ステロイド関節内注射の安全性を否定、米研究

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HealthDay News

ステロイド関節内注射の安全性を否定、米研究のイメージ

 関節の痛みを緩和するには、ステロイドの関節内注射が行われることが多い。しかし、米ボストン大学医学部教授でVAボストン・ヘルスケア・システム放射線科科長のAli Guermazi氏らの研究から、関節内ステロイド注射はこれまで考えられていたよりも合併症リスクが高く、安全性に疑問がある可能性が示された。詳細は「Radiology」10月15日オンライン版に発表された。

 Guermazi氏らは今回、2018年に、自施設で変形性股関節症または変形性膝関節症の治療として実施された計459回のステロイド関節内注射の安全性について調べた。なお、患者の年齢は37~79歳(平均年齢57歳)で、計1~3回の関節内ステロイド注射(平均1.4回)を受けていた。

 その結果、36人の患者で36件の合併症が起こり、注射全体の8%に当たることが分かった。26件(6%)は関節炎が急速に進行し、このうち3件は骨量の減少を含む関節破壊で、4件は疲労骨折(骨折部位は全例が股関節)、3件は骨壊死であった。ステロイド注射からこれらの合併症がみられるまでの平均期間は7カ月だった。

 Guermazi氏によれば、これまで医師は患者に対して「関節内ステロイド注射は関節炎の痛みを緩和しない可能性があるが、有害な影響もないだろう」と説明してきた。しかし、今回の研究結果を踏まえると、今までそのリスクは軽視されてきたといえるという。

 ただし、関節内ステロイド注射の危険性を示した研究報告はこれが初めてではない。2017年には、変形性膝関節症患者を対象に2年間にわたってステロイドまたは生理食塩水を注射し続けた臨床試験の結果が「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に発表されたが、ステロイド注射による疼痛緩和効果はみられず、軟骨破壊がより早く進行したことが分かった。

 変形性関節症は、関節の骨の間でクッションの役割を果たす軟骨が徐々にすり減って劣化し、炎症や痛み、こわばりが生じる疾患だ。最終的には骨と骨が摩擦を起こすようになり、さらに関節の損傷が進む。根治療法はなく、治療の中心は減量や運動、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などによる対症療法で、炎症を抑えるステロイド薬の注射も治療選択肢の一つとして位置付けられている。

 専門家の一人で米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのNatalie Azar氏は「今回の研究は臨床試験ではないため、観察された合併症が確実にステロイド薬に起因したものだと断定することはできない」と指摘する。しかし、Guermazi氏は、2017年に「JAMA」誌に発表された臨床試験の結果と通じているだけでなく、さらに深刻なリスクがあることを示していると説明している。

 また、Azar氏はこの報告を踏まえ、「変形性関節症は半月板損傷などでも痛みが悪化するため、ステロイド注射を始める前に画像検査で痛みの原因を突き止める方がよい」と助言している。さらに、同氏とGuermazi氏は、ステロイド注射以外の治療選択肢についても検討すべき点で意見が一致しており、Azar氏は「減量や理学療法の重要性を軽視してはならない」と強調している。

 一方、別の専門家は、炎症がみられる患者、特にNSAIDの経口薬が効かなかった患者や人工関節置換術が適応ではない患者に対してはステロイド注射が妥当な選択肢となるとしている。

[2019年10月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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