多くの高齢者が「エイジズム」に直面している

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/08/10

 

 高齢であることに対する固定観念や、それに基づく周囲の差別などのことを「エイジズム(ageism)」と呼び、年齢を理由とした降格や退職などがそれに該当する。そのような明らかなエイジズムは、高齢者の健康を損なうきっかけになる可能性がある。しかし、それほど深刻ではない、例えば、高齢だからテクノロジーに弱いと決めつけたりする行為や、メディアを通じて次々に流れてくるしわ取り製品の広告などの、より目立たないかたちでのエイジズムの影響は無視してよいのだろうか。

 米ミシガン大学社会調査研究所のJulie Ober Allen氏らが実施した「健康な老化に関する全国世論調査」から、ほとんどの高齢者が少なくとも1回は、こうした日常生活でのエイジズム(everyday ageism)に遭遇した経験があり、その経験が多いほど健康や幸福感に影響が及ぶ可能性があることが示唆された。同氏は「この調査で、日常生活でのエイジズムが健康上の問題の原因であるとする確定的な証拠が得られたわけではない。ただ、両者の関連は一貫して認められたことから、全く関係がないわけではないと思われる」と語っている。

 この調査は、全米各地の50~80歳の成人2,048人を対象に実施され、年齢差別的な言動や人付き合いの中でのエイジズムに遭遇した経験、加齢および高齢者であることに対する考えについて尋ねた。

 その結果、10人中8人以上が日常生活で何らかのかたちのエイジズムに遭遇した経験が1回以上あると回答。具体的には、聴力や視力の衰えについて何かを言われた、あるいは自分でできることでも周囲の助けが必要だと決めつけられたといった経験のあることが分かった。また、年齢を重ねることは魅力に欠け、望ましくないことである、あるいは嘲笑すべきことであるとの印象を与える、年齢差別的な表現を目にした経験がある人の割合も、65%と高かった。

 さらに約半数は他者との交流の中で、日常的にエイジズムに遭っていると回答した。具体的には、テクノロジーに弱いと決めつけられたり、記憶力が弱いとの思い込みを持たれたりすることである。

 「高齢者の多くは『歳を取れば誰でも孤独になるものであり、抑うつや不安になることは避けられない』と考えている」とAllen氏は言う。ただ、問題はそればかりでなく、日常生活でエイジズムに遭遇した経験のある高齢者は、実際に身体的あるいは精神的な健康状態が良くない傾向にあることが浮き彫りになった。

 例えば、全般的な身体の健康状態が「極めて良い」または「かなり良い」と回答した人の割合を見ると、エイジズムに遭遇した経験が少ない人では49%であったのに対し、何らかのかたちでエイジズムに遭遇した経験がある人では34%と低かった。また、糖尿病や心疾患といった慢性疾患の有病率は、エイジズムの遭遇経験が少ない人では60%であったのに対し、遭遇経験が多い人では71%に上った。

 一方、明るい結果も得られた。ほとんどの高齢者が年齢を重ねることをポジティブに捉えていることが示唆されたのだ。例えば、10人中9人近くが自分自身に満足していると回答し、80%が強い目的意識を持っていると回答した。50歳以降の人生は予想以上に良いものだと回答した人の割合も3分の2を占めていた。そして、このように回答した人たちでは、健康状態が良好な傾向が認められた。

 これらの結果を踏まえAllen氏は、エイジズムの潜在的なリスクや、加齢をポジティブに捉えることの健康上のメリットについて認識を高めることで、年齢を重ねることに対する文化的な捉え方が変化する可能性があるとの見解を示している。

[2020年7月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら