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敗血症性ショックへのEGDTプロトコル、死亡率は通常ケアと変わらず/NEJM

 敗血症性ショックにおける早期目標指向型治療(early goal-directed therapy:EGDT)プロトコルに基づく蘇生治療の有効性を検討した多施設共同無作為化試験の結果、同治療はアウトカムを改善しないことが示された。米国・ピッツバーグ大学のDerek C. Angus氏ら「ProCESS(Protocolized Care for Early Septic Shock)」共同研究グループが報告した。EGDTは、10年以上前に発表された単施設試験の結果に基づくプロトコルである。同試験では、救急部門(ER)に搬送されてきた重症敗血症および敗血症性ショックの患者について、6時間で血行動態目標値を達成するよう輸液管理、昇圧薬、強心薬投与および輸血を行う処置が、通常ケアよりも顕著に死亡率を低下したとの結果が示された。ProCESS試験は、この所見が一般化できるのか、またプロトコルのすべてを必要とするのか確認することを目的に行われた。NEJM誌オンライン版2014年3月18日号掲載の報告より。EGDTプロトコル、標準プロトコル、通常ケアで無作為化試験 試験は2008年3月~2013年5月に、全米31の3次医療施設ERにて行われた。敗血症性ショック患者を、(1)EGDTプロトコル群、(2)標準プロトコル群(中心静脈カテーテル留置はせず、強心薬投与または輸血)、(3)通常ケア群、のいずれか1つの治療群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、60日時点の院内全死因死亡とし、プロトコル治療群(EGDT群と標準群の複合)の通常ケア群に対する優越性、またEGDTプロトコル群の標準プロトコル群に対する優越性を検討した。 副次アウトカムは、長期死亡(90日、1年)、臓器支持療法の必要性などだった。EGDT vs.標準、プロトコルvs.通常、いずれも転帰に有意差みられず 試験には1,341例が登録され、EGDTプロトコル群に439例、標準プロトコル群に446例、通常ケア群に456例が無作為に割り付けられた。 蘇生戦略は、中心静脈圧と酸素のモニタリング、輸液、昇圧薬、強心薬、輸血の使用に関して有意な差があった。 しかし60日時点の死亡は、EGDTプロトコル群92例(21.0%)、標準プロトコル群81例(18.2%)、通常ケア群86例(18.9%)で、プロトコル治療群vs. 通常ケア群(相対リスク:1.04、95%信頼区間[CI]:0.82~1.31、p=0.83)、EGDTプロトコル群vs. 標準プロトコル群(同:1.15、0.88~1.51、p=0.31)ともに有意差はみられなかった。 90日死亡率、1年死亡率および臓器支持療法の必要性についても有意差はみられなかった。

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原因不明の慢性腰痛は姿勢制御の障害が原因か

 慢性腰痛は成人の12~33%にみられるが、腰痛が慢性化する原因はまだ明らかになっていない。リスク因子として、これまでにも姿勢制御の変化が可能性として示唆されていたが、決定的な研究報告はなかった。ブラジル・サンパウロ大学のRene Rogieri Caffaro氏らは、非特異的慢性腰痛患者を対象に重心動揺測定を行い評価した結果、同患者では足圧中心動揺が増加しており、姿勢制御が障害されていることを明らかにした。とくに不安定な床面での視覚遮断(閉眼)時において顕著であったという。European Spine Journal誌2014年4月号(オンライン版2014年2月26日号)の掲載報告。 研究グループは、非特異的慢性腰痛の有無による静止立位時姿勢制御の差異を検討することを目的とした。 対象は、非特異的慢性腰痛を有する患者21例および有していない対照者23例であった。 フォースプレート(Balance MasterⓇ、NeuroCom社)を用いてModified Clinical Test of Sensory Interaction and Balance(mCTSIB)を、視覚アナログスケールにより疼痛強度を、SF-36を用いてQOLを、ローランド・モリス障害質問票を用いて機能障害を評価した。 主な結果は以下のとおり。・非特異的慢性腰痛群(cLBP)と対照群(CG)とで年齢、体重、身長、BMIに差はなかった。・cLBP群はCG群と比較し、足圧中心動揺の計測パラメータより、不安定な床面での閉眼時安静立位における姿勢動揺が大きいことが認められた(p<0.05)。・cLBP群 vs CG群の計測パラメータは、足圧中心動揺は1,432.82(73.27)vs 1,187.77(60.30)、RMS矢状面は1.21(0.06)vs 1.04(0.04)、平均振動速度は12.97(0.84)vs 10.55(0.70)であった。

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22)1駅前で降りて歩くメリットの上手な説明法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師普段、どんな運動をされていますか? 患者最近、時間がなくて、運動できていないんです。通勤で歩くくらいです。 医師そうですか。お忙しそうですね。通勤では片道、どのくらい歩いておられますか? 患者10分くらいです。 医師なるほど。1駅前で降りると、どのくらいになりますか? 患者20分ちょっとですかね。 医師なるほど。片道が10分以下の人に比べて、20分を超える人は糖尿病に27%なりにくいそうですよ。 患者そんなに違うんですね。それなら、1駅前で降りて歩いてみようかな。 医師それはいいですね。(歩行時間と糖尿病発症の関連: 0~10分=1.00、11~20分=0.86、21分以上=0.73)●ポイント大きな目標ではなく小さな目標を一緒に考えると自己効力感が高まります 1) Sato KK, et al. Diabetes Care. 2007; 30: 2296-2298.

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26)食習慣の勘違いを上手に正す方法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者朝食は気をつけて食べています。医師朝食はどんなものを食べておられますか?患者朝食は主にパンです。医師パンですね。どんなものをよく塗られていますか?患者えっと、目にいいというので、ブルーベリージャムを塗っています。医師パンにはブルーベリージャムですね。飲み物は?患者牛乳です。牛乳にきなこを混ぜています。きなこは健康にいいというので・・・医師そうですか。野菜とかは?患者ドレッシングにはオリーブオイルを使っています。医師他には?患者腸にいいというのでヨーグルトを摂ることにしています。砂糖の代わりにはちみつを使っています。医師なるほど。この朝食メニューをみてもらっていいですか。どちらがヘルシーな朝食メニューだと思いますか?(イラストを示して)患者どちらもよさそうですけど、しいていえば、Aですか?医師残念ながらBです。Bのメニューが400kcalに対し、Aのメニューは900kcalと倍以上のカロリーです。患者えっ、そんなに違うんですか!?どうしてですか?(驚きの声)医師実は、健康にいいといわれている食品はカロリーの高いものが多くて、それを摂り過ぎるとカロリーオーバーになってしまうのです。患者つまり、健康にいいと思って摂っていたのが逆効果だったんですね。医師そうですね。Aさんにとって、一番簡単な食事療法は健康にいいと思って勘違いしてとり過ぎている食品を止めることかもしれませんね。患者はい。わかりました。(嬉しそうな顔)●ポイントメニューを比較してもらうことで、患者さん自身に食事療法の勘違いに気づいてもらえます

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BPSD治療にベンゾジアゼピン系薬物治療は支持されるか

 米国・テキサス大学サンアントニオ校のRajesh R. Tampi氏らは、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対するベンゾジアゼピン系薬物治療の有効性と忍容性に関する、無作為化試験のシステマティックレビューを行った。その結果、現状の入手できたデータは、限定的ではあるが、BPSDへのベンゾジアゼピン系薬物治療をルーチンに行うことを支持しないものであったことを報告した。ただし特定の状況では使用される可能性があることも示唆されている。American Journal of Alzheimer's Disease and Other Dementias誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬物の使用について入手可能なデータを要約することを目的に、BPSD治療に関する無作為化試験をレビューした。5大主要データベース(PubMed、MEDLINE、PsychINFO、EMBASE、Cochrane Collaboration)をシステマティックに検索して行った。 主な結果は以下のとおり。・レビューの結果、無作為化試験5本が得られた。・ジアゼパムとチオリダジン(国内発売中止)を比較したもの1試験、オキサゼパム(国内未発売)とハロペリドールまたはジフェンヒドラミンを比較したもの1試験、アルプラゾラムとロラゼパムを比較した1試験、ロラゼパムとハロペリドールを比較した1試験、筋注(IM)ロラゼパムとIMオランザピン(国内未発売)またはプラセボと比較した1試験であった。・5試験のうち4試験のデータにおいて、BPSD治療の有効性について試験薬間の有意差は示されていなかった。・残る1試験で、チオリダジンがジアゼパムよりもBPSD治療についてより有効である可能性(better)が示唆されていた。・また1試験では、プラセボと比較した場合に試験薬の有効性がより高かった(greater)。・忍容性については、試験薬間で有意差はみられなかった。しかし5試験のうち2試験において、約3分の1の被験者が試験途中で脱落していた。・入手データの分析の結果、限定的ではあるが、BPSD治療についてベンゾジアゼピン系薬物のルーチン使用は支持されなかった。しかし、BPSDを有する人で他の向精神薬使用が安全ではない場合、もしくは特定の向精神薬についてアレルギーや忍容性の問題が顕著である場合はベンゾジアゼピン系薬物が使用される可能性があった。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

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術後患者の生存率は看護師の人数と学歴で改善できる(コメンテーター:中澤 達 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(189)より-

コストカット目的での看護師減員は患者アウトカムに悪影響をもたらす一方で、学士号取得の看護師配置を手厚くすると院内死亡は減少するという研究報告が発表された。 本検討は、病院運営上最も大きなコスト要素の1つである、看護師に関する意思決定を目的としたRN4CAST研究である。RN4CASTには12ヵ国が参加しているが、今回の検討では、同様の患者退院データを有する9ヵ国(ベルギー、英国、フィンランド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス)300病院における、2009~2010年のデータより解析が行われた。 方法は、一般外科、整形外科または血管外科手術を受けた50歳以上の患者42万2,730例の退院データを入手、診療データを標準プロトコル(ICD-9または10に準拠)でコード化し、年齢、性別、入院タイプ、43のダミー変数で分類した手術タイプ、17のダミー変数で分類した入院時の併存疾患のリスク調整を用いて、30日院内死亡率を評価した。同時に、2万6,516人の看護師の看護職員配置と教育レベルを調査した。 結果として、看護師の労働負荷が患者1人分増大するにつき、入院患者の30日院内死亡率は7%上昇することが示された(オッズ比:1.068、95%信頼区間[CI]:1.031~1.106)。また、学士号取得看護師が10%増えると院内死亡率は7%低下することが示された(同:0.929、0.886~0.973)。つまり、看護職員の60%が学士号取得者で看護体制6対1の病院は、同看護職員が30%で看護体制8対1の病院と比べて、院内死亡が約30%低いことになる。 米国、カナダで行われた調査でも今回と同様の結果であり、病院支出を最小とするための人件費削減は患者アウトカムに悪影響を与えることが示唆された。同様の検討が心臓手術のようなハイリスク手術、内科治療についてもヨーロッパで行われている。 日本では入院治療に携わる看護師数である看護体制に加算があり、医療の質の評価として間違いではないことが証明された。今後、死亡以外の有害アウトカムに対する業務コストを算出し、労働力投資が最大価値を生む疾患群を解明する必要がある。さらにその結果が、保険償還制度に反映され、医療の質向上に寄与することが期待される。

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急性心筋梗塞後にも心房細動患者にはCKDのステージに関わらずワルファリンを投与すべき!でも、日本でも同じ?(コメンテーター:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(190)より-

ワルファリンは、心房細動患者で心原性脳梗塞や全身性塞栓症を予防するには有効な薬剤で、出血のリスクはあっても、Net Clinical Benefitの点からCHADS2スコアを考慮して使用すべきとされている。しかし、CKDのステージが進行するにつれ出血のリスクが増加することから、ワルファリン投与についてはControversialであった。 Carreroらはスウェーデン国内のすべての病院から急性期心疾患の登録研究を用いて、急性心筋梗塞後に退院した心房細動患者でワルファリン治療の効果を検討した結果、CKDのステージに関係なくワルファリン投与が優れていることを示した。また同時に、本論文においては急性心筋梗塞であっても抗血小板薬よりワルファリンの投与を優先すべきであることも示唆した。 しかし、この結論をすぐにわが国における実臨床の場に適応できるかというと、2つの問題点をあげておかなければならない。 まず、ワルファリンのコントロール状況を示すTime in Therapeutic Range(TTR)は、スウェーデンでは実臨床において70%以上である。TTRが低下すれば、よりイベントは塞栓症の発症も出血も多くなることが知られている。わが国では循環器専門病院でも50~60%と報告されていることから考えれば、さらに実際は低いと考えられるので、スウェーデンと同等のワルファリンの効果が得られるかは疑問である。 次に、急性心筋梗塞の治療でのPCIを含めた血行再建の頻度である。この登録研究では、PCIとCABGを含めた血行再建の頻度が30%程度である。おそらく90%以上に血行再建が行われ、しかもステントがPCIのほとんどに使用されているわが国の状況では、アスピリンとチエノピリジン系の2剤の抗血小板療法(Dual Antiplatelet Therapy:DAPT)が通常処方されている。心房細動があれば、ワルファリンを加えた3剤投与(Triple therapy)が必要となり、さらに出血のリスクが増加すると予測される。 WOEST試験でもTriple therapyには疑問が出されている。この論文でも、DAPTの頻度がワルファリン使用群で16.8%であるのに比べ、ワルファリン非使用群では52.6%であることを考えれば、直ちにすべての患者、とくに出血リスクの高い進行したCKD患者で、しかも実臨床で厳密なTTRのコントロールが困難なわが国において、同様なアウトカムを出せるかは疑問である。 今後CKDを合併した心房細動を有する心筋梗塞患者は、わが国でも増加すると考えられる。これらの患者にどのような抗凝固・抗血栓療法を行うかは、われわれが解決しなければならない問題である。

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乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet

 乳房切除術および腋窩郭清後の放射線療法の効果について、1~3個のリンパ節転移があり全身治療が行われた場合でも、再発率、乳がん死亡率を低下することが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のEarly Breast Cancer Trialists 共同研究グループ(EBCTCG)が22試験、8,135例の患者データをメタ解析し報告した。先行研究のメタ解析で、乳がん切除後の放射線療法は、リンパ節転移が認められる全女性について、再発および乳がん死亡の両リスクを低下することが示されていた。しかし、転移が1~3個と少ない患者におけるベネフィットは不明であり、本検討は、それらの患者の放射線治療の効果について評価することが目的であった。Lancet誌オンライン版2014年3月19日号掲載の報告より。22試験8,135例のデータをメタ解析 メタ解析には、1964~1986年に行われた無作為化試験22試験に参加した8,135例の患者個人データが含まれた。乳房切除術および腋窩郭清後に胸壁と局所リンパ節に放射線療法を受けたか、もしくは同術後に放射線療法を受けていなかった者が対象である。 再発は10年間死亡は20年間または2009年1月1日時点まで追跡し、参加試験、個々の追跡年、試験開始時年齢、リンパ節の病理所見で層別解析した。 対象患者のうち3,786例がレベルII以上の腋窩郭清を行い、リンパ節転移がゼロ、1~3個または4個以上を有する集団に分けて分析した。1~3個の転移でも局所再発、全再発、乳がん死亡を有意に抑制 結果、腋窩郭清を受けリンパ節転移がなかった700例については、放射線療法は局所再発(両者の有意水準[2p]>0.1)、全再発(放射線療法群vs. 非療法群のリスク比[RR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.76~1.48、2p>0.1)、乳がん死亡(同:1.18、0.89~1.55、2p>0.1)に統計学的に有意な影響を及ぼさなかった。 腋窩解剖郭清を受けリンパ節転移が1~3個であった1,314例では、放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.68、95%CI:0.57~0.82、2p=0.00006)、乳がん死亡(同:0.80、0.67~0.95、2p=0.01)を抑制した。これら1,314例のうち1,133例が全身治療(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルまたはタモキシフェン)を試験中に受けており、これらの症例でも局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.67、95%CI:0.55~0.82、2p=0.00009)、乳がん死亡(同:0.78、0.64~0.94、2p=0.01)を抑制した。 腋窩郭清を受けリンパ節転移が4個以上だった1,772例でも、放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.79、95%CI:0.69~0.90、2p=0.0003)、乳がん死亡(同:0.87、0.77~0.99、2p=0.04)の抑制がみられた。

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重症敗血症、アルブミンを投与しても死亡率変わらず/NEJM

 重症敗血症または敗血症性ショックの患者に対し、晶質液に加えてアルブミンを投与しても、晶質液単独投与と比較して28日、90日の生存率は改善しなかったことが示された。イタリア・ミラノ大学のPietro Caironi氏らが、1,818例対象の多施設共同非盲検無作為化試験ALBIOSの結果、報告した。先行研究において、重症敗血症に対するアルブミン投与のベネフィットが示唆されたが、有効性については十分には確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2014年3月18日号掲載の報告より。100のICUで1,818例を対象に晶質液単独群とアルブミン追加群を比較 ALBIOS(Albumin Italian Outcome Sepsis)試験は、イタリア国内100ヵ所の集中治療室(ICU)にて、2008年8月~2012年2月の間に18歳以上の1,818例の重症敗血症患者を、20%アルブミン+晶質液(910例)もしくは晶質液単独(908例)を受ける群に無作為に割り付けて行われた。アルブミン群の、ICU退室時まで、もしくは無作為化後28日間の目標血清アルブミン値は30g/L超で維持された。 主要アウトカムは、28日時点の全死因死亡だった。副次アウトカムは、90日時点の全死因死亡、臓器機能障害を有した患者数およびその重症度、ICU在室期間、入院期間などであった。28日時点の全死因死亡に有意差みられず、90日時点も同様 解析は、同意が取り下げられたなどの理由で除外された8例を除外した、アルブミン群903例(年齢中央値70歳、経時的臓器不全スコア[SOFA]中央値:8、人工呼吸器装着:78.5%)、晶質液単独群907例で行われた。 結果、最初の7日間において、アルブミン群の患者は晶質液単独群と比較して、平均動脈圧が有意に高く(p=0.03)、ネット体液バランスが有意に低かった(p<0.001)。 28日時点の全死因死亡は、アルブミン群285/895例(31.8%)、晶質液単独群288/900(32.0%)で有意差はみられなかった(アルブミン群の相対リスク:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.14、p=0.94)。 同様に90日時点についても、アルブミン群365/888例(41.1%)、晶質液単独群389/893例(43.6%)で有意差はみられなかった(同:0.94、0.85~1.05、p=0.29)。 その他、副次アウトカムについても両群間の有意差はみられなかった。

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リンパ脈管筋腫症〔LAM : lymphangioleiomyomatosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis: LAM)は、ほぼ女性に限って発症する性差の著しい疾患である。主として妊娠可能年齢の女性に発症するまれな疾患で、腫瘍抑制遺伝子(TSC遺伝子)の異常により腫瘍化した平滑筋様細胞(LAM細胞)が肺や体軸中心リンパ系(骨盤腔、後腹膜腔および縦隔にわたる)で増殖し、慢性に進行する腫瘍性疾患である。肺では、多発性の嚢胞形成を認める。自然気胸を反復することが多く、女性自然気胸の重要な基礎疾患である。肺病変が進行すると拡散障害と閉塞性換気障害が出現し、労作性の息切れ、血痰、咳嗽などを認める。肺病変の進行の速さは症例ごとに多様であり、比較的急速に進行して呼吸不全に至る症例もあれば、年余にわたり肺機能が保たれる症例もある。肺外では、体軸リンパ流路に沿ってリンパ脈管筋腫(lymphangioleiomyoma)を認めることがある。リンパ脈管筋腫はCT画像では、嚢腫様あるいはリンパ節腫大様に描出され、LAM細胞の増殖により拡張したリンパ管あるいはリンパ節と考えられている。腎臓には、血管筋脂肪腫(angiomyolipoma: AML)を合併する場合もある。常染色体優性遺伝性疾患である結節性硬化症(TSC)を背景として発症する例(TSC-LAM)、TSCとは関連なく発症する例(孤発性LAM)の2つのタイプがある。■ 病名や疾患概念の変遷本疾患は1940年前後から記載され始め、Frack ら(1968年)により初めてpulmonary lymphangiomyomatosis という言葉が用いられ、Corrin ら(1975年)により 28 例の臨床病理学的特徴がまとめられた。Pulmonary lymphangioleiomyomatosis という言葉は、Carrington ら(1977年)が、本疾患の生理学的、病理学的、画像の各所見の関連性を詳細に検討した際に使用された。現在では、主にlymphangioleiomyomatosisが用いられている。日本においては、山中、斎木(1970年)が 2 例の剖検例と 1 例の開胸肺生検例を検討し、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症として報告したのが最初である。一方、症例の集積に伴い、LAMは肺のみに限局した疾患ではなく全身性疾患として認識されるようになり、「肺」を病名から除いて「リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis)」という病名で呼ばれるようになった。すなわち、肺外病変としての後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫が主体で、肺病変が軽微である症例の存在も認識されるようになったためである。■ 疫学まれな疾患であるため、有病率や罹患率などの正確な疫学データは得られていない。疫学調査の結果から、日本でのLAMの有病率は100万人当たり約1.9~4.5人と推測されている。米国などからの報告でも人口100万人当たり2~5人と推測されている。■ 病因腫瘍抑制遺伝子である TSC 遺伝子の変異が LAM 細胞に検出される。LAMは、Knudson の 2-hit 説が当てはまる腫瘍抑制遺伝子症候群のひとつである。TSC 遺伝子には TSC1 遺伝子と TSC2 遺伝子の2種類があり、TSCはどちらか一方の遺伝子の胚細胞遺伝子変異による遺伝性疾患である。TSC-LAM 症例はTSC1あるいはTSC2遺伝子のどちらの異常でも発生しうるが、sporadic LAM 症例ではTSC2遺伝子異常により発生する。TSC 遺伝子異常により形質転換した LAM 細胞は、病理形態学的にはがんといえる程の悪性度は示さないが、転移してリンパ節や肺にびまん性、不連続性の病変を形成する。 LAM病変に認められる豊富なリンパ管や乳び液中に検出されるLAM細胞クラスターは、LAMの病態進展におけるリンパ行性転移の重要性を示唆する所見である。片肺移植後のドナー肺に LAM が再発した症例では、レシピエントに残存する体内病変からドナー肺に LAM 細胞が転移して、再発したことを示唆する遺伝学的解析結果が報告されている。最近の研究では、必ずしもすべてのLAM細胞がTSC遺伝子変異を有するわけではなく、変異遺伝子のallelic frequencyは約20%前後と報告されている。TSC1、TSC2遺伝子は、それぞれハマルチン(約130kDa)、ツベリン(約180kDa)というタンパク質をコードし、両者は細胞質内で複合体を形成して機能する。ハマルチン/ツベリン複合体は、細胞内シグナル伝達に関与するさまざまなタンパク質からリン酸化を受けることにより、mTORの活性化を制御している。LAMでは、ハマルチン/ツベリン複合体が機能を失い、恒常的にmTORが活性化された状態となるため、LAM細胞の増殖を来す。そのため、mTOR阻害薬のシロリムス(国内未承認)は、LAM細胞増殖を抑制し病状の進行抑制に寄与すると考えられる。■ 症状以下のカッコ内の数値は、呼吸不全に関する調査研究班による平成18年度の全国調査集計において報告された、LAM診断時の頻度である。1)胸郭内病変に由来する症状労作性の息切れ(48%)や自然気胸(51%)で発症する例が最も多い。そのほかに、血痰(8%)、咳嗽(27%)、喀痰(15%)などがある。肺内でのLAM細胞の増殖により生じる肺実質破壊(嚢胞性変化)、気道炎症、などによると考えられる。労作性の息切れは、病態の進行とともに頻度が高くなる。進行例では、血痰、咳嗽・喀痰などの頻度も増加する。気胸は、診断後の経過中を含め患者の約7割に合併するとされる。LAMは、女性気胸の重要な原因疾患である。2)胸郭外病変に由来する症状腹痛・腹部違和感、腹部膨満感、背部痛、血尿など胸郭外病変に由来する症状(16%)がある。腎AML(41%)、後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫(26%)、腹水、などによると考えられる。3)リンパ系機能障害による症状乳び胸水(8%)、乳び腹水(8%)、乳び喀痰、乳び尿、膣や腸管からの乳び漏などがある。約3%の症例では、診断時あるいは経過中に下肢のリンパ浮腫を認める。4)無症状人間ドックなどの健診を契機に、偶然発見される場合もある。自覚症状はないが、腹部超音波検査や婦人科健診において腎腫瘍、後腹膜腫瘤、腹水などを指摘され、これを契機としてLAMと診断される例がある。■ 経過と予後LAMは、慢性にゆっくりと進行する腫瘍性疾患であるが、進行の早さには個人差が大きく、その予後は多様である(図1)。わが国での全国調査によると、初発症状や所見の出現時からの予測生存率は、5年後が91%、10年後が76%、15年後が68%であった。予後は診断の契機となった初発症状・所見によって異なり、息切れを契機に診断された症例は、気胸を契機に診断された症例より診断時の呼吸機能が有意に悪く、また、予後が不良であった。画像を拡大する図1では、Aは重症例、Bは中等症例、Cは軽症例、Dは最軽症例と呼ぶ。Aは息切れ発症のLAMを想起すればよい。AにGnRH療法を行っても、A’では肺機能や生存期間の改善に寄与していない。A’’では、肺機能の低下スピードはやや軽減し、そのため生存期間は伸びている。C、Dは気胸発症例、あるいは偶然の機会に胸部CTで多発性肺嚢胞を指摘されたような症例を想起すればよい。これらの症例では、特別な治療を考える必要はないであろう。Bは中間の症例である。B’は、GnRH療法により肺機能の低下速度が緩徐となり、生命予後は延長することが明らかである。この図から読み取れる点は、治療的介入が肺機能の低下速度を緩徐にできるならば、ゆっくりと進行する慢性疾患では比較的長期間の生命予後の延長をもたらすことができる点である。後述するように、シロリムスによる分子標的療法は、肺機能の低下速度を軽減するのではなく、安定化ないしは治療前よりやや改善することが示されており、LAMの自然史を大きく変える治療として期待されるゆえんである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断にあたっては、特徴的な臨床像と胸部CT所見からLAMを疑い、図2のような手順に沿って診断する。画像を拡大する■ 画像診断診断には高分解能CT(HRCT)が推奨され、境界明瞭な数 mm~1 cm大の薄壁を有する嚢胞が、両肺野にびまん性に、比較的均等に散在しているのが特徴である(図3A)。通常の撮影条件では、肺気腫と鑑別が難しい場合がある(図3B)。診断にあたっては、HRCTで特徴的な所見を確認し、かつ慢性閉塞性肺疾患(COPD)やBirt-Hogg-Dubè(BHD)症候群など他の嚢胞性肺疾患を除外することが重要である。また、腎血管筋脂肪腫、後腹膜腔や骨盤腔のリンパ節腫脹、TSCに合致する骨硬化病変、腹水などの有無について、腹部~骨盤部のCT検査やMRI検査で確認することも診断にあたって有用である(図3C、3D)。可能であれば、経気管支肺生検あるいは胸腔鏡下肺生検により病理診断を得ることが推奨される。画像を拡大する■ 病理診断LAMの病理組織学的特徴は、LAM細胞の増殖とリンパ管新生である(図4)。画像を拡大するLAM細胞はやや未熟で肥大した紡錘形の平滑筋細胞様の形態を示し、免疫染色ではα-smooth muscle actinやHMB45陽性である。女性ホルモンレセプター(エストロゲンレセプターやプロゲステロンレセプター)を発現する。LAM細胞は、集簇して結節性に増殖し、肺では嚢胞壁、胸膜、細気管支・血管周囲、体軸リンパ流路などで不連続性に増殖している。ヘモジデリンを貪食したマクロファージが高頻度に認められ、LAMの肺実質では不顕性に肺胞出血を繰り返していると想像される。乳び胸水や腹水合併例では胸腹水中のLAM細胞クラスター(図5)を証明することで診断可能である。画像を拡大する■ 肺機能検査肺機能検査では、拡散能障害と閉塞性換気障害を認め、経年的に低下する。換気障害よりも拡散障害を早期から認める点が特徴である。MILES試験の偽薬群では、FEV1は-144 ± 24 mL/年の低下率であった。一方、閉経前と閉経後の症例では、平均-204 vs.-36 mL/年(p<0.003)と有意に閉経後症例の低下率が低かった。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)LAMに対する根治的治療法、すなわちLAM細胞を完全に排除し、破壊された肺を元に戻す治療法はない。MILES試験によりLAMの分子標的薬として確立されたmTOR阻害薬のシロリムスは、肺機能を安定化、乳び胸水・腹水・リンパ浮腫などのLAMに合併するリンパ系機能障害の病態の改善、合併する腎血管筋脂肪腫の縮小などの効果が報告されている。そして、その作用はLAM細胞に対して、殺細胞的ではなく静細胞的であると考えられている。すなわち、シロリムス内服を中止すると効果は消失し、元の病態が再来する。したがって、長期に内服することが必要であるが、免疫抑制薬でもあるシロリムスをLAM患者が長期内服した際の安全性についてのエビデンスはない。このような背景から、現時点では、LAMという疾患の自然史(図1)に照らして目の前の患者の状態を評価し、治療介入の利益と損益を熟考して治療方針を立てるべきである。以下に、LAMとその合併病態に対する治療を概説する。■ LAMに対する薬物療法1)シロリムス(国内未承認)肺機能が進行性に低下する場合(目安としてはFEV1<70 %pred)や内科的に管理困難な乳び胸水や腹水の合併例では、シロリムスの投与を考慮する。治験では血中トラフ値5 ~ 15 ng/mLを維持するように投与量が調節され、おおよそ2ないし3 mg/日(分1、朝食後)が必要となった。しかし、シロリムス1 mg/日の低用量(血中トラフ値<5 ng/mL)でも、十分な治療効果が得られたとの報告がある。シロリムスはCYP3A4で代謝されるため、肝障害やCYP3A4活性に影響を与える薬剤との相互作用に注意する。2)GnRH療法(偽閉経療法)女性ホルモンはLAM細胞の増殖に関与するため、gonadotropin-releasing hormone(GnRH)誘導体を投与して偽閉経状態にすることが、従来は経験的に行われてきた。リュープロレリン(商品名: リュープリン)1.88 mg 皮下注/4週ごと(保険適用外)、ゴセレリン(同: ゾラデックス)1.8 mg 皮下注/4週ごと(保険適用外)、ブセレリン(同: スプレキュア)1.8 mg皮下注/4週ごと(保険適用外)などの皮下注薬剤は月1回の投与で利便性が高く、かつ、女性ホルモンを確実に低下させ偽閉経状態をもたらすことができ、点鼻製剤より有用である。シロリムスが何らかの理由により投与できない場合、あるいは乳び漏の管理に難渋するなどの場合にはGnRH療法を考慮する。投与に際しては、更年期症状や骨粗鬆症が生じうるため、これらの治療関連病態を念頭におく必要がある。■ LAMの病態あるいは併存疾患の治療1)気管支拡張療法閉塞性換気障害があり労作性に息切れを認める症例では、COPDと同様に、抗コリン薬チオトロピウム(同: スピリーバ レスピマット)あるいはβ2刺激薬インダカテロール(同: オンブレス)などの長時間作用性気管支拡張薬の吸入を処方する(保険適用外)。2)気胸気胸を繰り返すことが多いため、気胸病態に対する治療とともに再発防止策を積極的に検討する。酸化セルロースメッシュ(同: サージセル)とフィブリン糊による胸腔鏡下全肺胸膜被覆術(カバリング術)は癒着を起こさず、再発防止が可能である。技術的に実施困難な施設では、気胸手術時の胸膜焼灼・剥離術、内科的癒着術[自己血、OK432(同: ピシバニール)ほか]などが行われる。3)乳び漏(乳び胸水や腹水など)に代表されるリンパ系機能障害乳び胸水、乳び腹水、乳び心嚢液、乳び喀痰、乳び尿、膣や腸管からの乳び漏、後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫、下肢のリンパ浮腫、肺内のリンパ浮腫像などはLAMにみられる特徴的なリンパ系の機能障害である。LAM細胞の増殖に伴うリンパ管の閉塞・破綻が原因と考えられているが、LAM細胞増殖に伴うリンパ管新生がその背景要因である。脂肪制限食は、腸管からの脂肪吸収に伴うリンパ液の産生を減少させ、結果として乳び漏出を減少させる。下半身の活動量が増加するとリンパ流も増加するため、活動量を制限して安静にすることはリンパ漏を減少させる。リンパ浮腫は後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫を合併する症例にみられ、複合的理学療法(弾性ストッキング、リンパマッサージなど)が治療として有用である。これらの食事指導、生活指導、理学療法では乳び漏やリンパ浮腫の管理が困難な場合には、シロリムス投与を考慮する。何らかの理由でシロリムスを投与できない場合には、GnRH療法、胸膜癒着術(乳び胸水例に対して)、Denver® shunt(乳び腹水例に対して)などを適宜、考慮する。乳び漏を穿刺・排液し続けることは、栄養障害、リンパ球喪失に伴う二次性免疫不全状態を招来するので慎むべきである。4)腎血管筋脂肪腫AMLからの出血リスクを予測する因子は、腫瘤径よりもAMLに合併する動脈瘤の大きさのほうが感度・特異度ともに優れている。動脈瘤径≧5 mmでは出血のリスクが高まるため動脈瘤に対する塞栓術を考慮する。腫瘍径≧4 cmもひとつの目安であるが、4 cm以上であっても動脈瘤の目立たない例もあり、このような症例では腫瘍径≧4 cmであっても経過観察可能である。一般に、巨大なAMLを有していても腎機能は良好に保たれるため、安易な腎臓摘出術は慎むべきである。5)慢性呼吸不全在宅酸素療法、COPDに準じた呼吸リハビリテーションを行う。常時酸素吸入が必要な呼吸不全例、あるいはFEV1<30 %predでは肺移植を検討する。6)妊娠・出産妊娠・出産に伴う生理的負荷に耐えうる心肺機能を有することが前提となるが、妊娠・出産は必ずしも禁忌ではない。しかし、妊娠中の症状の増悪や病態の進行、気胸や乳び胸水を合併する可能性などのリスクを説明し、患者ごとの対応が必要である。妊娠・出産に際しては、気流制限が重症であるほどリスクが高い。4 今後の展望シロリムスは、二重盲検比較試験によりLAMに対して有効性が確認された薬剤であり、今後のLAMの自然史を大きく変える治療法として期待される。一方、長期投与による安全性は未確認であり、治療中は効果と有害事象のバランスを慎重に観察する必要がある。シロリムスは、LAM細胞に対して殺細胞的ではないため、シロリムスに他の薬剤を併用し、治療効果を高める基礎研究や臨床研究が考案されている。5 主たる診療科主たる診療科は呼吸器内科となる。また、連携すべき診療科は次のとおりである。産婦人科(妊娠・出産、合併あるいは併存する女性生殖器疾患)放射線科あるいは泌尿器科(腎血管筋脂肪腫の塞栓術)脳神経内科・皮膚科(結節性硬化症に関連したLAM)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター LAM(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)呼吸不全に関する調査研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)気胸・肺のう胞スタディグループ(医療従事者向けのまとまった情報)The LAM foundation(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった英文情報)患者会情報J-LAMの会(リンパ脈管筋腫症患者と支援者の会)※おもに若年女性に発症するため、仕事、結婚、妊娠・出産、育児などの諸問題に対して、患者のみならず家族を含めた心のケアやきめ細かな対応が望まれる。LAM患者と支援者によるJ-LAMの会は、医療者との連携、疾患についての情報提供や患者同士の交流促進の場として利用されている。1)Hayashida M, et al. Respirology. 2007; 12: 523-530.2)林田美江ほか. 日呼吸会誌. 2008; 46: 428-431.3)Johnson SR, et al. Eur Respir J. 2010; 35: 14-26.4)林田美江ほか. 日呼吸会誌. 2011; 49: 67-74.5)McCormack FX, et al. N Engl J Med. 2011; 364: 1595-1606.

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双極性障害における神経回路異常が明らかに

 双極性障害にみられる各種の行動異常と神経回路異常との関連について、米国・ピッツバーグ大学のMary L. Phillips氏らは神経画像を用いたこれまでの研究を検証した。その結果、前頭前野皮質と側頭皮質、扁桃体、海馬における灰白質の容量減少や白質路におけるFractional anisotropyの減少などを背景に、感情プロセスや感情制御さらに報酬機能の神経回路に異常が生じていることを報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。 本批判的レビューでは、双極性障害の神経学的背景に関する最近の知見を明らかにし、神経画像研究の将来への道筋を提供することを目的に、双極性障害の感情プロセス、感情制御、報酬機能の神経回路に関する神経画像所見について検討した。機能MRI、容量分析、拡散画像およびresting-state法を用いた双極性障害に関する主要な研究すべての知見を評価し、神経回路異常の理解を深めることを目的とした。  主な結果は以下のとおり。・双極性障害は、前頭前野皮質(とくに腹外側部前頭前野皮質)-海馬-扁桃体の感情プロセスおよび両側性の感情制御回路において、左側腹部線条体内腹外側および眼窩前頭皮質の報酬回路における“活動亢進”とともに生じている障害として概念化されうることが示唆された。・また、双極性障害に伴う感情易変性、感情制御異常、報酬感受性増加といった行動異常との関連が示唆された。・これらの機能的異常は、前頭前野皮質と側頭皮質、扁桃体、海馬における灰白質の容量減少、ならびに前頭前野および皮質下領域とつながる白質路におけるFractional anisotropyの減少といった構造的背景が基盤にあると考えられた。・双極性障害の神経画像研究により、ある程度の限界はあるものの、感情プロセス、感情制御および報酬回路をサポートする神経回路異常が明らかとなった。・これらを踏まえて著者は、「今後は、ディメンショナルアプローチを用いた研究も導入すべきであろう」と指摘している。・また、若年患者における神経発達過程の検討や双極性障害のリスクなどを検討するより大規模な研究、統合したシステムアプローチを用いた多モード神経画像研究、パターン認識アプローチを用いた研究などにより、臨床的に有用な個体レベルでのデータが明らかになる可能性も指摘し、「それらの研究が、双極性障害患者に対する個別の診断と治療方針決定のための臨床的に有意義なバイオマーカーの同定にも役立つであろう」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか 統合失調症と双極性障害の違い、脳内の炎症/ストレスに派生 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第6回

第6回:無症状の成人における顕微鏡的血尿へのアプローチ 健診において尿試験紙検査は広く行われており、その際に無症候性血尿が認められることはよくあります。血尿の定義は、尿沈渣で赤血球5個/HPF以上とする事が多いです。これは日本の人口からの試算で、500万人近くになります。顕微鏡的血尿の頻度は加齢とともに増加し、男性より女性に多くみられます1)。尿潜血陽性時のアプローチについては悩ましいことが多いですが、患者と相談しつつ精査していくことになります。 以下、本文 American Family Physician 2013年12月1日号2)より顕微鏡的血尿1.背景2011年のUSPSTFによれば、無症状の成人に対しての膀胱がんスクリーニングに十分なエビデンスは認められない。しかし、健診では2%~31%に偶発的な血尿が認められており、エビデンスに則ったアプローチがプライマリ・ケア領域で求められている。大半の患者で原因が不明な事が多い一方、顕微鏡的血尿患者の5%、肉眼的血尿患者の30~40%までに悪性疾患が認められる。(表1) 【表1:顕微鏡的血尿の一般的な頻度】 不明 43~69% 尿路感染症 4~22% 前立腺肥大症 10~13% 尿路結石 4~5% 膀胱がん 2~4% 腎嚢胞性疾患 2~3% 腎臓病 2~3% 腎がん <1% 前立腺がん <1% 尿路狭窄性疾患 <1% 2.手順 1)尿試験紙検査が陽性で尿沈渣は陰性の患者では、6週あけて3回尿沈渣を行い、3回とも陰性であれば、追加の検査は不要である。 2)1回でも陽性であれば、尿路感染症や他の良性疾患(激しい運動、月経、最近の泌尿器科処置など)がないかを確認する。感染症治療後6週あけて、あるいは良性疾患の要因がなくなってから少なくとも48時間あけて、尿沈渣を再検、陰性なら追加検査は不要である。 3)これが陽性で、蛋白尿、赤血球円柱など腎疾患の可能性があれば、腎臓内科へ紹介する。腎疾患の可能性が低ければ、悪性腫瘍のリスクを評価し(表2)、初期評価として、病歴と身体所見、とくに血圧測定と腎機能評価を行う。また女性では内診を考慮し、男性には直腸診を行う。 【表2:危険因子】 35歳以上(日本のガイドラインでは40歳以上) 鎮痛薬の乱用 化学物質や染料への曝露 男性 喫煙者(既往も含む) 以下の既往 慢性的な体内異物留置 慢性的な尿路感染症 既知の発がん性物質や化学療法薬への曝露 肉眼的血尿 排尿時刺激症状 骨盤照射 泌尿器科疾患 3.画像診断【上部尿路評価】尿路造影CTは1回の検査で優れた診断的情報を提供する(感度91~100%、特異度94~97%)。腎機能低下例では、逆行性腎盂造影に単純CTまたは腎臓エコーを組み合わせて評価する(感度97%、特異度93%)。【下部尿路評価】リスク(表2)がある無症候性血尿患者には、年齢によらず膀胱鏡がすすめられる。尿細胞診は、膀胱がんに関して膀胱鏡に比べて感度が低く(48% vs. 87%)、リスクがない場合に、AUAガイドラインにおけるルーチン評価としてはもはや推奨されていない。4.フォローアップ適切な検査でも原因不明の場合には、尿検査を年1回、最低2年間行い、2回とも陰性であれば将来の悪性リスクは1%未満である。血尿が持続する場合は、3~5年以内に精査を繰り返すべきである。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本腎臓学会ほか. 血尿診断ガイドライン2013 2) Victoria J.Sharp,et al. Am Fam Physician. 2013;88:747-754.

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ロマンチックな恋愛は幸せか

 人は恋に落ちる。これまでの研究では青年、成人のどちらもロマンチックな恋愛の喜びや幸せといった精神状態を経験していることが示されている。一方で、思春期のロマンチックな恋愛は抑うつや不安症状と関連しているというエビデンスがあるが、成人におけるこれらのデータは存在しない。イラン・テヘラン大学のHafez Bajoghli氏らは、成人におけるロマンチックな恋愛と抑うつや不安、軽躁症状や睡眠との関連を調査した。International journal of psychiatry in clinical practice誌オンライン版2014年3月10日号の報告。 100人のイラン人成人を対象に調査を行った(平均年齢:26歳、男性比率:53%)。調査対象者はロマンチックな恋愛と抑うつ、不安、軽躁症状、睡眠に関するアンケートへの回答を行った。 主な結果は以下のとおり。・ロマンチックな恋愛の増加状態は、軽躁症状の明るい面、および強い抑うつ症状や不安状態、より良い睡眠の質と関連していた。・睡眠時間との関連は認められなかった。・首尾よく恋をしているごく限られた成人を対象とした精神生物学的研究結果と異なり、成人においてもロマンチックな恋愛は人生の喜びや幸せだけを提供する期間ではないことが示された。・若年成人においても思春期同様に、恋愛は不確実で不快な感情に関連する重要なライフイベントであると考えられる。関連医療ニュース 食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 1日1杯のワインがうつ病を予防  担当者へのご意見箱はこちら

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EV71ワクチン、乳幼児の手足口病に効果、中国発/NEJM

 中国で開発されたエンテロウイルス71(EV71)ワクチンの、乳幼児における手足口病またはヘルパンギーナに対する有効性、安全性および免疫原性について、中国疾病予防管理センター(CDC)のFengcai Zhu氏らが、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を発表した。プラセボ群との比較で、ワクチンの有効率は94.8%と有意に高く、一方で重篤な有害事象の発生は同程度であり、接種後56日時点で2回接種により98.8%に免疫応答が認められたことを報告した。またEV71関連疾患の入院、および神経合併症を伴う手足口病については100%の予防効果が認められたという。著者は、「乳幼児におけるEV71関連の手足口病またはヘルパンギーナは、EV71ワクチン接種によって予防された」と結論づけている。NEJM誌2014年2月27日号掲載の報告より。健康な6~35ヵ月齢1万7例対象に第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験 試験は2012年1月に、江蘇省の3県・35地点で、健康な乳幼児(6~35ヵ月齢)1万7例を登録して行われた。研究グループは対象児を無作為に2群に分け、一方の群にはEV71ワクチンを、もう一方の群にはプラセボを、28日間隔で2回接種(筋注)し、12ヵ月間にわたりサーベイランスを行った。 主要エンドポイントは、EV71関連の手足口病またはヘルパンギーナの発生だった。ワクチン有効率94.8%、入院・神経合併症は100%予防 intention-to-treat分析の結果、サーベイランス期間12ヵ月間のEV71関連疾患の発生率は、ワクチン接種群0.3%(13/5,041例)、プラセボ群2.1%(106/5,028例)だった。 EV71関連の手足口病またはヘルパンギーナに対するワクチンの有効率は94.8%(95%信頼区間[CI]:87.2~97.9%、p<0.001)、EV71関連入院(0例対24例)、神経合併症を伴う手足口病(0例対8例)に対しては、同100%(95%CI:83.7~100%、42.6~100%)であった。 重大有害事象は、ワクチン接種群2.2%(111/5,044例)、プラセボ群2.6%(131/5,033例)の発生であった。 免疫原性について検討したサブグループ(1,291例)において、2回接種により56日時点で参加者の98.8%で抗EV71免疫応答が誘発された。抗EV71中和抗体力価1:16が、EV71関連の手足口病またはヘルパンギーナの予防と関連していた。

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膝OAへのDMOADs予防的投与の費用対効果

 変形性膝関節症(膝OA)の発症予防は、どのような患者にどのような薬剤を用いれば高い費用効率が得られるのだろうか。米国・Brigham and Women's病院のElena Losina氏らによる解析の結果、肥満かつ膝損傷歴のある膝OA発症リスクの高い患者では疾患修飾作用のある薬剤を用いた治療が費用対効果に優れることが示された。これはほかの一般的に認められた予防的治療に匹敵するだろう、とまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年3月(オンライン版2014年1月31日)の掲載報告。 研究グループは、膝OAのシミュレーションモデルであるOsteoarthritis Policy(OAPol)モデルを用い、疾患修飾OA治療薬(DMOADs)による発症予防の費用効率を解析した。 コホートは膝OA発症リスク因子なし、肥満、膝損傷歴あり、高リスク(膝損傷歴を有する肥満者)の4つを用いた。 50歳からDMOADsを開始して最初の1年間の有効率は40%、以降年5%が膝OAを発症し、重大な毒性の発現率は0.22%、年間医療費は1,000ドルを基本ケースとし、標準治療と比較した。 主な結果は以下のとおり。・高リスク群では、基本ケースで質調整生存年(QALY)が0.04延長し、生涯医療費は4,600ドル増加した。・増分費用対効果比(ICER)は、11万8,000ドル/QALYであった。・膝損傷歴群では、基本ケースのICERは、15万ドル/QALY超であった。・肥満群およびリスク因子なし群では、標準治療より基本ケースの費用対効果は低かった。

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Vol. 2 No. 2 transcatheter aortic valve implantation(TAVI)現状と将来への展望

林田 健太郎 氏慶應義塾大学医学部循環器内科はじめに経カテーテル的大動脈弁留置術 (transcatheter aortic valve implantation:TAVI)は、周術期リスクが高く外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)の適応とならない患者群、もしくは高リスクな患者群に対して、より低侵襲な治療として開発されてきた。2002年にフランスのRouen大学循環器内科のCribier教授によって第1例が施行されて以後1)、2007年にヨーロッパでCEマーク取得、2011年にはEdwards社のSapien valveがアメリカでFDA認可を受けている。現在までにヨーロッパ、アメリカを中心に世界中で7万例以上が治療されており、世界的に急速に進歩、普及しつつある治療法である。現在ヨーロッパでは2種類のTAVIデバイスが商業的に使用可能である(本誌p.16図を参照)。フランスでは2010年にすでにTAVIの保険償還がされており、現在では33施設がTAVI施行施設として認可を受けている。またTAVI症例はnational registryに全例登録が義務づけられている2)。TAVIにおける周術期死亡率の低下TAVIの歴史は合併症の歴史であるといっても過言ではない。2006、2007年のTAVIプログラム開始当初は多くの重篤な合併症を認め、低侵襲な経大腿動脈TAV(I TF -TAVI)においても20%を超える30日死亡率を認めていた。しかし、年月とともに術者・施設としての経験の増加、知見の蓄積、さらにデバイスの改良により徐々に合併症発生率は低下し、それに伴って死亡率は低下していった(図1)。特に最近では、transfemoral approachにおいては30日死亡率が5%以下まで低下しており、この数字が今後日本におけるTAVI導入においてわれわれが目指していく基準になっていくであろう。それではどのように合併症を減らしていくのか?図1 30日死亡率の推移(Institut Cardiovasculaire Paris Sudにおけるデータ)画像を拡大する2006年のTAVI開始当初は非常に高い周術期死亡率であったが、その後経験の蓄積やデバイスの改良により、現在では5%程度まで低下している。欧米のデータをいかに日本の患者さんに応用するか?私がヨーロッパにいる間は、日本の患者さんに対していかに安全にTAVIを導入するかということを常に考えて研究を行っていた。フランスにいながらにして体の小さな日本人におけるTAV Iの結果をいかにsimulateするかというのが課題であったが、われわれは体表面積(BSA)をフランスにおけるTAVIコホートの中央値である1.75をcutpointとし、small body size群とlarge body size群に分けて比較を行った(表1)。するとsmall body size群では有意に大動脈弁輪径が小さく(21.3±1.58 vs. 22.8±1.86mm, p< 0.01)、大腿動脈径も小さかった(7.59±1.06 vs. 8.29±1.34mm, p<0.01)。それに伴って弁輪破裂も増加する傾向があり(2.3 vs. 0.5%, p=0.11)、重大な血管合併症(major vascular complication)も増加した(13.0% vs. 4.3%, p<0.01)3)。われわれはsmall body size群で十分日本人のデータを代表できるのではと考えていたが、2012年の日本循環器学会で発表された日本人初のEdwards Sapien XTを用いたTAVIのtrialであるPREVAIL Japanのデータを見ると、われわれの想像をはるかに超え、日本人の平均BSAは1.4±0.14m2であり、われわれのコホートにおけるsmall body size群(1.59±0.11m2)よりさらに小さく、それに伴って大動脈弁輪径も小さかった(表1)。幸いPREVAIL Japanでは弁輪破裂は1例のみに認められ、また重大な血管合併症は6.3%であった。今後日本においてTAVIが普及していく過程において、体格の小さい日本人特有の合併症を予防することがたいへん重要であると考えられる。ではどのようにこのような合併症を低減していくことができるのか?表1 small body size群とlarge body size群の比較画像を拡大する大動脈弁輪径の計測の重要性まず弁輪破裂(もしくはdevice landing zone rupture)は心タンポナーデにより瞬時に血行動態の破綻をきたすため、致死率の高いたいへん重篤な合併症である(図2)4, 5)。Sapien valveでより頻度が高いが、CoreValveでも理論上は前拡張や後拡張時に起きうるため注意が必要である。TAVIにおいては外科手術と異なり直接sizerをあてて計測することができないため、事前に画像診断による詳細な弁輪径やバルサルバ洞径の計測、石灰化の評価とそれに最適なデバイス選択が必要である。この合併症を恐れるがあまり小さめのサイズの弁を選択すると、逆にparavalvular leakが生じやすくなり、30日死亡率6)、1年死亡率7)を増加させることが報告されている。さらには近年、中等度のみならず軽度(mild)のparavalvular leakも予後を悪化させる可能性が示唆されており8)、われわれも同様の結果を得ている(本誌p.19図を参照)9)。弁輪の正確な計測には、その構造の理解が重要である。弁輪ははっきりとした構造物ではなく、3枚の弁尖の最下部からなる平面における“virtual ring”で構成される部分であり(本誌p.19図を参照)、正円ではなく楕円であることが知られている(図3左)。この3次元構造の把握には2Dエコーに比べCTが適しているという報告があり10-12)、エコーに比べTAVIにおける後拡張の頻度を低下させたり13)、弁周囲逆流を減少させたりする14, 15)ことが報告されている。われわれもCT画像における弁輪面積より算出される幾何平均を平均弁輪径として使用し(図3右)、弁逆流量の低下を達成している16)。3Dエコーは3次元構造の把握には優れているものの、低い解像度、石灰化などによるアーティファクトの影響が除外しきれないため、現在のところ弁輪計測のモダリティとしてはガイドライン上勧められていないが17)、造影剤を必要としないなどのメリットもあり、今後の発展が期待される。図2 Sapien XT valve 留置後弁輪破裂を認めた1例画像を拡大する急速に進行する心タンポナーデに対し心嚢穿刺を行い、救命しえた1例。大動脈造影上左冠動脈主幹部の直下にcontrast protrusionを認め、弁輪破裂と考えられた。図3 CTにおける弁輪径の計測画像を拡大する大動脈弁輪は、ほとんどの症例において正円ではなく楕円である。この症例の場合、短径24.2mm、長径31.7mm、長径弁輪面積より幾何平均(geometric mean)は26.7mmと算出される。血管アクセスの評価TAVIにおいてmajor vascular complicationは周術期死亡リスクを増加させることが示唆されており18, 19)、特に骨動脈破裂は急速に出血性ショックをきたし致命的であるため、血管アクセスの評価もたいへん重要である。ほとんどの施設ではより低侵襲な大腿動脈アプローチ(transfemoral approach)が第一選択とされるが、腸骨大腿動脈アクセスの血管径や性状が適さない、もしくは大動脈にmobile plaqueが認められるなどの要因があると、その他のalternative approach、例えば心尖部アプローチ(transapical approach)、鎖骨下アプローチ(transsubclavian approach)などが適応となる。われわれはmajor vascular complicationの予測因子として、経験、大腿動脈の石灰化とともにシース外径と大腿動脈内径の比(sheath to femoral artery ratio:SFAR)を同定しており(本誌p.20表を参照)19)、そのSFARのcut pointは1.05であった(本誌p.20図を参照)。大腿動脈が石灰化していない場合は1.1であり、石灰化があると1.0まで低下していた。つまり、大腿動脈の石灰化がなければシース外径は大腿動脈内径より少し大きくなっても問題ないが、石灰化がある場合は、シース外径は大腿動脈内径を超えないほうがよいと考えられる。後にバンクーバーからも同様の報告がされており、われわれの知見を裏づけている20)。heart team approachの重要性以上、弁輪径の評価と血管アクセスなどの患者スクリーニングについて述べてきたが、いずれも画像診断が主であり、imaging specialistと働くことはたいへん重要である。またTAVIにおいては、デバイス自体がいまだ発展途上でサイズも大きく(18Frほど)、また治療対象となる患者群が非常に高齢・高リスクであることから、一度合併症が生じるとたいへん重篤になりやすく致命的であるため、PCI以上に外科医のバックアップが重要かつ必須である。特にearly experienceでは重篤な合併症が起きやすいため、経験の豊富な術者の指導のもと、チームとしての経験を重ねていくべきである。またエコー、CTなどイメージング専門医、外科医、麻酔科医との緊密な連携に基づいた集学的な“heart team approach”がたいへん重要である。TAVIのSAVR件数に与える影響2004年から2012年までの、MassyにおけるSAVRとTAVI件数の推移を図4に示す。TAVI導入以前は年間SAVRが180例ほどであったが、2006年に導入後急速に増加し、2011年には350例以上と倍増している。このように、TAVIは従来の外科によるSAVRを脅かすものではなく、今まで治療できなかった患者群が治療対象となる、まさに内科・外科両者にとって“win-win”の手技である。またSAVRに対するTAVI件数の割合も増加しており、2011年にはSAVRの半分ほどに達している。現時点では弁の耐用年数などまだ明らかになっていない点があるものの、TAVIの重要性は急激に増加している。TAVIは内科・外科が“heart team”として共同してあたる手技であり、冠動脈疾患の歴史を繰り返すことなく、われわれの手で両者にとっての共存の場にしていくことが重要であろう。図4 Institut Cardiovasculaire Paris SudにおけるTAVI導入後の外科的大動脈弁置換術とTAVI症例数の推移画像を拡大するTAVI導入後、外科的大動脈弁置換術の症例数は倍増している。将来への展望筆者が2009年から3年間留学していたフランスのMassyという町にあるInstitut Cardiovasculaire Paris Sud(ICPS)という心臓血管センターでは2006年よりTAVIを開始している。当初は22-24Frの大口径シースを用いた大腿動脈アクセスに対し外科的なcutdownを用いていたが、2008年からは穿刺と止血デバイス(Prostar XL)を用いた“true percutaneous approach”に完全移行している(図5)。 また2009年からは挿管せず全例局所麻酔と軽いセデーションのみでTF -TAVIを行っており、現在は“true percutaneous approach”と局所麻酔の両方を併せた“Minimally invasive TF -TAVI”として、良好な成績を収めている21)。このように局所麻酔とセデーションを用い、穿刺と止血デバイスを用いた“true percutaneous approach”は、経験を積めば安全で、高齢でリスクの高い大動脈弁狭窄症患者に対し、非常に低侵襲に大動脈弁を留置することができるたいへん有用な方法である。離床も早く、合併症がない場合の平均入院期間は1週間以下であるため、従来のSAVRに比べ大幅に入院期間を短縮でき、ADLを損なう可能性も低い。手技自体も、穿刺、止血デバイスを用いることから合併症がなければ1時間以内で終了し、通常の冠動脈インターベンション(PCI)のイメージと近くなっている。しかし、経験の初期は全TAVIチームメンバーのlearning curveを早く上げることが先決であり、無理をして最初から導入する必要はないが、次世代TAVIデバイスであるEdwards Sapien 3は14Frシースであるため、この方法が将来主流となってくる可能性が高い。筆者が2010年に参加したスイスで行われているCoreValveのtraining courseでは止血デバイスの使用法が講習に含まれており、特に超高齢者におけるメリットは大きく、今後日本でもわれわれが目指していくべき方向である。今年2013年でfirst in man1)からいまだ11年というたいへん新しい手技であり、弁の耐久性など長期成績が未確定であるものの、今後急速に普及しうる手技である。日本においてはEdwards Lifesciences社のSapien XTを用いたPREVAIL Japan trialが終了し、早ければ2013年度中にも同社のTAVIデバイスの保険償還が見込まれている。また現在、Medtronic社のCoreValveも治験が終了しようとしており、高リスクな高齢者に対するより低侵襲な大動脈弁治療のために、早期に使用可能となることが望まれる。現在ヨーロッパを中心とした海外では、Sapien、CoreValveなどの第1世代デバイスの弱点を改良した、もしくはまったく新しいコンセプトの第2世代デバイスが続々と誕生し、使用されつつある。いくつかのデバイスはすでにCEマークを取得しているか、もしくはCEマーク取得のためのトライアル中であり、今後急速に発展しうるたいへん楽しみな分野である。図5 18Fr大口径シースに対する止血デバイス(Prostar XL)を用いたtrue percutaneous approach画像を拡大するA:造影ガイド下に総大腿動脈を穿刺する。B:シース挿入前に止血デバイス(Prostar XL)を用い、糸をかける(preclosure technique)。C:弁留置後シース抜去と同時にknotを締めていく。D:非常に小さな傷しか残らず終了。おわりに本稿ではTAVIの現状と将来への展望について概説した。TAVI適応となるような高リスクの患者群ではminor mistakeがmajor problemとなりうるため、綿密なスクリーニングと経験のあるインターベンション専門医による丁寧な手技による合併症の予防がたいへん重要である。また、ヨーロッパではすでに2007年にCEマークが取得され、多くの症例が治療されているが、いまだこの分野の知識の発展は激しく日進月歩であり、解明すべき点が多く残っている。日本におけるTAVI導入はデバイスラグの問題もあり遅れているが、すでに世界で得られている知見を生かし、また日本人特有の繊細なスクリーニング、手技により必ず世界に誇る成績を発信し、リードすることができると確信している。そのためには“Team Japan”として一丸となってデータを発信していくための準備が必要であろう。文献1)Cribier A et al. Percutaneous transcatheter implantation of an aortic valve prosthesis for calcific aortic stenosis: first human case description. Circulation 2002; 106: 3006-3008. 2)Gilard M et al. Registry of transcatheter aorticvalve implantation in high-risk patients. N Engl J Med 2012; 366: 1705-1715. 3)Watanabe Y et al. Transcatheter aortic valve implantation in patients with small body size. Cathether Cardiovasc Interv (in press). 4)Pasic M et al. Rupture of the device landing zone during transcatheter aortic valve implantation: a life-threatening but treatable complication. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 424-432. 5)Hayashida K et al. Successful management of annulus rupture in transcatheter aortic valve implantation. JACC Cardiovasc Interv 2013; 6: 90-91. 6)Abdel-Wahab M et al. Aortic regurgitation after transcatheter aortic valve implantation: incidence and early outcome. Results from the German transcatheter aortic valve interventions registry. Heart 2011; 97: 899-906. 7)Tamburino C et al. Incidence and predictors of early and late mortality after transcatheter aortic valve implantation in 663 patients with severe aortic stenosis. Circulation 2011; 123: 299-308. 8)Kodali SK et al. Two-year outcomes after transcatheter or surgical aortic-valve replacement. N En gl J Me d 2 012; 36 6: 1686-1695. 9)Hayashida K et al. Impact of post-procedural aortic regurgitation on mortality after transcatheter aortic valve implantation. JACC Cardiovasc Interv 2012 (in press). 10)Schultz CJ et al. Cardiac CT: necessary for precise sizing for transcatheter aortic implantation. EuroIntervention 2010; 6 Suppl G: G6-G13. 11)Messika-Zeitoun D et al. Multimodal assessment of the aortic annulus diameter: implications for transcatheter aortic valve implantation. J Am Coll Cardiol 2010; 55: 186-194. 12)Piazza N et al. Anatomy of the aortic valvar complex and its implications for transcatheter implantation of the aortic valve. Circ Cardiovasc Interv 2008; 1: 74-81. 13)Schultz C et al. Aortic annulus dimensions and leaflet calcification from contrast MSCT predict the need for balloon post-dilatation after TAVI with the Medtronic CoreValve prosthesis. EuroIntervention 2011; 7: 564-572. 14)Willson AB et al. 3-Dimensional aortic annular assessment by multidetector computed tomography predicts moderate or severe paravalvular regurgitation after transcatheter aortic valve replacement a multicenter retrospective analysis. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 1287-1294. 15)Jilaihawi H et al. Cross-sectional computed tomographic assessment improves accuracy of aortic annular sizing for transcatheter aortic valve replacement and reduces the incidence of paravalvular aortic regurgitation. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 1275-1286. 16)Hayashida K et al. Impact of CT-guided valve sizing on post-procedural aortic regurgitation in transcatheter aortic valve implantation. EuroIntervention 2012; 8: 546-555. 17)Zamorano JL et al. 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メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、ドパミンおよびノルアドレナリン作動性神経伝達を介する前頭前皮質の変化に伴う神経発達障害である。神経ステロイド(アロプレグナノロン、デヒドロエピアンドロステロンなど) は、さまざまな神経伝達物質の分泌を調節する。スペイン・Complejo Hospitalario GranadaのAntonio Molina-Carballo氏らは、小児ADHD患者を対象とし、神経ステロイドの濃度ならびにメチルフェニデート服薬による臨床症状への効果および神経ステロイド濃度への影響を検討した。その結果、ADHDのタイプにより神経ステロイドはそれぞれ異なったベースライン濃度を示し、メチルフェニデートに対して異なる反応を呈することを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 本研究は、小児ADHDにおけるアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度と日内変動を明らかにするとともに、メチルフェニデート継続服薬による臨床症状への効果およびこれら2種類の神経ステロイドの濃度への影響を明らかにすることを目的とした。対象は、5~14歳の小児148例で、DSM-IV-TR分類でADHDと診断され、“attention deficit and hyperactivity scale”によるサブタイプと“Children's Depression Inventory”によるサブグループが明らかになっているADHD群(107例)と対照群(41例)であった。両群とも20時と9時に血液サンプルを採取し、ADHD群では治療開始4.61±2.29ヵ月後にも血液を採取しアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロン濃度を測定した。Stata 12.0を用いて年齢と性別で調整した因子分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・メチルフェニデートの投与により、うつ症状を伴わないinattentiveサブタイプのADHD患者においてアロプレグナノロン濃度が2倍に増加した(27.26 ± 12.90 vs. 12.67 ±6.22ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うADHDサブタイプではデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度が高く、メチルフェニデート投与後はわずかな増加を認めたが統計学的有意差はなかった (7.74 ± 11.46 vs. 6.18 ±5.99 ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うinattentiveサブタイプのADHD患者において、デヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度は低かったが、メチルフェニデート投与後にはさらに減少した。・ADHDサブタイプおよびサブグループによって、神経ステロイドはその種類によりベースライン濃度が異なり、メチルフェニデートに対して異なる反応を示す。これらの異なる反応性は、ADHDサブタイプや併存症の臨床マーカーになる可能性がある。関連医療ニュース ADHDに対するメチルフェニデートの評価は 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か

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