救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:77

機械的換気によるICU患者の死亡率、胃薬で抑制される?/JAMA

 侵襲的機械換気を要するICU患者におけるストレス潰瘍の予防戦略としてのプロトンポンプ阻害薬(PPI)とヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)には、院内死亡率に関して大きな差はないことが、ニュージーランド医学研究所のPaul J. Young氏らが行った無作為化試験「PEPTIC試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年1月17日号に掲載された。ICUでは、ストレス潰瘍の予防法としてPPIやH2RAが使用されるが、これらの薬剤が死亡率に及ぼす影響は知られていないという。

出血ハイリスクの重症患者に対する予防的なPPI・H2RAは有用か?(解説:上村直実氏)-1177

プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)など酸分泌抑制薬は胃食道逆流症に対する有用性により世界中で頻用されている一方、長期投与による肺炎や骨折のリスク、腸内細菌叢の変化に伴うClostridium difficile(CD)感染症のリスク増加などを危惧する報告が散見されている。このように酸分泌抑制薬の有用性と安全性のバランスは臨床現場で最も注目されている課題の1つである。重症患者が主体のICUにおいて消化管出血の予防処置としてPPIやH2RAが当然のように投与されているが、薬剤のリスクを考慮した有用性に関する確実なコンセンサスが得られていないのが現状である。

新型肺炎で緊張高まる中、感染症予防連携プロジェクトが始動

 東京オリンピック・パラリンピックを迎える年となる2020年1月、日本感染症学会・日本環境感染学会は感染症予防連携プロジェクト「FUSEGU(ふせぐ)2020」を発足、発表会を行った。年頭から中国での新型コロナウイルス感染がニュースとなり、図らずとも感染症への一般の関心が高まる中でのスタートとなった。  挨拶に立った日本感染症学会理事長の舘田 一博氏は、本プロジェクトの意義を「オリンピックイヤーを迎え、マスギャザリング(一定期間、限定された地域において同一目的で多人数が集まること)に向けた注意喚起が重要。既に各学会・団体がさまざまな取り組みをしているがそれを連携させ、産官学が協働して一般市民を巻き込んで情報提供をしていく必要がある」と述べた。

再入院抑制施策の導入で、死亡は増大したのか/BMJ

 米国では再入院率を低下させるため、インセンティブ付きのプログラム「Hospital Readmissions Reduction Program(HRRP)」が施行されている。しかしそのために、直近の退院患者では再入院が必要となった場合も入院を拒否される可能性があり、死亡リスクが増大するのではとの指摘がある。実際にここ数年、心不全で入院が必要になったメディケア受給者で退院後30日死亡が増加しており、全米で経過観察病棟や救命救急部門(ED)での治療の増加が報告されているという。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのRohan Khera氏らは、HRRP対象症状で入院した患者の退院後間もないEDなどの利用データと患者アウトカムについて、プログラムの影響を評価する必要があるとして調査を行った。結果、プログラムの影響はみられなかったことが判明したという。BMJ誌2020年1月15日号掲載の報告。

高出血リスク重症例への予防的PPI・H2RAは有用か/BMJ

 出血リスクの高い成人重症患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびH2受容体拮抗薬(H2RA)の予防的投与は非投与群と比較して、消化管出血について臨床的に意味のある減少をもたらす可能性が示された。中国・首都医科大学のYing Wang氏らがシステマティックレビューとメタ解析を行い明らかにしたもので、リスクの低い患者ではPPIおよびH2RAの予防的投与による出血の減少は意味のないものであり、また、これらの予防的投与は、死亡率や集中治療室(ICU)滞在期間、入院日数などのアウトカムとの関連は認められなかった一方、肺炎を増加する可能性が示されたという。消化管出血リスクの高い患者の大半が、ICU入室中は胃酸抑制薬を投与されるが、消化管出血予防処置(多くの場合ストレス性潰瘍の予防とされる)については議論の的となっている。BMJ誌2020年1月6日号掲載の報告。

院外気管挿管時、ロクロニウムvs.スキサメトニウム/JAMA

 院外救急医療の気管挿管時において、ロクロニウムの使用はsuccinylcholine(本邦ではスキサメトニウム)に対し、初回成功率に関して非劣性を示さなかった。フランス・CHU de la Reunion病院のBertrand Guihard氏らが1,248例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。ロクロニウムおよびsuccinylcholineは迅速導入気管挿管時にしばしば使用されるが、これら薬剤の救急医療での気管挿管成功に関する有効性の比較について臨床試験による評価はされておらず、またsuccinylcholine使用では、ロクロニウム使用では報告されていない有害事象との関連が示されていた。JAMA誌2019年12月17日号掲載の報告。

一般市民によるAED、不成功でも神経学的転帰改善/Lancet

 院外心停止(out-of-hospital cardiac arrest:OHCA)患者への自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)を用いた一般市民による除細動(public-access defibrillation:PAD)の実施は、AEDを使用しない場合に比べ、その場では自己心拍再開が達成されなかったとしても、その後の神経学的転帰を改善する可能性があることが、国立循環器病研究センターの中島 啓裕氏ら日本循環器学会蘇生科学研究グループの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年12月21日号に掲載された。日本では、ショック適応リズムを伴うOHCA患者へのPADの80%以上は、救急隊(emergency medical service:EMS)の現地到着前に、持続的な自己心拍再開には至らないという。これら患者の神経学的および生存転帰は知られていなかった。

てんかん重積状態が止まらないときの薬剤選択(解説:岡村毅氏)-1162

精神科医をしていると、世界はいまも謎に満ちていると感じる。ほかの科ではどうであろうか? 教科書だけ見ていると、多くのことが既知になり、予測可能になったように思われる。でも臨床現場はいまだにわからないことだらけだ。医師になって17年が過ぎたが、闇の中で意思決定をし続けなければならない臨床医学に、私はいまだに戦慄することがある。精神医学の例を挙げだすと深みにはまるので、神経学の例を挙げよう。たとえば、てんかん重積状態である。ベンゾジアゼピンが効かない場合どうすればよいのだろうか? 日本神経学会のガイドラインでは、ホスフェニトインあるいはフェノバルビタールあるいはミダゾラムあるいはレベチラセタムとある。要するに、どれが優れているかわからないのだ。

院内心停止の生存率を左右する予後因子とは/BMJ

 院内心停止患者では、心停止前に悪性腫瘍や慢性腎臓病がみられたり、心停止から自己心拍再開までの蘇生時間が15分以上を要した患者は生存の確率が低いが、目撃者が存在したり、モニタリングを行った患者は生存の確率が高いことが、カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。院内心停止は生存率が低く、臨床的知識の多くは院外心停止に関する豊富な文献からの推測だという。院内心停止と関連する心停止前および心停止中の予後因子の理解は、重要な研究分野とされる。

てんかん重積、レベチラセタムvs.ホスフェニトインvs.バルプロ酸/NEJM

 ベンゾジアゼピン系薬治療抵抗性の痙攣性てんかん重積状態の患者に対し、静注用抗痙攣薬レベチラセタム、ホスフェニトイン、バルプロ酸は、いずれも効果は同等で、約半数で1時間以内に発作停止と意識レベル改善が認められることが明らかにされた。有害事象の発現頻度も3剤間で同程度だった。米国・バージニア大学のJaideep Kapur氏らが、384例を対象に行った適応的デザイン・無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌2019年11月28日号で発表した。これまで、同患者への薬剤選択について十分な研究は行われていなかった。