内臓脂肪が招くのは慢性疾患だけでない-急性膵炎から多臓器不全に

提供元:HealthDay News

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公開日:2020/04/17

 

 肥満は2型糖尿病などの慢性疾患だけではなく、腹痛を来す急性膵炎とも関係があり、時に全身の多臓器不全を引き起こす可能性もあることが、米メイヨークリニックの消化器専門医であるVijay Singh氏らによる研究から示された。詳細は「Journal of Clinical Investigation」1月9日オンライン版に報告された。

 論文の上席著者であるSingh氏は、「突然発症する急性膵炎では内臓脂肪が急速に分解されるが、同じく急性発症する憩室炎ではそれが生じない。そのような違いが生じる理由が分かった」と述べている。同氏はまた、内臓脂肪の過剰な蓄積は急性膵炎を重症化させ、多臓器不全といった深刻な状態へと悪化させる可能性も指摘し、肥満は糖尿病などの慢性疾患だけでなく急性疾患の発症リスクも高めると警告している。

 同氏らは、急性憩室炎と急性膵炎はともに内臓脂肪が関与することがあり、同じような背景因子を持つ群に好発するにも関わらず、前者は外来での治療も可能であるのに対し、後者は入院が必要であり多臓器不全に進行するリスクもあることに着目。そのメカニズムの相違を明らかにするための研究を行った。

 マウスおよびヒトを対象とする病理組織学的検討によって、膵液の成分の1つで脂肪分解に関わる「pancreatic triglyceride lipase;PNLIP(膵臓トリグリセライドリパーゼ)」という酵素の作用がポイントであることを見いだした。PNLIPは脂肪酸の産生を促進し、循環器や腎臓、肺などの重要な臓器の機能不全を引き起こすという。

 より詳しくは、急性膵炎が起きると損傷した膵臓からPNLIPが漏れ出し、内臓脂肪組織を分解して「non-esterified fatty acid;NEFA(非エステル化脂肪酸)」が産生される。このNEFAが炎症とサイトカインの増加を引き起こして、膵臓内で起きる現象とは独立したメカニズムを介して多臓器不全を起こしたり、生存率を低下させたりする可能性が明らかになった。

 また今回の研究で示されたもう1つの重要な点としてSingh氏は、米食品医薬品局(FDA)が安全性を認め摂取を推奨しているオレイン酸などの不飽和脂肪酸も、多臓器不全のリスク上昇につながる可能性が示されたことを挙げている。

 同氏は、「今回の知見により、急性膵炎の新たな治療標的と、多臓器不全を防ぐための扉が開かれた。PNLIPの作用を阻害することで、重篤な膵炎を予防し、入院の長期化を回避し、救命率を向上させることができるかもしれない」と述べている。

[2020年3月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら