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レビー小体型認知症に対するドネペジルの有用性~国内第IV相試験

 ドネペジルは日本において、レビー小体型認知症(DLB)に対する治療薬として承認された。大阪大学の森 悦朗氏らは、DLBに対するドネペジルの有効性を評価するため、12週間の二重盲検期間における全体的な臨床症状に焦点を当てた第IV相試験の結果を報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2024年3月4日号の報告。 DLBが疑われる患者をプラセボ群(79例)またはドネペジル10mg群(81例)にランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、臨床面接による認知症変化印象尺度-介護者入力(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC-plus)を用いて評価した全体的な臨床症状の変化とした。また、CIBIC-plusの4つの領域(全身状態、認知機能、行動、日常生活活動)およびミニメンタルステート検査(MMSE)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)で測定した認知機能障害と行動および精神神経症状の変化も評価した。 主な結果は以下のとおり。・ドネペジルの優位性は、全体的な臨床状態では示されなかったが、認知領域では有意な好ましい効果が認められた(p=0.006)。・事後分析で調整後のMMSEスコアは、ドネペジル群で改善が認められた(MMSE平均差:1.4、95%信頼区間[CI]:0.42~2.30、p=0.004)。・NPIの改善は、両群間で同様であった(NPI-2:-0.2、95%CI:-1.48~1.01、p=0.710、NPI-10:0.1、95%CI:-3.28~3.55、p=0.937)。 著者らは「DLB患者に対するドネペジル10mgによる治療は、認知機能改善において臨床的に意味のある有効性が観察された。全体的な臨床症状の評価は、本研究に登録された軽度~中等度のDLB患者により影響を受ける可能性がある。また、新たな安全性の懸念は認められなかった」としている。

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新型コロナが世界の死因の第2位に(GBD 2021)/Lancet

 米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏らGBD 2021 Causes of Death Collaboratorsは、「世界疾病負担研究(GBD)」の最新の成果としてGBD 2021の解析結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、長期にわたる平均余命の改善や多くの主要な死因による死亡の減少が妨げられ、このような悪影響が地域によって不均一に広がった一方、COVID-19の流行にもかかわらず、いくつかの重要な死因の減少には継続的な進展がみられ、世界的な平均余命の改善につながったことが明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年4月3日号に掲載された。1990~2021年の世界の原因別死亡率、YLLを評価 本研究では、1990~2021年の204の国と地域、および各国の811の地方(郡、州など)における288の死因による死亡率と損失生存年数(YLL)を、年齢、性、場所、年ごとに評価した(米国・ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。 解析には、人口動態登録や口頭剖検のほか、国勢調査やサーベイランス、がん登録など、5万6,604件のデータソースを用いた。平均余命や高死亡率の地理的な集中の解析も行った。COVID-19が2021年の死因の第2位に 2019年の世界の主要な年齢調整死因は1990年と同じであり、第1位が虚血性心疾患、次いで脳卒中、慢性閉塞性肺疾患、下気道感染症の順であった。これに対し2021年には、COVID-19(年齢調整死亡率:人口10万人当たり94.0人[95%不確定区間[UI]:89.2~100.0])が脳卒中に代わって第2位となり、脳卒中は第3位、慢性閉塞性肺疾患は第4位であった。 2021年にCOVID-19による年齢調整死亡率が最も高かった地域は、サハラ以南のアフリカ(10万人当たり271.0人[95%UI:250.1~290.7])と中南米・カリブ海諸国(195.4人[182.1~211.4])であった。 一方、2021年のCOVID-19による年齢調整死亡率が最も低かったのは、高所得地域(10万人当たり48.1人[95%UI:47.4~48.8])と東南アジア・東アジア・オセアニア(23.2人[16.3~37.2])であった。2019~21年に平均余命が1.6年短縮 世界の平均余命は、解析した22の死因のうち18について、1990~2019年の間に着実に改善した。この改善に最も寄与したのは腸管感染症による死亡数の減少で、平均余命が1.1年延長した。次いで下気道感染症で0.9年、脳卒中で0.8年、その他の感染性疾患、虚血性心疾患、新生物、新生児疾患でそれぞれ0.6年の延長が得られた。 一方、2019~21年の間に世界の平均余命は1.6年短縮したが、これは主にCOVID-19やその他の世界的流行に関連した死亡による死亡率の増加に起因するものであった。 また、平均余命の変動は地域によって大きく異なり、東南アジア・東アジア・オセアニアは全体で8.3年(95%UI:6.7~9.9)延長し、COVID-19による平均余命の短縮が最も小さかった(0.4年)。COVID-19により平均余命が最も短縮したのは中南米・カリブ海諸国だった(3.6年)。 さらに2021年の時点で、288の死因のうち53が世界人口の50%未満の地域に高度に集中しており、同様のパターンを示した死因が44だけであった1990年以降、これらの死因は徐々に地理的に集中するようになっていた。この集中現象は、腸管感染症、下気道感染症、マラリア、HIV/AIDS、新生児疾患、結核、麻疹について指摘されている。 著者は、「高死亡率の地理的な集中のパターンを調査することで、公衆衛生上の介入が成功した地域が明らかになり、このような成功例を特定の死因が強く残存する地域に適用することで、あらゆる地域の人々の平均余命を改善するための施策の立案に資する可能性がある」とし、「GBD 2021における死因推定の包括的な性質は、死亡率の改善と悪化から学ぶ貴重な機会を提供し、死亡率減少の進展を加速させる一助となるであろう」と述べている。

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2型糖尿病患者に対する肥満外科手術bariatric surgeryの長期有効性が示された(解説:住谷哲氏)

 2型糖尿病の寛解diabetes remissionは、これまで夢物語であったが、近年は現実のものとなっている。寛解の定義は疾患により異なるが、2型糖尿病においては血糖降下薬を使用せずにHbA1c<6.5%が3ヵ月以上維持できた状態を寛解と定義している1)。契機となったのはDiRECT(Diabetes Remission Clinical Trial)研究で、15kg以上の減量により肥満2型糖尿病患者の86%が寛解したと報告されたことである2)。この報告はかなりの衝撃であり、付属論評のタイトルも”Remission of type 2 diabetes: mission not impossible”であった3)。 DiRECT研究は、超低カロリー食very low calorie diet VLCDを基本とした生活習慣改善プログラムを使用していた。カロリー制限が減量において最重要であるのは当然であるが、現実的にはなかなか難しい。そこで従来から減量目的で実施されていたのが肥満外科手術bariatric surgeryである。2型糖尿病患者における肥満外科手術の有効性を検討したRCTは複数あるが、すべて単施設からの報告であり、症例数、観察期間も限られていた。そこで本研究グループは、Alliance of Randomized Trials of Medicine versus Metabolic Surgery in Type 2 Diabetes (ARMMS-T2D) consortiumを立ち上げ、統合解析を実施した。追跡開始3年後の解析結果は、すでに報告されており4)、本論文はその7年または12年後の追跡結果である。主要評価項目であるベースラインからのHbA1cの変化量は薬物療法・生活習慣改善群に比較して肥満外科手術群で有意に大であった。さらに副次評価項目である2型糖尿病の寛解率も、薬物療法・生活習慣改善群vs.肥満外科手術群で、7年後で6.2% vs.18.2%(p=0.02)、12年後で0.0% vs.12.7%(p<0.001)であり肥満外科手術群で有意に大であった。 本統合解析に含まれた4つのRCTが実施されたのは2007年から2013年にかけてであり、当時はGLP-1受容体作動薬のセマグルチドもチルゼパチドも市場に登場していなかった。両薬剤の体重減少効果は肥満外科手術に匹敵するものがあり、仮りに同様のRCTを現時点で実施すれば結果は異なったかもしれない。しかし両薬剤共に薬剤中止後ほぼ1年で体重が元に戻ることが明らかにされており5,6)、体重減少を維持するためには継続使用が必要である。一部の患者ではあるが、肥満外科手術後10年以上にわたり2型糖尿病の寛解が維持できることが示されたのは大きな一歩といえるだろう。■参考文献1)Riddle MC, et al. Diabetes Care. 2021;44:2438-2444.2)Lean ME, et al. Lancet. 2018;391:541-551.3)Uusitupa M. Lancet. 2018;391:515-516.4)Kirwan JP, et al. Diabetes Care. 2022;45:1574-1583.5)Rubino D, et al. JAMA. 2021;325:1414-1425.6)Aronne LJ, et al. JAMA. 2024;331:38-48.

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dementia(認知症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第3回

言葉の由来認知症は英語で“dementia”といいますが、この言葉は“de-ment-ia”と3つの部分に分解していくと言葉の由来が見えやすくなります。まず、“de”という接頭辞はほかの医学用語でもよく見かけるものかもしれません。たとえば、「処方する」を“prescribe”というのに対し、「脱処方する(減薬する)」を“deprescribe”といったりします。このように、“de”という接頭辞には、“away from”または“out of”(~から脱する、離れる)という意味があります。では、この“dementia”では「何から脱するか」といえば、後ろの“ment”の部分ということになります。“ment”はラテン語のmenteまたはmensに由来しているとされ、“mental”などの言葉からも想像できるかもしれませんが、「心、精神、知」というような意味があります。なお、最後の“ia”は病名などを表す際によく用いられる接尾辞で、これ自体には意味を持ちません。これらを合わせると、認知症の英名“dementia”は“out of mind”(心、知能が離れてしまった)という意味を持つ言葉のようです。今でこそ“dementia”は、医学界では「認知症」の意味で定着していますし、病気への理解が進んで「心が離れてしまった」状態ではないこともよく理解されていますが、そのような語源が一般市民レベルでの先入観や偏見につながっていることもたびたび指摘されています。このため、病気への偏見をなくすために、病名自体を“cognitive impairment”(認知機能障害)に置き換えるべきだ、と指摘する専門家もいます。併せて覚えよう! 周辺単語軽度認知障害mild cognitive impairmentせん妄delirium遂行機能executive function海馬の萎縮hippocampal atrophy行動障害behavioral disturbanceこの病気、英語で説明できますか?Dementia is a general term for the impaired ability to remember, think, or make decisions, which interferes with doing everyday activities. Alzheimer’s disease is the most common type of dementia. 講師紹介

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早期アルツハイマー病に対するレカネマブの費用対効果

 2023年1月、米国FDAより軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病による軽度認知症に対する治療薬としてモノクローナル抗体レカネマブが承認された。しかし、認知症に対するレカネマブの費用対効果は、不明なままである。カナダ・Memorial University of NewfoundlandのHai V. Nguyen氏らは、レカネマブの費用対効果およびアルツハイマー病の検査制度とAPOE ε4の状況によりどのように変化するかを定量化するため、本研究を実施した。Neurology誌2024年4月9日号の報告。 検査アプローチ(PET、CSF、血漿アッセイ)、治療法の選択(標準的治療、レカネマブ併用)、ターゲティング戦略(APOE ε4非キャリアまたはヘテロ接合性患者を特定するか否か)の組み合わせにより定義した7つの診断治療戦略について比較した。有効性は、クオリティ調整された生存年数により測定し、第3者および社会の観点から生涯期間にわたるコスト(2022年米国ドル)を推定した。次の5つの状態でhybrid decision tree-Markov cohort modelを構成した。(1)MCI(臨床的認知症重症度判定尺度[Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB]スコア:0~4.5)、(2)軽度認知症(CDR-SBスコア:4.6~9.5)、(3)中等度認知症(CDR-SBスコア:9.6~16)、(4)高度認知症(CDR-SBスコア:16超)、(5)死亡。 主な結果は以下のとおり。・7つの診断治療戦略のうち、費用対効果の観点では標準的治療が最適な治療戦略であった。・レカネマブ治療、APOE ε4遺伝子型の有無にかかわらずその治療は、早期アルツハイマー病の診断に使用される検査とは無関係に、標準的治療と比較し、費用対効果が高かった。・しかし、レカネマブの薬剤費が年間5,100米国ドル未満であれば、CSF検査とその後の標準的治療の費用対効果が高くなった。・これらの結果は、診断検査の精度、レカネマブの中止および有害事象の発生率に対しロバストであった。 著者らは「レカネマブ治療、ε4遺伝子型の有無にかかわらない治療は、MCIまたはアルツハイマー病による軽度認知症の患者にとって、標準的治療と比較し、費用対効果が優れているとはいえなかった。レカネマブの価格が年間5,100米国ドル未満となれば、状況により費用対効果が高くなるであろう」としている。

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聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科【大学医局紹介~がん診療編】

津川 浩一郎 氏(主任教授)黒田 貴子 氏(助教/主任医長)在原 卓 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴教室の担当分野は乳腺疾患と甲状腺・副甲状腺疾患であり、「患者さん一人ひとりに寄り添い、専門性の高い『愛ある医療』を提供します」をモットーとしています。乳腺外科分野では早期から進行乳がんにおける、診断・治療(手術および薬物療法)・緩和ケアを行い、文字どおり検診からターミナルケアまで、乳がん診療のすべてを担っています。また、内分泌外科分野では大学病院内分泌疾患センターに協力し代謝・内分泌内科と連携のもと、甲状腺・副甲状腺疾患の外科治療を担当しています。大学病院における初発乳がん手術症例数は年間約750例、甲状腺・副甲状腺疾患は約80例です。乳がん手術件数としては全国3~5位、大学病院として1位です。特色は各科・各部門と協力連携した専門性の高い医療の実践です。形成外科との乳房再建(人工物および自家組織)、遺伝診療部とのHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)診療(予防的対側乳房切除を含む)、ゲノム医療推進センターとのがんゲノム医療(がん遺伝子パネル検査)、産科婦人科がん生殖医療チームとの妊孕性温存治療、緩和医療学講座とのACP(Advance Care Planning)の導入など多岐に渡ります。医師の育成方針当科は外科専門科の1つとして、手術技術を中心とした専門家を育成すること、そして集学的医療チームの中心となれる人材の育成を基本方針としています。個々のライフステージおよびキャリアプランに応じて、専門医の取得や研究・学位取得ができるよう、きめ細かく指導を行っています。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会で日本乳癌学会学術総会のシンポジウム力を入れている治療/研究テーマ私たち乳腺外科医は診断から早期乳がん治療、進行再発治療まで、さまざまな段階の患者を診療します。その背景にはそれぞれの生活があることを忘れてはなりません。私は医師患者コミュニケーション、アドバンスケアプランニングをテーマとして研究活動を行っています。また、進行再発乳がん患者を対象に「アドバンスケアプランニング外来」を設置し、根治を目指せない患者にチームで関わることで、患者や家族にとって最善の治療・ケアを提供する仕組みづくりを行っています。医局の雰囲気、魅力当科には10年目以下の若手医師が多く所属し、切磋琢磨しながら乳がん診療を学んでいます。手術件数が多いため、若いうちから多くの症例を経験できます。定期的にカンファレンスを開催しており、症例の共有を行っています。日常的に症例の相談をできる環境があるため、安心して学ぶことができます。また、男性の育休も積極的に取り入れ、プライベートや家庭環境に配慮し、働きやすい環境を整えています。医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、検診・画像診断・病理診断・手術・初発から転移再発までの薬物治療・腫瘍生殖学(妊孕性など)・遺伝診療・緩和医療・甲状腺疾患など、幅広い診療を行っております。基本的な診療能力、技術を身につけつつ、個々の興味に合わせてテーマを持って修練できる環境です。毎年6月頃に学生・研修医対象のサマースクールを開催し、乳がん診療について知っていただく機会を設けています。興味のある方は、ぜひお問い合わせください。見学はいつでも大歓迎です。学生・研修医対象のサマースクールも開催これまでの経歴静岡の高校を卒業後、聖マリアンナ医科大学医学部へ入学しました。元々外科医になりたいという夢を抱いておりました。5年次の病院実習で乳腺・内分泌外科をローテーションした際に、手術のみならず、初診から人生の最期を迎えられるまで患者さんに寄り添うことができるところに惹かれました。大学卒業後もその思いは変わらず、聖マリアンナ医科大学病院にて初期研修を行い、乳腺・内分泌外科へ入局しました。同医局を選んだ理由乳腺・内分泌外科への入局を考えていた中で、偶然ではありますが母校の病院が全国トップクラスの症例数を誇っており、学ばせていただくにはとても良い環境だと思いました。スタッフの先生方も手術・外来・病棟とマルチタスクが求められる中で切磋琢磨しながら楽しそうに働いており、自分もその一員になりたいと思い、当講座への入局を決めました。現在学んでいること曜日によって手術日・外来日などが決まっているため、それぞれに必要とされるスキルを学んでいます。自分が主治医になることで、手術や術前後の治療などを上級医と相談しながら行っています。上級医との風通しも非常に良い医局であるため、些細なことでもすぐに相談でき、実践的に乳腺・甲状腺疾患診療を学ぶことができます。他科とのカンファレンスも積極的に行われており、さまざまな角度から乳腺疾患や甲状腺疾患を学ぶことができるのはとても魅力的です。カンファレンスの様子/手術や術前後の治療を実践的に学べる聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科住所〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1問い合わせ先t2kuroda@marianna-u.ac.jp(医局長:黒田)医局ホームページ聖マリアンナ医科大学乳腺・内分泌外科専門医取得実績のある学会日本外科学会日本乳癌学会日本遺伝性腫瘍学会日本臨床腫瘍学会日本内分泌外科学会研修プログラムの特徴(1)乳がん検診から診断、周術期治療、転移再発治療、緩和ケアまで幅広く学ぶことができます。(2)手術件数が多く、外科専門医や乳腺専門医取得に必要な経験を積むことができます。(3)腫瘍生殖、遺伝診療、乳房再建、緩和ケアなど、多職種チームにも関わることができます。

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認知機能の低下抑制、マルチビタミンvs.カカオ抽出物

 市販のマルチビタミン・ミネラルサプリメント(商品名:Centrum Silver、以下「マルチビタミン」)の連日摂取が高齢者の認知機能に与える影響を詳細に調査したCOSMOS-Clinic試験の結果、マルチビタミンを摂取した群では、プラセボとしてカカオ抽出物(フラバノール500mg/日)を摂取した群よりも2年後のエピソード記憶が有意に良好で、サブスタディのメタ解析でも全体的な認知機能とエピソード記憶が有意に良好であったことを、米国・Massachusetts General HospitalのChirag M. Vyas氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌2024年3月号掲載の報告。 これまで、二重盲検無作為化2×2要因試験「COSMOS試験※」のサブスタディでは、電話やインターネットを用いた認知機能に関する評価において、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群よりも良好な結果であったことが報告されている。しかし、対面式の詳細な神経心理学的評価は行われていなかった。そこで研究グループは、神経心理学的評価を対面で行って認知機能の変化に対するマルチビタミンの影響を検証するとともに、COSMOS試験のサブスタディのメタ解析も実施した。※COSMOS試験:60歳以上の米国成人2万1,442例を対象として、マルチビタミンおよび/またはカカオ抽出物の連日摂取によって心血管疾患およびがん発症リスクが軽減するかどうかを調査した大規模試験。無作為化は2015年6月~2018年3月に行われ、2020年12月31日まで追跡された。 COSMOS-Clinicの解析対象は、60歳以上で、ベースラインおよび2年後に対面で神経心理学的評価(45分間)を受けた573例であった。主要アウトカムは11つのテストの平均標準化スコアによる全体的な認知機能で、副次アウトカムはエピソード記憶、実行機能/注意力であった。メタ解析には、3つのCOSMOS試験のサブスタディ(COSMOS-Clinic[573例、2年間、対面]、COSMOS-Mind[2,158例、3年間、電話]、COSMOS-Web[2,472例、3年間、インターネット])を用いた(重複する参加者を含めずに実施)。 主な結果は以下のとおり。COSMOS-Clinic試験・参加者はマルチビタミン群272例(平均年齢69.3歳、男性51.1%)、カカオ抽出物群301例(69.8歳、50.5%)に無作為に割り付けられた。両群ともに2年後でも90%超がアドヒアランス良好であった。・エピソード記憶については、マルチビタミン群の平均標準化スコア(高いほど良好)はベースライン時0.01、2年後0.36、カカオ抽出物群はそれぞれ-0.01、0.23、平均差は0.12[95%信頼区間[CI]:0.002~0.23])であり、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して統計的に有意な改善が認められた。・全体的な認知機能(平均差:0.06[95%CI:-0.003~0.13])および実行機能/注意力(0.04[-0.04~0.11])は、有意差はなかったもののマルチビタミン群で良好な傾向を示した。サブスタディのメタ解析・全体的な認知機能は、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して、統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.07[95%CI:0.03~0.11]、p=0.0009)。・エピソード記憶でも、マルチビタミン群では統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.06[95%CI:0.03~0.10]、p=0.0007)。・マルチビタミン群の全体的な認知機能に対する効果は、2歳離れたカカオ抽出物群と同程度であり、マルチビタミン群の認知機能の老化を2年遅らせたことに相当する。

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HER2+早期乳がん、PET pCR例の化学療法は省略可?(PHERGain)/Lancet

 HER2陽性の早期乳がん患者において、18F-FDGを用いたPET検査に基づく病理学的完全奏効(pCR)を評価指標とする、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法でのde-escalation戦略は、3年無浸潤疾患生存(iDFS)率に優れることが示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJose Manuel Perez-Garcia氏らが、第II相の無作為化非盲検試験「PHERGain試験」の結果を報告した。PHERGain試験は、HER2陽性の早期乳がん患者において、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法での治療の実現可能性、安全性、有効性を評価するための試験。結果を踏まえて著者は、「この戦略により、HER2陽性の早期乳がん患者の約3分の1が、化学療法を安全に省略可能であることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年4月3日号掲載の報告。PET実施はベースラインと治療2サイクル後 PHERGain試験は、欧州7ヵ国の45病院を通じて行われ、HER2陽性、StageI~IIIAの手術可能な浸潤性乳がんで、PETで評価可能な病変が1つ以上ある患者を、1対4の割合でA群とB群に無作為に割り付けた。 A群では、ドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)、カルボプラチン(AUC 6、静脈内投与)、トラスツズマブ(600mg固定用量、皮下投与)、およびペルツズマブ(初回投与840mg、その後420mgの維持用量、静脈内投与)(TCHPレジメン)を投与した。 B群では、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を3週ごと投与した。 無作為化は、ホルモン受容体の状態で層別化。PETはベースラインと治療2サイクル後に実施し、中央判定で評価した。B群の患者は、治療中のPETの結果に従って治療を変更。2サイクル後のPET反応例は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を6サイクル継続し、PET無反応例にはTCHPを6サイクル投与した。術後、B群でpCRを達成した患者は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を10サイクル投与し、pCRを達成しなかった患者は、TCHPを6サイクル、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を4サイクル投与した。PET無反応例は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を10サイクル投与した。 主要評価項目は、治療2サイクル後のB群のpCR(結果は既報[37.9%]1))と、B群の3年iDFS率だった。本論では、後者の結果が報告されている。有害事象の発現はグループBで低率に 2017年6月26日~2019年4月24日に、356例が無作為化された(A群71例、B群285例)。手術を受けた患者の割合は、A群が89%(63例)、B群が94%(267例)。2回目の解析時までの追跡期間中央値は43.3ヵ月だった。 主要評価項目であるB群の3年iDFS率は、94.8%(95%信頼区間[CI]:91.4~97.1)だった(p=0.001)。 治療関連有害事象(TRAE)および重篤な有害事象(SAE)は、A群がB群より高率だった(Grade3以上発現率:62% vs.33%、SAE:28% vs.14%)。B群のPET反応例でpCRが認められた患者は、Grade3以上のTRAEの発現率は1%と最も低く、SAEはみられなかった。

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病院・施設の除菌対策、MDRO保菌や感染症入院が低下/JAMA

 地域内で協力して行った、病院の患者(接触感染予防で入院した患者に限定)と長期介護施設入居者に対するクロルヘキシジン浴(清拭・シャワーを含む)とヨードホール消毒薬の経鼻投与の除菌対策(universal decolonization)により、多剤耐性菌(MDRO)の保菌者割合、感染症の発生率、感染関連の入院率、入院関連費用および入院死亡率が低下したことが示された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のGabrielle M. Gussin氏らが、地域内35ヵ所の施設で行った医療の質向上研究の結果を報告した。MDROによる感染症は、罹患率、死亡率、入院の長期化および費用の増大と関連している。地域介入によって、MDRO保菌および関連する感染症の軽減が図られる可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年4月1日号掲載の報告。カリフォルニア州オレンジ郡のヘルスケア施設35ヵ所で試験 研究グループは2017年7月1日~2019年7月31日に、カリフォルニア州オレンジ郡の35ヵ所のヘルスケア施設を通じて試験を行った。長期介護施設入居者と、接触感染予防で病院に入院している患者を対象に、クロルヘキシジン浴とヨードホール消毒薬の経鼻投与を実施し、地域内のMDRO保菌率などを検証した。 主要アウトカムは、(1)試験参加施設におけるベースラインと試験終了時のMDRO保菌率、(2)試験参加・非参加施設におけるMDRO臨床培養の陽性率(スクリーニングを除く)、(3)試験参加・非参加ナーシングホームの入居者における感染関連の入院率と入院関連費用、入院死亡率だった。MDRO保菌率、長期介護施設で52%減少、病院でも25%減少 試験参加施設は計35施設(病院16、ナーシングホーム16、長期急性期病院[long-term acute care hospitals:LTACH]3)だった。 試験参加施設のMDROの平均保菌率は、ナーシングホームではベースラインの63.9%から介入により49.9%に、LTACHでは80.0%から53.3%にそれぞれ減少した(両施設のオッズ比[OR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.40~0.57)。接触感染予防で病院に入院する患者のMDRO保菌率も、同じく64.1%から55.4%に減少した(OR:0.75、95%CI:0.60~0.93)。 月当たり平均のMDRO臨床培養陽性件数(SD)は、ナーシングホームの場合、試験参加施設では月平均2.7(1.9)件から1.7(1.1)件に減少し、非参加施設では1.7(1.4)件から1.5(1.1)件に減少した(群×期間交互作用の減少:30.4%、95%CI:16.4~42.1)。病院の場合は、試験参加病院では25.5(18.6)件から25.0(15.9)件に減少したが、非参加病院では12.5(10.1)件から14.3(10.2)件へ増加した(群×期間交互作用の減少:12.9%、95%CI:3.3~21.5)。LTACH(全施設が試験に参加)では、14.8(8.6)件から8.2(6.1)件に減少した(期間減少:22.5%、同:4.4~37.1)。 ナーシングホームの感染関連入院率は、試験参加施設では1,000入居者日当たりでベースラインの2.31件から介入により1.94件に減少し、非参加施設では同1.90件から2.03件に増加した(群×期間交互作用減少:26.7%、95%CI:19.0~34.5)。また、ナーシングホームの感染関連入院費用も、試験参加施設では1,000入居者日当たり6万4,651ドルから5万5,149ドルに減少したが、非参加施設では5万5,151ドルから5万9,327ドルに増加した(群×期間交互作用減少:26.8%、95%CI:26.7~26.9)。ナーシングホームの感染関連入院死亡率も、試験参加施設では1,000入居者日当たり0.29件から0.25件に減少したが、非参加施設での変化は0.23件から0.24件だった(群×期間交互作用減少:23.7%、95%CI:4.5~43.0)。

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推奨レベル以下の身体活動でも脳卒中リスクは低下する

 少し体を動かすだけでも、カウチポテト族のように怠惰に過ごすよりは脳卒中の予防に役立つようだ。身体活動レベルがガイドラインで推奨されているレベルに達していなくても、運動をしない人に比べると脳卒中リスクは18%低下することが、新たな研究で示された。ラクイラ大学(イタリア)バイオテクノロジー・応用臨床科学分野のRaffaele Ornello氏らによるこの研究の詳細は、BMJ社発行の「Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」に3月5日掲載された。 Ornello氏らは、論文データベースを用いて、余暇に行う身体活動(leisure-time physical activity;LTPA)と脳卒中リスクとの関連を、非活動的に過ごす場合との比較で検討した前向きコホート研究を検索して、15件を選び出した。これらの研究は、対象者の総計が75万2,050人、平均追跡期間は125.7±77.5カ月に上り、LTPAのレベルは3段階(身体活動なし、ガイドラインの推奨量以下、理想的)から5段階(身体活動なし、不十分、低度、中程度、強度)で分類されていた。 LTPAのレベルを3段階に分類して検討していた5件の研究データを統合して解析した結果、身体活動量がガイドラインの推奨レベル以下であっても、身体活動なしの場合に比べると脳卒中リスクが18%(相対リスク0.82、95%信頼区間0.75〜0.88)、運動量が理想的な場合では29%(同0.71、0.58〜0.86)、有意に低下することが明らかになった。このような低いLTPAレベルでの脳卒中リスクの有意な低減効果は、LTPAレベルを4段階に分類した研究を対象に解析しても(同0.73、0.62〜0.87)、5段階に分類した研究を対象に解析しても認められた(同0.71、0.58〜0.88)。 こうした結果についてOrnello氏は、「この研究結果が示唆しているのは、ガイドラインに基づくと低レベルや不十分と見なされるレベルの身体活動であっても、LTPAは脳卒中の予防に有効だということだ」と話す。この結果を踏まえて研究グループは、「最低限の量であっても、とにかく運動することを勧めるべきだ」と述べている。 研究グループはまた、「この研究結果は、2020年の世界保健機関(WHO)の身体活動に関するエビデンスに基づく勧告の重要な原則である、『ある程度の身体活動は、何もしないよりは良い』に沿うものだ」とBMJ社のニュースリリースの中で述べている。 なお、国際的なガイドラインでは、週に150分以上の中強度の身体活動、または週に75分以上の高強度の身体活動が推奨されている。米国心臓協会(AHA)によると、中強度の身体活動の例は、早歩き、水中エアロビクス、社交ダンス、ガーデニング、テニスのダブルス、気軽なサイクリングなど、高強度の身体活動の例は、ランニング、水泳、縄跳び、高速サイクリング、庭の雪かきや鍬を使った重労働などであるという。

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英語で「お大事に」は?【1分★医療英語】第125回

第125回 英語で「お大事に」は?《例文1》I hope you feel better soon.(早く良くなるといいですね)《例文2》Take care of yourself and have a wonderful rest of your day.(お体に気を付けて、素晴らしい一日をお過ごしください)《解説》診察の終わり際に、日本では「お大事に」と言うことが多いかと思いますが、英語では何と言えばよいでしょうか? ここで言う「お大事に」は必ずしも患者さんが体調不良というわけではなく、「お元気で」「さようなら」といった意味合いで使う場合がほとんどでしょう。それに相当する英語は“take care”です。“take care”は日常会話でも頻繁に使われる別れ際のあいさつで、「お元気で」「気を付けてね」という意味になります。一方、体調不良の同僚や、急な症状の悪化で来た患者さんといった「明らかに体調が悪い人」には、“feel better”(元気になってね)や、“I hope you feel better soon.”(早く良くなるといいですね)という声掛けが適切でしょう。患者さんへの別れ際のあいさつとしては、日常会話でも使われる表現も使うことができます。たとえば、“See you.”(さようなら)、“Have a good day.”(良い一日を)、“Have a wonderful rest of your day.”(素晴らしい一日をお過ごしください)といった声掛けは、医療現場でもよく使われます。講師紹介

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第209回 コストコで肥満治療

日本で今や30店舗を超える大規模小売店のコストコが本拠地の米国で薬の処方を含むより安価な肥満治療の提供を開始しました1)。世界の女性の5人に1人ほど、男性は7人に1人ほどが肥満です。米国の肥満有病率はより顕著で、2021年の報告によると同国の成人のいまや半数近い42%、数にして1億800万人がBMI 30以上の肥満体です2)。やはりできれば痩せたいと思う人は多いらしく、体重を減らす処方薬(以下、「肥満薬」)が気になる人は増えているようです。昨夏2023年7月に実施された米国成人1,327人のアンケート調査によると半数近い45%が有効で安全な肥満薬の使用に少なくともいくらか関心があると回答しました3)。そのような関心の高まりを背景にしてコストコは肥満治療の提供を始めました。昨秋2023年9月にコストコは、医師と患者を直結させることで診察、検査、処方薬を半額に抑えることを目指す医療会社Sesameと提携し、会員が1回29ドルの遠隔診療を受けられるサービスをすでに始めています4)。加えて、標準的な臨床検査や遠隔での医師評価を含む健康診断を72ドル、メンタルヘルス治療を79ドルで受けられもします。また、対面診察などのSesameのその他の医療すべてがコストコ会員は10%引きとなります。その提携が拡大してコストコの会員はさらに肥満治療を受けることが可能となりました。加入費用(subscription)は3ヵ月あたり179ドル(1ヵ月ごとの場合は60ドル)で、食事指導や患者ごとに誂えられた治療計画が示されます。会員は自分に合った医師を選択でき、最初はビデオ面談での診察を受け、予定の診察以外にも医師に連絡できます。必要と診療で判断されたらオゼンピック、ウゴービ、マンジャロ、Zepbound、Saxendaなどの体重減少効果がある薬の処方を受けることができます。それらの薬の費用は加入費用とは別に支払う必要があります。どれだけ痩せることができるかは個人差がありますが、臨床試験での平均値に基づく体重減少の目安は3ヵ月で5%、6ヵ月で10%、1年で15%です5)。小売業の医療参入医療に参入する米国の小売業は増えており、たとえばウォルマートはプライマリケアの施設を各地に設置していますし6)、Amazonはプライマリケア会社One Medicalを買収してPrime会員への年中無休24時間営業の医療の提供を始めています7)。また、製薬会社が患者と医療を仲立ちする例もあり、この1月にLillyは患者に同社の薬剤を直接届けることを含む遠隔医療事業LillyDirectを始めました。先月3月にはそれら薬剤の配達をAmazonが担当するとの発表がありました8)。AmazonはLillyDirectを介しての肥満薬Zepboundやその他のLillyの薬のいくつかを24時間年中無休で米国の患者に配達します。参考1)Wholesale Weight Loss: Sesame Unveils Specialized Care for Weight Loss with Pricing Exclusively for Costco Members / GlobeNewswire2)CDC:National Health and Nutrition Examination Survey 2017–March 2020 Prepandemic Data Files Development of Files and Prevalence Estimates for Selected Health Outcomes3)Poll: Nearly Half of Adults Would Be Interested in Prescription Weight-Loss Drugs, But Enthusiasm Fades Based on Lack of Coverage and Risk of Regaining Weight / KFF4)Wholesale Health Care: Sesame Launches America’s Best Pricing on High Quality Doctor Visits Exclusively for Costco Members / GlobeNewswire5)Costco6)Costco teams up with Sesame to offer weight loss program to members, including GLP-1 drugs / FierceHealthcare7)Amazon Introduces Compelling New Health Care Benefit for Prime Members for Only $9 a Month (or $99 a Year) / BUSINESS WIRE8)Amazon Pharmacy now provides home delivery of select diabetes, obesity, and migraine medications to LillyDirect patients / Amazon

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乳がん免疫療法中の抗菌薬投与が予後に影響?

 ペムブロリズマブによる術前治療中のHER2陰性高リスク早期乳がん患者において、抗菌薬の投与と高い残存腫瘍量(RCB)との関連が示唆された。これまで、免疫療法中の抗菌薬への曝露が、さまざまな種類のがんにおいて臨床転帰に悪影響を与えることが報告されている。米国・ミネソタ大学のAmit A. Kulkarni氏らは、ISPY-2試験でペムブロリズマブが投与された4群について、抗菌薬への曝露がRCBおよび病理学的完全奏効(pCR)へ与える影響について評価した2次解析の結果を、NPJ Breast Cancer誌2024年3月26日号に報告した。 ISPY-2試験では、ペムブロリズマブの4サイクル投与と同時にパクリタキセルを12週間投与し、その後ドキソルビシンとシクロホスファミドを2~3週間ごとに4サイクル投与した。免疫療法(IO)と同時に少なくとも1回の抗菌薬の全身投与を受けた患者が抗菌薬曝露群に、それ以外のすべての患者が対照群に割り付けられた。 RCBインデックスとpCR率は、t検定とカイ二乗検定、線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを使用してそれぞれ両群間で比較された。 主な結果は以下のとおり。・66例が解析に含まれ、うち18例(27%)が抗菌薬投与を受けていた。・免疫療法中の抗菌薬の投与は、より高い平均RCBスコア(1.80±1.43 vs.1.08±1.41)および低いpCR率(27.8% vs.52.1%)と関連していた。・抗菌薬の投与とRCBスコアについて、多変量線形回帰分析においても有意な関連がみられた(RCBインデックス係数:0.86、95%信頼区間:0.20~1.53、p=0.01)。 著者らは、より大規模なコホートでの検証が必要としている。

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米国頭痛学会声明、片頭痛に対するCGRP標的療法の位置付け

 これまで第1選択治療として考えられてきたすべての片頭痛の予防的治療は、他の適応症のために開発され、その後片頭痛予防にも採用されている。これらの治療法は、有効性および忍容性の問題によりアドヒアランス低下が懸念されていた。前臨床および臨床エビデンスよりカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が片頭痛発症に重要な役割を果たしていることが示唆され、いくつかの片頭痛特異的な治療法が開発された。これらのCGRPをターゲットとした治療法は、片頭痛のマネジメントに革新的な影響を及ぼしたものの、第1選択治療として広く普及しているとはいえない。米国・UCLA Goldberg Migraine ProgramのAndrew C. Charles氏らは、米国頭痛学会から表明された片頭痛予防に対するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットとした治療法に関する最新情報を報告した。Headache誌オンライン版2024年3月11日号の報告。 主要および副次的エンドポイントを含む片頭痛予防に関するランダム化プラセボ対照臨床試験、事後分析、オープンラベル拡張試験、プロスペクティブおよびレトロスペクティブ観察研究を、さまざまなデータベース(PubMed、Google Scholar、ClinicalTrials.govなど)より検索した。研究結果や結果に基づく結論は、臨床試験との一貫性を確認し、コンセンサスを得るため米国頭痛学会の理事会により検討、議論を行った。 主な結果は以下のとおり。・CGRPをターゲットとした片頭痛に対する予防的治療(モノクローナル抗体:エレヌマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumab、ゲパント系:rimegepant、atogepant)の有効性、忍容性、安全性に関するエビデンスは十分であり、他の予防的治療アプローチのエビデンスを大きく上回っていた。・これらのエビデンスは、CGRPをターゲットとした各治療薬全体で一貫しており、さまざまなリアルワールドの臨床経験により裏付けられている。・これらのデータでは、CGRPをターゲットとした治療の有効性および忍容性は、これまでの第1選択治療と同等以上であり、関連する重篤な有害事象はまれであることが示唆されている。 著者らは「CGRPをターゲットとした片頭痛の予防的治療は、他の治療法で効果不十分な場合にとどまらず、第1選択治療として考慮されるべきである」としている。

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症候性大動脈弁逆流症に対するTAVI、新たなデバイスが有望/Lancet

 高リスクの症候性大動脈弁逆流を呈する患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)において、大動脈弁逆流に関するTAVIの課題に対処するために特別に設計されたトリロジー経カテーテル心臓弁(JenaValve Trilogy heart valve system、米国・JenaValve Technology製)は、大動脈弁逆流の改善に有効で、合併症も少なく、1年後の全死因死亡率が良好であることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのTorsten P. Vahl氏らが実施した「ALIGN-AR試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年3月26日号で報告された。米国20施設の前向き単群試験 ALIGN-AR試験は、米国の20施設で実施した前向き多施設共同単群試験であり、2018年6月~2022年8月に参加者のスクリーニングを行った(米国・JenaValve Technologyの助成を受けた)。 年齢18歳以上、中等度~高度または高度の大動脈弁逆流症を呈し、外科的大動脈弁置換術で死亡または合併症の発生の可能性が高いと考えられる高リスクの患者180例(平均年齢75.5[SD 10.8]歳、女性47%)を登録し、経大腿アプローチによるトリロジー経カテーテル心臓弁の留置術を行った。 安全性の主要複合エンドポイント(30日後の全死因死亡、あらゆる脳卒中、大出血、急性腎障害[ステージ2~3]、大血管合併症、デバイス関連の手術または介入、新規のペースメーカー植込み術など)は、事前に規定された達成目標40.5%に対する非劣性とした。有効性の主要エンドポイントは1年後の全死因死亡で、達成目標を25%として非劣性を評価した。2つの主要エンドポイントの双方を達成 171例(95%)で技術的成功を達成した。30日後までに、4例(2%)が死亡し、2例(1%)で後遺障害を伴う脳卒中が、2例(1%)で後遺障害を伴わない脳卒中が発生した。 Valve Academic Research Consortium-2の標準的な定義を用いると、安全性に関するイベントは48例(27%、97.5%信頼区間[CI]:19.2~34.0)で発生し、安全性の主要複合エンドポイントを達成した(非劣性のp<0.0001)。新規ペースメーカー植込み術は、すでに装着済みの30例を除く150例中36例(24%)に行った。 1年後までに死亡したのは180例中14例(7.8%、97.5%CI:3.3~12.3)であり、有効性の主要エンドポイントを達成した(非劣性のp<0.0001)。KCCQ、6分間歩行試験も改善 30日後のNYHA心機能分類クラス別の患者数は、180例中クラスIが91例(51%)、クラスIIが62例(34%)、クラスIIIが17例(9%)であり、1年後はクラスIが90例(50%)、クラスIIが48例(27%)だった。125例(83%)が、少なくとも1段階の改善を達成した。 カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)の総合要約スコアの平均値は、ベースラインの55.3点から1年後には77.6点に改善した(p<0.0001)。また、6分間歩行試験の距離は、ベースラインの262.7mから、6ヵ月後には308.1m、1年後には312.5mへと改善し(p=0.004)、1年後の時点で62例(48%)が15m以上の延長を達成した。 著者は、「経大腿TAVIは大動脈弁狭窄症の確立された治療法であるが、大動脈弁逆流症に対する既存の経カテーテル心臓弁デバイスの使用は、大動脈弁輪部への弁の固定や人工弁周囲逆流との関連で困難である。今回使用した新たな経カテーテル心臓弁は、これらの解剖学的課題をほぼ克服できることが示された」としている。

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任天堂リングフィットと理学療法の組み合わせが有効?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第254回

任天堂リングフィットと理学療法の組み合わせが有効?新垣 結衣さんがCMをしている任天堂「リングフィット アドベンチャー」。あれって結構健康にいいんだろうな、と思っていたのですが、結局買わずじまいで今に至ります。理学療法にこのリングフィットを組み合わせるとよいのでは、という研究結果が出ました。Takei K, et al. Acceptability of Physical Therapy Combined with Nintendo Ring Fit Adventure Exergame for Geriatric Hospitalized Patients.Games Health J. 2024 Feb;13(1):33-39.Games for Health Journal誌というのは、その名のとおり健康とゲームに関する医学雑誌です。あまり知られていないかもしれませんが、インパクトファクターは3.5もあります。すごい。この研究は、従来の理学療法がやや単調であることを指摘したうえで、そこにゲーム要素を取り入れることで、リハビリのアドヒアランスを高められるのではないかという仮説を検証するために立案されました。選ばれたゲームは任天堂リングフィット アドベンチャーです。このゲーム、ガチでやると昔流行ったビリーズブートキャンプくらいしんどいらしいです。このことを知り合いに話すと、ビリーズブートキャンプ、令和版になって現在カムバックしているらしいですよ、とコメントをいただきました。そうなんですか、知りませんでした。さて、研究の対象となったのは30人の高齢入院患者さんです。1日目にリングフィット+通常の理学療法、2日目に通常の理学療法のみを受けました。自覚的運動強度(Borgスケールなど)だけでなく、楽しさや継続意欲などもアンケートで調査されました。その結果、自覚的運動強度と楽しさの感覚は、リングフィット+通常の理学療法のほうがやや高いという結果になりました。ただし、統計学的には何ともいえない水準で、もう少し規模を大きくして検討する必要があるかもしれません。

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NSCLCへの周術期ニボルマブ上乗せ、術前療法が未完了でも有効か(CheckMate 77T)/ELCC2024

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験(CheckMate 77T試験)において、周術期にニボルマブを用いるレジメンが良好な結果を示したことがすでに報告されている。本レジメンは、術前にニボルマブと化学療法の併用療法を4サイクル実施するが、有害事象などにより4サイクル実施できない患者も存在する。そこで、CheckMate 77T試験において術前薬物療法が4サイクル未満であった患者の治療成績が検討され、4サイクル未満の患者でも周術期にニボルマブを用いるレジメンが治療成績を向上させることが示された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のMark M. Awad氏が、欧州肺がん学会(ELCC2024)で報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験・対象:StageIIA〜IIIB(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版)の切除可能NSCLC患者・試験群:ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年(ニボルマブ群、229例)・対照群:プラセボ+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年(プラセボ群、232例)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づく無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]盲検下独立病理判定に基づく病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)、安全性など 今回報告された主な結果は以下のとおり。・ニボルマブ群の17%(38例)、プラセボ群の12%(27例)が術前薬物療法を3サイクル以下で中止した。このうち、有害事象による中止はそれぞれ55%(21例)、41%(11例)であった。・術前薬物療法のサイクル数別にみたEFS中央値は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群未到達、プラセボ群未到達(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.42~0.79) -4サイクル未満:それぞれ未到達、7.8ヵ月(同:0.51、0.23~1.11)・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたpCR率は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群26.7%、プラセボ群5.4%(群間差:21.3%、95%CI:14.3~28.4) -4サイクル未満:それぞれ18.4%、0%(同:18.4%、2.9~33.4) -4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ32.3%、6.5%(同:25.7%、17.4~33.9) -4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ35.0%、0%(同:35.0%、2.5~56.7)・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたMPR率は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群38.2%、プラセボ群13.7%(群間差:24.6%、95%CI:16.1~32.7) -4サイクル未満:それぞれ21.1%、0%(同:21.1%、5.1~36.3) -4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ46.2%、16.7%(同:29.5%、19.6~38.7) -4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ40.0%、0%(同:40.0%、6.9~61.3)・無作為化された全患者および術前薬物療法のサイクル数別にみた死亡または遠隔転移までの期間の中央値は以下のとおり。 -全患者:ニボルマブ群未到達、プラセボ群38.8ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.44~0.85) -4サイクル完了:それぞれ未到達、38.8ヵ月(同:0.61、0.42~0.88) -4サイクル未満:それぞれ未到達、10.9ヵ月(同:0.46、0.22~0.98)・術後薬物療法を受けた患者の割合は、術前薬物療法を4サイクル完了した集団ではニボルマブ群69%(131例)、プラセボ群71%(145例)であり、4サイクル未満の集団ではそれぞれ29%(11例)、26%(7例)であった。術後薬物療法のサイクル数中央値は、いずれの集団においても両群13サイクルであり、多くの患者が術後薬物療法を完了した。 Awad氏は、本結果について「CheckMate 77T試験の探索的解析において、切除可能NSCLC患者に対する周術期のニボルマブ上乗せは、術前薬物療法4サイクル完了の有無にかかわらず有効であった。手術を実施した患者集団において、4サイクル完了した患者集団と4サイクル未満の患者集団のpCR率とMPR率は同様であった」とまとめた。

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筋力パラメータは不安・抑うつの予測因子となりうるか

 うつ病や不安症は、主要な公衆衛生上の問題の1つである。そのため、うつ病や不安症の症状予測因子を特定することは、症状悪化を避けるうえで重要となる。筋力や筋機能(握力、timed-stands testなど)は、健康アウトカムの予測因子として広く知られているが、うつ病や不安症との関連性は、十分にわかっていない。ブラジル・Santo Amaro UniversityのGabriella Mayumi Tanaka氏らは、握力やtimed-stands testスコアとうつ病および不安症の症状との関連を調査するため、コミュニティベースの横断研究を実施した。また、筋力レベルの高い人は、低い人と比較し、不安や抑うつ症状が軽減されるかについても調査した。その結果、筋力パラメータは、不安および抑うつ症状に関連する重要な予測因子である可能性を報告した。Clinical Nursing Research誌2024年3月号の報告。 対象者は、ソーシャルメディアを通じて募集し、半構造化面接を実施し、社会人口学的特徴、併存疾患、タバコおよび薬物使用、不安症状(Beck's Anxiety Inventory[BAI])、抑うつ症状(Beck's Depressive Inventory[BDI])を評価した。その後、身体的特徴、握力、機能性(timed-stands test)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・評価対象者は216人。・調整済み回帰モデルでは、握力と不安症状(β=-0.22、95%CI:-0.38~-0.07、R2=0.07、p=0.005)および抑うつ症状(β=-0.25、95%CI:-0.42~-0.07、R2=0.05、p=0.006)との間に逆相関が認められた。・timed-stands testスコアと不安症状(β=-0.33、95%CI:-0.54~-0.13、R2=0.09、p=0.002)および抑うつ症状(β=-0.32、95%CI:-0.56~-0.09、R2=0.06、p=0.008)との間にも同様の関連が認められた。・筋力レベルが低い人は、高い人と比較し、BAI(9.5 vs.5.9、p=0.0008)およびBDI(10.8 vs. 7.9、p=0.0214)が高値であった。・timed-stands testスコアで層別化した場合、低スコア群は、高スコア群と比較し、BAI(9.9 vs.5.5、p=0.0030)およびBDI(11.2 vs.7.5、p<0.0001)が高値であった。

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