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悪性黒色腫への術前ニボルマブ+イピリムマブ、EFSを大きく改善(NADINA)/NEJM

 切除可能なIII期の肉眼的な悪性黒色腫の治療では、ニボルマブによる術後補助療法と比較して、イピリムマブ+ニボルマブによる2サイクルの術前補助療法は無イベント生存率(EFS)が有意に優れ、病理学的奏効も良好であることが、オランダがん研究所のChristian U. Blank氏らが実施した「NADINA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月2日号に掲載された。術前と術後の免疫療法を比較する無作為化第III相試験 NADINA試験は、オランダとオーストラリアの施設を中心とする国際的な無作為化第III相試験であり、2021年7月~2023年12月に参加者の無作為化を行った(Bristol Myers Squibbなどの助成を受けた)。 年齢16歳以上の切除可能なIII期の肉眼的な悪性黒色腫で、1つ以上の病理学的に証明されたリンパ節転移および最大3つのin-transit転移を有する患者423例を登録し、術前補助療法としてイピリムマブ+ニボルマブの投与(3週ごと)を2サイクル行う群に212例(年齢中央値60歳[範囲:22~84]、女性33.5%)、術後補助療法としてニボルマブの投与(4週ごと)を12サイクル行う群に211例(59歳[19~87]、36.0%)を割り付けた。 主要評価項目はEFSとし、無作為化から手術前の悪性黒色腫の進行、再発、悪性黒色腫または治療による死亡までの期間と定義した。EFSのハザード比0.32 ITT集団における主要評価項目のイベント数は100件で、内訳は術前補助療法群で28件、術後補助療法群で72件であった。 追跡期間中央値9.9ヵ月の時点における推定12ヵ月EFSは、術前補助療法群が83.7%(99.9%信頼区間[CI]:73.8~94.8)、術後補助療法群は57.2%(45.1~72.7)で、境界内平均生存期間(restricted mean survival time)の群間差は8.00ヵ月(99.9%CI:4.94~11.05、p<0.001、進行、再発、死亡のハザード比[HR]:0.32、99.9%CI:0.15~0.66)であり、術前補助療法群で有意に良好であった。 術前補助療法群の病理学的奏効については、患者の59.0%で病理学的著効(major pathological response、残存腫瘍≦10%)が達成され、8.0%で病理学的部分奏効(残存腫瘍11~50%)が得られ、26.4%は非奏効(残存腫瘍>50%)で、2.4%は手術前に病勢が進行し、4.2%では手術が未施行か施行されなかった。 また、術前補助療法群における病理学的奏効の状態別の推定12ヵ月無再発生存率は、病理学的著効例で95.1%、部分奏効例で76.1%、非奏効例では57.0%であった。Grade3以上の有害事象、内分泌障害は術前補助療法群で多い 全身療法に関連したGrade3以上の有害事象は、術前補助療法群で29.7%、術後補助療法群で14.7%、手術関連のGrade3以上の有害事象はそれぞれ14.1%および14.4%に認めた。全身療法関連の内分泌障害は、それぞれ30.7%および9.9%で発現した。 また、重篤な有害事象は、それぞれ36.3%および24.0%でみられ、術後補助療法群では1例がニボルマブに起因する肺臓炎で死亡し、術前補助療法群では治療関連死を認めなかった。 著者は、「術前の免疫チェックポイント阻害薬療法が、術後の同療法よりも有効性が高いことの説明として、術前の免疫療法はより強力で多様なT細胞応答を誘導するためとの仮説が提唱されている。この性質は、免疫療法の開始時には腫瘍の全体が存在し、それゆえ完全なネオアンチゲンのレパートリーが存在するためと考えられている。また、術前のPD-1阻害薬にCTLA-4阻害薬を追加すると有効性が向上することも示唆されている」としている。

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体調不良のまま働くタクシー運転手の交通事故リスク

 体調不良を抱えたまま勤務する「プレゼンティーズム」は、欠勤するよりも大きな損失につながるとして注目されている。新たに日本のタクシー運転手を対象とした研究が行われ、プレゼンティーズムの程度が大きいほど交通事故リスクが高まることが明らかとなった。産業医科大学産業生態科学研究所環境疫学研究室の藤野善久氏、大河原眞氏らによる前向きコホート研究の結果であり、「Safety and Health at Work」に4月16日掲載された。 これまでに著者らは救急救命士を対象とした研究を行い、プレゼンティーズムの程度が大きいこととヒヤリハット事例発生との関連を報告している。今回の研究では、救急医療と同様に社会的影響の大きい交通事故が取り上げられた。その背景として、タクシー運転手は不規則な運転経路、時間厳守へのプレッシャーなどから事故を起こしやすいことや、車内で長時間を過ごすため運動不足や腰痛につながりやすく、睡眠や健康の状態も悪くなりやすい労働環境にあることが挙げられている。 著者らは今回の対象を福岡県のタクシー会社に勤務するタクシー運転手とし、2022年6月のベースライン調査時、産業医科大学が開発した「WFun」(Work Functioning Impairment Scale)という指標を用いてプレゼンティーズムを評価した。WFunは7つの質問(「ていねいに仕事をすることができなかった」など)により労働機能障害を判定するもので、その得点からプレゼンティーズムの程度を「問題なし」「軽度」「中等度以上」に分類した。2023年2月に追跡調査を行い、回答時点から過去3カ月間の擦り傷や軽い接触など(会社に報告していないものも含む)の件数を「軽微な交通事故」として評価した。 運転時間が週に10時間未満だった人などを除き、428人を解析対象とした。年齢中央値は67(四分位範囲60~72)歳、男性の割合は93.2%。プレゼンティーズムの程度は、問題なしが343人(80%)、軽度が72人(17%)、中等度以上が13人(3%)だった。 1件以上の軽微な交通事故の発生割合は、プレゼンティーズムの程度が問題なしの人では16%、軽度の人では17%、中等度以上の人では23%だった。性別、年齢、運転経験の影響を統計的に調整した上で、交通事故とプレゼンティーズムとの関連を調べた結果、プレゼンティーズムの程度が大きいほど、軽微な交通事故のリスクが高くなることが明らかとなった(傾向性P=0.045)。 今回の研究に関連して著者らは、これまで、突然の意識不明や死亡につながる脳血管疾患や心疾患などの重大な疾患が注目されてきたが、これらを原因とする交通事故の割合は、職業運転手による交通事故のうちの一部でしかないと説明。体調不良などによる交通事故は過少報告されている可能性が高く、見過ごされがちであることを指摘している。また、タクシー運転手の給与体系の多くが歩合制であることも体調不良のまま勤務してしまう要因となっていることを挙げ、「交通事故防止のため、職業運転手に対する社会経済的支援を強化し、健康管理を優先することが重要だ」と述べている。

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ASCO2024 レポート 消化器がん

レポーター紹介本レポートでは、2024年5月31日~6月4日に行われた2024 ASCO Annual Meetingにおける消化管領域におけるトピックスを解説する。1.【食道がん】ESOPEC trial(#LBA1)最初に解説するのは、今年消化管領域でPlenary Sessionに選ばれたESOPEC trialである。欧米ではわが国をはじめとする東アジアと異なり、食道がんにおいては下部食道から接合部にできる腺がんが中心である。cT2-4a、cN+/-の切除可能進行食道腺がんにおける現在の標準治療は、CROSS trialで用いられたパクリタキセル+カルボプラチン+41.4Gyの術前化学放射線療法(CRT)とFLOT4 trialで用いられた術前・術後のFLOT(5-FU、LV、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法の両者が併存しており、それぞれ開発が行われたオランダではCROSSレジメンが、ドイツではFLOTレジメンが主流である。ESOPEC trialでは両者の直接比較が第III相試験として行われた。2016年2月~2020年4月に438例のcT1N+ or cT2-4a、cN0/+、cM0の食道および接合部腺がんが登録された。年齢中央値は63歳、男性が89.3%、cT3/4の症例が80.5%、リンパ節転移陽性症例が79.7%であった。主要評価項目である全生存期間(OS)でハザード比(HR)が0.70、p=0.012、OS中央値がFLOT群66ヵ月、CROSS群39ヵ月、3年OS率がFLOT群54.7%、CROSS群50.7%と有意にFLOT群が優れていた。また、計画された術前治療を完遂できたのはFLOT群で87.3%、CROSS群で67.7%と差を認めた。無増悪生存期間(PFS)では、HR:0.66、p=0.001、3年PFS率がFLOT群51.6%、CROSS群35.0%と有意にFLOT群が優れていた。病理学的完全奏効(pCR)もFLOT群で16.8%、CROSS群で10.0%とFLOT群のほうが良好であった。術後合併症は両群で差を認めない結果であった。本試験結果をもって、切除可能局所進行食道・接合部腺がんにおいてFLOTレジメンの有意性が示された。本邦でも切除可能局所進行食道・接合部腺がんに対してFLOTやDCS(ドセタキセル、シスプラチン、S-1)をはじめとする術前化学療法が主流であり、本結果は受け入れられると考える。一方、術前CRT後pCRとならなかった症例にはCheckMate 577のエビデンスから術後ニボルマブ1年が無病生存期間(DFS)を有意に改善することが検証されているが、KEYNOTE-585やATTRACTION-5の結果より、術前・術後の化学療法に対して免疫チェックポイント阻害薬の有効性は検証されていない。今後FLOTとCROSSの直接比較のみならず、CRT後のニボルマブの有効性も含めた結果の解釈が必要になる。2.【大腸がん】切除不能大腸がん肝転移に対する肝移植の有効性(#3500)切除可能性のない大腸がん肝転移症例に対する標準治療は化学療法であるが、根治は困難である。今回、フランスの研究者から化学療法(C)に対する肝移植+化学療法(LT+C)の優越性を検証するTransMet試験が報告された。適格基準は65歳以下、PS 0-1、化学療法で3ヵ月以上部分奏効もしくは安定が得られている、CEAが80mg/mLもしくはベースラインより50%以上の減少、血小板8万超、白血球2,500超と厳格な基準で行われた。157例がスクリーニングされ、そのうち94例がランダム化された。LT+C群の47例のうち11例がPer protocolから外され(9例が病勢進行のためLTせず)、C群の47例のうち9例がPer protocolから外された(7例が肝切除実施のため)。主要評価項目の5年OS(ITT)はLT+C群が57%、C群が13%(HR:0.37、p=0.0003)であり、LT+Cが実施された36例のうち、26例に再発を認めた(一番多い部位は肺転移の14例)が、その後手術および焼灼療法が12例(46%)に実施され15例で最終的にがんがない状態を維持できていた。副次評価項目である3年・5年PFSは、LT+C群とC群で3年PFSがそれぞれ33%と4%、5年PFSがそれぞれ20%と0%(HR:0.34、p<0.0001)とLT+C群が有意に優れている結果であった。適切な症例選択をすることで、切除不能大腸がん肝転移症例に対してLT+Cは有意にOSとPFSのそれぞれを改善することが示された。長期予後が期待できない切除不能肝転移症例に対して根治の可能性を届けられることが示された。3.【大腸がん】CheckMate 8HW(#3503)CheckMate 8HW試験は1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ(NIVO+IPI)と標準治療(mFOLFOX6/FOLFIRI+/-ベバシズマブ/セツキシマブ)のPFSのデータがすでに2024 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposiumで報告されているが、前回と同様のdMMR/MSI-H切除不能大腸がんにおいて1次治療でNIVO+IPIを行った202例と標準治療を行った101例の追加情報が報告された。観察期間中央値は31.6ヵ月と延長したが、PFS中央値でNIVO+IPI群は到達せず、標準治療群は5.9ヵ月(HR:0.21、p<0.0001)とNIVO+IPI群が圧倒的に優れている結果であった。サブ解析でもNIVO+IPI群が肝転移症例、BRAF V600E変異症例、RAS変異症例など、免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しいとされる症例でも良好なHRを認めていた。また、本試験では標準治療群は増悪後NIVO+IPIを試験治療で行うことが可能になっており、今回2次治療までのPFS(PFS2)が報告された。標準治療群では試験治療とそれ以外を合わせて67%の症例がcross overされたが、PFS2中央値でNIVO+IPI群が未到達である一方、標準治療群は29.9ヵ月(HR:0.27)と後治療の実施も含め1次治療でNIVO+IPIを実施する有効性が示された。免疫関連有害事象については一定数認められたが、Grade3以上はいずれも5%以下であり、臨床的には許容できると解釈された。dMMR/MSI-H切除不能大腸がんの1次治療としてNIVO+IPIが重要な選択肢であることが検証されたが、NIVO単剤との比較データは今回報告されておらず、どちらを第1選択にするかの最終判断は、今後の報告を見てからになると考える。4.【大腸がん】PARADIGM試験のバイオマーカー解析(#3507)本邦からもRAS野生型切除不能大腸がんに対してパニツムマブ(Pmab)+mFOLFOX6とベバシズマブ(Bmab)+mFOLFOX6を1対1で比較したランダム化比較試験であるPARADIGM試験のバイオマーカー解析が報告された。治療前と治療後に血漿検体を採取してNGS解析を行った556例のうち、病勢進行(PD)で中止となった276例で治療開始時とPD時のゲノムの変化を解析した。PD症例のOSや増悪後の生存期間(PPS)は両群で差を認めず、PD時のacquired alterationsに注目すると、Pmab群で2つ以上のalterationsが52.4%の症例に認められた一方、Bmab群では43.3%に認められた。Pmab群で2つ以上のalterationsを認めた症例はalterationsを認めなかった症例よりも有意にPPSが短く、Pmab症例において獲得alterationsがPD後の生存に影響している可能性が示された。さらに獲得alterationsをpathwayごとに分けて解析すると、RTK/RAS経路のalterationsを認める症例はPmab群でPPSが不良である一方、CIMPやPI3K経路のalterationsを認める症例はBmab群でPPSが不良な結果であった。RTK/RAS経路とCIMP経路はOSでも同様の結果が認められ、獲得耐性のパターンがレジメンにより異なり、またそれが増悪後の生存に影響する可能性が示唆された。現在の臨床では、治療前後の血漿を用いたNGS解析は実施できないが、科学的には重要な示唆を持つ結果であった。5.【大腸がん】CodeBreaK 300のOSの報告(#LBA3510)CodeBreaK 300試験は前治療のあるKRAS G12C変異結腸直腸がんに対して、ソトラシブ960mg/日+Pmab群、ソトラシブ240mg/日+Pmab群、主治医選択(トリフルリジン・チピラシルまたはレゴラフェニブ)群を1対1対1で比較した第III相試験である。主要評価項目である盲検独立中央判定によるPFSは2つのソトラシブ+Pmab群が主治医選択群よりも有意に優れていることが検証されているが、副次評価項目であるOSの報告が、OSのイベントが50%を超えた今回のタイミングで行われた。症例数からOSの検証はできないが、観察期間中央値13.6ヵ月の段階で2つのソトラシブ+Pmab群が主治医選択群よりも良好な傾向が認められ、有意差はないもののソトラシブ960mg/日+Pmab群はHR:0.70と良好な結果であった。後治療として主治医選択群はその後31%がKRAS G12C阻害薬の治療を受けていた。その他の結果もupdateが報告され、ソトラシブ960mg/日+Pmab群は奏効割合が30%、Duration of Response中央値が10.1ヵ月、PFS中央値の再解析では5.8ヵ月(HR:0.46)の結果であった。これらの結果は、ソトラシブ960mg/日+PmabがKRAS G12C変異大腸がんの新たな選択肢であることを示すものであり、本邦でも今後早期の承認が期待される。6.【直腸がん】切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対するPD-1抗体の医師主導治験の長期治療効果(#LBA3512)スローン・ケタリング記念がんセンターから報告された切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対するdostarlimab(PD-1抗体)の医師主導治験は、14例という少数例の結果であったものの全例に臨床的完全奏効(cCR)が認められるという優れた結果であった。今回さらなる症例集積と治療効果の継続について報告がなされた。今回の報告では48例までの登録がなされており、Lynch症候群の確定検査がなされた41例のうち21例(51%)がLynch症候群の診断であった。またTumor Mutation Burdenの中央値が53.6、BRAF V600E変異が1例に認められた。PD-1抗体薬であるdostarlimabの投与が終わった42例で主要評価項目であるcCRが100%に認められ、観察期間中央値17.9ヵ月の時点で1例も再増悪を認めていなかった。もう1つの主要評価項目である12ヵ月cCRについても26.3ヵ月の観察期間中央値で100%の結果であった。Grade3以上の有害事象は認めず、安全性についても大きな懸念事項は認めなかった。すでにNCCNガイドラインでは、切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対する第1選択は免疫チェックポイント阻害薬6ヵ月となっており、企業主導の検証治験として行われているAZUR-1が進行中である。また本邦でも医師主導治験としてStageI~III直腸がんまでを対象にNIVOの有効性・安全性をみるVOLTAGE-2試験が進行中である。7.【大腸がん】c-Metをターゲットとした新規Antibody-Drug Conjugate(ADC)製剤であるABBV-400の安全性・有効性(#3515)ABBV-400はc-Metをターゲットとした抗体薬であるtelisotuzumabとtopoisomerase-1阻害薬のADC製剤である。BRAF野生型かつMSSの切除不能大腸がんの3次治療以降の症例を対象にdose escalation/expansionが行われた。1.6mg/kg、2.4mg/kg、3.0mg/kgと増量が行われ、Grade3以上の主な有害事象は貧血(35%)、好中球減少(25%)、血小板減少(13%)であった。すべてのGradeで嘔気(57%)、疲労(44%)、嘔吐(39%)が認められた。治療継続期間中央値は4.1ヵ月であり、1.6mg/kgではRelative Dose Intensity(RDI)が100%であったが、3.0mg/kgでは86.5%であった。奏効割合は16%であり、Duration of Response中央値は5.5ヵ月であった。用量が増えるに従って奏効率は上昇し、3.0mg/kgでは24%であった。C-Metタンパクの発現を≧10% 3+をcut offとして検討すると、2.4mg/kg以上で投与された症例のうちcut off以上の症例は奏効割合37.5%、PFS中央値5.4ヵ月と有望な結果であった。2.4mg/kgと3.0mg/kgを比較すると、2.4mg/kgのほうが、RDIが保たれ毒性は許容される結果であった。ABBV-400は大腸がん領域のADC製剤としては有望と考えられており、現在本試験の中でABBV-400とベバシズマブの併用が検討されている。

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aggressive ATLに対する同種造血幹細胞移植の有効性(JCOG0907)/ASCO2024

 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)のうち、急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型のATL(aggressive ATL)は予後不良で、化学療法による生存期間中央値は約1年と報告されている。一方、aggressive ATLへの同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)による3年全生存割合(OS)は約40%とされるが、その多くが後ろ向き解析に基づくものである。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、aggressive ATLに対するallo-HSCTの有効性と安全性を検証するため、第III相単群検証的試験(JCOG0907)を実施。琉球大学の福島 卓也氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で結果を発表した。・対象:allo-HSCTの実施に前向きな、未治療のaggressive ATL患者(血清抗HTLV-I抗体陽性、≦65歳[試験開始時は≦55歳に対する骨髄破壊的移植(MAST)のみであったが、2014 年9月にプロトコルを改訂し56~65歳に対する骨髄非破壊的移植(RIST)を組み込んだ]、ECOG PS≦3、十分な臓器機能を維持、中枢神経系浸潤なし)・治療プロトコル:1)導入化学療法(VCAP/AMP/VECP 療法※2014年9月に一時的にモガムリズマブ併用も可としたがその後不可とした)2)allo-HSCT[血縁ドナー]MAST:ブスルファン12.8mg/kg+シクロホスファミド120mg/kg、GVHD予防(シクロスポリン+short termメトトレキサート[sMTX])RIST:ブスルファン12.8mg/kg+フルダラビン180mg/m2、GVHD予防(シクロスポリン)[非血縁ドナー]MAST:全身放射線照射(12Gy)+シクロホスファミド120mg/kg、GVHD予防(タクロリムス+sMTX)RIST:ブスルファン+フルダラビン+全身放射線照射(2Gy)、GVHD予防(タクロリムス+sMTX)・評価項目:[主要評価項目]全登録患者における3年OS 主な結果は以下のとおり。・2010年9月~2020年6月に、110 例(急性型72例、リンパ腫型27例、予後不良因子を有する慢性型9例、予後不良因子のない慢性型1例、ホジキンリンパ腫1例)が登録された。年齢中央値は55(33~65)歳、男性/女性=54/56例、PS 0/1/2/3=56/49/3/2例であった。・何らかのallo-HSCTを受けた全92例の患者のうち、試験治療としてのallo-HSCT実施は41例(MAST 19例/RIST 22例、血縁12例/非血縁29例[試験移植群])、後治療としてのallo-HSCT実施は51例(MAST11例/RIST40例、血縁11例/非血縁15例/臍帯血25例[非試験移植群])で、後者のうち 35例が初回寛解中、16例が進行/再発後のallo-HSCT 実施であった。・登録された110例の3年OSは44.0%(90%信頼区間[CI]:36.0~51.6)で、目標とする閾値(両側90%CIの下限値25%)を上回り主要評価項目は達成された。・移植実施までの期間中央値は、試験移植群4.7ヵ月、非試験移植群4.3ヵ月で、両群に差を認めなかった。・年齢とPSで調整し、移植実施の有無を時間依存共変量とした多変量解析によるOSハザード比は、試験移植群vs.非試験移植群が0.92(95%CI:0.55~1.51)で試験移植群に延命効果を認めなかったが、upfront移植(試験移植群と非試験移植群のうち初回寛解中の移植実施例)vs.移植非実施群が0.65(0.33~1.31)で、upfront allo-HSCTは延命効果を示した。・ドナーソース別にみたOSハザード比は、非血縁vs.血縁が0.94(95%CI:0.49~1.79)、臍帯血vs.血縁が1.20(0.59~2.46)で、ドナーソース間で生存に有意差を認めなかった。・試験移植群41例のうち、治療関連死は血縁者間移植16.7%、非血縁者間移植20.7%で、一時的に試験中止とする基準を下回った。死亡全70例の死因は、原病34例、試験移植関連9例、非試験移植関連21例、その他の疾患6例であった。 福島氏は、未治療のaggressive ATLに対するallo-HSCT について、本試験で採用した移植法は延命効果が明確でなかったが、初回寛解時にできる限り早期に移植を実施する治療戦略であるupfront allo-HSCTは推奨されると結論付けた。

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リウマチ性心疾患、低中所得国で死亡率が高い/JAMA

 リウマチ性心疾患(RHD)成人患者の死亡率は高く、弁膜症の重症度と関連しており、一方で弁手術と弁形成術は死亡率の大きな低下と関連していることを、インド・All India Institute of Medical SciencesのGanesan Karthikeyan氏らが、国際多施設共同前向き観察研究「INVICTUS試験」の結果で報告した。RHDは、低中所得国において依然として公衆衛生上の問題となっているが、複数の流行国で患者を登録した大規模研究はほとんどなかった。今回の結果を受けて著者は、「抗菌薬による予防と抗凝固療法を中心とした現在のアプローチに加え、外科的治療とインターベンション治療へのアクセスを改善する必要性が高まっている」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月5日号掲載の報告。24ヵ国のRHD患者約1万4千例の予後を前向きに調査 研究グループは、RHDが流行中の低中所得国24ヵ国の138施設において、心エコー検査により臨床的にRHDが確認され同意が得られた18歳以上の成人患者を連続登録し、6ヵ月ごとに対面または電話で追跡調査を行い、1年ごとに対面で評価した。 主要アウトカムは全死因死亡、副次アウトカムは死因別死亡、心不全(HF)による入院、脳卒中、感染性心内膜炎、リウマチ熱の再発などであった。アウトカムは、世界銀行グループ加盟国の最新の所得水準別分類(低所得国[LICs]、低中所得国[LMICs]、高中所得国[UMICs]、高所得国[中東、北アフリカ]、北米、南アジア、サハラ以南)に基づきイベント発生率を分析し、多変量Cox回帰モデルを使用して死亡の予測因子を同定した。 2016年8月~2022年5月に、計1万3,696例のRHD患者が登録された。2,769例(20%)がLICs(エチオピア、マラウイ、モザンビーク、ネパール、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ)、8,453例(62%)がLMICs(カメルーン、エジプト、インド、ケニア、ニジェール、パキスタン、フィリピン、スーダン、ザンビア、ジンバブエ)、2,474例(18%)がUMICs(ボツワナ、ブラジル、中国、カザフスタン、メキシコ、パラグアイ、南アフリカ共和国)であった。全体の平均年齢は43.2歳、女性が72%であった。死亡率は14.2%、その約7割は血管死 観察期間中央値3.2年(4万1,478人年)において、1万2,967例(94.7%)の生命予後に関するデータが入手可能であった。 全体で1,943例(14.2%、4.7%/人年)が死亡した。死亡例の67.5%(1,312例)は血管死で、主にHF(667例)または心臓突然死(352例)であった。 観察期間中、弁手術を受けた患者は少なく(604例、4.4%)、HFによる入院(805例、5.9%、年間発生頻度2.0%)も低値であった。また、非致死的脳卒中(年間発生頻度0.6%)、感染性心内膜炎(0.07%)、リウマチ熱の再発(0.02%)もまれであった。 死亡リスクの増加と関連していた因子は、うっ血性心不全(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.50~1.87、p<0.001)、肺高血圧症(1.52、1.37~1.69、p<0.001)、心房細動(1.30、1.15~1.46、p<0.001)など重症弁膜症のマーカーであった。一方、観察期間中の弁手術(0.23、0.12~0.44、p<0.001)や弁形成術(0.24、0.06~0.95、p=0.042)は死亡リスクの低下と関連していた。 患者レベルの因子を調整した後、国の所得水準が高いことが死亡率の低下と関連していることが認められた。

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切除可能なdMMR大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブ術前補助療法が有用/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の局所進行大腸がん患者において、ニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法の忍容性および安全性は良好であり、高い病理学的奏効を得られたことが、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMyriam Chalabi氏らによる第II相多施設共同単群試験「NICHE-2試験」の結果で示された。dMMR腫瘍は、転移のない大腸がん患者の10~15%に認められ、化学療法の有効性は限られている。小規模なNICHE試験でニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法の有用性が示唆されていたが、さらに多くの症例において有効性と安全性を検討する目的でNICHE-2試験が行われた。NEJM誌2024年6月6日号掲載の報告。計115例を対象に安全性と3年無病生存率を評価 研究グループは、未治療で遠隔転移のない切除可能な局所進行dMMR直腸腺がんで、最初のNICHE試験ではStageI~III、2020年10月のプロトコール改訂後のNICHE-2試験ではcT3以上かつ/またはN+の18歳以上の患者を登録し、1日目にイピリムマブ1mg/kgとニボルマブ3mg/kgを、15日目にニボルマブ3mg/kgを投与した後、試験登録後6週間以内に手術を行うこととした。 主要評価項目は、適時手術(治療関連有害事象による手術の遅延が2週間以内)で定義された安全性および3年無病生存率(DFS)、副次評価項目は病理学的奏効とゲノム解析であった。 本報告では、NICHE試験に登録された32例、およびNICHE-2試験に登録された83例を合わせた115例(登録期間2017年7月4日~2022年7月18日)の解析結果が示されている。手術遅延なしが98%、病理学的著効が95%、病理学的完全奏効が68% 115例の患者背景は、年齢中央値60歳(範囲:20~82)、58%が女性、67%がStageIII、64%がcT4であった。 適時手術が行われた患者は、115例中113例(98%、97.5%信頼区間[CI]:93~100)で、2週間以上の手術遅延に至った治療関連有害事象は2例(2%)のみであった。免疫関連有害事象は全Gradeで73例(63%)、Grade3または4が5例(4%)に発現したが、治療中止に至った有害事象は認められなかった。 有効性解析対象111例のうち、109例(98%、95%CI:94~100)に病理学的奏効が認められた。105例(95%)が病理学的著効(MPR:残存腫瘍が10%以下と定義)、75例(68%)が病理学的完全奏効(pCR:原発巣およびリンパ節のいずれも残存腫瘍なし)であった。 追跡期間中央値26.2ヵ月(範囲:9.1~65.3)時点で、再発は認められなかった。追跡期間が3年を超えた37例は、全例、無病のままである。 なお著者は研究の限界として、大腸がんの放射線学的Stage判定は不正確であることが多く、過剰治療につながる可能性があることなどを挙げている。

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禁煙を拒む患者に試すアプローチ法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者中性脂肪が高い原因は、タバコかもしれませんね。(Relevance:関連性)タバコは中性脂肪にも悪さをするんですね。そうですね。新型コロナの重症化とも関連していますしね。(Risks:危険性)えっ、そうなんですか!?(驚いた顔)ですが、すぐに禁煙できれば、体にさまざまな良い変化が現れますよ!(Rewards:効果)へぇー、そしたら血圧も下がりますかね。画 いわみせいじそうですね。ところで、禁煙するに当たって何か懸念されるようなことはありますか?(Roadblocks:懸念)意志が弱くて、続ける自信がなくて…。なるほど。意志が弱い方でも禁煙に成功する方法がありますよ!色々な方法があるので、また次回説明しますね。(Repetition:繰り返す)はい。わかりました。(うれしそうな顔)ポイント5Rアプローチは、か行(関連性、危険性、繰り返す、懸念、効果)で覚えておくと便利です。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)表.禁煙に無関心な喫煙者に対する5Rアプローチ5R内容Relevance(か:関連性)なぜ禁煙が必要かを患者に関連付けるRisks(き:危険性)喫煙の危険性を説明するRepetition(く:繰り返す)動機付けを繰り返すRoadblocks(け:懸念)禁煙への懸念を取り除くRewards(こ:効果)禁煙で得られる効果を確認する参考:川根博司, 工藤翔二, ほか編. 南江堂. 禁煙指導の実際. 呼吸器疾患 最新の治療 2007-2009. 2007:464-466.Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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コーヒー・紅茶と認知症リスク、性別や血管疾患併存で違い

 コーヒーや紅茶の摂取は、認知症リスクと関連しているといわれているが、性別および血管疾患のリスク因子がどのように関連しているかは、よくわかっていない。台湾・国立台湾大学のKuan-Chu Hou氏らは、コーヒーや紅茶の摂取と認知症との関連および性別や血管疾患の併存との関連を調査するため、本研究を実施した。Journal of the Formosan Medical Association誌オンライン版2024年5月6日号の報告。 対象は3施設より募集したアルツハイマー病(AD)の高齢患者278例、血管性認知症(VaD)患者102例、対照者468例は同期間に募集した。コーヒーや紅茶の摂取頻度および量、血管疾患の併存の有無に関するデータを収集した。コーヒーや紅茶の摂取と認知症リスクとの関連性を評価するため、多項ロジスティック回帰モデルを用いた。性別および血管疾患の併存により層別化して評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・コーヒーや紅茶の摂取において、さまざまな組み合わせおよび量は、AD、VaDに対する保護効果が認められた。・1日当たり3杯以上のコーヒーまたは紅茶の摂取は、AD(調整オッズ比[aOR]:0.42、95%信頼区間[CI]:0.22〜0.78)およびVaD(aOR:0.42、95%CI:0.19〜0.94)に対する予防効果が認められた。・層別化分析では、多量のコーヒーおよび紅茶の摂取によるADの保護効果は、女性および高血圧症患者でより顕著であった。・コーヒーまたは紅茶の摂取は、糖尿病患者におけるVaDリスク減少と関連していた(aOR:0.23、95%CI:0.06〜0.98)。・脂質異常症は、コーヒーまたは紅茶の摂取とADおよびVaDリスクとの関連性を変化させた(各々、p for interaction<0.01)。 著者らは、「コーヒーおよび紅茶の摂取量が増加すると、ADおよびVaDリスクが低下することが示唆され、性別や高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの血管疾患の併存により違いが見られることが明らかとなった」としている。

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早期乳がん術前Dato-DXd+デュルバルマブ、33%が化学療法をスキップ可(I-SPY2.2)/ASCO2024

 70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)で高リスクのStageII/IIIの早期乳がんの術前療法として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)+デュルバルマブ併用療法を4サイクル投与した第II相I-SPY2.2試験の結果、33%の患者が化学療法を行わずに手術が可能となったことを、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRebecca A. Shatsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 I-SPY2.2試験は、高リスク早期乳がんの術前療法を評価する多施設共同第II相プラットフォーム連続多段階ランダム割付試験(Sequential Multiple Assignment Randomized Trials:SMART)※で、患者が最大の病理学的完全奏効(pCR)を得るための個別化医療を提供することを目的としている。ブロックAでDato-DXd+デュルバルマブを4サイクル投与し、MRIと生検でpCRが予測された場合は早期に手術を受けることができ、予測されない場合は化学療法や標的療法を行うブロックB/Cに進む。今回は、ブロックAの結果が報告された。※連続多段階ランダム割付試験:連続する多段階のランダム割り付けを通して、一連の動的治療計画を立てるためのデザイン 患者(すべてHER2-)は、免疫反応、DNA修復不全(DRD)、ホルモン受容体の状況に基づいて、(1)HR陽性/免疫陰性/DRD陰性、(2)HR陰性/免疫陰性/DRD陰性、(3)免疫陽性、(4)免疫陰性/DRD陽性、(5)HR+、(6)HR-の6つの腫瘍反応予測サブタイプ(RPS)に分類された。主要評価項目はpCRの達成であった。 主な結果は以下のとおり。・2022年9月~2023年8月に106例がブロックAに登録された。年齢中央値は50.0歳(範囲:25.0~77.0)、HR-が60.4%であった。・ブロックA終了後、33%(35例)が化学療法を受けることなく早期に手術に進むことができた。・Dato-DXd+デュルバルマブ治療後のRPS分類によるpCR率(95%信頼区間)と事前に設定された閾値は下記のとおり。 (1)HR陽性/免疫陰性/DRD陰性(25例):3%(0~7)、閾値15% (2)HR陰性/免疫陰性/DRD陰性(23例):13%(3~23)、閾値15% (3)免疫陽性(47例):65%(47~83)、閾値40% (4)免疫陰性/DRD陽性(11例):24%(4~44)、閾値40% (5)HR+(42例):18%(6~30)、閾値15% (6)HR-(64例):44%(32~56)、閾値40%・(3)の免疫陽性のサブタイプ(HR+もHR-も含む)のみが第III相試験へ進むための「卒業」の閾値に到達した。・安全性プロファイルは既知のものと同様であった。多く発現した有害事象(AE)は、悪心、口内炎、疲労、発疹、便秘、脱毛などで、Grade3以上のAEはまれであった。間質性肺疾患は1例に発現した。

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早期子宮体がんへのホルモン療法、40歳未満では全摘術と長期予後に差がない可能性/ASCO2024

 子宮体がんの罹患者が増加し、女性の出産年齢の高年齢化が進む中で、妊孕性を温存するためにホルモン療法への関心が高まっているが、長期予後に関するデータは限られている。米国のNational Cancer Database(NCDB)登録データを用いて、ホルモン療法と子宮全摘術の長期予後を比較した後ろ向き解析結果を、米国・コロンビア大学の鈴木 幸雄氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で報告した。・対象:NCDBに登録された、18~49歳、臨床病期I、Grade1~2で、1次治療としてホルモン療法あるいは子宮全摘術を受けた早期子宮体がん患者(ホルモン療法あるいは子宮全摘術前に放射線療法あるいは化学療法を受けている患者は除外)・評価項目:ホルモン療法の使用傾向(全体集団:1万5,849例)、生存期間(傾向スコアマッチングコホート:2,078例) 主な結果は以下のとおり。・2004~20年に診断され、1次治療としてホルモン療法を受けた1,187例(7.5%)、子宮全摘術を受けた1万4,662例(92.5%)の、計1万5,849例の患者が特定された。・ホルモン療法の使用は、2004年の5.2%から2020年には13.8%に増加した(p<0.0001)多変量モデルでは、年齢の若さ、診断年の新しさ、非白人、腫瘍悪性度の低さ、臨床病期早期がホルモン療法の使用と関連していた(すべてp<0.05)。・診断時の年齢、人種、診断年、臨床病期、腫瘍悪性度などを共変量とした傾向スコアマッチング後の2,078例を対象として、1次治療としてホルモン療法を受けた患者と子宮全摘術を受けた患者の予後が比較された。・2年生存率はホルモン療法群98.6% vs.子宮全摘術群99.4%、5年生存率は96.8% vs.98.5%、10年生存率は92.7% vs.96.8%で子宮全摘術群で有意に高かった(ハザード比[HR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.06~3.21)。・年齢別にみると、40~49歳では2年生存率は96.0% vs.100.0%、5年生存率は90.4% vs.99.4%、10年生存率は79.1% vs.97.1%で子宮全摘術群で有意に高かった(HR:4.94、95%CI:1.89~12.91)。一方で40歳未満では、2年生存率は99.2% vs.99.4%、5年生存率は98.2% vs.98.5%、10年生存率は95.6% vs.96.5%で両群の差はみられなかった。・臨床病期および腫瘍悪性度別に層別化したサブグループ解析の結果、ホルモン療法と子宮全摘術の予後に有意な差はみられなかった。 鈴木氏は、ホルモン療法の適応が不明であることや、がん特異的生存をみているわけではないことなど本研究の限界を挙げたうえで、40歳未満ではホルモン療法と子宮全摘術の10年生存率に差はみられず、一方で40~49歳ではホルモン療法の予後は不良であったとまとめている。

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atypical EGFR変異陽性NSCLC、amivantamab+lazertinibの有用性は?(CHRYSALIS-2)/ASCO2024

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に感受性を示すcommon EGFR遺伝子変異(exon19欠失変異、exon21 L858R変異)以外の、uncommon変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者は、common変異を有する患者と比べて予後不良である。しかし、EGFR遺伝子のuncommon変異のうち、exon20挿入変異を除いたatypical変異を有するNSCLC患者において、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFR-TKIのlazertinibの併用療法は、有望な抗腫瘍活性を示すことが明らかになった。国際共同第I/Ib相試験「CHRYSALIS-2試験」のコホートC(未治療または2ライン以下の治療歴を有するatypical EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者が対象)の結果を、韓国・延世がんセンターのByoung Chul Cho氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で報告した。 本発表における対象患者は、未治療または2ライン以下の治療歴(第3世代EGFR-TKIによる治療歴のある患者は除外)を有するatypical EGFR遺伝子変異(exon20挿入変異、exon19欠失変異、exon21 L858R変異は除外)陽性NSCLC患者105例であった。対象患者にamivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回)を投与し、有用性を検討した。主要評価項目は治験担当医師評価に基づく奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などとした。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年1月12日)における追跡期間中央値は16.1ヵ月であった。・atypical EGFR遺伝子変異のうち、主なものはexon18 G719X変異(57%)、exon21 L861X変異(26%)、exon20 S768X変異(24%)であった。・全体集団におけるORRは52%、DORは14.1ヵ月、PFS中央値は11.1ヵ月、OS中央値は未到達であった。・未治療のサブグループ(49例)におけるORRは57%、DORは20.7ヵ月、PFS中央値は19.5ヵ月、OS中央値は未到達であった。・既治療のサブグループ(56例)におけるORRは48%、DORは11.0ヵ月、PFS中央値は7.8ヵ月、OS中央値は22.8ヵ月であった。・既治療のサブグループの患者のうち、88%がEGFR-TKIによる治療歴があった。・既存の標準治療による治療を受けたatypical EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者のリアルワールドデータ(83例)と比較した結果、治療中止までの期間の中央値はリアルワールド群が3.2ヵ月であったのに対し、amivantamab+lazertinib群は14.0ヵ月であった。また、2年OS率はそれぞれ44%、79%であった。・有害事象は、EGFRまたはMET阻害に関連するGrade1/2の事象が多かった。最も多く発現した有害事象は発疹、爪囲炎(いずれも67%)であった。 Cho氏は「本試験において、amivantamab+lazertinibはatypical EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者に対し、持続的かつ臨床的意義のある抗腫瘍活性を示した。これまでのところ、amivantamabを用いた併用療法は、EGFR遺伝子のcommon変異、exon20挿入変異、atypical変異のいずれにおいても有効性を示している」とまとめた。

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切除可能な局所進行非小細胞肺がんに対するニボルマブの周術期治療の効果/NEJM (解説:中島淳氏)

 外科手術は遠隔転移のない非小細胞肺がんを根治するために、最も有効な手段である。しかし、病期が進むほど術後再発率は高く、現在の国内外の肺がん診療ガイドラインでは臨床病期IIIA期に手術適応の境界線が引かれている。 手術後の成績を改善させるために補助療法が考案されてきたが、今世紀に入り術後platinum-doubletを用いた補助化学療法、そして術前補助化学療法の有効性がそれぞれメタアナリシスによって確かめられたが、いずれも比較的軽微な予後改善にとどまっていた。近年になり分子標的阻害薬や抗PD-1、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が、手術不適応進行非小細胞肺がんに対する従来の化学療法を上回る有効性が示されてから、これを手術補助療法に用いる臨床研究が盛んに行われるようになった。ICIによる術後補助療法、術前補助療法の有効性はすでに多くの臨床研究で明らかにされてきたが、この論文に示された研究では、術前と術後にニボルマブを用いた「周術期」補助療法が検討された。手術を挟んだ前後に行う治療は歴史的には「サンドイッチ療法」とも称され、他部位の固形がん治療で試みられてきた。 本研究(CheckMate-77T試験)は欧米・中国・日本などの多施設共同試験である。臨床病期II-IIIB期(UICC-AJCC第8版病期分類)、切除可能な非小細胞肺がん患者461例を対象とした前向き無作為化二重盲検試験であり、プライマリエンドポイントはevent-free survival(EFS)である。試験群にはニボルマブとplatinum doublet化学療法を術前に4サイクル(3週ごと)投与、術後はニボルマブを4週ごとに、最長1年間投与した。対照群にはplatinum doublet化学療法を術前に4サイクル(3週ごと)投与、術後はプラセボを4週ごとに最長1年間投与した。 中央値25.4ヵ月の追跡調査では、EFSは試験群70.2%、対照群50.0%であり、42%のリスク低減が観察された。4サイクルの術前治療が完遂できた割合はニボルマブ群85%、対照群89%、手術施行は78%、77%、術後補助療法は62%、65%に行われ、ニボルマブ投与の忍容性が確かめられた。 術前補助療法の意義は、腫瘍量を減らして完全切除率向上が期待されること、術後療法よりも忍容性が高いこと、および切除検体による補助療法の効果判定が行えることである。ICIの高い抗腫瘍効果が期待されるが、本研究では切除症例においてニボルマブ群のpathological complete response(pCR)率は25.3%であり、対照群の4.7%と比べて有意に高値であった。本研究では、2群ともにpCRが得られた症例では得られなかった症例と比べてEFSのハザード比(HR)が0.40、0.21であった。ICIは腫瘍のPD-L1発現量が高いほど効果が高いが、サブ解析ではがん組織におけるPD-L1発現が50%以上の症例ではEFSのHRが0.26と非常に低かったが、50%未満ではHRにおいて対照群と有意差はみられなかった。 術前補助療法の負の側面としては、補助療法に伴う合併症あるいは侵襲のために一般状態が低下して耐術不能となる、あるいは術前治療が無効で手術の機会を逸する危険性がある。本研究では、術前治療後の治療継続率に関しては2群間の有意差は認められず、その点では許容される治療であると判断された。 ニボルマブの術前・術後補助療法が、進行非小細胞肺がんの外科治療成績を向上させることは、本研究で明らかにされた。同様の研究はペムブロリズマブ(抗PD-1抗体:KEYNOTE-671試験)、デュルバルマブ(抗PD-L1抗体:AEGEAN試験)などでも行われており、いずれもICIの上乗せ効果が報告されている。 本研究では従来の報告と同様に、がん組織のPD-L1発現度が高い場合には有用性が高いが、逆も真であり、実臨床に応用するためには治療開始前にPD-L1発現度を検査する必要がある。術後ニボルマブ投与の必要性についてはどうだろうか。先行研究のCheckMate-816は、ニボルマブの術前投与の有効性に関する臨床研究であり、対照群は術前にplatinum-doubletと投与、試験群にはこれにニボルマブを加えて投与するという類似した研究である。対象にはcIB期が含まれ多少異なるが、ニボルマブ群のpCRは24.0%とほぼ同等であり、EFSは31.6ヵ月(対照群20.8ヵ月)であった。あくまで参考ではあるが、大きな違いはないように思われる。とくにpCRを達成した症例の術後ニボルマブ継続投与の意義については、医療経済の観点からも重要である。今後、術後投与群・非投与群を比較した試験が必要になるかもしれない。

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第216回 Apple Watchの「心房細動履歴プログラム」をPMDAが医療機器承認、近い将来、針を刺さず血糖値測定ができる機能も搭載される?

ウェアラブルデバイスを使ってみたら……、睡眠の点数評価に一喜一憂する日々こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。皆さんは、最近流行りの健康管理機能が付いたウェアラブルデバイスを身に付けていますか? Apple Watch、Fitbit、Google Pixel Watchなどのウォッチタイプが一般的ですが、リストバンドタイプや指輪(リング)タイプも市販されています。私も人からもらった「Oura ring」というフィンランド・ŌURA社製の指輪タイプをこの半年くらい使っています。日中の心拍数とワークアウト心拍数や、夜間の安静時心拍数、心拍変動、体表温、呼吸数などを測定できます。私はもっぱら睡眠の点数を把握するのに用いています。100点満点中よく寝た日は80点くらいになるのですが、ちょっと夜更かしすると60点台に落ちてしまいます。まあ、自己管理にはそこそこ役立っているとは思うのですが、よく寝たつもりでも60点台が出ると、「寝足りないのかな」と不安になってしまう点と、久しぶりに会った友人から「あれ、結婚指輪なんてしてたっけ」とからかわれるのが玉に瑕です。なお、充電は4、5日に1回で済み、就寝中に装着していても気にならない点はウォッチタイプよりも使い勝手がいいと思います。ということで、今回はこの5月に「心房細動履歴プログラム」が医療機器承認されたApple社のApple Watchについて書いてみたいと思います。Apple Watchは、2018年に心電図測定機能を搭載して以降、ヘルスケア機能の拡充を図ってきました。今回承認された心房細動履歴プログラムは、光学式心拍センサーを用いた現在の心電図測定機能(Apple Watch ECG app)を拡充したものです。こうした機能拡充の延長線で、近い将来、「針なし」で血糖値の測定も行えるデバイスも登場しそうです。「Appleの心電図アプリケーション」、「Appleの不規則な心拍の通知機能」に次ぐ機能、米国から2年近く遅れての承認5月22日、Apple社は、同社のApple Watchに搭載された心房細動履歴プログラムが、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から医療機器プログラムとして承認され、同日から日本でも利用可能になったと発表しました。医師から心房細動と診断された22歳以上の人が対象です。なお、このプログラム、世界的には2022年9月に公開されたwatchOS9で利用可能となっており、すでに世界で160近い国・地域で利用されているとのことです。Apple Watchを使っている人はご存じだとは思いますが、Appleはこれまでに「Appleの心電図アプリケーション」(一般的名称:家庭用心電計プログラム)、「Appleの不規則な心拍の通知機能」(同:家庭用心拍数モニタプログラム)といったプログラムをApple Watch向けに開発しており、これらは日本でも管理医療機器の区分で承認され、使われています。つまり、Apple Watchは血圧計などと同様、一般向けの医療機器としてごく日常的に用いられているのです。ただ、日本での承認は米国など各国と比べると大体2年遅れというのが実情です。心房細動履歴プログラムのベースとなっている心電図測定機能(Apple Watch ECG app)がApple Watchに搭載されたのは2018年9月に公表されたApple Watch Series4からでした。Apple Watch ECG appは米国食品医薬品局(FDA)から医療機器として認可を得て、Series4発売とともに米国などではこのアプリが使用可能となりました。しかし、日本では、Apple Watch series4発売時、Apple Watch ECG appの機能は取り除かれていました。「心電図測定」「脈の不整通知」という機能が医療機器に該当するため、国内での医療機器として認可を得る必要があったからです。ようやく、Apple Watch ECG appが家庭用心電計プログラムとして日本で承認されたのは2年後の2020年9月、実際の利用は2021年1月のwatchOS7.3へのアップデートからでした。今回の心房細動履歴プログラムもこれらと同様、米国から実に2年近く遅れての承認となりました。心房細動の徴候を示した時間の推定値をApple Watchの1週間の総装着時間に対する割合として通知Apple社の資料によれば、心房細動履歴プログラムは、Apple Watchに搭載された心拍センサーによって心拍を適時モニタリングし、心房細動の兆候を判別します。iOS 17.0以降とwatchOS 10.0以降のApple Watchの利用者が使用できます。具体的には、心房細動の徴候を示した時間の推定値を、Apple Watchの1週間の総装着時間に対する割合として、1週間ごとに通知するとしています。Apple Watchは心拍を常時モニタリングしているわけではないため、心房細動の持続時間ではなく、推定値として通知するとのことです。推定値は、連動するiPhoneの「ヘルスケア」アプリに週ごとのグラフとして表示されます。運動、睡眠、体重、飲酒量といったヘルスケアアプリが収集できるデータを、推定値のグラフと同時に提示することで、心房細動のリスクとなる生活習慣の改善が容易になるとしています。ところで、FDAは5月、この「心房細動履歴」機能をMedical Device Development Tools (MDDT:医療機器開発ツール)として承認しています。FDAによれば、Apple WatchはMDDTの承認を取得したはじめてのスマートウォッチだそうです。これによって、医療機関における臨床試験においても、Apple Watchの心房細動履歴をデータとして用いることができるようになるとのことです。もし血糖値の測定もウェアラブルデバイスでできるようになれば単なる健康管理だけではなく臨床的な有用性も高まるApple Watchをはじめとするウェアラブルデバイスですが、個人的には早く血糖値の測定もできるようにならないかと思っています。私は糖尿病ではありませんが、機会があって持続血糖測定器 「Dexcom G6」を数日間装着し、自分の血糖値の動きをiPhoneでウォッチし続けたことがあります。Dexcom G6はご存じのように、腹部などの皮下に微小の針を穿刺して留置した細いセンサーで、皮下間質液のブドウ糖濃度を持続的に測定するデバイスで、ほぼリアルタイムで血糖値がiPhoneに表示されます(測定された血糖値は5分ごとに自動的にモニターもしくはスマートフォンに送信)。食後の血糖値がいかにどーんと跳ね上がるか、よく言われる「運動するなら食後30分」の妥当性などを自身で実感できます。実際、食後30分内に早足で散歩をしたら、上がった血糖値がみるみる下り始めたのには驚きました。これは、糖尿病患者や糖尿病予備軍の人の患者教育にももってこいだな、と思ったものです。ただ現在のところDexcom G6やFreeStyleリブレなどの持続血糖測定器が保険診療で使えるのはインスリン注射を1日1回以上行っている糖尿病患者のみです。微小の針が付いた医療機器のため、一般向けの医療機器としては世界のどこでも認められていないようです。「吸収分光法を使って皮膚の下にレーザー光を当てて体内の血糖値を測定するチップを開発中」との報道仮に一般向けのデバイスであるApple Watchに搭載するとしたら、「針なし」(非侵襲的に血液検査なしで)で血糖値を測る必要がありそうですが、果たしてそんなことは実現可能なのでしょうか。実際、Apple社がそうした研究をしているとの報道もあります。2023年3月23日にテクノエッジに掲載された「Apple Watchで血糖値測定はまだ数年先。センサーの小型化が課題」と題する記事は、「Apple社が Apple Watch向けに非侵襲性、つまり注射針を刺す必要がない血糖値センサーの開発に取り組んでいることは長らく噂になってきた。しかし今なお実現にはほど遠く、あと3~7年は掛かる見通し」と書いています。同記事によれば、開発中の血糖値センサーは「吸収分光法を使っており、皮膚の下にレーザー光を当てて体内の血糖値を測定するシリコンフォトニクスチップ」だそうです。ただ、このセンサー、「以前は卓上サイズの大きさだったものが、現時点でのプロトタイプはiPhoneに近いサイズになり、腕に装着できるほどになった」とのことです。センサーがiPhoneサイズということは、実際にApple Watchに搭載できるようになるにはまだまだ相当時間がかかりそうです。とはいえ、光を当てて体内の血糖値を無侵襲に測定する技術が開発中とは驚きです。なお、他の報道によれば、ウェアラブルデバイスによる血圧測定は、血糖値測定よりも先に実現しそうだとのこと。心臓病や高血圧、そして糖尿病などの生活習慣病の通常の管理に、ウェアラブルデバイスが必須となる日はそう遠くなさそうです。

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T-DXd治療中の転移乳がん患者、ePROモニタリングがQOLに効果(PRO-DUCE)/ASCO2024

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)で治療中のHER2+転移乳がん患者において、通常ケアに加え、電子患者報告アウトカム(ePRO)モニタリングを実施することにより、24週目のglobal QOLスコアのベースラインからの変化が良好だったことが、わが国で実施されたPRO-DUCE試験で示された。関西医科大学の木川 雄一郎氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 ePROモニタリングは、まず患者が自身のスマートフォンなどのデバイスを用いて「ヒビログ」アプリから、体温・SpO2を毎日、PRO-CTCAE症状を週1回報告する。報告された症状が事前に設定した閾値を超えた場合、医師をはじめとした医療従事者に警告通知メールが送信されePROが評価される。さらに必要に応じて72時間以内に電話相談を実施するという流れである。木川氏らは、T-DXd投与中の乳がん患者におけるePROモニタリングのQOLへの効果を、多施設共同無作為化非盲検群間比較探索研究で評価した。・対象:T-DXdの投与対象となるHER2+転移乳がん患者・試験群:通常ケア+ePROモニタリング・対照群:通常ケア・評価項目:[主要評価項目]EORTC QLQ-C30に基づくglobal QOLスコアのベースラインから24週目の変化[副次評価項目]各ドメインにおけるベースラインから24週目/追跡期間終了時までの変化、がん関連の疲労、EORTC QLQ-C30における悪化までの期間、ePROのアドヒアランスなど 主な結果は以下のとおり。・2021年3月~2023年1月に日本の38病院で登録された111例をePROモニタリング群(56例)と通常ケア群(55例)に割り付けた。QOL解析の対象はそれぞれ54例と52例であった。・24週目のglobal QOLスコアのベースラインからの変化は、ePROモニタリング群が通常ケア群より有意に良好だった(平均差:8.0、90%信頼区間[CI]:0.2~15.8、p=0.091、探索的研究のためαエラー<0.10で有意と設定)。・24週目の疲労はePROモニタリング群で有意に改善したが(平均差:-8.4、95%CI:-16.1~-0.6)、悪心/嘔吐では差がなかった(平均差:0.5、95%CI:-6.2~7.1)。・24週目の役割機能、認知機能、社会機能はePROモニタリング群で良好で、それぞれの平均差は10.0(95%CI:1.1~18.9)、6.3(同:1.1~11.5)、10.9(同:3.9~18.0)であった。・global QOLスコアの臨床的に意義のある悪化までの期間の中央値は、ePROモニタリング群で3.9ヵ月、通常ケア群で3.0ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.73、95%CI:0.45~1.17)。認知機能については、ePROモニタリング群16.3ヵ月、通常ケア群6.3ヵ月と有意に延長した(HR:0.41、95%CI:0.24~0.71)。 木川氏は「本試験の結果から、T-DXd投与中のHER2+転移乳がん患者において、ePROモニタリングによりQOLを維持・改善する可能性が示唆される」と期待を示した。

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賞金がかかると減量達成率が向上する

 男性を対象とした研究から、金銭的なインセンティブがあると減量目標の達成率が有意に向上するという結果が報告された。第31回欧州肥満学会(ECO2024、5月12~15日、イタリア・ベニス)で英スターリング大学のPat Hoddinott氏らが発表し、同14日に「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に論文が掲載された。 この研究におけるインセンティブは、設定された減量目標を達成した場合に、最大400ポンド(約8万円)を受け取れるというもの。研究に参加して減量に成功したNevil Chesterfieldさん(68歳)は、「私にとって研究参加は大変有意義だった。もちろん金銭的インセンティブは重要だったが、大学の研究に参加するということに価値があると思えたし、将来の医療政策に役立てるために行うという研究趣旨の説明にも真剣さを感じた」と語っている。 この研究は、肥満(BMI30以上)の男性585人(平均年齢50.7±13.3歳、BMI37.7±5.7)を対象として実施された。参加者は無作為に3群に分けられ、1群は単に体重を減らすように指示した対照群とし、他の2群には減量をサポートするためのテキストメッセージを毎日送信した。さらにそのうちの1群には、テキストメッセージの送信に加え、3カ月後に5%の減量を達成したら50ポンド、6カ月後に10%の減量を達成したら150ポンド、12カ月後にもその体重を維持していたら200ポンドを支給することとした。 12カ月間の追跡調査を完了したのは426人(73%)だった。体重変化率は、対照群は-1.3±5.5%、テキストメッセージのみの群は-2.7±6.3%、インセンティブあり群は-4.8±6.1%だった。対照群を基準として体重変化率の差を比較すると、インセンティブあり群は平均差(MD)-3.2%(97.5%信頼区間-4.6〜-1.9)で有意差があった(P<0.001)。一方、テキストメッセージのみの群はMD-1.4%(同-2.9~0.0)だった(P=0.05)。 インセンティブあり群に割り付けられていたCiaran Gibsonさん(35歳)は、「これまで何年も、食事と運動による減量や減量後の体重維持に苦労してきた。この研究に参加することで、目標達成のモチベーション維持というメリットを得られるのではないかと期待した。参加によって実際に自分の体重減少に責任を感じ続けることができ、より健康的なBMIになれたことに満足している」と話している。 もちろん、肥満者の減量を促すために400ポンドを支給するという手法に眉をひそめる人もいるだろう。論文の共著者の1人である英クイーンズ大学ベルファストのFrank Kee氏もそのような見解に同意を示しつつ、「過体重や肥満に起因する巨額の医療コストを勘案した場合、このような介入の減量効果が長続きするのであれば、長期的には元が取れると考えている。われわれは現在、肥満対策という課題について、医療経済的な視点で詳細な検討を重ねているところだ」と述べている。

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大腸がん検診、検査方法の選択肢提示で受診率が向上

 患者に大腸がんの検査方法の選択肢を与えることで、検診を受ける患者数が2倍以上に増えたとする研究結果が報告された。米ペンシルベニア大学医学部のShivan Mehta氏らによるこの研究結果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月30日掲載された。 研究グループの説明によると、大腸がん検診は現在、リスクレベルが平均的な人には45歳からの受診が推奨されているが、大腸がんの既往歴や家族歴がある人は、より早い時期から検診を受けなければならない可能性もあるという。 大腸がん検診で使われる大腸内視鏡検査(コロノスコピー)は、侵襲的ではあるが時間とともにがん化する可能性のある前がん性のポリープを除去することができる。大腸内視鏡検査は10年に1回の頻度で受けることが推奨されているが、その代わりに免疫学的便潜血検査(FIT)を年に1回受けるという選択肢もある。これは、便検体の中に血液が含まれていないかどうかを調べる検査だ。便中の潜血は、大腸がんの初期症状である可能性があり、陽性と判定された場合は大腸内視鏡検査を受ける必要がある。 Mehta氏らは今回、ランダム化比較試験を実施し、患者に大腸がん検診の選択肢を提示することで、大腸内視鏡検査のみを提示した場合と比べて検診受診率が向上するのかどうかを検討した。対象者は、大腸がん検診を推奨通りに受けていない、ペンシルベニア州の地域医療センターの患者738人(平均年齢58.7歳、48.6%がメディケイド受益者)。研究グループによると、この医療センターでの大腸がん検診の受診率はわずか約22%であり、米国での平均受診率(72%)からかけ離れているという。 対象患者は、大腸がん検診の方法として、1)大腸内視鏡検査のみを提示される群、2)大腸内視鏡検査かFITのどちらかを患者が選択できる(アクティブチョイス)群、3)FITのみを提示される群の3群に1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象患者には、検診受診を勧める手紙と該当者にはFIT用のキットが送付され、その2カ月後と3〜5カ月後にリマインダーのテキストメッセージまたは自動音声が送られた。 その結果、試験開始から6カ月後の時点で大腸がん検診を受けた患者の割合は、大腸内視鏡検査のみの群で5.6%、アクティブチョイス群で12.8%、FITのみの群で11.3%であることが明らかになった。大腸内視鏡のみの群と比べた検診受診率の絶対差は、アクティブチョイス群で7.1%、FITのみの群で5.7%であった。 研究グループは、患者に単純な選択肢を提供することで大腸がん検診の受診率が向上したが、選択肢の数をさらに増やすことが、検診受診者のさらなる増加につながる可能性があるとの考えを示している。 以上のように有望な結果は得られたものの、未解決の問題が残されている。Mehta氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック中にがん検診の実施が減り、現在はその回復途上にあることや、若年層へのスクリーニング推奨の拡大により、全国的に大腸内視鏡検査へのアクセス問題が存在することは確かであり、とりわけ地域医療センターの患者はより大きな影響を受ける可能性がある」と話す。その上で同氏は、「大腸内視鏡検査は、スクリーニング、症状の診断、FIT後のフォローアップ検査のためのツールとして重要だが、スクリーニング率を向上させたいのであれば、より低侵襲な選択肢を患者に提供することを考えるべきだ」と付け加えている。

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英語で「深呼吸をしてください」は?【1分★医療英語】第134回

第134回 英語で「深呼吸をしてください」は?《例文1》Breathe in, breathe out.(吸って、吐いて)《例文2》Hold your breath, please.(息を止めてください)《解説》肺の聴診の際には患者さんに深呼吸をお願いしますが、こんなとき英語ではどのように言えばよいでしょうか。「深呼吸をする」は英語で“take a deep breath”といいます。このフレーズを用いて“Please take a deep breath.”や“Can you take a deep breath?”と表現すると伝わります。“breath”は呼吸を意味する名詞です。カタカナにすると「ブレス」ですが、日本人が苦手な“r”と“th”の発音が含まれているため、カタカナ英語では伝わりにくく、注意が必要です。自然に口から出てくるよう、しっかりと発音を練習しましょう。診察中に「吸って、吐いて」と患者さんに呼吸を促すときには、“breathe”(呼吸する、息をする)という動詞を用いて“Breathe in, breathe out.”と言います。動詞になると「ブリーズ」という発音になり、名詞とは発音が異なるので気を付けましょう。また、「息を止めてください」と言いたいときには、「止める」という動詞の“hold”を用いて、“Hold your breath.”と表現します。講師紹介

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プラチナ+ICI既治療NSCLCへのSG、第III相試験結果(EVOKE-01)/ASCO2024

 プラチナ製剤を含む化学療法および免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療で病勢進行に至った非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療は、いまだにドセタキセルとなっており、治療成績は十分ではない。そのため、新たな治療法の開発が望まれている。そこで、既治療のNSCLC患者を対象として、Trop-2を標的とする抗体薬物複合体sacituzumab govitecan-hziy(SG)の有用性を検討する国際共同第III相比較試験「EVOKE-01試験」が実施された。スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis G. Paz-Ares氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)において、本試験の結果を報告した。なお、本発表の詳細はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年5月31日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤を含む化学療法およびICIによる前治療歴を有するNSCLC患者603例・試験群(SG群):SG(21日間を1サイクルとして、各サイクルの1、8日目に10mg/kg) 299例・対照群(ドセタキセル群):ドセタキセル(75mg/m2、3週ごと) 304例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医師評価に基づく無増悪生存期間(PFS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ICIによる前治療への奏効率は、SG群35.5%、ドセタキセル群37.2%であり、actionableな遺伝子変異がある患者の割合は、それぞれ6.4%、8.2%であった。・データカットオフ時点(2023年11月29日)における追跡期間中央値は12.7ヵ月であった。・6ヵ月以上治療を継続した患者の割合は、SG群33.4%、ドセタキセル群17.4%であった。・主要評価項目のOSの中央値は、SG群11.1ヵ月、ドセタキセル群9.8ヵ月であり、SG群が良好な傾向にはあったが、統計学的有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.68~1.04、片側p=0.0534[片側有意水準α=0.0223])。1年OS率はそれぞれ46.6%、36.7%であった。・事前に規定されたOSのサブグループ解析において、組織型による差はみられなかったが、ICIによる前治療に奏効しなかったサブグループ(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97)、actionableな遺伝子変異があるサブグループ(同:0.52、0.22~1.23)で、SG群が良好な傾向にあった。・ICIによる前治療に奏効しなかったサブグループにおけるOSは、組織型にかかわらずSG群が良好な傾向にあった。・PFS中央値は、SG群4.1ヵ月、ドセタキセル群3.9ヵ月であった(HR:0.92、95%CI:0.77~1.11)。・Grade3以上の有害事象は、SG群66.6%、ドセタキセル群75.7%に発現した。治療中止に至った有害事象は、それぞれ9.8%、16.7%に発現した。 Paz-Ares氏は「主要評価項目のOSについて、統計学的有意差は認められなかった。しかし、SG群はOSの数値的な改善を示し、ICIによる前治療に奏効しなかったサブグループでは、ドセタキセル群と比べてOSが3.5ヵ月改善した。SGは良好な安全性プロファイルを示し、忍容性はドセタキセルよりも高かった。以上から、SGは既治療の転移を有するNSCLC患者における有望な治療選択肢の1つであると言える」とまとめた。なおSGについては、ペムブロリズマブとの併用下における有用性を検討する第II相試験「EVOKE-02試験」、PD-L1高発現例の1次治療における有用性を検討する第III相試験「EVOKE-03試験」が進行中である。

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NSCLCにおけるamivantamabの皮下投与、静脈内投与との違いは?(PALOMA-3)/ASCO2024

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するamivantamabの皮下投与と静脈内投与を比較するPALOMA-3試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で、カナダ・Princess Margaret Cancer CentreのNatasha B. Leighl氏より発表された。 amivantamabは静脈内投与製剤として米国で開発されているが、投与時間の短縮などを目的として皮下投与における有用性が検討されている。本試験では、lazertinib併用下で、amivantamabの静脈内投与に対する皮下投与の薬物動態の非劣性などが確認された。・対象:EGFR変異陽性(ex19delまたはL858R)で、オシメルチニブとプラチナベースの化学療法後に進行したNSCLC患者・試験群(SC群、n=206):amivantamab皮下投与(体重に応じ1,600mgまたは2,240mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+lazertinib経口投与(240mg、1日1回)・対照群(IV群、n=212):amivantamab静脈内投与(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+lazertinib経口投与(240mg、1日1回)・評価項目:[主要評価項目]2サイクル目1日目もしくは4サイクル目1日目のトラフ濃度(Ctrough)、2サイクル目の血中濃度曲線下面積(AUCD1-D15)[副次評価項目]奏効率 (ORR) 、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間 (PFS) 、患者満足度、安全性[探索的評価項目]全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・薬物動態の評価項目(Ctrough、AUCD1-D15)は非劣性基準を満たした。・ORRはSC群30%(95%信頼区間[CI]:24〜37)、IV群33%(95%CI:26〜39)で、非劣性基準を満たした(相対リスク:0.92、95%CI:0.70〜1.23、非劣性のp=0.001)。・DOR中央値はSC群11.2ヵ月、IV群8.3ヵ月であった。・PFS中央値はSC群6.1ヵ月、IV群4.3ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.84、95%CI:0.64〜1.10、p=0.20)。・OSはSC群で長く(HR:0.62、95%CI:0.42〜0.92、名目上のp=0.02)、1年OS率はSC群65%、IV群51%であった。・インフュージョンリアクションの発現率はSC群で13%(Grade3以上0.5%)、IV群で66%(Grade3以上4%)と、SC群における発現率はIV群の約5分の1であった。・静脈血栓塞栓症(VTE)の発現率はSC群で9%、IV群で14%であった。・投与時間はSC群で中央値5分未満、IV群で2~5時間であった。 Natasha氏は本試験の結果を「amivantamabの静脈内投与と比較した場合の皮下投与の非劣性が示され、インフュージョンリアクションとVTEの発現率の低下が認められた」とまとめ、皮下投与への期待を述べた。

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sacituzumab tirumotecan、複数の治療歴のあるTN乳がんのPFSとOSを改善(OptiTROP-Breast01)/ASCO2024

 複数の治療歴がある進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)が、医師選択による化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善した。無作為化第III相OptiTROP-Breast01試験の中間解析結果について、中国・Cancer Hospital Chinese Academy of Medical SciencesのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:転移に対する治療を含む2ライン以上の化学療法歴(タキサン含む)のある局所再発/転移を有するTNBC・試験群(sac-TMT群):sac-TMT(5mg/kg静注)2週ごと 130例・対照群(化学療法群):医師選択の化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)133例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]OS、治験責任医師評価によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は両群とも51歳、内臓転移ありはsac-TMT群88.5%/化学療法群85.0%、PD-1/PD-L1阻害薬による治療歴ありはsac-TMT群24.6%/化学療法群27.1%、前治療のライン数(中央値)はsac-TMT群3.0/化学療法群2.0であった。・BICRによるPFSは、追跡期間中央値5.1ヵ月(データカットオフ:2023年6月21日)での中間解析において、sac-TMT群で有意な改善がみられ、進行/死亡のリスクは69%低下した(ハザード比[HR]:0.31、95%信頼区間[CI]:0.22~0.45、p<0.00001)。中央値は、sac-TMT群で5.7ヵ月(95%CI:4.3~7.2)、化学療法群で2.3ヵ月(同:1.6~2.7)であった。また、すべてのサブグループにおいてsac-TMT群で改善していた。・TROP2高発現(Hスコア>200)患者において、BICRによるPFS中央値はsac-TMT群で8.3ヵ月、化学療法群で2.3ヵ月であった(HR:0.29、95%CI:0.19~0.46)。・OSは、追跡期間中央値10.4ヵ月(データカットオフ:2023年11月30日)での最初の中間解析において、sac-TMT群で有意な改善がみられ、死亡リスクが47%低下した(HR:0.53、95%CI:0.36~0.78、p=0.0005)。中央値はsac-TMT群は未到達(95%CI:11.2~NE)、化学療法群は9.4ヵ月(同:8.5~11.7)であった。・BICRによるORRは、sac-TMT群45.4%、化学療法群12.0%であった。・sac-TMTは管理可能な安全性プロファイルを示し、治療関連有害事象(TRAE)による投与中止例は1.5%だった。主なGrade3以上のTRAEは両群ともに血液毒性で、Sac-TMT群において、好中球数減少は32%(化学療法群47%)、貧血は28%(同6%)、白血球数減少は25%(同36%)に発現した。 Xu氏は、「本試験は、既治療のTNBCにおいてsac-TMTが有効な治療選択肢であることを示している」とした。現在、PD-L1陰性TNBCの1次治療におけるsac-TMT単剤での第III相試験、早期TNBCの術後補助療法におけるsac-TMT+ペムブロリズマブの第III相試験が進行中である。

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