どんなスポーツでも高齢者の早期死亡リスクを下げる

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/10/10

 

 長生きしたいのなら、年齢にかかわらず、何でも良いのでスポーツを始めるべきかもしれない。高齢者を12年間追跡したところ、ラケットスポーツをしている人は16%、ランニングをしている人は15%、その他のスポーツでも、行っている人は死亡リスクが有意に低いことが報告された。米国立がん研究所のEleanor Watts氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に8月24日掲載された。

 Watts氏は、「始めるのに遅すぎるということはなく、あまり活動的でない生活を続けてきたまま高齢期に入った人でも、運動量を増やすことで多くのメリットを得られる」と話す。同氏によると、運動には体脂肪減少、血圧降下、炎症抑制などの作用があり、それらの恩恵を受けることができるか否かは、単に運動を始めるか否かの違いに過ぎないとのことだ。そして、「高強度でなくても構わないので、好きなレクリエーション活動を見つけてほしい。1日20分のウォーキングでも効果を期待できる」とアドバイスしている。

 この研究のためWatts氏らは、米国立衛生研究所と全米退職者協会が実施した、食事と健康に関する研究の参加者27万2,250人(平均年齢70.5±5.4歳、男性58%)のデータを解析に用いた。2004~2005年の参加登録から2019年末までの追跡期間中(12.4±3.9年)に、11万8,153人(43%)が死亡した。

 死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、飲酒・喫煙習慣、人種/民族、教育歴、婚姻状況、糖尿病・脳卒中・虚血性心疾患・がんなどの既往、および解析対象とするスポーツ以外での身体活動量など)を調整後、検討した全てのスポーツについて、それらを行っている人は死亡率が有意に低いことが示された。具体的には、ラケットスポーツでは16%低リスクであり〔ハザード比(HR)0.84(95%信頼区間0.75~0.93)、ランニングではHR0.85(同0.78~0.92)、ウォーキングHR0.91(0.89~0.93)、エアロビクス体操HR0.93(0.90~0.95)、ゴルフHR0.93(0.90~0.97)、水泳HR0.95(0.92~0.98)、サイクリングHR0.97(0.95~0.99)だった。

 また、死因別に見ると、スポーツの種類によりリスク低下度が異なることも分かった。例えば心血管死は、ラケットスポーツで27%〔HR0.73(0.59~0.89)〕、ウォーキングで11%〔HR0.89(0.86~0.92)〕低下していた。一方、がん死は、ランニングで19%〔HR0.81(0.69~0.95)〕、エアロビクス体操で9%〔HR0.91(0.86~0.97)〕、サイクリングで6%〔HR0.94(0.90~0.98)〕低下していた。

 米国成人向けの身体活動ガイドラインでは、週に2.5~5時間の中強度運動、または1.25~2.5時間の高強度運動を推奨している。今回の研究では、この推奨より多くの運動をした人では死亡リスクがより低いことが分かった。ただし、その上乗せのメリットは多くはなく、「運動量を増やしても、それ以上は健康への効果が増えにくくなるポイントがあるようだ」とWatts氏は話す。一方、ガイドラインの推奨を満たしていなくても、全く運動しない人に比べて何らかの運動をしていた人は、早期死亡リスクが5%ほど低いことも示された。

 この研究報告について、米サンドラ・アトラス・バス・ハート病院のBenjamin Hirsh氏は、「運動による心血管死リスクの抑制効果については多くの研究報告があるが、今回の研究によって、運動ががん死も含めた死亡リスクを抑制する可能性が示された。これらのエビデンスを得られた今、最大の問題は人々がいかに生活習慣を変更するかという点だ」と解説。また、「健康的な食事を取り、身体活動を増やすことが非常に重要だ。医師に課せられた最も困難な課題の一つは、患者の行動変容を起こすことであり、それは希少疾患の診断や治療よりも難しいことさえある」と述べている。

[2022年8月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら