静脈血栓塞栓症の治療に最適な治療薬とは?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/01/07

 

 静脈血栓塞栓症(VTE)の治療薬としては、アピキサバン(商品名エリキュース)とリバーロキサバン(商品名イグザレルト)がよく使われている。このほど、これらの2種類の抗凝固薬を突き合わせて比較した結果、アピキサバンは、有効性と安全性においてリバーロキサバンより優れていることが判明したとする研究結果が報告された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医学部のAdam Cuker氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に12月7日掲載された。

 VTEとは、手足の静脈に血栓ができて血管が詰まる深部静脈血栓症(DVT)と、その血栓が血流に乗って運ばれ肺の動脈に詰まる肺血栓塞栓症を合わせた総称である。肺血栓塞栓症では通常、呼吸困難や胸痛が生じ、場合によっては死に至ることもある。

 アピキサバンとリバーロキサバンはともに、ビタミンK拮抗薬の代わりにVTEの治療薬として広く使われている直接経口抗凝固薬(DOAC)である。しかし、両薬剤を突き合わせて比較した研究報告は限定的である。

 そこでCuker氏らは、2015年1月から2020年6月までの間の民間健康保険データベースから抽出した、アピキサバンまたはリバーロキサバンのいずれかを処方されたVTE患者(それぞれ1万8,618人ずつ)を対象に、両薬剤の安全性と有効性を比較する後ろ向きコホート研究を実施した。

 追跡期間中央値は、アピキサバン群で102日、リバーロキサバン群で105日であった。この間に、アピキサバン群では475人、リバーロキサバン群では595人がVTEを再発していた。また、消化管出血または脳出血のエピソードは、前者で386人、後者で577人に認められた。傾向スコアマッチングを用いた解析の結果、アピキサバン群ではリバーロキサバン群に比べて、VTE再発と出血のリスクがともに低いことが明らかになった(ハザード比はVTE再発で0.77、出血で0.60)。

 Cuker氏は、「われわれの研究により、有効性と安全性の点では、アピキサバンの方がリバーロキサバンよりも優れていることが示唆された。この結果について医師と話し合い、また、さまざまな治療選択肢の有効性と安全性に関するエビデンスを考慮した上で、抗凝固薬を選びたいと思う患者もいることだろう」と話す。

 この研究報告を受け、米ユタ大学医学部教授でありVTEと抗凝固薬の専門家であるScott Woller氏は、「この研究で、アピキサバン群とリバーロキサバン群との間に観察された差はわずかではあるが、両薬剤の他の条件が等しいのなら、この結果は、いずれかの薬剤を選択する医師の判断に影響を与えるだろう」との見方を示す。

 その一方でWoller氏は、この研究の限界についても言及している。例えば、この研究では、内出血のリスク増加に関わるアスピリンなどの他の薬剤の服用の有無について考慮されていない点である。また、医師は、内出血リスクとは直接関係しない理由、例えば患者の併存疾患や保険適用範囲の都合で、いずれか一方の薬剤を選んだ可能性もある。

 米レノックスヒル病院の循環器医であるAeshita Dwivedi氏によると、血栓予防の点では、アピキサバンとリバーロキサバンは従来のワルファリンよりも優れていることが、複数の研究で明らかにされている。しかし、こうした新しい抗凝固薬の安全性と有効性を直接比較した臨床試験は限定的にしか実施されていないのだという。同氏はこの点を踏まえた上で、「今回の研究は観察研究であるため、VTE治療の現状を変えることにはつながらないものの、新しい抗凝固薬の違いに光を当て、さらなる研究の必要性を浮き彫りにするものだ」と評価している。

[2021年12月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら