ホルモン避妊法の血栓性脳卒中と心筋梗塞のリスク

提供元:ケアネット

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公開日:2012/06/27

 



デンマーク・コペンハーゲン大学のOjvind Lidegaard氏らは、経口避妊薬やパッチ、膣リングを含む新しい各種ホルモン剤による避妊法に伴う血栓性脳卒中と心筋梗塞の発生について調べた結果、絶対リスクは小さかったが、エチニルエストラジオール20μg含有薬で0.9~1.7倍、同30~40μg含有薬では1.3~2.3倍のリスク増大が明らかになったと報告した。プロゲスチン種類別リスクの差異は比較的小さいことも示された。新しいホルモン避妊法の血栓塞栓合併症のリスクは重大な問題だが、これまで静脈血栓塞栓症リスクについて評価した研究はあるものの、動脈性合併症について検討した研究は少なく、相反する結果が示されていた。NEJM誌2012年6月14日号より。

健常女性を15年間追跡




研究グループは、1995年1月~2009年12月の15年間にわたるデンマーク人の女性についてヒストリカルコホート研究を行った。デンマークでは出生時に全員に個人特定番号が割り振られ、社会保障や学校教育などの公的レジストリに、生涯もしくは移民するまで一貫して用いられる。

研究グループはその登録データを利用して、心血管疾患またはがんの既往歴がなく、妊娠していない15~49歳の女性について、4つの全国登録からホルモン避妊法の利用、臨床エンドポイント、潜在的交絡因子に関するデータを入手し追跡調査した。

調査対象は、女性162万6,158人、総計1,425万1,063人・年の観察データだった。

追跡期間中に3,311件の血栓性脳卒中(10万人・年につき21.4件)と1,725件の心筋梗塞(10万人・年につき10.1件)が発生した。

エチニルエストラジオール30~40μg含有1.3~2.3倍、同20μg含有0.9~1.7倍




非利用のケースと比較して、エチニルエストラジオール30~40μg含有経口避妊薬を使用している場合の血栓性脳卒中と心筋梗塞発症について、プロゲスチン種類別にみた場合、以下のような相対リスク(95%信頼区間)の増加がみられた。

norethindrone:2.2(1.5~3.2)と2.3(1.3~3.9)

レボノルゲストレル(商品名:アンジュ、トリキュラーほか):1.7(1.4~2.0)と2.0(1.6~2.5)

norgestimate:1.5(1.2~1.9)と1.3(0.9~1.9)

デソゲストレル(商品名:マーベロン、ファボワール):2.2(1.8~2.7)と2.1(1.5~2.8)

gestodene:1.8(1.6~2.0)と1.9(1.6~2.3)

drospirenone:1.6(1.2~2.2)と1.7(1.0~2.6)

また、エチニルエストラジオール20μg含有の場合は、以下のとおりだった。

デソゲストレル:1.5(1.3~1.9)と1.6(1.1~2.1)

gestodene:1.7(1.4~2.1)と1.2(0.8~1.9)

ドロスピレノン(商品名:ヤーズ):0.9(0.2~3.5)と0.0

経皮パッチの相対リスクは3.2(0.8~12.6)と0.0、膣リングは2.5(1.4~4.4)と2.1(0.7~6.5)だった。

(朝田哲明:医療ライター)