前立腺動脈塞栓術により前立腺肥大症の症状が軽減

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/04/05

 

 前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia;BPH)の症状に対する前立腺動脈塞栓術(prostatic artery embolization;PAE)の長期的な効果が、米マイアミ大学医学部のShivank Bhatia氏らによる研究で示された。PAEは、肥大した前立腺への血流を部分的に遮断する治療法で、侵襲性は低いとされている。Bhatia氏によると、PAEを受けた患者では、頻尿や尿失禁などの排尿に関わる症状(下部尿路症状)が劇的に改善したという。この研究結果は、インターベンショナルラジオロジー学会(SIR 2023、3月4〜9日、米フェニックス)で報告された。

 BPHは加齢に伴い前立腺が自然に肥大し、膀胱からの尿の通り道である尿道が圧迫される状態を指し、尿意切迫感、頻尿、尿線途絶、腹圧排尿、残尿感などの症状が生じる。BPHの治療選択肢には薬物治療と手術があるが、勃起不全(ED)や尿漏れなどの副作用が起こり得るという。そのため、BPHの男性の多くが治療を避け、不快な症状に耐えているのが現状だ。なお、研究の背景情報によると、BPHに苦しんでいる男性の数は、米国だけで1800万人に上り、60歳以上の男性における有病率は50%以上と推定されているという。

 PAEは、X線などの画像診断装置を用いて前立腺の血管を確認した上でカテーテルにより微小粒子を前立腺の動脈に注入し、血流を抑制することで前立腺を縮小させる治療法だ。微小粒子はアクリルポリマーでできており、そのサイズは砂粒ほどの小ささで、電気を帯びているため注入した血管にくっつく性質がある。Bhatia氏によると、注入した微小粒子はその場にとどまり、注入した部位から離れて脳や心臓といった他の部位まで移動することはないという。

 今回の研究では、PAEを受けた1,000人の男性のデータが解析された。研究参加者は全員が前立腺の症状に関する質問に回答した。その結果、国際前立腺症状スコア(IPSS、0~35点で評価)の平均スコアは、PAE施行前には「重症」に分類される23点だったが、PAE施行から3カ月以内に「軽症」に分類される6点に改善し、その後6年間にわたってその状態が維持された。この効果は侵襲的な前立腺の手術と同程度であるが、性機能障害や尿漏れを起こすことなく効果を得られることが示された。また、6年間の追跡期間中、PAEによる効果を維持するためにPAEの再施行が必要になった患者の割合は6.7%であった。

 さらに、全般的な前立腺の状態の改善も認められたという。Bhatia氏は、「PAEの前後に実施した画像検査からは、PAEの施行前と比べて施行後12カ月の時点で前立腺の大きさが32%減少したことが示された」と説明。また、「前立腺特異抗原(PSA)値も、PAE施行から12カ月後には42%低下していた」としている。PSA値は前立腺がん発見のために用いられている指標で、PSA高値は前立腺の状態が悪いことを示す。

 SIR会長のParag Patel氏は、「PAEは安全かつ有効で持続性のある治療法であり、侵襲性は極めて低い。そして、必要に応じて繰り返し施行することも可能で、患者にとって新たな治療選択肢となるものだ」とコメント。「率直に言って、現時点のデータは、この治療法が患者にとって持続的な効果をもたらし有益であることを示したものだといえる」と述べている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2023年3月2日)

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