サイト内検索|page:73

検索結果 合計:10275件 表示位置:1441 - 1460

1441.

日本人の喘息患者に睡眠時無呼吸が多く見られる

 日本人の喘息患者を対象に、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)の合併および臨床転帰を検討する研究が行われた。その結果、OSAの合併率は高く、特に重症OSAを有する人ほど喘息のコントロールや症状が悪いことが明らかとなった。これは川崎医科大学呼吸器内科学の小賀徹氏らによる研究結果であり、「Allergology International」に2月9日掲載された。著者らは、「喘息とOSAの合併は過小評価されている」として、臨床転帰を改善するためのOSAのスクリーニングを推奨している。 睡眠中に気道が閉塞することにより呼吸停止が起こるOSAでは、夜間のいびきや日中の眠気など、さまざまな症状が生じる。OSAのリスク因子の1つに肥満があるが、OSAは肥満のない人でも発症する。特に日本人は欧米人と比べてBMIが低いにもかかわらず、OSAの有病率は米国と日本で同程度と報告されている。 今回の研究は、2020年7月~2022年3月に、定期的に川崎医科大学附属病院を受診している喘息外来患者97人(平均年齢56.5±13.9歳、そのうち女性66人)を対象として行われた。患者は自宅での睡眠時の検査として携帯型モニターを装着。睡眠中の1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数から算出する呼吸イベント指数(respiratory event index;REI)により、OSAの有無や重症度が評価された。さらに、患者報告アウトカムとして、胃食道逆流症、日中の眠気や睡眠の質、喘息コントロール(Asthma Control Test;ACT)、咳嗽症状(Leicester Cough Questionnaire;LCQ)、呼吸器症状(COPD Assessment Test;CAT)、喘息の健康状態〔Asthma Health Questionnaire(AHQ)-33〕が評価された。 その結果、OSAなしの患者は19人(19.6%、平均41.3±13.9歳)、軽症OSAは40人(41.2%、59.0±12.0歳)、中等症OSAは24人(24.7%、61.8±10.7歳)、重症OSAは14人(14.4%、60.8±9.8歳)だった。患者の平均BMI(kg/m2)は、中等症OSA合併群で26.5±5.2、重症OSA合併群で27.8±4.4であり、OSAなし群の22.6±5.4と比べて有意に高かった。 国際的なガイドライン(Global Initiative for Asthma)に基づく喘息の治療ステップ(1~5)は、重症OSA合併群の方がOSAなし群と比べて有意に高かった(平均4.3±1.1対3.1±1.4)。しかし、肺機能やアレルギーの指標(FeNO、血清IgE、末梢血好酸球など)には、群間で有意な差は認められなかった。重症OSA合併群では、有意に喘息コントロールが悪く、症状・咳嗽も多く、健康状態も悪かった。 重症OSAと関連する因子を単変量ロジスティック回帰分析で検討すると、BMI、治療ステップと、患者報告アウトカムのうちACT、LCQ、CAT、AHQ-33の各スコアが有意な因子だった。次に多変量ロジスティック回帰を用いて、BMIを調整して解析した結果、治療ステップ、ACT、LCQ、CAT、AHQ-33は、BMIとは独立して、重症OSAの有意な予測因子であることが明らかとなった。 以上の結論として著者らは、「日本人の喘息患者において、中等症以上のOSAは多く見られた(39.1%)」と述べている。また、OSAのある人ほどBMIは高かったものの、重症OSAと喘息コントロールや症状・咳嗽・健康状態の悪化などとの関連は、BMIとは独立して有意であり、さらに、肺機能には群間で差がなかったことを挙げた上で、肥満や肺機能にとらわれず、喘息の患者報告アウトカムが不良であれば睡眠時無呼吸の評価を積極的に行うことの重要性を指摘している。

1442.

週どのくらい身体を動かすと良い?[成人編]

週どのくらい身体を動かすことが推奨されている?[成人]⚫ 歩行またはそれと同等以上(3メッツ以上の強度)の身体活動を1日60分以上(=1日約8,000歩以上)⚫ 息が弾み汗をかく程度以上(3メッツ以上の強度)の運動を週60分以上⚫ 週2~3日の筋力トレーニング(週60分以上の運動に含めてもよい)+座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意3メッツ以上の強度の身体活動の例[3]家財道具の片付け、大工仕事、梱包 [3.3]掃き掃除、掃除機がけ[3.5]楽に自転車に乗る、階段を下りる、 軽い荷物運び、モップがけ、風呂掃除、庭の草むしり、車椅子を押す [4]自転車に乗る(通勤など)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)[5.8]子供と遊ぶ(歩く/走る、活発に)3メッツ以上の強度の運動の例[3]ボウリング、社交ダンス、ピラティス [3.5]自転車エルゴメーター、ゴルフ[3.8]腕立て伏せ、腹筋運動 [4]卓球、パワーヨガ、ラジオ体操第1[4.5]テニス、水中歩行 [5.0]野球、サーフィン、スクワット[5.3]ゆっくりとした平泳ぎ 、スキー [6.0]ゆっくりとしたジョギング筋力トレーニングの例腕立て伏せやスクワット、マシンやダンベルを使用して行うウェイトトレーニング出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

1443.

英語で「健診で来院しました」は?【1分★医療英語】第126回

第126回 英語で「健診で来院しました」は?《例文1》I’m here for my annual physical.(年に1度の健康診断で来院しました)《例文2》He is here for a routine follow-up.(彼は定期受診のために来院しています)《解説》“I’m here for a check-up.”は、患者さんが医師に対して、「健康診断のために来院した」ことを伝えるフレーズです。とてもシンプルな表現ですが、主訴を明確に伝えるための重要な表現でもあります。何かを明確に伝えたいとき、表現はシンプルなほうがよく、ミスコミュニケーションを避けたい医療現場ではとくに、このようなシンプルな表現が好まれます。なお、健康診断は“check-up”と言ったり、《例文1》のように“annual physical”と表現したりしますので、これらも併せて覚えておきましょう。医師同士で患者の主訴について伝達する際には、“Mr. X presented with chest pain”のように、“present with”というフレーズもよく使いますが、そんな場面でも“Mr. X is here for chest pain”と表現してもまったく問題ありません。このような「超基本」のフレーズをしっかりマスターすることで、英語圏の医療機関でのコミュニケーションがより円滑になると思います。講師紹介

1444.

第210回 リンパ節にミニ肝臓を作る治療の臨床試験開始/抗菌薬で心不全治療?

リンパ節にミニ肝臓を作る治療の臨床試験開始末期肝疾患(ESLD)患者の肝臓機能を担うことを目指してリンパ節を肝臓化する治療が第IIa相試験(Ph2a試験)で初めてヒトに施されました1,2)。初めて投与されたのはLyGenesis社のLYG-LIV-001という名称の開発品です。LYG-LIV-001は寄付された肝臓から段階を追って念入りに単離された肝細胞です。1つの肝臓から多ければ75例に移植できる量を製造できます3)。Ph2a試験はESLD患者12例を募っています。今回、その最初の患者の肝臓近くのリンパ節に超音波と内視鏡を使って肝細胞5千万個を含むLYG-LIV-001が投与されました。肝臓近くのリンパ節に投与するのは肝臓の助けを借りるためです。肝臓は再生能を有する唯一の臓器であり、たとえ損傷しても再生のための増殖因子やその他の分子を放ちます。肝臓の近くでLYG-LIV-001はそれらの信号を受け取って肝臓構造を形成します。そうしてLYG-LIV-001はリンパ節に根付き、増殖して肝臓の役割を担うことを目指します。LYG-LIV-001投与患者は1年間観察され、安全性や治療の許容のほどの検討に加えて、ESLDの症状や状態への効果も調べられます。LyGenesis社の臓器再生技術は肝臓にとどまらず、胸腺、腎臓、膵臓などの他の臓器の再生にも応用できそうです。実際、老齢胸腺、末期腎不全(ESRD)、1型糖尿病(T1D)の臓器再生細胞治療の前臨床開発に同社は取り組んでいます。LYG-LIV-001を含むLyGenesis社の開発品は遺伝的加工を含まないのでより短期間でより安く作ることができます。また、遺伝的加工につきものの害の心配もありません。米国で1万例弱が肝臓移植の待機者リストに名を連ねています。多くは移植までに数ヵ月から長ければ数年待たねばなりません。また、移植に至る前に死んでしまう患者も多く、待機者リストの患者の12%ほどが毎年亡くなっています。LYG-LIV-001が有効なことが裏付けられれば肝疾患治療が一新するかもしれません。LyGenesis社の技術の実用化によってわずか数年のうちに肝臓移植の待機者リストが不要になりうると同社の舵を取る最高経営責任者(CEO)Michael Hufford氏は言っています2)。抗菌薬で心不全治療?薬による臓器再生の研究でも進展があり、承認済みの意外な薬2つの心臓再生作用が、大型動物ブタを含む実験で示されました。Meis1とHoxb13と呼ばれる協調する2つの転写因子を省くことで成体の心筋細胞の細胞周期停止が解除され、心筋梗塞マウスの左心室機能が向上することが、米国のテキサス大学南西医療センター(UTSW)のHesham Sadek氏らの先立つ研究で示されています4)。よってMeis1やHoxb13の転写活性阻害による心筋細胞の増加は心臓再生手段として有望です。Sadek氏らのさらなる研究5,6)で見付かったのが、Meis1とHoxb13の転写活性を阻害してどうやら心臓再生を促す米国FDA承認薬2つです。2つともアミノグリコシド系抗菌薬で、1つはパロモマイシン、もう1つはネオマイシンです。Hoxb13はMeis1を介添えし、Meis1を細胞の核内へと運ぶ役割を担います7)。パロモマイシンとネオマイシンはどちらもMeis1に結合します。結合領域はHoxb13と相互作用する部位の近くです。成体のマウスやブタの心筋梗塞(心虚血/再潅流障害)後にそれら2つとも投与したところ心筋細胞が増え、左心室機能が改善し、瘢痕を減らすことができました。Sadek氏らの今回の成果は臨床試験での検討をより現実的なものにしており6)、心筋梗塞後に高頻度で生じる心不全をパロモマイシンとネオマイシンで治療できる日がもしかしたら来るかもしれません8)。参考1)LyGenesis Announces First Patient Dosed in its Phase 2a Clinical Trial of a First-in-Class Regenerative Cell Therapy for Patients with End-Stage Liver Disease / PRNewswire 2)Therapy that turns lymph nodes into livers gets first human trial / (NewScientist)3)This Bag of Cells Could Grow New Livers Inside of People / WIRED4)Nguyen NUN, et al. Nature. 2020;582:271-276.5)Ahmed MS, et al. Nature Cardiovascular Research. 2024;3:372-388.6)Heart Regeneration Induced by FDA-Approved Antibiotics / Genetic Engineering & Biotechnology News7)Helping the heart heal itself / Eurekalert8)Common antibiotics can regenerate heart cells in animals / NewScientist

1445.

日本のCOPD患者、残存する症状への治療強化の少なさが課題?/AZ

 アストラゼネカは2024年4月8日付のプレスリリースにて、多施設共同前向き観察研究「EBISU study」および後ろ向き観察研究「REMIND study」の2つの結果を2024年4月5~7日に開催された第64回日本呼吸器学会学術講演会で報告したことを発表した。 日本の多施設共同前向き観察研究であるEBISU studyにおいて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療配合剤であるビレーズトリエアロスフィア(一般名:ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物の3剤配合剤、以下「ビレーズトリ」)が、喘息合併あるいは喘息既往のないCOPD患者の症状やQOLを12週間で改善させたという結果が示された。ビレーズトリ投与開始前(ベースライン)から12週間のCAT※1スコアの平均変化量は-2.9であり、有意な改善が認められた。この値は、臨床的意義のある最小変化量である2を上回っていた。同様に、疾患特異的QOLを評価するSGRQ※2スコアにおいても、ベースラインから12週間の平均変化量は-2.7であり、有意な改善が認められた。また、両スコアは共に4週後および12週後においても有意に改善した。 日本の多施設共同前向き観察研究COPDコホートで取得したデータを二次利用した後ろ向き観察研究REMIND studyでは、COPD患者における吸入薬治療別のCATを用いた患者報告アウトカムと治療変更の実態が日本で初めて示された。コホート組み入れ時に長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、LAMA+長時間作用性β2刺激薬(LABA)、吸入ステロイド(ICS)+LABAのいずれかで治療中の患者において、CATスコアが10ポイント以上(CAT≧10)の症状が残存している割合はそれぞれ32.9%、55.0%、50.0%であることが示された。また、コホート組み入れ時にLAMA、LAMA+LABA、ICS+LABAで治療中のCAT≧10の患者において、1年後に治療をステップアップした患者の割合はそれぞれ12.0%、10.5%、5.3%であり、治療を変更していない患者の割合は76.0%、81.8%、84.2%であった。さらに、組み入れ時に症状の残存がCAT≧10であった患者のうち、1年後の時点でも変わらずCAT≧10であった患者の割合はそれぞれ84.2%、73.6%、66.7%であることが明らかとなった。※1 CAT(COPD assessment test):COPDが健康と日常生活にどのような影響を与えているか、COPD患者と主治医が知り共有する質問票であり、CATスコアが10点以上は症状が強く、治療介入あるいは治療強化が必要とされている。※2 SGRQ(St. George’s Respiratory Questionnaire):COPDにおける疾患特異的な健康関連QOL評価尺度であり、症状、活動、影響の3領域、計50項目の質問から構成される。0から100のスケールでスコア化され、100は最も悪い状況を示す。

1446.

統合失調症治療における抗精神病薬単剤療法と多剤併用療法の有効性

 統合失調症スペクトラム障害患者の抗精神病薬単剤療法と多剤併用療法について、救急での使用状況、興奮や攻撃性を伴う症状、再入院に対する有効性の違いは、いまだ明らかになっていない。トルコ・チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学のSukru Alperen Korkmaz氏らは、同患者における抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法のリアルワールドでの有効性を評価するため本研究を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年3月5日号の報告。 本研究は、救急受診で入院した統合失調症スペクトラム障害患者669例を対象に、電子健康記録のデータを用いて実施された。対象患者を初回入院時の抗精神病薬使用状況に応じて、(1)抗精神病薬の服薬アドヒアランス不良期間が90日超、(2)同期間が15~90日、(3)抗精神病薬単剤療法、(4)同多剤併用療法の4群に分類した。すべての患者を初回入院後1年以上フォローアップした。主要アウトカムは、初回入院後の抗精神病薬単剤療法群と多剤併用療法群における、すべての原因による精神科入院との関連性とした。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の服薬アドヒアランス不良群は、単剤療法群または多剤併用療法群と比較し、救急受診率が高く、入院および、興奮や攻撃性を伴う入院が多かった。これらの結果には、単剤療法群と多剤併用療法群で差が認められなかった。・単剤療法群と多剤併用療法群の入院リスクに差はみられなかった。・フォローアップ期間中、退院後の再入院率は、単剤療法群と多剤併用療法群で差が認められなかった。 結果を踏まえて著者らは、「抗精神病薬の単剤療法より多剤併用療法を推奨する明確なエビデンスはなく、治療抵抗性でない患者では、抗精神病薬の単剤療法が多剤併用療法よりも望ましい可能性が示唆された」としている。

1447.

HER2+転移乳がん、T-DXd後のtucatinibレジメンの有用性は?

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者(活動性脳転移例を含む)の後治療において、経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibとトラスツズマブおよびカペシタビンの併用(TTC療法)が、臨床的に有意義な転帰と関連していたことを、フランス・Institut de Cancerologie de l'OuestのJean-Sebastien Frenel氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年4月1日号掲載の報告。 研究グループは、T-DXdの治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者におけるTTC療法後の転帰を調査するためにコホート研究を実施した。対象は、2020年8月1日~2022年12月31日にフランスのがんセンター12施設でT-DXdによる治療を受けた転移乳がん患者全例であった。tucatinib(1日2回300mgを経口投与)とトラスツズマブ(21日ごとに6mg/kgを静脈内投与)およびカペシタビン(21日サイクルの1~14日目に1日2回1,000mg/m2を経口投与)を併用した。主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく無増悪生存期間(PFS)、次治療までの期間(TTNT)、全奏効率(ORR)、全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・合計101例の患者が組み入れられた。年齢中央値は56歳(範囲:31~85)、65歳未満が79例(78.2%)、脳転移があったのは39例(38.6%)でそのうち活動性脳転移は16例であった。・前治療ライン数の中央値は4(範囲:2~15)で、T-DXdの前治療歴ありは100%、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の前治療歴ありは93.1%、トラスツズマブおよび/またはペルツズマブの前治療歴ありは81.2%であった。・追跡期間中央値11.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.5~13.4)で、病勢進行により75.2%がTTC療法を中止し、有害事象により24.8%が中止した。・PFS中央値は4.7ヵ月(95%CI:3.9~5.6)、TTNT中央値は5.2ヵ月(4.5~7.0)、OS中央値は13.4ヵ月(11.1~未到達)であった。・ORRは32.6%、病勢コントロール率は64.0%であった。・T-DXd治療の直後にTTC療法を受けた患者のPFS中央値は5.0ヵ月(95%CI:4.2~6.0)、TTNT中央値は5.5ヵ月(4.8~7.2)、OS中央値は13.4ヵ月(11.9~未到達)であった。・活動性脳転移のある16例のPFS中央値は4.7ヵ月(95%CI:3.0~7.3)、TTNT中央値は5.6ヵ月(4.4~未到達)、OS中央値は12.4ヵ月(8.3~未到達)であった。 これらの結果より、研究グループは「T-DXd治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者において、TTC療法は臨床的に意義のある転帰と関連していた。急速に変化する治療環境において、最適な薬剤選択を検討するには前向き試験のデータが必要である」とまとめた。

1448.

C. difficile 感染のリスク【1分間で学べる感染症】第1回

画像を拡大するTake home messageC. difficile 感染のリスクを大まかに高リスク・中リスク・低リスクに分類して理解しよう。広域抗菌薬、とくに嫌気性菌をカバーする抗菌薬はリスクが高い。C. difficile 感染を引き起こすリスクのうち、最も重要なものが抗菌薬によるものです。それでは一体どのような抗菌薬が、リスクが高いのでしょうか。一般的には、広域抗菌薬、とくに嫌気性菌をカバーする抗菌薬はリスクが高いとされています。具体的には、上記のように、メロペネム、イミペネム、モキシフロキサシン、第3世代・第4世代セファロスポリンなどが最もリスクが高いとされ、次にシプロフロキサシン、レボフロキサシン、クリンダマイシンなどが続きます。一方、アモキシシリン、第1世代セフェム系、アジスロマイシン、アズトレオナム、ダプトマイシン、リネゾリド、テトラサイクリンなどはリスクが低いとされています。C. difficile 感染のリスクをできるだけ最小限にするために、可能な限り狭域な抗菌薬にde-escalationできないか、常に検討しましょう。1)Di Bella S, et al. Clin Microbiol Rev. 2024 Feb 29. [Epub ahead of print]

1449.

メトホルミンのがんリスク低減、がん種別では?~166研究のメタ解析

 メトホルミンは、糖尿病管理のほかにがんリスクを低下させる可能性が報告されている。今回、米国・国立がん研究所(NCI)のLauren O'Connor氏らが、メトホルミン使用とがんリスクの関連を包括的系統的レビューとメタ解析により検討した。その結果、消化器がん、泌尿器がん、血液腫瘍のリスク低下との関連が示唆された。しかしながら、有意な出版バイアスがみられたことから信頼性には限界があるという。Journal of the National Cancer Institute誌2024年4月号に掲載。 本研究では、PubMed/MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Science、Scopusにおける開始から2023年3月7日までの研究の中から、メトホルミンが「使用歴あり」または「使用あり」に分類され、がんの診断をアウトカムとした研究を同定した。論文の質はNational Heart, Lung, and Blood Instituteのガイドラインを用いて評価し、出版バイアスはEgger検定、Begg検定、ファンネルプロットを用いて評価した。統合相対リスク(RR)推定値はランダム効果モデルを用いて算出し、感度分析は1つ抜き交差検証により行った。 主な結果は以下のとおり。・がん罹患情報を有する166研究をメタ解析に含めた。・症例対照研究(RR:0.55、95%信頼区間[CI]:0.30~0.80)および前向きコホート研究(RR:0.65、95%CI:0.37~0.93)において、メトホルミン使用によるがん全体のリスク低下が観察された。・がん種別のリスクについては、消化器がん(RR:0.79、95%CI:0.73~0.85)、泌尿器がん(RR:0.88、95%CI:0.78~0.99)、血液腫瘍(RR:0.87、95%CI:0.75~0.99)のリスク低下と関連していた。・統計学的に有意な出版バイアスがみられた(Egger p<0.001)。 本結果から、著者らは「メトホルミンは多くのがん種のリスク低下と関連している可能性があるが、異質性が高く、出版バイアスの恐れもあるため、これらの結果の信頼性には限界がある」とし、「がん予防におけるメトホルミンの有用性をよりよく理解するためには、非糖尿病集団での追加研究が必要である」とした。

1450.

レビー小体型認知症に対するドネペジルの有用性~国内第IV相試験

 ドネペジルは日本において、レビー小体型認知症(DLB)に対する治療薬として承認された。大阪大学の森 悦朗氏らは、DLBに対するドネペジルの有効性を評価するため、12週間の二重盲検期間における全体的な臨床症状に焦点を当てた第IV相試験の結果を報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2024年3月4日号の報告。 DLBが疑われる患者をプラセボ群(79例)またはドネペジル10mg群(81例)にランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、臨床面接による認知症変化印象尺度-介護者入力(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC-plus)を用いて評価した全体的な臨床症状の変化とした。また、CIBIC-plusの4つの領域(全身状態、認知機能、行動、日常生活活動)およびミニメンタルステート検査(MMSE)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)で測定した認知機能障害と行動および精神神経症状の変化も評価した。 主な結果は以下のとおり。・ドネペジルの優位性は、全体的な臨床状態では示されなかったが、認知領域では有意な好ましい効果が認められた(p=0.006)。・事後分析で調整後のMMSEスコアは、ドネペジル群で改善が認められた(MMSE平均差:1.4、95%信頼区間[CI]:0.42~2.30、p=0.004)。・NPIの改善は、両群間で同様であった(NPI-2:-0.2、95%CI:-1.48~1.01、p=0.710、NPI-10:0.1、95%CI:-3.28~3.55、p=0.937)。 著者らは「DLB患者に対するドネペジル10mgによる治療は、認知機能改善において臨床的に意味のある有効性が観察された。全体的な臨床症状の評価は、本研究に登録された軽度~中等度のDLB患者により影響を受ける可能性がある。また、新たな安全性の懸念は認められなかった」としている。

1451.

新型コロナが世界の死因の第2位に(GBD 2021)/Lancet

 米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏らGBD 2021 Causes of Death Collaboratorsは、「世界疾病負担研究(GBD)」の最新の成果としてGBD 2021の解析結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、長期にわたる平均余命の改善や多くの主要な死因による死亡の減少が妨げられ、このような悪影響が地域によって不均一に広がった一方、COVID-19の流行にもかかわらず、いくつかの重要な死因の減少には継続的な進展がみられ、世界的な平均余命の改善につながったことが明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年4月3日号に掲載された。1990~2021年の世界の原因別死亡率、YLLを評価 本研究では、1990~2021年の204の国と地域、および各国の811の地方(郡、州など)における288の死因による死亡率と損失生存年数(YLL)を、年齢、性、場所、年ごとに評価した(米国・ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。 解析には、人口動態登録や口頭剖検のほか、国勢調査やサーベイランス、がん登録など、5万6,604件のデータソースを用いた。平均余命や高死亡率の地理的な集中の解析も行った。COVID-19が2021年の死因の第2位に 2019年の世界の主要な年齢調整死因は1990年と同じであり、第1位が虚血性心疾患、次いで脳卒中、慢性閉塞性肺疾患、下気道感染症の順であった。これに対し2021年には、COVID-19(年齢調整死亡率:人口10万人当たり94.0人[95%不確定区間[UI]:89.2~100.0])が脳卒中に代わって第2位となり、脳卒中は第3位、慢性閉塞性肺疾患は第4位であった。 2021年にCOVID-19による年齢調整死亡率が最も高かった地域は、サハラ以南のアフリカ(10万人当たり271.0人[95%UI:250.1~290.7])と中南米・カリブ海諸国(195.4人[182.1~211.4])であった。 一方、2021年のCOVID-19による年齢調整死亡率が最も低かったのは、高所得地域(10万人当たり48.1人[95%UI:47.4~48.8])と東南アジア・東アジア・オセアニア(23.2人[16.3~37.2])であった。2019~21年に平均余命が1.6年短縮 世界の平均余命は、解析した22の死因のうち18について、1990~2019年の間に着実に改善した。この改善に最も寄与したのは腸管感染症による死亡数の減少で、平均余命が1.1年延長した。次いで下気道感染症で0.9年、脳卒中で0.8年、その他の感染性疾患、虚血性心疾患、新生物、新生児疾患でそれぞれ0.6年の延長が得られた。 一方、2019~21年の間に世界の平均余命は1.6年短縮したが、これは主にCOVID-19やその他の世界的流行に関連した死亡による死亡率の増加に起因するものであった。 また、平均余命の変動は地域によって大きく異なり、東南アジア・東アジア・オセアニアは全体で8.3年(95%UI:6.7~9.9)延長し、COVID-19による平均余命の短縮が最も小さかった(0.4年)。COVID-19により平均余命が最も短縮したのは中南米・カリブ海諸国だった(3.6年)。 さらに2021年の時点で、288の死因のうち53が世界人口の50%未満の地域に高度に集中しており、同様のパターンを示した死因が44だけであった1990年以降、これらの死因は徐々に地理的に集中するようになっていた。この集中現象は、腸管感染症、下気道感染症、マラリア、HIV/AIDS、新生児疾患、結核、麻疹について指摘されている。 著者は、「高死亡率の地理的な集中のパターンを調査することで、公衆衛生上の介入が成功した地域が明らかになり、このような成功例を特定の死因が強く残存する地域に適用することで、あらゆる地域の人々の平均余命を改善するための施策の立案に資する可能性がある」とし、「GBD 2021における死因推定の包括的な性質は、死亡率の改善と悪化から学ぶ貴重な機会を提供し、死亡率減少の進展を加速させる一助となるであろう」と述べている。

1452.

2型糖尿病患者に対する肥満外科手術bariatric surgeryの長期有効性が示された(解説:住谷哲氏)

 2型糖尿病の寛解diabetes remissionは、これまで夢物語であったが、近年は現実のものとなっている。寛解の定義は疾患により異なるが、2型糖尿病においては血糖降下薬を使用せずにHbA1c<6.5%が3ヵ月以上維持できた状態を寛解と定義している1)。契機となったのはDiRECT(Diabetes Remission Clinical Trial)研究で、15kg以上の減量により肥満2型糖尿病患者の86%が寛解したと報告されたことである2)。この報告はかなりの衝撃であり、付属論評のタイトルも”Remission of type 2 diabetes: mission not impossible”であった3)。 DiRECT研究は、超低カロリー食very low calorie diet VLCDを基本とした生活習慣改善プログラムを使用していた。カロリー制限が減量において最重要であるのは当然であるが、現実的にはなかなか難しい。そこで従来から減量目的で実施されていたのが肥満外科手術bariatric surgeryである。2型糖尿病患者における肥満外科手術の有効性を検討したRCTは複数あるが、すべて単施設からの報告であり、症例数、観察期間も限られていた。そこで本研究グループは、Alliance of Randomized Trials of Medicine versus Metabolic Surgery in Type 2 Diabetes (ARMMS-T2D) consortiumを立ち上げ、統合解析を実施した。追跡開始3年後の解析結果は、すでに報告されており4)、本論文はその7年または12年後の追跡結果である。主要評価項目であるベースラインからのHbA1cの変化量は薬物療法・生活習慣改善群に比較して肥満外科手術群で有意に大であった。さらに副次評価項目である2型糖尿病の寛解率も、薬物療法・生活習慣改善群vs.肥満外科手術群で、7年後で6.2% vs.18.2%(p=0.02)、12年後で0.0% vs.12.7%(p<0.001)であり肥満外科手術群で有意に大であった。 本統合解析に含まれた4つのRCTが実施されたのは2007年から2013年にかけてであり、当時はGLP-1受容体作動薬のセマグルチドもチルゼパチドも市場に登場していなかった。両薬剤の体重減少効果は肥満外科手術に匹敵するものがあり、仮りに同様のRCTを現時点で実施すれば結果は異なったかもしれない。しかし両薬剤共に薬剤中止後ほぼ1年で体重が元に戻ることが明らかにされており5,6)、体重減少を維持するためには継続使用が必要である。一部の患者ではあるが、肥満外科手術後10年以上にわたり2型糖尿病の寛解が維持できることが示されたのは大きな一歩といえるだろう。■参考文献1)Riddle MC, et al. Diabetes Care. 2021;44:2438-2444.2)Lean ME, et al. Lancet. 2018;391:541-551.3)Uusitupa M. Lancet. 2018;391:515-516.4)Kirwan JP, et al. Diabetes Care. 2022;45:1574-1583.5)Rubino D, et al. JAMA. 2021;325:1414-1425.6)Aronne LJ, et al. JAMA. 2024;331:38-48.

1453.

dementia(認知症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第3回

言葉の由来認知症は英語で“dementia”といいますが、この言葉は“de-ment-ia”と3つの部分に分解していくと言葉の由来が見えやすくなります。まず、“de”という接頭辞はほかの医学用語でもよく見かけるものかもしれません。たとえば、「処方する」を“prescribe”というのに対し、「脱処方する(減薬する)」を“deprescribe”といったりします。このように、“de”という接頭辞には、“away from”または“out of”(~から脱する、離れる)という意味があります。では、この“dementia”では「何から脱するか」といえば、後ろの“ment”の部分ということになります。“ment”はラテン語のmenteまたはmensに由来しているとされ、“mental”などの言葉からも想像できるかもしれませんが、「心、精神、知」というような意味があります。なお、最後の“ia”は病名などを表す際によく用いられる接尾辞で、これ自体には意味を持ちません。これらを合わせると、認知症の英名“dementia”は“out of mind”(心、知能が離れてしまった)という意味を持つ言葉のようです。今でこそ“dementia”は、医学界では「認知症」の意味で定着していますし、病気への理解が進んで「心が離れてしまった」状態ではないこともよく理解されていますが、そのような語源が一般市民レベルでの先入観や偏見につながっていることもたびたび指摘されています。このため、病気への偏見をなくすために、病名自体を“cognitive impairment”(認知機能障害)に置き換えるべきだ、と指摘する専門家もいます。併せて覚えよう! 周辺単語軽度認知障害mild cognitive impairmentせん妄delirium遂行機能executive function海馬の萎縮hippocampal atrophy行動障害behavioral disturbanceこの病気、英語で説明できますか?Dementia is a general term for the impaired ability to remember, think, or make decisions, which interferes with doing everyday activities. Alzheimer’s disease is the most common type of dementia. 講師紹介

1454.

早期アルツハイマー病に対するレカネマブの費用対効果

 2023年1月、米国FDAより軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病による軽度認知症に対する治療薬としてモノクローナル抗体レカネマブが承認された。しかし、認知症に対するレカネマブの費用対効果は、不明なままである。カナダ・Memorial University of NewfoundlandのHai V. Nguyen氏らは、レカネマブの費用対効果およびアルツハイマー病の検査制度とAPOE ε4の状況によりどのように変化するかを定量化するため、本研究を実施した。Neurology誌2024年4月9日号の報告。 検査アプローチ(PET、CSF、血漿アッセイ)、治療法の選択(標準的治療、レカネマブ併用)、ターゲティング戦略(APOE ε4非キャリアまたはヘテロ接合性患者を特定するか否か)の組み合わせにより定義した7つの診断治療戦略について比較した。有効性は、クオリティ調整された生存年数により測定し、第3者および社会の観点から生涯期間にわたるコスト(2022年米国ドル)を推定した。次の5つの状態でhybrid decision tree-Markov cohort modelを構成した。(1)MCI(臨床的認知症重症度判定尺度[Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB]スコア:0~4.5)、(2)軽度認知症(CDR-SBスコア:4.6~9.5)、(3)中等度認知症(CDR-SBスコア:9.6~16)、(4)高度認知症(CDR-SBスコア:16超)、(5)死亡。 主な結果は以下のとおり。・7つの診断治療戦略のうち、費用対効果の観点では標準的治療が最適な治療戦略であった。・レカネマブ治療、APOE ε4遺伝子型の有無にかかわらずその治療は、早期アルツハイマー病の診断に使用される検査とは無関係に、標準的治療と比較し、費用対効果が高かった。・しかし、レカネマブの薬剤費が年間5,100米国ドル未満であれば、CSF検査とその後の標準的治療の費用対効果が高くなった。・これらの結果は、診断検査の精度、レカネマブの中止および有害事象の発生率に対しロバストであった。 著者らは「レカネマブ治療、ε4遺伝子型の有無にかかわらない治療は、MCIまたはアルツハイマー病による軽度認知症の患者にとって、標準的治療と比較し、費用対効果が優れているとはいえなかった。レカネマブの価格が年間5,100米国ドル未満となれば、状況により費用対効果が高くなるであろう」としている。

1456.

聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科【大学医局紹介~がん診療編】

津川 浩一郎 氏(主任教授)黒田 貴子 氏(助教/主任医長)在原 卓 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴教室の担当分野は乳腺疾患と甲状腺・副甲状腺疾患であり、「患者さん一人ひとりに寄り添い、専門性の高い『愛ある医療』を提供します」をモットーとしています。乳腺外科分野では早期から進行乳がんにおける、診断・治療(手術および薬物療法)・緩和ケアを行い、文字どおり検診からターミナルケアまで、乳がん診療のすべてを担っています。また、内分泌外科分野では大学病院内分泌疾患センターに協力し代謝・内分泌内科と連携のもと、甲状腺・副甲状腺疾患の外科治療を担当しています。大学病院における初発乳がん手術症例数は年間約750例、甲状腺・副甲状腺疾患は約80例です。乳がん手術件数としては全国3~5位、大学病院として1位です。特色は各科・各部門と協力連携した専門性の高い医療の実践です。形成外科との乳房再建(人工物および自家組織)、遺伝診療部とのHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)診療(予防的対側乳房切除を含む)、ゲノム医療推進センターとのがんゲノム医療(がん遺伝子パネル検査)、産科婦人科がん生殖医療チームとの妊孕性温存治療、緩和医療学講座とのACP(Advance Care Planning)の導入など多岐に渡ります。医師の育成方針当科は外科専門科の1つとして、手術技術を中心とした専門家を育成すること、そして集学的医療チームの中心となれる人材の育成を基本方針としています。個々のライフステージおよびキャリアプランに応じて、専門医の取得や研究・学位取得ができるよう、きめ細かく指導を行っています。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会で日本乳癌学会学術総会のシンポジウム力を入れている治療/研究テーマ私たち乳腺外科医は診断から早期乳がん治療、進行再発治療まで、さまざまな段階の患者を診療します。その背景にはそれぞれの生活があることを忘れてはなりません。私は医師患者コミュニケーション、アドバンスケアプランニングをテーマとして研究活動を行っています。また、進行再発乳がん患者を対象に「アドバンスケアプランニング外来」を設置し、根治を目指せない患者にチームで関わることで、患者や家族にとって最善の治療・ケアを提供する仕組みづくりを行っています。医局の雰囲気、魅力当科には10年目以下の若手医師が多く所属し、切磋琢磨しながら乳がん診療を学んでいます。手術件数が多いため、若いうちから多くの症例を経験できます。定期的にカンファレンスを開催しており、症例の共有を行っています。日常的に症例の相談をできる環境があるため、安心して学ぶことができます。また、男性の育休も積極的に取り入れ、プライベートや家庭環境に配慮し、働きやすい環境を整えています。医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、検診・画像診断・病理診断・手術・初発から転移再発までの薬物治療・腫瘍生殖学(妊孕性など)・遺伝診療・緩和医療・甲状腺疾患など、幅広い診療を行っております。基本的な診療能力、技術を身につけつつ、個々の興味に合わせてテーマを持って修練できる環境です。毎年6月頃に学生・研修医対象のサマースクールを開催し、乳がん診療について知っていただく機会を設けています。興味のある方は、ぜひお問い合わせください。見学はいつでも大歓迎です。学生・研修医対象のサマースクールも開催これまでの経歴静岡の高校を卒業後、聖マリアンナ医科大学医学部へ入学しました。元々外科医になりたいという夢を抱いておりました。5年次の病院実習で乳腺・内分泌外科をローテーションした際に、手術のみならず、初診から人生の最期を迎えられるまで患者さんに寄り添うことができるところに惹かれました。大学卒業後もその思いは変わらず、聖マリアンナ医科大学病院にて初期研修を行い、乳腺・内分泌外科へ入局しました。同医局を選んだ理由乳腺・内分泌外科への入局を考えていた中で、偶然ではありますが母校の病院が全国トップクラスの症例数を誇っており、学ばせていただくにはとても良い環境だと思いました。スタッフの先生方も手術・外来・病棟とマルチタスクが求められる中で切磋琢磨しながら楽しそうに働いており、自分もその一員になりたいと思い、当講座への入局を決めました。現在学んでいること曜日によって手術日・外来日などが決まっているため、それぞれに必要とされるスキルを学んでいます。自分が主治医になることで、手術や術前後の治療などを上級医と相談しながら行っています。上級医との風通しも非常に良い医局であるため、些細なことでもすぐに相談でき、実践的に乳腺・甲状腺疾患診療を学ぶことができます。他科とのカンファレンスも積極的に行われており、さまざまな角度から乳腺疾患や甲状腺疾患を学ぶことができるのはとても魅力的です。カンファレンスの様子/手術や術前後の治療を実践的に学べる聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科住所〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1問い合わせ先t2kuroda@marianna-u.ac.jp(医局長:黒田)医局ホームページ聖マリアンナ医科大学乳腺・内分泌外科専門医取得実績のある学会日本外科学会日本乳癌学会日本遺伝性腫瘍学会日本臨床腫瘍学会日本内分泌外科学会研修プログラムの特徴(1)乳がん検診から診断、周術期治療、転移再発治療、緩和ケアまで幅広く学ぶことができます。(2)手術件数が多く、外科専門医や乳腺専門医取得に必要な経験を積むことができます。(3)腫瘍生殖、遺伝診療、乳房再建、緩和ケアなど、多職種チームにも関わることができます。

1457.

認知機能の低下抑制、マルチビタミンvs.カカオ抽出物

 市販のマルチビタミン・ミネラルサプリメント(商品名:Centrum Silver、以下「マルチビタミン」)の連日摂取が高齢者の認知機能に与える影響を詳細に調査したCOSMOS-Clinic試験の結果、マルチビタミンを摂取した群では、プラセボとしてカカオ抽出物(フラバノール500mg/日)を摂取した群よりも2年後のエピソード記憶が有意に良好で、サブスタディのメタ解析でも全体的な認知機能とエピソード記憶が有意に良好であったことを、米国・Massachusetts General HospitalのChirag M. Vyas氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌2024年3月号掲載の報告。 これまで、二重盲検無作為化2×2要因試験「COSMOS試験※」のサブスタディでは、電話やインターネットを用いた認知機能に関する評価において、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群よりも良好な結果であったことが報告されている。しかし、対面式の詳細な神経心理学的評価は行われていなかった。そこで研究グループは、神経心理学的評価を対面で行って認知機能の変化に対するマルチビタミンの影響を検証するとともに、COSMOS試験のサブスタディのメタ解析も実施した。※COSMOS試験:60歳以上の米国成人2万1,442例を対象として、マルチビタミンおよび/またはカカオ抽出物の連日摂取によって心血管疾患およびがん発症リスクが軽減するかどうかを調査した大規模試験。無作為化は2015年6月~2018年3月に行われ、2020年12月31日まで追跡された。 COSMOS-Clinicの解析対象は、60歳以上で、ベースラインおよび2年後に対面で神経心理学的評価(45分間)を受けた573例であった。主要アウトカムは11つのテストの平均標準化スコアによる全体的な認知機能で、副次アウトカムはエピソード記憶、実行機能/注意力であった。メタ解析には、3つのCOSMOS試験のサブスタディ(COSMOS-Clinic[573例、2年間、対面]、COSMOS-Mind[2,158例、3年間、電話]、COSMOS-Web[2,472例、3年間、インターネット])を用いた(重複する参加者を含めずに実施)。 主な結果は以下のとおり。COSMOS-Clinic試験・参加者はマルチビタミン群272例(平均年齢69.3歳、男性51.1%)、カカオ抽出物群301例(69.8歳、50.5%)に無作為に割り付けられた。両群ともに2年後でも90%超がアドヒアランス良好であった。・エピソード記憶については、マルチビタミン群の平均標準化スコア(高いほど良好)はベースライン時0.01、2年後0.36、カカオ抽出物群はそれぞれ-0.01、0.23、平均差は0.12[95%信頼区間[CI]:0.002~0.23])であり、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して統計的に有意な改善が認められた。・全体的な認知機能(平均差:0.06[95%CI:-0.003~0.13])および実行機能/注意力(0.04[-0.04~0.11])は、有意差はなかったもののマルチビタミン群で良好な傾向を示した。サブスタディのメタ解析・全体的な認知機能は、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して、統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.07[95%CI:0.03~0.11]、p=0.0009)。・エピソード記憶でも、マルチビタミン群では統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.06[95%CI:0.03~0.10]、p=0.0007)。・マルチビタミン群の全体的な認知機能に対する効果は、2歳離れたカカオ抽出物群と同程度であり、マルチビタミン群の認知機能の老化を2年遅らせたことに相当する。

1458.

HER2+早期乳がん、PET pCR例の化学療法は省略可?(PHERGain)/Lancet

 HER2陽性の早期乳がん患者において、18F-FDGを用いたPET検査に基づく病理学的完全奏効(pCR)を評価指標とする、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法でのde-escalation戦略は、3年無浸潤疾患生存(iDFS)率に優れることが示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJose Manuel Perez-Garcia氏らが、第II相の無作為化非盲検試験「PHERGain試験」の結果を報告した。PHERGain試験は、HER2陽性の早期乳がん患者において、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法での治療の実現可能性、安全性、有効性を評価するための試験。結果を踏まえて著者は、「この戦略により、HER2陽性の早期乳がん患者の約3分の1が、化学療法を安全に省略可能であることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年4月3日号掲載の報告。PET実施はベースラインと治療2サイクル後 PHERGain試験は、欧州7ヵ国の45病院を通じて行われ、HER2陽性、StageI~IIIAの手術可能な浸潤性乳がんで、PETで評価可能な病変が1つ以上ある患者を、1対4の割合でA群とB群に無作為に割り付けた。 A群では、ドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)、カルボプラチン(AUC 6、静脈内投与)、トラスツズマブ(600mg固定用量、皮下投与)、およびペルツズマブ(初回投与840mg、その後420mgの維持用量、静脈内投与)(TCHPレジメン)を投与した。 B群では、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を3週ごと投与した。 無作為化は、ホルモン受容体の状態で層別化。PETはベースラインと治療2サイクル後に実施し、中央判定で評価した。B群の患者は、治療中のPETの結果に従って治療を変更。2サイクル後のPET反応例は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を6サイクル継続し、PET無反応例にはTCHPを6サイクル投与した。術後、B群でpCRを達成した患者は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を10サイクル投与し、pCRを達成しなかった患者は、TCHPを6サイクル、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を4サイクル投与した。PET無反応例は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を10サイクル投与した。 主要評価項目は、治療2サイクル後のB群のpCR(結果は既報[37.9%]1))と、B群の3年iDFS率だった。本論では、後者の結果が報告されている。有害事象の発現はグループBで低率に 2017年6月26日~2019年4月24日に、356例が無作為化された(A群71例、B群285例)。手術を受けた患者の割合は、A群が89%(63例)、B群が94%(267例)。2回目の解析時までの追跡期間中央値は43.3ヵ月だった。 主要評価項目であるB群の3年iDFS率は、94.8%(95%信頼区間[CI]:91.4~97.1)だった(p=0.001)。 治療関連有害事象(TRAE)および重篤な有害事象(SAE)は、A群がB群より高率だった(Grade3以上発現率:62% vs.33%、SAE:28% vs.14%)。B群のPET反応例でpCRが認められた患者は、Grade3以上のTRAEの発現率は1%と最も低く、SAEはみられなかった。

1459.

病院・施設の除菌対策、MDRO保菌や感染症入院が低下/JAMA

 地域内で協力して行った、病院の患者(接触感染予防で入院した患者に限定)と長期介護施設入居者に対するクロルヘキシジン浴(清拭・シャワーを含む)とヨードホール消毒薬の経鼻投与の除菌対策(universal decolonization)により、多剤耐性菌(MDRO)の保菌者割合、感染症の発生率、感染関連の入院率、入院関連費用および入院死亡率が低下したことが示された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のGabrielle M. Gussin氏らが、地域内35ヵ所の施設で行った医療の質向上研究の結果を報告した。MDROによる感染症は、罹患率、死亡率、入院の長期化および費用の増大と関連している。地域介入によって、MDRO保菌および関連する感染症の軽減が図られる可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年4月1日号掲載の報告。カリフォルニア州オレンジ郡のヘルスケア施設35ヵ所で試験 研究グループは2017年7月1日~2019年7月31日に、カリフォルニア州オレンジ郡の35ヵ所のヘルスケア施設を通じて試験を行った。長期介護施設入居者と、接触感染予防で病院に入院している患者を対象に、クロルヘキシジン浴とヨードホール消毒薬の経鼻投与を実施し、地域内のMDRO保菌率などを検証した。 主要アウトカムは、(1)試験参加施設におけるベースラインと試験終了時のMDRO保菌率、(2)試験参加・非参加施設におけるMDRO臨床培養の陽性率(スクリーニングを除く)、(3)試験参加・非参加ナーシングホームの入居者における感染関連の入院率と入院関連費用、入院死亡率だった。MDRO保菌率、長期介護施設で52%減少、病院でも25%減少 試験参加施設は計35施設(病院16、ナーシングホーム16、長期急性期病院[long-term acute care hospitals:LTACH]3)だった。 試験参加施設のMDROの平均保菌率は、ナーシングホームではベースラインの63.9%から介入により49.9%に、LTACHでは80.0%から53.3%にそれぞれ減少した(両施設のオッズ比[OR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.40~0.57)。接触感染予防で病院に入院する患者のMDRO保菌率も、同じく64.1%から55.4%に減少した(OR:0.75、95%CI:0.60~0.93)。 月当たり平均のMDRO臨床培養陽性件数(SD)は、ナーシングホームの場合、試験参加施設では月平均2.7(1.9)件から1.7(1.1)件に減少し、非参加施設では1.7(1.4)件から1.5(1.1)件に減少した(群×期間交互作用の減少:30.4%、95%CI:16.4~42.1)。病院の場合は、試験参加病院では25.5(18.6)件から25.0(15.9)件に減少したが、非参加病院では12.5(10.1)件から14.3(10.2)件へ増加した(群×期間交互作用の減少:12.9%、95%CI:3.3~21.5)。LTACH(全施設が試験に参加)では、14.8(8.6)件から8.2(6.1)件に減少した(期間減少:22.5%、同:4.4~37.1)。 ナーシングホームの感染関連入院率は、試験参加施設では1,000入居者日当たりでベースラインの2.31件から介入により1.94件に減少し、非参加施設では同1.90件から2.03件に増加した(群×期間交互作用減少:26.7%、95%CI:19.0~34.5)。また、ナーシングホームの感染関連入院費用も、試験参加施設では1,000入居者日当たり6万4,651ドルから5万5,149ドルに減少したが、非参加施設では5万5,151ドルから5万9,327ドルに増加した(群×期間交互作用減少:26.8%、95%CI:26.7~26.9)。ナーシングホームの感染関連入院死亡率も、試験参加施設では1,000入居者日当たり0.29件から0.25件に減少したが、非参加施設での変化は0.23件から0.24件だった(群×期間交互作用減少:23.7%、95%CI:4.5~43.0)。

1460.

推奨レベル以下の身体活動でも脳卒中リスクは低下する

 少し体を動かすだけでも、カウチポテト族のように怠惰に過ごすよりは脳卒中の予防に役立つようだ。身体活動レベルがガイドラインで推奨されているレベルに達していなくても、運動をしない人に比べると脳卒中リスクは18%低下することが、新たな研究で示された。ラクイラ大学(イタリア)バイオテクノロジー・応用臨床科学分野のRaffaele Ornello氏らによるこの研究の詳細は、BMJ社発行の「Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」に3月5日掲載された。 Ornello氏らは、論文データベースを用いて、余暇に行う身体活動(leisure-time physical activity;LTPA)と脳卒中リスクとの関連を、非活動的に過ごす場合との比較で検討した前向きコホート研究を検索して、15件を選び出した。これらの研究は、対象者の総計が75万2,050人、平均追跡期間は125.7±77.5カ月に上り、LTPAのレベルは3段階(身体活動なし、ガイドラインの推奨量以下、理想的)から5段階(身体活動なし、不十分、低度、中程度、強度)で分類されていた。 LTPAのレベルを3段階に分類して検討していた5件の研究データを統合して解析した結果、身体活動量がガイドラインの推奨レベル以下であっても、身体活動なしの場合に比べると脳卒中リスクが18%(相対リスク0.82、95%信頼区間0.75〜0.88)、運動量が理想的な場合では29%(同0.71、0.58〜0.86)、有意に低下することが明らかになった。このような低いLTPAレベルでの脳卒中リスクの有意な低減効果は、LTPAレベルを4段階に分類した研究を対象に解析しても(同0.73、0.62〜0.87)、5段階に分類した研究を対象に解析しても認められた(同0.71、0.58〜0.88)。 こうした結果についてOrnello氏は、「この研究結果が示唆しているのは、ガイドラインに基づくと低レベルや不十分と見なされるレベルの身体活動であっても、LTPAは脳卒中の予防に有効だということだ」と話す。この結果を踏まえて研究グループは、「最低限の量であっても、とにかく運動することを勧めるべきだ」と述べている。 研究グループはまた、「この研究結果は、2020年の世界保健機関(WHO)の身体活動に関するエビデンスに基づく勧告の重要な原則である、『ある程度の身体活動は、何もしないよりは良い』に沿うものだ」とBMJ社のニュースリリースの中で述べている。 なお、国際的なガイドラインでは、週に150分以上の中強度の身体活動、または週に75分以上の高強度の身体活動が推奨されている。米国心臓協会(AHA)によると、中強度の身体活動の例は、早歩き、水中エアロビクス、社交ダンス、ガーデニング、テニスのダブルス、気軽なサイクリングなど、高強度の身体活動の例は、ランニング、水泳、縄跳び、高速サイクリング、庭の雪かきや鍬を使った重労働などであるという。

検索結果 合計:10275件 表示位置:1441 - 1460