夜食が翌日の仕事のパフォーマンス低下を招く?

寝る前にスナックを食べて満足感を得るなどの行為が、翌日の仕事のパフォーマンスを低下させる可能性を示唆するデータが報告された。米ノースカロライナ州立大学心理学部のSeonghee Cho氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Applied Psychology」に3月25日掲載された。
この研究は米国内の企業に勤務する97人のフルタイム従業員に、前夜(夕食と就寝前)の食事内容と現在の体調に関する質問を、1日3回、連続10日間にわたって行うという手法で実施された。研究参加者本人が、前夜の食事の量が多すぎたと感じた場合や、就寝前にジャンクフードを多く食べた場合などを「不健康な食事をした」と判定。その判定結果と翌日の体調との関連を検討した。
検討の結果、不健康な食事をした日の翌朝に、身体的な問題があると回答する確率が高いことが明らかになった。身体的な問題とは、頭痛や腹痛、下痢などだ。さらに不健康な食事をした翌朝には、罪悪感などのマイナスの感情を抱きがちなことも分かった。
前夜の不健康な食事に関連するこれらの身体的な問題やマイナスの感情は、翌朝のみでなく、午後の仕事のパフォーマンス低下にもつながっていた。具体的には、他の従業員の仕事を助ける回数の減少や、仕事からの離脱行動の増加と関連することが明らかになった。
「睡眠不足や運動不足が仕事に及ぼす影響に関しては多くの研究が行われており、エビデンスも確立されてきている。それに対して、不健康な食事が仕事に及ぼす影響については、これまでほとんど研究されていなかった」と、Cho氏はこの研究の背景を語っている。同氏は、「不健康な食事は翌日の仕事に影響を及ぼすのか。もしそうであるなら、理由は何なのかを明らかにしたかった」と述べ、「特に後者について興味深い発見があった」としている。
前夜の食事によって翌日の仕事に影響が生じる理由をCho氏は、「深夜にジャンクフードを食べることが消化不良を招いたり、睡眠不足になることが翌日の仕事のパフォーマンスを低下させるという、分かりやすいメカニズムもある。しかしそれだけでなく、前夜の食事に関する『自己非難』も関与しているようだ。これらの関連を明確にする作業は簡単ではない」と述べている。
今回の検討では、感情が安定していてストレスを上手に対処できている人は、不健康な食事による仕事への悪影響が少ないことが分かった。そのような人は不健康な食事の翌日に身体的・感情的な問題を生じる頻度が低いだけでなく、仮にそのような問題が生じた場合でも、職場での行動がふだんと変わる確率が低かった。
一方、この研究には関与していない米ペンシルベニア大学ペレルマン医学部のColleen Tewksbury氏は、「深夜の間食そのものが本質的に悪いわけではない」と指摘する。米国の栄養と食事のアカデミーのスポークパーソンも務める同氏は、「重要なことは、なぜ夜間に食べるのか、夜間以外はどのような物を食べているのか、食事以外の生活習慣には問題がないのかといったことだ。今回の研究の新しい発見は、ストレスや感情的な変化、生活習慣、仕事のパフォーマンスなどの全てが、相互に影響し合っている可能性を示した点にある」としている。
深夜の間食自体は悪くないというTewksbury氏の意見にはCho氏も同意し、「今回の研究のポイントは、夜間の不健康な食事を取る人の罪悪感をさらに強めることではない」と述べている。ただし、「食べ物と感情の関係を常に認識している人ばかりではないので、両者に関連があるという知識を持っていることは良いことだ」とし、「もし、仕事中に調子が悪くなることがある場合、前夜の食事を思い出してみることが、翌日からの体調管理に役立つかもしれない」と付け加えている。
[2021年4月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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