なぜ高齢者はCOVID-19が重症化しやすいのか

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/10/22

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した高齢者では、重要な免疫細胞の値が低いことが、新たな研究で示された。これにより、COVID-19の重症例や死亡例が若年患者よりも高齢患者で多い理由を説明できる可能性があるという。この研究論文の上席著者である、エッセン大学病院(ドイツ)のGennadiy Zelinskyy氏は、「高齢者は若い人に比べて症状が重い。われわれは、免疫細胞の持つ細胞傷害作用が、高齢者では効率的に新型コロナウイルスに反応しないことを突き止めた」と述べている。詳細は、「mBio」9月18日オンライン版に掲載された。

 この研究で対象とされたのは、20代半ばから90代後半のCOVID-19の軽症患者30人。Zelinskyy氏らはこれらの患者から血液を採取し、そこに含まれるT細胞による免疫応答について分析した。T細胞は免疫系で司令塔の役割を果たす細胞である。

 その結果、健康な人に比べて、COVID-19患者では、血液中のT細胞の数が少ないことが明らかになった。体内にウイルスが侵入すると、たいていの場合、T細胞による免疫応答が惹起される。ウイルス感染細胞の破壊に重要な役割を果たすキラーT細胞(細胞傷害性T細胞、CD8陽性T細胞とも呼ばれる)の活性化もそうした免疫応答の一つだ。キラーT細胞は、細胞傷害性タンパク質を分泌して、体内のウイルス感染細胞を破壊する。Zelinskyy氏は、「免疫系において、こうしたウイルス感染細胞を破壊してくれるT細胞の産生が少ない場合、新型コロナウイルスとの闘いに打ち勝つ見込みは薄くなるだろう」と話している。

 また、キラーT細胞の産生数は、年齢を追うごとに減少することも分かった。とりわけ、80歳を超えた患者では、若年患者に比べて、キラーT細胞数の減少の幅が有意に大きかった。さらに、80~96歳の高齢患者のキラーT細胞では、細胞傷害性タンパク質の分泌量が少ないことも判明した。

 Zelinskyy氏らは、「このような年齢による免疫応答の差によって、高齢のCOVID-19患者が重症化しやすい理由を部分的に説明できる可能性がある」と述べている。

 今回の研究で得られた知見から、細胞傷害性T細胞は、初期段階でのウイルス感染の制御において重要な役割を担っていることが示唆される。しかし、Zelinskyy氏は、「このような細胞を用いて新型コロナウイルスに対する免疫療法を開発できるかどうかは、まだ判断できない」としている。そして、「新型コロナウイルスやその他のウイルスを制御する方法として、T細胞を用いた場合のリスクとベネフィットを明らかにするには、さらに研究を重ねる必要がある」と結論付けている。

[2020年9月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら