サイト内検索|page:471

検索結果 合計:10256件 表示位置:9401 - 9420

9401.

肺がん家族歴を有する非小細胞肺がん患者の臨床病理学的特徴

家族歴を有する非小細胞肺がん患者の臨床的な特徴と予後予測 は確立されていない。Haraguchi 氏らは、1982年から2010年まで自施設で治療した非小細胞肺がん患者の診療録を用い、臨床病理ステージおよび患者の転帰について、肺がんの家族歴を有する患者(family history of lung cancer、以下FHLC)と家族歴の無い患者(non family history of lung cancer、以下non-FHLC)を比較し、包括的なreviewを行った。その解析結果がInternational Journal of Medical Sciences 誌2012年Vol.9で発表された。今回の解析対象である1,013例の非小細胞肺がん患者のうち、124例(12.2%)が肺がんの家族歴を有していた。FHLC患者とnon- FHLC患者のグループ間の因子の単変量解析は、対応のない両側t検定またはχ2検定を用いて行った。FHLC患者では有意に早期の臨床病理ステージが多くみられ 、また腺がんが多かった。FHLC患者の死亡ハザード比は、non-FHLC患者と比較して0.87(95% CI:0.955~1.263、p=0.465)であった(Cox比例ハザードモデルにて計算)。FHLC患者は、早期臨床病理ステージと腺がんの多さで特徴づけられる。FHLC患者に早期臨床病理ステージが有意に多いのは、肺がんに対する素因を有することを認識しているためと考えられる。これらの知見から、肺がんの早期発見とより侵襲の少ない治療介入の実施の重要性が強調されるものである。(ケアネット 細田 雅之)

9402.

仏サノフィとジョスリン糖尿病センターが提携、糖尿病の新薬開発へ

フランス、サノフィ社とハーバード大学医学部付属の教育研究機関であるジョスリン糖尿病センターは19日(現地時間)、糖尿病と関連疾患の治療に向けた新薬開発を促進する新たな研究提携契約を締結したことを発表した。今回の提携は、米国マサチューセッツ州ボストンで開催された2012年バイオ国際会議(Bio International Convention)において発表されたもの。サノフィ・アベンティス株式会社が29日に報告した。ジョスリン糖尿病センターは糖尿病の研究と治療に豊富な経験を有する施設で、今回の提携契約では糖尿病とこれに関連する代謝障害における4つの領域を重要分野とし、糖尿病の後期合併症の治療に用いるバイオ医薬品や低分子医薬品の候補となる新規物質や、効果を絞り込んだ新規インスリンアナログの創薬を目指すという。また、インスリン抵抗性やパーソナライズド・メディシン(個別化医療)にも取り組み、糖尿病患者の生活改善を目標とする研究も行うとのこと。仏サノフィ社の国際研究開発部門のエリアス・ザフーニ氏は、「サノフィ糖尿病領域部門とジョスリン糖尿病センターという糖尿病治療における二大陣営の提携は、糖尿病の本質をより良く理解し、新しい治療法の開発に向けた新たな道筋を示す可能性があります。また本提携は、糖尿病の管理とケアの改善と革新的な研究戦略の策定に向けたサノフィの取り組みを示すものでもあります」と述べている。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=2D5DBFA3-0C5B-46EE-BA20-58C480CA99F2.pdf

9403.

糖尿病管理への質改善戦略の導入、治療効果の向上に寄与

糖尿病管理への質改善(quality improvement:QI)戦略の導入によって治療効果が向上することが、カナダSt Michael病院Li Ka Shing Knowledge InstituteのAndrea C Tricco氏らの検討で示された。糖尿病の管理は複雑なため、プライマリ・ケア医と他の医療従事者の連携が必要であり、患者の行動変容や健康的な生活習慣の奨励なども重要な課題とされる。糖尿病治療におけるQI戦略の効果に関する以前の系統的レビューでは、HbA1c以外の要素は検討されていないという。Lancet誌2012年6月16日号(オンライン版6月9日号)掲載の報告。QI戦略の有効性をメタ解析で評価研究グループは、糖尿病患者におけるHbA1c、血管リスク管理、細小血管合併症のモニタリング、禁煙に対するQI戦略の有効性を評価するために系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Cochrane Effective Practice and Organisation of Care databaseおよび無作為化試験の文献を検索して、成人糖尿病外来患者を対象に11のQI戦略(医療組織、医療従事者、患者を対象としたQI戦略から成る)について検討した試験を抽出した。2名の研究者が別個に、抽出されたデータをレビューし、バイアスのリスク評価を行った。患者に対するQI戦略とともに医療組織への介入が重要48のクラスター無作為化試験(2,538クラスター、8万4,865例)と94の無作為化試験(3万8,664例)が解析の対象となった。ランダム効果モデルによるメタ解析では、標準治療に比べQI戦略では、HbA1cが0.37%(95%信頼区間[CI]:0.28~0.45、120試験)、LDLコレステロールが0.10mmol/L(95%CI:0.05~0.14[=3.87mg/dL、95%CI:1.935~5.418]、47試験)、収縮期血圧が3.13mmHg(95%CI:2.19~4.06、65試験)、拡張期血圧が1.55mmHg(95%CI:0.95~2.15、61試験)それぞれ低下した。ベースラインのHbA1cが8.0%以上、LDLコレステロールが2.59mmol/L(=100.233mg/dL)以上、拡張期血圧が80mmHg以上、収縮期血圧が140mmHg以上の場合にQI戦略の効果が大きかった。また、ベースラインのHbA1cのコントロール状況によってQI戦略の効果にばらつきがみられた。QI戦略では、標準治療に比べアスピリン(相対リスク[RR]:1.33、95%CI:1.21~1.45、11試験)や降圧薬(RR:1.17、95%CI:1.01~1.37、10試験)の使用が増加し、網膜(RR:1.22、95%CI:1.13~1.32、23試験)、腎症(RR:1.28、95%CI:1.13~1.44、14試験)、足の異常(RR:1.27、95%CI:1.16~1.39、22試験)のスクリーニングが増加した。一方、QI戦略はスタチンの使用(RR:1.12、95%CI:0.99~1.28、10試験)、降圧コントロール(RR:1.01、95%CI:0.96~1.07、18試験)、禁煙(RR:1.13、95%CI:0.99~1.29、13試験)には有意な影響を示さなかった。著者は、「多くの試験において、QI戦略による糖尿病治療の改善効果が示された」と結論し、「糖尿病管理の改善を目指した介入では、患者に対するQI戦略とともに医療組織への介入を行うことが重要である。医療従事者に限定した介入は、ベースラインのHbA1cコントロールが不良な場合にのみ有用と考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

9404.

成人気管支喘息治療薬「シムビコートタービュヘイラー」による頓用吸入する治療法が承認

アステラス製薬株式会社とアストラゼネカ株式会社は22日、成人気管支喘息治療薬シムビコートタービュヘイラーによる維持療法に加えて頓用での吸入が新たな用法・用量として承認取得されたことを発表した。シムビコートタービュヘイラーは、1日2回投与のドライパウダー吸入式の喘息治療配合剤として、2010年1月に発売された。新たに承認された1日2回投与の定期吸入に加えて頓用吸入する治療法では、まず発作発現時に1吸入し、数分経過しても発作が持続する場合には、さらに追加で1吸入することができるという。必要に応じてこれを繰り返すことができるが、1回の発作発現につき最大6吸入までとなっている。シムビコートタービュヘイラーは、1剤で気管支喘息の病態である気道炎症と気道狭窄の両方に優れた効果を示すのが特徴。喘息患者の多くは「季節の変わり目の気温差」や「ウイルス感染」など何らかの刺激を受けることで炎症が悪化し、症状の発現や増悪を経験してしまうことが報告されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2012/12_6_22_1.html

9405.

悪性胸水、呼吸困難症状の緩和には胸腔カテーテル留置も胸膜癒着術も効果は同等

 悪性胸水による呼吸困難症状の緩和に対し、胸腔カテーテル留置法と、タルクを用いた胸膜癒着術とを比較した結果、症状緩和の効果は同等であることが報告された。ただし胸腔カテーテル留置法はタルク胸膜癒着術に比べ、当初の入院期間は短く、再胸膜処置の実施率も少なかったが、有害事象発生率は約5倍と高かったことも示されている。英国・オックスフォード大学のHelen E. Davies氏らが、悪性胸水患者106人について行った非盲検無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2012年6月13日号で発表した。悪性胸水は呼吸困難を伴い患者は短命である。胸水ドレナージで症状を緩和できるが最も効果的な第一選択の治療は何かは定まっていない。胸腔カテーテル群と胸膜癒着術群を処置後42日間、VASで呼吸困難症状を評価 研究グループは、2007年4月~2011年2月にかけて、英国内7つの病院で治療を受けた悪性胸水患者106人について、非盲検無作為化比較試験を行い、1年間追跡した。被験者を無作為に、胸腔カテーテル留置法を受ける群と、胸腔チューブとタルク混濁液注入による胸膜癒着術を受ける群に割り付け、呼吸困難症状の緩和効果について比較した。 被験者は、処置後42日間にわたり毎日、100mmスケールの視覚的アナログ尺度(visual analog scale:VAS、0mmは呼吸困難なし、100mmは最大呼吸困難度を示す。臨床的に意味のある有意差は10mm)を用いて、呼吸困難症状について評価された。平均格差について、最小変数を補正した混合効果線形回帰モデルを用いて解析した。初回入院期間は胸腔カテーテル群が胸膜癒着術群に比べ有意に短かった 結果、両群で処置後の呼吸困難症状は改善し、42日間の平均VASは、胸腔カテーテル群24.7mm(95%信頼区間:19.3~30.1)、胸膜癒着術群では24.4mm(同:19.4~29.4)と、有意な格差はみられなかった(格差:0.16mm、同:-6.82~7.15、p=0.96)。 6ヵ月後の呼吸困難症状は、胸腔カテーテル群で胸膜癒着術群より大幅に改善がみられ、平均VASの格差は、-14.0mm(同:-25.2~-2.8、p=0.01)だった。 初回入院期間は、胸腔カテーテル群が中央値0日(四分位範囲:0~1)と、胸膜癒着術群の同4日(同:2~6)にくらべ有意に短かった(格差:-3.5日、95%信頼区間:-4.8~-1.5、p

9406.

CTなど画像診断による1人当たり被曝量、1996~2010年で倍増:米国

米国で1996~2010年の間にCTなどの先端的な画像診断検査を受けた人の割合が増大し、それに伴い1人当たりの放射線被曝量は約2倍に増大したことが報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRebecca Smith-Bindman氏らが、6つの統合ヘルスケアシステム(HMO)加入者について調べた結果で、JAMA誌2012年6月13日号で発表した。米国では近年、診療報酬支払動向での有意な画像診断利用の増加がみられるようになっていたという。しかし患者がどのような画像診断を受けているのかについては不明で、研究グループは、画像診断検査の傾向および被曝との関連について調査を行った。CT実施率は年率8%、MRI実施率は年率10%増加研究グループは、米国6つの大手HMO加入者の電子医療情報を後ろ向きに追跡し、各種の画像診断検査による放射線被曝量を推定した。1996~2010年にかけて、年間100~200万人の加入者データが得られた。その結果、15年間(2,580万人・年)の試験期間中に、加入者が受けた画像診断検査は3,090万件に上った。1人・年当たりの検査数は1.18件(95%信頼区間:1.17~1.19)で、そのうち35%がCTやMRIといった高度画像診断検査だった。CT実施率は、1996年の52/1,000人から2010年の149/1,000人へと、年率7.8%(同:5.8~9.8)の割合で増加した。同期間のMRI実施率は、17/1,000人から65/1,000人で、年率10%(同:3.3~16.5)増加、超音波検査実施率は134/1,000人から230/1,000人へと年率3.9%(同:3.0~4.9)増加していた。1人当たりの平均放射線実効線量、1.2mSvから2.3mSvへ倍増同期間で、核医学的診断法の実施率は、32/1,000人から21/1,000人へと減少した。一方で、2004年以降、ポジトロン断層法(PET)の実施率は、0.24/1,000人から3.6/1,000人へと、年率57%で増加した。1996~2010年のCT実施率の増加により、加入者一人あたりの平均放射線実効線量は、1.2mSvから2.3mSvへ、年間20~50mSv被曝した人の割合は1.2%から2.5%へ、年間被曝量が50mSvを超えた人の割合は0.6%から1.4%へと、いずれも約2倍に増大した。2010年までに、年間20~50mSvの高線量被曝をした人の割合は6.8%、年間50mSv超の超高線量被曝をした人は3.9%に上っていた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

9407.

要注意…論文のアブストラクトと本文の結語の不一致:肺がん全身療法のRCTを分析

臨床医は、新たなRCT(Randomized Control Study)の情報に乗り遅れないよう、論文のアブストラクトだけを読むことがある。しかし、論文の結語(conclusion)は、アブストラクトと本文中で記載内容が一致していないことがある。このアブストラクトの不一致についてカナダQueen’s UniversityのAltwairgi氏らが分析し、その結果がJournal of Clinical Oncologyオンライン版2012年5月29日に掲載された。分析対象となったのは2004年~2009年の間に発表された肺がん全身療法のRCTである。アブストラクト中と本文中の結語は、7段階のリッカート尺度を用いて階層化された(スコア1は対照群を強く支持、4は双方に中立、7は試験群を強く支持)。双方の点数差が2以上の場合、不一致と判定された。また、不一致関連因子の特定にはχ2検定とロジスティック回帰分析が用いられた。結果、114件のRCT(非小細胞肺がん90件、小細胞肺がん24件)が選出され、そのうち11件(10%)の論文で、結語の不一致が示された。不一致は、実験群がアブストラクト中の結語で強く支持されるケースで最も多かった(9/11 件、82%)。また、不一致の要因を分析したところ、掲載誌のインパクトファクター、肺がん進行度、スポンサーシップの有無など試験関連因子からは独立したものであることがわかった。Altwairgi氏らは、実臨床において、RCTに関する論文のアブストラクトだけを確認して診療変更を検討するような場合は、注意を払うべきであると、結語で述べている。(ケアネット 細田 雅之)

9408.

抗血小板薬の投与期間と超遅発型ステント血栓症の発症:J-Cypher

現在、薬剤溶出ステント(DES)留置後のデュアル抗血小板療法(DAPT)が超遅発型ステント血栓症(VLST)を減少させるというエビデンスは明らかに欠如している。しかし、臨床現場ではVLST発症を懸念し、DES留置後1年以上にわたりDAPT療法が広く行われている。この点に関して、京都大学の木村氏らは、J-Cypherステントレジストリの解析結果を発表した。その発表によると、シロリムス溶出ステント(SES)留置後1年を超えたチエノピリジンの長期使用は、VLSTリスクや、死亡、心筋梗塞または脳卒中を含む重篤な心血管イベントリスクの減少と有意な関連性を認めなかった。Cardiovasc Interv Ther誌オンライン版6月14日号掲載。研究対象集団は、少なくとも1本のシロリムス溶出ステント(SES)で治療されたJ-Cypherステントレジストリ内の12,812例。主な結果は以下のとおり。 ・ステント留置後1年で心筋梗塞、ステント血栓症や脳卒中を発症しなかった11,713例のうち、7,414例(63%)がチエノピリジンを継続し、4,299例(37%)が1年未満で中止していた。・チエノピリジン継続群の患者は、チエノピリジン中止群の患者よりも複雑な特性を有していた。・明らかなVLSTリスクやVLSTの累積発症率において、チエノピリジン継続群は、チエノピリジン中止群に比較し、有意な差を示さなかった [0.9 vs 1.2%、p=0.1、調整HR(95%CI):0.71 (0.47~1.06)、p=0.11]。・死亡、心筋梗塞、脳卒中リスクやそれら疾患の累積発症率において、チエノピリジン継続群は、チエノピリジン中止群に対し有意な差を示さなかった [15.3 vs 14.3%、p=0.15、調整HR(95%CI):0.99 (0.89~1.11)、p=0.89]。(ケアネット 鈴木 渉)

9409.

高齢の進行非小細胞肺がんに単剤療法と併用療法はどちらが有用か?:無作為化第II相試験

高齢者に対する化学療法において併用療法の有用性が議論されている。今回、高齢の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、隔週ゲムシタビン(商品名:ジェムザールなど)+低用量カルボプラチン(商品名:パラプラチンなど)併用療法が、有効性、安全性、忍容性において容認されるという結果が、無作為化第II相試験で得られた。2012年6月15日付Lung Cancer誌オンライン版に掲載された。著者の浜松医科大学の草ヶ谷氏らは、今回の結果を確認するために多数の患者でのさらなる検討が必要としている。本試験では、76歳以上の未治療NSCLC患者が、隔週ゲムシタビン+カルボプラチン併用療法(ゲムシタビン1,000mg/m2+カルボプラチンAUC3、1,15日目、4週ごと)に31例、ゲムシタビン単剤療法(1,000mg/m2、1,8,15日目、4週ごと)に30例が、無作為に割り付けられ検討された。患者の平均年齢は79.0歳、主要エンドポイントは全奏効率。主な結果は以下のとおり。 ・全奏効率は、併用療法が22.6%(95%CI:11.4~39.8)、単剤療法10.0%(95%CI:3.5~25.6)であった。・無増悪生存期間中央値は、併用療法が3.9ヵ月(95%CI :0.5~8.5)で、単剤療法の2.4ヵ月(95%CI:0.5~6.7)に比べて有意に長かった。・グレード3/4の血液学的および非血液学的有害事象の発現率は、両群で有意差はなかった。(ケアネット 金沢 浩子)

9410.

慢性めまいに、小冊子ベースの前庭リハビリテーションが有効

慢性めまいに対する小冊子を配布し自宅で行うよう指導する前庭リハビリテーションは症状の改善効果に有効で、プライマリ・ケアにおいて簡易で費用効果に優れた方法であることが報告された。英国・サウサンプトン大学のLucy Yardley氏らが、慢性めまいに対し一般に行われているケアと、小冊子ベースの前庭リハビリテーション(電話サポートあり/なし)の臨床効果と費用対効果を評価することを目的とした単盲検無作為化試験を行った結果で、BMJ誌6月9日号(オンライン版2012年6月6日号)で発表した。前庭リハビリテーションは、前庭機能障害によるめまいの最も効果的な治療法で、簡単な自己エクササイズ法からなるが、自宅で実践可能な適格患者でも本療法を教授されるケースはほとんどないのが現状だという。一般的ケア群、小冊子前庭リハ群、+電話サポート群で評価試験は、2008年10月~2011年1月に南イングランドの35のかかりつけ医(GP)の協力の下、18歳以上で慢性めまいを平均5年以上有し、前庭機能障害が疑われ(GPによる診断で)、頭部運動(患者自身による)で症状が悪化する患者を対象に行われた。被験者は、無作為に一般的ケア群、小冊子ベースの前庭リハビリテーション群、+電話サポートあり群に割り付けられた。小冊子リハ群は、記述されている総合的なアドバイスに基づき自宅で毎日12週間にわたって治療に取り組み、電話サポートあり群はさらに、前庭リハビリテーションセラピストから3つのセッションを受けた。主要評価は、めまい症状スケールのVertigo symptom scale-short form(VSS-SF)、QALY当たりのめまい関連の総医療費とした。臨床的有効性解析はintention to treatにて、介入後の群間比較のため、基線症状スコアを調整し、共分散分析法を用いて行った。電話サポートありの小冊子前庭リハを5人が受ければ1人は1年時点で改善337例が無作為化され、276例(82%)が12週間の治療を完了し主要エンドポイントを受けた。また、263例(78%)が1年時点の追跡評価を受けた。12週間時点で、電話サポート群のVSS-SFスコアは、一般的ケア群と有意に異ならなかった(補正後平均差異:-1.79、95%信頼区間:-3.69~0.11、P=0.064)。1年時点では、電話サポート群(同:-2.52、-4.52~-0.51、P=0.014)、小冊子のみ群(同:-2.43、-4.27~-0.60、P=0.010)ともに、一般ケア群と比較して有意な改善が認められた。また、解析の結果から、両介入群の非常に高い費用対効果が認められた。すなわち、QALY当たりの医療費が非常に低く抑えられ、小冊子のみアプローチが最も費用対効果に優れ、電話サポートによるアプローチが加えられても1,200ポンド(1,932ドル)以上のQALY価値がある費用対効果があることが示された。電話サポートありの小冊子アプローチ療法を5(3~12)人が受ければ1人は、1年時点で主観的な改善を報告することが示された。

9411.

「医の倫理」と弁護士に関する論考

健保連 大阪中央病院顧問 平岡 諦 2012年6月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 ●弁護士とは何する人ぞ  弁護士とは「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」ことを目指す専門家です。日本弁護士連合会(日弁連)の会則にはつぎのように記載されています。 第二条;本会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉である。第十条;弁護士は、人権の擁護者であり、社会正義を顕現するものであることを自覚しなければならない。日弁連のホームページにはつぎに様にも書かれています。「弁護士がその使命である人権擁護と社会正義を実現するためには、いかなる権力にも屈することなく、自由独立でなければなりません。そのため、日弁連には、完全な自治権が認められています。弁護士の資格審査、登録手続は日弁連自身が行い、日弁連の組織・運営に関する会則を自ら定めることができ、弁護士に対する懲戒は、弁護士会と日弁連によって行われます。弁護士会と日弁連の財政は、そのほとんど全てを会員の会費によって賄っています。このように、弁護士に対する指導監督は、日弁連と弁護士会のみが行うことから、弁護士になると、各地にあるいずれかの弁護士会の会員となり、かつ当然に日弁連の会員にもなることとされているのです。」●弁護士と日弁連との関係弁護士と弁護士集団である日弁連の関係を社会の側から見ると次のようになります。現在の社会は「人権を擁護し、社会正義を実現することを目指す専門職」を必要としています。それが現在の弁護士です。「人権を擁護し、社会正義を実現する」ためには、「いかなる権力にも屈することなく、自由独立でなければなりません」。これが社会の求めている「個々の弁護士としてのあり方」です。弁護士も人間です。人間とは時に過ちを犯すものです。個々の弁護士の努力に任せているだけでは、時に「個々の弁護士としてのあり方」を踏み外してしまいます。とくに権力からの「under the threat(脅迫の下)」では個々の弁護士の努力だけでは弱すぎます。弁護士集団に個々の弁護士をバックアップさせる必要があります。そこで社会は「完全な自治権」を弁護士集団に与えて、日弁連を作っているのです。全員加入を強制しているのは、「人権を擁護し、社会正義を実現する」という目的をすべての弁護士に強制する必要があるからです。日弁連は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉である」ことを宣言しています(上記第二条)。この宣言は日弁連自体が「いかなる権力にも屈することなく、自由独立」であること、すなわち日弁連のindependence(自立)を宣言していることになります。宣言は個々の弁護士を後押しすることになります。また、日弁連は、宣言した内容に違反する会員弁護士に対する懲戒、指導監督のシステムを持っています。これは集団としてのself-regulation(自己規制)になります。違反した弁護士を求められている「あり方」に向かわせることになります。このようにして、完全な自治権を持つ、すなわち「自律」した日弁連が個々の弁護士をバックアップすることになるのです。カントは、絶えざる反省(self-regulation)による、本能からの自立(independence)を自律(autonomy)と呼びました。self-regulation(自己規制)によりindependence(自立)を得ている日弁連のあり方は、カントのAutonomy(自律)の概念に一致するものです。そしてまた、世界医師会(WMA)が各国医師会に勧める「医師集団としての自律(Professional autonomy)」とも一致するものです(次項)。なお、専門家集団の自律を考える時に、強制加入か否かは本質的な問題ではありません。●WMAが勧める「医師集団としての自律(Professional autonomy)」とはドイツ・ナチス政権下で行われた「合法的だが、非人道的な人体実験」の悲劇を二度と起こさないように、WMAは新しい「医の倫理」を形成し、各国医師会に受け入れを奨励してきました。法という時の権力の意向よりも(何よりも)患者の意向(自己決定、人権、権利)を優先すること、すなわち「患者の権利(人権)を最優先する医療」を目指すことを「個々の医師としてのあり方」としたのです。WMAはこれをClinical autonomyあるいはClinical independenceと呼んでいます。「患者第一;To put the patient first」の医療を実践するということです。医師も人間です。人間とは時に過ちを犯すものです。個々の医師の努力に任せているだけでは、時に「個々の医師としてのあり方」を踏み外してしまいます。とくに権力からの「under the threat(脅迫の下)」では個々の医師の努力だけでは弱すぎます。医師集団に個々の医師をバックアップさせる必要があります。そこでWMAが考えたのが「医師集団としての自律(Professional autonomy)」です。医師集団としての宣言(権力からのindependence)、そして過ちを犯した医師に対する自己規制システム(self-regulation)を作ることです。すなわち自律した医師会になることを各国医師会に勧めているのです。過去の「医の倫理」は患者・医師間の関係を規定するだけで良かったのです。そこに「悪法」という第三者の問題が出てきたため、患者・医師・第三者の関係を扱う「医の倫理」が必要になったのです。新しい「医の倫理」の第一目的が「患者の権利(人権)を最優先する」ことになりました。そして、その遵守のために医師集団のバックアップが必要になったということです。(注:片仮名の「プロフェッショナル・オートノミー」は日本医師会の造語です。「個々の医師としてのあり方」を指すことばですので、WMAのProfessional autonomyとは全く別物です。)なお、WMAは患者の権利(人権)を守るための「患者としてのあり方」をPatient autonomyと呼んできます。自己決定(self-regulation)により、実験の道具にされないために医師からの自立(independence)を図りなさいということです。WMAは、医師、医師集団、患者としての「あり方」がカントのAutonomyの概念に一致するため、それぞれをClinical autonomy、Professional autonomy、Patient autonomyと呼んでいるのです。●法と医師との関係「患者の権利(人権)を最優先する医療」を実践するためには、「時には、医師に非倫理的行為を求める法には従わないことを要求します」。すなわち医師には「遵法」とともに時には「法への非服従」が求められているのです。「法への非服従」とは「悪法であると主張して変化を求めること」です。その例がアメリカ医師会の倫理綱領(A physician shall respect the law and also recognize a responsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient.)です。詳しくは拙稿「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を参照ください。最後に述べる「岩田健太郎先生への反論」も参照ください。●法と弁護士との関係日弁連の会則を見ると次のように記載されています。第十一条;弁護士は、常に法令が適正に運用されているかどうかを注意し、いやしくも非違不正を発見したときは、その是正に努めなければならない。すなわち、弁護士が現行法に対してとる態度はあくまでも「遵法」です。「かれ(法律家)の職務とするところは、たんに現行法を適用することで、現行法そのものが改善の必要がないかどうかを探求することではない」(カント著「永遠の平和のために」、宇都宮芳明訳、岩波文庫、74頁)のです。多くの弁護士が現行法の改善や新たな法制定への行動を起こしています。それは「社会正義の実現」のためです。弁護士が「法への非服従」や「違法」を目指すことは決してありません。●日本医師会・参与の畔柳達雄弁護士の働き日本医師会にあって、WMAの「医の倫理」を日本に紹介している中心人物は畔柳達雄氏(日本医師会・参与、弁護士)です。しかし、氏は(意図的に)誤って日本へ紹介しています。例えばジュネーブ宣言や国際医の倫理綱領についての解説の中で、最も重要な「法」を含む第三者との関係についての解説が無いのです。「患者の権利(人権)」を守るための「法への非服従」の問題についての解説が無いのです。なぜ氏はこのようなことをするのでしょうか。それは日本医師会の意向を慮ってのことだと思われます。詳しくは拙稿「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を参照ください。「患者の権利(人権)」に関する重要な解説をせず、クライアントである日本医師会の意向に従っている、これが日本医師会・参与である、弁護士の畔柳達雄氏の行っていることです。問題は無いのでしょうか。極悪非道な人間にも弁護士が付きます。これは単に「クライアントの最大限の利益を擁護する」というよりも「極悪非道な人間にもある人権を、法が侵害しないように見守る」ということではないでしょうか。「クライアントの立場を斟酌して、翻訳に際して『意訳も加えて多少の手直し』をすることは有り得ると思われる」かも知れません。その通りです。決して違法をしている訳ではありません。ただ、弁護士としての倫理性はいかがかということが問われるのです。●岩田健太郎先生への反論(「医師と『法への不服従』に関する論考」;MRIC Vol.516への反論)第一に、「法への不服従」は決して「現行法を悪法だと無視して進んで違法行為を行う」ことではありません。本稿「法と医師との関係」の項を参照ください。第二に、アメリカ医師会の倫理綱領の文章と日医の『医師の職業倫理指針』にある文章について「主張はそう変わりがないのだ」と言われますが、読解力を疑います。「A physician shall respect the law and also recognize a responsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient.」と「法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れないということもあって、医師は現在の司法の考えを熟知しておくことも必要である」とでは、主張すべき点はまったく反対です。前者は「法への非服従」を、後者は「遵法」を強調していることになります。また、日医の文章では何に対する法律の不備であるかが不明瞭です。第三に、ジュネーブ宣言の原文「even under threat」に「いかなる」は含まれていないとするご指摘はその通りです。ただ、WMA医の倫理マニュアルの中のジュネーブ宣言では、「even under threat」の日本医師会訳は「いかなる脅迫があっても」となっています。どちらでも良いのではないでしょうか。

9412.

CDR-SBとは軽度認知障害の診断・治療に有効な評価尺度

 アルツハイマー型認知症(AD)の治療において早期の治療介入は有用であるが、早期診断を行う上で課題がある。Cedarbaum氏らは軽度ADや軽度認知障害 (MCI)の臨床試験に用いる評価尺度として臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)が精神症状の測定に有用であるかをAlzheimer's Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)のデータベースを使用し評価した。Alzheimers Dement誌オンライン版2012年5月31日掲載。CDR-SBを軽度ADおよびMCI患者382例を対象に評価した ADNI試験にエントリーした軽度ADおよびMCI患者382例を対象に、CDR-SBの内的整合性、構造的妥当性、収束的妥当性、2年間の内在的および外的な反応を評価した。 軽度ADやMCIの臨床試験に用いる評価尺度としてCDR-SBが精神症状の測定に有用であるかを評価した主な結果は以下のとおり。・CDR-SBはAD患者の認知障害および機能障害を評価することが可能である。・MCI、軽度ADどちらにおいてもCDR-SBスコア 、認知障害スコア、機能障害スコアの平均値はほぼ直線的に減少 した。・AD患者の認知障害および機能障害を包括的に評価する主要評価尺度としてCDR-SBは有用である。・とくに、CDR-SBはMCIや軽度AD患者の研究に役立つ可能性がある。関連医療ニュース・わが国の認知症有病率は従来の報告よりかなり高い:第53回日本神経学会学術大会より・中等度~高度AD患者にメマンチンは本当に有効か?―メタ解析結果より―・認知症患者の治療効果、物忘れクリニックvs.一般診療所

9413.

教育講演「分子標的薬の現状と展望―副作用対策を含めて―」

座長 清原 祥夫氏 (静岡がんセンター 皮膚科)中川 秀己氏(東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座)ビスフォスフォネートの抗腫瘍効果についてはいまだ賛否両論がある。現在までにいくつかの臨床試験の結果が報告されており、システマティックレビューとメタ分析が行われた。ここでは、主にチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状の特徴と対処法、抗体医薬使用時の注意すべき副作用について前編、後編に分けてレポートする。皮膚科医とチロシンキナーゼ阻害薬・抗体医薬の関わりとは?本教育講演では、まず、自治医科大学皮膚科学教室 大槻マミ太郎氏が分子標的薬の概要について講演を行った。初めに、大槻氏は、今後、シェアを確実に伸ばしていく薬剤として低分子のチロシンキナーゼ阻害薬や高分子の抗体医薬などを挙げ、これらの薬剤がターゲットを絞り込む分子特異的治療の両輪となっていると述べた。キナーゼ阻害薬は主に抗がん剤として用いられており、皮膚科領域でも、悪性黒色腫などに対する開発に期待が高まっている一方、現時点では、その副作用として高頻度に発現する皮膚症状とその対処法に注目が集まっている。また、抗体医薬は免疫疾患のQOL改善に貢献度が高く、皮膚科では乾癬治療薬としてTNFαやIL-12、IL-23を標的とした生物学的製剤に期待が寄せられているが、ほかの適応疾患における使用により、乾癬型の薬疹の発現が報告されており、その対処も議論されている。このことを踏まえ、乾癬の治療に関しては、新しい分子標的薬は標的がピンポイントであるため、副作用も絞り込まれると期待されているが、特定の経路のみ抑制すると別の経路が活性化される可能性があり、未知なる「逆説的副作用」が生じる可能性がある。一方で、シクロスポリンなど作用点は多岐にわたるがさまざまな経路を幅広く抑制しうる薬剤は、副作用も経験的に熟知されており、古典的であるがゆえに、使い勝手の良い薬剤ともいえる、と大槻氏は述べた。EGFR阻害薬の皮膚症状と対処法:主にざ瘡様発疹について滋賀医科大学皮膚科学講座 藤本徳毅氏はEGFR(上皮増殖因子受容体)阻害薬による皮膚症状と対処法について、考察を述べた。EGFR阻害薬には、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)やエルロチニブ(同:タルセバ)などのチロシンキナーゼ阻害薬と、セツキシマブ(同:アービタックス)やパニツムマブ(同:ベクティビックス)などのモノクローナル抗体があり、非小細胞肺がんや大腸がん、膵がんなどに使用されている。これらの薬剤は、EGFRシグナルを阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制し、原疾患への効果を発揮する。一方でEGFRは正常皮膚の表皮基底細胞や外毛根鞘細胞などにも発現することがわかっており、EGFR阻害により、活性化EGFRが減少し、ケラチノサイトの角化異常、角質の菲薄化、角栓の形成が亢進することで高頻度で皮膚障害が生じると言われている。EGFR阻害薬の皮膚症状としては、主にざ瘡様発疹や乾皮症、爪囲炎などが多く、稀なものとしては脱毛性病変などが挙げられる。これら皮膚症状は、重症度が高いほど、原疾患に対するEGFR阻害薬の有効性が高い、つまり生存期間が長いことが示されており、治療効果をはかる指標となる可能性も示唆されている。ざ瘡様発疹の対処法とは?続いて、それぞれの皮膚障害の特徴や対処法について言及した。ざ瘡様発疹はEGFR阻害薬投与後、数日で発現し、4~6週でピークを迎え、6~8週で軽快するケースが多い。また、顔面や体幹に好発し、掻痒や疼痛を伴うが面疱は認められず、大半が無菌性であると言われている。藤本氏は、ざ瘡様発疹は高頻度に発現することがわかっているが、チロシンキナーゼ阻害薬よりもモノクローナル抗体のほうが重症な皮疹が出る印象がある、とつけ加えた。重症度については、日本臨床腫瘍研究グループによって公表されている「有害事象共通用語規準ver4.0 日本語訳JCOG版」(CTCAE v4.0 - JCOG)を用いるのが一般的である。ここでは、体表面積と社会的要素を中心に5段階のGradeに分類されている。ほかにも、各製品の適正使用ガイド等に、掻痒、疼痛の有無によるGradeの目安や発疹出現時の用量調節の基準などが掲載されており、参考にできるとした。対処法については、基本的に、皮膚症状による薬剤の休薬や減量は避けたいとしながら、確立していないものの経験的に実施されているいくつかの治療法について紹介した。ざ瘡様発疹の場合、炎症性ざ瘡の治療に準じて、外用抗菌薬が用いられる。また、局所療法の1つとして、ステロイド外用薬が使用されており、藤本氏は、顔面については、Grade2の場合はstrong class、Grade3でvery strong classを使用すると述べた。しかし、これまでの国内外の文献を見てみると、その評価は一定していないことにも触れ、ステロイド外用薬は即効性はあるが、上手に使いこなすことが重要であると強調した。さらに、Grade2以上または細菌感染合併例には、テトラサイクリン系抗菌薬内服(とくにミノサイクリン)が有効であることも述べた。ミノサイクリンに関しては、海外から、「6週間程度の服用を推奨する」、「皮膚症状の予防効果がある」などの報告がある一方で、「そのエビデンスレベルは不明」とする報告もあるとした。ほかにも、免疫抑制剤の外用薬を使用し、有効性が認められた報告やアダパレンゲルについても言及したが、いずれも一定の評価は得られていないとした。その他の副作用への対処法は?乾皮症は4~35%程度の発現頻度であり、EGFR阻害薬投与後、1~2ヵ月で症状が発現することが多い。治療としては、まずはヘパリン類似物質やワセリン、尿素製剤外用などによって保湿を行い、効果が得られない場合は、ステロイド外用薬を併用する。この症状に関しては、保湿による予防が重要である、と述べた。また、爪囲炎は6~12%程度の発現頻度であり、薬剤投与後2~4ヵ月くらいから見られる症状である。基本的には、浸出液が見られる場合、洗浄、クーリング、テーピング、保湿剤等による処置を行うが、発赤や腫脹が見られる場合には、初期から、very strong~strong classのステロイド外用薬を積極的に用いることが重要である。そのほか、細菌感染合併例には短期間のミノサイクリン内服、さらに外科的処置として部分抜爪や人口爪も考慮されるとした。毛髪異常に関しては、薬剤投与開始後2、3ヵ月で見られることが多いが、頻度は不明であり、中にはまつ毛や眉毛が伸びる症例も見られる。基本的には、EGFR阻害薬を中止しないことには改善しないが、患者さんからの訴えも多くはないため、中止・休薬するケースは少ないと述べた。このようなEGFR阻害薬による皮膚症状では、予防が重要であると言われている。スキンケアの指導は、清潔、保湿、刺激からの保護を基本とし、たとえば、「保湿剤はこすらずに、手のひらでおさえて塗る(スタンプ式塗布)」「外出時は日焼け止めを使用する」「爪は長く伸ばしてまっすぐ切る」などこまめな指導が必要となってくる。藤本氏は、これらスキンケアの方法を患者にわかりやすく説明し、薬剤の写真が入った説明書を配布するなどして、皮膚症状が出ても患者があわてずにすむように指導を行うことも重要である強調し、講演を締めくくった。

9414.

サイノシュアー株式会社

1991年の設立以降、多くの新しいテクノロジーを開発してきたサイノシュアー。現在、そのソリューションも増え、幅広いレーザー技術を提供している。 2005年のNASDAQ株式上場後は、業界のリーダーとして、欧米のみならず世界各国に向けた製品の開発・提供を目指してきた。 60ヵ国以上の国々にさまざまなソリューションを提供しており、2004年時に4社だった現地法人は現在11社。質の高いカスタマーサポートの提供を目指して現在も日々成長している。この成長について同社は、「“継続的なイノベーションを起こす”というビジョンのもと、幅広く充実したアプリケーションの開発・提供など、新たな分野を開拓してきたことで実現できた」としている。昨今、多くの企業が研究開発への予算削減を行っている中、同社は未来への投資を継続して行っている。世界に張り巡らされた各拠点の日々のカスタマーサービスを充実させ、そのインプットを増やすことで、今後もさまざまなイノベーションを継続的に生み出し、お客様とともに歩んでいくことを目指すグローバル企業である。History1991年Horace Furumoto博士によりCynosure社誕生1992年パルスダイレーザーを導入1996年アジアに現地法人を開設1996年世界初の脱毛用ロングパルスアレキサンドライトレーザー(LPIR)を開発2000年日本オフィス開設2003年Michael R. Davinが社長兼CEOに任命される2004年カナダに事業拡大2004年世界初のマルチプレックステクノロジーを導入2005年NASDAQに上場2007年革命的なレーザー脂肪融解の導入2008年医療・美容レーザーにおける最大企業となる2009年韓国およびメキシコにオフィス開設2010年MPX製品の拡大(Elite MPX)TriPlex(3波長搭載技術)の開発2011年Eleme Medical買収。ソリューションの拡大2012年SideLazeテクノロジーの開発美容トレンド&テクノロジー誌による受賞一覧Best Customer Service & SupportMost Diverse Hair Removal Laser for All Skin TypesBest Fractionalized Technology (non-ablative)Most Promising New Technology (Laser Lipolysis)Best Body Contouring DeviceBest Laser for Vascular MalformationsBest Hair Removal Laser(ケアネット)

9415.

キャンデラ株式会社

第111回日本皮膚科学会総会では、医療機器についても多数のメーカーによりブースが設けられていた。キャンデラ株式会社も、そのうちの一社である。Science, Results, Trustキャンデラ株式会社は、米国Candela Corporationの日本法人として1989年に設立され、四半世紀にわたりEBMを重視した質の高い医療用レーザー機器を中心に扱ってきた。臨床面からメンテナンスまで信頼のおけるサポートに力を入れている、同社の取り扱い製品を紹介する。製品紹介【GentleLASE】ロングパルスアレキサンドライトレーザー皮膚に存在するメラニン色素に対し選択的に吸収されやすい波長を持つロングパルスアレキサンドライトレーザー装置ジェントルレーズは良性の色素性疾患治療に有効。スポットサイズも従来機種に比べ非常に大きいため、乱反射による光エネルギーのロスが少なくレーザービームはより深部まで到達でき、また大口径のスポットは広範囲のメラニン疾患に対しても大変効率良く治療することが可能である。【GentleYAG】ロングパルスヤグレーザー皮膚組織の凝固を主目的とするロングパルスヤグレーザー装置。皮膚深達性に優れ皮膚中層から深層にまで熱エネルギーを伝達することができる。また、ターゲットに応じてパルス幅を0.25~250ミリ秒まで可変することが可能で、周囲の正常組織への熱損傷を最小限に抑えることに適している。操作性を重視し、大口径の照射スポット、光ファイバーによる導光方式を採用。レーザー照射は最高で毎秒2回の連続照射が可能である。【Vbeam】ロングパルスダイレーザーいわゆる赤アザのレーザー治療は1960年代からすでに始められ、ルビーレーザー、炭酸ガスレーザー、アルゴンレーザーなどさまざまな波長のレーザーによる治療が研究されてきた。ローダミン色素を用いた波長577ナノメートルの色素レーザーによる臨床報告以降、1990年代からはパルス波ダイレーザーによる治療が最も安全かつ有効であると云われている。キャンデラ社は初期の段階からパルス波色素レーザーの医家向けの開発を手がけており、キャンデラ社ダイレーザーを使用した医学会誌での臨床論文の総数も300を超えているという。キャンデラ社製Candela Vbeamは現在、世界で最も親しまれている血管病変治療用のダイレーザーの1つであり、平成24年6月現在、62ヵ国、1800台以上が日々臨床使用されている。Vbeamから発振される波長595ナノメートルのレーザー光は、血液中のヘモグロビンに選択的に吸収されるという特徴を持つ。毛細血管が凝集した病変部では、ヘモグロビンがレーザーの光エネルギーを吸収し、熱変換することで血管内壁が熱破壊され、血管を閉塞させる。また、Vbeamはレーザーのパルス幅(照射時間)を調節できるという新機能を有しており、これにより毛細血管の血管径に応じた照射時間を適宜設定することが可能となった。さらに、内蔵のダイナミッククーリングディバイス(DCD)がレーザーに同期し、レーザー照射直前に寒剤を吹きつけることにより皮膚を保護する。当治療は保険適応の対象となっている。対象疾患: 単純性血管腫、苺状血腫、毛細血管拡張症の治療【AlexLAZR】Qスイッチアレキサンドライトレーザー皮膚良性色素性疾患治療用レーザー装置アレックスレーザーは太田母斑などの「青アザ」の原因となる皮膚に含まれる異常メラニン色素に対し、選択的に吸収されやすい波長を有している。また、Q-スイッチと呼ばれるシステムによりレーザーパルスの照射時間が非常に短く、周辺の正常組織への影響を最小限に抑えた安全な治療が可能である。メラニンだけを選択的に破壊できるメカニズムは1983年にDr. AndersonとDr. Parrishにより提唱されたSelective Photothermolysis理論(選択的光加熱分解)に基づいており、メラニンに吸収されやすい波長を持つレーザーで、メラニンの熱緩和時間(~50ナノ秒)以内にレーザーパルスを照射することにより選択性が生じ、安全な治療が可能になったとのこと。当治療も保険適応の対象となっている。(ケアネット)

9416.

パロマジャパン株式会社

第111回日本皮膚科学会総会では、医療機器についても多数のメーカーによりブースが設けられていた。パロマジャパンも、そのうちの一社である。パロマジャパン株式会社は、米国Palomar Medical Technologies社(以下パロマ社)の日本法人として2010年に設立された。パロマ社は皮膚科・形成外科ジャンルの治療を主としたレーザー・IPLシステムの設計、生産、提供を行っている。StarLux今回展示されていたのは、パロマ社の代表機種『StarLux500(※国内未承認機器)』である。『StarLux』はフラクショナルレーザーを中心に、美容皮膚科医が求めるさまざまな治療を提供するマルチプラットフォームというのが売りだそうだ。ノンアブレーティブタイプのフラクショナルレーザー『Lux1540』は、しわ・傷痕・ニキビ痕・ストレッチマーク等の治療に効果を発揮するが、パロマ社独自の強力なコンタクトクーリングによる、治療中の痛みの少なさやダウンタイムの短さなどが特徴である。さらに本学会では、治療効果・鎮痛効果を高めたという最新のレンズ『XDレンズ』も展示されていた。Lux1540MAXGまた『StarLux』は光治療も可能であり、脱毛・レジュビネーションから血管腫の治療まで、IPLで幅広いアプローチを提供しているという。とくに、本学会で展示されていた最新のIPLハンドピース『MAXG』はデュアルバンドフィルターを搭載することでヘモグロビンと血管・深い部位にある血管にも集光でき、従来のシミ取り・赤ら顔の治療にとどまらず、毛細血管拡張症などの血管腫の治療も可能となっているとのこと。『StarLux』はこれらのほかにも、LegVein治療用のロングパルスヤグレーザー、スキンタイトニング用の近赤外線光を照射するハンドピースも利用できる。百聞は一見に如かず。次回学会の際には、ぜひ、ブースに立ち寄って実際の製品を手にとってご覧になられてはいかがだろうか。(ケアネット)

9417.

ベアメタルステント留置後の超遅発性ステント血栓症の原因は? :小倉記念病院

これまでベアメタルステント(BMS)留置後にvery late stent thrombosis(VLST)が発生する病態生理学的なメカニズムは明らかになっていなかった。小倉記念病院の山地氏らは、明らかなステント血栓症を有するBMS留置102例の解析により、留置後3年超のVLSTの原因として、ステント内新アテローム性動脈硬化の破裂が、重要な役割を果たしている可能性があることをCirc Cardiovasc Interv誌2012年2月号にて報告した。対象は、2002年9月~2010年2月の期間で、明確なステント血栓症を有したBMS留置102例であり、組織病理学的評価と血栓吸引を施行したステント血栓症と無関係の急性冠症候群(ACS)42例をコントロールとした。主な結果は以下のとおり。 ・Early ST(EST、30日以内)40例、Late ST(LST、31~365日)20例、およびVLST(1年超)42例であった。・泡沫状マクロファージ、コレステロール結晶、薄い線維性被膜のようなアテローム性動脈硬化プラーク断片は、EST、VLST、LSTのそれぞれにおいて、23%、31%、10%に観察された。・アテローム性動脈硬化の断片は、主に3年超のVLSTまたは7日以内のESTにみられた。・ステント血栓症とACSの患者から採取した吸引血栓は、組織学的に区別できなかった。(ケアネット 鈴木 渉)

9418.

心血管疾患リスク予測モデル、バイアスの影響が明らか

既存の心血管疾患リスク予測モデルは有用であり、これらモデルの直接比較はベネフィットをもたらすと考えられるが、比較試験の論文はアウトカムの選択バイアスや楽天主義バイアスの影響を受けていることが、ギリシャ・Ioannina大学のGeorge C M Siontis氏らの検討で示された。臨床での使用が推奨されている心血管疾患リスク予測モデルの中には、異なる集団やアウトカムに関して開発され、妥当性の検証が行われているものがある。最も一般的で広く普及しているリスクモデルでも、その識別、キャリブレーション、再分類に関する予測能はほとんど知られていないという。BMJ誌2012年6月2日号(オンライン版2012年5月24日号)掲載の報告。予測モデルを比較した試験を系統的にレビュー研究グループは、確立された心血管リスク予測モデルの比較に関するエビデンスの評価を行い、相対的な予後予測能の比較情報を収集するために、予測モデルの比較試験を系統的にレビューした。2011年7月までにMedlineに登録され、2つ以上のモデルを比較した論文を検索した。適格論文の引用文献や参考文献の調査も行った。試験デザイン、リスクモデル、アウトカムに関する情報を抽出して、モデルの相対的な検出能(識別能、キャリブレーション、リスクの再分類)を評価し、アウトカムの決定や、新規導入モデルおよび著者開発モデルに有利に働く楽天主義バイアス(optimism bias)の検討を行った。8モデルの比較論文を解析、バイアスの影響は明らか8つのモデルの56種の一対比較に関する20の論文が解析の対象となった。8つのモデルは以下のとおり。Framinghamリスクスコアの2つの改訂版、assessing cardiovascular risk to Scottish Intercollegiate Guidelines Network to assign preventative treatment(ASSIGN)スコア、systematic coronary risk evaluation(SCORE)スコア、Prospective Cardiovascular Münster (PROCAM)スコア、QRESEARCH cardiovascular risk(QRISK1、QRISK2)アルゴリズム、Reynoldsリスクスコア。識別能については、56の比較のうち受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)に基づく相対的な誤差が5%を超えたのは10のみであったが、これ以外の識別能の評価指標は一致率が低かった。キャリブレーション能は38の比較について報告されていたが、一貫性はまったくなかった。リスクの分類/再分類の報告は少なく、10の比較のみだった。比較された2つのモデルの双方が、当該アウトカム用に独自に開発され妥当性の検証が行われていたのは13の比較のみで、32の比較では一方のみが独自開発であり、残りの11の比較ではいずれのモデルも独自開発ではなかった。一方のみ独自開発のモデルの比較のうち25の比較(78%)では、アウトカム適合モデルのほうが、比較されるモデルよりもAUCが有意に良好だった(p<0.001)。さらに、独自開発モデルの論文の筆者は、常に自分が開発したモデルのAUCが優れると報告していた(新規導入モデルに関する5論文とその後の評価を行った3論文)。著者は、「これらの心血管疾患リスクの予測モデルは十分に確立されたものである。これらの直接比較はベネフィットをもたらすと考えられるが、論文がアウトカムの選択バイアスや楽天主義バイアスの影響を受けていることも明らかだ」と結論し、「新規モデルと既存の確立されたモデルの比較による改良は、理想的にはいずれのモデルの開発からも独立した研究者によって行われるべきである」としている。

9419.

手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

9420.

国家的「手洗いキャンペーン」が医療従事者関連感染症を低減:英国

イングランドとウェールズでは2004年に、全国のNHS傘下病院の医療従事者に対し、「手洗いキャンペーン(Cleanyourhands campaign)」が開始された。背景には、MRSAやMRSSなどの感染症蔓延の報告に対する懸念、一方の医療従事者の手洗いコンプライアンスが低率という報告があったこと、それらの前提として医療従事者の手指を媒介として患者から患者への感染拡大の可能性があったことなどによるという。キャンペーンは、2008年までに3回にわたって発動され、その効果について、英国・University College London Medical SchoolのSheldon Paul Stone氏らが前向き調査にて評価をした。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月3日号)掲載報告より。病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率と感染症発生との関連について調査「手洗いキャンペーン」は、ベッドサイドへのアルコール手指消毒薬の供給、医療従事者に手洗いを想起させるポスターの配布、コンプライアンスについての定期的検査とフィードバック、医療従事者に手洗いを想起させるための患者への資料提供から成った。アルコール手指消毒薬および液状石鹸はNHS物品供給会社を通して購入することとされ品質は保証されたものだった。キャンペーンは保健省が資金を提供し、国家患者安全丁(NPSA)の調整の下で展開された。キャンペーンの全国展開開始は2004年12月1日で翌2005年6月まで全国の急性期NHS病院に対し介入が続けられた。その後、2006年6月末、2007年10月に一新やポスターの再作成などが図られた。Stone氏らは、病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率、特定の医療従事者関連感染の報告におけるキャンペーンの影響について評価し、2004年7月1日~2008年6月30日の間の感染症発生と調達率との関連について、前向き生態学的断続時系列の手法を用いて調査した。調達率3倍に、MRSAとC. difficileは減少に転じたがMSSAには影響認められず四半期ごとに調べられた病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率は、1患者・床・日当たり21.8mLから59.8mLへと約3倍に増えていた。調達率は各キャンペーン発動と関連して上昇していた。感染報告症例は1万床・日当たり、MRSA菌血症は1.88から0.91に減少、C. difficile感染症も16.75から9.49に減少した。しかしMSSA菌血症は減少に転じなかった(2.67からピーク時3.23に、試験終了時は3.0)。石鹸の調達は、C. difficile感染症低減と独立した関連が試験期間を通して一貫して認められた(1mL/患者・床・日増大に対する補正後発生率:0.993、95%信頼区間:0.990~0.996、P<0.0001)。アルコール手指消毒薬の調達は、MRSA菌血症低減と独立した関連が認められたが、それは試験最後の4四半期においてのみだった(同:0.990、0.985~0.995、P<0.0001)。2006年発動のキャンペーンが最も強くMRSA菌血症低減(同:0.86、0.75~0.98、P=0.02)、C. difficile感染症低減(同:0.75、0.67~0.84、P<0.0001)と関連していた。定期検査のための保健省改善チームのトラスト訪問も、MRSA菌血症低減(同:0.91、0.83~0.99、P=0.03)、C. difficile感染症低減(同:0.80、0.71~0.90、P=0.01)と強く関連し、訪問後少なくとも2四半期はその影響が認められた。結果を踏まえてStone氏は、「手洗いキャンペーンは、病院の手指消毒薬等の調達継続と関連しており、医療従事者関連の感染症低減に重要な役割を果たすことが示された。医療従事者関連の感染症低減には、人目を引く政治組織的な推進力の下で行う国家的介入の感染症コントロールが有効である」と結論している。

検索結果 合計:10256件 表示位置:9401 - 9420