体重が減ってもすぐに戻るのは“抗飢餓メカニズム”のせい?

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HealthDay News

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 健康的な体重を維持することは容易でない。せっかく減量に成功しても、すぐにリバウンドしてしまいがちだ。あたかも体そのものが肥満になることを欲しているかのように思える。なぜだろうか?米ニューヨーク大学医学部のAnn Marie Schmidt氏らの研究から、その答えは、ヒトの進化の過程で構築された、体に脂肪を蓄積する“抗飢餓メカニズム”にある可能性が示された。詳細は「Cell Reports」7月16日オンライン版に掲載された。

 この抗飢餓メカニズムの鍵を握るのは、終末糖化産物(AGE)の受容体「RAGE」と称されるタンパク質だ。Schmidt氏らによると、RAGEは恐らく飢餓や気温の変動に対する防御のため、環境に適応し熱発生を抑制する機能として進化してきたと考えられるという。しかし、飽食の時代にある今日、このメカニズムに支障が生じ始めている。

 過食により引き起こされる細胞ストレスに対処するためにRAGEが産生されるのだが、その産生されたRAGEは細胞ストレスを、かつてヒトが苦しめられた飢餓と誤認し、体が脂肪を燃焼するスイッチを切ってしまう。その結果、脂肪が容易に蓄積されていき肥満が助長され、いったん蓄積された脂肪を減らすことが困難になる――。

 このメカニズムから考えると、仮にRAGEの働きを抑制することができれば肥満の解消につながる可能性がある。Schmidt氏も「RAGEは治療や予防のターゲットに成り得ると考えている」と述べ、根拠として「RAGEを発現しない遺伝子ノックアウトマウスに高脂肪食を与えて飼育したところ、マウスはその餌を食べ続けても肥満にならなかった」と説明している。

 一方、RAGEの機能を抑制することによる安全性が危惧される。しかしその点についても同氏は「マウスのRAGEを完全に取り除いたところ、正常な生殖能力が保たれており、認知機能にも問題がなかった」と述べている。同氏らの推察によると、RAGEは常に機能しているのではなく、代謝ストレスが生じるときにだけ活性化すると考えられることから、取り除いても問題は生じないという。

 RAGEは脂肪燃焼機能を抑制するだけではなく、全身の炎症に関与している可能性もある。よってRAGEを阻害することで肥満を抑えるだけでなく、肥満によって引き起こされる糖尿病やがん、動脈硬化、アルツハイマー病など、炎症が関与する病態の改善に役立つ可能性も秘めている。

 ただし、RAGE阻害薬に過大な期待を寄せるのは時期尚早だ。同氏は、「現在はマウスを対象に研究を進めている段階であり、この段階からの薬剤開発には長い道のりがある」と注記している。動物実験で得られた知見がヒトに当てはまらないことも珍しくない。それでも、同氏は「将来性はある」と展望している。

 一方、米デトロイト医療センター・ハーパー大学病院における減量手術の医療責任者のMichael Wood氏は、「興味深い知見だが、肥満は非常に複雑であり、この捉え方は問題を単純化しすぎている」と指摘する。RAGEは肥満の進展に関わる唯一の因子ではなく、肥満の解消には生活習慣の見直しが不可欠であり、「肥満の特効薬は存在しない」と述べている。

[2019年7月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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