糖尿病でCOVID-19後遺症リスクが4倍になる可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/18

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後にさまざまな症状が慢性的に続いている状態、いわゆる「long COVID」または「PASC(post-acute sequelae of COVID-19)」のリスクを、糖尿病が最大4倍程度押し上げる可能性が報告された。米エモリー大学のJessica Harding氏らが、米国糖尿病学会(ADA2022、6月3~7日、ニューオーリンズ)で6月5日に発表した。

 糖尿病がCOVID-19重症化(入院や死亡)の主要なリスク因子の一つであることは、パンデミックの初期から知られていた。ただし、COVID-19罹患者の多くを悩ませているlong COVIDと糖尿病との関連は明らかになっていない。Harding氏らは、これまでの報告を用いた探索的研究であるスコーピングレビューによって、この点を検討した。

 2020年1月1日~2022年1月27日に発表された、全文が公開されているlong COVID関連の英語論文を検索し、39件の個別研究が含まれている計7件のレビュー論文を抽出。全体として43%の研究が糖尿病をlong COVIDの強力なリスクファクターとして特定していた。それらの研究の大半で、非糖尿病群と比較したオッズ比が4以上を示していた。ただし、long COVIDの定義に含める症状や解析対象者(入院患者か非入院患者か)、および追跡期間(最短が4週間、最長が7カ月)による結果の差異も認められた。

 この結果からHarding氏は、「より多くのデータが必要だが、これまでの研究の多くが、糖尿病がlong COVIDのリスクファクターである可能性を示唆している。糖尿病のあるCOVID-19患者では、急性期以降のlong COVID発症に、より注意が必要ではないか」と述べている。

 なぜ糖尿病がlong COVIDリスクを高めるのかは明確でないが、多くのメカニズムが提唱されている。本研究には関与していない米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏は、「糖尿病は慢性炎症疾患という側面がある。従って糖尿病患者ではCOVID-19罹患に伴う炎症反応がより強く表れることが、long COVIDにつながる可能性がある」と解説。続けて、「ワクチン接種やマスクの着用などによるCOVID-19感染予防が、long COVIDに対する最大の予防策でもある」とアドバイスしている。

 ADAのMarlon Pragnell氏は、「糖尿病患者はパンデミック収束まで、普段に増して健康維持に努めるべき」と強調する。そして、「ワクチン接種が重要だ。接種後にもCOVID-19に罹患することがあるが、long COVIDのリスクは抑えられる」としている。

 米ヘンリーフォードヘルスのCOVID-19リカバリーケア部門のディレクターであるEunice Yu氏は、「われわれはまだlong COVIDの根底にあるメカニズム解明のための研究の途上にある」と述べる。その上で、「糖尿病患者がCOVID-19に罹患した場合、感染後2~3カ月間は血糖値を注意深くモニタリングすべきだ。なぜなら、long COVIDのために糖尿病が悪化する可能性があるからだ」と注意を促す。そして、「十分な休息、定期的な運動、体に良い食事を取ることが、健康状態の悪化予防になり、ウイルスの排除にもつながる」と助言を加えている。

 またYu氏は、「long COVIDに対する特効薬をわれわれはまだ手にしていない。しかし、long COVIDを患う人々の助けとなる手段はある」と語っている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2022年6月6日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら