伴う家計支出を含む社会全体の追加費用は4年間で約4兆6,300億円となる一方で、公的な医療・介護費は約5,920億円削減される可能性が示された。研究チームは今後、イヌそのものの効果に加え、散歩や地域交流などイヌとの生活を通じて生まれる行動に着目し、認知症予防や健康寿命延伸策への活用を検討する。ただし今回の結果は疫学研究に基づくもので、イヌを飼えば認知症を防げると直接証明したものではない。 参考 1) 「イヌを飼育している高齢者」は「飼育したことがない高齢者」に比べ認知症発症リスクが48%低い-長寿医療研究センター(Gem Med) 2) イヌと暮らす高齢者が増えると4年間で約5,920億円の公的支出削減-約1万1,200名の地域在住高齢者を対象とした7.5年間の大規模疫学研究-(東京都健康長寿医療センター) 6.豪雨で医療・介護施設91ヵ所被災 透析転院や手術制限続く/千葉県8月13日夜から14日にかけての記録的な千葉豪雨で、県内の病院や高齢者施設に浸水被害が相次ぎ、医療・介護提供体制への影響が長期化している。厚生労働省によると、25の医療施設と66の高齢者施設が被災し、発生から1週間以上経っても全面再開できない施設が残っている。八千代市のセントマーガレット病院では、地下機械室が浸水し、揚水ポンプやボイラーが故障。断水のため46人の透析患者が転院した。給水車を活用して18日から新規の長期入院患者の受け入れを再開したものの、透析センターの復旧は途上にあり、医療機器の滅菌にも通常より手間のかかる対応を強いられている。四街道市の介護老人保健施設でも給水ポンプや送迎車両が被災し、通所リハビリや入浴サービスを休止している。千葉大学医学部附属病院では地下の排水設備が冠水し、医療器具の洗浄装置が使用不能となった。19日には全手術を中止し、その後も手術件数を通常の半分程度に制限している。これを受け、東京科学大学病院は21日から院内の器材洗浄設備を提供。夜間の空き時間を利用してロボット支援手術器具などを洗浄し、1日約40件分の手術器材を処理できる体制を整えた。この支援は千葉大病院の設備復旧まで数週間続く見通し。今回の豪雨では、ハザードマップの浸水想定区域外にある医療機関でも被害が発生した。厚労省は「かつてなかった災害」とし、止水板の設置や地下設備の防水対策など、医療機関の水害対策強化が必要としている。 参考 1) 病院・高齢者施設 再開遠く 千葉豪雨 ボイラー故障透析患者転院(読売新聞) 2) 豪雨被災で手術制限中の千葉大病院へ、東京科学大病院が器材洗浄施設を提供…異例の国立大病院間支援(同) 3) 被害の千葉大病院支援 医療器具の洗浄設備貸し出し東京科学大(NHK)

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第307回 特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省

<先週の動き> 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省厚生労働省は、2024年度の特定健康診査・特定保健指導の実施状況を公表した。特定健診の対象者は約5,142万人、受診者は約3,161万人で、実施率は61.5%となり、前年度から1.6ポイント上昇した。2008年度の制度開始時は38.9%で、今回初めて6割を超えた。国は2029年度までに70%以上の実施を目標としている。性別では男性65.9%、女性57.0%で、男性が8.9ポイント高かった。年齢別では45~49歳が66.8%で最も高く、60歳未満ではおおむね6割台を維持した一方で、65~69歳は52.8%、70~74歳は47.5%まで低下した。保険者別では健康保険組合83.8%、共済組合83.3%に対し、全国健康保険協会60.6%、市町村国保38.8%と大きな差がみられた。特定保健指導は、対象者約524万人のうち約148万人が終了し、実施率は28.3%。前年度から0.7ポイント上昇し過去最高を更新したものの、2029年度目標の45%以上とはなお大きな開きがある。保険者別では単一健康保険組合が46.1%で最も高く、小規模市町村国保が45.3%で続いた。メタボリックシンドロームの該当者・予備群は約880万人で、2008年度比では17.2%減少しており、減少幅は前年度から横ばい推移となった。また、特定健診受診者の31.1%は高血圧症、糖尿病、脂質異常症の治療薬を1種類以上服用していた。受診率は着実に改善しているが、年齢や保険者による格差の縮小に加え、健診後の保健指導や必要な治療へ確実につなげることが今後の課題となる。 参考 1) 2024年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況(厚労省) 2) 特定健診、実施率は61.5%に上昇 24年度、保健指導は28.3%(MEDIFAX) 3) 特定健診実施率、初の6割超え24年度 29年度までに7割以上目標 厚労省(CB news) 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県政府は8月5日、7月28日に発生した令和8年熊本地震で多数の医療機関が被災した熊本県八代市の八代港で、防衛省による民間船舶(PFI船)を活用した医療提供(船舶活用医療)を初めて実施した。熊本県知事が8月1日に国へ要請したもので、2021年成立の「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律」に基づく初の船舶活用医療となる。内閣府、防衛省、熊本県に加え、日本赤十字社、DMAT、JMATなどが連携。船内では発熱などの内科診療、熱中症や軽傷への対応、薬の処方などを行い、併せて被災者への入浴支援も実施した。8月5日午後2時から医療提供を開始し、初日の医療利用者は13人、活動した医療従事者は23人だった。その一方で、「はくおうII」への乗船者は187人、うち182人が入浴支援を利用した。台風13号の接近に伴い、同船は6日午前6時に八代港を出港し、医療提供も一時中断している。被災地ではDMAT、DPAT、日赤救護班、災害支援ナース、JMATなども活動を継続している。透析は一時13施設で実施が困難となったが、8月6日時点で実施困難な2施設についても他院での透析が手配済みとなった。船舶は陸上の医療機関やライフラインが被災した際にも、医療、衛生、生活支援を一体的に提供できる新たな災害医療拠点として期待される一方で、今回の台風による中断は、気象条件に左右される運用上の課題も示した。 参考 1) 令和8年熊本地震に係る被害状況等について(内閣府) 2) 令和8年熊本地震における船舶活用医療の実施について(同) 3) 熊本の被災地にあすから「病院船」、防衛省の船舶活用し初の取り組み…内科診療や熱中症治療・薬の処方も(読売新聞) 4) 防衛省チャーター舶「はくおうII」が入浴や医療提供 断水や猛暑に苦しむ熊本の被災者支援(産経新聞) 5) 避難者支援で医療チームが相次ぎ活動 熊本地震 DMAT・DPAT・災害支援ナースなど(CB news) 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省厚生労働省は8月5日、「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」で中間とりまとめを了承した。2027年3月から、市販薬と成分・投与経路が同一で1日最大用量も異ならないOTC類似薬について、薬剤費の25%相当を保険給付の対象外とし、通常の1~3割の自己負担とは別に「特別料金」として患者が負担する。8月時点の対象は77成分1,042品目で、解熱鎮痛薬、抗アレルギー薬、湿布、保湿剤など日常診療で使用頻度の高い薬剤が含まれる。ただし、一定の患者や使用場面には配慮措置を設ける。がんや指定難病の患者、公費負担医療の対象者は、原疾患や治療に関連する症状への処方であれば追加負担の対象外とする一方で、花粉症など原疾患と無関係な症状への処方は対象となる。18歳未満の子供や入院中・退院時の処方も対象外。外来・在宅でも、生検、処置、手術など侵襲的医療行為に伴い新たに処方する薬は原則14日分まで対象外とする。長期使用の扱いも焦点となる。内服薬は年間おおむね50週の処方が目安で、診療情報提供書、お薬手帳、オンライン資格確認の薬剤情報などで処方歴を確認する。初診で過去の処方歴が確認できない場合は、少なくとも6ヵ月間の症状の持続・反復と薬剤使用を確認した上で、医師が通年使用を必要と判断する。外用薬はさらに条件が厳しく、湿布などの鎮痛消炎外用薬は長期使用でも原則追加負担となる。ただし2028年度末までは、画像検査で重度の変形性膝関節症などが確認され、医師が毎日の継続使用を必要と判断する場合に限り対象外とする。アトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質や尿素の通年使用は対象外となる。また、医療用薬とOTC薬で効能・効果が一致しない場合は追加負担を求めない。たとえばフェキソフェナジンは、OTCにない蕁麻疹や皮膚疾患に伴うそう痒への使用では対象外となる一方で、アレルギー性鼻炎では原則対象となる。7月にOTC薬が発売された睡眠薬ラメルテオンも対象成分に追加された。今回の制度変更は現場にも大きく影響する。医療機関には対象外と判断した根拠を診療報酬請求書などに記載することが求められる方向で、処方箋様式の変更や電子カルテ、レセコン改修も見込まれる。検討会でも、医師や薬剤師の確認業務が過度に複雑にならない簡素な運用を求める声が相次いだ。厚労省は8月6日から中間とりまとめへのパブリック・コメントを実施しており、8月20日が締め切りとなっている。全国保険医団体連合会(保団連)は、慢性疾患でも配慮対象にならないケースが多いうえ、対象外か否かを判断する医療現場の負担が大きいとして、医療関係者らに厚労省のパブコメへ意見を提出するよう呼びかけている。意見はe-Govのパブリック・コメントから提出できる。厚労省は今後、さらに医療保険部会や中医協で議論し、今秋に省令・告示、関連通知などを取りまとめる予定。 参考 1) 第4回OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会(厚労省) 2) 「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」について(同) 3) 入院患者は追加負担対象外 OTC類似薬で厚労省案 がんの主たる疾患や副作用の薬も(産経新聞) 4) OTC類似薬の技術的検討会が中間取りまとめ 湿布薬は慢性・重度の変形性膝関節症は除外 対象1042品目(ミクスオンライン) 5) OTC類似薬保険除外 厚労省が配慮措置(中間とりまとめ)のパブコメ募集開始 8月20日まで(保団連) 6) 湿布は長期使用でもOTC類似薬の追加負担に 厚労省検討会で了承(朝日新聞) 7) OTC類似薬の患者特別負担の詳細固まる、アトピーへの「ヘパリン類似物質・尿素」通年処方は特別負担対象外-厚労省技術的検討会(Gem Med) 8) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」に関する意見公募の実施について(パブリック・コメント) 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省厚生労働省は8月5日、医療・介護・福祉分野でAIやデジタル技術の活用を推進する「厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部」の初会合を開いた。本部長を務める上野 賢一郎厚労相は、従来の医療DXに加え、AIトランスフォーメーション(AX)も省を挙げて戦略的、総合的に推進する方針を示し、各部局に2027年度予算の概算要求へ必要な事業や経費を盛り込むよう指示した。推進本部は、これまで各部局で進めてきたAI・DX関連施策を一元的に把握し、全省的に加速させる司令塔として4日に発足した。本部長に厚労相、副本部長に事務次官、厚生労働審議官、医務技監などを置き、関係部局長が参加するほか、「AI for ヘルスケア成長戦略室」を新設し、迫井 正深医務技監を室長として、具体的施策の検討や関係省庁との調整を行う。背景には、政府が日本成長戦略で「AI・半導体」を17の戦略分野の1つに位置付けたことがある。医療・介護ではAIロボットなどの「フィジカルAI」、医療・介護・福祉では領域特化型の「バーティカルAI」の開発・導入を進める。政府はフィジカルAIで2040年に世界シェア3割超、市場規模20兆円、バーティカルAIでは2030年までに世界で5兆円超の市場獲得を目標に掲げる。看護記録などの文書作成や福祉相談業務を支援するAIの普及、研究開発・実証、AI活用に必要なデータ基盤の整備などが想定される。創薬・先端医療でも、AIやデータ活用による研究開発プロセスの高度化・効率化を推進する。政府は成長戦略で新設した、予算要求上限を設けない「『強く豊かな日本』投資枠」も活用し、官民投資を促す方針。厚労省は今後、8月末の概算要求に向けて施策を具体化する。 医療DXが電子化や情報連携を中心としてきたのに対し、今後は診療・看護・介護など実務そのものをAIで変革するAXへ政策領域が広がることになる。 参考 1) 第1回厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部 資料(厚労省) 2) 医療や介護のAI活用を支援 厚労省が推進本部設置(日経新聞) 3) 厚労省 ヘルスケアAX・DX推進本部が初会合 上野厚労相「日本成長戦略実現に向け概算要求へ」(ミクスオンライン) 4) 政府が医療・介護分野でAI活用推進へ「ヘルスケアAX・DX推進本部」初会合(CB news) 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか東京大学が2026年度に2年連続の最終赤字となる見通しであることがわかった。国立大学法人化した2004年度以降、2年連続の赤字は初めて。25年度は数十億円、26年度は約40億円の赤字を見込み、大学の「貯金」に当たる繰越金も数年で枯渇する可能性がある。財務状況が改善しなければ、研究者数の削減など研究・教育体制の縮小も避けられないという。東大の年間収入は約3,000億円で国立大学最大規模。24年度は運営費交付金や補助金が約969億円、附属病院収入が約585億円、企業との共同研究や大型研究事業などの外部資金が約1,160億円だった。その一方で、実験機器・材料などの物件費は約1,794億円、人件費は約1,105億円に上る。人事院勧告に伴う給与上昇で人件費は5年間で約100億円増加し、物価高による研究機器や資材価格の上昇も経営を圧迫している。背景には国立大学法人全体の構造問題がある。国からの運営費交付金は26年度で1兆971億円と、法人化した04年度から1,445億円減少。科研費は増えたものの、その増加は649億円にとどまり、基盤的経費の減少を補えていない。わが国の大学の研究開発費も2000年から23年までに1.2倍にとどまり、米国の2.1倍、中国の16.5倍と大きな差がある。大学病院の経営難も大学本体に影響する。国立大学病院44施設のうち25年度は31病院が赤字となる見通しで、経常赤字は計244億円。高度医療や希少疾患診療では高額医薬品・資材の使用が避けられず、診療収入だけではコスト増を吸収しにくい。東大は国際卓越研究大学への認定を目指しているが、文部科学省による審査が継続中となっており、認定見送りとなれば財政改善はさらに厳しくなる。国立大学の研究力と高度医療を維持するため、安定した基盤財源の確保が改めて問われている。 参考 1) 東大が2年連続赤字へ 「貯金」数年で枯渇、研究者の削減不可避(日経新聞) 2) 国立大学法人モデル、岐路に 東大も自立運営困難 収入増、規制が足かせ 研究開発費は20年横ばい(日経新聞) 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大京都大学医学部附属病院は8月7日、50代女性の脳腫瘍摘出手術で、腫瘍ではない正常な脳組織を誤って摘出し、脳幹などを損傷する医療事故があったと発表した。患者は術後、自発呼吸ができず人工呼吸器による管理が続き、手足も動かない重篤な状態となっている。病院によると、患者はめまいやふらつきはあったものの、手術前は生活に大きな支障はなく通常の生活を送っていた。検査により小脳橋角部に約3cmの良性腫瘍「髄膜腫」が疑われ、7月末に全身麻酔下で開頭手術を受けた。執刀したのは40代の脳神経外科医で、医師として20年以上の経験があり、同様の手術を約100例担当していた。手術中には、摘出した組織の一部を調べる術中病理診断が行われ、「腫瘍ではない」との結果が2度示された。それでも執刀医は、腫瘍の端の組織を採取したため腫瘍成分が含まれていなかった可能性があるなどと判断し、摘出を継続したという。約10時間の手術後も患者の意識や呼吸が十分に回復しなかったためMRI検査を実施したところ、本来摘出する予定だった腫瘍は残存しており、右小脳扁桃や呼吸機能に関わる脳幹の側面から背側にかけて大きな損傷があることが判明した。脳幹には呼吸など生命維持に不可欠な機能を担う神経中枢が集まっており、患者は現在も人工呼吸器を必要としている。京大病院は医療事故として患者と家族に謝罪し、厚生労働省や京都府警など関係機関にも報告した。高折 晃史病院長は「患者と家族に心よりおわび申し上げる」と陳謝。病院側は、執刀医の判断ミスや思い込みが影響した可能性にも言及しており、今後、外部有識者を含む事故調査委員会を設置し、手術中の判断過程や安全確認体制を検証し、原因究明と再発防止を進める方針だ。 参考 1) 脳腫瘍摘出術中の誤認による摘出部位誤り事例について(京大医学部附属病院) 2) 京都大病院、正常部位摘出し脳幹損傷 患者は重篤な状態(日経新聞) 3) 京大病院で医療事故 脳腫瘍の手術で誤って正常な脳の一部摘出(NHK) 4) 京都大病院が脳腫瘍手術で誤って正常な組織摘出、50代女性患者は呼吸に関わる脳幹損傷・人工呼吸器装着つづく(読売新聞)

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アトピー性皮膚炎への抗ヒスタミン薬、ルーチン使用を支持せず/BMJ

 アトピー性皮膚炎患者において、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)の追加投与は、重症度およびかゆみについて臨床的に意義のある改善には至らない可能性があり、睡眠障害やアトピー性皮膚炎の増悪も軽減しないことが示唆された。また、第1世代の同薬剤は認知機能障害の増加および有害事象による治療中断を増加させる可能性があり、第2世代の同薬剤では認知機能障害リスクに差異があることも示された。カナダ・マクマスター大学のAlexandro W.L. Chu氏らが無作為化試験のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析の結果を報告した。著者は、「これらの知見は、アトピー性皮膚炎の治療における抗ヒスタミン薬のルーチンな使用を支持しないことの根拠となり、臨床ガイドラインの改訂に資するものである」と述べている。BMJ誌2026年7月29日号掲載の報告。システマティックレビューおよびネットワークメタ解析で評価 アトピー性皮膚炎(湿疹)患者の治療における経口抗ヒスタミン薬の使用は、近年の英国では5人に1人、米国では約半数に上ると推定されている。研究グループは、これらのOTC薬の有益性と有害性を調べ、アトピー性皮膚炎の患者にとって重要なアウトカムに対処するために包括的な解析が必要であり、最適な治療には経口抗ヒスタミン薬の科学的根拠に基づく評価が必要として本検討を行った。 開設から2025年5月5日までのMedline、Embase、CENTRALおよび米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)のデータベースを検索し、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を行った。 適格試験は、抗ヒスタミン薬、H2受容体拮抗薬、肥満細胞膜安定化薬(nedocromil sodium、クロモグリク酸ナトリウム)あるいはそれらの併用の追加投与を評価した無作為化試験とした。2人のレビュアーがそれぞれ、記録のスクリーニング、データの抽出および改訂Cochrane Risk of Bias 2ツールを用いたバイアスリスクの評価を行った。 ベイズ流ランダム効果ネットワークメタ解析により、アトピー性皮膚炎の重症度(oSCORAD、客観的スコア:0~83点、臨床的に意義のある最小差は8.2点、低スコアほど良好)、かゆみの重症度(数値評価スケール:0~10、臨床的に意義のある最小差は3、低値ほど良好)、睡眠障害、アトピー性皮膚炎に関連した生活の質(QOL)、および有害事象の統合解析を行った。エビデンスの確実性(質)の評価には、ネットワークメタ解析のためのGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)およびCore GRADEアプローチが用いられた。第1世代抗ヒスタミン薬は認知機能障害を増加 解析には、主に中等症~重症の小児および成人6,230例(報告された平均年齢の中央値20歳[平均値の範囲:1~43])が登録された47試験が組み入れられた。27試験(57%)が小児を対象に含んでおり、31試験(66%)はプラセボ対照試験で、37試験(79%)は並行群間比較試験であった。また、36試験(77%)が全被験者に基礎的な併用治療(保湿剤または外用コルチコステロイド)が行われていた。 中程度のエビデンスの確実性があるものとして、プラセボと比較し、第1世代または第2世代の抗ヒスタミン薬の追加投与は、アトピー性皮膚炎の重症度(平均群間差:-1.87、95%信用区間[CrI]:-3.47~-0.27)およびかゆみの重症度(平均群間差:-0.89、95%CrI:-1.41~-0.37)を、わずかに軽減したに過ぎない可能性が示唆された。統計的検出は可能であったが、これらの効果は、確立された意義のある最小差(患者が重要だとするアウトカムの最小変化量)を大きく下回るものであった。 エビデンスの確実性は低かったが、すべての試験で検討された介入は、睡眠障害の改善やアトピー性皮膚炎増悪の軽減にはつながらない可能性が示唆された。 第1世代の抗ヒスタミン薬の追加投与は、認知機能障害を増加させ(リスク差は被験者1,000人当たり66人増、95%CrI:0~231、エビデンスの確実性は中程度)、有害事象による治療中断も増加(リスク差は被験者1,000人当たり29人増、95%CrI:1~131、エビデンスの確実性は低い)させる可能性が示唆された。 第2世代の抗ヒスタミン薬の追加投与は、認知機能障害のリスクについて差が認められた。平均的な影響の範囲は、ロラタジンが1,000人当たり0人増、レボセチリジンが1,000人当たり16人増、セチリジンが1,000人当たり17人増であった。

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軽症~重症の成人アトピーへのデルゴシチニブクリーム、用量反応的な有効性を示す/BJD

 アトピー性皮膚炎(AD)患者において、デルゴシチニブ軟膏0.5%は基剤軟膏と比較して有効性の改善をもたらし、良好な安全性プロファイルを示している。今回、デルゴシチニブクリーム製剤の用量反応関係、有効性、および安全性を検討するため、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I Silverberg氏らは、軽症から重症の成人AD患者を対象に二重盲検基剤対照第IIb相試験を実施した。結果を、British Journal of Dermatology誌オンライン版2026年7月22日号に報告した。 本研究(NCT03725722)では、軽症~重症の成人AD患者を、1、3、8、20mg/gのデルゴシチニブクリームまたは基剤クリームの各群へ1:1:1:1:1の割合で無作為に割り付けた。参加者は、デルゴシチニブまたは基剤を、AD病変部に1日2回、8週間にわたり塗布した。 主要評価項目は、ベースラインから8週時の湿疹面積・重症度指数(EASI)の変化量とした。探索的主要副次評価項目には、8週時の試験担当医によるADの総合評価(vIGA-AD)における治療成功(ベースラインから2段階以上の改善を伴い、スコアが0[消失]または1[ほぼ消失]と定義)およびEASI-75(ベースラインからEASIが75%以上改善)が含まれた。安全性は試験期間を通じて評価された。  主な結果は以下のとおり。・251例が無作為化された(デルゴシチニブ群:201例、基剤群:50例)。ベースラインの患者特性は、平均年齢40.5(SD 17.0)歳、女性が68.5%を占め、EASIスコア平均値は10.0(SD 6.8)であった。・8週時において、EASIスコアのベースラインからの変化量は、デルゴシチニブ群では基剤群と比較して、用量反応的な差が示された(1mg/g:-5.0、3mg/g:-4.9、8mg/g:-5.8、20mg/g:-7.6、いずれも基剤[-1.9]に対しp<0.05)。・8週時において、vIGA-ADの治療成功を達成した患者の割合は、デルゴシチニブ群(1mg/g:18.4%、3mg/g:29.2%、8mg/g:30.0%、20mg/g:48.0%)で、基剤群(10.4%)よりも高かった。・8週時において、EASI-75達成率は、デルゴシチニブ群(1mg/g:40.8%、3mg/g:43.8%、8mg/g:56.0%、20mg/g:66.0%)で、基剤群(20.8%)よりも高かった。・有害事象の発現率はデルゴシチニブ群(44.5%)と基剤群(56.0%)で同程度であり、最も頻繁に報告された有害事象(いずれかの投与群で5.0%以上)は、上気道感染症、AD(アトピー性皮膚炎の悪化)、ざ瘡、頭痛、および塗布部位そう痒感であった。 著者らは、「デルゴシチニブクリームによる治療は、主要および副次評価項目において、用量反応的に基剤よりも高い有効性を示した」とし、「忍容性は良好であり、安全性に関する懸念は認められなかった」と結論付けている。

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アトピーは学業成績に影響するか

 アトピー性皮膚炎(AD)は、睡眠障害や併存疾患、あるいは心理社会的影響により学業成績を低下させる可能性があるが、集団ベースの縦断的研究によるエビデンスは限られている。英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのRita J. Iskandar氏らは、デンマークおよび英国の小児約78万人を対象とした並行コホート研究において、ADは学業成績の低下と関連するか、またその関連は疾患表現型や社会経済的背景によって異なるかどうかを検討した。JAMA Dermatology誌オンライン版2026年4月8日号掲載の報告。 本研究は、デンマークおよび英国における、ADを有する小児および有さない小児を対象とした集団ベースの並行コホート研究。デンマークでは、全国的なレジストリから1986~2000年に出生した小児を抽出し、2018年まで追跡調査を行った。英国では、Avon親子縦断研究(ALSPAC)から得られた1991~92年に出生した小児データを、国立生徒データベース(National Pupil Database)と連携させ、2009年まで追跡調査を行った。データ解析は2022年10月~2024年4月に実施された。 ADは、13歳未満での診断(デンマーク)または11.5歳までの母親から2回以上のADの報告(イングランド)と定義した。デンマークの分析では、遺伝的因子を考慮するため、AD罹患状況が異なり両親を同じくする兄弟姉妹を対象とした反復解析を実施した。 主要評価項目は、16歳時の義務教育修了時の全国統一試験における不合格の成績(2値アウトカム;ポアソン回帰による割合比)および平均学業成績スコア(連続アウトカム;線形回帰による平均差)であった。 主な結果は以下のとおり。・両研究を合わせて、計78万2,837人の小児が対象となった。・デンマーク(n=77万6,214人、AD患者1万259人、女児38万6,408人[49.8%])では、AD患者と非AD患者の間で、不合格率(12.0%vs.11.2%、調整割合比[aPR]:1.06、95%信頼区間[CI]:1.01~1.12)および平均学業成績(調整平均差:-0.06ポイント、95%CI:-0.11~-0.01)に差は認められなかった。・活動性AD患者では、非AD患者と比較して不合格率の高さとの関連がみられた(aPR:1.19、95% CI:1.03~1.37)。・兄弟姉妹間における解析でも同様の結果が得られた。・イングランド(n=6,623人、AD患者2,967人、女児3,332人[50.3%])では、AD患者は非AD患者に比べて、不合格率がわずかに低く(37.7%vs.47.4%、aPR:0.88、95%CI:0.83~0.93)、平均学業成績が高かった(調整平均差:10.48ポイント、95%CI:6.49~13.86)。・表現型分析によると、中等度-寛解型(moderate-declining)および中等度-頻発型(moderate-frequent)AD患者の成績が優れることがこれらの結果を主に説明しており、軽度-間欠型(mild-intermittent)または重度-頻発型(severe-frequent)AD患者の成績は、非AD患者または症状のほとんどないAD患者と同程度であった。・全体として、学業成績について、表現型や社会経済的背景による一貫した差異はみられなかった。 著者らは、「2つの大規模コホートにおけるトライアンギュレーション(triangulation)アプローチによる検討と多重解析により、ADは義務教育修了時の全国統一試験における学業成績の著しい低下とは関連がない可能性が高いことが示された」とし、「本結果はADを有する小児やその家族、教員や臨床医にとって安心材料となるもの」とまとめている。

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小児のアトピー性皮膚炎、確実な予防方法はないが治療の選択肢は豊富

 小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防するために親ができることは極めて少ないことが、新たなガイドラインで示された。特別な食事療法、入浴を控えること、母乳育児、プロバイオティクスのサプリメントといった広く知られている対策が小児のアトピー性皮膚炎の予防に有効であることを示すエビデンスは見つからなかったという。一方、既にアトピー性皮膚炎を発症している小児には、皮膚のかゆみを和らげるための効果的な治療法が多くあるとしている。米国皮膚科学会(AAD)が作成したこのガイドラインは、「Journal of the American Academy of Dermatology」に4月7日掲載された。 AADによると、これは同学会が発表した初めての小児のアトピー性皮膚炎に関するガイドラインであるという。AAD会長のMurad Alam氏は、「アトピー性皮膚炎に罹患している小児は極めて多いが、症状の現れ方や経過は必ずしも成人と同じではない。アトピー性皮膚炎は小児や家族の生活の質(QOL)を低下させる可能性があるため、最善の治療が確実に行われるようにするためには、小児に特化したガイドラインが必要である」とニュースリリースで述べている。 ガイドラインを作成した研究グループが既存の医学的エビデンスを検討した結果、小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防できる真に有効な方法はないとの結論に至った。ただし、保湿剤のみは生後6カ月~3歳の小児のアトピー性皮膚炎の発症を減少させるという目的で「条件付き推奨」の治療法として位置付けられた。条件付き推奨は、その治療法のベネフィットとリスクが拮抗している場合に示される。一方、食事療法や入浴を控えること、ビタミンDやプロバイオティクスのサプリメント、離乳食の早期導入、母乳育児、硬水の軟化、ダニなどのアレルゲンへの曝露を減らすといった他の予防法に関しては、十分なエビデンスがないと結論付けられた。 一方で、小児のアトピー性皮膚炎の治療に関しては、多くの治療法が「強い推奨」として位置付けられた。有効性が明らかにされている治療法には以下が含まれる。・皮膚の乾燥やかゆみの軽減を目的とした保湿剤・再燃時の第一選択薬となるステロイド外用薬・再燃の管理を目的としたカルシニューリン阻害外用薬(pimecrolimus〔国内未承認〕またはタクロリムス軟膏)・かゆみ軽減と再燃頻度の抑制を目的としたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬(crisaborole軟膏、roflumilastクリーム〔いずれも国内未承認〕)・軽症~中等症の患者の乾燥やかゆみの重症度の軽減を目的とした外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(ルキソリチニブクリーム〔日本ではアトピー性皮膚炎に対する適応は未承認〕、タピナロフクリーム)・軽症〜重症患者における炎症軽減、皮膚バリア機能の改善、乾燥やかゆみを伴う皮膚症状の軽減を目的とした局所用アリル炭化水素受容体(AhR)アゴニスト(タピナロフクリーム)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、再燃の減少、かゆみの軽減を目的としたモノクローナル抗体(デュピルマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ、ネモリズマブ〔外用薬と併用〕)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、かゆみの軽減を目的としたJAK阻害薬(ウパダシチニブ、アブロシチニブ、バリシチニブ) ガイドラインではまた、入浴、ウェットラップ療法、光線療法についても小児のアトピー性皮膚炎の治療法として条件付きで推奨している。一方で、ステロイドの経口薬や注射薬の使用については急激で重度の再燃が見られた患者に限定すべきであり、長期的には使用しないことを強く推奨するとされている。さらに、外用抗菌薬の使用や薬剤と光線療法を組み合わせたPUVA療法についても実施しないことが条件付きで推奨された。 AADのアトピー性皮膚炎ガイドライン作業部会の共同委員長であるDawn Davis氏は、「このガイドラインは、患者やケア提供者、そして医学会を教育し、彼らを支援することで、アトピー性皮膚炎の小児ができる限り最善の治療を受けられるようにするために作成された。早期からの積極的な介入によって、患者やその家族は症状やQOLの改善が期待できる」と述べている。

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若年成人期の過敏性腸症候群のリスク因子を特定

 16歳時に過敏性腸症候群(IBS)を有することは、24歳時にIBSを有することを予測する最も強いリスク因子であり、16歳時にIBSであった人の33.6%は24歳時でも診断基準を満たすとする研究結果が、「Gastroenterology」に1月30日掲載された。 ヨーテボリ大学(スウェーデン)サールグレンスカアカデミーのJessica Sjölund氏らは、1990年代半ばに出生した4,089人を若年成人期まで追跡したスウェーデンのBAMSE出生コホートのデータを用い、24歳時のIBSの有無に関連する思春期のリスク因子、および16歳から24歳にかけてのIBSの持続に関連する因子を検討した。曝露因子の大半は16歳時に評価されていた。 対象者2,539人のデータを解析した結果、24歳時のIBS有病率は10.0%であり、女性であること、知覚ストレスの高値、アトピー性皮膚炎、片頭痛またはうつ病の既往、健康関連QOLの低値がIBSと関連していた。16歳時のIBSは、24歳時のIBSに対する最も強いリスク因子であった。また、機能性腹痛、自己評価による心理的苦痛および全般的な健康状態不良、食物過敏、短い睡眠時間も、成人期のIBSのオッズ上昇と関連していた。16歳時にIBSであった人のうち33.6%が、24歳時においてもIBSの診断基準を満たしていた。IBSの持続と強く関連していた因子は親のIBS症状であり、それ以外の因子は統計学的に有意ではなかった。 Sjölund氏は、「思春期のIBSは固定した状態ではないことが示された」と述べている。 なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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診断エラーを防ぐ-小児科の落とし穴

迷いのない診断、日常診療に潜む誤診の回避体験を読んで積み上げる臨床は知識と経験に基づく連続したタスクであり、状況によって変化する。そのため正確な診断には常に誤診のリスクが付きまとう。本書は国立成育医療研究センターの医師60人が総力を挙げて執筆。診断エラーを回避するため、コミュニケーション技術に基づく問診、身体診察、検査、家族説明、鑑別疾患、診断のステップを通して、落とし穴の回避術をシステマティックに展開。収載された、教科書では得られないニアミス症例、ピットフォール症例が心に刻み込まれる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する診断エラーを防ぐ-小児科の落とし穴定価4,400円(税込)判型A5判(並製)頁数296頁発行2026年3月編集窪田 満(国立成育医療研究センター)/永井 章(国立成育医療研究センター)ご購入はこちらご購入はこちら

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桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第5回

桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える前回 、桂枝湯(けいしとう)が麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)に比べて虚証向きの漢方薬で、お腹に優しいということを述べました。その理由としては、桂枝湯には麻黄(まおう)が含まれていないこと、代わりに芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)といった胃腸の調子を整える生薬が含まれていることが関係しているのでした(図1)。今回は、この話を芍薬、あるいは芍薬と甘草(かんぞう)のコンビに着目して掘り下げていこうと思います。図1 桂枝湯の構成生薬画像を拡大する桂枝湯±芍薬芍薬が入っている桂枝湯がお腹に優しいということは、芍薬を「もっと」増やすとお腹にも「もっと」優しくなりそうですよね。では、桂枝湯を芍薬マシマシにしてみましょう。すると、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)ができあがります。これは、過敏性腸症候群で腹痛と下痢に悩まされている患者に使うといい薬です。しかし、過敏性腸症候群は下痢型だけではありません。便秘型もありますよね。そうしたら、センノシドを含む生薬をブレンドすればいいのです。大黄(だいおう)という生薬がちょうどセンノシドを含むため、桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)を使えばいいという話になるわけです。逆に、桂枝湯から芍薬を抜いてくるとどうなるか。すると、桂枝去芍薬湯(けいしきょしゃくやくとう)という漢方薬になります。これは、お腹への優しさが減る代わりに、胸に優しくなります。感冒の患者の中には、肺炎や痰詰まりがなくても、胸が苦しいという方がたまにいらっしゃいますよね。そういった患者には、桂枝去芍薬湯が効いてきます。もっとも、桂枝去芍薬湯はエキス製剤がないので、実臨床で使うのにはハードルが高いという問題があります。桂枝去芍薬湯のニュアンスを丸ごと含む漢方薬としては、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)という漢方薬があって、これはちょうど「東洋の抗不整脈薬」に相当するもので、動悸・息切れに効く漢方薬なんですね。やはり胸に優しいという話になってくるわけです。ここまでを図2にまとめます。図2 桂枝湯±芍薬に派生する漢方薬画像を拡大する建中湯シリーズの派生いったん話題を戻して、桂枝加芍薬湯まで戻ってきましょう。漢方薬の味が苦手だという患者もいると思います。そのような場合は、桂枝加芍薬湯に水飴を加えてやると、子供にも飲みやすい漢方薬ができると思いませんか。そこで、桂枝加芍薬湯に水飴、厳密には膠飴(こうい)という生薬ですが、これを入れてしまいます。そうすると、なんと小建中湯(しょうけんちゅうとう)ができあがります。これは、虚弱体質の小児が体調不良になった時に使う薬です。体調不良でエネルギー不足なので、お腹に優しい漢方薬と飴から得られるエネルギーで消化管から体調をたて直そうというコンセプトの漢方薬です(図3)。図3 小建中湯への派生画像を拡大するさらにさらに! 小建中湯からいわゆる「建中湯」シリーズを派生させることができます。たとえば、小建中湯から飴を抜いて、補血作用のある当帰(とうき)を加えると、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)になって、消化管だけでなく女性器由来の腹痛にも対応しやすくなります(図4)。図4 当帰建中湯への派生画像を拡大するまた、小建中湯に黄耆(おうぎ)というお肌を引き締めてくれる生薬を加えると、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)になって、虚弱体質の小児で寝汗がひどい場合や、アトピー性皮膚炎に悩まされている場合に対応できる漢方薬になります(図5)。図5 黄耆建中湯への派生画像を拡大する大建中湯(だいけんちゅうとう)は小建中湯と生薬の組み合わせが大きく異なるため(図6)、そこだけ注意していただきたいのですが、このように、生薬に着目することで建中湯シリーズを一気にたくさんインプットすることができるのです。この勉強法は知っておいて損はないかと思います。図6 小建中湯と大建中湯の構成生薬画像を拡大するまとめ桂枝湯は芍薬など胃腸を整える生薬が複数含まれていて、この部分を強化すると漢方薬の派生形を生み出すことができます。たとえば、胃腸を整える生薬のひとつとして芍薬がありますが、芍薬を桂枝湯に加えることで、いわゆる建中湯と呼ばれる漢方薬のグループを生み出すことができます。生薬を足し引きすることで、漢方薬を芋づる式にインプットする。これも漢方上達の近道だと個人的には考えています。次回は、小柴胡湯を取り上げ、感冒の初期段階が終わった後の漢方治療のお話をします。お楽しみに!

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貧血を伴わない鉄欠乏は、中等度~重度のアトピー性皮膚炎で高頻度に認められる

 中等度~重度のアトピー性皮膚炎(AD)では、貧血を伴わない鉄欠乏が高頻度に認められるとする研究結果が、「Nutrients」に11月28日掲載された。 ヴロツワフ医科大学(ポーランド)のMalgorzata Ponikowska氏らは、AD患者における鉄代謝の状態を評価し、疾患重症度および生活の質(QOL)との関連を検討した。解析対象は、中等症~重症のAD成人患者86人であった。 解析の結果、ヘモグロビン値は概ね正常であるにもかかわらず、鉄欠乏を示す鉄バイオマーカーの異常が、AD患者に多く認められた。具体的には、患者の45%はトランスフェリン飽和度が低く(Tsat 20%未満)、37%はフェリチン値が低く、26%は血清鉄が低値であった。さらに、高感度C反応性蛋白5mg/L超で定義される炎症性活性化が認められる患者では、血清鉄およびTsatの低下、可溶性トランスフェリン受容体の上昇を特徴とするパターンが認められた。多変量解析において、血清鉄の低下は皮膚疾患に関連したQOL評価(Dermatology Life Quality Index;DLQI)のスコア悪化と独立して関連していた。また、トランスフェリン高値は、湿疹面積・重症度指数(Eczema Area and Severity Index;EASI)およびアトピー性皮膚炎重症度評価(SCORing Atopic Dermatitis;SCORAD)で測定した疾患重症度の増大と関連した。 著者らは、「本研究により、鉄代謝の調節異常すなわち鉄欠乏が、ADにおける全身性の特徴として高頻度に認められることが示された。これらの異常は疾患重症度やQOL低下と関連しており、鉄代謝の変化はADの臨床像に関連する修正可能な全身性因子である可能性がある。今後の研究では、鉄欠乏を標的とした介入が患者のアウトカムを改善し得るかどうか検討する必要がある」と述べている。

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デュピルマブ、水疱性類天疱瘡の適応追加/サノフィ

 サノフィは2026年3月23日、水疱性類天疱瘡に対するデュピルマブ(商品名:デュピクセント)の製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。水疱性類天疱瘡は、自己免疫性の表皮下水疱を生じるまれな疾患で、本邦では指定難病とされている。全身に強い痒みや水疱、紅斑、びらん、痛みを伴い、再発を繰り返すため、日常生活に深刻な影響を及ぼす。主に高齢者に発症し、標準治療にはステロイド薬や免疫抑制薬が使用されるが、長期使用による合併症や副作用への影響が指摘されている。 今回の承認は、中等症~重症の成人水疱性類天疱瘡患者106例を対象とした第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(ADEPT試験)の結果に基づいている。被験者はプラセボ群とデュピルマブ群に1:1で割り付けられ、治療開始時より経口ステロイド薬(OCS)を基礎治療として投与された。治療期間中は、すべての被験者について治験実施計画書で定義したOCS減量レジメンに従い、デュピクセント投与開始後6~16週にかけて疾患活動性が2週間コントロールされていればOCSの漸減を進めた。 主要評価項目である36週時に寛解持続を達成した患者の割合は、デュピルマブ群は18.2%、プラセボ群は4.0%であった(p=0.0250)。寛解持続の達成は、16週までに完全寛解かつOCS漸減を完了し、36週までの投与期間中に再燃が生じることなく、レスキュー療法を必要としないことと定義された。安全性データは、これまでデュピルマブで確立されている安全性プロファイルと同様であった。なお、水疱性類天疱瘡の適応症について、2025年3月にデュピルマブは希少疾病用医薬品に指定されている。<製品概要> ※下線は変更箇所商品名:デュピクセント皮下注300mgペン/同300mgシリンジ、デュピクセント皮下注200mgペン/同200mgシリンジ一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:<300mgペン、300mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・結節性痒疹・特発性の慢性蕁麻疹・中等症から重症の水疱性類天疱瘡・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)・慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)・鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)<200mgペン、200mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・特発性の慢性蕁麻疹・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)注)適使用推進ガイドライン対象用法及び用量(抜粋):〈水疱性類天疱瘡〉通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。

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子どもの食物アレルギー、原因は遺伝だけではない

 子どもが食物アレルギーを発症するかどうかを決める要因は、遺伝子だけではないようだ。新たな研究で、抗菌薬の使用や他の免疫疾患の存在、アレルゲンとなる食品の導入が遅れることも、子どもの食物アレルギーの発症に関与している可能性のあることが示された。マクマスター大学(カナダ)のDerek Chu氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Pediatrics」に2月9日掲載された。Chu氏は、「われわれの研究結果は、食物アレルギーの傾向を遺伝だけで完全に説明することはできず、遺伝子、皮膚の健康、マイクロバイオーム、環境要因が重なり合って食物アレルギーの発症に関与していることを示している」とニュースリリースで述べている。 この研究では、6歳未満の子どもを対象にした世界40カ国の190件の研究データ(対象者は総計280万人)が分析された。食物経口負荷試験を用いた16件の研究を統合して解析した結果、IgE媒介性アレルギーの6歳までの平均発症率は4.7%と推定された。176件の研究で342種類のリスク因子が特定されていたが、エビデンスの確実性が高く、IgE媒介性アレルギーとの関連が最も強いと判断されたのは、乳児期のアレルギー性疾患の既往であった。具体的には、生後1年以内のアトピー性皮膚炎(オッズ比3.88)、アレルギー性鼻炎(同3.39)、喘鳴(同2.11)が、いずれも大幅なリスク上昇と関連していた。 また、食物アレルギーの家族歴もリスク因子であり、特に、両親(同2.07)やきょうだい(同2.36)にアレルギーがある場合にはリスクが2倍以上に上昇した。さらに、ピーナッツ、ナッツ類、卵などのアレルゲン食品の導入が遅いことも関連因子であり、例えば、1歳を過ぎてからピーナッツを食べた場合にピーナッツアレルギーになるオッズは2倍以上であった(同2.55)。このほか、妊娠中の母親の抗菌薬使用(同1.32)や、生後1カ月以内(4.11)、または1年以内(1.39)の乳児の抗菌薬使用でもリスク上昇が見られた。 一方で、食物アレルギーに関与すると疑われていた多くの要因、例えば低出生体重や予定日超過の出産、母乳育児をしていないこと、母親の妊娠中の食事やストレスとIgE媒介性アレルギーとの間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、「これらの結果は、食物アレルギーのリスクがある乳児を特定し、早期予防に役立つ可能性がある」と述べている。また、Chu氏は、「この結果は、食物アレルギーに対するわれわれの理解を広げるものだ。今後の研究では、同じ主要因子を測定・調整し、より多様な集団を対象とし、食物経口負荷試験をもっと活用すべきだ」と述べている。さらに同氏は、「今回の発見を実際に活かすためには、新たなランダム化臨床試験とガイドラインを早急に更新することが必要だ」と付け加えている。

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キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル【ReGeneral インタビュー】第4回

キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル「医師という仕事が好きです。総合診療の入り口を担いながら、専門的なことももっと学んで、糖尿病や内分泌疾患を中心にコモンディジーズや救急初期対応ができるようになりたい」そう語るのは、総合医育成プログラム修了生の帆秋 理笑子氏。糖尿病内科専攻後、家庭の事情で約7年間のブランクを経て、再び糖尿病を中心にした診療スタイルに戻るまでの道のりで出会ったのが、総合診療でした。専門性を高めることと総合診療がどのように関連するのかを聞きました。プライマリ・ケア認定医取得を機に、専門キャリアを再設計――現在どのような診療をされているか教えてください。流動的ですが、糖尿病内科7割、一般内科3割くらいで診療をしています。約1年前に今の勤務先に赴任した当時は、糖尿病診療よりも誤嚥性肺炎などを診ることが多かったのですが、だんだんと引継ぎと新患どちらも増えて、現在は糖尿病を中心に内科診療を行っています。前職は大分県内の同じような中核病院で働いていましたが、糖尿病専門医を取得したいという思いがあり、研修施設である今の職場に移りました。2023年にプライマリ・ケア認定医を取得したことが、このキャリアチェンジを実行する自信にも武器にもなりました。――2023年に認定医取得とのことですが、プログラムはいつ・どのような経緯で受講されたのですか。受講は2021年からです。きっかけは2016年に常勤で診療を再開したことです。卒後数年してから、糖尿病内科を専攻していましたが、9年目くらいから臨床から離れた期間が7年ほどあり、最初は老健施設から仕事を再開して徐々に体力面と治療のアップデートを行いました。前職の病院で糖尿病を診ながら一般内科診療も始め、地域医療でさまざまな役割を担ううちに、「ジェネラルに診られるようになりたい、総合診療のトレーニングを受けたい」と強く思うようになりました。そこで、2019年に勇気を出して大分大学総合診療科に研修希望で見学に伺い、このプログラムを教えていただきました。私の話に耳を傾けてくれた先生方に今でもとても感謝しています。当時は東京に行って受講する形式で費用も高くて諦めていましたが、2021年にオンライン化されて「ああ、これなら家でもできる。チャンスだ!」と思って参加を決めました。2023年に認定医を取得した後も受講を続けています。大人の学び直し 安心して飛び込める環境――印象的な講義はありましたか。診療実践コースでは、整形外科、循環器内科が印象的でした。整形外科では、脊髄からの神経支配域を身振り手振りや語呂合わせで教えてくれたのをよく覚えています。また骨折の写真や整形外科的診察の動画をたくさん使って説明してくださったのが面白くて理解しやすかったです。循環器では、日常診療で使える心電図の読み方や高血圧の診療、胸痛への対応などをざっくばらんに教えていただきました。循環器は興味があっても苦手に感じていた分野なので、動画を何度も見返して勉強した分、印象が強いですね。ノンテクニカルスキルコースでは、ミーティング・ファシリテーションの講義が記憶に残っています。ここで会議やグループ活動の舵取りの手法を学びました。板書の効果や、会議に応じた机や椅子の並べ方、アイデアを広げてからまとめる方法など、これまで無意識に行っていたことも、意識を向けると意味があると知りました。――受講中に苦労した点はありますか。糖尿病や、それに関連する腎臓や認知症の講義は安心して受けられましたが、あまり馴染みのない科、たとえばマイナーエマージェンシーや救急、耳鼻科の講義を受けるときは、自信がなく不安が大きかったです。実際に受講してみると、講師の先生方はとても優しく熱心でしたし、講義のやり方も工夫されていて新鮮でした。また、事務局が手厚くサポートして心理的安全性をしっかり担保してくれたのが大きな支えになりました。オンラインですので、受講中に画面がフリーズしてしまうことも何度かありましたが、講義によっては復習用動画を作って何度も視聴できるような環境を整えられていて、聴き取れなかった部分は後から補うことができました。――心理的安全が保たれた。それはどんなサポートだったのですか。たとえば、質問のときです。質問するのは意外と難しいんです。自分がよく知っている疾患なら「いい質問だね」と言ってもらいやすいですが、詳しくない分野だと的外れになりがちです。講師からしたらわけがわからない質問かも…と不安になることもありました。実際、一度スルーされたのかな?と思った瞬間もあります。ですが、運営の先生方が参加者全員の質問をリストアップして、どんな質問も漏れなくすべて扱ってもらえる仕組みになっていました。それから、最初の受講時に「ほかの人の発言を否定しないでください」というアナウンスもありました。この声掛けがあったので、自分の意見を批判されることはあっても、否定されない。これが安心感につながって、得意ではない診療科の授業にも思い切って飛び込むことができましたし、質問やグループ内での発言を行うことができました。――ご自身の診療にこのプログラムはどう役立っていますか。最近の出来事だと、糖尿病性の足壊疽を診るとき、皮膚科の褥瘡の講義で学んだ内容がとても役立っています。壊疽も褥瘡も血流障害が関係していることが多く、評価や薬の選択がリンクしていて、受けてよかったなと思う瞬間でした。それから、腎臓内科の講義を受けたことで、糖尿病診療の中で腎臓を診るときに、薬をいつまで継続すべきかといった、細かい判断がしやすくなりました。糖尿病の合併症で腎機能が悪化して透析になる方も多いですから、お互いの専門領域に関わる聞きづらい質問ができたのは、このプログラムならではかもしれません。専門医がその疾患をよく理解していることは確かですが、付随するさまざまな問題や合併症の管理に他科の医師の協力は必要不可欠です。その時に、こうして他科の医師の考え方を知ったおかげで、コミュニケーションを取りやすくなりました。糖尿病という疾患を診るときの視野が広がりましたし、自分の専門性を高める上でも、何をもっと勉強しなければならないのかが少しずつ見えてきた気がします。ほかにも一般内科の診療を行う上でリハビリテーションの必要性は年々高まっていると感じていたため、リハビリの講義で、リスク管理や障害の診断とADLの評価法などを学び、疾患と生活を結びつける上でとても役立っています。――他科の先生から刺激を受けたという点で、印象に残っていることはありますか。行動変容1)という診療実践コースの授業のグループワークが印象に残っています。行動変容というと、問診で情報を引き出して患者さんが生活習慣を修正できるように導くといった、糖尿病内科で日頃からやっていることがテーマになります。正直、自分は得意だと思っていました。でも、同じグループのある先生の問診に目を見張りました。外科出身で、今は開業して一般内科を診ているこの先生は、私よりずっと上手だったんです。本当に驚きました。糖尿病内科では診察に追われて、ついイエス・ノーで答えられるクローズドクエスチョンで聞いてしまうことが多いのですが、その先生はオープンクエスチョンをとても上手に使って、患者役の方から自然に話を引き出していました。その姿を見て、私ももっと頑張ろうとやる気になりましたし、負けられないという刺激にもなりました。他科の先生が自分より上手だと落ち込むこともできますけど、前向きに捉える方がいいですよね。いろんな先生のやり方を、自分が奮起する材料にできるといいなと思っています。総合診療能力を活かして専門性も磨く、新しい働き方――専門性を磨きたいと思う人にとっても、総合診療能力は必要でしょうか。わたしはそう思います。総合診療の必要性を感じて大分大学総合診療科を見学したとき、自分の進みたい方向をもう一度深く考えました。そこでクリアになったのは、私は専門の糖尿病と隣接する内分泌の診療の幅を広げながら、同時に一般内科の初期対応やマネジメントといった“総合診療の入り口”をマスターしたいという希望でした。さまざまな専門性・働き方の先生方を尊重し、そこから真摯に学び、力を借りながら、自分が決めた進路を進みたいと思ったんです。一方で専門だけでは対応しきれない現実も理解しています。患者さんの多くは高齢で、認知症や肺炎や骨折など複数の疾患があり、生活や家族の問題も絡んでいます。都会なら各診療科に回せるかもしれませんが、地方や個人病院では難しい。だから、専門的な治療だけでなく、専門と専門の間をつなぐマネジメントや初期対応は、どの科の専門医にも必要なのではないかと思います。総合診療的なアプローチを学ぶことは、専門診療の視野が広がる、地域のニーズに応えられることでキャリアの選択肢が増えるという2つの点で、専門性を高めたいと思う人にも価値があると思います。大人になってからの学習ですから、習ったことすべてをすぐに活用・実践できるというような大きな期待は持たずに、経験を積みながら少しずつできることを増やしていくくらいの気楽な気持ちで始めてもよいのではないでしょうか。――今後の展望は?総合診療の基本的なことを今以上にできるようになりながら、糖尿病と内分泌の専門的な診療を深めていくのが個人的な夢です。 人間は忘れる生き物だと痛感しているので、この先も反復学習と実臨床での実践を続けて、総合医育成プログラムの内容をしっかりできるようになりたい。そして専門以外でも得意な分野が生まれてくるといいなと思っています。私自身はプログラムを受けていてもできていないことが多々あります。でも全部を自分で賄えなくても、このプログラムで学んだエッセンスを活かしながら他の人の力を借りて、少しでもよい方向に診療を進めていき、自分の夢が実現するように頑張っていきたいと思っています。――同じように専門性を大切にしながら、総合診療にも興味を持たれた方にメッセージを。私は約7年のブランクを経て、再び臨床に戻る決断をしてからの一歩一歩が、このプログラムとの出会いにつながりました。時間はかかりましたが、希望していた糖尿病診療を増やすことができ、プログラムでの学びは一般内科や救急だけでなく、自分の専門にも新しい発見をもたらしています。努力しても診療がうまくいかず落ち込む日もあれば、うれしくて喜びを感じる瞬間もあります。一喜一憂の毎日ですが、やりがいがあり、この仕事が好きです。プログラムに参加して、恥をかくのは確かに嫌です。ただ自分のやりたいことに挑戦しないと失敗もないけれど進歩もありません。挑戦して、そこから学べることはありますし、次につなげていくこともできます。そして何より、医師になってある程度経験を積んでから、もう一度、大人の学び直しをできることがすごく楽しいです。このプログラムは、授業料を払い土日を費やしてでも学びたいと思っている、年齢も専攻科も異なるさまざまな背景を背負った全国のやる気に満ちた医師仲間と知りあうことができ、切磋琢磨しながら学べる貴重な場です。事務局のサポートも手厚く、先生方も熱心です。また私のように診療の第一線から離れた医師が復職する上でも大きな助けになってくれると思います。取り組み方次第で道は開けます。もし迷っているなら、ぜひ思い切ってチャレンジしてみてください。 引用 1) 行動変容:喫煙・食事・運動に関する患者の行動変容を支援する面接技法を学び、準備段階の評価や効果的な対話を通じて生活習慣改善を促す力を養うことを目的としたセッション

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喘息への活用に期待、『アレルゲン免疫療法の手引き2025』

 アレルギー性鼻炎は、スギやヒノキを原因とする季節性アレルギー性鼻炎と、ダニなどが原因の通年性アレルギー性鼻炎に大別される。本邦では2014年頃からアレルゲン免疫療法(以下、AIT)の手軽な手法である舌下免疫療法(以下、SLIT)が臨床導入されたが、近年のエビデンス蓄積により、ダニアレルゲンによって症状が出現しているアトピー型喘息へのダニSLITの有効性が示されているという。2025年6月には日本アレルギー学会より『アレルゲン免疫療法の手引き2025』が発刊され、最新の知見に基づき、治療の意義や位置付けが刷新されたことから、今回、本書の作成委員長を務めた永田 真氏(埼玉医科大学呼吸器内科 教授/埼玉医科大学病院アレルギーセンター センター長)にAITの基礎と推奨される患者像などについて話を聞いた。アレルゲン免疫療法の意義  以前に日本では“減感作療法”とも呼ばれたAITは、「アレルギー疾患の病因アレルゲンを投与していくことにより、アレルゲンに曝露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療」と定義付けられ、アレルギー疾患の根本的な体質改善を期待できる唯一の治療法である。本邦オリジナルの手法である皮下免疫療法(SCIT)は諸外国と比べ格段に普及が遅れていた。しかし2014年に舌下免疫療法(SLIT)が承認され、スギ花粉症を中心にその普及が始まった。 『アレルゲン免疫療法の手引き』の2022年版*からの主な改訂ポイントについて、永田氏は「『喘息予防・管理ガイドライン 2024』および『鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版』との整合性を図り、最新の臨床知見を反映した。とくにこれまでの理念を覆す免疫病態や、またAITの新規の効果が近年明らかになってきたため、新たに判明した作用をブラッシュアップしている。たとえば、ダニSLITが喘息患者の呼吸機能を改善させ長期的に維持させ得ることや、重症患者(喘息併存)への生物学的製剤(抗IgE抗体オマリズマブや抗IL-4受容体α鎖抗体デュピルマブなど)との併用効果に関するエビデンスなどを盛り込んだ。さらに、現段階での適応拡大はないが、アトピー性皮膚炎に対しても部分的に効果があることも報告されている。さらに、スギアレルゲンによる治療がヒノキアレルギーに対しても一定の効果を示す可能性が指摘されている」など、治療標的の広がりについても言及した。また、医療経済的な観点として、AITによる医療費抑制効果が確認されていることにも触れた。*2013年に「スギ」「ダニ」別の指針として発刊されていた前身の出版物を統合・刷新したもの AITの機序についてはいわゆる脱感作現象の寄与は極めて限られ、したがって“減感作療法”という呼称は科学的に誤っている。実際には生体にとって有益な免疫応答を能動的に誘導することの寄与が大きいと判明している。同氏は喘息患者において、「AITが気道上皮細胞のインターフェロン産生能力を高め、ウイルス感染に対する抵抗性を増強する作用が報告されている。これは、感染を契機とした増悪を抑制する効果を意味する」と、その免疫学的メリットを強調した。小児期からの介入と喘息発症予防 AITの適応は、IgE依存性アレルギーであることが正確に診断されたダニアレルギーまたはスギ花粉症患者で、とくに重要なことは全身的・包括的な効果を期待して行われる点である。施行にあたっては、「アレルゲン免疫療法に精通した医師」が条件であり、とくにSCITは効果が高いものの、アナフィラキシーあるいは喘息増悪(発作)などに対する迅速な対応が可能な施設においてのみ実施される。 AITの普及状況について、「成人のスギ花粉症治療でのSLITの応用が活発な一方、通年性鼻炎や喘息に影響をもたらすダニアレルギーへの介入は欧米に比べ依然として不十分」と同氏は指摘した。とくに小児においては、小児喘息の多くが難治化のリスクを抱える中、AITの追加が予後改善に寄与することが確認され、『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023』にも5歳以上に対するダニ免疫療法の重要性が示されている。「小児期からの介入は、将来的な喘息の新規発症を予防し、すでに発症済みの小児喘息の改善も期待することができる」と同氏はコメントした。 アレルギー性鼻炎の鑑別疾患としては、非アレルギー性・非感染性の鼻粘膜過敏症(血管運動性鼻炎や好酸球増多性鼻炎、また鼻かぜ[急性鼻炎]など)が挙げられる。このほかの注意点として、同氏は「海外では喘息でダニSLITが適応となる一方で、日本の場合には“適応がない”点は留意したいが、日本人の約8割の喘息患者はアレルギー性鼻炎も併発している」と喘息患者は治療対象となる場合が多い点を指摘した。<処方医が診療時に注意するべきポイント>・リスク管理:アナフィラキシーリスク評価と迅速な対応ができること・禁忌/慎重投与:「自己免疫疾患の合併や既往、または濃厚な家族歴を有する」「%FEV1(1秒量)が70%未満、または不安定な喘息患者」「全身性ステロイド薬の連用や抗がん剤の使用」に関する状況確認・SLITに関する歯科連携: 腔内の傷や炎症、抜歯などの予定は吸収率や局所反応に影響するため、休薬を含めた指導を実施・環境整備:ダニアレルギーの場合、ダニの繁殖を防ぐため、床のフローリング化やこまめな清掃など、また喘息ではとくに完全禁煙を指導治療中断後の再開は?ほかのアレルゲンへの適応は? AITの治療期間について、世界保健機関(WHO)は3~5年を推奨しているが、さらなる長期継続も許容される。患者が中断してしまった場合やいったん中止後に再発した場合の再開基準について、永田氏は次のような見解(私見)を述べた。「スギSLITの場合、投与開始から3年が経過していれば、免疫寛容の誘導が進んでいる時期。一時的に中断しても2年は効果が持続すると判明しているが、中止後の再発に伴う再開に際しては『改めて最低3年』を目標に仕切り直すことを推奨する。」 なお、ほかのアレルゲンへのAITの展開については、ハチ毒でのSCIT、食物アレルゲンでの経口免疫療法、一部の薬剤(NSAIDs、抗酸菌薬など)に対する脱感作療法が存在する。ピーナッツなどの食物アレルギーに対する経口・経皮免疫療法は研究が進んでいるが、現時点で本邦での承認予定はない。そのため、最新の手引きではこれらについての詳細な解説は見送られている。

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コロナ禍で新規診断が増えた疾患・減った疾患/BMJ

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark D. Russell氏らによる、OpenSAFELY-TPPを用いたコホート研究の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、うつ病、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、骨粗鬆症の新規診断は予測値を下回ったのに対し、慢性腎臓病は2022年以降に診断数が急増し、サブグループ解析ではとくに認知症に関して民族および社会経済的状況により新規診断数の回復パターンに差があることが示された。著者は、「本研究は、日常診療で収集される医療データを用いた疾病疫学のほぼリアルタイムのモニタリングの可能性を示すとともに、症例発見の改善や医療の不平等を検討するための戦略立案に寄与する」とまとめている。BMJ誌2026年1月21日号掲載の報告。イングランドの約3千万例対象、COVID-19パンデミック前後の慢性疾患の新規診断と有病率を解析 研究グループは、2016年4月1日~2024年11月30日に、OpenSAFELY-TPPプラットフォームにデータを提供している一般診療所に登録され、かつ診療所に対して直接の医療に関与しない組織への個人データの共有を希望しない旨の登録をしていない患者2,999万5,025例を対象として、19の慢性疾患について年齢・性別標準化発症(新規診断)率および有病率の経時推移を検討した。 19の慢性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、冠動脈心疾患、慢性腎臓病(ステージ3~5)、セリアック病、COPD、クローン病、認知症、うつ病、2型糖尿病、てんかん、心不全、多発性硬化症、骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛症、乾癬、関節リウマチ、脳卒中/一過性脳虚血発作、潰瘍性大腸炎。 COVID-19パンデミックが、これら慢性疾患の診断に与えた影響を評価する目的で、パンデミック前のパターンから予測された期待診断率に基づく季節変動自己回帰和分移動平均(seasonal autoregressive integrated moving average:SARIMA)モデルを用い、パンデミック発生後の予測診断率と実際の観察診断率の差を比較した。パンデミック初年度に新規診断が急減、4年後もうつ病などは減少したまま パンデミック発生後の新規診断率はパンデミック前と比較し、初年度(2020年3月~2021年2月)に19疾患のすべてで急減した。ただし、その後の回復傾向は疾患ごとに異なった。 2024年11月時点でも、いくつかの疾患では新規診断数が予測値を下回っており、とくにうつ病(予測より-73万4,800件[-27.7%]、95%予測区間[PI]:-76万6,400~-70万3,100)で減少幅が最も大きく、喘息(-15万2,900件[-16.4%]、95%PI:-16万8,300~-13万7,500)、COPD(-9万100件[-15.8%]、-9万8,900~-8万1,400)、乾癬(-5万4,700件[-17.1%]、-5万9,200~-5万100)、骨粗鬆症(-5万4,100件[-11.5%]、-6万1,100~-4万7,100)も大きく減少した。 一方、慢性腎臓病の診断数は、パンデミック初期に減少したものの、2022年以降はパンデミック前の水準を上回る増加を示した(予測より35万9,000件[34.8%、95%PI:33万3,500~38万4,500]増加)。 人種および社会経済的状況で層別化したサブグループ解析の結果、パンデミック初期の減少後、白人および社会経済的困窮度が低い地域では、認知症の診断率がパンデミック前の水準を上回って増加したが、他の人種および困窮度が高い地域では増加しなかった。

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アトピー性皮膚炎治療薬のネモリズマブがかゆみを迅速に軽減

 最近承認された注射型のアトピー性皮膚炎(AD)治療薬ネモリズマブ(商品名Nemluvio)が、悩ましいこの疾患に苦しむ患者に迅速なかゆみの緩和をもたらすことが、新たな研究で示された。スイスの製薬会社であるガルデルマ社の研究者らの報告によると、治療開始からわずか2日でかゆみが軽減した患者の割合は、ネモリズマブを投与された群でプラセボを投与された群の3倍以上に上ることが示された。さらに、ネモリズマブ群では睡眠も改善した。ガルデルマ社治療用皮膚科学プログラム責任者であるChristophe Piketty氏らによるこの研究結果は、「Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology」に12月16日掲載された。 Piketty氏は、「今回の結果は、ネモリズマブがかゆみを迅速に軽減し、結果としてADや結節性痒疹(PN)患者の睡眠改善にもつながるという理解を強化するものだ」とニュースリリースで述べている。ガルデルマ社はネモリズマブの開発企業であり、本研究への資金提供も行っている。 米食品医薬品局(FDA)は2024年に、中等症〜重症のADおよびPNの治療薬としてネモリズマブを承認した。ADは、免疫系の異常によりアレルゲンや刺激物に対する皮膚の防御機能が低下することで発症する。モノクローナル抗体であるネモリズマブは、かゆみやその他のADの症状の原因となるサイトカインのIL-31が受容体に結合するのを阻害し、かゆみのシグナル伝達を遮断する。 この研究では、FDAが承認の根拠とした4件の臨床試験のデータの事後解析を実施し、投与初期(最初の14日間)のかゆみの改善について評価した。解析対象は、AD患者1,728人(ARCADIA1、2試験)とPN患者560人(OLYMPIA1、2試験)であった。対象者は毎日かゆみと睡眠障害の強さを自己報告した。かゆみはpeak pruritus numerical rating scale(PP-NRS)で、睡眠はsleep disturbance numerical rating scale(SD-NRS)で評価し、スコアがベースラインから4点以上低下した場合を改善と見なした。 その結果、投与2日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で10.7%であったのに対し、プラセボ群では2.9%にとどまっていた。同様に、投与2日目に改善が認められたPN患者の割合はそれぞれ17.2%と3.7%であった。SD-NRSに改善が認められた割合についても、AD患者ではネモリズマブ群9.9%、プラセボ群4.6%、PN患者ではそれぞれ13.4%と4.3%であり、ネモリズマブ群で有意な改善が見られた。さらに、投与14日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で25.5%、プラセボ群で8.9%、PN患者の割合は37.0%と10.2%であり、群間差は投与14日目まで拡大していた。 研究グループは、「かゆみは中等症〜重症のADおよびPN患者が最も苦痛に感じる症状であり、かゆみの迅速な改善は重要な治療目標だ」と指摘している。また、「かゆみを迅速に軽減し、疾患の重症度や患者の生活の質(QOL)に臨床的に有意な改善をもたらす治療法は、ADおよびPNの現在の治療選択肢において重要だ」と述べている。

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小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025

ガイドライン50点、6,449ページ分の要点がわかる「小児科」66巻12号(2025年12月臨時増刊号)小児診療にかかわる重要なガイドラインについて、作成委員の先生方が、一般小児科医が知っておくべき部分をダイジェスト形式で解説。さらに使用上の注意やガイドライン発表後に得られた知見も併せて紹介します。この1冊で、各領域における最新版のガイドライン情報をアップデート!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025定価9,350円(税込)判型B5判頁数316頁発行2025年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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