脳血管周囲の隙間で認知症の発症を予測?

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/03/05

 

 脳画像検査で脳内の血管の周囲に大きな隙間が多数認められた場合、それは認知症発症の前触れかもしれないことを示唆する研究結果が明らかになった。血管周囲腔と呼ばれる、液体のたまった血管周囲の隙間は、脳から老廃物や毒素を除去するのに役立っているが、今回の研究では、血管周囲腔の拡大が脳の老化に関連している可能性が示されたという。ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のMatthew Paradise氏らが実施したこの研究の詳細は、「Neurology」に1月27日発表された。

 今回の研究では、414人の高齢者(72〜92歳、平均年齢は80歳)を対象に、研究開始時から最長8年まで2年ごとに、思考力や記憶力の検査を実施するとともに、認知症の有無の評価を行った。また、脳の2つの重要な領域(大脳基底核と半卵円中心)における血管周囲腔拡大の有無を調べるための三次元MRI検査も2年ごとに実施した。

 研究参加者のうち97人(24%)が研究期間中に認知症を発症した。2つの脳領域のいずれでも重度の血管周囲腔拡大が認められた31人のうち、12人(39%)が認知症を発症した。これらの対象者では、軽度の血管周囲腔拡大がある人や血管周囲腔拡大がなかった人と比べて、4年後の全般的な認知機能スコアの低下度が大きかった。また、MRI検査で見つかった血管周囲腔拡大の数が上位25%に入る重度の血管周囲腔拡大のある対象者では、血管周囲腔拡大の数がそれよりも少ないか全くない対象者と比べて、研究期間を通した認知症の発症リスクが約3倍であることが明らかになった。これらの結果は、認知機能検査のスコアや認知症の発症に影響する可能性のある年齢や高血圧、糖尿病などの要因や、脳小血管病の神経画像マーカーを考慮した解析でも変わらなかったという。

 こうした結果を受けてParadise氏は、「MRIで血管周囲腔拡大が見つかるのは珍しいことではなく、特に高齢者では高頻度に見られる。しかし血管周囲腔拡大は、よくあることとして軽視すべきではなく、むしろ、深刻に捉えるべきだ。その重症度の評価が認知症診断の助けになるとともに、認知機能の低下が起こっている人が今後たどる経過の予測にも役立つ可能性がある」と話す。

 ただし、この研究では血管周囲腔拡大が原因で思考力や記憶力の低下が起こることが示されたわけではなく、両者の関連が認められたに過ぎないという。そのことを踏まえた上でParadise氏は、「血管周囲腔拡大が認知症の進行プロセスのマーカーとなる可能性はあるが、必ずしもその要因となるものではない。血管周囲腔拡大のメカニズムは複雑であり、今後の検討課題である」としている。

 一方、米ガイシンガー・スペシャリティ・クリニックの神経科医のGlenn Finney氏も、Paradise氏と同様に、「血管周囲腔拡大と認知症の関係は複雑である」と指摘する。同氏は、「血管の周囲に隙間があるのは自然なことであり、通常、こうした隙間は非常に狭いものなので、脳画像検査でも特に注意して見ることはない。人によっては拡大した血管周囲腔がいくつか認められる場合もあるが、それでも正常だと判断される」と説明。その上で、「だが、血管周囲腔拡大が多数認められた場合には、脳の健康状態に何らかの問題が生じている可能性を疑うべきだ」としている。また、Finney氏は、「血管周囲腔拡大が診断のツールになると考えてはいないが、認知症リスクのマーカーにはなり得るのではないか」との見方を示している。

 この研究報告を受けて、米アルツハイマー病協会のRebecca Edelmayer氏は、「血管周囲腔拡大によって認知症を診断できる可能性はあるが、その実現には、さらなる研究が必要だ」との見解を述べている。

[2021年1月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら