大気汚染による死者数減でも脅威は続く、米研究

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 米国では過去10年間に大気汚染が大幅に改善し、大気汚染による死者数も大きく減少したことが、米ニューヨーク大学公衆衛生・環境医学准教授のKevin Cromar氏らの研究から明らかになった。一方、同氏らは、このような死者数の減少には既に鈍化がみられており、昨今の気候変動とトランプ政権下での環境規制の緩和により、死者数が再び増えることが懸念されるとしている。この研究結果は、米国胸部学会(ATS 2019、5月17~22日、米ダラス)で発表され、論文は「Annals of the American Thoracic Society」5月22日オンライン版に掲載された。

 今回の研究では、米国環境保護庁(EPA)の環境データベースを用い、500以上の郡から粒子状物質汚染に関するデータを、700以上の郡からオゾンに関するデータを収集し、大気汚染による健康への影響を推定した。

 その結果、年間の大気汚染による死者数は、2010年の1万2,600人から2017年には7,140人へと約43%減少したことが分かった。一方、汚染の主な原因である煤煙(石油や石炭などの不完全燃焼で生じたすすや煙を指す)とオゾンでは異なる結果が得られた。大気中の煤煙やPM2.5(微粒子状物質)汚染による死者数は、2010年から2017年にかけて8,330人から3,260人へと約60%減少したのに対し、オゾン汚染による死者数は4,270人から3,880人とほぼ横ばいで推移していた。

 Cromar氏によると、粒子状物質は発生源が明らかであるため、排出量は比較的容易にコントロールできる。一方、オゾンは、工場や自動車から排出されるガス中の窒素酸化物や炭化水素と強い紫外線が光化学反応を起こして発生するため、対策を講じるのは難しいという。

 専門家らは、残念ながら、気候変動による気温や天候の変化により大気環境はさらに悪化する可能性が高いとしている。この研究には関与していない米国肺協会(ALA)のDavid Hill氏は「高温と乾燥による山火事の増加で、西海岸をはじめとする一部の地域では粒子状物質による汚染が拡大しており、オゾンレベルも増加している可能性が高い」と述べている。また、CromarとHillの両氏は「現政権下で自動車や発電所からの排出規制が緩和されたことも、状況の悪化に拍車をかけている」と指摘している。

 さらに、両氏によれば、仮に汚染レベルが現状維持できたとしても、人口増加に伴って多くの人が大気汚染に曝され続けるため、結果的に死亡者数は増えると考えられるという。そのため、「今後も環境改善に努めなければならない」と両氏はともに強調している。なお、EPAは先ごろ、オゾンの大気環境基準を満たしていない州が多いと発表し、今後3年間で改善がみられない場合には基準達成に向けた計画を作成するよう求めている。

[2019年5月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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