スマホがアレルゲンの温床に

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/09

 

 スマートフォン(スマホ)がアレルギーを引き起こす要因となる可能性を示唆する研究結果が、このほど明らかになった。研究を率いたのは、米マサチューセッツ州ホプキントン高校のHana Ruranさんだ。同高校のResearch Method Programの一環として実施されたこの研究では、スマホにはしばしば、猫や犬のアレルゲンに加え、細菌や真菌が付着していることが示されたという。研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次学術集会(ACAAI 2022、11月10~14日、米ルイビル)で発表されるとともに、「Annals of Allergy, Asthma & Immunology」11月号(増刊号)に掲載された。

 Ruranさんは、「私は常にスマホを手に持っていて、どこかに置いたままにするなんてことはありません。一方で、私はたくさんのアレルギーを持っています。こうした、自分に影響を及ぼしているものについて、何かしてみたいと思ったのです」と、今回の研究を実施した背景について説明している。

 Ruranさんらは今回の研究で、本物のスマホのサイズや表面を模した模型を作製。15人のボランティアの研究参加者に、1週間にわたって毎日何回かスマホ模型の表面を静電気除去シートで拭いてもらった。その上で、Ruranさんのメンターで共同研究者の米アイオワ大学公衆衛生学部教授Peter Thorne氏の研究室で、シートに付着した物質を調べた。

 その結果、スマホ模型の表面では、真菌の細胞壁に特異的に存在し、気道に影響を与える可能性のあるβ-Dグルカン(BDG)と呼ばれる物質や、細菌の一種であるエンドトキシンが増加していることが確認された。Ruranさんの説明によると、これらの物質の検出量は調べたスマホ模型によって異なっていたが、検出頻度は極めて高かったという。また、ペットを飼っている人たちの模型からは猫や犬のアレルゲンが多く検出されたが、家庭でペットは飼っていないと申告していた参加者たちのスマホ模型でも動物のアレルゲンが陽性となった。

 さらにRuranさんらは、スマホ模型の表面を、イソプロピルアルコールをはじめとする数種類の物質で拭って、こうしたアレルゲンや細菌、真菌の除去効果を調べた。その結果、除去したい物質による違いはあるが、簡単には入手できない特定の化学物質が有効であることが分かった。例えば、BDGとエンドトキシンを減らすにはクロルヘキシジンとセチルピリジニウムの併用、猫や犬のアレルゲンを減らすには安息香酸ベンジルとタンニン酸の併用が最も効果が高かった。イソプロピルアルコールにもある程度の効果はあったが、これらの物質と比べると有効性は低かった。また、乾いた布で拭くだけでは効果はなかった。

 Thorne氏は、「ほとんどの人が考えたこともないようなところに由来する吸入性のアレルゲンや分子への曝露により自然免疫応答が誘導されることが示された。アレルギーや喘息がある人は、アレルゲンや喘息の誘発因子への曝露をできるだけ抑えるために、今まで以上に頻繁に自分のスマホの汚れを取り除くことを考慮しても良いかもしれない」と話す。

 今回の研究には関与していない、米ニューヨーク市のLifeMDのメディカルディレクターでアレルギー専門医のPayel Gupta氏によると、アレルゲンはあらゆる場所に存在するという。同氏は、「アレルゲンは髪の毛にも付着する。これは覚えておくべき重要なことだ。また、アレルゲンは衣服や靴にも付着する。そして当然ながら、携帯電話やスマホケースといったものにも付着し得る」と説明する。

 ただ、アレルギー専門医は、患者がアレルゲンについて過剰に心配することは望んでいないとGupta氏は言う。その上で、「季節性アレルギー疾患のある人たちは、その季節には屋外から家に入る際に靴を脱ぎ、服を着替えて手を洗うなどの対策を講じると良い」と助言している。

 またGupta氏は、「Ruranさんのグループによる研究を考慮すると、スマホケースを洗うことや、ダメージを与えずにスマホ画面を清潔にする安全な方法を見つけておくことも有用かもしれない」と話す。さらに、定期的にスマホを清潔にしておく習慣がない人は、スマホを触った直後に手で目を触らないようにすることを同氏は勧めている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2022年11月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら