小児肥満が1型糖尿病のリスクを押し上げる可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/06/21

 

 小児期の肥満が後年の1型糖尿病発症リスクを高める可能性を示唆する研究結果が報告された。英ブリストル大学のTom Richardson氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に4月28日掲載された。小児期の肥満は1型糖尿病以外にも、喘息など他の疾患のリスクも高めると考えられるという。

 肥満の子どもが2型糖尿病の発症リスクが高いことはよく知られている。2型糖尿病の発症リスクは、成長期前であれば体重が増えないようにすること、成長期以降であれば減量することによって抑制できる。それに対して、小児期の肥満と1型糖尿病との関連性はこれまでのところよく分かっていない。

 ただし、1型糖尿病の患者数は過去20年間で急増しており、その考えられる理由の一つとして、小児肥満の有病率の上昇が挙げられている。また、肥満につながる非健康的な食生活が腸内細菌叢のバランスを乱して免疫システムに影響を与えたり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを産生する膵臓のβ細胞の機能を損なう可能性が指摘されている。

 これらを背景としてRichardson氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」の45万4,023人と、1型糖尿病患者コホート研究1万5,573人のデータを用いて、メンデルランダム化(MR)解析という手法により、小児期の肥満と1型糖尿病発症リスクとの関連について検討した。

 MR解析とは、遺伝子多型を用いて対象をランダム化し、リスク因子への曝露とアウトカムの関連の因果効果を推論する手法のこと。コホート研究での多変量解析における交絡因子の調整では、未知の因子や未測定の因子を調整不能であり、結果に残余交絡の影響が生じている可能性を否定できないが、MR解析ではいくつかの前提条件を満たせば、そのような残余交絡が存在しても因果効果の推測が可能。

 検討の結果、小児期の肥満度が高いほど、後年の1型糖尿病のリスクが高まるという結果が得られた。また、喘息、甲状腺機能低下症、湿疹などの免疫システムが関係している他の疾患のリスクも上昇することが分かった。得られた結果を基に、小児の高度肥満の割合が15.9%から5.9%へと10ポイント低下すると仮定し推算すると、1型糖尿病の新規発症患者数が約22%減少すると予測された。

 1型糖尿病は発症後に生涯にわたる治療が必要な疾患であり、いまだ予防法は見つかっていない。Richardson氏はブリストル大学発のリリースの中で、「小児肥満が1型糖尿病のリスクを高め、それが近年の1型糖尿病患者数の増加に関与していると考えられる。本研究により、1型糖尿病罹患率を下げるために小児肥満の有病率を抑制するという、予防医療政策の重要性が浮き彫りになった」と述べている。

[2022年5月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら