サイト内検索|page:49

検索結果 合計:10265件 表示位置:961 - 980

961.

仕事のストレスで心房細動に?

 職場で強いストレスにさらされていて、仕事の対価が低いと感じている場合、心房細動のリスクがほぼ2倍に上昇することを示す研究結果が報告された。ラヴァル大学(カナダ)のXavier Trudel氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に8月14日掲載された。 心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがあるが、より重要な点は、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなることにある。形成された血栓が脳の動脈に運ばれるという機序での脳梗塞が起こりやすく、さらにこのタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広く重症になりやすい。 これまでに、仕事上のストレスや職場の不当な評価の自覚が、冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高めることが報告されている。しかし、心房細動のリスクもそのような理由で高まるのかは明らかでない。この点についてTrudel氏らは、カナダのケベック州の公的機関におけるホワイトカラー労働者対象疫学研究のデータを用いて検討した。 解析対象は、ベースライン時に心血管疾患の既往のない5,926人で、平均年齢45.3±6.7歳、女性が51.0%を占めていた。この人たちの医療記録を平均18年間にわたり追跡したところ、186人が心房細動を発症していた。心房細動を発症した人の19%は、アンケートにより「仕事上のストレスが強い」と回答した人だった。また25%は「自分の仕事が正当に評価されず対価が低すぎる」と感じていた。そして10%の人は、それら両者に該当した。 心房細動のリスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、飲酒・喫煙・運動習慣、BMI、教育歴、高血圧、糖尿病、脂質異常症、降圧薬の処方、心血管疾患の家族歴)を調整後、仕事上のストレスを強く感じている人はそうでない人に比べて、心房細動のリスクが83%高いことが分かった(ハザード比〔HR〕1.83〔95%信頼区間1.14〜2.92〕)。また、仕事の評価や対価が低いと感じている人はそうでない人より、心房細動のリスクが44%高かった(HR1.44〔同1.05〜1.98〕)。そして、それら両者に該当する人の心房細動リスクは97%高かった(HR1.97〔同1.26~3.07〕)。 この結果について著者らは、「仕事上のストレスや職場での不当な評価の自覚は、CHDだけでなく心房細動のリスク増大とも関連している。職場での心理社会的ストレスをターゲットとした疾患予防戦略が必要ではないか」と述べている。そのような予防戦略の具体的な施策としてTrudel氏は、大規模なプロジェクトはその進行ペースを落として労働者の負担を軽減すること、柔軟な勤務体系を導入すること、管理者と労働者が定期的に日常の課題について話し合うことなどを挙げている。 米国心臓協会(AHA)によると、心房細動は心臓関連の死亡リスクを2倍にし、脳卒中のリスクを5倍に高めるという。また、米国内の心房細動の患者数は2030年までに、1200万人以上に拡大することが予想されているとのことだ。

962.

脳梗塞入院時の口腔状態が3カ月後の生活自立度と有意に関連

 脳梗塞で入院した時点の歯や歯肉、舌などの口腔状態が良くないほど、入院中に肺炎を発症したり、退院後に自立した生活が妨げられたりしやすいことを示すデータが報告された。広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の江藤太氏、祢津智久氏らが、同大学病院の患者を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Clinical Oral Investigations」に7月19日掲載された。 全身性疾患の予防や治療における口腔衛生の重要性に関するエビデンスが蓄積され、急性期病院の多くで入院中に口腔ケアが行われるようになってきた。ただし、脳梗塞発症時点の口腔状態と機能的転帰や院内肺炎リスクとの関連については不明点が残されていることから、祢津氏らはこれらの点について詳細な検討を行った。 2017年7月~2023年8月に脳梗塞急性期治療のため同院へ入院し、データ欠落がなく発症前の生活が自立していた(修正ランキンスケール〔mRS〕2点以下)連続247人を解析対象とした。口腔状態は、歯や歯肉だけでなく、舌や口唇、口内粘膜の状態、および含漱(うがい)ができるか否かなどの8項目を評価する指標(modified oral assessment grade;mOAG)で判定した。mOAGは同院の西裕美氏らが独自に開発した口腔衛生状態を表す指標で、0~24点の範囲にスコア化され、スコアが高いことは口腔状態の不良を意味する。 入院3カ月後のmRSの評価で、137人(55.5%)が転帰良好(スコア上限が2点〔仕事や活動に制限はあるが日常生活は自立している〕)、110人(44.5%)が転帰不良(スコア下限が3点〔食事やトイレなどは介助不要だが外出時には介助を要する〕)と判定された。入院時の口腔状態は、転帰良好群がmOAGスコアの中央値6点(四分位範囲5~7)、転帰不良群が11点(同10~14)で、後者が有意に高値(不良)だった(P<0.001)。 交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、脳卒中の既往、併存疾患、入院前mRSスコア、神経学的重症度〔NIHSSスコア〕、発症から入院までの期間など)を調整した多変量解析の結果、入院時のmOAGスコアが予後不良に独立した関連のあることが明らかになった(1点高いごとにオッズ比〔OR〕1.31〔95%信頼区間1.17~1.48〕)。mOAGスコアで予後不良を予測する最適なカットオフ値は7であり、感度83.9%、特異度65.5%、予測能(AUC)0.821と計算された。またmOAGスコアが7点以上の場合、予後不良のオッズ比は4.26(2.14~8.66)だった。 入院中に肺炎を発症したのは13人(5.3%)だった。入院時の口腔状態は、肺炎非発症群がmOAGスコアの中央値6点(四分位範囲4~9)、肺炎発症群が10点(同8~12)で、後者が有意に高値(不良)だった(P<0.001)。 交絡因子を調整した多変量解析の結果、入院時のmOAGスコアが院内肺炎発症に独立した関連のあることが明らかになった(1点高いごとにOR1.21〔95%信頼区間1.07~1.38〕)。mOAGスコアで院内肺炎発症を予測する最適なカットオフ値は8であり、感度84.6%、特異度64.5%、AUC0.783と計算された。またmOAGスコアが8点以上の場合、院内肺炎発症のオッズ比は7.89(1.96~52.8)だった。 なお、同院では全入院患者に対して標準化されたプロトコルに基づく口腔ケアが実施されている。その結果、入院中にmOAGが2回評価されていた患者(159人)のうち91人は、mOAGスコアの改善を認めた。しかしこの改善と、3カ月後のmRSや院内肺炎発症率との関連は有意でなかった。その理由として、「mOAGが2回評価されていた患者は重症例が多かったためではないか」との考察が加えられている。 以上一連の結果を基に著者らは、「脳梗塞急性期のmOAGスコアは、院内肺炎リスクや3カ月後の機能的予後と独立して関連していた。脳梗塞患者の入院に際して、口腔状態の評価結果を医療従事者間で共有し、積極的な口腔衛生介入をすべきではないか」と述べている。

963.

SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬、食事や体重の変化の違い

 2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬によるエネルギー摂取量や糖尿病関連指標に対する影響の違いは不明である。今回、奈良県立医科大学附属病院臨床研究センターの五十川 雅裕氏らがカナグリフロジンとテネリグリプチンによるエネルギー摂取量と体重の変化を比較した結果、エネルギー摂取量への影響は逆で、体重についてはカナグリフロジンでのみ有意に減少した。BMC Endocrine Disorders誌2024年8月19日号に掲載。 本解析は日本人2型糖尿病患者においてカナグリフロジンとテネリグリプチンのメタボリックリスク因子に与える効果を比較したCANTABILE試験のサブ解析である。ヘモグロビンA1c(HbA1c)、エネルギー摂取量、体重などの糖尿病関連指標におけるベースラインから24週までの変化を、カナグリフロジン群(75例)とテネリグリプチン群(70例)で比較した。 主な結果は以下のとおり。・HbA1cは両群とも有意に低下した。・テネリグリプチン群では、エネルギー摂取量は有意に減少したが、体重に有意な変化はみられなかった。・カナグリフロジン群では、エネルギー摂取量は増加傾向だったが、体重は有意に減少した。 今回の結果から、著者らは「カナグリフロジンは、エネルギー摂取量が増加しても体重増加なしに血糖管理が可能であることが示唆された」としている。

964.

日本の女性医師によるPCI、治療成績は男性医師と比べて…

 日本の女性医師が行った経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施数やその内容、患者の予後について男性医師と比較した結果、院内死亡率は男女医師で有意差はなく、PCI成功率は女性医師のほうが高かったことを、湘南大磯病院/湘南鎌倉総合病院の高橋 佐枝子氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology: Asia誌2024年9月号掲載の報告。 インターベンション分野において、医師の男女格差は依然として世界的な懸念事項であり、女性医師が実施したPCIの結果を検討した広範な研究は限られている。そこで研究グループは、日本の女性医師によるPCIの実態を調べ、男性医師と比較検討するために後ろ向き観察研究を行った。 J-PCIレジストリーのデータベースを用いて、2019年1月1日~2021年12月31日にPCIを受けた連続患者を対象症例とした。主要評価項目は院内死亡率、副次評価項目はPCIの成功率であった。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には、男性医師5,646人と女性医師447人によって実施された66万9,379件のPCI症例が含まれた。・研究期間中に、女性医師によって3万5,211件(全体の5.3%)のPCIが実施された。・女性医師が3年間に実施したPCIの中央値は57件(IQR:23~108)であり、男性医師が実施したPCI(中央値:92件、IQR:42~153)よりも有意に少なかった(p<0.001)。・女性医師は男性医師と比較して、急性冠症候群の症例が多く(40.1% vs.37.7%、p=0.004)、とくにST上昇型心筋梗塞の症例が多かった(20.2% vs.17.7%、p=0.001)。一方で、女性医師は男性医師よりも左主幹部病変(4.9% vs.5.9%、p<0.001)、ロータブレーターを使用した病変(3.5% vs.4.9%、p<0.001)は少なかった。・主要評価項目である院内死亡率は、女性医師が1.7%、男性医師が1.8%で有意差は認められなかった(オッズ比[OR]:0.880、95%信頼区間[CI]:0.774~1.00、p=0.052)。・副次評価項目であるPCIの成功率は、女性医師が97.8%、男性医師が97.2%であり、女性医師のほうが良好であった(OR:1.289、95%CI:1.149~1.447、p<0.001)。・多変量解析では、院内死亡率は男女医師で有意差はなかった(調整OR:0.896、95%CI:0.780~1.03、p=0.12)が、PCI不成功率は女性医師のほうが低かった(調整OR:0.806、95%CI:0.718~0.904、p<0.001)。

965.

新たな「血小板スコア」で脳卒中や心筋梗塞リスクを予測

 実験段階にある遺伝子検査によって、命に関わることもある血栓症のリスクを予測できる可能性のあることが、米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医科大学院心血管疾患予防センターのJeffrey Berger氏らの研究で示された。この新たな検査でスコアが高かった末梢動脈疾患(PAD)患者は、下肢血行再建術(足の閉塞した動脈を広げて血流を取り戻す治療)後の心筋梗塞や脳卒中、下肢切断のリスクが2倍以上であることが示されたという。この研究結果は、「Nature Communications」に8月20日掲載された。 この検査は、血小板の機能(反応性)が亢進状態であるかどうかを評価するもの。血小板は最も小さな血液細胞であり、傷ついた血管からの出血を検知すると凝集して血栓を形成する。本研究の背景情報によると、心臓専門医の間ではこれまで、一部の人で血小板機能が亢進し、心筋梗塞や脳卒中、PADなどを引き起こす血栓が形成されやすくなることが知られていた。しかし、血小板機能を調べるために日常的に行われている血小板凝集検査は、検査機関により結果が異なり、有用性は高くなかったという。 本研究ではまず、下肢血行再建術前にエピネフリン0.4μMを用いた血小板凝集能の測定を受けた254人のPAD患者を対象に、血小板機能の亢進と心筋梗塞や脳卒中、下肢切断の複合エンドポイント(MACLE)との関連が検討された。その結果、血小板機能亢進(凝集率60%超と定義)と判定された17.5%の患者での下肢血行再建術後30日以内のMACLEの発生リスクは、血小板機能亢進が認められなかった患者の2倍以上であることが明らかになった(37.2%対15.3%、HR 2.76、95%信頼区間1.5〜5.1)。 次にBerger氏らは、下肢血行再建術前に129人の患者(うち、血小板機能亢進が確認された患者は19人〔22.6%〕)から採取されていたサンプルを用いて血小板のRNAシーケンシングを行い、血小板機能亢進が認められなかった患者とは異なる451の遺伝子を特定した。その上で、バイオインフォマティクスを用いてこれらの遺伝的な差異に重み付けを行い、各患者の「Platelet Reactivity ExpreSsion Score(PRESS);血小板反応性発現スコア」を算出した。その上で、血小板機能亢進患者の特定について、このスコアの性能を評価したところ、PRESSは、PAD患者においても(交差検証によるROC曲線下面積〔AUC〕0.81、95%信頼区間0.68〜0.94)、健康な参加者の独立コホートにおいても(AUC 0.77、95%信頼区間0.75〜0.79)、良好に機能することが示された。さらに、別のPAD患者の集団でPRESSの精度を検証した。その結果、PRESSのスコアが中央値を上回っていた患者では、中央値を下回っていた患者と比べて心筋梗塞や脳卒中のリスクが90%有意に高いことが示された。 「われわれの研究の結果は、血小板を中心に据えた新しいスコアリングシステムによって、血小板機能亢進とそれに関連する心血管イベントのリスクを、高い信頼性をもって予測できることを示している」とBerger氏は言う。同氏らによると、この血小板のスコアによって、心筋梗塞のリスクが高い疾患のある人だけでなく、健康な人についても血小板機能亢進の有無を判定できるのだという。 Berger氏はこの新たな検査について、「抗血小板療法の対象を、同療法の恩恵を受ける可能性が最も高い、血小板機能亢進を伴う患者に限定する助けとなる可能性がある」と付言している。 Berger氏はNYUのニュースリリースの中で、「現在、医師は血小板の機能とは直接関係のない脂質異常症や高血圧などのリスク因子に基づいて、血小板の活性を阻害する薬剤であるアスピリンを処方している」と説明。しかし同氏らは、アスピリンにより危険な出血リスクが高まる可能性のあることを指摘している。 NYUランゴン医学・病理学部助教のTessa Barrett氏は、「現在の診療では、心筋梗塞や脳卒中の初発予防に抗血小板療法をルーチンで行うことは推奨されていない。しかし、血小板をベースとした検査によってリスクの最も高い患者や、抗血小板療法による心血管イベントの予防において最大の恩恵が見込める患者を特定できる可能性がある」と話し、「このスコアにより、心血管疾患リスク抑制の個別化が進展する可能性がある」との展望を示している。

966.

むくみとは、その原因は?

患者さん、それは…浮腫(むくみ) ですよ!浮腫(むくみ)とは「血管外の皮下組織に水分が過剰に溜まった状態」のことで、全身性のものと局所性(部分的)のものに分類されます。局所性とは手足の片側に、全身性とは顔・腕・足などの複数箇所にある場合を示します。以下のような症状はありませんか?□まぶたが重い/はれぼったい(とくに起床時)□手足がだるい□物が握りにくい□指輪が取れない□靴がきつくなった□急激に体重が増えた□腫れているところを押すと指の跡が残る◆むくみの原因はさまざま!・必ずしも腎臓が原因とは限らない・急に起こった片脚のむくみは、脚の静脈に血の塊ができてる可能性も・全身がむくんでいる場合には、全身の病気を考える・薬が原因でむくみが起こることがある・皮膚感染症にかかっている場合もある出典:日本臨床検査医学会.浮腫、外来を愉しむ攻める問診、MSDマニュアル監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

967.

第228回 立憲民主党代表候補4人の医療政策、医療当事者は納得できる?

この9月は国内外で選挙に伴う候補者討論会が目白押しだ。日本では政権与党の自由民主党(以下、自民党)の総裁選挙と野党第一党の立憲民主党の代表選挙、国外ではアメリカ大統領選挙などである。本稿執筆時点では自民党総裁選挙以外の候補者討論会は終了した。毎度のこと、かつ本連載で最も読まれないと自覚している政治ネタ定期便として、いち早く選挙が始まった立憲民主党の各候補が掲げた社会保障・医療・介護関連政策を独断と偏見に基づく寸評も交えて取り上げてみたい。まず、今回の立候補者は現代表の泉 健太氏(50)、同党設立時の党首である枝野 幸男氏(60)、前身の旧民主党の政権獲得時の最後の首相だった野田 佳彦氏(67)、衆議院議員1期目の吉田 晴美氏(52)の4人である。本稿執筆時点で自民党総裁選への出馬を表明した候補もそうだが、それ以上に旧民主党・民進党の流れをくむ立憲民主党は、旧民主党時代も含めて今回の候補者4人中3人が党代表経験者で、やや批判的な意味で「毎度お馴染み…」と評される状況。衆参両院の議員数が自民党の半分以下とは言え、人材が乏しい印象は否めない。このうち枝野氏と野田氏は、通称55年体制と呼ばれる1955年以降続いた自民党政権が崩壊した1993年衆議院選挙で、当時の新党ブームの先陣を走っていた日本新党(代表:細川 護熙氏)が臨んだ初の衆議院選挙で初当選を果たした御仁。ちなみに自民党総裁選に出馬を表明した同党幹事長の茂木 敏充氏もこの時の日本新党当選組である。4人の候補者の経歴は大学卒業後、枝野氏は弁護士経験約5年、野田氏は松下政経塾やアルバイト生活を経て千葉県議、泉氏は旧民主党議員秘書を経て、それぞれ国政入りしている。この3人は半ば生粋の政治家に近い。吉田氏は大学卒業後にイギリスに留学して経営学修士号(MBA)を取得、職務経験として航空会社CA、コンサルタント会社、旧民主党政権期の法相秘書官、大学教員などを経て2021年の衆議院で初当選している。ちなみに略歴の中のコンサルタント会社とは、医療関係者にはそこそこ聞き覚えのあるKPMGヘルスケアジャパンである。さてまず4氏の社会保障政策に対する考え方は、9月7日に日本記者クラブ主催の討論会で概略が触れられている。まずこれを紹介する。野田氏野田政権で社会保障と税の一体改革をやりました。その精神は老後の不安、子育ての不安など国民が抱える不安が一番集中しているのが社会保障分野。この不安をなくし、社会保障の充実と安定を果たしていかなければいけない。そのために財源をいつまでも赤字国債に頼り、将来世代のポケットに手を突っ込んで賄っていくやり方は持続可能性がないとの判断から、消費税を充て併せて財政の健全化を図ることを目指しました。その後、十数年政権を離れている間、残念ながら社会保障改革が進んでない。だからもう1回、医療・介護含めて社会保障のあり方を全般的に見直し、法律上も予算会計上も社会保障費に充てられている消費税も含め財源の扱いに関する大きな議論をこれから党内挙げてやっていくべきではないかと思います。枝野氏社会保障負担という表現自体が財務省の土俵の上に乗せられてるんじゃないかと思います。実は従来型公共事業よりも社会福祉関連への投資のほうが、経済波及効果が大きい。今、日本で足りないのは介護職や保育士などの担い手。重労働のわりに低賃金だからです。国内の人件費に回したお金は、ほぼ国内や地方の消費に回ります。これは消費税の税収増にも繋がります。何よりも国内の消費が冷え込んでいるから、この30年間、日本経済は停滞してきました。賃金が上がらないから消費が停滞し、さらに国内消費に関連する投資も停滞してきた。この停滞に賃金アップは大きな力を与えることになります。経済政策のため借金しても公共事業をやってきたのならば、もっと波及効果が大きい社会福祉関連の人件費に充てる投資、負担ではなくて投資という意識でしっかりと充実させるべきだと私は思います。そうすればその分がきちんと戻ってきて、良い循環ができるはずです。社会福祉関連人件費に投資し、2~3年間、税収や国内消費の回復を見ながら進めていくべきだと思います。泉氏経済効果が語られることが少ない介護の分野でお金が回っていくようにしていかねばならないと思います。たとえば介護離職による経済損失は、多大なものがあります。介護が家庭に内部化されるほど、実は経済損失も大きい事実をわれわれは見なくてはいけない。介護の社会化に投資をし、働く人材の賃金を増やしていく。私は国会議員になる前にデイサービスのスタッフとして勤務し、周りがどんどん結婚退職をしていく中で仕事をしていました。やはり介護人材が集まって、多くの方々の面倒を見られるようにするためには、介護職員の待遇を上げていく。介護職員は地域で生活をしている方々が非常に多いので、彼らが地域で消費をする経済の循環が生まれてきます。これは地域経済の活性化にも繋がっていきます。吉田氏私はこの点(国民の不安)について、大きな二つの原因があると思います。1つは消費税が本当に社会保障に使われているのかという国民の皆さんの疑問があると思います。本当にそう使われているならば、負担をするという国民の皆さんも多いと思います。そのためには政治の信頼回復、言ったとおりに使っていると国民の皆さまに思ってもらえれば全然感じが違うのではないか。もう1つは少子化。労働力不足、消費の冷え込みは人にまつわるところから始まっていると思いますので、根本治療としての少子化対策が必要です。まず、概観すると、枝野氏と泉氏の考えはほぼ同一と言っていい。積極的な社会保障分野、とりわけ介護分野への積極的な財政出動策である。そしてこれは現時点で首相であり自民党総裁でもある岸田 文雄氏が首相就任時に掲げた「成長と分配の好循環による新しい日本型資本主義」ともほぼ同一である。吉田氏は少子化対策として教育の充実(無償化)を上げており、これも枝野、泉両氏と方向性が違うとはいえ積極的な財政出動策と言えるだろう。これに対し、野田氏は財政健全化も念頭に置いている。いわば財務省に近い考えでもある。枝野、泉、吉田氏との大枠での違いは、より現実を見据えなければならない財務相や首相を経験したことに起因するのかもしれない。それでは各氏のよりミクロな政策を見ていこうと思う。野田氏の想いまず、野田氏である。代表選挙の

968.

男性のがん罹患状況、2022年データから2050年を予測

 男性は飲酒や喫煙など、がんの修正可能なリスク因子を有する割合が高く、結果としてがんの発症率が高く、生存率が低くなる。年齢層や国による差異を含め、男性におけるがん負担に関する包括的なエビデンスは乏しい。オーストラリア・クイーンズランド大学のHabtamu Mellie Bizuayehu氏らは、がんの罹患や死亡に関する2022年の世界的な統計データ(GLOBOCANデータ)を用いて2050年の予測値を算定、Cancer誌オンライン版2024年8月12日号で報告した。 本研究では、国際がん研究機関(IARC)による日本を含む185の国と地域対象の2022年のGLOBOCAN推定値を用いて、30種類のがんについて死亡率罹患率比(MIR、年齢調整死亡率/罹患率)を算定した。2050年の予測値については、人口動態予測を用いて計算された。労働年齢(15~39歳と40~64歳)および高齢者(≧65歳)に分類され、185の国と地域は人間開発指数(HDI)に基づき4分類された(低、中、高、非常に高)。 主な結果は以下のとおり。・2022年、世界の男性におけるがん罹患数は1,030万例、がんによる死亡数は540万例と推定され、罹患数と死亡数の約3分の2が高齢者(≧65歳以上)であった。・罹患数と死亡数でみると肺がんが最も多かったが、年齢層によって若干のばらつきがみられた(例:15~39歳では、罹患数は精巣がん、死亡数は白血病が最も多い)。・2022年、世界の男性におけるがんのMIRは54.9%と推定された。がん種別にみると甲状腺がんの7.6%から膵臓がんの90.9%までの範囲で、MIRが高かった3つのがん種は、膵臓がん、肝臓がん、食道がんであった。・MIRはHDIと逆相関しており、HDIが低い国で最も推定値が高く(73.5%)、HDIが非常に高い国で最も低かった(41.1%)。世界中の国と地域間でMIRに大きな差(約3倍)があり、ノルウェーの28.0%からガンビアの86.6%までの範囲であった(日本は32.7%)。・2050年までに世界の男性におけるがん罹患数は1,900万例に達すると予測され、2022年の推定値と比較して変化率は84.3%増となる。また、がんによる死亡数は1,050万例に達すると予測され、93.2%増となる。肺がんは引き続き最も一般的ながん種であり、罹患数と死亡数は2022年と比較して87%超の増加と予測された。・2022年から2050年の間に最も大きな増加が見込まれるがん種は、罹患数では中皮腫(105.5%増)、死亡数では前立腺がん(136.4%増)であった。・2022年から2050年の間にHDIの低い国や地域ではがんの罹患数と死亡数が2倍超(140%増)になると予測された一方、HDIの非常に高い国や地域では罹患数が50.2%増、死亡数が63.9%増と予測された。また、HDIが高いおよび非常に高い国・地域の15~39歳においては、罹患数と死亡数が約11%減少すると予測された。 著者らは、2022年に確認された男性におけるがん罹患数と死亡数の格差は、2050年までに拡大すると予測され、健康インフラの確保や国内外の協力、国民皆保険の推進などが極めて重要としている。

969.

緑内障による認知機能障害や認知症リスク~メタ解析

 緑内障と認知症に関して、病理学的メカニズムおよび病因的因子が共通していることを裏付ける十分なエビデンスが報告されている。しかし、緑内障、認知症、認知機能障害の関連性は十分に解明されていない。中国・河南中医薬大学のXiaoran Wang氏らは、緑内障が認知症または認知機能障害のリスク上昇に及ぼす影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Aging Clinical and Experimental Research誌2024年8月20日号の報告。 2024年3月10日までに公表されたコホート研究および症例対照研究を、PubMed、Cochrane Library、Web of Science、EMBASEのデータベースより検索した。バイアスリスクの評価には、ニューカッスル・オタワスケール(NOS)を用いた。異質性はI2検定を用いて厳密に評価し、出版バイアスは、ファンネルプロットの目視検査およびEgger検定により評価した。異質性の原因を特定するため、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・27件(906万1,675例)をメタ解析に含めた。・プール解析では、緑内障は、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、認知機能障害のリスク上昇と関連していることが示唆された。・サブグループ解析では、認知症の有病率は、65歳以上で2.90(95%信頼区間[CI]:1.45~5.77)、65歳未満で2.07(95%CI:1.18~3.62)であり、女性の緑内障患者における発症率はいずれも1.46(95%CI:1.06~2.00)であり、男性の患者では統計学的な有意差は認められなかった。・緑内障の中でも、原発開放隅角緑内障(POAG)は、認知症および認知機能障害が発現する可能性が高かった。・地域による差異もみられ、アジアでは有病率が最も高く、欧州および北米では緑内障と認知症の関連は認められなかった。 著者らは「緑内障は、その後の認知症および認知機能障害のリスクを上昇させることが示唆された。緑内障の種類、性別、年齢、地域により、緑内障と認知症の関連は大きく影響を受ける可能性がある」としている。

970.

CABG後のAF予防、カリウム正常上限値の維持は不要/ESC2024

 冠動脈バイパス術(CABG)後の新規発症心房細動(AF)予防としてのカリウム投与について、濃度が正常下限値を下回った場合にのみカリウム投与することが、正常上限値になるまで定期投与することよりも劣らないことが最新の研究で明らかになった。本研究結果はドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBenjamin O'Brien氏らが8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインで発表し、JAMA誌オンライン版2024年8月31日号に同時掲載された。 これまで、心臓手術後の心房細動(AFACS)予防のために血清カリウム濃度を正常値に維持するためのカリウム投与が行われていたが、明確な根拠がない上にリスクや費用を伴うため、疑問視されていた。 本研究は、英国とドイツの心臓外科センター23施設で行われた多施設前向き非盲検ランダム化非劣性試験(TIGHT-K試験)。2020年10月20日~2023年11月16日に、CABG手術を予定し、AF既往歴のない患者を登録した。対象患者は、厳格なカリウム管理群(カリウム補充を行う血清カリウム濃度下限値が4.5mEq/L[正常上限値])と緩やかなカリウム管理群(同:3.6mEq/L[正常下限値])に1対1でランダムに割り当てられた。 主要評価項目は、CABG手術後120時間以内または退院までのいずれか早いタイミングで心電図により確認された新規発症AFACS(30秒以上の持続性AF、心房粗動、頻脈と定義)。また、正常下限値群の非劣性は、新規発症AFACSのリスク差と、それに関連する片側97.5%信頼区間(CI)の上限が10%未満であると定義された。副次評価項目には、心拍リズム関連イベント、臨床転帰、介入に関連するコストが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,690例は、平均年齢65歳、女性256例(15%)、EuroSCORE IIの平均スコア1.5%であった。・主要評価項目である新規発症AFACSは、正常上限値群の26.2%(n=219)および正常下限値群の27.8%(n=231)に発生し、リスク差は1.7%(95%CI:-2.6~5.9)であった。・携帯型心拍リズムモニターなどで検出されたAFACSの1回以上の発生率、AFACS以外の不整脈、入院患者の死亡率、入院期間については、グループ間に差はみられなかった。・正常下限値群でのカリウム投与回数の中央値(IQR)は0回(0~5)であったのに対し、正常上限値群では7回(4~12)で、カリウムの購入や投与にかかる患者1人当たりのコストは、正常下限値群で有意に低かった(平均差:111.89ドル、95%CI:103.60~120.19ドル、p<0.001)。 研究者らは「厳格なコントロールのためにカリウムを定期投与しても、緩やかなコントロールに比べてメリットはなく、コストが高くなることを示すことができた」と結論付けている。

971.

ACSのPCI後、短期DAPT後チカグレロルvs.12ヵ月DAPT~メタ解析/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者の冠動脈ステント留置後の標準治療は、12ヵ月間の抗血小板2剤併用療法(DAPT)となっている。この標準治療とDAPTからチカグレロルへと段階的減薬(de-escalation)を行う治療を比較したエビデンスの要約を目的に、スイス・Universita della Svizzera ItalianaのMarco Valgimigli氏らSingle Versus Dual Antiplatelet Therapy(Sidney-4)collaborator groupは、無作為化試験のシステマティックレビューおよび個々の患者データ(IPD)レベルのメタ解析を行った。とくにACS患者では、12ヵ月間のDAPT単独療法と比較して、DAPTからチカグレロルへの段階的減薬は、虚血のリスクを増大することなく大出血リスクを軽減することが示された。Lancet誌2024年9月7日号掲載の報告。チカグレロル単独療法の有効性と安全性をIPDレベルメタ解析で評価 研究グループは、冠動脈薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者における短期DAPT(2週~3ヵ月)後チカグレロル単独療法(90mgを1日2回)について、12ヵ月DAPTと比較した有効性と安全性を評価するため、システマティックレビューおよびIPDレベルのメタ解析を行った。 対象試験は、冠動脈血行再建術後のP2Y12阻害薬単独療法とDAPTを比較した中央判定エンドポイントを有する無作為化試験とし、Ovid MEDLINE、Embaseおよび2つのウェブサイト(www.tctmd.comおよびwww.escardio.org)を各データベースの開始から2024年5月20日まで検索した。長期の経口抗凝固薬適応患者を含む試験は除外した。 Cochrane risk-of-biasツールを用いてバイアスリスクを評価。適格試験の主任研究者から匿名化された電子データセットでIPDの提供を受けた。 主要エンドポイントは、主要有害心血管または脳血管イベント(MACCE[全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合]、per-protocol集団で非劣性を検証)、Bleeding Academic Research Consortium(BARC)出血基準タイプ3または5の出血(ITT集団で優越性を検証)、および全死因死亡(ITT集団で優越性を検証)の3つとし、階層的に解析した。すべてのアウトカムは、Kaplan-Meier推定値で報告された。非劣性の検証は片側α値0.025を用い、事前規定の非劣性マージンは1.15(ハザード比[HR]スケール)であった。その後に順位付け優越性の検証を両側α値0.05を用いて行った。とくに女性で、チカグレロル単独療法にベネフィットありの可能性 合計8,361件の文献がスクリーニングされ、うち610件がタイトルおよび要約のスクリーニング中に適格の可能性があるとみなされた。その中で患者をチカグレロル単独療法またはDAPTに無作為化した6試験が特定された。 段階的減薬は介入後中央値78日(四分位範囲[IQR]:31~92)で行われ、治療期間の中央値は334日(329~365)であった。 per-protocol集団(2万3,256例)において、MACCE発生は、チカグレロル単独療法群297件(Kaplan-Meier推定値2.8%)、DAPT群は332件(3.2%)であった(HR:0.91[95%信頼区間[CI]:0.78~1.07]、非劣性のp=0.0039、τ2<0.0001)。 ITT集団(2万4,407例)において、BARC出血基準タイプ3または5の出血(Kaplan-Meier推定値0.9% vs.2.1%、HR:0.43[95%CI:0.34~0.54]、優越性のp<0.0001、τ2=0.079)および全死因死亡(0.9% vs.1.2%、0.76[0.59~0.98]、p=0.034、τ2<0.0001)は、いずれもチカグレロル単独療法群で低減した。 試験の逐次解析で、被験者全体およびACS集団におけるMACCEの非劣性および出血の優越性の強固なエビデンスが示された(z曲線は無益性の境界を越えたりnull値に近づいたりすることなく、モニタリング境界を越えるか必要な情報サイズを満たした)。 治療効果は、MACCE(相互作用のp=0.041)、全死因死亡(0.050)については性別による不均一性がみられ、女性ではチカグレロル単独療法のベネフィットがある可能性が示唆された。また、出血は臨床症状による不均一性がみられ(相互作用のp=0.022)、ACS患者ではチカグレロル単独療法にベネフィットがあることが示唆された。 これらの結果を踏まえて著者は、「チカグレロル単独療法は、とくに女性において生存ベネフィットとも関連する可能性があり、さらなる検討が必要である」と述べている。

972.

LCAT欠損症〔Lecithin-cholesterol acyltransferase deficiency〕

1 疾患概要■ 概念・定義1966年、角膜混濁、貧血、蛋白尿を呈し、慢性腎炎の疑いで33歳の女性がノルウェー・オスロの病院でみつかった。腎機能は正常ではあるが、血清アルブミンはやや低く、血漿総コレステロール、トリグリセリドが高値で、コレステロールのほとんどはエステル化されていなかった。腎生検では糸球体係蹄に泡沫細胞が認められた。その後、患者の姉妹に同様の所見を認め、遺伝性の疾患であることが疑われた。その後、ノルウェーで別の3家系がみつかり、後にこれらの患者は同一の遺伝子異常を保有していた。患者は血中のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)活性を欠損しており、NorumとGjoneによりこの疾患が家族性LCAT欠損症(Familial LCAT deficiency:FLD)と名付けられた。後にCarlsonとPhilipsonによって魚眼病(Fish eye disease:FED)が報告された。LCATは、血漿リポタンパク質上のコレステロールのエステル化反応を触媒し、この反応はHDL上とアポリポ蛋白(アポ)B含有リポ蛋白(LDLとVLDL)上の両方で起こる。前者をα活性、後者をβ活性と呼ぶ。LCAT蛋白のα活性とβ活性の両者を欠損する病態がFLD、α活性のみを欠損する病態がFEDと定義されている。現在これらはいずれもLCAT遺伝子の変異による常染色体潜性遺伝性疾患であることが知られており、LCAT機能異常を原因とする脂質代謝異常とリポ蛋白異常を介してさまざまな合併症を引き起こす1-3)。わが国では、2015年7月1日に指定難病(259)として認定されている。■ 疫学FLDおよびFED症例の大部分はヨーロッパで報告されており、FLD症例報告数は男性が多い。ヘテロ接合体の地理的分布は、FEDとFED患者にみられる分布と同じである。興味深いことに、ヘテロ接合体の性別分布は、FED変異とFLD変異のヘテロ接合体の男女比は同等であると報告されている。角膜混濁はほぼすべてのFLDおよびFED患者に認められる。HDL-C値は、FLDとFEDの両者で一様に低く、ほとんどの患者で10mg/dL未満である。FLD症例の85%以上は報告時に蛋白尿を呈しているが、FED症例では蛋白尿は報告されていない。FLD患者のほとんどは貧血を合併している。臨床学的に明らかな動脈硬化性心血管疾患は、FLD患者の10%程度、FED患者の25%程度で報告されている。■ 病因第16番染色体短腕に存在するLCAT遺伝子の変異が原因である。単一遺伝子(LCAT遺伝子)の変異による先天性疾患であり、常染色体潜性遺伝形式をとり、既報では100万人に1人程度の頻度であると述べられている。わが国において同定されている遺伝子変異は20種類程度ある。■ 症状LCAT欠損症の典型的な臨床所見を表に記載した。表 LCAT欠損症の典型的臨床所見画像を拡大するLCAT活性測定法は外因性(HDL様)基質を用いる方法でα活性を評価できる。内因性基質を用いる方法では、血中の総エステル化活性(Cholesterol esterification rate:CER)が評価できる。これらを併用することで、FLDとFEDの鑑別が可能である。1)脂質代謝異常LCATによる血漿リポ蛋白上のコレステロールのエステル化反応は、アポA-IやEなどのアポリポ蛋白の存在を必要とする。FLDやFEDにおけるLCAT活性の低下はHDL-Cの顕著な減少を引き起こし、未熟なHDLが血漿中に残り、電子顕微鏡観察で連銭形成として現れる。このHDLの成熟や機能の障害に伴ってさまざまな合併症が引き起こされる。2)眼科所見角膜混濁はしばしば本症で認識される最初の臨床所見であり、幼少期から認められる。患者角膜実質に顕著な遊離コレステロールとリン脂質の蓄積が観察される。FLDよりもFEDにおいてより顕著である。本症では中心視力は比較的保たれているものの、コントラスト感度の低下が顕著であり、患者は夜盲、羞明といった自覚症状を訴えることがある。3)血液系異常赤血球膜の脂質組成異常により標的赤血球が出現し溶血性貧血が認められる。赤血球の半減期が健常人の半分程度である。また、溶血のため血糖値と比較してHbA1cが相対的に低値となる。4)蛋白尿、腎機能障害幼少期から重篤になるケースは報告されていないが、蛋白尿から進行性の腎不全を発症する。FEDでは一般に認められない。患者LDL分画に異常リポ蛋白が認められ、それが腎機能障害と関連することが示唆されている。5)動脈硬化前述のように動脈硬化性心血管疾患を合併することがある。しかし、これまでに行われている研究の範囲では、LCAT欠損が動脈硬化性心血管疾患のリスクとなるかどうかはどちらとも言えず、はっきりとした結論は得られていない。■ 予後本症の予後を規定するのは、腎機能障害であると考えられる。特定のFLD変異を有する1家系を中央値で12年間追跡調査した研究によると、ホモ接合体ではeGFRが年平均3.56mL/min/1.73m2悪化したのに対し、ヘテロ接合体では1.33mL/分/1.73m2、対照では0.68mL/min/1.73m2であった4)。また、これまでの症例報告をまとめた最近の総説において、FLD患者は年平均6.18mL/min/1.73m2悪化していると報告されている3)。18例のFLD患者を中央値で12年間追跡調査した研究では、腎イベント(透析、腎移植、腎合併症による死亡)は中央値46歳で起こると報告されている5)。これらの報告から、典型的な症例では、蛋白尿を30歳頃から認め、腎不全を40〜50歳で発症すると考えられる。FLDとFEDに共通して、角膜混濁の進行による患者QOLの低下も大きな問題である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 一般検査角膜混濁、低HDL-C血症が本症を疑うべき主な臨床所見である。さらにFLDでは蛋白尿を認める場合がある。HDL-Cはほとんどの症例で10mg/dL未満である。LCATがコレステロールのエステル化を触媒する酵素であることから、総コレステロールに占めるエステル化コレステロールの割合(CE/TC)が低下する。CE/TCはFLDで著減するのに対し、α活性のみが欠損するFEDは大きく低下することはない。■ 特殊検査1)脂質検査HDLの主要なアポリポ蛋白であるアポA-I、A-IIが低下する。血清または血漿中LCAT活性の低下が認められる。LDL分画を中心として異常リポ蛋白が同定される。2)眼科検査Slit-lamp examination(細隙灯検査)により上皮を除く角膜層に灰白色の粒状斑が観察される。本症の患者の中心視力は、比較的保たれているケースが多い一方で、コントラスト感度検査で正常範囲から逸脱することが報告されている。■ 腎生検FLDが疑われる場合は腎生検が有用である。糸球体基底膜、血管内皮下への遊離コレステロールとリン脂質の沈着が認められる。泡沫細胞の蓄積、ボーマン嚢や糸球体基底膜の肥厚が観察される。電子顕微鏡観察では毛細管腔、基底膜、メサンギウム領域に高電子密度の膜構造の蓄積が認められる。■ 確定診断遺伝子解析においてLCAT遺伝子変異を認める。以下に本症の診断基準を示す。<診断基準>本邦におけるLCAT欠損症の診断基準を難病情報センターのホームページより引用した(2024年7月)。最新の情報については、当該ホームページまたは原発性脂質異常症に関する調査研究班のホームページで確認いただきたい。A.必須項目1.血中HDLコレステロール値25mg/dL未満2.コレステロールエステル比の低下(60%以下)B.症状1.蛋白尿または腎機能障害2.角膜混濁C.検査所見1.血液・生化学的検査所見(1)貧血(ヘモグロビン値<11g/dL)(2)赤血球形態の異常(いわゆる「標的赤血球」「大小不同症」「奇形赤血球症」「口状赤血球」)(3)異常リポ蛋白の出現(Lp-X、大型TG rich LDL)(4)眼科検査所見:コントラスト感度の正常範囲からの逸脱D.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。他の遺伝性低HDLコレステロール血症(タンジール病、アポリポタンパクA-I欠損症)、続発性LCAT欠損症(肝疾患(肝硬変・劇症肝炎)、胆道閉塞、低栄養、悪液質など蛋白合成低下を呈する病態、基礎疾患を有する自己免疫性LCAT欠損症)二次性低HDLコレステロール血症*1(*1 外科手術後、肝障害(とくに肝硬変や重症肝炎、回復期を含む)、全身性炎症疾患の急性期、がんなどの消耗性疾患など、過去6ヵ月以内のプロブコールの内服歴、プロブコールとフィブラートの併用(プロブコール服用中止後の処方も含む))E.遺伝学的検査LCAT遺伝子の変異<診断のカテゴリー>必須項目の2項目を満たした例において、以下のように判定する。DefiniteB・Cのうち1項目以上を満たしDの鑑別すべき疾患を除外し、Eを満たすものProbableB・Cのうち1項目以上を満たしDの鑑別すべき疾患を除外したもの3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 臓器移植腎移植は一時的な腎機能改善には効果があるが、再発のリスクがある。角膜移植も同様である。■ 食事および薬物治療低脂肪食により腎機能障害の進展が遅延した症例がある。腎機能の増悪の予防や改善を目的とした薬物療法が行われた症例がある。いずれも対症療法であり、長期の進展予防効果や再発の可能性は明らかでない。■ 人工HDL(HDL-mimetic)人工HDLの輸注により腎機能の低下が遅延し、腎生検では脂質沈着がわずかに減少したと報告されている。■ 酵素補充療法組換え型LCAT蛋白の輸注によるものと、遺伝子治療による酵素補充療法が考えられる。1)組換え型LCAT製剤米国で組換え型LCATの臨床試験が1例実施され、脂質異常の改善とともに貧血、腎機能の改善が認められたが、その効果は2週間程度であった。繰り返し投与が必須であり、また、臨床試験期間中に組換え型LCATの供給が不足し、当該患者は透析治療に移行したと報告されている。2)遺伝子治療遺伝子治療は、より持続的な酵素補充が可能であると考えられる。LCAT遺伝子発現アデノ随伴ウイルスベクターが動物実験で評価されている。わが国で脂肪細胞を用いたex vivo遺伝子細胞治療が、臨床試験段階にある。投与された1例において、LCAT活性は臨床試験期間を通じて患者血清中に検出されている。これらは長期の有効性が期待される。4 今後の展望FLDとFEDの診断には、代謝内科、眼科、腎臓内科など複数の診療科の関与が必要であること、また、本疾患が自覚症状に乏しいことなどにより診断が遅れる、もしくは診断に至っていない患者がいると考えられる。わが国では、現状LCAT活性の測定や遺伝子検査は保険適用対象外であり、このことも医師が患者を診断することを困難にしている。現在、遺伝子組換え製剤の輸血や遺伝子・細胞治療によるLCAT酵素補充療法が開発中である。近い将来、これらの治療法が実用化され、患者のQOLが改善されることが期待される。5 主たる診療科代謝内科、眼科、腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患政策研究事業(原発性脂質異常症に関する調査研究)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会ガイドライン「低脂血症の診断と治療 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」(2023年6月30日発行)(医療従事者向けのまとまった情報)千葉大学医学部附属病院【動画】LCAT欠損症について【動画】LCAT欠損症の治療について未来開拓センター(いずれも一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報LCAT欠損症患者会(患者とその家族および支援者の会)1)Santamarina-Fojo S, et al. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th edn. 2001;2817-2833.2)Kuroda M, et al. J Atheroscler Thromb. 2021;28:679-691.3)Vitali C, et al. J Lipid Res. 2022;63:100-169.4)Fountoulakis N, et al. Am J Kidney Dis. 2019;74:510-522.5)Pavanello C, et al. J Lipid Res. 2020;61:1784-1788.公開履歴初回2024年9月12日

973.

降圧薬の服用タイミング、5試験のメタ解析結果/ESC2024

 8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のRicky Turgeon氏が降圧薬の服用タイミングに関する試験のメタ解析結果を報告し、服用タイミングによって主要な心血管イベント、死亡の発生率や安全性に差はみられなかったことを明らかにした。 本研究では、すべての降圧薬の服用タイミング(夕あるいは朝の服用)を比較するすべてのランダム化並行群間比較試験(RCT)の系統的レビューおよびメタ解析を実施。収集基準は、心血管系アウトカムが1つ以上、追跡期間が500患者年以上、追跡期間中央値が12ヵ月以上で、Cochrane Risk of Bias Tool ver.2を使用して評価を行った。主要評価項目は、主要有害心血管イベント(MACE:全死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全増悪の複合)で、副次評価項目は、MACEのそれぞれの要因、全入院の原因、特定の安全なイベント(骨折、緑内障関連、認知機能の悪化)であった。 主な結果は以下のとおり。・4万6,606例を対象とした5件のRCTが解析対象となった(BedMed試験、BedMed-Frail試験、TIME試験、Hygia試験、MAPEC試験)。ただし、BedMed試験、BedMed-Frail試験、TIME試験は全体的にバイアスリスクが低いと判断された一方で、Hygia試験とMAPEC試験は、ランダム化プロセスに関してバイアスの懸念がいくつかみられた。・MACEの発生率は、5試験すべてにおいて夕方服用と朝方服用による影響を受けなかった(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.43~1.16)。・バイアスリスクによる感度分析の結果、バイアスが低いと判断された3つの試験では夕方服用と朝方服用のMACEのHRは0.94(95%CI:0.86~1.03)で、バイアスの懸念がある2つの試験のHRは0.43(95%CI:0.26~0.72)だった。・夕方服用と朝方服用による全死亡に差はみられなかった(HR:0.77、95%CI:0.51~1.16)。同様に、骨折、緑内障、認知機能に関するイベントなど、そのほかすべての副次評価項目においても、服用タイミングによる影響はみられなかった。 本結果から同氏は「本結果は夕方服用と朝方服用に違いがないという決定的な証拠を示す。また、患者は自分の都合に最適な時間に1日1回の降圧薬を服用できる」と結論付けた。

974.

腫瘍循環器におけるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用/腫瘍循環器学会

 がん関連の循環器合併症に臨床応用が望まれるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用について、また、アントラキノン心筋症に対する新たな予防薬について第7回日本腫瘍循環器学会学術集会で発表された。 同学会の保健委員会委員長であるJCHO星ヶ丘医療センターの保田知生氏は、ダルテパリン、デクスラゾキサンの申請活動状況を報告した。 がん関連静脈血栓塞栓症(CAVT)に対する第1選択薬は低分子ヘパリン(LMWH)である。2007年には、FDA(米国食品医薬品局)がLMWHの1つであるダルテパリンナトリウムにCAVTの再発抑制に対する効能・効果を追加承認している。 日本におけるダルテパリンの効能・効果は血液透析時の凝固防止と汎発性血管内血液凝固症(DIC)で、CAVTは保険適用ではない。日本腫瘍循環器学会は2020年3月、厚生労働省に適応外申請を行い、現在審議中である。ダルテパリンナトリウムのCAVT適応未承認は、グローバルでLMWHの次の治療薬として行われている直接経口抗凝固薬(DOAC)による予防の治験に日本が参加できないという影響も及ぼしているという。 鉄キレート剤であるデクスラゾキサンはアントラサイクリン系抗がん剤による心筋症発症抑制に唯一有用性が証明されている薬剤である。海外では、アントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出と共に心筋症予防でも承認されている。 一方、日本での効能・効果はアントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出であり、同剤による心筋症は保険適用ではない。日本腫瘍循環器学会は2021年5月、厚生労働省に適応外申請を行い、現在審議中である。一方、2023年2月にNHKがアントラサイクリン心筋症を取り上げた番組を報道し注目を浴びた。 デクスラゾキサンの申請活動が続く中、アントラサイクリン心筋症については、新たな可能性が示されている。九州大学病院の池田 昌隆氏は、アントラサイクリンによる心毒性抑制薬として、がんの診断で活用されている5-ALAの可能性を発表した。 池田氏は鉄の蓄積により心筋特異的に誘導される細胞死「フェロトーシス」がアントラサイクリン心筋症の原因の1つであることから、同症の予防標的としてフェロトーシスに注目。動物モデルでヘムの前駆体である5-ALAが、ドキソルビシンによる細胞死とLVEF低下抑制を示すことを明らかにした。現在、第I・II相試験を計画中だという。

975.

SB623、外傷性脳損傷による慢性期運動機能障害の第II相試験で良好な結果/サンバイオ

 サンバイオは2024年9月5日、2016~19年に実施した外傷性脳損傷に起因する慢性期運動機能障害を有する患者を対象に、ヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞SB623の有効性および安全性を検討する第II相多施設共同無作為化二重盲検比較試験(STEMTRA試験)の48週(最終)までの結果がNeurology誌に掲載されたと発表した。 STEMTRA試験では、適格患者63例がSB623低用量群(2.5×106個群)、中用量群(5.0×106個群)、高用量群(10.0×106個群)および偽手術群に1:1:1:1で無作為化され、46例にSB623が投与され15例が対照群として偽手術を受けた。 主要評価項目である24週時点のFugl-Meyer Motor Scale(FMMS)のベースラインからの改善は、SB623移植後または偽手術実施後24週目に評価され、SB623投与群では偽手術を受けた対照群と比較して有意な改善が認められた(SB623投与群8.3点、対照群2.3点、p=0.04)。48週時点のFMMSのベースラインからの改善は、SB623投与群全体では偽手術を受けた対照群と比較して有意差が認められなかったものの、中用量群では、有意な改善が認められた(中用量群10.5点、対照群4.1点、p=0.02)。さらに、SB623投与群では48週時点のAction Research Arm Test(ARAT)、歩行速度、NeuroQOL上肢・下肢機能評価で運動機能および日常生活動作のベースラインからの改善がみられた。SB623の新たな安全性上の懸念は認められなかった。 SB623は、厚生労働省より再生医療等製品として「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定され、日本では「アクーゴ脳内移植用注」として2024年7月に外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善治療薬の条件及び期限付き承認を得た。米国では、米国食品医薬品局(FDA)よりRMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)指定を、欧州では欧州医薬品庁(EMA)より先端医療医薬品(ATMP)の指定を受けている。

976.

EGFR陽性NSCLC、amivantamab+lazertinibはOS・PFS2も改善か/WCLC2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療について、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬lazertinibの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが報告されている1)。米国・Henry Ford Cancer InstituteのShirish Gadgeel氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)でMARIPOSA試験の最新の解析結果を発表した。本発表では、amivantamabとlazertinibの併用療法はPFS2(後治療開始後のPFS)、全生存期間(OS)を改善する傾向がみられた。また、効果は長期にわたって持続することが示唆された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)[副次評価項目]OS、PFS2、頭蓋内PFSなど 今回の報告は事前に規定された中間解析ではないが、保健当局の要求により解析が実施され、ami+laz群とosi群における治療開始から中止までの期間(TTD)、後治療開始までの期間(TTST)、頭蓋内PFS、頭蓋内奏効率(ORR)、頭蓋内奏効期間(DOR)、PFS2、OSの比較結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年5月)における追跡期間中央値は31.1ヵ月であり、ami+laz群の44%(185/421例)、34%(145/428例)が割り付け治療を継続していた。・ami+laz群の155例、osi群の233例が病勢進行により治療を中止した。そのうち、それぞれ72%(111/155例)、74%(173/233例)が後治療を開始した。・TTD中央値は、ami+laz群26.3ヵ月、osi群22.6ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.68~0.96、名目上のp=0.014)。・TTST中央値は、ami+laz群30.0ヵ月、osi群24.0ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.65~0.93、名目上のp=0.005)。・頭蓋内PFS中央値は、ami+laz群24.9ヵ月、osi群22.2ヵ月であった(HR:0.82、95%CI:0.62~1.09、名目上のp=0.165)。・頭蓋内ORRは、ami+laz群77%、osi群77%であった。頭蓋内DOR中央値は、それぞれ未到達、24.4ヵ月であった。・PFS2中央値は、ami+laz群未到達、osi群32.4ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.73、95%CI:0.59~0.91、名目上のp=0.004)。・OS中央値は、ami+laz群未到達、osi群37.3ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96、名目上のp=0.019)。3年OS率は、それぞれ61%、53%であった。

977.

季節性インフル曝露後予防投与、ノイラミニダーゼ阻害薬以外の効果は?/Lancet

 重症化リスクの高い季節性インフルエンザウイルス曝露者に対し、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルによる曝露後予防投与は、症候性季節性インフルエンザのリスクを低下させる可能性が示された。また、これらの抗ウイルス薬は、ヒトへの感染で重症化を引き起こす新型インフルエンザAウイルス曝露者に対しても、予防投与により人獣共通インフルエンザの発症リスクを軽減する可能性が示されたという。中国・重慶医科大学附属第二医院のYunli Zhao氏らがシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析の結果を報告した。抗ウイルス薬のノイラミニダーゼ阻害薬による曝露後予防投与は、インフルエンザの発症および症候性インフルエンザのリスクを低減することが可能だが、その他のクラスの抗ウイルス薬の有効性は不明のままであった。Lancet誌2024年8月24日号掲載の報告。6種の抗ウイルス薬についてシステマティックレビューとネットワークメタ解析 研究グループは、WHOインフルエンザガイドラインの更新サポートのために、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析により、抗ウイルス薬のインフルエンザ曝露後予防について評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govを用いて、インフルエンザ予防における抗ウイルス薬の有効性と安全性を他の抗ウイルス薬、プラセボまたは標準治療と比較した、2023年9月20日までに公開された無作為化比較試験を系統的に検索。2人1組のレビュワーが独立して試験をレビューし、データを抽出、バイアスリスクを評価した。 ネットワークメタ解析は頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いて行い、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。 重視したアウトカムは、症候性または無症候性の感染、入院、全死因死亡、抗ウイルス薬に関連した有害事象、重篤な有害事象であった。 検索により公表論文1万1,845本を特定し、6種の抗ウイルス薬(ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジン、リマンタジン)に関する33試験・被験者1万9,096例(平均年齢6.75~81.15歳)をシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析に組み入れた。ほとんどの試験でバイアスリスクは低いと評価された。ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは軽減効果がある可能性 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、重症化リスクの高い被験者において、季節性インフルエンザ曝露後、速やかに投与することで(例:48時間以内)症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(ザナミビル[リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.25~0.50]、オセルタミビル[0.40、0.26~0.62]、ラニナミビル[0.43、0.30~0.63]、バロキサビル[0.43、0.23~0.79]、確実性は中程度)。これらの抗ウイルス薬は、重症化リスクの低い人では、季節性インフルエンザに曝露後、速やかに投与しても症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 また、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、感染したヒトの重症化と関連する新型インフルエンザAウイルス曝露後に、速やかに投与したときは、人獣共通インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(確実性は低度)。 オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジンは、すべてのインフルエンザのリスクを低下させる可能性が示唆された(症候性および無症候性の感染:確実性は中程度)。 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、無症候性インフルエンザウイルスの感染または全死因死亡の予防に、ほとんどまたはまったく効果がない可能性が示唆された(確実性は高度または中程度)。 オセルタミビルは、入院への効果は、ほとんどまたはまったくない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 6種の抗ウイルス薬はすべて、エビデンスの確実性は異なるが、薬剤関連の有害事象または重篤な有害事象の発現頻度を有意に増加させないことが示唆された。

978.

大手術の周術期管理、ACE阻害薬やARBは継続していい?/ESC2024

 周術期管理における薬剤の継続・中止戦略は不明なことが多く、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASI:ACE阻害薬またはARB)もその1つである。RASI継続が術中の血圧低下、術後の心血管イベントや急性腎障害につながる可能性もあるが、Stop-or-Not Trialのメンバーの1人である米国・カルフォルニア大学サンフランシスコ校のMatthieu Legrand氏は、心臓以外の大手術を受けた患者において、術前のRASI継続が中止と比較して術後合併症の発生率の高さに関連しないことを示唆した。この報告は8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで報告され、同時にJAMA誌オンライン版2024年8月30日号に掲載された。 研究者らは、心臓以外の大手術前でのRASIの継続あるいは中止が、術後28日時点での合併症の減少につながるかどうかを評価するため、フランスの病院40施設において、2018年1月~2023年4月にRASIによる治療を3ヵ月以上受け、心臓以外の大手術を受ける予定の患者を対象にランダム化比較試験を実施した。 対象患者は、手術当日までRASIの使用を継続する群(n=1,107)と手術48時間前にRASIの使用を中止する群(最終服用は手術3日前、n=1,115)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は術後28日以内の全死亡と主な術後合併症の複合。副次評価項目は術中の血圧低下、急性腎障害、術後臓器不全、術後28日間の入院期間とICU滞在期間。 主な結果は以下のとおり。・対象患者2,222例は平均年齢±SDが67±10歳、男性が65%だった。また、患者全体の 98%が高血圧症、9%が慢性腎臓病、8%が糖尿病、4%が心不全の治療を受けており、ベースライン時点での降圧薬治療の内訳はACE阻害薬が46%、ARBが54%であった。・全死亡および主な術後合併症の発生率は、RASI中止群で22%(1,115例中245例)、RASI継続群で22%(1,107例中247例)であった(リスク比[RR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.87~1.19、p=0.85)。・術中の血圧低下は、RASI中止群の41%に発生し、RASI継続群の54%に発生した(RR:1.31、95%CI:1.19~1.44)。・平均動脈圧が60mmHg未満の持続時間中央値(四分位範囲)は、中止群で6分(4~12)、継続群で9分(5~16)だった(平均差:3.7分、95%CI:1.4~6.0)。・試験結果において、そのほかの差はみられなかった。

979.

切除可能NSCLCへのニボルマブ、術前術後vs.術前(CheckMate 77T vs.816)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物療法について、術前および術後にニボルマブを用いた治療を受けた患者は、術前のみニボルマブを用いた治療を受けた患者と比較して、無イベント生存期間(EFS)が良好であることが示唆された。術前および術後にニボルマブを用いたCheckMate 77T試験、術前のみニボルマブを用いたCheckMate 816試験の個別被験者データ(IPD:Individual Patient-level Data)の解析により示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのPatrick M. Forde氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で本研究結果を発表した。 本研究は、CheckMate 77T試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと4サイクル]→手術→ニボルマブ[4週ごと1年間])またはCheckMate 816試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと3サイクル]→手術)に参加した患者のIPDを用いて実施した。評価項目は根治手術後のEFSとした。解析には傾向スコアマッチングの手法を用い、平均処置効果(ATE:Average Treatment Effect)の重み付け、治療群における平均処置効果(ATT:Average Treatment effect on the Treated)の重み付けを行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate 77T試験に参加した139例(術前術後群)、CheckMate 816試験に参加した147例(術前群)が、今回の解析の対象となった。・根治手術後のEFSは、術前術後群が術前群と比較して良好であった。解析方法別のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 ATEの重み付け:0.61、0.39~0.97 ATTの重み付け:0.56、0.35~0.90 重み付けなし:0.59、0.38~0.92・根治手術後のEFSを病理学的完全奏効(pCR)の有無別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、pCR未達成のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 pCR達成:0.58、0.14~2.40 pCR未達成:0.65、0.40~1.06・根治手術後のEFSをPD-L1発現レベル別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、PD-L1<1%のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 PD-L1<1%:0.51、0.28~0.93 PD-L1≧1%:0.86、0.44~1.70・根治手術後のEFSをベースライン時のStage別にみると、全体集団と同様に術前術後群が良好な傾向がみられた。HRおよび95%CIは以下のとおり。 StageIB~II:0.53、0.25~1.11 StageIII:0.63、0.37~1.07・安全性は両群間で同様であった。Grade3~4の治療関連有害事象は術前術後群27%(38例)、術前群35%(52例)に発現し、中止に至った治療関連有害事象はそれぞれ6%(9例)、5%(8例)に発現した。

980.

イモガイの毒が糖尿病治療につながる可能性

 巻貝の一種で、地球上で最も有毒な生物の一つである「イモガイ」の毒素が、糖尿病や内分泌疾患の治療に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。イモガイの毒素である「コンソマチン」が、血糖値やホルモンの分泌を調節するヒトのホルモンである「ソマトスタチン」に似た働きをするのだという。米ユタ大学のHo Yan Yeung氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に8月20日掲載された。論文の筆頭著者であるYeung氏は、「イモガイはまるで優れた化学者のようだ」と、冗談交じりに語っている。 著者らの過去の研究によると、コンソマチンはイモガイの毒液に含まれる別のインスリン様の毒素と互いに作用し合い、血糖値を急速に低下させるという。それによって獲物は昏睡状態になり、イモガイに捕食される。論文の上席著者である同大学のHelena Safavi氏は、「毒を持つ生物は進化の過程で、標的とする獲物を仕留めるために毒の成分を微調整してきた」と説明する。そして、「毒液の成分を一つずつ取り出して、どのように正常な生理機能を破綻させるかを観察すると、明らかになったメカニズムがしばしば疾患の病態とよく似ていることがある」のだそうだ。同氏は、「医薬品の研究者にとって、このような研究手法はある種の抜け道のようなものだ」と話す。 ソマトスタチンは、人体内の多くの生理的プロセスにおいて、ブレーキのような働きをしている。例えば、血糖値が危険なほど高くなるのを防ぐように作用する。研究によると、イモガイのコンソマチンは、ソマトスタチンと同じような役割を演じて血糖値の上昇を防ぐという。また、ソマトスタチンはヒトのさまざまなホルモンに作用するが、コンソマチンを利用すれば標的を絞り込んで、ホルモン分泌をより精緻に調整できる可能性があるとのことだ。さらにコンソマチンは、分解されにくい希少なアミノ酸を含んでいるために、ソマトスタチンよりもヒトの体内で長時間作用する可能性も示されている。 とはいえコンソマチン自体は、単独で薬として使用するには危険すぎる。しかし研究者らは、コンソマチンの構造を詳しく調べることで、ヒトのホルモンレベルに影響を与え得る新薬の開発の手がかりとなる可能性があるとしている。またコンソマチン以外にも、糖尿病治療に有用な成分が、イモガイの毒液に含まれている可能性もあるという。Yeung氏も、「毒液にはインスリンやソマトスタチンに類似した毒素だけが含まれているのではなく、血糖値を調整する性質を持つほかの毒素も含まれているのではないか」と話している。

検索結果 合計:10265件 表示位置:961 - 980